JP6121671B2 - 高調波計測方法および高調波計測装置 - Google Patents
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Description
進相コンデンサを低圧側に設置することの高圧需要家へのメリットとしては、変圧器損失の削減効果と、高調波流出電流の低減効果がある。これらのうち、高調波流出電流の低減効果は、簡易な計算では高調波発生源を定電流源と見立てた図11のような等価回路を考え、配電系統や進相コンデンサなどのインピーダンスを用いて、分流計算により求めることができる。
「直列リアクトル付き進相コンデンサ」は、高圧需要家の受電設備に設置された力率改善用進相コンデンサと、それに直列に接続された進相コンデンサ開閉時の突入電流抑制のために設置される直列リアクトルのインピーダンスである。以降、これを「進相コンデンサ設備」という。
「負荷」は、高圧需要家内で使用される負荷機器の消費電力に相当する回路を抵抗とリアクタンスで表現した回路である。負荷機器とは、例えば一般的なビルの場合は、空調機,エレベータ,照明器具,OA機器などの機器が該当する。
「高調波電流源」は、空調機,エレベータ,照明器具,OA機器などの機器のうち、高調波電流を発生する機器を対象とし、発生する高調波電流が配電系統等の他の条件によらず一定であるという仮定のもと、電流値が一定の電流源として置いた回路である。代表的な高調波電流を発生する機器としては、インバータ式エアコンや、パソコン等のOA機器があり、一般的なビルでは、高調波電流を発生する機器の大部分がインバータ式エアコンである。
図11の等価回路によれば、高圧需要家から配電系統に流出する高調波電流Ihoutは、次の式で算出される。
しかしながら実際の配電系統では、高圧需要家が接続される前から、1〜2%程度の高調波電圧が存在している場合が殆どである。そのため、図11の等価回路において、高調波電流源以外にも高調波を発生する源があることになる。
このことは、高圧需要家の受電点には、高調波発生源から流出する高調波電流(流出分)と、配電系統から進相コンデンサ等へ流入する高調波電流(流入分)が混在していることを意味する。そのため、実態に合った高調波計算を行うには、流出分と流入分を精度よく分離することが必要である。
実際の配電系統では、時間帯,曜日,季節などによってVSの値は変化する。そのため、測定値が取得された状況によってVSの値が異なっているため、結果的に高調波発生源の稼働状態が同じ場合であっても、時間帯,曜日,季節によってIhの値が異なって算出されることになる。
しかしながら、実際には高圧需要家内に設置された高調波発生装置自体の容量が変化するわけではなく、VSが変化する影響を受けて、高調波発生装置から流出する高調波電流が変化する。つまり、図12でIhと表現した電流には、VSの影響を受けない成分(即ち、VSがゼロの場合のIh)と、VSの影響を受ける成分(即ち、実際のIhとVSがゼロの場合のIhの差分)が混在しているということである。よって、実用的にはVSの影響を受けない成分(即ち、VSがゼロの場合のIh)を正確に求めることが、実際の高圧需要家内の高調波発生源から流出する正味の(つまりVSの影響を受けないIh)高調波流出電流を求めることと等価である。
これに対し、図12の高調波等価回路では、Ih自体を求めることはできるものの、Ihを、VSの影響を受けない成分と、VSの影響を受ける成分に分離することが不可能であるため、実際の高圧需要家内の高調波発生源から流出する正味の高調波流出電流を求めることができないという問題点があった。
本発明の高調波計測方法は、高圧需要家内の負荷機器から流出する高調波流出電流を、高圧需要家の設備を等価回路に置き換えた高調波等価回路による演算で求める高調波計測方法であって、
前記高調波等価回路は、
高圧需要家の受電設備に設置された変圧器と、該変圧器の一次側に置いた電源である高調波電圧源と、力率改善用の進相コンデンサ設備と、高圧需要家内で使用される負荷機器の消費電力に相当する電力を消費する抵抗とリアクタンスで表現した回路である「負荷」と、負荷機器のうち高調波電流を発生する機器を対象とした回路である「高調波電流源」と、該「高調波電流源」と並列に配置されたアドミタンスと、で構成されており、
