JP2012101951A - 多結晶材料および多結晶材料の製造方法 - Google Patents

多結晶材料および多結晶材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粒成長が抑制され緻密で優れた機械的特性を備えた多結晶材料とその多結晶材料の簡便且つ効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】母材粒子電荷調整工程S21および繊維状物質電荷調整工程S22にてそれぞれ得られた母材粒子と繊維状物質とを混合して、両者を静電的引力によって結合させ、複合化する。繊維状物質の配合量を調節することで、疎密な状態でありつつ母材粒子の表面を包接する態様(網目状に包接)で、繊維状物質が母材粒子に付着された複合粒子を生成することができる。母材粒子が焼結する焼成温度において、繊維状物質は実質変化を起こさないものが選択されている。このため、焼成工程S4を経て得られる本多結晶材料は、粒成長が抑制され、結晶粒が微細で緻密、且つ、均質なものとなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、多結晶材料とその多結晶材料の製造方法とに関し、特に、粒成長が抑制され緻密で優れた機械的特性を備えた多結晶材料とその多結晶材料の製造方法に関する。
近年、セラミック材料は構造材料として、また耐熱性材料として様々な分野において用いられており、集積回路の基板やパッケージ、焼成用容器やセッター、電気炉の炉心管などとして広く普及している。このセラミック材料は、一般に、原料粉末を乾式や湿式の成形法によって成形し、その後に焼成、焼結して製造される。
焼成により、成形体中の原料粉末粒子の接触する界面では、構成成分の拡散が生じ、接合部を次第に成長させつつ(粒成長)気孔が排出され、バルク全体での緻密化が進行する(焼結)。セラミック材料の多くは、かかる焼結によって生成される多結晶体、即ち、微結晶の集合体である多結晶材料である。
多結晶材料においては、結晶粒子の微細化は、その各種物性、特に力学特性を改善させるために重要な要素である。つまり、結晶粒子が小さいほど多結晶材料は緻密で均質となり、機械的強度、耐摩耗性等を向上させることができるのである。したがって、力学特性に優れ、信頼性の高いセラミック材料を作製するためには、如何に粒成長を抑制しつつ、微細な結晶粒子で多結晶構造を実現するかが必要とされている。
成形体を緻密化させるには高温で焼成することが望ましいが、高温での焼成は、緻密化の促進のみならず、異常粒成長の原因となる。異常粒成長が生じると気孔の消滅も困難となり易く、大きく成長した結晶粒子や気孔の存在により、バルク全体の緻密性と均質性を大きく低下させてしまい同時に機械強度の低下を招く。
このため粒成長を抑制しつつ焼結体を緻密化する手法として、特許文献1には、特殊な焼結助剤を添加する方法が提案されている。また、特許文献2には、第二相としての異種粒子を添加することで粒成長を抑制(ピン止め効果)させる手法が提案されている。
更には、特許文献3には、大径粉末と小径粉末との混合物に電場を印加してメカノケミカル反応により大径粉末の表面に小径粉末を担持させた最大粒径1000nmのセラミック粉末を作製し、当該セラミック粉末を用いることで粒成長が抑制された焼結体を得る技術が提案されている。また、特許文献4には、ジルコニアナノ粒子にて均一に被覆されたアルミナ粒子を成形、焼結することで得られる気孔が低減され緻密で高靭性、高抗折強度のアルミナ焼結体が提案されている。
特開2003−112963 特開2009−298654 特開2006−206364 特開2005−306635
しかしながら、特許文献1に記載された焼結助剤の添加による方法は、材料種に依存した個別の助剤を選ぶ必要がある。このため、材料種が変更されるごとに新たに焼結助剤の選定やその組成の最適化を行わなくてはならず煩雑であるという問題点があった。その上、適切な焼結助剤の選定には経験的な要素が大きく、高度な熟練性が必要になるという問題点があった。
また、特許文献2に記載の異種粒子の添加による方法は、異種粒子をマトリックス内に高分散させるために、機械的な撹拌を長時間にわたり行わなければならないため、生産効率が低いという問題点があった。特許文献3に記載の技術も同様に、混合を行いながらメカノケミカル反応を行うため機械的な撹拌を十分に行うことが必須となり生産効率が低くなる。更に、かかる特許文献2、3に記載された技術では、機械的な撹拌力に頼って混合、分散を行おうとするものであるため、混合むら、分散不良が生じかねない。分散不良が生じると、混合成分(異種粒子や小径粉末)が偏在することとなり、均質な焼結体を得ることが困難になるという問題点があった。
加えて、特許文献4に記載された技術では、アルミナ粒子を被覆する量のジルコニア粒子が必要となるため、母材粒子の特性を維持することが困難になるという問題点があった。言い換えれば、当該技術は、添加物のジルコニアの性質を積極的に反映することを目的としており、アルミナとジルコニアとの組合せに特化したものである。従って、かかる手法を他のセラミック材料に適用した場合には、本来必要とされる母材の特性を保持できないといった不具合が生じかねないという問題点があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、粒成長が抑制され緻密で優れた機械的特性を備えた多結晶材料とその多結晶材料の簡便且つ効率的な製造方法を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載の多結晶材料は、焼結によって生成されたものであって、主成分となる母材粒子と、その母材粒子とは異なる物質で構成される繊維状物質とを含み、前記繊維状物質は、前記母材粒子の表面上において繊維の長手方向が前記母材粒子の外形に沿って付着した状態で包含されている。
