以下に、本願の開示する移動物特定システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
[移動物特定システムの構成]
図1は、実施例1に係る移動物特定システムの構成を示す図である。図1に示す移動物特定システム1は、複数の携帯端末2A〜2Dと、特定装置3とを有する。本実施例に係る移動物特定システム1は、複数の携帯端末2A〜2Dをそれぞれ携帯する複数の移動物のうち、複数の移動物の移動状態が同一または類似であっても、移動物の各々の識別情報を特定するものである。なお、携帯端末2A〜2Dは、これらを区別なく説明する場合には、携帯端末2と総称する。また、本実施例では、携帯端末2が4台、特定装置3が1台の例について説明するが、携帯端末2および特定装置3の台数は、これに限られず、任意の台数であってもよい。
携帯端末2は、移動物によって携帯される。かかる移動物の例としては、人物、動物、ロボットなどが挙げられるが、移動物はこれに限られない。移動物は、移動する物体であれば任意の物体を採用できる。図1に示すように、携帯端末2は、第1の検出部4と、送信部5とを有する。このうち、第1の検出部4は、携帯端末2自身の移動の状態を示す物理量である移動状態を検出する。例えば、第1の検出部4は、携帯端末2自身の速度ベクトルの軌跡を検出する。ここで、速度ベクトルの軌跡の始点から終点までの時間は、所定時間、例えば2秒などであるが、この値に限定されない。なお、第1の検出部4が検出する移動状態はこれに限られない。例えば、第1の検出部4は、携帯端末2自身の加速度ベクトルを検出してもよいし、携帯端末2自身の速度ベクトルを検出してもよい。さらには、第1の検出部4は、携帯端末2自身の加速度ベクトルの軌跡を検出してもよい。この加速度ベクトルの軌跡についても、開始点から終了点までの時間は、所定時間、例えば2秒などであるが、この値に限定されない。ここで、携帯端末2が移動物によって携帯されるので、第1の検出部4は、携帯端末2自身の移動状態を検出することで、携帯端末2自身を携帯する移動物の移動状態を検出することとなる。
送信部5は、第1の検出部4によって検出された移動状態、および携帯端末2自身を携帯する移動物を識別するための識別情報を特定装置3に送信する。例えば、送信部5は、識別情報として、端末のMACアドレス(Media Access Control Address)や、SIMカード(Subscriber Identity Module Card)に記録された固有のID番号等の携帯端末2自身を示す識別情報を移動状態と共に特定装置3に送信する。また、送信部5は、識別情報として、例えば、移動物である利用者のID番号など、携帯端末2を携帯する移動物を示す識別情報を送信してもよい。
このようにして、各携帯端末2からは、携帯端末2自身の移動状態、すなわち携帯端末2を携帯する移動物の移動状態、および携帯端末2を携帯する移動物を識別するための識別情報が特定装置3に送信される。
次に本実施例にかかる特定装置3について説明する。図1に示すように、特定装置3は、第2の検出部6と、受信部7と、第1の特定部8と、取得部9と、第2の特定部10とを有する。このうち、第2の検出部6は、複数の移動物の各々の移動状態および位置を検出する。例えば、第2の検出部6は、LRF(Laser Range Finder)から出射されて移動物から反射されたレーザ光線に基づいて、LRFが有する探索範囲内に存在する移動物の移動状態および位置を検出する。なお、第2の検出部6は、これに限られない。例えば、第2の検出部6は、ステレオカメラによって撮像された、ステレオカメラの撮像範囲内に存在する移動物を含む画像に対して、当該画像に含まれる移動物の位置および移動状態を検出するための画像処理を施して、移動物の移動状態および位置を検出する。
図1の例では、携帯端末2Aを携帯する移動物の検出された位置は、(x1,y1)である。また、図1の例では、携帯端末2Bを携帯する移動物の検出された位置は、(x2,y2)である。また、図1の例では、携帯端末2Cを携帯する移動物の検出された位置は、(x3,y3)である。また、図1の例では、携帯端末2Dを携帯する移動物の検出された位置は、(x4,y4)である。ただし、第2の検出部6は、移動物の位置を検出するのみであり、携帯端末2A〜2Dに予め付与された識別情報は特定できない。なお、以下の説明では、携帯端末2Aに付与された識別情報を「ID.1」、携帯端末2Bに付与された識別情報を「ID.2」、携帯端末2Cに付与された識別情報を「ID.3」、携帯端末2Dに付与された識別情報を「ID.4」とする。
また、第2の検出部6は、第1の検出部4によって検出された移動状態と同種の移動状態を検出することが好ましい。この理由は、後述の第1の特定部8で、これらの各検出部で検出された移動状態に対する相関値または類似度の演算を容易にするためである。
受信部7は、送信部5から送信された移動状態および識別情報を受信する。第1の特定部8は、携帯端末2の識別情報と、この識別情報が示す携帯端末2を携帯する移動物との対応関係を示す情報を予め保持する。そして、第1の特定部8は、受信した識別情報が携帯端末2の識別情報である場合には、予め保持された対応関係から、受信した識別情報に対応する移動物を識別する。
そして、第1の特定部8は、第2の検出部6で検出された移動状態と、受信部7で受信された移動状態とが同一または類似する移動物を検出する。かかる移動状態が同一または類似の移動物の検出方法の一例について説明する。検出方法の一例では、まず、第2の検出部6で検出された移動状態と、受信部7で受信された移動状態との相関値または類似度を演算する。そして、検出方法の一例では、演算した類似度が示す類似の度合いが、所定の類似の度合いより大きい場合、または演算した相関値が示す相関の度合いが、所定の相関の度合いより大きい場合には、両移動状態が同一または類似であると判別する。続いて、検出方法の一例では、移動状態が同一または類似であると判別した移動物を検出する。
そして、第1の特定部8は、第2の検出部6により位置が検出された移動物の識別情報を特定する。例えば、第1の特定部8は、移動状態が同一または類似するとして判別された移動物を識別するための識別情報を、移動状態が同一または類似するとして判別された移動物の第2の検出部6で検出された位置に対応する識別情報として特定する。
ここで、図1の例において、携帯端末2A、2B、2Cの各々を携帯する各移動物の移動状態が同一または類似であり、携帯端末2Dを携帯する移動物の移動状態が、携帯端末2A〜2Cの各々を携帯する各移動物の移動状態と異なる場合を想定して以下説明する。この場合、第1の特定部8は、携帯端末2Dを携帯する移動物の第2の検出部6により検出された位置(x4,y4)に、携帯端末2Dの送信部5から送信された識別情報「ID.4」を対応付けることで、携帯端末2Dに対応する識別情報を特定する。つまり、位置(x4,y4)に存在する携帯端末2Dは、識別情報「ID.4」の携帯端末であると特定できる。
一方、携帯端末2A〜2Cの各々を携帯する複数の移動物については、移動状態が同一または類似である。このため、第1の特定部8は、第2の検出部6により検出された位置(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)のそれぞれに、携帯端末2A〜2Cの各送信部5から送信され受信部7で受信された識別情報のそれぞれを一意に対応づけることができない。
そこで、本実施例では、図1に示す取得部9、第2の特定部10によって、移動状態が同一または類似である移動物の各位置の識別情報を特定する。
取得部9は、第1の特定部8により移動状態が同一または類似する複数の移動物が検出された場合に、次のような処理を行う。すなわち、取得部9は、これらの複数の移動物により携帯される複数の携帯端末2および特定装置3を含む複数のノードのうち、所定のノードと他の複数のノードとの距離を複数のノードの識別情報に対応付けて取得する。ここで、ノードが携帯端末2である場合には、「ノードの識別情報」は、上記で説明した各携帯端末2の送信部5により送信される識別情報である。また、ノードが特定装置3である場合には、「ノードの識別情報」は、特定装置3を示す識別情報である。
図1の例では、例えば、取得部9は、所定のノードとして、携帯端末2Aを選択する。この場合、携帯端末2A〜2Cおよび特定装置3を含む複数のノードのうち、所定のノードとして選択された携帯端末2Aを除いた、携帯端末2B、2Cおよび特定装置3は、他の複数のノードとなる。
そして、取得部9は、携帯端末2Aと携帯端末2Bとの距離D1を、携帯端末2Bに対応する識別情報「ID.2」に対応付けて取得する。また、取得部9は、携帯端末2Aと携帯端末2Cとの距離D2を、携帯端末2Cに対応する識別情報「ID.3」に対応付けて取得する。また、取得部9は、携帯端末2Aと特定装置3との距離D3を、特定装置3を示す識別情報に対応付けて取得する。なお、図1の例では、距離D1は、位置(x1,y1)〜位置(x2,y2)間の距離である。また、図1の例では、距離D2は、位置(x1,y1)〜位置(x3,y3)間の距離である。また、図1の例では、距離D3は、位置(x1,y1)〜位置(x0,y0)間の距離である。
第2の特定部10は、上記の複数のノード2A〜2C、3のうちの複数の携帯端末2A〜2Cについて、次のような処理を行う。すなわち、第2の特定部10は、第2の検出部6により検出された各位置に複数の携帯端末2を配置する組合せのうち、取得部9により取得された識別情報ごとの距離と合致する組合せを算出する。そして、第2の特定部10は、各位置の移動物の識別情報を特定する。
図1の例では、例えば、携帯端末2A〜2Cおよび特定装置3を含む複数のノードのうちの複数の携帯端末2A〜2Cを、位置(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)のそれぞれに配置する組合せは、6通り存在する。そこで、第2の特定部10は、この6通りの配置のそれぞれについて、携帯端末2Aと携帯端末2Bとの距離、携帯端末2Aと携帯端末2Cとの距離、携帯端末2Aと特定装置3との距離のそれぞれが、距離D1、D2、D3のそれぞれと一致するか否かを判定する。そして、第2の特定部10は、距離D1、D2、D3のそれぞれと、携帯端末2Aと携帯端末2Bとの距離、携帯端末2Aと携帯端末2Cとの距離、携帯端末2Aと特定装置3との距離のそれぞれが一致する場合の配置の組合せを特定する。そして、第2の特定部10は、特定した配置が示す携帯端末2A〜2Cの各位置に対応する識別情報「ID.1」〜「ID.3」のそれぞれを特定する。このように、第2の特定部10は、各ノードの携帯端末2を配置する組合せのうち、取得された対応する距離に合致する組合せ、すなわち実際の携帯端末2の位置と一致する組合せの配置を算出し、各位置に対応する識別情報を特定する。したがって、本実施例によれば、実際の携帯端末2の配置が特定され、この配置が示す各位置に対応する識別情報が特定されるので、移動状態が同一または類似である移動物が複数存在しても複数の移動物の各々を特定することができる。
このような第2の特定部10による識別情報を特定する処理について、図1を参照して、具体例を挙げて説明する。例えば、第2の特定部10は、6通りの配置のそれぞれについて、次のような処理を行う。すなわち、第2の特定部10は、他の複数のノードである携帯端末2B、2C、特定装置3のそれぞれの位置を中心として、それぞれ取得部9で取得された対応する距離D1、D2、D3を半径とする各円R1、R2、R3の各交点の各位置を算出する。そして、第2の特定部10は、6通りの配置のそれぞれについて、算出した各交点と、所定のノードである携帯端末2Aの位置との距離の和を算出する。
