JP2012068163A - ボール計測装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アンテナ12およびドップラーセンサ14を用いて計測したドップラー信号Sdの信号強度分布データPを得ると共に、予め実測され得られている演算用速度V0と移動速度Vαとの相関関係に基づいて、信号強度分布データPから算出される演算用速度V0から移動速度Vαを算出し、予め実測され得られている信号強度分布データPとスピン量SPとの相関関係に基づいて、信号強度分布データPからスピン量SPを算出する。
【選択図】図2
Description
例えば、これら速度計測装置として、ドップラーセンサから出力されるドップラー信号をFFT(高速フーリエ変換)などを用いて解析することにより、一定期間における移動体の平均速度を求めるものが提案されている。
また、移動体の速度を測定し続け、先に記憶された速度よりも速い任意の測定速度によって最高速度の記憶値を置き換えることで、速度の最大値を求めるもの(特許文献1参照)、あるいは、ドップラー信号の周期データをメモリに蓄積しておき、メモリに蓄積された周期データに基づいて移動体の最高速度を求める方法が開示されている(特許文献2参照)。
一方、ドップラーセンサから出力されるドップラー信号を解析することにより、打撃されたゴルフボールの移動速度に加えてスピン量をも計測する計測装置が提供されている(例えば、TrackMan(TrackMan A/S社の登録商標))。
ところが、この計測装置では、スピン量を算出するに足るドップラー信号のデータとして、打撃されたゴルフボールが100m単位で空中を飛んでいる期間にわたって長時間計測する必要がある。
したがって、ゴルフボールからの反射波を確実に受信する必要上、装置からの送信波の出力を高いものとする必要となるため、速度計測装置が大掛かりで高価なものとなる不利がある。
また、ゴルフシミュレータなどのように室内において打撃したゴルフボールの挙動を計測する様な用途では、ゴルフボールの飛距離はせいぜい数mという短距離である。したがって、上述したような大掛かりな速度計測装置ではスピン量を計測するに足るデータ量を得ることができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で球技用ボールの挙動を表わすさまざまなデータを的確に計測することができるボール計測装置およびボール計測方法を提供することにある。
また本発明のボール計測方法は、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナを互いに離間して配置し、前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサを設け、前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部を設け、前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記球技用ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの演算用速度を算出する速度演算部を設け、前記第1乃至第nの演算用速度と前記球技用ボールの移動速度との相関関係と、前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係とをそれぞれ予め求めておき、前記球技用ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの演算用速度から前記移動速度を算出し、前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記第1乃至第nの信号強度分布データから前記スピン量を算出することを特徴とする。
また本発明のボール計測装置は、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するドップラーセンサと、前記ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部と、前記信号強度分布データに基づいて、前記球技用ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて演算用速度を算出する速度演算部と、予め実測され得られている前記演算用速度と予め実測され得られている前記球技用ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された演算用速度から前記移動速度を算出する移動速度演算部と、予め実測され得られている前記信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記信号強度分布データから前記スピン量を算出するスピン量演算部とを備えることを特徴とする。
また本発明のボール計測装置は、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する互いに離間して配置された第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナと、前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して設けられ、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサと、前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部と、前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記球技用ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの演算用速度を算出する速度演算部と、予め実測され得られている前記第1乃至第nの演算用速度と予め実測され得られている前記球技用ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの演算用速度から前記移動速度を算出する移動速度演算部と、予め実測され得られている前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記第1乃至第nの信号強度分布データから前記スピン量を算出するスピン量演算部とを備えることを特徴とする。
また、本発明のボール計測方法は、電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有する球技用ボールと、アンテナと、ドップラーセンサとを設け、前記アンテナは、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて、前記球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するように構成され、前記ドップラーセンサは、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するように構成され、前記ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成し、前記信号強度分布データに基づいて前記球技用ボールの移動速度および前記球技用ボールのスピン量を算出することを特徴とする。
また、本発明のボール計測装置は、電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有する球技用ボールと、アンテナと、ドップラーセンサと、演算手段とを備えるボール計測装置であって、前記アンテナは、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて、前記球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するように構成され、前記ドップラーセンサは、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するように構成され、前記演算手段は、前記ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成し、前記信号強度分布データに基づいて前記球技用ボールの移動速度および前記球技用ボールのスピン量を算出することを特徴とする。
また、本発明によれば、電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が第1領域よりも低い第2領域を有する球技用ボールを用いることにより、送信波の送信出力の低出力化を図れ、しかも移動速度およびスピン量を的確に計測する上でも有利となる。
以下、本発明の実施の形態のボール計測装置と共にボール計測方法について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態のボール計測装置10は、アンテナ12と、ドップラーセンサ14と、マイク16と、トリガ信号発生部18と、計測処理部20と、表示部22と、操作部24などを含んで構成されている。
本実施の形態では、アンテナ12とドップラーセンサ14とは不図示のケースに収容保持されている。
また、トリガ信号発生部18と、計測処理部20と、表示部22と、操作部24とは、不図示の筐体に組み込まれている。
ドップラーセンサ14と計測処理部20とは不図示の接続ケーブルを介して接続され、マイク16と計測処理部20とは不図示の接続ケーブルを介して接続されている。
なお、図1において符号2は球技用ボールとしてのゴルフボール、4はゴルフクラブヘッド、6はシャフト、8はゴルフクラブを示す。
ドップラー信号Sdとは、前記送信信号の周波数F1と前記受信信号の周波数F2との差分の周波数F1−F2で定義されるドップラー周波数Fdを有する信号である。
ドップラーセンサ14は、市販されている種々のものが使用可能である。
なお、前記の送信信号としては、例えば、24GHzのマイクロ波が使用可能であり、ドップラー信号Sdを得られるものであれば送信信号の周波数は限定されない。
トリガ信号発生部18は、マイク16によって検出された音声信号の振幅が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測処理部20に供給するものである。
トリガ信号trgは、計測処理部20に対して後述するデータ処理の開始を指示するものである。
なお、上述したようにトリガ信号発生部18が単に打撃音に応じてトリガ信号trgを生成するものである場合、ボール計測装置10の設置環境によっては以下の不都合が生じることが懸念される。
すなわち、ボール計測装置10の設置環境が例えば複数の打席を備えるゴルフ練習場である場合、ボール計測装置10の測定対象となる打席以外の周囲の打席の打撃音によってもトリガ信号trgが生成され、ボール計測装置10の誤動作が発生することが懸念される。
したがって、本実施の形態では、以下のように構成することで上記誤動作の防止を図っている。
トリガ信号発生部18を、マイク16からの音声信号に加えて、ドップラーセンサ14からのドップラー信号Sdを入力する。
そして、トリガ信号発生部18は、ドップラー信号Sdを受信し、かつ、打撃音の音声信号が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測処理部20に供給する。この場合、当初発生するドップラー信号Sdはゴルフクラブヘッド4の動きを検出したものとなる。
したがって、トリガ信号発生部18は、ゴルフクラブ4の動きと打撃音の両方でトリガ信号trgを生成するため、ボール計測装置10の誤動作を的確に防止する上で有利となる。
