JP2012050988A - レーザスクライブ方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】サファイア基板をレーザ光によってスクライブする際に、簡単な装置構成で、適切な広さの改質領域を形成できるようにする。
【解決手段】このレーザスクライブ方法は、パルスレーザ光をサファイア基板に照射してスクライブする方法であって、第1工程と第2工程とを備えている。第1工程は、ビーム強度の調整されたパルスレーザ光をサファイア基板に照射し、改質領域としてのレーザ加工痕を基板の裏面に形成する工程である。第2工程は、パルスレーザ光をその焦点位置を固定して分断予定ラインに沿って走査し、基板の裏面から表面に到達しない深さまで進行する線状加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する工程である。
【選択図】図4

Description

本発明は、レーザスクライブ方法、特に、パルスレーザ光を脆性材料基板に照射してスクライブするレーザスクライブ方法に関する。
発光ダイオード等の発光素子は、サファイア基板上に窒化物半導体を積層することによって形成されている。このようなサファイア基板等から構成される半導体ウェハには、複数の発光ダイオード等の発光素子が、分断予定ラインにより区画されて形成されている。そして、このような半導体ウェハを分断予定ラインに沿って分断する前工程として、レーザスクライブ方法が用いられている。
半導体等の基板にレーザ光を照射してスクライブする方法が特許文献1に示されている。この特許文献1に示された方法は、レーザ光の集光点の位置が基板裏面に調整される。そして、レーザ光を分断予定ラインに沿って走査し、さらに集光点を基板の厚み方向に移動させている。
また、特許文献1と同様に、シリコン基板やガラス基板等にパルスレーザ光を照射して基板内部に改質領域を形成する方法が特許文献2に示されている。この特許文献2に示された方法では、集光点が基板内部に調整されてパルスレーザ光が照射された後、集光点の位置を変えることなく横方向に走査されて次のパルスレーザ光が照射される。このようなレーザ照射を繰り返すことにより、斜め方向に向かって並設された改質領域が基板内部に形成される。
特開2007−21557号公報 特開2007−167875号公報
ここで、特にサファイア基板上に半導体を積層して発光ダイオードを形成する場合、最終製品としての発光ダイオードの品質を劣化させないためには、レーザ照射による改質領域(加工痕)は極力少ない方が好ましい。また、端面強度等の強度を損なわないためにも、加工痕は少ない方が好ましい。一方で、改質領域が少ない場合には、スクライブ後の分断工程において、より大きな分断力が必要となり、場合によっては分断できない場合が生じる。
そこで、レーザスクライブにおいては、後工程で分断が容易で、かつ少ない(狭い)改質領域を形成する必要がある。このような目的を達成するために、基板内部に周期的な線状の改質領域(以下、線状加工痕と記す)を形成することが考えられる。この線状加工痕は、特許文献1及び2に示された方法で形成することができる。
しかし、特許文献1に示されたレーザスクライブ法で線状加工痕を形成する場合、集光点の位置を基板の厚み方向に走査する必要がある。集光点の位置を基板の厚み方向に走査するためには、装置構成が複雑でかつ高価になる。
また、特許文献2に示された方法では、集光点の深さ位置を変更する必要はないが、ビーム強度のしきい値等のレーザ照射条件が全く示されておらず、線状加工痕を安定して形成することができない。このため、基板の表面や裏面に均一な改質層が形成されたり、また、逆に線状加工痕が少なくなって、分断工程で大きな分断力が必要になる場合がある。さらに、この特許文献2では、1パルスで300μmの加工痕が形成されるので、厚さが100μm程度の基板には線状加工痕を形成することができない。
本発明の課題は、サファイア基板等の脆性材料基板をレーザ光によってスクライブする際に、簡単な装置構成で、適切な広さの改質領域を形成できるようにすることにある。
第1発明に係るレーザスクライブ方法は、パルスレーザ光を脆性材料基板に照射してスクライブする方法であって、第1工程と第2工程とを備えている。第1工程は、ビーム強度の調整されたパルスレーザ光を脆性材料基板に照射し、改質領域としてのレーザ加工痕を脆性材料基板の裏面に形成する工程である。第2工程は、パルスレーザ光をその焦点位置を固定して分断予定ラインに沿って走査し、脆性材料基板の裏面から表面に到達しない深さまで進行する線状加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する工程である。
