JP2012052258A - 抗菌性繊維シート - Google Patents
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Abstract
【課題】特に白癬菌に対して優れた抗菌効果を発揮し、且つ、湿気等に対しても優れた耐食性を兼ね備え、その効果を長期間にわたって持続的に発揮することができる抗菌性繊維シートを提供すること。
【解決手段】合成繊維からなる布帛の少なくとも一方の面に金属膜を被覆した繊維シートにおいて、かかる金属膜がCu、Zn、Niからなる合金1であり、その金属組成比は、Cuが40重量%〜80重量%、Zn及びNiがそれぞれ10重量%〜30重量%であることを特徴とする抗菌性繊維シート。
【選択図】図1
【解決手段】合成繊維からなる布帛の少なくとも一方の面に金属膜を被覆した繊維シートにおいて、かかる金属膜がCu、Zn、Niからなる合金1であり、その金属組成比は、Cuが40重量%〜80重量%、Zn及びNiがそれぞれ10重量%〜30重量%であることを特徴とする抗菌性繊維シート。
【選択図】図1
Description
本発明は、特に白癬菌に対して優れた抗菌性を有し、水虫の感染、悪化を防止するのに効果を発揮し、しかも耐食性に優れ、長期の使用においても意匠性を損なわない抗菌性繊維シートに関するものである。更には、抗白癬菌効果を有する履物用の中敷等として有効に使用できる抗菌性繊維シートの提供に関するものである。
近年、密閉性の高い靴を履いて仕事をすることが多い中高年の男性を始め、ファッション性や流行から、一年を通して気密性の高いブーツ等を着用する若い女性が非常に多くなっている。それに伴い、特に水虫(足白癬)への感染者数が急激に増えていると言われている。水虫は真菌(カビ)の一種である白癬菌が原因でおこる感染症である。
白癬菌は皮膚の角質成分であるケラチンを栄養源としており、他のカビ類と同様、高温多湿の環境を好むため、皮膚が汗ばみ蒸れた状態になりやすい足部などで容易に増殖・感染し、水虫の症状を引き起こす。一般には、ジメジメと湿気の多い梅雨時、夏場であっても一日中、また、住居内やホテル、旅館などで、感染者が使用したバスルームの足拭きマットやスリッパなどを介して、他者へ感染していくのである。
このような白癬菌に対して、銅は極めて優れた抗菌作用を有することが知られており、この抗菌効果を利用した靴の中敷等が水虫防止用として提案されている。例えば、特公昭52−18256号公報では、銅板を用いて構成された靴の中敷が開示されている。また、特開昭63−158002号公報では、溶射により50〜100μm厚さに銅のコーティングを施したものが開示されている。
しかしながら、上記の銅板を用いるもの(特公昭52−18256号公報)では、銅板が厚くフレキシブル性に欠けるため、使用感が悪いという欠点がある。特開昭63−158002号公報によるものでも、十分なフレキシブル性が得られない。しかも、銅は優れた抗菌性を有するものの耐食性に乏しいため、長期の使用により銅が酸化して劣化、変色し、抗菌性が低下するという問題が内在し、更には、薄くて軽量な抗菌性材料の提供の強い要求のあることが判明したのである。
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであり、上記した従来の問題点を解決し、白癬菌等に対する抗菌効果と耐食性とを有する履物用の中敷等の足用シートとして有効に使用できる抗菌性繊維シートを提供することを目的とするものである。
そして、本発明は、そのような課題を有利に解決するために、合成繊維からなる布帛の少なくとも一方の面に金属膜を被覆した繊維シートにおいて、該金属膜がCu、Zn、Niを含有する合金からなる金属膜であることを特徴とする抗菌性繊維シートに関するものである。
尚、かかる本発明の抗菌性繊維シートにあっては、その好ましい態様は以下の通りである。
1)合成繊維からなる布帛の少なくとも一方の面に金属膜を被覆した繊維シートにおいて、該金属膜がCu、Zn、Niを含有する合金からなる金属膜である。
2)前記金属膜の付着量が、3μg/cm2〜200μg/cm2である。
3)前記金属膜の組成は、Cuが40重量%〜80重量%、Zn及びNiがそれぞれ10重量%〜30重量%である。
4)前記金属膜が、スパッタリング法によって形成されたものである。
5)合成繊維からなる布帛が、目付け20g/m2〜200g/m2の不織布である。
1)合成繊維からなる布帛の少なくとも一方の面に金属膜を被覆した繊維シートにおいて、該金属膜がCu、Zn、Niを含有する合金からなる金属膜である。
2)前記金属膜の付着量が、3μg/cm2〜200μg/cm2である。
3)前記金属膜の組成は、Cuが40重量%〜80重量%、Zn及びNiがそれぞれ10重量%〜30重量%である。
4)前記金属膜が、スパッタリング法によって形成されたものである。
5)合成繊維からなる布帛が、目付け20g/m2〜200g/m2の不織布である。
