JP2012092269A - 高分子膜及びガスバリア材 - Google Patents
高分子膜及びガスバリア材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2012092269A JP2012092269A JP2010242549A JP2010242549A JP2012092269A JP 2012092269 A JP2012092269 A JP 2012092269A JP 2010242549 A JP2010242549 A JP 2010242549A JP 2010242549 A JP2010242549 A JP 2010242549A JP 2012092269 A JP2012092269 A JP 2012092269A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- polymer
- polymer film
- general formula
- main chain
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
- Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
Abstract
【解決手段】高分子膜は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、ガスバリア材として用いる。
【選択図】図1
Description
非常に高い気体透過性を有する高分子骨格としてポリアセチレン誘導体が知られている。現在知られている最も優れた気体透過性高分子はポリトリメチルシリルプロピンである。
このポリトリメチルシリルプロピンは、剛直なポリアセチレン主鎖骨格のため自由体積が大きい点と、嵩高くプロペラ様に回転するトリメチルシリル基とが分子設計のポイントとなっている。下記表1に代表的な高分子膜に対する各気体の気体透過係数を示す。この表1に示す各気体の気体透過係数の違いは、気体分子のサイズを反映している。
これらの高分子は、ガラス転位点がそれほど高くないため、室温近傍では熱運動しており高分子鎖間を気体分子が移動していく。即ち、水素結合した高分子鎖間は高密度になり、気体透過性を減少させることができる。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物を含み、ガスバリア材として用いられることを特徴とする高分子膜。
<2> ポリマー鎖主鎖を形成する基が、ポリフェニルアセチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリシロキサン、ポリフェニルオキサイド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリルエステル、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ヘテロ環ポリマー、ポリビニルアルコール及びこれらの誘導体のいずれかの構造単位を有する基である前記<1>に記載の高分子膜。
<3> ポリマー鎖主鎖を形成する基が、下記構造式(2−1)から(2−9)のいずれかで表されるポリマー鎖主鎖の構造単位及びこれらの誘導体から選択される基である前記<2>に記載の高分子膜。
<4> ポリマー鎖主鎖を形成する基が、構造式(2−1)、(2−2)で表されるポリマー鎖主鎖の構造単位及びこれらの誘導体から選択される基であり、前記構造式(2−1)、(2−2)中のフェニレン基が、一般式(1)で表される化合物中、*の位置の炭素原子とパラ位で結合する前記<3>に記載の高分子膜。
<5> 電子供与性基が、パラ位とオルト位の少なくとも一方にアミンを有するフェニル基、パラ位とオルト位の少なくとも一方にアルコキシ基を有するフェニル基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、置換基を有していてもよいフェロセン含有基、置換基を有していてもよいチオフェン含有基、置換基を有していてもよいピロール含有基及び置換基を有していてもよいカルバゾール含有基からなる群から選択される前記<1>から<4>のいずれかに記載の高分子膜。
<6> キノイド型構造を有するアリール基が、シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジイリデン基、2,3,5,6−テトラフルオロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジイリデン基、ナフタレン−2,6−ジイリデン基、アントラセン−9,10−ジイリデン基からなる群から選択される基である前記<1>から<5>のいずれかに記載の高分子膜。
<7> 少なくとも、前記<1>から<6>のいずれかに記載の高分子膜を有することを特徴とするガスバリア材。
本発明の高分子膜は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、ガスバリア材として用いられることを特徴とする。
前記一般式(1)で表される化合物の前駆体となる、前記一般式(2)で示されるアルキン含有前駆体ポリマーは、エチニレン基(炭素−炭素三重結合)を有するモノマーと、必要により他のモノマーを共重合させることにより得ることができる。
