JP2012062525A - 高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】伸びおよび伸びフランジ性に優れ、815〜1000MPaのTSを有する安価な高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.07〜0.10%、Si+Al:0.50%以下、Mn:1.0〜1.5%、P:0.060〜0.200%、N:0.0020〜0.0045%、Ti:0.010〜0.02%、V:0.23〜0.60%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト単相であり、フェライト相にはサイズが10nm未満のVCが析出しているミクロ組織を有する高強度熱延鋼板;ここで、VCのサイズとは、透過電子顕微鏡によりマトリックスであるフェライト相の[001]方位から観察される正方板状のVCにおいて、21/2×L(L:正方板の1辺の長さ)で表せるVCのサイズを複数個のVCに対して求め、算術平均した値のことである。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車の足まわり部品などに好適な伸びおよび伸びフランジ性などの加工性に優れた高強度熱延鋼板、特に、815〜1000MPaの引張強度TSを有する安価な高強度熱延鋼板およびその製造方法に関する。
近年、自動車車体の軽量化を図るために、自動車の足まわり部品などには低コストな高強度熱延鋼板が多用されつつある。
これまで、熱延鋼板の高強度化には、a) フェライト相中にSiなどを固溶させた固溶強化法、b) フェライト相中にTi、Nb、Vなどの炭窒化物を形成させた析出強化法c) マルテンサイト相あるいはベイナイト相などの硬質相を用いた組織強化法、あるいはd) これらの方法を併用した強化法が利用されており、要求される特性に応じて種々の高強度熱延鋼板が開発されている。
なかでも、特許文献1には、質量%で、C:0.07〜0.15%、Si:0.3%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下、Mo:0.3〜0.7%、Ti:0.15〜0.35%を含み、残部が実質的にFeからなり、実質的にフェライト単相組織であり、原子%でMo/(Ti+Mo)≧0.25を満たす範囲でTiおよびMoを含む粒径が10nm未満の微細な析出物(炭化物)が分散析出しているTSが950〜1000MPaの加工性、特に伸びおよび伸びフランジ性に優れた超高張力鋼板が開示されている。また、特許文献2には、質量%で、C<0.10%、Ti:0.03〜0.10%、Mo:0.05〜0.6%を含み、Feを主成分とし、フェライト単相組織のマトリックス中に粒径が10nm未満の微細析出物が分散析出しているTSが820MPa前後のプレス加工性に優れた薄鋼板が提案されている。
特開2003-89848号公報 特開2002-322539号公報
しかしながら、特許文献1や2に記載の鋼板では、高価なMoを用いたり、熱間圧延前の加熱温度を1250℃以上にする必要があり、製造コスト高は避けられない。
本発明は、伸びおよび伸びフランジ性に優れ、815〜1000MPaのTSを有する安価な高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討したところ、フェライト相中に、特許文献1に開示されているようなTiとMoを含む炭化物の代わりに、Vの炭化物(VC)を析出させ、かつP量を0.060質量%以上にすることが効果的であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、C:0.07〜0.10%、Si+Al:0.50%以下、Mn:1.0〜1.5%、P:0.060〜0.200%、N:0.0020〜0.0045%、Ti:0.010〜0.02%、V:0.23〜0.60%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト単相であり、前記フェライト相にはサイズが10nm未満のVCが析出しているミクロ組織を有することを特徴とする高強度熱延鋼板を提供する。ここで、炭化物のサイズとは、透過電子顕微鏡によりマトリックスであるフェライト相の[001]方位から観察される正方板状のVCにおいて、21/2×L(L:正方板の1辺の長さ)で表せるVCのサイズを複数個のVCに対して求め、算術平均した値のことである。
本発明の高強度熱延鋼板は、上記の組成を有する鋼を、1100℃以上の加熱温度で保持後、880〜930℃の仕上温度で熱間圧延し、10℃/sec以上の平均冷却速度で冷却後、580〜650℃の巻取温度で巻取る方法により製造できる。