トリガ信号発生部18はトリガ信号trgを生成できれば、マイク16以外のセンサを用いても良い。例えば、予め定められた特定の位置(例えば基準位置O)を通過するゴルフクラブヘッド4を検出する光センサを設け、該光センサの検出信号に基づいてトリガ信号発生部18がトリガ信号trgを生成するなど任意である。しかしながら、光センサは設置する位置や方向を厳密に調整する必要があることから、本実施の形態のようにマイク16を用いる方が設置作業の簡素化を図る上で有利となる。
本実施の形態では、計測処理部20は、マイクロコンピュータ21によって構成されている。
マイクロコンピュータ21は、CPU21Aと、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM21B、RAM21C、インターフェース21D、表示用ドライバ21Eなどを含んで構成されている。
ROM21BはCPU21Aが実行するゴルフボールの移動速度およびスピン量を算出するための制御プログラムなどを格納し、RAM21Cはワーキングエリアを提供するものである。
インターフェース21Dは、ドップラー信号Sdを入力してCPU21Aに供給し、また、操作部24からの操作信号を受け付けてCPU21Aに供給するものである。
表示用ドライバ21EはCPU21Aの制御に基づいて表示部22を駆動するものである。
マイクロコンピュータ21は、機能的には、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動速度演算部36と、スピン量演算部38とを含んで構成されている。なお、本実施の形態では、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動速度演算部36と、スピン量演算部38とによって特許請求の範囲の演算手段が構成されている。
また、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動速度演算部36と、スピン量演算部38は、CPU21Aが前記制御プログラムを実行することで実現されるものであるが、これらの部分は、回路等のハードウェアで構成されたものであってもよい。
蓄積部30は、例えば、ボール計測装置10の電源が投入されると同時にサンプリング動作を開始する。
図3はゴルフクラブヘッド4によってゴルフボール2を打撃した際のドップラー信号Sdの一例を示す線図であり、横軸に時間t(sec)、縦軸に振幅(任意単位)をとっている。
図3において、初めの大きな振幅を呈する波形部分がゴルフクラブヘッド4によって生じるドップラー信号の部分を示し、その後に続く波形部分が打撃されたゴルフゴール2によって生じるドップラー信号の部分を示している。
言い換えると、信号強度分布データ生成部32は、ドップラーセンサ14から得られたドップラー信号Sdを周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データPを生成する。
本実施の形態では、信号強度分布データ生成部32は、蓄積部30に蓄積されたトリガ信号trgに基づいて、蓄積部30に蓄積された時系列データであるドップラー信号Sdのサンプリングデータを予め定められた区間に特定して信号強度分布データPの生成を実施する。ここで、ドップラー信号Sdのサンプリングデータの区間は単一のトリガ信号trgに基づいて同期して特定される。
言い換えると、信号強度分布データ生成部32は、垂れ流し方式で蓄積されているドップラー信号Sdのサンプリングデータのうち、ゴルフボール2が打撃された後の区間におけるサンプリングデータを特定して信号強度分布データPの生成を実施する。
すなわち、信号強度分布データ生成部32は、トリガ信号trgの検出時点を基準時点として、基準時点から数えてa個目までのサンプリングデータを除外し、a+1個目からb個目(a<b)までのサンプリングデータを特定して信号強度分布データPの生成を実施する。
この場合、a+1個目からb個目(a<b)までのサンプリングデータに、ゴルフクラブヘッド4による影響を受けたデータが含まれないように、上記の数値a、bを設定する。
数値a、bは、実際にゴルフクラブ6がスウィングされた場合のゴルフクラブヘッド4のスピードのばらつきを考慮して設定すればよい。
あるいは、トリガ信号trgの検出時点を基準時点として、経過時間に基づいてゴルフクラブヘッドによる影響を受けたデータが含まれないように、サンプリングデータを予め定められた区間に特定してもよい。
また、上記の数値a、bの設定は、基準位置Oに対してゴルフボール2が約1m移動した時点前後におけるサンプリングデータが得られるにように設定される。この理由は、ゴルフクラブヘッド4で打撃されたゴルフボール2が1m前後移動した時点における移動速度の変化がほぼ無視できるからである。
そこで、本実施の形態では、信号強度分布データ生成部32は、信号強度分布データPを構成する信号強度Psについて移動平均を取る処理を実施することによりノイズの影響を抑制した信号強度分布データPを得るようにしている。
各信号強度分布データPからドップラー周波数成分を検出する方法としては以下の手順が例示される。
(1)信号強度分布データPを構成する信号強度のデータについて移動平均を取ることによってノイズの影響を抑制した信号強度分布データPを得る。
(2)移動平均を取った信号強度分布データPにおいて信号強度のピーク値、あるいは、信号強度の山の中央値に対応する周波数をドップラー周波数成分(ドップラー周波数)として検出する。
なお、ドップラー周波数成分の検出方法は、各信号強度分布データPに含まれるノイズの影響を抑制し、ドップラー周波数成分を正確かつ安定して検出できればよいのであり、上記の手順に限定されるものではない。
従来から知られているように、ドップラー周波数Fdは式(1)で表される。
Fd=F1−F2=2・V・F1/c (1)
ただし、V:ゴルフボール2の速度、c:光速(3・108m/s)
したがって、式(1)をVについて解くと、式(2)なる。
V=c・Fd/(2・F1) (2)
すなわち、ゴルフボール22の速度Vは、ドップラー周波数Fdに比例することになる。
したがって、ドップラー信号Sdからドップラー周波数Fdの周波数成分を検出し、検出したドップラー周波数成分から式(2)に基づいてゴルフボール2の速度Vを求めることができる。
ところで、式(2)によって得られるゴルフボール2の速度Vは、アンテナの指向性を示す仮想軸と一致する方向の速度成分である。
したがって、ゴルフボール2の移動軌跡がアンテナの指向性を示す仮想軸に対して外れるほど式(2)によって得られるゴルフボール2の移動速度の誤差が増大する傾向となる。
そこで、本発明では、アンテナ12を用いて得られた速度Vを演算用速度V0とし、この演算用速度V0と、実測されたゴルフボール2の移動速度Vαとの間に相関関係があることに着目した。
すなわち、予め上述した2つの相関関係を取得しておけば、それら2つの相関関係に基づいて演算用速度V0からゴルフボール2の移動速度を求めることが可能となる。
ゴルフボール2の表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が90度に近い表面の部分である第1部分Aでは送信波W1が効率よく反射され、したがって、第1部分Aでは反射波W2の強度が高い。
一方、ゴルフボールの表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が0度に近い表面の部分である第2部分B、第3部分Cでは送信波W1が効率よく反射されず、したがって、第2、第3部分B、Cでは反射波W2の強度が低い。
第2部分Bは、ゴルフボール2のスピンによって移動する方向とゴルフボールの移動方向とが反対向きとなる部分である。
第3部分Cは、ゴルフボール2のスピンによって移動する方向とゴルフボールの移動方向とが同じ向きとなる部分である。
すると、以下の式が成立する。
Va=Vα (3)
Vb=Va−ωr (4)
Vc=Vb+ωr (5)
(ただし、Vαはゴルフボール2の移動速度、ωは角速度(rad/s)、rはゴルフボール2の半径)
したがって、原理的には、式(3)に基づいて第1部分速度Vaからゴルフボール2の移動速度Vαを算出でき、式(4)または式(5)に基づいて、第2、第3部分速度Vb,Vcから角速度ωが求められるので、角速度ωからスピン量を算出できることになる。
しかしながら、本実施の形態では、上記の式に基づいて移動速度Vα、スピン量を算出するのではなく、以下に説明するように、ドップラー信号Sdを周波数解析することによって周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データPを生成し、この信号強度分布データPから移動速度Vα、スピン量を求めるようにした。
横軸は時間t(ms)、縦軸はドップラー周波数Fd(kHz)およびゴルフボール2の速度V(m/s)を示す。
このような線図は、例えば、ドップラー信号Sdをサンプリングしてデジタルオシロスコープに取り込んでデジタルデータに変換し、該デジタルデータをパーソナルコンピュータなどを用いてウェーブレット解析、あるいは、連続FFT解析することで得られる。
したがって、符号DAで示す周波数分布は、信号強度が強く、第1部分速度Vaに対応する部分である。
符号DBで示す周波数分布は、周波数分布DAよりも信号強度が低く、第2部分速度Vbに対応する部分である。
符号DCで示す周波数分布は、周波数分布DAよりも信号強度が低く、第3部分速度Vcに対応する部分である。
図6において横軸は速度V(m/s)、縦軸は信号強度Ps(任意単位)である。なお、横軸の速度Vはドップラー信号Sdの周波数に比例している。
図中細線は信号強度分布データPの実測値を表わし、太線は信号強度分布データPの実測値の移動平均を示す。
すなわち、信号強度分布データPの実測値は、測定時に含まれるノイズの影響を受けて大きく変動しているため、移動平均をとることによってノイズの影響を抑制した信号強度分布データPを得ている。
図6から明らかなように、信号強度分布データPは、信号強度Psが最大となる1つの最大値を有し、最大値から離れるほど信号強度が次第に低下しやがてゼロとなる単一の山形を呈している。
ここで、信号強度分布データPの山、すなわち、信号強度Psの最大値Dmaxが第1部分速度Vaの値に対応している。言い換えると、信号強度Psの最大値Dmaxが対応するドップラー周波数の値が第1部分速度Vaの値に対応している。
したがって、最大値Dmaxに対応するドップラー周波数が高いほど、第1部分速度Va、すなわち、ゴルフボール2の移動速度が高いことになる。
また、信号強度分布データPの山の幅は、第2部分速度Vbと第3部分速度Vcの差分ΔV(速度幅)に比例する。
したがって、第2部分速度Vbと第3部分速度Vcの差分ΔVが小さいほどスピン量が小さく、したがって、この差分ΔVがゼロならばスピン量もゼロとなる。また、第2部分速度Vbと第3部分速度Vcの差分ΔVが大きいほどスピン量が大きいことになる。
Vc−Vb=(Va+ωr)−(Va−ωr)=2ωr (6)
したがって、(6)式から明らかなように、信号強度分布データPの山の幅に基づいてスピン量を算出することができる。
ここで、山の幅は次のように定義することができる。
すなわち、信号強度分布データPの山の幅は、信号強度信号強度Psの閾値DtをDmax・N(ただし0<N<1)とした場合、信号強度分布データPのうち信号強度Psが閾値Dtとなる部分の幅とする。
図6では、Dt=Dmax・10%と、Dt=Dmax・50%とを例示しているが、閾値Dtは山の幅を安定して計測できる値に設定すればよい。
