JP2012052830A - 微量セルの温度校正方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】角セル内の温度(T1、T2・・・)を変化させ(S10)、その温度毎にスペクトルが作成される(S12)。スペクトルの主成分スコアを特性値(A1、A2・・・)として算出する(S14、S16)。キャピラリーセル内の温度とスコアとの値をプロットし検量線とする(S18)。キャピラリーホルダ内の温度(T1、T2・・・)を変化させ(S20)、その温度毎にスペクトルが作成される(S22)。同様の手順で特性値(A1、A2・・・)を算出し(S24)、検量線(検量式)を用いることによりキャピラリーセル内の温度(T0 1、T0 2・・・)を求める(S26)。キャピラリーセル内の温度とキャピラリーホルダ内の温度とをプロットして校正曲線(校正式)とする。
【選択図】図9
Description
そのため、温度センサーをキャピラリーセルに差し込むことなくキャピラリーセル内の温度測定をしなくてはならない。
角セルを使った測定ではメルティング温度が89.07℃と得られたが、キャピラリーセルで行った測定では、91.72℃となり、2.65℃の食い違いが生じた。これはキャピラリーセル内の温度がキャピラリーホルダ内の温度と一致していないことを示している。この偏りは、キャピラリーセルが石英製で温度が伝わりにくいためキャピラリーホルダの温度がキャピラリーセルに十分伝わりきれないか、あるいはキャピラリーセルの形状が非常に細い円筒状の形状であるため周囲の空気の影響を受けやすく、温度が伝わる過程で変わってしまったことなどによる系統誤差である。
そして、キャピラリーホルダの温度を徐々に変化させていき、そのつど、本発明に係る測定方法を用いてキャピラリーセル(微量セル)内の温度を測定し、キャピラリーホルダ内の温度とキャピラリーセル内の温度とを、温度及び測定値(吸光度)を軸としたX−Y平面上にプロットしていくことにより校正曲線が得られる。この校正曲線を利用すれば、キャピラリーホルダ内の温度を校正し、キャピラリーセル内の温度を求めることができる。
容積が小さく直接容器内に温度センサーが挿入不能な微量セルと、該微量セル及び温度センサーを固定するキャピラリーホルダと、該キャピラリーホルダ内の温度を計測する温度センサーとを内部に含んだ試料室を備えた測定装置を用いた温度校正方法において、
前記微量セル内に温度変化に伴い色彩が変化するサーモクロミズム特性を示す試料を入れ、前記キャピラリーホルダ内の温度を複数回変化させ、温度を変化させる毎に該サーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルを測定して該スペクトルを分析することにより前記微量セル内の温度を測定し、
前記キャピラリーホルダ内の温度と前記微量セル内の温度との相関関係により校正曲線を作成し、該校正曲線を用いて前記キャピラリーホルダ内の温度を前記微量セル内の温度に校正することを特徴としている。
多項式の変数に前記キャピラリーホルダ内の温度を変化させたときの温度を従属変数とし、温度と前記スペクトルとを関連付ける特性値を独立変数としてそれぞれ代入し、
前記多項式の各項の係数を調整して前記校正曲線に近似させることにより校正式を得て、該校正式を用いて前記キャピラリーホルダ内の温度を前記微量セル内の温度に校正するのが好適である。
特性値の算出方法としては、例えば、スペクトルの所定の波長範囲にベースラインを設定し、所定の波長間隔でスペクトルからベースラインを差し引くことによりスペクトルの数値データを得る。これらのスペクトル値列を主成分分析し、固有ベクトルと各ベクトルとの内積により主成分スコアを計算してそれを特性値として設定する。そして、この特性値とサーモクロミズム特性を示す試料の温度をプロットすることにより検量線を得る。
温度センサーが挿入可能な光学セル内に前記サーモクロミズム特性を示す試料を入れてスペクトル測定し、
サーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルの所定の波長又は波数範囲にベースラインを設定し、所定の間隔で該スペクトルから該ベースラインを差し引くことによりスペクトル値を得て、これらのスペクトル値列を主成分分析し、主成分スコアを計算して前記スペクトルの特性値としており、
