JP2012062698A - 建物の補強構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】改装時に開口部を設けるときでも容易に実施することが可能な建物の補強構造を提供する。
【解決手段】ユニット建物10の2階を構成する建物ユニット1Aの天井部19の一部を切断して開口部190を形成した際に、開口部又はその周辺に補強天井根太6を設ける。
また、建物ユニット1Aの床部17の一部を切断して開口部179を形成した際に、開口部又はその周辺に位置する床小梁172に対して、桁方向に向けた床補強小梁3Aを、床小梁172と妻側床梁13との間に差し渡す。
さらに、1階の建物ユニット1Bの床部の一部を切断して開口部170Aを形成した際に、桁方向に向けた床補強小梁2A,2Bを、床小梁172と妻側床梁13との間及び床小梁172,172間に差し渡す。
【選択図】図1

Description

本発明は、梁材と柱材とによって骨組構造体が形成される建物に、鉛直方向に開放される開口部を設ける際の建物の補強構造に関するものである。
従来、建物としてのユニット建物に吹き抜け空間等の開口部を形成するために、開口部の周辺に位置する床梁や天井梁に、補強部材(スチフナー)を溶接接合又はボルト接合するユニット建物の補強構造が知られている(例えば、特許文献1,2等を参照)。
この特許文献1,2に開示された開口部の補強は、ユニット建物を新築する際におこなわれるものであって、工場において建物ユニットを組み立てる工程の中でおこなわれるため、溶接による接合が可能であるうえに、ボルト接合の場合も取付箇所の制約をほとんど受けることがなく、任意の箇所でおこなうことができる。
他方、改装時に既存のユニット建物の床や天井を開口して収納庫を設けたり、下階から上階にわたる吹き抜け空間を設けたり、エレベータを設置したりする場合があるが、開口部を設けるために天井根太や床小梁や床根太が切断されたり切り欠かれたりすると、既存のユニット建物に比べて強度が低下することになるので、開口部又はその周辺を補強する必要がある。
特開2008−291489号公報 特開2002−54237号公報
しかしながら、特許文献1,2に開示されているような溶接接合を使った補強は、既存の建物の中で火器を使用することになるため、火災の危険を考えると実施しにくい。
また、補強部材を梁のフランジにボルト接合で接合しようとすると、上下階で重なり合う梁などが邪魔となり、ボルト孔の穿孔やドリルねじの螺入ができない箇所があるため、新築時と同じように補強することができない。
そこで、本発明は、改装時に開口部を設けるときでも容易に実施することが可能な建物の補強構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の建物の補強構造は、梁材と柱材とによって形成される骨組構造体を複数、備えた建物の補強構造であって、前記骨組構造体の上縁は、第1方向に向けて略平行に配置される一対の第1天井梁と、前記第1方向に略直交する第2方向に向けて略平行に配置される一対の第2天井梁とによって形成されるとともに、前記第1天井梁間には、前記第2方向に向けた天井根太が前記第1方向に間隔を置いて複数、差し渡されており、前記骨組構造体の下縁は、前記第1方向に向けて略平行に配置される一対の第1床梁と、前記第2方向に向けて略平行に配置される一対の第2床梁とによって形成されるとともに、前記第1床梁間には、前記第2方向に向けた床小梁が前記第1方向に間隔を置いて複数、差し渡されており、少なくとも一つの前記骨組構造体の天井部の一部を切断して第1開口部を形成した際に、前記第1開口部又はその周辺に補強天井根太を設け、少なくとも一つの前記骨組構造体の床部の一部を切断して第2開口部を形成した際に、前記第2開口部又はその周辺に位置する前記床小梁に対して、前記第1方向に向けた床補強小梁を、前記床小梁と前記第2床梁との間又は前記床小梁間に差し渡し、前記床補強小梁の両端をそれぞれ側方から挿入される締結部材によって固定させることを特徴とする。
ここで、前記第1開口部と前記第2開口部は、鉛直方向に投影した際に重なる位置に形成されていてもよい。また、前記補強天井根太は、前記第1開口部又はその周辺の下面の位置を既存の天井根太の下面の位置より上方に上げる上げ越し処理が施されている構成とすることができる。
さらに、前記床補強小梁の端部には、軸直交方向に張り出された張出部を有する取付部が設けられており、前記張出部に装着される締結部材によって前記第2床梁又は前記床小梁と前記床補強小梁とが連結される構成とすることができる。
また、前記床補強小梁は、少なくとも1本の床小梁を下方から支持するとともに、それとは別の前記床小梁と前記第2床梁との間に差し渡される構成であってもよい。
また、前記第1開口部若しくは前記第2開口部又はそれらの周辺に位置する前記第1天井梁、前記第2天井梁、前記第1床梁又は前記第2床梁の少なくとも一つは、天井内部側又は床内部側が開放されるように凹部が向けられた溝形鋼又はリップ付き溝形鋼によって形成されており、その凹部の開放側に前記第1天井梁、前記第2天井梁、前記第1床梁又は前記第2床梁に沿って補強梁が配置され、前記凹部を形成するウエブと前記補強梁とが、前記補強梁を取り付けるための固定片が形成された曲げ板状の連結部材と締結部材とによって連結される構成とすることができる。さらに、前記補強梁は、前記凹部の開放側に、凹部の開放側を向かい合わせにした溝形鋼又はリップ付き溝形鋼であってもよい。
このように構成された本発明の建物の補強構造は、第1開口部又はその周辺に補強天井根太を設ける。また、第2開口部又はその周辺に位置する床小梁を、床小梁と第2床梁との間又は床小梁間に差し渡された床補強小梁によって補強する。さらに、床小梁と第2床梁との間に床補強小梁を介在させることで、第2床梁の横補剛剛性も向上する。そして、床補強小梁の両端は、それぞれ側方から挿入される締結部材によって固定される。
このため、既存の建物に床部と天井部とを貫通させる開口部を設ける際にも、補強天井根太を設けて補強することによって天井梁に必要な横補剛剛性を充分に確保することができるうえに、開口部から床補強小梁の固定をおこなうことができるので、容易に建物を補強することができる。
また、床部と天井部に投影位置が重なって貫通する開口部を設けることができれば、エレベータの設置や吹き抜け空間の構築を容易におこなうことができる。
さらに、第2開口部又はその周辺の第2床梁や床小梁に対して床補強小梁による支持点を加えることで、床根太や床小梁の切断による支持点の減少を補うことができるうえに、新たに鉛直荷重が追加される場合であっても、充分に耐力を確保することができる。
また、第2開口部を形成する際に床小梁や床根太などの横補剛効果部材が取り除かれても、床補強小梁を差し渡すことによって水平方向の剛性を充分に確保することができる。