したがって、図6に示すように、ドップラー信号Sdの信号強度分布データPを求めることにより、この信号強度分布データPから移動速度Vα、スピン量SPを容易に求めることが可能となる。
ところで、前述したように第1乃至第3部分速度Va、Vb,Vcは、厳密に言うとアンテナの指向性を示す仮想軸と一致する方向の速度成分である。
したがって、ゴルフボール2の移動軌跡がアンテナの指向性を示す仮想軸に対して外れるほど式(6)によって得られるゴルフボール2のスピン量SPの誤差が増大する傾向となる。
そこで、本発明では、アンテナ12を用いて得られた信号強度分布Psすなわち信号強度分布データPの山の幅と、実測されたゴルフボール2のスピン量SPとの間に相関関係があることに着目した。
すなわち、予め上述した2つの相関関係を取得しておけば、それら2つの相関関係に基づいて信号強度分布データPの山の幅からゴルフボール2のスピン量SPを求めることが可能となる。
なお、本明細書において、ゴルフボール2の移動速度Vαは、ゴルフボール2の移動方向に沿ったゴルフボール2の速度、すなわちゴルフボール2の3次元速度をいう。
そして、移動体の移動速度を高精度に計測可能な基準計測器によってゴルフボール2の移動速度Vαを計測し、移動速度Vαの実測データを取得する。また、移動体のスピン量を高精度に計測可能な基準計測器によってゴルフボール2のスピン量SPを計測し、スピン量SPの実測データを取得する。
移動体の移動速度を計測する基準計測器として、例えば、特許第4104384号に開示されているような従来公知のさまざまな測定装置が使用可能である。また、スピン量SPを計測する基準計測器として、高速度カメラなどを用いた従来公知のさまざまな測定装置が使用可能である。
また、移動速度Vαの計測と同時に、本実施の形態のボール計測装置10を用いることにより、速度演算部34によって演算用速度V0を取得する。すなわち、移動速度Vαの実測データに対応する演算用速度V0を取得する。また、スピン量SPの計測と同時に、本実施の形態のボール計測装置10を用いることにより、信号強度分布データ生成部32によって信号強度分布Spを取得する。すなわち、スピン量SPの実測データに対応する信号強度分布データPの山の幅を取得する。
基準測定器で計測した移動速度Vαの実測データと、演算用速度V0との相関関係に基づいて移動速度算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、移動速度Vαと、演算用速度V0との関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによって移動速度Vαを演算用速度V0の関数(多項式)によって表わした相関式を求める。なお、計測装置10は、相関式の算出を行う機能を備える必要はなく、相関式の算出は、ボール計測装置10とは別に設けられたコンピュータを用いて行うなど任意である。
すなわち、このようにして求められた相関式によって移動速度Vαと演算用速度V0との関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、このようにして求めた相関式を用いることにより、演算用速度V0から移動速度Vαを求めることが可能となる。
本実施の形態では、移動速度演算部38は上記の相関式を用いることで演算用速度V0からゴルフボール2の移動速度Vαを算出する。
したがって、本実施の形態では、移動速度演算部38による移動速度の算出は、予め実測され得られている演算用速度V0と予め実測され得られているゴルフボール2の移動速度との相関関係を示す移動速度算出用の相関式に基づいてなされる。
なお、上記のような相関式に代えて、相関式によって示される特性線のデータを移動速度算出用のマップとして記憶しておき、マップを用いて移動速度Vαを算出してもよく、それらマップをマイクロコンピュータのメモリ、例えば、ROMに設けるなど任意である。
基準測定器で計測したスピン量SPの実測データと、信号強度分布Sp(信号強度分布データPの山の幅)との相関関係に基づいてスピン量算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、スピン量SPと、信号強度分布データPの山の幅との関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによってスピン量SPを信号強度分布データPの山の幅の関数(多項式)によって表わした相関式を求める。
すなわち、このようにして求められた相関式によってスピン量SPと信号強度分布データPの山の幅との関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、このようにして求めた相関式を用いることにより、信号強度分布データPの山の幅からスピン量SPを求めることが可能となる。
本実施の形態では、スピン量SP演算部38は上記の相関式を用いることで信号強度分布データPの山の幅からゴルフボール2のスピン量SPを算出する。
したがって、本実施の形態では、スピン量演算部38によるスピン量SPの算出は、予め実測され得られている信号強度分布データPの山の幅と予め実測され得られているゴルフボール2のスピン量SPとの相関関係を示すスピン量算出用の相関式に基づいてなされる。
なお、移動速度演算手段36と同様に、上記のような相関式に代えて、相関式によって示される特性線のデータをスピン量算出用のマップとして記憶しておき、マップを用いてスピン量SPを算出してもよい。
表示部22は文字や画像を表示する表示画面を有している。このような表示部22として液晶表示装置など従来公知のさまざまな表示装置が使用可能である。
表示部22は、計測処理部20によって算出されたゴルフボール2の移動速度Vαおよびスピン量SPを表示画面に表示する。
ゴルフボール2のスピン量SPを求めるにあたっては、第2、第3部分速度Vb,Vcの計測を安定して確実に行うことが必要であり、したがって、ドップラー信号Sdの計測を安定して確実に行うことが必要となる。
しかしながら、打撃されたゴルフボール2がアンテナ12から離間するほど(時間が経過するほど)、アンテナ12で受信される反射波W2の信号強度が低下し、各周波数分布DA、DB、DCの信号強度はそれぞれ低下する。
この際、図5に示すドップラー信号Sdの周波数分布DB、DCの信号強度は周波数分布DAの信号強度に比較して元々弱い。
そのため、第2、第3部分速度Vb,Vcを安定して計測する上で不利があり、アンテナ12で受信可能な信号強度が周波数分布DAよりも短時間で下回ってしまうため、第2、第3部分速度Vb,Vcの計測可能な時間はごく限られた期間となる不利もある。
例えば、ボール計測装置10が室内に設置されるゴルフシミュレータ装置に適用されるものであった場合には、送信波W1の出力が低いため、十分な信号強度を有する周波数分布DB、DCを得ることが難しい。
そのため、ゴルフシミュレータ装置では、ゴルフボールの初速や打ち出し角に基づいて球筋や飛距離を算出することに留まっているのが現状であり、スピン量SPを反映させたより正確なシミュレーションを行うことが望まれている。
図8は実施の形態におけるゴルフボール2の平面図である。
図8に示すように、ゴルフボール2は、球体202と、第1領域204と、第2領域206とを備えている。
球体202は、中実で球状のコア層と、このコア層を覆う合成樹脂からなるカバー層とで形成され、カバー層の表面に多数のディンプル208が形成されている。
したがって、第1領域204は高い電波反射特性を有しており、電波(マイクロ波)を効率よく反射する。
本実施の形態では、第1領域204は球体202の表面に(前記カバー層の表面に)複数形成され導電性を有している。
また、各第1領域204は、同一の直径を有する正円状を呈しているが、各第1領域204の形状は三角形、四角形、あるいは正多角形などであってもよい。
各第1領域204が正円である場合、反射波の強度を確保する上でまたボール計測装置10における計測精度を確保する上でその正円の直径は2mm以上15mm以下であることが好ましい。
また、各第1領域204が正多角形である場合、反射波の強度を確保する上でまたボール計測装置10における計測精度を確保する上でその内接円の直径が2mm以上15mm以下であることが好ましい。
なお、正円または内接円の直径が2mm以上15mm以下であると、計測精度を確保する上で有利となることは、送信波として24GHzまたは10GHzのマイクロ波を使用した場合の発明者らの実験結果によって確認されたものである。この原因としては、例えば、第1領域204の表面で反射される反射波と第1領域204のエッジ部分で反射される反射波との干渉が計測精度に与える影響が小さくなるからであると考えられる。
また、図7に示すように、前記の球面上において(本実施の形態では球体202の表面上において)第1領域204の互いに対向する2箇所と、球体202の中心Oとを通る2つの直線がなす角度θは、十分な強度の反射波を得る上でまた反射波を精度よく受信する上で5度以上45度以下であることが好ましい。
例えば、図6に示すものでは、第1領域204は頂点が球体202の表面に位置するように仮想された正六面体の6つの頂点に位置している。したがって、第1領域は6個形成されている。
また、図7に示す変形例では、第1領域204は頂点が球体202の表面に位置するように仮想された正四面体の4つの頂点に位置している。したがって、第1領域は4個形成されている。
要するに、第1領域204は球体202の表面に複数形成されていればよく、その数は任意である。
ただし、第1領域204は、球体202の回転軸がどのような方向に位置しても、なるべく多くの第1領域204が移動しながら(回転しながら)送信波W1を反射することが、安定した反射波W2を得る上で好ましい。
この場合、第2領域206は直線状に延在する第1領域204によって矩形状に区画されることになる。
すなわち、電波反射率:Γ、表面抵抗:Rとしたとき、式(7)、式(8)が成立する。
Γ=(377−R)/(377+R) (7)
R=(377(1−Γ))/(1+Γ) (8)
Γ=1は全反射、Γ=0は無反射を示し、377は空気の特性インピーダンスを示す。
したがって、式(8)より
Γ=1のときR=0
Γ=0のときR=377
ここで、Γ=0.5とすると、R=377(0.5/1.5)≒130となる。
したがって、電波反射率Γとして十分な値をΓ=0.5(50%)以上とすると、表面抵抗Rは130Ω/sq.以下とすることが必要となる。
また、電波反射率Γが0.9(90%)以上であり、したがって、表面抵抗Rが20Ω/sq.以下であることが、反射波W2の強度を確保する上でより好ましい。
なお、電波反射率Γは、導波管法や自由空間法など従来公知方法によって測定することができるものである。
導電性を有する材料は、例えば、金属粉末を含む塗料である。このような塗料を球体202の表面に塗布することで(印刷することで)第1領域204が形成される。
このような塗料として、電磁波シールド用の導電性塗料(神東塗料E−63など)、アルミペースト、銀インクなど、従来公知のさまざまな塗料が使用可能である。
また、導電性を有する材料は、金属箔であってもよい。このような金属箔を球体202の表面に接着剤で貼り付けることで第1領域204が形成される。
このような金属箔としてアルミニウム箔など従来公知のさまざまな金属箔が使用可能である。
また、導電性を有する材料を蒸着することで形成された蒸着膜あるいは不連続蒸着膜で第1領域204を形成してもよい。
