以下、実施形態に係るMRI装置を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成を示すブロック図である。
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1は、例えば永久磁石、超伝導磁石などである。傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に傾斜磁場を発生する。具体的には、傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置され、傾斜磁場電源8から電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。
送信コイル3は、シーケンス設定部21で設定されたシーケンス情報に従ってRFパルスを放射する。具体的には、送信コイル3は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、RFパルス生成部9からRFパルス信号の供給を受けてRFパルスを放射する。受信コイル4は、エコー信号を受信する。具体的には、受信コイル4は、天板5a上に載置され、あるいは天板5aに内蔵され、あるいは被検体Pに装着されるなどし、撮像時には、被検体Pとともに傾斜磁場コイル2の内側に配置される。また、受信コイル4は、RFパルスを受けて被検体Pから放射されたエコー信号の他に、送信コイル3から放射されたRFパルスを受信する。また、受信コイル4は、受信したRFパルス及びエコー信号をADC10に出力する。
寝台5は、被検体Pが載置される天板5aを備え、天板5aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台5は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部6は、主制御部20による制御の下、寝台5を駆動して、天板5aを長手方向及び上下方向に移動する。
シーケンス制御部7は、傾斜磁場電源8及びRFパルス生成部9を制御する。具体的には、シーケンス制御部7は、主制御部20による制御の下、シーケンス情報に従って傾斜磁場を変化させるように傾斜磁場電源8を制御する。また、シーケンス制御部7は、主制御部20による制御の下、シーケンス情報に従ってRFパルスを生成するようにRFパルス生成部9を制御する。
シーケンス情報には、RFパルスの信号形状や、RFパルスの信号電力の他、RFパルスが放射されるタイミングとRFパルスを受けて被検体Pから放射されるエコー信号が受信されるタイミングとの間隔を示す情報などが含まれる。なお、RFパルスが放射されるタイミングとエコー信号が受信されるタイミングとの間隔を示す情報には、RFパルスが放射されるタイミングとエコー信号が受信されるタイミングとの間隔が計算により求められるための情報も含まれる。例えば、シーケンス情報からサンプリング周期などを求めることが可能であるため、RFパルスのピークからRFパルスが開始するタイミングなどを求めることが可能である。
傾斜磁場電源8は、シーケンス制御部7による制御の下、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。RFパルス生成部9は、シーケンス制御部7による制御の下、送信コイル3にRFパルス信号を供給する。
ADC10は、受信コイル4から出力されたRF信号をA/D変換してRFデータを生成し、生成したRFデータを無線送信部11に出力する。無線送信部11は、ADC10から出力されたRFデータを無線通信にて送信する。具体的には、無線送信部11は、RFデータに対して符号化処理などを行い、処理後のRFデータに基づき搬送波を変調することによって、伝送用の信号を生成する。そして、無線送信部11は、生成した信号のレベルを調整し、レベルを調整した信号をアンテナ11aに供給する。すると、アンテナ11aは、信号を電磁波として放射する。
無線受信部12は、無線送信部11から送信されたRFデータを無線通信にて受信する。具体的には、無線受信部12は、アンテナ12aにおいて、アンテナ11aから放射された電磁波を受け、伝送用の信号を取得する。また、無線受信部12は、取得した信号に対して、増幅処理、復調処理、復号処理などを行い、処理後の信号からRFデータを抽出し、抽出したRFデータをタイミング検出部13及びエコー信号検出部14に出力する。
タイミング検出部13は、無線受信部12から出力されたRFデータから、RFパルスのタイミングを検出し、検出したタイミングをエコー信号検出部14に出力する。なお、タイミング検出部13の詳細は、後述する。エコー信号検出部14は、タイミング検出部13によって検出されたタイミング及びシーケンス情報に規定された間隔を示す情報に基づいて、無線受信部12から出力されたRFデータからエコー信号を検出し、検出したエコー信号を解析部15に出力する。
解析部15は、エコー信号検出部14から出力されたエコー信号の周波数及び位相を解析し、被検体Pの断面画像を得る。具体的には、解析部15は、エコー信号に対して、位相補正処理、ゲイン制御処理、周波数変換処理、直交検波処理などを行い、処理後のエコー信号に基づいて被検体Pの断面画像を再構成する。
主制御部20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、主制御部20は、寝台制御部6、シーケンス制御部7、及び解析部15などを制御する。主制御部20は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、又は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路を含む。
また、主制御部20は、シーケンス設定部21を備える。シーケンス設定部21は、撮像条件の設定を受け付け、受け付けた撮像条件からシーケンス情報を設定し、設定したシーケンス情報を用いてシーケンス制御部7を制御する。例えば、シーケンス設定部21は、表示部23を介して撮像条件編集画面を表示する。また、例えば、シーケンス設定部21は、入力部24を介して撮像条件の設定を受け付ける。また、例えば、シーケンス設定部21は、受け付けた撮像条件からシーケンス情報を設定し、設定したシーケンス情報を記憶部22に格納する。また、シーケンス設定部21によって設定されたシーケンス情報は、エコー信号検出部14にも出力され、エコー信号検出部14による処理にも用いられる。
記憶部22は、シーケンス設定部21によって設定されたシーケンス情報や、解析部15によって再構成された断面画像、あるいは、MRI装置100において用いられるその他のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスクなどである。
