JP2012100515A - 高次高調波共振抑制方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電力系統の共振回路内に高次高調波の電流源を連系する場合に、共振の影響が抑制可能となる連系点を高精度に推定できる高次高調波共振抑制方法を提供することである。
【解決手段】高次高調波の電流源の連系点から左右に分岐して形成される線路インピーダンス及び力率改善用コンデンサからなる2つの閉回路に着目し、2つの閉回路の電流源を連系点から一方の力率改善用コンデンサ側のインピーダンスの関数で示される電圧源に置き換えて1つの閉回路の等価回路を作成し、等価回路の電圧源の電圧が最小となるときの連系点から一方の力率改善用コンデンサ側のインピーダンスのインダクタンスを求め、求めたインダクタンスに基づいて高次高調波共振により力率改善用コンデンサに流れる電流が小さくなる電流源の連系点の位置を求める。
【選択図】図4

Description

本発明は、電力系統に高次高調波を発生する電流源を連系する際に、電力系統の閉回路での高次高調波の共振を抑制する高次高調波共振抑制方法に関する。
近年、パワーエレクトロニクスによる制御には、高速スイッチングによるPWM方式を採用する機器が多い。例えば、風力発電や燃料電池などにおいては直流電力を発電し、パワーエレクトロニクス機器によるPWM方式で直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する。
パワーエレクトロニクス機器は、PWM方式による交直変換の際に数kHzの高次高調波電流を発生し電力系統に流出する。一方、電力系統には、線路インピーダンスと力率改善用コンデンサSCで形成される閉回路が存在し、その閉回路が共振回路となって高次高調波を共振増幅して力率改善用コンデンサの過電流を誘起し電磁騒音や過熱などの問題が生ずることがある。このため、パワーエレクトロニクス機器の系統連系時には、上記問題が生ずるか否かを事前に把握することが重要となってきている。
高次高調波共振を解析的に検討する手法としては、高次高調波電流を発生するパワーエレクトロニクス機器の連系点に等価な電流源を置き、周波数応答法で力率改善用コンデンサの電流の増幅特性を得る方法がある。
また、高調波発生源の特定方法として、配電系統を数値的に模擬した模擬回路を設定し、この模擬回路の固有値とその固有ベクトルを算出し、固有値の複素数部からその固有モードの共振周波数を、それぞれの固有ベクトルの各要素の絶対値からその固有モードにおける各ノードの感度を算出し、一方、配電系統に並列に接続されている力率改善用コンデンサの内の一つの充電波形に基づいて周波数分析を行って実際の発生モードでの共振周波数とその強度を求め、これらを比較して転流振動を発生させる整流器負荷を特定し、高調波発生源と見なすようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、電力系統の線路インピーダンス及び力率改善用コンデンサを線形回路素子RLCよりなる解析モデルで模擬して電力系統の状態微分方程式を導き、状態微分方程式の係数行列の固有値で定まる時定数及び固有周波数を持つRLC回路による等価回路を導き、その等価回路の力率改善用コンデンサ電流の高次高調波電流源の電流に対する電流増幅率に基づいて電力系統における高次高調波の共振周波数特性を推定し、新たにパワーエレクトロニクス機器を系統に連系しようとした場合の高次高調波の共振周波数特性を精度よく把握できるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。また、高圧配電系統における高次高調波共振を予測するようにしたものがある(例えば、非特許文献1参照)。
特開平4−67727号公報 特開2009−44782号公報
池田雄司・遠山篤・武田圭生・内藤督・正木和行:「高圧配電系統における高次高調波共振の予測法」,電学論B,130,8,pp.743-750(2010-8)
しかし、従来のものにおいては、新たに系統連系しようとするパワーエレクトロニクス機器の連系点での共振周波数特性を把握することはできるが、高次高調波の共振増幅を抑制できる電流源の連系点を特定することは困難である。
一般に、共振回路と高次高調波の発生源とが近接するほど障害は大きくなるため、両者間の線路長を大きくする連系点の変更などの対策があるが、線路長を大きくするには費用が大きくなる。また、実際の配電線では多くのコンデンサが散在しているが、このような場合には共振回路が多く、かつ、その分布は複雑なので、共振回路の構成の正確な把握は一般には困難である。また、共振回路の構成の把握を行ったとしても、共振回路内での共振増幅の抑制に適した連系点の選択が難しい。
