JP2012102682A - 多気筒内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】排気性状の悪化を好適に抑えることのできる多気筒内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関は、排気再循環(EGR)通路およびEGR弁を有するEGRシステムと、気筒毎に設けられた燃料噴射弁とを備える。機関運転状態に基づき設定される目標EGR率TegrをもとにEGR弁の開弁制御を実行するとともに、機関運転状態に基づき設定される各気筒共通の目標燃料噴射量Tqをもとに各燃料噴射弁の作動制御を実行する。燃料噴射弁内部の燃料圧力を検出する圧力センサが気筒毎に設けられる。気筒毎に、圧力センサにより検出される燃料圧力の変動態様に基づいて補正後噴射量RQを算出するとともに(S303,S304)、同補正後噴射量RQと目標燃料噴射量Tqとに基づいて目標EGR率Tegrの設定に用いるEGRマップを補正する(S305)。
【選択図】図8
【解決手段】内燃機関は、排気再循環(EGR)通路およびEGR弁を有するEGRシステムと、気筒毎に設けられた燃料噴射弁とを備える。機関運転状態に基づき設定される目標EGR率TegrをもとにEGR弁の開弁制御を実行するとともに、機関運転状態に基づき設定される各気筒共通の目標燃料噴射量Tqをもとに各燃料噴射弁の作動制御を実行する。燃料噴射弁内部の燃料圧力を検出する圧力センサが気筒毎に設けられる。気筒毎に、圧力センサにより検出される燃料圧力の変動態様に基づいて補正後噴射量RQを算出するとともに(S303,S304)、同補正後噴射量RQと目標燃料噴射量Tqとに基づいて目標EGR率Tegrの設定に用いるEGRマップを補正する(S305)。
【選択図】図8
Description
本発明は、機関排気通路内の排気の一部を機関吸気通路に再循環させる排気再循環システムを備えた多気筒内燃機関の制御装置に関するものである。
通常、排気再循環(EGR)システムは、機関吸気通路および機関排気通路を連通するEGR通路と、同EGR通路の通路断面積を変更するEGR弁とを備えている。そして、機関運転状態に基づくEGR弁の開弁制御(EGR制御)の実行を通じて、機関排気通路から機関吸気通路に戻される排気の量(EGR量)が調節される。このようにして排気の一部を再循環させることにより、気筒内における燃料の燃焼温度が低下するようになるため、排気中の窒素化合物(NOx)の低減が図られるようになる。
ディーゼル機関のEGR制御では基本的に、EGR量が多くなるほど排気中のNOxを低減する効果が大きくなる。ただし、EGR量を多くし過ぎると、気筒内における燃料の燃焼状態が悪化してしまうために、これに伴う排気通路への未燃燃料の排出量の増加によって白煙の発生を招いてしまう。
そのため従来、EGR量を適正な量に調節するために、燃料噴射量と吸入空気量とに基づいてEGR量を調節する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置では、排気中のNOxの低減と白煙発生の抑制との両立を図ることの可能な空燃比の目標値(目標空燃比)が定められるとともに、ディーゼル機関の吸入空気量が検出される。そして、吸入空気量と燃料噴射量の制御目標値(目標燃料噴射量)とに基づいて、EGR量が上記目標空燃比と実際の空燃比とを一致させることの可能な量になるように、EGR制御が実行される。
ディーゼル機関では燃料噴射弁が気筒毎に設けられる。また、上記目標燃料噴射量としては各気筒共通の値が設定される。ここで、ディーゼル機関に設けられた各燃料噴射弁の動作特性は個体差や経時変化に起因して異なる。そのため、共通の目標燃料噴射量に基づいて同一の制御態様で各燃料噴射弁を作動させたところで、それらの動作特性の相異によって実際の燃料噴射量にばらつきが生じることが避けられない。
したがって、上述したように目標燃料噴射量と吸入空気量とに基づいてEGR制御を実行した場合であっても、気筒間における実燃料噴射量のばらつきによって空燃比にもばらつきが生じてしまう。そして、そうした気筒間における空燃比のばらつきに起因して、いずれかの気筒においてEGR量の過多による白煙の発生を招いたりEGR量の不足によるNOxの増加を招いたりするといった不都合の発生を招くおそれがある。
特許文献1には、ディーゼル機関の気筒毎に、吸入空気量を検出するとともに同吸入空気量に基づいてEGR制御を実行する装置も提案されている。この装置によれば、ディーゼル機関の気筒間における吸入空気量のばらつきに起因する上記不都合の発生を抑えることが可能になるものの、気筒間における実燃料噴射量のばらつきに起因する不都合の発生についてはやはり抑えられない。
なお、上述した気筒間における空燃比のばらつきに起因して排気性状の悪化を招くおそれがあるとの不都合に着目すると、上述したディーゼル機関に限らず、ガソリン機関や液化ガスを燃料として用いる液化ガス機関においても同様に生じる。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気性状の悪化を好適に抑えることのできる多気筒内燃機関の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明では、多気筒内燃機関に、機関排気通路および機関吸気通路を連通する排気再循環(EGR)通路と同EGR通路の通路断面積を変更するEGR弁とを有するEGRシステムが搭載されるとともに、その気筒毎に燃料噴射弁が設けられている。そして、機関運転状態に基づき設定されたEGR弁の開弁制御にかかる制御目標値に基づいて同開弁制御が実行されるとともに、機関運転状態に基づき設定された各気筒共通の目標燃料噴射量に基づいて各燃料噴射弁の作動制御が実行される。
請求項1に記載の発明では、多気筒内燃機関に、機関排気通路および機関吸気通路を連通する排気再循環(EGR)通路と同EGR通路の通路断面積を変更するEGR弁とを有するEGRシステムが搭載されるとともに、その気筒毎に燃料噴射弁が設けられている。そして、機関運転状態に基づき設定されたEGR弁の開弁制御にかかる制御目標値に基づいて同開弁制御が実行されるとともに、機関運転状態に基づき設定された各気筒共通の目標燃料噴射量に基づいて各燃料噴射弁の作動制御が実行される。
燃料噴射弁からの燃料噴射を実行すると燃料噴射弁内部の燃料圧力が一時的に低下するために、そうした燃料圧力の変動態様を監視することによって実際に燃料が噴射された期間や実際に噴射された燃料の量を精度よく把握することができる。この点をふまえて請求項1に記載の発明では、気筒毎に、圧力センサによって検出される燃料噴射弁内部の燃料圧力の変動態様に基づいて実燃料噴射量が算出されるとともに、その実燃料噴射量と目標燃料噴射量とに基づいてEGR弁の開弁制御にかかる制御目標値が補正される。そのため、各燃料噴射弁の動作特性のばらつきに起因して気筒間における実燃料噴射量のばらつきが発生し、これに起因して気筒間における空燃比のばらつきが発生するとはいえ、EGR弁の開弁制御の実行を通じて、そうした空燃比のばらつきが抑えられるように各気筒に再循環される排気の量(EGR量)をそれぞれ調節することができる。これにより請求項1に記載の発明によれば、気筒間における空燃比のばらつきに起因する排気性状の悪化を好適に抑えることができるようになる。
請求項2に記載の発明によれば、内燃機関の気筒間における空燃比のばらつきによる排気性状の悪化が抑えられるように、気筒毎に設定されたEGR弁の開弁制御にかかる制御目標値の設定に用いる関係を各別に補正することができるようになる。そのためそれら関係をもとに、空燃比のばらつきに起因する排気性状の悪化を的確に抑えることの可能な値を上記制御目標値として気筒毎に各別に算出することができるようになる。
排気性状を悪化させる要因としては、上述した気筒間における空燃比のばらつきの他、ハードウェアの個体差や経時変化(例えば燃料噴射弁の噴射孔形状の相異や内燃機関の吸気ポート形状の相異)に起因して生じる気筒内における燃料の燃焼状態のばらつきがある。そして、そうした燃料の燃焼状態は内燃機関の気筒内から排出される燃焼ガス(排気)の温度に基づいて把握することができる。
請求項3に記載の発明では、そうした排気の温度が温度センサによって気筒毎に検出されるとともに、その検出した排気温度に基づいて燃料の噴射態様が気筒毎に変更される。そのため、排気温度から把握される燃料の燃焼状態が悪い気筒においては同燃焼状態が良くなるように燃料の噴射態様を変更する一方、排気温度から把握される燃料の燃焼状態が良い気筒においては燃料の噴射態様を変更しないようにしたり上記燃焼状態が若干悪くなるように燃料の噴射態様を変更したりすることができる。したがって請求項3に記載の発明によれば、気筒間における燃料の燃焼状態のばらつきを抑えることができるようになるために、そのばらつきに起因する排気性状の悪化を抑えることができるようになる。
なお、気筒内における燃料の燃焼状態を変化させるべく変更手段により変更する燃料噴の射態様としては、請求項4によるように燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力を採用することや、請求項5によるように燃料噴射弁からの燃料噴射を実行する時期を採用することができる。その他、燃料噴射弁の作動制御を通じて機関トルクを発生させるためのメイン噴射と同メイン噴射の実行に先立ち少量の燃料を噴射するパイロット噴射とを実行する装置においては、請求項6によるように、同パイロット噴射における噴射量を前記噴射態様として採用することができる。
