JP2012070727A - トマト果実中の単位乾燥重量あたりの栄養成分含量を上昇させる方法 - Google Patents
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【課題】トマト果実中のアミノ酸、カリウム、カロテノイド、アスコルビン酸、ビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる方法を提供すること。
【解決手段】トマト果実中の単位乾燥重量あたりのアミノ酸含量及びカリウム含量を上昇させるには、トマトに対し、明期終了後、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射する。トマト果実中の単位乾燥重量あたりのカロテノイド含量、アスコルビン酸含量及びビタミンB6含量を上昇させるには、トマトに対し、明期終了後、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射する。
【選択図】図2
【解決手段】トマト果実中の単位乾燥重量あたりのアミノ酸含量及びカリウム含量を上昇させるには、トマトに対し、明期終了後、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射する。トマト果実中の単位乾燥重量あたりのカロテノイド含量、アスコルビン酸含量及びビタミンB6含量を上昇させるには、トマトに対し、明期終了後、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射する。
【選択図】図2
Description
本発明は、トマト果実中の単位乾燥重量あたりの栄養成分含量を上昇させる方法に関する。具体的には、トマト果実中のアミノ酸、カリウム、カロテノイド、アスコルビン酸、ビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる方法に関する。
近年、人工光を用いて植物を照射する栽培方法が試みられている。例えば、特許文献1に開示された方法では、太陽光が照射されない時間帯で、発光波長が700〜800nmの遠赤色光を所定の光量子束密度以上になるように長日植物に連続照射することにより、長日植物の開花と草丈の成長を促進させる。特許文献2に開示された方法では、植物を照射する光源に含まれる青色光、赤色光及び遠赤色光の強度を調整することで、植物の栄養成分含量を調整する。
また、特許文献3に開示された方法では、発光波長が700〜760nmの遠赤色光を成育中の植物に照射することにより、植物の可食部の増量を図っている。特許文献4に開示された方法では、温室内に栽培されたブドウに対し、無加温状態で開花、結実、収穫の第1期作過程の終了後、休眠打破剤を散布し加温と合わせて人工光による補光を行い、年間2期作を実現している。
植物の中でも、トマトはその果実を生食又は広範な料理に用いることができ、さらに、その果実中に種々の栄養素を含有するため人気がある。トマト果実中には各種のアミノ酸が含有されている。各種のアミノ酸それぞれが固有の生理活性機能を有しており、各種のアミノ酸を単位乾燥重量あたりのトマト果実中に多量に含有させることで、トマト果実の商品価値が高くなると考えられる。
また、ビタミンB6、カロテノイド、アスコルビン酸といったビタミンは健康上重要なビタミンである。したがって、これらのビタミンを単位乾燥重量あたりのトマト果実中に多量に含有させることも、トマト果実の商品価値を高くすると考えられる。また、カリウムは体内の浸透圧維持に働き、血圧上昇を抑制するという生理活性機能を有する。よって、カリウムを単位乾燥重量あたりのトマト果実中に多量に含有させることも、トマト果実の商品価値を高くすることができると考えられる。
そこで、本発明は、トマト果実中のアミノ酸、カリウム、カロテノイド、アスコルビン酸、ビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる方法を提供することを目的とする。
本発明の、単位乾燥重量あたりのトマト果実中のアミノ酸及びカリウムから選択される少なくとも一種以上の成分の含量を上昇させる方法は、トマトに対し、明期終了後、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射することを含む。また、本発明は、明期終了後、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射することによって単位乾燥重量あたりの果実中のアミノ酸及びカリウムから選択される少なくとも一種以上の成分の含量を上昇させる、トマトの栽培方法を提供する。