尚、繊維状物質とは、異方性を有する細長い形状のものであって、母材粒子の表面形状に沿って配置されるものであれば、特に限定されるものではなく、いわゆるファイバーのみならず、チューブやワイヤーと称されるものをも含む概念である。
請求項2記載の多結晶材料は、原料粉末を焼結して生成されるものであって、前記原料粉末は、母材粒子に対し繊維状物質をその繊維の長手方向が前記母材粒子の外形に沿って付着した状態で前記母材粒子と前記繊維状物質とを複合化した複合粒子を含むものであり、前記複合粒子の繊維状物質の拡散速度が前記母材粒子に比べて遅い焼成温度において、前記原料粉末を焼成して生成される。
尚、繊維状物質とは、異方性を有する細長い形状のものであって、母材粒子の表面形状に沿って配置されるものであれば、得に限定されるものではなく、いわゆるファイバーのみならず、チューブやワイヤーと称されるものをも含む概念である。
また、繊維状物質の拡散速度が前記母材粒子に比べて遅いとは、その焼成温度において、昇華、分解、溶融、固相拡散などの物理的、化学的変化の速度が、母材粒子よりも遅いことを意味するものである。
請求項3記載の多結晶材料は、請求項1または2に記載の多結晶材料において、前記繊維状物質は、前記母材粒子を網目状に包接する態様で前記母材粒子に付着されている。
請求項4記載の多結晶材料は、請求項1から3のいずれかに記載の多結晶材料において、前記母材粒子は、一次粒子、または、該一次粒子が集合した集合体である。
請求項5記載の多結晶材料は、請求項1から4のいずれかに記載の多結晶材料において、前記複合粒子の繊維状物質は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーである。
請求項6記載の多結晶材料は、請求項1から5のいずれかに記載の多結晶材料において、前記複合粒子の母材粒子は、アルミナ粉末である。
請求項7記載の多結晶材料の製造方法は、焼結によって多結晶材料を作製するものであって、母材粒子と繊維状物質とを複合化して複合粒子を生成する複合粒子生成工程と、その複合粒子生成工程にて得られた前記複合粒子が含まれる原料粉末を用いて成形体を形成する成形工程と、その成形工程にて形成された前記成形体を焼成して焼結する焼結工程とを備えており、前記複合粒子生成工程は、前記母材粒子の表面電荷と前記繊維状物質の表面電荷とが反対の極性となるように表面処理を行う表面処理工程を有し、その表面処理工程によりそれぞれ反対の極性が付与された前記母材粒子と前記繊維状物質とを混合し、静電吸着力によって前記母材粒子に対し前記繊維状物質がその繊維の長手方向を前記母材粒子の外形に沿った形状で付着した複合粒子を生成するものであり、前記焼結工程は、前記繊維状物質の拡散速度が前記母材粒子に比べて遅い焼成温度において焼結を行う。
尚、繊維状物質とは、異方性を有する細長い形状のものであって、母材粒子の表面形状に沿って変形する柔軟性を供えたものであれば、得に限定されるものではなく、いわゆるファイバーのみならず、チューブやワイヤーと称されるものをも含む概念である。
また、繊維状物質の拡散速度が前記母材粒子に比べて遅いとは、その焼成温度において、昇華、分解、溶融、固相拡散などの物理的、化学的変化の速度が、母材粒子よりも遅いことを意味するものである。
請求項8記載の多結晶材料の製造方法は、請求項7に記載の多結晶材料の製造方法において、前記複合粒子生成工程は、前記母材粒子を網目状に包接する態様で前記繊維状物質を前記母材粒子に付着させた複合粒子を生成するものである。
請求項9記載の多結晶材料の製造方法は、請求項7または8に記載の多結晶材料の製造方法において、前記複合粒子生成工程にて複合化される前記母材粒子は、一次粒子、またはこれを造粒して粒子形状に形成されたものである。
請求項10記載の多結晶材料の製造方法は、請求項7から9のいずれかに記載の多結晶材料の製造方法において、前記繊維状物質は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーである。
請求項11記載の多結晶材料の製造方法は、請求項7から10のいずれかに記載の多結晶材料の製造方法において、前記母材粒子は、アルミナ粉末である。
請求項1記載の多結晶材料によれば、主成分となる母材粒子と、その母材粒子とは異なる物質で構成される繊維状物質とを含み、繊維状物質は、母材粒子の表面上において繊維の長手方向が母材粒子の外形に沿って付着した状態で包含されているので、繊維状物質によって母材粒子の粒成長を抑制することができるという効果がある。このため、例えば、焼成温度よりも高温の環境下において本材料を使用しても、母材粒子の粒成長が抑制されるため高温強度の低下を抑えることができる(耐熱性の向上)。
また、本材料は焼結によって製造されたものであるので、かかる焼結過程において、母材粒子の粒成長を繊維状物質で抑制することができ、その結果、本材料を微細な結晶粒子にて形成された緻密で均質な構造を有するものとすることができる。よって、機械的強度の優れた多結晶材料を提供することができるという効果がある。
これによれば、繊維状物質によって粒成長を抑制できるので焼結助剤を不要とすることができる。従って、粒成長を抑制するべく焼結助剤を用いる場合のように、母材の種類毎に作業者等の経験に基づいて焼結助剤の選定や組成の最適化を行うといった必要がなく、高度な熟練性を不要とし、作業工数や製造にかかる手間を軽減することができる。
請求項2記載の多結晶材料によれば、母材粒子の外形に沿って繊維状物質を付着した状態で複合化した複合粒子を含む原料を、繊維状物質の拡散速度が母材粒子に比べて遅い焼成温度において焼結されて生成されるので、繊維状物質にて焼成時の母材粒子の粒成長を抑制することができるという効果がある。
