JP2012057667A - ナット - Google Patents
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Abstract
【課題】戻り回転止めナットを作る。
【解決手段】ナット本体と弾性を有する角柱状体の押圧片部とを備える。ナット本体は、内周面上で座面に平行な劣弧でなる上下の横辺と、この上下の横辺の両端同士を直角に結ぶ左右の縦辺とにより囲まれる劣弧面を開口にして外周面方向に角柱状に切り欠いてなる嵌溝を備える。押圧片部は、内底面が劣弧面をなし、下側面に傾斜面を塑性形成してナット本体の嵌溝に嵌着するようにする。そして、この傾斜面を塑性形成した状態で、押圧片部の内底面に、ボルトのおねじに対して、ナット本体のめねじと同心に螺合するめねじを螺刻する。かくして、本ナットがボルトのおねじに螺合して被締結部材を締付けた場合、押圧片部の傾斜面がこの被締結部材を押圧してナット本体の座面と水平になり、その弾性変形により押圧片部のめねじの位相が変化し、戻り回転止めを施すようにする。
【選択図】図3
【解決手段】ナット本体と弾性を有する角柱状体の押圧片部とを備える。ナット本体は、内周面上で座面に平行な劣弧でなる上下の横辺と、この上下の横辺の両端同士を直角に結ぶ左右の縦辺とにより囲まれる劣弧面を開口にして外周面方向に角柱状に切り欠いてなる嵌溝を備える。押圧片部は、内底面が劣弧面をなし、下側面に傾斜面を塑性形成してナット本体の嵌溝に嵌着するようにする。そして、この傾斜面を塑性形成した状態で、押圧片部の内底面に、ボルトのおねじに対して、ナット本体のめねじと同心に螺合するめねじを螺刻する。かくして、本ナットがボルトのおねじに螺合して被締結部材を締付けた場合、押圧片部の傾斜面がこの被締結部材を押圧してナット本体の座面と水平になり、その弾性変形により押圧片部のめねじの位相が変化し、戻り回転止めを施すようにする。
【選択図】図3
Description
本発明は、ナット、詳しくはボルトに対するナットの戻り回転止めを施すナットに関する。
ボルトとナットは、産業用の機械装置から一般家庭用製品まで、各種部品の締結に不可欠なものであるが、この際、振動等の外力を受けてねじのゆるみが生じるのを如何に防止するかが、重要な課題になっている。そこで、従来、幾種類ものボルトやナットが開発されているが、その中に、ナットの戻り回転を止めてねじのゆるみ止めを施す、以下の特許文献1記載の緩み止めナットがある。
この緩み止めナットは、中央にめねじが形成されているナット本体に、該ナット本体の軸心を中心にして対称に、外側から前記めねじに部分的に切欠く2以上の切り込みを前記ナット本体の上下方向中心位置より上側に形成し、該切り込みによって形成される各押圧片を塑性変形させて下方に折り曲げている緩み止めナットである。この場合、押圧片の下方への折り曲げにより、ナット本体の上側で形成されるめねじと、ナット本体の下側で押圧片を除いた部分に形成されためねじとの間に位相差が生じている。そのため、このナットにボルトを螺合させると、下方に折れ曲がっている押圧片が螺合の当初から起き上がり、そこでナットのめねじとボルトのおねじのはめあいが緊密になり、この摩擦抵抗によりナットとボルトの相対回転が生じにくくなり、ナットの戻り回転止め効果が発揮される。そして更に、この螺合を進め、被締結部材を締付けると、押圧片を除いた部分のめねじの締付けが作用し、緊密な締結が施され、ねじの緩み止めが施されるようになっている。