上記成分がアミノ酸を含む場合、該アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、イソロイシン、グルタミン酸、セリン、スレオニン及びアスパラギン酸からなる群から選択される少なくとも一種以上であることが好ましい。これらのアミノ酸は、上記特定の光を照射することによる単位乾燥重量あたりの含量の上昇率が特に高い傾向がある。また、これらのアミノ酸はそれぞれ固有の生理活性機能を有している。
本発明の、トマト果実中のカロテノイド、アスコルビン酸及びビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる方法は、トマトに対し、明期終了後、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射することを含む。また、本発明は、明期終了後、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射することによって果実中のカロテノイド、アスコルビン酸及びビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる、トマトの栽培方法を提供する。
本発明者らが、トマトへの特定波長の光の照射による影響を研究した結果、明期終了後、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射すると、トマト果実中の単位乾燥重量あたりの種々のアミノ酸含量及びカリウム含量が上昇することを発見した。また、明期終了後、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射すると、トマト果実中の単位乾燥重量あたりのカロテノイド含量、アスコルビン酸含量及びビタミンB6含量が上昇することを発見した。これらの発見をもとに本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、トマト果実中のアミノ酸、カリウム、カロテノイド、アスコルビン酸、ビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させることができる。
以下、適宜図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の方法を利用した栽培装置を示す構成図である。この図に示される栽培装置1は、トマト10を収容するための空間を形成した栽培室12と、栽培室12内に設置された主光源16と、補光用光源14と、タイマー付き電源18とを備える。
図2は、本発明の方法にかかる全体処理を示す流れ図である。主光源16の点灯開始(S1)から主光源16の点灯終了(S2)までを明期という。ここで、主光源16は、トマトの光合成に必要な光を含む光であって、かつ、トマトの光補償点以上の強度である光を照射することができる光源である。ここで、「トマトの光合成に必要な光」とは、青色光と赤色光を含む光、すなわち400〜700nmの間の波長の光を含む光であり、好ましくは420〜470nmの間の波長の青色光と625〜690nmの間の波長の赤色光とを含む。ここで、青色光は440〜450nmの間の波長の光であることがより好ましく、赤色光は640〜680nmの間の波長の光であることがより好ましい。トマトの光補償点(光合成によるCO2吸収速度と呼吸によるCO2放出速度が同じになる光の強さ)以上の強度の光とは、400nm〜700nmの波長を用い、1日の平均気温が27℃の時、光合成光量子束密度で、総光強度50μmol・m−2・s−1以上、好ましくは500μmol・m−2・s−1以上、より好ましくは1000μmol・m−2・s−1以上の強度の光である。
主光源16として、従来から用いられている光源を用いることができ、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザー光(LD)、蛍光灯、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプを単独で又は複数組み合わせて用いることができる。また、主光源16は栽培室12の外に設けられていてもよい。主光源16は、人工光源でなくてもよく、太陽光単独または太陽光を人工光源に組み合わせて用いてもよい。主光源16として太陽光を単独で用いる場合、明期とは日の出から日の入りまでを指す。明期の長さは、人工光源を用いる場合であっても、太陽光を用いる場合であっても、10時間〜16時間であることが好ましいが、この範囲より長くても短くても差し支えない。明期が終了した後、再び明期を開始するまでの時間を暗期という。すなわち、図2中、S2から2回目のS1までの間が暗期である。
