JP2012064589A - プラズマ発生装置及びプラズマ処理装置 - Google Patents

プラズマ発生装置及びプラズマ処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】大面積に亘って均一な分布のプラズマを形成可能なプラズマ発生装置及びこれを備えたプラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】大気よりも減圧された雰囲気を維持可能なプラズマ発生室60と、マイクロ波の進行波を共振させる環状共振器10と、環状共振器10からマイクロ波を分配する複数の結合器42と、複数の結合器42のそれぞれに結合され、プラズマ発生室60にマイクロ波を導入する相互に離隔して設けられた複数のアプリケータ50と、を備え、複数のアプリケータ50はプラズマ発生室60にマイクロ波を導入する誘電体から形成された導波体54をそれぞれ有し、導波体54からプラズマ発生室60に導入されたマイクロ波によりプラズマを生成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマ発生装置及びプラズマ処理装置に関し、特に、プラズマ発生室の内部に任意の分布のプラズマを形成可能なプラズマ発生装置及びこれを備えたエッチング装置などのプラズマ処理装置に関する。
プラズマを利用したドライプロセスは、半導体製造装置、金属部品の表面硬化、プラスチック部品の表面活性化、無薬剤殺菌など、幅広い技術分野において活用されている。例えば、半導体や液晶ディスプレイなどの製造に際しては、アッシング、ドライエッチング、薄膜堆積あるいは表面改質などの各種のプラズマ処理が用いられている。プラズマを利用したドライプロセスは、低コストで、高速であり、薬剤を用いないために環境汚染を低減できる点でも有利である。
このようなプラズマ処理を行う装置の代表的なものして、波長数100MHz〜数10GHzのマイクロ波によりプラズマを励起する「マイクロ波励起型」のプラズマ処理装置がある。マイクロ波励起型のプラズマ源は、高周波プラズマ源などに比べてプラズマ電位が低いので、ダメージ無しのレジスト・アッシング(resist ashing)や、バイアス電圧を印加した異方性エッチングなどに広く使われる。
処理すべき半導体ウェーハや液晶ディスプレイ用ガラス基板は、年々大面積化が進められているため、これらをプラズマ処理するために大面積にわたって密度が高く且つ均一なプラズマ発生装置が必要とされている。
このような要求に対して、プラズマ発生室の周囲に環状の導波管を配置した構成が開示されている(特許文献1、特許文献2)。
図27及び図28は、特許文献1に開示された環状導波管を表す模式図である。同図の構成において、図示しないプラズマ発生室は、環状導波管503の中央に配置される。マイクロ波電源から導入されたマイクロ波523は、分配ブロック521で左右に2分配され、自由空間よりも長い管内波長をもって伝搬する。このように伝搬するマイクロ波は、管内波長の1/2または1/4毎に設置されたスロット522から漏れ波525として放出される。そして、この環状導波管の内側に配置されたプラズマ発生室内に、誘電体透過窓などを介して導入される。
図29は、特許文献2に開示されているマイクロ波導入装置の要部を表す模式図である。すなわち、同図において101は円筒状導波管、102はマイクロ波を円筒状導波管101からプラズマ処理室へ導入するために該円筒状導波管101の内側側壁に形成された複数のスロット、103はマイクロ波を円筒状導波管101に導入するためのマイクロ波導入部である。
プラズマを生成するプラズマ発生室(図示せず)は、この円筒状導波管の中央に設置され、導波管の内側側壁に設けられたスロット102からマイクロ波が導入される。
図27乃至図29に例示したような環状導波管を用いると、従来のアンテナ式のプラズマ発生装置などと比較して、より大面積に亘ってプラズマを生成できる可能性がある。
特開平9−306900号公報 特許第2886752号公報
しかし、図27乃至図29に例示したいずれのプラズマ発生装置も、環状導波管の中に形成されるマイクロ波は定在的な波動場を形成し、この定在的な波動場からの漏れ波を取り出すという発想に基づいている。これは、例えば、管内波長の1/4の間隔で設けられた複数の狭いスロット102、522からマイクロ波を取り出すという構成からも明らかである。
そして、定在波による波動場が形成される場合、マイクロ波のモードが突発的に変化する「定在波モードジャンプ」が生ずるという問題がある。「定在波モードジャンプ」は、自発的に起こり、外部条件(例えば、ガス圧力、マイクロ波電力など)を再現させても、プラズマ密度は再現できず、自発的にあるいは瓢然に変化することがある。その結果として、大面積に亘って均一なプラズマを形成することは困難となる。
また一方、図27乃至図29に例示されているように、複数のスロットを介してマイクロ波をチャンバ内に導入する場合、これらスロットのインピーダンスがプラズマの電子密度に依存して変動するという問題がある。すなわち、チャンバ内に均一なプラズマを形成するためには、これら複数のスロットのそれぞれについて、マイクロ波を平分に分配する必要がある。マイクロ波を平分するには、全ての負荷(すなわち、スロット)のインピーダンスが同じでなければならない。しかし、プラズマの場合には、電子密度の増減によってマイクロ波に対するインピーダンスも変わるので、マイクロ波分配器が全く対称であっても、マイクロ波を平分できないという現象が生ずる。すなわち、プラズマ密度には、「ゆらぎ(fluctuations)」がある。プラズマは、マイクロ波を合計でもっとも吸収しやすい状態に自発的に入るが、それは必ずしもマイクロ波のパワーを平分した状態には限らず、スロット毎にプラズマの電子密度が異なる場合が殆どである。つまり、スロット毎にマイクロ波に対するインピーダンスが変動し、マイクロ波を平分できない。その結果として、チャンバ内に均一にマイクロ波を導入することができず、均一なプラズマを形成することが困難となる。
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、従来とは異なる発想に基づき、大面積に亘って均一な分布のプラズマを形成可能なプラズマ発生装置及びこれを備えたプラズマ処理装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のプラズマ発生装置は、大気よりも減圧された雰囲気を維持可能なプラズマ発生室と、マイクロ波の進行波を共振させる環状共振器と、前記環状共振器からマイクロ波を分配する複数の結合器と、前記複数の結合器のそれぞれに結合され、前記プラズマ発生室にマイクロ波を導入する相互に離隔して設けられた複数のアプリケータと、を備え、前記複数のアプリケータは前記プラズマ発生室にマイクロ波を導入する誘電体から形成された導波体をそれぞれ有し、前記導波体から前記プラズマ発生室に導入されたマイクロ波によりプラズマを生成可能としたことを特徴とする。
上記構成によれば、大面積に亘って均一な分布のプラズマを形成可能なプラズマ発生装置を提供できる。
ここで、導入導波管と、前記導入導波管と前記環状共振器とを結合する方向性結合器と、をさらに備え、前記導入導波管から前記方向性結合器を介して前記環状共振器を励振することにより、前記環状共振器において前記マイクロ波の進行波を形成するものとすれば、環状共振器に進行波による波動場を確実に形成することができる。
また、前記環状共振器には、前記進行波とともに、前記進行波よりも弱い反射波が励起され、前記複数のアプリケータの少なくともいずれかには、前記進行波と前記反射波との位相差を可変とした位相差調整手段を介して前記進行波と前記反射波とが供給されるものとすれば、位相差調整手段を調節することにより、そのアプリケータから出力される進行波と反射波の合成出力を制御することができる。
ここで、前記位相差調整手段としては、可変ショート・プランジャを用いることができる。
一方、前記方向性結合器の結合係数をCo、前記複数の結合器のそれぞれの結合係数をCiとした時、次式
Figure 2012064589

が実質的に成立するものとすれば、導入導波管におけるマイクロ波の反射を解消できる。
また、前記複数の結合器のそれぞれの振幅結合係数は、前記プラズマの電子密度が変化しても前記マイクロ波に対するインピーダンスが実質的に変化しないように低く設定されているのとすれば、環状共振器における共振条件やマイクロ波の分配バランスの変動を抑制することができる。
また、前記複数の結合器のそれぞれのパワー結合係数の合計値は、20パーセント以下であるものとすれば、プラズマの電子密度が変動しても、マイクロ波に対するインピーダンスの変化を実質的に低く抑制でき、環状共振器における共振条件やマイクロ波の分配バランスの変動を抑制することができる。
