JP2012052009A - 環状リンウレタン化合物、難燃剤、樹脂組成物、及び電気電子機器用筐体 - Google Patents

環状リンウレタン化合物、難燃剤、樹脂組成物、及び電気電子機器用筐体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ブリードアウトしにくく、樹脂組成物に使用した場合に、成形性に優れ、更に吸水率の低下に寄与することができる、新規な環状リン化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】例えば下記化合物のような、ウレタン結合を有する環状リンオリゴマー。
Figure 2012052009

【選択図】なし

Description

本発明は、環状リンウレタン化合物、難燃剤、樹脂組成物、及び電気電子機器用筐体に関する。
電気電子機器用筐体などに使用される樹脂組成物には、発熱発火等を防ぐために難燃性を付与することが必要とされており、種々の難燃剤が使用されている。
リン含有化合物は難燃剤又は可塑剤として、樹脂組成物に広く使用されている。
特許文献1には、特定構造の環状リン化合物が難燃剤として使用できることが記載されている。
特許文献2には、特定構造の環状リン化合物とポリカーボネートなどの樹脂とを含有する難燃性樹脂組成物が記載されている。
特開2010−59145号公報 特開2010−53195号公報
しかしながら、特許文献1又は2に記載された環状リン化合物を含む樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体は、吸水率が高く、歪みや変形を生じやすいという問題がある。
また、特許文献1又は2に記載された環状リン化合物は、ブリードアウトしやすいという問題がある。
本発明は、難燃性に優れ、ブリードアウトしにくく、樹脂組成物に使用した場合に、成形性に優れ、更に吸水率の低下に寄与することができる、新規な環状リン化合物を提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、様々な用途に用いることができ、成形性に優れ、かつ吸水性、難燃性、及び耐ブリードアウト性に優れる成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することである。
更に、本発明の別の目的は、該樹脂組成物を成形して得られる成形体から構成される電気電子機器用筐体を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した。
[1]
下記一般式(I)で表される構造単位、及び下記一般式(II)で表される構造単位を含む化合物。
Figure 2012052009
一般式(I)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
は、水素原子、置換若しくは無置換のアリール基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。
n1、n2、n3、及びn4は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Figure 2012052009
一般式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
n6及びn7は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
*は結合部位を表す。
一般式(II)中、Lは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換の2価の複素環基、又はこれらを組み合わせて得られる2価の基を表す。
[2]
一般式(I)におけるRが水素原子、無置換のアリール基、又は前記一般式(III)で表される基である、上記[1]に記載の化合物。
[3]
前記一般式(I)で表される構造単位の含有量と前記一般式(II)で表される構造単位の含有量の比が、モル比で30:70〜70:30である、上記[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]
質量平均分子量が500〜10000の範囲内である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5]
上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物である難燃剤。
[6]
上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を含有する樹脂組成物。
[7]
上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を樹脂組成物の全固形分に対して、4〜20質量%含有する、上記[6]に記載の樹脂組成物。
[8]
更に、セルロース系樹脂を含有する上記[6]又は[7]に記載の樹脂組成物。
[9]
前記セルロース系樹脂を樹脂組成物の全固形分に対して、41〜61質量%含有する、上記[8]に記載の樹脂組成物。
[10]
更に、セルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する上記[8]又は[9]に記載の樹脂組成物。
[11]
前記セルロース系樹脂がセルロースエステルである、上記[8]又は[9]に記載の樹脂組成物。
[12]
前記セルロースエステルが、セルロースジアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートである、上記[11]に記載の樹脂組成物。
[13]
前記セルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリアミド、及びポリカーボネートのいずれか少なくとも1種である上記[10]に記載の樹脂組成物。
[14]
更に、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、金属酸化物及び金属水酸化系難燃剤からなる群より選択された1種以上の難燃剤を含有する上記[6]〜[13]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[15]
更に、フッ素系樹脂を含有する上記[6]〜[14]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[16]
上記[6]〜[15]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を加熱成形して得られる成形体から構成される電気電子機器用筐体。
本発明によれば、難燃性に優れ、ブリードアウトしにくく、樹脂組成物に使用した場合に、成形性に優れ、更に及び吸水率の低下に寄与することができる、新規な環状リン化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、様々な用途に用いることができ、成形性に優れ、かつ吸水性、難燃性、及び耐ブリードアウト性に優れる成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。
更に、本発明によれば、該樹脂組成物を成形して得られる成形体から構成される電気電子機器用筐体を提供することができる。
本発明は、下記一般式(I)で表される構造単位、及び下記一般式(II)で表される構造単位を含む化合物(以下、環状リンウレタン化合物ともいう)に関する。
該環状リンウレタン化合物は、典型的には重合体であり、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
Figure 2012052009
一般式(I)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
は、水素原子、置換若しくは無置換のアリール基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。
n1、n2、n3、及びn4は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Figure 2012052009
一般式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
n6及びn7は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
*は結合部位を表す。
一般式(II)中、Lは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換の2価の複素環基、又はこれらを組み合わせて得られる2価の基を表す。
1.環状リンウレタン化合物
本発明における環状リンウレタン化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位、及び前記一般式(II)で表される構造単位を含む。
本発明における環状リンウレタン化合物は、リン含有率が高い骨格であるため難燃性に優れ、剛直な環状リン構造を有し、該環状リン構造が樹脂の隙間に入り込み、吸水性を低下することができると考えられる。該環状リンウレタン化合物はこれらの特性を有するため、例えば樹脂組成物に種々の機能を付与するための添加剤として幅広い用途が期待されるが、好ましくは難燃剤又は可塑剤として、より好ましくは難燃剤として使用することができる。
一般式(I)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
、R、R、及びRがハロゲン原子を表す場合、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
、R、R、及びRがアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、直鎖又は分岐のいずれの構造を有してもよく、不飽和結合を持っていてもよい。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
、R、R、及びRがシクロアルキル基を表す場合、該シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数5〜10、更に好ましくは炭素数6〜8のシクロアルキル基である。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられ、シクロヘキシル基、又はシクロヘプチル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
、R、R、及びRがアリール基を表す場合、該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、更に好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、アントリル基などが挙げられ、特に好ましくはフェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基であり、最も好ましくはフェニル基である。
