以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の懸架装置は、図1に示すように、二輪車における図外の車体と図外の前輪車軸との間に介装される一対のフロントフォークF1,F2を備えて構成されており、うち一方のフロントフォークF1内に一方の緩衝器D1を内蔵しており、他方のフロントフォークF2内にも他方の緩衝器D2が内蔵されている。なお、各フロントフォークF1,F2内には、上記した緩衝器D1,D2のほかに懸架ばねS1,S2が内蔵されており、この懸架装置では、各フロントフォークF1,F2に設けたコイルばねでなる懸架ばねS1,S2によって図示しない車体が弾性支持されている。
なお、本発明の懸架装置について説明するうえで、一方のフロントフォークF1と他方のフロントフォークF2、一方の緩衝器D1と他方の緩衝器D2は、共通する部材を備えており、共通する部材については、同じ符号を付して、説明の重複を避けることとする。
各フロントフォークF1,F2は、それぞれ、アウターチューブOと、アウターチューブO内に摺動自在に挿入されるインナーチューブIとを備えており、図示するところでは、アウターチューブOの上端は閉塞され、インナーチューブIの下端が閉塞されて、アウターチューブOとインナーチューブIとの間に閉鎖空間が形成されている。
そして、一方のフロントフォークF1におけるアウターチューブOとインナーチューブIで形成される上記閉鎖空間内には、一方の緩衝器D1と懸架ばねSが収容されている。すなわち、一方のフロントフォークF1内に緩衝器D1が内蔵されている。他方のフロントフォークF2におけるアウターチューブOとインナーチューブIで形成される上記閉鎖空間内にも、同様に、他方の緩衝器D2と懸架ばねSが収容されている。すなわち、他方のフロントフォークF2内に緩衝器D2が内蔵されている。
上記フロントフォークF1,F2は、インナーチューブIに連結される各緩衝器D1,D2のシリンダ1の図1中上端に懸架ばねSの一端を支承するばね受40が設けられており、このばね受40とアウターチューブOにおける底部との間に懸架ばねSが介装されている。したがって、懸架ばねSは、アウターチューブOとインナーチューブIとを離間させるように附勢し、これらフロントフォークF1,F2が車体と前輪車軸との間に介装される懸架ばねS,Sが圧縮されて、懸架装置は、車体を弾性支持するようになっている。
なお、アウターチューブOの開口端内周には、インナーチューブIの外周に摺接する筒状の軸受41が設けられ、インナーチューブIの開口端外周には、アウターチューブOの内周に摺接する筒状の軸受42が設けられており、この軸受41,42を潤滑するべく、インナーチューブIの側部に穿孔43が穿ってあって、アウターチューブOとインナーチューブIとで形成される閉鎖空間内に貯留された作動油を上記穿孔43を介してアウターチューブOとインナーチューブIとの間に供給することができるようになっている。
なお、軸受41,42の双方がアウターチューブOに固定されるか、インナーチューブIに固定される場合には、穿孔43を設けずに、潤滑油をアウターチューブOとインナーチューブIとの間であって軸受41,42で囲まれる空隙に充填しておくこともできる。また、図示したところでは、アウターチューブOを上方にインナーチューブIを下方にそれぞれ配置しているが、天地逆として車体と前輪車軸との間に介装することもできる。
つづいて、一方のフロントフォークF1内に内蔵される一方の緩衝器D1について説明する。この一方の緩衝器D1は、図1および図2に示すように、インナーチューブIの底部に連結されたシリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を2つの作動室である伸側室R1および圧側室R2に区画するピストン2と、一端がピストン2に連結されるとともに他端がアウターチューブOに連結されたピストンロッド3と、上記した伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える減衰通路4と、圧力室Cを形成するハウジング6と、上記ハウジング6内に摺動自在に挿入されて圧力室Cを伸側圧力室7と圧側圧力室8との区画するフリーピストン9と、伸側室R1と伸側圧力室7とを連通する伸側通路10と、圧側室R2と圧側圧力室8とを連通する圧側通路11と、フリーピストン9をハウジング6に対して伸側圧力室7を最小にする伸側ストロークエンドに位置決めるとともに当該伸側ストロークエンドからの変位を抑制する附勢力を発揮するばね要素12とを備えて構成され、伸長行程時にのみ減衰力を発揮するように設定されている。
そして、上記した伸側室R1、圧側室R2および圧力室C内には、作動油等の液体が充填されている。また、このフロントフォークF1では、アウターチューブOとインナーチューブIとの間の閉鎖空間内には作動油と気体が充填されていて、この実施の形態にあっては、当該閉鎖空間をピストンロッド3がシリンダ1内に出入りすることによりシリンダ1内で過不足となる作動油をシリンダ1へ給排するリザーバRとして利用している。なお、伸側室R1、圧側室R2、圧力室CおよびリザーバR内に充填される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。
つづいて、ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド3の一端3aに連結され、ピストンロッド3の他端3bは、シリンダ1の図中上端に固定された環状のロッドガイド15の内周を通してシリンダ1外へ突出されていて、アウターチューブOの底部に連結されている。ピストンロッド3は、図示したところでは、ピストン2が組み付けられる一端3aと、他端3bとが途中で分割されて螺子締結によって一体化されるようになっているが、一部品で構成されてもよい。なお、本実施の形態では、シリンダ1がインナーチューブIへ連結されるとともに、ピストンロッド3がアウターチューブOへ連結されているが、これを逆に、シリンダ1をアウターチューブOへ連結し、ピストンロッド3の他端3bをインナーチューブIへ連結するようにしてもよい。なお、この実施の形態では、ロッドガイド15とピストンロッド3との間には、密にこれらをシールするシール部材は設けられておらず、シリンダ1の図1中上端は、フロントフォークF1の伸縮状態の如何によらずリザーバR内に充填した作動油中に油浸状態に維持されるようになっている。