前記高調波電圧源の電圧に比例した高調波流出電流が流れるよう前記アドミタンスを固定値に設定することを要旨とする。
こうすれば、進相コンデンサ設備が変圧器の低圧側(二次側)に配置されている中小規模の高圧需要家内の高調波発生源から流出する正味の高調波流出電流を求めることができる。
本発明の高調波計測装置では、高圧需要家内の高調波発生源(負荷機器)から流出する正味の高調波流出電流を算出でき、この高調波計測装置を進相コンデンサ用制御装置に組み込む等して、高調波計測装置による高調波流出電流の算出結果を用いて、進相コンデンサ群を1以上配置した進相コンデンサ設備を開閉制御することができる。
図1において、配電系統,変圧器,直列リアクトル付き進相コンデンサ,負荷の状態が一定のまま高調波電圧源が変化すると、固定アドミタンスに印加される高調波電圧が変化する。固定アドミタンスを一定値としておけば、固定アドミタンスには高調波電圧に比例した高調波電流が流れ込むことになる。こうして、高調波電圧源の変化によって固定アドミタンスに流れる電流が変化することで、VSの影響を受けない成分とVSの影響を受ける成分の両方を考慮できるようになり、計算の精度が向上する。
ここで、固定アドミタンス値Aは次の式で決定する。但し、VLは、高調波発生源の電圧であり、Ihは、高調波発生源から発生する高調波電流である。ここでΔは変化分を表す。特に、Ihの変化はIhvで表すこととする。
具体的には、第5調波電圧位相は、基本波電圧を基準とした場合、0°付近に集中して発生する特徴を利用し、Aを直線のように0°の値として一定であるとおく。これにより、位相変化分による誤差を最小にする。
図3に等価回路と詳細シミュレーションの計算結果の比較を示すが、実用上十分な精度である。
Aは前述のとおり配電系統に高調波電圧がある場合の高調波流出電流と、ない場合の高調波流出電流の差分に相当する値である。このため、Aを実在の配電系統での実測により算出することは困難である。そのため、高調波電圧を任意に調整できる実験装置を用い、実際のインバータ装置の高調波電流を実測して算出するか、若しくはインバータ装置の内部回路等を正確にモデル化でき、電圧や電流の波形の詳細計算が可能なシミュレーションソフトウェアを用いて算出するかの何れかの方法によらなければならない。ここでは、より汎用性の高いシミュレーションソフトウェアを用いる方法を説明する。
また、Aは高調波発生源の回路種類毎に決定する必要があるが、ここではビルで使用されるエアコンに最もよく使用される回路である三相ブリッジコンデンサ平滑回路を有する高調波発生源に適用するAの値の算出方法を説明する。
これは、比較的小規模な高圧需要家においてインバータ装置を接続した状況を想定したものである。しかしながら、計算の目的は高調波電圧がある場合とない場合の差異を求めることであり、別の状況を想定した計算を行なっても、算出されるAの値に実用上問題となる差異は生じない。
この高圧需要家とインバータ装置の詳細モデルを、シミュレーションソフトウェアであるMatlab/simulink上にて作成してシミュレーションを行い、その結果を用いてAを決定する。その具体的な手順は次のとおりである。
VS:配電系統の第5調波電圧
VL:負荷にかかる第5調波電圧
Ih:高調波発生源の第5調波電流
また、回路の条件設定は、以下のとおりである。
配電系統:変圧器一次側での短絡電流が12.5kAとなるインピーダンス
変圧器:30kVA
高調波発生源:ビルで使用されるエアコンに最もよく使用される回路である三相ブリッジコンデンサ平滑回路を有するインバータ駆動モータとし、モータ出力を15kWとする。
低圧直列リアクトル付き進相コンデンサ:変圧器容量の1/3程度とし、12kvarとする。
負荷:高調波発生源であるインバータ駆動モータと並列に接続された、高調波を発生しないモータ等を想定した負荷機器であり、出力を5kWとする。
手順2:VSを基本波の5%で位相差をゼロに設定し、その時のVLとIhを求める。