また、前記環状共振器の管路と内部部品は、その内部を伝搬する前記進行波の一周位相差が360度の整数倍と実質的に等しくなるように形成されてなるものとすれば、進行波による共振を励起することができる。
また、前記アプリケータとプラズマとの結合係数は、前記結合器と前記環状共振器との結合係数よりも大きいものとすれば、結合器により分配されたマイクロ波を低損失でプラズマ発生装置に導入することができる。
また、前記複数の結合器は、方向性結合器であるものとすれば、環状共振器に励振された進行波の方向性に整合させた取り出しができる。
一方、本発明のプラズマ処理装置は、上記のいずれかのプラズマ発生装置を備え、前記アプリケータを介して導入されたマイクロ波により生成された前記プラズマによって被処理物のプラズマ処理を実施可能としたことを特徴とする。
以上詳述したように、本発明によれば、大面積に亘って均一なプラズマの形成が可能なプラズマ発生装置及びプラズマ処理装置を低コストで実現することができる。
従って、例えば、大面積で均一なプラズマ処理を形成したり、逆に、局所的に強いプラズマ処理を形成することも容易に実現できる。
その結果として、大面積の半導体ウェーハや液晶ディスプレイ用基板などに対して、均一且つ迅速にエッチング、アッシング、薄膜堆積、表面改質あるいはプラズマドーピングなどのプラズマ処理を実施することができ、あるいは、各種の被処理物に対して、局所的なプラズマ処理を実行することも可能となり、産業上のメリットは多大である。
本発明の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を説明するための概念図である。 方向性結合器20の作用を説明するための概念図である。 「進行波分配」と「定在波分配」とを比較説明するための概念図である。 本発明の第2の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。 本発明の第3の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。 本発明の第3の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。 本発明の第4の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。 本発明の第4の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。 本発明の実施例のプラズマ発生装置を表す模式平面図である。 図9のA−A線断面図である。 図10のB−B線断面図である。 単一孔により結合された方向性結合器を表す模式図である。 ベーテ孔により結合された方向性結合器を表す模式図である。 2つの孔により結合された方向性結合器を表す模式図である。 十字形スリットにより結合された方向性結合器を表す模式図である。 ループにより結合された方向性結合器を表す模式図である。 本発明のプラズマ処理装置の構造を例示する模式断面図である。 本実施形態における環状進行波共振器へのマイクロ波の導入部を表す概念図である。 反射波R2を利用して出力を可変としたアプリケータを表す概念図である。 アプリケータの部分のA−A線断面構造の具体例を表す模式図である。 図20のB−B線断面構造を表す模式図である。 本発明の実施例のプラズマ発生装置におけるアプリケータの配置を説明するための模式平面図である。 本発明の実施例のプラズマ発生装置の構成を表す模式断面図である。 6個のアプリケータのパワー分配が均一ではない場合のアッシング速度の分布を例示する模式図である。 6個のアプリケータのパワー分配が均一ではない場合のアッシング速度の分布を例示する模式図である。 1番のアプリケータの可変ショート・プランジャ58を最適な位置に調節した時に得られたアッシング速度の分布を表す模式図である。 特許文献1に開示された環状導波管を表す模式図である。 特許文献1に開示された環状導波管を表す模式図である。 特許文献2に開示されているマイクロ波導入装置の要部を表す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、具体例を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を説明するための概念図である。
本実施形態のプラズマ発生装置は、導入導波管70と、方向性結合器20と、環状進行波共振器10と、複数の結合器42と、これら結合器42のそれぞれに結合されたアプリケータ50と、アプリケータ50に接続されたプラズマ発生室60と、を有する。図示しないマイクロ波電源から出力されたマイクロ波Mは、導入導波管70から方向性結合器20を介して環状進行波共振器10に導入され、進行波共振が励起される。
方向性結合器20は、環状進行波共振器10を循環して伝搬しうる相反する2方向のうちのいずれかの方向の伝搬成分のみが励起されるように、導入導波管70と環状進行波共振器10とを結合する。つまり、マイクロ波パワーは、導入導波管70から方向性結合器20を介して環状進行波共振器10に供給され、環状進行波共振器10を一方向に循環する伝搬成分を励起する。
図2は、方向性結合器20の作用を説明するための概念図である。
すなわち、方向性結合器20は、例えば、入力ポート21と出力ポート22とを有する。入力ポート21から環状進行波共振器10にマイクロ波成分M2が入力され、環状進行波共振器10から出力ポート22にマイクロ波成分M3が出力される。そして、方向性結合器20の出力ポート22からの出力は、整合(マッチング)されたダミーロード(dummy load)72により吸収される。
方向性結合器20と環状進行波共振器10においては、導入導波管70を伝搬するマイクロ波成分M1と環状進行波共振器10から導波管70に出力されたマイクロ波成分M3との振幅が同じで位相が反転しており、同時に、導入導波管70から環状進行波共振器10に入力されるマイクロ波成分M2と環状進行波共振器10を伝搬するマイクロ波成分M4の位相が同一となるように位相条件が調節されている。このようなマッチングが形成されている場合、マイクロ波成分M1とM3とは逆相となり打ち消し合うため、ダミーロード72におけるマイクロ波のパワーは最低となり、導入導波管70における反射波は実質的に存在しない。
以上説明したように、方向性結合器20を介して環状進行波共振器10を励起することにより、環状進行波共振器10に一方向のマイクロ波成分のみが供給されて、進行波による波動場が形成される。換言すると、環状進行波共振器10において、反射波の導入による定在波の形成を防ぐことができる。
さらに、本発明においては、このようにして導入された進行波が環状進行波共振器10において共振する条件が満たされている。具体的には、環状進行波共振器10の管路と内部部品は、その内部を伝搬する前記進行波の一周位相差が360度の整数倍と実質的に等しくなるように形成されている。環状進行波共振器10の中を伝搬するマイクロ波進行波の管内波長は、プラズマ発生室60のサイズや、放電空間において生成されるプラズマなどの条件に応じて適宜決定することができる。すなわち、環状進行波共振器10は、プラズマ発生室60に付設された状態でマイクロ波が共振する際の管内波長の整数倍の経路長を有し、マイクロ波が環状進行波共振器10内を一周してその波の位相が変わらないようにすればよい。
そして、このような経路長を有する環状進行波共振器10の内をマイクロ波が進行波として伝搬すると、共振が生じてその強度が高くなる。このような共振状態の進行波からプラズマ発生室60内にマイクロ波を導入することにより、均一で高い強度のプラズマを形成することが可能となる。また、後に詳述するように、機械的な精度などの要因により、環状進行波共振器10の共振周波数がずれる場合には、位相調節器と強度モニタとを設けて、位相差調整により共振周波数を調節することもできる。
本発明により形成される進行波の共振励起は、図27乃至図29に例示したような従来の環状導波管を用いたプラズマ発生装置では得られないものである。例えば、図27及び図28に表した環状導波管503の場合、導波管に導入されたマイクロ波523は、入り口に設けられた分配ブロック521により左右に2分配され、互いに反対方向に進行する。従って、これら分配された波どうしが干渉して定在波が形成される。このような定在波を取り出すために、環状導波管(503)に設けられるスロット(522)の間隔は、定在波の波長の1/2または1/4としなければならない。そして、このような定在波が形成されるとその振幅の強弱に対応して、プラズマの強度にも不均一が生じてしまう。
また、図29に例示した環状導波管101の場合も、導入部103から導入されたマイクロ波は、左右に分かれてそれぞれ反対方向に伝搬するため、進行波とはならない。より詳しく説明すると、この導波管101の場合、導入部103から導入されて左右に分かれたマイクロ波のうちで、図面に向かって左側(左回り)に進む波のほうが強度は高くなる。しかし、同図の構造であっても、左右に分かれる波の強度の差は僅かに過ぎない。