請求項7に記載の発明によれば、前記変更手段によって燃料の噴射態様を変更する際に、その変更に合わせて追加補正手段による前記制御目標値の補正が実行される。そのため、変更手段による燃料噴射態様の変更によって適切なEGR量が変化する場合において、その変化分を補償するべく前記制御目標値を補正することができるようになり、排気性状の悪化を好適に抑えることができるようになる。
請求項8に記載の発明によれば、圧力センサが燃料噴射弁に取り付けられるために、燃料噴射弁から離れた位置に設けられた圧力センサによって燃料圧力が検出される装置と比較して、燃料噴射弁の噴射孔に近い部位の燃料圧力を検出することができる。そのため、燃料噴射弁の開閉動作に伴い変動する燃料噴射弁内部の燃料圧力を圧力センサによって精度よく検出することができるようになり、同圧力センサによって検出した燃料圧力の変動波形に基づいて実燃料噴射量を精度よく算出することができるようになる。
以下、本発明を具体化した一実施の形態にかかる内燃機関の制御装置を説明する。
図1に示すように、内燃機関10の吸気通路11には、その吸気流れ方向上流側(以下、単に上流側)から順に、過給機20のコンプレッサ21、インタークーラ12、吸気絞り弁13が取り付けられている。なお、本実施の形態の内燃機関10としては複数(本実施の形態では、四つ)の気筒14を有するディーゼル機関が採用されている。
図1に示すように、内燃機関10の吸気通路11には、その吸気流れ方向上流側(以下、単に上流側)から順に、過給機20のコンプレッサ21、インタークーラ12、吸気絞り弁13が取り付けられている。なお、本実施の形態の内燃機関10としては複数(本実施の形態では、四つ)の気筒14を有するディーゼル機関が採用されている。
上記コンプレッサ21は吸気通路11内の空気をその圧力を高めつつ吸気流れ方向下流側(以下、単に下流側)に送るためのものである。また、インタークーラ12はその内部を通過する空気を外気との熱交換を通じて冷却するための熱交換器である。上記吸気絞り弁13は、吸気通路11の通路断面積の変更を通じて同吸気通路11における吸気絞り弁13より下流側の部分の圧力(いわゆる過給圧)を変更するためのものである。
また、内燃機関10の各気筒14には、内部(詳しくは、燃焼室)に燃料を直接噴射供給するための燃料噴射弁16がそれぞれ取り付けられている。さらに内燃機関10の排気通路18には、その排気流れ方向上流側から順に、上記過給機20のタービン22、および排気浄化装置18aが取り付けられている。
上記内燃機関10では、吸気通路11を通じて気筒14内に空気が吸入されるとともに同気筒14内において燃料噴射弁16から燃料が噴射されることにより、同燃料が燃焼する。そして、この燃焼に伴って発生したエネルギが内燃機関10の出力軸17に伝達されることによって同出力軸17が回転駆動される。内燃機関10の気筒14内において燃焼した後のガスは、排気として内燃機関10の排気通路18に排出されるとともに、排気浄化装置18aの通過に際して浄化される。
上記過給機20は、排気駆動式のものであり、そのコンプレッサ21内に設けられたコンプレッサホイール21aとタービン22内に設けられたタービンホイール22aとが一体回転するようになっている。そして内燃機関10の運転時においては、その排気通路18を流れる排気が吹き付けられることによってタービンホイール22aが回転駆動され、これと一体回転するコンプレッサホイール21aによって吸気通路11内の空気が圧送される。
内燃機関10には、排気通路18内の排気を吸気通路11に再循環させるための排気再循環(EGR)システム30が設けられている。このEGRシステム30は具体的には、EGR通路31とEGR弁32とEGRクーラ33とを備えている。EGR通路31は内燃機関10の排気通路18における上記タービン22より排気流れ方向上流側の部分と吸気通路11における上記吸気絞り弁13より下流側の部分とを連通するものであり、同EGR通路31を通じて排気通路18内の排気が吸気通路11に導入される。EGR弁32はEGR通路31の通路断面積を変更するためのものであり、同EGR弁32の開度を調節することによりEGR通路31を通じて吸気通路11に再循環される排気の量(EGR量)が調量される。上記EGRクーラ33はその内部を通過する排気を外気との熱交換を通じて冷却するための熱交換器である。
本実施の形態にかかる装置は、内燃機関10の運転状態を検出するための各種センサを備えている。それらセンサとしては、例えば内燃機関10の出力軸17の回転速度(機関回転速度NE)を検出するための回転速度センサ41や、EGR弁32の開度(EGR開度VR)を検出するための開度センサ42、吸気通路11における吸気絞り弁13より下流側の部分の圧力(過給圧P)を検出するための過給圧センサ43が設けられている。また、アクセルペダル19の踏み込み量ACを検出するためのアクセルセンサ44や、吸気通路11を通過する空気の量(通路吸気量GA)を検出するためのエアフロメータ45、排気の酸素濃度を通じて内燃機関10の気筒14内で燃焼した混合気の空燃比(実空燃比A/F)を検出するための空燃比センサ46が設けられている。この空燃比センサ46は、排気通路18における排気浄化装置18aより排気流れ方向下流側(以下、単に下流側)に設けられている。その他、内燃機関10(詳しくは、その排気ポート)に設けられて気筒14から排出される燃焼ガス(排気)の温度Texを検出する排気温度センサ47や、燃料噴射弁16に一体に取り付けられて同燃料噴射弁16の内部の燃料圧力PQを検出する燃料圧力センサ48なども設けられている。なお、排気温度センサ47および燃料圧力センサ48は共に、内燃機関10の各気筒14に一つずつ、すなわち内燃機関10の気筒14毎に設けられている。
また本実施の形態にかかる装置は、例えばマイクロコンピュータを中心に構成される電子制御ユニット40を備えている。この電子制御ユニット40は、各種センサの出力信号を取り込むとともにそれら出力信号をもとに各種の演算処理を実行し、その演算結果に基づいて吸気絞り弁13の開度制御や、燃料噴射弁16の作動制御、EGR弁32の開弁制御などの各種制御を実行する。
本実施の形態では、吸気絞り弁13の開度制御やEGR弁32の開弁制御が上述したEGR量を調節するべく実行される。排気の再循環は吸気通路11の圧力と排気通路18の圧力との差を利用して行われる。このことをふまえて本実施の形態では、吸気絞り弁13の開度制御を通じて吸気通路11の通路断面積を変更することによって上記圧力差(具体的には、過給圧P)を調節しつつEGR弁32の開弁制御を通じてEGR通路31の通路断面積を変更することにより、同EGR通路31を通過する排気の量(EGR量)が調節される。
以下、EGR量を調節するための処理(EGR量調節処理)について説明する。
図2は上記EGR量調節処理の実行手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御ユニット40により実行される。
図2は上記EGR量調節処理の実行手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御ユニット40により実行される。
図2に示すように、この処理では先ず、機関回転速度NE、通路吸気量GAおよび過給圧Pに基づいて、実回転当たり吸気量Rgnと実EGR率Regrとがそれぞれ算出される(ステップS101)。実回転当たり吸気量Rgnは、内燃機関10の出力軸17が一回転する間に同内燃機関10の各気筒14内に吸入される空気の量(回転当たり吸気量)についての推定値である。実EGR率Regrは、内燃機関10の気筒14内に吸入されるガスの量のうちのEGR量が占める割合(EGR率)についての推定値である。
なお、実際のEGR率や回転当たり吸気量は、次のような考えのもとに推定することが可能である。過給圧Pおよび機関回転速度NEに基づいて内燃機関10の気筒14内に吸入されるガス(新気とEGRガスとを含むガス)の量を推定することができる。また、通路吸気量GAと機関回転速度NEとに基づいて内燃機関10の出力軸17が一回転する間に各気筒14内に吸入される空気の量(新気量)を推定することができる。そして、上記ガスの量から新気量を減じた量(=ガスの量−新気量)を実際のEGR量に相当する量として求めることができ、同量とガスの量とから実際のEGR率(=「ガスの量−新気量」/ガスの量)を推定することができる。
本実施の形態では、機関回転速度NE、通路吸気量GAおよび過給圧Pにより定まる機関運転状態と同機関運転状態に見合う実EGR率Regrとの関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。また、上記機関運転状態と同機関運転状態に見合う実回転当たり吸気量Rgnとの関係についても同様に実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。そして、ステップS101の処理では、それら関係に基づいて実EGR率Regrと実回転当たり吸気量Rgnとがそれぞれ算出される。
その後、内燃機関10の運転状態(具体的には、機関回転速度NEおよび後述する目標燃料噴射量Tq)に基づいて、EGR率についての制御目標値(目標EGR率Tegr)と回転当たり吸気量についての制御目標値(目標回転当たり吸気量Tgn)とがそれぞれ設定される(ステップS102)。
なお本実施の形態では、内燃機関10の運転状態と目標EGR率Tegrとの関係や同運転状態と目標回転当たり吸気量Tgnとの関係が演算用のマップとして電子制御ユニット40に予め記憶されており、それらマップをもとに目標EGR率Tegrと目標回転当たり吸気量Tgnがそれぞれ設定される。それら演算用のマップには、標準的な作動特性を有する装置において燃料消費量の低減や排気性状の悪化抑制を図ることが可能になる関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて設定されている。また本実施の形態では、目標EGR率Tegrの設定に用いる演算マップ(EGRマップ)が内燃機関10の気筒14毎に定められている。