その結果、本材料を微細な結晶粒にて形成された緻密で均質な構造を有するものとすることができる。よって、機械的強度の優れた多結晶材料を提供することができるという効果がある。
これによれば、繊維状物質によって粒成長を抑制できるので焼結助剤を不要とすることができる。従って、粒成長を抑制するべく焼結助剤を用いる場合のように、母材の種類毎に作業者等の経験に基づいて焼結助剤の選定や組成の最適化を行うといった必要がなく、高度な熟練性を不要とし、作業工数や製造にかかる手間を軽減することができる。
請求項3記載の多結晶材料によれば、請求項1または2に記載の多結晶材料の奏する効果に加え、複合粒子の繊維状物質は、母材粒子を網目状に包接する態様で母材粒子に付着されているので、少量の添加剤(繊維状物質)で母材粒子の粒成長を効果的に抑制できるという効果がある。このため、材料全体に及ぼす母材粒子以外の成分の影響を小さく止めることができ、母材粒子の性質を保持しつつ、その機械的特性(強度)を向上した材料を提供することができる。
請求項4記載の多結晶材料によれば、請求項1から3のいずれかに記載の多結晶材料の奏する効果に加え、母材粒子は、一次粒子、または、該一次粒子が集合した集合体である。母材粒子が一次粒子である場合、母材の最少単位で粒成長抑制の効果が発揮され、かつ、得られる焼結体の構造は均質なものとなる。更に母材粒子が一次粒子の集合体であると、成形作業を行う場合などにおいて、母材粒子の取扱性を向上させることができるという効果がある。また、母材粒子を一次粒子の集合体とすることで、材料全体に対する繊維状物質の使用量を低減することができ、母材の特性維持を容易とすることができる。
請求項5記載の多結晶材料によれば、請求項1から4のいずれかに記載の多結晶材料の奏する効果に加え、前記複合粒子の繊維状物質は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーであるので、市場に流通されている繊維状物質を用いて本材料を構成することができるという効果がある。このため、本材料の製造においては、製造者は、構成成分である繊維状物質を安定的に入手でき、繊維状物質の供給が不安定であるために本材料の製造が困難になるといった事態を回避でき、安定した生産性を確保できる。
請求項6記載の多結晶材料によれば、請求項1から5のいずれかに記載の多結晶材料の奏する効果に加え、前記複合粒子の母材粒子は、アルミナ粉末であるので、緻密で均質なアルミナ多結晶材料を提供できるという効果がある。現状のアルミナ多結晶材料は汎用品としてセラミック材料の中では比較的低コストで製品化がされている。一方で、アルミナ多結晶材料で適用できない耐熱性や強度が要求される部材については、特殊なセラミック材料が用いられているため製品コストが上昇する。しかし、本多結晶材料を用いれば、アルミナ材料でありながらその強度を向上させることができるので、従来使用が困難であったかかる特殊なセラミック材料をアルミナ多結晶材料で代替し得、製品コストを低下させることができる。
請求項7記載の多結晶材料の製造方法によれば、複合粒子生成工程にて得られた複合粒子が含まれる原料粉末を用いて成形体が形成され、得られた成形体は焼結工程にて焼結され、これにより多結晶材料が製造される。ここで、複合粒子は、母材粒子に対し繊維状物質がその繊維の長手方向を母材粒子の外形に沿って付着した形状となっており、焼結のための焼成温度においては繊維状物質の拡散速度は母材粒子よりも遅いものとなっている。従って、焼成温度において繊維状物質は粒子界面に残存しており、母材粒子の粒成長を抑制することができる。更に、繊維状物質は、繊維の長手方向を母材粒子の外形に沿わせて付着しているので、当該複合粒子は、母材粒子表面に繊維状物質に起因する微小な凸部が形成された態様となる。このため、例えば、粉体等の塊状物を母材粒子に複合化させた場合に比べて充填性を確保し易い上、母材粒子と繊維状物質との間に高い密着性を確保することができる。
加えて、本製造方法では、複合粒子生成工程において、表面処理工程により表面電荷が反対の極性となるように母材粒子と繊維状物質とに表面処理が行われる。そして、複合粒子生成工程では、かかる反対の極性が付与された母材粒子と繊維状物質とが混合され、静電吸着力によって母材粒子と繊維状物質との複合粒子が生成され、かかる複合粒子を含む原料粉末が成形工程にて成形される。
よって、繊維状物質を成形体(バルク)中に偏在させることなく成形体全体に高分散させることができ、該繊維状物質が母材粒子の粒成長を抑制する作用を成形体全体に及ぼすことができるという効果がある。このため、均質で緻密化された多結晶材料を製造することができる。
その上、静電吸着力によって母材粒子と繊維状物質とは複合化されるので、常温、常圧といった比較的温和な条件下で複合粒子を作製することができる。このため、例えば、ボールミル混合によるメカノケミカル反応を利用して複合粒子を作製する場合などに比べ、製造にかかるエネルギーを省力化できる上、原料粉末の汚染を低減することができるという効果がある。
請求項8記載の多結晶材料の製造方法によれば、請求項7に記載の多結晶材料の製造方法の奏する効果に加え、複合粒子生成工程は、繊維状物質が、母材粒子を網目状に包接するように複合粒子を生成するものであるので、少量の添加剤(繊維状物質)で母材粒子の粒成長を効果的に抑制できるという効果がある。このため、母材粒子以外の成分が材料全体におよぼす影響を低減することができ、母材粒子の性質を保持しつつ、その機械的特性(強度)が向上した材料を製造することができる。