そして、ロッドガイド15には、リザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れを許容するがその逆向きの流れを阻止する伸側チェック通路16が設けられており、伸側チェック通路16は、具体的には、リザーバRと伸側室R1とを連通する連通路16aと、当該連通路16aの途中に設けられてリザーバRから伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ16bとで構成されている。
また、シリンダ1の下端には、隔壁31が設けられており、この隔壁31より図1中下方は空気室33が形成されている。そして、シリンダ1の図1中下方であって隔壁31より上方至近には、透孔32が穿ってあって、この透孔32によって、圧側室R2がシリンダ1とインナーチューブI1との間の環状隙間へ連通されている。
なお、上記した隔壁31は、シリンダ1内に空気室を形成して、フロントフォークF1および緩衝器D内に充填される作動油量を必要最小限に留めて、フロントフォークF1を軽量化とコストを低減するために設けられているものであって、当該目的を果たすことができ、シリンダ1内に空気室を形成できればよいので、内部に空気室を形成する容器状とされてもよい。
ピストン2は、伸側室R1と圧側室R2を連通する減衰通路4と、同じく伸側室R1と圧側室R2を連通する通路5とを備えており、減衰通路4の図2中下端がピストン2の図2中下方に積層される減衰バルブとしてのリーフバルブ17で開閉されるようになっており、また、通路5の図2中上端はピストン2の図2中上方に積層されるチェックバルブ18で開閉されるようになっている。そして、リーフバルブ17は、環状であってピストン2とともにピストンロッド3の一端3aに装着されて、ピストン2が図2中上方に移動する緩衝器D1の伸長行程時に、液体が減衰通路4を伸側室R1から圧側室R2へ向けて流れる際に撓んで減衰通路4を開放するとともに当該液体の流れに抵抗を与え、逆向きの流れに対しては減衰通路4を閉塞するようになっており、減衰通路4を伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。他方、チェックバルブ18は、環状であってピストン2とともにピストンロッド3の一端3aに装着されて、ピストン2が図2中下方に移動する緩衝器D1の収縮行程時に、液体が通路5を圧側室R2から伸側室R1へ向けて流れる際に撓んで液体の流れに殆ど抵抗を与えずに通路5を開放し、逆向きの流れに対しては通路5を閉塞するようになっており、通路5を圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。つまり、リーフバルブ17は、伸長行程時に減衰通路4を流れる液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブとして機能し、チェックバルブ18は、収縮行程時にのみ通路5を開放する逆止弁である。減衰通路4を通過液体の流れに抵抗を与える減衰通路たらしめる減衰バルブとしては、上記したリーフバルブのほか、ポペットバルブやオリフィス、チョークといった種々の減衰バルブを使用することができる。なお、減衰通路4および通路5は、ピストン2以外に設けることもできる。
そして、このフロントフォークF1が伸長する場合、基本的には、緩衝器D1の伸側室R1がピストン2によって圧縮され、伸側室R1内の作動油は、チェックバルブ16bが閉弁するので伸側チェック通路16を介してはリザーバRへ向かうことができず、減衰通路4を介して圧側室R2へ移動する。この作動油の流れに対して減衰通路4で抵抗が与えられるので伸側室R1の圧力が上昇し、反対に拡大される圧側室R2は透孔32を介してリザーバRから作動油が供給されてリザーバ圧と等圧に保たれ、伸側室R1と圧力室R2の圧力に差圧が生じる。これによって、緩衝器D1は、減衰力を発揮するとともに、緩衝器D1に入力される振動の周波数に応じて、見掛け上、減衰通路4を迂回させて圧力室Cを介して作動油を伸側室R1から圧力室R2へ移動させるため、周波数に感応した減衰力を発揮する。なお、このフロントフォークF1の伸長の際には、ピストンロッド3がシリンダ1内から退出するのでシリンダ1内で不足するピストンロッド3の退出体積分の作動油がリザーバRから上記透孔32を介して圧側室R2へ供給されるので、圧側室R2内で負圧を生じて減衰力に乱れが発生したり、油中に気泡が発生して異音やキャビテーションが発生したりすることが防止されている。
反対に、フロントフォークF1が収縮する場合、ピストン2が圧側室R2を押し縮めるが、圧側室R2は透孔32によってリザーバRへ連通されているので、圧側室R2内の圧力はリザーバ圧に維持される。他方、拡大される伸側室R1は、伸側チェック通路16を介してリザーバRから作動油を吸い込むとともに、仮に伸側室R1において作動油の吸い込み不足が生じて負圧気味となってもチェックバルブ18が開弁して通路5を介して圧側室R2と伸側室R1とが連通状態におかれるので、結果として伸側室R1も圧側室R2もリザーバ圧に維持されて、緩衝器D1は、ピストン2における伸側室R1側と圧側室R2側の受圧面積差に基づくロッド反力を発生するものの、減衰バルブを用いるなどして積極的に減衰力を発揮するようにはなっていない。すなわち、緩衝器D1は、収縮行程にある場合、減衰力を発揮しないようになっている。なお、伸側チェック通路16における流路面積が充分に確保されている場合には通路5を設けずともよく、また、反対に、通路5における流路面積が充分に確保される場合には伸側チェック通路16を設けずともよいが、伸側チェック通路16と通路5の併設により伸側室R1における作動油の吸い込み不良をカバーして、異音やキャビテーションの発生を確実に阻止することができる。
なお、上記フロントフォークF1は、上記閉鎖空間をリザーバRとして用いているが、緩衝器D1自体がリザーバを備えているか、上記伸縮時のシリンダ1内の容積補償を行う気室を備えている場合には、上記閉鎖空間をリザーバRとして機能させなくともよい。このように、緩衝器D1自体をリザーバRや気室を備えた独立した緩衝器とする場合には、フロントフォークF1への組み込みが容易となる利点があるが、上記閉鎖空間をリザーバRとして機能させることで、内部に貯留している作動油を軸受41,42の潤滑油としても利用でき、緩衝器D1自体がリザーバRや気室を備えて独立した緩衝器とされる場合には、また、アウターチューブOとインナーチューブIとの間をシールするシール部材のほかに、緩衝器D1のシリンダ1とピストンロッド3との間にシリンダ1内を密にシールするシール部材が必要となってフロントフォークF1の伸縮時の摩擦抵抗が大きくなる傾向となるので、上記閉鎖空間を緩衝器D1のリザーバRとして機能させることで得られる利点もある。
