JP2012055922A - 蝋付け用フラックス及び蝋付け法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体フラックスは蝋付けの前工程や後工程でフラックスの塗布や除去に多大の手間を要しているため、ホウ酸エステル系の気化フラックスが一部使用されているがフッ化物が入っていないために清浄作用が不足し使用範囲が狭い。清浄作用を強化し脱亜鉛などの問題を解消するにはフッ化物を含有した液体フラックスや気化フラックスが必要がある。
【解決手段】各種フッ化物とホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)もしくはホウフッ化スズ(Sn(BF4)2)もしくはホウフッ化カドミウム(Cd(BF4)2)もしくはホウフッ化銅(Cu(BF4)2)もしくはステアリン酸銅Cu(CH3(CH3)16COO)2のいずれか1種もしくは2種以上組み合わせて5〜15wt%混合した混合フッ化物中のフッ素(F)含有量を30〜70wt%として溶媒に溶解した液体フラックス及び該液体フラックスを気化せしめた気化フラックス。
【選択図】図1

Description

本発明は銀蝋、リン銅蝋、銅及び黄銅蝋、ニッケル蝋、コバルト蝋用の気化フラックス及び気化フラックスの基となる液体フラックスに関する。特に銀蝋は銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)を主成分とする蝋で、用途によりカドミウム(Cd)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)などを添加し融点を調整した蝋材である。
銀蝋付けをはじめとして一般に蝋付けは前工程として母材の脱脂などの清浄工程と蝋付け部へのフラックス塗布工程が必要である。塗布式フラックスは粘性を低くして塗布する必要があり、しかも蝋付け部以外の脱亜鉛防止を考慮して全体に塗布する必要があるため2〜3回の工程を必要とする。特に3方弁や4方弁となると孔の中にフラックスが入らないようにする内面シール工程に手間がかかる。しかも脱亜鉛防止対策に失敗すると斑な赤色部が出るため商品価値を低くする問題があった。但し、銅同士をリン銅蝋( リン7wt%(重量%)、銅92.8wt%、不純物0.2wt%未満)により蝋付けするような場合は酸化銅の薄い酸化膜とリン銅蝋中のリン(P)が反応し酸化銅リン(CuPO2)を生成してフラックスの役目をするのでフラックスは不要な場合もある。蝋付け後においても例えば黄銅母材を銀蝋付けする場合は、固体フラックスは蝋付け後すぐに除去しないと黄銅中の主成分である亜鉛の蒸発による脱亜鉛のため全体的に赤色を帯びた色むらができる。このため蝋付け後の固体フラックスの除去工程は重要であり手間のかかる作業となっている。従って固体フラックスを使用する銀蝋付けにおいては蝋付け前の清浄工程、フラックス塗布工程、蝋付け後のフラックス除去工程が必要であり銀蝋付けの作業効率を低下させていた。またフラックスは酸性の物が多く蝋付け後にフラックスが残留すると発錆の問題もあり、残留フラックスの洗浄は不可避であった。
従来の蝋付けフラックスは固体フラックスのため塗布を容易にするために2〜3倍に薄めて蝋付け部だけでなく全体的に塗布することで酸化防止と脱亜鉛、脱カドミウム、脱スズを防止していた。銀蝋は銅合金と異種金属(SUS、鉄及び鉄合金などの特殊鋼)との蝋付けに使用されることが多いが、異種金属側の方が強い酸化膜を有するので、これを除去するためにはフラックスに多くのフッ化物を入れる必要があるものの、一方では蝋付け部の酸化を防止するには蝋付け部にガラス状に張り付きシールドするホウ酸(H3BO3)やホウ砂(Na2B4O7)の機能が必要であり必然的にフッ化物の含有量は制限せざるを得なかった。
従来気化フラックスとしては、メチルアルコールにホウ酸(H3BO3)を高温高圧で溶解させたホウ酸エステル(ホウ酸トリメチル((CH3O)3B)70wt%とメチルアルコール(CH3OH)30wt%を混合したものを再度メチルアルコールで希釈して30wt%に薄めたものが使用されている。しかしホウ酸エステルを気化させた気化フラックスには全くフッ化物が入っていないため使用範囲が限定され黄銅と銅の蝋付けが主体でありエアコンや温水器などの継手を蝋付けする分野に使用されている。フッ化物が入っていないためにSUS系のように表面に形成される強力な不動態被膜の除去作用がないことや銅合金と鉄の蝋付けの場合も鉄の酸化膜(FeO、Fe2O3、Fe3O4)を浮き上がらせる清浄力不足のため銅合金同士の蝋付け以外には使えないのである。