中でも、前記電子供与性基が、パラ位とオルト位の少なくとも一方にアミンを有するフェニル基又は置換基を有していてもよいフェロセン含有基である場合には、さらに反応性を高めることができる。
なお、前記R1が水素原子の場合には、化学的安定性が低下した高分子化合物となる。
前記ポリマー鎖主鎖を形成する基としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、公知のポリマー鎖主鎖を形成する基を挙げることができるが、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリシロキサン、ポリフェニルオキサイド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリルエステル、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ヘテロ環ポリマー、ポリビニルアルコール及びこれらの誘導体のいずれかの構造単位を有する基が好ましい。
これらの中でも、成型加工性に優れ、高い耐熱性が期待できるポリスチレン及び芳香族ポリアミドが特に好ましい。
下記構造式(2−10)は、前記構造式(2−7)のポリアミドにジフェニルエーテルを重合付加した誘導体に係り、置換基の結合位置(−*)を変更したものである。
下記構造式(2−11)は、下記構造式(2−10)から置換基の結合位置(−*)を変更したものである。
下記構造式(2−12)は、前記構造式(2−7)のポリエステルにジフェニルエーテルを重合付加した誘導体に係り、置換基の結合位置(−*)を変更したものである。
下記構造式(2−13)は、下記構造式(2−12)から置換基の結合位置(−*)を変更したものである。
下記構造式(2−14)は、前記構造式(2−9)から置換基の結合位置(−*)を変更したものである。
なお、前記誘導体としては、このような誘導体の例に限らず、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、R4をハロゲン原子(例えば、Br)とする場合、例えば、原子移動ラジカル重合法などにより、前記前駆体ポリマーを合成し、目的化合物の合成に用いることができる。
前記の反応式(I)では、下記一般式(3)で表されるテトラシアノ構造を有する化合物が使用される。この化合物は、強力なアクセプター分子として作用し、前記一般式(2)で表される電子供与性の前駆体ポリマーと良好な反応性を示す。このような合成方法により、目的化合物としての前記一般式(1)で表される化合物を簡便かつ収率良く合成することができる。
これらの中でも、シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジイリデン基、2,3,5,6−テトラフルオロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジイリデン基、ナフタレン−2,6−ジイリデン基、アントラセン−9,10−ジイリデン基が好ましい。
前記一般式(3)において、R3がシクロヘキサ−2,5ジエン−1,4−ジイリデン基の場合には、前記構造式(A−2)で示されるテトラシアノキノジメタンとなる。
前記一般式(3)において、R3が2,3,5,6−テトラフルオロヘキサ−2,5ジエン−1,4−ジイリデン基の場合には、前記構造式(A−3)で示されるテトラフルオロテトラシアノキノジメタンとなる。
前記一般式(3)において、R3がナフタレン−2,6−ジイリデン基の場合には、前記構造式(A−4)で示される11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタンとなる。
前記一般式(3)において、R3がアントラセン−9,10−ジイリデン基の場合には、前記構造式(A−5)で示される9,10−ビス(ジシアノメチレン)−9,10−ジヒドロアントラセンとなる。
これらの中でも、前記構造式(A−1)で示されるテトラシアノエチレンを用いることが好ましい。
前記テトラシアノエチレン(TCNE)を使用すれば、過剰に添加しても、副反応を誘起しないため、昇華精製で容易にテトラシアノエチレンを除去することができ、製造コストを低減することができる。また、テトラシアノエチレンを昇華精製により除去した後の反応物の重量から重量増加を計算すれば、反応収率を容易に計算することができる。
前記高分子膜の形成方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)で表される化合物を含む溶液を基板、シート等の基材に塗工する方法、前記一般式(1)で表される化合物を含む高分子膜を基板から伸長させる方法などが挙げられる。
また、前記高分子膜としては、本発明の効果を損なわない限り、前記一般式(1)で表される化合物以外の添加材を含むことができ、このような添加材としては、目的に応じて、高分子膜の形成材料として用いられる公知の材料から適宜選択することができる。
前記ガスバリア性に関し、前記一般式(1)で表される化合物は、前記反応式(I)において、前記一般式(3)で表される化合物の添加量を調整することにより、前記一般式(1)におけるxとyの重合比を変更し、導入するシアノ基量を調節可能であり、前記高分子膜の気体透過係数を制御することができる。