以上に述べた緩み止めナットは、押圧片を除いた部分に形成されためねじの締付けにより被締結部材を緊密に締結することができるが、ボルトに螺合する当初から、押圧片を除いた部分に形成されためねじと押圧片に形成されためねじとの間に位相差があり、両めねじがボルトのおねじに同時にはまり合うので、被締結部材を締結する以前でも、ナットの螺合には相当強い締付けトルクを継続して施さねばならない。これでは、螺合操作が円滑にならないばかりか、被締結部材を締結する以前おいて、ナットのめねじとボルトのおねじを損傷させる問題が生じることがある。本来ナットは、ボルトに螺合した当初から被締結部材に当接するまでは、フリースピニング状態で螺合を進め、被締結部材を締結するときに初めて適正締付力で締付けることにより、ナットのめねじとボルトのおねじが緊密にはまり合い、ゆるみ止めが施されるのが望ましい。
本発明は、上記の従来の緩み止めナットが有している問題点を解決しようとするものであり、ボルトに対する螺合が円滑で、かつ、被締結部材を緊密に締結し、更に締結と同時にボルトに対するナットの戻り回転を止める手段を施し、ねじのゆるみを止めるナットを実現することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明のナットは、以下の手段を施す。請求項1に関するナットは、ナット本体1と、弾性を有する角柱状体の押圧片部2とを備える。ナット本体1は、内周面11上で、座面13との辺縁上の劣弧でなる下横辺と、軸上下中央位置より下側で座面13に平行な劣弧でなる上横辺と、前記上下の横辺の両端同士を直角に結ぶ左右の縦辺とにより囲まれる劣弧面を開口にし、座面側も開口にして、外周面方向に角柱状に切り欠いてなる嵌溝14と、この嵌溝14の外周面方向側に係止溝15とを備える。押圧片部2は、内底面21がナット本体1の内周面11の内径に略等しい内径を有する劣弧面をなし、外底面22が平面をなし、外底面側に係止突起28を備え、この係止突起28をナット本体1の係止溝15に係止させることにより、下側面24と外底面22との辺縁31がナット本体1の座面13と水平をなしてナット本体1の嵌溝14に嵌着するようにする。そして、押圧片部2をナット本体1の嵌溝14に嵌着させた状態で、押圧片部2を下方に折り曲げ、その下側面24に、内底面21との辺縁32の両端がナット本体1の座面13を含む平面より僅かに下方突出し、被締結部材5a、5bを押圧した場合にナット本体1の座面13と水平をなす弾性変形を可能にする、ナット本体1の座面13を含む平面に対する傾斜角度θを有する傾斜面27を塑性形成する。
更に、この傾斜面27を塑性形成した状態で、押圧片部2の内底面21に、ボルト4のおねじ41に対し、ナット本体1のめねじ16と同心に螺合するめねじ29を螺刻する。かくして、ボルト4に螺合して被締結部材5a、5bを締付けた場合、押圧片部2の下側面24の傾斜面27がこの被締結部材5a、5bを押圧して弾性変形し、ナット本体(1)の座面13と水平面をなし、この弾性変形によって押圧片部2のめねじ29の位相が変化し、ボルト4のおねじ41に対する戻り回転止めを施すようにする。
そして、請求項2に関するナットは、請求項1記載のナットにおいて、押圧片部2の下側面24に傾斜面27を塑性形成した状態で、押圧片部2の左右の各側面25、26のナット本体1の座面13を含む平面より僅かに下方突出する部分に、ナット本体1の嵌溝14にしまりばめする各しめしろ部33、34を形成するようにする。
そして、請求項3に関するナットは、請求項1または2記載のナットにおいて、押圧片部2の下側面24の傾斜面27は、内底面21との辺縁31の両端のいずれか一方の端からナット本体1の座面13を含む平面に対して下ろす垂線の長さhを、本ナット自体がボルト4に螺合して被締結部材5a、5bを締付けた場合に、ナット本体1のめねじ16の頂面対向側のフランクf2と、それに向かい合うボルト4のおねじ41の頭部対向側のフランクf6との間に形成される軸線に平行な隙間距離wに略等しい寸法に形成する傾斜角度θを有するようにする。
尚、上記の請求項に関する記載において、内底面と外底面とは、本出願独自の用語であって、内底面21とは角柱状体の一方の底面で、押圧片部2がナット本体1の嵌溝14に嵌着した場合にナット本体1の内周面側にある底面をいい、外底面22とは前記角柱状体の他方の底面をいうものとする。