その後、上記目標EGR率Tegrに基づいてEGR開度VRについての制御目標値(目標EGR開度Tvr)と吸気絞り弁13の開度についての制御目標値(目標絞り弁開度Tsl)とが設定される(ステップS103)。本実施の形態では、標準的な作動特性を有する装置において目標EGR率Tegrと実際のEGR率とを一致させることが可能になる目標EGR率Tegrと目標EGR開度Tvrとの関係や目標EGR率Tegrと目標絞り弁開度Tslとの関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。ステップS103の処理では、そうした関係に基づいて目標EGR開度Tvrおよび目標絞り弁開度Tslが設定される。
そして、上記目標絞り弁開度Tsl、前記目標回転当たり吸気量Tgn、および実回転当たり吸気量Rgnに基づいて吸気絞り弁13の開度制御が実行される(ステップS104)。詳しくは、吸気絞り弁13の開度制御として、目標絞り弁開度Tslを見込み制御量とする見込み制御と、目標回転当たり吸気量Tgnおよび実回転当たり吸気量Rgnの偏差に基づくフィードバック制御とが実行される。
その後、目標EGR開度Tvr、目標EGR率Tegr、および実EGR率Regrに基づいてEGR弁32の開弁制御が実行される(ステップS105)。詳しくはEGR弁32の開弁制御として、目標EGR開度Tvrを見込み制御量とする見込み制御と、目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrの偏差に基づくフィードバック制御とが実行される。
以下、内燃機関10の燃料噴射系について説明する。
図3に示すように、内燃機関10には気筒14(♯1,♯2,♯3,♯4)毎に燃料噴射弁16が設けられている。それら燃料噴射弁16は分岐通路51を介してコモンレール52に各別に接続されており、同コモンレール52は供給通路53を介して燃料タンク54に接続されている。この供給通路53には、燃料を圧送する燃料ポンプ55が取り付けられている。本実施の形態では、燃料ポンプ55による圧送によって昇圧された燃料がコモンレール52に蓄えられるとともに各燃料噴射弁16の内部に供給される。また、各燃料噴射弁16にはリターン通路56が接続されており、同リターン通路56はそれぞれ燃料タンク54に接続されている。このリターン通路56を介して燃料噴射弁16内部の燃料の一部が燃料タンク54に戻される。
図3に示すように、内燃機関10には気筒14(♯1,♯2,♯3,♯4)毎に燃料噴射弁16が設けられている。それら燃料噴射弁16は分岐通路51を介してコモンレール52に各別に接続されており、同コモンレール52は供給通路53を介して燃料タンク54に接続されている。この供給通路53には、燃料を圧送する燃料ポンプ55が取り付けられている。本実施の形態では、燃料ポンプ55による圧送によって昇圧された燃料がコモンレール52に蓄えられるとともに各燃料噴射弁16の内部に供給される。また、各燃料噴射弁16にはリターン通路56が接続されており、同リターン通路56はそれぞれ燃料タンク54に接続されている。このリターン通路56を介して燃料噴射弁16内部の燃料の一部が燃料タンク54に戻される。
以下、燃料噴射弁16の内部構造について説明する。
図4に示すように、燃料噴射弁16のハウジング61の内部にはニードル弁62が設けられている。このニードル弁62はハウジング61内において往復移動(同図の上下方向に移動)することの可能な状態で設けられている。ハウジング61の内部には上記ニードル弁62を噴射孔63側(同図の下方側)に常時付勢するスプリング64が設けられている。またハウジング61の内部には、上記ニードル弁62を間に挟んで一方側(同図の下方側)の位置にノズル室65が形成されており、他方側(同図の上方側)の位置に圧力室66が形成されている。
図4に示すように、燃料噴射弁16のハウジング61の内部にはニードル弁62が設けられている。このニードル弁62はハウジング61内において往復移動(同図の上下方向に移動)することの可能な状態で設けられている。ハウジング61の内部には上記ニードル弁62を噴射孔63側(同図の下方側)に常時付勢するスプリング64が設けられている。またハウジング61の内部には、上記ニードル弁62を間に挟んで一方側(同図の下方側)の位置にノズル室65が形成されており、他方側(同図の上方側)の位置に圧力室66が形成されている。
ノズル室65には、その内部とハウジング61の外部とを連通する噴射孔63が形成されており、導入通路67を介して上記分岐通路51(コモンレール52)から燃料が供給されている。圧力室66には連通路68を介して上記ノズル室65および分岐通路51(コモンレール52)が接続されている。また圧力室66は排出路69を介してリターン通路56(燃料タンク54)に接続されている。
上記燃料噴射弁16としては電気駆動式のものが採用されており、そのハウジング61の内部には駆動信号の入力によって伸縮する圧電素子(例えばピエゾ素子)が積層された圧電アクチュエータ70が設けられている。この圧電アクチュエータ70には弁体71が取り付けられており、同弁体71は圧力室66の内部に設けられている。そして、圧電アクチュエータ70の作動による弁体71の移動を通じて、連通路68(ノズル室65)と排出路69(リターン通路56)とのうちの一方が選択的に圧力室66に連通されるようになっている。
この燃料噴射弁16では、圧電アクチュエータ70に閉弁信号が入力されると、圧電アクチュエータ70が収縮して弁体71が移動し、連通路68と圧力室66とが連通された状態になるとともに、リターン通路56と圧力室66との連通が遮断された状態になる。これにより、圧力室66内の燃料のリターン通路56(燃料タンク54)への排出が禁止された状態で、ノズル室65と圧力室66とが連通されるようになる。そのため、ノズル室65と圧力室66との圧力差がごく小さくなり、ニードル弁62がスプリング64の付勢力によって噴射孔63を塞ぐ位置に移動して、このとき燃料噴射弁16は燃料が噴射されない状態(閉弁状態)になる。
一方、圧電アクチュエータ70に開弁信号が入力されると、圧電アクチュエータ70が伸長して弁体71が移動し、連通路68と圧力室66との連通が遮断された状態になるとともに、リターン通路56と圧力室66とが連通された状態になる。これにより、ノズル室65から圧力室66への燃料の流出が禁止された状態で、圧力室66内の燃料の一部がリターン通路56を介して燃料タンク54に戻されるようになる。そのため圧力室66内の燃料の圧力が低下して同圧力室66とノズル室65との圧力差が大きくなり、この圧力差によってニードル弁62がスプリング64の付勢力に抗して移動して噴射孔63から離れて、このとき燃料噴射弁16は燃料が噴射される状態(開弁状態)になる。
各燃料噴射弁16には、上記導入通路67の内部の燃料圧力PQに応じた信号を出力する燃料圧力センサ48が一体に取り付けられている。そのため、例えばコモンレール52(図1参照)内の燃料圧力などの燃料噴射弁16から離れた位置の燃料圧力が検出される装置と比較して、燃料噴射弁16の噴射孔63に近い部位の燃料圧力を検出することができ、燃料噴射弁16の開弁に伴う同燃料噴射弁16の内部の燃料圧力の変化を精度良く検出することができる。
本実施の形態では、基本的に、燃料噴射弁16の作動制御(燃料噴射制御)が次のように実行される。すなわち先ず、アクセルペダル19(図1参照)の踏み込み量ACおよび機関回転速度NEに基づいて目標燃料噴射量Tqが設定される。なお、この目標燃料噴射量Tqとしては各気筒14共通の値が設定される。その後、目標燃料噴射量Tqおよび機関回転速度NEに基づいて、パイロット噴射およびメイン噴射についての各種制御目標値が算出される。なおメイン噴射は機関トルクを発生させるための燃料噴射であり、パイロット噴射はメイン噴射の実行に先立ち少量の燃料を噴射するための燃料噴射である。そして、それら制御目標値に応じたかたちで各燃料噴射弁16が各別に開弁駆動される。これにより、そのときどきの内燃機関10の運転状態に見合う量の燃料が各燃料噴射弁16から噴射されて同内燃機関10の各気筒14内に供給されるようになる。なお各種制御目標値としては、メイン噴射についての噴射時期の制御目標値(目標メイン噴射時期Ttm)および噴射時間の制御目標値(目標メイン噴射時間Ttm)が算出される。その他、パイロット噴射についての噴射量の制御目標値(目標パイロット噴射量Tqp)や、パイロット噴射とメイン噴射との間隔についての制御目標値(目標インターバルTip)が算出される。
また本実施の形態では、そうした燃料噴射制御の実行に併せて、燃料ポンプ55の作動制御(レール圧制御)が実行される。このレール圧制御は、内燃機関10の運転状態に応じたかたちでコモンレール52内の燃料圧力(レール圧)を調節するべく実行される。具体的には、目標燃料噴射量Tqおよび機関回転速度NEに基づいて上記レール圧についての制御目標値(目標レール圧Tpr)が算出される。そして、この目標レール圧Tprと実際のレール圧とが一致するように燃料ポンプ55の作動が制御されてその燃料圧送量が調節される。