例えば、図27及び図28に表した導波管503の場合には、マイクロ波は、分配ブロック521によって左右にほぼ50%:50%の強度比で分配される。これに対して、図29の導波管101の場合、導入部103から導入されたマイクロ波の左右の分配比はせいぜい60%:40%程度である。その結果として、環状導波管101内に定在波が形成され、マイクロ波の強度に不均一が生ずることとなる。つまり、本発明のように方向性結合器20を環状進行波共振器10の導入部に配置しないかぎり、環状導波管の中にマイクロ波の進行波の波動場を形成することは困難である。
本発明によれば、環状進行波共振器10に対して、整合がとれた方向性結合器20を介してマイクロ波を供給することにより、反射波の影響を排除して、環状進行波共振器10中に進行波によるマイクロ波の波動場を形成することができる。さらに、このようにして形成されるマイクロ波の進行波が共振するように、環状進行波共振器10が構成されている。
導入導波管70から環状進行波共振器10に対して入力されるマイクロ波成分M2は、いわば振り子式時計の「ばね」の役割を有する。すなわち、環状進行波共振器10を伝搬する進行波のうちでプラズマ発生室に放出されてプラズマの形成に寄与した損失成分を補償する役割を有する。かくして、環状進行波共振器10においては、常に一定の強度のマイクロ波の進行波による波動場が形成される。
図1に戻って説明を続けると、本実施形態においては、このような環状進行波共振器10に複数の結合器42が結合され、この結合器42からアプリケータ50を介してプラズマ発生室60にマイクロ波が導入される。すなわち、環状進行波共振器10の内部には導波空間が形成され、ここをマイクロ波の進行波が共振条件で伝搬する。そして、このマイクロ波の一部が、結合器42を介して取り出され、アプリケータ50を介してプラズマ発生室60に導入され、プラズマPが生成され維持される。
つまり、本発明においては、環状進行波共振器10において形成される進行波のパワーを複数の結合器42に分配して取り出すことができる。
図3は、「進行波分配」と「定在波分配」とを比較説明するための概念図である。
すなわち、同図(a)は、「進行波分配」を表し、マイクロ波の進行波が伝搬する導波管100に結合器42が結合されてマイクロ波が分配される。進行波の場合には、導波管100を伝搬するマイクロ波の強度は進行方向に対して均一であるので、どの場所で取り出してもその強度はほぼ一定であり、分配のバランスを維持することが容易である。
これに対して、「定在波分配」の場合、同図(b)に表したように、定在波の強度分布すなわち定在波の「腹」と「節」により、マイクロ波の強度は不均一である。従って、結合器42の位置に応じて、マイクロ波の強度が変化する。逆にいうと、一定の強度を維持するためには、定在波の波長に応じて結合器42の配置を決定しなければならない。
本発明によれば、図3(a)に例示した如く、共振進行波の波動場からマイクロ波を取り出す(分配する)ので、取り出し位置を自由に設定することができる。その結果として、プラズマ発生室60の形状やガス圧の分布などに応じて結合器42及びアプリケータ50を最適な位置に配置することができるという効果が得られる。
また一方、本発明においてもうひとつの重要な数値として、マイクロ波の取り出しのための結合器42の結合係数(coupling coefficient)Ciを挙げることができる。これは、簡単に言うと、環状進行波共振器10内を結合器42に向けて伝搬してくるマイクロ波の強度に対する、結合器42から取り出されるマイクロ波の強度の比に対応する。従って、結合係数Ciが大きいほど、環状進行波共振器10から高い効率でマイクロ波が取り出される。
本発明においては、結合器42の結合係数Ciを低くする。結合係数Ciを低くすることにより、プラズマPの状態によるアプリケータ50のインピーダンスの変化の影響を受けにくくすることができる。すなわち、前述したようにプラズマPは「ゆらぎ(fluctuations)」を有し、その電子密度が空間的、時間的に変動する。プラズマPの電子密度が変化すると、マイクロ波に対するインピーダンスも変化する。特定のアプリケータ50の付近のプラズマPの状態の変化は、環状進行波共振器10の共振条件を変動させ、また、他のアプリケータ50におけるマイクロ波の取り出しバランスにも影響を与える。すなわち、マイクロ波は、プラズマPの電子密度が高い部分に集中してしまい、均一なプラズマPを維持することが困難となる。
これに対して、本発明によれば、まず、共振進行波の波動場を形成することにより、マイクロ波のモードを単一とし、特定のアプリケータ50への集中を抑制する。さらに、本発明においては、環状進行波共振器10からマイクロ波を取り出す結合器42の結合係数を低く抑えることによって、プラズマPのインピーダンスの変動による影響が環状進行波共振器10に及ばないようにする。つまり、結合器42の結合係数を低く抑えることより、プラズマPのインピーダンスの変化による環状進行波共振器10の共振条件の変動や、複数の結合器42の間の分配バランスの変動を抑制することができる。その結果として、プラズマPの状態に依存せず、常に所定の条件で進行波の共振による波動場を形成し、この波動場から所定のバランスでマイクロ波を複数のアプリケータ50に分配することができる。
本発明者の検討によれば、結合器42における結合係数Ciを数パーセント以下に抑えることにより、プラズマPのインピーダンスの変化を受けにくくなり、十分に安定したマイクロ波励起が可能となることが分かった。この点について、以下、図2を参照しつつ説明する。
環状進行波共振器10が共振条件を満たすように調整されている(すなわち、マイクロ波が環状進行波共振器10を一周する前後の位相差が360度の整数倍となるように調整されている)ものとする。ここで、入力されるマイクロ波の強度をM、環状進行波共振器10を一周するマイクロ波の伝搬係数(transmission coefficient)をT、方向性結合器20の結合係数をC0とする。
すると、ダミーロード72におけるマイクロ波の強度Mdummyは、次式により与えられる。
Figure 2012064589
マイクロ波のパワーが全て環状進行共振器10に投入されることが望ましく、この時、ダミーロード72におけるマイクロ波のパワーはゼロになる。つまり、Mdummy=0なる条件が満たされることが望ましい。従って、次式が満たされることが望ましい。
Figure 2012064589
(2)式から次式が得られる。
Figure 2012064589
マイクロ波が環状進行波共振器10を一周する時の伝搬係数Tは、導波部の内壁で生ずる損失と、結合器42からプラズマにパワーが放出されることによる損失と、に依存する。導波部の内壁で生ずる損失は非常に小さく無視できる。従って、伝搬係数Tは、結合器42を介してプラズマへのパワーの放出のみによって実質的に決定される。
ここで、合計の伝搬係数(total transmission coefficient)Tは、次式に表されるように、それぞれの結合器42における伝搬係数T1、T2、・・・の積算である。
Figure 2012064589
結合器42における反射が非常に小さく損失が小さい場合には、それぞれの結合器42における伝搬係数Tiは、結合係数Ciを用いて次式により表すことができる。
Figure 2012064589
(5)式を(4)式に代入し、(3)式と組み合わせると以下の条件が得られる。
Figure 2012064589
従って、方向性結合器20の結合係数C0を(6)式の如く設定すると、導入導波管70から環状進行波共振器10に導入されるマイクロ波パワーと、環状進行波共振器10における減衰量と、がバランスし、導入導波管70における反射波を殆ど無くすことができる。
またここで、結合係数Ciを低く抑えると、環状進行波共振器10内での電波強度が強くなり、また、プラズマの影響を受けにくくなるという効果が得られる。
すなわち、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度は、(4)式により表される合計の伝搬係数(total transmission coefficient)Tにより決定される。合計の伝搬係数Tが1に近づく(すなわち、減衰が抑制される)ほど、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度は高くなる。(3)式が満足され、結合が良好な状態においては、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度は、次式により与えられる。
Figure 2012064589