さらに、第1開口部又はその周辺に位置する補強天井根太の下面を既存の天井根太の下面の位置より上方に上げる上げ越し処理を施すことによって、開口部に新たに配置するエレベータの資機材や部材などと干渉する天井根太の一部を取り除くことができ、目的に合った開口部を構築することができる。
また、床補強小梁の端部に軸直交方向に張り出された張出部を設けることで、容易に締結部材の装着箇所を確保することができる。ここで、床補強小梁によって床小梁を下方から支持させる構成にすることで、第2開口部周辺の床のたわみや床鳴りなどの発生を抑えることができる。特に、第2開口部を形成する際に床小梁が切断された場合は、床小梁の一端と第1床梁との連結が解除されて床小梁がたわみ易くなるが、床補強小梁によって切断された床小梁の端部を下方から支持させることで、第2開口部周辺の強度の低下を防ぐことができる。
また、第1開口部若しくは第2開口部又はそれらの周辺に位置する天井梁又は床梁の長手方向に沿って補強梁を配置し、天井梁又は床梁のウエブと補強梁とを固定片が形成された曲げ板状の連結部材と締結部材とによって連結させることで、さらに開口部を補強することができる。
さらに、このような構成であれば、改装時に天井梁や床梁への補強梁の取り付けを開口部から容易におこなうことができる。また、補強梁を天井梁や床梁に沿って配置することで、天井梁や床梁の強軸方向の許容曲げ応力度を低下させることなく、弱軸方向の強度を高めることができる。すなわち、補強梁の配置によって天井梁や床梁の横補剛剛性が高められるので、建物の耐力を落とすことなく吹き抜け空間を設けることができる。
また、補強梁を、天井梁又は床梁の凹部の開放側に凹部の開放側を向かい合わせにした溝形鋼又はリップ付き溝形鋼によって形成した場合は、既存の建物に下階から上階にわたる吹き抜け空間を設けるなどの改装時において、補強梁にフランジを設けた分、板状の補強梁を使用した場合に比べて水平方向の剛性を高めることができる。さらに、補強梁のフランジが天井梁側又は床梁側を向いているので、開口部への突出量を最小限に抑えることができ、内壁材などを取り付ける際にも邪魔になることがない。
本発明の実施の形態のユニット建物の補強構造の構成を説明する斜視図である。 建物ユニットの構成を説明する斜視図である。 実施例1の天井部の補強構造の構成を説明する断面図である。 天井根太の構成を説明する断面図である。 実施例1の天井部の補強構造の構成を説明する斜視図である。 実施例1の別の天井部の補強構造の構成を説明する断面図である。 図6のA−A矢視方向で見た断面図である。 実施例2の床部の補強構造の構成を説明する斜視図である。 実施例2の床部の補強構造の構成を説明する断面図である。 (a)は図9のB−B矢視方向で見た断面図、(b)は図9のC−C矢視方向で見た断面図、(c)は図9のD−D矢視方向で見た断面図である。 実施例2の別の床部の補強構造の構成を説明する斜視図である。 図11で示した床部の補強構造の構成を説明する断面図である。 (a)は図12のE−E矢視方向で見た断面図、(b)は図12のF−F矢視方向で見た断面図である。 実施例3のユニット建物の補強構造の構成を説明する斜視図である。 実施例3のユニット建物の補強構造の構成を説明する平面図である。 実施例3の床梁と補強梁の取付構造を説明する断面図である。 図16のG−G矢視方向で見た断面図である。 実施例3の天井梁と補強梁の取付構造を説明する断面図である。 実施例3の天井梁と補強梁の取付構造を説明する正面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の建物としてのユニット建物10の補強構造の構成を説明する斜視図である。ここで、ユニット建物10は、図2に示すような建物ユニット1を現場で複数、隣接して設置することによって構築される。
この建物ユニット1は、図2に示すように、隅角部に配置される柱材としての柱11,・・・と、柱11,・・・の下端間に架け渡される梁材としての床梁(12,13)と、柱11,・・・の上端間に架け渡される梁材としての天井梁(15,16)とによってボックス形のラーメン構造体(骨組構造体)に形成される。
この建物ユニット1は、平面視矩形に形成されており、長辺側(桁側)の床梁を桁側床梁12(第1床梁)とし、短辺側(妻側)の床梁を妻側床梁13(第2床梁)とする。また、長辺側の天井梁を桁側天井梁15とし、短辺側の天井梁を妻側天井梁16とする。
ここで、桁側床梁12、妻側床梁13、桁側天井梁15及び妻側天井梁16は、溝形鋼又はリップ付き溝形鋼によって成形される。本実施の形態では、図1の桁側天井梁15で図示されているように、平行な上下のフランジ152,152間がウエブ151によって連結された断面視略コ字形の溝形鋼を使用する場合について説明する。
この溝形鋼(桁側天井梁15など)は、図1から明らかなように、フランジ152,152及びウエブ151によって形成される凹部の開放側が天井内部側(開口部190側)に向けられている。
また、図2に示すように、桁側床梁12,12間には長辺方向(第1方向又は桁方向ともいう。)に間隔を置いて複数の床小梁172,・・・が差し渡される。すなわち、この床小梁172は、妻側床梁13と同じく短辺方向(第2方向又は妻方向ともいう。)に向いて略平行に配置される。
この床小梁172は、四角筒状の角形鋼管によって成形される。また、床小梁172の両端には、断面視コ字形の取付金具175(図8参照)が接合されており、その取付金具175は桁側床梁12に溶接によって接合される。
さらに、床小梁172,・・・上には妻側床梁13,13間に複数の木製の床根太173,・・・が差し渡され、その上には床材171が貼り付けられる。すなわち、床部17は、桁側床梁12,12間に差し渡された複数の床小梁172,・・・と、床小梁172,・・・上において妻側床梁13,13間に差し渡される複数の床根太173,・・・と、面状の床材171とによって主に構成される。
一方、桁側天井梁15,15間には、短辺方向に向けた複数の木製の天井根太192,・・・が架け渡され、それらの天井根太192,・・・の下面に天井材191が取り付けられることによって天井部19が形成される。また、柱11,11間には壁部18が設けられる。
さらに、図2に示すように、柱11と桁側床梁12又は妻側床梁13との接合部には、断面視略コ字形の接合枠材14が配置される。すなわち、柱11の側面に接合枠材14の端面が当接されて溶接によって接合がおこなわれ、接合枠材14に対して桁側床梁12又は妻側床梁13が溶接によって接合される。この接合枠材14は、柱11と桁側天井梁15又は妻側天井梁16との接合にも使用される。