本発明者は特願2010−165565号広報において、フッ化物だけからなる液体フラックスを発明した。この液体フラックスは主として鋼材のガス切断や溶接・蝋付け用に使用できるものである。しかしながら一般にフッ化物はPH3〜5の酸性であり、フッ化物主体の液体フラックスはPH4〜5の酸性を示す。溶接や蝋付け後は発錆を防止するために洗浄が必要であった。また、銀蝋中に含有されている低融点元素の亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)は蒸発しやすく、特に主力の亜鉛が抜ける(イオン化蒸発)ため色調が斑の赤色化が発生する。銀蝋付け用気化フラックスとしてはこの脱亜鉛、脱スズ、脱カドミウム現象を抑える機能を強化する必要があった。
本発明者は、これまでガス切断のドロス付着防止や溶接、ロウ付けの接合性を向上させるために液体フラックスや液体フラックスを気化装置で気化せしめた気化フラックスを発明した。特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」(特許文献1)において、ロウ付けなどに使用するフラックスを適宜混合して前処理した混合フラックスを、アルコールやアセトンなどの溶媒に8〜25wt%混合して、超臨界装置内において温度300〜400℃、圧力34.3〜44.1MPaで溶解し液体フラックスとし、該液体フラックスに気体を吹き込んで気化させるガス切断用気化フラックスを発明した。特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」(特許文献2)において、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Znなどの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンなどの溶媒を入れた容器中で、磁場をかけるとともに、該溶媒を回転しながら溶解する液体フラックスの製造方法を発明した。特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」(特許文献3)において、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Znなどの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールなどの溶媒を入れた容器中で、磁場をかけるとともに該溶媒を回転しながら溶解する液体フラックスの製造方法において、溶媒中に電極を挿入し電圧を付加するとともにパルス電圧を付加する液体フラックス製造方法を発明した。特開2009−255105号広報「気化装置」(特許文献4)において、液体フラックスを気化せしめて気化フラックスを生成するための気化装置を発明した。
特開2009−090368号広報 特開2009−297782号広報 特開2010−100441号広報 特開2009−255105号広報 特願2010−165565号広報
固体フラックスを用いた銀蝋付けにおいては蝋付けの前工程や後工程でフラックスの塗布や除去に多大の手間を要する問題がある。また固体フラックスの問題を解消するためのホウ酸エステル系の気化フラックスにおいてもフッ化物が入っていないために黄銅や銅の銀蝋付けしかできない問題がある。本発明者は自在に配合できる液体フラックスや気化フラックスの製造方法を発明しているが銀蝋付けにおいて脱亜鉛、脱カドミウム、脱スズ現象を解消する液体フラックスや気化フラックスは製造できていなかった。フッ化物はPH3〜5の酸性をしめし液体フラックスはPH4〜5の酸性をしめす。このため蝋付け後の発錆が問題になっていた。本発明は以上の問題点を解決するものでありその課題は、(1)蝋付け前の固体フラックスの塗布工程や蝋付け後の固体フラックスの除去工程を解消する、2)蝋付け部の脱亜鉛、脱カドミウム、脱スズ現象を解消する、(3)脱亜鉛、脱カドミウム、脱スズ現象を低減する作用のある気化フラックスの具現化、(4)中性もしくは中性に近い液体フラックスの具現化である。
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(AL)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種または2種以上のフッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70wt%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンなどの溶媒に溶解した液体フラックスにおいて、前記調合フッ化物がホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)もしくはホウフッ化スズ(Sn(BF4)2)もしくはホウフッ化カドミウム(Cd(BF4)2)もしくはホウフッ化銅(Cu(BF4)2)もしくはステアリン酸銅Cu(CH3(CH3)16COO)2のいずれか1種もしくは2種以上組み合わせて5〜15wt%含有している液体フラックスである。