また、前記高分子膜は、前記導入するシアノ基量を調節して前記高分子膜の膜密度を制御することにより、目的とする気体の分子サイズに応じて、これらの透過性を選択的に制御することができる。
本発明のガスバリア材は、少なくとも、前記高分子膜を有することを特徴とする。
前記ガスバリア材は、前記高分子膜のガスバリア性を利用して、気体透過制御膜、気体封止膜、塗料材料、塗装材料、及び包装用フィルム、シーリング材、パッキング材等の各種資材として用いることができる。
また、前記ガスバリア材としては、前記高分子膜以外の部材を有していてもよく、前記部材としては、それぞれの用途に応じて、公知の部材から適宜選択することができる。
<モノマー1の合成>
モノマー1を非特許文献1(Y.Li,T.Michinobu,Polym.Chem.1,72(2010))に記載の合成方法を参考にして、以下の通り合成した。
4−ヨードアニリン(5.30g,24.2mmoL)の脱水ジメチルホルムアミド(50mL)溶液に1-ヨードヘキサデカン(28.0g,79.5mmol)と炭酸ナトリウム(4.50g,42.5mmol)を加え、95℃で20時間反応させた。室温まで冷却し、200mLの純水で洗浄し、ジクロロメタン200mLで抽出した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムを用い、ヘキサンを展開溶媒として分画し、N,N−ジヘキサデシル−4−ヨードアニリンを13.0g得た。
脱気した[(4−エチニルフェニル)エチニル](トリイソプロピル)シラン(1.00g,3.54mmol)とN,N−ジヘキサデシル−4−ヨードアニリン(2.36g,3.53mmol)のジイソプロピルアミン溶液(40mL)に,ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(50mg,0.070mmol)とヨウ化銅(I)(25mg,0.13mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で18時間反応させた。析出、沈殿した塩を濾別後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムを用い、ヘキサンを展開溶媒として分画し、目的物N,N−ジヘキサデシル−4−({4−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)アニリンを粘稠液体として2.16g得た。
N,N−ジヘキサデシル−4−({4−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)アニリン(1.00g,1.21mmol)のテトラヒドロフラン溶液(12mL)に、テトラブチルアンモニウムフロライド(1M テトラヒドロフラン溶液)(2.4mL)を加え、0℃空気下で20分反応させた。シリカゲルカラムを用い、ジクロロメタンを展開溶媒として分画し、4−[(4−エチニルフェニル)エチニル]−N,N−ジヘキサデシルアニリンを黄色粉末として786mg得た。
次に、モノマー1からポリフェニルアセチレン誘導体2を以下の方法により合成した。
先ず、30mL二口ナシ型フラスコにモノマー1を170mg(0.255mmol)と攪拌子を加えた。前記フラスコを窒素雰囲気下に曝した後、トルエン(1.25mL)を加えてモノマー1を溶解させた。
次に、触媒溶液([Rh(nbd)Cl]2:0.128mmol、トルエン:1.25mL、トリエチルアミン:1滴)を乾燥したシリンジで加え、モノマー1溶液と反応させた。
この反応溶液をアルゴン雰囲気下、室温で24時間攪拌し、重合反応させた。重合終了後、トルエン2mLを加えた後、メタノール/ジクロロメタン(6/1)の混合溶液(200mL)中に滴下して沈殿物を得た。
この沈殿物をろ過により回収した後、再沈澱精製してポリフェニルアセチレン誘導体2を黄色粉末として122mg得た。
収率:72%。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 0.86(s,CH3),1.24(s,NCH2CH2(CH2)15CH3),1.59(s,NCHZCHZ),2.87−3.60(br s,NCH2),6.15−6.55(br s,PhH and olefin proton),7.05−7.55(br s,PhH)。IR(neat):2920,2851,2209,1608,1518,1464,1368,1196,1137,811,722cm−1。
TCNEの付加反応は、以下の方法により行った。
50mLフラスコにポリフェニルアセチレン誘導体2を41.4mg(0.062mmol/repeat unit)を入れ、1,2−ジクロロベンゼン(12mL)を加えて溶解させた後、これにTCNEの1,2−ジクロロエタン溶液(5.686M、1.4mL)を加えて反応させた。
この反応溶液を窒素雰囲気下、100℃で24時間攪拌し反応させた。
反応終了後、室温に冷却してから溶媒を減圧除去し、シアノ基が導入された目的化合物3を赤色粉末として49.3mg得た。