表示部23は、撮像条件編集画面や断面画像などを表示する。例えば、表示部23は、液晶表示器などの表示デバイスである。入力部24は、撮像開始指示、撮像条件の設定などを操作者から受け付ける。例えば、入力部24は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチなどの選択デバイス、あるいはキーボードなどの入力デバイスである。
次に、エコー信号を正しいタイミングで検出できない要因の一例として、エコー信号の伝送時間に生じるばらつきを説明する。図2は、エコー信号の伝送時間に生じるばらつきを説明するための図である。
図2においては、無線送信部11から無線受信部12に送信される信号が概念的に示されている。縦軸は信号の振幅を示し、横軸は時間を示す。図2では、(A)が、ADC10から無線送信部11に入力される信号、(B)が、無線受信部12からタイミング検出部13又はエコー信号検出部14に入力される信号をそれぞれ表している。図2に示すように、無線送信部11から無線受信部12に向けて送信される信号には、RFパルス及びエコー信号が含まれる。図2では一例として、90°パルス203及び180°パルス202によって生じるエコー信号201を示したが、本実施形態はこれに限定されず、他のRFパルスを用いてもよい。
第1の実施形態においては、90°パルス及び180°パルスが被検体Pに放射されると、一定時間後に、被検体Pからエコー信号が放射される。
ここで、MRI装置100は、シーケンス設定部21によって設定されたシーケンス情報に従って撮像を実行する。これにより、エコー信号の区間211’と、エコー信号201’と180°パルス202’との間隔212’と、エコー信号201’と90°パルス203’との間隔213’とは、それぞれシーケンス情報に規定された値(又はシーケンス情報から求められる値)となる。同様に、エコー信号の区間211、エコー信号201と180°パルス202との間隔212、エコー信号201と90°パルス203との間隔213は、シーケンス情報に規定された値(又はシーケンス情報から求められる値)となる。
ところで、一般に、MRI装置において無線通信を用いてエコー信号を伝送する場合、エコー信号のデータだけが伝送される。図2の(A)を参照すると、区間211’にあるエコー信号201’が無線通信で伝送される。無線通信を用いてエコー信号を伝送する場合、エコー信号の伝送時間にばらつきが生じる場合があるため、エコー信号の受信タイミングにずれが生じうる。これについて図2を使って説明する。伝送時間にばらつきが生じた結果、受信側でのエコー信号の受信タイミングを表す期間211の時間が前後にばらつく。その結果、送信側でのエコー信号の送信タイミングと受信側でのエコー信号の受信タイミングの差である期間207に増減が生じる。この結果として、受信側でエコー信号を正確に検出できないという問題が生じる。
なお、RFデータを間欠的に伝送する場合だけではなく、RFデータを連続的に伝送する場合にも、エコー信号を正しいタイミングで検出できない場合が生じ得る。例えば、無線通信の送信側のクロックと受信側のクロックとにずれが生じた場合にも、エコー信号を正しいタイミングで検出できない。
第1の実施形態に係るMRI装置100は、エコー信号を正しいタイミングで検出するために、エコー信号だけでなく、そのエコー信号に対応するRFパルスも無線通信で送信する。RFパルスが放射されたタイミングとエコー信号が受信されたタイミングの間隔は、上述のようにシーケンス情報で規定されているため、RFパルスを後述する方法により検出することでエコー信号の正しいタイミングが分かる。なお、RFパルスはシーケンス情報によってその信号の様々な情報(RFパルスの形状等)が取得できる既知の信号であるため、その信号を使って高い精度でRFパルスを検出することが可能である。その一方で、エコー信号はその形状等の情報が既知ではないため、エコー信号を検出することは難しい。本実施形態では、RFパルスを検出し、RFパルスのタイミングを基準とすることにより、エコー信号の検出が可能となる。
すなわち、MRI装置100においては、タイミング検出部13が、RFパルスのタイミングを検出し、エコー信号検出部14が、タイミング検出部13によって検出されたタイミング及びシーケンス情報に規定された間隔を示す情報に基づいて、エコー信号を検出する。上述したように、シーケンス情報には、RFパルスが放射されるタイミングとエコー信号が受信されるタイミングとの間隔を示す情報が規定されており、この間隔は保証されている。RFパルスのタイミングが正しく検出されれば、検出したタイミングを起点とすることで、エコー信号を正しいタイミングで検出することが可能となる。
例えば、タイミング検出部13は、180°パルス202のタイミングを検出する。一方、エコー信号検出部14は、シーケンス情報から間隔212の情報を取得し、検出された180°パルス202のタイミングを起点として、間隔212後のタイミングを求め、求めたタイミングでエコー信号201を検出する。
このように、各エコー信号は、各180°パルス(又は90°パルス)を起点として検出されるので、例えば、RFデータの伝送時間にずれ生じた場合や、無線通信のクロックにずれが生じた場合であっても、正しいタイミングで検出することができる。
以下、図3〜9を用いて、主にタイミング検出部13の詳細を説明する。図3は、第1の実施形態に係るMRI装置100の一部構成を示すブロック図である。図3は、図1に示したMRI装置100のうち、説明の便宜上、RFパルス生成部9、送信コイル3、受信コイル4、ADC10、無線送信部11、無線受信部12、タイミング検出部13、エコー信号検出部14、解析部15、及びシーケンス設定部21を示す。
また、以下、必要に応じて、受信コイル4、ADC10、及び無線送信部11を総称して「コイル側装置」と称し、無線受信部12、タイミング検出部13、エコー信号検出部14、解析部15、及びシーケンス設定部21を総称して「システム側装置」と称する。第1の実施形態において、コイル側装置とシステム側装置とは無線通信が可能なように構成されている。このため、MRI装置100は、コイル側装置とシステム側装置との間でRFデータなどの情報をやり取りするために、無線通信による伝送を行う。なお、エコー信号検出部14及びシーケンス設定部21は、いずれもシステム側装置であるので、MRI装置100は、エコー信号検出部14とシーケンス設定部21との間の情報のやり取りを有線で行う。すなわち、MRI装置100は、シーケンス設定部21によって設定されたシーケンス情報を、有線の通信によって、エコー信号検出部14に出力する。
