JP2012067789A - 重量軽減締結部材及び該締結部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度的な問題を生ずることなく、材料の節約につながり、製造も容易な重量軽減締結部材ならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】外周に雄ねじからなるねじ部14を備えた貞潔部材10に対し、1条もしくは複数条の螺旋状の重量軽減溝15を重ねて設ける。重量軽減溝15は、ねじ部14の軸方向全長に亘って設けられるほか、その一部に設けることでもよい。この場合、重量軽減溝15は、ねじ部14の外周全円周において長手方向の少なくとも一か所に現れるよう形成する。溝のない全周ねじの部分には、緩み止め防止用の接合剤が塗布されてもよい。重量軽減溝15は、ねじ部の展開図において軸方向に対して約20゜から約45゜傾斜した螺旋状溝、もしくはねじ部のねじピッチに対して約5倍から約10倍のピッチとなる螺旋状溝のいずれかとすることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、外周の少なくとも一部に雄ねじが設けられた締結部材、特には重量軽減を図った締結部材に関する。
機械用部材として広く使用されている外周に雄ねじを設けたボルトに代表される締結部材は、仕様上必要とされる十分な強度を保証することが求められる一方において、一般にはその強度を果たす限りにおいて軽量であることが望まれる。
軽量化の観点から、これに寄与すると考えられる第1の要素として、まずその形状寸法が挙げられる。例えば締結部材の径をできるだけ細くすることが軽量化につながるが、この方策では一方において強度面の要求から限界がある。材質面から見れば、例えばアルミニウムやプラスチック材料等の本来軽量である材料の利用が考えられるが、これも同様に強度面からの要求のために自ずから制約がある。チタンや特殊合金などの高強度の材料を使用して形状寸法の小型化を図る方策も考えられるが、これに対しては経済的、資源的な面での制約があり得る。
機械部品に使用されるボルトの一般的な材料としては炭素鋼、クローム鋼、クロームモリブデン鋼、ステンレス鋼、マンガン鋼などがあり、本願発明はこれら通常用いられる材料における軽量化を念頭に置くものとする。ただし、本願発明の適用はこれらに限定されるものではなく、上述した各種材料の締結部材に対しても全く同様に適用が可能である。
従来技術においても、例えばボルトのねじ部分を多角形状にして余肉を削ぐ技術が提案されている(例えば、「特許文献1」参照。)。しかしながらこの場合においては、削ぎ落された結果残りが僅かとなるねじ部分の十分な強度をいかにして確保するかが課題となろう。とくに特殊材料ではなく、通常使用される材料を用いてボルトとしての十分な強度の確保、ねじ部の目つぶれを回避するための新たな技術が必要とされよう。他に、ボルトヘッドの中央部分の余肉を削ぐ技術が提案されているが(例えば、特許文献2参照。)、この場合は削除部分が僅かの領域に限定されることから、軽量化に対して必ずしも十分な効果は期待できない。また、ねじ部の軸心に穴をあけ、ねじ部をその穴の両側から潰して軸方向に一対の溝を設ける技術が開示されているが(例えば、特許文献3参照)、穴あけに余分な加工を必要とし、また軸方向の広い溝はボルト締結に際して好ましくない方向性をもたらすものとなる。
また、雄ねじ部材の外周に軸線方向に延びる減肉用凹部を形成する技術が開示されている(例えば、「特許文献4」参照。)。しかしながらここに開示された技術、製造方法によれば、減肉用凹部は軸線に平行かもしくは僅かに傾斜したものに限定され、また凹部の形状も一定のものに限定されるほか、軸線方向に凹部を断続的に設けることができない。特には軸線方向への傾斜が僅かなものに限定されているため、開示された技術ではねじ部外周の円周方向の一部には、軸線の全長にわたって減肉用凹部が設けられていない部分が生じ、これでは雄ねじ部材の軸線に垂直な向きにおいて方向性が生ずるという問題があった。
