JP2012093247A - 漏洩弾性表面波を用いた欠陥検出方法及び欠陥検出装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 被検体と対向する面に保護膜3dを介して凹面状に設けられた圧電高分子膜3bと、この圧電高分子膜の中央部に超音波伝達媒体を供給する開口部4とを備え、被検体へ漏洩弾性表面波を励起させる斜角入射波の送波と、被検体からの漏洩弾性表面波からモード変換によって生成された縦波である漏洩波の受波とを行う超音波プローブ1を用いた欠陥検出方法であって、超音波プローブで被検体の表面を走査しつつ測定し、超音波プローブで測定した受波信号の振幅に応じた輝度で映像を生成し、この映像において、振幅の小さい輝度の表示領域内に振幅の大きい輝度の表示領域が線状に存在しているときは被検体にクラックが存在していると判定する欠陥検出方法である。
【選択図】図4
Description
更に、この局部水浸式超音波プローブは、前記振動子及び音響レンズを、前記被検体への漏洩表面波を励起させる斜角入射波の送信と前記被検体からの漏洩波の受信とを行えるようにした構成である。
更に、上述の保守検査における表層欠陥の検査では、超音波プローブを手持ちして探傷走査を行うことにより、被検体と超音波プローブとの間の距離変動による感度変化が発生している。
本願発明について説明する前に、表面に凹凸が発生している被検体のクラック検出において、従来技術を適用することの問題点を詳しく説明する。
図1は、超音波プローブと被検体との間の超音波の伝搬を示す図である。
被検体を鋼とすると、超音波伝達媒体である水から鋼へ超音波が入射する場合に、漏洩表面波励起の入射角(臨界角)θは約30°である。この角度は大きなものであるため、音響レンズを用いた超音波プローブで漏洩表面波を励起させるためには、音響レンズとして縦波速度が大きな材料を用いる必要がある。音響レンズは、超音波の屈折を利用して超音波ビームの集束を行うため、縦波速度が小さい材料を用いるとビームの屈折の効果が小さくなって超音波集束ビームの焦点距離が長くなる結果、鋼の表面に対して大きな入射角で超音波を入射させることが困難となるからである。
図2は、超音波プローブと表面に凹凸がある被検体との間の超音波の伝搬を示す図である。図2に示すように、表面に凹凸がある被検体に対して漏洩表面波を励起し、受波する場合には、超音波プローブからみたときの漏洩表面波の臨界角(見掛け上の臨界角)が変化する。
超音波プローブ1は、球面に形成された(断面図では円弧)バッキング材2の内表面に薄層をなす超音波部材3を設けた構成である。そして、球表面の中央部には貫通孔4が設けられ、この貫通孔4より超音波伝達媒体である水が供給される。なお、超音波プローブの内面形状は、球面に限られず、楕円面であっても良い。一般に、超音波プローブ1の用途に応じた曲面を用いれば良い。
超音波プローブ1は図示を略した2次元走査装置に取り付けられている。2次元走査装置は、超音波プローブ1を搭載して被検体表面を走査する。
本願の超音波プローブ1として、振動子材質:P(VDF−TrFE)、周波数50MHz、振動子直径8mm、水中焦点距離6mmの仕様の超音波プローブを用いた。また、対比のため、従来技術による超音波プローブ(以下従来プローブ)として、振動子材質:メタニオブ酸鉛、周波数20MHz、振動子直径12mm、音響レンズ:アルミニウム製、水中焦点距離8mmの超音波プローブを用いた。
図中Zで表示されている値は、被検体の深さ方向において超音波プローブによる集束ビームの焦点を設定したみかけ上の位置を示しており、例えばZ=−2mmとは、表面焦点(Z=0mm)の状態から超音波プローブを2mm被検体へ近づけ、被検体の深さ2mmの位置に集束ビームの焦点(図4)を設定したことを表している。もちろん、被検体中での真の焦点距離は音速の違いによる屈折の変化のため、見かけ上の焦点距離とは異なる。−符号は被検体の内部にあることを示している。
図7に示す本願の超音波プローブ1を用いて測定した3枚のクラック映像では、集束ビームの焦点位置が深くなるほどクラックによって生じた黒い部分の幅が広くなっている。
超音波プローブ1から被検体に入射する超音波によって被検体表面に励起された漏洩表面波は、被検体表面を距離Lだけ伝搬し、モード変換により縦波となって超音波プローブ1で受波される。伝搬経路中の被検体にクラックが存在していた場合は、そのクラックによって伝搬する漏洩表面波の強度が弱められ、これが黒く観察される。
そうとすれば、原理的に図8のクラックの位置の左側では、距離Lよりも短い位置に超音波が入射したときは励起された漏洩表面波の強度が弱められる。超音波の入射がクラックの右側である場合も考慮すると、クラック位置を中心とした2Lの範囲で漏洩表面波の強度が弱められ黒く観察される。
このことから、本願の超音波プローブ1を用いて測定した映像中に線状に延びた黒い領域が存在している場合は、クラックがあると判定することができる。さらに、超音波ビームの焦点位置を変更して測定した映像を取得し、その映像中の同じ位置にも幅が異なる線状に延びた黒い領域が存在している場合は、クラックがあると判定することもできる。