そして、第2の特定部10は、算出した距離の和が最小となる配置の組合せを算出する。そして、第2の特定部10は、算出した配置の組合せが示す携帯端末2A〜2Cの各位置に対応する識別情報「ID.1」〜「ID.3」のそれぞれを特定する。このように、各交点と、所定のノードの位置との距離の和が最小となる配置の組合せを算出することで、第2の検出部6により検出された移動物の各位置、および取得部9により取得した距離に誤差が発生した場合であっても、識別情報を特定することができる。
上述してきたように、本実施例に係る移動物特定システム1は、所定のノードと他の複数のノードとの距離を複数のノードの識別情報に対応付けて取得し、各ノードの携帯端末2を配置する組合せのうち、識別情報ごとの距離と合致する組合せを算出する。このように、本実施例に係る移動物特定システム1は、各ノードの携帯端末2を配置する組合せのうち、実際の携帯端末2の位置と一致する、取得された対応する距離に合致する組合せの配置を算出し、各位置に対応する識別情報を特定する。したがって、本実施例に係る移動物特定システム1によれば、実際の携帯端末2の配置が特定され、この配置が示す各位置に対応する識別情報が特定されるので、移動状態が同一または類似である移動物が複数存在しても複数の移動物の各々を特定することができる。同様に、本実施例に係る特定装置3によれば、移動状態が同一または類似である移動物が複数存在しても、複数の移動物の各々を特定することができる。
また、本実施例に係る移動物特定システム1は、複数のノードのうちの複数の携帯端末2について、第2の検出部6により検出された各位置に、これらの複数の携帯端末2を配置する組合せのそれぞれについて、次のような処理を行う。すなわち、本実施例に係る移動物特定システム1は、他の複数のノードのそれぞれの位置を中心として、それぞれ取得部9で取得された対応する各距離を半径とする各円の各交点の各位置を算出する。そして、本実施例に係る移動物特定システム1は、全ての組合せの配置のそれぞれについて、算出した各交点と、所定のノードである携帯端末2Aの位置との距離の和を算出する。そして、本実施例に係る移動物特定システム1は、算出した距離の和が最小となる配置の組合せを算出する。そして、本実施例に係る移動物特定システム1は、算出した配置の組合せが示す携帯端末2の各位置に対応する識別情報を特定する。このように、本実施例に係る移動物特定システム1によれば、各交点と、所定のノードの位置との距離の和が最小となる配置の組合せを算出することで、検出された移動物の各位置、取得した距離に誤差が発生した場合であっても、識別情報を特定することができる。同様に、本実施例に係る特定装置3によれば、検出された移動物の各位置、取得した距離に誤差が発生した場合であっても、識別情報を特定することができる。
また、本実施例に係る移動物特定システム1では、まずは、携帯端末2により検出された携帯端末2自身の移動状態と、特定装置3により検出された携帯端末2を携帯する移動物の移動状態とに基づいて、第1の特定部8が、次のような処理を行う。すなわち、第1の特定部8が、他の全ての移動物と移動状態が異なる移動物を特定する。その後、本実施例に係る移動物特定システム1では、移動状態が同一または類似する複数の移動物を、取得部9で取得した識別情報ごとの距離を用いて、第2の特定部10が特定する。つまり、本実施例に係る移動物特定システム1では、最初から、識別情報ごとの距離を取得せずに、まずは、移動状態のみで移動物を特定している。そして、本実施例に係る移動物特定システム1では、移動状態のみで特定できなかった移動物に対して、識別情報ごとの距離を取得する処理を行って、移動物を特定する。このように、本実施例に係る移動物特定システム1は、最初から全ての移動物に対して識別情報ごとの距離を取得する処理を行う場合に比べて、距離を取得する処理の処理量が少なくなり、より迅速に移動物を特定することができる。特に、移動物の数が多数である場合には、全ての移動物に対して識別情報ごとの距離を取得する処理の処理量は多大となる。これに加え、移動物の数が多数であるため、上記の所定のノードとの距離が同一となる他のノードが複数存在する可能性が高くなる。このような場合には、移動物を特定することができないため、所定のノードとなる携帯端末2または特定装置3を変更し、再び識別情報ごとの距離を取得する処理を行う必要があり、処理量が更に増える。一方、本実施例に係る移動物特定システム1では、全ての移動物ではなく、移動状態のみで特定できなかった移動物に対してのみ識別情報ごとの距離を取得する処理を行うので、移動物が多数であったとしても、より少ない処理量で迅速に移動物を特定できる。同様に、本実施例に係る特定装置3によれば、より迅速に移動物を特定することができる。
[携帯端末の構成]
続いて、実施例2に係る移動物特定システムについて説明する。図2は、実施例2に係る移動物特定システムにおける携帯端末の構成を示すブロック図である。図2に示す携帯端末50は、人物に携帯されるものである。
図2に示すように、携帯端末50は、加速度センサ51と、地磁気センサ52と、ローカル通信部53と、記憶部54と、制御部55とを有する。
このうち、加速度センサ51は、携帯端末50の加速度を検出するセンサである。地磁気センサ52は、グローバルな絶対座標系において携帯端末50の方向を検出するセンサである。
ローカル通信部53は、後述する通信制御部55cの制御により、後述する移動物特定装置20と無線通信を行う。かかるローカル通信部53の通信方式の一例としてBluetooth(登録商標)が挙げられる。
例えば、ローカル通信部53は、移動物特定装置20から送信されたID(identifier)応答指示を受信する。また、ローカル通信部53は、移動物特定装置20から送信されたビーコン受信端末候補である旨を受信する。また、ローカル通信部53は、移動物特定装置20から送信された距離測定用のビーコンおよび識別情報を受信する。また、ローカル通信部53は、移動物特定装置20から送信された、ビーコン受信端末候補に距離測定用のビーコンを送信する指示を受信する。また、ローカル通信部53は、ビーコン送信端末候補から送信された距離測定用のビーコンおよびIDを受信する。
また、ローカル通信部53は、後述の検出部55aにより検出された速度ベクトルの軌跡とともに、後述の記憶部54に記憶された識別情報であるID54aを移動物特定装置20に送信する。また、ローカル通信部53は、ビーコン受信端末候補に所定の電波強度で距離測定用のビーコンおよびID54aを送信する。また、ローカル通信部53は、ビーコン送信端末候補や移動物特定装置20から送信されたビーコンの受信電波強度および対応付けられたID54aや識別情報を移動物特定装置20に送信する。ここで、ローカル通信部53は、図1に示した送信部5の一例である。
記憶部54は、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部54は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
この記憶部54は、制御部55で実行される各種プログラムを記憶する。また、記憶部54は、携帯端末50を携帯する人物を識別するための識別情報であるID54aを記憶する。
制御部55は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
この制御部55は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部55は、図2に示すように、検出部55aと、応答部55bと、通信制御部55cとを有する。
ここで、図2に示す検出部55aは、図1に示した第1の検出部4の一例である。さらに、図1に示した第1の検出部4は、図2に示す加速度センサ51および地磁気センサ52にも対応する。
このうち、検出部55aは、加速度センサ51および地磁気センサ52の検出結果から、携帯端末50の速度ベクトル(Vx,Vy)の軌跡を検出する処理部である。ここで、速度ベクトルの軌跡の始点から終点までの時間は、所定時間、例えば2秒などであるが、この値に限定されない。なお、このようにして得られた速度ベクトルの座標の座標系は、移動物特定装置20を原点とした際のローカルな座標系ではなく、グローバルな絶対座標系である。
応答部55bは、ID応答指示を移動物特定装置20から受信すると、記憶部54に記憶されたID54aを取得し、検出部55aにより検出された速度ベクトルの軌跡とともにID54aを応答するための処理部である。例えば、応答部55bは、ID応答指示を移動物特定装置20から受信すると、ID54aとともに速度ベクトルの軌跡を通信制御部55cに出力する。
通信制御部55cは、ローカル通信部53を制御する処理部である。例えば、通信制御部55cは、移動物特定装置20から送信されたID応答指示を受信すると、応答部55bから入力されたID54aとともに速度ベクトルの軌跡を移動物特定装置20に送信するように、ローカル通信部53を制御する。また、通信制御部55cは、ビーコン受信端末候補である旨の通知を受けた状態で、ビーコン送信端末候補および移動物特定装置20から距離測定用のビーコンおよびID54a、識別情報を受信すると、次のような処理を行う。すなわち、通信制御部55cは、ビーコン送信端末候補や移動物特定装置20から送信されたビーコンの受信電波強度および対応付けられたID54a、識別情報を移動物特定装置20に送信する。また、通信制御部55cは、ビーコン受信端末候補に距離測定用のビーコンを送信する指示を受信すると、ビーコン受信端末候補に距離測定用のビーコンおよびID54aを送信するように、ローカル通信部53を制御する。
[移動物特定装置の構成]
図3は、実施例2に係る移動物特定システムにおける移動物特定装置の構成を示すブロック図である。図3に示す移動物特定装置20は、複数の携帯端末50をそれぞれ携帯する複数の移動物のうち、複数の移動物の移動状態が同一または類似であっても、これらの移動物の各々の位置に対応するID54aを特定し、各移動物にサービス提供するものである。
図3に示すように、移動物特定装置20は、LRF21と、無線通信部22と、通信部23と、出力部24と、記憶部25と、制御部26とを有する。
このうち、LRF21は、レーザ光線を用いて、移動物特定装置20周辺に存在する物体の形状を3次元的に読み取るデバイスである。図4は、LRFにおける人物の検出要領を説明するための図である。LRF21は、LRF21自身の検知能が及ぶ探索範囲を対象にしてその探索範囲に所在する人物の脚部にレーザ光線を照射できるように設置される。図4に示すように、LRF21は、移動物特定装置20を中心にして本体全面に扇状の探索範囲30を形成する。
そして、LRF21は、探索範囲30へ照射したレーザ光線の反射光を受光する。そして、LRF21は、反射光の受光データを後述の検出部26aへ出力する。この検出部26aによって、受光データから人物Hの足の有無が検知されることで、人物Hが検出される。その上で、検出部26aによって、人物Hの重心位置の座標が人物Hの所在位置の座標として検出される。また、検出部26aによって、人物Hの速度ベクトル(Vx,Vy)の軌跡が検出される。なお、このようにして得られた座標の座標系は、移動物特定装置20を原点とした際のローカルな座標系ではなく、グローバルな絶対座標系である。すなわち、検出部26aによって、検出した座標の座標系がグローバルな座標系に変換される。
このようなLRF21を用いることにより、移動物特定装置20から離れた人物Hの位置、人物Hの速度ベクトルの軌跡を広角に検出できる。なお、本実施例では、人検出を実現するためのデバイスとしてLRF21を例示したが、人検出、人物の移動方向および移動速度の軌跡を検出できるものであれば如何なるデバイスを搭載することとしてもよい。例えば、複数のカメラ、全方位カメラなどの各種のカメラの他、超音波センサを用いることもできる。さらには、赤外線カメラ、マイク、赤外線タグや生態センサなどの他のセンサ類を用いることとしてもよく、これらを組み合わせて用いることとしてもよい。