本発明の目的は、電力系統の共振回路内に高次高調波の電流源を連系する場合に、共振の影響が抑制可能となる連系点を高精度に推定できる高次高調波共振抑制方法を提供することである。
請求項1の発明に係る高次高調波共振抑制方法は、電力系統に高次高調波の電流源が連系されたときその連系点から左右に分岐して形成される線路インピーダンス及び力率改善用コンデンサC1とC2からなる2つの閉回路に着目し、前記2つの閉回路の前記電流源を前記連系点から一方の力率改善用コンデンサC1側のインピーダンスの関数で示される電圧源に置き換えて1つの閉回路の等価回路を作成し、前記等価回路の電圧源の周波数が前記等価回路の共振周波数であるときには前記連系点の位置に関係なく前記等価回路のインピーダンスは一定であることに着目し、前記等価回路の電圧源の周波数を前記等価回路の共振周波数として前記等価回路のインピーダンスを一定とし、前記等価回路の力率改善用コンデンサC2に流れる電流が最小となるのは前記等価回路の前記電圧源の電圧が最小になるときであることに着目し、前記等価回路の前記電圧源の電圧が最小となるときの前記連系点から一方の力率改善用コンデンサC1側のインピーダンスのインダクタンスを求め、求めたインダクタンスに基づいて高次高調波共振により前記力率改善用コンデンサC2に流れる電流が小さくなる前記電流源の連系点の位置を求めることを特徴とする。
請求項2の発明に係る高次高調波共振抑制方法は、請求項1の発明において、前記連系点から左右に分岐して形成された2つの閉回路の一方の閉回路に複数の力率改善用コンデンサが並列接続されているときは、複数の力率改善用コンデンサを一つの力率改善用コンデンサが接続されたときの等価回路に置き換えることを特徴とする。
請求項3の発明に係る高次高調波共振抑制方法は、高次高調波を発生する電流源を電力系統に連系する際に前記電流源による高次高調波の共振を抑制する高次高調波共振抑制方法において、高次高調波を発生する電流源を電力系統に連系した系統モデルの状態方程式を作成し、前記系統モデルの状態方程式の係数行列よりその固有ベクトルを求め、前記固有ベクトルの固有モードでの前記電流源により受ける前記電力系統の各ノードでの影響度を計算し、前記影響度の実数部が零の点を共振抑制に最適な電流源の連系点とすることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、電力系統に高次高調波の電流源が連系されたときに形成される2つの閉回路の等価回路を求め、その等価回路の力率改善用コンデンサに流れる電流が最小となる条件を、連系点から一方の力率改善用コンデンサ側のインピーダンスのインダクタンスとして求めるので、高次高調波共振を抑制できる連系点の位置を求めることができる。
請求項2の発明によれば、電力系統に高次高調波の電流源が連系されたときに形成される2つの閉回路の一方の閉回路に複数の力率改善用コンデンサが並列接続されている場合であっても、請求項1の場合と同様に高次高調波共振を抑制できる連系点の位置を求めることができる。
請求項3の発明によれば、電流源により受ける電力系統の各ノードでの影響度を計算し、その影響度が小さいノードを連系点として求めるので、共振抑制に最適な電流源の連系点を高精度に求めることができる。従って、複数個の力率改善用コンデンサが関係する共振回路内に、高次高調波の電流源を連系したとしても高次高調波共振の影響を抑制できる。
高次高調波の電流源を接続した場合に高次高調波の影響を受けた高圧配電系統の回路構成の一例を示す系統図。 図1の電流源の連系点の位置を変化させたときの電流増幅率Qの計算結果のグラフ。 図1に示した高圧配電系統の等価回路の回路図。 本発明の実施形態に係る高次高調波共振抑制方法の内容を示すフローチャート。 図3(b)に示した等価回路の電源電圧Eを決定するインピーダンスZ1を単位長さ当たりの抵抗r及びインダクタンスlを用いて表した等価回路の回路図。 3個以上の力率改善用コンデンサが接続された高圧配電系統の等価回路の回路図。 図6に示した回路の等価SC群を1つの等価SC回路とした場合の等価回路図。 本発明の他の実施形態で用いる図3に示した高圧配電系統の等価回路の回路図。 本発明の他の実施形態で対象とする多数の力率改善用コンデンサSCが散在している配電系統で形成される共振回路の説明図。 図9に示した共振回路の詳細説明図。 本発明の他の実施形態に係る高次高調波共振抑制方法の内容を示すフローチャート。