後述する表1の結果から明らかなように、金属膜としてCu、Zn、Niからなる合金を採用した本発明に従う抗菌性繊維シート(実施例1乃至実施例3)にあっては、高湿度環境において白癬菌に対して優れた抗菌性と優れた耐食性、外観維持性能を有する。これら効果は長期間持続的に発揮するため、水虫の予防が大いに図られる。
また、通気性を有する不織布等に金属膜を薄く形成するため、通気性が維持されたまま靴の中敷として、あるいは、スリッパや他の中敷に貼着して用いれば、剥離することなく足の感触が良好で、抗菌効果を発揮することができる。
更に、抗菌性繊維シート自体が薄いため、履いたときに違和感がなく、足になじみ易く感触も快適な構造にすることができ、オールシーズン心地よく利用できる、優れた靴用中敷の提供を可能にするものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
合成繊維からなる布帛としては不織布、織物、編物、あるいはこれらを組み合わせた複合繊維体を用いることができる。
合成繊維からなる布帛としては不織布、織物、編物、あるいはこれらを組み合わせた複合繊維体を用いることができる。
不織布の素材としては、重合系高分子素材、縮合系高分子素材等を用いることができる。中でも、不織布と金属膜との密着性や、不織布にした際のシート特性、高湿度環境における耐久性に優れるポリエステルが、不織布の素材として好適である。
また、不織布の製法としては、スパンボンド、スパンレース、ニードルパンチ、サーマルボンド、ケミカルボンド等を用いることができるが、履物の中敷用としてのコスト、シート特性の観点から、スパンボンド法による不織布がより好ましい。
また、不織布の製法としては、スパンボンド、スパンレース、ニードルパンチ、サーマルボンド、ケミカルボンド等を用いることができるが、履物の中敷用としてのコスト、シート特性の観点から、スパンボンド法による不織布がより好ましい。
不織布は、目付け20g/m2〜200g/m2のものが好ましい。更に、目付け50g/m2〜100g/m2のものがより好ましい。目付けが20g/m2未満の場合は、靴の中敷用シートとしての機械的強度に欠け、不適である。一方、目付けが200g/m2を超える場合は、シートの通気性が得られず、且つ重くなってしまうため、快適性の観点から不適である。
Cu、Zn、Niを含有する金属膜の組成比は、Cuが40重量%〜80重量%、Zn及びNiがそれぞれ10重量%〜30重量%であることが好ましい。ZnとNiの含有量が合わせて60重量%を超え、Cuが40重量%未満になると、白癬菌に対して十分な抗菌効果が得られなくなり、好ましくない。一方、Cuの含有量が80重量%を超え、ZnとNiが合わせて20重量%未満になると、湿気等に対する耐食性が悪化するため、やはり好ましくない。
かかる金属膜を形成する方法としては、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの真空薄膜形成方法を用いることができる。また、Cu、Zn、Niの微粒子をバインダ及び溶剤などを用いて分散させた塗工剤を塗布し、90℃〜160℃で乾燥硬化させて形成してもよい。
そして、本発明においては、これらの中でも、特にCu、Zn、Niからなる合金ターゲットを用いてスパッタリング法で形成する場合、合金ターゲットの組成に近い金属膜が得られることから、より好ましい。
かかる金属膜を形成する際のスパッタリング法としては、例えば、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等を用いることができる。
尚、上述したスパッタリング法による金属膜の形成方式としては、バッチ方式、或いはロール・ツー・ロ−ル方式の何れにおいても可能であるが、生産性に優れ、製造コストを低く抑えることができるロール・ツー・ロ−ル方式がより好ましい。
また、金属膜は、単位面積当たりの金属(Cu、Zn、Ni)の付着量が、3μg/cm2〜200μg/cm2となるように作製されるべきである。これは、付着量が3μg/cm2未満の場合、抗菌性の効果が乏しくなる恐れがあり、その一方で、付着量を200μg/cm2以上にしても、抗菌性はさほど向上しないためコストだけが増加し、経済的ではないからである。尚、Cu、Zn、Niの付着量は、蛍光X線分析によって測定されるものを意味する。
以下に実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、そのような実施例の記載によって、本発明が何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上述の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
−実施例1−