そして、ユニット建物10を改装する際に、階段、エレベータ、エントランスやリビング等に設けられる吹き抜け空間などを構築する場合がある。図1は、ユニット建物10にエレベータを設置するために、鉛直方向に投影した際に重なる位置に複数の開口部190,179,170Aを設けた構成を示している。
すなわち、2階の建物ユニット1Aの天井部19には開口部190を設け、実施例1で説明する補強天井根太6,・・・を配置する。また、2階の建物ユニット1Aの床部17と1階の建物ユニット1Bの天井部19を貫通させた開口部179を設ける。さらに、1階の建物ユニット1Bの床部17には開口部170Aを設け、エレベータの資機材などの荷重を支持させるために実施例2で説明する床補強小梁2A,2Bを配置する。
以下、実施例において開口部の補強構造について説明する。
以下、実施例1では、図3−7を参照しながら天井部19に設ける第1開口部としての開口部190の構成について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
図5は、建物ユニット1Aの天井部19の一部を切断して開口部190を設けた斜視図を示している。また、図3は、開口部190に差し渡される補強天井根太6の構成を説明する断面図である。
この図5では、開口部190の形状に合わせて一部が切り取られた天井材191が、天井根太192,・・・下に貼り付けられている。すなわち、この開口部190は、開口部190を設ける位置の天井材191を切断し、開口部190を横断する天井根太192を上げ越し処理することによって開口される。この上げ越し処理は、開口部190において既存の天井根太192の下面の位置のままでは他の部材と干渉するなど支障がある場合におこなわれる。
図4は、開口部190を設ける前に桁側天井梁15,15間に架け渡されていた天井根太192に対して、開口部190の位置の下面を既存の位置より上方に上げるために切取部192aを切り取った天井根太192Aを示した断面図である。
このように天井根太192Aの一部である切取部192aが取り除かれると、桁側天井梁15,15の横補剛剛性が低下することになるが、設計的に必要とされる水平方向の剛性が確保できていれば、そのまま既存の天井根太192Aを使用し続けることができる。
これに対して、切取部192aの除去によって必要とされる水平方向の剛性が確保できなくなる場合は、図3,5に示すように補強天井根太6を開口部190に配置することになる。
この補強天井根太6は、桁側天井梁15,15間に架け渡される。この補強天井根太6は、開口部190に差し渡される上側根太材61と、その上側根太材61の一端に重ね合わされる下側根太材62と、上側根太材61と下側根太材62とを接合する連結金具64と、上側根太材61の端部と桁側天井梁15とを繋ぐ端接合金具63とを主に備えている。
この上側根太材61は、長尺状の木製の角材によって成形される。また、下側根太材62も、長尺状の木製の角材によって成形される。さらに、下側根太材62の一端には、桁側天井梁15のフランジ152に引っ掛けるための引掛部62aが形成される。また、上側根太材61又は下側根太材62は、開口部190に架け渡されていた既存の天井根太192を加工することによって形成することができる。
そして、下側根太材62の端部の上に上側根太材61の端部が載置される。さらに、上下に重ね合わされた上側根太材61と下側根太材62とは、上側根太材61と下側根太材62の側面に跨って取り付けられる連結金具64によって接合される。
この連結金具64は、矩形状の鋼板によって成形される。また、連結金具64は、締結部材としてのドリルねじ66,・・・を捩じ込むことによって上側根太材61と下側根太材62のそれぞれに固定される。
さらに、この連結金具64は、上側根太材61及び下側根太材62を挟んで両側面に取り付けられる。また、下側根太材62の開口部190側の端面には、図1,3に示すように枠板195を直交させる。
このように下側根太材62の上に載置された上側根太材61の桁側天井梁15側の端部は、図3に示すようにウエブ151の中ほどに当接される。そこで、上側根太材61の端部と桁側天井梁15とを繋ぐために端接合金具63を使用する。
この端接合金具63は、上側根太材61の両側面に沿ってそれぞれ配置される略L字状に形成された長L金具631と、上側根太材61の下面より下方に垂下された下端に形成された座金632とを備えている。この座金632は、桁側天井梁15の下側のフランジ152上に載置され、締結部材としてのドリルねじ65によって桁側天井梁15に固定される。
また、この座金632と上側根太材61の端部との間には、台材611を介在させる。さらに、端接合金具63は、ドリルねじ66,・・・を使って上側根太材61及び台材611に固定させる。
このように構成された補強天井根太6を開口部190に配置したユニット建物10の補強構造は、開口部190又はその周辺に位置する天井根太192の下面を既存の位置より上方に上げる上げ越し処理を施す。
このように既存のユニット建物10に開口部を設ける際に、開口部190に新たに配置する資機材や部材などと干渉する切取部192aを除去した天井根太192Aとすることで、目的に合った開口部190を構築することができる。
例えば、この実施例1のように改装時にエレベータを設ける場合に、最上階の天井部19に設けた開口部190においては、エレベータの取り付けに支障となる天井根太192の下部を除去しなければならないことがある。
この際、上げ越し処理をすることによって既存の天井根太192の一部が取り除かれると、横補剛効果部材が取り除かれることになって風荷重や地震荷重などの水平方向の荷重が桁側天井梁15の側方から作用したときの剛性が低下することになる。このため、必要に応じて補強天井根太6を設けることによって水平方向の剛性を充分に確保した上げ越し処理をおこなうこととする。
ここで、補強天井根太6を上下に配置する上側根太材61と下側根太材62とを使って構成するのであれば、上側根太材61と下側根太材62とをスライドさせるだけで容易に既存の桁側天井梁15,15間の間隔に合わせることができる。さらに、下側根太材62の長さを調整することで、容易に上げ越し処理をおこなう範囲を変更することができる。
また、補強天井根太6の端部に取り付けられる端接合金具63に、桁側天井梁15のフランジ152に載置させる座金632を設けることで、補強天井根太6の端部と桁側天井梁15とを容易に連結させることができる。
さらに、上側根太材61と下側根太材62の側面に跨って取り付けられる連結金具64を使用することで、上下に何ら部材を突出させることなく2つの部材を接合させることができる。すなわち、側面に取り付ける連結金具64を使用するのであれば、補強天井根太6の上下に突出する箇所がなく、他の部材と干渉することもない。