手順3:それぞれの差を求める
手順4:ΔVL=VL−VL0,ΔIh=Ihvとし、式(5)のA=Ihv/ΔVLからAを求める。
(a)等価回路の作成
実際の高圧需要家への適用例を述べる。
図5に示すような6600Vで受電しているビルを想定する。
この高圧需要家と配電系統を提案する等価回路に置き換えると図6となる。
(b)等価回路の各回路定数の決定方法
図5の各回路定数の決定方法を、以下に説明する。
[電源]
配電用変電所を表しており、電気回路的には電圧源として考え、高圧配電系統の基準電圧である6600Vとする。第5調波電圧は基本波電圧の4%以下に維持することを目標に運用されている。需要家が負荷機器を使用する昼間では、高調波電圧は比較的小さいため、このモデルでは2.5%とする。この条件から、実際にVSを求める。電圧は低圧側電圧を基準とするため210Vである。また、相電圧で計算するので、電圧を1/√3倍する。第5調波電圧は基本波電圧の2.5%と設定したので、これらから以下のように計算される。
配電系統とは、高圧需要家までの配電線であり、そのインピーダンスは配電線の種類,太さ,こう長(長さ)により決まるが、このモデルでは高圧需要家の高圧遮断器の一般的な定格値である短絡電流12.5kAから想定する。配電線のインピーダンスは一般的にリアクタンス成分の方が大きいため、このモデルでは簡単化のために抵抗分はゼロとし、リアクタンス分のみ考えるとする。これらの条件から、配電線のインピーダンスは以下のように計算される。なお、第5調波を対象としたモデルであるため、リアクトルのインピーダンスが周波数に比例することを考慮し、基本波インピーダンスの5倍とした。
高調波電流源とは、高圧需要家内で使用されているエアコンなどの負荷機器のうちインバータで駆動されているものであり、定格出力を15kWとした。この高調波電流源から発生する第5調波電流の大きさは、高圧または特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドラインに定められた高調波発生機器のうち、エアコンなどの負荷機器でよく用いられる、三相ブリッジコンデンサ平滑(交流・直流リアクトルあり)であるとする。
また、固定アドミタンスAは三相ブリッジコンデンサ平滑回路を有する場合として、前述の計算事例から求めた0.132−j0.246[S]を用いる。
高圧需要家内で使用されている負荷機器のうち高調波電流源以外のものを表しており、具体的には、インバータが使用されていないエアコン,エレベータ,給水ポンプなどがある。このモデルでは、これらの合計消費電力を30kWとし、力率は遅れ90%とした。また、負荷は抵抗とリアクトルの並列回路であるとする。
以上の条件から、負荷の第5調波インピーダンスを算出すると以下のとおりである。
高調波発生源と負荷の合計容量が45kWであることから、それよりも大きい75kVA(Y−Δ結線)とした。変圧器の等価回路は、抵抗とリアクトルの直列であるとした。また、代表的なメーカのカタログ値を参考に、負荷損を1280W、短絡インピーダンスを2.75%とした。これらの条件から変圧器の第5調波インピーダンスを求めると次のとおりである。
進相コンデンサは、一般的に変圧器容量の1/3程度の容量に選定されることから、このモデルでは24kvarとした。また、直列リアクトルが進相コンデンサに直列に接続されているものとし、直列リアクトルの容量は進相コンデンサ容量の6%とした。
この条件で、進相コンデンサの第5調波インピーダンスZCLを求める。定格電圧は234Vであり、損失はカタログから0.025%とすると、ZCLは以下のとおりである。ここで、コンデンサのインピーダンスは周波数に反比例するので、キャパシタの第5調波インピーダンスは基本波の1/5になる。
また、直列リアクトルの第5調波インピーダンスZSRLを求める。直列リアクトルは損失を示す抵抗とリアクトルの直列接続であるとし、直列リアクトル容量は24×0.06=1.44kvarである。
定格電圧は220×0.06/(1−0.06)=14.0[V]、損失はカタログから78Wとすると、ZSRLは以下のように計算できる。