本発明のナットは、嵌溝を備えるナット本体と、弾性を有する角柱状体で、内底面が劣弧面をなしてナット本体の嵌溝に嵌着する押圧片部とを備える。そして、ナット本体の嵌溝に嵌着した押圧片部の下側面には傾斜面を塑性形成し、更に、前記傾斜面を塑性形成した状態で、押圧片部の内底面に、ボルトのおねじに対し、ナット本体のめねじと同心に螺合するめねじを螺刻する。これにより、本ナットがボルトに螺合した場合、押圧片部の傾斜面は被締結部材に当接するまで被締結部材を押圧しないので、傾斜面を塑性形成した状態をそのまま維持し、ゆるみ止め機構を有していない一般のナットと同様に、フリースピニング状態で螺合を進めることができ、螺合操作を円滑にすると共に、ナットとボルトのねじ山の損傷を防ぐ効果を発揮する。
そして、本ナットの螺合を更に進め、押圧片部の傾斜面が被締結部材に当接して、これを押圧すると、傾斜面が弾性変形してナット本体の座面と水平になる。ここでナット本体は、そのめねじがボルトのおねじに緊密に螺合し、被締結部材を堅固に締結する効果を発揮する。それと共に、押圧片部は、そのめねじの位相が変化し、その摩擦抵抗により、ボルトに対する本ナット自体の戻り回転を止め、ねじのゆるみを止める効果を発揮する。
更には、押圧片部の左右の各側面に、ナット本体にしまりばめを施す各しめしろ部を形成する。これにより、押圧片部がナット本体の嵌溝に嵌着する場合、ナット本体のめねじの締付けと、押圧片部のめねじの締付けと、押圧片部のナット本体へのしまりばめとが、一体に施され、ねじのゆるみ止め効果を一層高める効果を発揮する。
本発明のナットが上記の効果を発揮する要諦は、ナット本体に嵌着し、傾斜面を塑性形成した押圧片部に、ボルトのおねじに対し、ナット本体と同心に螺合するめねじを螺刻し、しかもこの傾斜面が被締結部材を押圧した場合に、ナット本体の座面と水平に弾性変形し、そのめねじの位相が変化するようにした手段である。これは、従来のゆるみ止めナットにはなかった、本発明独自の手段である。
以下、本発明のナットの実施形態を図面に基づいて説明する。
実施例1を説明する。
先ず、本ナットの構造を図1から図6までの各図を相互に参照して説明する。図1はナット本体の座面を上にした外観図、図2は押圧片部の下側面を上にした外観図、図3はナット本体の座面を上にした外観図、図4はナット本体の二面幅を左右に視た下面図、図5は図4のI−I線切断断面図、図6は図4のII−II線切断断面図である。尚、図2では、ナット本体1は部分表示し、押圧片部2のめねじ29とナット本体1のめねじ18は、めねじの山を太い実線、めねじの谷を細い実線線で表示し、外底面22は隠れて表示されていない。
本ナットは、ナット本体1と押圧片部2とを備えている。ナット本体1は、図1に示すように、外形が六角形で、内周面11にめねじ16を螺刻し、かつ、内周面11と座面13の辺縁上の劣弧でなる下横辺と、内周面11上で軸上下中央位置より下側で座面13に平行で、前記下横辺の劣弧と等しい弧長の劣弧でなる上横辺と、前記上下の横辺の両端同士を直角に結ぶ左右の縦辺とにより囲まれる劣弧面を開口にし、座面側も開口にして、外周面方向に至る中途まで、直角柱状に切り欠いてなる嵌溝14と、この嵌溝14の外周面側に、座面側を開口にして押圧片部2の係止突起28が係止する係止溝15とを備えている。
押圧片部2は、図2に示すように、ナット本体1とは別体で、弾性材で作られ、内底面21がナット本体1の内周面11の内径と略等しい内径を有する劣弧面をなし、外底面22が平面をなし、ナット本体1の嵌溝14に嵌着する側辺長を有する直角柱状体として形成されている。そして、外底面22から外周面方向に突起して、ナット本体1の係止溝15に座面側から挿込み係止する係止突起28を備えている。