補光用光源14からの光は、赤色光補光を行う場合、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光である。また、補光用光源14からの光は、遠赤色光補光を行う場合、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光である。本明細書において、特定波長域の光の光強度が最も強い光とは、該光を波長ごとに分割したとき、光強度を特定波長域で積分した値が、特定波長域以外の波長の光の光強度よりも高いことを意味する。好ましくは、補光用光源14からの光は、遠赤色光補光を行う場合、補光用光源14からの光の総光強度を100%としたときに、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が95%以上であり、より好ましくは98%以上であり、さらに好ましくは100%である。また、補光用光源14からの光は、赤色光補光を行う場合、補光用光源14からの光の総光強度を100%としたときに、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上であり、さらに好ましくは100%である。
明期終了後、赤色光補光を行なうと、収穫されるトマト果実中のカロテノイド、アスコルビン酸及びビタミンB6の単位乾燥重量あたりの含量が上昇する。したがって、トマト中の単位乾燥重量あたりのカロテノイド含量、アスコルビン酸含量及びビタミンB6含量を上昇させるためには、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射すればよい。ここで、カロテノイドとしては、例えば、カロテンやリコペン等のカロテン類や、キサントフィル類が挙げられ、好ましくはカロテン類である。また、カロテン類の中でもβカロテンやリコペンが好ましい。
明期終了後、遠赤色光補光を行なうと、収穫されるトマト果実中の単位乾燥重量あたりの種々のアミノ酸含量及びカリウム含量が上昇する。したがって、トマト中の単位乾燥重量あたりのアミノ酸やカリウムの含量を上昇させるためには、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射すればよい。ここで、アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファン、シスチン及びγ−アミノ酪酸等が挙げられる。この中でもアルギニン、リジン、ヒスチジン、イソロイシン、グルタミン酸、セリン、スレオニン及びアスパラギン酸が好ましい。赤色光補光と遠赤色補光とはどちらか一方のみを行なうことが好ましく、両方同時に行わないことが好ましい。
赤色光補光の光強度は、光補償点以上の光強度であってもよいが、光補償点以下の光強度であることが好ましい。赤色光補光で光補償点以下の光強度とは、光量子束密度で、50μmol・m−2・s−1以下であり、好ましくは40μmol・m−2・s−1以下である。また、遠赤色光補光の場合も、上記の赤色光照射時における光補償点に相当する光強度以下の光強度であることが好ましい。遠赤色光補光で光補償点に相当する光強度以下の光強度とは、放射束密度で、8.8W・m−2以下であることが好ましく、より好ましくは7W・m−2以下である。なお、光合成には光により励起される電子の数が寄与するため、光合成に用いられる光の波長域では、光の強度は光量子の量を基準に表すのが一般的であり、そのような波長域の光強度を測定する光量メーターは、通常、光強度を表示する単位として光量子束密度を採用している。赤色光(波長600〜700nm)は光合成に寄与するので、光合成に用いられる波長域の光強度を測定する光量メーターを測定に使用できる。したがって、上記数値範囲も光量子束密度を単位として記載している。一方、遠赤色光(波長700〜750nm)は、光合成に寄与しない波長域の光であるため、この波長域を測定できる光量メーターは、通常、光強度を表示する単位として、光量子束密度ではなく、放射束密度を採用している。したがって、上記数値範囲も放射束密度を単位として記載している。光量子束密度と放射束密度とは公知の計算式で互いに換算可能であり、赤色光補光の場合、上記数値範囲を放射束密度に換算した数値範囲の強度の光を好ましく用いることができ、遠赤色光補光の場合、上記数値範囲を光量子束密度に換算した数値範囲の強度の光を好ましく用いることができる。
補光用光源14として、従来から用いられている光源を用いることができ、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザー光(LD)、蛍光灯、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプを用いることができる。図1中、主光源16と補光用光源14とを別々に設けてもよいし、出力波長を調節して主光源16を補光用光源14として併用してもよい。