まず、本発明に至るまでの検討事項について説明する。図1は高次高調波の電流源を接続した場合に高次高調波の影響を受けた高圧配電系統の回路構成の一例を示す系統図である。
図1に示す高圧配電系統は、上位系統11から距離(d1+d2)の箇所に力率改善用コンデンサSC1が接続された配電線13aと、上位系統11から距離d3の箇所に力率改善用コンデンサSC2が接続された配電線13bとからなる。この高圧配電系統の配電線13aの力率改善用コンデンサSC1から距離d1の位置に電流源12(電源電流J)を接続したところ、力率改善用コンデンサSC1に過電流と電磁騒音が発生していた。力率改善用コンデンサSC1の高調波の最大成分は数kHzと高次で、また、その電流の大きさは電流源12の電源電流Jの数倍に増幅されていた。これは、配電線13a、13bで結ばれた力率改善用コンデンサSC1、SC2が構成する閉回路が共振回路を形成していると推定された。
そこで、電流源12の連系点の影響を調べるため、電流源12の連系点の位置を力率改善用コンデンサSC1の設置位置から力率改善用コンデンサSC2の設置位置へ変化させ、(1)式で定義した力率改善用コンデンサSCのSC電流Isの電流源12の電源電流Jに対する電流増幅率Qを計算することとした。
[数1]
Q=|Is/J| …(1)
後述するように、この計算時の周波数fは共振回路の共振周波数fnとし、計算パラメータは、力率改善用コンデンサSC1と連系点との間の線路インピーダンスのインダクタンスL1とした。これは、線路インピーダンスのインダクタンスL1は、力率改善用コンデンサSC1と連系点との間の距離に比例するからである。
図2は、図1の電流源の連系点の位置を変化させたときの電流増幅率Qの計算結果のグラフである。図2から分かるように、力率改善用コンデンサSC1の設置位置から力率改善用コンデンサSC2の設置位置までの間に、電流増幅率Qが1より小さくなる箇所があることが分かる。つまり、|Q|<1の非増幅領域が存在する。これより、電流源12の連系点の位置を適切に選択すれば、共振の影響抑制の可能性があることを知見した。
以下、非増幅領域の存在理由、及びその技術的内容について説明する。最初に、図1の高圧配電系統の系統モデルについて説明する。図3は図1に示した高圧配電系統の等価回路の回路図であり、図3(a)は電流源12とした場合の等価回路、図3(b)は図3(a)の電流源12を電圧源14とした場合の等価回路である。
図1の高圧配電系統は上位系統11の上位系インピーダンスが大なので、図3(a)のように上位系統11を無視した系統モデルに近似される。図3(a)において、C1は力率改善用コンデンサSC1の容量、R1は電流源12から力率改善用コンデンサSC1側の線路インピーダンスの抵抗、L1は電流源12から力率改善用コンデンサSC1側の線路インピーダンスのインダクタンス、C2は力率改善用コンデンサSC2の容量、R2は電流源12から力率改善用コンデンサSC2側の線路インピーダンスの抵抗、L2は電流源12から力率改善用コンデンサSC2側の線路インピーダンスのインダクタンスである。
さらに、電流源12を電圧源14に変換すれば、図3(b)の等価回路が得られる。図3(b)の等価回路より、次のことが分かる。図3(b)の電圧源14の電源電圧Eは、(2)式で与えられる。
[数2]
E=(R1+jX1)・J …(2)
ここで、X1は電流源12から力率改善用コンデンサSC1側のリアクタンスであり、電源電圧Eの角周波数ωとすると(3)式で示される。
[数3]
X1=ω・L1−1/(ω・C1) …(3)
また、図3(b)の等価回路のインピーダンスZは、(4)式で与えられる。
[数4]
Z=(R1+R2)+j(X1+X2) …(4)
ここで、X2は電流源12から力率改善用コンデンサSC2側のリアクタンスであり、(5)式で示される。
[数5]
X2=ω・L2−1/(ω・C2) …(5)
(4)式及び(5)式から、電源電圧Eの周波数f(角周波数ω)が等価回路の共振周波数fn(共振角周波数ωn)であるときは、等価回路のインピーダンスZのリアクタンスX1+X2は零となるので、連系点の位置に関係なく、等価回路のインピーダンスZは、Z=R1+R2で一定となる。従って、電源電圧Eの角周波数ωが等価回路の共振角周波数ωnであるときは、連系点の位置を変化させたとしても図3(b)に示した等価回路は、常に成立する。