、R、R、及びRがアルコキシ基を表す場合、該アルコキシ基におけるアルキル基の部分の好ましい範囲は、前記R、R、R、及びRがアルキル基を表す場合の好ましい範囲と同様である。
、R、R、及びRが複素環基を表す場合、該複素環基は芳香族複素環基であることが好ましく、炭素数4〜20の芳香族複素環基であることがより好ましい。複素環としては具体的にはピリジル基、チエニル基などが好ましい。
、R、R、及びRがアミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は複素環基を表す場合、これらは更に置換されていてもよく、該更なる置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、又はスルホン酸基が挙げられる。
、R、R、及びRが複数存在する場合、互いに同一でも異なってもよい。
一般式(I)において、n1、n2、n3、及びn4は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。成形性向上の観点から、n1、n2、n3、及びn4は0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
一般式(I)において、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアリール基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。
Figure 2012052009
一般式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
n6及びn7は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
*は結合部位を表す。
がアリール基を表す場合、アリール基の好ましい範囲は、前記R、R、R、及びRがアリール基を表す場合の好ましい範囲と同様である。
がアリール基を表す場合は、更に置換基を有してもよく、該置換基としては、前記R、R、R、及びRがアルキル基、又はアリール基を表す場合に有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
一般式(III)において、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
該R及びRが表すアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は複素環基の具体例及び好ましい範囲としては、前記R、R、R、及びRがアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は複素環基を表す場合の具体例及び好ましい範囲と同様である。また、これらが有してもよい置換基も同様である。
及びRが複数存在する場合、互いに同一でも異なってもよい。
一般式(III)において、n6及びn7は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。吸水性改良の観点から、n6及びn7は0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
吸水性改良の観点から、一般式(I)におけるRとしては、水素原子、置換若しくは無置換のアリール基、又は一般式(III)で表される基であるが、水素原子、無置換のアリール基、又は一般式(III)で表される基がより好ましく、吸水性改良の観点から無置換のアリール基、又は一般式(III)で表される基が更に好ましく、一般式(III)で表される基が特に好ましい。
次に、一般式(II)について説明する。
Figure 2012052009
一般式(II)中、Lは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換の2価の複素環基、又はこれらを組み合わせて得られる2価の基を表す。
一般式(II)中、Lがアルキレン基を表す場合、該アルキレン基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、2−エチルヘキシレン基、tert−ブチレン基、イソヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ステアリレン基などが挙げられ、他の樹脂との相溶性向上の観点から好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基であり、より好ましくはヘキシレン基である。
Lがシクロアルキレン基を表す場合、該シクロアルキレン基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数5〜12、更に好ましくは炭素数6〜8のシクロアルキレン基である。具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などが挙げられ、相溶性向上の観点から好ましくはシクロヘキシレン基である。
Lがアリーレン基を表す場合、該アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基である。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられ、相溶性向上の観点から好ましくはフェニレン基である。
Lが2価の複素環基を表す場合、該2価の複素環基は2価の芳香族複素環基であることが好ましく、炭素数4〜20の2価の芳香族複素環基であることがより好ましい。2価の複素環基としては具体的にはピリジレン基、チエニレン基などが好ましい。
Lは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換の2価の複素環基を組み合わせて得られる2価の基でもよい。該組み合わせて得られる2価の基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基と置換若しくは無置換のアリーレン基とを組み合わせて得られる2価の基であることが好ましく、具体的には、炭素数1〜5のアルキレン基とフェニレン基を組み合わせて得られる2価の基であることが好ましく、メチレン基とフェニレン基とを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。該アルキレン基は更に置換されていてもよく、該更なる置換基としてはフッ素原子が好ましい。
Lは更に置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素)、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シリル基、シアノ基、アミノ基及びアシルアミノ基などが挙げられる。これらの置換基は可能であれば更に置換されていてもよく、該更なる置換基としても上記と同様なものが挙げられる。Lが有してもよい置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくはハロゲン原子であり、更に好ましくはフッ素原子である。該置換基の炭素数は0〜30が好ましく、0〜20がより好ましい。
Lは、吸水抑制の観点から、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせて得られる2価の基であり、より好ましくは、アルキレン基、又はアルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の基である。
本発明における環状リンウレタン化合物中、前記一般式(I)で表される構造単位の含有率は、吸水性改良の観点から、全構造単位に対して、30〜70モル%が好ましく、45〜60モル%がより好ましい。
本発明における環状リンウレタン化合物中、前記一般式(II)で表される構造単位の含有率は、相溶性向上の観点から、全構造単位に対して、30〜70モル%が好ましく、45〜60モル%がより好ましい。
本発明における環状リンウレタン化合物中、前記一般式(I)で表される構造単位の含有量と前記一般式(II)で表される構造単位の含有量の比は、吸水性と成形性の観点から、モル比で30:70〜70:30が好ましく、40:60〜60:40がより好ましく、1:1であることが更に好ましい。
本発明における環状リンウレタン化合物は、下記一般式(IV)で表される構造単位を含むものであることが好ましい。
Figure 2012052009
一般式(IV)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。
n1、n2、n3、及びn4は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Lは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換の2価の複素環基、又はこれらを組み合わせて得られる2価の基を表す。
Figure 2012052009
一般式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
n6及びn7は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
*は結合部位を表す。
一般式(IV)におけるR、R、R、R、R、n1、n2、n3、n4、及びLは、前記一般式(I)又は(II)におけるR、R、R、R、R、n1、n2、n3、n4、及びLと同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。
一般式(III)における、R、R、n6、及びn7の具体例及び好ましい範囲は前記と同様である。
本発明における環状リンウレタン化合物中、前記一般式(IV)で表される構造単位の含有率は、吸水抑制と相溶性の両立の観点から、全構造単位に対して、30〜100モル%が好ましく、60〜100モル%がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
本発明における環状リンウレタン化合物の主鎖の末端は、ヒドロキシル基又はアシル基(脂肪族アシル基又は芳香族アシル基)であることが好ましい。すなわち、末端となる一般式(I)又は(II)に水素原子、アルキル基、又はアリール基が結合していることが好ましい。該アルキル基としては、炭素数1〜11のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が好ましく、吸水抑制の観点からメチル基(すなわち環状リンウレタン化合物の末端がアセチル基)がより好ましい。該アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基が好ましく、吸水抑制と相溶性の観点からフェニル基(すなわち環状リンウレタン化合物の末端がベンゾイル基)がより好ましい。
本発明における環状リンウレタン化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位、及び一般式(II)で表される構造単位以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。該その他の構造単位としては、アルキレングリコール由来の構造単位、カーボネート結合を有する構造単位、アミン由来の構造単位などが挙がられる。