そして、本ナットは、図4〜図6に示すように、押圧片部2の係止突起28をナット本体1の係止溝15に係止させて、押圧片部2をナット本体1の嵌溝14に嵌着させている。ここで、押圧片部2は、下側面24と外底面22との辺縁31がナット本体1の座面13と水平をなすように、嵌着している。そして、押圧片部2の下側面24に、この下側面24と内底面21との辺縁32の両端がナット本体1の座面13を含む平面より僅かに下方突出する傾斜面27を塑性形成している。このように、押圧片部2の下側面24と外底面22との辺縁31がナット本体1の座面13と水平をなすことにより、押圧片部2の下側面24に傾斜面27を塑性形成した場合、傾斜面27の傾斜始点をナット本体1の座面13と水平にすることができる。これにより、傾斜面27は被締結部材5a、5bを押圧した場合、傾斜始点から傾斜終点までの全長に亘り、ナット本体1の座面13と水平をなす弾性変形ができるようになる。ここで、辺縁31がナット本体1の座面13より下方突出してしまうと、この下方突出部分が閊えて、ナット本体1の座面13が被締結部材5bに密接せず、適正な締付けを施すことができなくなる。また、辺縁31がナット本体1の座面13より頂面方向に上方凹みしてしまうと、傾斜面27の傾斜始点は被締結部材5bに当接せず、傾斜面27は水平に弾性変形できなくなる。
更に、押圧片部2には、その傾斜面27が被締結部材5a、5bを押圧して、ナット本体1の座面13と水平をなすのに弾性変形し易いように、押圧片部2の左右の側面25、26はナット本体1の嵌溝14に僅かな隙間を残して嵌り、傾斜面27の折り曲げ始点には下側面側と上側面側に折り欠き30を設けている。(図5及び図7から図10までの各図では、上側面側の切り欠きには符号を表示してない。)
そして、前記傾斜面27を塑性形成した状態で、押圧片部2の内底面21に、ボルト4のおねじ41に対し、ナット本体1のめねじ16と同心に螺合するめねじ29を螺刻している。ここで、ナット本体1のめねじ16と押圧片部2のめねじ29は等しいピッチをなし、同一条のつる巻き線を形成している。但し、このつる巻き線は、押圧片部2がナット本体1の嵌溝14に嵌着した場合に生じる隙間では分断され、そこでは非連続になっている。
ここで、押圧片部2の下側面24の上記傾斜面27は、本ナット自体がボルト4に螺合して被締結部材5a、5bを締付ける場合に、この被締結部材5a、5bを押圧してナット本体1の座面13と水平をなす弾性変形を可能にするよう、ナット本体1の座面13を含む平面に対する傾斜角度θを、以下のように形成する傾斜角度にしている。即ち、図8に示す押圧片部2の下側面24の傾斜面27が内底面21との辺縁32の両端のいずれか一方の端からナット本体1の座面13を含む平面に対して下ろす垂線の長さh(以下、この垂線の長さを傾斜高という。この垂線の長さは前記辺縁32の両端のいずれから下ろしても同じ長さである。)を、本ナット自体がボルト4に螺合して被締結部材5a、5bを締付けた場合に、図10に示すように、ナット本体1のめねじ16の頂面対向側のフランクf2と、それに向かい合うボルト4のおねじ41の頭部対向側のフランクf6との間に形成される軸線に平行な隙間距離wに略等しい寸法に形成する傾斜角度にしている。この場合、傾斜高hが隙間距離wより長い寸法をなすと、傾斜高hと隙間距離wの差分だけ、傾斜面27が被締結部材5a、5bを押圧しても、傾斜面27が水平になりきれず、下方に突出する部分が残り、ナット本体1が締付けを施すことができなくなる。但し、極めて僅かに長い寸法なら、押圧片部2の材料の弾性次第で、めねじ29が圧縮変形して傾斜高hと隙間距離wの差分を埋め、下側面24の傾斜面27が水平をなすことができ、摩擦抵抗を増して戻り回転止め効果を高めることができる。逆に、傾斜高hが隙間距離wより短い寸法をなすと、傾斜高hと隙間距離wの差分だけ隙間が生じ、その分戻り回転止めを施すことができなくなる。
