JP2012102861A - 加圧液体による浮体式免震構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】浮体構造物本体と地盤の間に、免震装置を備え、シール材で囲まれ液体を閉じ込める免震層を設ける。免震層側面等に弾性機能を持たせ、免震層に注入される加圧液体と、その液体を加圧調整するための液体加圧機構を設けて部分浮体式免震構造とする。免震層の上部等に空気層と液体層からなり抵抗体を備える流体室を設ける。さらに流体室に圧搾空気を送り込むための圧搾空気機構を設けて完全浮体式免震構造への移行を可能とする。また鉛直方向の免震性能向上等において浮体構造物本体外部に空気室を設ける。
【選択図】図2
Description
しかしこのような完全浮体式免震構造物では、浮体構造物本体12に生じる変動荷重により構造物が容易に傾いたり、液面の変動に追随して浮体構造物本体12が鉛直方向に変動するなど、居住性及び使用性の面から課題が生じていた。
そこで図9に示すように、浮体構造物本体の変動荷重と固定荷重の一部を免震装置などの低せん断構造体17を介して地盤16で支持する部分浮体式免震構造も提案されている(特許文献1参照)。
としている。
また、浮体底部の一方向に対して空気室を少なくとも4つに等分割することにより静的安定性の維持と復元力を得るという、空気室を有する浮体式免震構造も提案されている(特許文献2参照)。
また、浮体構造物本体の側壁と免震ピットの側壁との間に所定の幅のクリアランスを全周に亘って設けなければならない。
従来の浮体式免震構造の小規模な建築物や一般住宅等への導入は、その規模の割合において大掛かりな免震ピットを必要とし、合理性、経済性に欠けるものであった。
浮体式免震構造は先ずは部分浮体として、免震層と、免震層内に注入される加圧液体と、加圧液体を加圧調整するための液体加圧機構を設け、変動荷重と固定荷重の一部を支持し浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する免震装置を備える。
液体加圧機構は、例えば浮体構造物本体の底部に接している免震層上部面から浮体構造物本体に設置されている貯液タンクの液面までの高さによる圧力を利用し、液体加圧機構により加圧調整された加圧液体は、免震層に注入され免震層上部面を鉛直上方向に押し上げる浮力Bとして作用させることが可能となる。
例えば通常時または中小規模の地震時において、浮体構造物本体は液体加圧機構により部分浮体しており、部分浮体式免震構造として機能させることが可能となる。
例えば大規模の地震時において、圧搾空気機構が作動し圧搾空気が流体室に注入され圧搾空気により浮体構造物本体は部分浮体から完全浮体へ瞬時に移行することになり、完全浮体式免震構造として機能させることが可能となる。
完全浮体式免震構造においては水平方向の免震効果を一層高めることができるとともに、流体室の空気層のエアークッション効果により鉛直方向の免震効果を発揮させ得る。
即ち浮体構造物本体の重量が見掛け上増加することになり、免震周期を長期化させ免震性能を向上させ得る。
図1は本発明における第一の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造に関する部分浮体式免震構造の概要を示す図である。
ここでは、側面のシール材5にゴム等の弾性機能を併せ持たせるとしているが、同様な弾性機能をもった部材を側面のシール材5の内側ないし外側に配置しても構わない。
なお、図1では免震装置7として弾性滑り支承を用いており、浮体構造物本体2に生じる鉛直方向の変動荷重と、加圧液体4による浮力で相殺された残りの固定荷重は、該弾性滑り支承を介し地盤6で支持される。
なお、本発明においては液体4が加圧されればよいのでアクティブな機械式の液体加圧機構でも構わない。
また液体加圧機構8は、水用の装置や機器等により代替可能としている。
図1に示すように、例えば液体加圧機構8は、貯液タンク8aと、貯液タンク8aから排液する配液管8bと、貯液タンク8aに液体4を供給する配液管8bおよびその配液管8bに取り付ける配液管バルブ8cと、貯液タンク8aと免震層3を連結する配液管8bおよびその配液管8bに取り付ける配液管バルブ8cと、貯液タンク8a内の液面の水平位置を調整するための水位調整スライダー8dからなる。
浮体構造物本体2の荷重W=Mg・・・▲1▼ ただし M:浮体構造物本体2の重量浮体構造物本体2底面に接する免震層3上部面の有効受圧面積をAとすると、免震層3上部面は加圧液体による浮力Bを受ける。
浮力Bは、
B=ρAdg・・・・・・・・・・▲2▼ ただし ρ:液体4の密度(g/cm3)
▲1▼▲2▼において、ρ=1g/cm3、Mを20×103kg、Aを20×104(cm2)とすると、
Mg=20×103×103(g)×g(cm/sec2)
B =1(g/cm3)×20×104(cm2)×d(cm)×g(cm/sec2)
地盤6から免震装置7の弾性滑り支承が浮き上がる場合、▲1▼=▲2▼であるから、d=100cmとなる。
ただし、鉛直方向の力は荷重Wと浮力Bのみとし、側面シール材5のゴム等の力は小さいことから考慮しない。
即ち、貯液タンク8a内の液面を、免震層3上部面から100cmの高さになるよう水位調整スライダー8dを設定しその高さまで液体4を注入すると、貯液タンク8a内の液面が喫水となり浮体構造物本体2は完全浮体となる。