なお、不連続蒸着膜は、真空中で行う不連続蒸着によって形成されている。不連続蒸着膜とは、ターゲットから蒸発した原子が非蒸着体としての球体202の表面に付着して複数の成長核が成長する過程において、各成長核どうしが接触しない段階、言い換えると各成長核どうしが連続していない段階で蒸着を止めて、成長核間が電気的に導通していない状態の蒸着膜である。
したがって、不連続蒸着膜では、成長核どうしが電気的に導通せず非導電体となっているが、電波反射性を有している。
また、上述した金属粉末あるいは金属箔あるいは蒸着膜を形成する金属としては、例えば、銀、銅、金、ニッケル、アルミ、鉄、チタン、タングステンなどの従来公知のさまざまな金属が使用可能である。
なお、導電性を有する材料として、金属以外の導電物質、例えばカーボンを含む材料など従来公知のさまざまな材料が使用可能である。
言い換えると、第2領域206は、第1領域204よりも低い電波反射特性を有するものである。
本実施の形態では、第2領域206は、第1領域204を除く残りの表面の部分に(第1領域204を除く残りの前記カバー層の表面の部分に)形成され導電性を有さない。
本実施の形態では、第2領域206は、ゴルフボール2の表面を形成する合成樹脂で形成されている。
なお、第1領域204の電波反射率と第2領域206の電波反射率との比(差)を大きく確保する上で第2領域206の電波反射率は1%以下、表面抵抗は400Ω/sq.以上であることが好ましい。
第1領域204の総面積が球体202の表面積の50%以下であると、第1領域204で反射される電波の反射強度と、第2領域206で反射される電波の反射強度との比(差)を大きく確保する上で有利となり、2%〜30%であると、上記の反射強度の比(差)を大きく確保する上でより有利となる。
このように第1領域204と第2領域206とで反射強度との比(差)を大きく確保すると、スピン量SPの計測を安定して行う上で有利となる。
しかしながら、第1、第2領域204、206が形成される面は、外表面に限定されるものではなく、球体202の内部であってもよく、この場合には、球面、正多面体をなす面、準正多面体をなす面であってもよく、要するに、球体202が回転することで第1、第2領域204、206が回転し、アンテナ12に対して第1、第2領域204、206が交互に向けばよい。
すなわち、ゴルフボール2は、電波反射性を有する第1領域204と、電波反射率が第1領域204よりも低い第2領域206とを有するものであればよい。
まず、図9を参照して、演算用速度V0と、ゴルフボール2の移動速度Vαとの相関関係を示す相関式の設定について説明する。
まず、専用のゴルフボール打ち出し装置(スイングロボット)を用いてゴルフボール2を、移動方向と移動速度Vαを異ならせて打撃し、移動速度Vαおよびスピン量SPを実測する(ステップS10)。
同時に、ボール計測装置10を用いて演算用速度V0および信号強度分布データPの山の幅を計測する(ステップS12)。
次いで、ボール計測装置10とは別のコンピュータにより、演算用速度V0と移動速度Vαとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS14)。また、信号強度分布データPの山の幅とスピン量SPとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS16)。
そして、ステップS14、S16によって得られた2つの相関式をボール計測装置10に設定する(ステップS18)。
予め図9の処理が実施され、ボール計測装置10に前記の相関式が設定されているものとする。
まず、使用者は、ゴルフボール2の打ち出し方向においてゴルフボール2から例えば1.5〜2m程度後方の箇所に、アンテナ12をゴルフボール2に向けて設置する。
これにより、アンテナ12から送出された送信波W1がゴルフボール2に当たり、反射波W2がアンテナ12に受信可能な状態となる。
使用者が操作部24を操作することにより、ボール計測装置10はゴルフボール2の移動速度Vαおよびスピン量SPを計測するための計測モードに設定される(ステップS30)。
ここで、使用者がゴルフクラブ6を把持してスウィングしてゴルフクラブヘッド4でゴルフボール2を打ち出すと、打撃音がマイク16によって収音される。トリガ信号発生部18は、ドップラー信号Sdを受信し、かつ、打撃音の音声信号が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測処理部20に供給し、これによりトリガ信号trgが蓄積部30に供給される。
信号強度分布データ生成部32は、トリガ信号trgを検出すると、トリガ信号trgの検出時点から予め定められた区間にわたるドップラー信号Sdのサンプリングデータを特定する(ステップS36)。
そして、信号強度分布データ生成部32は、信号強度分布データPを生成する(ステップS38)。
次いで、速度演算部34は、信号強度分布データPから演算用速度V0を算出する(ステップS40)。
次いで、移動速度演算部36は、予め設定されている相関式から演算用速度V0に基づいて移動速度Vαを算出する(ステップS42)。
次いで、スピン量演算部38は、予め設定されている相関式から信号強度分布データPの山の幅に基づいてスピン量SPを算出する(ステップS44)。
このようにして得られた移動速度Vαおよびスピン量SPが表示部22に供給されて表示される(ステップS46)。
この場合、例えば、ゴルフボール2の移動速度の単位は(m/s)、スピン量SPの単位は(rpm)として表示される。
以上で一連の計測動作が終了する。
すなわち、アンテナおよびドップラーセンサを用いて計測したドップラー信号の信号強度分布データPから、予め得られている相関関係に基づいてゴルフボール2の移動速度Vαおよびスピン量SPを簡単かつ的確に算出することができる。したがって、簡素な構成でゴルフボール2の挙動を表わすさまざまなデータを的確に計測する上で有利となる。
特に、従来のように長時間にわたってドップラー信号のデータを必要とすることから送信波の出力を高いものとしなくてはならず、したがって、大掛かりな大掛かりで高価な装置が必要となる場合に比較して、構成の簡素化とコストダウンを図る上で有利であり、ゴルフシミュレータなどのように室内において打撃したゴルフボールの挙動を計測する様な飛距離が数mという短距離である用途に適している。
したがって、ドップラーセンサ14から送信された送信波W1がゴルフボール2の回転と共に移動する複数の第1領域204によって反射される。そのため、反射波W2の電波強度を確保する上で有利となる。
そのため、送信波W1の電波強度が低いため、打撃されたゴルフボール2がドップラーセンサ14から離間してドップラーセンサ14で受信される反射波W2の信号強度が確保しにくい状況であっても、各周波数分布DA、DB、DCの信号強度を確保する上で有利となる。
特に、周波数分布DAの信号強度に比較して元々弱い周波数分布DB、DCの信号強度を確保することができるので、第2、第3部分速度Vb,Vcを安定して計測する上で有利となる。
すなわち、ドップラー信号Sdにおけるスピン量SPを検出するために必要な周波数分布の信号強度を確保することができ、スピン量SPの検出を安定して確実に行う上で有利となる。より具体的には、ドップラー信号Sdを周波数分析することで得られる信号強度分布データPの精度を高める上でより有利となる。
特に、ボールボール計測装置10が室内に設置されるゴルフシミュレータ装置に適用されるものであった場合には、送信波W1の出力が低く、S/N比が十分得られなくても、十分な信号強度を有する周波数分布DB、DCを得ることができる。
そのため、ゴルフシミュレータ装置によって、移動速度Vαおよびスピン量SPに基づいて球筋や飛距離を正確に算出することができ、スピン量SPを反映させたより正確なシミュレーションを行うことができる。
具体的には、スピン量SPを反映させることにより、これまでシミュレーションが不可能であった目標線に対してゴルフボール2が戻ってくるフェード系やドロー系の球筋のシミュレーションが可能となる。また、スピン量SPを反映させることにより、飛距離をより正確にシミュレーションすることができる。
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、ゴルフボール2の挙動を表わすデータとして移動速度Vαとスピン量SPとを計測する場合について説明したが、第2の実施の形態では、ゴルフボール2の挙動を表わすデータとして、ゴルフボール2の移動速度Vαとスピン量SPに加えて回転軸を計測する場合について説明する。
なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同一または同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を簡単に行い、あるいは、説明を省略する。
本実施の形態では、第1乃至第4のアンテナ12A、12B、12C、12Dと第1乃至第4のドップラーセンサ14A、14B、14C、14Dとは不図示のケースに収容保持されている。
また、第1の実施の形態と同様に、トリガ信号発生部18と、計測処理部20と、表示部22と、操作部24とは、不図示の筐体に組み込まれている。
第1乃至第4のドップラーセンサ14A、14B、14C、14Dと計測処理部20とは不図示の接続ケーブルを介して接続され、マイク16と計測処理部20とは不図示の接続ケーブルを介して接続されている。
より詳細には、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは、指向性を有し、送信波W1を送信すると共に、ゴルフボール2反射された反射波W2を受信して受信信号を生成するものであり、互いに離間して配置されている。
本実施の形態では、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは同形同大の指向性アンテナで構成され、このような指向性アンテナとしてホーンアンテナを使用している。
指向性アンテナとしてホーンアンテナ以外のパラボラアンテナなどの従来公知のさまざまな指向性アンテナを使用可能であるが、ホーンアンテナは構成が簡素であり比較的安価であることからコストを抑制する上で有利である。
図12乃至図14に示すように、第1乃至第4のアンテナの12A〜12Dは、ケース26に収容保持されている。
ケース26は、後板2602と、上下左右の側板2604A、2604B、2604C、2604Dと、脚部2606とを含んで構成されている。
後板2602は矩形板状を呈し、上下の辺を水平方向と平行させ、上方に至るほど後方に傾斜するように設けられている。
上下左右の側板2604A〜2604Dは、後板2602の上下左右の辺から起立され、各側板2604A〜2604Dの前縁により矩形状の開口が形成されている。
脚部2606は、下部の側板2604Bの下面中央に設けられ地面や床面に設置される。
第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは、前記の開口を介して前方を向いた状態で後板2602の前面に取着され、後板2602と側板2604A〜2604Dとで囲まれた空間に収容されている。第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dの前部は、各側板2604A〜2604Dの前縁よりも後方に位置している。
前記開口は、送信波W1および反射波W2の透過が可能な材料で形成された図示しないカバーによって覆われており、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dの防塵および保護が図られている。