かくして形成した本ナットは、座面を上にした外観は図3のようになる。そして、ナットの二面幅を左右に視た下面は図4のようになり、図4のI−I線切断断面は図5のようになり、II−II線切断断面は図6のようになる。
次いで、本ナットが被締結部材を締結する状態を図7から図10までを参照して説明する。図7は被締結部材を締付ける以前の状態においてナットがボルトに螺合した断面図、図8は図7のA部の拡大説明図で、ナットのめねじとボルトのおねじの螺合状態の説明図、図9は被締結部材を締付けた状態においてナットがボルトに螺合した断面図、図10は図9のB部の拡大説明図で、ナットのめねじとボルトのおねじの螺合状態の説明図である。尚、図8と図10には、ナット本体と押圧片部の各めねじとボルトのおねじの螺合状態を明瞭に図示するため、ハッチングを施さず、また被締結部材は表示していない。
本ナットがボルト4に螺合したが、まだ被締結部材5a、5bを締付ける以前は、図7に示すように、押圧片部2の下側面24は被締結部材5bに当接していないので、傾斜面27が塑性形成されたままで、本ナットは、ゆるみ止め機構を有していない一般のナットと同様に、フリースピニング状態で螺合を進めることができる。この状態においては、図8に示すように、押圧片部2のめねじ29とナット本体1のめねじ16のピッチは等しくなっており、ナット本体1のめねじ16の座面対向側のフランクf1と押圧片部2のめねじ29の下側面対向側のフランクf3は共に進み側のフランクになり、また、ナット本体1のめねじ16の頂面対向側のフランクf2と押圧片部2のめねじ29の上側面対向側のフランクf4は共に追い側のフランクになっている。この場合、押圧片部2のめねじ29の下側面対向側のフランクf3がボルト4の軸線に対してなす角度αと、ボルト4のおねじ41の軸先対向側のフランクf5がボルト4の軸線に対してなす角度βは等しくなっている(α=β)。
そして、一層ナットの螺合を進めると、図9に示すように、押圧片部2の下側面24の傾斜面27が被締結部材5a、5bを押圧し、この傾斜面27が弾性変形してナット本体1の座面13と水平をなし、ナット本体1が被締結部材5a、5bを締付け、これと共に、押圧片部2のめねじ29の位相が変化して本ナット自体の戻り回転止めを施すようになっている。この状態においては、図10に示すように、ナット本体1のめねじ16は、座面対向側のフランクf1が圧力側のフランクになってボルト4のおねじ41の軸先対向側のフランクf5を押圧し、頂面対向側のフランクf2が遊び側のフランクになってボルト4のおねじ41の頭部対向側のフランクf6との間に隙間(隙間距離w)を形成している。一方、押圧片部2のめねじ29は、上側面対向側のフランクf4がボルト4のおねじ41の頭部対向側のフランクf6を押圧し、下側面対向側のフランクf3がボルト4のおねじ41の軸先対向側のフランクf5との間に隙間を形成している。この場合、押圧片部2のめねじ29の下側面対向側のフランクf3がボルト4の軸線に対してなす角度αは、ボルト4のおねじ41の軸先対向側のフランクf5がボルト4の軸線に対してなす角度βより小さくなっており、その差分は図9に示す押圧片部2の下側面24の傾斜面27の傾斜角度θに等しくなっている(β−α=θ)。ここで、ナット本体1のめねじ16の押圧方向と押圧片部2のめねじ29の押圧方向は180度異なり、両めねじ16、29がボルト4のおねじ41のねじ山を前後に挟みつけ、締付けと戻り回転止めを効果的に施すようになっている。
次いで、本ナットの形状と寸法、及び機能について、更に説明する。
