JP2012062511A - 耐高温部材及びガスタービン - Google Patents

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Abstract

【課題】CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持する。
【解決手段】耐熱合金製の母材21と、多数の気孔23aが形成され、母材21を被覆する多孔質セラミックス層23と、を備える耐高温部材10であって、多孔質セラミックス層23のうち少なくとも表面側には、複合酸化物26が含浸した複合酸化物含浸部25を具備していることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、耐高温部材及びガスタービンに関するものである。
ガスタービンの動翼、静翼、燃焼器等は、高温ガスに晒されるために、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)されていることが多い。例えば、下記特許文献1には、Ni基合金等の母材上に形成されたTBC層として、CoNiCrAlY金属溶射粉の溶射で形成されるボンドコート層と、このボンドコート層上にZrO系のセラミック溶射粉の溶射で形成されるセラミックス層とを有している(例えば、下記特許文献1)。
このようなTBC層のうちセラミックス層は、母材に加わる熱を遮熱する役目を主として担い、ボンドコート層は、セラミックス層の熱膨張量と母材の熱膨張量との差を緩和する役目を主として担っている。
ところで、ガスタービンにおいては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素及びそれらの混合物の酸化物(Ca−Mg−Al−Si−O)が外部から混入し、これらの酸化物が化合することによって溶融した状態の汚染物(以下「CMAS」という。)が生成されることがある。このCMASは、TBC層に浸透して母材に到達すると母材を腐食させ、また、TBC層に浸透した後に冷却固化するとTBC内で応力を生じさせることにより亀裂の発生及び成長を引き起こしてTBC層の剥離や喪失を招く。
下記特許文献2では、希土類金属酸化物を含有するドーパメント組成物をTBC層の表面に塗工して、ドーパメント組成物の多重層を形成することで、CMAS耐性を強化している。
特開2007−270245号公報 特開2009−108856号公報
しかしながら、従来の技術においては、ドーパメント組成物がCMASと反応してしまうことから、時間の経過と共にドーパメント組成物の多重層が徐々に消失して、CMAS耐性が失われてしまうという問題があった。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る耐高温部材は、耐熱合金製の母材と、多数の気孔が形成され、前記母材を被覆する多孔質セラミックス層と、を備える耐高温部材であって、前記多孔質セラミックス層のうち少なくとも表面側には、前記複合酸化物が含浸した複合酸化物含浸部を具備していることを特徴とする。
この構成によれば、多孔質セラミックス層のうち少なくとも表面側には、複合酸化物が含浸した複合酸化物含浸部を具備しているので、複合酸化物含浸部における気孔が複合酸化物で塞がれる。これにより、多孔質セラミックス層の表面からCMASが深さ方向に侵入することを阻害するので、CMASが多孔質セラミックス層に浸透し難くなる。従って、CMASの浸透による母材の腐食を抑止することができると共に、多孔質セラミックス層において亀裂及び亀裂の成長を生じさせず、多孔質セラミックス層の剥離や喪失を抑止することができる。
また、気孔を塞ぐ複合酸化物は、構造的に安定していることからCMASと反応し難いので、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することができる。
さらに、気孔を複合酸化物が塞ぐので、機械的強度が向上する。これにより、多孔質セラミックス層のエロージョン耐性を向上させることができる。
これに加えて、多孔質セラミックス層により優れた遮熱効果を得られる他、多孔質セラミックス層の表面における気孔を複合酸化物が塞ぐことで、流体流れの中に耐高温部材を設けたとしても気孔において渦が発生しない。これにより、耐高温部材の表面の流動抵抗を、多孔質セラミックス層を形成しない場合に比べて小さくすることができる。
また、前記複合酸化物は、AlTiOであることを特徴とする。
この構成によれば、複合酸化物がAlTiOであるので、CMASと反応し難く、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することができる。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、複合酸化物含浸部の厚さが10μm以上に形成されているので、気孔を塞いでCMASの浸透を十分に抑止することができる。また、複合酸化物含浸部が170μm以下に形成されているので、良好な遮熱性を維持することができる。