そこで、電源電圧Eの角周波数ωを等価回路の共振角周波数ωnとして等価回路の力率改善用コンデンサSC2に流れるSC電流Is2が最小となる連系点の位置を求める。
等価回路の力率改善用コンデンサSC2に流れるSC電流Is2が最小となるのは等価回路の電源電圧Eの電圧が最小になるときである。周波数が高いので等価回路のインピーダンスZはリアクタンス支配となり、最小電圧Eminは(2)式及び(3)式よりX1=0で与えられる。従って、等価回路の力率改善用コンデンサSC2に流れるSC電流Is2が最小となる条件は(6)式で与えられる。
[数6]
L1=1/(ωn・C1) …(6)
共振角周波数ωnは(4)式で示される等価回路のインピーダンスZが最小となるとき、つまり、X1+X2=0のときであり、共振角周波数ωnは(7)式で示される。
[数7]
ωn=1/{(L1+L2)・C1・C2/(C1+C2)} …(7)
(7)式を(6)式に代入して、インダクタンスL1を求めると、(8)式となる。
[数8]
L1={C2/(C1+C2)}・(L1+L2) …(8)
(8)式から分かるように、C2/(C1+C2)<1であるから、電流源12から力率改善用コンデンサSC1側の線路インピーダンスのインダクタンスL1は、等価回路のインダクタンス(L1+L2)より小さいので、連系点は、力率改善用コンデンサSC1と力率改善用コンデンサSC2との間に必ず存在する一般性が分かる。
また、等価回路の共振時には、回路全体でのインピーダンスZのリアクタンス(X1+X2)は零なので、力率改善用コンデンサSC2のSC電流Is2は、(9)式のように非増幅であることが分かる。
[数9]
Q=|Is2/J|
=(R1+jX1)/{R1+R2+j(X1+X2)}
=R1/(R1+R2) …(9)
これにより、電流源12の連系点を、線路インピーダンスのリアクタンスX1がX1=0を満たすインダクタンスL1とすれば、共振の影響抑制が一般的に可能なことが分かる。さらに、X1+X2=0よりX2=0となるのも分かる。なお、連系点はωnが既知なので、(6)式を条件として設定するのが指針となる。
図4は、本発明の実施形態に係る高次高調波共振抑制方法の内容を示すフローチャートである。まず、高次高調波の電流源を連系させたときに形成される2つの閉回路に着目する(S1)。すなわち、図1に示す系統の回路構成で、電流源12から左右の力率改善用コンデンサSC1、SC2に分岐した2つの閉回路に着目し、図3(a)に示す等価回路を考える。
そして、2つの閉回路の電流源を、連系点から一方の力率改善用コンデンサ側のインピーダンスの関数で示される電圧源に置き換えた等価回路を作成する(S2)。すなわち、図3(a)に示した2つの閉回路の電流源12を電圧源14に置き換えた図3(b)に示す等価回路を作成する。この場合、電圧源14の電源電圧E{=(R1+jX1)J}は、連系点から一方の力率改善用コンデンサSC1側のインピーダンスZ1の関数で示される。
次に、等価回路の電源電圧の周波数が等価回路の共振周波数であるときには連系点の位置に関係なく等価回路のインピーダンスは一定であることに着目する(S3)。すなわち、等価回路のインピーダンスZは、(4)式で示され、電源電圧E{=(R1+jX1)J}の角周波数ωが共振角周波数ωnであるときは、等価回路のインピーダンスZのリアクタンスX1+X2は零となるので、連系点の位置を変化させても変化せず、Z=R1+R2で一定となる。
そこで、等価回路の電源電圧の周波数を等価回路の共振周波数として等価回路のインピーダンスを一定とする(S4)。これにより、連系点の位置を変化させたとしても、図3(b)に示した等価回路は常に成立する。なお、連系点の位置を変化させると、電源電圧EはインピーダンスZ1(=R1+jX1)が変化するので連系点の位置により変化する。
次に、等価回路の力率改善用コンデンサSC2に流れるSC電流Is2が最小となるのは等価回路の電源電圧E{=(R1+jX1)J}が最小になるときであることに着目する(S5)。これは、等価回路の力率改善用コンデンサSC2に流れるSC電流Is2は、Is2=E/Zで示されるからである。
そこで、等価回路の電源電圧Eが最小となるときの連系点からの一方の力率改善用コンデンサ側のインピーダンスZ1のインダクタンスL1を求める(S6)。すなわち、前述の(8)式から等価回路の電源電圧Eが最小となるときのインダクタンスL1が求められる。
インピーダンスZ1のインダクタンスL1は線路の長さに比例するので、インダクタンスL1から電流源12の連系点の位置を求める(S7)。このようにして、高次高調波共振を抑制できる電流源12の連系点の位置を求めることができる。