また、任意の位置にドリルねじ66,・・・を捩じ込むことで連結金具64を固定する構成であれば、上側根太材61及び下側根太材62に対する位置合わせを正確におこなう必要がなく、容易に上側根太材61と下側根太材62とを接合させることができる。
次に、図6,7を参照しながら、別の形態の補強天井根太7について説明する。上述した補強天井根太6は、上下に2つの根太材を重ねることによって構成されたが、以下で説明する補強天井根太7は、横方向に2つの根太材を重ねることによって構成される。
この補強天井根太7は、桁側天井梁15,15間に差し渡される主根太材71と、その主根太材71の側面に固定される副根太材72と、主根太材71と副根太材72とを接合させる締結部材としての複数の木ねじ73,・・・とを主に備えている。
この主根太材71は、長尺状の木製の角材によって成形されている。また、主根太材71は、開口部190を跨いで桁側天井梁15,15間に架け渡し可能な長さに形成され、端部には桁側天井梁15のフランジ152に引っ掛ける引掛部71aが形成される。
さらに、主根太材71には、開口部190に配置される箇所の下部が切り取られた切欠部71bが形成される。この切欠部71bが、下面を既存の位置より上方に上げる上げ越し処理を施した箇所となる。そして、このような主根太材71は、既存の天井根太192を加工することによって形成される。
一方、副根太材72は、長尺状の木製の角材によって主根太材71よりも短く形成される。また、副根太材72は、主根太材71よりも高さが低く形成される。この副根太材72の高さは、主根太材71の切欠部71bの高さと略同じ高さになる。
そして、側方から見て主根太材71の切欠部71bの軸方向の少なくとも一部と合致するように副根太材72を重ね合わせ、複数の木ねじ73,・・・を使って双方を接合する(図6参照)。
また、この補強天井根太7の上には、受け材193を載置する。この受け材193は、折板屋根のタイトフレーム(図示省略)を支持させる部材である。例えば、折板屋根の上に太陽光パネルを設置する場合は、桁側天井梁15や妻側天井梁16の上だけでなく、天井根太192上に受け材193を載せて、荷重を支持させる場合がある。そのような場合に、補強天井根太7を架け渡した位置でも受け材193を支持できる強度に補強をおこなう。
このように構成された補強天井根太7は、主根太材71の上部の側面に沿って切欠部71bと同じ高さの副根太材72を重ねることによって構成される。このため、開口部190の上げ越し処理を施した箇所だけでなく、その他の箇所においても主根太材71よりも上方や下方に突出される箇所がなく、他の部材と干渉するなどの支障を起こさせることなく軸方向の広い範囲にわたって補強をおこなうことができる。
特に、折板屋根の上に太陽光パネルを設置する際など補強天井根太7の上から荷重を載荷させる場合は、その載荷点周辺を副根太材72によって部分的に補強することが容易にできる。
なお、他の構成及び作用効果については、上述した補強天井根太6、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、実施例2では、図8−13を参照しながら床部17に設ける第2開口部としての開口部170A,170Bについて説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この図8では、構成をわかりやすくするために床材171を取り除いた状態を示している。本来であれば、開口部170Aの形状に合わせて一部が切り取られた床材171が、床根太173,・・・上に貼り付けられている。
すなわち、この建物ユニット1Bの開口部170Aは、開口部170Aの直上の床材171と、開口部170Aを横断する床根太173A,・・・を切断することによって開口される。
この床根太173Aは、切断される前は他の床根太173と同様に、端部が妻側床梁13上に載置され、固定ビス174によって妻側床梁13のフランジ132に固定されていた。また、開口部170Aの位置に存在していた床材171は、切断される前の床根太173A,・・・によって支持されていた。
これに対して、開口部170Aを設けた後は、開口部170A又はその周辺の拘束が開放され、水平方向の剛性が低下することになるため、床補強小梁2A,2Bを配置することによって開口部170A周辺の床部17や床梁(12,13)の補強をおこなうこととする。
すなわち、図8,9に示すように、妻側床梁13とそれに隣接する床小梁172との間に床補強小梁2Aを差し渡し、床小梁172,172間に床補強小梁2Bを差し渡す。これらの床補強小梁2A,2Bは、例えば四角筒状の角形鋼管によって成形される。
この床補強小梁2Aは、一端が妻側床梁13のウエブ131に接合され、他端が床小梁172の側面に接合される。この妻側床梁13に接合される床補強小梁2Aの端部には、図10(a)に示すように、取付部としての端面板21が溶接部23,23を介して接合される。
この端面板21は、床補強小梁2Aの断面よりも大きな面積を有し、図10(a)に示すように、床補強小梁2Aの側方(軸直交方向)に張り出した部分が張出部21a,21aとなる。
そして、端面板21の背面をウエブ131の床内部側の側面に当接させ、締結部材としてのドリルねじ22,・・・を床内部側から張出部21a,21aに捩じ込むことで、床補強小梁2Aの一端が妻側床梁13に固定される。
一方、床補強小梁2Aの他端及び床補強小梁2Bの一端は、図10(b)に示すように、端面板21とL金具24とによって構成される取付部を介して床小梁172の側面に接合される。
この床補強小梁2B(2A)の端部は、端面板21に溶接部23を介して接合された断面視略L字形のL金具24の上に載置され、ドリルねじ22,22によってL金具24に固定される。
また、端面板21は、その背面を床小梁172の側面に当接させ、ドリルねじ22,・・・を側方から張出部21a,21aに捩じ込むことで、床補強小梁2B(2A)の端部が床小梁172に固定される。
さらに、もう一方の床補強小梁2Bの端部は、図10(c)に示すように、取付部としての端面板21を介して床小梁172の側面に接合される。すなわち、端面板21の背面を床小梁172の開口部170A側の側面に当接させ、締結部材としてのドリルねじ22,・・・を開口部170A側から張出部21a,21aに捩じ込むことで、床補強小梁2Bの端部が床小梁172に固定される。
また、図8に示すように、妻側床梁13とそれに隣接する床小梁172との間には、開口部170A周辺の2箇所において床補強小梁2A,2Aが平行に差し渡される。
これらの床補強小梁2A,2A,2Bの配置位置は、開口部170Aの利用目的に応じて適宜、変更することができる。例えば、図1に示すようにエレベータを設置するに際して1階の建物ユニット1Bの床部17に開口部170Aを設ける場合は、エレベータに使用する資機材や部材の自重などの鉛直荷重が追加されることになるので、その荷重の作用位置に合わせて床補強小梁2A,2A,2Bを配置すればよい。