赤色光補光又は遠赤色光補光を、暗期の間に行い、明期の間には行わない場合、図2に示すように、主光源の点灯終了(S2)から次の主光源点灯開始(S1)までの間に、補光用光源の点灯を開始し(S3)、補光用光源の点灯を終了する(S4)。暗期である所定時間が経過した後、再び主光源の点灯を開始して(S1)、明期を開始する。主光源及び補光用光源の点灯時間は、タイマー付き電源18によって制御することができる。赤色光補光又は遠赤色光補光の時間は、特に限定されず、例えば、30分以下等の短い時間であっても本発明の方法による効果が得られる。
図3は、本発明の方法の別の実施形態にかかる全体処理の流れ図である。本発明の方法は、明期終了後に赤色光又は遠赤色光が照射されていればよく、明期の間に赤色光補光又は遠赤色光補光を開始することも可能である。明期の間に赤色光補光又は遠赤色光補光を開始する場合は、図3に示すように、主光源の点灯開始(S1)の後、補光用光源の点灯を開始し(S3)、S3の後、主光源の点灯を終了する(S2)。S2の後、補光用光源の点灯を終了する(S4)。暗期である所定時間が経過した後、再び主光源の点灯を開始して(S1)、明期を開始する。
本発明のトマトの栽培方法は、明期終了後、赤色光補光又は遠赤色補光を行うこと以外は、トマトの通常の栽培方法と同様の栽培方法を用いることができる。すなわち、潅水や施肥等は通常の栽培方法と同様の条件で行うことができる。
(実施例1)
トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区とコントロール区との2区で、それぞれ表1に示す栽培条件で、明期12時間、暗期12時間の周期で栽培した。明期として、総光強度500μmol・m−2・s−1の人工光(青色LED光:50μmol・m−2・s−1、赤色LD光:450μmol・m−2・s−1)を照射した。赤色光照射区にはさらに、赤色光(赤色LD光:40μmol・m−2・s−1以下の光強度)を、明期終了後、暗期の最初の1時間照射する赤色光補光を行なった。実施例1では、赤色光の光強度を40μmol・m−2・s−1以下とした。この赤色光補光を除いて、暗期には光を照射しなかった。照射した光の波長ピークはそれぞれ、青色LED光が465nm、赤色LD光が680nmである。光強度は光量子メーターLI−250A(LI−COR社)を用いて測定した。
トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区とコントロール区との2区で、それぞれ表1に示す栽培条件で、明期12時間、暗期12時間の周期で栽培した。明期として、総光強度500μmol・m−2・s−1の人工光(青色LED光:50μmol・m−2・s−1、赤色LD光:450μmol・m−2・s−1)を照射した。赤色光照射区にはさらに、赤色光(赤色LD光:40μmol・m−2・s−1以下の光強度)を、明期終了後、暗期の最初の1時間照射する赤色光補光を行なった。実施例1では、赤色光の光強度を40μmol・m−2・s−1以下とした。この赤色光補光を除いて、暗期には光を照射しなかった。照射した光の波長ピークはそれぞれ、青色LED光が465nm、赤色LD光が680nmである。光強度は光量子メーターLI−250A(LI−COR社)を用いて測定した。
補光照射実験開始から99〜102日後、結実して赤くなったトマトを収穫し、そのビタミンA、リコペン、総アスコルビン酸、遊離グルタミン酸、滴定酸度(クエン酸換算)、ポリフェノールの単位乾燥重量あたりの含量をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。表2には、コントロール区及び赤色光照射区のトマト果実の乾燥試料100gあたりのそれぞれの成分の含量と、コントロール区のトマト果実に対する赤色光照射区のトマト果実の各成分の増減率を示す。
表2に示すように、赤色光照射区のトマト果実では、コントロール区のトマト果実に対して、単位乾燥重量あたりのビタミンA及びリコペンといったカロテノイド含量が高かった。また、総アスコルビン酸含量も高かった。ポリフェノール含量についてはどちらも同じ値となった。
(実施例2)
トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区、遠赤色光照射区、及びコントロール区の3区で、それぞれ表1に示す栽培条件で、明期12時間、暗期12時間の周期で栽培した。明期として、実施例1と同様に、総光強度500μmol・m−2・s−1の人工光(青色LED光:50μmol・m−2・s−1、赤色LD光:450μmol・m−2・s−1)を照射した。赤色光照射区にはさらに、赤色光(赤色LED光:放射束密度7W・m−2以下の光強度)を、明期終了後、暗期の最初の30分間照射する赤色光補光を行なった。遠赤色光照射区には、遠赤色光(遠赤色LED光:放射束密度7W・m−2以下の光強度)を、明期終了後、暗期の最初の30分間照射する遠赤色光補光を行なった。これらの補光を除いて、暗期には光を照射しなかった。照射した光の波長ピークはそれぞれ、青色LED光が465nm、赤色LD光が680nm、赤色LED光が660nm、遠赤色LED光が735nmである。なお、放射束密度7W・m−2の光強度は、実施例1で照射した赤色LD光の、光強度40μmol・m−2・s−1に相当する光強度である。実施例2では、パワーメーターLaserCheck(COHERENT社)を用いて光強度を測定した。
トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区、遠赤色光照射区、及びコントロール区の3区で、それぞれ表1に示す栽培条件で、明期12時間、暗期12時間の周期で栽培した。明期として、実施例1と同様に、総光強度500μmol・m−2・s−1の人工光(青色LED光:50μmol・m−2・s−1、赤色LD光:450μmol・m−2・s−1)を照射した。赤色光照射区にはさらに、赤色光(赤色LED光:放射束密度7W・m−2以下の光強度)を、明期終了後、暗期の最初の30分間照射する赤色光補光を行なった。遠赤色光照射区には、遠赤色光(遠赤色LED光:放射束密度7W・m−2以下の光強度)を、明期終了後、暗期の最初の30分間照射する遠赤色光補光を行なった。これらの補光を除いて、暗期には光を照射しなかった。照射した光の波長ピークはそれぞれ、青色LED光が465nm、赤色LD光が680nm、赤色LED光が660nm、遠赤色LED光が735nmである。なお、放射束密度7W・m−2の光強度は、実施例1で照射した赤色LD光の、光強度40μmol・m−2・s−1に相当する光強度である。実施例2では、パワーメーターLaserCheck(COHERENT社)を用いて光強度を測定した。
補光照射実験開始から99〜103日後、結実して赤くなったトマトを収穫し、そのビタミンA、リコペン、総アスコルビン酸及び遊離グルタミン酸の単位乾燥重量あたりの含量をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。表3には、コントロール区、赤色光照射区及び遠赤色光照射区のトマト果実の乾燥試料100gあたりのそれぞれの成分の含量と、コントロール区のトマト果実に対する赤色光照射区と遠赤色光照射区のトマト果実の各成分の増減率をそれぞれ示す。
表3に示すように、赤色光照射区では、LED光を使った場合もLD光を使った実施例1と同様の傾向を示した。すなわち、コントロール区のトマト果実に対して、赤色光照射区のトマト果実は、単位乾燥重量あたりのビタミンA及びリコペンといったカロテノイド含量や総アスコルビン酸含量が高くなった。遠赤色光照射区のトマト果実は、コントロール区のトマト果実に対して、単位乾燥重量あたりの遊離グルタミン酸の含量が顕著に高くなり、ビタミンA含量及び総アスコルビン酸含量が低くなった。リコペン含量はコントロール区と同程度であった。
(実施例3)
含量測定する成分の種類を増やしたこと以外は、実施例2と同様に、補光照射実験をおこなった。すなわち、トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区、遠赤色光照射区及びコントロール区の3区で栽培し、実施例2と同様の条件で赤色光照射区には赤色光補光を行い、遠赤色光照射区には遠赤色光補光を行った。
含量測定する成分の種類を増やしたこと以外は、実施例2と同様に、補光照射実験をおこなった。すなわち、トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区、遠赤色光照射区及びコントロール区の3区で栽培し、実施例2と同様の条件で赤色光照射区には赤色光補光を行い、遠赤色光照射区には遠赤色光補光を行った。
補光照射実験開始から95〜100日後、結実して赤くなったトマトを収穫し、そのリコペン、カリウム、葉酸、ビタミンB6、遊離アミノ酸(遊離アルギニン、遊離リジン、遊離ヒスチジン、遊離イソロイシン、遊離グルタミン酸、遊離セリン、遊離スレオニン、遊離アスパラギン酸)の単位乾燥重量あたりの含量をそれぞれ測定した。結果を表4に示す。表4には、コントロール区、赤色光照射区及び遠赤色光照射区のトマト果実の乾燥試料100gあたりのそれぞれの成分の含量と、コントロール区のトマト果実に対する赤色光照射区と遠赤色光照射区のトマト果実の各成分の増減率をそれぞれ示す。表4中、アミノ酸の含量は遊離アミノ酸の含量である。
表4に示すように、実施例1、2と同様に、単位乾燥重量あたりのリコペン含量は赤色光照射区でコントロール区での含量よりも高くなった。カリウム含量は、遠赤色光照射区でコントロール区での含量よりも高くなった。また、ビタミンB6含量は赤色光照射区でコントロール区の含量よりも高くなり、遠赤色光照射区でコントロール区の含量よりも低くなった。各種アミノ酸については、多くのアミノ酸について、遠赤色光照射区でコントロール区よりも含量が高くなる傾向が見られた。ただし、イソロイシンは、コントロール区や赤色光照射区では含量が低すぎて検出できず(乾燥試料100gあたりの含量が1mg未満)、遠赤色光照射区での含量のみ検出できた。グルタミン酸については、実施例2の結果と同様に遠赤色光照射区ではコントロール区と比べて大幅に含量が高くなった。