以上の説明では、電源電圧Eの角周波数ωが等価回路の共振角周波数ωnであるときは、連系点の位置を変化させたとしても、電流源12から力率改善用コンデンサSC1側のインピーダンスZ1の抵抗R1(線路インピーダンスの抵抗)が変化しない場合で説明したが、実際には連系点が変化すると、インピーダンスZ1の抵抗R1も変化する。そこで、抵抗R1の最適な連系点の位置への影響について検討する。
図5は、図3(a)に示した等価回路の電源電圧Eを決定するインピーダンスZ1を単位長さ当たりの抵抗r及びインダクタンスlを用いて表した等価回路の回路図である。図5に示すように、電流源12から力率改善用コンデンサSC1までの線路長をξ、単位長さ当たりのリアクタンスをx、力率改善用コンデンサの容量SC1のリアクタンスをXc,1とすると、インピーダンスZ1は(10)式、単位長さ当たりのリアクタンスxは(11)式、力率改善用コンデンサの容量SC1のリアクタンスXc,1は(12)式で示される。この場合も、電源電圧Eの角周波数ωは共振角周波数ωnとしている。
[数10]
Z1=rξ+j(xξ−Xc,1) …(10)
[数11]
x=ωn・l …(11)
[数12]
Xc,1=1/(ωn・C1) …(12)
電流源12の連系点の最適点は|Z1|の極小値なので、次の(13)式の条件式で与えられる。
Figure 2012100515
(13)式より最適点ξoptは、次の(14)式で与えられる。
ξopt=x・Xc,1/(r+x) …(14)
さらに、高次高調波領域ではx≫rの関係があるので、rは無視でき次の(15)式に示す近似式が得られる。
ξopt≒x・Xc,1/x=Xc,1/x …(15)
(11)式、(12)式、(15)式より、最適点ξoptのインダクタンスL1,optは、(16)式のように、インピーダンスZ1の共振点で近似できるのが分かる。
x・ξopt=ωn・L1,opt≒1/(ωn・C1) …(16)
このように、実際には連系点を変化させ、インピーダンスZ1の抵抗R1が変化しても、(16)式に示すように、インピーダンスZ1の共振点で近似できる。
次に、以上の説明では、電源電流Jの角周波数ωが等価回路の共振角周波数ωnである場合について説明したが、共振周波数ωnからずれている場合の周波数の影響について検討する。
ここでは、工学的な汎用性を考慮し、ω=ωnでの最適点に電流源12の電源電流Jpを固定したとき、角周波数ωが(17)式に示すように変動した場合の電流増幅率Q2(=|Is,2/Jp|)の対Δω特性を検討する。
ω=ωn+Δω …(17)
力率改善用コンデンサSC2のSC電流Is,2は、(18)式で与えられる。Z1(ω)は電流源12から力率改善用コンデンサSC1までのインピーダンスであり、ZT(ω)は、等価回路の全体のインピーダンスである。
Is,2(ω)=E2(ω)/ZT(ω)
={Z1(ω)/ZT(ω)}Jp …(18)
まず、(18)式の右辺の分子項であるインピーダンスZ1(ω)の特性について検討する。最適点ξopt での抵抗をR1,opt、最適点ξopt でのインダクタンスをL1,optとすると、インピーダンスZ1(ω)は(19)式で示される。
Z1(ω)=R1,opt+j(ω・L1,opt−1/ωn・C1) …(19)
(19)式のωに(17)式を代入し、(16)式からωn・L1,optを1/ωn・C1に置き換えると、(19)式は(20)式で表される。
Figure 2012100515
さらに、共振角周波数ωnによりΔωを標準化した(21)式に示される角周波数Ωを導入する。
Ω=Δω/ωn …(21)
(20)式に、(21)式を代入し、(16)式からωn・L1,optを1/ωn・C1に置き換えると、(21)式は(22)式で表される。
Figure 2012100515
これにより、インピーダンスZ1(ω)は、最適点ξopt での抵抗をR1,opt、力率改善用コンデンサSC1の容量C1で表され、最適点ξopt でのインダクタンスをL1,optは現れなくなる。
次に、(18)式の右辺の分母項である等価回路の全体のインピーダンスZT(ω)について検討する。(18)式の分母項のインピーダンスZT(ω)も分子項のインピーダンスZ1(ω)と同様に、(23)式に示すように、極めて類似の次式で与えられる。なお、Ce=C1・C2/(C1+C2)である。
Figure 2012100515
以上より、電源電流Jpに対する力率改善用コンデンサSC2のSC電流Is,2の電流増幅率Q2(ω)は、(18)式、(22)式、(23)式より、(24)式で示される。