従って、(1−T2)1/2をできるだけ小さくする必要がある。これは換言すると、合計の結合係数Tをできるだけ1に近づける必要があることを意味する。(6)式を考慮すると、合計の結合係数Tを1に近づけるためには、すべての(1−Ci2)1/2を1に近づける必要があることが分かる。これはすなわち、全ての結合係数Ciをできるだけ小さいレベルに抑制する必要があることを意味する。
以上の説明をまとめると、本発明の環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度は、次式により表すことができる。
Figure 2012064589
(8)式において強度M4を大きくするためには、結合係数Ciのそれぞれを小さくする必要がある。結合係数Ciのそれぞれが1よりも十分に小さい場合、(8)式は次式に近似できる。
Figure 2012064589
ここで、結合係数Ciは、振幅の比率を表す係数であるので、より厳密には、「振幅結合係数(amplitude coupling coefficient)」と呼ばれ、通常は「デシベル(dB)」により表される。一方、Ci2は、「パワー結合係数(power coupling coefficient)」と呼ばれ、通常は、「パーセント(%)」により表される。パワー結合係数は、マイクロ波のパワーのうちの何パーセントが主要導波部(main waveguide)から結合部(coupled port)に分岐したかを表す。(9)式は、「環状進行波共振器10におけるパワーは、入力パワーの
Figure 2012064589

倍である」ことを表している。
ちなみに、複数の結合器42のパワー結合係数の合計が20パーセントの場合、環状進行波共振器10内を伝搬しているマイクロ波のパワーは、導入パワーの5倍にもなる。以上、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度について説明した。
次に、プラズマによる影響について説明する。
上記の説明は、それぞれのアプリケータ50で反射が無い場合の理論である。実際には、それぞれのアプリケータ50で多少の反射が生ずる。すべてのアプリケータ50に入力したパワーの合計は導入パワーと等しく、環状進行波共振器10内でのマイクロ波パワーの
Figure 2012064589

パーセントになる((9)式参照)。
最悪のケースとして、プラズマの揺らぎ(fluctuation)によって全てのアプリケータ50でマイクロ波がすべて反射され、それらが進行波とは反対の方向に進んでしまうとすると、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の反射パワー/入射パワーの比率は次式により表される。
Figure 2012064589
これに対して、
Figure 2012064589

が小さければ、プラズマの揺らぎによる反射が生じた場合でも、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の伝搬状態は殆ど変化せず、マイクロ波の分配を維持できる。つまり、結合係数Ciを小さくすると、プラズマの揺らぎが生じてもマイクロ波の反射の増大を抑制できる。実用的には、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の反射波パワーが入射波パワーの20パーセントを超えないようにするために、結合器42のそれぞれのパワー結合係数の合計が20パーセント以下となるように調整することが望ましい。
以上説明したように、本発明においては、結合器42における結合係数Ciを低く抑えると、環状進行波共振器10内での電波強度が強くなり、また、プラズマの影響を受けにくくなるという効果が得られる。
結合係数Ciを調節する方法としては、例えば、後述する各種の方向性結合器の形態のうちで、開口を有するものの場合、その開口のサイズや位置を調節する方法がある。もちろん、これ以外にも方向性結合器の形態に応じて各種の方法により結合係数Ciを最適な範囲に調節することができる。
なお、結合器42の結合係数Ciを低くすると、取り出されるマイクロ波のパワーも小さくなるが、結合器42及びアプリケータ50の数を適宜設定することにより、十分に強く均一なプラズマPを大面積に亘って励起することができる。
また、本発明においては、複数の結合器42の結合係数Ciは、全て同一である必要はない。例えば、プラズマ発生室60内におけるガス流や圧力分布、あるいは被処理物の形状やサイズなどに応じて、導入するマイクロ波の強度に分布を設けたいような場合には、結合器42の結合係数Ciを、場所毎に適宜変化させてもよい。この場合も、プラズマPのインピーダンスの変化による影響を受けにくい範囲内において結合係数Ciを設定すればよい。
またここで、本発明においては、結合器42の結合係数Ciは、環状進行波共振器10内を伝搬する進行波の減衰係数(attenuation coefficient)を決定する要素となる。つまり、マイクロ波の進行波が環状進行波共振器10を一周すると、その強度は、全ての結合器42の結合係数Ciを累積した量だけ減衰する。この減衰した分は、プラズマ発生室60内に導入されてプラズマPの生成に寄与することとなる。そして、環状進行波共振器10を一周する間に吸収されたマイクロ波パワーは、方向性結合器20を介して導入導波管70から補充されることとなる。
従って、方向性結合器20の結合係数C0を(6)式に関して前述したように設定すると、導入導波管70から環状進行波共振器10に導入されるマイクロ波パワーと、環状進行波共振器10における減衰量と、がバランスする。
Figure 2012064589
すなわち、方向性結合器20の結合係数C0を(6)式のように設定すれば、環状進行波共振器10におけるマイクロ波パワーの出入りがバランスし、導入導波管70における反射波を完全に無くすことができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。同図については、図1乃至図3に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、環状進行波共振器10からマイクロ波を取り出すための結合器として、方向性の結合器40が設けられている。環状進行波共振器10内を伝搬するマイクロ波は、その進行方向の波のみにより構成されるので、方向性の結合器40により取り出した場合も同様の結果が得られる。ただし、結合器40の結合係数Ciは、図1に関して前述した場合と同様に、数パーセント以下に抑えることが望ましい。結合器40の結合係数を低く抑えることより、プラズマPのインピーダンスの変化による環状進行波共振器10の共振条件の変動や、複数の結合器40の間の分配バランスの変動を抑制することができる。その結果として、プラズマPの状態に依存せず、常に所定の条件で進行波の共振による波動場を形成し、この波動場から所定のバランスでマイクロ波を複数のアプリケータ50に分配することができる。
図5及び図6は、本発明の第3の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。これらの図についても、図1乃至図4に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、環状進行波共振器10にパワーモニタ80と位相調節器(phase shifter)90が設けられている。すなわち、本発明においては、環状進行波共振器10において、マイクロ波の進行波による共振を励起する。このためには、図1に関して前述したように、環状進行波共振器10とその内部部品は、その内部を伝搬する前記進行波の一周位相差が360度の整数倍と実質的に等しくなるように生成する必要がある。また、その管内波長は、プラズマ発生室60のサイズや、放電空間において生成されるプラズマなどの条件に応じて変化する。
これに対して、本実施形態によれば、パワーモニタ80により、環状進行波共振器10を伝搬するマイクロ波の強度を測定し、位相調節器90によってその位相を調節することにより、マイクロ波の共振条件を最適な範囲に調節できる。すなわち、マイクロ波が環状進行波共振器10内を一周してその波の位相が変わらないように、位相調節器90で調節すればよい。この場合、位相調節器90は、図示した如くひとつでもよく、または複数の位相調節器90を設けてもよい。
また、図6に例示した如く、導入導波管70の終端にダミーロード72を設け、その途中経路にダミーロード74とともにパワーモニタ82を設けてマイクロ波のパワーをモニタしてもよい。
いずれの場合においても、マイクロ波の共振条件が満足されると、入射パワーPfに対して反射パワーPrが大幅に低下する。