また、前記複合酸化物は、ZrTiOであることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物は、CeAlOであることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物は、CaZrOであることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物は、AlSi13であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物は、CeSiOであることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする。
また、前記複合酸化物は、ZrAlOであることを特徴とする。
また、前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする。
また、前記多孔質セラミックス層は、セラミックスに対する前記気孔の体積占有率である気孔率が2%以上20%以下であることを特徴とする。
この構成によれば、気孔率が2%以上20%以下であるので、気孔率が過小な場合に発生し易い亀裂を抑止する一方、気孔率が過大な場合に発生し易い多孔質セラミックス層の剥離やエロージョンを抑止することができる。
また、前記母材と前記多孔質セラミックス層との間に形成されたボンドコート層を備えることを特徴とする。
この構成によれば、ボンドコート層を備えるので、多孔質セラミックス層の熱膨張量と母材の熱膨張量との差を緩和させる。これにより、多孔質セラミックス層の剥離を抑止することができる。
また、本発明に係るガスタービンは、上記のうちいずれかに記載の耐高温部材を用いたことを特徴とする。
この構成によれば、上記いずれかの耐高温部材を備えるので、メンテナンス性を向上することができると共に、メンテナンスのためのガスタービンの稼動停止時間を短縮することができる。
また、耐高温部材の流動抵抗が低減するのでタービン効率を向上させることができる。
本発明によれば、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することができる。
本発明の実施形態にガスタービン1の概略全体構成を示す図であって、ガスタービン1の半断面図である。 本発明の実施形態に係る動翼10の概略構成斜視図である。 本発明の実施形態に係る動翼10の要部断面拡大図である。 本発明の実施例に係るサンプル1〜7についての融点とブラストエロージョン試験の結果(磨耗量の相対値)を示した対比表である。 本発明の実施例に係るサンプル1における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例に係るサンプル2における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例に係るサンプル3における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例に係るサンプル4における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例に係るサンプル5における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例に係るサンプル6における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例に係るサンプル7における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
「ガスタービン」
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン1の概略全体構成を示す図であって、ガスタービン1の半断面図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2と複数の燃焼器3とタービン4とを備えている。
圧縮機2は、空気を空気取込口から作動流体として取り込んで圧縮空気を生成する。
複数の燃焼器3は、それぞれ圧縮機2に接続されており、圧縮機2から供給された圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。
タービン4は、燃焼器3から送り出された燃焼ガスの熱エネルギーをロータ6の回転エネルギーに変換して駆動力を発生させる。そして、この駆動力がロータ6に連結された発電機(不図示)に伝達されるようになっている。
「耐高温部材」
図2は、動翼10の概略構成斜視図である。
本実施形態における耐高温部材は、図2に示すように、ガスタービン1の動翼10である。この動翼10は、タービン4のケーシング内部における燃焼ガス流路に配される翼本体12と、この翼本体12の基端に設けられたプラットホーム13と、このプラットホーム13から翼本体12と反対側へ突出した翼根14と、翼本体12の先端に設けられたシュラウド15と、を有している。
