JP2012082529A - 被覆保護材 - Google Patents
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Abstract
【課題】対象物に通しやすく、作業性を向上させるとともに、対象物を被覆した後熱処理することで、円(径)方向の集束性に優れ、さらには柔軟性を有する保護材を提供する。
【解決手段】基材を被覆するための保護材であって、少なくとも一部の編地が熱収縮糸により編成された筒状経編地からなる被覆保護材である。また、前記経編地が、少なくとも一部に鎖編地組織を有してなることが好ましい。さらに、前記熱収縮糸の割合が、経編地の20〜80%であることが好ましい。
【選択図】図2
【解決手段】基材を被覆するための保護材であって、少なくとも一部の編地が熱収縮糸により編成された筒状経編地からなる被覆保護材である。また、前記経編地が、少なくとも一部に鎖編地組織を有してなることが好ましい。さらに、前記熱収縮糸の割合が、経編地の20〜80%であることが好ましい。
【選択図】図2
Description
本発明は、衝撃を吸収したり、熱を遮断して、損傷(外傷)を防止するために、対象物(基材)を被覆して用いられる被覆保護用の部材に関する。詳細には、たとえば、コンピュータ端末及び周辺機器など電源を必要とした小型の機器、無数の制御用配線があり複雑な動きをする(工業用)ロボット、屈曲するリクライニング機能付ベッドなどの機器に配索する導体である電線束や電線、電極、電球、配管、配筋、針金、または、光ケーブルなどの基材を覆う被覆保護材に関する。
従来、機器内部に配索される電線を束ねて集束、結束する保護スリーブとして、樹脂製のチューブが知られている。
樹脂製チューブを用いる場合、そのチューブに電線を1本ずつ通したのちコネクタに接続しなければならず、作業が煩雑となる。さらに、チューブが変形や潰れることによって電線を通す作業がさらに困難になり、プリンターのヘッド周辺の配線のように追従しなければならない導体については、柔軟性に欠けたチューブでは負荷がかかり、チューブ自体に亀裂や割れが生じたり、電線の折れ(断線)が発生したり、ショート(感電)するなどという不具合を生じる場合がある。
この問題を解決する手段として、特許文献1には、ワイヤーハーネスをコネクタに接続した後、耐摩耗性テープを巻きつける方法が開示されている。しかし、ワイヤーハーネス全体に隙間無く耐摩耗テープを巻き付ける作業は大変手間がかかり、非常に生産性に劣る。さらに、隙間なく巻くことでワイヤーハーネス全体に嵩高感が出てしまうばかりか、非常に硬くなってしまう。とくに精密機器内ではスペースが限られており、柔軟性を損なうこの方法では、その仕様や形状に合わせた配置が困難となる。また、作業性や使用テープ量の面から、コスト高になるという問題がある。
他にも円筒状の組紐を使用する方法が、たとえば、特許文献2に記載されている。しかし、組紐からなる保護スリーブは、コネクタ接続後のワイヤーハーネスを通す場合、スリーブを径方向に拡張させる必要があるが、組紐では一旦、治具の芯棒を入れて導きとしながら拡張させつつ、ワイヤーハーネスを通すなど作業性に手間がかかる。また、組紐からなる保護スリーブは、湿気や熱が溜まりやすく、組紐の一部が切れてしまうと、摩耗が進んだ場合、容易に紐がほつれてしまい、保護材機能が失われ、ワイヤーハーネスが露出してしまい、機器トラブルの原因になりやすい。
さらに、ワイヤーハーネスは、精密機器の仕様や形状に合わせ、様々な形状に折り曲げたり、捻ったりして精密機器内に配置される。ときには可動周辺部にも使用される。この場合、耐摩擦性テープや組紐からなる保護スリーブは、柔軟性に欠けるため追従性が低く、精密機器の仕様や形状に合わせた配置が困難である。
また、保護スリーブとして、天竺編みの編地を使用することが特許文献3に記載されている。この保護スリーブは、ほつれを抑制するために両端部が外側に向けてカールした状態になっており、それゆえ、ワイヤーハーネスを通しにくい、規定寸法に合わせにくい、寸法安定性が悪いなどの問題があり、作業性に劣る。さらに、精密機器内に配置する場合、カールした部分が嵩張り、狭い箇所に配置しにくいなどの問題を生じる可能性がある。