このレーザスクライブ方法では、ビーム強度の調整されたパルスレーザ光が脆性材料基板に照射され、脆性材料基板の裏面にレーザ加工痕が形成される。そして、パルスレーザ光が分断予定ラインに沿って走査されることにより、分断予定ラインに沿って周期的な線状加工痕が基板内部に形成される。この線状加工痕は、基板裏面から斜め上方に向かって延び、表面にまで到達しない深さまで進行する。
ここでは、少ない改質領域でスクライブラインを形成できるので、最終的な製品の品質及び強度劣化を抑えることができる。また、後工程での分断において比較的容易に分断することができる。また、加工開始点を基板裏面にしているので、比較的弱いビーム強度で加工痕を形成することができる。このため、厚みの薄い基板においても、線状加工痕の上方への進行が基板表面に到達しない深さで止まり、周期的な線状加工痕を形成することが容易になる。なお、基板裏面では、比較的弱いビーム強度でも加工痕を形成できるのは、以下の理由であると考えられる。
(1) 基板の裏面は内部よりも化学的に不安定であり、加工されやすい。
(2) 基板を透過したレーザがテーブルに吸収されて発熱し、その熱が基板の裏面を加熱し、加熱された基板はレーザを吸収しやすくなるので、加工され易くなる。
第2発明に係るレーザスクライブ方法は、第1発明のレーザスクライブ方法において、第1工程では、パルスレーザ光のビーム強度が、脆性材料基板の裏面で8.8×1012 W/m2を越え、表面までの基板内部において8.8×1012 W/m2を下回るように調節される。
ここでは、脆性材料基板の裏面においてパルスレーザ光のビーム強度がしきい値(8.8×1012 W/m2)を越えるので、パルスレーザ光を走査すると、レーザ加工痕は裏面のレーザ加工痕から表面に向かって斜め上方に進行する。そして、表面までの基板内部において、ビーム強度はしきい値(8.8×1012 W/m2)を下回るので、しきい値を下回った時点で線状加工痕の上方への進行は止まり、再び基板裏面にレーザ加工痕が形成される。以上の繰り返しによって、基板裏面から表面に到達しない深さまで延びる周期的な線状加工痕が分断予定ラインに沿って形成される。
第3発明に係るレーザスクライブ方法は、第2発明のレーザスクライブ方法において、第2工程では、脆性材料基板において、単位体積当たりに吸収されるエネルギが1.5×1010 J/m3以下になるようにレーザ照射及び走査条件が調節される。
レーザ照射及び走査において、第2発明の条件でかつ単位体積当たりに吸収されるエネルギが2.0×1010 J/m3を越えると、隣接する線状加工痕がつながったような面状の加工痕が形成され、改質領域を小さくすることができない。そこで、ここでは、レーザ照射及び走査条件が、単位体積当たりに吸収されるエネルギが2.0×1010 J/m3以下になるように調節される。
第4発明に係るレーザスクライブ方法は、第1から第3発明のレーザスクライブ方法において、脆性材料はサファイアである。
以上のような本発明では、サファイア基板等の脆性材料基板をスクライブする際に、簡単な装置構成で、適切な広さの改質領域を形成することができる。
本発明の一実施形態による加工方法によって分断される半導体ウェハの外観斜視図。 本発明の一実施形態による加工方法を実施するためのレーザ加工装置の概略構成図。 基板内部に形成された線状加工痕の顕微鏡写真を示す図。 線状加工痕の形成メカニズムを説明するための図。 線状加工痕が形成されるしきい値を検討するための装置構成図。 厚みが150μmのサファイア基板におけるビーム半径と焦点位置との関係を示す図。 表面のみに加工痕が形成された基板内部の顕微鏡写真を示す図。 図6のシミュレーション結果から予測される結果と実験結果との比較を示す図。 厚みが200μmのサファイア基板におけるビーム半径と焦点位置との関係を示す図。 裏面に加工痕が形成された基板内部の顕微鏡写真を示す図。 図9のシミュレーション結果から予測される結果と実験結果との比較を示す図。 裏面加工と線状加工との境界を説明するための基板内部の顕微鏡写真を示す図。 単位体積当たりに吸収されるエネルギと加工状態との関係を示す図。
[加工対象]
図1は、本発明の一実施形態によるレーザスクライブ方法が適用される半導体ウェハの一例である。この図1に示す半導体ウェハ1は、サファイア基板2上に窒化物半導体が積層され、複数の発光ダイオード等の発光素子3が分割予定ライン4によって区画されて形成されたものである。