前記サーモクロミズム特性を示す試料の温度を複数回変化させ、前記サーモクロミズム特性を示す試料の温度を変える毎に同様の手順により主成分スコアを計算して特性値を計算し、検量線を表示するためのX−Y平面上の一つの軸をサーモクロミズム特性を示す試料の温度とし、もう一つの軸を対応する主成分スコアとしてプロットすることにより検量線を得て、該検量線を用いてサーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルからサーモクロミズム特性を示す試料の温度を測定するのが好適である。
多項式の変数に前記容器内の温度を変化させたときの温度を従属変数とし、主成分スコアを独立変数としてそれぞれ代入し、
前記多項式の各項の係数を調整して前記検量線に近似させることにより検量式を得て、該検量式を用いてサーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルからサーモクロミズム特性を示す試料の温度を測定するのが好適である。
なお、塩化コバルトは2つの化学種の間の化学平衡の移動によってスペクトルが変化する性質を持ち、肉眼では室温付近では赤色、高温では青色を示す。
本発明の方法を用いた光学的装置の構成について説明する。
本発明の方法を用いた光学的装置は、試料室内に図1に示された細い円筒状の容器であるキャピラリーセル10と、キャピラリーセル10と温度センサーとを固定するキャピラリーホルダ12と、温度センサーを挿入するための温度センサー用挿入口14と、キャピラリーセル10内の塩化コバルトへ光源からの光を透過させるための光路上に設けられた光路窓16とを備える。
次に塩化コバルト水溶液の吸収スペクトルの測定について説明する。0.1molの硫酸コバルトと4.5molの塩化ナトリウムを含む1Lの水溶液を調整し、これを石英製の2mmの角セルに入れ、分光光度計+ペルチェ恒温セルホルダの装置にセットし、20℃から110℃まで0.5℃/分の速さで温度を上げながら1℃ごとに可視部の吸収スペクトルを測定した。
このとき塩化コバルト水溶液の温度を角セル内に温度センサーを入れて測定した。得られた91本のスペクトルのうち、20℃と100℃のものを図2に示した。温度が変化することによりスペクトルの形状と大きさが顕著に変化していることがわかる。
次にこれらのスペクトルを温度と関連づけるための、スペクトルの「特性値」を計算した。特性値としてはスペクトルの特徴を反映し、温度と関連づけられるものなら様々な方法で算出することができる。例えば、短波長側(例えば500nm付近)と長波長側(680nm付近)のピーク比、短波長側(例えば500nm付近)と長波長側(680nm付近)の面積比、スペクトル面積、スペクトルの重心波長などが考えられる。ただし、スペクトルには温度とは直接関係していない変動、偏りなども含まれる可能性があり、特性値の選び方によっては信頼性に差が生じる。また、変動、偏りとして、スペクトルのベースラインの変動、水溶液の濃度の変化に起因する大きさの変動などが考えられる。
各スペクトルで410nmと780nmを直線で結んでベースラインとして差引き、ついで450nmから700nmまでを5nm毎に平均し、できた51個のスペクトルデータに対して51/(データ値の総和)をかけて規格化して解析用のデータ点列とした。この操作の様子を図3に示した。上図が20℃の場合で、下図が100℃の場合を示している。
そこで、第1主成分の固有ベクトルと各ベクトルとの内積により主成分スコアを計算し、これを特性値とすることにした。この主成分スコアと実測の温度に対してプロットしたものが、スペクトルと温度の関係を示した検量線となる。このときの検量線を図5に示した。
この検量線を使うと、塩化コバルト水溶液のスペクトルからその温度を求めることができる。ただし、毎回図から温度を読み取るのは面倒で手間がかかり、読み取り誤差が含まれることもあるので、多項式でフィッティングし、コンピュータ上で計算できるようにした。多項式としては5次式程度が好適である。図5の検量線について5次式を当てはめた場合の各項の係数を図6に示した。