本実施の形態では、燃料噴射を内燃機関10の運転状態に応じたかたちで適正に実行するべく、燃料圧力センサ48により検出される燃料圧力PQをもとに燃料噴射率の検出時間波形を形成するとともに同検出時間波形に基づいて目標メイン噴射時期Tsmおよび目標メイン噴射時間Ttmを補正する処理(噴射量補正処理)が実行される。この噴射量補正処理は、内燃機関10の各気筒14について各別に実行される。以下、そうした噴射量補正処理について詳しく説明する。
燃料噴射弁16内部の燃料圧力は、燃料噴射弁16の開弁に伴って低下するとともにその後における同燃料噴射弁16の閉弁に伴って上昇するといったように、燃料噴射弁16の開閉動作に伴い変動する。そのため、燃料噴射の実行時における燃料圧力の変動波形を監視することにより、燃料噴射弁16の実動作特性(例えば、開弁動作が開始される時期や閉弁動作が開始される時期など)を精度良く把握することができる。
ここでは先ず、そうした燃料噴射の実行時における燃料圧力の変動波形(本実施の形態では、燃料噴射率の検出時間波形)を形成する手順について説明する。
図5に、燃料圧力PQの推移と燃料噴射率の検出時間波形との関係を示す。
図5に、燃料圧力PQの推移と燃料噴射率の検出時間波形との関係を示す。
同図5に示すように、本実施の形態では、燃料噴射弁16の開弁動作(詳しくはニードル弁62の開弁方向への移動)が開始される時期(開弁動作開始時期Tos)、燃料噴射率が最大になる時期(最大噴射率到達時期Toe)、燃料噴射率の降下が開始される時期(噴射率降下開始時期Tcs)、燃料噴射弁16の閉弁動作(詳しくはニードル弁62の閉弁方向への移動)が完了する時期(閉弁動作完了時期Tce)がそれぞれ検出される。
先ず、燃料噴射弁16の開弁動作が開始される直前の所定期間T1における燃料圧力PQの平均値が算出されるとともに、同平均値が基準圧力Pbsとして記憶される。この基準圧力Pbsは、閉弁時における燃料噴射弁16内部の燃料圧力に相当する圧力として用いられる。
次に、この基準圧力Pbsから所定圧力P1を減算した値が動作圧力Pac(=Pbse−P1)として算出される。この所定圧力P1は、燃料噴射弁16の開弁駆動あるいは閉弁駆動に際してニードル弁62が閉弁位置にある状態であるにも関わらず燃料圧力PQが変化する分、すなわちニードル弁62の移動に寄与しない燃料圧力PQの変化分に相当する圧力である。
その後、燃料噴射の実行開始直後において燃料圧力PQが降下する期間における同燃料圧力PQの一階微分値が算出される。そして、この一階微分値が最小になる点における燃料圧力PQの時間波形の接線L1が求められるとともに同接線L1と上記動作圧力Pacとの交点Aが算出される。この交点Aを燃料圧力PQの検出遅れ分だけ過去の時期に戻した点AAに対応する時期が開弁動作開始時期Tosとして特定される。なお上記検出遅れ分は、燃料噴射弁16のノズル室65(図4参照)の圧力変化タイミングに対する燃料圧力PQの変化タイミングの遅れに相当する期間であり、ノズル室65と燃料圧力センサ48との距離などに起因して生じる遅れ分である。
また、燃料噴射の実行開始直後において燃料圧力PQが一旦降下した後に上昇する期間における同燃料圧力PQの一階微分値が算出される。そして、この一階微分値が最大になる点における燃料圧力PQの時間波形の接線L2が求められるとともに同接線L2と上記動作圧力Pacとの交点Bが算出される。この交点Bを検出遅れ分だけ過去の時期に戻した点BBに対応する時期が閉弁動作完了時期Tceとして特定される。
さらに、接線L1と接線L2との交点Cが算出されるとともに同交点Cにおける燃料圧力PQと動作圧力Pacとの差(仮想圧力低下分ΔP[=Pac−PQ])が求められる。また、この仮想圧力低下分ΔPに目標燃料噴射量Tqおよび目標レール圧Tprに基づき設定されるゲインG1を乗算した値が仮想最大燃料噴射率VRt(=ΔP×G1)として算出される。さらに、この仮想最大燃料噴射率VRtに目標燃料噴射量Tqおよび目標レール圧Tprに基づき設定されるゲインG2を乗算した値が最大噴射率Rt(=VRt×G2)として算出される。
その後、上記交点Cを検出遅れ分だけ過去の時期に戻した時期CCが算出されるとともに、同時期CCにおいて仮想最大燃料噴射率VRtになる点Dが特定される。そして、この点Dおよび開弁動作開始時期Tos(詳しくは、同時期Tosにおいて燃料噴射率が「0」になる点)を繋ぐ直線L3と前記最大噴射率Rtとの交点Eに対応する時期が最大噴射率到達時期Toeとして特定される。
また、上記点Dおよび閉弁動作完了時期Tce(詳しくは、同時期Tceにおいて燃料噴射率が「0」になる点)を繋ぐ直線L4と最大噴射率Rtとの交点Fに対応する時期が噴射率降下開始時期Tcsとして特定される。
さらに、開弁動作開始時期Tos、最大噴射率到達時期Toe、噴射率降下開始時期Tcs、閉弁動作完了時期Tceおよび最大噴射率Rtによって形成される台形形状の時間波形が燃料噴射における燃料噴射率についての検出時間波形として用いられる。
次に、図6および図7を参照しつつ、そうした検出時間波形をもとに実行される噴射量補正処理の処理手順について詳細に説明する。
なお図6は上記噴射量補正処理の具体的な処理手順を示すフローチャートであり、同フローチャートに示される一連の処理は所定周期毎の割り込み処理として電子制御ユニット40により実行される。また、図7は検出時間波形と基本時間波形との関係の一例を示している。
なお図6は上記噴射量補正処理の具体的な処理手順を示すフローチャートであり、同フローチャートに示される一連の処理は所定周期毎の割り込み処理として電子制御ユニット40により実行される。また、図7は検出時間波形と基本時間波形との関係の一例を示している。
図6に示すように、この処理では先ず、上述したように燃料圧力PQに基づいて燃料噴射における検出時間波形が形成される(ステップS201)。また、アクセルペダル19の踏み込み量ACおよび機関回転速度NEなどといった内燃機関10の運転状態に基づいて、燃料噴射における燃料噴射率の時間波形についての基本値(基本時間波形)が設定される(ステップS202)。本実施の形態では、内燃機関10の運転状態と同運転状態に適した基本時間波形との関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。ステップS202の処理では、そのときどきの内燃機関10の運転状態に基づいて上記関係から基本時間波形が設定される。
図7に示すように、上記基本時間波形(一点鎖線)としては、開弁動作開始時期Tosb、最大噴射率到達時期Toeb、噴射率降下開始時期Tcsb、閉弁動作完了時期Tceb、最大噴射率により規定される台形の時間波形が設定される。
そして、そうした基本時間波形と前記検出時間波形(実線)とが比較されるとともに、その比較結果に基づいて前記目標メイン噴射時期Tsmを補正するための補正項K1と前記目標メイン噴射時間Ttmを補正するための補正項K2とがそれぞれ算出される。
具体的には、基本時間波形における開弁動作開始時期Tosbと検出時間波形における開弁動作開始時期Tosとの差ΔTosが算出されるとともに(図6のステップS203)、同差ΔTosと目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項K1が算出されて記憶される(ステップS204)。本実施の形態では、上記差ΔTosおよび目標燃料噴射量Tqおよび機関回転速度NEにより定まる状況と同差ΔTosを的確に補償することの可能な補正項K1との関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。ステップS204の処理では、この関係に基づいて補正項K1が算出される。
また、基本時間波形における噴射率降下開始時期Tcsb(図7)と検出時間波形における噴射率降下開始時期Tcsとの差ΔTcsが算出されるとともに(図6のステップS205)、同差ΔTcsと目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項K2が算出されて記憶される(ステップS206)。本実施の形態では、上記差ΔTcsおよび目標燃料噴射量Tqおよび機関回転速度NEにより定まる状況と同差ΔTcsを的確に補償することの可能な補正項K2との関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。ステップS206の処理では、この関係に基づいて補正項K2が算出される。
このようにして各補正項K1,K2が算出された後、本処理は一旦終了される。
燃料噴射制御の実行に際しては、目標メイン噴射時期Tsmを補正項K1によって補正した値(本実施の形態では、目標メイン噴射時期Tsmに補正項K1を加算した値)が最終的な目標メイン噴射時期Tsmとして算出される。このようにして目標メイン噴射時期Tsmを算出することにより、基本時間波形における開弁動作開始時期Tosbと検出時間波形における開弁動作開始時期Tosbとの間のずれが小さく抑えられるようになるため、メイン噴射の開始時期が内燃機関10の運転状態に応じたかたちで精度よく設定されるようになる。
燃料噴射制御の実行に際しては、目標メイン噴射時期Tsmを補正項K1によって補正した値(本実施の形態では、目標メイン噴射時期Tsmに補正項K1を加算した値)が最終的な目標メイン噴射時期Tsmとして算出される。このようにして目標メイン噴射時期Tsmを算出することにより、基本時間波形における開弁動作開始時期Tosbと検出時間波形における開弁動作開始時期Tosbとの間のずれが小さく抑えられるようになるため、メイン噴射の開始時期が内燃機関10の運転状態に応じたかたちで精度よく設定されるようになる。