本実施の形態では、図12に示すように正面から見て第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは後板2602の4つの角部近傍に配置されている。すなわち、後板2602の右下寄りの箇所に第1のアンテナ12Aが配置されている。右上寄りの箇所に第2のアンテナ12Bが配置されている。左下寄りの箇所に第3のアンテナ12Cが配置されている。左上寄りの箇所に第4のアンテナ12Dが配置されている。
図12、図13に示すように、側面視した状態で第1、第2のアンテナ12A、12Bは鉛直方向に間隔dV(第1の間隔)をおいて配置され、第1、第2の仮想軸LA、LBが単一の鉛直平面上を延在している。
本実施の形態では、第2の仮想軸LBが水平方向に延在し、かつ、第1の仮想軸LAが水平方向に対して上方に6度傾斜した方向に延在している。したがって、第1、第2の仮想軸LA、LBが交差するように配置されている。
第3、第4のアンテナ12C、12Dも、第1、第2のアンテナ12A、12Bと同様に鉛直方向に間隔dV(第1の間隔)をおいて配置され、第3、第4の仮想軸LC、LDが単一の鉛直平面上を延在している。
本実施の形態では、第4の仮想軸LDが水平方向に延在し、かつ、第3の仮想軸LCが水平方向に対して上方に6度傾斜した方向に延在している。したがって、第3、第4の仮想軸LC、LDが交差するように配置されている。
本実施の形態では、第2、第4のアンテナ12B、12Dの仮想軸LB、LDが前後方向に対してそれぞれ内方に4度傾斜した方向に延在している。したがって、第2、第4の仮想軸LB、LDが交差するように配置されている。
第1、第3のアンテナ12A、12Cは、水平方向に間隔dH(第2の間隔)をおいて配置されている。
第1、第3の仮想軸LA、LCも第2、第4の仮想軸LB、LDと同様に前後方向に対してそれぞれ内方に4度傾斜した方向に延在している。したがって、第1、第3の仮想軸LA、LCが交差するように配置されている。
図15に示すように、側面視した状態で第1、第2の仮想軸LA、LBが交差すると共に、第3、第4の仮想軸LC、LDが交差している。
図16に示すように、平面視した状態で第1、第3の仮想軸LA、LCが交差すると共に、第2、第4の仮想軸LB、LDが交差している。
また、平面視した状態で、左右方向において第1、第3のアンテナ12A、12C(第2、第4のアンテナ12B、12D)の間隔dHの中心を通り水平方向に延在する仮想線CL上にティー201に載置されたゴルフボール2の中心点が配置されている。この中心点を基準位置O(あるいは原点O)とする。
本実施の形態では、図15、図16に示すように、実際に基準位置Oから打撃されたゴルフボール2の軌跡のばらつきを考慮して、上述した各仮想軸が交差する点を基準位置Oよりも前方の位置に設定した。
このようにすることで、側面視した状態で、第1、第2のアンテナ12A、12Bのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域と、第3、第4のアンテナ12C、12Dのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域とが、実際に打撃されたゴルフボール2の移動軌跡と重なる範囲を上下方向にわたって広く確保する上で有利となる。図15において送信波W1が重なる領域をハッチングで示す。
また、このようにすることで、平面視した状態で、第1、第3のアンテナ12A、12Cのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域と、第2、第4のアンテナ12B、12Dのそれぞれから送信される送信波W1とが、実際に打撃されたゴルフボール2の移動軌跡と重なる範囲を左右方向にわたって広く確保する上で有利となる。図16において送信波W1が重なる領域をハッチングで示す。
したがって、基準位置Oでゴルフクラブヘッド4で打撃されたゴルフボール2の移動方向が上下方向あるいは左右方向にわたって多少ばらついたとしても、移動するゴルフボール2を前記の送信波W1が重なる領域内で確実に捉える上で有利となる。言い換えると、ゴルフボール2に対して第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dから送信波W1を確実に当てると共に、ゴルフボール2で反射された反射波W2を第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dによって確実に受信する上で有利となり、打撃直後のゴルフボール2の移動速度Vα(初速)、スピン量SPの計測を確実に行う上で有利となる。
なお、本実施の形態では、第2、第4のアンテナ12B、12Dの仮想軸LB、LDを水平方向に延在させ、第1、第3のアンテナ12A、12Cの仮想軸LA、LCを上方に傾斜させている。このようにすることで、第1、第2のアンテナ12A、12Bのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域と、第3、第4のアンテナ12C、12Dのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域とが、実際に打撃されたゴルフボール2の移動軌跡と重なる範囲を上下方向にわたって広く確保する上でより一層有利となる。
また、第2、第4のアンテナ12B、12Dの仮想軸LB、LDと、第1、第3のアンテナ12A、12Cの仮想軸LA、LCとの双方を上方に傾斜させてもよいが、上述のようにすると、送信波W1が重なる領域を上下方向にわたって広く確保する上でより有利となる。
図11に示すように、第1乃至第4ドップラーセンサ14A〜14Dは、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dのそれぞれに送信信号を供給するものである。また、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dのそれぞれから供給される受信信号に基づいてドップラー周波数Fdを有する第1乃至第4のドップラー信号SdA、SdB、SdC、SdDを時系列データとして生成するものである。
本実施の形態では、計測処理部20は、第1の実施の形態と同様にマイクロコンピュータ21によって構成され、CPU21AがROM21Bに格納された制御プログラムを実行することにより計測処理部20が実現される。
マイクロコンピュータ21は、機能的には、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動速度演算部36と、スピン量演算部38と、回転軸演算部40とを含んで構成されている。
なお、第2の実施の形態においても、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動速度演算部36と、スピン量演算部38とによって特許請求の範囲の演算手段が構成されている。
また、信号強度分布データ生成部32が、蓄積部30に蓄積されたトリガ信号trgに基づいて、蓄積部30に蓄積された時系列データであるドップラー信号Sdのサンプリングデータを予め定められた区間に特定して信号強度分布データPの生成を実施する点は第1の実施の形態と同様である。
第2の実施の形態では、第1乃至第4の演算用速度VA〜VDの平均値Vaveと実測されたゴルフボール2の移動速度Vαとの相関関係に基づいて、平均値Vaveから移動速度Vαを算出する点が第1の実施の形態と相違している。
そして、移動体の移動速度を高精度に計測可能な基準計測器によってゴルフボール2の移動速度Vαを計測し、移動速度Vαの実測データを取得する。また、移動体のスピン量を高精度に計測可能な基準計測器によってゴルフボール2のスピン量SPを計測し、スピン量SPの実測データを取得する。
また、移動速度Vαの計測と同時に、本実施の形態のボール計測装置10Aを用いることにより、速度演算部34によって第1乃至第4の演算用速度VA〜VDを取得する。すなわち、移動速度Vαの実測データに対応する第1乃至第4の演算用速度VA〜VDを取得する。また、スピン量SPの計測と同時に、本実施の形態のボール計測装置10Aを用いることにより、信号強度分布データ生成部32によって第1乃至第4の信号強度分布PA〜PDを取得する。すなわち、スピン量SPの実測データに対応する第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅を取得する。
基準測定器で計測した移動速度Vαの実測データと、第1〜第4の演算用速度VA〜VDの平均値Vaveとの相関関係に基づいて移動速度算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、移動速度Vαと、平均値Vaveとの関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによって移動速度Vαを平均値Vaveの関数(多項式)によって表わした相関式を求める。すなわち、このようにして求められた相関式によって移動速度Vαと平均値Vaveとの関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、このようにして求めた相関式を用いることにより、平均値Vaveから移動速度Vαを求めることが可能となる。
本実施の形態では、移動速度演算部38は上記の相関式を用いることで平均値Vaveからゴルフボール2の移動速度Vαを算出する。
したがって、本実施の形態では、移動速度演算部38による移動速度の算出は、予め実測され得られている平均値Vaveと予め実測され得られているゴルフボール2の移動速度との相関関係を示す移動速度算出用の相関式に基づいてなされる。
基準測定器で計測したスピン量SPの実測データと、第1乃至第4の電波強度分布PA〜PD(第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅)の平均値Paveとの相関関係に基づいてスピン量算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、スピン量SPと、信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveとの関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによってスピン量SPを信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveの関数(多項式)によって表わした相関式を求める。
すなわち、このようにして求められた相関式によってスピン量SPと信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveとの関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、このようにして求めた相関式を用いることにより、信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveからスピン量SPを求めることが可能となる。
本実施の形態では、スピン量SP演算部38は上記の相関式を用いることで信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveからゴルフボール2のスピン量SPを算出する。
したがって、本実施の形態では、スピン量演算部38によるスピン量SPの算出は、予め実測され得られている信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveと予め実測され得られているゴルフボール2のスピン量SPとの相関関係を示すスピン量算出用の相関式に基づいてなされる。