図3は、動翼10の要部断面拡大図である。
図3に示すように、動翼10は、Ni基合金又はCo基合金等の耐熱合金製の母材21と、この母材21の表面に形成されたボンドコート層22と、ボンドコート層22の表面に形成された多孔質セラミックス層23と、を有している。例えば、ボンドコート層22の厚さは、10μm〜500μmで、多孔質セラミックス層23の厚さは、0.1mm〜1mmである。図3に示すように、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)層24は、これらボンドコート層22と多孔質セラミックス層23とで構成される。
ボンドコート層22は、MCrAlY合金からなり、母材21と多孔質セラミックス層23との熱膨張係数差を小さくして熱応力を緩和する機能を有し、多孔質セラミックス層23が母材21から剥離するのを防止している。
ここで、上記ボンドコート層22を構成するMCrAlY合金の「M」は、金属元素を示し、例えばNiやCo、Fe等の単独の金属元素又はこれらのうち二種以上の組み合わせを示している。
多孔質セラミックス層23は、Erで部分安定化させたZrO(以下、「ErSZ」と称する。)からなり、ErSZ中に多数の気孔23aが形成されたものである。この多孔質セラミックス層23は、ErSZに対する気孔23aの体積占有率である気孔率が10%となっている。
「複合酸化物含浸部」
このような多孔質セラミックス層23は、複合酸化物含浸部25を具備している。
図3に示すように、複合酸化物含浸部25は、多孔質セラミックス層23のうちの表面側に形成されており、複合酸化物26が含浸すると共に複合酸化物26で気孔23aが塞がれている。ここで、複合酸化物26で気孔23aを塞ぐとは、複合酸化物26が気孔23aを完全に充足している状態に限らず、気孔23aの一部を充足している状態も含む。
複合酸化物26は、二種以上の酸化金属元素からなる化合物であり、例えば、動翼10の使用環境温度よりも融点が高いAlTiO,ZrTiO,CeAlO,CaZrO,AlSi13,CeSiO,ZrAlOを好適に用いることができる。
「耐高温部材の製造方法」
次に、動翼10の製造方法について説明する。
まず、母材21を目的の形状(本実施形態においては動翼形状)に形成する。母材21は、前述したように、Ni基合金又はCo基合金で形成されている。
次に、ボンドコート層22を形成するために、母材21の表面に対して下地処理をする。
この下地処理としては、例えばブラスト処理によって行うことができる。このブラスト処理では、ブラスト装置にアルミナ粒を投入し、高エアー圧で、このアルミナ粒を母材21表面に噴射する。この結果、母材21の表面には、多数のアルミナ粒が高速で衝突し、この表面が粗化する。
次に、母材21の表面にボンドコート層22を形成する。
このボンドコート層22の形成方法としては、例えば、MCrAlY合金の金属溶射粉を用いて、低圧プラズマ溶射法や電子ビーム物理溶着法により形成することができる。
次に、ボンドコート層22上に多孔質セラミックス層23を形成する。
この多孔質セラミックス層23の形成方法としては、例えば、ZrO−Er粉末を用いて、大気圧プラズマ溶射法若しくは電子ビーム物理蒸着法により形成することができる。
なお、ZrO−Er粉末は、以下の手順により製造することができる。まず、ZrO粉末と所定の添加割合のEr粉末を用意し、これらの粉末を適当なバインダーや分散剤とともにボールミル中で混合してスラリー状にする。次に、これをスプレードライヤーにより粒状にして乾燥させた後、拡散熱処理により固溶化させ、ZrO−Erの複合粉末を得る。そして、この複合粉末をボンドコート層22上に溶射することによりErSZからなる多孔質セラミックス層23を得ることができる。また、多孔質セラミックス層23の成膜法として電子ビーム物理蒸着法を用いる場合には、所定の組成を有する原料を焼結又は電融固化して得られるインゴットを使用する。
次に、多孔質セラミックス層23の表面側に複合酸化物含浸部25を形成する。
まず、複合酸化物含浸部25の形成方法としては、予め複数の酸化物を混合した混合ゾル溶液を用意し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面に塗工することで含浸させる。
多孔質セラミックス層23の表面に塗工された混合ゾル溶液は、多孔質セラミックス層23の気孔23aに連続的に浸透していく。この際、混合ゾル溶液のゾル濃度を増減させたり、水溶性プラスチック等の高分子を添加したりして、混合ゾル溶液の粘度を調整することによって、混合ゾル溶液が含浸する深さを制御することが可能である。
次に、多孔質セラミックス層23の表面に含浸させた混合ゾル溶液を焼結処理する。
この焼結処理方法としては、例えば、減圧下において600℃以上で焼結させることによって得ることができる。なお、この焼結処理は、母材21の熱処理を兼ねて施してもよいし、混合ゾル溶液が塗工された動翼10をガスタービン1に直接組み込んで燃焼ガスに晒すことで施してもよい。