つづいて、圧力室Cは、この実施の形態の場合、ピストンロッド3の一端3aの最先端外周に設けた螺子部3cに螺合される中空なハウジング6によって形成されており、当該ハウジング6は、上記ピストン2、リーフバルブ17およびチェックバルブ18をピストンロッド3の一端3aに固定するピストンナットとしても機能している。
そして、ハウジング6内に形成された圧力室Cは、当該圧力室C内に摺動自在に挿入されるフリーピストン9で図2中上方の伸側圧力室7と図2中下方の圧側圧力室8とに仕切られていて、フリーピストン9は、圧力室C内でハウジング6に対して図2中上下方向に変位することができるようになっている。
詳しくは、ハウジング6は、ピストンロッド3の一端3aに形成の螺子部3cに螺合されるナット部20と、ナット部20の外周から垂下される筒部22と筒部22の開口を蓋する底部23とを備えた有底筒状のハウジング筒21と、ハウジング筒21における筒部22の下方側を縮径することで筒部22の内周に設けられた段部22aとを備えて構成されて、圧側室R2内に圧力室Cを画成している。
また、ナット部20は、その内周にピストンロッド3の螺子部3cに螺合する螺子部20aとフランジ20bとを備えている。ハウジング筒21は、上記したように有底筒状であって、その図2中上端開口部をナット部20のフランジ20bの外周へ向けて加締めることで、ナット部20に一体化されている。なお、ナット部20とハウジング筒21との一体化は加締め加工以外にも溶接や螺合といった他の加工方向を採用することもできる。さらに、ハウジング筒21の筒部22の内周には、図2中上方となる伸側圧力室7側へ対向する段部22aが設けられている。
なお、ハウジング筒21の筒部22の少なくともに一部における外周断面形状は、図示しない工具で把持可能なように円形以外の形状であって当該工具に符合する形状、たとえば、一部を切欠いた形状や六角形等の形状とされており、工具で筒部22の外周を把持してハウジング6を周方向へ回転せしめて、上記ナット部20に所定の締め付けトルクを付加して螺子部3cへ螺着することができるようになっている。さらに、筒部22の側部にポート22bが設けられており、当該ポート22bにて圧力室Cと圧側室R2とが連通されており、底部23にもポート23aが設けられていて、当該ポート23aにて圧力室Cと圧側室R2とが連通されている。
また、伸側圧力室7は、ピストンロッド3の伸側室R1に臨む側部から一端3aの端部へ通じる伸側通路10によって、伸側室R1へ通じている。この伸側通路10は、ピストンロッド3の伸側室R1に臨む側部から開口する横穴10aと、一端3aの端部から開口して横穴10aへ通じる縦穴10bとで構成されている。
そして、圧力室C内に挿入されるフリーピストン9は、ハウジング筒21の筒部22に摺接する摺接筒24と、摺接筒24の内周を閉塞する鏡部25と備えて、ハウジング6内を伸側室R1に連通される伸側圧力室7と圧側室R2に連通される圧側圧力室8とに区画している。また、フリーピストン9は、摺接筒24の外周の全周渡って設けた環状溝26と、環状溝26を圧側圧力室8へ連通する連通孔27とを備えていて、環状溝26をハウジング6の筒部22に形成のポート22bに対向させる場合には、圧側室R2を圧側圧力室8へ連通し、環状溝26が上記ポート22bへ対向せずに摺接筒24でポート22bを閉塞する場合には、圧側室R2と圧側圧力室8とのポート22bを介しての連通を断つようになっている。ポート22bは、通過する液体の流れに抵抗を与えて所定の圧力損失を生じるようになっていて、圧側室R2と圧側圧力室8との間に差圧を生じせしめるようになっている。また、ハウジング筒21における底部23に設けたポート23aも絞り通路として機能しており、通過する液体の流れに抵抗を与えて所定の圧力損失を生じるようになっていて、やはり圧側室R2と圧側圧力室8との間に差圧を生じせしめるようになっている。なお、こちらのポート23aは、フリーピストン9によって閉じられることはなく、常時開放されている。つまり、圧側圧力室8は、ポート22bが連通状態にある場合には、ポート22b,23aを介して圧側室R2に連通され、ポート22bが遮断状態にあるときは、ポート23aのみを介して圧側室R2に連通されるようになっており、ポート22b,23a、環状凹部21および連通孔33によって圧側通路11を形成している。
また、フリーピストン9は、摺接筒24の図2中上端がハウジング6のナット部20のフランジ20bに当接する伸側ストロークエンドにまで到達すると、それ以上は、図2中上方へ移動して伸側圧力室7を押し縮めることができないようになっており、反対に、摺接筒24の図2中下端がハウジング筒21の段部22aに当接する圧側ストロークエンドにまで到達すると、それ以上は、図2中下方へ移動して圧側圧力室8を押し縮めることができないようになっている。
さらに、フリーピストン9をハウジング6に対して伸側圧力室7を最小にする伸側ストロークエンドに位置決めるとともに、フリーピストン9のハウジング6に対する当該伸側ストロークエンドからの変位を抑制する附勢力を作用させるため、圧側圧力室8内であって底部23とフリーピストン9の鏡部25との間に、コイルばねでなるばね要素12が圧縮状態で介装されている。フリーピストン9が伸側圧力室7を最小にするのは、この実施の形態の場合、フリーピストン9の摺接筒24の図2中上端をハウジング6のナット部20におけるフランジ20bに当接させた位置であり、ばね要素12で附勢することによってフリーピストン9の摺接筒24をハウジング6のナット部20へ当接させて、これ以上、フリーピストン9が伸側圧力室7を小さくする方向へストロークできない伸側ストロークエンドに位置決められている。
そして、フリーピストン9は、伸側ストロークエンドから圧側圧力室8を圧縮する方向へ変位すると、ばね要素12は当該変位を抑制してフリーピストン9を伸側ストロークエンドに戻そうとする附勢力を発揮するようになっている。
なお、ばね要素12としては、フリーピストン9を伸側ストロークエンドに位置決めるとともに、附勢力を発揮できればよいので、コイルばね以外のものを採用してもよく、たとえば、皿ばね等の弾性体を用いてフリーピストン9を弾性支持するようにしてもよい。また、一端がフリーピストン9に、他端がナット部20にそれぞれ連結されて伸長に対して収縮側へ附勢力を発揮するばね要素を用いる場合には、ナット部20とフリーピストンとの間にばね要素を設けることも可能である。