その場合、浮力を受ける免震層3上部面のゲージ圧力は0.1at(工学気圧)であり、絶対圧力は1.1atである。
なお、0cm<d<100cmの範囲で浮体構造物本体2は部分浮体となっている。貯液タンク8a内の液面の高さを、免震層3上部面から0cm〜100cmまでコントロールすることにより、免震層3上部面の絶対圧力を1.0atから1.1atまで比例的に調整することが可能である。
即ち、貯液タンク8a内の液面の高さを水位調整スライダー8dで操作することにより、浮体構造物本体2を部分浮体から完全浮体まで、浮体程度を自在に調整することが可能である。
液面の高さが0のとき、側面シール材5は図4(a)のとおり下方に下がるにつれ液体圧がかかる形状となり、さらに液体4を注入し所定の高さがdに達したときには、図4(b)のとおり円弧に近い形状になる。
即ち、側面シール材5の断面におけるゴム等の弾性体が伸びた長さ分が、液面の高さ0からdまでさらに注入された液体4の圧力分Dに相当する。また液面の高さ0からdまでさらに注入された液体4の容積は、図4(a)から図4(b)に増えた円弧の面積Sarcに免震層3の側面全周の長さを乗じたものである。
なお、側面シール材5のゴム等の弾性体が液体圧で伸びた分だけ収縮力が鉛直下方に生じるものの、浮体構造物本体2の荷重Wに比し小さいことから考慮しない。
よって、免震層3は加圧液体4で浮力Bを発生させることにより浮体構造物本体2を支持する機能をもち、また免震層3の側面全周が水平バネ材となり水平変形能力と復元性能をもつことから、免震層3全体が巨大な免震装置として機能することになる。
なお、本発明で免震装置7は弾性滑り支承に限るものではない。
このように配置された免震装置7は、部分浮体時において浮体構造物本体2の荷重から免震層3上部面より受ける浮力Bを除いた荷重(=変動荷重+固定荷重の一部)を支持する機能と、浮体構造物本体2と地盤6との水平挙動を絶縁する機能を有する。
また、図1および図2では、免震装置7は免震層3の外側に配置されているが、免震層3の内側に配置されても構わない。
第一の実施形態において免震層3の側面シール材5にゴム等の弾性体を免震装置7に弾性滑り支承を用いた場合、例えば小規模の地震時には滑り支承の滑りが生じないものとすると、弾性滑り支承の積層ゴムと側面シール材5の水平バネとが並列に構成される状態であることから、それらの水平剛性の和が該免震層部における全ての剛性となる。
例えば中規模以上の地震時には該弾性滑り支承が滑動するものとすると、積層ゴムは地盤6から絶縁され、剛性は水平バネのみとなる。
図2は本発明における第二の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造に関する完全浮体式免震構造の概要を示す図である。
図2に示すように、第二の実施形態は図1の第一の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造1に加え、流体室9と、流体室9に圧搾空気を送り込むための圧搾空気機構10を設けて構成されている。
流体室9は圧搾空気が注入され圧搾空気が溜まる上部の空気層9aと、下部に液体4が溜まる液体層9bからなる。
また、流体室9は、流体室9を囲い分割する隔壁9cと、隔壁9cに平行して配置される抵抗板9dと、液体層9b部に配置された透水減衰材9eと、隔壁9c端および抵抗板9d端に直交して配置された延出片9fからなる。
流体室9はその形状によりダンバーとして強い減衰機能を有する。抵抗板9dの配列数は流体室9の大きさに応じ効果的に配置する。
なお、浮力を受ける面は、流体室9の各空気層9aと液体層9bの境界面と、流体室9の部分を除く免震層3上部面であり、流体室が設けられることによっても有効受圧面積は変わらない。この流体室9の各境界面と流体室9部分を除く免震層3上部面の平均水平面が浮力を受ける面の高さとなる。
従って、液体加圧機構8において、この平均水平面から貯液タンク8a内の液面までが液体4を加圧する高さとなる。
ただし、鉛直方向に十分な免震効果を発揮するには空気層9aをかなり大きな容積とする必要がある。そのままでは地震時に注入する圧搾空気量が膨大な量になり、注入に時間がかかり浮体構造物本体2を瞬時に完全浮体させることができない恐れがある。
従って、予め空気層9aに適切な量の圧搾空気を注入しておくものとする。
なお、完全浮体させた形態を静的に維持するには、液体加圧機構8の配液管バルブ8cを閉じるか、若しくは水位調整スライダー8dを調整し完全浮体に必要な液体4の加圧を図る等による。
免震層3の側面シール材5にゴムの弾性体を用いた場合、側面シール材5が水平変形量を制御する水平バネ材となる。
図4(c)は、側面シール材5にゴムを使用した場合において、ゴム面は便宜上曲面ではなく平面としてその断面を表し、初期値よりxcmだけ水平に浮体構造物本体2が変位したときの水平剛性を図解したものである。以下に、浮体構造物本体2の完全浮体時の水平方向の運動方程式を立て固有の免震周期を求める。
は、次のとおり、
従って、液体4の水平剛性、抵抗、付加質量効果、その他一切の減衰効果を考慮しなければ、完全浮体時の水平方向の運動方程式は近似的に次のようになる。
M*x″=−sign(x)*KG*((x2+h2)0.5−h)・・▲3▼