スパンボンド法で作製されたポリエステル製不織布からなる繊維シート(目付け100g/m2)を乾燥させた後、スパッタリング装置のチャンバ内にセットし、真空度:7×10−3Paまでチャンバ内を排気した。次いで、チャンバ内にアルゴンガスを導入して、チャンバ内の圧力を2Paに調整し、直流電力を300W印加して、プレスパッタリングを20分間実施した。その後、シャッターを開けて、繊維シートの一方の面にスパッタリングを実施して、Cu:Zn:Ni=8:1:1の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
スパンボンド法で作製されたポリエステル製不織布からなる繊維シート(目付け100g/m2)を乾燥させた後、スパッタリング装置のチャンバ内にセットし、真空度:7×10−3Paまでチャンバ内を排気した。次いで、チャンバ内にアルゴンガスを導入して、チャンバ内の圧力を2Paに調整し、直流電力を300W印加して、プレスパッタリングを20分間実施した。その後、シャッターを開けて、繊維シートの一方の面にスパッタリングを実施して、Cu:Zn:Ni=8:1:1の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
−実施例2−
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=6:2:2の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=6:2:2の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
−実施例3−
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=4:3:3の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=4:3:3の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
−比較例1−
実施例1と同様の手法に従って、Cuのみを30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
実施例1と同様の手法に従って、Cuのみを30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
−比較例2−
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=9:0.5:0.5の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=9:0.5:0.5の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
−比較例3−
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=2:4:4の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
実施例1と同様の手法に従って、Cu:Zn:Ni=2:4:4の合金を30μg/cm2付着せしめることにより、抗菌性繊維シートを得た。
−比較例4−
繊維シートそのものを比較例4とした。
繊維シートそのものを比較例4とした。
以上の実施例及び比較例において得られた抗菌性繊維シートについては、下記の各手法に従って、その特性を測定及び評価した。
−高湿度環境による抗菌性繊維シートの外観変化の評価−
得られた抗菌性繊維シートを、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に1000時間投入した。しかる後に試料を取り出し、変色や脱色等、合金からなる金属膜の外観変化を、以下の基準に従って目視評価した。
○:金属膜に、外観変化は認められなかった。
×:金属膜に、外観変化が認められた。
得られた抗菌性繊維シートを、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に1000時間投入した。しかる後に試料を取り出し、変色や脱色等、合金からなる金属膜の外観変化を、以下の基準に従って目視評価した。
○:金属膜に、外観変化は認められなかった。
×:金属膜に、外観変化が認められた。
−白癬菌に対する抗菌性の評価−
試験菌株:Trichophyton mentagrophytes NBRC-6124 (白癬菌)
JIS−L−1902の菌液吸収法に従い、抗菌性繊維シート試料0.3gをオートクレーブで滅菌処理後、1.1×105CFU/mlになる様に1/20ニュートリエント培地で調製した菌液0.2mlを試料に接種し、37℃・18時間で保存後、生菌数を測定した。尚、高湿度環境による金属膜の変化が抗菌性に及ぼす影響を検討するため、各試料を温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に1000時間投入する前及び投入した後のそれぞれで抗菌性試験を測定した。耐湿性を考慮に入れた抗菌性の評価は、以下の基準に従って実施した。