また、図4は、第1の実施形態に係るタイミング検出部13の構成を示すブロック図である。図4に示すように、タイミング検出部13は、包絡線計算部13aと、対称誤差計算部13bと、最小タイミング検出部13cとを有する。包絡線計算部13aは、無線受信部12によって受信された信号から、信号の振幅の遷移を示す包絡線を計算する。対称誤差計算部13bは、包絡線計算部13aによって計算された包絡線に含まれる標本点毎に、標本点を中心とする左右対称の範囲について左右対称に位置付けられる信号同士の電力差を計算し、電力差をその範囲で加算した値である対称誤差を計算する。最小タイミング検出部13cは、対称誤差計算部13bによって計算された対称誤差が最小値となるタイミングを検出する。タイミング検出部13によれば、RFパルスの中心のタイミングを精度よく検出することが可能である。
タイミング検出部13が有する各部を詳細に説明する前に、RFパルスの信号形状を説明する。図5は、RFパルスの信号形状の一例を示す図である。RFパルスは、SIN関数とSINC関数との積によって表される関数である。SIN関数の角周波数は、MRI装置100を使って撮像するスライスの位置に対応し、SINC関数の角周波数は、撮像するスライスの厚さに対応する。いずれの情報もシーケンス情報に含まれる。このため、MRI装置100において、RFパルス生成部9は、シーケンス情報に基づいて、RFパルスを生成する。
一般に、SIN関数の角周波数の方が、SINC関数の角周波数より早い。このため、RFパルスは、SINC関数を包絡線として、それよりも早い周期で信号振幅が上下する図5のような波形となる。従って、包絡線が増減する周期は、SINC関数の角周波数によって決まる。以下では、間隔501をRFパルスの包絡線周期と呼ぶこととする。なお、SINC関数の性質上、中心の間隔502だけは包絡線の増減周期が倍になるが、包絡線周期といった場合には、間隔501で示される間隔を表すこととする。
SINC関数は、その振幅が最大となるところを中心として、左右対称な関数である。一方、SIN関数は、基準とする場所によって左右対称となったり、点対称となったり、いずれでもなかったりする。これらの結果として、RFパルスの信号そのものは、必ずしも対称な信号とはならない。しかしながら、その包絡線をとった場合、SINC関数の項だけが現れるため、左右対称な信号となる。
次に、包絡線計算部13aを説明する。包絡線計算部13aは、タイミング検出部13に入力された信号の包絡線を計算し、計算した包絡線を対称誤差計算部13b及び最小タイミング検出部13cに出力する。図6は、第1の実施形態に係る包絡線計算部13aを説明するための図である。
包絡線は、信号の振幅の遷移を表す。また、包絡線は、負の値をとらない。図6に示すように、例えばRFパルス601の包絡線は、602のようになる。包絡線は、別の見方をすれば、信号を構成する周波数成分のうち早い成分を除去したものであるとも言える。このため、包絡線計算部13aは、入力された信号をLPF(Low Pass Filter)に通すことによって、包絡線を得ることができる。
すなわち、RFパルスは、相対的に角周波数の低いSINC関数と、相対的に角周波数の高いSIN関数とを含む。このため、包絡線計算部13aは、SINC関数の角周波数を通過させ、SIN関数の角周波数を除去するようなLPFを用い、その出力の絶対値をとることによって、602のような包絡線を得る。より簡易的には、何サンプルかの移動平均をとる手法も有効である。例えば、包絡線計算部13aは、サンプリングしたRFパルスをF[t]、その包絡線をF
env[t]とし、(1)式に示すように二乗平均をとることによっても、包絡線を得ることができる。
また、さらに計算量を削減したい場合には、包絡線計算部13aは、(2)式に示すように、絶対値の平均をとることによっても、包絡線を得ることができる。
(1)式及び(2)式において、Kは、平均化する幅を表している。Kを大きくするほど、より低い周波数まで除去するLPFに相当する効果となる。すなわち、Kをあまり大きくすると、SINC関数の成分まで除去されてしまう。そのため、Kは、SIN関数の角周波数と同程度に設定することが望ましい。例えば、サンプルされたRFパルスでSIN関数の周期が4サンプルであった場合には、包絡線計算部13aは、K=1又は2程度として計算することが望ましい。このようにすると、平均幅は、それぞれ3又は5になるので、SIN関数の周期と同程度となり、SIN関数の成分を十分に除去するとともに、SINC関数の成分は残すことができる。
次に、対称誤差計算部13bを説明する。ここで、対称誤差という言葉を定義する。あるタイミングを中心として左右対称なタイミングの包絡線の誤差(信号電力の差)を加算したものを対称誤差と呼ぶこととする。対称誤差計算部13bは、包絡線計算部13aから出力された包絡線の対称誤差を計算し、計算した対称誤差を最小タイミング検出部13cに出力する。図7は、第1の実施形態に係る対称誤差計算部13bを説明するための図である。
上述したように、RFパルスは、その包絡線が、振幅が最大となるところを中心として左右対称となっている。すなわち、図6に示したように、包絡線は、振幅が最大となるタイミング610を中心として左右対称の位置、例えばタイミング611とタイミング612とでは信号電力が同じ値となる。一方で、包絡線は、振幅が最大となるタイミング610以外を中心とした場合には、左右対称とならない。例えば、タイミング613を中心として左右対称な位置、例えばタイミング614とタイミング615とを比較すると、包絡線はその信号電力が異なる値となることがわかる。すなわち、包絡線は、あるタイミングを中心として左右対称なタイミングを比較すると、RFパルスの中心であった場合だけ信号電力が同じ値となる。上述したように、対称誤差とは、あるタイミングを中心として左右対称なタイミングの包絡線の誤差を加算したものである。これを式で表すと、RFパルスの包絡線がF
env[t]であった場合に、対称誤差E
sym[t]は(3)式で表わされる。
又は、対称誤差E
sym[t]は、二乗の計算を絶対値に置き換えて(4)式のようにしてもよい。
(3)式及び(4)式のいずれの場合も、大小関係は変わらないので、これを用いてタイミングを検出する際の性能は変わらない。但し計算方法が異なるので、実装する環境で適した方を選べばよい。一般的には絶対値の演算の方が簡易であるので、(4)式が望ましい場合が多いといえる。