この実施の形態の場合、ばね要素12がコイルばねであって、フリーピストン9の鏡部25の下端に形成の突部25aが挿入されるようになっているので、ハウジング6内で半径方向におおよその位置に位置決められている。このように、ばね要素12は、上記のごとく、フリーピストン9によってセンタリングされて、フリーピストン9に対し位置ずれが防止されており、これによって安定的にフリーピストン9に附勢力を作用させることが可能となっている。
上記したように、フリーピストン9は、ハウジング6内でばね要素12によって弾性支持されてばね要素12による附勢力以外に力が作用していない状態ではハウジング6内で伸側ストロークエンドに位置決められ、当該伸側ストロークエンドにあるときには必ず上記環状溝26がポート22bに対向して圧側圧力室8と圧側室R2とが連通されるようになっている。他方、フリーピストン9がある程度、伸側ストロークエンドから変位すると、フリーピストン9の摺接筒24の外周がポート22bに完全にオーバーラップしてこれを閉塞するようになっている。なお、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始める伸側ストロークエンドからの変位量は、任意に設定することができる。なお、この実施の形態では、ポート22bを二つ設けているが、その数は任意であり、圧側室R2に連通される環状溝を筒部21の内周に設け、フリーピストン9の外周側と圧側圧力室8を連通するポートをフリーピストン9に設けるようにしてもよい。
このように構成された一方の緩衝器D1の詳しい動作について説明する。上述したように緩衝器D1は、収縮する場合には、伸側室R1と圧側室R2の圧力がリザーバ圧に維持されて、殆ど減衰力を発揮することはない。
つづいて、緩衝器D1が伸長する場合の動作を場合を分けて説明する。まず、フリーピストン9における伸側ストロークエンドからの変位量がポート22bを閉塞し始めない範囲内である場合の緩衝器D1における伸長行程時における動作について説明する。この場合、フリーピストン9は、ポート22bの連通状態を保ったまま変位することが可能である。
そして、伸長行程時にあっては、伸側室R1の圧力が上昇するので伸側圧力室7が圧側圧力室8の圧力を上回り、緩衝器D1への振動の入力周波数が低い場合と高い場合で、同じ入力速度であるという条件下で考えると入力周波数が低い場合、入力振幅が大きくなり、フリーピストン9の振幅も大きくなる。フリーピストン9の振幅がポート22bを閉塞し始めない範囲で大きくなると、フリーピストン9が変位するのでばね要素12によってフリーピストン9を伸側ストロークエンドへ戻そうとする附勢力が働き、このばね要素12の附勢力に見合って伸側圧力室7の圧力が圧側圧力室8の圧力より圧力が高くなる。
すると、伸側圧力室7と伸側室R1との差圧、および、圧側圧力室8と圧側室R2との差圧が小さくなって、伸側通路10および圧側通路11を通過する流量は減少する。この伸側通路10および圧側通路11を通過する流量の減少にともなって、減衰通路4の流量が増えることになり、緩衝器D1の発生減衰力は大きくなる。
逆に、高周波入力時には、緩衝器D1へ入力される振動の振幅が小さいため、圧側室R1から伸側室R2へ、或いは、圧側室R2から伸側室R1へ移動する一周期の流量は小さく、フリーピストン9の動く変位も小さくなる。すると、フリーピストン9が受けるばね要素12の附勢力も小さくなる。その分、伸側圧力室7の圧力と圧側圧力室8の圧力との差は小さくなり、伸側圧力室7と伸側室R1との差圧および圧側圧力室8と圧側室R2との差圧は大きく維持されるため、伸側通路10および圧側通路11を通過する流量が低周波時よりも大きくなり、その分、減衰通路4の流量が減少し、緩衝器D1が発生する減衰力も減少することになる。
このように、緩衝器D1は、伸長行程時にのみ減衰力を発生し、図3の実線に示すように、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発揮し、高周波数域の振動に対しては減衰力低減効果を発揮して減衰力を小さくすることができ、入力振動周波数に依存した減衰力を発生することができる。なお、伸側通路10或いは圧側通路11の途中に、流路面積を変更可能な可変バルブを設けるようにする場合には、可変減衰バルブによって流路面積を変更することによって、図3の実線で示した減衰特性における減衰力低減幅を調整することも可能であり、流路面積を小さくすると減衰力低減効果を弱め、反対に大きくすると減衰力低減効果を強めることができる。この実施の形態の場合、伸側通路10がピストンロッド3に設けられているので、可変バルブをピストンロッド3内に設けて、当該可変バルブをピストンロッド3を軸方向に貫通して外部からアクセス可能なコントロールロッドで調節する構造を採用するとよい。
他方、フリーピストン9が伸側ストロークエンドからポート22bを閉塞し始める程度に変位する場合の緩衝器D1における動作について説明する。緩衝器D1に入力される振動の振幅が大きくなると、フリーピストン9における伸側ストロークエンドからの変位量も大きくなり、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始め、最終的にはポート22bが完全に閉塞される状態となる。
つまり、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始めた後は変位量に応じて圧側通路11の流路抵抗が徐々に大きくなり、フリーピストン9がポート22bを閉塞すると圧側通路11における流路抵抗が最大となる。
上述したように、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始める位置を越えて変位するようになると、徐々に圧側通路11の流路抵抗が徐々に大きくなっていくので、フリーピストン9のそれ以上圧側圧力室8を圧縮する方向への移動速度が減少されて、圧力室Cを介しての伸側室R1と圧側室R2との液体の見掛け上の移動量も減少し、その分減衰通路4を通過する液体量が増加することになり、緩衝器D1の発生減衰力は振動周波数の高低によらず徐々に大きくなっていく。
そして、フリーピストン9がポート22bを完全に閉塞するまでストロークすると、それ以上、圧力室Cを介して伸側室R1と圧側室R2との液体の見掛け上の移動はなくなり、液体は減衰通路4のみを通過することになり、緩衝器D1は、振動周波数の高低によらず、最大の減衰係数で減衰力を発生することになる。