また、天竺編みで保護スリーブを作製する場合、編機のシリンダの径によって作製できる円筒状編地の径が決定されるため、同一径のものを連続して編成することは可能である。しかし、一度に多種のシリンダ径を交換すること無く作製することはできない。したがって、異なる径を有するスリーブを作製するには、その径の種類に応じた数の編機あるいはシリンダが必要である。そのため、生産量や径の種類に応じて設備を準備しなければならず、設備設置場所と設備費用が膨大になり、それが製品コストにはね返って、製品が高価になるという問題を生じる場合がある。
さらに、温水または乾熱処理により大きく収縮する高収縮性ポリエステル繊維を、電線被覆材の緯糸の一部に用いる方法が特許文献4に記載されている。この電線被覆材で電線を被覆するには、電線が露出しないように強固に押え巻き付けていく作業が伴い、非常に作業性に劣る。さらに、熱処理を施す作業が加わり、工程も煩雑になる。また、熱処理により繊維全体を収縮させているため柔軟性に欠け、これを精密機器に応用し、その仕様や形状に合わせて配置させるのは困難である。そのうえ、繊維全体が収縮するため、場合によっては、被覆した基材が露出してしまう可能性があり、精密機器の誤作動を生じさせるおそれもある。
このように、とくに精密機器内部に使用される保護材として、保護した基材が他の部材に接触しないように拘束できるだけの集束性があり、どのような形状でも配置できるような柔軟性を満たす保護材は現在知られていない。
本発明は、前記課題を解決するものであり、対象物を通しやすく、作業性を向上させるとともに、柔軟性と対象物を被覆した後の円(径)方向の集束性にも優れる保護材を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、基材を被覆するための保護材であって、少なくとも一部の編地が熱収縮糸により編成された筒状経編地からなる被覆保護材に関する。
前記経編地が、少なくとも一部に鎖編地組織を有してなることが好ましい。
前記熱収縮糸の割合が、経編地の20〜80%であることが好ましい。
前記筒状経編地の内径が、1〜50mmであることが好ましい。
前記熱収縮糸が、表面温度70℃以上110℃以下のときの収縮率が30〜80%であることが好ましい。
また、本発明は、前記被覆保護材からなる配線保護スリーブに関する。
本発明の被覆保護材によれば、経編の特徴が最大限に生かされており、すなわち、柔軟性に優れているため、保護した対象物をどのような形状にも配置することができる。さらに、長さ方向の寸法安定性に優れているため、簡単に必要な長さ形状に合わせることが可能であり、また、電線束などの対象物を通しやすく、簡単に作業性を向上させることができる。加えて、対象物を通した後に熱処理することで、円(径)方向に収縮するため、対象物を適切に集束することができる。
本発明の被覆保護材は、筒状の経編地からなり、少なくとも一部の編地が熱収縮糸により編成されてなることを特徴としている。
被覆保護材において、作業性と対象物の集束性とを高めるには、対象物を被覆する際にはその径が大きく拡張し、対象物の被覆後には、その径は拡張せず、むしろ被覆前より収縮していることが好ましい。この点から、本発明では、被覆後に非伸縮性へと物性が変化するような糸、すなわち、熱収縮糸を使用する。この場合、対象物の被覆後、熱処理する工程を経る。
前記熱処理は、湿熱処理または乾熱処理によりなされ、その表面温度は70℃以上110℃以下となる。このときの熱収縮糸の収縮率は、30〜80%であることが好ましく、40〜70%であることがより好ましい。表面温度が70℃以上110℃以下のときの収縮率が30%より小さいと、組織構造の固定が不十分となるため、長期間の使用中に十分な集束が得られなくなる傾向にあり、80%をこえると、熱処理後の密度が高くなってスリーブ全体が硬くなり、柔軟性に欠ける傾向にある。
前記熱収縮糸としては、PVC(ポリ塩化ビニール)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)などがあげられるが、とくに限定されない。また、乾式紡糸や溶融紡糸といった紡糸方法についてもとくに限定されない。なかでも、耐久性や集束性の点で、PVC系の熱収縮糸を使用することが好ましい。
前記熱収縮糸の繊度は、22〜167dtexであることが好ましく、50〜84dtexであることがより好ましい。熱収縮糸が22dtexより小さいと、編地を編成する際に糸切れが発生しやすくなって、編成が困難となる傾向にあり、167dtexをこえると、編地が硬くなり十分な柔軟性が得られない傾向にある。