このように構成された床補強小梁2A,2Bを開口部170Aに配置したユニット建物10の補強構造は、開口部170A又はその周辺に位置する床小梁172,172を、床小梁172と妻側床梁13との間及び床小梁172,172間に差し渡された床補強小梁2A,2Bによって補強する。
また、開口部170Aを形成する際に床根太173A,・・・を切断すると、横補剛効果部材が取り除かれることになって風荷重や地震荷重などの水平方向の荷重が妻側床梁13の側方から作用したときの剛性が低下することになるが、床補強小梁2A,2A,2Bを介在させて支持させることで水平方向の剛性が補われ、妻側床梁13の変形を抑えることができる。
そして、床補強小梁2A,2Bの両端は、それぞれ開口部170A側となる側方から挿入されるドリルねじ22,・・・によって固定される。このため、既存のユニット建物10に開口部170Aを設ける際にも、開口部170Aから床補強小梁2A,2Bの固定をおこなうことができるので、容易にユニット建物10を補強することができる。
また、開口部170Aを使って床置きエレベータなどを新たに設ける場合は、開口部170Aの床小梁172及び床補強小梁2A,2Bにエレベータに使用する部材や機器などの鉛直方向の上載荷重が作用することになる。
このようにユニット建物10に新たな荷重が追加される場合でも、床補強小梁2A,2Bによって床小梁172や妻側床梁13の支持点が設けられていれば、充分に耐力を確保することができる。
また、床補強小梁2A,2Bの端部に軸直交方向に張り出された張出部21aを設けることで、開口部170Aを利用して側方から容易にドリルねじ22,・・・を装着することが可能な装着箇所を確保することができる。
さらに、床補強小梁2A,2Bが床小梁172と略同じ高さに配置されれば、床小梁172と妻側床梁13との間及び床小梁172,172間に軸力材として介在されることになり、妻側床梁13の側方から作用する力による水平方向の変形(弱軸方向の変形)に対して、床補強小梁2A,2Bの軸方向強さによって充分に対抗させることができる。
次に、図11−13を参照しながら、別の形態の床補強小梁3を配置した開口部170Bについて説明する。すなわち、上述した開口部170Aは、床材171と床根太173Aを切断することによって形成されたが、この開口部170Bは、図11に示すように建物ユニット1Cの床材171と床根太173Aと床小梁172Aを切断することによって形成される。
このようにして形成された開口部170B又はその周辺には、床補強小梁3を使った補強をおこなう。この床補強小梁3は、例えば四角筒状の角形鋼管によって成形される。
この床補強小梁3は、切断された床小梁172Aの下を通ってそれに隣接する別の床小梁172と妻側床梁13との間に差し渡される。また、切断された床小梁172Aの端部は、床補強小梁3の上に載置され、床補強小梁3によって下方から支持される。
この床補強小梁3は、図12に示すように、一端が妻側床梁13のウエブ131に接合され、他端が床小梁172の側面に接合される。この妻側床梁13に接合される床補強小梁3の端部には、図12及び図13(a)に示すように、取付部としての梁側取付部31が設けられている。
この梁側取付部31は、ウエブ131に当接させる取付板311と、その取付板311の開口部170B側の面に溶接部23を介して接合される側面視略逆L字形の接続金具312と、接続金具312と床補強小梁3の端部との間に介在させるL金具313とによって主に構成される。
この接続金具312は、図12に示すように、取付板311に側縁が当接されてフランジ132より張り出された後に下方に向けて垂下される逆L字形のL状板312aと、間隔を置いて平行に取付板311に取り付けられたL状板312a,312aの床内部側(開口部170B側)の側縁間を塞ぐ矩形板312bとによって形成される。
この妻側床梁13の凹部から張り出して下方に延設される接続金具312を介在させることで、床補強小梁3の取り付け位置を、床小梁172A,172や妻側床梁13よりも低い位置にすることができる。
そして、この矩形板312bの下部に、溶接部23を介してL金具313を接合する。また、L金具313の上には、床補強小梁3の端部を載置し、ドリルねじ22,22によってL金具313に固定させる。
一方、床補強小梁3の他端は、図12及び図13(b)に示すように、取付部としての長板32を介して床小梁172の側面に接合される。この長板32は、床小梁172の高さよりも長い長辺を有する長方形状の鋼板によって成形される。
そして、長板32の下部に溶接部23を介して床補強小梁3の端部を接合する。また、床補強小梁3の上方に張り出された長板32の張出部32aには、開口部170B側から締結部材としてのドリルねじ22,22を捩じ込むことで、床補強小梁3の端部を床小梁172に固定させる。
このように床小梁172より低い位置に配置される床補強小梁3によって、開口部170Bを形成する際に切断された床小梁172Aの端部を下方から支持させることで、切断された床小梁172A周辺の強度の低下を防ぐことができる。
例えば、エレベータボックスが通過可能な空間や広い吹き抜け空間を形成するには少なくとも一本の床小梁172を切断する必要があるが、切断された床小梁172Aは桁側床梁12との連結が解除されるので、補強がなければたわみ易い状態になる。そして、床小梁172Aがたわみ易い状態になると、床根太173を介して床小梁172Aに支持される開口部170B周辺の床材171の支持が不充分になり、床のたわみや床鳴りが発生する原因になる。
これに対して切断された床小梁172Aの端部を床補強小梁3によって下方から支持させれば、床小梁172Aの変形が抑制され、開口部170B周辺の床のたわみや床鳴りの発生を防ぐことができる。
また、妻側床梁13の水平方向(弱軸方向)の剛性についても、妻側床梁13と床小梁172とを連結させる床補強小梁3によって補われるため、妻側床梁13の側方から作用する水平方向の荷重に対して妻側床梁13の変形を抑えることができる。
また、このように床小梁172,172Aよりも低い位置に床補強小梁3を配置する際には、ウエブ131に当接させる取付板311から下方に延設される接続金具312を使用することによって、端部の強度を低下させることなく、床補強小梁3と妻側床梁13とを容易に連結させることができる。
さらに、床補強小梁3が床小梁172Aの下を通過させる低い位置に配置されていれば、床小梁172,172Aの高さの空間を有効に活用することができる。