なお、緩衝器D1が減衰力低減効果を発する周波数域の振動に対しては、緩衝器D1は、フリーピストン9が伸側ストロークエンドからポート22bを閉塞し始める位置へ変位するまでは、比較的低い減衰力を発生しているが、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始めると、徐々に減衰力が高まって、フリーピストン9がそれ以上にストロークエンド側へ変位してポート22eを完全に閉塞すると最大の減衰係数で減衰力を発生する。つまり、緩衝器D1は、減衰力低減効果を発揮中にあって、大振幅の振動が入力される場合にあっても、急激に減衰力の大きさを変化させることがなく、低減衰力から高減衰力への減衰力変化をなだらかなものとすることができる。したがって、この緩衝器D1にあっては、振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力がなだらかに変化することになって、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずに済む。特に、振動周波数が高周波である場合において、低い減衰力を発生しているので、発生減衰力の急激な変化を効果的に緩和することができる。
このように、緩衝器D1は、伸長行程時にのみ減衰力を発揮し、かつ、入力される振動周波数に感応して、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発揮し、高周波数域の振動に対しては小さな減衰力を発揮するのである。
つづいて、他方のフロントフォークF2内に内蔵される他方の緩衝器D2について説明する。この他方の緩衝器D2は、図1および図4に示すように、インナーチューブIの底部に連結されたシリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を2つの作動室である伸側室R1および圧側室R2に区画するピストン2と、一端がピストン2に連結されるとともに他端がアウターチューブOに連結されたピストンロッド3と、上記した圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える減衰通路50と、圧力室Cを形成するハウジング6と、上記ハウジング6内に摺動自在に挿入されて圧力室Cを伸側圧力室7と圧側圧力室8との区画するフリーピストン9と、伸側室R1と伸側圧力室7とを連通する伸側通路10と、圧側室R2と圧側圧力室8とを連通する圧側通路11と、フリーピストン9をハウジング6に対して圧側圧力室8を最小にする圧側ストロークエンドに位置決めるとともに当該圧側ストロークエンドからの変位を抑制する附勢力を発揮するばね要素51とを備えて構成され、収縮行程時にのみ減衰力を発揮するように設定されている。
そして、上記した伸側室R1、圧側室R2および圧力室C内には、作動油等の液体が充填されている。また、このフロントフォークF2にあっても、アウターチューブOとインナーチューブIとの間の閉鎖空間内には作動油と気体が充填されていて、この実施の形態にあっては、当該閉鎖空間をピストンロッド3がシリンダ1内に出入りすることによりシリンダ1内で過不足となる作動油をシリンダ1へ給排するリザーバRとして利用している。
つづいて、ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド3の一端3aに連結され、ピストンロッド3の他端3bは、シリンダ1の図中上端に固定された環状のロッドガイド52の内周を通してシリンダ1外へ突出されていて、アウターチューブOの底部に連結されている。なお、本実施の形態では、シリンダ1がインナーチューブIへ連結されるとともに、ピストンロッド3がアウターチューブOへ連結されているが、これを逆に、シリンダ1をアウターチューブOへ連結し、ピストンロッド3の他端3bをインナーチューブIへ連結するようにしてもよい。なお、この他方のフロントフォークF2にあっても、ロッドガイド52とピストンロッド3との間には、密にこれらをシールするシール部材は設けられておらず、シリンダ1の図1中上端は、フロントフォークF2の伸縮状態の如何によらずリザーバR内に充填した作動油中に油浸状態に維持されるようになっている。
そして、この他方の緩衝器D2の場合、シリンダ1の図1中上方であってロッドガイド52の近傍には伸側室R1とリザーバRとを連通する透孔53が設けられており、伸側室R1がリザーバ圧に維持されるようになっている。なお、この実施の形態の場合、シリンダ1に透孔53を設けているが、ロッドガイド52に伸側室R1とリザーバRとを連通する通路を設けるようにしてもよい。
他方、シリンダ1の図1中下方には、隔壁31と、隔壁よりピストン側にバルブディスク54が設けられており、シリンダ1の隔壁31より図1中下方は空気室33が形成されるとともに、隔壁31とバルブディスク54との間には圧側室R2と空気室33から仕切られる空隙55が形成されている。上記空隙55は、シリンダ1に穿った透孔56によってリザーバRへ連通されている。
そして、バルブディスク54には、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れを許容するがその逆向きの流れを阻止する圧側チェック通路57が設けられており、圧側チェック通路57は、具体的には、リザーバRと圧側室R2とを連通する連通路57aと、当該連通路57aの途中に設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ57bとで構成されている。
また、バルブディスク54には、圧側室R2からリザーバRへ向かう流れのみを許容しつつ通過する液体の流れに抵抗を与えるベースバルブ58を備えた排出通路59が形成されている。
なお、この緩衝器D2にあっても、上記した隔壁31は、シリンダ1内に空気室を形成して、フロントフォークF2および緩衝器D2内に充填される作動油量を必要最小限に留めて、フロントフォークF2を軽量化とコストを低減するために設けられているものであって、当該目的を果たすことができ、シリンダ1内に空気室を形成できればよいので、内部に空気室を形成する容器状とされてもよい。