これらとは別に、軽量化を目的とするものではないが、従来技術において流体の導通を可能とする目的でねじ部の軸方向、もしくは軸に傾斜する方向にねじの全長に亘って溝を設ける技術(例えば、特許文献2、5参照。)、あるいは、ねじの緩み止めを目的としてねじ部にピッチの異なる2種類のねじ山を設ける技術(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。しかしながら、これらの技術は本願発明の技術とはその目的、構成を全く異にするものであり、これに関しては改めて後述する。
特開2001−317516号公報 特開平9−4623号公報 特開2005−144535号公報 実開2010−43696号公報 実開平3−69394号公報 特開2004−306132号公報
以上より、本発明は従来の締結部材軽量化のための技術における上述したような問題点を解消し、簡便でコスト増がほとんどなく、逆に材料の節約につながり、強度的な問題も生ずることのない、従来技術には見られなかった重量軽減締結部材、および当該締結部材の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、締結部材のねじ部の少なくとも一部に、軸と傾斜する方向の螺旋状の重量軽減溝を設けることによって上記課題を解決するもので、具体的には以下の内容を含む。
本発明に係る1つの態様は、外周の長手方向の少なくとも一部に雄ねじからなるねじ部を備えた棒状締結部材であって、前記ねじ部に1条もしくは複数条の螺旋状の重量軽減溝が設けられ、前記重量軽減溝が、ねじ部外周の全円周方向において長手方向の少なくとも一か所に現れるよう形成された螺旋状溝であることを特徴とする締結部材に関する。締結部材は、ねじ部の軸方向の一部に、前記重量軽減溝のない、すなわち全周にねじ山が形成された部分を有していてもよい。
前記重量軽減溝は、ねじ部の展開図において軸方向に対して約20゜から約45゜傾斜した螺旋状溝、もしくはねじ部のねじピッチに対して約5倍から約10倍のピッチとなる螺旋状溝のいずれかとすることができる。重量軽減溝の少なくとも一部は、ねじ部のねじ方向と逆方向となる螺旋状溝に形成されてもよい。
締結部材が長手方向に雄ねじのないストレート部を備えている場合、該ストレート部にも螺旋状の重量軽減溝が設けられてもよい。また、重量軽減溝の螺旋の傾斜角度、溝幅、溝深さの少なくともいずれか1つは、ねじ部の長手方向で変化させることができる。
締結部材のねじ部の軸方向の少なくとも一部には、緩み防止用の接合剤が塗布されてもよい。これによって重量軽減溝が接着剤溜まりとなるため、接着剤の量の管理が容易となる。
本発明に係る他の態様は、締結部材のねじ部に、雄ねじと、前記雄ねじに重ねて1条もしくは複数条の螺旋状の重量軽減溝とを形成する締結部材の製造方法であって、転造用の平ダイスに、前記重量軽減溝を形成する第1の部位と、前記雄ねじを形成する第2の部位とを設け、前記重量軽減溝と雄ねじとを前記平ダイスの1ストロークの動作によって形成することを特徴とする締結部材の製造方法に関する。
本発明の実施により、締結部材としての機能に影響を及ぼすことなく、約20%の重量軽減を可能とし、同じく材料を約20%節約することを可能とし、製造のためのコスト増をほぼゼロに抑えるという顕著な効果を奏する締結部材を提供することができるようになる。
本発明の実施の形態に係るスタッドボルトを示す正面図(a)、および軸に垂直な断面図(b)である。 図1に示すスタッドボルトの形成過程を示す説明斜視図である。 本発明の他の実施の形態に係るボルトを示す正面図である。 本発明のさらに他の実施の形態に係るボルトを示す正面図である。