前記熱収縮糸の編地に占める割合は、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましい。熱収縮糸の編地に占める割合が20%より少ないと、熱処理後に円(径)方向に十分な集束性が得られず、フィット性が不十分となる傾向にあり、80%をこえると、編地が硬くなり、十分な柔軟性や寸法安定性が得られない傾向にある。
前記熱収縮糸と組み合わせて使用される糸種としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポレオレフィン系、及びPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)や熱収縮糸ではないタイプのPBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリエステル系糸などがあげられる。なかでも、伸縮性や耐久性を有している点で、ポリエステル系の弾性糸であることが好ましい。
これらの糸の繊度は、22〜167dtexであることが好ましく、50〜84dtexであることがより好ましい。22dtexより小さいと、編地を編成する際に糸切れが発生しやすく、編成が困難となる傾向にあり、167dtexをこえると、編地が硬くなり、十分な伸縮性が得られない傾向にある。
図1(a)および(b)に、本発明の被覆保護材で保護した対象物集束パターンを示す。本発明の被覆保護材1は、熱処理前は、円(径)方向の伸縮性に優れるため、対象物2に対して十分な口径を持たせることができ、挿入作業が容易である。そして挿入後の熱処理により、対象物にフィットし、集束させることができる。図1(a)のように対象物2が複数の電線の束である場合であっても、この保護被覆材で集束させることにより、省スペースを達成できる。
前記経編地としては、ラッセル編機により編成されるラッセル編地(シングルラッセルおよびダブルラッセル)が好ましく、縫製などの後工程が不要であり、さらに、1台の機械で多様な径に適応し、複数本連続的に同時生産可能であるという点で、ダブルラッセル編地であることが好ましい。
ダブルラッセル編機は、たとえば6枚の筬(L1〜L6)を有しており、筬L1およびL2は前側地組織を、筬L3およびL4は接結組織を、筬L5およびL6は後側地組織を編成する。
また、前記経編地は、鎖編組織とその他の編組織とから形成されていることが好ましい。
編組織として鎖編を含むことにより、円(径)方向には伸縮拡張するが、長さ方向には伸縮しにくくなる。そのため、小型装置内などのスペースがない場所に配索される電線などに被覆する場合も、長さ方向の縮みを考慮して長めに裁断することを要しない。また、熱処理後に再度寸法合わせすることも不要となるため、この寸法合わせで生ずる部材ロスを低減することができる。
編地を形成する鎖編以外の組織については、仕様や用途などにより適宜設定すればよく、とくに限定されるものではない。たとえば、デンビー、コード、アトラスなどの組織を1種もしくは2種以上を組み合わせて適宜に編成することができる。
熱収縮糸を組織のどの部分に用いるかについては、とくに限定されず、この鎖編組織部分に用いてもよいし、その他の組織部分に用いてもよい。なかでも、熱収縮糸の効果が発揮しやすくなる点で、鎖編組織部以外の部分に用いることが好ましい。
本発明の被覆保護材の径は、用途に応じて決定することができ、とくに限定されるものではない。なかでも、熱処理により径が小さくなることや、小型機器内で使用することなどを考慮すると、内径1〜50mmであることが好ましく、特に機器に配索する導体である電線やその束の被覆材として使用する場合、省スペースで電圧も低いものが多いため、内径1〜10mmであることが好ましい。
本発明の被覆保護材は、好ましくは、ダブルラッセル経編機を使用して編成される。ダブルラッセル経編機としては、通常の2列の針床を有する経編機を使用することができる。また、コンピュータ制御により編成可能なものであってもよい。この経編機を用いて、編針の密度を14〜30ゲージの範囲で適宜に選択し、編成することができる。