[レーザ加工装置]
また、図2は、本発明の一実施形態による加工方法を実施するためのレーザ加工装置5の概略構成を示したものである。レーザ加工装置5は、レーザ光線発振器や制御部を含むレーザ光線発振ユニット6と、レーザ光を所定の方向に導くための複数のミラーを含む伝送光学系7と、伝送光学系7からのレーザ光を集光させるための集光レンズ8と、を有している。なお、ウェハ1はテーブル9に載置されており、レーザ光とウェハ1が載置されるテーブル9とは、相対的に上下方向に移動が可能であるとともに、水平面内で相対移動が可能となっている。
[レーザスクライブ方法]
以上のようなレーザ加工装置5を用いたレーザスクライブ方法は以下の通りである。
まず、レーザ光線発振ユニット6において、パルスレーザ光の出力パワー等の加工条件を制御する。そして、このパルスレーザ光をサファイア基板2に照射して、サファイア基板2の裏面に改質領域を形成する。なお、パルスレーザ光は基板を透過する透過型のレーザである。
その後、レーザ光の焦点(ここでは「集光点」と同様)の位置を固定したまま、レーザ光を分断予定ラインに沿って相対的に移動させて走査する。これにより、基板内部の顕微鏡写真である図3に示すように、改質領域としての線状のレーザ加工痕10が分断予定ラインに沿って周期的に形成される。このようにして、ウェハ1は分断予定ラインに沿ってスクライブされる。
以上のようにして、基板内部に周期的な線状加工痕10が形成された後は、この線状加工痕10が形成された部分に曲げ応力を加えることによって、スクライブラインに沿って容易にウェハ1を分断することができる。
[線状加工痕の形成メカニズム]
線状加工痕の形成メカニズムを、図4を用いて説明する。図4(a)で示すように、焦点位置が基板裏面付近になるようにレーザ照射条件を設定し、レーザ光を照射する。なお、レーザ光の条件については、後述する。レーザ光が照射されると、同図(b)で示すように、あるレーザパルス(以下、単に「パルス」と記載することもある)によって基板の裏面に加工痕10aが形成される。
焦点位置も含めてレーザ照射条件を同じ条件に維持したまま、レーザ光を走査する(同図(c))。すると、レーザパルスがオーバラップし、先の加工痕10a上に次のパルスが照射され、これにより、同図(d)で示すように、先の加工痕10aに接して新しい加工痕10bが形成される。以上の加工が繰り返されることによって、同図(e)〜(g)で示すように、線状の加工痕10が形成される。
レーザ光は、常に焦点位置が基板裏面付近に設定されているので、基板内部において、レーザビームの径は上方に行くにしたがって広くなり、このため単位面積当たりのビーム強度は弱くなる。そして、次々と形成される加工痕10が基板表面に到達する前に、所定の深さ位置でビーム強度がある値を下回ると、それ以上加工痕10は上昇しなくなり、再び基板裏面に加工痕10cが形成される。この様子を、図4(h)(i)に示している。
以上のような加工の繰り返しによって、図4(j)に示すように、周期的な線状加工痕10が形成される。
[線状加工痕が形成されるしきい値]
次に、前述のような線状加工痕が形成されるビーム強度のしきい値について説明する。ここで、以下のような計算条件で、サファイア基板の内部におけるビーム径を計算した結果を、図6以降に示している。なお、基板内部におけるビーム径は、図5に示すdであり、図6以降では、基板内部におけるビーム半径を示している。
<計算条件>
レーザ波長:355nm
入射ビーム径(図5のD0):5mm
エムスクエア:1.2
集光レンズ8の焦点:20mm
サファイア屈折率:1.76
<計算結果1:基板厚み150μm>
図6に、厚みが150μmの試料(サファイア基板)において、焦点位置を、基板表面位置を「0」として+50μmから−250μmまで7段階で変化させた場合のビーム半径と高さ(基板表面を「0」とした)との計算結果を示している。なお、図6はビームの片側のみを示しており、実際のレーザ光のビーム形状は、ビーム半径「0」を挟んで対称となる。また、例えば焦点位置「−50μm」では、−100μmの位置でビームが集光しているが、これは、レーザ光がサファイア基板内部では屈折するからであり、各焦点位置はレーザ光が空気中を進行した場合の値を示すものである。
この図6の条件において、以下のことを仮定する。
仮定1:ビーム半径8μm以下でのビーム強度で加工痕の形成が可能である。
仮定2:基板内部や表面の加工痕未形成領域では、しきい値以上の強度でも加工痕は形成されない。ビーム半径8μm以下でのビーム強度であっても基板内部からは線状加工痕が形成されないが、基板の裏面からは線状加工痕が形成される。