ただし、Mは浮体構造物本体2の重量を、またプライムに関しx″(x′)はxを時間tについて微分した2階(1階)の導関数を、sign(x)はxの正負符号を表す。
KGは免震層3の側面シール材5のゴムの水平剛性の総和である。
G:ゴムせん断弾性率、E:ゴム断面積とすると、
KG=G*E/h ・・・・・・・・・・・・・・・・▲4▼
浮体式免震構造1の諸元値を図7より参照し、ゴム断面積E=360cm2を得る。
Gは2、3、4kgf/cm2の3種とする。▲4▼からKG=24、36、48(kgf/cm)
初速値は総エネルギー入力の速度換算値VEとして、120、150、200cm/secの3種とする。
▲3▼の二階微分方程式に上記の数値を設定し、0.002秒刻みで数値計算して得られた解を、G別、VE別にグラフ化し図示したものが図5(a)(b)におけるORG線である。
結論として、せん断弾性率、初速値が小さい程、免震周期が長期化する。
浮体構造物本体2の完全浮体時の免震周期TIは、G=4kgf/cm2、VE=200cm/secの場合、次の数値が得られる。
TI=4.6sec ・・・・・・・・・・・・・・・・▲5▼
R=1/2*ρ*Cd*S*V2
ρ :液体の密度 Cd:抵抗係数 V2:速度の二乗
S :運動方向からの投射断面積(造波抵抗等のとき、S→▽2/3 ▽:排水容量)
また、緩やかな運動における速度に比例する粘性抵抗は小さいので考慮しない。
従って、▲3▼の運動方程式に上記抗力Rを付加すると次の式のようになる。
M*x″=−sign(x)*KG*((x2+h2)0.5−h)−sign(x′)*ρ/2*Cd*S*(x′)2 ・・・▲6▼
ここで、抗力のうち形状抵抗のみを考慮する。ρ=1g/cm3、Cd=1.2とする。
また水平運動における隔壁9cおよび抵抗板9dの運動方向からの投射断面積について、S=10、13、16×104cm2とする。
延出片9fも抵抗体であるが、ここでは形状抵抗体として考慮しない。
前項と同様に数値計算してG別、VE別にグラフ化し図示したものが図5(a)(b)におけるR線であり、投射断面積別に図示したものが図5(c)である。
結論として、せん断弾性率、初速値が小さい程、免震周期が長期化する。また投射断面積が大きいほど、減衰効果が大きく免震周期が長期化する。
係数をMrとすると▲6▼の運動方程式の右辺に−Mr*x″の項が加わることになる。これを左辺に移項し整理すると、(M+Mr)*x″となり、慣性力に対する付加質量効果が生じることがわかる。
即ち付加質量効果は、見掛け上の質量を増大させることにより免震周期を長期化し免震性能を向上させる。
流体室9に空気層9aが存在しないため浮体構造物本体2は上下運動をせずローリング運動のみ生じるものとし、また免震層3による抵抗、付加慣性モーメントも考慮しないものとする。諸元値は図6を参照し、ゴムのせん断弾性率G=4kgf/cm2とする。
浮体構造物本体2のローリング運動の概要は図6(a)(b)のとおりとする。
免震層3の上部面の浮力の中心であるBを原点とするy’軸の軸を中心にローリングし、z’軸がθだけ傾いた場合を想定する。
θは小さいことよりsinθ=θとし、またθだけ傾いても免震装置7の弾性滑り支承は地盤6から離れて浮揚している状態とする。
ローリング運動におけるゴムによるモーメントは次のとおり
Ny面のゴムの力fy =Ky*Lx/2*θ(kgf)
Nx面のゴムの力fx =Kx*x*θ=0.0267*θ*x2(kgf)
重心Gの慣性モーメントをIG、GからLz/2だけ鉛直下方にあるBの慣性モーメントをIBとすると、
慣性モーメントIG = 1/12*M*(Lz2+Lx2)
慣性モーメントIB = IG+M*(Lz/2)2=M/12*(4Lz2+Lx2)
= 2.67×109(kg・cm)・・・・・・・・・・▲9▼
Bを原点とし、z’軸がθだけ傾いたときの運動方程式は図6(a)(b)より次のとおり、
IB*θ″=−M*g*(Lz/2)*θ+2Ny+4Nx
▲7▼▲8▼▲9▼より、また1kgf=980kg・cm/sec2とすると、
2.67×109*θ″=−4.56×109*θ
上記運動方程式の周期Trは次のとおり、
∴周期Tr=2π(2.67/4.56)0.5=4.8(sec)
図7の諸元表の条件等で浮体構造物本体2は4.8秒程度の固有ローリング周期をもつ。
大規模地震時の水平免震周期TIにほぼ一致することより共振への注意が必要である。
即ち、空気層9aの空気の剛性によりエアークッション効果で鉛直方向に対する免震効果を得ることが期待できる。
Ka=(γ*Pa*Aa2)/(Va+Vt)・・・・・・・・・・▲10▼
ただし、γ :ポリトロピック数で動1.4、静1.0 Pa:絶対圧力(P+1)
Aa:空気層9aの有効受圧面積
Va:空気層9aの容積 Vt:エアータンク10eの容積
γ=1.4、Pa=1.1kgf/cm2、ここではチェックバルブ10bは備えていないものとし、地震感知器付エアーバルブ10cは圧搾空気注入後に閉鎖されるとして容積Vtは考慮しない。免震層3側面シール材5の剛性に影響されないものとする。
▲10▼式と上記および図7の諸元値より、Kaは次のとおり、
Ka=1.54×103(kgf/cm) ・・・・・・・・・・▲11▼
空気層9aの固有振動数faは次のとおり求められる。
fa=(Ka/M)0.5/2π=0.98Hz(=1/sec)・・・▲12▼
固有振動数faが1Hz以下であれば十分な免震効果が得られることが知られている。