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記調合フッ化物がホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)を5〜10wt%含有している液体フラックスである。
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、アルコールやアセトンなどの前記溶媒にアミン、アミド類を5〜10wt%添加した液体フラックスである。
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記液体フラックスを気化装置に充填し、プロパン(C3H6)やアセチレン(C2H2)などの燃焼ガスを吹き込んで気化せしめて前記気化フラックスとして、蝋付け炉のバーナーに導き、前記蝋付け炉を加熱しながら前記気化フラックスを吹き込んで蝋付けする蝋付け方法である。
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、前記液体フラックスを前記気化装置に充填し、該気化装置にアルゴン(Ar)や窒素(N)などの不活性ガスを吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて前記気化フラックスとして、該気化フラックスを蝋付け炉に吹き込みながら蝋付けする蝋付け方法である。
第6の解決手段は特許請求項6に示すように、前記液体フラックスを前記気化装置に充填し、該気化装置にアルゴン(Ar)や窒素(N)などの不活性ガスを吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて前記気化フラックスとして、蝋付け部に吹き付けながら蝋付けする蝋付け方法である。
本発明による効果は次のようになる。(1)液体フラックスを気化せしめた気化フラックスはガス状の中にフラックス成分が含有されているので前工程のフラックス塗布工程は全く不要となる。(2)液体フラックスの主成分はフッ化物主体の無機化合物であり、従来のフラックスに多用されていた酸化物が全く含まれていないため、溶接後のホウ酸ガラスの生成が減少することから後工程の残フラックス除去工程は簡単な洗浄だけでよい。(3)気化装置内に液体フラックスを充填し燃焼ガスや不活性ガスを吹き込むことにより簡単に気化フラックスを生成できる。(4)燃焼ガスであるプロパンガスまたはアセチレンガスを気化装置に充てんした液体フラックスに吹き込むことで気化フラックスを生成できるので、蝋付け炉を加熱しながら蝋付け炉を気化フラックスで充満できるので、蝋材や被蝋付け材の酸化防止や清浄作用ができる。(5)気化フラックスはホウ素を含有しているので被蝋付け材全体に薄くガラス状に張り付くことで100%シールすることが可能となる。このとき、気化フラックスに含有されているホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)、ホウフッ化第一スズ(Sn(BF4)2)、ホウフッ化銅(Cu(BF4)2)もしくはステアリン酸銅Cu(CH3(CH3)16COO)2などが低融点元素の蒸発をシールドするため脱亜鉛、脱スズ、脱カドミウムなどを防止する。(6)本発明によるフラックスはPH6〜7となり略中性にすることができる。もしくは完全にPH7に調整することも可能である。(7)液体フラックスにアミン、アミド類を5〜10%添加することで、液体フラックスの気化にともなう含有成分の析出を防止し、長時間安定して溶解状態を保つことが可能となる。(8)リン銅蝋付けは液体フラックスにリン酸エステル(P(OC6H5)3、沸点399℃)などを最大10%メタノールに加えることで875〜1083℃の高温帯を高温酸化から守り蝋付けが可能になる。
気化フラックスを燃料ガスとともに蝋付け炉に吹込む場合のイメージ図 気化フラックスを不活性ガスとともに蝋付け炉に吹込む場合のイメージ図 気化フラックスを不活性ガスとともに蝋付け部に吹付ける場合のイメージ図
本発明の実施形態を図1、図2、図3に基づいて説明する。
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(AL)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種または2種以上のフッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70wt%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンなどの溶媒に溶解した液体フラックスにおいて、前記調合フッ化物がホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)もしくはホウフッ化スズ(Sn(BF4)2)もしくはホウフッ化カドミウム(Cd(BF4)2)もしくはホウフッ化銅(Cu(BF4)2)もしくはステアリン酸銅Cu(CH3(CH3)16COO)2のいずれか1種もしくは2種以上組み合わせて5〜15wt%含有している液体フラックスである。