(3)式及び(4)式で、Nwidthは、誤差を計算する幅を表し、Noffsetは、起点としたタイミングを中心として誤差を計算しない幅を表している。例えば図7に示すように、対称誤差計算部13bは、タイミング703を中心として対称誤差を計算する際は、区間710及び区間711は包絡線の誤差を計算せず、区間712及び区間713の間で包絡線の誤差を計算する。このように、対称誤差計算部13bは、包絡線の各標本点(以下サンプル)を起点として前後N_offsetサンプルからN_widthサンプル分までの対称なサンプルの包絡線の誤差を加算して、各サンプルでの対称誤差を計算する。
このようにして定義した対称誤差は、RFパルスの中心で最も小さい値をとる。例えば図7に示すように、対称誤差704は、RFパルスの振幅が最も大きくなるタイミング、すなわちRFパルスの中心であるタイミング703で最も小さい値をとる。この性質を用いることにより、RFパルスの中心を検出することが可能である。
次に、最小タイミング検出部13cを説明する。最小タイミング検出部13cは、対称誤差計算部13bから出力された各サンプルでの対称誤差を用いて、対称誤差が最小値をもつタイミングを検出し、検出したタイミングをエコー信号検出部14に出力する。また、第1の実施形態に係る最小タイミング検出部13cは、包絡線がある閾値A_th以上となる区間で、対称誤差が最小値となるタイミングを検出する。図8は、第1の実施形態に係る最小タイミング検出部13cを説明するための図である。
上述したように、対称誤差は、RFパルスの中心で最も小さい値をとるが、その絶対値は、信号に加算されているノイズの量などによって増減する。また、RFパルスやエコー信号といった信号が全くなく、ノイズだけしかない区間においても、対称誤差は、RFパルスの中心と同程度に小さい値をとる。これらの性質のため、第1の実施形態に係る最小タイミング検出部13cは、RFパルスの中心を検出するために、RFパルスの中心を含み、また、RFパルスやエコー信号といった信号がない区間を含まない区間に限定して、その中で対称誤差が最小となるタイミングを検出する。
具体的には、最小タイミング検出部13cは、包絡線によって示される信号電力がある一定値以上となる区間だけで、対称誤差が最小値となるタイミングを検出するようにしている。例えば図8に示すように、最小タイミング検出部13cは、閾値A_thを予め記憶し、包絡線計算部13aから出力された包絡線の信号電力と閾値A_thとを比較し、閾値A_th以上となる区間を求める。そして、最小タイミング検出部13cは、求めた区間だけで、対称誤差が最小値をもつタイミングを検出する。
すると、最小タイミング検出部13cは、RFパルスの中心を含み、かつ、RFパルスやエコー信号といった信号がない区間802の範囲で、対称誤差が最小となるタイミングを検出することができ、その結果としてRFパルスの中心を検出することができる。
図9は、第1の実施形態における処理手順の一部を示すフローチャートである。なお、図9においては、RFデータが間欠的に伝送される場合を想定している。
まず、タイミング検出部13の包絡線計算部13aは、無線受信部12からRFデータの入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS1)。無線受信部12からRFデータの入力を受け付けるまでは(ステップS1で「No」)、無線受信部12からRFデータのステップS1を繰り返す。無線受信部12からRFデータの入力を受け付けたと判定すると(ステップS1で「Yes」)、包絡線計算部13aは、包絡線を計算し(ステップS2)、計算した包絡線を、対称誤差計算部13b及び最小タイミング検出部13cに出力する。
一方、対称誤差計算部13bは、包絡線計算部13aから出力された包絡線について、各サンプルでの対称誤差を計算し、計算した各サンプルでの対称誤差を、最小タイミング検出部13cに出力する(ステップS3)。
最小タイミング検出部13cは、包絡線計算部13aから出力された包絡線と、予め記憶する閾値A_thとから、閾値A_th以上となる区間を求め、対称誤差計算部13bから出力された各サンプルでの対称誤差のうち、求めた区間だけで、対称誤差が最小値をもつタイミングを検出する(ステップS4)。そして、最小タイミング検出部13cは、検出したタイミングをエコー信号検出部14に出力する。
エコー信号検出部14は、最小タイミング検出部13cから出力されたタイミング、及び、シーケンス設定部21から出力されたシーケンス情報に基づいて、無線受信部12から出力されたRFデータから、エコー信号を検出する(ステップS5)。そして、エコー信号検出部14は、検出したエコー信号を解析部15に出力する(ステップS6)。
上述したように、第1の実施形態によれば、無線通信を用いてエコー信号を伝送する場合に、各エコー信号を正しいタイミングで検出することが可能になる。その結果、断層画像の品質の低下を抑えることができる。
また、第1の実施形態によれば、RFパルスのタイミングを高精度に検出することができる。
(第2の実施形態)
図10及び11を用いて、第2の実施形態に係るMRI装置100を説明する。第2の実施形態に係るMRI装置100は、対称誤差計算部13bの構成が、第1の実施形態に係る対称誤差計算部13bの構成とは異なる。具体的には、第2の実施形態に係る対称誤差計算部13bは、第1の実施形態に係る対称誤差計算部13bよりも計算量を削減することができる。また、最小タイミング検出部13cによる検出精度を劣化させることもない。以下、第2の実施形態に係る対称誤差計算部13bとして、2つの手法を説明する。
まず、第1の手法を説明する。上述したように、最小タイミング検出部13cは、包絡線が閾値A_th以上となる区間で、対称誤差が最小となるタイミングを検出する。すなわち、最小タイミング検出部13cは、包絡線が閾値A_th未満の区間では、対称誤差計算部13bから出力された対称誤差を参照しないことになる。また、対称誤差は、最小タイミング検出部13cによる処理以外では利用されない。これらのことを勘案すると、対称誤差計算部13bは、包絡線が閾値A_th未満の区間では、対称誤差を計算する必要がないといえる。
そこで、第2の実施形態に係る対称誤差計算部13bは、閾値A_thを予め記憶し、包絡線計算部13aから出力された包絡線の信号電力と閾値A_thとを比較し、閾値A_th以上となる区間を求める。そして、対称誤差計算部13bは、包絡線が閾値A_th以上となる区間については、対称誤差を計算して出力し、包絡線が閾値A_th未満となる区間については、対称誤差を計算せずに、予め設定された固定値E_maxを出力する。このようにすると、対称誤差計算部13bは、最小タイミング検出部13cでの検出精度を劣化させることなく、対称誤差計算部13bでの計算量を削減することができる。