なお、他の構成及び作用効果については、上述した床補強小梁2A,2B、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、実施例3では、図14−19を参照しながら補強梁4,5を使った開口部179の補強について説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例3では、前記実施例2で説明したような床補強小梁2A,2B,3による補強だけでなく、開口部179周辺の桁側床梁12及び妻側床梁13を補強梁4によって直接、補強する構成について説明する。
例えば、エレベータ経路を形成したり吹き抜け空間を形成したりするために、図14に示すような大きな開口部179を形成すると、床小梁172Aが切断されることになって桁側床梁12の横補剛剛性が低下することになる。
また、開口部179として部材が横たわることのない広い空間を確保するためには、床補強小梁2C,3Aを配置する位置も開口部179周辺の床材171の下に制限されることになる。
そこで、この実施例3では、補強梁4を使って、開口部179に面する桁側床梁12及び妻側床梁13の補強をおこなう。この補強梁4は、図14,15に示すように、桁側床梁12及び妻側床梁13の軸方向に沿って配置される長尺状の鋼材である。
例えば、補強梁4は、図16に示すように、平行な上下のフランジ42,42間がウエブ41によって連結された断面視略コ字形の溝形鋼によって形成される。また、補強梁4は、妻側床梁13(又は桁側床梁12)の凹部の開放側に、補強梁4の凹部の開放側を向かい合わせにした状態で配置される。
そして、補強梁4は、鉛直方向(補強梁4の短手方向)に間隔を置いて配置される連結部材43,43によって妻側床梁13(又は桁側床梁12)のウエブ131に連結される。この連結部材43,43は、図14,15に示すように補強梁4の長手方向に、複数個間隔を置いて設けられる。
この連結部材43は、図16に示すように、鋼板を折り曲げ加工することによって形成される。具体的には、連結部材43の本体部431はフランジ132と略平行になり、本体部431の妻側床梁13側の端部は、本体部431に対して直角上向きに折り曲げられて固定片432が形成される。また、補強梁4側の端部は、本体部431に対して直角下向きに折り曲げられて固定片433が形成される。すなわち、本体部431の両端に形成された固定片432,433同士は、上下逆向きに突出された形状となる。
また、妻側床梁13のウエブ131に当接される固定片432は、締結部材としてのドリルねじ434によってウエブ131に固定される。このドリルねじ434の捩じ込みは、開口部179を利用して側方からおこなうことができる。
図17は、図16のG−G矢視方向で見た連結部材43,43の正面を示した図である。下側の連結部材43の固定片432に捩じ込まれるドリルねじ434は、上側の連結部材43の固定片433に覆われて側方から見えなくなるが、下側の連結部材43を先に取り付けるようにすれば、上下の連結部材43,43を側方から容易に固定することができる。
また、このような形状をした連結部材43であれば、外壁材に設けられた桟材や補強柱の取付ボルトなどの既存の仕様に干渉しないようにして妻側床梁13に取り付けることができる。さらに、間隔を置いて配置される連結部材43,43を使用する構成であれば、床梁(12,13)の水平方向の剛性を少ない部材量で高めることができる。
また、開口部179側に露出された固定片433,433に対しては、補強梁4のウエブ41を当接させ、ドリルねじ434,434を開口部179側から捩じ込むことで、補強梁4を連結部材43,43に固定することが容易にできる。
このように開口部179又はその周辺に位置する床梁(12,13)の長手方向に沿って補強梁4,4を配置し、床梁(12,13)のウエブ131と補強梁4とを両端に固定片432,433が形成された曲げ板状の連結部材43とドリルねじ434とによって連結させれば、床梁(12,13)自体の強軸方向の許容曲げ応力度を低下させることなく、床梁の弱軸方向の強度(床梁の側方から作用する力に対する水平方向の剛性)を高めることができる。
また、図14,15に示すように、開口部179の周辺には床補強小梁2C,3Aを配置する。この床補強小梁2Cによって、切断された床根太173A,・・・の端部を下方から支持させる。
この床補強小梁2Cは、床小梁172と略平行となるとともに、床小梁172と略同じ高さに配置される。また、床補強小梁2Cの桁側床梁12側の端部は、図15に示すように、取付部としての端面板21とL金具24を介して、ドリルねじ22によって桁側床梁12に固定される。なお、床補強小梁2Cの開口部179側は枠板176Aによって塞がれる。
また、床補強小梁2Cの他方の端部は、床補強小梁3Aの上に載置される。この床補強小梁3Aは、切断された床小梁172Aと、床補強小梁2Cの下を通って、妻側床梁13と床小梁172との間に差し渡される。
この床補強小梁3Aの妻側床梁13側の端部には、図15に示すように、取付板311と接続金具312とL金具313とによって取付部が形成されており、取付板311の張出部311aにドリルねじ22,・・・を捩じ込むことによって妻側床梁13に固定される。
また、床補強小梁3Aの他方の端部には、長板32が取付部として設けられており、開口部179周辺の切断されていない床小梁172の側面に長板32を当接させ、ドリルねじ22を捩じ込むことによって固定される。
さらに、床補強小梁3Aの上に載置された切断された床小梁172Aの端部は、取付部としての取付金具33とドリルねじ22,・・・によって床補強小梁3Aに固定される。なお、床補強小梁3Aの開口部179側は枠板176Bによって塞がれる。
そして、床補強小梁3Aの上に載置された床補強小梁2Cの端部は、床小梁172Aの端部と同様に、取付部としての取付金具33とドリルねじ22,・・・によって床補強小梁3Aに固定される。
一方、大きな開口部179を形成すると、下階の建物ユニット1Bの天井部19では、天井根太192が大きく切り欠かれたり切断されたりして、桁側天井梁15の横補剛剛性が低下することがある。また、図2に示すように、妻側天井梁16の横補剛剛性は、隣接する天井根太192との間に差し渡された端根太194,・・・によって確保されているが、この端根太194が取り除かれると妻側天井梁16の横補剛剛性が低下することになる。
そこで、補強梁5を使って開口部179に面する桁側天井梁15及び妻側天井梁16の補強をおこなう。この補強梁5は、図14,19に示すように、桁側天井梁15及び妻側天井梁16の軸方向に沿って配置される長尺状の鋼材である。
例えば、補強梁5は、図18に示すように、平行な上下のフランジ52,52間がウエブ51によって連結された断面視略コ字形の溝形鋼によって形成される。また、補強梁5は、桁側天井梁15(又は妻側天井梁16)の凹部の開放側に、補強梁5の凹部の開放側を向かい合わせにした状態で配置される。