請求項9記載の多結晶材料の製造方法によれば、請求項8に記載の多結晶材料の製造方法の奏する効果に加え、複合粒子生成工程にて複合化される母材粒子は、一次粒子、または、これを造粒して粒子形状に形成されたものである。母材粒子が一次粒子である場合、母材の最少単位で粒成長抑制の効果が発揮され、かつ、得られる焼結体の構造は均質なものとなる。更に母材粒子が造粒粒子であると、成形工程において成形作業を行う場合の母材粒子の取扱性を向上させることができるという効果がある。また、母材粒子を一時粒子の集合体(造粒粒子)とすることで、材料全体に対する繊維状物質の使用量を低減することができ、母材の特性維持を容易とすることができる。
請求項10記載の多結晶材料の製造方法によれば、請求項7から9のいずれかに記載の多結晶材料の製造方法の奏する効果に加え、繊維状物質は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーであるので、市場に流通されている繊維状物質を用いて本材料を作製することができるという効果がある。従って、製造者は、繊維状物質を安定的に入手でき、繊維状物質の供給が不安定であるために本材料の生産が困難になるといった事態を回避できる。
請求項11記載の多結晶材料の製造方法によれば、請求項7から10のいずれかに記載の多結晶材料の製造方法の奏する効果に加え、母材粒子は、アルミナ粉末であるので、緻密で均質なアルミナ多結晶材料を提供できるという効果がある。現状のアルミナ多結晶材料は汎用品としてセラミック材料の中では比較的低コストで製品化がされている。一方で、アルミナ多結晶材料で適用できない耐熱性や強度が要求される部材については、特殊なセラミック材料が用いられているため製品コストが上昇する。しかし、本多結晶材料を用いれば、かかる特殊なセラミック材料をアルミナ多結晶材料で代替し得、製品コストを低下させることができる。
多結晶材料の製造工程を示す図である。 実施例1の結果得られたCNT被覆アルミナ複合粒子の一例を示す図である。 実施例1の結果得られた焼結体の微細構造を示した図である。 実施例1の結果得られた焼結体の破面の一例を示す図である。 実施例2の結果得られたCNT被覆ジルコニア複合粒子の一例を示す図である。 比較例1の結果得られたアルミナ焼結体の微細構造を示す図である。
以下、本発明の多結晶材料および多結晶材料の製造方法について詳細に説明する。本発明の多結晶材料は、母材粒子の表面上に繊維状物質が存在することにより、粒子界面での反応速度を低下させ、粒子界面での法線方向の物質移動(拡散)を抑制することで粒成長を抑制できるように設計されたものである。尚、母材粒子が一次粒子である場合には、かかる粒子界面はいわゆる粒界であり、粒界での法線方向の物質移動が抑制される。また、母材粒子が造粒粒子である場合には造粒粒子界面での法線方向の物質移動が抑制される。
本発明に用いられる、母材粒子は、焼成により焼結体となるものであり、セラミック粉末、金属粉末である。
セラミック粉末としては、各種の酸化物、窒化物、炭化物が挙げられる。尚、酸化物は、単一酸化物であっても複合酸化物であっても良い。かかるセラミック粉末には、例えば、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、マグネシア、カルシア、チタニア、酸化バナジウム、スピネル、フェライトなどが例示でき、これらは単独で用いられても混合物で用いられても良い。更には、ドロマイトやカルサイトなどの固溶体であっても良い。
金属粉末としては、鉄系、銅系、アルミニウム系、ニッケル系、モリブデン系、ステンレス系、チタン系、タングステン系の各粉末などが例示され、これらは単独で用いられても混合物で用いられても良い。
本発明において用いられる母材粒子は幾何形状、大きさに制限はない。球状、針状、塊状等々の制限は無く利用可能である。
ここで、本発明において用いる母材粒子は、繊維状物質を表面に吸着させることから、平均粒径で、0.5μm以上が望ましい。このため、一次粒子が0.5μm未満である場合には、造粒したものを用いても良い。
本発明に用いられる繊維状物質は、ファイバー、チューブ、ワイヤーと称されるナノサイズまたはマイクロサイズの無機材料であって、母材粒子の外形に沿って形状を変更可能な柔軟性を備えるものである。また、母材粒子を焼結させる焼成温度においていわゆるピン止め効果を奏するものであり、その焼成温度において、昇華、分解、溶融、固相拡散(粒成長)などの物理的、化学的変化が微小なものである。
かかる繊維状物質としては、例えば、カーボンナノファーバー、カーボンナノチューブに加え、シリコン、ボロン、インジウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等の元素ナノワイヤーや、インジウムヒ素(InAs)などの化合物半導体ナノワイヤー、金、銀、銅、ニッケルなどの金属ナノワイヤー、マグネシア、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化スズ、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、酸化ゲルマニウム(GeO)などの酸化物ナノワイヤー、チタン酸バリウムなどの複合酸化物ナノワイヤー、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムなどの窒化物ナノワイヤーなどが例示でき、かかる繊維状物質の中から、母材粒子の焼成温度に応じて、1または2以上のものが適宜選択される。
本発明において用いる繊維状物質は、母材粒子表面に吸着させることから、幾何学的な制約として母材粒子平均粒子径と比較して少なくとも、その繊維径が1/10以下であることが望ましい。
また、本発明において、かかる繊維状物質と母材粒子とが複合化された複合粒子を原料粉末として、多結晶材料を作製することが望ましい。これによれば、母材粒子と繊維状材料は一体化されているので、当該複合粒子を用いて成形体を作製すれば、繊維状物質がバルク中に偏在することがなく、繊維状物質による粒成長の抑制作用を材料全体に及ぼすことができる。このため、均質な多結晶材料を確実に作製することができる。