このようにした場合に対称誤差計算部13bが出力する対称誤差の例を図10に示す。図10は、第2の実施形態に係る対称誤差計算部13bを説明するための図である。図7と図10とを比較するとわかるように、RFパルスの中心であるタイミング703及びタイミング1003付近では、出力は同じとなるため、最小タイミング検出部13cは、精度の劣化なくRFパルスの中心を検出することができる。
なお、固定値E_maxは、RFパルスの中心での対称誤差と比べて十分に大きい値にしておくことが望ましい。但し、上述したように、対称誤差の値は条件で様々に変わる。そこで、固定値E_maxは、対称誤差の計算値を表現しているビット列で最大の値にしておくことが望ましい。例えば、10ビットで表現しているならば、その最大値である2の10乗=1024としておけば、実際に計算した対称誤差がこの値を上回ることがなくなるので、最小タイミング検出部13cでの精度を劣化させないことができる。
次いで、第2の手法を説明する。第2の手法では、RFパルス信号の性質を用いることで、対称誤差計算部13bの計算量をさらに削減する。図11は、第2の実施形態に係る対称誤差計算部13bを説明するための図である。
図5を用いて説明したように、RFパルスは、ある一定の周期で包絡線が増減しているが、その中心だけは、増減の周期が2倍となる。したがって、図11に示すように、RFパルスの包絡線周期の間隔で、タイミング1110、1111、1112、1114、1115、1116には、包絡線がその周辺と比べて小さい値となるが、タイミング1113だけでは、包絡線がその周辺と比べて逆に大きくなる。この性質を使うと、RFパルスの中心がタイミング1113の付近であることがわかる。
ただし、包絡線の変動は対称誤差と比べて緩やかであるため、この性質だけを使ってRFパルスの中心を正確に検出することは難しい。そのため、ある程度の範囲、例えば数サンプル程度の精度での検出となる。ここで、ある程度の範囲に絞り込み、その範囲だけで対称誤差を計算することにより、計算量を大幅に削減することができる。この場合においても、図11の対称誤差1104のようにRFパルスの中心付近の対称誤差は測定されているので、最小タイミング検出部13cの検出精度は劣化させないことができる。
例えば、対称誤差計算部13bは、包絡線計算部13aから出力された包絡線を解析し、タイミング1113を求める。そして、対称誤差計算部13bは、求めたタイミング1113を中心とするある程度の範囲、例えば数サンプルの範囲の区間について、対称誤差を計算する。
上述したように、第2の実施形態によれば、最小タイミング検出部13cによる検出精度を劣化させることなく、計算量を削減することができる。
(第3の実施形態)
図12〜15を用いて、第3の実施形態に係るMRI装置100を説明する。第3の実施形態に係るMRI装置100は、最小タイミング検出部13cの構成が、第1の実施形態に係る最小タイミング検出部13cの構成とは異なる。具体的には、第3の実施形態に係る最小タイミング検出部13cは、閾値A_th以上となる区間が複数の区間に分かれてしまうような状況においても、RFパルスの中心のタイミングを正しく検出することができる。以下、第3の実施形態に係る最小タイミング検出部13cとして、3つの手法を説明する。
まず、第1の手法を説明する。図7を用いて説明したように、対称誤差は、RFパルスの中心であるタイミング703で最小の値をとる。従って、最小タイミング検出部13cは、このタイミングを含む区間で対称誤差が最小の値となるタイミングを検出することにより、RFパルスの中心のタイミングを検出することが可能となる。上述したように、例えば図8に示すように閾値A_thを設定すれば、区間802はRFパルスの中心を含むので、最小タイミング検出部13cは、正しい検出ができる。
その一方で、閾値A_thとRFパルスの信号振幅との関係が図12のようになってしまった場合、閾値A_th以上となる区間は、区間1201と区間1202と区間1203との3つとなってしまう。図12は、閾値A_th以上となる区間が複数の区間に分かれる状況を説明するための図である。
区間1201及び区間1203は、RFパルスの中心を含まない区間であるので、これらの区間で対称誤差が最小の値となるタイミングは、RFパルスの中心とはならない。また、これら3つの区間それぞれで対称誤差が最小の値となるタイミングが検出されることにより、1つのRFパルスで3つのタイミングが検出されてしまうことになる。その結果として、RFパルスの中心のタイミングが正しく検出されなくなってしまう。
このような場合に、もっとも簡単に解決する手法は、最小タイミング検出部13cが用いる閾値A_thを十分に大きく設定することである。RFパルスはエコー信号と比べて電力が大きいため、ADC10のダイナミックレンジに収まらず飽和する場合が多い。従って、閾値A_thをADC10の出力の最大値としておけば、図12のように複数の区間に分かれてしまうような状況が発生する確率を低減することができる。
但し、RFパルスの信号電力がさらに大きくなり、区間1201や区間1203のような区間でも飽和してしまった場合においては、やはり同様に複数の区間に分かれてしまう。このような場合には、次の2つのいずれかの手法(第2の手法又は第3の手法)をとることで、RFパルスの中心のタイミングを正しく検出することが可能となる。
次いで、第2の手法を説明する。第2の手法は、複数の区間を接続して1つの区間にしてから対称誤差が最小の値となるタイミングを検出する手法である。図12に示すように区間が複数に分かれてしまうのは、包絡線が増減しているためである。この増減の周期はシーケンス情報から求めることができる。図13及び図14は、複数の区間の接続を説明するための図である。図13において明らかなように、区間1301と区間1302との間の区間1305や、区間1302と区間1303との間の区間1306の幅は、RFパルスの包絡線周期よりも必ず小さくなる。
そこで、最小タイミング検出部13cは、包絡線が閾値A_thを超える区間が、RFパルスの包絡線周期以下の間隔で隣接している場合、これらを接続して1つの区間とする。この複数の区間を接続するかどうかの判定に用いる間隔を、N_cycle1で表わすこととする。図13の例では、最小タイミング検出部13cは、包絡線が閾値A_thを超える区間である区間1301、区間1302、及び区間1303が、シーケンス情報から求めた包絡線周期以下の間隔で隣接しているか否かを判定する。そして、最小タイミング検出部13cは、包絡線周期以下の間隔で隣接していると判定した場合に、区間1301、区間1302、及び区間1303を接続して、1つの区間1304とする。