次に、キャピラリーホルダの温度からキャピラリーセル内の温度に換算する校正曲線を作成する。そのためにキャピラリーセルに全く同じ塩化コバルト水溶液を入れ、同じ測定をした。このとき温度センサーはキャピラリーホルダに取付け、その温度を測定する。また、得られた各温度でのスペクトルに検量線を作成したときと同様の操作をおこない、ベクトルを取り出した。それらと第1主成分の固有ベクトルとの内積をとって主成分スコアを算出した。そして、この主成分スコアを検量式に代入して温度を算出した。このようにして算出されたキャピラリーセル内の温度と、そのときのキャピラリーホルダ内の温度とをそれぞれ軸としてX−Y平面上にプロットすることにより、キャピラリーホルダの温度からキャピラリーセル内の温度に校正する校正曲線が作成される。そのときの校正曲線を図7に示した。
毎回図から温度を読み取るのは面倒で手間がかかり、読み取り誤差が含まれることもあるので、検量式と同様に多項式でフィッティングし、コンピュータ上で計算できるようにした。こちらも多項式としては5次程度が好適である。
図7の校正曲線について5次式を当てはめた場合の各項の係数を図8に示した。
図9に本発明に係る方法の処理フローを示した。
本発明の方法における処理フローは大きく分けて2つに分けられる。角セルでの測定ではサーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルと角セル内の温度との関係から検量線(検量式)が求められる。
また、キャピラリーセルでの測定では作成された検量線(検量式)を用いて、ホルダ内の温度とキャピラリーセル内の温度との関係を示す校正曲線(校正式)が求められる。
12・・・キャピラリーホルダ
14・・・温度センサー用挿入口
16・・・光路窓
18a、18b・・・レンズ
Claims (4)
- 容積が小さく直接容器内に温度センサーが挿入不能な微量セルと、該微量セル及び温度センサーを固定するキャピラリーホルダと、該キャピラリーホルダ内の温度を計測する温度センサーとを内部に含んだ試料室を備えた測定装置を用いた温度校正方法において、
前記微量セル内に温度変化に伴い色彩が変化するサーモクロミズム特性を示す試料を入れ、前記キャピラリーホルダ内の温度を複数回変化させ、温度を変化させる毎に該サーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルを測定して該スペクトルを分析することにより前記微量セル内の温度を測定し、
前記キャピラリーホルダ内の温度と前記微量セル内の温度との相関関係により校正曲線を作成し、該校正曲線を用いて前記キャピラリーホルダ内の温度を前記微量セル内の温度に校正することを特徴とする温度校正方法。 - 請求項1の方法において、
多項式の変数に前記キャピラリーホルダ内の温度を変化させたときの温度を従属変数とし、温度と前記スペクトルとを関連付ける特性値を独立変数としてそれぞれ代入し、
前記多項式の各項の係数を調整して前記校正曲線に近似させることにより校正式を得て、該校正式を用いて前記キャピラリーホルダ内の温度を前記微量セル内の温度に校正することを特徴とする温度校正方法。 - 請求項1の方法において、
温度センサーが挿入可能な光学セル内に前記サーモクロミズム特性を示す試料を入れてスペクトル測定し、
サーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルの所定の波長又は波数範囲にベースラインを設定し、所定の間隔で該スペクトルから該ベースラインを差し引くことによりスペクトル値を得て、これらのスペクトル値列を主成分分析し、主成分スコアを計算して前記スペクトルの特性値としており、
前記サーモクロミズム特性を示す試料の温度を複数回変化させ、前記サーモクロミズム特性を示す試料の温度を変える毎に同様の手順により主成分スコアを計算して特性値を計算し、検量線を表示するためのX−Y平面上の一つの軸をサーモクロミズム特性を示す試料の温度とし、もう一つの軸を対応する主成分スコアとしてプロットすることにより検量線を得て、該検量線を用いてサーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルからサーモクロミズム特性を示す試料の温度を測定することを特徴とする温度校正方法。 - 請求項3の方法において、
多項式の変数に前記容器内の温度を変化させたときの温度を従属変数とし、主成分スコアを独立変数としてそれぞれ代入し、
前記多項式の各項の係数を調整して前記検量線に近似させることにより検量式を得て、該検量式を用いてサーモクロミズム特性を示す試料のスペクトルからサーモクロミズム特性を示す試料の温度を測定することを特徴とする温度校正方法。
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