本発明における環状リンウレタン化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位、及び一般式(II)で表される構造単位以外のその他の構造単位を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、含む場合は、本発明における環状リンウレタン化合物中、その他の構造単位の含有率は、全構造単位に対して高成形性を維持するという理由から、5〜40モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましい。
本発明における環状リンウレタン化合物に含まれる構造単位の構造及び割合(共重合比)は、GPC装置や核磁気共鳴装置(NMR)などにより決定することができる。
本発明における環状リンウレタン化合物の分子量は、相溶性向上の観点から、質量平均分子量(Mw)で500〜10000の範囲が好ましく、550〜6000がより好ましく、600〜3000が更に好ましい。
質量平均分子量はより詳細には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求められる。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用できる。
本発明における環状リンウレタン化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
Figure 2012052009
Figure 2012052009
本発明における環状リンウレタン化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位、及び一般式(II)で表される構造単位に対応する各モノマーを重合させることで得ることができる。
前記一般式(I)で表される構造単位に対応するモノマーとしては、下記一般式(1M)で表される化合物が好ましい。
本発明においては、一般式(IM)で表される化合物を1種用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
Figure 2012052009
一般式(IM)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
は、水素原子、置換若しくは無置換のアリール基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。
n1、n2、n3、及びn4は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Figure 2012052009
一般式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
n6及びn7は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
*は結合部位を表す。
一般式(IM)におけるR、R、R、R、R、n1、n2、n3、及びn4は、前記一般式(I)におけるR、R、R、R、R、n1、n2、n3、及びn4と同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。
一般式(III)における、R、R、n6、及びn7の具体例及び好ましい範囲は前記と同様である。
一般式(IM)で表される化合物は、特開2010−59145号公報、特開2010−53195号公報などに記載の公知の方法によって合成することもできるし、市販されているものを用いることもできる。
前記一般式(II)で表される構造単位に対応するモノマーとしては、ジイソシアネートが好ましい。
本発明においては、ジイソシアネートを1種用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジイソシアネートは、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8の脂肪族ジイソシアネートである。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられ、吸水抑制の観点から、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートである。
本発明で好ましく用いられる芳香族ジイソシアネートとしては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、更に好ましくは炭素数6〜10の芳香族ジイソシアネートであり、具体的には1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネートが挙げられ、吸水抑制の観点から、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートが好ましい。
2.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は前記環状リンウレタン化合物を含有する。
前記環状リンウレタン化合物は、リン含有率が高い骨格であるため、樹脂組成物及び該樹脂組成物から得られる成形体の難燃性の向上に寄与することができると考えられる。
前記環状リンウレタン化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位と前記一般式(II)で表される構造単位とからなる、水素結合可能であるウレタン結合を含むため、樹脂組成物の成形性の向上に寄与できると考えられる。
また、前記環状リンウレタン化合物は、剛直な環状リン構造を有するため成形体の樹脂との隙間に入りこむことによって吸湿抑制の向上に寄与できると考えられる。
本発明の樹脂組成物は、更に前記環状リンウレタン化合物以外の樹脂を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物が含有してもよい環状リンウレタン化合物以外の樹脂としては、セルロース系樹脂、又はセルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、環状リンウレタン化合物と、セルロース系樹脂と、セルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物に含まれる環状リンウレタン化合物の含有量は特に限定されない。好ましくは環状リンウレタン化合物を樹脂組成物の全固形分に対して、4〜20質量%、より好ましくは6〜20質量%、更に好ましくは7〜16質量%、特に好ましくは7.5〜15質量%含有する。この範囲とすることで、成形性、吸水率、耐ブリードアウト性に優れる樹脂組成物、及び成形体を得ることができるため好ましい。
3.セルロース系樹脂
本発明の樹脂組成物はセルロース系樹脂を含有することが好ましい。
本発明における環状リンウレタン化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位と前記一般式(II)で表される構造単位とからなるウレタン結合を含むため、セルロース系樹脂(好ましくはセルロースエステル)と相溶しやすく、成形性、吸水率、及び耐ブリードアウト性の観点で優れた樹脂組成物が得られると考えられる。
本発明におけるセルロース系樹脂としては、特に限定はないが、セルロースエーテル(例えばエチルセルロースなど)、セルロースエステル、又はセルロースエーテルエステル(例えば後述するA)炭化水素基、B)アシル基:−CO−RB1とアルキレンオキシ基:−RB2−O−とを含む基(RB1は炭化水素基を表し、RB2は炭素数が3のアルキレン基を表す。)、及びC)アシル基:−CO−R(Rは炭化水素基を表す。)を有するセルロース誘導体)が好ましく、相溶性の観点からセルロースエステルであることが好ましい。セルロースエステルは、通常、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、コットンリンターパルプ等のセルロースをエステル化して製造されている。
本発明におけるセルロース系樹脂としては1種でも、2種以上を併用してもよい。
セルロースエステルは、セルロースをアシル化剤と反応させる慣用のエステル化方法により生成でき、必要に応じてケン化又は熟成工程を経て製造できる。セルロースエステルは、通常、パルプ(セルロース)を活性化剤により活性化処理(活性化工程)した後、硫酸などの触媒を用いてアシル化剤によりエステル(トリエステルなど)を調製し(アシル化工程)、ケン化(加水分解)・熟成によりエステル化度を調整する(ケン化・熟成工程)ことにより製造できる。セルロースアセテートの場合は、例えば、硫酸触媒法、酢酸法、メチレンクロライド法等の慣用の方法で製造できる。
アシル化工程におけるアシル化剤の割合は、所望のアシル化度(酢化度など)となる範囲で選択でき、例えば、パルプ(セルロース)100質量部に対して230〜300質量部、好ましくは240〜290質量部、更に好ましくは250〜280質量部程度である。なお、セルロースアセテートの場合、アシル化剤としては、例えば、無水酢酸などが使用できる。
アシル化又は熟成触媒としては、通常、硫酸が使用される。硫酸の使用量は、通常、セルロース100質量部に対して、0.5〜15質量部、好ましくは5〜15質量部、更に好ましくは5〜10質量部程度である。また、ケン化・熟成の温度は、40〜160℃の範囲から選択でき、例えば、50〜70℃程度である。
更に、残留した硫酸を中和するために、アルカリで処理してもよい。
セルロースエステルとしては、例えば、有機酸エステル[セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のセルロースと炭素数2〜6のカルボン酸エステルなど]、混合エステル(セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースと炭素数2〜6のジカルボン酸エステルなど)、グラフト体(ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテートなど)、無機酸エステル(硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等)、有機酸・無機酸混合エステル(硝酸酢酸セルロースなど)等が例示される。
本発明においては、これらのセルロースエステルのうち、有機酸で修飾されたセルロース有機酸エステルが好ましく、炭素数2〜12の有機酸で修飾されたセルロース有機酸エステルがより好ましい。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどが好ましく、セルロースアセテートがより好ましく、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテートが更に好ましく、揮散性及び吸水率の観点からセルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテートが特に好ましく、セルロースジアセテートが最も好ましい。