本発明により、伸びおよび伸びフランジ性に優れ、815〜1000MPaのTSを有する安価な高強度熱延鋼板を製造できるようになった。本発明の高強度熱延鋼板は、自動車の足まわり部品などに好適である。
本発明では、フェライト相中にサイズが10nm未満のVCを形成させて、伸びおよび伸びフランジ性を劣化させることなく高強度化を図っている。特許文献1に開示されているようなTiとMoを含む炭化物の代わりにVCを用いているので高価なMoの使用は必要なく、また、VCは低温で溶解しやすいので熱間圧延前の加熱温度を低下でき、製造コストを大幅に低減できることになる。また、Pにより熱間圧延後に析出するVCの成長が抑制されるので、VCのサイズを10nm未満に容易に制御できることになる。
以下に、本発明の詳細について説明する。なお、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
1) 成分組成
C:0.07〜0.10%
CはVCとしてフェライト相中に微細に析出し、高強度化に寄与する重要な元素である。C量が0.07%未満だと815MPa以上のTSが得られず、0.10%を超えるとベイナイト相やパーライトなどの硬質相が形成されやすくなり、伸びや伸びフランジ性の劣化を招く。したがって、C量は0.07〜0.10%とする。
Si+Al:0.50%以下
SiやAlは、A3変態温度を上昇させる元素であり、その合計の含有量が0.50%を超えると熱間圧延前に鋼をオーステナイト化するための加熱温度を上昇せざるを得ず、製造コスト高を招く。したがって、Si+Al量は0.50%以下とする。
Mn:1.0〜1.5%
Mnは、固溶強化能の高い元素であるため鋼の強度レベルの調整に、また、鋼の変態温度を低下させるため熱間圧延前の加熱温度低下に効果的である。このような効果を得るには、Mn量を1.0%以上とする必要がある。一方、Mn量が1.5%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されたり、その偏析によりバンド状組織が形成され、伸びや伸びフランジ性が劣化する。したがって、Mn量は1.0〜1.5%とする。
P:0.060〜0.200%
上述したように、PはVCの微細化を促進し、高強度化に有効な元素である。こうした効果を得るには、P量を0.060%以上にする必要がある。一方、P量が0.200%を超えると粒界偏析が顕著になって伸びや伸びフランジ性が劣化する。したがって、P量は0.060〜0.200%とする。
N:0.0020〜0.0045%
N量が0.0045%を超えると粗大なTiNが形成され、伸びや伸びフランジ性が劣化する。一方、N量を0.0020%未満に制御するには製鋼工程で特別の処理が必要となり製造コスト高を招く。したがって、N量は0.0020〜0.0045%とする。
Ti:0.010〜0.02%
本発明では、TiはNをTiNとして析出させるためのみに添加する。Ti量が0.010%未満だとNをすべてTiNと析出させることができず、0.02%を超えるとTiCが形成され、本発明に必要な微細なVCの形成を阻害する。したがって、Ti量は0.010〜0.02%とする。
V:0.23〜0.60%
上述したように、VはVCとしてフェライト相中に微細に析出し、高強度化に寄与する重要な元素である。V量が0.23%未満だと十分な量のVCが析出しないため、815MPa以上のTSが得られなくなるとともに、セメンタイトやパーライトが生成して伸びおよび伸びフランジ性が劣化する。一方、V量が0.60%を超えるとTSが1000MPaを超え、伸びが劣化する。したがって、V量は0.23〜0.60%とする。
残部はFeおよび不可避的不純物である。
2) ミクロ組織
ベイナイト相、マルテンサイト相、センメンタイト、パーライトなどの粗大な硬質相が存在すると伸びおよび伸びフランジ性の劣化を招くので、マトリックスはフェライト単相からなる組織とする。
しかし、フェライト単相からなる組織にしただけでは、815MPa以上のTSが得られない。そこで、本発明では、上述したように、サイズが10nm未満の微細なVCをフェライト相中に析出させて高強度化を図っている。目標とする815〜1000MPaのTSは、上記したC、V、P量により微細なVCのサイズや数を制御するとともに、Si、Al、Mnなどの固溶強化能を有する元素の量を調整することにより達成される。
3) 製造条件
熱間圧延前の加熱温度:1100℃以上
熱間圧延後にサイズが10nm未満の微細なVCをフェライト相中に析出させて高強度化を図るには、鋼中に析出している粗大なVCを熱間圧延前に加熱して溶解させる必要がある。特許文献1に開示されているようなTiとMoを含む炭化物では、炭化物の溶解のために1250℃以上に加熱する必要があるが、VCの場合は、P量を0.060%以上にすると1100℃以上の加熱で十分に溶解することが可能である。したがって、熱間圧延前の加熱温度は1100℃以上とする。なお、従来より製造コストを低減する観点からは、1250℃未満の温度で加熱する必要があるが、1250℃以上の温度に加熱しても高強度化が図れることには変わりがない。