図7及び図8は、本発明の第4の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。これらの図についても、図1乃至図6に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、環状進行波共振器10からマイクロ波を取り出すための結合器として方向性の結合器40が設けられ、また、マイクロ波の共振条件を調節するために、パワーモニタ80と位相調節器90が設けられている。これらの要素に関する作用効果は、図1乃至図6に関して前述した通りである。
図9は、本発明の実施例のプラズマ発生装置を表す模式平面図である。
また、図10は、そのA−A線断面図である。
また、図11は、そのB−B線断面図である。
すなわち、本実施例のプラズマ発生装置は、導入導波管70から方向性結合器20を介して環状進行波共振器10にマイクロ波Mが導入される。なお、図9においては、環状進行波共振器10を六角形状に表したが、本発明はこれに限定されず、円環状、楕円状、多角形状などの各種の環状の形状としてもよい。方向性結合器20には、マイクロ波を導入するための2つの開口21、22が設けられ、その間隔Lは、環状進行波共振器10の管内波長をλgとした時に、次式により表される値に設定されている。
Figure 2012064589
このようにすると、進行方向のマイクロ波成分のみを導入導波管70から環状進行波共振器10に導入することができる。環状進行波共振器10に導入されたマイクロ波は、進行波の共振波動場を形成し、結合係数が低い結合器44により取り出される。本実施例の場合、これら結合器44も、それぞれ2つの開口を有し、進行方向成分のマイクロ波を取り出すことができる。
これら結合器44は、方向性結合器としてもよく、例えば図10及び図11に表したように、マイクロ波Mの進行方向に対して傾斜したスリット状の2つの開口を有するものとすることもできる。これら2つの開口を介して、環状進行波共振器10からマイクロ波Mを取り出すことができる。結合器44を介して取り出されたマイクロ波Mは、アプリケータ50の導入導波管52を伝搬し、アプリケータ50の導波体54を介してプラズマ発生室60の中に導入される。
導波体54の材料としては、マイクロ波を低損失に透過し、且つ、導入導波管52とプラズマ発生室60とを区画して気密を維持できるものとする必要がある。このような材料としては、例えば、石英やアルミナあるいはサファイアなどの誘電体を挙げることができる。これらの誘電体は、マイクロ波に対する力率が低く、真空と大気圧との圧力差にも耐えうる機械的強度を有し、耐熱性も良好で、さらに、プラズマによりスパッタやエッチングされても、チャンバ内の被処理物を汚染するおそれも低い。
前述したように、結合器44の結合係数を低く抑えることより、プラズマのインピーダンスの変化による環状進行波共振器10の共振条件の変動や、複数の結合器44の間の分配バランスの変動を抑制することができる。一方、このようにして環状進行波共振器10からアプリケータの導入導波管52に取り出されたマイクロ波Mが導波体54を介してプラズマ発生室60に導入される際の結合係数は、十分に高いことが望ましい。すなわち、アプリケータ50の結合係数を高くすることにより、損失を抑制してプラズマの発生効率を高くすることができる。このようにして、導波体54を介してプラズマ発生室60に導入されたマイクロ波Mによって所定のガスのプラズマを発生させることができる。
また、図9乃至図11においては、環状進行波共振器10の導波空間として、断面形状が略矩形状のものを例示したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、環状進行波共振器10の導波空間の断面形状は、プラズマ発生室との配置関係や、導入導波管70との接続関係あるいは、プラズマの分布などを考慮して円形、楕円形、半円形、多角形、その他対称あるいは非対称な不定形などとすることができる。
次に、本発明のプラズマ発生装置に用いることができる方向性結合器20、40の具体例のいくつかを紹介する。
図12は、単一孔により結合された方向性結合器を表す模式図である。すなわち、同図に例示したように、導波管1と導波管5とがH面で重なって比較的小さい単一孔Aにより結合されている構造を挙げることができる。このような場合、この単一孔Aを介して導波管5から導波管1に漏れ出る電界によって導波管1が励振され、単一孔Aの中心点に電気双極子が存在するのと同様の分布が形成される。一方、導波管5から導波管1に漏れ出る磁界によっても、単一孔Aの中心点に磁気双極子が存在するのと同様の磁力線分布が形成される。これら電気双極子と磁気双極子とを重畳させた効果として、導波管1において一方向のみに伝搬するマイクロ波が励起される。
図13は、ベーテ孔により結合された方向性結合器を表す模式図である。同図に例示したように、導波管5と導波管1とがベーテ孔Aを介して結合されている場合、導波管5のTE10モードの電界に比例し孔に垂直な電気双極子と、導波管5の磁界に比例し逆方向の磁気双極子が導波管1に形成される。これら電気双極子による波と磁気双極子による波とは、導波管1の一方向においては同位相であり相加わるが、逆方向においては逆位相となり差し引かれる。従って、孔の位置を調節することにより逆方向の波を零とすることができる。
図14は、2つの孔により結合された方向性結合器を表す模式図である。すなわち、側壁またはH面において距離Lだけ離れた2つの小孔A、Bによって、導波管5と導波管1とが結合されている。ここで、距離Lは、前述した式により定義される。導波管5を進行する波が、これら2つの小孔を介して導波管1を励振する。このときに、2つの小孔A、Bを介してそれぞれ励振された波は、導波管5における波の進行方向と同方向においては同振幅、同位相で進むが、反対方向においては同振幅、逆位相となり、打ち消し合う。従って、導波管1には、一方向の波だけが励振される。
図15は、十字形スリットにより結合された方向性結合器を表す模式図である。すなわち、導波管5と導波管1とを直交させ、その重なり合う面の対角線上に1つあるいは複数の十字形のスリットSが形成されている。このようにスリットSを設けると、電界による結合は無視できるほど小さく、磁界による結合が支配的となる。すると、導波管5のHt、Hzによりスリットの長軸上に磁気双極子が形成され、これにより導波管1が励振されて方向性が生ずる。
図16は、ループにより結合された方向性結合器を表す模式図である。すなわち、導波管5の導波管内に同軸線路1をループで結合したもので、導波管5から同軸線路1への結合は電界およびループを通過する磁界によって行われる。電界により励起された波は同軸線路1の両方向に同振幅、同位相で進む。一方、磁界よって誘起される電流はファラデーの電磁感応則により与えられ、同軸線路1の両方向に進む波は、同振幅だが逆位相となる。従って、これら電界による波と磁界よる波との結合が適当に行われると、同軸線路1を進む一方の波の出力は零となり、方向性が得られる。
以上図12乃至図16を参照しつつ、本発明において用いることができる方向性結合器の具体例を挙げた。しかし、本発明は、これら具体例を用いたものに限定されるものではない。例えば、これらの他にも導入導波管70と環状進行波共振器10とを結合させてその共通壁にスロットを設けたものや、さらにそのスロットにモード調整用の導体棒(ポスト)を設けたもの、あるいはその他の各種の方向性結合器を用いても良く、環状進行波共振器10の励振に方向性が得られるいずれのものを利用しても本発明の範囲に包含される。
次に、本発明のプラズマ発生装置の具体例について説明する。
図17は、本発明のプラズマ処理装置の構造を例示する模式断面図である。この装置は、処理チャンバ60と、この処理チャンバ60の上面に設けられた平板状の誘電体板からなる導波体(透過窓)54と、導波体54の外側に設けられた導入導波管52と、結合器40を介して結合された環状進行波共振器10と、を有する。処理チャンバ60は、導波体54の下方の処理空間において半導体ウェーハなどの被処理物Wを載置して保持するためのステージ16と、を有する。
処理チャンバ60は、真空排気系Eにより形成される減圧雰囲気を維持可能であり、処理空間に処理ガスを導入するためのガス導入管(図示せず)が適宜設けられている。
たとえば、このプラズマ処理装置を用いて被処理物Wの表面にエッチング処理を施す際には、まず、被処理物Wが、その表面を上方に向けた状態でステージ16の上に載置される。次いで、真空排気系Eによって処理空間が減圧状態にされた後、この処理空間に、処理ガスとしてのエッチングガスが導入される。その後、処理空間に処理ガスの雰囲気が形成された状態で、図示しない導入導波管から方向性結合器を介して、例えば、2.45GHzのマイクロ波が環状進行波共振器10に導入され、環状進行波共振器10に一方向の進行波が励振され、且つこの進行波が共振される。その結果として、環状進行波共振器10には、均一且つ連続的な進行波によるマイクロ波の波動場が形成される。