セルロースエステルのアシル置換度は耐衝撃性の観点から2.7以下であることが好ましく、2.65以下であることがより好ましく、2.6以下であることが更に好ましい。アシル置換度は1〜2.7が好ましく、1.3〜2.65がより好ましく、1.5〜2.6が更に好ましい。
セルロースアセテートの場合、平均酢化度30〜62.5%程度の範囲から選択でき、通常、平均酢化度43.7〜62.5%(アセチル基の平均置換度1.7〜3)、好ましくは45〜62.5%(平均置換度1.8〜3)、更に好ましくは48〜62.5%(平均置換度2〜3)程度である。
セルロースエステルの重合度は、特に制限されず、粘度平均重合度200〜400、好ましくは250〜400、更に好ましくは270〜350程度である。粘度平均重合度は特開平9−77801号公報、〔0018〕〜〔0019〕に記載の方法で測定することができる。
本発明におけるセルロースエステルは公知の方法で製造することができる。また、市販品を使用することもできる。例えば、セルロースアセテートプロピオネートとして、イーストマンケミカル社製、「482−20(アセチル置換度:0.1、プロピオニル置換度:2.5、Mn:73000、Mw:234000)」が、セルロースジアセテートとして、ダイセル化学製、「L−70(アセチル置換度:2.45、Mn:65000、Mw:200000)」、「L−40(アセチル置換度:2.45)」、セルローストリアセテートとして、ダイセル化学製、「FRM(アセチル置換度:2.79、Mn:66000、Mw:186000)」などがある。
本発明において、セルロース系樹脂としては以下のA)、B)及びC)を含有するセルロース誘導体であってもよい。
A)炭化水素基、
B)アシル基:−CO−RB1とアルキレンオキシ基:−RB2−O−とを含む基(RB1は炭化水素基を表し、RB2は炭素数が3のアルキレン基を表す。)、及び、
C)アシル基:−CO−R(Rは炭化水素基を表す。)を有する。
すなわち、本発明におけるセルロース誘導体は、セルロース{(C10}に含まれる水酸基の水素原子の少なくとも一部が、前記A)炭化水素基、前記B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基、及び前記C)アシル基(−CO−R)により置換されている。
より詳細には、前記セルロース誘導体は、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有する。
Figure 2012052009
上記式において、R2A、R3A及びR6Aは、それぞれ独立に、水素原子、A)炭化水素基、B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基、又はC)アシル基(−CO−R)を表す。RB1及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。RB2は炭素数が3のアルキレン基を表す。但し、R2A、R3A、及びR6Aの少なくとも一部が炭化水素基を表し、R2A、R3A、及びR6Aの少なくとも一部がアシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基を表し、R2A、R3A、及びR6Aの少なくとも一部がアシル基(−CO−R)を表す。
前記セルロース誘導体は、上記のようにβ−グルコース環の水酸基の少なくとも一部がA)炭化水素基、B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基、及びC)アシル基(−CO−R)によってエーテル化及びエステル化されていることにより、熱可塑性を発現することができ、成形加工に適したものとすることができる。
また、このセルロース誘導体は、水不溶性であり、成形体としても優れた強度及び耐熱性を発現することができる。更には、セルロースは完全な植物由来成分であるため、カーボンニュートラルであり、環境に対する負荷を大幅に低減することができる。
ここで、本発明でいう「水に不溶である」とは、25℃の水100質量部への溶解度が5質量部以下であることとする。
なお、前記「セルロース」とは、多数のグルコースがβ−1,4−グリコシド結合によって結合した高分子化合物であって、セルロースのグルコース環における2位、3位、6位の炭素原子に結合している水酸基が無置換であるものを意味する。また、「セルロースに含まれる水酸基」とは、セルロースのグルコース環における2位、3位、6位の炭素原子に結合している水酸基を指す。
前記セルロース誘導体は、その全体のいずれかの部分に前記A)炭化水素基、B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基、及びC)アシル基(−CO−R)を含んでいればよく、同一の繰り返し単位からなるものであってもよいし、複数の種類の繰り返し単位からなるものであってもよい。また、前記セルロース誘導体は、ひとつの繰り返し単位において前記A)〜C)の置換基をすべて含有する必要はない。
より具体的な態様としては、以下の態様が挙げられる。
(1)R2A、R3A及びR6Aの一部が、A)炭化水素基で置換されている繰り返し単位と、R2A、R3A及びR6Aの一部が、B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基で置換されている繰り返し単位と、R2A、R3A及びR6Aの一部が、C)アシル基(−CO−R)で置換されている繰り返し単位と、から構成されるセルロース誘導体。
(2)ひとつの繰り返し単位のR2A、R3A及びR6AのいずれかがA)炭化水素基、B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基、及びC)アシル基(−CO−R)で置換されている(すなわち、ひとつの繰り返し単位中に前記A)〜C)の置換基をすべて有する)同種の繰り返し単位から構成されるセルロース誘導体。
(3)前記A)〜C)の置換基の置換位置や置換基の種類が異なる繰り返し単位が、ランダムに結合しているセルロース誘導体。
また、セルロース誘導体の一部には、無置換の繰り返し単位(すなわち、前記一般式(1)において、R2A、R3A及びR6Aすべてが水素原子である繰り返し単位)を含んでいてもよい。
A)炭化水素基は、脂肪族基及び芳香族基のいずれでもよい。脂肪族基である場合は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
A)炭化水素基は、脂肪族基が好ましく、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(低級アルキル基)である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基等が挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましい。
前記アシル基(−CO−RB1)において、RB1は炭化水素基を表す。RB1は、脂肪族基及び芳香族基のいずれでもよい。脂肪族基である場合は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
B1は、好ましくはアルキル基又はアリール基である。RB1は、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、更により好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数1又は2のアルキル基(すなわち、メチル基又はエチル基)である。
具体的には、RB1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基等が挙げられる。好ましくは、RB1はメチル基、エチル基、プロピル基である。
また、アルキレンオキシ基(−RB2−O−)において、炭素数が3のアルキレン基部分(RB2)は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。
具体的には、アルキレンオキシ基(−RB2−O−)としては下記構造が挙げられる。
Figure 2012052009
上記の中でも、アルキレン基部分が分岐状である下記式(1)又は(2)で表される基であることが好ましい。
Figure 2012052009
前記アルキレンオキシ基は、前記B)の基において複数含まれていてもよいが、好ましくは1である。複数含まれる場合は、炭素数が3のアルキレン基部分の構造は同一でも異なっていても良い。
また、アルキレンオキシ基のセルロース誘導体に対する結合向きは特に限定されないが、アルキレンオキシ基のアルキレン基部分がセルロース誘導体分子側(グルコース環側)に結合していることが好ましい。
前記B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基は、下記一般式(3)で表される構造を含む基であることが好ましい。
一般式(3)
Figure 2012052009
式中、RB1及びRB2は前記と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記B)の基は、アルキレンオキシ基を複数含んでいてもよいし、1つだけ含むものであってもよい。より具体的には前記B)の基は、下記一般式(1’)で表すことができる。
一般式(1’)
Figure 2012052009
式中、RB1及びRB2は前記と同義であり、好ましい範囲も同様である。nは1以上である。nの上限は特に限定されず、アルキレンオキシ基の導入量等により変わるが、例えば10程度である。
また、セルロース誘導体において、アルキレンオキシ基を1つだけ含む前記B)の基(上記式一般式(1’)においてnが1である基)と、アルキレンオキシ基を2以上含む前記B)の基(上記式一般式(1’)においてnが1である基)とが混合して含まれていてもよい。
C)アシル基(−CO−R)において、Rは炭化水素基を表す。Rが表す炭化水素基としては、前記RB1で挙げたものと同様のものを適用することができる。Rの好ましい範囲も前記RB1と同様である。
前記A)炭化水素基、前記RB1及び前記Rが表す炭化水素基、並びにRB2が表す炭素数が3のアルキレン基は、さらなる置換基を有していてもよいし無置換でもよいが、無置換であることが好ましい。
特に、RB1及びRがさらなる置換基を有する場合、水溶性を付与するような置換基、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基など、を含まないことが好ましい。これらの基を含まないことにより、水に不溶なセルロース誘導体及びそれらからなる成形材料が得られる。また、スルホン酸基、カルボキシル基などを有した場合、化合物安定性を悪化させることが知られており、特に熱分解を促進することからこれらの基を含まないことが好ましい。
前記A)炭化水素基、RB1、R、及びRB2がさらなる置換基を有する場合、さらなる置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(アルキル基部分の炭素数は好ましくは1〜5)、アルケニル基等が挙げられる。なお、前記A)炭化水素基、RB1、R、及びRB2がアルキル基以外である場合は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5)を置換基として有することもできる。