ピストン2は、伸側室R1と圧側室R2を連通する減衰通路50と、同じく伸側室R1と圧側室R2を連通する通路60とを備えており、減衰通路50の図4中上端がピストン2の図2中上方に積層される減衰バルブとしてのリーフバルブ61で開閉されるようになっており、また、通路60の図4中下端はピストン2の図4中下方に積層されるチェックバルブ62で開閉されるようになっている。そして、リーフバルブ61は、環状であってピストン2とともにピストンロッド3の一端3aに装着されて、ピストン2が図4中下方に移動する緩衝器D2の収縮行程時に、液体が減衰通路50を圧側室R2から伸側室R1へ向けて流れる際に撓んで減衰通路50を開放するとともに当該液体の流れに抵抗を与え、逆向きの流れに対しては減衰通路50を閉塞するようになっており、減衰通路50を圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。他方、チェックバルブ62は、環状であってピストン2とともにピストンロッド3の一端3aに装着されて、ピストン2が図4中上方に移動する緩衝器D2の伸長行程時に、液体が通路60を伸側室R1から圧側室R2へ向けて流れる際に撓んで液体の流れに殆ど抵抗を与えずに通路60を開放し、逆向きの流れに対しては通路60を閉塞するようになっており、通路60を伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。つまり、リーフバルブ61は、収縮行程時に減衰通路50を流れる液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブとして機能し、チェックバルブ62は、伸長行程時にのみ通路60を開放する逆止弁である。減衰通路50を通過液体の流れに抵抗を与える減衰通路たらしめる減衰バルブとしては、上記したリーフバルブのほか、ポペットバルブやオリフィス、チョークといった種々の減衰バルブを使用することができる。なお、減衰通路50および通路60は、ピストン2以外に設けることもできる。
図示したところでは、リーフバルブ61は、反ピストン側から押圧筒70を介してコイルばね71によって附勢されている。また、当該コイルばね71の圧縮長さをアウターチューブOの上端開口部に回転自在に取り付けたアジャスタ72を外部操作で回転させることでコントロールロッド73を介して調節することができるようになっており、コイルばね71の附勢力を変化させてリーフバルブ61の開弁圧を調節することができるようになっている。なお、伸側通路10が押圧筒70によって閉塞されないように、押圧筒70には貫通孔70aが設けられている。
そして、このフロントフォークF1が収縮する場合、基本的には、緩衝器D2の圧側室R2がピストン2によって圧縮され、圧側室R2内の作動油は、チェックバルブ57bが閉弁するので圧側チェック通路57を介してはリザーバRへ向かうことができず、減衰通路50を介して伸側室R2へ移動するとともに、ベースバルブ58を備えた排出通路59を介してリザーバRへ移動する。この作動油の流れに対して減衰通路50とベースバルブ58で抵抗が与えられるので圧側室R2の圧力が上昇し、反対に拡大される伸側室R1は透孔53を介してリザーバRから作動油が供給されてリザーバ圧と等圧に保たれ、伸側室R1と圧力室R2の圧力に差圧が生じる。これによって、他方の緩衝器D2は、減衰力を発揮するとともに、緩衝器D2に入力される振動の周波数に応じて、見掛け上、減衰通路50を迂回させて圧力室Cを介して作動油を圧側室R2から伸力室R1へ移動させるため、周波数に感応した減衰力を発揮する。なお、このフロントフォークF2の収縮の際には、作動油がリザーバRから上記透孔53を介して伸側室R1へ供給されるので、伸側室R1内で負圧を生じて減衰力に乱れが発生したり、油中に気泡が発生して異音やキャビテーションが発生したりすることが防止されている。
反対に、他方のフロントフォークF2が伸長する場合、ピストン2が伸側室R1を押し縮めるが、伸側室R1は透孔53によってリザーバRへ連通されているので、伸側室R1内の圧力はリザーバ圧に維持される。他方、拡大される圧側室R2は、圧側チェック通路57を介してリザーバRから作動油を吸い込むとともに、仮に圧側室R2において作動油の吸い込みが不足が生じて負圧気味となってもチェックバルブ62が開弁して通路60を介して伸側室R1と圧側室R2とが連通状態におかれるので、結果として伸側室R1も圧側室R2もリザーバ圧に維持されて、緩衝器D2は、減衰力を発揮しないようになっている。なお、圧側チェック通路57における流路面積が充分に確保されている場合には通路60を設けずともよく、また、反対に、通路60における流路面積が充分に確保される場合には圧側チェック通路57を設けずともよいが、圧側チェック通路57と通路60の併設により圧側室R2における作動油の吸い込み不良をカバーして、異音やキャビテーションの発生を確実に阻止することができる。
なお、上記フロントフォークF2は、上記閉鎖空間をリザーバRとして用いているが、緩衝器D2自体がリザーバを備えているか、上記伸縮時のシリンダ1内の容積補償を行う気室を備えている場合には、上記閉鎖空間をリザーバRとして機能させなくともよい。
つづいて、圧力室Cは、この実施の形態の場合、ピストンロッド3の一端3aの最先端外周に設けた螺子部3cに螺合される中空なハウジング6によって形成されており、当該ハウジング6は、上記ピストン2、リーフバルブ61およびチェックバルブ62をピストンロッド3の一端3aに固定するピストンナットとしても機能している。
この他方の緩衝器D2におけるハウジング6およびフリーピストン9の構造は、上記した一方の緩衝器D1と同様の構成を採用している。ただし、フリーピストン9がばね要素51によって圧側ストロークエンドに位置決めされており、ばね要素51がフリーピストン9のハウジング6に対する圧側ストロークエンドからの変位を抑制する附勢力を発揮する点で、他方の緩衝装置D2は、上記した一方の緩衝器D1と異なる。
この他方の緩衝器D2では、フリーピストン9は、ハウジング6に対して圧側圧力室8を最小にする圧側ストロークエンドに位置決められており、フリーピストン9のハウジング6に対する当該圧側ストロークエンドからの変位を抑制する附勢力を作用させるため、伸側圧力室7内であってナット部20のフランジ20bとフリーピストン9の鏡部25との間に、コイルばねでなるばね要素51が圧縮状態で介装されている。
フリーピストン9が圧側圧力室8を最小にするのは、この実施の形態の場合、フリーピストン9の摺接筒24の図4中下端をハウジング筒21の底部23に当接させた位置であり、ばね要素51で附勢することによってフリーピストン9の摺接筒24を上記底部23へ当接させて、これ以上、フリーピストン9が圧側圧力室8を小さくする方向へストロークできない圧側ストロークエンドに位置決められている。