また、目標メイン噴射時間Ttmを上記補正項K2によって補正した値(本実施の形態では、目標メイン噴射時間Ttmに補正項K2を加算した値)が最終的な目標メイン噴射時間Ttmとして算出される。このようにして目標メイン噴射時間Ttmを算出することにより、基本時間波形における噴射率降下開始時期Tcsbと検出時間波形における噴射率降下開始時期Tcsとの間のずれが小さく抑えられるようになるために、燃料噴射において燃料噴射率が低下し始める時期が内燃機関10の運転状態に応じたかたちで精度よく設定されるようになる。
本実施の形態では、燃料噴射弁16の実動作特性(詳しくは、検出時間波形)と予め定められた基本動作特性(詳しくは、基本時間波形)との差に基づいて目標メイン噴射時期Tsmや目標メイン噴射時間Ttmが補正されるために、燃料噴射弁16の実動作特性と基本動作特性(標準的な特性を有する燃料噴射弁の動作特性)とのずれが抑えられる。このようにしてメイン噴射の実行時期と実行時間とがそれぞれ内燃機関10の運転状態に見合うように適正に設定されるようになる。
なお、本実施の形態の装置では前記レール圧制御が実行される。そのため、同一の値だけ目標メイン噴射時期Tsmを変更した場合における開弁動作開始時期の変化量や、同一の値だけ目標メイン噴射時間Ttmを変更した場合における噴射率降下開始時期の変化量が前記レール圧に応じて異なったものとなる。本実施の形態では、各補正項K1,K2の算出に用いる算出パラメータとして、上記レール圧(詳しくは、目標レール圧Tprの算出パラメータである目標燃料噴射量Tqおよび機関回転速度NE)が採用されている。そのため、そのときどきのレール圧に応じたかたちで各補正項K1,K2を適正に算出することができる。
ここで、本実施の形態では目標燃料噴射量Tqとして内燃機関10の各気筒14共通の値が設定されるのに対して、各気筒14に設けられる燃料噴射弁16の動作特性はその個体差や経時変化に起因してそれぞれ異なる。そのため、目標燃料噴射量Tqに基づいて同一の制御態様で各燃料噴射弁16を作動させたところで、それらの動作特性の相異によって実際の燃料噴射量にばらつきが生じることが避けられない。したがって、上述したように目標燃料噴射量Tqと通路吸気量GAとに基づいてEGR弁32の開弁制御(EGR制御)を実行しても、気筒14間における実燃料噴射量のばらつきに起因して空燃比にもばらつきが生じてしまう。そして、そうした気筒14間における空燃比のばらつきに起因して、いずれかの気筒14においてEGR量の過多による白煙の発生を招いたりEGR量の不足によるNOxの増加を招いたりするおそれがある。
そのため本実施の形態では、内燃機関10の気筒14毎に、燃料圧力センサ48により検出される燃料圧力PQ(詳しくは、上記補正項K1,K2)に基づいて実燃料噴射量(詳しくは、後述する補正後噴射量RQ)を算出するとともに、同補正後噴射量RQと目標燃料噴射量Tqとに基づいて目標EGR率Tegrを補正するようにしている。これにより、各燃料噴射弁16の動作特性のばらつきによって気筒14間における実燃料噴射量のばらつきが発生し、これに起因して気筒14間における空燃比のばらつきが発生するとはいえ、EGR制御の実行を通じて、そうした空燃比のばらつきが抑えられるように各気筒14のEGR量をそれぞれ調節することができる。言い換えれば、各気筒14のEGR量を同EGR量の過多による白煙の発生やEGR量の不足によるNOxの増加を抑えることの可能な量、すなわち目標燃料噴射量Tqと実燃料噴射量との偏差による排気性状の悪化を的確に抑えることの可能な量にそれぞれ調節することができる。したがって、内燃機関10の気筒14間における空燃比のばらつきに起因する排気性状の悪化を好適に抑えることができるようになる。
排気性状を悪化させる要因としては、上述した内燃機関10の気筒14間における空燃比のばらつきの他にも、ハードウェアの個体差や経時変化(例えば燃料噴射弁16の噴射孔形状の相異や内燃機関10の吸気ポート形状の相異)に起因して生じる気筒14内における燃料の燃焼状態のばらつき等がある。また本実施の形態では、上述した実燃料噴射量と目標燃料噴射量Tqとの偏差に基づく目標EGR率Tegrの補正によって排気性状の悪化が抑制されるが、この補正によってEGR量が変化するために、その変化に伴って燃料の燃焼状態の若干の変化を招くおそれがある。
内燃機関10の気筒14内における燃料の燃焼状態が良好なときには、同燃料が短期間で燃焼するために、排気バルブが開弁されるときに未だ燃焼していない燃料(あるいは燃焼中の燃料)が少ない状態になる。そのため、燃焼ガスが温度の低くなった状態で排気通路18に排出されるようになり、このとき排気の温度が低くなる。これに対して、内燃機関10の気筒14内における燃料の燃焼状態が悪いときには、同燃料の燃焼が長い期間にわたって続くようになるため、燃焼ガスが温度の低くなる前、すなわち高い温度のままで排気通路18に排出されるようになり、このとき排気温度が高くなる。このことから、排気温度に基づいて内燃機関10の気筒14内における燃料の燃焼状態を把握することができると云える。
この点をふまえて本実施の形態では、内燃機関10の気筒14毎に、排気温度センサ47により検出される排気温度Texに応じたかたちで燃料噴射弁16からの燃料の噴射態様(具体的には、目標レール圧Tpr、目標メイン噴射時期Ttm、目標パイロット噴射量Tqp)を変更するようにしている。具体的には、排気温度Texから把握される燃料の燃焼状態が悪い気筒14においては同燃焼状態が良くなるように燃料の噴射態様が変更される一方、排気温度Texから把握される燃料の燃焼状態が過度に良い気筒14においては上記燃焼状態が悪くなるように燃料の噴射態様が変更される。これにより、内燃機関10の各気筒14における燃料の燃焼状態をそれぞれ良好に保ちつつ気筒14間における燃料の燃焼状態のばらつきを抑えることができるようになるため、そのばらつきに起因する排気性状の悪化を抑えることができるようになる。
以下、図8を参照しつつ、内燃機関10の気筒14間におけるばらつきを補正するための処理(ばらつき補正処理)について詳細に説明する。なお図8は上記ばらつき補正処理の具体的な実行手順を概念的に示すフローチャートであり、実際の処理は所定周期毎の割り込み処理として電子制御ユニット40により実行される。このばらつき補正処理は、内燃機関10の各気筒14について各別に実行される処理であり、燃料噴射弁16からの燃料噴射が実行される度に実行される。
図8に示すように、この処理では先ず、前記目標EGR率Tegrと実EGR率Regrとが一致しているか否かが判断される(ステップS301)。ここでは、目標EGR率Tegrと実EGR率Regrとの差の絶対値が所定値より小さいことをもって、目標EGR率Tegrと実EGR率Regrとが一致していると判断される。
また、空燃比の理想値DRと実空燃比A/Fとが一致しているか否かが判断される(ステップS302)。ここでは、空燃比の理想値DRが前記実回転当たり吸気量Rgnと目標燃料噴射量Tqとに基づいて算出される。そして、この理想値DRと実空燃比A/Fとの差の絶対値が所定値より小さいことをもって、理想値DRと実空燃比A/Fとが一致していると判断される。
そして、目標EGR率Tegrと実EGR率Regrとが一致していないと判断される場合(ステップS301:NO)や、理想値DRと実空燃比A/Fとが一致していないと判断される場合には(ステップS302:NO)、以下の処理を実行することなく、本処理は一旦終了される。このとき実EGR率Regrや実空燃比A/Fが変動している可能性が高く、目標EGR率Tegrや燃料の噴射態様を適正に補正することのできない状況であるとして、それらの補正が実行されない。
その後、本処理が繰り返し実行されて目標EGR率Tegrと実EGR率Regrとが一致しており、且つ理想値DRと実空燃比A/Fとが一致していると判断されると(ステップS301,S302が共に「YES」)、前述した噴射量補正処理(図6参照)による燃料噴射量の補正量Kqが算出されるとともに記憶される(ステップS303)。
なお、レール圧(目標燃料噴射量Tq、機関回転速度NE)によって単位時間当たりに燃料噴射弁16から噴射される燃料の量を把握することができ、各補正項K1,K2に基づいて補正による燃料噴射弁16の開弁時間の変化分を把握することができる。そのため、それらレール圧と各補正項K1,K2とに基づいて、補正項K1,K2を用いた補正によるメイン噴射の燃料噴射量の増減分(上記補正量Kq)を算出することができる。この点をふまえて本実施の形態では、目標燃料噴射量Tq、機関回転速度NE、および各補正項K1,K2により定まる状況と、同状況における上記燃料噴射量の増減分(補正量Kq)との関係が実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。ステップS303の処理では、そうした関係をもとに補正量Kqが算出される。
その後、目標燃料噴射量Tqに上記補正量Kqを加算した値が補正後噴射量RQとして算出されるとともに(ステップS304)、同補正後噴射量RQに基づいて目標EGR率Tegrの算出に用いられる演算用マップ(前記EGRマップ)が補正される(ステップS305)。本実施の形態では、ステップS303およびS304の処理が算出手段として機能し、ステップS305の処理が補正手段として機能する。
図9に示すように、EGRマップには、気筒14毎に、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEと目標EGR率Tegrとの関係が定められている。
そして、ステップS305の処理では先ず、上記補正後噴射量RQを目標燃料噴射量Tqとして用いて、同補正後噴射量RQと機関回転速度NEとに基づいて上記EGRマップから目標EGR率Tegr(例えば図中にJで示す運転領域に対応する値)が算出される。ここではEGRマップに記憶されている目標EGR率Tegrのうちの補正後噴射量RQに見合う値、すなわち実際の燃料噴射量に見合う値が算出される。