(実施例4)
リコペン含量を測定しなかったこと以外は、実施例3と同様に、補光照射実験をおこなった。すなわち、トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区、遠赤色光照射区及びコントロール区の3区で栽培し、実施例3と同様の条件で赤色光照射区には赤色光補光を行い、遠赤色光照射区には遠赤色光補光を行った。
リコペン含量を測定しなかったこと以外は、実施例3と同様に、補光照射実験をおこなった。すなわち、トマト(品種:桃太郎)を、赤色光照射区、遠赤色光照射区及びコントロール区の3区で栽培し、実施例3と同様の条件で赤色光照射区には赤色光補光を行い、遠赤色光照射区には遠赤色光補光を行った。
補光照射実験開始から91〜95日後、結実して赤くなったトマトを収穫し、そのカリウム、葉酸、ビタミンB6、遊離アミノ酸(遊離アルギニン、遊離リジン、遊離ヒスチジン、遊離イソロイシン、遊離グルタミン酸、遊離セリン、遊離スレオニン、遊離アスパラギン酸)の単位乾燥重量あたりの含量をそれぞれ測定した。結果を表5に示す。表5には、コントロール区、赤色光照射区及び遠赤色光照射区のトマト果実の乾燥試料100gあたりのそれぞれの成分の含量と、コントロール区のトマト果実に対する赤色光照射区と遠赤色光照射区のトマト果実の各成分の増減率をそれぞれ示す。表5中、アミノ酸の含量は遊離アミノ酸の含量である。
表5に示すように、実施例3と同様の傾向の結果が得られた。単位乾燥重量あたりのカリウム含量は、遠赤色光照射区でコントロール区での含量よりも高くなった。また、ビタミンB6含量は赤色光照射区でコントロール区の含量よりも高くなり、遠赤色光照射区でコントロール区の含量よりも低くなった。各種アミノ酸については、ほとんどのアミノ酸について、遠赤色光照射区でコントロール区よりも含量が高くなる傾向が見られた。
本発明によれば、目的に応じて、トマト果実中の単位乾燥重量あたりの有用な成分含量を制御することが可能となり、トマトの商品価値を高くすることができる。しかも本発明の方法では農薬を使わなくてもよいためより安全である。
1・・・栽培装置、12・・・栽培室、10・・・トマト、14・・・補光用光源、16・・・主光源、18・・・タイマー付き電源。
Claims (6)
- トマトに対し、明期終了後、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射することを含む、トマト果実中のアミノ酸及びカリウムから選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる方法。
- 明期終了後、700〜750nmの波長域の遠赤色光の光強度が最も強い光を照射することによって、果実中のアミノ酸及びカリウムから選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる、トマトの栽培方法。
- 前記成分がアミノ酸を含み、前記アミノ酸がアルギニン、リジン、ヒスチジン、イソロイシン、グルタミン酸、セリン、スレオニン及びアスパラギン酸からなる群から選択される少なくとも一種以上である、請求項1に記載の方法。
- 前記成分がアミノ酸を含み、前記アミノ酸がアルギニン、リジン、ヒスチジン、イソロイシン、グルタミン酸、セリン、スレオニン及びアスパラギン酸からなる群から選択される少なくとも一種以上である、請求項2に記載の方法。
- トマトに対し、明期終了後、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射することを含む、トマト果実中のカロテノイド、アスコルビン酸及びビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる方法。
- 明期終了後、600〜700nmの波長域の赤色光の光強度が最も強い光を照射することによって、果実中のカロテノイド、アスコルビン酸及びビタミンB6からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分の単位乾燥重量あたりの含量を上昇させる、トマトの栽培方法。
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JP2011097344A JP2012070727A (ja) | 2010-09-03 | 2011-04-25 | トマト果実中の単位乾燥重量あたりの栄養成分含量を上昇させる方法 |
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