一般にナットをボルトに締付ける場合、その適正締付けトルクは、ねじ面の摩擦トルクと座面の摩擦トルクが加わったものになるので、本ナットにおいてもナット本体1の座面13の面積を広くすることが好ましい。そのためには、押圧片部2の下側面24の面積を狭くし、押圧片部2の内底面21の弧長を短くしなければならないが、それでは押圧片部2の押圧力が不足する場合が生じることがある。そこで、本実施例では、押圧片部2の内底面21の弧長は、図3、図4に示すように、本ナットの内周面の円周の略1/12(中心角略30度)にしてある。この弧長は、本ナットの機械的特性により適宜設定することができる。また、押圧片部2の個数は1個でなく、円周上等間隔に複数個(例えば3個)配置するのもよい。複数個だと、製造工程は増すが、押圧片部が互いに押圧を支持し合うので、たとえ一つの押圧片部が損傷して押圧力が弱まっても、他の押圧片部がそれを補完する効果を発揮することができる。
一般にナットをボルトに締付ける場合、ナットのねじ山にかかる力は、複数山あるナットのねじの全体に均等にかからず、座面に近い第1〜2山に多くの力がかかるので、多くのねじ山(はめ合い長さ)があっても締付けのためにはあまり働かない。また、押圧片部2の厚さは、あまり厚くするすると、剛性が高くなり、被締結部材5a、5bを押圧して、傾斜面27がナット本体1の座面13と水平をなすのがそれだけ困難になる。そこで、本実施例では、図5に示すように、押圧片部2のめねじ29を1山余り形成する厚さにしている。このねじ山の数と押圧片部の厚さは、本ナットの機械的特性により適宜設定することができる。とは言え、押圧片部2の下側面24の傾斜面27が被締結部材5a、5bを押圧する力は、ナット本体1の締付けトルクが直接作用するので、それだけ強いものであり、押圧片部2の剛性がかなり高くとも、締付け操作は容易となる。
実施例2を説明する。
実施例1においては、本ナットは、ナット本体1のめねじ16がボルト4のおねじ41を締付けることにより被締結部材5a、5bを締結し、かつ、押圧片部2のめねじ29がボルト4のおねじ41を締付けることにより戻り回転止めを効果的に施すようになっている。だが、それでも本ナットが振動等の外力により戻り回転が生じるのは避けられない場合がある。この戻り回転が生じる場合には、ナット本体1の座面13は、被締結部材5bを隙間なく押圧している状態から、被締結部材5bとの間に隙間が生じる状態になる。そして、押圧片部2の下側面24は、ナット本体1の座面13と水平をなしていた状態から、傾斜面27が復元する状態になる。そこで、戻り回転止め効果を高めるには、水平をなしたナット本体1の下側面24に傾斜面27が復元しにくい手段を施すのがよい。以下、この手段を図11と図12を参照して説明する。図11は押圧片部とナット本体がしまりばめする以前の状態の一部断面説明図、図12は押圧片部とナット本体がしまりばめした状態における一部断面説明図である。
実施例2は、図11に示すように、押圧片部2がナット本体1の嵌溝14に嵌着する場合に、押圧片部2がナット本体1にしまりばめするように、押圧片部2の左側面25と右側面26のナット本体1の座面13を含む平面より僅かに下方突出する部分に各しめしろ部33、34を形成している。そして、各しめしろ部33、34には、上方に僅かに先細るテーパを形成し、押圧片部2がナット本体1の嵌溝14へ嵌込むのをガイドするようにしている。そして、押圧片部2の下側面24が押圧された場合、図12に示すように、押圧片部2の前記下方突出部分がナット本体1にしまりばめされる。これにより、押圧片部2の下側面24が傾斜面27を復元しようとする作用を阻止し、ナット本体1のめねじ16の締付けと、押圧片部2のめねじ29の締付けと、押圧片部2のしまりばめとが一体に施され、ねじのゆるみ止め効果を一層高めることができるようになっている。
尚、本ナットは、実施例1、実施例2いずれにおいても、押圧片部2が被締結部材5a、5bを押圧する場合は、押圧力点がボルトに近い方がテコの原理で押圧し易い。この場合、被締結部材のボルト通し穴の径が大きいと、押圧力点がボルトから遠くなる。そこで、一般のゆるみ止め機構を有していない低ナットを下ナットにし、本発明のナットを上ナットにしたダブルナットを採用するのも好適である。下ナットを使用することにより、押圧力点はボルトに接近する。また、被締結部材の硬度が低い場合は、被締結部材と本ナットの間に介在する、硬度が高く、ボルト通し穴の径が小さい平座座金を使用するのも好適である。
