JP2012051954A - 難燃性強化ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

難燃性強化ポリアミド樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】非常に剛性が高く、かつ表面平滑性が良くて外観性に優れ、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、押出時の操業性に優れ、成形性に優れ、さらに薄肉成形品においても熱収縮が少ない樹脂組成物を提供する。
【解決手段】テレフタル酸および/またはイソフタル酸を構成単位に含み、結晶融解熱量が1cal/g以下であるポリアミド樹脂(A)と、リン系難燃剤(B)と、無機充填材(C)と、ベーマイト(D)とを含有し、(A)と(B)の質量比((A)/(B))が70/30〜90/10であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)の含有量が30〜200質量部、(D)の含有量が0.5〜10質量部であり、リン系難燃剤(B)は、ホスフィン酸塩(b1)および/またはジホスフィン酸塩(b2)を含むことを特徴とする難燃性強化ポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、非常に剛性が高く、かつ表面平滑性が良くて外観性に優れ、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、押出時の操業性に優れ、成形性に優れ、さらに薄肉成形品においても熱収縮が少ない樹脂組成物に関する。特に、電気・電子分野の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料などに好適に用いられ、さらには良外観性が必要である携帯用パソコンやワープロ、電子辞書、携帯電話等のOA機器に代表される電気機器の筐体部品などに好適に用いられ、特に薄肉成形品により好適に用いられる難燃性強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミド樹脂は、機械的物性や耐熱性などに優れているため、電気・電子、自動車、機械、建材など多岐にわたり利用されている。最近では金属代替による樹脂化が進み、樹脂に金属同等の強度、剛性が求められている。特に、コネクターなどの電装部品や携帯用パソコンやワープロ、電子辞書、携帯電話等のOA機器に代表される電気機器の筐体部品などの家電製品に対しては、高度な難燃性が要求される。また、樹脂成形品は薄肉化が求められるようになり、高剛性、寸法安定性が求められている。
樹脂に難燃性を付与する難燃剤のうち、ハロゲン系難燃剤は、使用を規制する動きがあるため、好ましくない。このことから、ハロゲンフリーのトリアジン系難燃剤が注目され、数多く検討がなされている。強化材を配合しない系では1/32インチの厚みでUL94 V−0規格に適合する難燃性を達成できるが、ガラス繊維等で強化した場合は、難燃剤を多量に配合したとしても、綿着火を起こし、UL94 V−0規格に適合しない問題がある。
一方、イントメッセント型難燃剤であるリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、あるいは、ポリリン酸メラミンをガラス繊維強化ポリアミド樹脂に使用する難燃技術が提案されているが、1/32インチの厚みでUL94 V−0規格を満足するためには、やはりこれらのリン酸メラミン系難燃剤を多く配合する必要があるため、靭性をはじめとして機械的特性や耐トラッキング性などの電気特性が低下する場合があり、実用上満足なものとは言えなかった。
さらには、ホスフィン酸塩と、メラミンとリン酸の反応物と、を組み合わせた技術(例えば、特許文献1)、また、ホスフィン酸塩と、メラミンとリン酸の反応物と、金属化合物を組み合わせた技術(例えば、特許文献2)が提案され、1/16インチの成形品において難燃規格UL94V−0規格を満足することが知られている。この技術では、難燃剤を減量することが可能になり、機械特性(特に曲げ撓み等の靭性)、電気特性(耐トラッキング性)の改良ができる。
しかし、さらに耐衝撃性等の機械特性を向上させるために、無機充填材を40%以上含有させた場合は、二種以上難燃剤を配合したとしても、含有する樹脂比率が低下し、押出時の操業性が大きく低下してしまうために、無機充填剤を高配合する必要がある高剛性の材料を作ることは非常に困難であった。さらには、成形時の流動性や離型性等の改良には燃焼性の良い脂肪酸金属塩を含有しており、難燃性に不安が残り満足なものとは言えなかった。
また近年、高強度、高剛性の樹脂を用いて従来の成形品から薄肉化が進んでおり、1.0mmt以下の成形品が増えたため、成形後に塗装などの温度がかかる後工程があると、結晶化に伴う熱収縮が発生してしまい、寸法安定性に劣るものであった。