また、前記セルロース誘導体は、カルボキシル基等の水溶性の置換基を実質的に有さないことが好ましい。セルロース誘導体がカルボキシル基を実質的に有さないことにより、樹脂組成物を水不溶性とすることができ、成形性を向上させることができる。
なお、「カルボキシル基を実質的に有さない」とは、前記セルロース誘導体が全くカルボキシル基を有さない場合のみならず、前記セルロース誘導体が水に不溶な範囲で微量のカルボキシル基を有する場合を包含するものとする。例えば、原料であるセルロースにカルボキシル基が含まれる場合があり、これを用いて前記A)〜C)の置換基を導入したセルロース誘導体はカルボキシル基が含まれる場合があるが、これは「カルボキシル基を実質的に有さないセルロース誘導体」に含まれるものとする。
セルロース誘導体中のA)炭化水素基、B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基、及びC)アシル基(−CO−R)の置換位置、並びにβ−グルコース環単位当たりの各置換基の数(置換度)は特に限定されない。
例えば、A)炭化水素基の置換度DSa(繰り返し単位中、β−グルコース環の2位、3位及び6位の水酸基に対するA)炭化水素基の数)は、1.0<DSaであることが好ましく、1.0<DSa<2.5がより好ましい。
B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基の置換度DSb(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対するB)アシル基とアルキレンオキシ基を含む基の数)は、0<DSbであることが好ましく、0<DSb<1.0であることがより好ましい。0<DSbであることにより、溶融開始温度を低くできるので、熱成形をより容易に行うことができる。
C)アシル基(−CO−R)の置換度DSc(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対するC)アシル基の数)は、0.1<DScであることが好ましく、0.1<DSc<2.0であることがより好ましい。
上記のような範囲の置換度とすることにより、機械強度及び成形性等を向上させることができる。
また、セルロース誘導体中に存在する無置換の水酸基の数も特に限定されない。水素原子の置換度DSh(繰り返し単位中、2位、3位及び6位の水酸基が無置換である割合)は0〜1.5の範囲とすることができ、好ましくは0〜0.6とすればよい。DShを0.6以下とすることにより、熱成形材料の流動性を向上させたり、熱分解の加速・成形時の熱成形材料の吸水による発泡等を抑制させたりできる。
また、前記セルロース誘導体は、前記A)炭化水素基、B)アシル基(−CO−RB1)とアルキレンオキシ基(−RB2−O−)とを含む基、及びC)アシル基(−CO−R)以外の置換基を有しても良い。有してもよい置換基の例としては、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシプロポキシプロピル基、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基、ヒドロキシプロポキシプロポキシプロピル基が挙げられる。よって、セルロース誘導体が有するすべての置換基の各置換度の総和は3であるが、(DSa+DSb+DSc+DSh)は3以下である。
また、前記B)の基におけるアルキレンオキシ基の導入量はモル置換度(MS:グルコース残基あたりの置換基の導入モル数)で表される(セルロース学会編集、セルロース辞典P142)。アルキレンオキシ基のモル置換度MSは、0<MSであることが好ましく、0<MS≦1.5であることがより好ましく、0<MS<1.0であることが更に好ましい。MSが1.5以下(MS≦1.5)であることにより、耐熱性・成形性等を向上させることができ、熱成形材料に好適なセルロース誘導体が得られる。
前記セルロース誘導体の分子量は、数平均分子量(Mn)が5×10〜1000×10の範囲が好ましく、10×10〜500×10の範囲が更に好ましく、10×10〜200×10の範囲が最も好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、7×10〜10000×10の範囲が好ましく、15×10〜5000×10の範囲が更に好ましく、100×10〜3000×10の範囲が最も好ましい。この範囲の平均分子量とすることにより、成形体の成形性、力学強度等を向上させることができる。
分子量分布(MWD)は1.1〜10.0の範囲が好ましく、1.5〜8.0の範囲が更に好ましい。この範囲の分子量分布とすることにより、成形性等を向上させることができる。
前記数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
また、以上説明したセルロース誘導体のうち、特に以下の(1)及び(2)のセルロース誘導体は熱可塑性と機械強度(特に靭性)が非常に優れており、熱成形材料として特に有用である。
(1)a1)エチル基、b1)アシル基:−CO−Rb1(Rb1は炭化水素基を表す。)とアルキレンオキシ基:−Rb2−O−(Rb2は炭素数が3のアルキレン基を表す。)とを含む基、及びc1)アシル基:−CO−Rc(Rcは炭化水素基を表す。)を有する水に不溶なセルロース誘導体。
(2)a2)メチル基、b2)アシル基:−CO−Rb1(Rb1は炭化水素基を表す。)とアルキレンオキシ基:−Rb2−O−(Rb2は炭素数が3のアルキレン基を表す。)とを含む基、及びc2)アシル基:−CO−Rc(Rcは炭化水素基を表す。)を有するセルロース誘導体であって、セルロース誘導体の前記a)メチル基の置換度が1.1以上であり、前記アルキレンオキシ基のモル置換度(MS)が1.5以下であり、水に不溶であるセルロース誘導体。
上記Rb1及びRcが表す炭化水素基は、前記RB1で挙げたものと同様のものを適用することができる。Rb1及びRcの好ましい範囲も前記RB1と同様である。また、Rb2が表す炭素数が3のアルキレン基は前記RB2で挙げたものと同様のものを適用することができる。Rb2の好ましい範囲も前記RB2と同様である。
(1)の態様において、置換度等は特に限定されず、置換度の好ましい範囲は前述した範囲を適用することができる。
(2)の態様においては、a2)メチル基の置換度は、好ましくは1.1以上2.5以下であり、より好ましくは1.1以上2.0以下である。また、アルキレンオキシ基のモル置換度(MS)は、好ましくは0より大きく1.5以下であり、より好ましくは0.1以上1.2以下である。その他の置換度については特に限定されず、好ましい範囲は前述した範囲を適用することができる。
前記セルロース誘導体の製造方法は特に限定されず、セルロースを原料とし、セルロースに対しエーテル化及びエステル化することにより前記セルロース誘導体を製造することができる。セルロースの原料としては限定的でなく、例えば、綿、リンター、パルプ等が挙げられる。
好ましい製造方法の態様は、炭化水素基とヒドロキシプロピル基を有するヒドロキシプロピルセルロースエーテルに酸クロライド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化(アシル化)する工程を含む方法によって行うものである。
また、別の態様として、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテルにプロピレンオキサイド等によりエーテル化するか、又はセルロースにメチルクロライド、エチルクロライド等のアルキルクロライド/炭素数3のアルキレンオキサイド等を作用させた後、更に酸クロライド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化する工程を含む方法も挙げられる。
酸クロライドを反応させる方法としては、例えばCellulose 10;283−296,2003に記載の方法を用いることができる。
炭化水素基とヒドロキシプロピル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアリルセルロース、ヒドロキシプロピルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースである。
酸クロリドとしては、前記B)に含まれるアシル基及びC)アシル基に対応したカルボン酸クロライドを使用することができる。カルボン酸クロリドとしては、例えば、アセチルクロライド、プロピオニルクロライド、ブチリルクロリド、イソブチリルクロリド、ペンタノイルクロリド、2−メチルブタノイルクロリド、3−メチルブタノイルクロリド、ピバロイルクロリド、ヘキサノイルクロリド、2−メチルペンタノイルクロリド、3−メチルペンタノイルクロリド、4−メチルペンタノイルクロリド、2,2−ジメチルブタノイルクロリド、2,3−ジメチルブタノイルクロリド、3,3−ジメチルブタノイルクロリド、2−エチルブタノイルクロリド、ヘプタノイルクロリド、2−メチルヘキサノイルクロリド、3−メチルヘキサノイルクロリド、4−メチルヘキサノイルクロリド、5−メチルヘキサノイルクロリド、2,2−ジメチルペンタノイルクロリド、2,3−ジメチルペンタノイルクロリド、3,3−ジメチルペンタノイルクロリド、2−エチルペンタノイルクロリド、シクロヘキサノイルクロリド、オクタノイルクロリド、2−メチルヘプタノイルクロリド、3−メチルヘプタノイルクロリド、4−メチルヘプタノイルクロリド、5−メチルヘプタノイルクロリド、6−メチルヘプタノイルクロリド、2,2−ジメチルヘキサノイルクロリド、2,3−ジメチルヘキサノイルクロリド、3,3−ジメチルヘキサノイルクロリド、2−エチルヘキサノイルクロリド、2−プロピルペンタノイルクロリド、ノナノイルクロリド、2−メチルオクタノイルクロリド、3−メチルオクタノイルクロリド、4−メチルオクタノイルクロリド、5−メチルオクタノイルクロリド、6−メチルオクタノイルクロリド、2,2−ジメチルヘプタノイルクロリド、2,3−ジメチルヘプタノイルクロリド、3,3−ジメチルヘプタノイルクロリド、2−エチルヘプタノイルクロリド、2−プロピルヘキサノイルクロリド、2−ブチルペンタノイルクロリド、デカノイルクロリド、2−メチルノナノイルクロリド、3−メチルノナノイルクロリド、4−メチルノナノイルクロリド、5−メチルノナノイルクロリド、6−メチルノナノイルクロリド、7−メチルノナノイルクロリド、2,2−ジメチルオクタノイルクロリド、2,3−ジメチルオクタノイルクロリド、3,3−ジメチルオクタノイルクロリド、2−エチルオクタノイルクロリド、2−プロピルヘプタノイルクロリド、2−ブチルヘキサノイルクロリド等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば前記B)に含まれるアシル基及びC)アシル基に対応したカルボン酸無水物を使用することができる。このようなカルボン酸無水物としては、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、オクタン酸無水物、2−エチルヘキサン酸無水物、ノナン酸無水物等が挙げられる。