収率100%。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 0.88(s,CH3),1.25(s,NCH2CH2(CH2)15CH3),1.57(s,NCH2CH2),2.80−3.60(br s,NCH2),6.42−6.97(br s,PhH and olefin proton),7.50−7.90(br s,PhH)。IR(neat):2921,2851,2214,1601,1483,1443,1415,1345,1210,1182,820,796,720cm−1。Elemental analysis calcd for (C54H75N5)n:C 81.66,H 9.52,N 8.82;found:C 81.81,H 9.90,N 8.29%。
目的化合物3(25mg)をトルエン(1.5mL)に溶解させた後、テフロン板上にキャスト塗工して、実施例1における高分子膜を得た。
なお、実施例1における高分子膜の膜厚は、60μm程度であった。
<モノマー4の合成>
モノマー4を非特許文献2(Y.Li,T.Michinobu,Polym.Chem.1,pp.72−74(2010))に記載の合成方法を参考にして、以下の通り合成した。
脱気した[(3−エチニルフェニル)エチニル](トリイソプロピル)シラン(1.00g,3.54mmol)と、モノマー1の合成に用いたN,N−ジヘキサデシル−4−ヨードアニリン(2.36g,3.53mmol)のジイソプロピルアミン溶液(40mL)にビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(50mg,0.070mmol)とヨウ化銅(I)(25mg,0.13mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で18時間反応させた。析出、沈殿した塩を濾別後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムを用い、ヘキサンを展開溶媒として分画し、N,N−ジヘキサデシル−4−({3−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)アニリンを粘稠液体として1.98g得た。
N,N−ジヘキサデシル−4−({3−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)アニリン(650mg,0.790mmol)のテトラヒドロフラン溶液(8mL)にテトラブチルアンモニウムフロライド(1M テトラヒドロフラン溶液)(2.4mL)を加え、0℃空気下で20分反応させた。シリカゲルカラムを用い、ジクロロメタンを展開溶媒として分画し、目的物4−[(4−エチニルフェニル)エチニル]−N,N−ジヘキサデシルアニリンを黄色粉末として520mg得た。
ポリフェニルアセチレン誘導体2の合成において、モノマー1に代えてモノマー4を同量用いたこと以外は、ポリフェニルアセチレン誘導体2の合成方法と同様にして、ポリフェニルアセチレン誘導体5を合成した。ポリフェニルアセチレン誘導体5は、黄色粉末として105mg得られた。
収率70%。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 0.88(m,CH3),1.25(s,NCH2CH2(CH2)15CH3,1.59(br s,NCH2CH2),2.80−3.30(br s,NCH2),6.20−6.62(br s,PhH and olefin proton),7.05−7.45(br s,PhH)。IR(neat):2921,2851,2208,1608,1590,1518,1465,1368,1193,812,789,720cm−1。
TCNE付加反応による目的化合物3の合成において、ポリフェニルアセチレン誘導体2に代えてポリフェニルアセチレン誘導体5を同量用いたこと以外は、目的化合物3の合成と同様にして、シアノ基が導入された目的化合物6の合成を行った。
目的化合物6は、赤色粉末として49.0mg得られた。
収率100%。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 0.86(s,CH3),1.26(s,NCH2CH2(CH2)15CH3),1.59(s,NCH2CH2),3.20−3.40(br s,NCH2),6.40−6.85(br s,PhH and olefin proton),7.50−8.00(br s,PhH)。IR(neat):2921,2851,2214,1602,1486,1466,1416,1341,1210,1181,818,719cm−1。Elemental analysis calcd for (C54H75N5)n:C 81.66,H 9.52,N 8.82;found:C 81.54,H 9.80,N 8.64%。
実施例1における高分子膜の形成において、目的化合物3に代えて目的化合物6を同量用いたこと以外は、実施例1における高分子膜の形成方法と同様にして、実施例2における高分子膜を得た。
前駆体高分子として電子豊富アルキンを有するポリアセチレン誘導体を合成する。電子供与性基としてジアルキルアニリンを採用する。アルキル鎖長により高分子の溶解性及び成形加工性を制御できると共に、ポスト機能化反応における高収率が期待される。