以下、本発明の第1の実施の形態に係る締結部材、並びに該締結部材の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態ではスタッドボルトを例にして説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、通常のボルトほか、外面に雄ねじを有する他の締結部材に対しても広く適用することができる。図1(a)は、本実施の形態に係るスタッドボルト10の正面図を示している。図においてスタッドボルト10は、第1のねじ部12、中間部13、第2のねじ部14から構成されている。スタッドボルトにおいては一般に、第1のねじ部12と第2のねじ部14に使用目的に応じて逆ねじを含む異なる諸元のねじが切られているが、図示の例では植込み側の第1のねじ部12には細目ねじを、締結側の第2のねじ部14には並目ねじが切られている。
本実施の形態に係るスタットボルト10は、第2のねじ部14の外周に予備径が10mm、ピッチが1.5mmのいわゆるM10並目ねじが設けられ、さらにこの第2のねじ部14に、雄ねじの複数のねじ山と交差しつつ軸方向に斜めに延びる重量軽減用の螺旋状の溝15を設けていることを特徴とする。図面には示していないが、同様な重量軽減溝15を第1のねじ部12に設けることも自由である。
図示の例では、第2のねじ部14を展開図で見た場合に、縦軸方向に対して20°傾斜した溝15が第2のねじ部14の外周に4条(4本)設けられている。図1(b)は、図1(a)に示すスタッドボルト10の軸に垂直な面で切った断面を示している。図1(b)において、4条の溝15は、ねじ部14の断面周囲に4か所の凹部として表われ、その概略諸元としては凹部の広がり角度αが28゜、溝深さdが1.7mmの略V字状の凹部としている。本願発明者らの実験によれば、材質をMnB320H(マンガン・ボロン鋼)とした場合に、このような諸元の溝15を設けたとしてもボルト強度9T以上、引張強度90kgf/mm、降伏点72kgf/mmの特性を維持しており、M10ボルトとしての一般要求諸元を満たすものとなっている。
溝15を設けることにより、当該溝15の容積相当分の重量軽減が可能となる。本実施の形態においては、後述するようにこの溝15を含むねじ部14を転造で形成することから、通常のM10の締結部材用の転造素材ブランクが直径約9mm必要であるのに対し、溝15の余肉がねじ部の材料として活用できるために素材ブランクの直径を約8mm(φ8.04)にまで低減することができる。すなわち第2のねじ部14において約20%(4/4.5)の材料の節約と、同時にねじ部14の約20%の重量軽減を実現するものとなる。
この重量軽減の効果としては、たとえば同じM10のねじを有するねじ部の有効長さが30mmのボルトに換算すれば、1本当り約6gの重量軽減となる。1つの例として、自動車用の自動変速機の場合、ハウジング固定用としてこの種のボルトが計50本使用されていることから、1台当りでみれば約300gもの重量軽減を実現できるものとなる。このような重量軽減は、自動変速機を支える部材から車両全体に対しても重量面での低減効果を及ぼすものとなり、あるいは他の構成部品に加えられる負荷、車両の燃費面に対しても好影響を及ぼすものとなる。
なお、本発明に係る溝15は、ねじ部14の縦軸方向に螺旋がねじ部14の外周を少なくとも一周巡るように設けられる。図示のスタッドボルト10の場合には縦軸方向に十分な長さがあるため、溝15が一周以上巡るよう形成するのは容易であるが、例えば縦軸方向の長さが短く、溝15が一周を巡るのが困難な場合には、他の溝15(1本もしくは複数本)との間で縦軸方向にオーバーラップして設けられてもよい。これによって、本発明では、ねじ部14の外周全周にわたって、縦軸方向の少なくとも1か所に溝15が現れるものとなり、これによって本発明に係る締結部材では軸線に垂直な全方位において方向性が生ずることがなくなる。これは以下の他の実施の形態においても同様である。