なお、移動速度演算手段36と同様に、上記のような相関式に代えて、相関式によって示される特性線のデータをスピン量算出用のマップとして記憶しておき、マップを用いてスピン量SPを算出してもよい。
ここで、アンテナの位置と、スピン量SPと、回転軸の傾きとの関係について説明する。
図17(A)、図18(A)、図19(A)は第2のアンテナ12Bの仮想軸LB(図13)に沿ってゴルフボール2を見た図、図17(B)、図18(B)、図19(B)は第1のアンテナ12Aの仮想軸LA(図13)に沿ってゴルフボール2を見た図である。この場合、ゴルフボール2は打撃されスピンしながら移動しているものとする。
図17(A)、(B)は、ゴルフボール2の回転軸Mが仮想線CL(図16)と直交する鉛直面上で水平面と平行した状態を示している。
したがって、この場合、ゴルフボール2にはバックスピンがかかっている。
図18(A)、(B)は、ゴルフボール2の回転軸Mが仮想線CL(図16)と直交する鉛直面上で水平面に対して45度傾斜した状態を示している。
したがって、この場合、ゴルフボール2にはバックスピンとサイドスピンとの中間のスピンがかかっている。
図19(A)、(B)は、ゴルフボール2の回転軸Mが仮想線CL(図16)と直交する鉛直面上で水平面に対して直交した状態を示している。
したがって、この場合、ゴルフボールにはサイドスピンがかかっている。
ゴルフボール2を正面から見ると、図17(A)、図18(A)、図19(A)に示すように回転軸Mの傾きに拘わらずスピン量SPは同一のものとして検出される。
これに対してゴルフボール2を斜め下方から見ると、図17(B)に示すように回転軸Mが水平であれば、図17(A)と同じスピン量SPとして検出される。
図18(B)に示すように、回転軸Mが水平面に対してなす角度が45度になると、スピン量SPは図18(A)で検出されるスピン量SPに比較して見かけ上小さい値として検出される。
図19(B)に示すように、回転軸Mが水平面に対してなす角度が90度になると、スピン量SPは図19(A)で検出されるスピン量SPに比較して見かけ上小さい値として検出され、図18(B)の場合よりもさらに小さいスピン量SPとして検出される。
すなわち、ゴルフボール2を鉛直方向に間隔をおいた2箇所で見た場合、それぞれの箇所で検出されるスピン量SPの差分と、回転軸Mの傾きとは相関関係があることになる。
本実施の形態では、回転軸演算部40は、このような相関関係に基づいて、鉛直方向に間隔をおいた2つのアンテナを使用して得た2つの信号強度分布データPの幅の差分からゴルフボール2の回転軸Mの傾きを算出するようにしている。
第1のアンテナ12Aを用いて得られた第1の信号強度分布データPAの幅:ΔSA
第2のアンテナ12Bを用いて得られた第2の信号強度分布データPBの幅:ΔSB
第3のアンテナ12Cを用いて得られた第3の信号強度分布データPCの幅:ΔSC
第4のアンテナ12Dを用いて得られた第4の信号強度分布データPDの幅:ΔSD
とした場合、図12に示すように、対角線上に位置する2組のアンテナの信号強度分布データPの幅の差分をそれぞれ第1の差分データΔAD、第2の差分データΔCBとし、以下の式(9)、式(10)に示す。
ΔAD=ΔSA−ΔSD (9)
ΔCB=ΔSC−ΔSB (10)
このように対角線上に位置するアンテナの信号強度分布データPの幅の差分を用いることにより、回転軸Mが水平面に対してなす角度の正負が特定される。言い換えると、ゴルフボール2がフック傾向であるか、スライス傾向であるかを特定することができる。
また、本実施の形態では、第1、第2の差分データΔAD、ΔCBの平均値ΔAVEを求め、この平均値ΔAVEに基づいてゴルフボール2の回転軸Mの傾きを算出しており、これにより算出される回転軸Mの傾きの精度の向上が図られている。
まず、図20を参照して、第1乃至第4の演算用速度VA〜VDと、ゴルフボール2の移動速度Vαとの相関関係を示す相関式の設定について説明する。
まず、専用のゴルフボール打ち出し装置(スイングロボット)を用いてゴルフボール2を、移動方向と移動速度Vαを異ならせて打撃し、移動速度Vαおよびスピン量SPを実測する(ステップS50)。
同時に、ボール計測装置10Aを用いて第1乃至第4の演算用速度VA〜VDおよび第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅を計測する(ステップS52)。
次いで、ボール計測装置10Aとは別のコンピュータにより、第1乃至第4の演算用速度VA〜VDの平均値Vaveと移動速度Vαとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS54)。また、第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveとスピン量SPとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS56)。
そして、ステップS54、S56によって得られた2つの相関式をボール計測装置10Aに設定する(ステップS58)。
予め図20の処理が実施され、ボール計測装置10Aに前記の相関式が設定されているものとする。
まず、使用者は、ゴルフボール2の打ち出し方向においてゴルフボール2から例えば1.5m〜2m程度後方の箇所に、第1乃至第4のアンテナの12A〜12Dがゴルフボール2に向くようにケース26を設置する。
これにより、第1乃至第4のアンテナの12A〜12Dから送出された送信波W1がゴルフボール2に当たり、反射波W2が第1乃至第4のアンテナの12A〜12Dに受信可能な状態となる。
使用者が操作部24を操作することにより、ボール計測装置10Aはゴルフボール2の移動速度Vα、スピン量SP、回転軸Mを計測するための計測モードに設定される(ステップS70)。
ここで、使用者がゴルフクラブ6を把持してスウィングしてゴルフクラブヘッド4でゴルフボール2を打ち出すと、打撃音がマイク16によって収音される。トリガ信号発生部18は、ドップラー信号Sdを受信し、かつ、打撃音の音声信号が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測処理部20に供給し、これによりトリガ信号trgが蓄積部30に供給される。
信号強度分布データ生成部32は、トリガ信号trgを検出すると、トリガ信号trgの検出時点から予め定められた区間にわたる第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータを特定する(ステップS76)。
そして、信号強度分布データ生成部32は、第1乃至第4の信号強度分布データPを生成する(ステップS78)。
次いで、速度演算部34は、第1乃至第4の信号強度分布データPから第1乃至第4の演算用速度VA〜VDを算出する(ステップS80)。
次いで、移動速度演算部36は、予め設定されている相関式から第1乃至第4の演算用速度VA〜VDの平均値Vaveに基づいて移動速度Vαを算出する(ステップS82)。
次いで、スピン量演算部38は、予め設定されている相関式から第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveに基づいてスピン量SPを算出する(ステップS84)。
次いで、回転軸演算部40は、第1乃至第4の信号強度分布データPから第1の差分データΔAD、第2の差分データΔCBを演算し、第1、第2の差分データΔAD、ΔCBの平均値ΔAVEに基づいてゴルフボール2の回転軸Mの傾きを算出する(ステップS86)。
このようにして得られた移動速度Vα、スピン量SP、回転軸Mの傾きが表示部22に供給されて表示される(ステップS88)。
この場合、例えば、ゴルフボール2の移動速度の単位は(m/s)、スピン量SPの単位は(rpm)、回転軸Mの傾きの単位は(度)として表示される。
以上で一連の計測動作が終了する。
また、サイドスピンの場合のスピン量SPの表現は、例えば、平面視時計回り方向のスピン量は正の値で、反時計回り方向のスピン量は負の値で示すことができる。
また、回転軸Mの傾きの表現は、例えば、回転軸Mが水平面に対して右上がりであれば角度を正の値で、左上がりであれば角度を負の値で示すことができる。
すなわち、第1乃至第4のアンテナおよび第1乃至第4のドップラーセンサを用いて計測した各ドップラー信号の信号強度分布データから、予め得られている相関関係に基づいてゴルフボール2の移動速度Vαおよびスピン量SPを簡単かつ的確に算出することができる。したがって、第1の実施の形態と同様に、簡素な構成で球技用ボールの挙動を表わすさまざまなデータを的確に計測する上で有利となる。
また、第1の実施の形態と同様に、ゴルフシミュレータなどのように室内において打撃したゴルフボールの挙動を計測する様な飛距離が数mという短距離である用途に適している。
また、本実施の形態では、第1乃至第4の演算用速度VA〜VDの平均値Vaveを用いて移動速度Vαを求め、第1乃至第4の信号強度分布データPの幅の平均値Paveを用いてスピン量SPを求めるため、移動速度Vαおよびスピン量SPの精度の向上を図る上でより一層有利となる。
また、本実施の形態では、予め実測され得られている第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの幅の平均値Paveとスピン量SPとの相関関係に基づいて、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの平均値Paveからスピン量SPを算出し、さらに、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの幅の差分から回転軸Mの傾きを算出するようにした。
したがって、ゴルフボール2のスピンの傾向、すなわち、サイドスピンの方向と割合を特定することができ、ゴルフボール2の挙動を表わすさまざまなデータを的確に計測する上でより一層有利となる。
そのため、例えば、ゴルフシミュレータ装置によって、ゴルフボール2の移動速度Vαとスピン量SPに加えて回転軸Mの向きに基づいて球筋や飛距離を正確に算出する上でより有利となり、正確なシミュレーションを行う上でより一層有利となる。
なお、第2の実施の形態のおいても、第1の実施の形態と同様に電波反射性を有する第1領域204と、電波反射率が第1領域よりも低い第2領域206を有するゴルフボール2を用いれば、第1の実施の形態と同様に、送信波W1の送信出力の低出力化を図れるため、ボールボール計測装置10の簡素化、小型化を図れ、低コスト化を図る上で有利となると共に、送信波W1の送信出力が低出力であっても、ゴルフボール2の挙動を表わす移動速度およびスピン量SPを的確に計測する上で有利となる。
この場合は、第1乃至第3の演算用速度VA〜VCの平均値Vaveを用いて移動速度Vαを求め、第1乃至第3の信号強度分布データPA〜PDの幅の平均値Paveを用いてスピン量SPを求めるため、移動速度Vαおよびスピン量SPの精度の向上を図る上で有利となる。
また、第2、第3のアンテナ12B、12Cが対角線上に位置することになるので、アンテナの信号強度分布データPの幅の差分を用いることにより、すなわち、第2、第3の信号強度分布データPから1つの差分データΔBCが得られるため回転軸Mの傾きを算出することができる。
また、図22における第1のアンテナ12Aを省略し、第2、第3のアンテナ12B、12Cの2つのアンテナを用いた構成としてもよい。この場合にも、第2、第3の信号強度分布データPから1つの差分データΔBCが得られるため、回転軸Mの傾きを算出することができる。