無線通信部22は、携帯端末50と無線通信を行う。例えば、無線通信部22は、後述の第1の特定部26bからID応答指示が入力されると、このID応答指示をブロードキャストする。また、無線通信部22は、後述の取得部26cから、所定の携帯端末にビーコン受信端末候補である旨を送信する指示が入力されると、所定の携帯端末にビーコン受信端末候補である旨を送信する。また、無線通信部22は、後述の取得部26cから、所定の携帯端末以外の他の携帯端末に、ビーコン受信端末候補に距離測定用のビーコンを送信する指示が入力されると、この指示を他の携帯端末に送信する。また、無線通信部22は、後述の取得部26cから、ビーコン受信端末候補に距離測定用のビーコンおよび特定装置20の識別情報を送信する指示が入力されると、ビーコン受信端末候補に距離測定用のビーコンおよび識別情報を送信する。
また、無線通信部22は、ビーコン受信端末候補から送信された「他のノード」の受信電波強度および対応付けられたID54a、識別情報を受信すると、「他のノード」の受信電波強度および対応付けられたID54a、識別情報を後述の取得部26cに送信する。さらに、無線通信部22は、後述のサービス提供部26eから、所定の携帯端末にコンテンツを送信する指示が入力されると、このコンテンツを所定の携帯端末に送信する。ここで、無線通信部22は、図1に示した受信部7の一例である。これに加えて、無線通信部22は、図1に示した取得部9の一例でもある。
図3の説明に戻り、通信部23は、外部装置との間で通信を行う。例えば、通信部23は、ネットワーク60を介して外部サーバ27との間で通信を行うことにより、後述する第1の特定部26bおよび第2の特定部26dにより特定された各位置に対応する識別情報を外部サーバ27に登録させる。
出力部24は、各種の情報を出力する。例えば、出力部24は、表示デバイスであり、後述のサービス提供部26eから入力されたサービスのコンテンツを表示する。かかる表示デバイスとしては、ディスプレイ、モニタなどを適用できる。また、出力部24は、音声を出力するデバイスであってもよい。
記憶部25は、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部25は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
この記憶部25は、制御部26で実行される各種プログラムを記憶する。また、記憶部25は、検出部26aの人検出に用いられる人検出用パターン25aを記憶する。さらに、記憶部25は、電波強度と距離との関係を表す「電波強度―距離変換用テーブル」25bを記憶する。「電波強度―距離変換用テーブル」25bは、ある送信ノードから所定の電波強度で上記の距離検出用のビーコンを送信した場合における、ビーコンを受信した受信ノードのビーコン受信電波強度と、2つのノード間の距離との関係を表す。この受信電波強度と、ノード間の距離との関係は予め実験によって測定される。
このほか、記憶部25は、ID54aにより識別される人物ごとに、案内用の映像データであるコンテンツ25aを併せて記憶する。なお、コンテンツ25aは、記憶部25に予め格納されていてもよいし、また、サービスを提供する段階で図示しないサーバ装置からダウンロードすることとしてもよい。
制御部26は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
この制御部26は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部26は、図3に示すように、検出部26aと、第1の特定部26bと、取得部26cと、第2の特定部26dと、サービス提供部26eとを有する。
ここで、図3に示す検出部26a、第1の特定部26b、取得部26cおよび第2の特定部26dのそれぞれは、図1に示した第2の検出部6、第1の特定部8、取得部9および第2の特定部10のそれぞれの一例である。さらに、先の図1に示した第2の検出部6は、図2に示すLRF21にも対応するが、人の移動速度および移動方向の軌跡を検出するためのハードウェアはLRF21に限定されない。他の一例としては、所定のインタフェースまたはネットワークを介して接続された外部装置から人の移動速度および移動方向の軌跡を検出するためのデータを取得することとしてもよい。
このうち、検出部26aは、LRF21から入力された反射光の受光データを解析することにより、人物Hの位置及び速度ベクトルの軌跡を検出する処理部である。
これを説明すると、検出部26aは、反射光の受光データから人物Hの足の有無を、人検出用パターン25aを用いたパターンマッチングにより判定する。このとき、人物Hの足を検出した場合には、探索範囲30内に人物Hが存在するものと判別する。このようにして人物Hを検知した場合には、検出部26aは、受光データをさらに解析することにより、人物Hの所在位置の座標及び速度ベクトル(Vx,Vy)の軌跡を検出する。なお、このようにして得られる人物Hの所在位置は、グローバルな絶対座標系のものである。また、このようにして得られる速度ベクトルの軌跡の始点から終点までの時間は、所定の時間、例えば、2秒である。また、検出部26aは、移動物特定装置20と人物との距離を検出することもできる。
図5は、実施例2の移動物特定システムにおいて、移動物特定装置により検出される人物を説明するための図である。図5の例では、移動物特定システム40における移動物特定装置20のLRF21の探索範囲30内には、人物A〜Eの5人が存在する。また、図5の例では、人物A〜Eの各々の速度ベクトルの軌跡は、それぞれV1〜V5である。
図5の例では、検出部26aは、人物A〜Eの各々の位置および速度ベクトルの軌跡を検出する。図6は、実施例2の移動物特定装置により検出された人物の位置および速度ベクトルの軌跡の一例である。図6の例では、検出部26aは、位置(x1,y1)に人物が存在することを検出し、この位置(x1,y1)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V1を検出したことを示す。また、図6の例では、検出部26aは、位置(x2,y2)に人物が存在することを検出し、この位置(x2,y2)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V2を検出したことを示す。また、図6の例では、検出部26aは、位置(x3,y3)に人物が存在することを検出し、この位置(x3,y3)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V3を検出したことを示す。また、図6の例では、検出部26aは、位置(x4,y4)に人物が存在することを検出し、この位置(x4,y4)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V4を検出したことを示す。また、図6の例では、検出部26aは、位置(x5,y5)に人物が存在することを検出し、この位置(x5,y5)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V5を検出したことを示す。
図7は、実施例2の携帯端末により送信されたIDおよび速度ベクトルの軌跡の一例である。図7の例では、携帯端末50により、ID:Aと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´1とを送信したことを示す。また、図7の例では、携帯端末50により、ID:Bと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´2とを送信したことを示す。また、図7の例では、携帯端末50により、ID:Cと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´3とを送信したことを示す。また、図7の例では、携帯端末50により、ID:Dと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´4とを送信したことを示す。また、図7の例では、携帯端末50により、ID:Eと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´5とを送信したことを示す。
第1の特定部26bは、検出部26aで検出された速度ベクトルの軌跡と、無線通信部22で受信された携帯端末50の速度ベクトルの軌跡とが同一または類似する人物を検出し、検出された各位置に対応する識別情報を特定する処理部である。
例えば、第1の特定部26bは、検出部26aで人物が検出された場合には、まず、ID応答指示を無線通信部22に入力する。これにより、無線通信部22からID応答指示がブロードキャストされる。すると、移動物特定装置20を中心とする所定の通信範囲内に存在する全ての携帯端末50から携帯端末50自身の識別情報であるID54aおよび携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡が応答される。そして、無線通信部22は、携帯端末50により応答されたID54aおよび速度ベクトルの軌跡を受信する。そして、第1の特定部26bは、無線通信部22から携帯端末50のID54aおよび速度ベクトルの軌跡を取得する。
続いて、第1の特定部26bは、検出部26aにより検出された複数の速度ベクトルの軌跡の各々と、受信した携帯端末50の速度ベクトルの軌跡の各々とを比較し、類似している度合いを示す相関値を演算する。ここで、図8および図9を参照して相関値の演算要領の一例を説明する。図8および図9は、相関値の演算要領を説明するための図である。なお、以下に説明する図8および図9の例では、相関値が小さくなるほど、類似している度合いが高いことを示す。
第1の特定部26bは、変数uの値を第1の所定値から第2の所定値、例えば、−8から7まで変化させた場合の以下の式(1)が示す相関値D(u)が所定の閾値より低くなるピークが存在するか否かを判別する。
ただし、R
x(t)は、時刻tにおける携帯端末50の速度ベクトルのX成分である。また、S
x(t)は、時刻tにおける検出部26aにより検出された速度ベクトルのX成分である。なお、変数uを−8から7まで変化させているのは、処理対象の2つの速度ベクトルの検出時刻にずれが生じていても、そのずれを許容して適切な相関値を演算するためである。したがって、かかる検出時刻のずれの大きさに応じて、変数uの変化の範囲を変更してもよい。
そして、所定の閾値より低くなるピークが存在する場合には、第1の特定部26bは、更に、次のような処理を行う。すなわち、第1の特定部26bは、変数u´の値を第3の所定値から第4の所定値、例えば、−8から7まで変化させた場合の以下の式(2)が示す相関値D´(u´)が所定の閾値より低くなるピークが存在するかを判別する。
ただし、R
y(t)は、時刻tにおける携帯端末50の速度ベクトルのY成分である。また、S
y(t)は、時刻tにおける検出部26aにより検出された速度ベクトルのY成分である。なお、変数u´を−8から7まで変化させているのは、変数uの変化の範囲について説明したのと同様に、処理対象の2つの速度ベクトルの検出時刻にずれが生じていても、そのずれを許容するためである。したがって、かかる検出時刻のずれの大きさに応じて、変数u´の変化の範囲を変更してもよい。
続いて、第1の特定部26bは、所定の閾値より低くなるピークが存在する場合には、検出部26aにより検出された速度ベクトルの軌跡と、受信した携帯端末50の速度ベクトルの軌跡とが同一または類似すると判別する。このような両速度ベクトルの軌跡が同一または類似しているか否かの判別を、第1の特定部26bは、検出部26aにより検出された複数の速度ベクトルの軌跡の各々と、受信した携帯端末50の速度ベクトルの軌跡の各々との全ての組合せについて行う。