本発明による液体フラックス及び気化フラックスは、本発明者が発明した特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」(特許文献1)、特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」(特許文献2)、特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」(特許文献3)、特開2009−255105号広報「気化装置」(特許文献4)よって製造することができる。
前記混合フッ化物は、フッ化カリウム(KF)、フッ化ナトリウム(NaF)、三フッ化ホウ素(BF3)、四フッ化珪素(SiF4)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)、ホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、ケイフッ化カリウム(K2SiF6)、フッ化アルミナトリウム(液晶石、Na3ALF6)、フッ化アルミカリウム(カリ永晶石、K3ALF6)、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)、酸性フッ化カリウム(KHF2)、酸性フッ化ナトリウム(NaHF2)、ケイフッ化ナトリウム(NaHF6)、ケイフッ化ナトリウム(NaHF6)などから選択して組み合わせることができる。
できる 。
固体フラックスを用いた銀蝋付けにおいては蝋付けの前工程や後工程でフラックスの塗布や除去に多大の手間を要する問題がある。固体フラックスのこのような問題を解消するためにホウ酸エステル系の気化フラックスが使用されているが、フッ化物が入っていないために黄銅や銅の銀蝋付けしかできない問題がある。ホウ酸エステル系の気化フラックスはメチルアルコールにホウ酸(H3BO3)を高温高圧で溶解させたホウ酸エステル(ホウ酸トリメチル((CH3O)3B)70wt%とメチルアルコール(CH3OH)30wt%を混合したものを再度メチルアルコールで希釈して30wt%に薄めたものである。しかしこの気化フラックスには全くフッ化物が入っていないため黄銅と銅の蝋付けが主体でありエアコンや温水器などの継手を蝋付けする分野において限定的に使用されているにすぎない。フッ化物が入っていないためにSUS系のように表面に形成される強力な不動態被膜の除去作用がないことや銅合金と鉄の蝋付けの場合も鉄の酸化膜(FeO、Fe2O3、Fe3O4)を浮き上がらせる清浄力不足のため銅合金同士の蝋付け以外には使えないのが現状である。また、本発明者は特願2010−165565号広報によりフッ化物だけを含有する液体フラックスを発明したが、フッ化物はPH3〜5であり液体フラックスはPH4〜5となるため蝋付け部周辺の発錆の原因となっている。また液体フラックスは溶媒が先行して気化する傾向にあるため気化が進むにつれて徐々に含有成分が濃縮して析出する問題がある。
本発明者は自在に配合できる液体フラックスや気化フラックスの製造方法を発明しているが銀蝋付けにおいて脱亜鉛、脱カドミウム、脱スズを防止する液体フラックスや気化フラックスは製造できていなかった。本発明は以上の問題点を解決するものでありその課題は、(1)蝋付け前の固体フラックスの塗布工程や蝋付け後の固体フラックスの除去工程を解消する、(2)SUS系のように表面に形成される強力な不動態被膜や鉄の酸化膜(FeO、Fe2O3、Fe3O4)を浮き上がらせる強力な清浄力を有する液体フラックスや気化フラックスを具現化する、(3)液体フラックス中の含有成分の析出を防止することである。
従来の固体型蝋付けフラックスの代表例として、フッ化カリウム(KF):15〜20%、酸性フッ化カリウム(KHF2):15〜20%、ホウ酸(H3BO3):40〜50%、ホウ砂(Na2B4O7):10±2%、ホウフッ化カリウム(KBF4):10±2%を配合したものがあるが、約50%以上はホウ酸やホウ砂などの酸化物である。常温から800℃の幅広い温度帯において酸化防止作用のあるホウ酸を主力として入れているが、清浄作用のあるフッ化物も最大40%近く入っている。しかしながら、100%フッ化物だけのフラックスはできていなかった。従来の蝋付けフラックスは固体フラックスのため塗布を容易にするために2〜3倍に薄めて蝋付け部だけでなく全体的に塗布することで酸化防止と脱亜鉛、脱カドミウム、脱スズを防止していた。銀蝋は銅合金と異種金属(SUS、鉄及び鉄合金などの特殊鋼)との蝋付けに使用されることが多いが、異種金属側の方が強い酸化膜を有するので、これを除去するためにはフラックスに多くのフッ化物を入れる必要があるものの、一方では蝋付け部の酸化を防止するには蝋付け部にガラス状に張り付きシールドするホウ酸(H3BO3)やホウ砂(Na2B4O7)の機能が必要であり必然的にフッ化物の含有量は制限せざるを得なかったのである。