しかしながら、第2の実施の形態のように構成すると、2つの差分データΔAD、ΔBCの平均値を用いて回転軸Mの傾きを算出できるので、回転軸Mの傾きを正確かつ安定して算出する上でより有利となる。
次に第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態の変形例であり、球技用ボールとして野球用ボールを用いると共に、第1領域204の通過数を計測することができるようにしたものである。
図23は第3の実施の形態のボールボール計測装置10Bの機能ブロック図、図24は野球用ボールの正面図である。
また、図25は野球用ボールが4シームの回転状態で移動する場合におけるドップラー信号Sdをウェーブレット解析した結果を単純化して示す説明図である。
また、図26は野球用ボールが2シームの回転状態で移動する場合におけるドップラー信号Sdをウェーブレット解析した結果を単純化して示す説明図である。
野球用ボール2は硬式野球用ボールであって、球体202を備え、球体202の表面は、2枚の外皮250が縫い糸252を介して縫い合わされることで構成されている。
縫い糸252は電波反射性を有しており、縫い糸252は球体202の中心を中心とした球面上に該球面に沿って設けられている。
縫い糸252は、第1の実施の形態における第1領域204を構成するものであり、電波(マイクロ波)を効率よく反射するものである。
このような縫い糸252として、導電性を有する材料で形成された糸、あるいは、導電性を有する材料が含浸された糸を用いることができる。
あるいは、縫い糸252によって外皮250を縫い合わせたのち、縫い糸252に導電性を有する材料を含浸させることで縫い糸252に電波反射性を持たせてもよい。
また、縫い糸252を除く外皮250の部分が第2領域206を構成している。
また、図中、符号M2で示す回転軸回りに回転すると、1回転当たりに縫い糸252が2回通過する、いわゆる2シームと呼ばれる回転状態となる。
図23に示すように、計測処理部20は、蓄積部30、信号強度分布データ生成部32、速度演算部34、移動速度演算部36、スピン量演算部38、回転軸演算部40に加えて、第1領域演算部42をさらに備えている。
なお、第3の実施の形態においても、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動速度演算部36と、スピン量演算部38とによって特許請求の範囲の演算手段が構成されている。
すなわち、4シームの回転状態の場合は、図25に示すように、野球用ボール2が1回転するごとに、部分aが4回発生する。
また、2シームの回転状態の場合は、図26に示すように、野球用ボール2が1回転するごとに、部分aが2回発生する。
第1領域演算部42は、スピン量演算部38で算出されたスピン量SPに基づいて1回転当たりの時間を算出すると共に、1回転当たりの時間に発生した部分aの数を計数することにより、野球用ボール2の1回転当たりの第1領域204の通過回数を算出するものである。
言い換えると、第1領域演算部42は、第1乃至第4のドップラーセンサの何れかから得られたドップラー信号の周波数解析結果に基づいてドップラー周波数の分布が短時間変化する部分を特徴点として検出すると共に、スピン量から算出される球技用ボールの1回転当たりの時間に検出される特徴点の検出回数を算出する。
そして、第1領域演算部42で算出された野球用ボール2の1回転当たりの第1領域204の通過回数が表示部22に表示されるようになっている。
次に第4の実施の形態について説明する。
第2、第3の実施の形態では、蓄積部30に蓄積された時系列データである第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータを予め定められた区間に特定して第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの生成を実施した。
そして、サンプリングデータを予め定められた区間に特定する方法として、トリガ信号trgの検出時点を基準時点として、基準時点から数えてa個目までのサンプリングデータを除外し、a+1個目からb個目(a<b)までのサンプリングデータを特定して第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの生成を実施するものとして説明した。
ところで、ゴルフクラブヘッド4のヘッドスピードは、ゴルファによって異なり、また、スウィングごとにばらつく。ヘッドスピードが異なれば、打撃されたゴルフボール2の移動速度も異なり、その結果、上記特定する区間が同一であっても、サンプリングデータを取得するゴルフボール2の基準位置Oに対する位置がばらつくことになる。
サンプリングデータを取得するゴルフボール2の位置(範囲)が異なると、第1乃至第4の演算用速度VA〜VDの平均値Vaveとゴルフボール2の移動速度Vαとの相関関係、および、第1乃至第4の信号強度分布の山の幅の平均値Paveとスピン量SPとの相関関係も影響を受け、最終的に算出される移動速度Vα、スピン量SPの値が影響を受けることなる。
したがって、ゴルフボール2の移動速度に拘わらずゴルフボール2が同一の位置(範囲)にあるときのサンプリングデータを特定できるように、ゴルフボール2の移動速度に応じてサンプリングデータを特定する区間を補正することが、最終的に算出される移動速度Vα、スピン量SPの精度を確保する上で好ましい。
サンプリングデータ特定手段44による補正は、基準位置Oに対して前方に離間した位置を予め設定しておき、ゴルフクラブヘッド4がゴルフボール2を打撃してから前記位置に到達するまでの間のサンプリングデータを除外するものである。
すなわち、基準位置Oから前方に予め定められた距離X離間した位置をサンプリング区間開始位置Osとして設定しておく。
サンプリングデータ特定手段44は、蓄積部30から得た第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータ、トリガ信号trgに基づいて第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDを生成する機能を有している。ただし、サンプリングデータの区間を特定することなく、トリガ信号trg以後のサンプリングデータに基づいて第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDを生成する点が信号強度分布データ生成部32と異なる。
より詳細には、ゴルフクラブヘッド4でゴルフボール2を打撃した場合、周波数強度分布データとしては、ゴルフボール2とゴルフクラブヘッド4とのそれぞれに対応して周波数領域が異なる2つの山(ピーク)が得られる。ここで、周波数領域が低い側の山がゴルフクラブヘッド4に対応し、周波数領域が高い側の山がゴルフボール2に対応する。
したがって、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDからゴルフボール2に対応する周波数領域が高い側の山に対応するドップラー周波数成分を検出し、それらドップラー周波数成分に基づいて仮の移動速度Vβを求める。
仮の移動速度Vβは、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDのそれぞれから得られた速度の平均を求めることで算出してもよいし、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDのそれぞれから得られた速度の1つを選択してもよい。
サンプリングデータ特定手段44は、以下に示す式(11)に基づいてトリガ信号trgの検出時点(基準時点)から予め定められた距離Xまでのサンプリングデータ数aを求める。
a=(X/Vβ)/(1/Ts) (11)
ただし、Ts:蓄積部30のサンプリング周期
したがって、サンプリングデータのうちa個のサンプリングデータは、ゴルフクラブヘッド4がゴルフボール2を打撃してから距離Xの位置に到達するまでのサンプリングデータである。
サンプリングデータ特定手段44は、サンプリングデータ数aを信号強度分布データ生成部32に供給する。
これにより、信号強度分布データ生成部32は、第2の実施の形態と同様に、基準時点から数えてa個目までのサンプリングデータを除外し、a+1個目からb個目(a<b)までのサンプリングデータを特定して第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの生成を実施する。
これ以降の処理は第2、第3の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
なお、第4の実施の形態では、サンプリングデータ特定手段44を、信号強度分布データ生成部32および速度演算部34と独立して設けた場合について説明したが、サンプリングデータ特定手段44と同様の機能を、信号強度分布データ生成部32および速度演算部34によって実現するようにしてもよいことは無論である。
W1……送信波、W2……反射波、Sd……ドップラー信号、Sd1〜Sd4……第1乃至第4のドップラー信号、V0……演算用速度VA〜VD……第1乃至第4の演算用速度Vave……平均値、P……信号強度分布データ、PA〜PD……第1乃至第4の信号強度分布データ、Pave……平均値、Vα……移動速度、SP……スピン量。
Claims (20)
- 指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナを設け、
前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するドップラーセンサを設け、
前記ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部を設け、
前記信号強度分布データに基づいて、前記球技用ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて演算用速度を算出する速度演算部を設け、
前記演算用速度と前記球技用ボールの移動速度との相関関係と、前記信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係とをそれぞれ予め求めておき、
前記演算用速度と前記球技用ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された演算用速度から前記移動速度を算出し、
前記信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記信号強度分布データから前記スピン量を算出する、
ことを特徴とするボール計測方法。 - 指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナを互いに離間して配置し、
前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサを設け、
前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部を設け、
前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記球技用ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの演算用速度を算出する速度演算部を設け、
前記第1乃至第nの演算用速度と前記球技用ボールの移動速度との相関関係と、前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係とをそれぞれ予め求めておき、