但し、リアクトルの第5調波インピーダンスは基本波の5倍になる。
合計のインピーダンスであるZSCLは、ZCLとZSRLの和であり、次のとおりである。
以上の方法で、本例の等価回路である図6が作成された。
本例では、変圧器二次側の測定点において、第5調波電圧と電流を測定した結果を用いて、需要家からの正味の第5調波流出電流(配電系統の第5調波電圧VSがゼロの時の第5調波流出電流)を求める。
ここで、測定結果としては、前述したシミュレーションソフトウェアを用いて図7の状況の詳細をモデル化し、電圧と電流波形を計算した結果から算出した第5調波電圧と電流の値(それぞれVT,ITとする)を用いる。なお、一般的に実際に測定できる電圧は線間電圧であるが、ここでは相電圧に変換した値を用いる。
以下に、本事例で用いるVT,ITとの数値を示す。位相は測定点の基本波線間電圧VTを基準とした。
本例等価回路を用いた第5調波流出電流の計算方法を示す。この時VT,IT,及び等価回路の各パラメータ(電源,高調波発生源以外)は既知であるとして計算を行なっている。
まずは、電源の第5調波電圧VSを求める。
但し、Zstは次のとおりである。
次に、Ih+Ihvを求める。但し、高調波発生源から発生する電流Ih+Ihvを定電流源と考える。
まず、重ね合わせの定理から、電圧源VSがない時のITを求める。この時のITをITiとすると、次のとおりである。
但し、Zkは次のとおりである。
よって、Ih+Ihvは、以下の式で求められる。但し、ITとIh+Ihvは、等価回路で示す電流の向きが逆となるので、次のとおりである。
次に、Ihvを求める。これは、電流源がない時(1/Aはある)を想定し、VSによって1/Aに流れる電流を計算すればよい。よって、次のとおりである。
となる。但し、ZPは次のとおりである。
これらから、需要家内の負荷機器から発生する正味の第5調波電流Ihが求められる。よって、配電系統に流出する第5調波電流は、Ihoutをもとに次の式で計算できる。
それぞれ、シミュレーションデータと等価回路の各パラメータを用いて計算した。
式(6),(7)より
式(8),(9),(10)より
式(11),(12)より
よってIhは次のとおりになる。
図12の従来等価回路は、図6の本例等価回路から1/Aを除いた回路であるため、高調波発生源から流出する電流Ih+IhvはIhとIhvに分離することができない。そこで、図12の従来等価回路では、本例等価回路で求めたIh+Ihvを一つに統合し、定電流源Ih’と考える。よって次のとおりとなる。
需要家内の負荷機器から発生する正味の第5調波電流Ihは、配電系統の第5調波電圧VSがゼロの時における高調波発生源から発生する第5調波電流である。そこで、第5調波電圧VSがゼロの時の詳細シミュレーションを行い、高調波発生源から発生する第5調波電流を求め、本例等価回路および従来等価回路から求めたIhとIh’の妥当性を評価する。
実際に詳細シミュレーションを実施した結果は、次のとおりである。
本例等価回路および従来等価回路から求めたIhとIh’と、上の値を比較すると、本例等価回路で求めたIhの方が、差異が小さいことが分かる。
よって、本例等価回路では従来等価回路よりも精度よく需要家内の負荷機器から発生する正味の第5調波電流を求めることができている。
(a)等価回路の作成
実際の高圧需要家への適用例を述べる。
図7に示すような6600Vで受電しているビルを想定する。この高圧需要家と配電系統を等価回路に置き換えると図8となる。
図8の回路定数の決定方法を、以下に説明する。
図8の定数は、高圧に接続された進相コンデンサ以外、実施例1と全て同じ値に設定した。
高圧進相コンデンサの回路定数の決定方法について説明する。
進相コンデンサは、一般的に変圧器容量の1/3程度の容量に選定されることから、このモデルでも実施例1と同様に24kvarとした。また、直列リアクトルが進相コンデンサに直列に接続されているものとし、直列リアクトルの容量は進相コンデンサ容量の6%とした。
この条件で、進相コンデンサの第5調波インピーダンスZCHを求める。