最小タイミング検出部13cは、こうして得た区間1304で対称誤差が最小の値となるタイミングを検出することにより、RFパルスの中心のタイミングを正しく検出することが可能となる。但し、この際、最小タイミング検出部13cは、区間1304から区間1305及び区間1306を除いた区間で、対称誤差が最小の値となるタイミングを検出してもよい。このようにすると、検索する範囲を狭くできるので、計算量を削減できる。
ところで、図10を使って説明したように、対称誤差計算部13bは、包絡線が閾値A_th以上となる区間でだけ対称誤差を計算することによって、計算量を削減することができる。従って、図13のように接続した区間1304を用いて対称誤差が最小の値となるタイミングを検出する場合においても、対称誤差計算部13bは、閾値A_th以上となる区間だけで対称誤差を計算すれば十分である。すなわち、例えば図14の対称誤差1404のように、対称誤差計算部13bは、閾値A_th以上となる区間だけで対称誤差を計算すればよい。なぜならば、区間1305及び区間1306は、RFパルスの中心のタイミングを含んでいないためである。
次いで、第3の手法を説明する。第3の手法では、最小タイミング検出部13cが、包絡線をさらに平均化して用いる。図12に示すように区間が複数に分かれてしまうのは、包絡線が増減しているためである。包絡線計算部13aが、SINC関数の成分を残すような処理をして包絡線を計算しているために、SINC関数に起因した包絡線の増減が生じている。この波形は、対称誤差を計算するにあたっては重要となる。その一方で、最小タイミング検出部13cは、検索する区間を判定するにあたり、RFパルスの中心を含む区間がわかればよい。従って、包絡線の緩やかな変動だけがわかればよい。
そこで、最小タイミング検出部13cは、SINC関数の包絡線の増減が見えなくなる程度に移動平均をとったものを用いて、この値が閾値A_thを超えた区間とすることで、包絡線の増減による区間の分割を避けることができる。包絡線の増減が見えなくなるようにするためには、最小タイミング検出部13cは、包絡線周期よりも十分広い幅で移動平均をとればよい。この移動平均の幅をN_cycle2で表すこととする。
図15は、包絡線の移動平均化を説明するための図である。N_cycle2は、包絡線周期の例えば2倍程度にすればよい。このようにすると、図15に示すように、包絡線計算部13aによって計算された包絡線1501は、最小タイミング検出部13cによって平均化されて信号1502のようになる。最小タイミング検出部13cは、信号1502を使って区間を決めることによって、区間1503のように区間が分割される問題を回避することができる。ところで、この手法を使う場合においても、図14に示すように、対称誤差計算部13bは、包絡線計算部13aから出力された包絡線が閾値A_th以上となる区間だけで対称誤差を計算すれば十分である。なぜならば、包絡線が閾値A_th以上となる区間は、RFパルスの中心のタイミングを含んでいるためである。
上述したように、例えば、第3の実施形態によれば、閾値A_th以上となる区間が複数の区間に分かれてしまうような状況においても、RFパルスの中心のタイミングを正しく検出することができる。
また、第3の実施形態によれば、閾値A_th以上となる区間が複数の区間に分かれてしまうような状況においても、RFパルスの中心のタイミングを正しく検出することができる。
(第4の実施形態)
図16〜22を用いて、第4の実施形態に係るMRI装置100を説明する。第4の実施形態に係るMRI装置100は、対称誤差計算部13bや最小タイミング検出部13cにおいて用いられるパラメタが、シーケンス情報に基づいて設定される点が、これまでの実施形態に係るMRI装置100と異なる。この結果、第4の実施形態に係るタイミング検出部13は、より適切にパラメタを設定できるため、より精度よくRFパルスを検出することができる。
図16は、第4の実施形態に係るMRI装置100の一部構成を示すブロック図である。図16に示すように、第4の実施形態に係るシーケンス設定部21は、エコー信号検出部14のみならず、タイミング検出部13に対しても、シーケンス情報を出力する。また、図17は、第4の実施形態に係るタイミング検出部13の構成を示すブロック図である。図17に示すように、第4の実施形態に係るタイミング検出部13は、パラメタ設定部13dをさらに備える。
パラメタ設定部13dは、シーケンス設定部21から出力されたシーケンス情報に基づいて、対称誤差計算部13bや最小タイミング検出部13cに対してパラメタを設定する。以下、パラメタ毎に説明する。
上述したように、MRI装置100は、送信コイル3が、RFパルスを被検体Pに対して放射し、受信コイル4が、その際に被検体Pから放射されるエコー信号を受信し、解析部15がこれを解析することで、被検体Pの断面画像を得る。その原理のため、一般に、RFパルスと比べて、エコー信号は、非常に電力が小さい。
図16に示すADC10において、そのダイナミックレンジをエコー信号に合わせて調整した場合、RFパルスはその信号波形の一部が飽和してしまう。但し、ADC10のダイナミックレンジとは、ADC10の出力で表現可能な入力信号レベルの範囲を表している。図18は、包絡線の信号波形の飽和を説明するための図である。例えば図18に示すように、ADC10のダイナミックレンジが1803であった場合、RFパルス1801のように信号波形の一部が飽和してしまう。その結果として、これを用いて包絡線計算部13aが計算した包絡線1802もその一部が飽和し、一定値をもつ区間が生じてしまう。
明らかなように、一定値をもつ信号波形は左右対称である。従って、飽和した区間においてはどこを起点にとっても対称誤差が0になってしまう。その結果として、RFパルスの中心のタイミングを精度よく検出できない場合がある。これに対して、パラメタN_offsetをRFパルスが飽和する区間よりも十分大きくとれば、飽和した区間を対称誤差の計算範囲からはずすことができるため、飽和した信号波形の影響を低減でき、RFパルスの中心を検出する精度を高めることができる。パラメタN_offsetの値は、飽和する区間によって調整することが望ましい。
図19は、パラメタの設定を説明するための図である。例えば、図19に示すように、ダイナミックレンジ1903がRFパルスの信号電力と比較して相対的にさらに小さい場合には、より長い区間で飽和が起こるため、パラメタN_offsetをより長い値に設定する必要がある。すなわち、RFパルスの信号電力に応じてパラメタN_offsetを設定することが望ましい。そこで、パラメタ設定部13dは、RFパルスの信号電力をシーケンス情報から取得し、取得した信号電力に基づいてRFパルスがADC10で飽和する区間を計算し、計算した区間に基づいてパラメタN_offsetを計算すればよい。そして、パラメタ設定部13dは、計算したパラメタN_offsetを、対称誤差計算部13bに対して設定する。