ここで、具体例を挙げて、上記の判別について説明する。図10は、実施例2の移動物特定システムにおいて、移動状態が各々異なる複数の人物が存在する一例を示す図である。図11は、実施例2の移動物特定装置により検出された人物の位置および速度ベクトルの軌跡の一例である。図12は、実施例2の携帯端末により検出されたIDおよび速度ベクトルの軌跡の一例である。
図10の例では、移動物特定システム40における移動物特定装置20のLRF21の探索範囲30内には、人物F〜Jの5人が存在する。また、図10の例では、人物F〜Jの各々の速度ベクトルの軌跡は、それぞれV6〜V10である。
例えば、第1の特定部26bは、図10に示すように複数の人物F〜Jが探索範囲30内に存在する場合には、人物F〜Jの各々について、上記の速度ベクトルの軌跡が同一または類似していか否かの判別を行う。ここで、検出部26aにより検出された人物の位置および速度ベクトルの軌跡が、図11に示す位置および速度ベクトルの軌跡である場合を想定する。また、携帯端末50により検出されたID54aおよび速度ベクトルの軌跡が、図12に示すIDおよび速度ベクトルの軌跡である場合を想定する。
なお、図11の例では、検出部26aは、位置(x6,y6)に人物が存在することを検出し、この位置(x6,y6)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V6を検出したことを示す。また、図11の例では、検出部26aは、位置(x7,y7)に人物が存在することを検出し、この位置(x7,y7)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V7を検出したことを示す。また、図11の例では、検出部26aは、位置(x8,y8)に人物が存在することを検出し、この位置(x8,y8)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V8を検出したことを示す。また、図11の例では、検出部26aは、位置(x9,y9)に人物が存在することを検出し、この位置(x9,y9)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V9を検出したことを示す。また、図11の例では、検出部26aは、位置(x10,y10)に人物が存在することを検出し、この位置(x10,y10)に存在する人物の速度ベクトルV10の軌跡を検出したことを示す。
また、図12の例では、無線通信部22は、人物を識別するためのID:Fと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´6とを受信したことを示す。また、図12の例では、無線通信部22は、人物を識別するためのID:Gと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´7とを受信したことを示す。また、図12の例では、無線通信部22は、人物を識別するためのID:Hと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´8とを受信したことを示す。また、図12の例では、無線通信部22は、人物を識別するためのID:Iと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´9とを受信したことを示す。また、図12の例では、無線通信部22は、人物を識別するためのID:Jと、携帯端末50が検出した携帯端末50自身の速度ベクトルの軌跡V´10とを受信したことを示す。
このような場合には、第1の特定部26bは、速度ベクトルの軌跡V6〜V10のそれぞれと、速度ベクトルの軌跡V´6〜V´10のそれぞれとの全ての組合せについて、上記のように、相関値を演算する。そして、第1の特定部26bは、両速度ベクトルの軌跡が同一または類似しているか否かの判別を全ての組合せについて行う。なお、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、速度ベクトルの軌跡V6と速度ベクトルの軌跡V´6とが同一または類似していると判別される。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、速度ベクトルの軌跡V7と速度ベクトルの軌跡V´7とが同一または類似していると判別される。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、速度ベクトルの軌跡V8と速度ベクトルの軌跡V´8とが同一または類似していると判別される。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、速度ベクトルの軌跡V9と速度ベクトルの軌跡V´9とが同一または類似していると判別される。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、速度ベクトルの軌跡V10と速度ベクトルの軌跡V´10とが同一または類似していると判別される。
続いて、第1の特定部26bは、検出部26aにより検出された1つの速度ベクトルの軌跡に対して、無線通信部22で受信された1つの速度ベクトルの軌跡のみが類似または一致する場合には、この両速度ベクトルの軌跡が同一または類似する人物を特定する。例えば、第1の特定部26bは、速度ベクトルの軌跡が同一または類似であると判別された位置とID54aとを対応付ける。なお、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、位置(x6,y6)とID:Fとが対応付けられる。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、位置(x7,y7)とID:Gとが対応付けられる。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、位置(x8,y8)とID:Hとが対応付けられる。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、位置(x9,y9)とID:Iとが対応付けられる。また、図11および図12の例では、第1の特定部26bによって、位置(x10,y10)とID:Jとが対応付けられる。
このようにして、探索範囲30内に存在する複数の人物の各々の速度ベクトルの軌跡が異なる場合には、第1の特定部26bは、検出された位置に存在する全ての人物を特定することができる。
そして、第1の特定部26bは、対応付けた位置とID54aとを外部サーバ27に送信する指示を通信部23に送信する。これにより、外部サーバ27は、第1の特定部26bにより特定された位置に対応する識別情報を登録する。
なお、第1の特定部26bでは、移動状態が同一である人物が複数存在する場合には、各位置に存在する人物を一意に特定できない。そこで、探索範囲30内に存在する複数の人物の速度ベクトルの軌跡のうち、同一または類似の速度ベクトルの軌跡が複数存在する場合に、位置と識別情報とを一意に対応付けるために、取得部26cおよび第2の特定部26dは、下記に説明する処理を行う。
すなわち、取得部26cは、探索範囲30内に存在する複数の携帯端末50および移動物特定装置20を含む複数のノードのうち、所定のノードと他のノードとの距離を、識別情報に対応付けて取得する。
例えば、取得部26cは、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する複数の携帯端末50のうち、未選択の1つの携帯端末50をビーコン受信端末候補として選択する。なお、このビーコン受信端末候補として選択された携帯端末50は、他のノードである他の携帯端末50および特定装置20のそれぞれから送信された距離測定用のビーコンを受信する。また、この各ビーコンには、送信側のノードが保持するID54a、移動物特定装置20の識別情報が付される。
そして、取得部26cは、ビーコン受信端末候補の携帯端末50に、ビーコン受信端末候補である旨を送信する指示を無線通信部22に入力する。続いて、取得部26cは、ビーコン受信端末候補以外の携帯端末50をビーコン送信端末候補として選択する。その後、取得部26cは、ビーコン送信端末候補として選択した携帯端末50に対して、所定の電波強度で距離測定用のビーコンをビーコン受信端末候補に送信する指示を無線通信部22に入力する。
具体例を挙げて説明する。図13は、複数の携帯端末の速度ベクトルの軌跡が同一または類似する場合の一例を説明するための図である。図13に示す移動物特定システムの例では、探索範囲30内に存在する人物I〜Mのうち、人物I、J、Kが静止し続け、人物Lおよび人物Mは互いに速度および進行方向が異なる移動をする。また、人物I〜Mのそれぞれは、携帯端末50i〜50mのそれぞれを携帯する。図13の例では、人物Lおよび人物Mは、探索範囲30内に存在する他の人物と異なる動きをする。そのため、図13の例では、人物Lおよび人物Mについては、上記の第1の特定部26bで位置およびID54aが対応付けられる。
図13の例の場合において、検出部26aにより検出される位置、および速度ベクトルの軌跡について説明する。図14は、検出される位置、および速度ベクトルの軌跡の一例を示す図である。図14では、検出部26aは、位置(x11,y11)に人物が存在することを検出し、この位置(x11,y11)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V11を検出したことを示す。また、図14の例では、検出部26aは、位置(x12,y12)に人物が存在することを検出し、この位置(x12,y12)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V12を検出したことを示す。また、図14の例では、検出部26aは、位置(x13,y13)に人物が存在することを検出し、この位置(x13,y13)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V13を検出したことを示す。また、図14の例では、検出部26aは、位置(x14,y14)に人物が存在することを検出し、この位置(x14,y14)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V14を検出したことを示す。また、図14の例では、検出部26aは、位置(x15,y15)に人物が存在することを検出し、この位置(x15,y15)に存在する人物の速度ベクトルの軌跡V15を検出したことを示す。なお、上記の速度ベクトルの軌跡V11、V12、V13は零ベクトルである。
また、図13の例の場合において、携帯端末50から特定装置20に送信される識別情報、および速度ベクトルの軌跡について説明する。図15は、携帯端末から移動物特定装置に送信されるID、および速度ベクトルの軌跡の一例を示す図である。図15の例では、携帯端末50を携帯する移動物を識別するための識別情報であるID54aがIであり、ID:Iに対応する携帯端末50の速度ベクトルの軌跡がV´11であることを示す。また、図15の例では、ID54aがJであり、ID:Jに対応する携帯端末50の速度ベクトルの軌跡がV´12であることを示す。また、図15の例では、ID54aがKであり、ID:Kに対応する携帯端末50の速度ベクトルの軌跡がV´13であることを示す。また、図15の例では、ID54aがLであり、ID:Lに対応する携帯端末50の速度ベクトルの軌跡がV´14であることを示す。また、図15の例では、ID54aがMであり、ID:Mに対応する携帯端末50の速度ベクトルの軌跡がV´15であることを示す。