実施例1と異なり、高圧接続なので低圧電圧基準に換算すると、
定格電圧は210/(1−0.06)=223Vとなる。また、損失はカタログから0.025%とすると、ZCHは以下のとおりである。ここで、コンデンサのインピーダンスは周波数に反比例するので、キャパシタの第5調波インピーダンスは基本波の1/5になる。
また、直列リアクトルの第5調波インピーダンスZSRHを求める。
直列リアクトルは損失を示す抵抗とリアクトルの直列接続であるとし、直列リアクトル容量は24×0.06=1.44kvarである。定格電圧は210×0.06/(1−0.06)=13.4[V]、損失はカタログから76Wとすると、ZSRHは以下のように計算できる。但し、リアクトルの第5調波インピーダンスは基本波の5倍になる。
合計のインピーダンスであるZSCHは、ZCHとZSRHの和であり、次のとおりである。
本実施例では、受電点の測定点において、第5調波電圧と電流を測定した結果を用いて、需要家からの正味の第5調波流出電流(配電系統の第5調波電圧VSがゼロの時の第5調波流出電流)を求める。
ここで、測定結果としては、前述したシミュレーションソフトウェアを用いて図7の状況の詳細をモデル化し、電圧と電流波形を計算した結果から算出した第5調波電圧と電流の値(それぞれVR,IRとする)を用いる。なお、一般的に実際に測定できる電圧は線間電圧であるが、ここでは相電圧に変換した値を用いる。
以下に、本事例で用いるVR,IRとの数値を示す。位相は測定点の基本波相電圧VRを基準とした。
等価回路計算では、低圧基準とするため、VR,IRは低圧換算を行った。
本例等価回路を用いた第5調波流出電流の計算方法を示す。この時VR,IR,及び等価回路の各回路定数(電源,高調波発生源以外)は既知であるとして計算を行なっている。
まずは、電源の第5調波電圧VSを求める。
次に、Ih+Ihvを求める。但し、高調波発生源から発生する電流Ih+Ihvを定電流源と考える。
まず、重ね合わせの定理から、電圧源VSがない時のIRを求める。この時のIRをIRiとすると、次のとおりになる。
但し、ZWは次のとおりになる。
次に、電圧源VSがない時のITを求める。変圧器の巻線がY−Δであることを考慮して、位相を+30deg回転させる。この時のITをITiとすると次のとおりになる。
よって、Ih+Ihvは、以下の式で求められる。但し、ITとIh+Ihvは、等価回路で示す電流の向きが逆となるので次のとおりになる。
但し、ZFは次のとおりになる。
次に、Ihvを求める。これは、電流源がない時(1/Aはある)を想定し、VSによって1/Aに流れる電流を計算すればよい。また、変圧器の巻線がY−Δであることを考慮して、位相を+30deg回転させる。但し、IhvとVSは、等価回路で示す向きが逆となるので次のとおりになる。
但し、ZM,ZXは次のとおりになる。
これらから、需要家内の負荷機器から発生する正味の第5調波電流Ihが求められる。
よって、配電系統に流出する第5調波電流Ihoutは、Ihをもとに次の式で計算できる。
それぞれ、シミュレーションデータと等価回路の各回路定数を用いて計算した。
式(14)より、
式(15),(16)より、
式(17)より、
式(18),(19)より、
式(21),(22),(23)より、
よって式(20)より次のとおりになる。
従来等価回路は、図6の本例等価回路から1/Aを除いた回路であるため、高調波発生源から流出する電流Ih+IhvはIhとIhvに分離することができない。そこで、従来等価回路では、本例等価回路で求めたIh+Ihvを一つに統合し、定電流源1h’と考える。よって次のとおりとなる。
需要家内の負荷機器から発生する正味の第5調波電流Ihは、配電系統の第5調波電圧VSがゼロの時における高調波発生源から発生する第5調波電流である。そこで、第5調波電圧VSがゼロの時の詳細シミュレーションを行い、高調波発生源から発生する第5調波電流を求め、本例等価回路及び従来等価回路から求めたIhとIh’の妥当性を評価する。
実際に詳細シミュレーションを実施した結果は、次のとおりである。