前記球技用ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの演算用速度から前記移動速度を算出し、
前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記第1乃至第nの信号強度分布データから前記スピン量を算出する、
ことを特徴とするボール計測方法。 - 指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、
前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するドップラーセンサと、
前記ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部と、
前記信号強度分布データに基づいて、前記球技用ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて演算用速度を算出する速度演算部と、
予め実測され得られている前記演算用速度と予め実測され得られている前記球技用ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された演算用速度から前記移動速度を算出する移動速度演算部と、
予め実測され得られている前記信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記信号強度分布データから前記スピン量を算出するスピン量演算部と、
を備えることを特徴とするボール計測装置。 - 前記信号強度分布データの最大値をDmaxとしたとき、
前記速度演算部による前記演算用速度の算出は、前記信号強度分布データにおける前記最大値Dmaxに対応するドップラー周波数に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項3記載のボール計測装置。 - 前記信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係は、前記信号強度分布データの幅と前記球技用ボールのスピン量との相関関係であり、
前記スピン量演算部による前記スピン量の算出は、前記信号強度分布データの幅から前記スピン量を算出することでなされる、
ことを特徴とする請求項3または4記載のボール計測装置。 - 前記信号強度分布データの最大値をDmaxとしたとき、
前記信号強度分布データの幅は、閾値DtをDmax・N(ただし0<N<1)とした場合、前記信号強度分布データのうち前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分の幅である、
ことを特徴とする請求項5記載のボール計測装置。 - 前記信号強度分布データ生成部による前記信号強度分布データの生成は、前記信号強度の移動平均を取ることによってなされる、
ことを特徴とする請求項3乃至6に何れか1項記載のボール計測装置。 - 指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する互いに離間して配置された第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナと、
前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して設けられ、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサと、
前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部と、
前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記球技用ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの演算用速度を算出する速度演算部と、
予め実測され得られている前記第1乃至第nの演算用速度と予め実測され得られている前記球技用ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの演算用速度から前記移動速度を算出する移動速度演算部と、
予め実測され得られている前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記第1乃至第nの信号強度分布データから前記スピン量を算出するスピン量演算部と、
を備えることを特徴とするボール計測装置。 - 前記各信号強度分布データの最大値をDmaxとしたとき、
前記速度演算部による前記各演算用速度の算出は、前記各信号強度分布データにおける前記最大値Dmaxに対応するドップラー周波数に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項8記載のボール計測装置。 - 前記予め実測され得られている前記第1乃至第nの演算用速度と前記予め実測され得られている前記球技用ボールの移動速度との相関関係は、前記予め実測され得られている前記第1乃至第nの演算用速度の平均値と前記予め実測され得られている前記球技用ボールの移動速度との相関関係であり、
前記速度演算部による前記移動速度の算出は、前記相関関係に基づいて、前記第1乃至第nの演算用速度の平均値から前記移動速度を算出することでなされる、
ことを特徴とする請求項8または9記載のボール計測装置。 - 前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係は、前記第1乃至第nの信号強度分布データの幅の平均値と前記球技用ボールのスピン量との相関関係であり、
前記スピン量演算部による前記スピン量の算出は、前記相関関係に基づいて、前記第1乃至第nの信号強度分布データの幅の平均値から前記スピン量を算出することでなされる、
ことを特徴とする請求項8乃至10に何れか1項記載のボール計測装置。 - 前記各信号強度分布データの最大値をそれぞれDmaxとしたとき、
前記各信号強度分布データの幅は、閾値DtをDmax・N(ただし0<N<1)とした場合、前記各信号強度分布データのうち前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分の幅である、
ことを特徴とする請求項11記載のボール計測装置。 - 前記信号強度分布データ生成部による前記信号強度分布データの生成は、前記信号強度の移動平均を取ることによってなされる、
ことを特徴とする請求項8乃至12に何れか1項記載のボール計測装置。 - nは4であり、
第1乃至第4のアンテナのうち、第1、第2のアンテナは互いに鉛直方向に第1の間隔をおいて配置され、かつ、第3、第4のアンテナは互いに鉛直方向に前記第1の間隔をおいて配置され、
第1、第3のアンテナは互いに水平方向に第2の間隔をおいて配置され、かつ、第2、第4のアンテナは互いに水平方向に前記第2の間隔をおいて配置され、
前記第1、第4のアンテナを用いて得られた前記第1、第4の信号強度分布データの幅の差分である第1の差分データと、前記第2、第3のアンテナを用いて得られた前記第2、第3の信号強度分布データの幅の差分である第2の差分データとの何れか一方に基づいて、あるいは、第1、第2の差分データの平均値に基づいて前記球技用ボールの回転軸の向きを算出する回転軸演算部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項8乃至13に何れか1項記載のボール計測装置。 - (第3の実施の形態)
前記球技用ボールは、電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有し、
前記第1乃至第nのドップラーセンサの何れかから得られたドップラー信号の周波数解析結果に基づいてドップラー周波数の分布が短時間変化する部分を特徴点として検出すると共に、前記スピン量から算出される前記球技用ボールの1回転当たりの時間に検出される前記特徴点の検出回数を算出する第1領域演算部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項8乃至14に何れか1項記載のボール計測装置。 - 前記球技用ボールは、電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至15に何れか1項記載のボール計測装置。 - 電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有する球技用ボールと、
アンテナと、
ドップラーセンサとを設け、
前記アンテナは、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて、前記球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するように構成され、
前記ドップラーセンサは、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するように構成され、
前記ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成し、前記信号強度分布データに基づいて前記球技用ボールの移動速度および前記球技用ボールのスピン量を算出する、
ことを特徴とするボール計測方法。 - 前記アンテナは、n個(nは2以上の整数)設けられ、
前記ドップラーセンサは、前記n個のアンテナのそれぞれに対応して設けられ、
前記球技用ボールの移動速度および前記球技用ボールのスピン量の算出は、前記各ドップラーセンサから得られたドップラー信号毎に生成した信号強度分布データに基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項17記載のボール計測方法。 - 電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有する球技用ボールと、
アンテナと、
ドップラーセンサと、
演算手段とを備えるボール計測装置であって、
前記アンテナは、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて、前記球技用ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記球技用ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するように構成され、
前記ドップラーセンサは、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するように構成され、
前記演算手段は、前記ドップラーセンサから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成し、前記信号強度分布データに基づいて前記球技用ボールの移動速度および前記球技用ボールのスピン量を算出する、
ことを特徴とするボール計測装置。 - 前記アンテナは、n個(nは2以上の整数)設けられ、
前記ドップラーセンサは、前記n個のアンテナのそれぞれに対応して設けられ、
前記演算手段による前記球技用ボールの移動速度および前記球技用ボールのスピン量の算出は、前記各ドップラーセンサから得られたドップラー信号毎に生成した信号強度分布データに基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項19記載のボール計測装置。
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