ここで、図13の例では、探索範囲30内の複数の人物I〜Mの速度ベクトルの軌跡のうち、人物I、J、Kの速度ベクトルの軌跡は、静止し続けているため零ベクトルのままである。すなわち、図13の例では、複数の人物I、J、Kの速度ベクトルの軌跡は同一となる。それゆえ、図13の例では、検出部26aで検出される複数の人物I、J、Kのそれぞれの速度ベクトルの軌跡V11〜V13と、人物I、J、Kのそれぞれが携帯する各携帯端末50i、50j、50kから送信される速度ベクトルの軌跡V´11〜V´13とが同一となる。すなわち、図13の例では、第1の特定部26bにより移動状態が同一の複数の人物I、J、Kが検出される。このため、図13の例では、取得部26cは、携帯端末50i、50j、50kのうち、いずれかをビーコン受信端末候補として選択する。また、図13の例では、取得部26cは、携帯端末50i、50j、50kのうち、ビーコン受信端末候補以外の携帯端末50をビーコン送信端末候補として選択する。
例えば、図13の例では、取得部26cは、携帯端末50iをビーコン受信端末候補として選択した場合には、携帯端末50j、50kをビーコン送信端末候補として選択する。このような場合には、取得部26cは、携帯端末50iにビーコン受信端末である旨を送信する指示を入力する。また、取得部26cは、携帯端末50j、50kに対して、所定の電波強度で距離測定用のビーコンを携帯端末50iに送信する指示を無線通信部22に入力する。
続いて、取得部26cは、所定の電波強度で距離測定用のビーコンをビーコン受信端末候補に送信する指示を無線通信部22に入力する。例えば、図13の例では、ビーコン受信端末候補として携帯端末50iが選択された場合には、取得部26cは、所定の電波強度で距離測定用のビーコンを携帯端末50iに送信する指示を無線通信部22に入力する。
そして、取得部26cは、ビーコン受信端末候補の携帯端末50が受信した各ビーコンの電波強度およびID54a、識別情報を無線通信部22を介して取得する。例えば、図13の例では、ビーコン受信端末候補として携帯端末50iが選択された場合には、取得部26cは、次のような処理を行う。すなわち、取得部26cは、携帯端末50jからの距離測定用ビーコンを携帯端末50iが受信したときの受信電波強度、および携帯端末50jのID54aを、無線通信部22を介して取得する。さらに、取得部26cは、携帯端末50kからの距離測定用ビーコンを携帯端末50iが受信したときの受信電波強度、および携帯端末50kのID54aを、無線通信部22を介して取得する。さらに、取得部26cは、移動物特定装置20からの距離測定用ビーコンを携帯端末50iが受信したときの受信電波強度、および移動物特定装置20の識別情報を、無線通信部22を介して取得する。
続いて、取得部26cは、取得した各電波強度に対応する各距離を、電波強度―距離変換用テーブル25bから取得する。例えば、図13の例では、ビーコン受信端末候補として携帯端末50iが選択された場合には、取得部26cは、携帯端末50jからの距離測定用ビーコンを携帯端末50iが受信したときの受信電波強度、およびID54aに基づいて、次のような処理を行う。すなわち、取得部26cは、かかる受信電波強度に対応する電波強度―距離変換用テーブル25bに登録された距離を、携帯端末50i〜携帯端末50j間の距離として取得する。さらに、取得部26cは、携帯端末50kからの距離測定用ビーコンを携帯端末50iが受信したときの受信電波強度、およびID54aに基づいて、次のような処理を行う。すなわち、取得部26cは、かかる受信電波強度に対応する電波強度―距離変換用テーブル25bに登録された距離を、携帯端末50i〜携帯端末50k間の距離として取得する。さらに、取得部26cは、移動物特定装置20からの距離測定用ビーコンを携帯端末50iが受信したときの受信電波強度、および識別情報に基づいて、次のような処理を行う。すなわち、取得部26cは、かかる受信電波強度に対応する電波強度―距離変換用テーブル25bに登録された距離を、携帯端末50i〜移動物特定装置20間の距離として取得する。
その後、取得部26cは、取得した各距離のうち、同一の距離が存在するか否かを判定する。この判定を行う理由は、同一の距離が存在する場合には、後述する第2の特定部26dで、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する移動物を一意に特定できないからであり、人物の特定が不能となることを回避するためである。
続いて、取得部26cは、同一の距離が存在する場合には、移動状態が同一または類似する複数の人物のそれぞれが携帯する携帯端末50の全ての端末を、ビーコン受信端末候補として選択したか否かを判定する。全ての端末をビーコン受信端末候補として選択していない場合には、取得部26cは、未選択の携帯端末50をビーコン受信端末候補として選択する。
上記で説明したような処理を、取得部26cは、全ての端末をビーコン受信端末候補として選択するか、または、取得した各距離の中に同一の距離が存在しなくなるまで繰り返し行う。そして、取得部26cは、取得した各距離の中に、同一の距離が存在しない場合のビーコン受信端末候補の携帯端末50をビーコン受信端末とする。これに加えて、取得部26cは、このときのビーコン送信端末候補の携帯端末50をビーコン送信端末とする。
図3の説明に戻る。第2の特定部26dは、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する、すなわち移動状態が同一または類似する複数の携帯端末50の各々を特定する。
例えば、第2の特定部26dは、まず、検出部26aにより検出された、速度ベクトルの軌跡が同一または類似の移動物の位置を特定する。例えば、図13の例では、検出部26aは、速度ベクトルの軌跡が同一または類似の移動物の位置として、位置(x11,y11)、位置(x12,y12)、位置(x13,y13)を特定する。
続いて、第2の特定部26dは、特定した位置に、無線通信部22により受信されたID54aに対応する携帯端末50を配置する組合せのうち、未選択の配置を1つ選択する。そして、第2の特定部26dは、選択した配置の組合せにおいて、ビーコン送信端末の携帯端末50のそれぞれについて、次のような処理を行う。すなわち、第2の特定部26dは、それぞれの携帯端末50の位置を中心として、取得部26cにより取得されたID54aごとの距離であって各携帯端末50に対応する距離のそれぞれを半径とする円を算出する。そして、第2の特定部26dは、算出された各円の交点と、ビーコン受信端末の携帯端末50との距離の和を算出する。
第2の特定部26dは、このような距離の和を算出する処理を、全ての配置の組合せについて行う。
そして、第2の特定部26dは、各配置の組合せごとに算出した距離の和のうち、最小となる距離の和の配置の組合せを算出する。続いて、第2の特定部26dは、算出した組合せが示す携帯端末50の配置から、各位置に対応するID54aを特定する。このように、組合せごとに算出した距離の和のうち、最小となる距離の和の組合せを算出することで、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する複数の携帯端末50の各々を特定することができる。
ここで、第2の特定部26dが行う処理について具体例を挙げて説明する。図16〜図20は、第2の特定部が行う処理の一例を説明するための図である。図16に示すように、第2の特定部26dにより位置P1、P2、P3が検出された場合を想定する。このとき、図17に示すように、第2の特定部26dは、位置P1、P2、P3のそれぞれに、受信されたID54aに対応する携帯端末50を配置する組合せのうち、未選択の組合せを1つ選択する。図17の例では、第2の特定部26dにより、位置P1に携帯端末50n、位置P2に携帯端末50o、位置P3に携帯端末50pが配置された組合せが示されている。
ここで、携帯端末50nをビーコン受信端末とし、携帯端末50o、50pをビーコン送信端末とする場合を想定する。この場合、図18に示すように、第2の特定部26dは、携帯端末50oの位置P2を中心として、取得部26cで取得された携帯端末50n〜携帯端末50o間の距離Doを半径とする円Roを算出する。また、第2の特定部26dは、携帯端末50pの位置P3を中心として、取得部26cで取得された携帯端末50n〜携帯端末50p間の距離Dpを半径とする円Rpを算出する。また、第2の特定部26dは、移動物特定装置20の予め既知である位置P0を中心として、取得部26cで取得された携帯端末50n〜移動物特定装置20間の距離Dtを半径とする円Rtを算出する。
そして、第2の特定部26dは、図19に示すように、円Roと円Rpとの交点PR1と、ビーコン受信端末の携帯端末50nの位置P1との距離DR1を算出する。また、第2の特定部26dは、円Roと円Rtとの交点PR2と、位置P1との距離DR2を算出する。また、第2の特定部26dは、円Rpと円Rtとの交点PR3と、位置P1との距離DR3を算出する。
そして、第2の特定部26dは、距離DR1と、距離DR2と、距離DR3との和を算出する。
このようにして、和を算出する処理を、第2の特定部26dは、全ての配置の組合せについて行う。そして、第2の特定部26dは、全ての配置の組合せについて算出した複数の和のうち、最小となる距離の和の配置の組合せを算出する。例えば、図19に示す配置の組合せが、実際の携帯端末50の配置を示すものであるときは、この組合せにおいて算出された和は、図20に示す、配置の組合せが、実際の携帯端末50の配置と携帯端末50pと50oとの位置が異なる場合に算出された和(Dw1+Dw2+Dw3)と比較すると値は小さくなる。
このように、第2の特定部26dは、和が最小となる場合の配置の組合せを算出し、算出した配置の組合せから、各位置に対応するID54aを特定している。したがって、検出部26aにより検出された人物の位置や、通信部23で受信された位置に誤差が生じた場合であっても、和が最小となる場合の組合せに基づいて各位置の識別情報を特定するため、適切に各位置の識別情報を特定することができる。
図3の説明に戻り、サービス提供部26eは、位置が特定されたID54aが示す人物に対して、この人物に対応するサービスを提供する処理部である。例えば、サービス提供部26eは、第1の特定部26bおよび第2の特定部26cにより位置が特定されたID54aが示す人物に対応するコンテンツを、コンテンツ25cから取得する。そして、サービス提供部26eは、取得したコンテンツを、かかる人物が携帯する携帯端末50に送信する指示を無線通信部22に入力する。これにより、無線通信部22は、コンテンツを対応する携帯端末50に送信する。また、サービス提供部26eは、取得したコンテンツを出力部24に出力する。これにより、出力部24は、コンテンツを出力する。このように、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する人物が複数存在する場合であっても、各人物を特定して、各人物に適したコンテンツを送信することができる。そのため、コンテンツとして、例えば、各人物に適した広告を提供する場合には、適切な広告を各人に提供できるので、無駄な広告が省かれる。また、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する人物が複数存在する場合であっても、各人物を特定して、各人物に適した広告を提供できるため、時間を効率的に使って広告を提供することができる。それゆえ、広告に要する時間や金額などのコストを抑えることが可能となる。
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る移動物特定装置20の処理の流れを説明する。図21〜図23は、実施例2に係る移動物特定処理の手順を示すフローチャートである。この移動物特定処理は、移動物特定装置20の電源がON状態である限り、所定時間間隔、例えば5秒間隔で実行される。しかしながら、必ずしも実行し続ける必要はなく、充電期間中は処理を中断したり、図示しないサーバ装置からのサービス停止通知を受けて処理を停止することもできる。