Figure 2012100515
角周波数ωが共振角周波数ωnに等しい(ω=ωn)ときは、(21)式よりΔωは零であるので、角周波数Ωは零となる。従って、(24)式より、電流増幅率Q2(ω)は、(25)式で示される。
Q2(ω)=R1,opt/RT≪1 …(25)
ここで、配電線が単一線種の場合には、R1,optは(26)式が成立する。
R1,opt=RT{C2/(C1+C2)} …(26)
従って、(26)式を(25)式に代入すると、電流増幅率Q2(ω)は、(27)式で示され一定値となる。
Q2(ω)=C2/(C1+C2)=Ce/C1≪1 …(27)
また、配電線が複数種の場合には、角周波数Ωで微分すれば、Ω=0でのみ極値を持つ。従って、電流増幅率Q2(ω)は、(25)式及び(27)式より、1より小さく非増幅領域に存在する。
逆に、角周波数|Ω|が大きいときは、(24)式の抵抗部R1,opt、RTは無視できるので、電流増幅率Q2(ω)は、(28)式で示される。
Q2(ω)=Ce/C1≪1 …(28)
この場合も、電流増幅率Q2(ω)は、(28)式より、1より小さく非増幅領域に存在する。
次に、2つの閉回路の一方に複数の力率改善用コンデンサが並列接続されているときは、複数の力率改善用コンデンサを一つの力率改善用コンデンサが接続されたときの等価回路に置き換えて、2つの閉回路として取り扱う。
図6は、3個以上の力率改善用コンデンサが接続された高圧配電系統の等価回路の回路図である。図6では、3個の力率改善用コンデンサC1、C2、C3が接続された場合を示している。力率改善用コンデンサC1、C2の間は抵抗RT及びインダクタンスLTの配電線で接続され、力率改善用コンデンサC2、C3の間は抵抗R2,3及びインダクタンスL2,3の配電線で接続されている。そして、単独の力率改善用コンデンサC1と、等価SC群(2個の力率改善用コンデンサC2、C3)との間で共振回路を構成している。
この場合、等価SC群(2個の力率改善用コンデンサC2、C3)をR−C並列の等価回路(Ce//Re)で近似すれば、共振に殆ど寄与しない等価抵抗Re分は無視でき、2個の力率改善用コンデンサSCの共振回路の問題に変換できる。図7は、図6に示した回路の等価SC群を1つの等価SC回路とした場合の等価回路図であり、図7(a)は等価SC群をR−C並列の等価回路(Ce//Re)で近似した場合の等価回路図、図7(b)は共振に殆ど寄与しない等価抵抗Re分は無視した場合の等価回路図である。
図7(a)に示した等価SC群をR−C並列の等価回路から等価抵抗Re分は無視し、図7(b)に示すように、その等価回路に電流源12を接続すると、図3(a)の等価回路と同様となり、2つの閉回路として取り扱うことができる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。前述の(6)式を条件として連系点を設定できるのは、図3(a)に示すように、電流源12が連系されたときに2つの閉回路が形成される等価回路を求めることができるときである。多数の力率改善用コンデンサSCを有する電力系統では共振回路の分布も複雑になるので、2つの閉回路の等価回路を適切に求めることが難しくなる。
そこで、本発明の他の実施形態では、多数の力率改善用コンデンサSCを有し共振回路の分布が複雑である電力系統に対しても、電流源12の連系点を適切に求めるために、電流源12の連系による影響分布を示す固有関数法での影響度を用い、汎用的な最適連系点を推定することを検討した。
この場合、固有関数法での影響度と電流源の最適連系点との関係が不明であるので、その関係を検討することにした。固有関数法での影響度と電流源の最適連系点との関係の検討にあたっては、最適連系点が既知である図8に示す力率改善用コンデンサSCが2個のモデルを用いることにした。
すなわち、図3(b)に示す力率改善用コンデンサSC1に電流源12を接続し、図8に示すように、力率改善用コンデンサSC2の電圧V2,1と最適連系点の電圧Vo,1との波形を求めることにした。
ただし、電流源Jは(29)式のように共振角周波数ωnのsin波とした。(29)式のJPは電流源12の波高値である。
Figure 2012100515
図8より、力率改善用コンデンサSC2の電流Is2は、角周波数ωが共振角周波数なので、X=X1=X2=0となるため(30)式で与えられる。(30)式のRTは、共振回路の全抵抗値(RT=R1+R2)である。なお、以降は説明の簡潔化のため、sin波を位相基準とした複素表示を用いることとする。