本発明者は、本発明者による液体フラックスの製造方法を応用して、特願2010−165565号広報にて100%フッ化物を含有した液体フラックスを発明した。蝋材の固相線温度は500〜600℃で、液相線温度は550〜650℃が多いため常温から650℃(液相線温度)+50℃を保持すれば蝋付けできる。例えば、225℃で分解する酸性フッ化カリウム(KHF2)、200〜530℃で分解するホウフッ化カリウム(KBF4)、859.5〜1505℃で分解するフッ化カリウム((KF)などをうまく配合することで銀蝋の液相線温度である650±50℃間を清浄することが可能な液体フラックスを具現化することができた。蝋付け後の洗浄においても、ホウ酸ガラスなどの薄膜が生成しないので50〜70℃の湯洗浄で簡単に除去できる。従来の銀蝋用固体フラックスには50%以上のホウ酸酸化物が入っているためホウ酸ガラスが蝋付け部周辺に強く張り付く。このホウ酸ガラスを除去するため多額の洗浄費用を要している。従来の固体フラックスを使用した蝋付けの最大のネックがここにある。
銀蝋中に含有されている低融点元素の亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)は蒸発しやすく、特に主力の亜鉛が抜ける(イオン化蒸発)ため色調が斑の赤色化が発生する。銀蝋付け用気化フラックスとしてはこの脱亜鉛現象を抑える必要がある。銀蝋材BAGは大別すると、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)の入った蝋付け温度600〜850℃の比較的中温度領域で使用するBAG−1〜BAG−3、カドミウムを含まないで650〜980℃の高温度で使用するBAG−4〜BAG−26、スズの入ったBAG−7、BAG−28、BAG−34、BAG−36、BAG−37に大別される。このように銀蝋材も温度領域や接合材によって多くの種類があるので、一種類のフラックスで全ての銀蝋材に対応するのは不可能である。BAG−1〜BAG−3は脱亜鉛と脱カドミウム(Cd)を防ぐ目的で3〜4種類のフッ化物とともにホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)とホウフッ化カドミウム(Cd(BF4)2)を両方合わせて最大15%入る。亜鉛、カドミウムの蒸発を抑えるため赤色の斑色が全く出ない。
例として表1にBAG−1〜3用の液体フラックスを示す。フッ化物としてKHF2、KBF4、KFを選択し、低融点金属の蒸発を抑えるためのホウフッ化物としてホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)、ホウフッ化カドミウム(Cd(BF4)2を含有した液体フラックスを示す。本液体フラックスを蝋付け部に塗布するかもしくは気化せしめて気化フラックスとして蝋付け中に蝋付け部に吹き付けることにより、酸化防止、清浄作用、脱亜鉛、脱カドミウムを防止できる。
Figure 2012055922
例として表2にBAG7,28,34,36,37用の液体フラックスを示す。フッ化物としてKHF2、KBF4、KFを選択し、低融点金属の蒸発を抑えるためホウフッ化物としてZn(BF4)2、Sn(BF4)2を含有した液体フラックスである。本液体フラックスを蝋付け部に塗布するかもしくは気化せしめて気化フラックスとして蝋付け中に蝋付け部に吹き付けることにより、酸化防止、清浄作用、脱亜鉛、脱スズを防止できる。
Figure 2012055922
例として表3にBCuZn−0〜7用の液体フラックスを示す。銅及び黄銅蝋はBCuZn−1〜BCuZn−7に大別される。BCuZn−1とBCuZn−2は主として純銅に近いため銅に銅の蝋付けは一般にしないため省略し、BCuZn−3〜7の黄銅蝋を目的とする。黄銅蝋は銅、亜鉛(30〜40%)、スズ(1〜4%)、Ni(9〜11%)が入っているため蝋付け温度も800〜980℃と高温となる。そのためフッ化物として、KHF2、KBF4、KF、(CH3O)3B、K2SiF6を選択し、Zn(BF4)2、Sn(BF4)2を最大15wt%入れることで脱亜鉛、脱スズが可能となる。
Figure 2012055922
例として表4にBCuP−1 〜6用の液体フラックスを示す。リン銅蝋はBCuP−1〜BCuP−6に分かれるが主成分の銅に対してPが4.5〜7.7%、Agが1.8〜15.5%入っているため液相線720℃〜固相線645℃の間に入り蝋付け温度も690〜930℃と比較的中温度蝋付けとなる。リン銅は液相温度950℃、固相温度645℃でありこの広い温度範囲をカバーするためのフッ化物としては、ホウフッ化カリウム(KBF4、融点200、沸点530℃)、フッ化カリウム(KF、融点859.5、沸点1505℃)、フッ化水素カリウム(KHF2、225℃にて分解)を選択し、ホウフッ化銅(Cu(BF4)2)もしくはステアリン酸銅Cu(CH3(CH3)16COO)2を5〜15wt%加える。この液体フラックスをアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで気化フラックスとして作用させることにより蝋付け面の黒色を帯びた酸化銅ができることを防ぐ。