このマイクロ波の波動場は、結合器40により導入導波管52に分配され、導波体54に向けて放射される。導波体54は、石英やアルミナなどの誘電体からなり、マイクロ波Mは、導波体54の表面を伝搬して、チャンバ60内の処理空間に放射される。このようにして処理空間に放射されたマイクロ波Mのエネルギーにより、処理ガスのプラズマPが形成される。こうして発生したプラズマ中の電子密度が導波体54を透過して供給されるマイクロ波Mを遮蔽できる密度(カットオフ密度)以上になると、マイクロ波は導波体54の下面からチャンバ内の処理空間に向けて一定距離(スキンデプス)dだけ入るまでの間に反射され、マイクロ波の定在波が形成される。
すると、マイクロ波の反射面がプラズマ励起面となって、このプラズマ励起面で安定なプラズマPが励起されるようになる。このプラズマ励起面で励起された安定なプラズマP中においては、イオンや電子が処理ガスの分子と衝突することにより、励起された原子や分子、遊離原子(ラジカル)などの励起活性種(プラズマ生成物)が生成される。これらプラズマ生成物は、矢印Aで表したように処理空間内を拡散して被処理物Wの表面に飛来し、エッチング、アッシング、薄膜堆積、表面改質、プラズマドーピングなどのプラズマ処理を行うことができる。
本発明によれば、環状進行波共振器10内に形成された共振進行波による連続的かつ高い強度のマイクロ波を結合器40により分配し、チャンバ60内に導入することにより、チャンバ60内において大面積で均一且つ密度の高いプラズマを形成することができる。その結果として、大面積の被処理物を均一で高速にプラズマ処理することが可能となる。
またさらに、結合器40の結合係数を低く抑えることにより、プラズマのインピーダンスが変化しても、環状進行波共振器10の共振条件の変動や、複数の結合器40の間の分配バランスの変動を抑制することができる。その結果として、常に安定して大面積のプラズマ処理を実施することができる。
次に、本発明のプラズマ発生装置においてプラズマ密度をより均一にするための構成の具体例について説明する。
例えば、図9に関して前述したプラズマ発生装置の場合、複数のアプリケータ50のうちで、導入導波管70に近いものと遠いものとでは、生成するプラズマ密度に差が生ずることがあり得る。典型的には、導入導波管70から近いアプリケータ50においてはプラズマ密度が高く、導入導波管70から遠いアプリケータ50においてはプラズマ密度が低くなる場合などがあり得る。このような場合、導入導波管70から近いアプリケータ50の結合度は低く、導入導波管70から遠いアプリケータ50においては結合度を高く設定すると、プラズマ密度を均一にすることが可能である。
しかし、それぞれのアプリケータ50におけるマイクロ波のパワー吸収率は、ガス圧力などのプロセス条件によって変化するため、環状進行波共振器10内の伝搬に伴うマイクロ波の減衰特性も変化する。つまり、あるプロセス条件に最適なマイクロ波減衰率と結合度のバランスは、必ずしも他のプロセス条件においては最適ではない。従って、幅広いプロセスマージンを実現するためには、それぞれのアプリケータ50の結合度をプロセス条件などに応じて独立に制御可能とすることが望ましい。
図18は、本実施形態における環状進行波共振器へのマイクロ波の導入部を表す概念図である。
すなわち、導入導波管70と環状進行波共振器10とが方向性結合器20により結合されている。方向性結合器20の出力ポートは、固定ショート・プランジャ73により終端させ、反射波が生ずるようにする。
導入導波路70に導入されたマイクロ波Mは、方向性結合器20を介して環状進行波共振器10に導入され進行波M4を形成する。この時、環状進行波共振器10を伝搬するマイクロ波の減衰量と、方向性結合器20を介して環状進行波共振器10に導入されるパワーとが等しくなるようにパワーバランスをとり、且つ方向性の高い方向性結合器20を用いると、環状進行波共振器10の中には進行波M4のみが励起され、方向性結合器20の出力ポートから固定ショート・プランジャ20にパワーは、出力されない。
これに対して、環状進行波共振器10に導入されるパワーとマイクロ波の減衰量とのパワーバランスを少しずらし、あるいは、方向性結合器20の方向性を少し低下させると、方向性結合器20の出力ポートから固定ショート・プランジャ73にわずかな出力が分配され、反射波R1、R2が励起される。反射波R1は導入導波管70を伝搬するが、反射波R2は、環状進行波共振器10の中て進行波M4とは反対の方向に励起される。
つまり、環状進行波共振器10の中には進行波M4とは反対方向の弱い反射波R2が励起されることとなる。
図19は、このような反射波R2を利用して出力を可変としたアプリケータを表す概念図である。
図20は、このアプリケータの部分のA−A線断面構造の具体例を表す模式図である。
また、図21は、図20のB−B線断面構造を表す模式図である。
すなわち、環状進行波共振器10から方向性結合器40を介してアプリケータ50にパワーが出力される。方向性結合器10のダミー出力ポート53には、可変ショート・プランジャ(位相差調整手段)58が設けられている。図18に関して前述したように、環状進行波共振器10の中には、進行波M4と弱い反射波R2とが励起されている。進行波M4は方向性結合器40からそのままアプリケータ50の導入導波管52に出力され、反射波R2は、ダミー出力ポート53から出力され可変ショート・プランジャ58により反射されてアプリケータの導入導波管52に供給される。従って、アプリケータ50から放射されるマイクロ波のパワーは進行波M4と反射波R2の合成により決定される。ただし、進行波M4は方向性結合器40からそのままアプリケータ50に入るのに対して、反射波R2は可変ショート・プランジャ58で反射されてからアプリケータ50に入るので、両者の間には位相差が生ずる。この位相差は、可変ショート・プランジャ58を調節することにより制御可能である。例えば、図20及び図21に表した具体例の場合、可変ショート・プランジャ58は、上下方向に可動とされ、その高さを調節することにより、反射波R2の位相を制御できる。
本具体例によれば、このように環状進行波共振器10の中に弱い反射波を励起させ、方向性結合器と可変ショート・プランジャとを用いて反射波の位相を制御しながらアプリケータに出力させることにより、アプリケータ毎に、その出力を独立に調節することができる。
以下、図18乃至図21に関して前述したプラズマ発生装置の実施例について説明する。図22は、本実施例のプラズマ発生装置におけるアプリケータの配置を説明するための模式平面図である。
また、図23は、本実施例のプラズマ発生装置の構成を表す模式断面図である。
本実施例においては、直径40センチメータの略円筒状の内部空間を有する処理チャンバ60を用いた。そして、この処理チャンバ60の上方に環状進行波共振器10を配置し、方向性結合器40を介して結合された6個のアプリケータ50を均等な間隔で処理チャンバ60の上蓋に取り付けた。それぞれのアプリケータ50には、可変ショート・プランジャ58が設けられている。ここでは、6個のアプリケータ50のそれぞれに「1番」〜「6番」の番号を付すこととする。なお、1番のアプリケータ50は、導入導波管70によるマイクロ波Mの導入位置から最も遠い位置に配置されている。
処理チャンバ60の中に設けられたステージ16の上には、フォト・レジストが塗布された直径12インチのウェーハWを載置した。そして、処理チャンバ60の中の酸素(O2)の圧力を15パスカルとし、導入導波管70からマイクロ波Mを導入してウェーハWに塗布したフォト・レジストのアッシング(ashing)を実施し、ウェーハW上でのアッシング速度の分布を測定した。ここで、導入したマイクロ波Mの周波数は2.45ギガヘルツ、出力は3キロワットである。また、石英製の導波体54の先端からウェーハWまでの距離は、4.2センチメータとした。
図24及び図25は、6個のアプリケータのパワー分配が均一ではない場合のアッシング速度の分布を例示する模式図である。
すなわち、図24に例示したケースでは、1番のアプリケータ50(導入導波管70から最も遠いアプリケータ)の近傍におけるアッシング速度が他の5個のアプリケータの近傍におけるアッシング速度に比べて非常に低い。つまり、1番のアプリケータ50からのマイクロ波の出力が他の5個のアプリケータからの出力よりも非常に低いことが分かる。
一方、図25に例示したアッシング速度分布は、図24に関して前述した状態から、1番のアプリケータ50の可変ショート・プランジャ58のみを変化させて得られたものである。1番のアプリケータの近傍におけるアッシング速度が、他の5個のアプリケータの近傍におけるアッシング速度と比べて非常に高くなっている。
すなわち、図24と図25とを比較すると、可変ショート・プランジャ58を調節することにより、アッシング速度を極めて広い範囲で制御できることが分かる。つまり、本実施例によれば、装置の配置やプロセス条件、または使用履歴などに応じて、非常に幅広い範囲でマイクロ波の導入パワーをアプリケータ毎に独立に制御でき、極めて幅広い調整マージンが得られる。