なお、前述したとおり、前記セルロース誘導体は置換基としてカルボン酸を有さないことが好ましいため、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸等、セルロースと反応させてカルボキシル基が生じる化合物を用いないことが好ましい。
そのほかの具体的な製造条件等は、常法に従うことができる。例えば、「セルロースの事典」131頁〜164頁(朝倉書店、2000年)等に記載の方法を参考にすることができる。
本発明の樹脂組成物がセルロース系樹脂を含有する場合、該セルロース系樹脂の含有量は特に限定されない。好ましくはセルロース系樹脂を樹脂組成物の全固形分に対して、41〜61質量%、より好ましくは41〜60質量%、更に好ましくは41〜52質量%、特に好ましくは42〜50質量%含有する。上記範囲とすることで、本発明の樹脂組成物はカーボンニュートラルな材料としての意義を有しつつ、成形性、吸水率、及び耐ブリードアウト性の観点で優れた成形体を得ることができる。
セルロース系樹脂は大気中の二酸化炭素と水とを原料として生成した植物由来の樹脂であるため、温暖化防止に貢献できる素材として、従来の石油由来の樹脂に代替し得る。また、セルロース系樹脂を含有することで、生分解性を示し、環境負荷の小さい樹脂組成物、及び成形材料として活用が期待される。
4.セルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂
本発明の樹脂組成物は前記環状リンウレタン化合物を含有するが、更に前記セルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。該熱可塑性樹脂を含有することで、成形性及び曲げ弾性率を更に向上させることができる。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1及びポリ−4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート及びその他の芳香族ポリエステル等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン12等のポリアミド、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリアセタール(ホモポリマー及び共重合体を含む)、ポリウレタン、芳香族及び脂肪族ポリケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性澱粉樹脂、ポリメタクリル酸メチルやメタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂、AES樹脂(エチレン系ゴム強化AS樹脂)、ACS樹脂(塩素化ポリエチレン強化AS樹脂)、ASA樹脂(アクリル系ゴム強化AS樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ビニルエステル系樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、ポリ乳酸などを挙げることができる。
なかでも、ポリアミド、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ乳酸が好ましく、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネートが更に好ましく、ポリアミド、ポリカーボネートが特に好ましい。ポリアミド、ポリカーボネートを併用した場合は特に、成形性が更に向上する。また、吸水率、耐ブリードアウト性といった性能にも優れる。
本発明における環状リンウレタン化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位と前記一般式(II)で表される構造単位とからなるウレタン結合を含むため、ウレタン結合又はアミド結合を有するポリウレタン又はポリアミド、更に、水素結合可能な構造であるエステル結合又はカーボネート結合を有するポリエステル又はポリカーボネートとの相溶性に優れ、従来の環状リン化合物では得られなかった、低吸水率かつ耐ブリードアウト性が達成できるものと考えられる。
本発明におけるセルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂は公知の方法で製造することができる。また、市販品を使用することもできる。例えば、ポリプロピレンとしては、日本ポリプロ(株)社製、「ノバテックPP MA3」が、ポリエステルとしては、BASF社製、「エコフレックス」が、ポリカーボネートとしては、帝人化成(株)社製、「パンライト L−1225Y」が挙げられる。ポリアミドとしては、アルケマ社製、「Rilsan B BMF O」が挙げられる。
本発明では、ポリカーボネートとして、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、及び芳香族−脂肪族ポリカーボネートのうちいずれも使用することができる。中でも芳香族ポリカーボネートがセルロースエステルとの相溶性、またそれらとの複合によって得られる樹脂の剛性・耐衝撃性・耐熱性のバランスに優れているという理由から好ましい。
本発明におけるセルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂の分子量は、数平均分子量で5000〜400000の範囲であり、好ましくは8000〜100000、より好ましくは10000〜100000である。数均分子量が10000以上であれば機械的強度が向上し、100000以下であれば成形性が向上する。数平均分子量はより詳細には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求められる。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用できる。
本発明の樹脂組成物におけるセルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されない。好ましくは該熱可塑性樹脂を樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは23〜55質量%、より好ましくは30質量%〜55質量%、更に好ましくは32〜55質量%、特に好ましくは40〜50質量%含有する。上記範囲とすることで、成形体の吸水率、及び耐ブリードアウト性を更に向上させることができる。
5.難燃剤
本発明の樹脂組成物は、更に、難燃剤を含有してもよい。難燃剤としては、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤及びその他の無機系難燃剤(好ましくは金属酸化物又は金属水酸化系難燃剤)から選択された1種以上の難燃剤を含むことが好ましい。これにより、燃焼速度の低下又は抑制といった難燃効果を向上させることができる。
上記難燃剤のなかでも、臭素系難燃剤及びリン系難燃剤が好ましく、リン系難燃剤が特に好ましい。
臭素系難燃剤としては、特に限定されることはなく、常用のものを用いることができる。例えば、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモフタレートエステル、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロモビスフェノールA又はその誘導体、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー又はポリマー、臭素化フェノールノボラックエポキシなどの臭素化エポキシオリゴマー又はポリマー、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー又はポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート及びその反応体、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N’−エチレン−ビス−テトラブロモテレフタルイミド、臭素化トリアジン、トリブロモスチレン及びその反応体、トリブロモフェニルマレイミド及びその反応体などが挙げられる。
これらの臭素系難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系難燃剤としては、他の難燃剤と比較して、曲げ弾性率や耐衝撃性の低下が抑制されるという利点がある。
リン系難燃剤としては、特に限定されることはなく、常用のものを用いることができる。例えば、リン酸エステル、リン酸縮合エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物が挙げられる。
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどを挙げることができる。
リン酸縮合エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物などの芳香族リン酸縮合エステル等を挙げることができる。
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表1族〜14族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン等が挙げられる。
また、前記以外にも、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドを挙げることができる。
これらのリン系難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのリン系難燃剤は公知の方法で製造することができる。また、市販品を使用することもでき、例えば、「PX−200、1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学製)」を挙げることができる。
窒素系難燃剤としては、含窒素硫酸塩、スルファミン酸塩、メラミンシアヌレートなどを挙げることができる。
含窒素硫酸塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸ジメチルアミン、硫酸トリメチルアミン、硫酸ジエチルアミン、硫酸トリエチルアミン、硫酸ジフェニルアミン、硫酸トリフェニルアミン、硫酸グアニジン、硫酸グアニル尿素、硫酸メラミン又はその組み合わせが挙げられ、中でも、硫酸トリエチルアミン、硫酸グアニジン、硫酸グアニル尿素、硫酸メラミン又はその組み合わせが挙げられる。なかでも、硫酸メラミン、硫酸グアニジンがより好ましく、硫酸メラミンが更に好ましい。