Figure 2012055922
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記混合フッ化物が5〜10wt%のホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)を含有している液体フラックスである。
特願2010−165565号広報の発明を基にPHの調整を具現化したものである。一般にフッ化物はPH3〜5の酸性であり、フッ化物主体の液体フラックスはPH4〜5の酸性を示す。そのため、PH8〜9であるホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)を5〜10%入れることによりPH6〜7に調整する。フッ化物主体のフラックスが接合部周辺に残留すると発錆の問題となる。残留フラックスは洗浄で簡単に洗い落とせるが、洗浄の手間を省略するにはフラックス自体を中性にしておけばよい。蝋付け作業は自動化が急速に進展しており洗浄工程の削減は更なる自動化に繋がる技術である。
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、アルコールやアセトンなどの前記溶媒にアミン、アミド類を5〜10wt%添加した液体フラックスである。
液体フラックスの溶媒であるメチルアルコール(沸点64.8℃、氷点65℃)、アセトン(沸点56.5℃、氷点15℃)は沸点が低く極めて蒸発しやすく、含有物より先に蒸発する蒸発むらという現象を作るため気化フラックスが生成するにつれて液体フラックスが次第に濃縮して含有物が析出する問題がある。溶媒としてアミン、アミド類を5〜10%添加することで、アルコールやアセトンが蒸発してもアミン、アミド類が残留することにより溶解成分を溶媒中に長時間安定的に保つことが可能となった。アミン(amine)とは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で1つ以上置換した化合物の名称である。置換した数が1つであれば第一級アミン、2つであれば第二級アミン、3つであれば第三級アミンという。また、アルキル基が第三級アミンに結合して第四級アンモニウムイオンとなる。アンモニアもアミンに属する。アミドとは有機化合物の分類のひとつでオキソ酸とアンモニアあるいは1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つものを指す。カルボン酸アミド、スルホンアミド、リン酸アミドなどがある。
例えば、ジエチルアミン塩酸塩((C2H3)NH・HCl)(沸点320〜330℃、融点226℃)などの有機化合物やリン酸エステル(トリメチルホスフェート(P(OCH3)3)、沸点180〜105℃)、トリフェニルホスフェート(P(OC6H5)3、沸点300℃)、トリクレジルホスフェート(P(OC6H4CH3)3、沸点420℃)などを5〜10%加えることで溶媒の蒸発を抑えることができる。コストを下げるため炭酸ジアミドである尿素(CO(NH2)2))(昇華温度132℃)を添加するとBAG1やBAG1aなどの融点の低い銀蝋には適する。
第4の解決手段は特許請求項4及び図1に示すように、前記液体フラックス1を気化装置2に充填し、プロパン(C3H6)やアセチレン(C2H2)などの燃焼ガスを吹き込んで気化せしめて前記気化フラックスとして、蝋付け炉5のバーナー6に導き、前記蝋付け炉5を加熱しながら前記気化フラックスを吹き込んで蝋付けする蝋付け方法である。
通常蝋付け炉5は酸素タンク3に充填した酸素と燃焼ガスタンク4に充填したアセチレンやプロパンなどの燃焼ガスをバーナー6に導いて燃焼させることにより加熱している。酸素やガスは配管9,10,11によってバーナー6に導かれる。酸素の代わりに空気を吹き込んでもよい。気化装置2は特開2009−255105号広報「気化装置」によって製作できる。気化装置2に燃料タンク4に充填したアセチレンやプロパンなどの燃料ガスを吹き込むことにより液体フラックス1は気化するとともに燃料ガスとともにバーナー6に導かれる。燃焼ガスは酸素とともに燃焼し蝋付け炉5を加熱するが気化フラックスは蝋付け炉5に充満して被蝋付け材8a、8bと蝋材7の酸化防止や清浄作用の機能を発揮する。以上の構成により、蝋付け炉5の加熱と同時に気化フラックスを吹き込んで蝋付けを行うことにより個体フラックスを事前に蝋付け部及びその周辺に塗布することなく蝋付けを行うことができる。