そして、フリーピストン9は、圧側ストロークエンドから伸側圧力室7を圧縮する方向へ変位すると、ばね要素51は当該変位を抑制してフリーピストン9を圧側ストロークエンドに戻そうとする附勢力を発揮するようになっている。
なお、ばね要素51としては、フリーピストン9を圧側ストロークエンドに位置決めるとともに、附勢力を発揮できればよいので、コイルばね以外のものを採用してもよく、たとえば、皿ばね等の弾性体を用いてフリーピストン9を弾性支持するようにしてもよい。また、一端がフリーピストン9に、他端が底部23にそれぞれ連結されて伸長に対して収縮側へ附勢力を発揮するばね要素を用いる場合には、底部23とフリーピストンとの間にばね要素を設けることも可能である。
この実施の形態の場合、ばね要素51がコイルばねであって、フリーピストン9の摺接筒24の内周側へ挿入されるようになっているので、フリーピストン9内で半径方向におおよその位置に位置決められている。このように、ばね要素51は、上記のごとく、フリーピストン9によってセンタリングされて、フリーピストン9に対し位置ずれが防止されており、これによって安定的にフリーピストン9に附勢力を作用させることが可能となっている。
上記したように、フリーピストン9は、ハウジング6内でばね要素51によって弾性支持されてばね要素51による附勢力以外に力が作用していない状態ではハウジング6内で圧側ストロークエンドに位置決められ、当該圧側ストロークエンドにあるときには必ず上記環状溝26がポート22bに対向して圧側圧力室8と圧側室R2とが連通されるようになっている。他方、フリーピストン9がある程度、圧側ストロークエンドから変位すると、フリーピストン9の摺接筒24の外周がポート22bに完全にオーバーラップしてこれを閉塞するようになっている。なお、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始める圧側ストロークエンドからの変位量は、任意に設定することができる。この実施の形態では、ポート22bを二つ設けているが、その数は任意であり、圧側室R2に連通される環状溝を筒部21の内周に設け、フリーピストン9の外周側と圧側圧力室8を連通するポートをフリーピストン9に設けるようにしてもよい。
このように構成された他方の緩衝器D2の詳しい動作について説明する。上述したように緩衝器D2は、伸長する場合には、伸側室R1と圧側室R2の圧力がリザーバ圧に維持されて、殆ど減衰力を発揮することはない。
つづいて、緩衝器D2が収縮する場合の動作を場合を分けて説明する。まず、フリーピストン9における圧側ストロークエンドからの変位量がポート22bを閉塞し始めない範囲内である場合の緩衝器D2における収縮行程時における動作について説明する。この場合、フリーピストン9は、ポート22bの連通状態を保ったまま変位することが可能である。
そして、収縮行程時にあっては、圧側室R2の圧力が上昇するので圧側圧力室8が伸側圧力室7の圧力を上回り、緩衝器D2への振動の入力周波数が低い場合と高い場合で、同じ入力速度であるという条件下で考えると入力周波数が低い場合、入力振幅が大きくなり、フリーピストン9の振幅も大きくなる。フリーピストン9の振幅がポート22bを閉塞し始めない範囲で大きくなると、フリーピストン9が変位するのでばね要素51によってフリーピストン9を圧側ストロークエンドへ戻そうとする附勢力が働き、このばね要素51の附勢力に見合って圧側圧力室8の圧力が伸側圧力室7の圧力より圧力が高くなる。
すると、圧側圧力室8と圧側室R2との差圧、および、伸側圧力室7と伸側室R1との差圧が小さくなって、伸側通路10および圧側通路11を通過する流量は減少する。この伸側通路10および圧側通路11を通過する流量の減少にともなって、減衰通路50の流量が増えることになり、緩衝器D2の発生減衰力は大きくなる。
逆に、高周波入力時には、緩衝器D2へ入力される振動の振幅が小さいため、圧側室R1から伸側室R2へ、或いは、圧側室R2から伸側室R1へ移動する一周期の流量は小さく、フリーピストン9の動く変位も小さくなる。すると、フリーピストン9が受けるばね要素51の附勢力も小さくなる。その分、伸側圧力室7の圧力と圧側圧力室8の圧力との差は小さくなり、圧側圧力室8と圧側室R2との差圧および伸側圧力室7と伸側室R1との差圧は大きく維持されるため、伸側通路10および圧側通路11を通過する流量が低周波時よりも大きくなり、その分、減衰通路50の流量が減少し、緩衝器D2が発生する減衰力も減少することになる。
このように、緩衝器D2は、収縮行程時にのみ減衰力を発生し、図3の実線に示すように、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発揮し、高周波数域の振動に対しては減衰力低減効果を発揮して減衰力を小さくすることができ、入力振動周波数に依存した減衰力を発生することができる。なお、伸側通路10或いは圧側通路11の途中に、流路面積を変更可能な可変バルブを設けるようにする場合には、図3の実線で示した減衰特性における減衰力低減幅を調整することも可能である。
他方、フリーピストン9が圧側ストロークエンドからポート22bを閉塞し始める程度に変位する場合の緩衝器D2における動作について説明する。緩衝器D2に入力される振動の振幅が大きくなると、フリーピストン9における圧側ストロークエンドからの変位量も大きくなり、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始め、最終的にはポート22bが完全に閉塞される状態となる。
つまり、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始めた後は変位量に応じて圧側通路11の流路抵抗が徐々に大きくなり、フリーピストン9がポート22bを閉塞すると圧側通路11における流路抵抗が最大となる。
上述したように、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始める位置を越えて変位するようになると、徐々に圧側通路11の流路抵抗が徐々に大きくなっていくので、フリーピストン9のそれ以上伸側圧力室7を圧縮する方向への移動速度が減少されて、圧力室Cを介しての伸側室R1と圧側室R2との液体の見掛け上の移動量も減少し、その分減衰通路50を通過する液体量が増加することになり、緩衝器D2の発生減衰力は振動周波数の高低によらず徐々に大きくなっていく。