スルファミン酸塩としては、分子中に窒素原子を2個以上有するものが挙げられる。具体的にはスルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸グアニル尿素、スルファミン酸メラミン、スルファミン酸ジメチルアミン、スルファミン酸トリメチルアミン、スルファミン酸ジエチルアミン、スルファミン酸トリエチルアミン、スルファミン酸トリフェニルアミン又はその組み合わせが挙げられる。なかでも、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸グアニル尿素、スルファミン酸メラミン又はその組み合わせが好ましく、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸グアニル尿素、スルファミン酸ジエチルアミン、スルファミン酸トリエチルアミンがより好ましく、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸グアニル尿素が更に好ましい。
これらの窒素系難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーン系難燃剤としては、二次元又は三次元構造の有機ケイ素化合物、ポリジメチルシロキサン、又はポリジメチルシロキサンの側鎖又は末端のメチル基が、水素原子、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基で置換又は修飾されたもの、いわゆるシリコーンオイル、又は変性シリコーンオイルが挙げられる。
置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、又はトリフロロメチル基等が挙げられる。
これらのケイ素含有難燃剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤以外のその他の難燃剤としては、無機系難燃剤が好ましく、金属酸化物又は金属水酸化系難燃剤がより好ましい。例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛等の無機系難燃剤を用いることができる。これらのその他の難燃剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
本発明の樹脂組成物において、難燃剤の含有量は限定的でないが、樹脂組成物の全固形分に対して、5〜15質量%であることが好ましく、7〜10質量%であることがより好ましい。含有量がこの範囲であると、難燃性に加え、曲げ弾性率の向上の観点から好ましい。
6.フッ素系樹脂
本発明の樹脂組成物は、更にフッ素系樹脂を含有することが好ましい。成形体が燃焼した場合のドリップを防止し、更に高度な難燃性を得るためである。
フッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体が好ましく、更にはポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましく用いられる。ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂の分子量は10万〜1000万の範囲のものが好ましく、とくに10万〜100万の範囲のものがより好ましく、本発明の押出成形性と難燃性にとくに効果がある。ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製の“テフロン(登録商標)”6−J、“テフロン(登録商標)”6C−J、“テフロン(登録商標)”62−J、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製の“フルオン”CD1やCD076などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体の市販品としては、三菱レイヨン(株)から、“メタブレン(登録商標)”Aシリーズとして市販され、“メタブレン(登録商標)”A−3000、“メタブレン(登録商標)”A−3800などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレンの“テフロン(登録商標)”6−Jなどは凝集し易いため、他の樹脂組成物と共にヘンシェルミキサーなどで機械的に強く混合すると凝集により塊が生じる場合があり、混合条件によってはハンドリング性や分散性に課題がある。一方、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体は前記のハンドリング性や分散性に優れ、とくに好ましく用いられる。前記のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体とは、限定されるものではないが、特開2000−226523号公報で開示されているポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体などが挙げられ、前記の有機系重合体としては芳香族ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、及びシアン化ビニル系単量体を10質量%以上含有する有機系重合体などであり、それらの混合物でもよく、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は0.1質量%〜90質量%であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物におけるフッ素系樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。この範囲とすることで、成形性への影響を抑えながら難燃性をより向上させることができる。
7.酸化防止剤
本発明の樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、炭酸カルシウム系酸化防止剤を挙げることができ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」、住友化学社製「スミライザーGP」等)とリン系酸化防止剤(旭電化社製「PEP−36」)を用いることが好ましい。
本発明の樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は限定的でないが、樹脂組成物の全固形分に対して、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10質量%である。この範囲とすることにより、着色性改良の観点から好ましい。
8.可塑剤
本発明の樹脂組成物は更に可塑剤を含有することが好ましい。これにより、成形性を向上させることができる。
可塑剤としては、ポリマーの成形に常用されるものを用いることができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジンなどの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸若しくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネート、グリセリントリベンゾエート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)などのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコールなどのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、及び末端エーテル変性化合物等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール等が挙げられる。
可塑剤としては、質量平均分子量は500以上が好ましく、600〜4000がより好ましく、800〜2000が特に好ましい。可塑剤の平均分子量がこの範囲にあると、セルロースエステルとの相溶性が高まり、分散性が向上し、ブリードアウト抑制効果が高い。
本発明の樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、10〜30質量%が好ましく、12〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%が特に好ましい。含有量がこの範囲であると、曲げ弾性率、耐熱性、耐吸湿率の向上の観点から好ましい。
9.その他の添加剤、及び成形体
本発明の樹脂組成物は、上記した成分のほか、必要に応じて、フィラー(強化材)等の種々の添加剤を含有していてもよい。
本発明の樹脂組成物は、フィラー(強化材)を含有してもよい。フィラーを含有することにより、樹脂組成物によって形成される成形体の機械的特性を強化することができる。
フィラーとしては、公知のものを使用できる。フィラーの形状は、繊維状、板状、粒状、粉末状等いずれでもよい。また、無機物でも有機物でもよい。
具体的には、無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の繊維状の無機フィラーや;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが挙げられる。
有機フィラーとしては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維等の合成繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、マニラ麻、亜麻、リネン、絹、ウール等の天然繊維、微結晶セルロース、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙等から得られる繊維状の有機フィラーや、有機顔料等の粒状の有機フィラーが挙げられる。
樹脂組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は限定的でないが、樹脂組成物の全固形分に対して、30質量%以下が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、前記したもの以外にも、本発明の目的を阻害しない範囲で、成形性・難燃性等の各種特性をより一層改善する目的で他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)、帯電防止剤、難燃助剤、加工助剤、抗菌剤、防カビ剤等が挙げられる。更に、染料や顔料を含む着色剤などを添加することもできる。
本発明の樹脂組成物は、様々な用途に用いることが可能である。
本発明の樹脂組成物は熱可塑性を有する樹脂組成物であることが好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、射出成形用樹脂組成物であることが好ましい。
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形することにより得られる。好ましくは本発明の成形体は前記樹脂組成物を加熱成形することにより得られる。
本発明の成形体の製造方法は、本発明の樹脂組成物を加熱し、成形する工程を含む。
成形方法としては、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形等が挙げられる。
加熱温度は、160〜300℃が好ましく、より好ましくは180〜260℃である。
本発明の成形体の製造方法は、本発明の樹脂組成物を加熱し、成形する工程を含む。