Figure 2012100515
(30)式より力率改善用コンデンサSC2の電圧V2,1と最適連系点の電圧Vo,1は、(31)式で与えられる。
Figure 2012100515
(31)式より、力率改善用コンデンサSC2の電圧V2,1はsin波、最適連系点の電圧Vo,1はcos波になることが分かる。
このように、力率改善用コンデンサSC1にsin波の電流源12を連系すると、電流源12の最適連系点の電圧Vo,1はcos波となることから、電力系統の各力率改善用コンデンサSCにsin波の電流源12を連系したときの電流波形がcos波形となる地点を電流源12の接続点の最適点と定める。
図9は、多数の力率改善用コンデンサSCが散在している配電系統で形成される共振回路の説明図である。図9の白丸は力率改善用コンデンサSCであり、いま、破線で囲まれた力率改善用コンデンサSC群が共振周波数fn(fn=6.31kHz)の共振回路を構成しているとする。すなわち、ノード1〜5の5個の力率改善用コンデンサSCで共振回路を構成しているとする。
なお、共振回路を構成する力率改善用コンデンサSCの条件は、共振周波数fn(fn=6.31kHz)の電源Jをノードiに接続したときのノードiのノード電圧Vi,iが、(32)式に示すように閾値αを超えることとした。(32)式のVmaxは全ノード中で最大のVi,iを表し、αは1%を採用した。
Figure 2012100515
図9には、Vmax=100%としたときの各ノード1、2、3、4、5のノード電圧|Vi,i/Vmax|を括弧内に記載している。
図10は図9に示した共振回路の詳細説明図である。図10中の白丸の力率改善用コンデンサSC内の数字は、力率改善用コンデンサSCの容量[kvar]を示す。また、共振は、破線の○で示したノード1、2、3の力率改善用コンデンサSCと、実線の○で示したノード4、5の力率改善用コンデンサSCとの間で発生しているとする。
そして、ノード1〜5のうち、自己の力率改善用コンデンサSCの系統の接続点から他の力率改善用コンデンサSCが分岐していないノード1、2、3を選択し、力率改善用コンデンサSCにsin波の電流源12を連系したときに電流波形がcos波形となる地点を求めるとともに電流増幅率Qを求める。
例えば、ノード1の力率改善用コンデンサSCにsin波の電流源12を連系したときに電流波形がcos波形となる地点を求めると、最適連系点としてLo,1が求まり、ノード2の力率改善用コンデンサSCにsin波の電流源12を連系したときに電流波形がcos波形となる地点を求めると、最適連系点としてLo,2が求まり、ノード3の力率改善用コンデンサSCにsin波の電流源12を連系したときに電流波形がcos波形となる地点を求めると、最適連系点としてLo,3が求まる。
なお、ノード4、5は、系統の接続点から他の力率改善用コンデンサSCへの接続が分岐しているので、ノード4、5からは最適連系点は求めない。例えば、ノード4は、系統の接続点からノード1とノード5とに分岐しており、ノード5は、系統の接続点からノード4とノード2、3とに分岐しているので、ノード4、5からは最適連系点は求めない。
このようにして求めた最適連系点のインダクタンスLo,i(i=1、2,3)の位置は、共振回路内に複数存在する。すなわち、共振回路内には、複数の非増幅ポイントが離散的に存在する。これより、抑制可能な連系点の選択自由度が、高まる場合があるのが分かる。
図11は、本発明の実施形態に係る高次高調波共振抑制方法の内容を示すフローチャートである。まず、高次高調波を発生する電流源12を電力系統に連系した系統モデルの状態方程式を作成する(S1)。すなわち、系統モデルの状態方程式を(33)式のように定義する。
Figure 2012100515
ここで、{x}は変数ベクトル、{b}は定数ベクトル、[A]は係数行列である。次に、系統モデルの状態方程式の係数行列[A]よりその固有ベクトルを求める(S2)。係数行列[A]の固有ベクトル{η}による行列[Η]、[Θ] は(34)式で与えられる。(34)式のηの添え字Rは実部、Iは虚部を示す。
Figure 2012100515
次に、固有ベクトルの固有モードでの電流源12により受ける電力系統の各ノードでの影響度ζを計算する(S3)。影響度ζは、(34)式に示した係数行列[A]の固有ベクトル{η}による行列[Η]、[Θ] を用いて与えられる。固有モードkで電流源12をノードjに接続時のノードiの影響度ζi,j,kは(35)式で与えられる。
Figure 2012100515