そして、ステップS305の処理では先ず、上記補正後噴射量RQを目標燃料噴射量Tqとして用いて、同補正後噴射量RQと機関回転速度NEとに基づいて上記EGRマップから目標EGR率Tegr(例えば図中にJで示す運転領域に対応する値)が算出される。ここではEGRマップに記憶されている目標EGR率Tegrのうちの補正後噴射量RQに見合う値、すなわち実際の燃料噴射量に見合う値が算出される。
その後、そのようにして算出された目標EGR率Tegrが、このときの実際の目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとにより定まる運転領域(例えば図中にKで示す領域)に対応する値として記憶される。すなわち、実際の燃料噴射量に見合う値(目標EGR率Tegr)が、このときのアクセルペダル19の踏み込み量ACと機関回転速度NEとにより定まる機関運転領域において算出される値になるように、EGRマップが更新される。
このようにしてEGRマップを補正することにより、以後においてはこのときの上記補正後噴射量RQに見合う値、言い換えれば実際の燃料噴射量に見合う値が目標EGR率Tegrとして算出されるようになる。そして、こうした処理を各気筒14に対応するEGRマップについて繰り返し実行することにより、それらEGRマップが気筒14間における空燃比のばらつきによる排気性状の悪化が抑えられるように各別に補正されるようになる。そのため、このEGRマップをもとに空燃比のばらつきに起因する排気性状の悪化を的確に抑えることの可能な値を目標EGR率Tegrとして気筒14毎に各別に算出することができるようになる。
その後、機関回転速度NEと目標燃料噴射量Tqとに基づいて、排気温度についての理想値Ttexが算出される(ステップS306)。この理想値Ttexとしては、機関回転速度NEが高いときほど、また目標燃料噴射量Tqが多いときほど、高い温度が算出される。
そして、上記理想値Ttexと排気温度Texとが不一致であるか否かが判断される(ステップS307)。この排気温度Texとしては、予め定められた所定のクランク角(具体的には、排気バルブの開弁が開始されるクランク角より若干後の角度)であるときに排気温度センサ47により検出される温度が用いられる。このステップS307の処理では、理想値Ttexと排気温度Texとの差の絶対値が所定値以上であることをもって、理想値Ttexと排気温度Texとが不一致であると判断される。
上記理想値Ttexと排気温度Texとが一致していると判断される場合には(ステップS307:NO)、このとき燃料の燃焼状態が適正な状態になっているために、燃料の噴射態様を補正する必要がないとして、以下の処理を実行することなく、本処理は一旦終了される。
一方、上記理想値Ttexと排気温度Texとが不一致であると判断される場合には(ステップS307:YES)、燃料の燃料状態が適正な状態からずれているために排気性状の悪化を招くおそれがあるとして、燃料の噴射態様の補正が実行される(ステップS308)。本実施の形態では、そうした燃料の噴射態様として、レール圧、メイン噴射の噴射時期、およびパイロット噴射の噴射量が採用されている。なお本実施の形態では、ステップS307およびS308の処理が変更手段として機能する。
ここでは先ず、レール圧(具体的には、目標レール圧Tpr)の補正について詳しく説明する。
本実施の形態では、目標レール圧Tprを補正するための補正項Kprが設定されている。また図10に示すように、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項Kprを算出するための演算マップが予め定められて電子制御ユニット40に記憶されている。そして、この演算マップをもとに算出される補正項Kprを目標レール圧Tprに加算することにより、同目標レール圧Tprが補正される。
本実施の形態では、目標レール圧Tprを補正するための補正項Kprが設定されている。また図10に示すように、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項Kprを算出するための演算マップが予め定められて電子制御ユニット40に記憶されている。そして、この演算マップをもとに算出される補正項Kprを目標レール圧Tprに加算することにより、同目標レール圧Tprが補正される。
レール圧が高いときほど燃料噴射時における燃料の微粒子化が促進されて気筒14内における燃料の燃焼状態が良好になるため、図11に示すように、レール圧が高いときほど排気温度Texも高くなる。
この点をふまえて、ステップS308の処理では、目標レール圧Tprを補正するべく、このときの目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとにより定まる運転領域(例えば図中にLで示す領域)の補正項Kprが次のように更新される。すなわち、排気温度Texが理想値Ttex以下である場合(Tex≦Ttex)には上記補正項Kprに所定値αを加算した値(Kpr+α)が新たな補正項Kprとして記憶される。一方、排気温度Texが理想値Ttexより高い場合(Tex>Ttex)には、補正項Kprから所定値αを減算した値(Kpr−α)が新たな補正項Kprとして記憶される。なお、所定値αとしては、排気温度Texの不要な変動を抑えつつ同排気温度Texを理想値Ttexに収束させることの可能な一定値が、実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。このようにして演算マップ(図10参照)を補正することにより、同演算マップに記憶されている各値(補正項Kpr)が理想値Ttexと排気温度Texとの差が小さくなる値に更新されるようになる。これにより、燃料の燃焼状態の悪化による排気性状の悪化が抑えられるようになる。
次に、メイン噴射の噴射時期(具体的には、目標メイン噴射時期Tsm)の補正について詳しく説明する。
本実施の形態では、目標メイン噴射時期Tsmを補正するための補正項Ksmが設定されている。また図12に示すように、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項Ksmを算出するための演算マップが予め定められて電子制御ユニット40に記憶されている。そして、この演算マップをもとに算出される補正項Ksmを目標メイン噴射時期Tsmに加算することにより、同目標メイン噴射時期Tsmが補正される。
本実施の形態では、目標メイン噴射時期Tsmを補正するための補正項Ksmが設定されている。また図12に示すように、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項Ksmを算出するための演算マップが予め定められて電子制御ユニット40に記憶されている。そして、この演算マップをもとに算出される補正項Ksmを目標メイン噴射時期Tsmに加算することにより、同目標メイン噴射時期Tsmが補正される。
内燃機関10の運転に際しては、基本的に、メイン噴射の噴射時期が早いときほど、燃料が噴射されてから同燃料が着火するまでの時間が長くなって気筒14内における燃料と空気との混合が進むために、燃料の燃焼状態が良好になる。そのため図13に示すように、メイン噴射の噴射時期が早いときほど排気温度Texも高くなる。
この点をふまえて、ステップS308の処理では、目標メイン噴射時期Tsmを補正するべく、このときの目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとにより定まる運転領域(例えば図中にMで示す領域)の補正項Ksmが次のように更新される。すなわち、排気温度Texが理想値Ttex以下である場合には上記補正項Ksmに所定値βを加算した値(Ksm+β)が新たな補正項Ksmとして記憶される。一方、排気温度Texが理想値Ttexより高い場合には、補正項Ksmから所定値βを減算した値(Ksm−β)が新たな補正項Ksmとして記憶される。なお、所定値βとしては、排気温度Texの不要な変動を抑えつつ同排気温度Texを理想値Ttexに収束させることの可能な一定値が、実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。このようにして演算マップ(図12参照)を補正することにより、同演算マップに記憶されている各値(補正項Ksm)が理想値Ttexと排気温度Texとの差が小さくなる値に更新されるようになる。これにより、燃料の燃焼状態の悪化による排気性状の悪化が抑えられるようになる。
次に、パイロット噴射の噴射量(具体的には、目標パイロット噴射量Tqp)の補正について詳しく説明する。
本実施の形態では、目標パイロット噴射量Tqpを補正するための補正項Kqpが設定されている。また図14に示すように、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項Kqpを算出するための演算マップが予め定められて電子制御ユニット40に記憶されている。そして、この演算マップをもとに算出される補正項Kqpを目標パイロット噴射量Tqpに加算することにより、同目標パイロット噴射量Tqpが補正される。
本実施の形態では、目標パイロット噴射量Tqpを補正するための補正項Kqpが設定されている。また図14に示すように、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとに基づいて補正項Kqpを算出するための演算マップが予め定められて電子制御ユニット40に記憶されている。そして、この演算マップをもとに算出される補正項Kqpを目標パイロット噴射量Tqpに加算することにより、同目標パイロット噴射量Tqpが補正される。