このような焼結処理によって、複合酸化物26が生成され、多孔質セラミックス層23の気孔23aを複合酸化物26が塞いだ状態となる。
以上で、母材21の表面に、ボンドコート層22及び多孔質セラミックス層23が形成されると共に、多孔質セラミックス層23に複合酸化物含浸部25が形成された動翼10が完成する。
以上説明したように、上記構成からなる動翼10は、多孔質セラミックス層23のうち表面側には、複合酸化物26が含浸した複合酸化物含浸部25を具備しているので、複合酸化物含浸部25における気孔23aが複合酸化物26で塞がれる。換言すれば、多孔質セラミックス層23の表面側における気孔23aが複合酸化物26で塞がれる。これにより、多孔質セラミックス層23の表面からCMASが深さ方向に侵入することを阻害するので、CMASが多孔質セラミックス層23に浸透し難くなる。従って、CMASの浸透による母材21の腐食を抑止することができると共に、多孔質セラミックス層23において亀裂及び亀裂の成長を生じさせず、多孔質セラミックス層23及びボンドコート層22の剥離や喪失を抑止することができる。
また、気孔23aを塞ぐ複合酸化物26は、構造的に安定していることからCMASと反応し難いので、CMAS耐性を長期間に亘って安定して維持することができる。
さらに、気孔23aを複合酸化物26が塞ぐので、機械的強度が向上する。これにより、多孔質セラミックス層23のエロージョン耐性を向上させることができる。
これに加えて、多孔質セラミックス層23により優れた遮熱効果を得られる他、多孔質セラミックス層23の表面における気孔23aを複合酸化物26が塞ぐことで、流体流れの中に動翼10(特に翼本体12)を設けたとしても気孔23aにおいて渦が発生しない。これにより、動翼10の表面の流動抵抗を、多孔質セラミックス層23を形成しない場合に比べて小さくすることができる。従って、動翼10の流動抵抗が低減するので、ガスタービン1のタービン効率を向上させることができる。
また、上記構成からなるガスタービン1によれば、メンテナンス性を向上することができると共に、メンテナンスのためのガスタービン1の稼動停止時間を短縮することができる。
また、気孔率が10%であるので、気孔率が過小な場合(2%以下)に発生し易い亀裂を抑止する一方、気孔率が過大な場合(20%以上)に発生し易い多孔質セラミックス層23の剥離やエロージョンを抑止することができる。
また、ボンドコート層22を備えるので、多孔質セラミックス層23の熱膨張量と母材21の熱膨張量との差を緩和させる。これにより、多孔質セラミックス層23の剥離を抑止することができる。
なお、上述した構成においては、多孔質セラミックス層23の気孔率を10%としたが、気孔率が2%以上20%以下であれば、亀裂発生抑制効果と、剥離抑制効果及びエロージョン耐性向上との双方の効果を得ることが可能である。
また、上述した構成においては、動翼10に本発明を適用した場合について説明をしたが、他の耐高温部材、例えば、ガスタービン1の静翼や燃焼器を構成するノズルや筒体等の部材に本発明を適用してもよいし、ガスタービン1以外において高温に晒される部材に本発明を適用してもよい。
また、上述した実施の形態では、ボンドコート層22を備える動翼10に本発明を適用したが、ボンドコート層22を省略して母材21の表面に直接多孔質セラミックス層23を形成してもよい。
また、上述した実施の形態では、多孔質セラミックス層23としてErSZを用いたが、これに代えてYSZやYbSZを用いてもよい。また、ボンドコート層22は、MCrAlY合金を用いたが、他の合金を用いてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例は、エロージョン耐性向上の効果を確認するために、母材21の表面上にTBC層24を形成した試験体に、AlTiO,ZrTiO,CeAlO,CaZrO,AlSi13,CeSiO,ZrAlOを用いて複合酸化物含浸部25をそれぞれ形成したサンプル1〜7を用意し、サンプル1〜7に対してブラストエロージョン試験を行って磨耗量を測定したものである。
ボンドコート層22は、Co基またはNi基のMCrAlYコーティングで形成されると共に0.02〜0.5mmとなっており、多孔質セラミックス層23は、YSZなどの安定化ジルコニアで形成されると共に0.1〜2mmとなっている。
さらに、以下の実施例においては、各サンプル1〜7における複合酸化物含浸部25の厚さ(多孔質セラミックス層23の表面からの深さ。以下、「含浸厚さ」という。)dを変化させてTBC層24の熱伝導率λの変化を測定した。なお、含浸厚さdの測定は、電子顕微鏡によって測定箇所の断面画像を取得すると共に画像処理によって測定値を得ており、複数の測定箇所における各測定値の平均値を含浸厚さdとしている。
それぞれ複合酸化物含浸部25は、以下の要領で得た混合ゾル溶液をボンドコート層22に塗工して、母材21の熱処理と同時に焼成処理して得た。