Rh触媒は一置換アルキンのみ重合活性を示すポリアセチレン誘導体合成用の触媒である。電子豊富アルキンと末端アルキンのみを有するモノマー1及び4を非特許文献2に記載の合成方法を参考にして合成した。
モノマー1及び4の末端アルキンのみにRh触媒が作用して重合することで、対応するポリフェニルアセチレン誘導体2及び5が得られた。
得られたポリフェニルアセチレン誘導体2及び5にアクセプター分子であるテトラシアノエチレン(TCNE)を加えると室温で定量的に反応進行し、モノマー繰返し単位当たり4つのシアノ基が導入された目的化合物3及び6を合成することができた。
得られたポリフェニルアセチレン誘導体2、5及び目的化合物3、6の各高分子の構造は、NMR、IR、GPC、元素分析より確実に同定した。GPCで算出した高分子の分子量は、全て6万以上であり、十分な高分子量体が得られていた(ポリフェニルアセチレン誘導体2:Mn=66,300、Mw/Mn=3.06、目的化合物3:Mn=210,000、Mw/Mn=4.01、ポリフェニルアセチレン誘導体5:Mn=90,500、Mw/Mn=2.91、目的化合物6:Mn=159,600、Mw/Mn=3.41)。
気体透過性を評価するための代表的な気体として酸素を選択した。30℃で測定した酸素透過係数PO2を下記表2に示す。なお、酸素透過係数PO2は、数値が小さい程、ガスバリア性が高いことを示す。
なお、高分子のポスト機能化で気体透過性を変化(または低下)させた報告例が存在する(T.Masuda et al.,J.Polym.Sci.A44,5028(2006))。この報告で増田らは、トリアルキルシリル基を側鎖に有するポリフェニルアセチレン誘導体の膜に、テトラフルオロアンモニウムフルオリドを作用させて選択的にシリル基のみを除去して不溶性のポリフェニルアセチレン膜へと誘導している。シリル基がなくなることで膜中の空隙が大きくなり、気体透過性が向上している。また、アルコール保護のシリル基を除去すると、逆に気体透過性が減少している。これは水酸基由来の水素結合が有効に作用した結果と考えられる。
しかしながら、シアノ基は定量的に保護できないため、同様の方法論は適用できない。
即ち、本発明では、アルキン含有前駆体ポリマーとテトラシアノ構造を有するアクセプター化合物間の定量的付加反応を利用し、簡単かつ収率良くガスバリア性を有する高分子の高分子膜を得ることとしている。また、本発明における高分子化合物は、ポスト機能化後でも高い溶解性を保持しており、優れた成形加工性を得ることができる。
更に、実施例1における目的化合物3と実施例2における目的化合物6の酸素透過性を比較すると、対称性が悪く密にパッキングできない目的化合物6では、目的化合物3よりも約3倍多く酸素を透過することが分かった。これにより炭素一つ分の置換位置の違いでも気体透過性を制御できることが理解される。
以上、実施例1及び2では、気体透過性に優れたポリアセチレン誘導体を気体バリア性に優れたシアノ基含有高分子として、ガスバリア材として有用な高分子膜を得ることができている。
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表される化合物を含み、ガスバリア材として用いられることを特徴とする高分子膜。
- ポリマー鎖主鎖を形成する基が、ポリフェニルアセチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリシロキサン、ポリフェニルオキサイド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリルエステル、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ヘテロ環ポリマー、ポリビニルアルコール及びこれらの誘導体のいずれかの構造単位を有する基である請求項1に記載の高分子膜。
- ポリマー鎖主鎖を形成する基が、下記構造式(2−1)から(2−9)のいずれかで表されるポリマー鎖主鎖の構造単位及びこれらの誘導体から選択される基である請求項2に記載の高分子膜。
- ポリマー鎖主鎖を形成する基が、構造式(2−1)、(2−2)で表されるポリマー鎖主鎖の構造単位及びこれらの誘導体から選択される基であり、前記構造式(2−1)、(2−2)中のフェニレン基が、一般式(1)で表される化合物中、*の位置の炭素原子とパラ位で結合する請求項3に記載の高分子膜。
- 電子供与性基が、パラ位とオルト位の少なくとも一方にアミンを有するフェニル基、パラ位とオルト位の少なくとも一方にアルコキシ基を有するフェニル基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、置換基を有していてもよいフェロセン含有基、置換基を有していてもよいチオフェン含有基、置換基を有していてもよいピロール含有基及び置換基を有していてもよいカルバゾール含有基からなる群から選択される請求項1から4のいずれかに記載の高分子膜。
- キノイド型構造を有するアリール基が、シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジイリデン基、2,3,5,6−テトラフルオロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジイリデン基、ナフタレン−2,6−ジイリデン基、アントラセン−9,10−ジイリデン基からなる群から選択される基である請求項1から5のいずれかに記載の高分子膜。