対称誤差は、RFパルスの中心付近で最小の値をとり、それ以外のところではそれよりも大きい値をとる。但し、包絡線の変化が緩やかであった場合には、RFパルスの中心とその前後での対称誤差の差が小さくなる。その結果として、ノイズの影響により対称誤差の計算値にばらつきが発生した場合に、最小タイミング検出部13cは、前後のタイミングに誤って検出してしまう場合が発生する。
このような状況を低減するためには、対称誤差を計算する区間には、包絡線の変化が急な箇所を選ぶことが望ましい。図20は、包絡線の変化を説明するための図である。例えば図20に示すように、パラメタN_offsetを区間2005として、対称誤差を計算する区間を区間2001、2002とした場合より、パラメタN_offsetを区間2006として、対称誤差を計算する区間を区間2003、2004とした場合の方が、RFパルスの中心付近で対称誤差を計算する際に、包絡線の変化が急なところが計算範囲に入るので、より精度よく計算することが可能となる。
また、パラメタN_widthをRFパルスの包絡線周期とすれば、パラメタN_offsetによらず包絡線の変化が急峻な区間を対称誤差の計算範囲に含めることができ、検出精度を向上できる。RFパルスの包絡線周期はシーケンス情報により取得できるので、パラメタ設定部13dは、シーケンス情報から包絡線周期を取得し、取得した包絡線周期に基づいて、パラメタN_offset及びパラメタN_widthを計算すればよい。そして、パラメタ設定部13dは、計算したパラメタN_offset及びパラメタN_widthを、対称誤差計算部13bに対して設定する。
図12を用いて説明したように、閾値A_thがRFパルスの包絡線の振幅に比べて小さい場合、図13のように最小タイミング検出部13cで検出を行う区間が複数生じてしまい、RFパルスの中心のタイミングを正しく検出できない場合がある。従って、閾値A_thはある程度大きい値にする必要がある。その一方で、図21のように、閾値A_thがRFパルスの包絡線の振幅の最大値よりも大きくなってしまった場合、包絡線が閾値A_th以上とならないため、最小タイミング検出部13cは、対称誤差が最小値となるタイミングを検出できなくなってしまう。図21は、閾値A_thが包絡線の振幅の最大値よりも大きい場合を説明するための図である。
これらのことから、閾値A_thは、RFパルスの包絡線の最大値よりも小さく、かつ、中心から2つ目の山の上部の振幅よりも大きいことが望ましい。図22は、適切な閾値A_thを説明するための図である。例えば図22の場合、閾値A_thは、振幅2201よりも小さく、振幅2202よりも大きい値にすることが望ましい。このようにすることで、最小タイミング検出部13cで検出をする区間が、RFパルスの中心を含む範囲で1つ生成されるので、RFパルスの中心を正しく検出することが可能となる。
そこで、パラメタ設定部13dは、RFパルスの信号電力をシーケンス情報から取得し、取得したシーケンス情報に基づいてRFパルスの振幅を計算し、計算した振幅に基づいて閾値A_thを計算すればよい。そして、パラメタ設定部13dは、計算した閾値A_thを、対称誤差計算部13b及び最小タイミング検出部13cに対して設定する。
なお、RFパルスの信号電力がシーケンス情報だけでは得られない場合、例えばシーケンス情報によってRFパルスの送信電力はわかるが、その後の様々な条件による減衰量が不確定である場合には、パラメタ設定部13dは、受信したRFパルスの振幅と、シーケンス情報から得られるRFパルスの送信電力の情報から減衰量を推定する。そして、パラメタ設定部13dは、推定した減衰量に基づいてRFパルスの振幅を計算し、計算した振幅に基づいて閾値A_thを計算すればよい。
一方、RFパルスの振幅がADC10のダイナミックレンジに比べて大きい場合には、図19に示すように、RFパルスの中心付近以外でも波形が飽和してしまう場合がある。このような場合には、閾値A_thをどのような値に設定しても区間が複数に分割されてしまう。そこで、このような場合には、閾値A_thをADC10のダイナミックレンジの最大値に設定し、図13及び図15を用いて説明した手法(第3の実施形態における第2の手法及び第3の手法)を適用することが望ましい。
パラメタN_cycle1は、図13のように閾値A_th以上となる区間が複数に分かれてしまった場合に、これを接続するか判定するために用いる幅である。複数に分かれた区間は、RFパルスの包絡線周期以下の間隔で隣接している。また、包絡線周期は、シーケンス情報により得ることができる。そこで、パラメタ設定部13dは、パラメタN_cycle1の設定にあたっては、包絡線周期と同じ値を設定すればよい。また閾値A_th以上となる区間が、ノイズなどの影響で多少前後する場合を考慮した場合、パラメタ設定部13dは、パラメタN_cycle1を包絡線周期よりも少し大きい値にしてもよい。具体的には、パラメタ設定部13dは、シーケンス情報から包絡線周期を取得し、取得した包絡線周期と同じ値、又は包絡線周期よりも少し大きい値を、パラメタN_cycle1として最小タイミング検出部13cに設定する。
パラメタN_cycle2は、図15のように包絡線計算部13aで得られた包絡線を移動平均してさらに滑らかな信号を得る際の平均化幅を表している。ここでの目的は、包絡線の増減をなくして、RFパルスの中心から両方向に単調に減少する信号に変換することである。そのため、包絡線周期よりも十分長い幅で平均化することが望ましい。例えば、最小タイミング検出部13cは、包絡線周期の2倍や3倍といった幅で平均化をすればよい。そこで、パラメタ設定部13dは、シーケンス情報から包絡線周期を取得し、取得した包絡線周期の2倍や3倍といった値を、パラメタN_cycle2として最小タイミング検出部13cに設定する。
上述したように、第4の実施形態によれば、より適切にパラメタを設定できるため、より精度よくRFパルスを検出することができる。
(第5の実施形態)
さて、これまでの実施形態に係るMRI装置100においては、タイミング検出部13及びエコー信号検出部14は、システム側装置に設置していた。しかしながらこれに限られるものではなく、タイミング検出部13及びエコー信号検出部14は、コイル側装置に設置してもよい。このようにすると、コイル側装置でエコー信号を検出することができるので、無線送信部11は、解析部15における処理に必要な情報だけを送信することができ、不要なデータを送らなくて済む。その結果、無線送信部11の負荷を減らすことが可能になるという効果を奏する。