それらを改善したものとして、芳香族ポリアミドを使用した技術(特許文献3、4)が提案され、難燃性、機械物性、押出操業性が改良されているが、結晶性のポリアミドを使用しているため、熱がかかると結晶化に伴う熱収縮が発生し、寸法安定性に劣るものであった。また、成形した際に強化材が成形品表面に浮き出してしまうため、成形品表面にうねりが生じ外観不良になるという問題があり、携帯用パソコンやワープロ等のOA機器に代表される電気機器の筐体部品などの、非常に高い剛性、難燃性にさらに良外観性が求められる部品には、不十分なものであった。
特開2004−263188号公報 特開2007−023206号公報 特表2007−507595号公報 特開2009−041016号公報
本発明は、非常に剛性が高く、かつ表面平滑性が良くて外観性に優れ、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、押出時の操業性に優れ、成形性に優れ、さらに、薄肉成形品においても熱収縮が少ない樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、特定のポリアミド樹脂、リン系難燃剤、無機充填材、ベーマイトを組み合わせた系において、前記の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を構成単位に含み、結晶融解熱量が1cal/g以下であるポリアミド樹脂(A)と、リン系難燃剤(B)と、無機充填材(C)と、ベーマイト(D)とを含有し、(A)と(B)の質量比((A)/(B))が70/30〜90/10であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)の含有量が30〜200質量部、(D)の含有量が0.5〜10質量部であり、リン系難燃剤(B)は、ホスフィン酸塩(b1)および/またはジホスフィン酸塩(b2)を含むことを特徴とする難燃性強化ポリアミド樹脂組成物である。
本発明によれば、非常に剛性が高く、かつ表面平滑性が良くて外観性に優れ、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、成形性に優れ、さらに薄肉成形品においても熱収縮が少ない樹脂組成物を提供することができる。結晶融解熱量が1cal/g以下であるポリアミド樹脂を用いることで、薄肉成形品の熱収縮を低減することができる。特に、電気・電子分野の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料に用いられ、さらには良外観性が必要である携帯用パソコンやワープロ、電子辞書、携帯電話等のOA機器に代表される電気機器の筐体部品などに好適に用いることができ、中でも1.0mmt以下の薄肉成形品にさらに好適に用いることができる。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、リン系難燃剤(B)と、無機充填材(C)と、ベーマイト(D)とを含有する。そして、前記ポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を構成単位に含み、結晶融解熱量が1cal/g以下であるポリアミド樹脂である。
なお、本発明において、結晶融解熱量とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下、16℃/分の昇温速度により測定し得られた結晶相の融解熱量を示し、融解吸熱曲線の吸熱ピークで表される面積の大きさから算出することができる。融解吸熱曲線の吸熱ピークで表される面積が大きいことは、結晶融解熱量、すなわち結晶しやすいことを示す。本発明においては、結晶融解熱量は1cal/g以下であり、結晶化しにくいことを示す。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を構成単位に含むものであり、以下のような物が挙げられる。すなわち、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体等が挙げられる。また、これらの重縮合体を構成するテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分のベンゼン環が、アルキル基やハロゲン原子で置換されたものも含まれる。さらに、これらのポリアミド樹脂は2種以上併用することもできる。好ましくは、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、又はテレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、又はイソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体とテレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体との混合物が用いられる。特に好ましくはイソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体またはそれらの混合物である。
これらポリアミド樹脂(A)は、得られる難燃性強化ポリアミド樹脂組成物の耐熱性を向上させるために、ガラス転移温度が100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。また、加工適性を向上させる観点から、200℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が、100℃未満であると、難燃性強化ポリアミド樹脂組成物を成形加工した際、固化しにいくため、離型不良が発生したり、成形サイクルが長くなり、さらに、1.0mmt以下の薄肉成形品の場合80℃程度の温度にて熱収縮が起こってしまうため好ましくない。一方、ガラス転移温度が、200℃を超えると、難燃性強化ポリアミド樹脂組成物を成形加工した際、固化が早過ぎて、ヒケやガラス浮きなどの外観不良が発生しやすく、また、混練時の溶融粘度も高くなるため、均一な混練が難しくなり好ましくない。
さらに、結晶性が少しでも残ると、熱がかかった時に結晶性が促進され、熱収縮率が大きくなったり、ウェルド部の曲げ弾性率が低下することがあるため、ポリアミド樹脂(A)の結晶融解熱量は1cal/g以下であることが必要である。
本発明に用いるポリアミド樹脂(A)の相対粘度は特に限定されないが、溶媒として96重量%濃硫酸を用いて温度が25℃で濃度が1g/dlの条件で測定した相対粘度が、1.5〜3.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5より小さいと低粘度のため、溶融混練後の引き取り性が困難となり組成物に所望の物性が得られない。また3.0より大きいと高粘度のため成形加工時の流動性が悪く、かつ金型内に樹脂が充満するまでの時間が長くなることにより、相対粘度1.5〜4.0のポリアミド樹脂に比べて、流動先端の樹脂温度が下がり、すなわちウェルド部の樹脂の接合が悪くなり、ウェルド強度が下がる。流動性の確保、樹脂の金型への転写性、成形品の外観、ウェルド強度の観点からは、相対粘度1.5〜2.5のポリアミド樹脂(A)を使用することが好ましい。
本発明で使用するリン系難燃剤(B)としては、ホスフィン酸塩およびジホスフィン酸塩並びにそれらの重合体、ポリリン酸メラミン、赤リン、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物などが挙げられ、加工時の安定性、樹脂との混練における分散性、難燃効果の観点から、少なくともホスフィン酸塩(b1)および/またはジホスフィン酸塩(b2)を含むことが必要である。
ホスフィン酸塩(b1)は、ホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物を用いて水溶液中で製造され、本質的にモノマーとして存在するが、反応条件に依存して、縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩の形として存在する場合もある。金属成分としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、および/または、亜鉛イオンを含む金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物が挙げられる。
そのようなホスフィン酸塩(b1)は下記一般式(I)で表される構造を有し、ジホスフィン酸塩(b2)は下記一般式(II)で表される構造を有する。
Figure 2012051954
Figure 2012051954
式中、R、RおよびR、Rはそれぞれ直鎖あるいは分岐鎖のC〜C16アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、フェニルであり、RとRおよびRとRは互いに環を形成してもよい。Rは直鎖あるいは分岐鎖のC〜C10アルキレン、特にメチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン;アリーレン、特にフェニレン、ナフチレン、アルキルアリーレン、特にメチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert−ブチルナフチレン;アリールアルキレン、特にフェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、フェニルブチレンであり、Mはカルシウムまたはアルミニウムイオンであり、mは2または3であり、nは1または3であり、xは1または2である。式(II)ではmx=2nである。)
ホスフィン酸塩(b1)の構成成分として適したホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、イソブチルメチルホスフィン酸、オクチルメチルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸及びジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。
上記式(I)で表されるホスフィン酸塩(b1)の具体例としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
また、ジホスフィン酸塩(b2)の構成成分として適したジホスフィン酸としては、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)等が挙げられる。
上記式(II)で表されるジホスフィン酸塩(b2)の具体例としては、例えば、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)亜鉛が挙げられる。
本願発明において、特に難燃性、電気特性の観点から好ましく用いられるのは、ホスフィン酸塩(b1)としては、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛であり、ジホスフィン酸塩(b2)としては、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛である。それら混合物として市販されているクラリアント社製Exolit OP1230、Exolit OP1240、Exolit OP1311、Exolit OP1312、Exolit OP1314が好適に使用できる。
ホスフィン酸塩(b1)、ジホスフィン酸塩(b2)、それらの混合物は、本発明の組成物を成形して得られる成形品の機械的物性、成形品外観の点で、粒径を100μm以下、好ましくは50μm以下に粉砕した粉末を用いるのがよい。粒径0.5〜30μmの粉末を用いると、高い難燃性が発現するばかりでなく、成形品強度も著しく高くなるので特に好ましい。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)とリン系難燃剤(B)の配合質量比((A)/(B))は、70/30〜90/10であることが必要である。難燃剤(B)の配合量が10質量%未満であると難燃性が劣ってしまい、30質量%を超えると、すなわち、ポリアミド樹脂(A)が70重量%未満であると、押出時の操業性、成形加工性、機械的強度の低下や金型汚染が起こるため好ましくない。
本発明における無機充填材(C)としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、玄武岩繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン等の繊維状、粒状、板状、あるいは針状の無機質強化材が挙げられる。これらの強化材は二種以上組み合わせて用いてもよい。特に、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、焼成カオリン、マイカが好ましく使用される。また、ガラス繊維は長繊維タイプのロービング、短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバー等から選択して用いることができる。ガラス繊維はポリアミド用に表面処理したものを用いるのが好ましい。
好適に用いられるガラス繊維には、様々な断面形状のものがあり、特に限定されるものではない。断面形状としては、例えば丸型や偏平断面のものがあり、特に偏平断面のもの中には、偏平状のひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似形などがある。偏平状のガラス繊維は、配合ポリアミドに特有の反りを低減させるには、偏平状の繊維が長径/短径の比が1.5〜10、好ましくは2.0〜6.0のものが使用され、長径/短径比が1.5以下では断面を偏平状にした効果が少なく、10以上のものはガラス繊維自体の製造が困難である。
本発明において好適に用いられるガラス繊維の平均長さは、1〜15mm、好ましくは2〜10mmである。ここで平均長さとは、ガラス繊維を顕微鏡観察し、マイクロスケールを基準として測定した20個の平均をいう。ガラス繊維の平均長さが、15mmより長いと樹脂成形時に樹脂の流動が悪くなり、作業性が悪くなり、また、1mmより短いと十分な機械的強度を確保できなくなる。
また、無機充填材(C)として、偏平ガラス繊維を用いた場合、円形ガラス断面を有するガラス繊維を用いるよりも単位質量あたりの表面積が広くなった分、樹脂組成物を成形した後の成形品表面に占める偏平ガラス繊維の比率が高まり、偏平ガラス繊維の不燃特性のために成形品の難燃性が高まる傾向がある。
無機充填材(C)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)とリン系難燃剤(B)の合計100質量部に対し、30〜200重量部であることが必要である。30質量部未満であると強度、剛性、耐熱性が満足されず、200質量部を超えると溶融混錬加工性や成形加工性が悪くなる。
本発明においてベーマイト(D)を安定剤として添加する必要がある。ベーマイト(D)は、AlOOH(Al・HO)の組成で表わされるものであれば、特に限定されるものではない。なお、ベーマイト(D)に対して、ホウ酸アルミニウム等を併用して用いてもよい。
リン系難燃剤(B)とベーマイト(D)を併用することで、難燃剤組成に存在するリン化合物が安定し、分解を防ぐとともに、分解し系外にガスとして出ることも防止する。特にリン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホン酸塩などのリン酸塩系の構造を有する難燃剤は、リン酸系イオンが遊離し、金属を腐食させてしまい、特に高温時に金属腐食性が増幅する傾向にある。そのため、押出加工時には押出機内のバレル、スクリュー、ダイスを腐食させ、成形加工時には成形機のスクリュー、シリンダー、金型を腐食させやすく、これらの機器は樹脂を溶融することから高温にすることが多いため、機器へのダメージはさらに大きくなることから、量産性が問題となる。ベーマイトは遊離したリン酸系イオンを捕捉し、安定化するため、金属腐食を低減し、難燃剤の分解も防止するため加工時のガスの発生も低減することができる。
ベーマイト(D)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)とリン系難燃剤(B)の合計100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが必要であり、1〜8質量部であることが好ましい。配合量が0.5質量部未満であると、金属腐食防止効果が小さく、10質量部より多いと押出加工性が悪く不適である。
ベーマイト(D)は、低結晶性であればあるほど、難燃剤のリン系化合物を安定化することができ、金属腐食性を防止する効果が高くなる。ベーマイト(D)の結晶性の評価はX線回折法により評価ができ、X線ピークの大小により結晶性をある程度見積もることができる。
また、ベーマイト(D)は配合する難燃剤に作用し、難燃性を向上させることが可能であるため、難燃剤量を減量させる効果を有する。
本発明の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(E)を含有することにより、さらに成形性に優れたものとすることができる。
リン系酸化防止剤(E)は、無機化合物でも有機化合物でもよく、特に制限はない。好ましいリン系化合物としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガンなどの無機リン酸塩、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−36」、分子量633)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−24G」、分子量604)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−8」、分子量733)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−4C」、分子量633)、テトラ(トリデシル−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどの有機リン化合物が挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。
一般的には、射出成形における離型性を向上させるための添加剤としては、脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)があるが、それらの化合物は可燃性を有するため、添加することにより難燃性の低下が生じる。通常、リン系酸化防止剤(E)等の酸化防止剤は、熱による樹脂の劣化、色の退化を抑制するために処方するためのもので、離型性を付与する目的で使用されるものではないが、リン系酸化防止剤(E)を用い、本来の酸化防止機能だけでなく、難燃剤の難燃特性を低下させることなく離型性をより向上させ得ることが見出された。特にペンタエリスリトールジホスファイト骨格を有し、分子量が600以上800未満のリン系酸化防止剤、例えばビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−36」、分子量633)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−24G」、分子量604)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−8」、分子量733)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−4C」、分子量633)が特に好ましい。それらの中でも、耐熱性に優れる、PEP−36、PEP−24Gが最も好適に使用できる。
リン系酸化防止剤(E)は、本発明に使用する難燃剤であるホスフィン酸塩(b1)、ジホスフィン酸塩(b2)と均一に混ざりやすく、難燃剤の分解を防ぐため、難燃性を損なうことがない。また、ポリアミド樹脂(A)の分子量低下を防ぐため、押出加工時の操業性、成形性、機械物性に優れた樹脂組成物を得ることができる。特に成形時の離型性、成形時の発生ガスの減少に飛躍的な効果が得られる。例えば、連続射出成形を行った場合、金型のガスベントが詰まりにくく、長期連続成形を行っても、成形不良が生じず、金型清掃の回数を減らすことができる。
リン系酸化防止剤(E)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)とリン系難燃剤(B)の合計100質量部に対し、0.1〜1質量部であることが好ましく、0.1〜0.5質量部であることがさらに好ましい。配合量が多すぎると、押出加工時の安定性、成形性、機械物性を低下させ、少なすぎると、成形時の金型からの離型性の低下や、金型ガスベントの詰まりが発生し、連続射出成形が困難になることがある。
本発明では任意成分として、脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、エチレンビスアミド化合物、脂肪族アミド、シリコーン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることができる。本成分が無くとも、本発明の目的は達成されるが、流動性、離型性の向上を図る際には本成分を添加することができる。中でも難燃性にも寄与するシリコーン化合物が好ましく、最適はシリコーンオイルである。添加量としてはポリアミド樹脂(A)とリン系難燃剤(B)の合計100質量部に対して0.05〜1質量部であり、好ましくは0.1〜0.8質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部である。
シリコーンオイルとは、シロキサン結合を骨格とし、そのケイ素に有機基などが直接結合した有機ケイ素化合物である。ケイ素に直接結合した有機基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基およびそれらの併用などが知られているが、これらを有する公知のシリコーンオイルを特に制限なく使用できる。また有機基の一部がエポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、エステル基、クロロアルキル基、炭素数3個以上のアルキル基、ヒドロキシル基などを有する置換基で置換されたシリコーンオイルも使用可能である。
シリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪族エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイルなどのオイル状シリコーン類が挙げられる。
本発明の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば顔料、染料等の着色剤や、熱安定剤、耐候性改良剤、核剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤、他の樹脂ポリマー等を添加することが出来る。
本発明の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定はないが、2軸押出機を用いて200〜350℃の温度で溶融混錬することが好ましく、難燃性と機械的特性を両立させるためには、無機充填材(C)以外の原料を十分に溶融混合した後に、無機充填材(C)を添加し、減圧脱気することが好ましい。
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形など公知の方法によって、たとえば、コネクター、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、スイッチ等の電気、電子、自動車用途の各種成形品、携帯用パソコンやワープロ等のOA機器に代表される電気機器の筐体部品等に成形される。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例ならびに比較例での使用材料および評価方法は次の通りである。
(1)使用材料
(A)ポリアミド樹脂
・ポリアミド樹脂(A−1):イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体(ユニチカ社製 CX−3000)(ガラス転移温度125℃、結晶融解熱量<0.1cal/g)
・ポリアミド樹脂(A−2):イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(三菱エンジニアリングプラスチック社製 X21−F07)(ガラス転移温度138℃、結晶融解熱量<0.1cal/g)
・ポリアミド樹脂(A−3):イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(三井化学社製 A3000)(ガラス転移温度125℃、結晶融解熱量13cal/g)
・ポリアミド樹脂(A−4):ポリアミド66(ローディア社製 24AD1)(ガラス転移温度55℃、結晶融解熱量21cal/g)
・結晶性ポリアミド樹脂(A−5):ポリアミド6(ユニチカ社製 A1015)(ガラス転移温度55℃、結晶融解熱量18cal/g)
(B)難燃剤
・難燃剤(B−1):ジエチルホスフィン酸塩アルミニウム(平均粒子径D50:20μm)
・難燃剤(B−2):ポリリン酸メラミン(チバ・スペシャリティーケミカル社製 Melapur200/70)(平均粒子系D50:20μm)
・難燃剤(B−3):シアヌル酸メラミン(チバ・スペシャリティーケミカル社製 MC25)(平均粒子系D50:8μm)
・難燃剤(B−4):水酸化マグネシウム(堺化学工業社製)(平均粒子系D50:0.8μm)
(C)無機充填材
・ガラス繊維(C−1):長短径の比が4の長円形型断面を有する偏平ガラス繊維(日東紡社製 CSG3PA820S)(長径28μm、短径7μm、繊維長3mm、シラン系表面処理有)
・ガラス繊維(C−2):円形断面を有するガラス繊維(旭ファイバーグラス社製 03JAFT69)(平均繊維径10μm、繊維長3mm)
・炭素繊維(C−3):三菱レイヨン社製TR06NEB4J
(D)ベーマイト
・ベーマイト(D−1):富田製薬社製トミタAD220T(低結晶性)
・ベーマイト(D−2):大明化学社製C06(高結晶性)
(E)酸化防止剤
・リン系酸化防止剤(E−1):ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製アデカスタブPEP−36)
・リン系酸化防止剤(E−2):ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製アデカスタブPEP−8)
・亜リン酸ナトリウム(E−3)(試薬)
(F)シリコーンオイル
・シリコーンオイル(F−1):メチルフェニルシリコーンオイル(GE東芝シリコーン社製 TSF4300)
(2)評価
a)結晶融解熱量
示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で、昇温速度16℃/分にて測定した。
b)溶融混練時の操業性
実施例、比較例において、樹脂組成物を2軸押出機(東芝機械製TEM37)を用いてシリンダー温度320℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量35kg/hの条件下で10kg生産した時、ストランドの状況を目視にて確認した。操業時にストランドがまったく切れないものを”○”、1度でも切れたものを”×”としてランク付けした。ランク”○”を操業性が良好と判断し、合格とした。
c)曲げ強度および曲げ弾性率
ファナック製射出成形機(α−100iA)にて、樹脂温度320℃、金型温度100℃で1点ゲートで試験片(長さ150mm、幅10mm、厚さ3mm)を成形し、ASTM D790に準じて測定した。曲げ強度150MPa以上、曲げ弾性率10GPa以上を合格とした。
d)難燃性
ファナック製射出成形機(α−100iA)にて、樹脂温度320℃、金型温度100℃で試験片を成形し、表1に示すUL94(米国Under Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の評価基準に従って測定した。なお試験片の厚みは1/32インチ(約0.8mm)とした。ここでは、V−1以上を合格とした。また、難燃性の測定時の総残炎時間も示した。例えば、難燃レベルが同じV−0であったとしても、総残炎時間が短い方が、難燃性が優れていることを示す。
Figure 2012051954
e)連続成形時の離型性
ファナック製射出成形機(α−100iA)にて、樹脂温度320℃、金型温度100℃にて、サイクル25秒で、浅いコップ形状(肉厚1.5mm、外径40mm、深さ30mm)を用いて成形品を500ショット連続成形したときの451〜500ショット目の成形品の突き出しピンの痕の有無を目視観察した。5個以上のピンの痕が認められるものを”×”、1〜4個のピンの痕が認められるものを”○”、まったく認められないものを”◎”としてランク付けした。ランク”○”以上が、良好な離型性を示すものとし、合格とした。
f)連続成形時のガスベントの詰まり
上記e)の成形終了後に、深さ4μm、幅1mmのガスベントを目視確認し、完全に詰まっているものを”×”、やや詰まりがあるものを”△”、詰まりが見られないものを”○”としてランク付けした。ランク”○”を合格とした。
g)表面粗さ
50mm×90mm×2mmの平板成形板を用いて、任意の10部分を小坂研究所製の表面粗さ測定器(形式サーフコーダSE−3400)にて表面の平均粗さ(μm)を測定した。20μm以下を合格とした。
h)ウェルド部の曲げ弾性率
ファナック製射出成形機(α−100iA)にて、樹脂温度320℃、金型温度100℃で両端から2点ゲートで試験片(長さ150mm、幅10mm、厚さ3mm)を成形し、中央部にできたウェルド部に対し、ASTM D790に準じて測定した。ウェルド部の曲げ弾性率は、特に、ウェルド部の応力に対するたわみの程度を示す尺度であるが、もし、ウェルド部の曲げ弾性率が、十分高くないと、成形品として実用に供した場合、繰り返しの応力負荷によって、ウェルド部から破断に至ることがあり、外観的な問題のみならず、ウェルド部の曲げ弾性率は十分高いことが望まれる。ここで、次式によりc)曲げ弾性率と、h)ウェルド部の曲げ弾性率の比をとり、曲げ弾性率の保持率を算出した。
曲げ弾性率の保持率(%)={(ウェルド部の曲げ弾性率)/(曲げ弾性率)}×100
曲げ弾性率の保持率は、全く曲げ弾性率の低下を有さない場合は100%となる。一般的には、ある程度の曲げ弾性率の低下は起こり、60%以上が好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。
i)熱収縮率
ファナック製射出成形機(α−100iA)にて、樹脂温度320℃、金型温度100℃で、50mm x 50mm x 0,8mmの平板成形品を成形し、その成形品を23℃ x 50%RHの環境下に24時間放置し、流動方向と直角方向の寸法を測定した。寸法測定後、80℃熱風乾燥機に1時間放置し、23℃ x 50%RH環境下に室温になるまで冷却させた。冷却後寸法測定し、80℃ x 1時間前後の寸法収縮率を算出した。0.01%以下を合格とした。
実施例1
ポリアミド樹脂(A−1)80質量部と、難燃剤(B−1)20質量部とからなる100質量部に対し、無機充填材(C−1)が100質量部、ベーマイト(D−2)が4質量部になるように、2軸押出機(東芝機械製TEM37)を用いてシリンダー設定温度320℃、スクリュー回転200rpm、吐出量35kg/hの条件下で、無機充填材(C−1)以外を基部より投入し、無機充填材(C−1)をサイドフィードして混練し、ストランド状に取り出し、冷却後カッターで造粒し、難燃性強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを前記した測定方法にて諸特性を調べた。その結果を表2に示した。
実施例2〜16
各成分の配合割合を表2に示すようにし、実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表2に示した。
Figure 2012051954
比較例1〜16
各成分の配合割合を表3に示すようにし、比較例2、3はシリンダー設定温度を280℃に、比較例4はシリンダー設定温度を260℃にした以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表3に示した。
Figure 2012051954
実施例1〜16は本発明の要件を満足するため、操業性、機械特性、難燃性、離型性、ガスベントの詰まり、表面粗さ、熱収縮に優れた樹脂組成物が得られた。
比較例1〜4は本発明以外のポリアミド樹脂を用いたため、熱収縮が大きく劣るものであった。
比較例5は難燃剤の添加量が少ないため難燃性能が低かった。比較例6は難燃剤添加量が多すぎ混練時のストランドの引き取りを行うことができず、樹脂ペレットの採取ができなかった。比較例7〜11は、本発明の要件を満たさない難燃剤を使用したため、混練時の操業性が悪くストランドの引き取りを行うことができず、樹脂ペレットの採取ができないか、難燃性に劣るものであった。
比較例12は無機充填材の添加量が少なく曲げ弾性率が低いものとなり、比較例13は無機充填材の添加量が多すぎ混練時のストランドの引き取りを行うことができず、樹脂ペレットの採取ができなかった。
比較例14はベーマイトを添加しなかったため、成形時のガス発生量が多く、ガスベントの詰まりが発生した。比較例15はベーマイトの添加量が多く、曲げ強度、離型性が低い結果となった。
比較例16は本発明のポリアミド樹脂に加え、本発明以外のポリアミド樹脂を併用して用いたため、熱収縮が大きく劣るものであった。

Claims (5)

  1. テレフタル酸および/またはイソフタル酸を構成単位に含み、結晶融解熱量が1cal/g以下であるポリアミド樹脂(A)と、リン系難燃剤(B)と、無機充填材(C)と、ベーマイト(D)とを含有し、(A)と(B)の質量比((A)/(B))が70/30〜90/10であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)の含有量が30〜200質量部、(D)の含有量が0.5〜10質量部であり、リン系難燃剤(B)は、ホスフィン酸塩(b1)および/またはジホスフィン酸塩(b2)を含むことを特徴とする難燃性強化ポリアミド樹脂組成物。
  2. 無機充填材(C)が、長径/短径の比が1.5〜10である偏平断面を有する偏平ガラス繊維であることを特徴とする請求項1記載の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物。
  3. さらにリン系酸化防止剤(E)を、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.1〜1質量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物。
  4. さらにシリコーンオイルを、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物。
  5. ホスフィン酸塩(b1)が下記一般式(I)で表される構造を有し、ジホスフィン酸塩(b2)が下記一般式(II)で表される構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物。
    Figure 2012051954
    Figure 2012051954
    (式中、R、RおよびR、Rはそれぞれ直鎖あるいは分岐鎖のC〜C16アルキルを表し、RとRおよびRとRは互いに環を形成してもよい;Rは直鎖あるいは分岐鎖のC〜C10アルキレンを表す;Mはカルシウムまたはアルミニウムイオンを表す;mは2または3である;nは1または3である;xは1または2である;式(II)ではmx=2nである。)。

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