ここでは空気層9aの高さが120cm以上であれば、faは1Hz以下となる。
また、流体室9において空気層9aの固有振動に応じて液体層9bも相対的に上下運動するが、延出片9f等が抵抗体となり振動周期に対する付加質量効果が生じることにより、固有振動数低下に貢献する。
しかし、固有振動数faが地震動の卓越振動数と同程度であることより共振を防ぐ配慮が必要である。
地震動との共振を防ぐには、例えば流体室9の小室の各空気層9aの高さを変えることによる。
それには、流体室9に予め圧搾空気を注入した後リーク&リリーフバルブ10dで各空気層9aの容積量を調整することによる方法が可能である。
また、図2のとおり二組の地震感知付エアーバルブ10cを備え作動時間等を変えることにより2系統の各空気層9aの容積量を設定することによる方法によっても可能である。
なお、図7の諸元表の条件で空気バネによる十分な免震効果を得るには、空気層9aの高さを120cm以上にする必要がある。空気層9aの容積Vaを圧搾空気で満たすには大容量の圧搾空気を注入することになり、注入に時間がかかり浮体構造物本体2を瞬時に完全浮体させることができない恐れがある。
従って、共振を防ぐことだけではなく注入量への対応から、流体室9の空気層9aに予め圧搾空気を必要な高さまで注入しておく。
分割の際は浮力中心点で対称になることや等間隔となることが望ましい。
なお図2のとおり、流体室9の小室間でエアーパイプ10aを通じ圧搾空気が相互に流れ込まないよう例えばチェックバルブ10bを備えることにより流体室9の各小室の独立性を確保する。
図3は本発明における第三の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造に関する完全浮体式免震構造の概要を示す図である。
図3に示すように、第三の実施形態は図2の第二の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造1に加え、空気室9gを設けて構成される。
そこで図3に示すように、例えば浮体構造物本体2の下方の地下に容積量の異なる複数の独立した空気室9gを設置することにより、擬似的に十分な高さをもった空気層を確保できる。
各空気室9gは予め圧搾空気が注入されており、各空気層9aとフレキシブルなエアーパイプ等で連通されていれば浮体構造物本体2外部のどこに設置しても構わない。
空気室9gにより、浮体構造物本体2の重心を低く保ちつつ、十分な容積量の空気層9aを確保し鉛直方向の免震性能を向上させ地震動の卓越振動数等との共振を防ぎ得る。
2 浮体構造物本体
3 免震層
4 液体
5 シール材
6 地盤
7 免震装置
8 液体加圧機構
8a 貯液タンク
8b 配液管
8c 配液管バルブ
8d 水位調整スライダー
9 流体室
9a 空気層
9b 液体層
9c 隔壁
9d 抵抗板
9e 透水減衰材
9f 延出片
9g 空気室
10 圧搾空気機構
10a エアーパイプ
10b チェックバルブ
10c 地震感知器付エアーバルブ
10d リーク&リリーフバルブ
10e エアータンク
10f エアーコンプレッサー
11 浮体式免震構造物
12 浮体構造物本体
13 免震ピット
14 液体
15 掘削底面
16 地盤
17 免震装置(低せん断剛性構造体)
しかしこのような完全浮体式免震構造では、浮体構造物本体12に生じる変動荷重により構造物が容易に傾いたり、液面の変動に追随して浮体構造物本体12が鉛直方向に変動するなど、居住性及び使用性の面から課題が生じていた。
そこで図11に示すように、浮体構造物本体の変動荷重と固定荷重の一部を免震装置などの低せん断剛性構造体17を介して地盤16で支持する部分浮体式免震構造も提案されている(特許文献1参照)。
3中に挿入する構成としている。
また、浮体底部の一方向に対して空気室を少なくとも4つに等分割することにより静的安定性の維持と復元力を得るという、空気室を有する浮体式免震構造も提案されている(特許文献2参照)。
また、浮体構造物本体の側壁と免震ピットの側壁との間に所定の幅のクリアランスを全周に亘って設けなければならない。
従来の浮体式免震構造の小規模な建築物や一般住宅等への導入は、その規模の割合において大掛かりな免震ピットを必要とし、合理性、経済性に欠けるものであった。
浮体式免震構造は先ずは部分浮体として、免震層と、免震層内に注入される加圧液体と、加圧液体を加圧調整するための液体加圧機構を設け、変動荷重と固定荷重の一部を支持し浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する免震装置を備える。
液体加圧機構は、例えば浮体構造物本体の底部に接している免震層上部面から浮体構造物本体に設置されている貯液タンクの液面までの高さによる圧力を利用し、液体加圧機構により加圧調整された加圧液体は、免震層に注入され免震層上部面を鉛直上方向に押し上げる浮力Bとして作用する。
例えば通常時または中小規模の地震時において、液体加圧機構で加圧調整された加圧液体により、浮体式免震構造は浮体構造物本体を部分浮体させ部分浮体式免震構造として機能させることが可能となる。
例えば大規模の地震時において、圧搾空気機構が作動し圧搾空気が流体室に注入されることにより、浮体式免震構造は浮体構造物本体を部分浮体から完全浮体へ瞬時に移行させ完全浮体式免震構造として機能させることが可能となる。