本発明の被覆保護材の編密度は、用途に応じて決定することができ、とくに限定されるものではない。熱処理前の編密度は、経(長さ)方向に25〜50ループ/インチであることが好ましく、30〜40ループ/インチであることがより好ましい。緯(径)方向には、30〜60ループ/インチであることが好ましく、30〜50ループ/インチであることがより好ましい。熱処理前の経の編密度が、25ループ/インチより小さいと、編密度が粗くなり、保護材の形態保持性に劣る傾向にあり、50ループ/インチをこえると、編密度が密になるものの、保護材自体が肉厚となり小型装置の配置に収まり難い傾向にある。また、熱処理前の緯の編密度が30ループ/インチより小さいと、編密度が粗くなり、保護材の形体保持性が劣る傾向にあり、60ループ/インチをこえると、編密度が密になるものの、保護材自体が肉厚となり小型装置の配置に収まり難い傾向にある。
熱処理後の編密度は、経(長さ)方向に25〜50ループ/インチ、緯(径)方向に55〜80ループ/インチであることが好ましい。熱処理後の経の編密度が、25ループ/インチより小さいと、編密度が粗くなり、保護材の形態保持性に劣る傾向にあり、50ループ/インチをこえると、編密度が密になるものの、保護材自体が肉厚となり小型装置の配置に収まり難い傾向にある。また、熱処理後の緯の編密度が55ループ/インチより小さいと、編密度が粗くなり、保護材の形体保持性が劣る傾向にあり、80ループ/インチをこえると、編密度が密になるものの、保護材自体が肉厚となり小型装置の配置に収まり難い傾向にある。なかでも、電線束や電線の被覆材として使用する場合のような、とくに省スペースであることや集束性が要求される場合を考慮すると、熱処理後の経(長さ)方向の編密度は、30〜40ループ/インチ、緯(径)方向に55〜70ループ/インチであることがより好ましい。
編みの密度が変化するということは、寸法が変化しているということであるが、その寸法変化率について、経(長さ)方向は、3%未満であることが好ましい。経方向の寸法変化率が3%をこえると、対象物が露出しやすい、とくに精密機器の場合には、誤作動を生じさせる可能性がある。また、緯(径)方向の寸法変化率は20〜25%であることが好ましい。緯(径)方向の寸法変化率が20%より小さいということは、収縮糸を用いた効果が小さく、対象物を十分に拘束できない傾向にあり、25%をこえると、形が変形することで小型機器内に配置するのが困難となる傾向にある。
本発明の被覆保護材は、具体的には、以下のようにして製造される。
まず、製造する製品の径に応じて、経編機仕掛け幅を設定する。設定サイズに基づき、前針床と後針床との針本数を設定して糸掛けを行い、前針床と後針床とで別々に編成を行う。このとき、前針床、後針床とも同じ位置、同じ針本数とする。ついで、両端を接結糸で接結して円筒状の編地を編成する。得られた円筒状編地を所望の長さに切断して、本発明の被覆保護材を製造する。
まず、製造する製品の径に応じて、経編機仕掛け幅を設定する。設定サイズに基づき、前針床と後針床との針本数を設定して糸掛けを行い、前針床と後針床とで別々に編成を行う。このとき、前針床、後針床とも同じ位置、同じ針本数とする。ついで、両端を接結糸で接結して円筒状の編地を編成する。得られた円筒状編地を所望の長さに切断して、本発明の被覆保護材を製造する。
なお、この具体的な製造方法は、本発明の被覆保護材を製造するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
本発明の被覆保護材は、コンピュータ端末及び周辺機器など電源を必要とした小型の機器、無数の制御用配線があり複雑な動きをする(工業用)ロボット、屈曲するリクライニング機能付ベッドなどの機器に配索する導体である電線やその束などの基材を覆う保護材として使用することができる。漁網やロープなどの紐の保護材としても応用できる。なかでも、柔軟性や集束性といった特徴があり、さらにフィット性を発揮できる点で、機器に配索する導体である電線やその束といった配線を保護するスリーブとして使用することが好ましい。
被覆保護のその他の対象物としては、電極の絶縁部分、電球、配管や配筋材の全体あるいは端部、針金および光ケーブルなどがあげられる。
実施例
<評価方法>
機器に配索する電線束としては、図1(a)に示すような複数の銅線からなり、ねじりをかけて合計の直径を約3mmとしたものを使用した。
<評価方法>
機器に配索する電線束としては、図1(a)に示すような複数の銅線からなり、ねじりをかけて合計の直径を約3mmとしたものを使用した。
(1)作業性
前記電線束を被覆する際の作業性について、次のように評価した。