図26は、1番のアプリケータの可変ショート・プランジャ58を最適な位置に調節した時に得られたアッシング速度の分布を表す模式図である。
1番乃至6番のアプリケータの近傍において、ほぼ均一なアッシング速度が得られており、大面積に亘り均一なプラズマ処理が可能であることが分かる。
なお、図22乃至図26においては、6個のアプリケータが設けられ、それぞれに可変ショート・プランジャ58が設けられた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、アプリケータの個数は6個よりも多くても少なくともよく、また、これらアプリケータの全てに可変ショート・プランジャを設けてもよく、またはそれらのうちの一部のアプリケータのみに可変ショート・プランジャを設けもよい。
以上具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
例えば、本発明において用いる導入導波管や環状進行波共振器、アプリケータ、あるいは方向性結合器などの要素は、図示した形状、サイズのものには限定されず、その断面形状、壁面厚、開口の形状やサイズなどは適宜変更して同様の作用効果が得られ、本発明の範囲に包含される。
導入導波管は直管状である必要はなく、また環状進行波共振器も完全な円環状である必要はない。
また、プラズマ発生室の形状やサイズ、あるいは環状進行波共振器やアプリケータとの配置関係についても、図示したものには限定されず、プラズマ処理の内容や条件などを考慮して適宜決定することができる。また、環状進行波共振器はプラズマ発生室の上面や側面でなく、下面に付設してもよく、または、これらを組み合わせてもよい。つまり、プラズマ発生室に複数の環状進行波共振器を付設してもよい。このようにすれば、被処理物の形状やサイズに合わせて均一あるいは所定の密度分布を有する大面積のプラズマを形成することが可能となる。
さらにまた、上述した具体例においては、プラズマ生成部の要部構成のみ説明したが、本発明は、このようなプラズマ生成部を有する全てのプラズマ処理装置も包含し、例えば、エッチング装置、アッシング装置、薄膜堆積装置、表面処理装置、プラズマドーピング装置などとして実現したプラズマ処理装置のいずれもが本発明の範囲に包含される。
1 導波管(同軸線路)
5 導波管
10 環状進行波共振器
16 ステージ
20 方向性結合器
21 入力ポート
22 出力ポート
40 方向性結合器
42、44 結合器
50 アプリケータ
52 導入導波管
53 ダミー出力ポート
54 導波体
58 可変ショート・プランジャ
60 プラズマ発生室(処理チャンバ)
70 導入導波管
72、74 ダミーロード
80、82 パワーモニタ
90 位相調節器
100 導波管
101 導波管
102 スロット
103 導入部
503 導波管
521 分配ブロック
522 スロット
523 マイクロ波
525 波
M マイクロ波
P プラズマ
W 被処理物
一方、前記方向性結合器の結合係数をC 、前記複数の結合器のそれぞれの結合係数をC i とした時、次式
Figure 2012064589

が実質的に成立するものとすれば、導入導波管におけるマイクロ波の反射を解消できる。
また一方、本発明においてもうひとつの重要な数値として、マイクロ波の取り出しのための結合器42の結合係数(coupling coefficient)C i を挙げることができる。これは、簡単に言うと、環状進行波共振器10内を結合器42に向けて伝搬してくるマイクロ波の強度に対する、結合器42から取り出されるマイクロ波の強度の比に対応する。従って、結合係数C i が大きいほど、環状進行波共振器10から高い効率でマイクロ波が取り出される。
本発明においては、結合器42の結合係数C i を低くする。結合係数C i を低くすることにより、プラズマPの状態によるアプリケータ50のインピーダンスの変化の影響を受けにくくすることができる。すなわち、前述したようにプラズマPは「ゆらぎ(fluctuations)」を有し、その電子密度が空間的、時間的に変動する。プラズマPの電子密度が変化すると、マイクロ波に対するインピーダンスも変化する。特定のアプリケータ50の付近のプラズマPの状態の変化は、環状進行波共振器10の共振条件を変動させ、また、他のアプリケータ50におけるマイクロ波の取り出しバランスにも影響を与える。すなわち、マイクロ波は、プラズマPの電子密度が高い部分に集中してしまい、均一なプラズマPを維持することが困難となる。
本発明者の検討によれば、結合器42における結合係数C i を数パーセント以下に抑えることにより、プラズマPのインピーダンスの変化を受けにくくなり、十分に安定したマイクロ波励起が可能となることが分かった。この点について、以下、図2を参照しつつ説明する。
環状進行波共振器10が共振条件を満たすように調整されている(すなわち、マイクロ波が環状進行波共振器10を一周する前後の位相差が360度の整数倍となるように調整されている)ものとする。ここで、入力されるマイクロ波の強度をM、環状進行波共振器10を一周するマイクロ波の伝搬係数(transmission coefficient)をT、方向性結合器20の結合係数をC とする。
すると、ダミーロード72におけるマイクロ波の強度M dummy は、次式により与えられる。
マイクロ波のパワーが全て環状進行共振器10に投入されることが望ましく、この時、ダミーロード72におけるマイクロ波のパワーはゼロになる。つまり、M dummy =0なる条件が満たされることが望ましい。従って、次式が満たされることが望ましい。
ここで、合計の伝搬係数(total transmission coefficient)Tは、次式に表されるように、それぞれの結合器42における伝搬係数T 、T 、・・・の積算である。
結合器42における反射が非常に小さく損失が小さい場合には、それぞれの結合器42における伝搬係数T i は、結合係数C i を用いて次式により表すことができる。
従って、方向性結合器20の結合係数C を(6)式の如く設定すると、導入導波管70から環状進行波共振器10に導入されるマイクロ波パワーと、環状進行波共振器10における減衰量と、がバランスし、導入導波管70における反射波を殆ど無くすことができる。
またここで、結合係数C i を低く抑えると、環状進行波共振器10内での電波強度が強くなり、また、プラズマの影響を受けにくくなるという効果が得られる。
すなわち、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度は、(4)式により表される合計の伝搬係数(total transmission coefficient)Tにより決定される。合計の伝搬係数Tが1に近づく(すなわち、減衰が抑制される)ほど、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度は高くなる。(3)式が満足され、結合が良好な状態においては、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度は、次式により与えられる。
従って、(1−T 1/2 をできるだけ小さくする必要がある。これは換言すると、合計の結合係数Tをできるだけ1に近づける必要があることを意味する。(6)式を考慮すると、合計の結合係数Tを1に近づけるためには、すべての(1−C i 1/2 を1に近づける必要があることが分かる。これはすなわち、全ての結合係数C i をできるだけ小さいレベルに抑制する必要があることを意味する。
(8)式において強度M を大きくするためには、結合係数C i のそれぞれを小さくする必要がある。結合係数C i のそれぞれが1よりも十分に小さい場合、(8)式は次式に近似できる。
ここで、結合係数C i は、振幅の比率を表す係数であるので、より厳密には、「振幅結合係数(amplitude coupling coefficient)」と呼ばれ、通常は「デシベル(dB)」により表される。一方、C i は、「パワー結合係数(power coupling coefficient)」と呼ばれ、通常は、「パーセント(%)」により表される。パワー結合係数は、マイクロ波のパワーのうちの何パーセントが主要導波部(main waveguide)から結合部(coupled port)に分岐したかを表す。(9)式は、「環状進行波共振器10におけるパワーは、入力パワーの
Figure 2012064589

倍である」ことを表している。
ちなみに、複数の結合器42のパワー結合係数の合計が20パーセントの場合、環状進行波共振器10内を伝搬しているマイクロ波のパワーは、導入パワーの5倍にもなる。以上、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の強度について説明した。
これに対して、
Figure 2012064589