- 少なくとも、請求項1から6のいずれかに記載の高分子膜を有することを特徴とするガスバリア材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010242549A JP5733816B2 (ja) | 2010-10-28 | 2010-10-28 | 高分子膜及びガスバリア材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010242549A JP5733816B2 (ja) | 2010-10-28 | 2010-10-28 | 高分子膜及びガスバリア材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012092269A true JP2012092269A (ja) | 2012-05-17 |
JP5733816B2 JP5733816B2 (ja) | 2015-06-10 |
Family
ID=46385991
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010242549A Active JP5733816B2 (ja) | 2010-10-28 | 2010-10-28 | 高分子膜及びガスバリア材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5733816B2 (ja) |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS63277764A (ja) * | 1987-05-09 | 1988-11-15 | Kanebo Ltd | 導電性薄膜の製造方法 |
JPH04174587A (ja) * | 1990-06-28 | 1992-06-22 | Sanyo Chem Ind Ltd | 基板、重合体およびそれらの製造法 |
JP2001106920A (ja) * | 1999-03-03 | 2001-04-17 | Kuraray Co Ltd | ガスバリア性樹脂組成物 |
JP2005194460A (ja) * | 2004-01-09 | 2005-07-21 | Asahi Kasei Chemicals Corp | ガスバリア性フィルム |
JP2009270011A (ja) * | 2008-05-07 | 2009-11-19 | Tokyo Univ Of Agriculture & Technology | 電子状態の制御された共役高分子化合物及びそれを用いた有機半導体材料 |
WO2011148900A1 (ja) * | 2010-05-26 | 2011-12-01 | 住友化学株式会社 | 高分子化合物及びそれを用いた光電変換素子 |
-
2010
- 2010-10-28 JP JP2010242549A patent/JP5733816B2/ja active Active
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS63277764A (ja) * | 1987-05-09 | 1988-11-15 | Kanebo Ltd | 導電性薄膜の製造方法 |
JPH04174587A (ja) * | 1990-06-28 | 1992-06-22 | Sanyo Chem Ind Ltd | 基板、重合体およびそれらの製造法 |
JP2001106920A (ja) * | 1999-03-03 | 2001-04-17 | Kuraray Co Ltd | ガスバリア性樹脂組成物 |
JP2005194460A (ja) * | 2004-01-09 | 2005-07-21 | Asahi Kasei Chemicals Corp | ガスバリア性フィルム |
JP2009270011A (ja) * | 2008-05-07 | 2009-11-19 | Tokyo Univ Of Agriculture & Technology | 電子状態の制御された共役高分子化合物及びそれを用いた有機半導体材料 |
WO2011148900A1 (ja) * | 2010-05-26 | 2011-12-01 | 住友化学株式会社 | 高分子化合物及びそれを用いた光電変換素子 |
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
JPN6011050610; BUTLER,P. et al: 'The reactions of some sigma-alkynylnickel complexes with 7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane' Journal of Organometallic Chemistry Vol.693, No.3, 2008, p.381-392 * |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP5733816B2 (ja) | 2015-06-10 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Kloppenburg et al. | High molecular weight poly (p-phenyleneethynylene) s by alkyne metathesis utilizing “instant” catalysts: a synthetic study | |