○:引っ掛かりが0〜1回と殆どなく、スムーズに挿入できた
△:引っ掛かかりが2〜4回と多少あったが、挿入できた
×:引っ掛かかりが5回以上と多いため、時間はかかったが挿入できた
前記電線束を被覆する際の作業性について、次のように評価した。
○:引っ掛かりが0〜1回と殆どなく、スムーズに挿入できた
△:引っ掛かかりが2〜4回と多少あったが、挿入できた
×:引っ掛かかりが5回以上と多いため、時間はかかったが挿入できた
(2)集束性
前記電線束を被覆した後、熱処理し、90度に3回屈曲させたときの状態を次のように評価した。
○:結束はくずれにくく、保護材はたるまない
△:結束はくずれにくいが、保護材はたるみやすい
×:結束はくずれ、保護材がたるむ
前記電線束を被覆した後、熱処理し、90度に3回屈曲させたときの状態を次のように評価した。
○:結束はくずれにくく、保護材はたるまない
△:結束はくずれにくいが、保護材はたるみやすい
×:結束はくずれ、保護材がたるむ
(3)柔軟性
前記電線束を被覆した後、熱処理したときの柔軟性について、次のように評価した。
○:保護材は自在に屈曲可能
△:抵抗を感じるものの屈曲可能
×:屈曲出来ない
前記電線束を被覆した後、熱処理したときの柔軟性について、次のように評価した。
○:保護材は自在に屈曲可能
△:抵抗を感じるものの屈曲可能
×:屈曲出来ない
(4)長さ方向での寸法安定性
保護材について次のように評価した。
○:一定の長さに切断、被覆後熱収縮させても長さ変化がほとんどない。
△:一定の長さに切断、被覆後熱収縮させると長さが3〜5%変化した
×:一定の長さに切断、被覆後熱収縮させると長さが5%より大きく変化した
保護材について次のように評価した。
○:一定の長さに切断、被覆後熱収縮させても長さ変化がほとんどない。
△:一定の長さに切断、被覆後熱収縮させると長さが3〜5%変化した
×:一定の長さに切断、被覆後熱収縮させると長さが5%より大きく変化した
実施例1
経編機(カール・マイヤー社製、RD−6DPLM、28G)を用いて、ポリエステル系弾性糸(ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ソロテックス株式会社製、56dtex/24フィラメント)を鎖編組織に、テビロン(熱収縮糸、登録商標、PVC繊維、株式会社帝健製、56dtex/15フィラメント、表面温度70℃以上110℃以下での収縮率50〜60%)をその他の組織として、図2に示す通りに編成した。前および後床の針床の針本数を8本(8針間)とした。編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。得られた筒状の経編地に占める熱収縮糸が20%を占め、内径は4mmであった。前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
経編機(カール・マイヤー社製、RD−6DPLM、28G)を用いて、ポリエステル系弾性糸(ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ソロテックス株式会社製、56dtex/24フィラメント)を鎖編組織に、テビロン(熱収縮糸、登録商標、PVC繊維、株式会社帝健製、56dtex/15フィラメント、表面温度70℃以上110℃以下での収縮率50〜60%)をその他の組織として、図2に示す通りに編成した。前および後床の針床の針本数を8本(8針間)とした。編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。得られた筒状の経編地に占める熱収縮糸が20%を占め、内径は4mmであった。前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
得られた被覆保護材に、図1に示すような合計の直径が約3mmである前記電線束を通した。このとき、ほとんど引っ掛かかることなく挿入できた。ついで、被覆保護材全体に、工業用ドライヤー(品名:HAKKO 882 ヒーティングガン)で30秒間の熱処理を施した。このとき、被覆保護材の表面温度は約70℃であり、内径は電線束に沿って3mmに収縮した。径方向の寸法変化率(収縮率)は25%であった。また、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に60ループ/インチであった。長さは9.9cm(寸法変化率1.0%)となり、長さ方向の寸法変化はほとんど認められなかった。