完全浮体式免震構造においては水平方向の免震効果を一層高めることができるとともに、流体室の空気層のエアークッション効果により鉛直方向の免震効果を発揮させ得る。
即ち、浮体構造物本体の重量が見掛け上増加することになり、免震周期を長期化させ免震性能を向上させ得る。
図1は本発明における第一の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造に関する部分浮体式免震構造と液体加圧機構の概要を示す図である。
ここでは側面のシール材5にゴム等の弾性機能を併せ持たせるとしているが、同様な弾性機能をもった部材を側面のシール材5の内側ないし外側に配置しても構わない。
なお、図1では免震装置7として弾性滑り支承を用いており、浮体構造物本体2に生じる鉛直方向の変動荷重と、加圧液体4による浮力で相殺された残りの固定荷重は、該弾性滑り支承を介し地盤6で支持される。
なお、本発明においては液体4が加圧されればよいのでアクティブな機械式の液体加圧機構でも構わない。
図1に示すように例えば液体加圧機構8は、液体4を貯める貯液タンク8aと、液体4を注入、排出、または供給するための配液管8bと、配液管8bに取り付ける配液管バルブ8cと、貯液タンク8a内の液面の水平位置を調整するための水位調整スライダー8dからなる。免震層3が空気で満たされている初期状態においては、リーク&リリーフバルブ10dを開放し抜気しつつ免震層3に液体4を注入する。
浮体構造物本体2の荷重W=M・g・・▲1▼ M :浮体構造物本体2の質量
浮体構造物本体2底面に接する免震層3上部面の有効受圧面積をAとすると、免震層3上部面は加圧液体による浮力Bを受ける。
浮力Bは次のとおり。
B=ρ・A・d・g・・・・・・・・・・▲2▼ ρ :液体4の密度(g/cm3)
ここで、Mを20×10 3 kg、ρを1g/cm 3 、Aを20×10 4 cm 2 とすると、▲1▼▲2▼は次のとおり。なお側面シール材5のゴム等の力はWに比し小さいので考慮しない。
M・g = 20×103×103(g)×g(cm/sec2)
B___= 1(g/cm3)×20×104(cm2)×d(cm)×g(cm/sec2)
地盤6から免震装置7の弾性滑り支承が浮き上がる場合、▲1▼=▲2▼となる。
従って、d=100cmが得られる。
即ち、貯液タンク8a内の液面を、免震層3上部面から100cmの高さになるよう水位調整スライダー8dを設定しその高さまで液体4を注入すると、貯液タンク8a内の液面が喫水となり浮体構造物本体2は完全浮体となる。
その場合、浮力を受ける免震層3上部面の圧力(=ゲージ圧力)は0.1at (工学気圧、kgf/cm 2 )であり、絶対圧力は1.1atである。
なお、0cm<d<100cmの範囲で浮体構造物本体2は部分浮体となっている。貯液タンク8a内の液面の高さを、免震層3上部面から0cm〜100cmまでコントロールすることにより、免震層3上部面の絶対圧力を1.0atから1.1atまで比例的に調整することが可能となる。
即ち、貯液タンク8a内の液面の高さを水位調整スライダー8dで操作することにより、浮体構造物本体2を部分浮体から完全浮体まで、浮体程度を自在に調整することが可能となる。
液面の高さが免震層3上部面から0のとき、側面シール材5は図4(a)のとおり下方に下がるにつれ液体圧がかかる形状となり、さらに液体4を注入し液面が喫水の高さまで達したときには、図4(b)のとおり円弧に近い形状になると想定している。
即ち、側面シール材5の断面におけるゴム等の弾性体が図4(a)から図4(b)に伸びた長さは、液面の高さ0からdになるまで注入された液体4の圧力Dによる。またその際に注入された液体4の容積は、概ね図4(a)から図4(b)に増えた円弧の面積Sarcに免震層3の側面全周の長さを乗じたものである。
従って、図1のとおり免震層3は加圧液体4で浮力Bを発生させることにより浮体構造物本体2を支持する機能を持つと共に、免震層3の側面全周が水平バネ材となり水平変形能力と復元性能をもつことから、免震層3全体が巨大な免震装置として機能する。
なお、本発明で免震装置7は弾性滑り支承に限るものではない。
このように配置された免震装置7は、部分浮体時において浮体構造物本体2の荷重から免震層3上部面より受ける浮力Bを除いた荷重を支持する機能と、浮体構造物本体2と地盤6との水平挙動を絶縁する機能を有する。
また、図1および図2では、免震装置7は免震層3の外側に配置されているが、免震層3の内側に配置されても構わない。
第一の実施形態において免震層3の側面シール材5にゴム等の弾性体と免震装置7に弾性滑り支承を用いた場合、例えば小規模の地震時には滑り支承の滑りが生じないものとすると、側面シール材5の水平バネと弾性滑り支承の積層ゴムが並列に構成される状態であることから、それらの水平剛性の和が該免震層部における全ての剛性となる。
また、例えば中規模以上の地震時には該弾性滑り支承が滑動するものとすると、積層ゴムは地盤6から絶縁され、該免震層部の剛性は側面シール材5の水平バネのみとなる。
図2は本発明における第二の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造に関する完全浮体式免震構造と流体室および圧搾空気機構の概要を示す図である。