図中Zで表示されている値は、被検材の深さ方向において超音波プローブ1による集束ビームの焦点を設定した位置を示しており、Z=−3mmとは、みかけ上、被検材の深さ3mmの位置に焦点を設定したことを表している。−符号は、焦点位置が被検材の内部にあることを示している。
(1)本願の超音波プローブは、被検体へ漏洩弾性表面波を励起させる斜角入射波の送波と前記被検体からの漏洩波の受波とを行えるようにした超音波プローブである。このプローブは、音響レンズを備えておらず、そのプローブの被検体と対向する内面には保護膜を介して凹面状に整形した圧電高分子膜を超音波部材として設けている。そして、その圧電高分子膜の中央部に、超音波伝達媒体を供給するための開口部を設けている。この構成の超音波プローブによれば、プローブ走査における被検体と超音波プローブとの距離を大きくすることができるので、超音波ビームの焦点を被検体内部の深い位置に設定することができる。その結果、漏洩表面波の伝搬距離を長くするができ、漏洩表面波を用いたクラックなどの欠陥測定を容易に、かつ、信頼度高く行える。加えて、被検体の凹凸による受波漏洩表面波の振幅変動が発生しにくいため、被検体の凹凸による誤検出も発生しにくい。従って、漏洩表面波によるクラック検出を有利に達成できる。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
Claims (6)
- 被検体と対向する面に保護膜を介して凹面状に設けられた圧電高分子膜と、この圧電高分子膜の中央部に超音波伝達媒体を供給する開口部とを備え、前記被検体へ漏洩弾性表面波を励起させる斜角入射波の送波と、前記被検体からの漏洩弾性表面波からモード変換によって生成された縦波である漏洩波の受波とを行う超音波プローブを用いた欠陥検出方法であって、
前記超音波プローブで被検体の表面を走査しつつ測定し、
前記超音波プローブで測定した受波信号の振幅に応じた輝度で映像を生成し、
この映像において、振幅の小さい輝度の表示領域内に振幅の大きい輝度の表示領域が線状に存在しているときは前記被検体にクラックが存在していると判定すること
を特徴とする欠陥検出方法。 - 被検体と対向する面に保護膜を介して凹面状に設けられた圧電高分子膜と、この圧電高分子膜の中央部に超音波伝達媒体を供給する開口部とを備え、前記被検体へ漏洩弾性表面波を励起させる斜角入射波の送波と、前記被検体からの漏洩弾性表面波からモード変換によって生成された縦波である漏洩波の受波とを行う超音波プローブを用いた欠陥検出方法であって、
前記超音波プローブで被検体の表面を走査しつつ測定し、
前記超音波プローブで測定した受波信号の振幅に応じた輝度で映像を生成し、
この映像において、線状に延びた振幅の小さい輝度の表示領域内に振幅の大きい輝度の表示領域が前記振幅の小さい輝度の表示領域に沿って線状に存在しているときは前記被検体にクラックが存在していると判定すること
を特徴とする欠陥検出方法。 - 前記圧電高分子膜は膜厚5〜50μmのポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体P(VDF-TrFE)であり、前記保護膜は膜厚5μm以上のポリイミド樹脂膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検出方法。
- 被検体と対向する面に保護膜を介して凹面状に設けられた圧電高分子膜と、この圧電高分子膜の中央部に超音波伝達媒体を供給する開口部とを備え、前記被検体へ漏洩弾性表面波を励起させる斜角入射波の送波と、前記被検体からの漏洩弾性表面波からモード変換によって生成された縦波である漏洩波の受波とを行う超音波プローブからの測定信号を処理する欠陥検出装置であって、
前記超音波プローブで被検体の表面を走査しつつ測定した受波信号の振幅に応じた輝度で映像を生成する映像生成部と、
この映像において、振幅の小さい輝度の表示領域内に振幅の大きい輝度の表示領域が線状に存在しているときは前記被検体にクラックが存在していると判定する判定部と
を備えたことを特徴とする欠陥検出装置。 - 被検体と対向する面に保護膜を介して凹面状に設けられた圧電高分子膜と、この圧電高分子膜の中央部に超音波伝達媒体を供給する開口部とを備え、前記被検体へ漏洩弾性表面波を励起させる斜角入射波の送波と、前記被検体からの漏洩弾性表面波からモード変換によって生成された縦波である漏洩波の受波とを行う超音波プローブからの測定信号を処理する欠陥検出装置であって、
前記超音波プローブで被検体の表面を走査しつつ測定した受波信号の振幅に応じた輝度で映像を生成する映像生成部と、
この映像において、線状に延びた振幅の小さい輝度の表示領域内に振幅の大きい輝度の表示領域が前記振幅の小さい輝度の表示領域に沿って線状に存在しているときは前記被検体にクラックが存在していると判定する判定部と
を備えたことを特徴とする欠陥検出装置。 - 前記圧電高分子膜は膜厚5〜50μmのポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体P(VDF-TrFE)であり、前記保護膜は膜厚5μm以上のポリイミド樹脂膜であることを特徴とする請求項4又は5に記載の欠陥検出装置。
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