本発明の保護材は、電線束を被覆し、熱処理を施した後、経(長さ)方向にはほとんど収縮せず、緯(径)方向には十分に収縮して電線束にフィットし、電線束の結束を崩すことはなく、保護材のたるみは認められなかった。また、被覆された電線束は自在に屈曲が可能であり、小型装置内に干渉することなく収まることが確認された。評価結果を表2に示す。
実施例2
経編地に占める熱収縮糸が50%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
経編地に占める熱収縮糸が50%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
得られた被覆保護材を、実施例1と同じ電線束に通したところ、殆ど引っ掛かることなく作業が出来た。その後、実施例1と同じ条件で熱処理した。径方向の寸法変化率(収縮率)は25%であった。また、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に60ループ/インチであった。長さは9.8cm(寸法変化率2.0%)となり、長さ方向の寸法変化はほとんど認められなかった。
本発明の保護材は、電線束を被覆し、熱処理を施した後、経(長さ)方向にはほとんど収縮せず、緯(径)方向には十分に収縮して電線束にフィットし、電線束の結束を崩すことはなかった。なお、被覆保護材自体のたるみも認められなかった。また、被覆された電線束は自在に屈曲が可能であり、小型装置内に干渉することなく収まることが確認された。評価結果を表2に示す。
実施例3
経編地に占める熱収縮糸が80%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
経編地に占める熱収縮糸が80%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
得られた被覆保護材を、実施例1と同じ電線束に通したところ、ほとんど引っ掛からずに挿入できた。その後、実施例1と同じ条件で熱処理した。径方向の寸法変化率(収縮率)は25%であった。また、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に60ループ/インチであった。長さは9.8cm(寸法変化率2.0%)となり、長さ方向の寸法変化はほとんど認められなかった。
本発明の保護材は、電線束を被覆し、熱処理を施した後、経(長さ)方向にはほとんど収縮せず、緯(径)方向には十分に収縮して電線束にフィットし、電線束の結束を崩すことはなかった。なお、被覆保護材自体のたるみも認められなかった。また、被覆された電線束は自在に屈曲が可能であり、小型装置内に干渉することなく収まることが確認された。評価結果を表2に示す。
実施例4
経編地に占める熱収縮糸が10%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
経編地に占める熱収縮糸が10%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
得られた被覆保護材を、実施例1と同じ電線束に通したところ、ほとんど引っ掛からずに挿入できた。その後、実施例1と同じ条件で熱処理した。径方向の寸法変化率(収縮率)は15%であった。また、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に53ループ/インチであった。長さは9.9cm(寸法変化率1.0%)となり、長さ方向の寸法変化はほとんど認められなかった。
本発明の保護材は、電線束を被覆し、熱処理を施した後、経(長さ)方向にはほとんど収縮せず、緯(径)方向には収縮して電線束にフィットした。電線束の拘束 (集束) 力はやや弱いが、結束は崩れにくかった。また、柔軟であるため、若干たるむ傾向にあるが、機能上は大きな問題はないことがわかった。評価結果を表2に示す。
実施例5
経編地に占める熱収縮糸が90%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
経編地に占める熱収縮糸が90%となるように糸種を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、内径4mmの筒状の経編地を得た。なお、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に44ループ/インチであった。ついで、前記筒状経編地を長さ10cmに切断して、本発明の被覆保護材を得た。
得られた被覆保護材を、実施例1と同じ電線束に通したところ、ほとんど引っ掛からずに挿入できた。その後、実施例1と同じ条件で熱処理した。径方向の寸法変化率(収縮率)は25%であった。また、編密度は、経(長さ)方向に31ループ/インチ、緯(径)方向に60ループ/インチであった。長さは9.6cmとなり、4.0%の寸法変化率が認められた。
電線束を被覆した本発明の保護材は、経(長さ)方向にもやや収縮したが、緯(径)方向には十分に収縮して小型装置内の配線や電線にフィットし、結束を崩すことはなかった。更に被覆保護材自体のたるみも認められなかった。また、被覆された電線束は抵抗があるものの屈曲可能であり、被覆保護材としての機能を保持することがわかった。評価結果を表2に示す。
比較例1
市販の内径約3mmの組紐保護スリーブ(株式会社大成製作所製、精密配線用編組スリーブ、長さ10cm)について、実施例1と同様に、合計の直径約3mmの電線束に通したが、5回以上と引っ掛かりが多く、作業性が悪かった。挿入後、結束は崩れないものの、長さ方向に動いてしまい、十分な集束性がないため、端部に耐熱性テープを巻きつける作業が必要となった。また、屈曲可能であるものの、長さ方向にずれやすく、小型装置内での形状、仕様に合わせて収め難かった。
市販の内径約3mmの組紐保護スリーブ(株式会社大成製作所製、精密配線用編組スリーブ、長さ10cm)について、実施例1と同様に、合計の直径約3mmの電線束に通したが、5回以上と引っ掛かりが多く、作業性が悪かった。挿入後、結束は崩れないものの、長さ方向に動いてしまい、十分な集束性がないため、端部に耐熱性テープを巻きつける作業が必要となった。また、屈曲可能であるものの、長さ方向にずれやすく、小型装置内での形状、仕様に合わせて収め難かった。
比較例2
市販の内径約3mmの熱収縮チューブ(朝日電器株式会社製、PH−643H、長さ10cm)について、実施例1と同様に、合計の直径約3mmの電線束に通したが、殆ど引っ掛からず作業が出来た。表面温度80℃で収縮率は約25%であり、結束は十分であった。熱収縮チューブの長さは9.6cmとなり、4%の寸法変化率が認められた。熱処理後に表面が硬化してしまい、屈曲が困難となり、さらに表面に凹凸が生じ、小型装置内に干渉することなく収めることはできなかった。
市販の内径約3mmの熱収縮チューブ(朝日電器株式会社製、PH−643H、長さ10cm)について、実施例1と同様に、合計の直径約3mmの電線束に通したが、殆ど引っ掛からず作業が出来た。表面温度80℃で収縮率は約25%であり、結束は十分であった。熱収縮チューブの長さは9.6cmとなり、4%の寸法変化率が認められた。熱処理後に表面が硬化してしまい、屈曲が困難となり、さらに表面に凹凸が生じ、小型装置内に干渉することなく収めることはできなかった。
<総合評価>
実施例および比較例で得られた被覆保護材について、保護材として適しているかどうかを総合的に評価した。
◎:保護材として非常に適合する
○:適合する
×:適合しない
実施例および比較例で得られた被覆保護材について、保護材として適しているかどうかを総合的に評価した。
◎:保護材として非常に適合する
○:適合する
×:適合しない
表1に、実施例および比較例での糸種と編み組織とをまとめる。
1 被覆保護材
2 対象物
2 対象物
Claims (6)
- 基材を被覆するための保護材であって、少なくとも一部の編地が熱収縮糸により編成された筒状経編地からなる被覆保護材。
- 前記経編地が、少なくとも一部に鎖編地組織を有してなる請求項1記載の被覆保護材。
- 前記熱収縮糸の割合が、経編地の20〜80%である請求項1または2記載の被覆保護材。
- 前記筒状経編地の内径が、1〜50mmである請求項1、2または3記載の被覆保護材。
- 前記熱収縮糸が、表面温度70℃以上110℃以下のときの収縮率が30〜80%である請求項1、2、3または4記載の被覆保護材。
- 請求項1、2、3、4または5記載の被覆保護材からなる配線保護スリーブ。
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