図2に示すように、第二の実施形態は図1の第一の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造物1に加え、流体室9と、流体室9に圧搾空気を送り込むための圧搾空気機構10を設けて構成される。
流体室9は圧搾空気が注入され圧搾空気が溜まる上部の空気層9aと、下部に液体4が溜まる液体層9bからなる。
また、流体室9は、流体室9を囲い分割する隔壁9cと、隔壁9cに平行して配置される抵抗板9dと、液体層9b部に配置される透水減衰材9eと、隔壁9c端および抵抗板9d端に直交して配置される延出片9f等からなる。
流体室9はその形状によりダンパーとして強い減衰機能を有する。抵抗板9dの配列数は流体室9の大きさに応じ効果的に配置する。
なお、浮力を受ける面は、流体室9の各空気層9aと液体層9bの境界面と、流体室9の部分を除く免震層3上部面であると見做され、流体室が設けられることによっても有効受圧面積は変わらない。この流体室9の各境界面と流体室9部分を除く免震層3上部面の平均水平面が浮力を受ける面の高さとなる。
従って、液体加圧機構8において、この平均水平面から貯液タンク8a内の液面までが液体4を加圧する高さとなる。
なお、各バルブは手動でも開閉可能とする。
免震層3の側面シール材5にゴムの弾性体を用いた場合、側面シール材5が水平変形量を制御する水平バネ材となる。
図4(c)は、側面シール材5にゴムを使用した場合において、ゴム面は便宜上曲面ではなく平面としてその断面を表し、免震層3の高さをhとし、初期値よりxcmだけ水平に浮体構造物本体2を相対変位させたときの水平剛性を図解したものである。以下に浮体構造物本体2の完全浮体時において、免震層3の側面シール材5によるx軸方向の運動方程式を立てその固有周期である免震周期を考察する。
り。
従って、液体4の付加質量効果、抵抗による減衰効果を考慮しなければ、完全浮体時の水平方向の運動方程式は次のとおり。ただしMは浮体構造物本体2の質量とする。
K G は免震層3の側面シール材5のゴムの剛性の総和であり、次のとおり。
K G =G・E/h ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・▲4▼
G :ゴムせん断弾性率
E :ゴム断面積
浮体式免震構造物1の諸元値を図7より参照し、ゴム断面積E=360cm2を得る。
G=2、3、4kgf/cm 2 の3種とすると、▲4▼からK G =24、36、48kgf/cmを得る。初速値は総エネルギー入力の速度換算値Veとして、120、150、200cm/secの3種とする。
▲3▼式に上記数値を設定し、0.002秒刻みで数値計算して得られた解を、G別Ve別にグラフ化し図示したものが図5(a)、(b)におけるORG線である。結論として、せん断弾性率、初速値が小さい程、免震周期が長期化する。
▲3▼式における免震周期T O は、G=4kgf/cm 2 、Ve=200cm/secの場合、免震性能の指標となる4秒免震を超える次の数値が得られる。
T O =4.7sec ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・▲5▼
ρ :液体の密度
Cd:抵抗係数
V 2 :速度の二乗
S :運動方向からの投射断面積(造波抵抗等のときS→▽2/3 ▽:排水容量)
なお、緩やかな運動における速度に比例する粘性抵抗は小さいので考慮しない。
従って、▲3▼の運動方程式に上記抗力Rを付加すると次の式のとおり。
ただし、sign(x′)はx′の正負符号を表す。
ここで、抗力のうち形状抵抗のみを考慮し、ρ=1g/cm3、Cd=1.2とする。
また水平運動における隔壁9cおよび抵抗板9dの運動方向からの投射断面積について、S=10、13、16×104cm2とする。
透水減衰材9eおよび延出片9fは、ここでは水平運動の形状抵抗体として考慮しない。
▲6▼式を前項と同様に数値計算して、S=16m 2 でG別Ve別にグラフ化し図示したものが図5(a)、(b)におけるS線であり、投射断面積S別に図示したものが図5(c)である。結論として、せん断弾性率、初速値が小さい程、また投射断面積が大きい程、免震周期が長期化する。
そのとき、抵抗係数をMrとすると▲6▼の運動方程式の右辺に−Mr・x″が抗力として付加されることになる。これを左辺に移項して整理すると、(M+Mr)・x″となり、慣性力に対する付加質量効果が生じることがわかる。
即ち付加質量効果は、見掛け上の質量を増大させることにより免震周期を長期化し免震性能を向上させる。
流体室9に空気層9aが存在しないため浮体構造物本体2は上下運動をせずローリング運動のみ生じるものとし、また免震層3による抵抗、付加慣性モーメントも考慮しないものとする。諸元値は図7を参照し、ゴムのせん断弾性率G=4kgf/cm 2 とする。
免震層3部分のローリング運動の概要は図6(a)、(b)のとおりとする。
免震層3の上部面の浮力の中心であるBを原点とするy’軸の軸を中心にローリングし、z’軸がθだけ傾いた場合を想定する。
θは小さいことよりsinθ=θと線形近似する。またθだけ傾いても免震装置7の弾性滑り支承は地盤6から離れて浮揚している状態とする。
ローリング運動におけるゴムによるモーメントは次のとおり。
Ny面のゴムの力fy=Ky・Lx/2・θ=2.67×10 3 θ(kgf)
Nx面のゴムの力fx=Kx・x・θ=0.0267θ・x 2 (kgf)