第5の解決手段は特許請求項5及び図2に示すように、前記液体フラックス1を気化装置2に充填し、該気化装置2にアルゴン(Ar)や窒素(N)などの不活性ガスを吹き込んで前記液体フラックス1を気化せしめて前記気化フラックスとして、該気化フラックスを蝋付け炉5に吹き込みながら蝋付けすることを特徴とする蝋付け方法である。
蝋付け炉5はバーナー6や電気((図示せず)によって加熱される。不活性ガスはガスタンク12から配管10を通して気化装置2に導かれる。液体フラックス1は気化装置5で不活性ガスを吹き込むことで気化し気化フラックスとなり配管11を通して蝋付け炉に導かれる。気化装置2は特開2009−255105号広報「気化装置」によって製作できる。気化フラックスは蝋付け炉5に充満して被蝋付け材8a、8bと蝋材7の酸化防止や清浄作用の機能を発揮する。以上の構成により、蝋付け炉5の加熱と同時に気化フラックスを吹き込んで蝋付けを行うことによりフラックスを事前に蝋付け部及びその周辺に塗布することなく蝋付けを行うことができる。
第6の解決手段は特許請求項6及び図3に示すように、前記液体フラックス1を気化装置5に充填し、該気化装置5にアルゴン(Ar)や窒素(N)などの不活性ガスを吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて前記気化フラックスとして、蝋付け部に吹き付けながら蝋付けする蝋付け方法である。
不活性ガスはガスタンク12から配管10を通して気化装置2に導かれる。液体フラックス1は気化装置5で不活性ガスを吹き込むことで気化し気化フラックスとなり配管11を通して蝋付け部に導かれる。気化装置2は特開2009−255105号広報「気化装置」によって製作できる。蝋材7をトーチ13によって加熱しながら気化フラックスをノズル14から吹き出しては被蝋付け材8a、8bと蝋材7の酸化防止や清浄作用の機能を発揮する。以上の構成により、蝋材を事前に蝋付け部及びその周辺に塗布することなく蝋付けを行うことができる。
1 :液体フラックス
2 :気化装置
3 :酸素タンク
4 :燃焼ガスタンク
5 :気化装置
6 :バーナー
7 :蝋材
8a:被蝋付け材
8b:被蝋付け材
9 :配管
10:配管
11:配管
12:ガスタンク
13:トーチ

Claims (6)

  1. カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(AL)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種または2種以上のフッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70wt%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンなどの溶媒に溶解した液体フラックスにおいて、前記調合フッ化物がホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)もしくはホウフッ化スズ(Sn(BF4)2)もしくはホウフッ化カドミウム(Cd(BF4)2)もしくはホウフッ化銅(Cu(BF4)2)もしくはステアリン酸銅Cu(CH3(CH3)16COO)2のいずれか1種もしくは2種以上組み合わせて5〜15wt%含有していることを特徴とする液体フラックス。
  2. 前記調合フッ化物がホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)を5〜10wt%含有していることを特徴とする請求項1記載の液体フラックス。
  3. 前記溶媒にアミン、アミド類を5〜10wt%添加したことを特徴とする請求項1及び請求項2記載の液体フラックス。
  4. 前記液体フラックスを気化装置に充填し、プロパン(C3H6)やアセチレン(C2H2)などの燃焼ガスを吹き込んで気化せしめて前記気化フラックスとして、蝋付け炉のバーナーに導き、前記蝋付け炉を加熱しながら前記気化フラックスを吹き込んで蝋付けすることを特徴とする蝋付け方法。
  5. 前記液体フラックスを前記気化装置に充填し、該気化装置にアルゴン(Ar)や窒素(N)などの不活性ガスを吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて前記気化フラックスとして、該気化フラックスを蝋付け炉に吹き込みながら蝋付けすることを特徴とする蝋付け方法。
  6. 前記液体フラックスを前記気化装置に充填し、該気化装置にアルゴン(Ar)や窒素(N)などの不活性ガスを吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて前記気化フラックスとして、蝋付け部に吹き付けながら蝋付けすることを特徴とする蝋付け方法。
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