図2は、図1に示すスタッドボルト10を転造によって製造する場合の模式図を示している。図において、スタッドボルト10の素材ブランク10aが準備されるが、これは従来技術による冷間鍛造などの製法により形成され得る。素材ブランク10aが一対の平ダイス20(20a、20b)の間に提供され、手前側にある固定ダイスプレート20aに対して対向する移動ダイスプレート20bを矢印Aに示すように平行移動させてこの両者の間で素材ブランク10aを圧潰して第2のねじ部の外周面14aに雄ねじと溝15を塑性変形により形成する(双方のダイスプレートを移動させることでもよい)。両ダイスプレート20a、20bにはこのため、溝形成部21と雄ねじ形成部22とが設けられ(固定側ダイスプレート20aは同様な成形部が図の背面側に表れる)、図示の例では、転造により素材ブランク10aの外周面14aにまず溝15が、続いてその上に雄ねじが転造により形成される。その際、溝15と雄ねじとは移動ダイスプレート20bの1ストロークによって連続して形成されるため、雄ねじのみを形成する通常のボルト製造の場合に比べてほとんど製造コストに差はなく、加工も極めて簡便で効率的に行うことができる。転造以降に必要とされる熱処理、表面処理に関しては従来技術と同様である。
以上のような転造により形成される本実施の形態に係るスタッドボルト10は、上述した材料の低減、加工の容易さに加えて、転造による一般的な利点を享受することができる。すなわち、加工精度が安定し、面粗さが向上し、塑性変形のために強度が高く、素材の表面処理が残るために耐食性に優れるなどの各種メリットが得られる。また、溝15がねじ部14の全周を覆って螺旋状に設けられることにより、軸に平行な溝と異なってボルト10の方向性がなくなり、また転造の際のダイスによる不均一な喰い付きを回避することができる。また、約20%の重量軽減を可能にするのは、溝15を螺旋状に設けることによるものであって、軸と平行とする縦溝によってこれだけの重量軽減を得ようとすれば特許文献1、3に示すほど極端ではないとしても、ねじ部14に方向性が生じ、あるいは強度的な問題が生じ得よう。
なお、重量軽減溝15の形成は、上述したような各種メリットが得られることから転造により行うことが好ましいが、本発明における重量軽減の目的からは必ずしも転造による形成とする必要はなく、ブランク素材の段階での鍛造や機械加工により予め溝を形成すること、あるいはねじが形成される前又は後に溝を機械加工等により設けることであってもよい。
本実施の形態に係るスタッドボルト10には、締結部材としての様々な変形態様が考えられる。まずねじ部14の諸元に関する上記記載の内容は単なる一例であって、ねじ部の寸法は太さも含めて任意であり、また材料も特には限定されない。またボルトの形式もスタッドボルトに限定されず、通常のボルトヘッドを備えたボルトやフランジボルト、あるいはヘッド部が6角に限らず、ソケットボルトを含む各種形式のボルト、さらにはビス状のものであっても雄ねじが設けられた締結部材であれば、これらにも対しても全く同様に適用が可能である。
さらに、図1(b)に示す溝15の諸元も例示であって、ボルトの強度に与える影響が少なく、重量軽減に効果的となるものであれば、V字状ではなくU字状やその他の形状にするなど各種の形態の適用が可能である。また、本実施の形態では溝15を4条としているが、加工が容易であり、またねじ部14への悪影響が生じない限り、1条から任意の数を選択することが可能である。溝15の螺旋状の傾斜角度は、軸と平行に近づくほどボルト10に方向性が生じ、また転造の際のダイスに対する喰い付きのばらつきが生じ易くなり、逆に雄ねじの傾斜に近づくほどねじ部14の強度面に影響を与え易い。好ましくは、展開図で見たときにボルト10の軸に対して約20゜から約45゜の範囲の傾斜、あるいは雄ねじのピッチに対してその5倍から10倍ほどのピッチとなる傾斜である。