また、本ナットの材料としては、実施例1、2いずれにおいても、ナット本体には鋼、ステンレス鋼、その他の非鉄金属が適し、押圧片部にはばね鋼が適する。
また、本ナットが螺合するボルトは、六角ボルトに限らず、おねじを有するものに使用でき、例えばアンカーボルト等にも使用できるものである。
1 ナット本体
11 内周面
12 外周面
13 座面
14 嵌溝
15 係止溝
16 めねじ
2 押圧片部
21 内底面
22 外底面
23 上側面
24 下側面
25 左側面
26 右側面
27 傾斜面
28 係止突起
29 めねじ
30 折り欠き
31 下側面と外底面との辺縁
32 傾斜面と内底面との辺縁
33 左しめしろ部
34 右しめしろ部
θ 傾斜角度
h 垂線の長さ
w 隙間距離
4 ボルト
41 おねじ
5a、5b 被締結部材
f1 ナット本体のめねじの座面対向側のフランク
f2 ナット本体のめねじの頂面対向側のフランク
f3 押圧片部のめねじの下側面対向側のフランク
f4 押圧片部のめねじの上側面対向側のフランク
f5 ボルトのおねじの軸先対向側のフランク
f6 ボルトのおねじの頭部対向側のフランク
α 押圧片部のめねじの下側面対向側のフランクがボルトの軸線に対してなす角度
β ボルトのおねじの軸先対向側のフランクがボルトの軸線に対してなす角度
11 内周面
12 外周面
13 座面
14 嵌溝
15 係止溝
16 めねじ
2 押圧片部
21 内底面
22 外底面
23 上側面
24 下側面
25 左側面
26 右側面
27 傾斜面
28 係止突起
29 めねじ
30 折り欠き
31 下側面と外底面との辺縁
32 傾斜面と内底面との辺縁
33 左しめしろ部
34 右しめしろ部
θ 傾斜角度
h 垂線の長さ
w 隙間距離
4 ボルト
41 おねじ
5a、5b 被締結部材
f1 ナット本体のめねじの座面対向側のフランク
f2 ナット本体のめねじの頂面対向側のフランク
f3 押圧片部のめねじの下側面対向側のフランク
f4 押圧片部のめねじの上側面対向側のフランク
f5 ボルトのおねじの軸先対向側のフランク
f6 ボルトのおねじの頭部対向側のフランク
α 押圧片部のめねじの下側面対向側のフランクがボルトの軸線に対してなす角度
β ボルトのおねじの軸先対向側のフランクがボルトの軸線に対してなす角度
Claims (3)
- ナット本体(1)と、弾性を有する角柱状体の押圧片部(2)とを備え
ナット本体(1)は、内周面(11)上で、座面(13)との辺縁上の劣弧でなる下横辺と、軸上下中央位置より下側で座面(13)に平行な劣弧でなる上横辺と、前記上下の横辺の両端同士を直角に結ぶ左右の縦辺とにより囲まれる劣弧面を開口にし、座面側も開口にして、外周面方向に角柱状に切り欠いてなる嵌溝(14)と、この嵌溝(14)の外周面方向側に係止溝(15)とを備え、
押圧片部(2)は、内底面(21)がナット本体(1)の内周面(11)の内径に略等しい内径を有する劣弧面をなし、外底面(22)が平面をなし、外底面側に係止突起(28)を備え、この係止突起(28)をナット本体(1)の係止溝(15)に係止させることにより、下側面(24)と外底面(22)との辺縁(31)がナット本体(1)の座面(13)と水平をなしてナット本体(1)の嵌溝(14)に嵌着するようになされ、
押圧片部(2)をナット本体(1)の嵌溝(14)に嵌着させた状態で、押圧片部(2)を下方に折り曲げ、その下側面(24)に、内底面(21)との辺縁(32)の両端がナット本体(1)の座面(13)を含む平面より僅かに下方突出し、被締結部材(5a、5b)を押圧した場合にナット本体(1)の座面(13)と水平をなす弾性変形を可能にする、ナット本体(1)の座面(13)を含む平面に対する傾斜角度(θ)を有する傾斜面(27)を塑性形成し、