以上のような仮定の下では、図6の基板内部のビーム半径から、焦点位置と加工痕の関係は以下のようになると推測される(計算結果から予測される状態)。
+50μm : ×(加工不可)
0 : ×(加工不可)
−50μm : ○(表面加工)
−100μm : ◎(線状加工)
−150μm : ×(加工不可)
−200μm : ×(加工不可)
−250μm −
ここで、「表面加工」とは、図4に示した加工痕の形成メカニズムにおいて、レーザのビーム強度が基板内部の全域(全厚み)において強く、加工痕が基板表面にまで到達する加工である。具体的には、図6の焦点位置「−50μm」のビーム形状を見ると、試料(基板)内部の全厚みにおいてビーム半径8μm以下である。このため、基板内部の全域においてビーム強度は高く、加工痕は表面まで到達する。
このように、加工痕が基板表面まで達する表面加工では、基板表面の浅い範囲ですべてのエネルギが吸収される。そして、単位体積当たりに吸収されるエネルギが、あるしきい値を超えると、図7に示されるように、基板表面において均一な深さの改質領域の層12が形成される。このような表面加工では、目的とする線状加工痕は形成されない。
また、「加工不可」とは、線状加工痕は形成されず、表面や裏面等に不均一に加工痕が形成されるような加工である。
そして、図6の焦点位置「−100μm」では、基板裏面からほぼ基板厚みの中間位置(約−75μm)までビーム半径が8μm以下である。したがって、基板裏面からほぼ半分の深さまで線状加工痕が形成されると推測される。
図8に、以上のようなシミュレーションから推測される結果と実験結果(レーザ出力3.2W)を示す。この図8から明らかなように、焦点位置「−100μm」においては、走査速度を変えても線状加工痕(表において、「◎」は線状加工痕が形成されたことを示している)が形成されている。したがって、前述のようなレーザ照射条件で「ビーム半径8μm」をしきい値とした仮定が正しかったことがわかる。
<計算結果2:基板厚み200μm>
図9に、厚みが200μmのサファイア基板において、焦点位置を、基板表面位置を「0」として+50μmから−250μmまで7段階で変化させた場合のビーム半径と高さ(基板表面を「0」とした)との計算結果を示している。なお、この図9の条件においても、前述と同様に、仮定1及び2を仮定する。
この場合は、図9の基板内部のビーム半径から、焦点位置と加工痕の関係は以下のようになると推測される(計算結果から予測される状態)。
+50μm : ×(加工不可)
0 : ×(加工不可)
−50μm : ○(表面加工)
−100μm : ◎(線状加工)
−150μm : △(裏面加工)
−200μm : ×(加工不可)
−250μm −
ここで、「裏面加工」とは、図4に示した加工痕の形成メカニズムにおいて、加工痕の上昇する高さが低く、裏面の狭い範囲ですべてのエネルギが吸収されて、基板裏面近傍に均一な深さの改質領域の層が形成される加工である。具体的には、図9の焦点位置「−150μm」のビーム形状を見ると、試料(基板)内部の裏面近傍においてのみビーム半径8μm以下である。このため、加工痕は線状加工のように上昇せず、図10に示すように、基板裏面において均一な深さの改質領域の層13が形成される。この場合も、目的とする線状加工痕は形成されない。
そして、図9の焦点位置「−100μm」では、基板裏面から約−75μmの高さまでビーム半径が8μm以下であり、この範囲にわたって線状加工痕が形成されると推測される。
図11に、以上のようなシミュレーションから推測される結果と実験結果(レーザ出力3.2W)を示す。この図11から明らかなように、焦点位置「−100μm」においては、走査速度を変えても線状加工痕が形成されている。したがって、前述のようなレーザビーム条件で「ビーム半径8μm」をしきい値とした仮定が正しかったことがわかる。
<まとめ>
以上から、加工痕にレーザパルスがオーバラップして照射されたとき、先の加工痕に接して新しい加工痕が形成されるレーザ光のビーム強度は、出力3.2W、周波数120MHz、パルス幅15ps、ビーム半径8μmであることから、8.8×1012 W/m2であることがわかる。
すなわち、ビーム強度が、基板裏面でしきい値を超えると、加工痕が上昇する。そして、基板表面と裏面の間でビーム強度がしきい値を下回ると、その位置で加工痕の上昇が止まり、再び基板裏面から加工痕が形成され、結果的に、周期的な線状加工痕が形成されることになる。