混合ゾル溶液は、複合酸化物26が第一酸化物と第二酸化物とで構成されている場合には、第一酸化物のゾル溶液と第二酸化物のゾル溶液とを、複合酸化物26のモル比率となる重量割合で混合することで得ている。なお、第一/第二酸化物のゾル溶液は、それぞれ第一/第二酸化物と、真水と、有機質とから構成されている。また、第一/第二酸化物の粒子径は、0.01〜5μmのものを用いている。
サンプル1は、AlTiOを用いて複合酸化物含浸部25を形成している。この複合酸化物含浸部25は、アルミナゾル10%溶液とチタニアゾル10%溶液とを、アルミニウムとチタニウムとが2:1のモル比率になるように、アルミナゾル10%溶液を57重量%及びチタニアゾル10%溶液を43重量%の割合で混合し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面側に含浸させ、母材21の容体化熱処理(1000℃以上)を兼ねた焼成処理でAlTiOを生成させた。
サンプル2は、ZrTiOを用いて複合酸化物含浸部25を形成している。この複合酸化物含浸部25は、ジルコニアゾル10%溶液とチタニアゾル10%溶液とを、ジルコニウムとチタニウムとが1:1のモル比率になるように、ジルコニアゾル10%溶液を61重量%及びチタニアゾル10%溶液を39重量%の割合で混合し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面側に含浸させ、母材21の熱処理を兼ねた焼成処理でZrTiOを生成させた。
サンプル3は、CeAlOを用いて複合酸化物含浸部25を形成している。この複合酸化物含浸部25は、セリアゾル10%溶液とアルミナゾル10%溶液とを、セリウムとアルミニウムとが1:1のモル比率になるように、セリアゾル10%溶液を76重量%及びアルミナゾル10%溶液を24重量%の割合で混合し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面側に含浸させ、母材21の熱処理を兼ねた焼成処理でCeAlOを生成させた。
サンプル4は、CaZrOを用いて複合酸化物含浸部25を形成している。この複合酸化物含浸部25は、カルシアゾル10%溶液とジルコニアゾル10%溶液とを、カルシウムとジルコニウムとが1:1のモル比率になるように、カルシアゾル10%溶液を29重量%及びジルコニアゾル10%溶液を71重量%の割合で混合し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面側に含浸させ、母材21の熱処理を兼ねた焼成処理でCaZrOを生成させた。
サンプル5は、AlSi13を用いて複合酸化物含浸部25を形成している。この複合酸化物含浸部25は、アルミナゾル10%溶液とシリカゾル10%溶液とを、アルミニウムとシリコンとが6:2のモル比率になるように、アルミナゾル10%溶液を83重量%及びシリカゾル10%溶液を17重量%の割合で混合し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面側に含浸させ、母材21の熱処理を兼ねた焼成処理でAlSi13を生成させた。
サンプル6は、CeSiOを用いて複合酸化物含浸部25を形成している。この複合酸化物含浸部25は、セリアゾル10%溶液とシリカゾル10%溶液とを、セリウムとシリコンとが2:1のモル比率になるように、セリアゾル10%溶液を85重量%及びシリカゾル10%溶液を15重量%の割合で混合し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面側に含浸させ、母材21の熱処理を兼ねた焼成処理でCeSiOを生成させた。
サンプル7は、ZrAlOを用いて複合酸化物含浸部25を形成している。この複合酸化物含浸部25は、ジルコニアゾル10%溶液とアルミナゾル10%溶液とを、ジルコニウムとアルミニウムとが2:1のモル比率になるように、ジルコニアゾル10%溶液を91重量%及びアルミナゾル10%溶液を9重量%の割合で混合し、この混合ゾル溶液を多孔質セラミックス層23の表面側に含浸させ、母材21の熱処理を兼ねた焼成処理でZrAlOを生成させた。
上記のようにして得たサンプル1〜7及び複合酸化物含浸部25を備えない比較例のそれぞれに対してブラストエロージョン試験を行った。試験条件は、荒田式溶射皮膜評価試験機(製造メーカー:高橋エンジニアリング社製)を用い、基準噴射材:Al・54メッシュ、測定雰囲気:室温・大気中、試料サイズ:厚さ3.2mm×幅50mm×長さ60mm、ショット角度:30°にて摩耗量を評価項目とした。
図4は、サンプル1〜7についての融点とブラストエロージョン試験の結果(磨耗量の相対値)を示した対比表である。
図4に示すように、サンプル1〜7は、いずれも高融点であり、また、複合酸化物含浸部25を備えない比較例の磨耗量に対してサンプル1〜7の磨耗量が40〜60%程度減少した。
図5〜図10は、サンプル1〜7における複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。各グラフにおける熱伝導率λは、比較例の熱伝導率λを基準値1として相対値を示している。