また図示の例では、ねじ部14の雄ねじの傾斜と溝15の傾斜とが同一方向(右ねじ同士)となっているが(以下、この状態を「順目」という。)、必ずしもこれに限定されず、この傾斜が逆向き(右ねじと左ねじの関係)となっていることでもよい(以下、この状態を「逆目」という。)。
なお、本発明に係る溝15を図2に示すような転造によって形成する場合、溝15の形態に関してはかなりの自由度が得られる。上述した順目/逆目の差、溝の形状の差に加えて、溝15の傾斜角度(ピッチ)をボルト10の長手方向において変化させることも自在である。また、溝15の幅、深さに関しても長手方向において変化させることは自在である。これらは、ボルト15の局部、局部に掛かる負荷の大きさに応じて設定することができる。これは他の実施の形態においても同様である。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る重量軽減締結部材について、図面を参照して説明する。本実施の形態は、先の実施の形態に係る締結部材の応用に関する各種態様をさらに示すものである。まず、図3(a)に示すボルト20は、ねじ部24に設けられた溝25が、ねじ部24の軸方向全長に亘って延びておらず、ボルトヘッド21の反対側となるねじ部24の軸端部26に至る手前で溝25が終息した状態に設けられている。例えば使用状況によってボルトの軸端部26に高負荷が加わる場合などには、これに対応し、軸端側の一部26には溝25を設けることなく、全周をねじ部とすることで強度面に配慮するものとなる。これに限らず、溝25は重量軽減を目的とするものであることから、液体通路用とは異なって必ずしも連続して設けられる必要はなく、任意の位置にて終息、断続することができる。
この形式のボルト20は他の用途にも応用することができる。例えば、緩み止め効果を狙ってボルトの一部外周に接着剤を塗布し、当該ボルトを相手側の締結部材に締付ける際にこの接着剤を相互のねじ部の間に浸透させて両者を強固に接合することが行われている。この際、接着剤の塗布量が多過ぎると接着剤が結合部材間からボルトヘッド21側に溢れ出し、作業性を害するものとなる。逆に塗布量が少な過ぎると十分な接合強度が得られない。このため、ねじ部24への接着剤の塗布量は注射器を用いるなどして厳しく管理されているのが実状である。図3(a)に示す形式のボルト20を使用することにより、溝25が設けられていないねじ部24の軸端部26に接着剤を塗布することができる。締結時、ボルト20を相手側締結部材に差し込んで締付ける際に、まず当該軸端部26に相当する位置で両締結部材間に接着剤が充填され、余剰となった接着剤は溝25に入り込む。この際、ボルト20締結時におけるインパクトレンチなどによるボルト締付け用の回転駆動力により溝25に入った接着剤は遠心力で相手側締結材に向けて押し出され、これが両部材間に充填されることによってより上方へ接着剤が浸透する。最終的に余剰となった接着剤があってもこれは溝25内に留まるため、ボルトヘッド21の側の外部に溢れ出ることはない。もし必要であれば、ボルトヘッド21側においても溝25を終息させ、接着剤がそれ以上浸透しないようにしてもよい。
図3(b)は、これをさらに変形させた態様の重量軽減ボルト30を示している。図において、ボルト30のねじ部34は、その中央部36において溝35が一旦中断され、その上方には順目の溝35aが、下方には逆目の溝35bが設けられている。この応用としては、上述したものと同じく緩み止め用の接着剤をねじ部34の外周に塗布する際において、従来では軸端側に塗布したものを上方まで浸透させることしかできなかった。これにより接着剤の量のばらつきによって量が不足しているときなど、特にねじ部34の全長が長い場合にその全長に亘って接着剤が充填されないことがあった。本態様のボルト30を使用した場合、溝35のない中央部36に接着剤を塗布することにより、ボルト締結時にボルト30が相手側締結部材に対して中央部36に達すると、それより高い部分においては上述と同様に上方に接着剤が充填され、それよりも低い部分においては逆目の溝35bの存在により、溝35bと相手側締結部材との相対移動によって余剰接着剤には下方向に向くベクトルが働き、接着剤を下方向に向けて充填させるものとなる。