内燃機関10の運転に際しては基本的に、パイロット噴射の噴射量が多いときほど、同パイロット噴射によって気筒14内に形成される火種が大きくなるために、気筒14内における燃料の燃焼状態が良好になる。そのため図15に示すように、パイロット噴射の噴射量が多いときほど排気温度Texも高くなる。
この点をふまえて、ステップS308の処理では、目標パイロット噴射量Tqpを補正するべく、このときの目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEとにより定まる運転領域(例えば図中にNで示す領域)の補正項Kqpが次のように更新される。すなわち、排気温度Texが理想値Ttex以下である場合には上記補正項Kqpに所定値γを加算した値(Kqp+γ)が新たな補正項Kqpとして記憶される。一方、排気温度Texが理想値Ttexより高い場合には、補正項Kqpから所定値γを減算した値(Kqp−γ)が新たな補正項Kqpとして記憶される。なお、所定値γとしては、排気温度Texの不要な変動を抑えつつ同排気温度Texを理想値Ttexに収束させることの可能な一定値が、実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて電子制御ユニット40に記憶されている。このようにして演算マップ(図14参照)を補正することにより、同演算マップに記憶されている各値(補正項Kqp)が理想値Ttexと排気温度Texとの差が小さくなる値に更新されるようになる。これにより、燃料の燃焼状態の悪化による排気性状の悪化が抑えられるようになる。
そして、こうしたステップS308の処理を繰り返し実行することにより、燃料の燃焼状態の悪化による排気性状の悪化が的確に抑えられる態様で、各演算マップ(図10、図12、図14参照)がそれぞれ補正されるようになる。そのため、それら演算マップをもとに燃焼状態の悪化による排気性状の悪化を的確に抑えることの可能な値を各補正項Kpr,Ksm,Kqpとして算出することができ、それら補正項Kpr,Ksm,Kqpをもとに目標レール圧Tpr、目標メイン噴射時期Tsm、目標パイロット噴射量Tqpとして適切な値を設定することができる。このようにして燃料の噴射態様が補正された後、本処理は一旦終了される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)内燃機関10の気筒14毎に、燃料圧力センサ48により検出される燃料圧力PQの変動態様に基づいて補正後噴射量RQを算出するとともに、同補正後噴射量RQと目標燃料噴射量Tqとに基づいて目標EGR率Tegrを補正するようにした。そのため、各燃料噴射弁16の動作特性のばらつきに起因して気筒14間における空燃比のばらつきが発生するとはいえ、EGR弁制御の実行を通じて、そうした空燃比のばらつきが抑えられるように各気筒14のEGR量をそれぞれ調節することができる。したがって、内燃機関10の気筒14間における空燃比のばらつきに起因する排気性状の悪化を好適に抑えることができるようになる。
(1)内燃機関10の気筒14毎に、燃料圧力センサ48により検出される燃料圧力PQの変動態様に基づいて補正後噴射量RQを算出するとともに、同補正後噴射量RQと目標燃料噴射量Tqとに基づいて目標EGR率Tegrを補正するようにした。そのため、各燃料噴射弁16の動作特性のばらつきに起因して気筒14間における空燃比のばらつきが発生するとはいえ、EGR弁制御の実行を通じて、そうした空燃比のばらつきが抑えられるように各気筒14のEGR量をそれぞれ調節することができる。したがって、内燃機関10の気筒14間における空燃比のばらつきに起因する排気性状の悪化を好適に抑えることができるようになる。
(2)内燃機関10の気筒14毎に、補正後噴射量RQに基づくEGRマップの補正を実行することによって目標EGR率Tegrを補正するようにした。そのため、気筒14毎に設定された目標EGR率Tegrの設定に用いる演算マップを、気筒14間における空燃比のばらつきによる排気性状の悪化が抑えられるように各別に補正することができる。したがって、そうした演算マップ(EGRマップ)をもとに、空燃比のばらつきに起因する排気性状の悪化を的確に抑えることの可能な値を目標EGR率Tegrとして気筒14毎に各別に算出することができる。
(3)内燃機関10の気筒14毎に、排気温度センサ47により検出される排気温度Texに基づいて燃料噴射弁16からの燃料の噴射態様を変更するようにした。そのため、内燃機関10の各気筒14における燃料の燃焼状態をそれぞれ良好に保ちつつ気筒14間における燃料の燃焼状態のばらつきを抑えることができ、そのばらつきに起因する排気性状の悪化を抑えることができる。
(4)燃料圧力センサ48を燃料噴射弁16に一体に取り付けるようにした。そのため、例えばコモンレール52内の燃料圧力などの燃料噴射弁16から離れた位置の燃料圧力が検出される装置と比較して、燃料噴射弁16の噴射孔63に近い部位の燃料圧力を検出することができ、燃料噴射弁16の開弁に伴う同燃料噴射弁16の内部の燃料圧力の変化を精度良く検出することができる。したがって、燃料圧力センサ48により検出される燃料圧力PQの変動波形に基づいて補正後噴射量RQを精度よく算出することができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・ばらつき補正処理(図8)によるEGRマップの補正や燃料の噴射態様の補正を、燃料噴射が実行される度に実行することに代えて、例えば内燃機関10の出力軸17が所定回数(例えば500回)だけ回転する度に実行したり、内燃機関10が所定時間だけ運転される度に実行したりしてもよい。要は、予め定めた所定期間毎にEGRマップの補正や燃料の噴射態様の補正を実行することができればよい。
・ばらつき補正処理(図8)によるEGRマップの補正や燃料の噴射態様の補正を、燃料噴射が実行される度に実行することに代えて、例えば内燃機関10の出力軸17が所定回数(例えば500回)だけ回転する度に実行したり、内燃機関10が所定時間だけ運転される度に実行したりしてもよい。要は、予め定めた所定期間毎にEGRマップの補正や燃料の噴射態様の補正を実行することができればよい。
・ばらつき補正処理において、補正後噴射量RQに基づいてEGRマップを補正した後に、燃料の噴射態様の補正に合わせて同EGRマップをさらに補正する処理を実行するようにしてもよい。ここで、上記実施の形態では、ばらつき補正処理における燃料噴射態様の変更(図8のステップS306〜S308の処理)を通じて、燃料の燃焼状態の気筒14間におけるばらつきが抑えられる。しかしながら、このとき燃料の噴射態様が変更される分だけ内燃機関10の運転状態に見合うEGR量が変化してしまうために、これに起因して若干であるとはいえ排気性状の悪化を招くおそれがある。この点、上記構成によれば、ばらつき補正処理における燃料の噴射態様の変更によって適切なEGR量が変化する場合に、その変化分を補償するべくEGRマップを補正することができるために、排気性状の悪化を好適に抑えることができる。なお上記構成では、燃料の噴射態様の補正に合わせて同EGRマップをさらに補正する処理が、追加補正手段として機能する。
・ばらつき補正処理のステップS308の処理において、排気温度Texが理想値Ttexより高い場合に、燃料の燃焼状態が悪くなるように燃料の噴射態様を変更することに代えて、燃料の噴射態様を変更しないようにしてもよい。同構成によっても、排気温度Texが理想値Ttex以下になる気筒14、すなわち燃料の燃焼状態が悪い気筒14について同燃焼状態が良くなるように燃料の噴射態様を変更することができるため、各気筒14における燃料の燃焼状態をそれぞれ良好に保ちつつ気筒14間における燃料の燃焼状態のばらつきを抑えることができる。
・ばらつき補正処理のステップS308の処理において、補正項Kprの算出に用いる演算マップ(図10)を補正する構成、補正項Ksmの算出に用いる演算マップ(図12)を補正する構成、補正項Kqpの算出に用いる演算マップ(図14)を補正する構成のうちの何れか一つを省略することができる。また、それら構成にうちの何れか二つを省略することもできる。
・EGRマップ(図9)や、補正項Kprの算出に用いる演算マップ(図10)、補正項Ksmの算出に用いる演算マップ(図12)、補正項Kqpの算出に用いる演算マップ(図14)に代えて、目標燃料噴射量Tqおよび機関回転速度NEに基づいて制御目標値を算出するための演算式をそれぞれ設定するようにしてもよい。こうした構成では、目標EGR率Tegrの算出に用いる演算式を補正後噴射量RQに基づいて補正したり、補正項Kprの算出に用いる演算式や、補正項Ksmの算出に用いる演算式、並びに補正項Kqpの算出に用いる演算式を理想値Ttexと排気温度Texとの比較結果に基づいて補正したりすればよい。
・排気温度Texに応じて燃料の噴射態様を補正する処理(図8のステップS306〜S308の処理)を省略してもよい。
・ばらつき補正処理のステップS305の処理では、補正後噴射量RQおよび機関回転速度NEに基づく目標EGR率Tegrの算出と、その算出した目標EGR率Tegrに基づくマップ値の更新とを共通のEGRマップ(図9参照)をもとに行うようにした。このEGRマップとは別に、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEと目標EGR率Tegrとの関係であり且つ標準的な作動特性を有する装置において燃料消費量の低減や排気性状の悪化抑制を図ることの可能な関係が設定された基本マップを設定するようにしてもよい。そして、この基本マップをもとに補正後噴射量RQおよび機関回転速度NEに基づく目標EGR率Tegrの算出を行う一方、算出した目標EGR率Tegrに基づくマップ値の更新を上記EGRマップに対して行うようにしてもよい。こうした構成によれば、基準となる関係(上記基本マップ)をもとに算出した目標EGR率TegrによってEGRマップを補正することができるようになる。