[線状加工と裏面加工との間のしきい値]
ここで、前述のように、「裏面加工」では、線状加工痕が周期的に形成されるのではなく、走査方向に隣接する線状加工痕がつながったような面状の加工痕が形成される。このような裏面加工と線状加工との境界について以下に検討する。
図12は、厚み200μmのサファイア基板に対して、集光点の位置を−150μmに設定し、走査速度を200mm/sでレーザを照射し、走査した場合の基板内部の顕微鏡写真である。なお、他のレーザ照射条件は前述の条件と同様である。
この図12では、裏面加工痕の中に部分的に線状加工痕が形成されているのが観察される。すなわち、この図12に示された加工における条件が、裏面加工と線状加工の境界の条件であると推測される。図12における加工の、単位体積当たりに吸収されるエネルギは、以下の式で求めることができる。
出力(J/s)÷(走査速度(m/s)×改質層サイズ(m)×ビーム直径(m))
具体的には、図12の例では、単位体積当たりに吸収されるエネルギは、
3.2(J/s)/(200(mm/s)×72(μm)×14.6(μm))=1.5×1010(J/m3
となる。図13に、様々な加工結果について、単位体積当たりに吸収されるエネルギを計算した結果を示す。この図13から、表面加工または裏面加工になる場合は、単位体積当たりに吸収されるエネルギが2.0×1010(J/m3)以上であることがわかる。以上より、単位体積当たりに吸収されるエネルギ2.0×1010(J/m3)をしきい値として加工状態が変化し、しきい値以下では線状加工痕が形成され、しきい値を越えると隣接する線状加工痕がつながったような面状の加工痕が形成されると考えられる。
[まとめ]
以上をまとめると、サファイア基板の内部に、周期的な線状加工痕を形成するためには、以下の条件で加工することが必要である。
(1) 透過性のパルスレーザを基板に照射すること。
(2) レーザパルスをオーバラップさせること。
(3) 基板裏面で、単位時間当たりのビーム強度が8.8×1012 W/m2以上であること。
(4) 基板表面までの間に、単位時間当たりのビーム強度が8.8×1012 W/m2を下回ること。
(5) 単位時間において単位体積当たりに吸収されるエネルギが、2.0×1010(J/m3)以下であること。
以上のような条件でサファイア基板を加工することによって、分断予定ラインに沿って周期的な線状加工痕を形成することができる。そして、このような線状加工痕を形成することによって、基板の強度を著しく劣化させることなく、後工程での分断を容易に行うことができる。また、サファイア基板の品質の劣化を抑えることができ加工痕面積を小さく抑えることができ、最終製品として例えば発光ダイオードを形成した場合には、発光効率の良い素子を形成することができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
前記実施形態では、ウェハを構成する基板として、サファイア基板を例にとって説明したが、他の脆性材料基板においても本発明を同様に適用することができる。ただし、しきい値は基板材質によって異なる。
2 サファイア基板
4 分断予定ライン
10 レーザ加工痕

Claims (4)

  1. パルスレーザ光を脆性材料基板に照射してスクライブするレーザスクライブ方法であって、
    ビーム強度の調整されたパルスレーザ光を脆性材料基板に照射し、改質領域としてのレーザ加工痕を脆性材料基板の裏面に形成する第1工程と、
    パルスレーザ光をその焦点位置を固定して分断予定ラインに沿って走査し、脆性材料基板の裏面から表面に到達しない深さまで進行する線状加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する第2工程と、
    を備えたレーザスクライブ方法。
  2. 前記第1工程では、パルスレーザ光のビーム強度が、脆性材料基板の裏面で8.8×1012 W/m2を越え、表面までの基板内部において8.8×1012 W/m2を下回るように調節される、請求項1に記載のレーザスクライブ方法。
  3. 前記第2工程では、脆性材料基板において、単位体積当たりに吸収されるエネルギが2.0×1010 J/m3以下になるようにレーザ照射及び走査条件が調節される、請求項2に記載のレーザスクライブ方法。
  4. 前記脆性材料はサファイアである、請求項1から3のいずれかに記載の脆性材料基板。
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