図面にはないが、他の応用例としては、図3(a)と(b)を組合せ、ねじ部の軸端側と中央部との2箇所に、溝の設けられていない全周ねじの切られたねじ部を設け、その他のねじ部にはいずれも順目の溝を設けることでもよい。これにより、従来軸端側1か所から接着剤を上端まで充填させていたものを、軸端と中央部の2箇所からそれぞれ上方に向けて接着剤を充填させることができる。なお、「中央部」とは、必ずしもねじ部の軸方向の中心を意味せず、ボルトヘッド側から軸端までの間の任意の位置であってもよい。また、中央部に設けられる全周ねじ部は、必ずしも1箇所でなくとも、必要に応じて複数箇所に設けることでもよい。
以上の説明では緩み止めのために接着剤を塗布することを例に挙げているが、緩み止めはこれには限定されず、例えば半田ペーストを塗布しておいてあとで局部通電などにより両締結部材間を加熱して両者を接合するようにしてもよい。本明細書ではこれらの緩み止め防止剤をまとめて「接合剤」と呼ぶものとする。
本実施の形態では、ねじ部の一部に溝を設けることなく、局部的に全周ねじ部を残すものとしている。これによって重量軽減効果は一部損なわれるものの、上述したように他の機能を付加させることができる。従来技術において知られたねじ部に設けられる溝は、流体通路を確保することを意図したものであり、このためボルトヘッド下には環状溝が設けられ、これと軸端とをつなぐための軸方向全長に延びる溝を設けることが必要とされていた(例えば、特許文献5参照。)。これに対して本願発明に係る溝付き締結部材は、重量軽減を目的とするものであり、溝はいずれかにつなぐことは必要されず、任意の形状で任意の配置とすることができる。上述のように溝が途中で切断されていてもよく、あるいは溝の深さ、幅も一定である必要はない。また、図1に示すようなボルトヘッドのないスタッドボルトへの適用も可能となるなど、従来技術における液体導通用の溝とはその目的、構成を異にしており、その効果は従来技術では想定されていなかったものである。
また、従来技術では2つのナットを利用して緩み止め防止を図るため2つのねじを転造することが行われていた。この場合、一般には並目ねじの上に細目ねじを重ねて転造するものであり、いずれもナットのねじ込みを目的とするねじ部を形成するものであった(例えば、特許文献6参照。)。本願発明では一般に並目ねじに加えてこれよりもはるかに大きいピッチの重量軽減用の溝を設けるものであり、溝はねじ込みを目的とするものではないことから、その形態ははるかに自由度が高く(例えばピッチは一定である必要はなく、強度面での要求度が高い軸端部ではピッチを大きくし、逆に軸方向中央部分でピッチを小さくすることなどが可能。)、またナットの使用自身が必要とされない場合があるなど、従来技術とはその目的、構成、効果を全く異にするものである。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る重量軽減締結部材について、図面を参照して説明する。本実施の形態は、これまで述べた各実施の形態のさらなる応用例に関する。まず、図4(a)に示すボルト40は、螺旋状の溝45aと45bがそれぞれ順目、逆目に形成され、両溝45aと45bが交差するよう形成されている。溝45(a,b)をこのように形成することにより、ねじ部44における溝45の密度を高めることができ、軽減される重量を同一とすれば、その分一本一本の溝45の幅、深さを低減できる。このため、ボルト負荷による局部的な応力の集中が緩和され、また転造時における工具の負荷を軽減させ、余肉の分散をより容易にするという効果を奏する。