そして、フリーピストン9がポート22bを完全に閉塞するまでストロークすると、それ以上、圧力室Cを介して伸側室R1と圧側室R2との液体の見掛け上の移動はなくなり、液体は減衰通路50のみを通過することになり、緩衝器D2は、振動周波数の高低によらず、最大の減衰係数で減衰力を発生することになる。
なお、緩衝器D2が減衰力低減効果を発する周波数域の振動に対しては、緩衝器D2は、フリーピストン9が圧側ストロークエンドからポート22bを閉塞し始める位置へ変位するまでは、比較的低い減衰力を発生しているが、フリーピストン9がポート22bを閉塞し始めると、徐々に減衰力が高まって、フリーピストン9がそれ以上にストロークエンド側へ変位してポート22eを完全に閉塞すると最大の減衰係数で減衰力を発生する。つまり、緩衝器D2は、減衰力低減効果を発揮中にあって、大振幅の振動が入力される場合にあっても、急激に減衰力の大きさを変化させることがなく、低減衰力から高減衰力への減衰力変化をなだらかなものとすることができる。したがって、この緩衝器D2にあっては、振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力がなだらかに変化することになって、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずに済む。特に、振動周波数が高周波である場合において、低い減衰力を発生しているので、発生減衰力の急激な変化を効果的に緩和することができる。
このように、緩衝器D2は、収縮行程時にのみ減衰力を発揮し、かつ、入力される振動周波数に感応して、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発揮し、高周波数域の振動に対しては小さな減衰力を発揮するのである。
このように、一方のフロントフォークF1に伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器D1を内蔵し、他方のフロントフォークF2に収縮時にのみ減衰力を発揮する緩衝器D2を内蔵することで、懸架装置全体としてフロントフォークF1,F2が伸長作動する場合にあっては、一方の緩衝器D1で双方のフロントフォークF1,F2で支持する車体の振動を抑制する減衰力を発揮することになり、逆に、懸架装置全体としてフロントフォークF1,F2が収縮作動する場合にあっては、他方の緩衝器D2で双方のフロントフォークF1,F2で支持する車体の振動を抑制する減衰力を発揮することになる。そして、両方のフロントフォークF1,F2のそれぞれに伸縮の両側で減衰力を発揮する、いわゆる両効きの緩衝器を内蔵する場合に比較して、緩衝器D1,D2のシリンダ1内の伸側室R1と圧側室R2の圧力の差は大きくなる。
伸側室R1と圧側室R2の圧力差が大きくなると、フリーピストン9の変位量が大きくなるため、その分、緩衝器D1にあっては減衰通路4を迂回して圧力室Cを介して伸側室R1と圧側室R2とを交流する作動油量が多くなり、緩衝器D2にあっては減衰通路50を迂回して圧力室Cを介して伸側室R1と圧側室R2とを交流する作動油量が多くなるので、高周波振動の入力に対する減衰力低減効果が、両方のフロントフォークF1,F2のそれぞれに両効きの緩衝器を内蔵する場合に比較して、一方のフロントフォークF1に伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器D1を内蔵し、他方のフロントフォークF2に収縮時にのみ減衰力を発揮する緩衝器D1を内蔵する本発明の懸架装置に方が顕著に表れることにある。つまり、図3に示すように、懸架装置単位でみると、破線で示すフロントフォークF1,F2の両方に両効きの緩衝器を内蔵した場合の減衰特性に対して、実線で示す本発明の懸架装置における減衰特性における減衰力低下幅が大きくなるのであり、軽量な二輪車の車体の重量を支持する場合にあっても、減衰力低下幅を確保することができる。
よって、本発明の懸架装置によれば、軽量な二輪車の車体を支持する場合にあっても、十二分に減衰力低減効果を得ることができ、二輪車における乗り心地を向上することができる。
また、一方の緩衝器D1が伸長行程時にのみ減衰力を発揮するように構成されていて、伸長行程ではフリーピストン9が圧側圧力室8を押し縮める作動を呈するのみであるところ、一方の緩衝器D1におけるフリーピストン9が伸側圧力室7を最小にする伸側ストロークエンドに位置決められていて、圧側圧力室8を最小にする圧側ストロークエンドまでのストロークを全てこの一方の緩衝器D1の伸長行程におけるフリーピストン9の作動に充てることができ、さらに、他方の緩衝器D2が収縮行程時にのみ減衰力を発揮するように構成されていて、収縮行程ではフリーピストン9が伸側圧力室7を押し縮める作動を呈するのみであるところ、他方の緩衝器D2におけるフリーピストン9が圧側圧力室8を最小にする圧側ストロークエンドに位置決められていて、伸側圧力室7を最小にする伸側ストロークエンドまでのストロークを全てこの他方の緩衝器D2の収縮行程におけるフリーピストン9の作動に充てることができるから、軽量な二輪車の車体を支持する場合にあってばね要素12,51におけるばね定数を低く設定してもハウジング6を長大化せずとも充分にストローク長を確保できる。したがって、この懸架装置によれば、二輪車に適した周波数に感応する減衰特性を得ることができ、フロントフォークF1,F2のストローク不足を招くこともない。
さらに、緩衝器Dにおける伸側室R1と圧側室R2の圧力差を充分に大きくないと、フリーピストン9とハウジング6との間に生じる摩擦によってフリーピストン9が作動(変位)できなくなる可能性があるが、本発明の懸架装置では、伸長時には一方の緩衝器D1のみが減衰力を発揮し、収縮時には他方の緩衝器D2のみが減衰力を発揮するので、緩衝器D1,D2における伸側室R1と圧側室R2の圧力差を大きくすることができ、フリーピストン9の作動不良を生じさせずに確実に減衰力低減効果を得て、周波数に感応した減衰特性を実現することができ、二輪車の乗り心地を損なうことがない。
なお、ハウジング6は、上記の実施の形態では、シリンダ1内に設けられているが、シリンダ1外へ設けることも可能であり、また、伸側室R1内にハウジング6を設ける構成を採用することもできる。また、緩衝器D1,D2の上記した減衰力低減効果は、ポート22bと環状溝26の有無に関係なく、享受することができ、これらを廃することも可能である。緩衝器D1,D2のシリンダ1をアウターチューブO或いはインナーチューブIを介して車体側に連結する倒立型緩衝器に設定することも可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。