重心Gの慣性モーメントIG、GからLz/2だけ鉛直下方にあるBの慣性モーメントI B は次のとおり。
Bを原点とし、z’軸がθだけ傾いたときの運動方程式は次のとおり。
右辺=−C・θとする。
▲7▼▲8▼▲10▼よりCは次のとおり。ただし、1 kgf=980 kg・cm/sec 2 とする。
C=4.56×10 9 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・▲11▼
従って、▲10▼の運動方程式の周期Trは、▲9▼▲11▼より次のとおり。
図7の諸元表の条件等で免震層3部分は4.8秒程度の固有ローリング周期をもつ。
▲5▼および▲6▼式の水平免震周期に近いことから、共振によるロッキング運動への注意が必要である。
即ち、空気層9aの空気の剛性によるエアークッション効果で鉛直方向に対する免震効果を得ることが期待できる。
空気層9aの空気バネ定数Kaは近似的に次のとおり。
γ :ポリトロピック数で動1.4
Pa:絶対圧力(P+1)
Va:空気層9aの容積
Vt:エアータンク10eの容積
ここではエアータンク10eの容積Vtおよび免震層3側面シール材5の剛性は考慮しないものとする。
空気層9aの気柱の高さをHaとすると、Vaは次のとおり。
Va =Aa・Ha
従って、▲12▼は次のとおり。
空気層にかかる浮体構造物本体2の荷重をWaとすると、Waは次のとおり。
Wa=(Pa−1)・Aa ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・▲14▼
空気層9aの固有周期Taは一般に次のとおり。
▲15▼に、▲13▼▲14▼を代入し変形する。
図8(a)は、▲16▼を絶対圧力Pa別に、空気層9aにおける気柱の高さHaと固有周期Taの二乗が比例する関係を図示したものである。
▲16▼において、Pa=1.1kgf/cm 2 、有効数字2桁とすると、Ha=380Ta 2 となる。
固有周期Taを1秒以上、または固有振動数fa(=1/Ta)を1Hz以下に設定できれば、十分な免震効果が得られることが知られている。
Pa=1.1において、空気層9aの気柱の高さHaが380cm以上であれば、Taはほぼ1秒以上となり、垂直方向に十分な免震効果が得られることになる。
図8(b)は、▲16▼を固有周期Ta別に、空気層9aにおける気柱の高さHaと絶対圧力Paの関係を図示したものである。
面積当たりの荷重が大きい程、絶対圧力Paが大きくなり空気層9aの気柱の高さHaを低く抑えることが可能となる。
即ち、固有周期Taを1秒に保つには、浮体構造物本体2の単位面積当たりの荷重が1ton f/m 2 の場合では約380cmの空気層の気柱の高さが必要となり、2ton f/m 2 では約210cm、3ton f/m 2 では約150cmとなる。
なお、流体室9において空気層9aの固有振動に応じて液体層9bも相対的に上下運動する。その際、延出片9f等が抵抗体となり、振動周期に対する付加質量効果が生じる。即ち、浮体構造物本体2の荷重が増えるような効果が生じ固有周期Taの増大に貢献する。
地震動との共振を防ぐには、例えば圧搾空気の注入方法を工夫し流体室9の小室の各空気層9aの気柱の高さHaを変えることによる。
なお、図7の諸元表の条件で空気バネによる十分な免震効果を得るには、前項のとおり空気層9aの気柱の高さHaを約380cm以上にする必要がある。空気層9aの容積Vaを圧搾空気で満たすには大容量の圧搾空気を注入することになり、注入に時間を要し浮体構造物本体2を瞬時に完全浮体させることができない恐れがある。
従って、注入量への対応からも、流体室9の空気層9aに予め圧搾空気を必要な高さまで注入しておく。
また、共振を防ぐためには各空気層9aの異なる気柱の高さを維持する必要があり、各空気層9a間を気密に封止し独立性を確保しなければならない。それには、例えば図2のとおりチェックバルブ10bを備えることとし、各空気層9a間でエアーパイプ10aを通じ圧搾空気が相互に流れ込まないようにする。
図9(a)は流体室9を複数の隔壁で等間隔に分割した場合の断面図である。
図9(b)は、図9(a)におけるOを原点とする平均水平線に対しθだけ傾斜させる力を浮体構造物本体2に加えたときの概念図である。
この傾斜させる力の反力が復元力であり、元の姿勢に戻ろうとする静的安定性に繋がる。
ここで、図9の断面図において流体室9を隔壁で分割することによる復元力の効果を考察する。
浮体構造物本体2の運動は免震層3に拘束されていることから、図9(b)において静水圧によるモーメントの中心はG近傍と考え、G近傍周りのモーメントの総和を隔壁で分割することによる復元力モーメントとする。
図9(b)において、x軸上のi番目の空気層の中点は、次のとおり。
Gとx i の水平距離は、次のとおり。
θだけ傾斜させたときのi番目の空気層の高さは、次のとおり。
Gとz i の言さの差は、次のとおり。
i番目の空気層の浮力は、次のとおり。
G近傍周りのモーメントは、次のとおり。
M G =Σ(B i ・ G x i )
すなわち、隔壁数nによる復元力の効果については、▲17▼式のΣの項を調べればよい。
図9(c)はΣの項を数値計算し、n→∞のときの復元力を100%として比較表示したものである。
Σの項は、n→∞のとき1/3となる。n=1のとき0(復元力率0%)、n=2のとき0.25(75%)、n=3のとき0.2963(89%)、n=4のとき0.3125(94%)が得られる。