図21に示すように、検出部26aは、LRF21からの受光データを解析して物体の形状、速度ベクトルの軌跡、および位置を検出する(ステップS101)。
そして、検出部26aは、受光データに対して人検出用パターン25aを用いたパターンマッチングを行う(ステップS102)。続いて、検出部26aは、パターンマッチングにより人物が検出されたか否かを判定する(ステップS103)。
人物が検出されない場合(ステップS103否定)には、ステップS101へ戻る。一方、人物が検出された場合(ステップS103肯定)には、第1の特定部26bは、ID応答指示をブロードキャストするために、ID応答指示を無線通信部22に入力する(ステップS104)。
続いて、第1の特定部26bは、無線通信部22から携帯端末50のID54aおよび速度ベクトルの軌跡を取得したか否かを判定する(ステップS105)。携帯端末50のID54aおよび速度ベクトルの軌跡を取得した場合(ステップS105肯定)には、第1の特定部26bは、次のような処理を行う。すなわち、第1の特定部26bは、検出部26aにより検出した速度ベクトルの軌跡の各々と、取得した速度ベクトルの各々とを比較し、全ての移動ベクトルの軌跡の組合せについて相関値を演算する(ステップS106)。
そして、第1の特定部26bは、相関値の演算結果から、検出部26aで検出された一つの速度ベクトルの軌跡に対して、携帯端末50から送信された速度ベクトルの軌跡が複数類似したか否かを判定する(ステップS107)。
検出部26aで検出された一つの速度ベクトルの軌跡に対して、携帯端末50から送信された速度ベクトルの軌跡が複数類似していない場合(ステップS107否定)には、第1の特定部26bは、次のような処理を行う。すなわち、第1の特定部26bは、X成分およびY成分のそれぞれについて演算された相関値が閾値以下となる場合の対応する位置とID54aとを全て特定する(ステップS108)。
続いて、第1の特定部26bは、特定した位置とID54aとを対応付けて記憶部25に記憶し、対応付けた位置とID54aとを外部サーバ27に送信する指示を通信部23に送信し(ステップS109)、処理を終了する。
一方、検出部26aで検出された一つの速度ベクトルの軌跡に対して、携帯端末50から送信された速度ベクトルの軌跡が複数類似した場合(ステップS107肯定)には、第1の特定部26bは、次のような処理を行う。すなわち、第1の特定部26bは、検出部26aにより検出された1つの速度ベクトルの軌跡に対して、無線通信部22で受信された1つの速度ベクトルの軌跡のみが類似または一致する場合の速度ベクトルの軌跡について、対応する位置とID54aとを特定する。そして、第1の特定部26bは、特定した位置とID54aとを対応付けて記憶部25に記憶し、対応付けた位置とID54aとを外部サーバ27に送信する指示を通信部23に送信する(ステップS110)。
続いて、取得部26cは、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する複数の携帯端末50のうち、未選択の1つの携帯端末50をビーコン受信端末候補として選択する(ステップS111)。
その後、取得部26cは、ビーコン受信端末候補の携帯端末50に、ビーコン受信端末候補である旨を送信する指示を無線通信部22に入力する(ステップS112)。そして、取得部26cは、ビーコン受信端末候補以外の携帯端末50をビーコン送信端末候補として選択する(ステップS113)。
その後、取得部26cは、ビーコン送信端末候補として選択した携帯端末50に対して、所定の電波強度で距離測定用のビーコンをビーコン受信端末候補に送信する指示を無線通信部22に入力する(ステップS114)。
そして、取得部26cは、ビーコン送信端末候補として選択した携帯端末50に対して、所定の電波強度で距離測定用のビーコンをビーコン受信端末候補に送信する指示を無線通信部22に入力する(ステップS115)。
続いて、取得部26cは、ビーコン受信端末候補の携帯端末50が受信した各ビーコンの受信電波強度およびID54a、識別情報を無線通信部22を介して取得すると(ステップS116肯定)、次のような処理を行う。すなわち、取得部26cは、取得した各電波強度に対応する各距離を、電波強度―距離変換用テーブル25bから取得する。そして、取得部26cは、取得した各距離のうち、各位置に存在する人物の特定が不能となるような同一の距離が存在するか否かを判定する(ステップS117)。
取得した各距離のうち、各位置に存在する人物の特定が不能となるような同一の距離が存在する場合(ステップS117肯定)には、取得部26cは、次のような処理を行う。すなわち、取得部26cは、速度ベクトルの軌跡が同一または類似する複数の携帯端末50の全ての携帯端末50について、ステップS111で、ビーコン受信端末候補として選択したか否かを判定する(ステップS118)。全ての携帯端末50について、ビーコン受信端末候補として選択した場合(ステップS118肯定)には、処理を終了する。一方、全ての携帯端末50について、ビーコン受信端末候補として選択していない場合(ステップS118否定)には、ステップS111に戻る。
また、取得した各距離のうち、各位置に存在する人物の特定が不能となるような同一の距離が存在しない場合(ステップS117否定)には、第2の特定部26dは、次のような処理を行う。すなわち、第2の特定部26dは、速度ベクトルの軌跡が同一または類似の移動物の各位置に、速度ベクトルの軌跡が同一または類似の携帯端末50を配置する全ての組合せについて、円を算出する。この円は、各ビーコン送信端末の位置を中心として、取得部26cにより取得されたID54aごとの距離であって各携帯端末50に対応する距離のそれぞれを半径とする円である。そして、第2の特定部26dは、各組合せごとに、各円の交点と、ビーコン受信端末の携帯端末50との距離の和を算出する(ステップS119)。
続いて、第2の特定部26dは、各円の交点と、ビーコン受信端末の携帯端末50との距離の和が最小となる場合の配置の組合せを算出し、算出した配置の組合せから各位置に対応するID54aを特定する(ステップS120)。その後、第2の特定部26dは、特定した位置とID54aとを対応付けて記憶部25に記憶し、対応付けた位置とID54aとを外部サーバ27に送信する指示を通信部23に送信する(ステップ121)。そして、サービス提供部26eは、各位置に対応するID54aが示す人物に対応するコンテンツをコンテンツ25cから取得し、取得したコンテンツを、かかる人物が携帯する携帯端末50に送信する指示を無線通信部22に入力する。また、サービス提供部26eは、取得したコンテンツを出力部24に出力する(ステップS122)。そして、処理を終了する。
[実施例2の効果]
上述してきたように、本実施例に係る移動物特定装置20は、複数の携帯端末50を配置する組合せのうち、ID54aおよび移動物特定装置20の識別情報ごとの距離と合致する組合せを算出し、各位置の人物のID54aを特定する。このように、本実施例に係る移動物特定装置20は、携帯端末50を配置する組合せのうち、実際の携帯端末50の位置と一致する、取得された対応する距離に合致する組合せの配置を算出し、各位置に対応するID54aを特定する。したがって、移動物特定装置20によれば、実際の携帯端末50の配置が特定され、この配置が示す各位置に対応するID54aが特定されるので、速度ベクトルの軌跡が同一または類似である人物が複数存在しても人物の各々を特定することができる。同様に、本実施例に係る移動物特定システムによれば、速度ベクトルの軌跡が同一または類似である人物が複数存在しても、複数の人物の各々を特定することができる。
また、本実施例に係る移動物特定装置20は、複数のノードのうちの複数の携帯端末50について、検出された各位置に、これらの複数の携帯端末50を配置する組合せのそれぞれについて、次のような処理を行う。すなわち、本実施例に係る移動物特定装置20は、他の複数のノードのそれぞれの位置を中心として、それぞれ取得された対応する各距離を半径とする各円の各交点の各位置を算出する。そして、本実施例に係る移動物特定装置20は、全ての組合せの配置のそれぞれについて、算出した各交点と、所定のノードであるビーコン受信端末の携帯端末50の位置との距離の和を算出する。そして、本実施例に係る移動物特定装置20は、算出した距離の和が最小となる配置の組合せを算出する。そして、本実施例に係る移動物特定装置20は、算出した配置が示す携帯端末50の各位置に対応するID54aを特定する。このように、本実施例に係る移動物特定装置20によれば、各交点と、所定のノードの位置との距離の和が最小となる配置の組合せを算出することで、検出された移動物の各位置、取得した距離に誤差が発生した場合であっても、ID54aを特定することができる。同様に、本実施例に係る移動物特定システムによれば、検出された移動物の各位置、取得した距離に誤差が発生した場合であっても、ID54aを特定することができる。
また、本実施例に係る移動物特定装置20は、複数のノードのうち、自ノードと他の複数のノードとの距離の各々が全て異なるようなノードを選択し、選択したノードと他の複数のノードとの距離を、複数のノードの識別情報に対応付けて取得している。これにより、検出された各位置に対応するID54aを一意に特定することが可能となる。
また、本実施例に係る移動物特定装置20では、まずは、携帯端末50により検出された携帯端末50自身の移動状態と、移動物特定装置20自身により検出された携帯端末50を携帯する移動物の移動状態とに基づいて、他の全ての移動物と移動状態が異なる移動物を特定する。その後、本実施例に係る移動物特定装置20では、移動状態が同一または類似する複数の移動物を、取得したID54aごとの距離を用いて特定する。つまり、本実施例に係る移動物特定装置20では、最初から、ID54aごとの距離を取得せずに、まずは、移動状態のみで移動物を特定している。そして、本実施例に係る移動物特定装置20では、移動状態のみで特定できなかった移動物に対して、ID54aごとの距離を取得する処理を行って、移動物を特定する。このように、本実施例に係る移動物特定装置20は、最初から全ての移動物に対してID54aごとの距離を取得する処理を行う場合に比べて、距離を取得する処理の処理量が少なくなり、より迅速に移動物を特定することができる。特に、移動物の数が多数である場合には、全ての移動物に対してID54aごとの距離を取得する処理の処理量は多大となる。これに加え、移動物の数が多数であるため、上記の所定のノードとの距離が同一となる他のノードが複数存在する可能性が高くなる。このような場合には、移動物を特定することができないため、所定のノードとなる携帯端末50または特定装置20を変更し、再びID54aごとの距離を取得する処理を行う必要があり、処理量が更に増える。一方、本実施例に係る移動物特定装置20では、全ての移動物ではなく、移動状態のみで特定できなかった移動物に対してのみID54aごとの距離を取得する処理を行うので、移動物が多数であったとしても、より少ない処理量で迅速に移動物を特定できる。同様に、本実施例に係る移動物特定システムによれば、より迅速に移動物を特定することができる。
なお、本実施例では、ビーコン受信端末を携帯端末50とする場合について例示したが、開示の移動物特定システムはこれに限られない。例えば、開示の移動物特定システムは、ビーコン受信端末を移動物特定装置20とし、ビーコン送信端末を速度ベクトルの軌跡が同一または類似の携帯端末50とし、上記の処理と同様の処理を行って、移動状態が同一または類似の人物を特定することができる。