本例等価回路及び従来等価回路から求めたIhとIh’と、上の値を比較すると、本例等価回路で求めたIhの方が、差異が小さいことが分かる。よって、本例等価回路では従来等価回路よりも精度よく需要家内の負荷機器から発生する正味の第5調波電流を求めることができている。
高圧受電設備の変圧器等の電圧と電流を入力する入力部11,それらから高調波電圧と電流を演算する演算部12,変圧器インピーダンス等の等価回路演算に使用する定数を保存しておく記憶部13,実際に等価回路による演算を行う演算部14,演算結果を用いて進相コンデンサ(進相コンデンサ設備4)を制御する進相コンデンサ制御部15から構成される。
このうち、入力部11,演算部12,記憶部13,演算部14で本発明の高調波計測装置10Aが構成されている。
なお、進相コンデンサ設備4は、進相コンデンサと直列リアクトルと開閉器を直列に接続してなる進相コンデンサ群を1以上配置して構成されているものとする。
電圧と電流を入力し、それらから高調波電圧と電流を算出する。それらの値と予め設定し保存させておいた変圧器インピーダンス等の設定値および現在の進相コンデンサ投入台数を用いて、本発明の等価回路から(正味の)高調波発生源電流を算出する。さらにその結果を用いて、受電点からの(正味の)高調波流出電流を算出する。この算出結果を用いて、進相コンデンサ制御ロジックに基づき進相コンデンサを開閉するための制御信号を出力し、進相コンデンサ群の投入台数を変化させる制御を行うことができる。
即ち、本発明の高調波計測装置10Aにより、高圧需要家内の高調波発生源(負荷機器)から流出する正味の高調波流出電流を算出でき、この高調波計測装置10Aを進相コンデンサ用制御装置10に組み込むことで、高調波計測装置10Aによる高調波流出電流の算出結果を用いて、進相コンデンサ群を1以上配置した進相コンデンサ設備4を開閉制御することができる。
2a 変圧器
2b 配電線
3 高調波電圧源
4 進相コンデンサ設備
5 負荷
6 高調波電流源
7 固定アドミタンス
10 進相コンデンサ制御装置
10A 高調波計測装置
11 電圧・電流入力部
12 高調波電圧・高調波電流演算部
13 記憶部
14 等価回路による演算部
15 進相コンデンサ制御部
Claims (5)
- 高圧需要家内の負荷機器から流出する高調波流出電流を、高圧需要家の設備を等価回路に置き換えた高調波等価回路による演算で求める高調波計測方法であって、
前記高調波等価回路は、
高圧需要家の受電設備に設置された変圧器と、該変圧器の一次側に置いた電源である高調波電圧源と、力率改善用の進相コンデンサ設備と、高圧需要家内で使用される負荷機器の消費電力に相当する電力を消費する抵抗とリアクタンスで表現した回路である「負荷」と、負荷機器のうち高調波電流を発生する機器を対象とした回路である「高調波電流源」と、該「高調波電流源」と並列に配置されたアドミタンスと、で構成されており、
前記高調波電圧源の電圧に比例した高調波流出電流が流れるよう前記アドミタンスを固定値に設定する
ことを特徴とする高調波計測方法。 - 前記固定値として、基本波電圧を基準とした場合の前記高調波電圧源の電圧の位相が0°のときのアドミタンス値を用いることを特徴とする
請求項1に記載の高調波計測方法。 - 前記高調波電圧源の電圧として第5調波電圧を用いることを特徴とする請求項2に記載の高調波計測方法。
- 前記高調波等価回路において、前記進相コンデンサ設備は、
前記変圧器の低圧側(二次側)に配置され、進相コンデンサと直列リアクトルを直列に接続してなる進相コンデンサ群を1以上配置して構成されている
請求項1に記載の高調波計測方法。 - 前記請求項1または2に記載の高調波等価回路を実装し、
高圧受電設備の変圧器の電圧と電流を入力する入力部と、入力部に入力された電圧と電流から高調波電圧と高調波電流を算出する第1演算部と、等価回路演算に使用する定数を保存しておく記憶部と、等価回路による演算を行い高調波流出電流を算出する第2演算部を備えて構成した
高調波計測装置。
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