そして、補強梁5は、鉛直方向(補強梁5の短手方向)に間隔を置いて2箇所に形成される固定片532,532を有する連結部材53によって桁側天井梁15(又は妻側天井梁16)のウエブ151に連結される。この連結部材53は、図14,19に示すように補強梁5の長手方向に、複数個間隔を置いて設けられる。
この連結部材53は、図18に示すように、鋼板を折り曲げ加工することによって形成される。具体的には、連結部材53の梁側固定部531はウエブ151に沿って平板状に形成され、その梁側固定部531の上下の両縁部533,533はフランジ152,152と略平行となるように直角に折り曲げられることによって形成される。
そして、上側の縁部533の補強梁5側を直角上向きに折り曲げることによって上側の固定片532が形成される。また、下側の縁部533の補強梁5側を直角下向きに折り曲げることによって下側の固定片532が形成される。すなわち、連結部材53の上縁と下縁に形成された固定片532,532同士は、上下逆向きに突出された形状となる。
また、桁側天井梁15のウエブ151に当接される梁側固定部531は、締結部材としてのドリルねじ534によってウエブ151に固定される。このドリルねじ534の捩じ込みは、開口部179を利用して側方からおこなうことができる。
図19は、連結部材53,53によって桁側天井梁15に固定された補強梁5を開口部179の中央側から見た正面図である。この図に示すように、開口部179側に露出される固定片532,532に対しては、補強梁5のウエブ51を当接させ、ドリルねじ534,534を開口部190側から捩じ込むことで、補強梁5を連結部材53に固定することが容易にできる。
このように開口部179又はその周辺に位置する桁側天井梁15の長手方向に沿って補強梁5を配置し、桁側天井梁15のウエブ151と補強梁5とを両端に固定片532,532が形成された曲げ板状の連結部材53とドリルねじ534とによって連結させれば、桁側天井梁15自体の強軸方向の許容曲げ応力度を低下させることなく、桁側天井梁15の弱軸方向の強度(桁側天井梁15の側方から作用する力に対する水平方向の剛性)を高めることができる。
このように開口部179又はその周辺に位置する天井梁(15,16)の長手方向に沿って補強梁5を配置し、天井梁(15,16)のウエブ151と補強梁5とを両端に固定片532,532が形成された曲げ板状の連結部材53とドリルねじ534,・・・とによって連結させることで開口部179を補強することができる。
このように実施例3では、図14に示すように開口部179の上階側の四辺が、補強梁4,4及び床補強小梁2C,3Aによって補強される。ここで、床補強小梁2Cが配置されることによって、切断された床根太173A,・・・の端部が下方から支持されることになり、開口部179周辺の床部17が補強される。
また、桁側床梁12の横補剛効果部材であった床小梁172Aの切断によって低下した水平方向の剛性を、床補強小梁2Cによる支持点を追加することによって補うことができる。
さらに、床補強小梁3Aが配置されることによって、切断された床小梁172A及び床補強小梁2Cの端部が下方から支持されることになり、開口部179周辺の床部17が補強される。
また、妻側床梁13の横補剛効果部材であった床根太173A,・・・の切断によって低下した水平方向の剛性を、床補強小梁3Aによる支持点を追加することによって補うことができる。
このように開口部179又はその周辺に位置する床梁(12,13)の長手方向に沿って補強梁4,4を配置し、床梁(12,13)のウエブ131と補強梁4とを両端に固定片432,433が形成された曲げ板状の連結部材43,43とドリルねじ434,・・・とによって連結させることで、床補強小梁2C,3Aによる補強効果に加えて、さらに開口部179を補強することができる。
一方、開口部179の下階側は、開口部179に面する桁側天井梁15及び妻側天井梁16に沿って配置される補強梁5,5によって補強される。さらに、図示していないが、開口部179の下階側には、実施例1で説明した補強天井根太6,7を配置して補強することができる。
このため、既存のユニット建物10の耐力を落とすことなく、改装時にエレベータ経路となる開口部179を、1階の建物ユニット1Bと2階の建物ユニット1Aとの境界に新たに設けることができる。
また、連結部材43,43が補強梁4の短手方向に少なくとも2個設けられている場合は、床梁(12,13)と連結部材43,43と補強梁4とで閉断面に近い断面が形成されるので、床梁(12,13)の許容曲げ応力度を増加させることができる。さらに、連結部材53の固定片532,532が補強梁5の短手方向の2箇所に設けられている場合も、天井梁(15,16)と固定片532,532を有する連結部材53と補強梁5とで閉断面に近い断面が形成されるので、同様の効果を得ることができる。
また、連結部材43,53を、図14に示すように、補強梁4,5の長手方向に複数個間隔を置いて設ける構成とすることで、床小梁172や天井根太192や端根太194が取り付けられていた箇所を避けて連結部材43,53を取り付けることができる。このため、床小梁172や天井根太192の端部をそのまま切り残したり、その取付金具175などをそのまま残したりしても、補強梁4,5を取り付けることができる。
さらに、補強梁4,5を、床梁(12,13)及び天井梁(15,16)の凹部の開放側に凹部の開放側を向かい合わせにした溝形鋼又はリップ付き溝形鋼によって形成することで、既存のユニット建物に下階から上階にわたる吹き抜け空間を設けるなどの改装時において、補強梁4,5にフランジ42,52を設けた分、板状の補強梁を使用した場合に比べて水平方向の剛性を高めることができる。
また、補強梁4,5のフランジ42,52が床梁側又は天井梁側を向いて床梁(12,13)又は天井梁(15,16)の凹部に収容されるのであれば、開口部179への突出量を最小限に抑えることができ、内壁材181(図1参照)などを取り付ける際にも邪魔になることがない。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態又は実施例では、第1天井梁を桁側天井梁15とし、第2天井梁を妻側天井梁16としたが、これに限定されるものではなく、第1天井梁を妻側天井梁とし、第2天井梁を桁側天井梁としてもよい。また、第1天井梁と第2天井梁の長さが同じであってもよい。また、第1床梁を桁側床梁12とし、第2床梁を妻側床梁13としたことについても、これに限定されるものではない。