熱間圧延の仕上温度:880〜930℃
仕上温度が880℃未満だと圧延組織が残留し、伸びや伸びフランジ性が劣化する。一方、仕上温度が930℃を超えると十分に再結晶したオーステナイト組織からの変態になるためフェライト組織が粗大化する問題がある。したがって、仕上温度は880〜930℃とする。
なお、本発明では、連続鋳造後の鋼をそのまま熱間圧延する直送圧延の技術も適用することができる。このとき、880℃以上の仕上温度を確保するために、熱間圧延前に補助的な加熱を行うこともできる。
熱間圧延後の平均冷却速度:10℃/sec以上
熱間圧延後の平均冷却速度が10℃/sec未満だと冷却中にパーライト変態やVCの粗大化が起こり、伸びや伸びフランジ性が劣化するとともに、高強度化が図れない。したがって、熱間圧延後の平均冷却速度は10℃/sec以上にする必要がある。
巻取温度:580〜650℃
巻取温度が580℃未満ではサイズが10nm未満の微細なVCの析出が困難になり、また、650℃を超えるとVCが粗大化して、高強度化が阻害される。そのため、巻取温度は580〜650℃とする。
表1に示す成分組成の鋼No.1〜10を50kg真空溶解炉で溶製し、スラブとした後、1100℃で30min加熱し、仕上温度900℃で板厚3.0mmまで熱間圧延し、その後、平均冷却速度10℃/secで冷却し、650℃で30minの巻取り相当処理を行って熱延鋼板を作製した。
そして、これらの熱延鋼板から透過電子顕微鏡用の薄膜サンプルを作成し、上記の方法によりVCのサイズを求めた。また、これらの熱延鋼板から圧延方向に平行にJIS 5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、TSおよび全伸びElを求めた。
結果を表1に示す。熱間圧延前の加熱温度が1100℃であっても、成分組成が本発明範囲内であれば、サイズが10nm未満である微細なVCが形成されており、TSが815〜1000MPaで高強度化が図られているとともに、Elが23%以上で伸びも優れていることがわかる。
Figure 2012062525
表1に示す成分組成の鋼No.7のスラブを用い、表2に示す熱延条件で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板を作製した。
そして、実施例1の場合と同様にして、VCのサイズ、TS、Elを求めた。また、鉄連規格JFST100に準拠して穴広げ試験を行い、穴拡げ率λを求めて伸びフランジ性を評価した。
結果を表2に示す。熱間圧延前の加熱温度が1100〜1150℃であっても、それ以外の熱延条件が本発明範囲内であれば、サイズが10nm未満の微細なVCが形成されており、TSが875〜985MPaで高強度化が図られているとともに、Elが23%以上、λが88%以上で伸びや伸びフランジ性にも優れていることがわかる。
Figure 2012062525

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.07〜0.10%、Si+Al:0.50%以下、Mn:1.0〜1.5%、P:0.060〜0.200%、N:0.0020〜0.0045%、Ti:0.010〜0.02%、V:0.23〜0.60%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト単相であり、前記フェライト相にはサイズが10nm未満のVの炭化物(VC)が析出しているミクロ組織を有することを特徴とする高強度熱延鋼板;ここで、炭化物のサイズとは、透過電子顕微鏡によりマトリックスであるフェライト相の[001]方位から観察される正方板状のVCにおいて、21/2×L(L:正方板の1辺の長さ)で表せるVCのサイズを複数個のVCに対して求め、算術平均した値のことである。
  2. 請求項1に記載の組成を有する鋼を、1100℃以上の加熱温度で保持後、880〜930℃の仕上温度で熱間圧延し、10℃/sec以上の平均冷却速度で冷却後、580〜650℃の巻取温度で巻取ることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
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JP2013019046A (ja) * 2011-06-14 2013-01-31 Jfe Steel Corp 高強度溶融亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法

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