ここで、多結晶材料を作製する場合、ナノサイズの原料粉末では成形時の取扱性が悪い。このため、複合粒子は、母材粒子の一次粒子に繊維状物質を複合化させたものであっても良いが、一次粒子がナノサイズである場合などには、取扱性向上のため、一次粒子を造粒した造粒粉を用いても良い。これによれば、造粒粉の母材粒子を繊維状物質と複合化した複合粒子にて、本多結晶材料は作製される。
また、該複合粒子は、母材粒子を部分的に被覆するように繊維状物質を付着して形成されても良い。例えば、母材粒子を繊維状物質で全面被覆した場合には、最も母材粒子の粒成長を抑制できるが、母材粒子以外の他の成分が増大することとなり、バルク全体として母材粒子の特性の保持が困難になりかねない。一方で、母材粒子の粒子界面に、繊維状物質が存在することで不均一な物質移動の場が形成されれば粒成長を抑制できる(ピン止め効果が得られる)ことから、必ずしも母材粒子全面を繊維状物質で被覆する必要はない。このため、特に、作製される多結晶材料において、主成分の母材粒子の特性が保持されることが必要とされる場合には、本複合粒子は、繊維状物質にて部分的に母材粒子を被覆する態様で形成され、当該複合粒子を用いて多結晶材料は作製される。これにより、繊維状物質の使用量を低減でき、母材粒子の特性を保持しつつ、母材粒子の粒成長が抑制された多結晶材料を得ることができるのである。
尚、好適には、繊維状物質の被覆量は母材粒子に対して0.3vol%から2.0vol%とすることが望ましい。2.0vol%以上では、繊維状物質が過剰に存在することとなり母材粒子の焼結特性を低下させ、また、作製される多結晶材料において母材粒子の特性を保持することが困難となる。一方、0.3vol%以下では、粒成長の抑制効果が大きく低下することとなる。
また、繊維状物質は、繊維方向(長手方向)に比べて幅方向(短手方向)の長さが短い幾何学的な異方性を有する材料である。このため、母材粒子の表面積に対して十分に細い繊維状物質を選択することにより、繊維状物質にて容易に母材粒子表面の一部のみを部分的に被覆することができる。かかる繊維状物質を母材粒子に疎密に付着させれば、母材粒子の表面上に分散した態様で繊維状物質を配置させることができる。更に、繊維状物質の付着量を増加させることにより、繊維状物質は母材粒子の表面上で交差しつつ、母材粒子表面全体に網目状に配置され、これにより、母材粒子は繊維状物質にて包接される態様(即ち網目状に包接される態様)となる。尚、本発明において網目状に包接されるとは、繊維状物質の少なくとも一部が交差しつつ、巨視的に母材粒子全体に繊維状物質が付着された状態を意味するものであり、必ずしも規則正しく画一的な網目が形成された状態で包接されることを示すものではない。従って、網目の形状、開口部の大きさは、不均一なものであっても良く、母材粒子表面全体に網目が形成されている必要も無い。
次いで、図1を参照して、上述したように構成される多結晶材料の製造方法について説明する。図1は、本発明の多結晶材料の製造方法について製造工程を概念的に表した工程図である。図1に示すように、本製造工程は、母材粒子を造粒する母材粒子造粒工程(S1)、複合粒子生成工程(S2)、成形工程(S3)、焼成工程(S4)を備えており、各工程(S1〜S4)を経て多結晶材料が製造される。
母材粒子造粒工程(S1)は、母材粒子がナノサイズ(0.5μm未満)の一次粒子である場合に、一次粒子を高分子バインダーで結着してミクロンサイズの二次粒子に成形する工程である。母材粒子造粒工程(S1)は、一次粒子の粉体、高分子バインダー、溶剤等を混合した混合物をスプレードライする一般的な手法によって実行される。尚、母材粒子造粒工程(S1)は、一次粒子と繊維状物質とを複合化する場合や、一次粒子の粒子サイズが大きい場合など造粒の必要がない場合には、省略される。また、予め造粒された母材粒子を用いる場合にも省略することができる。
複合粒子生成工程(S2)は、母材粒子と繊維状物質とを複合化して複合粒子を生成する工程であり、母材粒子の表面電荷を調整する母材粒子電荷調整工程(S21)と、繊維状物質の表面電荷を調整する繊維状物質電荷調整工程(S22)と、電荷調整を行った母材粒子と繊維状物質とを混合して複合化する複合粒子形成工程(S23)とを備えている。
母材粒子電荷調整工程(S21)と繊維状物質電荷調整工程(S22)とは、母材粒子および繊維状物質それぞれの表面電荷が反対の極性となるように表面処理を行う工程である。表面電荷の調整には、高分子電解質であるカチオン性高分子およびアニオン性高分子を用いることが望ましい。
尚、母材粒子、繊維状物質それぞれの表面電荷は、材料によって異なるが、例えば、正の表面電荷であれば、アニオン性高分子を吸着させることで、表面電荷を負に反転させることができる。反対に、負の表面電荷を有する場合は、カチオン性高分子を吸着させることで正の表面電荷に反転させることができる。
カチオン性高分子としては、例えば、ポリ(ジアリルメチルアンモニウムクロライド)(PDDA)を用いることができる。このカチオン性高分子は例えば塩化ナトリウム水溶液を溶媒として用いることができる。また、本発明において用いることのできる他のカチオン性高分子としては、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリ(ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸)共重合などが上げられる。但し、これらは、カチオン性高分子としての一例であり、これに限るものではない。