[実施例2の応用例]
さて、上記の実施例2では、各円の交点と、ビーコン受信端末との距離の和が最小となる配置の組合せを算出し、各位置の識別情報を特定する場合を例示したが、開示の移動物特定装置はこれに限定されない。例えば、各携帯端末は、携帯端末50を携帯する移動物の特徴を示すプロフィールデータを移動物特定装置に送信する構成とする。そして、移動物特定装置は、距離の和が最小となる配置の組合せを算出する。そして、移動物特定装置は、各位置の識別情報を仮に特定する。そして、移動物特定装置は、携帯端末から送信されたプロフィールデータと、検出部で検出した形状が示す特徴とが合致する場合に、各位置の識別情報を最終的に特定することもできる。また、開示の移動物特定装置は、携帯端末から送信されたプロフィールデータと、検出部で検出した形状が示す特徴とが合致しない場合に、仮に特定された各位置の識別情報を解消することもできる。
このように、さらに、携帯端末から送信されたプロフィールデータと、検出部で検出した形状が示す特徴とに基づいて、各位置の識別情報を特定することで、より特定の精度が高くなる。そこで、特定の精度をより高くするために、実施例2の応用例では、携帯端末から送信されたプロフィールデータと、検出部で検出した形状が示す特徴とに基づいて、各位置の識別情報を特定する。
[装置構成]
図24は、実施例2の応用例に係る携帯端末の構成を示すブロック図である。図24に示すように、携帯端末70は、記憶部54を有する。かかる記憶部54は、図2に示す実施例2に係る記憶部54に比較して、さらに、プロフィールデータ54bを記憶する点が異なる。また、図25は、実施例2の応用例に係る移動物特定装置の構成を示すブロック図である。図25に示すように、移動物特定装置71は、記憶部25を有する。かかる記憶部25は、図3に示す実施例2に係る記憶部25に比較して、さらに、プロフィールデータ54bごとに、プロフィールデータ54bが示す特徴を含むパターンマッチング用の人特定用パターン25dを記憶する点が異なる。なお、以下では、上記の実施例2と同様の機能を果たす回路や機器については図2および図3と同様の符号を付し、その説明は省略する。
プロフィールデータ54bは、携帯端末50を携帯する移動物の特徴を示すものである。例えば、プロフィールデータ54bは、人物の身長、性別、および年齢などの人物の特徴を示すデータを含む。
実施例2の応用例に係る第2の特定部26dは、算出された各円の交点と、ビーコン受信端末の携帯端末50との距離の和が最小となる場合の組合せを算出し、算出した組合せの携帯端末70が示す各位置と、対応するID54aとを仮に対応付ける。そして、第2の特定部26dは、各携帯端末70にプロフィールデータを送信する指示を無線通信部22に出力する。これにより、無線通信部22は各携帯端末70に、プロフィールデータを送信する指示を送信する。すると、かかる指示を受信した各携帯端末70は、プロフィールデータ54bを移動物特定装置71に送信する。
そして、第2の特定部26dは、受信したプロフィールデータ54bごとに、対応する人特定用パターン25dを取得する。続いて、第2の特定部26dは、取得した全ての人特定用パターン25dのそれぞれを用いて、先の検出部26aで検出された対応する移動物の特徴に対してパターンマッチングを行う。そして、第2の特定部26dは、パターンマッチングの結果一致しないとされた、位置とID54bとの対応付けを解消する。
続いて、第2の特定部26dは、パターンマッチングの結果一致するとされた、位置とID54bとの仮の対応付けを、当該位置に対応するID54bとして特定する。
[処理の流れ]
次に、実施例2の応用例に係る移動物特定装置の処理の流れを説明する。図26は、実施例2の応用例に係る移動物特定処理の手順を示すフローチャートの一部である。この処理は、図21〜23に示した移動物特定処理と同様、所定の周期で起動される。
[移動物特定処理]
図26に示すように、ステップS119の処理の後、第2の特定部26dは、和が最小となる場合の組合せを算出し、算出した組合せの携帯端末70が示す各位置と、対応するID54aとを仮に対応付ける(ステップS201)。そして、第2の特定部26dは、各携帯端末70にプロフィールデータ54bを送信する指示を無線通信部22に出力する(ステップS202)。
プロフィールデータ54bを受信すると(ステップS203肯定)、第2の特定部26dは、受信したプロフィールデータ54bごとに、対応する人特定用パターン25dを取得する(ステップS204)。続いて、第2の特定部26dは、取得した全ての人特定用パターン25dのそれぞれを用いて、先の検出部26aで検出された対応する移動物の特徴に対してパターンマッチングを行う(ステップS205)。そして、第2の特定部26dは、パターンマッチングの結果一致しないとされた、位置とID54bとの対応付けを解消する(ステップS206)。
続いて、第2の特定部26dは、パターンマッチングの結果一致するとされた、位置とID54bとの仮の対応付けを、当該位置に対応するID54bとして特定し(ステップS207)、ステップS121へ進む。
[実施例2の応用例の効果]
このように、本応用例に係る移動物特定装置71は、距離の和が最小となる配置の組合せを算出する。そして、本応用例に係る移動物特定装置71は、各位置の識別情報を仮に特定する。そして、本応用例に係る移動物特定装置71は、携帯端末70から送信されたプロフィールデータ54bと、検出部26aで検出した形状が示す特徴とが合致する場合に、各位置の識別情報を最終的に特定する。また、本応用例に係る移動物特定装置71は、携帯端末70から送信されたプロフィールデータ54bと、検出部26aで検出した形状が示す特徴とが合致しない場合に、仮に特定された各位置の識別情報を解消する。
このように、本応用例に係る移動物特定装置71によれば、さらに、携帯端末70から送信されたプロフィールデータ54bと、検出部26aで検出した形状が示す特徴とに基づいて、各位置の識別情報を特定するので、より特定の精度が高くなる。
なお、上記の実施例2および実施例2の応用例では、移動物の速度にかかわらず、特定した移動物に対してサービスを提供した。しかしながら、上記の実施例2および実施例2の応用例に係る開示の移動物特定装置は、これに限られない。例えば、開示の移動物特定装置は、移動物の速度を検出し、検出した速度が所定速度以上の移動物に対しては、サービスを受ける意思が無いと判断して、サービスの提供を行わないようにすることができる。
図27は、所定速度以上の移動物に対してサービスを行わない場合の一例を示す図である。図27の例では、移動物A、Bは所定速度より小さい速度で移動しているが、移動物Cは所定速度以上で移動しているとする。この場合、移動物特定装置は、移動物A、Bにはサービスを提供するが、移動物Cに対してはサービスの提供を行わない。これにより、サービスを受ける意思がない移動物に対して不必要なサービスを行うことを防止することができる。
さて、上記の実施例2および実施例2の応用例では、特定した移動物に対して適切なサービスを提供する場合を例示したが、開示の移動物特定装置はこれに限定されない。そこで、実施例3では、特定した移動物が機器などの観測対象物体を移動させた場合には、かかる特定した移動物によって観測対象物体が移動されたことを示すログを保存する場合について説明する。このようなログは、観測対象物体を移動させた移動物を特定する際に有効な情報となる。
[移動物特定装置の構成]
図28は、実施例3に係る移動物特定装置の構成を示すブロック図である。図28に示すように、移動物特定装置80は、記憶部25および制御部26を有する。かかる記憶部25は、図3に示す実施例2に係る記憶部25に比較して、ログ25eを記憶する点が異なる。また、かかる制御部26は、図3に示す実施例2に係る制御部26に比較して、登録部26fを有する点が異なる。なお、以下では、上記の実施例2と同様の機能を果たす回路や機器については図3と同様の符号を付し、その説明は省略する。
ログ25eは、特定した人物が機器などの観測対象物体を移動させたことを示すデータである。例えば、ログ25eは、観測対象物体を移動させた人物を識別するための識別情報、移動させた時刻、移動前後の観測対象物体の各位置を含む。
実施例3に係る検出部26aは、探索範囲30内の物体が所定の観測対象物体の機器であるかを、反射光の受光データに対して、観測対象物体検出用パターンを用いたパターンマッチングにより判定する。また、検出部26aは、受光データをさらに解析することにより、物体の所在位置の座標及び速度ベクトルの軌跡を検出する。なお、このようにして得られる物体の所在位置は、グローバルな絶対座標系のものである。また、このようにして得られる速度ベクトルの軌跡の始点から終点までの時間は、所定の時間、例えば、2秒である。
登録部26fは、検出部26aで所定の観測対象物体が検出されると、観測対象物体の位置と、特定した人物との位置から、観測対象物体と特定した人物との距離を算出する。そして、登録部26fは、算出した距離が所定値内で、かつ観測対象物と人物との移動方向が同一であれば、人物により観測対象物が移動されたと判定する。続いて、登録部26fは、観測対象物体と人物との距離が、所定値より大きくなった場合には、観測対象物から人物が離れたと判断する。そして、登録部26fは、観測対象物体を移動させた人物を識別するための識別情報、移動させた時刻、移動前後の観測対象物体の各位置を含むログを記憶部25に登録する。その後、登録部26fは、ログを登録する指示を外部サーバ27に送信するように、通信部23を制御する。これにより、ログが外部サーバ27に登録される。このようなログは、観測対象物体を移動させた移動物を特定する際に有効な情報となる。
図29は、観測対象物体が移動物によって移動される場合の一例を示す図である。図29の例では、移動物Aと機器90との距離は所定範囲内であり、かつ移動方向が同一である。このとき、移動物特定装置80は、移動物Aにより移動されたと判定する。この後、機器90から移動物Aが離れ、所定範囲を超えた場合には、移動物特定装置80は、移動物Aを識別するための識別情報、移動させた時刻、移動前後の機器90の各位置を含むログを記憶部25および外部サーバ27に登録する。
[処理の流れ]
次に、実施例3に係る移動物特定装置の処理の流れを説明する。図30は、実施例3に係るログ生成処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、図21〜23に示した移動物特定処理と同様、所定の周期で起動される。
[ログ生成処理]
図30に示すように、検出部26a、第1の特定部26b、取得部26cおよび第2の特定部26dは、移動物特定処理を実行する(ステップS301)。かかる移動物特定処理は、図21〜23に示すステップS101〜ステップS121の処理である。
続いて、検出部26aは、探索範囲30内の物体の形状、所在位置の座標及び速度ベクトルの軌跡を検出する(ステップS302)。そして、検出部26aは、探索範囲30内の物体が所定の観測対象物体の機器であるかを、反射光の受光データに対して、観測対象物体検出用パターンを用いたパターンマッチングを行う(ステップS303)。
検出部26aで所定の観測対象物体が検出されると(ステップS304肯定)、登録部26fは、次のような処理を行う。すなわち、登録部26fは、観測対象物体と特定した人物との距離を算出し、算出した距離が所定値内で(ステップS305肯定)、かつ観測対象物と人物との移動方向が同一であれば(ステップS306肯定)、人物により観測対象物が移動されたと判定する。
そして、観測対象物体と人物との距離が、所定値より大きくなり、観測対象物から人物が離れた場合(ステップS307肯定)には、登録部26fは、次のような処理を行う。すなわち、登録部26fは、観測対象物体を移動させた人物を識別するための識別情報、移動させた時刻、移動前後の観測対象物体の各位置を含むログを記憶部25に登録する(ステップS308)。その後、登録部26fは、ログを登録する指示を外部サーバ27に送信するように、通信部23を制御し(ステップS308)、処理を終了する。
