JP2012062511A - 耐高温部材及びガスタービン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】耐熱合金製の母材21と、多数の気孔23aが形成され、母材21を被覆する多孔質セラミックス層23と、を備える耐高温部材10であって、多孔質セラミックス層23のうち少なくとも表面側には、複合酸化物26が含浸した複合酸化物含浸部25を具備していることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
このようなTBC層のうちセラミックス層は、母材に加わる熱を遮熱する役目を主として担い、ボンドコート層は、セラミックス層の熱膨張量と母材の熱膨張量との差を緩和する役目を主として担っている。
すなわち、本発明に係る耐高温部材は、耐熱合金製の母材と、多数の気孔が形成され、前記母材を被覆する多孔質セラミックス層と、を備える耐高温部材であって、前記多孔質セラミックス層のうち少なくとも表面側には、前記複合酸化物が含浸した複合酸化物含浸部を具備していることを特徴とする。
この構成によれば、多孔質セラミックス層のうち少なくとも表面側には、複合酸化物が含浸した複合酸化物含浸部を具備しているので、複合酸化物含浸部における気孔が複合酸化物で塞がれる。これにより、多孔質セラミックス層の表面からCMASが深さ方向に侵入することを阻害するので、CMASが多孔質セラミックス層に浸透し難くなる。従って、CMASの浸透による母材の腐食を抑止することができると共に、多孔質セラミックス層において亀裂及び亀裂の成長を生じさせず、多孔質セラミックス層の剥離や喪失を抑止することができる。
また、気孔を塞ぐ複合酸化物は、構造的に安定していることからCMASと反応し難いので、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することができる。
さらに、気孔を複合酸化物が塞ぐので、機械的強度が向上する。これにより、多孔質セラミックス層のエロージョン耐性を向上させることができる。
これに加えて、多孔質セラミックス層により優れた遮熱効果を得られる他、多孔質セラミックス層の表面における気孔を複合酸化物が塞ぐことで、流体流れの中に耐高温部材を設けたとしても気孔において渦が発生しない。これにより、耐高温部材の表面の流動抵抗を、多孔質セラミックス層を形成しない場合に比べて小さくすることができる。
この構成によれば、複合酸化物がAl2TiO5であるので、CMASと反応し難く、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することができる。
この構成によれば、複合酸化物含浸部の厚さが10μm以上に形成されているので、気孔を塞いでCMASの浸透を十分に抑止することができる。また、複合酸化物含浸部が170μm以下に形成されているので、良好な遮熱性を維持することができる。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、気孔率が2%以上20%以下であるので、気孔率が過小な場合に発生し易い亀裂を抑止する一方、気孔率が過大な場合に発生し易い多孔質セラミックス層の剥離やエロージョンを抑止することができる。
この構成によれば、ボンドコート層を備えるので、多孔質セラミックス層の熱膨張量と母材の熱膨張量との差を緩和させる。これにより、多孔質セラミックス層の剥離を抑止することができる。
この構成によれば、上記いずれかの耐高温部材を備えるので、メンテナンス性を向上することができると共に、メンテナンスのためのガスタービンの稼動停止時間を短縮することができる。
また、耐高温部材の流動抵抗が低減するのでタービン効率を向上させることができる。
「ガスタービン」
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン1の概略全体構成を示す図であって、ガスタービン1の半断面図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2と複数の燃焼器3とタービン4とを備えている。
圧縮機2は、空気を空気取込口から作動流体として取り込んで圧縮空気を生成する。
複数の燃焼器3は、それぞれ圧縮機2に接続されており、圧縮機2から供給された圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。
タービン4は、燃焼器3から送り出された燃焼ガスの熱エネルギーをロータ6の回転エネルギーに変換して駆動力を発生させる。そして、この駆動力がロータ6に連結された発電機(不図示)に伝達されるようになっている。
図2は、動翼10の概略構成斜視図である。
本実施形態における耐高温部材は、図2に示すように、ガスタービン1の動翼10である。この動翼10は、タービン4のケーシング内部における燃焼ガス流路に配される翼本体12と、この翼本体12の基端に設けられたプラットホーム13と、このプラットホーム13から翼本体12と反対側へ突出した翼根14と、翼本体12の先端に設けられたシュラウド15と、を有している。