さらに、前記実施例1では、締結部材としてドリルねじ65,66,534又は木ねじ73を使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ドリルなどの穿孔機で孔を開けたり既存の孔が利用できたりするのであれば、ワンサイドボルト、ネジ、ビスなどを締結部材として使用することができる。また、端接合金具63及び連結金具64の固定にはドリルねじ66に代えて木ねじや釘などを使用することもできる。さらに、主根太材71と副根太材72との接合には、木ねじ73に代えてドリルねじや釘などを使用することもできる。また、前記実施例2では、締結部材としてドリルねじ22,434を使用する場合について説明したが、前記実施例1と同様にこれに限定されるものではない。
また、前記実施例1では、補強される天井根太として桁側天井梁15,15間に架け渡される補強天井根太6,7について説明したが、これに限定されるものではなく、妻側天井梁16と天井根太192との間に架け渡される端根太194を上げ越し処理する場合にも同様の補強をおこなうことができる。例えば、前記実施例1で説明した端接合金具63を使って端根太194の下面の位置を上方に移動させることができる。
また、前記実施例2では、開口部170Aの床小梁172を、床補強小梁2A,2Bによって両側から支持させたが、これに限定されるものではなく、所望される強度によってはいずれか一方の床補強小梁2A(2B)のみの配置であってもよい。
さらに、前記実施例2では、床補強小梁3,3Aは、一本の床小梁172Aの下を通過しているだけであるが、これに限定されるものではなく、複数の床小梁172,・・・の下を通過させる床補強小梁であってもよい。
また、前記実施例3では、開口部179に面した桁側床梁12と妻側床梁13の両方を補強梁4,4によって補強し、桁側天井梁15と妻側天井梁16の両方を補強梁5,5によって補強したが、これに限定されるものではなく、いずれかの梁を補強するだけでもよい。
さらに、前記実施の形態又は実施例では、ラーメン構造体である建物ユニット1A,1Bを複数、隣接させて構成されるユニット建物10の補強構造について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、軽量形鋼を使った梁材と柱材とによって組み立てられる骨組構造体が形成される鉄骨造の建物にも本発明を適用することができる。
10 ユニット建物(建物)
1,1A−1C 建物ユニット(骨組構造体)
11 柱(柱材)
12 桁側床梁(第1床梁、梁材)
13 妻側床梁(第2床梁、梁材)
131 ウエブ
132 フランジ
15 桁側天井梁(第1天井梁、梁材)
151 ウエブ
152 フランジ
16 妻側天井梁(第2天井梁、梁材)
17 床部
172,172A 床小梁
173,173A 床根太
170A,170B 開口部(第2開口部)
19 天井部
192,192A 天井根太
190 開口部(第1開口部)
2A−2C 床補強小梁
21 端面板(取付部)
21a 張出部
3,3A 床補強小梁
31 梁側取付部(取付部)
311 取付板
311a 張出部
32 長板(取付部)
32a 張出部
33 取付金具(取付部)
4 補強梁
41 ウエブ
42 フランジ
43 連結部材
431 本体部
432,433 固定片
434 ドリルねじ(締結部材)
5 補強梁
51 ウエブ
52 フランジ
53 連結部材
532 固定片
534 ドリルねじ(締結部材)
6 補強天井根太
7 補強天井根太

Claims (7)

  1. 梁材と柱材とによって形成される骨組構造体を複数、備えた建物の補強構造であって、
    前記骨組構造体の上縁は、第1方向に向けて略平行に配置される一対の第1天井梁と、前記第1方向に略直交する第2方向に向けて略平行に配置される一対の第2天井梁とによって形成されるとともに、前記第1天井梁間には、前記第2方向に向けた天井根太が前記第1方向に間隔を置いて複数、差し渡されており、
    前記骨組構造体の下縁は、前記第1方向に向けて略平行に配置される一対の第1床梁と、前記第2方向に向けて略平行に配置される一対の第2床梁とによって形成されるとともに、前記第1床梁間には、前記第2方向に向けた床小梁が前記第1方向に間隔を置いて複数、差し渡されており、
    少なくとも一つの前記骨組構造体の天井部の一部を切断して第1開口部を形成した際に、前記第1開口部又はその周辺に補強天井根太を設け、
    少なくとも一つの前記骨組構造体の床部の一部を切断して第2開口部を形成した際に、前記第2開口部又はその周辺に位置する前記床小梁に対して、前記第1方向に向けた床補強小梁を、前記床小梁と前記第2床梁との間又は前記床小梁間に差し渡し、前記床補強小梁の両端をそれぞれ側方から挿入される締結部材によって固定させることを特徴とする建物の補強構造。
  2. 前記第1開口部と前記第2開口部は、鉛直方向に投影した際に重なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建物の補強構造。
  3. 前記補強天井根太は、前記第1開口部又はその周辺の下面の位置を既存の天井根太の下面の位置より上方に上げる上げ越し処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の補強構造。
  4. 前記床補強小梁の端部には、軸直交方向に張り出された張出部を有する取付部が設けられており、前記張出部に装着される締結部材によって前記第2床梁又は前記床小梁と前記床補強小梁とが連結されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の補強構造。
  5. 前記床補強小梁は、少なくとも1本の床小梁を下方から支持するとともに、それとは別の前記床小梁と前記第2床梁との間に差し渡されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建物の補強構造。
  6. 前記第1開口部若しくは前記第2開口部又はそれらの周辺に位置する前記第1天井梁、前記第2天井梁、前記第1床梁又は前記第2床梁の少なくとも一つは、天井内部側又は床内部側が開放されるように凹部が向けられた溝形鋼又はリップ付き溝形鋼によって形成されており、その凹部の開放側に前記第1天井梁、前記第2天井梁、前記第1床梁又は前記第2床梁に沿って補強梁が配置され、
    前記凹部を形成するウエブと前記補強梁とが、前記補強梁を取り付けるための固定片が形成された曲げ板状の連結部材と締結部材とによって連結されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物の補強構造。
  7. 前記補強梁は、前記凹部の開放側に、凹部の開放側を向かい合わせにした溝形鋼又はリップ付き溝形鋼であることを特徴とする請求項6に記載の建物の補強構造。
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