[実施例3の効果]
このように、本実施例に係る移動物特定装置80は、観測対象物体を移動させた人物を識別するための識別情報、移動させた時刻、移動前後の観測対象物体の各位置を含むログを記憶部25に登録する。したがって、本実施例に係る移動物特定装置80によれば、観測対象物体を移動させた移動物を特定する際に有効な情報をログとして登録することができる。
さて、これまで開示の装置およびシステムに関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
[距離測定]
上記の実施例2、3及び実施例2の応用例では、距離測定用のビーコンの受信電波強度から2つのノード間の距離を測定する場合について例示したが、開示の装置およびシステムはこれに限定されない。例えば、開示の装置は、赤外線距離計を用いて2つのノード間の距離を測定してもよい。
[移動物]
また、上記の実施例2〜3及び実施例2の応用例では、移動物を人物とする場合を例示したが、開示の装置およびシステムはこれに限られない。例えば、開示の装置は、移動物として携帯端末を携帯できる物体であれば、どのような物体でも用いることができる。
また、各実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともできる。また、本実施例において説明した各処理のうち、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。例えば、図21のステップS103において、本システムのユーザが目視で周辺に人物が存在するか否かを確認し、人物が存在するか否かをキーボードやマウス、タッチパネルなどの操作受付手段をユーザが操作することにより装置に伝えてもよい。
また、各種の負荷や使用状況などに応じて、各実施例において説明した各処理の各ステップでの処理を任意に細かくわけたり、あるいはまとめたりすることができる。また、ステップを省略することもできる。例えば、特定した人物に提供する適切なコンテンツが存在しない場合などには、図23に示すステップS122の処理を省略することもできる。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的状態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図1に示す第1の特定部8と第2の特定部10とが統合されてもよい。また、取得部9と第2の特定部10とが統合されてもよい。
[移動物特定プログラム]
また、上記の各実施例で説明した移動物特定装置の各種の処理は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータシステムで実行することによって実現することもできる。そこで、以下では、図31を用いて、上記の実施例で説明した移動物特定装置と同様の機能を有する移動物特定プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図31は、移動物特定プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
図31に示すように、実施例4におけるコンピュータ300は、CPU(Central Processing Unit)310、ROM(Read Only Memory)320、HDD(Hard Disk Drive)330、RAM(Random Access Memory)340とを有する。これら300〜340の各部は、バス400を介して接続される。
ROM320には、上記の実施例1で示す第2の検出部6と、受信部7と、第1の特定部8と、取得部9と、第2の特定部10と同様の機能を発揮する移動物特定プログラムが予め記憶される。すなわち、ROM320には、図31に示すように、移動物特定プログラム320aが記憶される。なお、移動物特定プログラム320aについては、適宜分離しても良い。
そして、CPU310が、移動物特定プログラム320aをROM320から読み出して実行する。
そして、HDD330には、人検出用パターン330aと、電波強度―距離変換用テーブル330bと、コンテンツ330cとが設けられる。これら人検出用パターン330a、電波強度―距離変換用テーブル330bおよびコンテンツ330cのそれぞれは、図3に示した人検出用パターン25a、電波強度―距離変換用テーブル25bおよびコンテンツ25cのそれぞれに対応する。
そして、CPU310は、人検出用パターン330aと、電波強度―距離変換用テーブル330bと、コンテンツ330cとを読み出してRAM340に格納する。さらに、CPU310は、RAM340に格納された人検出用パターンデータ340aと、電波強度―距離変換用テーブルデータ340bと、コンテンツデータ340cとを用いて、移動物特定プログラムを実行する。なお、RAM340に格納される各データは、常に全てのデータがRAM340に格納される必要はなく、処理に必要なデータのみがRAM340に格納されれば良い。
なお、上記した移動物特定プログラムについては、必ずしも最初からHDD330に記憶させておく必要はない。
例えば、コンピュータ300に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」にプログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ300がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
さらには、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ300に接続される「他のコンピュータ(またはサーバ)」などにプログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ300がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
以上説明した実施形態及びその変形例に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)複数の移動物の各々により携帯される複数の携帯端末と、特定装置とを有する移動物特定システムであって、
前記複数の携帯端末の各々は、
携帯端末自身の移動状態を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部により検出された前記移動状態および前記携帯端末を携帯する移動物を識別するための識別情報を送信する送信部とを有し、
前記特定装置は、
前記複数の移動物の各々の移動状態および位置を検出する第2の検出部と、
前記送信部から送信された移動状態および識別情報を受信する受信部と、
前記第2の検出部により検出された移動状態と前記受信部で受信した移動状態とが同一または類似する移動物を検出し、前記第2の検出部により位置が検出された移動物の識別情報を特定する第1の特定部と、
前記第1の特定部により移動状態が同一または類似する複数の移動物が検出された場合に、当該複数の移動物により携帯される複数の携帯端末および前記特定装置を含む複数のノードのうち、所定のノードと他の複数のノードとの距離を当該複数のノードの識別情報に対応付けて取得する取得部と、
前記複数のノードのうちの前記複数の携帯端末について前記第2の検出部により検出された各位置に前記複数の携帯端末を配置する組合せのうち、前記取得部により取得された前記識別情報ごとの距離と合致する組合せを算出し、前記各位置の移動物の識別情報を特定する第2の特定部とを有する
ことを特徴とする移動物特定システム。
(付記2)前記第2の特定部は、前記複数のノードのうちの前記複数の携帯端末について前記第2の検出部により検出された各位置に前記複数の携帯端末を配置する組合せのうち、前記他の複数のノードのそれぞれの位置を中心として、前記取得部により取得された前記識別情報ごとの対応する距離のそれぞれを半径とする各円の交点と、前記所定のノードの位置との距離の和が最小となる場合の組合せを算出し、算出した組合せの携帯端末の配置が示す携帯端末の各位置に対応する識別情報を特定する付記1に記載の移動物特定システム。
(付記3)前記取得部は、前記複数のノードのうち、自ノードと他の複数のノードとの距離の各々が全て異なるようなノードを選択し、該選択したノードと他の複数のノードとの距離を当該複数のノードの識別情報に対応付けて取得する付記1または2に記載の移動物特定システム。
(付記4)前記送信部は、更に、携帯される移動物を特定するためのプロフィールデータを送信し、
前記第2の検出部は、更に、前記移動物の特徴を検出し、
前記第2の特定部は、更に、前記送信部により送信されたプロフィールデータ、および前記第2の検出部により検出された特徴に基づいて、前記複数のノードのうちの前記複数の携帯端末について前記第2の検出部により検出された各位置の移動物の識別情報を特定する付記1〜3の何れか1つに記載の移動物特定システム。
(付記5)前記第2の検出部は、更に、観測対象物体の移動状態および位置を検出し、
前記特定装置は、
前記第1の特定部および第2の特定部により特定された移動物の移動状態および位置、並びに前記第2の検出部により検出された観測対象物体の移動状態および位置に基づいて、前記移動物により前記観測対象物体が移動されたと判定された場合には、前記移動物によって前記観測対象物体が移動されたことを示す情報を記憶部に登録する登録部
を更に有することを特徴とする付記1〜4の何れか1つに記載の移動物特定システム。
(付記6)複数の移動物の各々の移動状態および位置を検出する検出部と、
前記複数の移動物の各々により携帯される複数の携帯端末の各々から送信された各携帯端末の移動状態および各携帯端末を識別するための識別情報を受信する受信部と、
前記検出部により検出された移動状態と前記受信部で受信した移動状態とが同一または類似する移動物を検出し、前記検出部により位置が検出された移動物の識別情報を特定する第1の特定部と、
前記第1の特定部により移動状態が同一または類似する複数の移動物が検出された場合に、当該複数の移動物により携帯される複数の携帯端末および前記移動物特定装置を含む複数のノードのうち、所定のノードと他の複数のノードとの距離を当該複数のノードの識別情報に対応付けて取得する取得部と、
前記複数のノードのうちの前記複数の携帯端末について前記検出部により検出された各位置に前記複数の携帯端末を配置する組合せのうち、前記取得部により取得された前記識別情報ごとの距離と合致する組合せを算出し、前記各位置の移動物の識別情報を特定する第2の特定部と
を有することを特徴とする移動物特定装置。
(付記7)コンピュータに、
複数の移動物の各々の移動状態および位置を検出し、
前記複数の移動物の各々により携帯される複数の携帯端末の各々から送信された各携帯端末の移動状態および各携帯端末を識別するための識別情報を受信し、
検出された移動状態と受信した移動状態とが同一または類似する移動物を検出し、位置が検出された移動物の識別情報を特定し、
移動状態が同一または類似する複数の移動物が検出された場合に、当該複数の移動物により携帯される複数の携帯端末および前記コンピュータを含む複数のノードのうち、所定のノードと他の複数のノードとの距離を当該複数のノードの識別情報に対応付けて取得し、
前記複数のノードのうちの前記複数の携帯端末について検出された各位置に前記複数の携帯端末を配置する組合せのうち、取得された前記識別情報ごとの距離と合致する組合せを算出し、前記各位置の移動物の識別情報を特定する
処理を実行させることを特徴とする移動物特定プログラム。