図3に示すように、動翼10は、Ni基合金又はCo基合金等の耐熱合金製の母材21と、この母材21の表面に形成されたボンドコート層22と、ボンドコート層22の表面に形成された多孔質セラミックス層23と、を有している。例えば、ボンドコート層22の厚さは、10μm〜500μmで、多孔質セラミックス層23の厚さは、0.1mm〜1mmである。図3に示すように、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)層24は、これらボンドコート層22と多孔質セラミックス層23とで構成される。
ここで、上記ボンドコート層22を構成するMCrAlY合金の「M」は、金属元素を示し、例えばNiやCo、Fe等の単独の金属元素又はこれらのうち二種以上の組み合わせを示している。
このような多孔質セラミックス層23は、複合酸化物含浸部25を具備している。
図3に示すように、複合酸化物含浸部25は、多孔質セラミックス層23のうちの表面側に形成されており、複合酸化物26が含浸すると共に複合酸化物26で気孔23aが塞がれている。ここで、複合酸化物26で気孔23aを塞ぐとは、複合酸化物26が気孔23aを完全に充足している状態に限らず、気孔23aの一部を充足している状態も含む。
複合酸化物26は、二種以上の酸化金属元素からなる化合物であり、例えば、動翼10の使用環境温度よりも融点が高いAl2TiO5,ZrTiO4,CeAlO3,CaZrO3,Al6Si2O13,Ce2SiO5,Zr4AlO9を好適に用いることができる。
次に、動翼10の製造方法について説明する。
まず、母材21を目的の形状(本実施形態においては動翼形状)に形成する。母材21は、前述したように、Ni基合金又はCo基合金で形成されている。
この下地処理としては、例えばブラスト処理によって行うことができる。このブラスト処理では、ブラスト装置にアルミナ粒を投入し、高エアー圧で、このアルミナ粒を母材21表面に噴射する。この結果、母材21の表面には、多数のアルミナ粒が高速で衝突し、この表面が粗化する。
このボンドコート層22の形成方法としては、例えば、MCrAlY合金の金属溶射粉を用いて、低圧プラズマ溶射法や電子ビーム物理溶着法により形成することができる。
この多孔質セラミックス層23の形成方法としては、例えば、ZrO2−Er2O3粉末を用いて、大気圧プラズマ溶射法若しくは電子ビーム物理蒸着法により形成することができる。
なお、ZrO2−Er2O3粉末は、以下の手順により製造することができる。まず、ZrO2粉末と所定の添加割合のEr2O3粉末を用意し、これらの粉末を適当なバインダーや分散剤とともにボールミル中で混合してスラリー状にする。次に、これをスプレードライヤーにより粒状にして乾燥させた後、拡散熱処理により固溶化させ、ZrO2−Er2O3の複合粉末を得る。そして、この複合粉末をボンドコート層22上に溶射することによりErSZからなる多孔質セラミックス層23を得ることができる。また、多孔質セラミックス層23の成膜法として電子ビーム物理蒸着法を用いる場合には、所定の組成を有する原料を焼結又は電融固化して得られるインゴットを使用する。
まず、複合酸化物含浸部25の形成方法としては、予め複数の酸化物を混合した混合ゾル溶液を用意し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面に塗工することで含浸させる。
多孔質セラミックス層23の表面に塗工された混合ゾル溶液は、多孔質セラミックス層23の気孔23aに連続的に浸透していく。この際、混合ゾル溶液のゾル濃度を増減させたり、水溶性プラスチック等の高分子を添加したりして、混合ゾル溶液の粘度を調整することによって、混合ゾル溶液が含浸する深さを制御することが可能である。
この焼結処理方法としては、例えば、減圧下において600℃以上で焼結させることによって得ることができる。なお、この焼結処理は、母材21の熱処理を兼ねて施してもよいし、混合ゾル溶液が塗工された動翼10をガスタービン1に直接組み込んで燃焼ガスに晒すことで施してもよい。
このような焼結処理によって、複合酸化物26が生成され、多孔質セラミックス層23の気孔23aを複合酸化物26が塞いだ状態となる。
また、気孔23aを塞ぐ複合酸化物26は、構造的に安定していることからCMASと反応し難いので、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することができる。
さらに、気孔23aを複合酸化物26が塞ぐので、機械的強度が向上する。これにより、多孔質セラミックス層23のエロージョン耐性を向上させることができる。
これに加えて、多孔質セラミックス層23により優れた遮熱効果を得られる他、多孔質セラミックス層23の表面における気孔23aを複合酸化物26が塞ぐことで、流体流れの中に動翼10(特に翼本体12)を設けたとしても気孔23aにおいて渦が発生しない。これにより、動翼10の表面の流動抵抗を、多孔質セラミックス層23を形成しない場合に比べて小さくすることができる。従って、動翼10の流動抵抗が低減するので、ガスタービン1のタービン効率を向上させることができる。