アニオン性高分子としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)を用いることができる。本発明において用いることのできる他のアニオン性高分子としては、ポリビニル硫酸(PVS)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)などが上げられる。但し、これらは、アニオン性高分子としての一例であり、これに限るものではない。
母材粒子電荷調整工程(S21)においては、まず、本来の母材粒子が有する表面電荷とは反対の極性を有する高分子電解質(カチオン性高分子およびアニオン性高分子のいずれか一方)にて母材粒子表面が被覆される。具体的には、例えば、高分子電解質を溶解した溶剤(液体)中に母材粒子を投入、分散させることで、母材粒子表面に高分子電解質を吸着させる。その後、洗浄操作によって余剰の高分子電解質を除去してから、液体と母材粒子とを分離する操作、即ち沈殿、遠心分離、ろ過などの作業を適宜行って母材粒子を回収する作業を行う。
ここで、電荷密度を一定とし、またその強度を向上させるためにも、カチオン性高分子、アニオン性高分子を交互に用いて、複数回、上述の作業を行うことが好ましい。特に、少なくとも3層の高分子電解質層が母材粒子の表面上に形成されるように、カチオン性高分子、アニオン性高分子を積層させることで、後の複合粒子形成工程(S23)において、繊維状物質を確実に静電吸着するために十分な電荷を母材粒子に与えることができる。
繊維状物質電荷調整工程(S22)は、母材粒子電荷調整工程(S21)と同様の操作によって高分子電解質、または、アニオンおよびカチオン性界面活性剤で繊維状物質を被覆する工程である。尚、最終的に回収される繊維状物質の最表面の極性が、先に行われた母材粒子電荷調整工程(S21)において得た母材粒子の最表面の極性とは、反対の極性となるように、高分子電解質や繰り返しの処理回数、または、使用する界面活性剤の種類が選択される。
尚、電荷密度を一定とし、またその強度を向上させるためにも、繊維状物質電荷調整工程(S22)においても、カチオン性高分子、アニオン性高分子を交互に用いて、複数回の処理を行うことが好ましい。複合粒子形成工程(S23)において、母材粒子に対し確実に静電吸着するためには、少なくとも3層の高分子電解質層が繊維状物質の表面上に形成されるようにカチオン性高分子、アニオン性高分子を積層させることが特に好ましい。
また、高分子電解質の吸着に起因する橋架け凝集などにより繊維状物質の分散性が阻害される場合、高分子電解質に代えてイオン性界面活性剤を用いることが望ましい。これによれば、イオン性界面活性剤の吸着により繊維状物質表面に母材粒子とは反対極性の電荷を付与し、かつ、繊維状物質を高分散状態で安定化させることができる。その後、洗浄操作によって余剰の高分子電解質やイオン性界面活性剤を除去してから、液体と繊維状物質とを分離する操作、即ち沈殿、遠心分離、ろ過などの作業を適宜行って繊維状物質を回収する作業を行う。
複合粒子形成工程(S23)は、母材粒子電荷調整工程(S21)および繊維状物質電荷調整工程(S22)にてそれぞれ得られた母材粒子と繊維状物質とを混合して、両者を静電的引力によって結合させ、複合化する工程である。具体的には、例えば、複合粒子形成工程(S23)および繊維状物質電荷調整工程(S22)にて回収した母材粒子および繊維状物質をそれぞれ分散させた分散溶液を調製し、かかる分散溶液を混合撹拌することで複合粒子を発生させ、その後、洗浄、沈殿、遠心分離、ろ過などの作業を適宜行って複合粒子を回収する。尚、母材粒子電荷調整工程(S21)および繊維状物質電荷調整工程(S22)のそれぞれにおける最終処理において、液体中から母材粒子または繊維状物質を回収する作業を省略して、母材粒子または繊維状物質を分散させた液体をそのまま、本工程(S23)で用いても良い。
この複合粒子形成工程(S23)において、母材粒子の量に対して配合する繊維状物質の量を調整することで、母材粒子表面に吸着される繊維状物質の量を変更することができる。従って、母材粒子表面積に対して、過剰の繊維状物質を混合した場合には、母材粒子の表面を完全に被覆した複合粒子を得ることができる。吸着されずに溶媒中に残存する過剰な繊維状物質は、遠心分離器を用いて除去することが望ましい。また、撹拌混合しながら母材粒子の表面に繊維状物質は吸着されるので、母材粒子全体に均等に分散された状態で繊維状物質を付着させることができる。従って、繊維状物質の配合量を調節することで、疎密な状態でありつつ母材粒子の表面を包接する態様(網目状に包接)で、繊維状物質が母材粒子に付着された複合粒子を生成することができるのである。
成形工程(S3)は、複合粒子生成工程(S2)で得られた複合粒子を焼成前に所望の形態に成形(形状加工)する工程である。例えば、複合粒子にバインダー、溶剤等を加えた可塑体を型に投入しプレスして成形するプレス成形、押し出し成形、複合粒子を含むスラリーを用いた鋳込み成形や、ドクターブレードによるテープ成形などが例示される。
ここで、成形工程(S3)では、母材粒子と繊維状物質とが複合化された複合粒子を用いて成形体が作製されるので、粒成長を抑制する繊維状物質が高度に分散した成形体を得ることができる。
尚、この成形工程(S3)に用いられる原料粉末は、複合粒子形成工程(S23)で得られた複合粒子のみからなるものであっても良く、必要に応じて複合粒子以外の成分、例えば焼結助剤などを含むものを原料粉末としても良い。
焼成工程(S4)は、成形工程(S3)にて作製した成形体を焼成して焼結する工程である。母材粒子に応じて適宜設定される焼成プログラムにしたがって焼成が行われ、多結晶材料が得られる。