図23は、第5の実施形態に係るMRI装置100の一部構成を示すブロック図である。第5の実施形態において、送信コイル3は、これまでの実施形態と同様、RFパルスが放射されるタイミングと、RFパルスを受けて被検体Pから放射されるエコー信号が受信されるタイミングとの間隔を示す情報が規定されたシーケンス情報に従って、RFパルスを放射する。また、受信コイル4は、これまでの実施形態と同様、送信コイル3によって放射されたRFパルス及びRFパルスを受けて被検体Pから放射されたエコー信号を受信する。なお、第5の実施形態において、ADC10は、タイミング検出部13及びエコー信号検出部14にRFデータを出力する。
一方、第5の実施形態に係るタイミング検出部13は、ADC10から出力されたRFデータから、RFパルスのタイミングを検出し、検出したRFパルスのタイミングを、エコー信号検出部14に出力する。また、第5の実施形態に係るエコー信号検出部14は、タイミング検出部13によって検出されたタイミング及びシーケンス情報に規定された間隔を示す情報に基づいて、ADC10から出力されたRFデータからエコー信号を検出し、検出したエコー信号を無線送信部11に出力する。
その後、無線送信部11は、エコー信号検出部14から出力されたエコー信号を無線通信にて送信する。無線受信部12は、無線送信部11によって送信されたエコー信号を無線通信にて受信する。
なお、第5の実施形態において、MRI装置100は、図23に示すように、シーケンス設定部21から出力されるシーケンス情報をエコー信号検出部14に伝送するために、無線送信部16及び無線受信部17をさらに備えてもよい。無線送信部16は、無線受信部12と無線通信部の機能を一部共用してもよい。又は、無線受信部12がTDD(Time Division Duplex)を採用している場合、すなわち送受信を時間的に切り替えて無線通信する機能を具備している場合、無線受信部12と無線送信部16とは、1つの無線通信部として全てを共用してもよい。同様に、無線受信部17及び無線送信部11も、一部又は全てを共用してもよい。
また、第5の実施形態において、図2に対する図23と同様に、図16の構成で、図24に示すように、タイミング検出部13及びエコー信号検出部14をコイル側装置に設置してもよい。図24は、第5の実施形態に係るMRI装置100の一部構成を示すブロック図である。このような構成をとった場合も同様に、MRI装置100は、図24に示すように、シーケンス設定部21から出力されるシーケンス情報をタイミング検出部13及びエコー信号検出部14に伝送するために、無線送信部16及び無線受信部17をさらに備えてもよい。また、無線送信部16は、無線受信部12と無線通信部の機能を一部共用してもよい。又は、無線受信部12がTDDを採用している場合、無線受信部12と無線送信部16とは、1つの無線通信部として全てを共用してもよい。同様に、無線受信部17及び無線送信部11も、一部又は全てを共用してもよい。
上述したように、第5の実施形態によれば、不要なデータを送らなくて済むことから、無線送信部の負荷を減らすことができる。
(第6の実施形態)
上記実施形態においては、タイミング検出部13は、RFパルスのタイミングを検出するものであった。しかしながら、これに限られるものではなく、タイミング検出部13は、RFパルス以外の信号のタイミングを検出することも可能である。RFパルス以外の信号のタイミングも検出できるタイミング検出装置は、包絡線計算部と、対称誤差計算部と、最小タイミング検出部とを備える。
包絡線計算部は、入力信号の包絡線を計算し、対称誤差計算部及び最小タイミング検出部に出力する。対称誤差計算部は、包絡線計算部から出力された包絡線の対称誤差を各サンプルで計算し、計算した対称誤差を最小タイミング検出部に出力する。最小タイミング検出部は、対称誤差計算部から出力された各サンプルでの対称誤差を用いて、対称誤差が最小値となるタイミングを検出する。また、最小タイミング検出部は、包絡線によって示される信号電力がある一定値以上となる区間だけで、対称誤差が最小値となるタイミングを検出する。
例えば図4に示したタイミング検出部13は、RFパルスのタイミングを検出するものであった。タイミング検出部13は、タイミングの検出にあたり、RFパルスの包絡線が、RFパルスの中心で左右対称となっているという性質を用いている。逆にいえば、RFパルス以外の信号であっても、包絡線が左右対称な信号であれば、上記実施形態と同様の構成のタイミング検出装置を用いて、その信号の中心のタイミングを検出することが可能である。
また、例えば図17で示したようにパラメタ設定部13dを追加した場合も、タイミング検出装置は、シーケンス情報に含まれているRFパルスの情報と同様の情報があれば、その情報を用いて各部のパラメタを設定することが可能である。
RFパルスは、場合によってはその信号の一部が飽和してしまう。パラメタN_offsetを適切に設定することで、この飽和した信号波形による影響を低減できる。逆に言うと、飽和が生じていない信号であれば、パラメタN_offsetは0でよい。
入力される信号のうち、左右対称となっている区間が予め分かっている場合、パラメタN_widthとパラメタN_offsetとを足した値が、左右対称となっている区間以下となるように設定することが望ましい。このようにすることで、対称誤差は、左右対称となっている区間の中心で小さい値をとることができ、タイミングの検出精度を向上させることができる。また、対称誤差を測定する範囲であるパラメタN_widthが長いほど、ノイズによる影響を低減することが可能である。パラメタN_widthとパラメタN_offsetとを足した値を上述したように制限することが望ましいので、パラメタN_widthを大きくするためには、パラメタN_offsetを小さくすることが望ましい。
特に、パラメタN_offsetを1よりも大きい値に設定することの目的は、対称となっている波形の中心付近で信号が一部飽和している場合に、これを回避することである。従って、信号に飽和がない信号波形であれば、パラメタN_offsetは1にすることが望ましいといえる。閾値A_thは、例えば入力される信号にノイズだけが入っているときの包絡線の信号電力よりも大きい値に設定しておいてもよい。このようにすると、ノイズ以外の信号が入ってきた場合に、その区間内でタイミングの検出が実施されるため、左右対称となっている信号波形の中心を検出することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。