図4(b)に示す例は、外周にねじを設けていない部分を含む、いわゆる半ねじ(中ねじ)ボルト50の例を示している。ヘッド部51は角柱形状を有するが、これは任意である。図示の例では、ねじ部54に溝55が設けられているが、溝55はねじのないストレート部56にも同様に設けられ、当該部分においても重量軽減効果を同様に得ることができる。なお、この場合、ねじ部54とストレート部56の転造前のブランク径が同じ大きさであれば、図2に示すような一対のダイスプレートを利用して1ストロークでの製造が容易である。ブランク径が異なっていても、例えばストレート部56の径がネジ部54の径に対し小さい場合であっても、当該ストレート部56の溝55を加工する部分のダイスプレートの表面を互いに対向する方向へ前進させる(一対のダイスプレート間の間隔を狭くする)ことで同様に1ストロークでの転造が可能である。ただし、この際には転造時のボルトブランクの回転角速度がストレート部加工時とねじ部加工時で異なるためこれらを個別に転造することが必要となり、ダイスプレートと1ストロークの長さが長くなり得るが、製造コストの観点で大差が生ずることはない。また、図示の例ではねじ部54とストレート部56の溝55の仕様を同一としているが、両者の間で異なる仕様(本数、傾斜、溝の形状など)の溝55をそれぞれ設けることも可能である。
本発明に係る締結部材、および該締結部材の製造方法は、およそ締結部材を使用する機械加工、製造、運用を行う幅広い産業分野において利用することができる。
10.スタッドボルト、 12.第1のねじ部、 13.中間部、 14.第2のねじ部、 15.溝(重量軽減溝)、 20.ボルト、 24.ねじ部、 25.溝、 21.ボルトヘッド、 26.軸端側の一部、 30.ボルト、 34.ねじ部、 36.中央部、 35(35a,35b).溝、 40.ボルト、 44.ねじ部、 45a、45b.溝、 50.ボルト、 54.ねじ部、 55.溝、 56.ストレート部。

Claims (8)

  1. 外周の長手方向の少なくとも一部に雄ねじからなるねじ部を備えた棒状締結部材において、前記ねじ部に1条もしくは複数条の螺旋状の重量軽減溝が設けられ、前記重量軽減溝が、ねじ部外周の全円周方向において長手方向の少なくとも一か所に現れるよう形成された螺旋状溝であることを特徴とする締結部材。
  2. 前記締結部材が、前記ねじ部の軸方向の一部に、前記重量軽減溝のない全周がねじ山で形成された部分を有している、請求項1に記載の締結部材。
  3. 前記重量軽減溝が、ねじ部の展開図において軸方向に対して約20゜から約45゜傾斜した螺旋状溝、もしくはねじ部のねじピッチに対して約5倍から約10倍のピッチとなる螺旋状溝のいずれかである、請求項1に記載の締結部材。
  4. 前記締結部材が長手方向に雄ねじのないストレート部を備え、該ストレート部にも螺旋状の重量軽減溝が設けられている、請求項1に記載の締結部材。
  5. 前記重量軽減溝の螺旋の傾斜角度、溝幅、溝深さの少なくともいずれか1つが、前記ねじ部の長手方向の間で変化している、請求項1に記載の締結部材。
  6. 前記重量軽減溝の少なくとも一部が、前記ねじ部のねじ方向と逆方向となる螺旋状溝に形成されている、請求項1に記載の締結部材。
  7. 前記ねじ部の軸方向の少なくとも一部に、緩み防止用の接合剤が塗布されている、請求項1から請求項6のいずれか一に記載の締結部材。
  8. 締結部材のねじ部に、雄ねじと、前記雄ねじに重ねて1条もしくは複数条の螺旋状の重量軽減溝とを形成する締結部材の製造方法において、
    転造用の平ダイスに、前記重量軽減溝を形成する第1の部位と、前記雄ねじを形成する第2の部位とを設け、前記重量軽減溝と雄ねじとを前記平ダイスの単一ストロークの動作によって形成することを特徴とする締結部材の製造方法。
JP2010210711A 2010-09-21 2010-09-21 重量軽減締結部材及び該締結部材の製造方法 Pending JP2012067789A (ja)

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