尚、母材粒子が焼結する焼成温度において、繊維状物質は実質変化を起こさないものが選択されている。このため、焼成工程(S4)を経て得られる本多結晶材料は、粒成長が抑制され、結晶粒が微細で緻密、且つ、均質なものとなる。また、粒成長を抑制するための高度で複雑な焼成条件を、母材粒子の種類に応じて設計、制御する必要がなく単純な焼成プログラムを使用して緻密で均質な多結晶材料を得ることができる。その上、焼結助剤を不要として緻密で均質な多結晶材料を得ることができる。
このように、本発明の多結晶材料およびその製造方法によれば、粒成長が抑制され緻密で均質な多結晶材料を提供でき、更に、その簡便かつ汎用性の高い製造方法を提供できる。
本発明について、次に実施例を示し更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、以下の実施例および比較例にて得られた多結晶材料は、その焼結密度をアルキメデス法により算出し、平均粒子径をインターセプト法(係数は1.5とした)に従って算出することで評価した。
(実施例1)
α-アルミナ(平均粒径:100nm、大明化学工業社製(タイミクロンTM−DAR))をスプレードライヤーにて造粒したアルミナ造粒粉(平均粒径:2.0μm)を母材粒子とし、カーボンナノチューブ(以下、単に「CNT」と称す。)(平均繊維径:1.4nm、繊維長:1〜5μm、名城ナノカーボン社製(Meijo Arc))を繊維状物質としてアルミナ−CNT複合粒子を作製した。
アルミナ造粒粉の表面電荷を測定したところ、pH7.0の水中で正に帯電していた。アルミナ造粒粉に安定かつ十分なプラスの表面電荷を付与するため、アニオン性高分子電解質としてPSS(アルドリッチ社製、Mw=70000)、カチオン性高分子電解質としてPDDA(アルドリッチ社製、Mw=100000〜200000)を交互にアルミナ造粒粉に吸着させて、最外郭の電荷を正に制御した。
具体的には、まず、PSSを溶解した水溶液中にアルミナ造粒粉を投入し、10分間攪拌することでアルミナ表面にPSSを吸着させた。その後、アルミナ造粒粉を沈殿させ、上澄み液を除去した後に脱イオン水にて洗浄し、未吸着のPSSを取り除いた。次いで、得られたPSS被覆アルミナ造粒粉を、PDDAを溶解した水溶液中に投入し10分間攪拌することでアルミナ造粒粉の最表面にPDDAを吸着させた。その後、上記と同様、洗浄、分別操作によってPDDA被覆アルミナ造粒粉を回収した。PSSおよびPDDAを被覆する操作は複数回繰り返して行い、最外殻の電荷を正としたアルミナ造粒粉を回収した。
一方、CNTは1wt%のデオキシコール酸ナトリウム(アルドリッチ社製)(以下、単に「SDC」と称す。)水溶液中で超音波処理することで分散させた。SDCはアニオン性界面活性剤であり、この処理によりCNTに負の表面電荷を付与した。
上記操作にて回収した表面電荷を正に制御したアルミナ造粒粉は水中に分散させ、分散水溶液に調整した。かかるアルミナの分散水溶液と、上記操作にて表面電荷を負に制御したCNT分散水溶液を混合し、30分間攪拌することで、CNT被覆アルミナ造粒粒子を作製した。作製したアルミナとCNTとの複合粒子を図2に示す。
図2は、アルミナとCNTとの複合粒子の電子顕微鏡写真であって、図2(a)は、粒子の全体図であり、図2(b)は、粒子の部分拡大図である。電子顕微鏡には、FE-SEM(S4800、日立ハイテク社製)を用い、加速電圧3kVにて観察、写真撮影を行った。以下の各電子顕微鏡写真も同様の条件で撮影したものである。図2に示すように、実施例1で作製した複合粒子は、ナノサイズの不定形状のアルミナ一次粒子が造粒されて直径約2μmの略球状となったアルミナ造粒粉(母材粒子)に、網目を形成するようにCNTが付着した態様で形成されている。
このようにして得られた複合粒子を金型に詰め、圧縮応力100MPaで成形し、圧粉体を得た。その後、1350℃、真空雰囲気下で1時間、30MPaの加圧状態でホットプレス焼結し、実施例1の焼結体(多結晶材料)を得た。得られた焼結体については、結晶状態を電子顕微鏡によって観察すると共に、焼結密度と平均粒径とを求めた。また、高温耐性を確認するため、上記焼結体を1500℃、大気雰囲気下で2時間の条件で熱処理を行い、電子顕微鏡観察と平均粒径の算出とを行った。得られた焼結体の電子顕微鏡写真を図3、図4に示す。
図3(a)は、1350℃、真空雰囲気下1時間、30MPaで焼結した実施例1の焼結体であり、図3(b)は、実施例1の焼結体を1500℃、大気雰囲気下で2時間、熱処理したものである。図3に示すように、実施例1の焼結体は結晶粒の大きさが微細であり、緻密な構造となっていることが認められる。更に、1500℃、大気雰囲気下で2時間、熱処理した後も、著しい粒成長は認められなかった。
図4は、実施例1の焼結体の破面(断面)の電子顕微鏡写真である。図4に示すように、アルミナの一次粒子の集合体(母材粒子)上に、その繊維方向を沿わせるようにしてCNTが存在していることが認められる。即ち、焼成後においても、実施例1の焼結体中にはCNTが残存している。このため、焼成温度よりも高い温度においても母材粒子の粒成長を抑制し得、良好な高温耐性を実現できることが示された。
また、実施例1の焼結体の焼結密度は、3.94g/cmであり、平均粒径は0.59μmであった。実施例1の焼結体を1500℃、大気雰囲気下で2時間熱処理した場合の平均粒径は0.90μmであった。
(実施例2)
ジルコニア粉末(平均粒径:30nm、東ソー社製(TZ-3Y-E))をスプレードライヤーにて造粒したジルコニア造粒粉(平均粒径:2.0μm)を母材粒子とし、CNT(平均繊維径:1.4nm、繊維長:1〜5μm、名城ナノカーボン社製(Meijo Arc))を繊維状物質として、アルミナ造粒粉をジルコニア造粒粉とした以外は実施例1と同様の手法で複合粒子を作製した。作製したジルコニアとCNTとの複合粒子を図5に示す。