図5〜図10の各グラフが示すように、複合酸化物含浸部25の含浸厚さdと熱伝導率λとは比例関係にあるので、含浸厚さdに上限を設けることで優れた遮熱性を確保することができる。この熱伝導率λの上限は、耐高温部品の材質、使用用途等で適宜設定することができるが、例えば比較例に対して1.7以下に設定することで優れた遮熱性を確保することができる。
一方、複合酸化物含浸部25の含浸厚さdが小さ過ぎると、複合酸化物26で気孔23aを十分に塞ぐことができず、CMASの浸透を十分に抑止することができなくなる。このため、各複合酸化物含浸部25の含浸厚さdが10μm以上に形成されているので、複合酸化物26で気孔23aを塞いでCMASの浸透を十分に抑止することができる。
すなわち、図5に示すようにサンプル1は10μm以上170μm以下、図6に示すようにサンプル2は10μm以上250μm以下、図7に示すようにサンプル3は10μm以上240μm以下、図8に示すようにサンプル4は10μm以上250μm以下、図9に示すようにサンプル5は10μm以上170μm以下、図10に示すようにサンプル6は10μm以上240μm以下、図11に示すようにサンプル7は10μm以上170μm以下、の含浸厚さdで複合酸化物含浸部25を形成することで、耐熱性とCMAS浸透抑止効果とを両立させることができる。
なお、上述した実施の形態及び実施例において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
1…ガスタービン
10…動翼(耐高温部材)
21…母材
22…ボンドコート層
23…多孔質セラミックス層
23a…気孔
25…複合酸化物含浸部
26…複合酸化物

Claims (18)

  1. 耐熱合金製の母材と、
    多数の気孔が形成され、前記母材を被覆する多孔質セラミックス層と、を備える耐高温部材であって、
    前記多孔質セラミックス層のうち少なくとも表面側には、前記複合酸化物が含浸した複合酸化物含浸部を具備していることを特徴とする耐高温部材。
  2. 前記複合酸化物は、AlTiOであることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
  3. 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の耐高温部材。
  4. 前記複合酸化物は、ZrTiOであることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
  5. 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の耐高温部材。
  6. 前記複合酸化物は、CeAlOであることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
  7. 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の耐高温部材。
  8. 前記複合酸化物は、CaZrOであることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
  9. 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の耐高温部材。
  10. 前記複合酸化物は、AlSi13であることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
  11. 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする請求項10に記載の耐高温部材。
  12. 前記複合酸化物は、CeSiOであることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
  13. 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上240μm以下であることを特徴とする請求項12に記載の耐高温部材。
  14. 前記多孔質セラミックス層は、セラミックスに対する前記気孔の体積占有率である気孔率が2%以上20%以下であることを特徴とする請求項1から13のうちいずれか一項に記載の耐高温部材。
  15. 前記母材と前記多孔質セラミックス層との間に形成されたボンドコート層を備えることを特徴とする請求項1から14のうちいずれか一項に記載の耐高温部材。
  16. 前記複合酸化物は、ZrAlOであることを特徴とする請求項1に記載の耐高温部材。
  17. 前記複合酸化物含浸部は、その厚さが10μm以上170μm以下であることを特徴とする請求項16に記載の耐高温部材。
  18. 請求項1から17のうちいずれか一項に記載の耐高温部材を用いたことを特徴とするガスタービン。
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