が小さければ、プラズマの揺らぎによる反射が生じた場合でも、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の伝搬状態は殆ど変化せず、マイクロ波の分配を維持できる。つまり、結合係数C i を小さくすると、プラズマの揺らぎが生じてもマイクロ波の反射の増大を抑制できる。実用的には、環状進行波共振器10内でのマイクロ波の反射波パワーが入射波パワーの20パーセントを超えないようにするために、結合器42のそれぞれのパワー結合係数の合計が20パーセント以下となるように調整することが望ましい。
以上説明したように、本発明においては、結合器42における結合係数C i を低く抑えると、環状進行波共振器10内での電波強度が強くなり、また、プラズマの影響を受けにくくなるという効果が得られる。
結合係数C i を調節する方法としては、例えば、後述する各種の方向性結合器の形態のうちで、開口を有するものの場合、その開口のサイズや位置を調節する方法がある。もちろん、これ以外にも方向性結合器の形態に応じて各種の方法により結合係数C i を最適な範囲に調節することができる。
なお、結合器42の結合係数C i を低くすると、取り出されるマイクロ波のパワーも小さくなるが、結合器42及びアプリケータ50の数を適宜設定することにより、十分に強く均一なプラズマPを大面積に亘って励起することができる。
また、本発明においては、複数の結合器42の結合係数C i は、全て同一である必要はない。例えば、プラズマ発生室60内におけるガス流や圧力分布、あるいは被処理物の形状やサイズなどに応じて、導入するマイクロ波の強度に分布を設けたいような場合には、結合器42の結合係数C i を、場所毎に適宜変化させてもよい。この場合も、プラズマPのインピーダンスの変化による影響を受けにくい範囲内において結合係数C i を設定すればよい。
またここで、本発明においては、結合器42の結合係数C i は、環状進行波共振器10内を伝搬する進行波の減衰係数(attenuation coefficient)を決定する要素となる。つまり、マイクロ波の進行波が環状進行波共振器10を一周すると、その強度は、全ての結合器42の結合係数C i を累積した量だけ減衰する。この減衰した分は、プラズマ発生室60内に導入されてプラズマPの生成に寄与することとなる。そして、環状進行波共振器10を一周する間に吸収されたマイクロ波パワーは、方向性結合器20を介して導入導波管70から補充されることとなる。
従って、方向性結合器20の結合係数C を(6)式に関して前述したように設定すると、導入導波管70から環状進行波共振器10に導入されるマイクロ波パワーと、環状進行波共振器10における減衰量と、がバランスする。
すなわち、方向性結合器20の結合係数C を(6)式のように設定すれば、環状進行波共振器10におけるマイクロ波パワーの出入りがバランスし、導入導波管70における反射波を完全に無くすことができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態にかかるプラズマ発生装置の要部基本構成を例示する概念図である。同図については、図1乃至図3に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、環状進行波共振器10からマイクロ波を取り出すための結合器として、方向性の結合器40が設けられている。環状進行波共振器10内を伝搬するマイクロ波は、その進行方向の波のみにより構成されるので、方向性の結合器40により取り出した場合も同様の結果が得られる。ただし、結合器40の結合係数C i は、図1に関して前述した場合と同様に、数パーセント以下に抑えることが望ましい。結合器40の結合係数を低く抑えることより、プラズマPのインピーダンスの変化による環状進行波共振器10の共振条件の変動や、複数の結合器40の間の分配バランスの変動を抑制することができる。その結果として、プラズマPの状態に依存せず、常に所定の条件で進行波の共振による波動場を形成し、この波動場から所定のバランスでマイクロ波を複数のアプリケータ50に分配することができる。
すなわち、本実施例のプラズマ発生装置は、導入導波管70から方向性結合器20を介して環状進行波共振器10にマイクロ波Mが導入される。なお、図9においては、環状進行波共振器10を六角形状に表したが、本発明はこれに限定されず、円環状、楕円状、多角形状などの各種の環状の形状としてもよい。方向性結合器20には、マイクロ波を導入するための2つの開口21、22が設けられ、その間隔Lは、環状進行波共振器10の管内波長をλ g とした時に、次式により表される値に設定されている。
図13は、ベーテ孔により結合された方向性結合器を表す模式図である。同図に例示したように、導波管5と導波管1とがベーテ孔Aを介して結合されている場合、導波管5のTE 10 モードの電界に比例し孔に垂直な電気双極子と、導波管5の磁界に比例し逆方向の磁気双極子が導波管1に形成される。これら電気双極子による波と磁気双極子による波とは、導波管1の一方向においては同位相であり相加わるが、逆方向においては逆位相となり差し引かれる。従って、孔の位置を調節することにより逆方向の波を零とすることができる。

Claims (11)

  1. 大気よりも減圧された雰囲気を維持可能なプラズマ発生室と、
    マイクロ波の進行波を共振させる環状共振器と、
    前記環状共振器からマイクロ波を分配する複数の結合器と、
    前記複数の結合器のそれぞれに結合され、前記プラズマ発生室にマイクロ波を導入する相互に離隔して設けられた複数のアプリケータと、
    を備え、
    前記複数のアプリケータは前記プラズマ発生室にマイクロ波を導入する誘電体から形成された導波体をそれぞれ有し、前記導波体から前記プラズマ発生室に導入されたマイクロ波によりプラズマを生成可能としたことを特徴とするプラズマ発生装置。
  2. 導入導波管と、
    前記導入導波管と前記環状共振器とを結合する方向性結合器と、
    をさらに備え、
    前記導入導波管から前記方向性結合器を介して前記環状共振器を励振することにより、
    前記環状共振器において前記マイクロ波の進行波を形成することを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生装置。
  3. 前記環状共振器には、前記進行波とともに、前記進行波よりも弱い反射波が励起され、
    前記複数のアプリケータの少なくともいずれかには、前記進行波と前記反射波との位相差を可変とした位相差調整手段を介して前記進行波と前記反射波とが供給されることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ発生装置。
  4. 前記位相差調整手段は、可変ショート・プランジャであることを特徴とする請求項3記載のプラズマ発生装置。
  5. 前記方向性結合器の振幅結合係数をCo、前記複数の結合器のそれぞれの結合係数をCi、前記環状進行波共振器を一周するマイクロ波の伝搬係数をTとした時、次式

    Figure 2012064589

    が実質的に成立することを特徴とする請求項2記載のプラズマ発生装置。
  6. 前記複数の結合器のそれぞれの振幅結合係数は、前記プラズマの電子密度が変化しても前記マイクロ波に対するインピーダンスが実質的に変化しないように低く設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置。
  7. 前記複数の結合器のそれぞれのパワー結合係数の合計値は、20パーセント以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置。
  8. 前記環状共振器の管路と内部部品は、その内部を伝搬する前記進行波の一周位相差が360度の整数倍と実質的に等しくなるように形成されてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置。
  9. 前記アプリケータとプラズマとの結合係数は、前記結合器と前記環状共振器との結合係数よりも大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置
  10. 前記複数の結合器は、方向性結合器であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか1つに記載のプラズマ発生装置を備え、
    前記アプリケータを介して導入されたマイクロ波により生成された前記プラズマによって被処理物のプラズマ処理を実施可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置。
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