本実施例は、エロージョン耐性向上の効果を確認するために、母材21の表面上にTBC層24を形成した試験体に、Al2TiO5,ZrTiO4,CeAlO3,CaZrO3,Al6Si2O13,Ce2SiO5,Zr4AlO9を用いて複合酸化物含浸部25をそれぞれ形成したサンプル1〜7を用意し、サンプル1〜7に対してブラストエロージョン試験を行って磨耗量を測定したものである。
ボンドコート層22は、Co基またはNi基のMCrAlYコーティングで形成されると共に0.02〜0.5mmとなっており、多孔質セラミックス層23は、YSZなどの安定化ジルコニアで形成されると共に0.1〜2mmとなっている。
混合ゾル溶液は、複合酸化物26が第一酸化物と第二酸化物とで構成されている場合には、第一酸化物のゾル溶液と第二酸化物のゾル溶液とを、複合酸化物26のモル比率となる重量割合で混合することで得ている。なお、第一/第二酸化物のゾル溶液は、それぞれ第一/第二酸化物と、真水と、有機質とから構成されている。また、第一/第二酸化物の粒子径は、0.01〜5μmのものを用いている。
図4に示すように、サンプル1〜7は、いずれも高融点であり、また、複合酸化物含浸部25を備えない比較例の磨耗量に対してサンプル1〜7の磨耗量が40〜60%程度減少した。
一方、複合酸化物含浸部25の含浸厚さdが小さ過ぎると、複合酸化物26で気孔23aを十分に塞ぐことができず、CMASの浸透を十分に抑止することができなくなる。このため、各複合酸化物含浸部25の含浸厚さdが10μm以上に形成されているので、複合酸化物26で気孔23aを塞いでCMASの浸透を十分に抑止することができる。
すなわち、図5に示すようにサンプル1は10μm以上170μm以下、図6に示すようにサンプル2は10μm以上250μm以下、図7に示すようにサンプル3は10μm以上240μm以下、図8に示すようにサンプル4は10μm以上250μm以下、図9に示すようにサンプル5は10μm以上170μm以下、図10に示すようにサンプル6は10μm以上240μm以下、図11に示すようにサンプル7は10μm以上170μm以下、の含浸厚さdで複合酸化物含浸部25を形成することで、耐熱性とCMAS浸透抑止効果とを両立させることができる。
10…動翼(耐高温部材)
21…母材
22…ボンドコート層
23…多孔質セラミックス層
23a…気孔
25…複合酸化物含浸部
26…複合酸化物
Claims (18)
- 耐熱合金製の母材と、
多数の気孔が形成され、前記母材を被覆する多孔質セラミックス層と、を備える耐高温部材であって、
前記多孔質セラミックス層のうち少なくとも表面側には、前記複合酸化物が含浸した複合酸化物含浸部を具備していることを特徴とする耐高温部材。 - 前記複合酸化物は、Al2TiO5であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物は、ZrTiO4であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物は、CeAlO3であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物は、CaZrO3であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物は、Al6Si2O13であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする請求項10に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物は、Ce2SiO5であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする請求項12に記載の耐高温部材。
- 前記多孔質セラミックス層は、セラミックスに対する前記気孔の体積占有率である気孔率が2%以上20%以下であることを特徴とする請求項1から13のうちいずれか一項に記載の耐高温部材。
- 前記母材と前記多孔質セラミックス層との間に形成されたボンドコート層を備えることを特徴とする請求項1から14のうちいずれか一項に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物は、Zr4AlO9であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
- 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする請求項16に記載の耐高温部材。
- 請求項1から17のうちいずれか一項に記載の耐高温部材を用いたことを特徴とするガスタービン。
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