更に、この傾斜面(27)を塑性形成した状態で、押圧片部(2)の内底面(21)に、ボルト(4)のおねじ(41)に対して、ナット本体(1)のめねじ(16)と同心に螺合するめねじ(29)を螺刻したナットであり、
ボルト(4)に螺合して被締結部材(5a、5b)を締付けた場合、押圧片部(2)の下側面(24)の傾斜面(27)がこの被締結部材(5a、5b)を押圧して弾性変形し、本ナット本体(1)の座面(13)と水平面をなし、この弾性変形によって押圧片部(2)のめねじ(29)の位相が変化し、ボルト(4)のおねじ(41)に対する戻り回転止めを施すようにすることを特徴とするナット - 請求項1記載のナットにおいて、押圧片部(2)の下側面(24)に傾斜面(27)を塑性形成した状態で、押圧片部(2)の左右の各側面(25、26)のナット本体(1)の座面(13)を含む平面より僅かに下方突出する部分に、ナット本体(1)の嵌溝(14)にしまりばめする各しめしろ部(33、34)を形成するようにすることを特徴とするナット
- 請求項1または2記載のナットにおいて、押圧片部(2)の下側面(24)の傾斜面(27)は、内底面(21)との辺縁(31)の両端のいずれか一方の端からナット本体(1)の座面(13)を含む平面に対して下ろす垂線の長さ(h)を、本ナット自体がボルト(4)に螺合して被締結部材(5a、5b)を締付けた場合に、ナット本体(1)のめねじ(16)の頂面対向側のフランク(f2)と、それに向かい合うボルト(4)のおねじ(41)の頭部対向側のフランク(f6)との間に形成される軸線に平行な隙間距離(w)に略等しい寸法に形成する傾斜角度(θ)を有するようにすることを特徴とするナット
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010199506A JP2012057667A (ja) | 2010-09-07 | 2010-09-07 | ナット |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010199506A JP2012057667A (ja) | 2010-09-07 | 2010-09-07 | ナット |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012057667A true JP2012057667A (ja) | 2012-03-22 |
Family
ID=46055020
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010199506A Pending JP2012057667A (ja) | 2010-09-07 | 2010-09-07 | ナット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2012057667A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101605422B1 (ko) * | 2015-10-02 | 2016-03-22 | 강순구 | 단조가공에 의한 로크 너트 제조방법 및 이에 의해 제조된 로크 너트 |
CN113847329A (zh) * | 2021-10-27 | 2021-12-28 | 芜湖兆合汽车零部件科技有限公司 | 高强度防脱防松螺母 |
-
2010
- 2010-09-07 JP JP2010199506A patent/JP2012057667A/ja active Pending
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---|---|---|---|---|
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