Yokozawa et al. | Scope of controlled synthesis via chain-growth condensation polymerization: from aromatic polyamides to π-conjugated polymers | |
KR101046892B1 (ko) | 스타 폴리머 및 그 제조 방법 | |
JP5150007B2 (ja) | ポリチオフェン重合用触媒およびポリ(置換チオフェン)の製造方法 | |
Pudelski et al. | Synthesis, characterization, and properties of high molecular weight poly (methylated ferrocenylsilanes) and their charge transfer polymer salts with tetracyanoethylene | |
JP2012025887A (ja) | ポリ(3−置換チオフェン)の製造方法 | |
JP5657248B2 (ja) | 3,4−アルキレンジオキシピロールおよび3,4−アルキレンジオキシフランの無触媒重合 | |
KR20060134068A (ko) | 다이할로젠화물, 고분자 화합물 및 그의 제조방법 | |
JP7513971B2 (ja) | 陰イオン交換樹脂の製造方法および電解質膜の製造方法 | |
JP7513970B2 (ja) | 陰イオン交換樹脂の製造方法および電解質膜の製造方法 | |
US8609804B2 (en) | Polyarylene polymers and processes for preparing | |
JP5733816B2 (ja) | 高分子膜及びガスバリア材 | |
JP2018504466A (ja) | 高分子およびその製造方法、並びにそれを含む電解質膜 | |
Katsumata et al. | Synthesis and properties of various poly (diphenylacetylenes) containing tert-amine moieties | |
Itoh et al. | Formation of bundle assemblies of stereoregular polymers in thermal solid-state polymerization of 7, 7, 8, 8-tetrakis (aryloxycarbonyl)-p-quinodimethanes | |
JP7150265B2 (ja) | 片末端修飾ポリチオフェンの製造方法 | |
JP3950421B2 (ja) | ケタジンユニット含有化合物、ケタジンユニット含有ポリマーまたはオリゴマーおよびその製造方法 | |
JP5651240B2 (ja) | 環状共役系ポリマーの製造方法および環状共役系ポリマー重合用触媒 | |
RU2447090C1 (ru) | Способ получения флуоресцентного полимера (варианты) | |
JP3811676B2 (ja) | ポリフェニレン系重合体の製造法 | |
JP2018113444A (ja) | ホウ素含有化合物、及び、ホウ素含有重合体 | |
JPH0617414B2 (ja) | オルト位に置換基を有するフエニルアセチレン重合体 | |
JP5019509B2 (ja) | 共役系透明高分子材料組成物 | |
JPH0832742B2 (ja) | 置換基を有するポリアセチレンの製造法 | |
US20040127638A1 (en) | Acrylonitrile block copolymer and method for producing the same |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20130906 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20140611 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140708 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140904 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20150317 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20150410 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5733816 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |