(実施形態1)
本実施形態は最小構成のセルであり、このようなセルを多数個配列すればイメージセンサを構成することができる。
図1に示すように、1個のセル1は、第1導電形(図示例ではp形)の半導体(図示例ではシリコンを想定している)からなる素子形成層11の主表面側に、第2導電形(図示例ではn形)の半導体からなるウェル12を形成し、ウェル12の主表面に絶縁層(たとえば、酸化シリコンあるいは窒化シリコン)13を介して分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cとを配置した構成を有する。素子形成層11は、第2導電形のサブストレート10の上に形成されている。分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cとは透光性を有しているものとする。本実施形態では、光照射により生成される電荷のうち電子を利用する例について説明するが、ホールを利用する場合には、半導体の導電形を入れ換え、また後述する電圧の極性を入れ換えればよい。
分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cとでは、蓄積電極14bがもっとも広幅に形成される。図示例では、分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cとの幅寸法を異ならせているが、同幅の電極を多数個配列しておき、隣り合う複数個の電極に同じ電圧を印加することにより広幅の電極と等価に扱うようにしてもよい。たとえば、分離電極14aには隣り合う2個の電極を用い、蓄積電極14bには隣り合う3個の電極を用い、障壁制御電極14cには1個の電極を用いるようにすれば、同幅の電極を6個用いることで分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cの機能を実現することができる。
ウェル12はn形であってp形の素子形成層11に囲まれているから、分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14cのいずれにも電圧(分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14cにそれぞれ印加する電圧をVa、Vb、Vcで表す)を印加しない状態では、電子に対するポテンシャルは、素子形成層11に対してウェル12のほうが低くなる。つまり、ウェル12の形成されている領域は電子に対するポテンシャル井戸を形成している。図において斜線部は電子を表している。ウェル12の内部のポテンシャルは、分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14cに印加する電圧Va、Vb、Vcにより制御することができる。
いま、ウェル12の中の電荷を空にした状態で光を照射するものとする。ウェル12の中の電子を空にするには、ウェル12に隣接して設けた廃棄部となるドレイン23(図15参照)を通して電子を廃棄するか、ウェル12の中の電子を図示しない電荷取出部を通して受光出力として外部に取り出す。電荷取出部は、CCDイメージセンサの垂直転送部あるいは水平転送部と同様の構成を採用することができる。
図3の期間Taのように分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14cのいずれにも電圧Va、Vb、Vcを印加しない状態で光を照射すると、ウェル12を含む素子形成層11において電子とホールとが生成され、図2(a)のように生成された電子はウェル12に集積される。つまり、ウェル12は光電変換部D1として機能する。なお、分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14cのいずれかに対して、素子形成層11の電位である基準電位よりも高電位となる電圧(つまり、正極性の電圧)を印加すれば、ポテンシャル井戸をより深く設定することができ、電子の集積効率を高めることができる。
光照射による電子が光電変換部D1に集積された後には、図3の期間Tbのように障壁制御電極14cに負極性の電圧Vcを印加することにより、図2(b)のように、ウェル12の中にポテンシャル障壁B1を形成する。ポテンシャル障壁B1は、ウェル12の内部のポテンシャル井戸を、分離電極14aに対応する領域である電荷分離部D2と、蓄積電極14bに対応する領域である電荷蓄積部D3との2個のポテンシャル井戸に分割する。
ポテンシャル障壁B1を形成し電荷分離部D2と電荷蓄積部D3とを仕切った状態で(図3の期間Tc)、ウェル12に近接して設けた廃棄部としてのドレイン23(図15参照)を通して電荷分離部D2の中の電子を廃棄すれば、図2(c)のように、電荷蓄積部D3にのみ電子が残留することになる。電荷蓄積部D3に残留する電子の量は、図3の期間Taにおける受光光量を反映している。
次に、図3の期間Tdのように、分離電極14aに対して正極性の電圧Vaを印加し、また障壁制御電極14cに印加していた電圧Vcを取り除く。このとき、図2(d)のように電荷分離部D2は電荷蓄積部D3よりも深いポテンシャル井戸になり、また電荷分離部D2と電荷蓄積部D3との間のポテンシャル障壁B1が取り除かれるから、電荷蓄積部D3に集積されていたすべての電子が電荷分離部D2に流入する。つまり、電荷蓄積部D3に集積されていたすべての電子を電荷分離部D2に転送する。
ウェル12の中のすべての電子が電荷分離部D2に移動すると、図3の期間Teのように障壁制御電極14cに負極性の規定の一定電圧Vcを印加し、その後、分離電極14aに印加していた電圧Vaを取り除く。つまり、図2(e)のように、ウェル12の中にポテンシャル障壁B1を形成して電荷分離部D2と電荷蓄積部D3とを再び分割し、さらに電荷分離部D2としてのポテンシャル井戸を浅くする。ここで、電荷分離部D2の容量(容積)は、ポテンシャル障壁B1の高さを変数として決定される。つまり、障壁制御電極14cに印加する電圧Vcに応じて電荷分離部D2の容量が決まる。なお、障壁制御電極14cに印加する電圧Vcは、ポテンシャル障壁B1のポテンシャルが素子形成層11のポテンシャルを越えないように設定される。
図2(d)の状態において電荷分離部D2に流入した電子の量が、図2(e)の状態で電荷分離部D2の容量を超える場合には、電荷分離部D2からポテンシャル障壁B1を越えて電荷蓄積部D3に電子が流れ込む。図2(d)の状態で電荷分離部D2に流れ込んだ電子の量は、光照射により生成された電子の量(実際には図2(c)の電子の量)に対応しているから、図2(e)の状態で電荷蓄積部D3に流入する電子の量は、光照射により生成された電子から図2(e)の状態で設定された電荷分離部D2の容量分の電子を除いた量になる。
以下では、電荷分離部D2で分離した電子を不要電荷、電荷蓄積部D3に流入させた電子を有効電荷と呼ぶ。通常、不要電荷は廃棄し、有効電荷は受光出力として取り出す。これは、光電変換部D1において光照射により生成された電子を、環境光などによる一定量のバイアス成分と、着目する情報を含み受光光量の増減に追随して変動する変動成分との総和とみなしているからであり、バイアス成分は着目する情報を含んでいないから不要電荷として廃棄する。このようにして得られた有効電荷は受光光量に相当する量の電子から、単純に一定量の電子を廃棄しただけであるから、受光光量の変化分そのものは保存されており、受光光量において着目する情報量には変化が生じない。
なお、図2(a)から図2(e)までの期間においてウェル12の中で電子を移動させている間にも光は照射され、ウェル12に電子が集積され続けているから、図2(a)のように光電変換部D1で生成された電子の量に対して、図2(b)から図2(e)までの期間において光照射で生成される電子の量を無視できる程度に少なくする必要がある。図2(a)の期間はたとえばmsのオーダになり、図2(b)から図2(e)までの期間はμsのオーダとすることができるから、誤差分は無視することができる。
以上説明したように、本実施形態では、光電変換部D1で光照射により生成された電子のうち規定の一定量を電荷分離部D2で秤量するとともに、秤量後の残りの電子を電荷蓄積部D3に移送し、有効電荷として利用に供する。したがって、電荷蓄積部D3に蓄積された有効電荷の量は、受光光量(=受光光束の時間積分)に対応する電子の量よりも少なくなるが、光照射による受光光量を反映していることになる。このように、受光光量が多い場合でも生成された電荷のうちの一定量を電荷分離部D2で不要電荷として取り除くから、飽和が生じにくくなる。
また、本実施形態では光電変換部D1をウェル12に形成しているが、ウェル12とは別に設けた光電変換部で生成した電子をウェル12に転送し、その後、上述した手順で電子の一部を秤量してもよい。この場合、ウェル12を遮光することが可能であるから、図2(a)から図2(e)までの期間における光照射で生じる誤差を低減することができる。
さらに、上述の例では、図2(d)の期間で電子蓄積部D3のポテンシャルは変化させずに、電荷分離部D2のポテンシャルとポテンシャル障壁B1のポテンシャルとを引き下げているが、電荷分離部D2のポテンシャルを変化させずに、ポテンシャル障壁B1のポテンシャルを引き下げる(図2(e)のポテンシャル障壁B1よりは高くする)とともに電荷蓄積部D3のポテンシャルを引き上げる(ポテンシャル障壁B1以上にする)ことによって、電荷蓄積部D3から電荷分離部D2に電子を流入させるようにしてもよい。
ところで、図2(e)の状態において、電荷分離部D2で一定量の電子を不要電荷として秤量するには、ポテンシャル障壁B1を越えて電荷蓄積部D3に流れ込む電子を電荷蓄積部D3にすべて流入させる必要がある。仮に、電荷蓄積部D3に流れ込む電子の量が電荷蓄積部D3の容量を超える場合には、電子分離部D2で一定量の不要電荷を秤量することができなくなるという問題が生じる。この問題を解決するために、電荷蓄積部D3の深さを変えずに容量を大きく設定しようとすると素子形成層11に対するウェル12の占有面積が大きくなるから、光検出素子の大型化につながる。したがって、上述の問題を解決するには、電荷蓄積部D3の深さを調節する技術が採用される。
電荷蓄積部D3の深さはポテンシャル障壁B1の高さが関与しており、不要電荷の電荷量は電荷分離部D2の底のポテンシャルに対するポテンシャル障壁B1の相対高さで決まるから、電荷分離部D2の底のポテンシャルに対するポテンシャル障壁B1の相対高さを変化させずに、電荷分離部D2の底のポテンシャルを調節することによって、受光光量が増減しても電子分離部D2で一定量の不要電荷を秤量することが可能になる。
電荷分離部D2の底のポテンシャルを適正に設定するには、受光光量を評価しなければならない。受光光量の評価には、光電変換部D1に集積した電子を光検出素子の外部に取り出し、光検出素子の外部回路で評価する技術を用いることができる。この場合、外部回路での評価結果を、分離電極14aへの印加電圧に反映させる。なお、受光光量の評価結果によっては電荷分離部D2で電子を秤量する必要がない場合も生じる。その場合には、図2(c)の状態で電荷蓄積部D3に残留する電子を受光出力として取り出せばよい。
すなわち、光検出素子が、受光光量の評価を行うための受光出力を取り出す動作と、秤量後の受光出力を取り出す動作との2動作を行うように、分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cとに与える電圧を外部回路によって制御する。受光光量の評価を行うための受光出力を得る期間には電荷の秤量を行わず、光電変換部D1に蓄積された電荷をそのまま受光出力として取り出し、この受光出力によって、分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cとに与える電圧を決定し、ポテンシャル障壁B1の高さと電荷蓄積部D3の深さとの一方を決定する。次に、受光光量に対応した電荷について、上述した手順で不要電荷の秤量を行い、残留した電子を受光出力として取り出す。
ところで、秤量後の受光出力は受光光量の情報を保存していなければならない。したがって、発光源を用いないパッシブ型のセンサを構成する場合には、受光光量の評価後に秤量する不要電荷の量を一定に保つことによって受光光量の変動分が秤量後の受光出力に反映される構成を採用する。また、発光源を用いたアクティブ型のセンサを構成する場合には、発光源が点灯する期間(以下、「点灯期間」という)と消灯する期間(以下、「消灯期間」という)とを設け、消灯期間における受光光量を評価し、点灯期間に得られた電荷から不要電荷を除去する。この動作により、点灯期間において得られた電荷から自然光や照明光のような環境光に応じた量の不要電荷を取り除くことができ、発光源から投光された光に対するダイナミックレンジが実質的に拡大されることになる。
上述の動作では、不要電荷の秤量動作を1回だけ行うことを想定し、ポテンシャル障壁B1の高さによってのみ不要電荷の量を決めているが、不要電荷の量は、電荷分離部D2で秤量する回数を変化させることによっても調節することができる。つまり、電荷分離部D2の容量は一定にしておき、図2(e)の状態で電荷分離部D2において秤量した後、電荷分離部D2の電子を廃棄し、さらに、図2(d)の状態として電荷蓄積部D3の電子を電荷分離部D2に戻し、図2(e)の状態で電荷分離部D2において電子を秤量するという動作を必要回数だけ繰り返すことにより、不要電荷の量を調節することが可能である。
図2に示した動作では、電荷分離部D2で不要電荷を秤量する際に、電荷分離部D2に電荷を流入させた後に、障壁制御電極14cに印加する電圧または分離電極14aに印加する電圧を調節しているが、障壁制御電極14cに印加する電圧または分離電極14aに印加する電圧を調節することにより電荷分離部D2の容量を決定した後に、電荷分離部D2に電荷を流入させてもよい。
以下では、アクティブ型のセンサを構成する場合の例として、図4に示すように、対象空間に発光源2から投光し、対象空間からの光を信号光として光検出素子1で受光する構成を例として採用し、光検出素子1で受光する光に自然光や照明光のような環境光が混入する場合において、環境光の成分を低減して受光出力を得る場合を想定する。したがって、不要電荷として秤量する電子の量は環境光の受光光量を反映するように設定する。光検出素子1の受光出力は受光処理回路3に与えられ、受光出力から所望の情報が取り出される。光検出素子1、発光源2、受光処理回路3の動作はタイミング制御回路4から出力されるタイミング信号により制御される。すなわち、タイミング制御回路4は、発光源2を点灯させる点灯期間と消灯させる消灯期間とを交互に繰り返し、点灯期間と消灯期間とにおいて光検出素子1および受光処理回路3が以下の動作を行うようにタイミング信号を与える。つまり、図示する構成では、受光処理回路3とタイミング制御回路4とにより信号処理部が構成されている。信号処理回路は、適宜のプログラムを実行するマイクロコンピュータによって構成してもよい。
以下では、所望量の不要電荷を1回で秤量せず、複数回の合計で秤量する動作について説明する。この動作では、廃棄しようとする不要電荷の量をQgとするとき、1回でQgを廃棄するのではなく、Qg/k(kは正の整数)ずつk回で廃棄する。不要電荷の廃棄は、時間を開けずに複数回繰り返す動作と、時間を開けて複数回繰り返す動作とがあり、以下の説明では両者を混在させた場合を例示する。
つまり、不要電荷を秤量し廃棄する1回の秤量を連続してm回繰り返す期間を廃棄期間とし、点灯期間において廃棄期間をn回繰り返すのである(mは2以上の正の整数、nは1以上の正の整数)。この関係を図5に示す。図5では消灯期間Pdと点灯期間Pbとを1回ずつ記載しているが、消灯期間Pdと点灯期間Pbとは交互に繰り返される。また、図5(a)に示す動作では、点灯期間Pbにはn回(図示例では2回)の廃棄期間Ptが設けられ、各廃棄期間Ptにはそれぞれm回(図示例では5回)ずつ不要電荷の秤量動作W(不要電荷を分離して廃棄する動作を以下では秤量動作Wと呼ぶ)が行われている。つまり、点灯期間Pbにおいてn×m回の秤量動作Wを行っている。各廃棄期間Ptでは信号光の受光光量に対応する量の電子のみが残留するように不要電荷を廃棄する。したがって、1回の秤量動作Wによって廃棄する不要電荷の量は廃棄期間Ptにおいて廃棄する量の不要電荷をm等分した量になる。また、1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量は消灯期間Pdでの受光光量に応じて設定される。すなわち、以下に説明する動作ではk=mになる。
まず、不要電荷の秤量を1回で行う代わりに、不要電荷を複数回に分割して秤量を行う場合の利点について説明する。一般に、光検出素子の受光光量に対応して蓄積される電荷量(電子の量)Qは、光電変換部D1(電荷蓄積部D3)の面積Sと受光する時間tとに比例する。単位面積で単位時間に蓄積される電荷量をqとすれば、Q=q×S×tになる。ポテンシャル障壁B1の高さを消灯期間Pbに蓄積した電荷量で決める構成を採用しているから、ポテンシャル障壁B1の高さΔVは、消灯期間Pbに蓄積した電荷量Qの関数であって、たとえば、ΔV(Q)=α×q×S×tの関係によって算出することができる。ただし、αは電荷量Qをポテンシャル障壁B1の高さΔV(Q)に変換する係数である。1回で秤量される不要電荷の量は、ポテンシャル障壁B1の高さΔV(Q)を変化させることにより調節することができる。
ポテンシャル障壁B1の高さΔV(Q)を変化させるには、4個の変数のいずれかを変化させればよいことがわかる。ここで、時間tは実施形態1において説明したようにmsのオーダであり、秤量に必要な時間はμsのオーダであるから、不要電荷の量を決める時間tを短くすることができれば、消灯期間Pdを短縮し空間情報の収集に利用できる時間の割合を増加させることができる。ただし、時間tを短くすると1回で秤量できる電荷量Qが少なくなるから、秤量する回数を増やすことによって所望量の不要電荷を廃棄するのである。
なお、時間tを短くしながらも1回で秤量できる電荷量Qを減らさないようにしようとすれば、係数αと電荷量qと面積Sとの少なくとも1要素を大きくすることが考えられるが、係数αを大きくするとショットノイズなどのノイズ成分を増加させることになるから誤差の増加につながり、また電荷量qは光検出素子の仕様と受光する光の強度とにより決まるから調節が困難であり、面積Sを大きくすれば大型化するという問題が生じる。したがって、係数αと電荷量qと面積Sとは変更しない。
1回の秤量動作Wにおいて廃棄する不要電荷の量は、上述のように消灯期間Pdに蓄積された電荷量によって決まり、この電荷量は環境光の受光強度と消灯期間Pdの長さ(時間t)との関数である。つまり、1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量は、消灯期間Pdが長いほど多くするように規定される(実際は、1次関数あるいは3次関数で規定する)。したがって、上述したように、廃棄期間Ptで廃棄しようとする不要電荷の量をQgとし、1回で秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量をQg/mとすると、1回で電荷量Qgを秤量する際に必要な消灯期間の長さに対して、消灯期間Pdの長さは1/mになる。つまり、秤量動作Wをm回行う構成を採用することにより、所望量の不要電荷を秤量する際の消灯期間Pdの長さが1/mに短縮されるのである。
上述の動作によれば、消灯期間Pdが短縮され、その一方で秤量動作Wに要する時間が秤量動作Wの回数分だけ増加するが、消灯期間はmsのオーダであり、秤量動作Wの時間はμsのオーダであるから、消灯期間Pdと点灯期間Pbとを合計した時間は1回で秤量する場合よりも短縮することができる。たとえば、不要電荷の秤量を1回で行う場合に消灯期間が7ms必要であったとすれば、不要電荷の秤量を7回で行う場合には消灯期間を1msに短縮することができる。つまり、1回の秤量動作Wに100μsかかったとしても消灯期間Pdと点灯期間Pbとの合計は2ms未満であるから、大幅な時間短縮が可能になる。
上述のように、不要電荷を1回で秤量する場合よりも消灯期間Pdを短縮し、かつ複数回の秤量動作Wによって所望量の不要電荷を秤量することにより、受光出力を取り出すまでの時間を短縮することが可能になるのである。その上、消灯期間Pdに受光する環境光の強度が比較的大きい場合でも、消灯期間Pdを短くすることによって光電変換部D1で生成される電子の量を低減させ、結果的に光検出素子1が飽和するのを防止することになる。
上述の動作では、廃棄期間Ptにm回の秤量動作Wを行っており、点灯期間Pbにはn回の廃棄期間Ptを設けている。ここにおいて、点灯期間Pbは毎回一定時間とする。各廃棄期間Ptごとに複数回の秤量動作Wを行うことによって、消灯期間Pdを短縮する効果が高まるが、点灯期間Pbにおける秤量動作Wの回数は適宜に設定すればよい。たとえば、点灯期間Pbにおいて廃棄期間Ptを1回だけ設け、廃棄期間Ptの間に複数回の秤量動作Wを行うことが可能である。また、各廃棄期間Ptに秤量動作Wを1回ずつ行う動作とすることも可能である。
ただし、環境光の受光強度の観点から言えば、点灯期間Pbにおいて廃棄期間Ptを複数回設けることが望ましい。とくに、消灯期間Pdにおける受光光量が多い場合(つまり環境光の受光強度が大きい場合)には、点灯期間Pbにおける廃棄期間Ptの回数を増加させることが望ましい。この理由について図6を用いて説明する。
いま、点灯期間Pbにおいて廃棄期間Ptを4回設けているとすると、図6(a)のように時刻t0から時刻t2までの点灯期間Pbにおいて各廃棄期間Ptに一定量の不要電荷が廃棄されるから、電荷蓄積部D3に蓄積された電子は、廃棄期間Ptごとに減少を繰り返しながら、全体としては電子の蓄積によって増加することになる。
このような動作において、1回の廃棄期間Ptで廃棄する不要電荷の量と廃棄期間Ptの回数とが適正であれば、電荷蓄積部D3に蓄積された電子の量は光検出素子1の飽和レベルL1を超えることがないが、環境光が想定よりも多い場合には、時刻t2において点灯期間Pbが終了するまでに、電荷蓄積部D3の電子の量が飽和レベルL1を超えるという現象が生じる(図6(a)では時刻t3において飽和レベルL1を超えている)。飽和レベルL1を超えると、光検出素子1から取り出された受光出力からは信号光の情報が失われる。
そこで、点灯期間Pbにおいて飽和レベルL1に達したか否かを検出する必要がある。飽和レベルL1に達したことを検出するには、たとえば、点灯期間Pbにおける最後の廃棄期間Ptから一定時間が経過した後に点灯期間Pbが終了するように廃棄期間Ptを設定しておけばよい。最後の廃棄期間Ptから点灯期間Pbの終了までの時間は、隣り合う廃棄期間Ptの間の時間に設定する。
いま、上述の例のように点灯期間Pbにおいて4回の廃棄期間Ptを設定しているものとすると、3回目の廃棄期間Ptから4回目の廃棄期間Ptの間に飽和が生じた場合に、4回目の廃棄期間Ptにおいて不要電荷が廃棄されるから、廃棄期間Ptの終了時点で受光出力を取り出すと受光出力が飽和レベルL1よりも小さくなり、飽和を検出することができない。これに対して、上述のように廃棄期間Ptの終了から一定時間が経過した後に点灯期間Pbを終了し、その時点で受光出力を取り出すようにすれば、受光出力は飽和レベルL1に達しているから点灯期間Pbにおいて飽和に達したことを検出することが可能になる。
電荷蓄積部D3の電子の量が時刻t2までに飽和レベルL1を超える場合でも、廃棄期間Ptの回数を増加させると、点灯時間Pbを変更することなく飽和レベルL1を超えないように調節できる場合がある。たとえば、図6(a)のように、時刻t1から時刻t2までの点灯期間Pbにおいて秤量期間Ptを4回設けているときに、電荷蓄積部D3に蓄積された電子の量が4回目の秤量期間Ptに達する直前で飽和レベルL1を超える場合でも、図6(b)のように、点灯期間Pbにおける秤量期間Ptを5回に増やせば、電荷蓄積部D3に蓄積された電子の量が時刻t3にまでに飽和レベルL1を超えないようにすることが可能なことがある。言い換えると、廃棄期間Ptの時間間隔を比較的短く設定することによって、光検出素子1が飽和するまでに不要電荷を廃棄すれば、環境光が多い環境下においても信号光に対応する電子の受光出力に占める割合を高めることが可能になり、結果的に環境光の受光強度が大きい場合でも信号光の情報を持った受光出力を取り出すことが可能になる。
受光期間Pbにおける秤量期間Ptの回数は、光検出素子1から得られる消灯期間Pdの受光光量と受光出力とのうち少なくとも受光出力を用いて決定する。秤量期間Ptの回数を決定する手順について説明する。なお、秤量期間Ptには複数回の秤量動作Wをまとめて行っているから、1回の秤量期間Ptにおける動作もまた不要電荷を廃棄する動作であって、点灯期間において秤量期間Ptを複数回設け、秤量期間Ptに時間間隔を開けていることは、不要電荷を廃棄する動作を時間間隔を開けて複数回行っていることに相当する。
消灯期間Pdの受光光量は、環境光の受光強度を反映しているから、消灯期間Pdの受光光量が決まれば受光期間Pbにおいて蓄積される不要電荷の量を見積もることができる。また、消灯期間Pbの受光光量によって1回の秤量期間Ptで廃棄する電荷量が決まる。したがって、消灯期間Pbの受光光量を求めると、受光期間Pbにおいて蓄積される電子の量の時間変化の傾向を知ることができる。この時点では信号光に対応する電子の量は不明であるが、信号光に対応する電子の量は受光期間Pbにおいてほぼ一様に増加すると考えることができるから、飽和レベルL1を考慮して廃棄すべき不要電荷の量を見積もることができ、秤量期間Ptの回数について候補値を求めることができる。
候補値が決まれば、候補値で動作させた場合の受光出力の大きさを受光処理回路3において監視することによって、秤量期間Ptの回数が適正に設定されているか否かを評価する。この評価には受光出力と比較する上限値と下限値とを設定しておき、受光出力と上限値および下限値との比較によって秤量期間Ptの回数を調節する。
たとえば、受光出力が上限値を超えていると秤量期間Ptの回数を候補値に対して1回増やして新たな候補値とし、下限値を下回っていると秤量期間Ptの回数を候補値に対して1回減らして新たな候補値に用いる。この処理を繰り返すことにより、受光出量を上限値と下限値との間の適正な値に維持することができる。受光出力が上限値と下限値との間ではない場合には、その受光出力は採用せず、当該期間の受光出力は、他の期間の受光出力で補間あるいは代用する。
なお、秤量期間Ptの回数について候補値を消灯期間Pdの受光光量で決めるのではなく、あらかじめ定めたデフォルト値を候補値に用いるようにしてもよい。この場合、消灯期間Pdの受光光量は、1回の秤量動作Wにおいて廃棄する不要電荷の量の決定にのみ用いられる。なお、1回の秤量期間Ptにおける秤量動作Wの回数は変更しない。
受光期間Pbにおける秤量期間Ptの回数を決定するために、受光処理回路3では、消灯期間Pdにおける受光光量と受光出力とに基づいて上述の処理を行い、受光処理回路3において決定した秤量期間Ptの回数に応じてタイミング制御回路4が光検出素子1の動作を制御する。なお、受光出力が上限値と下限値との間に収まるように秤量期間Ptの回数を調節する処理は、受光期間Pbごとに行う必要はなく、使用環境に応じて適数回の受光期間Pbごとに行うようにすればよい。つまり、標準的な頻度をデフォルト値として設定しておき、環境光の変化が大きい場所では調節の頻度を上げ、環境光の変化が少ない場所では調節の頻度を下げればよい。
点灯期間Pbにおいて受光出力が飽和レベルに達した場合には、当該点灯期間Pbに得られた受光出力は空間情報の検出には用いることができない。したがって、この受光出力は破棄し、次回の点灯期間Pbにおいて分離する不要電荷の量を変更することによって、次回以降の点灯期間Pbで適正な受光出力が得られるようにする。ここで、不要電荷の量を変更する技術として、上述の例では秤量期間Ptの回数を変更する例を示しているが、消灯期間Pdを長くすれば1回の秤量期間Ptで廃棄される電荷量が増加する。また後述する感度制御電極17a〜17h(図12参照)を設けている場合には、消灯期間Pdにおいて光電変換部D1として電荷を集積するポテンシャル井戸を形成するための電圧を印加する感度制御電極17a〜17hの個数を変化させれば、実質的に受光面積を変化させることになるから、消灯期間Pdにおいて受光面積を大きくすることで、秤量期間Ptに廃棄される電荷量が増加させることができる。
上述した原理から明らかなように、飽和レベルL1を超えないように秤量動作Wを行うという目的では、複数回の秤量動作Wを秤量期間Ptにおいてまとめて行うよりも、1回ずつの秤量動作Wを点灯期間Pbの全体に分散させて行うほうが望ましい。つまり、図5(b)のように、点灯期間Pbにおいて毎回の秤量動作Wを行う間に時間間隔を設けておくのが望ましい。また、時間間隔は消灯期間Pdにおける受光出力が大きいほど短くなるように設定するのが望ましい。この技術を採用すれば、電荷蓄積部D3に蓄積される電荷量の増加速度が低下し、蓄積される電荷量が飽和レベルLに達しにくくなる。つまり、電荷蓄積部D3の飽和を抑制する効果が高くなる。
ところで、1回の廃棄期間Ptにおいて廃棄する不要電荷の量は、信号光により生成された量の電子の全部を残すように算出されるが、1回の廃棄期間Ptに複数回の秤量動作Wを行い、かつ1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量は消灯期間Pbにおける受光光量によって決まるから、信号光に対応した量の電子の全体でかつその量の電子のみを残すことは困難である。したがって、信号光に対応した量の電子の全体よりもやや多い量の電子を余裕分として残すことになる。ただし、信号光に対するダイナミックレンジを大きくとるには、余裕分の電子はできるだけ少なくすることが必要である。
1回の秤量動作Wで廃棄される不要電荷の量は消灯期間Pdにおける受光光量により決められ、この受光光量は消灯期間Pdの長さ(継続する時間)の関数であるから、1回の廃棄期間Ptにおいて廃棄する不要電荷の総量を算出すれば、消灯期間Pdの長さを変化させることによって、余裕分が少なくなるように1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量を決めることが可能である。
消灯期間Pdを短くすれば1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量が少ないから余裕分も少なくなり、また1回の廃棄期間Ptに1回の秤量動作Wを行うように消灯期間Pdを長くすることによっても余裕分を少なくすることが可能である。しかしながら、前者の動作を採用すると、秤量動作Wの回数が増加することによって、点灯期間Pbにおいて秤量動作Wの処理の占める割合が大きくなり、後者の動作を採用すると、消灯期間Pbが長くなるから、いずれの構成を採用したとしても、単位時間当たりに信号光から得られる情報量が低減する。
これに対して、1回の廃棄期間Ptにおける秤量動作Wの回数に上限と下限とを設定するとともに、消灯期間Pbの上限と下限とを設定しておき、これらの上限と下限との範囲内で余裕分が最小になるように、1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量と1回の廃棄期間Ptにおける秤量動作Wの回数とを決めることで、消灯期間Pdを比較的短くしながらも秤量動作Wの回数が極端に多くならないように、廃棄期間Ptにおける条件を設定することが可能になる。
ところで、廃棄期間Ptで廃棄する不要電荷の量は、廃棄期間Ptにおける秤量動作Wの回数と、1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量との積として算出され、1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量は消灯期間Pdにおける受光光量により決まる。また、消灯期間Pdにおける受光光量は、環境光の受光強度と消灯期間Pdの長さ(継続時間)により決まる。
廃棄期間Ptの条件を設定するには、消灯期間Pdの長さにデフォルト値を設定しておき、まずデフォルト値の時間の消灯期間Pdでの受光光量を用いて環境光の受光強度を推定し、廃棄期間Ptごとに廃棄すべき不要電荷の総量を決定する。また、デフォルト値の長さの消灯期間Pdにおける受光光量を用いて1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量を決定する。
次に、廃棄期間Ptごとに廃棄すべき不要電荷の総量を1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量で除算して商と剰余とを求める。商が廃棄期間Ptにおける秤量動作Wの回数の上限と下限との間の回数であれば、剰余を低減するように1回の秤量動作Wで廃棄する不要電荷の量を決め、この量に応じた消灯期間Pdの長さを逆算する。逆算結果により得られた消灯期間Pdの長さが上限と下限との範囲内であれば、消灯期間Pdを逆算結果の長さに設定する。
なお、秤量動作Wの回数あるいは消灯期間Pdの長さが上限と下限との範囲から逸脱しているときには、回数あるいは長さを調節することにより、上限と下限との範囲内に収まるように調節する。
また、光電変換部D1を複数設けてイメージセンサを構成しており、すべての光電変換部D1について上述の制御を行うと処理負荷が大きくなるから、あらかじめ1回の秤量動作Wにおいて分離する不要電荷が、すべての光電変換部D1に亘って規定値よりも小さくなるように、消灯期間Pdを短くし、秤量動作Wの回数を多くする設定が有効である。1回の秤量動作Wにより秤量する不要電荷の量を少なくすれば、秤量動作Wの回数は多くなるが、1回の秤量動作Wに要する時間は微小であるから、光電変換部D1において光を受光し不要電荷を廃棄して受光出力を得るまでの全体の時間の増加は少ない。むしろ消灯期間Pdが短縮されるから、点灯期間Pbにおいて空間情報を検出する時間を相対的に増加させることになる。
複数個の光電変換部D1を備えるイメージセンサでは、タイミング制御回路4の出力による動作タイミングの制御を簡単にするために、秤量動作Wの回数は各光電変換部D1において等しく設定しておくことが望ましい。したがって、上述のように1回の秤量動作Wで分離する不要電荷の量を少なくするには、廃棄期間Ptにおける秤量動作Wの回数を可及的に多く設定しておくことが望ましい。
ところで、上述のように不要電荷を秤量して廃棄すると、受光出力の大部分は信号光に対応した成分になるが、信号光の受光強度が大きいと光検出素子1が飽和し、逆に信号光の受光強度が小さいとショットノイズなどの内部雑音の影響によってSN比が低下する。上述の動作例では点灯期間Pbの長さを一定にして廃棄する不要電荷の量を調節していたが、受光側において信号光の受光光量を調節しようとすれば、点灯期間Pbの長さを調節することが必要である。
そこで、図7(a)に示すように、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さを複数種類から選択可能とし、適正な受光出力が得られるように点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さを選択することにより信号光に対するダイナミックレンジを広げることが考えられる。つまり、光検出素子1が飽和しない範囲内でできるだけ大きい受光出力が得られるように、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さを決めるのである。この技術を採用する場合、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さが変化するから廃棄すべき不要電荷の量も変化する。
いま、環境光と信号光とが同条件である環境下で点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さを変化させるものとすれば、不要電荷を廃棄しないときには、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3が長いほど環境光および信号光に対応する電荷の量も増加する。したがって、上述した他の動作例と同様に、不要電荷の廃棄までに飽和が生じないように不要電荷を廃棄する必要がある。
1回の秤量動作Wにおける不要電荷の量は、消灯期間Pd1,Pd2,Pd3に得られる環境光の受光光量に応じて増減するから、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さに応じて消灯期間Pd1,Pd2,Pd3の長さを変化させれば、1回で秤量される不要電荷の量を点灯期間Pb1,Pb2,Pb3に応じて調節することができる。
つまり、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3において集積される不要電荷の量は点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さに比例し、また1回の秤量動作Wにおいて廃棄する不要電荷の量は消灯期間Pd1,Pd2,Pd3の受光光量に比例するから、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さによらず、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3中に同数回ずつの廃棄期間Ptを設ける場合は、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さと消灯期間Pd1,Pd2,Pd3の長さとを比例関係で設定すれば、廃棄すべき不要電荷の量を適正に調節することができる。ただし、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3が異なっても点灯期間Pb1,Pb2,Pb3中の廃棄期間Ptの回数は等しくする必要があるから、廃棄期間Ptの時間間隔を点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さに応じて調節する。
上述の動作では、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さに応じて消灯期間Pd1,Pd2,Pd3の長さを変化させているが、図7(b)のように、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さにかかわらず消灯期間Pdの長さを一定に保ち、1回の秤量期間Ptにおける秤量動作Wの回数を点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さに応じて変化させてもよい。秤量動作Wの際に廃棄する不要電荷の量は、消灯期間Pdにおける受光光量で決まるから、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3が異なっていても変化しない。そこで、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3ごとに廃棄期間Ptにおける秤量動作Wの回数を変化させるのである。
この動作は、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さに応じて1回の廃棄期間Ptにおいて廃棄する不要電荷の量を調節しているから、実質的に消灯期間Pd1,Pd2,Pd3の長さを調節した動作と同様に機能する。ただし、廃棄期間Ptに廃棄する不要電荷の量が、1回の秤量動作Wにおいて廃棄する不要電荷の量の整数倍になるから、点灯期間Pb1,Pb2,Pb3の長さに応じて消灯期間Pd1,Pd2,Pd3の長さを調節する動作と比較すると、受光出力において信号光以外の成分の量がやや増加する可能性がある。
点灯期間Pbにおいて複数回の秤量動作Wを行う動作では、点灯期間Pbにおいて1回だけ秤量動作Wを行う動作に比較して、1回の秤量動作Wにおいて廃棄する不要電荷の量を少なくすることができ、結果的に消灯期間Pdが短くなるから、消灯期間Pbと点灯期間Pbとを合計した時間を短縮することができる。また、点灯期間Pbにおいて複数回の廃棄期間Ptを設けることによって、環境光が多い場合でも飽和レベルL1を超えない状態を保ちながら信号光に対応する電子を蓄積することが可能になる。
その一方で、点灯期間Pbにおいて複数回の廃棄期間Ptを設けている場合には、1回の廃棄期間Ptで廃棄する不要電荷の量を、信号光に対応する成分が不要電荷として廃棄されないように設定するから、複数回の廃棄期間Ptを繰り返す間に、残留した不要電荷が蓄積される可能性がある。つまり、1回の廃棄期間Ptで廃棄する不要電荷の量は、理想的には信号光に対応した量の電子のみが残留するように規定されるが、実際には信号光に対応した量の電子以外の残留電子が生じるから、廃棄期間Ptごとに生じる残留電子が廃棄期間Ptを繰り返す間に蓄積され、受光出力には、信号光に対応する成分以外に残留電子の成分が含まれるのである。
つまり、図8のように、点灯期間Pbにおいて毎回の廃棄期間Ptまでに蓄積される電子の量V1は、廃棄する不要電荷の量V2と信号光に対応する電子の量V3とを加算した量よりも多くなり、不要電荷を廃棄した後の電子には、信号光に対応した電子のほかに雑音である残留電子(電荷量V4)が含まれるのである。残留電子は、ショットノイズのような内部雑音により生成される電子が多く、消灯期間Pdにおける受光光量から見積もることができない。ただし、ショットノイズなどに起因した1回の廃棄期間Ptごとの残留電子の量は時間経過に伴って変動するものの平均すればほぼ一定量になる。
上述のような残留電子は、廃棄期間Ptごとに生じ、点灯期間Pbの間に累積される。したがって、点灯期間Pbにおいて廃棄期間Ptを繰り返すと、やがては残留電子の量が1回の秤量動作Wで廃棄される不要電荷の量に達すると考えられる。上述のように残留電子の量の平均値は推定可能であるから、残留電子の量が1回の秤量動作Wで廃棄される不要電荷の量に達するまでの廃棄期間Ptの回数を推定することができる。
そこで、廃棄期間Ptの回数が推定した回数に達するたびに秤量動作Wの回数を1回増やすことにより、残留電子を大幅に低減することができる。また、この動作により、残留電子の影響による信号光に対するダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
なお、点灯期間Pbにおいて複数回の秤量動作Wを行う動作は、消灯期間Pdにおける受光光量を用いて廃棄する不要電荷の量を見積もるから、消灯期間Pdにおける受光光量に対応する電子を光検出素子1の外部に取り出すことが必要であって、本実施形態の構成において採用するのが最適ではあるが、以下に説明する各実施形態であっても消灯期間Pdにおける受光光量に対応した電子を光検出素子1の外部に取り出す構成を付加すれば、採用可能である。
また、不要電荷の量を見積もるための消灯期間Pdは点灯期間Pbと交互に設けなくてもよく、1回の消灯期間Pdにおいて見積もった不要電荷の量を複数回の点灯期間Pbにおいて適用してもよい。この場合、隣接する点灯期間Pbの時間間隔は消灯期間Pbよりも短くすることができるから、信号光を受光する期間が単位時間に占める割合を増加させることになり、結果的に対象空間の空間情報を検出する期間を増加させることができる。消灯期間Pdと点灯期間Pbとの関係は、以下に説明する実施形態においても同様に設定することが可能である。
(実施形態2)
実施形態1では受光光量に応じて不要電荷として秤量する電子の量を調節する技術について説明したが、実施形態1で説明した技術では、光検出素子の外部回路で受光光量を評価しなければならないから、外部回路においてポテンシャル障壁B1を制御するための回路が必要になる。つまり、外部回路の規模が大きくなる。本実施形態は、不要電荷として秤量する電子の量を受光光量に応じて自動的に変化させる機能を光検出素子に設けることにより、ポテンシャル障壁B1を制御するための外部回路を不要にしたものである。
不要電荷の量を光検出素子1が自動的に変化させるための構成として、本実施形態では、図9(a)に示すように、素子形成層11の主表面に、ウェル12とは別にウェル12と同じ導電形で不純物濃度が高濃度である保持用ウェル15を設け(つまり、保持用ウェル15の導電形はn+である)、保持用ウェル15に絶縁層13を介して保持電極14dを対向させてある。また、素子形成層11においてウェル12と保持用ウェル15との間の領域には絶縁層13を介してゲート電極14eを対向させてある。保持電極14dは障壁制御電極14cと電気的に接続され、また、素子形成層11において保持電極14dおよびゲート電極14eに対応する領域は遮光膜16で遮光される。
ところで、n+形である保持用ウェル15はp形の素子形成層11に囲まれているから、保持用ウェル15にはウェル12と同様に電子に対するポテンシャル井戸が形成される。ただし、保持用ウェル15はウェル12よりも不純物濃度が高濃度であるから、分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14c、保持電極14dのいずれにも電圧を印加しない状態では、保持用ウェル15にはウェル12よりも深いポテンシャル井戸が形成される。保持用ウェル15に形成されるポテンシャル井戸は電子を保持する電荷保持部D4として機能する。
保持用ウェル15に保持した電子の量が増加すると保持電極14dの電位が低下し、保持電極14dに接続された障壁制御電極14cの電位も低下する。障壁制御電極14cの電位が低下すれば、ポテンシャル障壁B1が高くなり、電荷分離部D2の容量が大きくなる。つまり、環境光が増加するほど保持用ウェル15に保持される電子の量を増加させれば、不要電荷として分離できる電子の量を環境光に応じて増加させることができるから、環境光の増減にかかわらず、信号光に対するダイナミックレンジをほぼ一定に保つことが可能になる。
環境光の増減に応じて保持用ウェル15に保持される電子の量を増減させるために、光電変換部D1において環境光の照射時に生成された電子を保持用ウェル15に転送して保持させる動作が必要になる。つまり、光電変換部で生成した電荷を、保持用ウェル15に転送する期間を設ける。なお、保持用ウェル15は遮光膜16により遮光されているから、素子形成層11やウェル12に光が照射されても保持用ウェル15に保持された電子の量は変化しない。
ところで、本実施形態では、障壁制御電極14cが保持電極14dに接続されているから、障壁制御電極14cに対応するポテンシャル障壁B1の高さを任意に制御することはできず、ポテンシャル障壁B1の高さは、保持用ウェル15に保持された電子の量によって決定される。このように、障壁制御電極14cに対応するポテンシャル障壁B1の高さは任意に制御することができないから、実施形態1において説明した図2(a)〜(d)のようにポテンシャル障壁B1の高さを調節することができない。したがって、本実施形態では電荷分離部D2と電荷蓄積部D3とのポテンシャルを調節する技術を採用し、実施形態1と同様の手順で電子を移動させる。
さらに詳しく説明する。実施形態1と同様に、分離電極14aと蓄積電極14bとに電圧を印加していない状態でウェル12に形成されるポテンシャル井戸を光電変換部D1として用いるものとする。また、保持用ウェル15に隣接してドレイン23(図15参照)を設けてあり、保持用ウェル15に集積された電子を廃棄することができるものとする。まず、ウェル12および保持用ウェル15に残留する電子が廃棄される。この状態では、分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cと保持電極14dとゲート電極14eとのいずれにも電圧が印加されず、ウェル12には図2(a)と同様のポテンシャル井戸が形成され、このポテンシャル井戸が光電変換部D1として機能する。このとき、発光源は点灯させず、環境光のみを光電変換部D1に入射させる。したがって、この期間に光電変換部D1において生成された電子は環境光の受光光量に対応する。
ウェル12および保持用ウェル15の電子を廃棄してから規定の一定時間が経過するまでの期間の電子が環境光の受光光量に対応する量の電子として光電変換部D1に集積されると、この電子は保持用ウェル15に転送される。つまり、保持用ウェル15には発光源から投光しない消灯期間における環境光に対応した量の電子が保持される。光電変換部D1から保持用ウェル15への電子の転送の際にはゲート電極14eに正極性の電圧を印加し、光電変換部D1と保持用ウェル15との間のポテンシャル障壁B2を引き下げる。また、分離電極14aと蓄積電極14bとに正極性の電圧を印加し、光電変換部D1のポテンシャルを保持用ウェル15のポテンシャルよりも引き上げる。この動作により、ウェル12から保持用ウェル15に電子を移動させることができる。
なお、保持用ウェル15に転送する電子の量は発光源の消灯期間の受光光量に対応していればよいから、光電変換部D1で生成されたすべての電子を保持用ウェル15に流入させる必要はなく、ウェル12から保持用ウェル15に移動させる電子の量が、発光源の消灯期間における光電変換部D1での受光光量に対応していればよい。発光源の消灯期間に対応した電荷を保持用ウェル15に保持させると、図10(a)のように、障壁制御電極14cに対応して形成されるポテンシャル障壁B1の高さが決まる。つまり、電荷分離部D2の容量が決まる。保持用ウェル15に流入する電子の量が多くなれば保持用ウェル15の表面電位が低下するから、表面電位の低下に追従して保持電極14dの電位も低下し、結果的に障壁制御電極14cに印加される電圧が低下してポテンシャル障壁B1が高くなるのである。図11の期間Taのように、分離電極14aと蓄積電極14bとゲート電極14eとには電圧は印加されていないから、障壁制御電極14cと保持電極14dとの電位は、電荷保持部D4に保持されている電子の量で決まる。
光電変換部D1から電荷保持部D4に電子を移動させた後に光電変換部D1に残留する電子は不要であるから、ウェル12に隣接して設けたドレイン23(図15参照)を用いて光電変換部D1に残留する電子を廃棄する。
次に、発光源を点灯させると、環境光と信号光とを加算した光が光電変換部D1に入射する。ここで、光電変換部D1には電荷保持部D4に保持された電子の量に応じたポテンシャル障壁B1が形成されているから、このポテンシャル障壁B1の高さを超えない量の電子を集積する。つまり、ウェル12のうち分離電極14aに対応する領域と蓄積電極14bに対応する領域とは、ともに光電変換部D1として機能するが、実施形態1の図2(b)に示した動作と同様に、ウェル12はポテンシャル障壁B1を挟んで2つの領域に分割される。
2つの領域のうち分離電極14aに対応する電荷分離部D2に集積された電子は利用しないから廃棄し、蓄積電極14bに対応する電荷蓄積部D3に集積された電子を利用する。したがって、本実施形態では発光源から投光する点灯期間には、実質的に、ウェル12のうち蓄積電極14bに対応する領域が光電変換部D1として機能するのであって、電荷蓄積部D3が光電変換部D1に兼用されていることになる。
図11の期間Tbのように分離電極14aに印加する電圧は期間Taとは変化させないが、ドレイン23(図15参照)を用いて図10(b)のように電荷分離部D2の電子を廃棄する。その後、図11の期間Tcのように分離電極14aに正極性の電圧を印加するとともに蓄積電極14bに負極性の電圧を印加し、図10(c)のように、電荷分離部D2のポテンシャルを引き下げる。このとき、電荷分離部D2のポテンシャルを大きく引き下げれば、ポテンシャル障壁B1も引き下げられ、電荷蓄積部D3(光電変換部D1)から電荷分離部D2に電子を流入させることが可能になる。
なお、電荷分離部D2のポテンシャルの引き下げに代えて、電荷蓄積部D3のポテンシャルを引き上げてもよい。ただし、電荷蓄積部D3のすべての電子を電荷分離部D2に流入させるには、電荷蓄積部D3のポテンシャルをポテンシャル障壁B1のポテンシャル以上に設定する必要がある。また、電荷分離部D2のポテンシャルの引き下げと電荷蓄積部D3のポテンシャルの引き上げとを同時に行ってもよい。
電荷蓄積部D3の電子が電荷分離部D2にすべて流入した後には、図11の期間Tdのように分離電極14aと蓄積電極14bとに印加していた電圧を取り除く。このとき、電荷分離部D2の容量が決まり、図10(d)のように、電荷分離部D2に集積された電子のうち電荷分離部D2の容量を超える電子は、ポテンシャル障壁B1を越えて電荷蓄積部D3に流入する。すなわち、光電変換部D1で生成された電子のうち、電荷保持部D4に保持された電子の量(つまり、発光源の消灯期間に対応する電子の量)に応じて決まる電荷分離部D2の容量に対応する一定量の電子が不要電荷として分離され、電荷蓄積部D3に戻された電子が有効電荷として利用に供される。
上述したように本実施形態では、外部回路を用いることなく光検出素子の内部でポテンシャル障壁B1の高さが自動的に調節され、しかも環境光の受光光量に応じて不要電荷の量が決定されるから、環境光の受光光量にかかわらず、信号光に対する受光出力のダイナミックレンジをほぼ一定に保つことができる。
光電変換部D1を多数個配列した撮像素子を構成する場合に、不要電荷の量を決めるポテンシャルを各画素毎に外部回路で制御すると外部回路の構成が非常に複雑になるが、本実施形態のように不要電荷の量を環境光の受光光量に応じて自動的に調節する技術を採用すれば、不要電荷の量を決めるための外部回路は実質的に不要になる。また、半導体基板に撮像素子とともに外部回路を集積する場合に、半導体基板に占める光電変換部D1の相対面積が減少してS/Nが劣化するが、本実施形態では外部回路が実質的に不要であるから、高S/Nが得られる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
本実施形態では、ウェル12に形成される光電変換部D1としてのポテンシャル井戸から、保持用ウェル15に形成される電荷保持部D4としてのポテンシャル井戸に電子を転送するタイミングの制御にゲート電極14eを用いたが、ゲート電極14eを省略した構成とし、分離電極14aと蓄積電極14bとに印加する電圧を制御することによって光電変換部D1から電荷保持部D4に電子を転送するようにしてもよい。
たとえば、分離電極14aおよび蓄積電極14bに正極性の電圧を印加してポテンシャル井戸を形成し、光電変換部D1に電子を集積した後、分離電極14aおよび蓄積電極14bに負極性の電圧を印加すると、ウェル12に集積された電子は保持ウェル15に向かって移動する。なお、蓄積電極14bに負極性の電圧を印加することによって、ウェル12と保持用ウェル15との間のポテンシャル障壁が崩され、ウェル12から保持用ウェル15への電子の移動が容易になる。また、分離電極14aに負極性の電圧が印加されているから、ウェル12に集積された電子は図9(a)の左向きへの移動が防止される。
ウェル12から保持用ウェル15に電子が移動した後は、分離電極14aおよび蓄積電極14bに正極性の電圧を印加し、ウェル12にポテンシャル井戸を形成する。このような動作によって、ゲート電極14eを用いることなく、光電変換部D1から電荷保持部D4への電子の移動が可能になる。
また、図9(a)の構成に代えて、図9(b)のように、電荷保持部D4としてウェル12に形成される保持用ウェル15に障壁制御電極14cを直接電気的に接続する構成を採用するとさらに望ましい。図9(a)のように、保持用ウェル15に絶縁層13を介して保持電極14dを設けると、障壁制御電極14cと保持電極14dとはともに他の構成とは電気的に分離されるから、時間経過に伴って障壁制御電極14cと保持電極14dと両者を接続する配線とに電荷が蓄積する。このような電荷が存在すると、障壁制御電極14cに印加される電圧が保持用ウェル15の電荷量を正確に反映しなくなる可能性がある。この種の電荷を除去するには、障壁制御電極14cと保持電極14dとの間の電荷を除去するためのリセットスイッチを設ける構成が考えられるが、リセットスイッチを設けると、装置の大型化と製造コストの上昇を招くおそれがある。
そこで、図9(b)に示す構成では、保持用ウェル15に障壁制御電極14cを直接電気的に接続する構成を採用している。保持用ウェル15と障壁制御電極14cとの間を直接接続する配線は、拡散配線により形成することができる。また、保持用ウェル15に絶縁層13を介さずに保持電極14dをオーミックに接続する構成を採用する場合には、金属配線を用いてもよい。
ウェル12には、保持用ウェル15に隣接してリセットドレイン100を設け、ウェル12の主表面において保持用ウェル15とリセットドレイン100との間の部位にはリセット電極14rを設けてある。リセットドレイン100には接続線110を通して電子を引き抜く一定電圧を印加してあり、リセット電極14rに電圧を印加して保持用ウェル15とリセットドレイン100との間にチャンネルを形成すると、保持用ウェル15に蓄積された電子がリセットドレイン100を通して廃棄される。
上述したように、保持用ウェル15に障壁制御電極14cを直接電気的に接続した構成を採用すれば、リセット電極14rに適宜の電圧を印加して保持用ウェル15の電子を破棄する際に、障壁制御電極14cおよび配線の電荷も同時に廃棄されるから、障壁制御電極14cおよび配線に蓄積される電荷の影響を除去し、結果的に不要電荷の秤量精度を高めることが可能になる。なお、以下に説明する実施形態3〜5においてもこの構成を採用することができる。また、上述の構成では、電荷保持部D4により障壁制御電極14cに印加する電圧を制御しているが、電荷保持部D4により分離電極14aの印加電圧を制御する構成を採用することも可能である。
(実施形態3)
本実施形態は、実施形態2の構成と同様に電荷保持部D4を設けることにより、電荷分離部D2の容量を環境光の受光光量に応じて自動的に設定するものである。ただし、発光源の点灯期間において発光源から投光する光の強度を一定周波数の変調信号で変調し、変調信号における位相の異なる2区間に同期するタイミングの受光光量に対応した受光出力をそれぞれ取り出すことができるようにした光検出素子について説明する。本実施形態では、変調信号の波形を正弦波とし、位相が0〜180度に同期する区間(以下、区間P0と呼ぶ)の受光光量と、位相が180〜360度に同期する区間(以下、区間P2と呼ぶ)の受光光量とに対応する受光出力を取り出すものとする。なお、変調信号の波形は、矩形波や三角波や鋸歯状波を用いることも可能であり、受光光量を検出する区間は、上述の範囲以外でもよいのはもちろんのことである。
また、本実施形態は多数個のセル1を配列したイメージセンサを構成しており、イメージセンサから1フレームの受光出力を取り出すたびに、上述した2区間の受光出力を同時に取り出すことができるように構成してある。1フレームで2区間の受光出力を取り出すために、1個のセル1について、各区間ごとの受光光量を検出する構成と、各区間ごとの受光出力を蓄積する構成とが必要である。そこで、光電変換部D1を電荷分離部D2および電荷蓄積部D3とは別に設けている。
さらに詳しく説明する。光電変換部D1は、素子形成層11の主表面に形成したウェル(図示せず)に絶縁層13を介して複数個(図示例では8個)の感度制御電極17a〜17hを配列した構成を有する。ウェルは、素子形成層11とは異なる導電形であって、電荷分離部D2および電荷蓄積部D3として機能するウェル12とは分離して形成しゲートを介してウェル12に電荷を転送するのが望ましいが、ウェル12と連続に形成しポテンシャルを制御することによって電荷を転送するようにしてもよい。8個の感度制御電極17a〜17hのうち4個の感度制御電極17a〜17dは一方の区間に対応するグループになり、残りの4個の感度制御電極17e〜17hは他方の区間に対応するグループになる。各感度制御電極17a〜17hには、それぞれ制御線21aが接続され、感度制御電極17a〜17hごとに電圧を個別に印加することができる。なお、接続線21aと各感度制御電極17a〜17hとが接続されている部位を×印で示している。
図12(a)の縦方向はイメージセンサにおける垂直方向に相当し、図では垂直方向には1個のセル1のみを示している。つまり、垂直方向における1個のセル1は、8個の感度制御電極17a〜17hを備える。また、図では1個のセル1に対して水平方向に隣接するセル1の一部も示している。感度制御電極17a〜17hは、水平方向においては2個のセル1に跨って連続している。水平方向に隣接するセル1の間に、セル分離部20が設けられ、水平方向におけるセル1間のクロストークが防止されている。セル分離部20は、素子形成層11とは異種導電形の半導体を用いて素子形成層11の主表面側に形成される。制御線21aは、図示例ではセル分離部20を挟んで4本ずつ配置されている。したがって、水平方向に隣接する2個のセル1において光電変換部D1に占める制御線21aの面積を等しくすることができ、隣接する2個のセル1における光電変換部D1の感度を等しくすることができる。また、垂直方向においては各セル1の中で同じ位置である感度制御電極17a〜17hは同じ制御線21aに接続される。
本実施形態では、上述したように、感度制御電極17a〜17hを備えた光電変換部D1を、電荷分離部D2および電荷蓄積部D3とは別に設けてあり、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3と電荷保持部D4とは、感度制御電極17a〜17hに対して水平方向に並べて配置されている。図12では示していないが、水平方向に2個隣接しているセル1のうち右側のセル1では、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3と電荷保持部D4とが光電変換部D1の右側に配置され、左側のセル1では左側に配置される。また、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3とは感度制御電極17a〜17hのグループごとに設けられ、電荷保持部D4は1個のセル1を構成する両グループで共用される。これは、電荷保持部D4は環境光に相当する量の電子を保持するものであり、環境光は両グループでは変化しないとみなせるからである。この構成から障壁制御電極14cに印加される電圧も両グループで等しくなり、ポテンシャル障壁B1の高さは両グループで同じ高さになる。
各グループにおいて蓄積電極14bは感度制御電極17c,17fに隣接して設けられており、光電変換部D1で生成された電子を感度制御電極17c,17fに対応する部位から電荷蓄積部D3に転送できるようにしてある。ここに、光電変換部D1と電荷蓄積部D3とのポテンシャルの関係を調節することにより、電荷蓄積部D3から光電変換部D1への電子の移動も可能になる。なお、光電変換部D1と電荷蓄積部D3との間の部位にゲート電極(図示せず)を配置し、光電変換部D1と電荷蓄積部D3との間の電荷の流れを制御してもよい。
また、各グループにおいて分離電極14aは感度制御電極17a,17hに隣接して設けられる。さらに、両グループで共用される保持電極14dは感度制御電極17d,17eに跨る部位に配置される。分離電極14aと蓄積電極14bとゲート電極14eとはそれぞれ制御線21bに接続され、障壁制御電極14cと保持電極14dとは接続線22を介して接続される。つまり、各グループに設けた分離電極14a同士、蓄積電極14b同士、ゲート電極14e同士はそれぞれ制御線21bに接続され、3本の制御線21bを用いて電荷分離部D2と電荷蓄積部D3と電荷保持部D4との間での電子の移動が制御される。なお、制御線21bと接続線22とについて分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14c、保持電極14d、ゲート電極14eとの接続部位を×印で示している。
感度制御電極17a〜17hに印加する電圧は、発光源から投光する光の強度を変調する変調信号に同期するように制御される。たとえば、区間P0には感度制御電極17a〜17dと感度制御電極17fとに正極性の電圧を印加し、区間P2には感度制御電極17cと感度制御電極17e〜17hとに正極性の電圧を印加する。各感度制御電極17a〜17hに正極性の電圧を印加すると、セルにおいて各感度制御電極17a〜17hにそれぞれ対応する部位に、電子を集積するポテンシャル井戸が形成される。
そこで、感度制御電極17a〜17hに印加する電圧を上述のように制御すると、区間P0では、ウェルのうち感度制御電極17a〜17dに対応する部位で光照射による電子が集積される。また、区間P2では、ウェルのうち感度制御電極17e〜17hに対応する部位で光照射による電子が集積される。つまり、感度制御電極17a〜17hに印加する電圧パターンを制御することにより、光照射によって電子が生成される面積を変化させていることになり、実質的に光検出素子の感度を制御していることと等価である。
区間P0では、感度制御電極17fに対応する部位にもポテンシャル井戸が形成されるから、区間P2において集積された電子がこのポテンシャル井戸に保持され、区間P2では、感度制御電極17cに対応する部位に形成されたポテンシャル井戸には区間P0において集積された電子が保持される。
したがって、変調信号の複数周期(たとえば、変調信号を10MHzとし光電変換部D1で電子を生成する期間を15msとすれば、150000周期)に亘って光照射による電子を区間別に集積することができる。感度制御電極17c,17fに対応する部位に電子を保持している期間にも、感度制御電極17c,17fに対応する部位では電子が生成されるが、電子を集積する期間と電子を保持する期間とでは電子を集積する面積比が4:1になるので、保持した電子の量は変調信号の各区間における受光光量を反映していることになる。要するに、区間P0と区間P2とに対応する量の電子を、感度制御電極17c,17fにそれぞれ保持することができる。
感度制御電極17c,17fに対応する部位に保持された電子は、電荷蓄積部D3に転送される。転送にあたっては、蓄積電極14bに正極性の電圧を印加し、感度制御電極17a〜17hに負極性の電圧を印加する。電荷分離部D2と電荷蓄積部D3と電荷保持部D4との間で電子を移動させる間には、感度制御電極17a〜17hに負極性の電圧を印加しておくことにより、光電変換部D1への電子の移動を防止することができる。なお、感度制御電極17cは区間P2における電子を保持し、感度制御電極17fは区間P0における電子を保持するから、各グループの電荷蓄積部D3が光電変換部D1から電子を受け取るタイミングは異なる。
発光源の消灯期間において光電変換部D1で生成された電子は、電荷蓄積部D3からゲート電極14eに対応する部位を通して電荷保持部D4に転送される。ここに、発光源の消灯期間には変調信号は不要であるが、発光源の点灯期間と同じタイミングで感度制御電極17a〜17hに印加する電圧を制御し、光電変換部D1において環境光の受光光量に対応した量の電子を生成する。したがって、1個のセル1における両グループで環境光に対応する電子が電荷蓄積部D3に転送される。電荷保持部D4にはどちらか一方の電荷蓄積部D3から電子を転送すればよいが、両方から電子を転送してもよい。環境光の光量に対応する量の電子が電荷保持部D4に転送されると、保持電極14dに接続線22を介して接続された障壁制御電極14cに電圧が印加され、ウェル12には環境光の光量に応じたポテンシャル障壁B1が形成される。
その後、発光源の点灯期間において光電変換部D1では各グループごとに電子を集積することにより、区間P0と区間P2との電子をそれぞれ感度制御電極17c,17fに対応する領域に保持する。次に、光電変換部D1から電荷蓄積部D3に電子を移動させる。以後は実施形態2の動作と同様であって、電荷蓄積部D3から電荷分離部D2に電子を移動させ、電荷分離部D2の容量分の不要電荷を秤量して廃棄するとともに有効電荷を電荷蓄積部D3に戻す。この動作によって、電荷蓄積部D3には、発光源の点灯期間において光電変換部D1で集積した電子のうち発光源の消灯期間の受光光量で規定された量の不要電荷を分離した有効電荷が残る。
本実施形態は、電荷蓄積部D3に残留した有効電荷を光電変換部D1に戻して転送する構成を採用している。つまり、蓄積電極14bに負極性の電圧を印加するとともに感度制御電極17c,17fに正極性の電圧を印加することにより、電荷蓄積部D3から光電変換部D1に有効電荷としての電子を転送する。光電変換部D1に転送された電子は、感度制御電極17a〜17hを垂直転送用の電極として用いることにより垂直方向に転送され、CCDイメージセンサと同様にして光検出素子の外部に受光出力として取り出される。
本実施形態の構成では、光電変換部D1を除く部位は遮光しても動作するから、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3と電荷保持部D4とを遮光することにより、不要電荷を分離する処理の間に光照射で生じた電子が誤差分として有効電荷に混入するのを防止することができる。ただし、上述した各実施形態と同様に光電変換部D1で光照射による電荷を集積する受光期間に比較して、不要電荷を分離して有効電荷を取り出す秤量期間は十分に短いから、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3とは遮光していなくともよい。その場合でも電荷保持部D4は遮光することが必要である。
また、本実施形態では、不要電荷を秤量する動作を行っている期間には、光電変換部D1では光照射による電子を集積しないから、電荷蓄積部D3が光電変換部D1と兼用されている構成に比較して誤差を小さくすることができる。他の構成および動作は実施形態2と同様である。
ところで、実施形態2、3においては、電荷保持部D4を設けた光検出素子を発光源と組み合わせて用いた空間情報の検出装置を示し、発光源の消灯期間における受光光量(つまり、環境光の受光光量)に応じた量の電子を電荷保持部D4に保持させる場合について説明した。この装置では、光検出素子の受光出力と発光源から投光する光との関係を用いることによって、発光源から光を投光した対象空間に関する情報を得ることができる。対象空間に関する空間情報としては、物体の存否のほか、物体の反射率や、物体までの距離などがあり、対象空間に関するどのような情報が必要かに応じて受光出力を扱う回路(図示せず)を様々に構成することができる。
対象空間における物体の存否や反射率を求める場合には、発光源の点灯期間において光の強度を変調しなくてもよいが、対象空間に存在する物体までの距離を求めるには、発光源から投光する光の強度を所定周波数の変調信号で変調し、光検出素子では、変調信号に同期した複数のタイミングでの受光光量を検出する。これは、発光源から投光した光が光検出素子に入射するまでの飛行時間を、変調した光の位相差として検出する技術であって、位相差を求める演算には変調信号の位相の異なる2区間の受光光量の差分を用いる。
実施形態3の構成例では2つの区間P0,P2についてそれぞれ有効電荷が得られるから、有効電荷の差分を求めることによって距離の演算に用いることが可能である。また、実施形態2の構成例では、2つの区間P0,P2のうちの一方の区間で得られた電子を電荷保持部D4に保持すれば、この区間の受光光量に対応した量の電子が不要電荷になり、他方の区間で得られた電子から減算することになるから、得られた有効電荷の量は2つの区間P0,P2の受光光量の差分に相当することになる。つまり、距離の演算を外部回路で行う際に、光検出素子の受光出力に対する演算量を低減することができる。
また、有効電荷が2つの区間P0,P2の受光光量の差分に相当する量になる構成では、2つの区間P0,P2の電子を電荷保持部D4に交互に保持させれば、どちらを保持するかに応じて誤差が交互に異なる方向に発生することになる。したがって、2回の受光出力を平均すれば、不要電荷の分離に伴って発生する誤差を相殺することができ、受光出力に基づいて得られる対象空間の情報を精度よく求めることが可能になる。
(実施形態4)
本実施形態は、実施形態3と同様に、発光源から投光する光の強度を一定周波数の変調信号で変調し、変調信号における位相の異なる2区間に同期するタイミングの受光光量に対応した受光出力をそれぞれ取り出すことができるようにした光検出素子を示す。ただし、実施形態3では変調信号の位相が0〜180度に同期する区間P0の受光光量と、位相が180〜360度に同期する区間P2の受光光量とのそれぞれに対応付けて、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3とを設けた構成を採用したが、本実施形態では、区間P0と区間P2との受光光量について電荷分離部D2と電荷蓄積部D3とを共用する構成を示す。
図13に示すように、光電変換部D1において1個のセル1について8個の感度制御電極17a〜17hを設けている点では、実施形態3と同様であるが、電荷分離部D2、電荷蓄積部D3、電荷保持部D4については、実施形態3の構成では垂直方向において対称であったのに対し、本実施形態では非対称になっている。光電変換部D1において感度制御電極17a〜17dが配置された領域E1の側方には電荷分離部D2および電荷蓄積部D3を形成する領域E3が設けられ、後述するように光電変換部D1は電荷蓄積部D3としても共用される。また、電荷保持部D4を形成する領域E4は感度制御電極17e〜17hが配置された領域E2の側方に設けられる。
電荷分離部D2および電荷蓄積部D3を形成する領域E3には、光電変換部D1における感度制御電極17aに隣接する受取電極14fが設けられ、受取電極14fの下に形成されるポテンシャル井戸を感度制御電極17aの下に形成されるポテンシャル井戸に対して相対的に深くすることによって、感度制御電極17aの下に形成されるポテンシャル井戸に蓄積された電荷を光電変換部D1から受け取ることができるようにしてある。
また、領域E3において感度制御電極17b,17c,17dの側方には、分離電極14a、障壁制御電極14c、蓄積電極14bがそれぞれ配置される。図示例では、障壁制御電極14cのみの寸法が小さくなっているが、この構成のような寸法関係は必須というわけではない。
一方、電荷保持部D4を形成する領域E4には、光電変換部D1における感度制御電極17e〜17gに跨る部位にゲート電極14eが設けられ、ゲート電極14eの下に形成されるポテンシャル井戸を感度制御電極17fの下に形成されるポテンシャル井戸に対して相対的に深くすることによって感度制御電極17fの下に形成されるポテンシャル井戸に蓄積された電荷を光電変換部D1から受け取ることができるようにしてある。
領域E4において、ゲート電極14eに対して光電変換部D1の反対側には保持電極14dが配置される。したがって、実施形態2、3と同様にして保持電極14dの下にポテンシャル井戸を形成しておけば、ゲート電極14eの下のポテンシャルを適宜に調節することで、感度制御電極17fの下のポテンシャル井戸に蓄積された電荷を保持電極14dの下のポテンシャル井戸に流し込むことができる。
保持電極14dの下のポテンシャル井戸である電荷保持部D4に電荷を移動させた後には、障壁制御電極14cの電位は電荷保持部D4に保持されている電荷の量で決まり、障壁制御電極14cの下に形成されるポテンシャル障壁の高さが決定される。
なお、素子形成層11(図1参照)にはウェル12(図1参照)に隣接してドレイン(オーバーフロードレイン)23が形成される。
以下に本実施形態の動作を図14を用いて説明する。実施形態3と同様に発光源に消灯期間を設けており、本実施形態の光検出素子を用いるには、まず、消灯期間において(S1)、光電変換部D1のうち感度制御電極17e〜17hに正極性の電圧を印加し、感度制御電極17a〜17dは基準電位とする(負極性の電圧を印加してもよい。以下同様に、基準電位とする状態は負極性の電圧を印加する状態と置き換え可能である)。また、領域E3,E4に設けた分離電極14a、蓄積電極14b、保持電極14d、ゲート電極14e、受取電極14fについても基準電位とする。
上述の動作により、光電変換部D1のうち感度制御電極17e〜17hに対応する領域E2には、環境光の受光光量に相当する電子が集積される(S2)。環境光の受光光量に相当する電子が領域E2に集積された後には、感度制御電極17fにのみ正極性の電圧を印加し、他の感度制御電極17a〜17e,17g,17hは基準電位とする。この動作により、感度制御電極17fに対応するポテンシャル井戸に環境光の受光光量に相当する電子が集積される。
次に、ゲート電極14eに正極性の電圧を印加することにより、ゲート電極14eの下にチャンネルを形成し、感度制御電極17fの下のポテンシャル井戸から保持電極14dの下の保持部D4に電子を転送する(S3)。保持部D4に電子が転送されると、保持電極14dの電位は環境光の受光光量に応じた電位になり、障壁制御電極14cの電位も同電位なる。つまり、障壁制御電極14cの下に形成されるポテンシャル障壁の高さが決まる。
次に発光源から投光する点灯期間に移行する(S4)。点灯期間では、変調信号により強度が変調された信号光を投光するから、区間P0と区間P2との受光光量に対応する受光出力を個別に取り出すために以下の動作を行う。ここでは、区間P0の受光光量に対応する電子を領域E1で集積し、区間P2の受光光量に対応する電子を領域E2で集積するものとする。
まず、領域E1の感度制御電極17a〜17dと領域E2の感度制御電極17fとに正極性の電圧を印加し、領域E2の残りの感度制御電極17e,17g,17hを基準電位とする動作と(S5)、領域E1の感度制御電極17bと領域E2の感度制御電極17e〜17hとに正極性の電圧を印加し、領域E1の残りの感度制御電極17a,17c,17dを基準電位とする動作とを(S6)、変調信号に同期する周期で1回ずつ(もしくは複数回ずつ)行う。この動作により、感度制御電極17bに対応するポテンシャル井戸には区間P0の受光光量に対応する電子が集積され、感度制御電極17fに対応するポテンシャル井戸には区間P2の受光光量に対応する電子が集積される。
次に、区間P0,P2の受光光量に対応する電子から不要電荷を分離し有効電荷を取り出す処理を行う。区間P0の受光光量に対応する電子は、感度制御電極17bに対応するポテンシャル井戸に集積されているから、感度制御電極17aに正極性の電圧を印加するとともに感度制御電極17bを基準電位として感度制御電極17aに対応するポテンシャル井戸に電子を転送する。さらに、受取電極14fに正極性の電圧を印加するとともに感度制御電極17aを基準電位として受取電極14fの下のポテンシャル井戸に電子を転送する。つまり、領域E1で集積した区間P0の受光光量に対応する電子を領域E3に転送する。
領域E3に転送された電子は、受取電極14fに対応するポテンシャル井戸から分離電極14aに対応して形成される電荷分離部D2に流し込まれる。ここで、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3との間のポテンシャル障壁の高さが決まっているから、一定量の不要電荷が電荷分離部D2に残り、それ以外の有効電荷が電荷蓄積部D3に流れ込む。電荷分離部D2の不要電荷は、ドレイン23を通して廃棄される。このようにして、区間P0の受光光量に対応する電子から不要電荷が秤量され有効電荷が取り出される(S8)。
上述のようにして得られた有効電荷は、蓄積電極14bに隣接して設けられた感度制御電極17dの下に形成されるポテンシャル井戸に転送される。つまり、区間P0の受光光量から環境光の受光光量に相当する不要電荷を分離した有効電荷が領域E3から領域E1に転送される(S9)。
ところで、領域E2において集積された電子についても同様にして不要電荷を分離する必要がある。領域E2では感度制御電極17fに対応するポテンシャル井戸に区間P2の受光光量に対応する電子が集積されているから、この電子を領域E3に転送するために、感度制御電極17fに対応するポテンシャル井戸から感度制御電極17aに対応して形成されるポテンシャル井戸まで電子を転送する必要がある。また、このとき区間P0の受光光量から得られた有効電荷と混合されることがないように、ステップS9で領域E1に転送された電荷も垂直方向に転送する必要がある。そこで、感度制御電極17dの下のポテンシャル井戸からは隣接するセル1の感度制御電極17gの下のポテンシャル井戸まで電子(区間P0の有効電荷)を転送し、感度制御電極17fの下のポテンシャル井戸からは感度制御電極17aの下のポテンシャル井戸まで電子(区間P2の電子)を転送する(S10)。
区間P2の受光光量に対応した電子が感度制御電極17aの下のポテンシャル井戸まで転送された後には、領域E1から領域E3に電子を転送し、この電子から不要電荷を分離して有効電荷を電荷蓄積部D3に取り出す(S11〜S13)。つまり、ステップS7〜S9と同様の処理を行うことにより区間P2の有効電荷を取り出すことができる。この有効電荷は感度制御電極17dの下のポテンシャル井戸に転送され、領域E3から領域E1に有効電荷が戻される(S14)。
上述の動作により区間P0と区間P2との有効電荷が得られると、各有効電荷は垂直方向に転送されて感度制御電極17b,17fの位置に一旦戻される(S15)。このような動作を点灯期間において規定回数だけ繰り返し(S16)、最終的に感度制御電極17b,17fに対応するポテンシャル井戸に残った電子を受光出力として取り出す(S17)。
なお、分離電極14aとドレイン23との間、および保持電極14dとドレイン23との間には、それぞれ廃棄電極14g,14hが設けられており、領域E1から領域E3への電荷の転送毎に廃棄電極14gに印加する電圧の制御によって不要電荷が廃棄され、また、領域E2から領域E4への電荷の転送毎に廃棄電極14hに印加する電圧の制御によって保持部D4に保持されている環境光に対応した電子が廃棄される。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
(実施形態5)
実施形態4の構成では、不要電荷を分離する機能を備えた領域E3を感度制御電極17a〜17hが配列されている領域E1の側方(水平方向における異なる部位)に配置した構成を示したが、本実施形態では、図15に示すように、不要電荷を分離する機能を備えた領域E3を、光電変換部D1を設けている領域E1,E2に対して垂直方向に並べた構成例について説明する。
本実施形態では、1個のセル1について6個の感度制御電極17a〜17fを設けてあり、3個ずつの感度制御電極17a〜17c,17d〜17fが、それぞれ区間P0,P2における受光光量に対応する電荷を集積する領域E1,E2を形成するようにしている。また、垂直方向において隣り合うセル1の間に不要電荷を分離するための領域E3を設け、この領域E3の側方(水平方向に離れた部位)に環境光の受光光量に対応する電荷を保持する領域E4を設けている。
すなわち、一つのセル1の感度制御電極17fに対して垂直方向に隣接して領域受取電極14fが配置され、受取電極14fに対して感度制御電極17fと反対には分離電極14aと障壁制御電極14cと蓄積電極14bとが順に並んで配置される。蓄積電極14bに対して障壁制御電極14cの反対側には別のセル1の感度制御電極17aが配置される。
また、受取電極14fと分離電極14aと障壁制御電極14cと蓄積電極14bとが並ぶ領域E3に対して、受取電極14fと分離電極14aと障壁制御電極14cとの側方にはゲート電極14eを挟んで保持電極14dが配置される。ここに、障壁制御電極14cは保持電極14dとは接続線22を介して接続されている。領域E1,E2,E3,E4の周囲はドレイン23により囲まれており、保持電極14dに対応して形成される保持部D4とドレイン23との間には廃棄電極14gが配置される。なお、上述した各電極はp形の素子形成層11に形成されたn形のウェル12の表面に配置される。
本実施形態の動作は基本的には実施形態4の動作と同様であって、消灯期間において光電変換部D1のうち領域E2に対応する感度制御電極17d〜17fに正極性の電圧を印加し、領域E1の感度制御電極17a〜17cは基準電位とする。また、分離電極14a、蓄積電極14b、障壁制御電極14c、保持電極14d、ゲート電極14e、受取電極14fも基準電位とする。したがって、光電変換部D1のうち領域E2には環境光の受光光量に相当する電子が集積される。環境光の受光光量に相当する電子が領域E2に集積された後には、領域E1,E2のうちの各感度制御電極17a〜17fのうち感度制御電極17fにのみ正極性の電圧を印加し、集積された電子を感度制御電極17fに対応するポテンシャル井戸に集積する。
感度制御電極17fに対応するポテンシャル井戸に集積された電子は、受取電極14fおよびゲート電極14eを介して保持電極14dの下の保持部D4に転送される。この段階で障壁制御電極14cの下に形成されるポテンシャル障壁の高さが環境光に対応するように設定される。
次に発光源から投光する点灯期間に移行させると、変調信号に同期した区間P0と区間P2とに対応付けて、感度制御電極17a〜17c,17eに正極性の電圧を印加するとともに感度制御電極17d,17fを基準電位とする動作と、感度制御電極17b,17d〜17fに正極性の電圧を印加するとともに感度制御電極17a,17bを基準電位とする動作とを、変調信号に同期する周期で少なくとも1回ずつ行う。この動作によって、区間P0の受光光量に応じた電子が感度制御電極17bに集積され、区間P2の受光光量に応じた電子が感度制御電極17eに集積される。
ここで、感度制御電極17eに集積された電子を垂直方向に転送し、分離電極14aの下のポテンシャル井戸である電荷分離部D1に転送すれば、障壁制御電極14cの下のポテンシャル障壁の高さに応じて不要電荷が分離され、有効電荷のみが蓄積電極14bの下の電荷蓄積部D2に蓄積される。つまり、区間P2に対応する有効電荷が電荷蓄積部D2に蓄積される。ここで、電荷分離部D1の不要電荷は図示しない経路でドレイン23を通して廃棄する。
図示例では、分離電極14aよりも上流側(図の上方から下方に電子を転送する場合を想定している)と下流側とでドレイン23を連続させて記述しているが、上流側と下流側とにおいてドレイン23を分離させるのが望ましい。この構成を採用する場合には、上流側のドレイン23に隣接するいずれかの感度制御電極17a〜17f(たとえば感度制御電極17e)の下に廃棄する不要電荷を転送し、ドレイン23には電子を引き込む電圧(たとえば、+15V)を印加し、不要電荷を転送した部位の感度制御電極17eには電子を押し出す電圧(たとえば、−5V)を印加する。また、不要電荷を転送した部位の感度制御電極17eに隣接する感度制御電極17c,17d,17f,17gにも電子を押し出す電圧を印加しておく。この動作によって、不要電荷は感度制御電極17c,17d,17f,17gのほうに流れることなくドレイン23に流れて廃棄される。
次に、感度制御電極17bの下に形成されたポテンシャル井戸に集積されている区間P0の受光光量に対応した電子を垂直方向に転送し、分離電極14aの下のポテンシャル井戸である電荷分離部D1に転送する。このとき、蓄積電極14bの下の電荷蓄積部D2に蓄積されている区間P2の有効電荷も垂直方向に転送し、垂直方向に隣接するセル1の感度制御電極17bの下に形成されるポテンシャル井戸に待避させる。
上述のようにして区間P0の受光光量に対応した電子を電荷分離部D1に転送すれば、不要電荷が分離され、電荷蓄積部D2には区間P0の有効電荷が蓄積される。
電荷蓄積部D2に蓄積された区間P0の有効電荷および感度制御電極14bの下のポテンシャル井戸に蓄積された区間P2の有効電荷は、垂直方向において図15の上方に向かって転送される。なお、蓄積電極14bに印加する電圧を制御することによって、電荷蓄積部D2に蓄積された有効電荷は、障壁制御電極14cの下のポテンシャル障壁を乗り越えることができる。このように有効電荷を逆向きに転送することにより、感度制御電極14b,14eの下のポテンシャル井戸に区間P0,P2の各有効電荷を蓄積することができる。
点灯期間において上述した動作を規定回数繰り返した後に、有効電荷は受光出力として取り出される。本実施形態の動作では、実施形態4の動作に比較すると手順が少なくなり、動作が容易になる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
(実施形態6)
上述した実施形態では、分離電極14aと蓄積電極14bと障壁制御電極14cと保持電極14dとゲート電極14eとが個々に異なる幅寸法を有していたが、本実施形態は、同幅の電極を複数個配列し、電極を適宜に組み合わせることによって実質的に異なる幅の電極を用いた構成と同様の動作を行うものである。また、本実施形態では、実施形態3と同様に発光源から投光する光の強度を正弦波状の変調信号により変調し、区間P0と区間P2とに集積した電荷を受光出力として取り出す場合を想定する。ただし、光電変換部D1は電荷分離部D2および電荷蓄積部D3と兼用されており、また電荷保持部D4は設けていない。
図16に示すように、本実施形態における1個のセル1は、素子形成層11の主表面に設けたウェル12に絶縁層13を介して同じ幅の制御電極18a〜18lを等間隔で配列してある。本実施形態では、12個の制御電極18a〜18lによって1個のセル1を構成している。1個のセル1の中では、各制御電極18a〜18lに印加する電圧を個別に制御することができるように配線している。
光電変換部D1としての動作は実施形態3の感度制御電極17a〜17hを用いた動作とほぼ同様の動作になる。ただし、本実施形態では受光期間において、制御電極18a〜18iを用いて区間P0における受光光量に対応した電子を集積し、制御電極18d〜18lを用いて区間P2における受光光量に対応した電子を集積する。この動作を図17により説明する。なお、図17において横に並ぶ(a)〜(l)の符号は制御電極18a〜18lに対応する。
まず、受光期間において、光電変換部D1としての動作を行う間は、区間P0では図17(a)に示すように制御電極18a〜18iに正極性の電圧を印加し、9個の制御電極18a〜18iに対応する領域で電子を集積する。また、区間P2では図17(b)に示すように制御電極18d〜18lに正極性の電圧を印加し、9個の制御電極18d〜18lに対応する領域で電子を集積する。各区間P0,P2で光照射により集積した電子は、電子を集積する領域以外の領域で保持する。つまり、制御電極18a〜18iに対応する領域で電子を集積している区間P0においては、区間P2の電子を制御電極18kに対応する領域に保持し、制御電極18d〜18lに対応する電子を集積している区間P2においては、区間P0の電子を制御電極18bに対応する領域に保持する。区間P0,P2の動作を何度も繰り返すことにより、ウェル12において制御電極18bに対応する領域には受光光量に応じた量の電子が保持される。
受光期間が終了し、区間P0における受光光量に対応した量の電子が制御電極18bに対応する領域に集積されるか、区間P2における受光光量に対応した量の電子が制御電極18kに対応する領域に集積されると、秤量期間に移行し、不要電荷を分離して有効電荷を残す動作が開始される。
たとえば、制御電極18bに対応する領域に保持している電子から不要電荷を分離するには、区間P0で集積した電子を制御電極18bに対応する領域に形成したポテンシャル井戸に保持させた状態で、制御電極18aには負極性の電圧を印加してポテンシャル障壁を形成する。また、制御電極18d,18eに対応する領域を電荷蓄積部として利用するために、区間P2で集積された電子を転送する。つまり、図17(c)(d)のように制御電極18c〜18hに対応するポテンシャル障壁を順に形成して、区間P2に集積した電子を転送する。
次に、図17(e)のように、制御電極18d,18eに正極性の電圧を印加して電荷蓄積部D3となるポテンシャル井戸を形成するとともに、制御電極18cに印加する電圧を制御して規定の高さのポテンシャル障壁B3を形成する。この動作によって、制御電極18bに対応するポテンシャル井戸には不要電荷が残り、ポテンシャル障壁B3を超えて制御電極18d,18eに対応するポテンシャル井戸に流入した電子は有効電荷として利用される。
次に、図17(f)のように、制御電極18cに対応するポテンシャルを高くし期間P0に対応する有効電荷の漏れを防止し、同時に、期間P2に集積した電子を、制御電極18kに対応するポテンシャル井戸に集積する。この状態では、制御電極18g〜18iに対応する領域に電荷蓄積部D3となるポテンシャル井戸が形成され、制御電極18jに対応するポテンシャル障壁が形成される。
制御電極18kに対応するポテンシャル井戸に保持している電子から不要電荷を分離するには、図17(g)に示すように、制御電極18jに印加する電圧を制御してポテンシャル障壁B4を引き下げる。このときのポテンシャル障壁B4の高さにより区間P2に集積した電子のうちの不要電荷の量が決まる。つまり、制御電極18kに対応する領域が電荷分離部D2として機能する。
不要電荷を分離した後には、図17(h)のように、制御電極18jに対応するポテンシャル障壁を高くし、制御電極18g〜18iに対応するポテンシャル井戸に蓄積された区間P2の有効電荷の漏れを防止する。なお、制御電極18b,18kに残留する不要電荷は廃棄される。
上述した動作により、区間P0,P2における光照射により生成された電子から不要電荷を分離し、有効電荷を取り出すことができる。本実施形態では、制御電極18a〜18lが一列に配列されているから、制御電極18a〜18lにCCDイメージセンサの垂直転送レジスタと同様に適宜のタイミングで電圧を印加すれば、有効電荷である電子を制御電極18a〜18lの配列方向に転送することができる。この電子を光検出素子の外部に取り出すことにより受光出力が得られる。すなわち、本実施形態の構成では、光電変換部D1が電荷分離部D2および電荷蓄積部D3と兼用され、さらに電荷取出部としても兼用されることになる。また、2つの区間P0,P2に対応して生成された電子について、不要電荷を分離する処理を同時に行うことが可能であるから、不要電荷を分離する処理時間を短くすることができる。
上述した構成例では実施形態1と同様の動作を行う例を示したが、制御電極18b,18kに印加する電圧を別に設けた電荷分離部D4に保持される電子の量で制御するようにすれば、実施形態2あるいは実施形態3と同様に、不要電荷の量を自動的に調節することが可能になる。他の構成および動作は上述した各実施形態と同様である。
(実施形態7)
本実施形態は、実施形態6と同様に、同じ幅の複数個の制御電極19a〜19iを配列した構成を有するものである。ただし、実施形態6では1個のセル1を12個の制御電極18a〜18lで構成していたのに対して本実施形態では、図18に示すように、1個のセル1を9個の制御電極19a〜19iで構成した例を示す(図19において横に並ぶ(a)〜(i)はそれぞれ制御電極19a〜19iに対応する)。実施形態6において説明したように、変調信号の位相の1区間に対応する電子を集積するとともに不要電荷を分離するためには6個の制御電極を用いるから、9個の制御電極19a〜19iでは、変調信号の位相の2つの区間に対応する電子の集積と不要電荷の分離とを個々独立した領域で行うことはできない。つまり、両区間で一部の領域を重複させて使用することになる。また、実施形態6では、両区間において集積した電子から不要電荷を分離する動作を同時進行で行うことができるが、本実施形態の構成では一部領域が重複して使用されるから、両区間において集積した電子から不要電荷を分離する動作は異なる時間に行うことになる。
具体的には、図19に示す動作になるのであって、光照射により生成される電子を集積するように光電変換部D1として機能させる期間には、図19(a)(b)に示すように、制御電極19g,19iに負極性の電圧を印加する期間と、制御電極19a,19cに負極性の電圧を印加する期間とを交互に設ける。両期間は変調信号に同期させて設定されており、たとえば図19(a)の状態を区間P0に対応させ、図19(b)の状態を区間P2に対応させる。この場合、図19(a)の状態では区間P0に対して制御電極19a〜19fに対応する領域が光電変換部D1として機能し、図19(b)の状態では区間P2に対して制御電圧19d〜19iに対応する領域が光電変換部D1として機能する。また、区間P0に集積した電子は制御電極19bに対応する領域に保持され、区間P2に集積した電子は制御電極19hに対応する領域に保持される。
図19(a)(b)の状態を交互に繰り返す動作を十分に長い時間行った後、制御電極19b,19hに対応する領域に保持されている電子から不要電荷を分離し、制御電極19b,19hに対応する領域に有効電荷を残す動作を行う。制御電極19b,19hに対応する領域は有効電荷を残す領域であるから、電荷蓄積部D3として機能する。
図示例では、図19(b)に示す区間P2で集積した電子から不要電荷を分離した後、図19(a)に示す区間P0で集積した電子から不要電荷を分離している。区間P2で集積した電子から不要電荷を分離する間には、制御電極19bに対応する領域に区間P0で集積した電子を保持させ、区間P2で集積した電子から不要電荷を分離した有効電荷を制御電極19d〜19fに対応する領域に保持させる。
さらに具体的に説明する。まず、光電変換部D1において光照射による電子を集積した後、図19(c)のように、区間P0で集積した電子を制御電極19bに対応する領域に形成したポテンシャル井戸に保持させる。また、制御電極19gには負極性の電圧を印加してポテンシャル障壁を形成する。この状態は区間P2で集積した電子から不要電荷を分離するまで継続される。また、図19(c)の状態では区間P2で集積された電子を制御電極19d〜19fに対応する領域に形成したポテンシャル井戸に保持させる。つまり、区間P2で集積され制御電極19d〜19iに対応する領域に集積された電子を制御電極19d〜19fに対応する領域に集める。
この動作は、図19(d)に示すように、制御電極19hに対応する領域に電子のない空のポテンシャル井戸を形成するための前置動作である。すなわち、光照射による電子の集積が終了した段階では、制御電極19hに対応する領域には区間P2で集積した電子が存在しているから、図19(c)のように制御電極19g〜19iに負極性の電圧を印加することにより、図19(d)のように制御電極19hに対応する領域にポテンシャル井戸を形成したときに、電子の存在しないポテンシャル井戸を形成することができる。
次に、図19(e)(f)のように、制御電極19d〜19fに対応する領域に保持した電子を制御電極19hに対応する領域に移動させる。この際、まず制御電極19f〜19hに対応する領域にポテンシャル井戸を形成するとともに、制御電極19c〜19eに対応する領域にポテンシャル障壁を形成し、さらに制御電極19fに対応する領域、制御電極19gに対応する領域に順次ポテンシャル障壁を形成し、制御電極19hに対応する領域に電子を集積させる。この段階で制御電極19d〜19fに対応する領域に空のポテンシャル井戸を形成する。つまり、図19(e)の状態と図19(f)の状態との間には複数の状態が存在するが、図では省略している。また、ポテンシャルに関して、図19(f)の状態と図19(d)の状態とは同じであるが、図19(d)の状態では制御電極19d〜19fに対応する領域にのみ電子が存在するのに対して、図19(f)の状態では制御電極19hに対応する領域にのみ電子が存在する点で相違している。なお、図において図19(e)の状態から図19(f)の状態に至る途中過程は省略してある。
ここまでの過程で、区間P2で集積された電子が制御電極19hに対応する領域に集積される。次に、図19(g)のように制御電極19gに対応するポテンシャル障壁B5を引き下げる。このポテンシャル障壁B5は、実施形態1において説明したポテンシャル障壁B1と同様の機能を有しており、制御電極19hに対応する領域を電荷分離部D2としてポテンシャル障壁B5の高さで決まる容量分の電子が秤量される。電荷分離部D2の容量を超える電子は、ポテンシャル障壁B5を乗り越えて制御電極19d〜19fに対応する領域である電荷蓄積部D3に流入する。
電子が電荷蓄積部D3に流入した後に、図19(h)のように、制御電極19gに印加する電圧を負極性にしてポテンシャル障壁B5を高くすると、電荷分離部D2の不要電荷と電荷蓄積部D3の有効電荷とを完全に分離することができ、図19(i)のように電荷分離部D2となる制御電極19hに対応したポテンシャル井戸の不要電荷を廃棄すれば、制御電極19d〜19fに対応する領域に有効電荷を残留させることができる。この有効電荷は、区間P2の受光光量に対応した量になる。
一方、制御電極19bに対応する領域に保持されている電子の量は、区間P0の受光光量に対応している。この電子は、図19(j)〜図19(o)の手順で不要電荷が分離される。この期間には、制御電極19d〜19fに対応する領域に区間P2の有効電荷を保持した状態が維持される。本実施形態の特徴は、制御電極19hに対応する領域が、区間P2の電子に対する電荷分離部D2として機能するだけではなく、区間P0の電子に対する電荷分離部D2としても兼用されている点にある。
すなわち、不要電荷の廃棄後に、まず図19(j)(k)のように、制御電極19bに対応する領域に保持されていた区間P0の電子を制御電極19hに対応する領域に移動させる。この際、制御電極19a,19iに対応する領域のポテンシャルを引き下げて制御電極19a,19b,19h,19iに対応する領域のポテンシャルを等しくし、その後、制御電極19hに対応する領域に電子を寄せる。図19(j)(k)の間の状態は図では省略しているが、制御電極19b,19a,19iの順に対応する領域のポテンシャルを高くし、制御電極19hに対応する領域にのみ電子が集積された状態で、制御電極19a,19bに対応する領域のポテンシャルを下げる。
上述の動作により、制御電極19hに対応する領域に区間P0の電子が保持され、制御電極19hに対応する領域が電荷分離部D2として機能することになる。つまり、図19(l)のように、制御電極19iに対応する領域のポテンシャルによるポテンシャル障壁B6が形成され、このポテンシャル障壁B6を乗り越える電子が、有効電荷として制御電極19a,19bに対応する領域に流入する。つまり、制御電極19a,19bに対応する領域が電荷蓄積部D3として機能する。
その後、図19(m)のように、制御電極19iに対応するポテンシャル障壁B6を高くし、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3との電子を分離した状態で、図19(n)のように、電荷分離部D2となる制御電極19hに対応するポテンシャル井戸に集積された不要電荷である電子を廃棄すれば、制御電極19d〜19fに対応する領域に区間P2の受光光量に対応する電子が保持され、制御電極19a,19bに対応する領域に区間P0の受光光量に対応する電子が保持されることになる。なお、これらの電子を取り出した後には、図19(a)(b)の動作に復帰し光照射による電子を集積する。
本実施形態の構成を採用すれば、実施形態6の構成に比較して制御電極の個数が少なくなり、それだけ1個のセル1が占める面積を小さくすることができる。複数個のセル1を配列し1個のセル1を1画素として撮像素子を構成する場合には、1画素の占有面積が小さくなり、結果的に解像度の向上につながる。他の構成および動作は上述した各実施形態と同様である。
(実施形態8)
上述した各実施形態では、ポテンシャル井戸を利用して規定した一定量の不要電荷を秤量する構成を示したが、本実施形態では光照射により生成された電子のうち規定した一定量の不要電荷を秤量するる方法として、規定した一定量の不要電荷を廃棄する技術を説明する。
本実施形態では、図20に示すように、素子形成層11の主表面側に形成した光電変換部D1となるウェル12とは別に、素子形成層11の主表面側に廃棄用ウェル25を形成し、ウェル12と廃棄用ウェル25との間の部位には素子形成層11の主表面に絶縁層13を介して廃棄ゲート電極26を設けてある。さらに、廃棄用ウェル25には廃棄電極27をオーミックに接合してある。廃棄用ウェル25は、ウェル12と同じ導電形とし、不純物濃度をウェル12よりも高くしてある。
廃棄電極27には正極性の一定電圧を常時印加しておき、廃棄用ウェル25に集積された電子が廃棄電極27を通して廃棄されるようにする。また、廃棄ゲート電極26に正極性の電圧を印加すると、ウェル12と廃棄用ウェル25との間に電子の移動が可能になるチャンネルが形成される。ウェル12の中の電子はこのチャンネルを通して廃棄用ウェル25に向かって移動する。ここで、廃棄ゲート電極26と廃棄電極27とに印加する電圧を一定にしておけば、ウェル12から廃棄用ウェル25に向かう電子の移動度はほぼ一定になる。
そこで、ウェル12に設けた光電変換部D1において光照射により電子が集積された後に、廃棄ゲート電極26に規定の一定時間だけ規定の一定電圧を印加してウェル12から廃棄用ウェル25に電子を移動させる。上述のように、移動する電子の移動度は一定であるから、廃棄ゲート電極26に電圧を印加した時間にほぼ比例した量の電子を廃棄用ウェル25に移動させることができる。つまり、ウェル12で生成された電子のうち、廃棄用ウェル25に移動させた電子を不要電荷とし、ウェル12に残留した電子を有効電荷とすれば、規定した一定量の不要電荷を分離したことになる。ウェル12に残留した有効電荷は受光出力として取り出される。
本実施形態の構成では、廃棄ゲート電極26と廃棄電極27とに印加する電圧と、廃棄ゲート電極26に電圧を印加する時間とによって不要電荷の量が決まるが、上述したように廃棄ゲート電極26と廃棄電極27とに印加する電圧は一定に保つから、不要電荷の量は廃棄ゲート電極26に電圧を印加する時間の関数になる。本実施形態の構成では、ウェル12が光電変換部D1として機能するのはもちろんのこと、ウェル12には有効電荷が残留するからウェル12は電荷蓄積部D3としても機能する。また、廃棄用ウェル25と廃棄ゲート電極26と廃棄電極27とが電荷分離部D2として機能する。他の構成および動作は上述した実施形態と同様である。ただし、廃棄する電荷の量が時間の関数であって電圧ではないから、実施形態2、実施形態3のように環境光の受光光量に応じて廃棄する電荷の量を自動的に決定する構成は採用できない。
(実施形態9)
上述した各実施形態では、素子形成層11の主表面に配列した複数個の電極に印加する電圧を制御することにより、不要電荷を分離する構成を採用したが、本実施形態は、不要電荷の秤量を行う電荷分離部D2には電子の移動を制御する電極を設けず、受光出力を取り出すための電荷転送部に設けた転送制御電極31に印加する電圧を制御することにより、電荷転送部を電荷蓄積部D3として用いる例を示す。すなわち、上述した各実施形態では、CCDイメージセンサにおけるフレームトランスファ方式の電極構成と同様の電極配置を採用していたが、本実施形態では、CCDイメージセンサにおけるインターライントランスファ(IT)方式の電極構成と同様の電極配置を採用した例を示す。
図21に示すように、p形の素子形成層11はn形のサブストレート10の上に形成されており、素子形成層11の主表面側には、n+形のウェル12とn形の転送用ウェル32とがp+形の障壁ウェル33を介して配置される。転送用ウェル32は、IT方式のCCDイメージセンサと同様の構成を有し、転送用ウェル32の主表面には絶縁層34を介して転送制御電極31が配置される。また、転送用ウェル32は遮光膜35により覆われている。転送制御電極31は、図21の面に直交する方向に多数個配列され、電子を転送する際には従来周知のように各転送制御電極31に電圧を印加する順序を制御する。不要電荷の秤量には、転送制御電極31のほかに、サブストレート10にオーミックに接続されたドレイン電極36を併用する。また、ウェル12は光電変換部D1と電荷分離部D2とに兼用される。
本実施形態では、ウェル12には電極が設けられておらず、素子形成層11とウェル12とが異種導電形であることによって、図22(c)のように、ウェル12にポテンシャル井戸が形成される。障壁ウェル33はウェル12と転送用ウェル32との間にポテンシャル障壁B7を形成する。この状態において、転送用ウェル32の電子はすべて排出されているものとする。また、転送制御電極31には電圧を印加せず、ドレイン電極36には正極性の電圧(たとえば、5ボルト)を印加しておく。
光電変換部D1において光照射による電子が生成された後、転送制御電極31には比較的大きい正極性の電圧(たとえば、10ボルト)を印加する。障壁ウェル33に形成されているポテンシャル障壁B7は、転送制御電極31に印加された電圧が高いほどポテンシャルを下げる。転送制御電極31に電子の転送時の電圧よりも高い適宜の電圧を印加すれば、図22(d)のように、光照射によりウェル12に集積された電子の一部はポテンシャル障壁B7を越えて転送用ウェル32に流入する。ポテンシャル障壁B7の高さは転送制御電極31に印加した電圧によって決まるから、ウェル12には規定した一定量の電子が残留することになる。つまり、ウェル12は電荷分離部D2として機能し、転送用ウェル32は電荷蓄積部D3として機能する。
ウェル12に不要電荷を残し、転送用ウェル32に有効電荷が流入した時点で、転送制御電極31への電圧印加を停止し、ドレイン電極36には比較的高い正極性の電圧(たとえば、15ボルト)を印加する。この状態では、図22(e)のように、ポテンシャル障壁B7が高くなり、転送用ウェル32に形成されるポテンシャル井戸が浅くなる。つまり、転送用ウェル32に流入した有効電荷が電荷蓄積部D3に保持される。また、ウェル12に残留した不要電荷はドレイン電極36を通して廃棄される。
上述の動作によって、光照射により生成された電子のうち規定の一定量の電子を不要電荷として分離し、残された有効電荷を転送用ウェル32に残留させることができる。有効電荷は、転送制御電極31への印加電圧を制御し、CCDイメージセンサの垂直転送レジスタと同様の動作を行うことにより、図の面に直交する方向に転送することができる。他の構成および動作は上述した他の実施形態と同様である。
ところで、図21に示した本実施形態の構成の光検出素子と、変調信号により強度を変調した光を投光する発光源とを組み合せることによって対象空間の情報を検出する場合には、変調信号の位相の所定区間に対応する受光光量を抽出する必要がある。このような場合には、たとえば図23(a)のように、受光期間T1において、転送制御電極31には正極性の比較的高い電圧(たとえば、15ボルト)を印加して転送用ウェル32に深いポテンシャル井戸を形成することによって、光照射により光電変換部D1(ウェル12)で生成された電子が、転送用ウェル32に流れ込むようにしておき、図23(b)のように、廃棄電極36に印加する電圧を変調信号に同期させて高低2段階(たとえば、15ボルトと5ボルト)に変化させることにより、電子を廃棄する状態と、転送用ウェル32に形成されるポテンシャル井戸に電子を流入させる状態とを交互に作り出す。光電変換部D1で生成される電荷のうち受光出力に用いる電荷を取り出すタイミングにおいて、廃棄電極36に印加する電圧を低電圧にすれば、当該電荷を転送用ウェル32に流入させることができる。受光期間T1におけるポテンシャル井戸の変化を図22(a)(b)に示している。
上述の動作を行う受光期間において廃棄電極36に印加する電圧変化を多数回行った後には秤量期間T2に移行させる。秤量期間T2においては、まず転送用ウェル32におけるポテンシャル井戸を浅くするように転送制御電極31に負極性の電圧(たとえば、−5ボルト)を印加し、またウェル12から電子が廃棄されないように廃棄電極36に印加する電圧を比較的低くする(たとえば、5ボルト)。この関係によって、転送用ウェル32からウェル12に電子を戻すことができる。ウェル12に電子を戻した後に秤量する動作は上述した通りである。