影響度ζを用いて、(33)式で示される状態方程式の固有モードkでの電圧定常解は、(36)式のように与えられる。
Figure 2012100515
ここで、(36)式のΨk,R、Ψk,Iは(37)式で示される。
Figure 2012100515
(37)式のλは固有値であり、(37)式の定数εkは(38)式で示される。
Figure 2012100515
定数εkは配電系統では、一般に0.01~0.02程度であり、その上限値は約0.08であり、無視できるので、(37)式は、(39)式の近似式で示される。
Figure 2012100515
この(39)式を(36)式に代入すると、固有モードkでの電圧定常解は、(40)式で示される。
Figure 2012100515
前述したように、最適点の波形がcos波なので、sin波の係数ζk,Rは最適点では零となる。そこで、影響度の実数部ζk,Rが零の点を共振抑制に最適な電流源の連系点とする(S4)。つまり、固有関数法による影響度ζk,Rが零となる連系点を最適連系点として求めることになる。なお、固有関数法で求めた影響度ζk,Rに零がない場合には、影響度ζk,Rのうち、+ζk,Rと−ζk,Rとの間で線形補間して影響度ζk,Rが零になる点を求めることになる。
このように、電流源12により受ける電力系統の各ノードでの影響度ζを計算し、影響度の実数部ζk,Rが零の点を連系点として求めるので、共振抑制に最適な電流源の連系点を高精度に求めることができる。従って、複数個の力率改善用コンデンサSCが関係する共振回路内に、高次高調波の電流源を連系したとしても高次高調波共振の影響を抑制できる。
なお、電力系統の各ノードでの影響度ζを計算するには、数学上、ノードにコンデンサが接続されていることが条件となるので、コンデンサが接続されていないノードの影響度ζを求めるには、仮想のコンデンサを接続したことにして計算することになる。この仮想のコンデンサの容量は全体の計算結果に影響を与えない程度の容量を選択して行う。
11…上位系統、12…電流源、13…配電線、14…電圧源
この(39)式を(36)式に代入すると、固有モードkでの電圧定常解は、(40)式で示される。
Figure 2012100515

Claims (3)

  1. 電力系統に高次高調波の電流源が連系されたときその連系点から左右に分岐して形成される線路インピーダンス及び力率改善用コンデンサC1とC2からなる2つの閉回路に着目し、
    前記2つの閉回路の前記電流源を前記連系点から一方の力率改善用コンデンサC1側のインピーダンスの関数で示される電圧源に置き換えて1つの閉回路の等価回路を作成し、
    前記等価回路の電圧源の周波数が前記等価回路の共振周波数であるときには前記連系点の位置に関係なく前記等価回路のインピーダンスは一定であることに着目し、
    前記等価回路の電圧源の周波数を前記等価回路の共振周波数として前記等価回路のインピーダンスを一定とし、
    前記等価回路の力率改善用コンデンサC2に流れる電流が最小となるのは前記等価回路の前記電圧源の電圧が最小になるときであることに着目し、
    前記等価回路の前記電圧源の電圧が最小となるときの前記連系点から一方の力率改善用コンデンサC1側のインピーダンスのインダクタンスを求め、
    求めたインダクタンスに基づいて高次高調波共振により前記力率改善用コンデンサC2に流れる電流が小さくなる前記電流源の連系点の位置を求めることを特徴とする高次高調波共振抑制方法。
  2. 前記連系点から左右に分岐して形成された2つの閉回路の一方の閉回路に複数の力率改善用コンデンサが並列接続されているときは、複数の力率改善用コンデンサを一つの力率改善用コンデンサが接続されたときの等価回路に置き換えることを特徴とする請求項1記載の高次高調波共振抑制方法。
  3. 高次高調波を発生する電流源を電力系統に連系する際に前記電流源による高次高調波の共振を抑制する高次高調波共振抑制方法において、
    高次高調波を発生する電流源を電力系統に連系した系統モデルの状態方程式を作成し、
    前記系統モデルの状態方程式の係数行列よりその固有ベクトルを求め、
    前記固有ベクトルの固有モードでの前記電流源により受ける前記電力系統の各ノードでの影響度を計算し、
    前記影響度の実数部が零の点を共振抑制に最適な電流源の連系点とすることを特徴とする高次高調波共振抑制方法。
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