・ばらつき補正処理のステップS305の処理では、補正後噴射量RQおよび機関回転速度NEに基づく目標EGR率Tegrの算出と、その算出した目標EGR率Tegrに基づくマップ値の更新とを共通のEGRマップ(図9参照)をもとに行うようにした。このEGRマップとは別に、目標燃料噴射量Tqと機関回転速度NEと目標EGR率Tegrとの関係であり且つ標準的な作動特性を有する装置において燃料消費量の低減や排気性状の悪化抑制を図ることの可能な関係が設定された基本マップを設定するようにしてもよい。そして、この基本マップをもとに補正後噴射量RQおよび機関回転速度NEに基づく目標EGR率Tegrの算出を行う一方、算出した目標EGR率Tegrに基づくマップ値の更新を上記EGRマップに対して行うようにしてもよい。こうした構成によれば、基準となる関係(上記基本マップ)をもとに算出した目標EGR率TegrによってEGRマップを補正することができるようになる。
・燃料圧力センサ48により検出される燃料圧力PQに基づいて制御目標値を補正する処理が、メイン噴射の制御目標値に適用されることに加えて、パイロット噴射の制御目標値(目標パイロット噴射量Tqpや目標インターバルTip)に適用される装置にも、上記実施の形態の装置はその構成を適宜変更した上で適用することができる。同装置においては、メイン噴射の制御目標値の補正による燃料噴射量の増減分とパイロット噴射の制御目標値の補正による燃料噴射量の増減分とを加算した値を補正後噴射量として算出するとともに、同補正後噴射量に基づいてEGRマップ(または演算式)を補正するようにすればよい。
・補正後噴射量RQと目標燃料噴射量Tqとの差や比などといった乖離度合いを算出するとともに、その乖離度合いに基づいてEGRマップ(詳しくは、そのときどきの目標燃料噴射量Tqおよび機関回転速度NEにより定まる運転領域に対応する目標EGR率Tegr)を補正するようにしてもよい。こうした構成によっても、EGR制御の実行を通じて、各気筒14のEGR量を目標燃料噴射量Tqと実燃料噴射量との偏差による排気性状の悪化を的確に抑えることの可能な量にそれぞれ調節することが可能になる。
・補正量Kqおよび補正後噴射量RQを算出することに代えて、燃料圧力センサ48により検出される燃料圧力PQの変動態様(詳しくは、検出時間波形と燃料噴射率「0」とにより囲まれる部分の面積)に基づいて実燃料噴射量を算出するようにしてもよい。
・空燃比センサ46を、排気通路18における排気浄化装置18aより下流側に取り付けることに代えて、同排気通路18における排気浄化装置18aより排気流れ方向上流側(例えば、排気マニホールド)に取り付けるようにしてもよい。
・燃料噴射弁16の内部(詳しくは、ノズル室65内)の燃料圧力の指標となる圧力、言い換えれば同燃料圧力の変化に伴って変化する燃料圧力を適正に検出することができるのであれば、燃料圧力センサ48を燃料噴射弁16に直接取り付けることに限らず、同燃料圧力センサ48の取り付け態様は任意に変更することができる。具体的には、燃料圧力センサ48を分岐通路51やコモンレール52に取り付けるようにしてもよい。
・圧電アクチュエータ70により駆動されるタイプの燃料噴射弁16に代えて、例えばソレノイドコイルなどを備えた電磁アクチュエータによって駆動されるタイプの燃料噴射弁を採用することもできる。
・本発明は、四つの気筒を有するディーゼル機関に限らず、二つの気筒を有するディーゼル機関や三つの気筒を有するディーゼル機関、あるいは五つ以上の気筒を有するディーゼル機関にも適用することができる。またディーゼル機関に限らず、ガソリンを燃料として用いるガソリン機関や、液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)、ジメチルエーテル(DME)などの液化ガスを燃料として用いる内燃機関(液化ガス機関)にも、本発明は適用することができる。
10…内燃機関、11…吸気通路、12…インタークーラ、13…吸気絞り弁、14…気筒、16…燃料噴射弁、17…出力軸、18…排気通路、18a…排気浄化装置、19…アクセルペダル、20…過給器、21…コンプレッサ、21a…コンプレッサホイール、22…タービン、22a…タービンホイール、30…排気再循環(EGR)システム、31…EGR通路、32…EGR弁、33…EGRクーラ、40…電子制御ユニット、41…回転速度センサ、42…開度センサ、43…過給圧センサ、44…アクセルセンサ、45…エアフロメータ、46…空燃比センサ、47…排気温度センサ、48…燃料圧力センサ、51…分岐通路、52…コモンレール、53…供給通路、54…燃料タンク、55…燃料ポンプ、56…リターン通路、61…ハウジング、62…ニードル弁、63…噴射孔、64…スプリング、65…ノズル室、66…圧力室、67…導入通路、68…連通路、69…排出路、70…圧電アクチュエータ、71…弁体。
Claims (8)
- 機関排気通路および機関吸気通路を連通する排気再循環通路と同排気再循環通路の通路断面積を変更する排気再循環弁とを有する排気再循環システム、および、気筒毎に設けられた燃料噴射弁を備え、機関運転状態に基づき前記排気再循環弁の開弁制御にかかる制御目標値を設定するとともに同制御目標値に基づき前記開弁制御を実行し、機関運転状態に基づき各気筒共通の目標燃料噴射量を設定するとともに同目標燃料噴射量に基づいて各燃料噴射弁の作動制御を実行する多気筒内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の気筒毎に設けられて、燃料噴射の実行に伴う前記燃料噴射弁内部の実燃料圧力の変化に伴って変化する燃料圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサにより検出される燃料圧力の変動態様に基づいて実燃料噴射量を算出する算出手段と、
前記気筒毎に、前記算出手段により算出した実燃料噴射量と前記目標燃料噴射量とに基づいて前記制御目標値を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。 - 請求項1に記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
当該制御装置は、前記気筒毎に、前記制御目標値の設定に用いる関係であり且つ前記目標燃料噴射量を含む前記機関運転状態と前記制御目標値との関係が予め記憶されてなり、
前記補正手段は、前記気筒毎に、前記関係を補正することによって前記制御目標値の補正を行うものである
ことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。 - 請求項1または2に記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
当該制御装置は、前記気筒毎に、排気温度を検出する温度センサが設けられてなるとともに、該温度センサにより検出された排気温度に基づいて前記燃料噴射弁からの燃料の噴射態様を変更する変更手段をさらに備える
ことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。 - 請求項3に記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
前記噴射態様は、前記燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力である
ことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。 - 請求項3または4に記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
前記噴射態様は、前記燃料噴射弁からの燃料噴射を実行する時期を含む
ことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。 - 請求項3〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
当該制御装置は、前記燃料噴射弁の作動制御を通じて、機関トルクを発生させるためのメイン噴射と同メイン噴射の実行に先立ち少量の燃料を噴射するパイロット噴射とを実行するものであり、
前記噴射態様は、前記パイロット噴射における噴射量を含む
ことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。 - 請求項3〜6のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
当該制御装置は、前記変更手段による前記噴射態様の変更に合わせて、前記制御目標値をさらに補正する追加補正手段を備える
ことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
前記圧力センサは前記燃料噴射弁に取り付けられてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。
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