従って、流体室9の各一辺を隔壁で分割しないn=1の場合は復元力が消失するものの、隔壁で2以上に分割する場合は75%以上の復元力が得られることが分かる。
また、同一圧力のもとで、空気層9aの気柱の高さHaを高くし容積Vaを大きくした場合に、図9(b)と同じ力で浮体構造物本体2を傾斜させると、同一圧縮率であるから容積に応じて傾斜角度θも大きくなる。一方、θだけ傾斜させるにはそれより小さい力で傾く。よって、同一傾斜角度θにおいては、容積Vaが大きいほど、即ち気柱の高さHaが高いほど復元力は小さくなる。
なお、ローリング運動での解析のとおり、浮体式免震構造物1は免震層3のゴム等の弾性体によっても静的安定性と復元力を得ている。
図3は本発明における第三の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造に関する完全浮体式免震構造と空気室の概要を示す図である。
図3に示すように、第三の実施形態は図2の第二の実施形態の加圧液体による浮体式免震構造物1に加え、空気室9gを設けて構成される。
しかし、そのままでは軽い空気層が浮体構造物本体2の底部に位置するため浮体構造物本体2の重心位置が高くなりバランスの悪い構造となる。
そこで図3に示すように、例えば浮体構造物本体2の下方の地下に容積量の異なる複数の独立した空気室9gを設置し各空気層9aと連通させることにより、擬似的に十分な気柱の高さをもった空気層を確保できる。
各空気室9gは気密され与圧可能であり各空気層9aとフレキシブルなエアーパイプ等で連通されていれば、浮体構造物本体2外部のどこに設置しても構わない。
空気室9gにより、浮体構造物本体2の重心を低く保ちつつ十分な容積量の空気層9aを確保でき、鉛直方向の免震性能を向上させ地震動の卓越振動数等との共振を防ぐことが可能となる。
2 浮体構造物本体
3 免震層
4 液体
5 シール材
6 地盤
7 免震装置
8 液体加圧機構
8a 貯液タンク
8b 配液管
8c 配液管バルブ
8d 水位調整スライダー
9 流体室
9a 空気層
9b 液体層
9c 隔壁
9d 抵抗板
9e 透水減衰材
9f 延出片
9g 空気室
10 圧搾空気機構
10a エアーパイプ
10b チェックバルブ
10c 地震感知器付エアーバルブ
10d リーク&リリーフバルブ
10e エアータンク
10f エアーコンプレッサー
11 浮体式免震構造物
12 浮体構造物本体
13 免震ピット
14 液体
15 掘削底面
16 地盤
17 免震装置(低せん断剛性構造体)
Claims (9)
- 浮体構造物本体と地盤の間に、シール材で囲まれた免震層を設け、シール材に弾性機能を併せ持たせるかまたは弾性機能を持った部材をシール材の内ないし外に配置し、免震層に加圧された液体を注入することにより、浮体構造物本体を部分または完全に浮体させ水平方向の免震性能を得ることを基本的特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項1の部分浮体式免震構造において、免震層の加圧液体で浮体相殺しない固定荷重を支持する鉛直剛性を有し、免震層の内ないし外に浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する免震装置を備えることを特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項1の部分または完全浮体式免震構造において、免震層に注入する液体を加圧調整するための液体加圧機構を設けることを特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項3の部分または完全浮体式免震構造において、浮体構造物本体底部と免震層上部に形成された凹部内に空気層と液体層からなる流体室を設けることを特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項4の部分または完全浮体式免震構造において、流体室に圧搾空気を送り込むための圧搾空気機構を設けることを特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項5の部分または完全浮体式免震構造において、流体室に透水性減衰材と、隔壁と、抵抗板と、延出片等を配置し抵抗体として備えることを特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項6の完全浮体式免震構造において、流体室の各一辺を隔壁により少なくとも四つに分割し流体室を16以上の小室に分割することにより、浮体構造物本体の静的安定性を維持し復元力を持たせることを特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項7の完全浮体式免震構造において、流体室の各空気層の圧搾空気容量を変えることにより、地震動の卓越振動数等との共振を防ぐことを特徴とする浮体式免震構造。
- 請求項7の完全浮体式免震構造において、浮体構造物本体の重心を低く保ちつつ、十分な容積量の空気層を確保し鉛直方向の免震性能を向上させ共振を防ぐため、浮体構造物本体外部の地下等に容積量の異なる複数の空気室を設けることを特徴とする浮体式免震構造。
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