図5は、ジルコニアとCNTとの複合粒子の電子顕微鏡写真である。図5に示すように、実施例2で作製した複合粒子は、ナノサイズの不定形状のジルコニア一次粒子が造粒され直径約2μmの略球状になったジルコニア造粒粉(母材粒子)に、網目を形成するように繊維状のCNTが付着した態様で形成されている。このように、ジルコニアを母材粒子に用いても同様に複合粒子を製造できる。
(比較例1)
実施例1で作製したアルミナ造粒粉(平均粒径:2.0μm)のみを、実施例1と同様の手法で成形し、同様の条件で焼結を行い比較例1の焼結体(多結晶材料)を作製した。作製した焼結体(アルミナ焼結体)は、その結晶状態を電子顕微鏡によって観察すると共に、焼結密度と平均粒径とを求めた。また、高温耐性を確認するため、当該焼結体を1500℃、大気雰囲気下で2時間の条件で熱処理を行い、電子顕微鏡観察と平均粒径の算出とを行った。得られた焼結体の電子顕微鏡写真を図6に示す。
図6(a)は、1350℃、真空雰囲気下1時間、30MPaで焼結した比較例1の焼結体であり、図6(b)は、比較例1の焼結体を1500℃、大気雰囲気下で2時間、熱処理したものである。
比較例1の焼結体の焼結密度は、3.96g/cmであり、平均粒径は、0.89μmであった。また、比較例1の焼結体を1500℃、大気雰囲気下で2時間熱処理した場合の平均粒径は1.55μmであった。更には、図6(b)に示すように、比較例1の焼結体を、1500℃、大気雰囲気下で2時間、熱処理したものには、一部に異常粒成長が認められた。
以上より、実施例1の焼結体と比較例1の焼結体とは、焼結密度は同程度であったにも関わらず、焼結後の粒子径に明らかな有意差が認められた。これにより、実施例1の焼結体は、粒成長が抑制された緻密な多結晶材料となっており、強度の向上が見込まれる。また、1500℃、大気雰囲気下で2時間の熱処理後も実施例1の焼結体は、平均粒径が1.0μm以下を維持しており耐熱性も良好であることが示された。
S2 複合粒子生成工程
S3 成形工程
S4 焼成工程(焼結工程)
S21 母材粒子電荷調整工程(表面処理工程)
S22 繊維状物質電荷調整工程(表面処理工程)

Claims (11)

  1. 焼結によって生成された多結晶材料であって、
    主成分となる母材粒子と、
    その母材粒子とは異なる物質で構成される繊維状物質とを含み、
    前記繊維状物質は、前記母材粒子の表面上において繊維の長手方向が前記母材粒子の外形に沿って付着した状態で包含されていることを特徴とする多結晶材料。
  2. 原料粉末を焼結して生成される多結晶材料であって、
    前記原料粉末は、母材粒子に対し繊維状物質をその繊維の長手方向が前記母材粒子の外形に沿って付着した状態で前記母材粒子と前記繊維状物質とを複合化した複合粒子を含むものであり、
    前記複合粒子の繊維状物質の拡散速度が前記母材粒子に比べて遅い焼成温度において、前記原料粉末を焼成して生成されることを特徴とする多結晶材料。
  3. 前記繊維状物質は、前記母材粒子を網目状に包接する態様で前記母材粒子に付着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多結晶材料。
  4. 前記母材粒子は、一次粒子、または、該一次粒子が集合した集合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多結晶材料。
  5. 前記複合粒子の繊維状物質は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多結晶材料。
  6. 前記複合粒子の母材粒子は、アルミナ粉末であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の多結晶材料。
  7. 焼結によって多結晶材料を作製する多結晶材料の製造方法であって、
    母材粒子と繊維状物質とを複合化して複合粒子を生成する複合粒子生成工程と、
    その複合粒子生成工程にて得られた前記複合粒子が含まれる原料粉末を用いて成形体を形成する成形工程と、
    その成形工程にて形成された前記成形体を焼成して焼結する焼結工程とを備えており、
    前記複合粒子生成工程は、前記母材粒子の表面電荷と前記繊維状物質の表面電荷とが反対の極性となるように表面処理を行う表面処理工程を有し、その表面処理工程によりそれぞれ反対の極性が付与された前記母材粒子と前記繊維状物質とを混合し、静電吸着力によって前記母材粒子に対し前記繊維状物質がその繊維の長手方向を前記母材粒子の外形に沿った形状で付着した複合粒子を生成するものであり、
    前記焼結工程は、前記繊維状物質の拡散速度が前記母材粒子に比べて遅い焼成温度において焼結を行うことを特徴とする多結晶材料の製造方法。
  8. 前記複合粒子生成工程は、前記母材粒子を網目状に包接する態様で前記繊維状物質を前記母材粒子に付着させた複合粒子を生成するものであることを特徴とする請求項7に記載の多結晶材料の製造方法。
  9. 前記複合粒子生成工程にて複合化される前記母材粒子は、一次粒子、または、これを造粒して粒子形状に形成されたものであることを特徴とする請求項7または8に記載の多結晶材料の製造方法。
  10. 前記繊維状物質は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーであることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の多結晶材料の製造方法。
  11. 前記母材粒子は、アルミナ粉末であることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の多結晶材料の製造方法。
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