本発明の成形体の用途は、とくに限定されるものではないが、例えば、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)の内装又は外装部品、自動車、機械部品、住宅・建築用材料、フィルム等が挙げられる。これらの中でも、優れた耐熱性及び耐衝撃性を有しており、環境への負荷が小さい観点から、例えば、コピー機、プリンター、パソコン、テレビ等といった電気電子機器用の外装部品(特に筐体)として好適に使用することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
以下に環状リンウレタン化合物の合成方法の一例を示す。
<合成例1(化合物11の合成)>
Figure 2012052009
200mLナスフラスコに、化合物11a:2.4g(3.8mmol)、NMP(N−メチルピロリドン)30mL、トリエチルアミン0.77g(7.6mmol)、DMAP(N,N−ジメチル−4−アミノピリジン)少量を加えて0℃に冷やした。そこへ、ヘキサメチレンジイソシアネート0.64g(3.8mmol)をゆっくりと滴下し、170℃までゆっくりと昇温し、15時間加熱攪拌した。冷却後、反応溶液をゆっくりと水150mLへ注ぎ、吸引ろ過し、メタノールと水で洗浄し、化合物11を白色固体として1.3g得た。
以下に化合物11のGPC(装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算値)による分子量測定値を示す。また1H−NMR測定結果から、化合物11における共重合比は50:50であることが分かった。
Mn(数平均分子量):800、Mw(質量平均分子量):860
化合物11aは、公知の方法(例えば、Journal of Polymer Science,PartA:Polymer Chemistry,40,P359,2001)により合成した。また、その他の環状リンウレタン化合物も同様の方法で合成できる。
<実施例1〜13、比較例1〜3>
[成形体の作製]
セルロース系樹脂、環状リンウレタン化合物、熱可塑性樹脂、酸化防止剤、難燃剤、フッ素系樹脂、及びその他の成分を表1及び2に示す配合割合(質量部)で混合し、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を二軸混練押出機(テクノベル(株)製、Ultranano)に供給しペレットを作製し、ついで得られたペレットを、射出成形機((株)井元製作所製、半自動射出成形機)に供給してシリンダー温度190℃、金型温度30℃、射出圧力1.5kgf/cmにて4×10×80mmの多目的試験片(衝撃試験片及び熱変形試験片)を成形した。
ポリマー成形におけるシリンダー温度はメルトフローレートが6〜9g/10minの範囲となる温度に設定した。金型温度は30℃とした。
なお、表1及び2において、各成分は以下のものを示す。
・セルロースジアセテート:ダイセル化学製、L−70(置換度:2.45、Mn:65000、Mw:200000)
・セルロースアセテートプロピオネート:イーストマンケミカル社製、482−20(プロピオニル置換度:2.5/アセチル置換度:0.1、Mn:73000、Mw:234000)
・環状リンウレタン化合物1、6、11、16:
Figure 2012052009
上記環状リンウレタン化合物の各構造式における、各構造単位に付記された数字は、当該構造単位の組成比(モル比)を表す。
・比較化合物1(特開2010−59145号公報に記載の化合物):
Figure 2012052009
・ポリアミド:(アルケマ社製、「Rilsan B BMF O」)
・ポリカーボネート:(帝人化成(株)社製、「パンライト L−1225Y」)
・難燃剤1:(臭素系)オクタブロモジフェニルエーテル商品名:プラセフティ(R)EB−8(マナック製)
・難燃剤2:(シリコーン系)X−22−343(信越化学社製)
・難燃剤3:(窒素系)アピノン901(硫酸メラミン、三和化学(株)製)
・難燃剤4:TPP(トリフェニルホスフェート)(大八化学工業社製)
・難燃剤5:(無機系)キスマ5L(水酸化マグネシウム、協和化学工業(株)製)
・難燃剤6:(リン系)PX−200(大八化学社製)
・PEP−36:リン系酸化防止剤、旭電化社製
・Irganox1010:フェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)
・CaCO(和光純薬社製)
・テフロン(登録商標)6−J:三井・デュポンフロロケミカル(株)製、ポリテトラフルオロエチレン
[評価]
得られた樹脂組成物及び多目的試験片を用いて、以下の項目について評価した。評価結果は表1及び2に示した。
(吸水率)
JIS K 7209に準拠して、成形試験片を50℃で24時間乾燥させた後、質量測定を行った。その後、23℃の恒温水槽に試料を24時間浸漬し、試験片を取り出した後、表面に付着した水分を取り除き、ただちに質量を測定した。
吸水率(%)は{(水浸漬後の質量/水浸漬前の質量−1)×100}で求めた。測定は3回測定の平均値である。
(成形性)
成形性評価は、射出成形機での成形適性を示している。成形搬送性が良好であるとは、樹脂組成物を成形機に投入した時に安定して供給でき、負荷が過大にならないことを意味する。また射出性が良好であるとは、樹脂が着色などの劣化がなく所望の形状に成形できることを意味する。成形搬送性及び射出性ともに良好である樹脂組成物を◎、いずれか一方に課題がある樹脂組成物を○、両方に課題がある樹脂組成物を△、成形できないものを×とした。
(耐ブリードウト性)
成形により得られた試験片の表面に油性インキで文字(ABC)と書き、この試験片を65℃、90%RHの条件下で4時間放置した。そして試験片表面の添加成分のブリードアウト状態を目視により、以下の基準で判断した。
◎:ブリードアウトが全く見られず、インキの文字のにじみも全くない。
○:ブリードアウトがほとんど見られず、インキの文字のにじみもほとんどない。
△:ブリードアウトが若干見られ、インキの文字のにじみが見られる。
×:ブリードアウトが著しく、インキの文字が認識できないレベルににじんでいる。
(難燃性)
難燃性の指標として、UL94に準拠した垂直燃焼試験を行った。試験本数は5本である。自己消火性の無いものをV−not、燃焼試験時に樹脂組成物のドリップがあり所定時間内(燃焼時間30秒以内)に自己消火するものをV−2、燃焼時に樹脂組成物のドリップがなく所定時間内に自己消火するものをV−1(燃焼時間30秒以内)、V−0(燃焼時間10秒以内)とした。
Figure 2012052009
Figure 2012052009
以上の結果より、本発明における環状リンウレタン化合物を含む樹脂組成物は、成形性に優れ、吸水率が低く、耐ブリードアウト性に優れる成形体を得ることができることがわかる。一方、本発明における環状リンウレタン化合物を含有せず、従来の難燃剤であるTPP(難燃剤4)を使用した比較例1及び2では、成形体の吸水率が高く、及び耐ブリードアウト性に劣っていた。また比較化合物1を使用した比較例3では、成形体の吸水率が高く劣っていた。

Claims (16)

  1. 下記一般式(I)で表される構造単位、及び下記一般式(II)で表される構造単位を含む化合物。
    Figure 2012052009
    一般式(I)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
    は、水素原子、置換若しくは無置換のアリール基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。
    n1、n2、n3、及びn4は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
    Figure 2012052009
    一般式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、又はスルホン酸基を表す。
    n6及びn7は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
    *は結合部位を表す。
    一般式(II)中、Lは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換の2価の複素環基、又はこれらを組み合わせて得られる2価の基を表す。
  2. 一般式(I)におけるRが水素原子、無置換のアリール基、又は前記一般式(III)で表される基である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記一般式(I)で表される構造単位の含有量と前記一般式(II)で表される構造単位の含有量の比が、モル比で30:70〜70:30である、請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 質量平均分子量が500〜10000の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物である難燃剤。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を含有する樹脂組成物。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を樹脂組成物の全固形分に対して、4〜20質量%含有する、請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. 更に、セルロース系樹脂を含有する請求項6又は7に記載の樹脂組成物。
  9. 前記セルロース系樹脂を樹脂組成物の全固形分に対して、41〜61質量%含有する、請求項8に記載の樹脂組成物。
  10. 更に、セルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する請求項8又は9に記載の樹脂組成物。
  11. 前記セルロース系樹脂がセルロースエステルである、請求項8又は9に記載の樹脂組成物。
  12. 前記セルロースエステルが、セルロースジアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートである、請求項11に記載の樹脂組成物。
  13. 前記セルロース系樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリアミド、及びポリカーボネートのいずれか少なくとも1種である請求項10に記載の樹脂組成物。
  14. 更に、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、金属酸化物及び金属水酸化系難燃剤からなる群より選択された1種以上の難燃剤を含有する請求項6〜13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  15. 更に、フッ素系樹脂を含有する請求項6〜14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  16. 請求項6〜15のいずれか1項に記載の樹脂組成物を加熱成形して得られる成形体から構成される電気電子機器用筐体。
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