○:生菌数が、未加工品の生菌数の1/10以下である。且つ、高湿度負荷後の生菌数を高湿度負荷前の生菌数で除した値が、2以下である。
×:生菌数が、未加工品の生菌数の1/10以上である。又は、高湿度負荷後の生菌数を高湿度負荷前の生菌数で除した値が、2以上である。
試験菌株:Trichophyton mentagrophytes NBRC-6124 (白癬菌)
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○:生菌数が、未加工品の生菌数の1/10以下である。且つ、高湿度負荷後の生菌数を高湿度負荷前の生菌数で除した値が、2以下である。
×:生菌数が、未加工品の生菌数の1/10以上である。又は、高湿度負荷後の生菌数を高湿度負荷前の生菌数で除した値が、2以上である。
評価のまとめを表1に記す。
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従う抗菌性繊維シート(実施例1乃至実施例3)においては、高湿度環境に対して優れた外観維持性能を有すると同時に、白癬菌に対しても抗菌性を発揮することが認められた。一方、比較例1及び比較例2においては、高湿度環境に対する外観維持性能が十分ではなかった。また、比較例1にあっては、高湿度負荷による抗菌性の低下が著しい。比較例3においては、高湿度環境に対する外観維持性能は十分であったものの、銅の含有量が少ないため、白癬菌に対する抗菌作用が十分には認められなかった。
1 Cu、Zn、Niの合金からなる金属膜
2 不織布等からなる繊維シート
3 靴底、スリッパまたは既存の中敷に貼着するための粘着層
4 靴底、スリッパまたは既存の中敷
2 不織布等からなる繊維シート
3 靴底、スリッパまたは既存の中敷に貼着するための粘着層
4 靴底、スリッパまたは既存の中敷
Claims (5)
- 合成繊維からなる布帛の少なくとも一方の面に金属膜を被覆した繊維シートにおいて、該金属膜がCu、Zn、Niを含有する合金からなる金属膜であることを特徴とする、抗菌性繊維シート。
- Cu、Zn、Niの合金からなる金属膜の付着量が3μg/cm2〜200μg/cm2である、請求項1に記載の抗菌性繊維シート。
- 前記金属膜の組成比は、Cuが40重量%〜80重量%、Zn及びNiがそれぞれ10重量%〜30重量%であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の抗菌性繊維シート。
- 前記金属膜がスパッタリング法で形成されたことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の抗菌性繊維シート。
- 合成繊維からなる布帛が目付け20g/m2〜200g/m2の不織布である、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の抗菌性繊維シート。
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JP2010195121A Pending JP2012052258A (ja) | 2010-08-31 | 2010-08-31 | 抗菌性繊維シート |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2012052258A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015123741A (ja) * | 2013-12-27 | 2015-07-06 | 積水ナノコートテクノロジー株式会社 | 表面に合金層を有する繊維布 |
JP2015131996A (ja) * | 2014-01-14 | 2015-07-23 | 株式会社Shカッパープロダクツ | スパッタリングターゲット材及び配線積層体 |
JP2020001389A (ja) * | 2018-06-20 | 2020-01-09 | 積水化学工業株式会社 | 繊維シート |
-
2010
- 2010-08-31 JP JP2010195121A patent/JP2012052258A/ja active Pending
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JP2015123741A (ja) * | 2013-12-27 | 2015-07-06 | 積水ナノコートテクノロジー株式会社 | 表面に合金層を有する繊維布 |
JP2015131996A (ja) * | 2014-01-14 | 2015-07-23 | 株式会社Shカッパープロダクツ | スパッタリングターゲット材及び配線積層体 |
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