JP5261532B2 - レーザスクライブ方法及びレーザ加工装置 - Google Patents

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本発明は、レーザスクライブ方法、特に、パルスレーザ光を脆性材料基板に照射してスクライブするレーザスクライブ方法に関する。また、本発明は、レーザ加工装置、特に、パルスレーザ光を脆性材料基板に照射して、脆性材料基板を分断予定ラインに沿ってスクライブするレーザ加工装置に関する。
発光ダイオード等の発光素子は、サファイア基板上に窒化物半導体を積層することによって形成されている。このようなサファイア基板等から構成される半導体装置には、複数の発光ダイオード等の素子が、分断予定ラインにより区画されて形成されている。そして、半導体装置を分断予定ラインに沿って分断するために、レーザスクライブ方法が用いられている。
レーザスクライブ方法は、基板等のワークにレーザ光を照射してスクライブする方法であり、例えば特許文献1に示されている。この特許文献1に示された方法では、レーザ光の集光点の位置が基板裏面に調整され、レーザ光が分断予定ラインに沿って走査される。その後、レーザ光の集光点を基板の厚み方向に移動させ、同様に分断予定ラインに沿ってレーザ光が走査される。
また、特許文献2には、シリコン基板やガラス基板等にパルスレーザ光を照射して基板内部に改質領域を形成し、スクライブする方法が示されている。この特許文献2に示された方法では、パルスレーザ光の集光点が基板内部に位置するように調整される。そして、パルスレーザ光が基板に照射された後、集光点の位置を変えることなく横方向に走査され、次のパルスレーザ光が照射される。このようなレーザ照射を繰り返すことにより、基板の裏面側から表面側に向かって斜めに伸びる複数の改質領域が、分断予定ラインに沿って周期的に形成される。
特開2007−21557号公報 特開2007−167875号公報
ここで、特にサファイア基板上に半導体を積層して発光ダイオードを形成する場合、最終製品としての発光ダイオードの品質を劣化させないためには、レーザ照射による改質領域(以下、レーザ加工痕、あるいは単に加工痕と記す場合もある)は極力少ない方が好ましい。また、端面強度等の強度を損なわないためにも、改質領域は少ない方が好ましい。一方で、改質領域が少ない場合には、スクライブ後の分断工程において、より大きな分断力が必要となり、場合によっては分断できない場合が生じる。
そこで、レーザスクライブにおいては、後工程で分断が容易で、しかも少ない(狭い)改質領域を形成することによってスクライブする必要がある。このような目的を達成するために、基板の厚み方向に延びる複数の線状の改質領域(以下、線状加工痕と記す)を、分断予定ラインに沿って周期的に形成することが考えられる。このような線状加工痕は、特許文献1及び2に示された方法で形成することができる。
しかし、特許文献1に示されたレーザスクライブ方法で線状加工痕を形成する場合、レーザ光の集光点を複数の位置にセットし、その複数の位置毎に分断ラインに沿ってレーザ光を走査する必要がある。このような方法では、処理が煩雑になるとともに、装置構成が複雑でかつ高価になる。
また、特許文献2に示された方法では、集光点の位置を変更する必要はないが、ビーム強度等のレーザ照射条件が全く示されておらず、線状加工痕を安定して形成することができない。このため、基板の表面や裏面に、線状ではなく広い面積の面状の改質領域が形成されたり、また、逆に線状加工痕が少なくなって、分断工程で大きな分断力が必要になったりする場合がある。さらに、この特許文献2では、1パルスで300μmの加工痕が形成されるので、厚さが100μm程度の基板には線状加工痕を形成することができない。
本発明の課題は、サファイア基板等の脆性材料基板をレーザ光によってスクライブする際に、簡単な装置構成で、適切な広さの改質領域を形成できるようにすることにある。
第1発明に係るレーザスクライブ方法は、パルスレーザ光を脆性材料基板に照射してスクライブする方法であって、以下の処理を含んでいる。
・ビーム強度の調整されたパルスレーザ光を、脆性材料基板に照射するとともに焦点位置の高さを固定して分断予定ラインに沿って走査することにより、先に照射されたパルスレーザ光によって形成された加工痕に重なる位置に次のパルスレーザ光を繰り返し照射して脆性材料基板の厚み方向に進展する線状のレーザ加工痕を形成する。
・線状のレーザ加工痕が所定の位置まで進展したとき、パルスレーザ光の脆性材料基板への繰り返し照射を停止する。
・パルスレーザ光の脆性材料基板への照射が停止された状態で、走査によってパルスレーザ光の照射位置が所定距離移動されたとき、パルスレーザ光の脆性材料基板への照射を再開する。
・パルスレーザ光の脆性材料基板への照射及び走査、照射の停止、照射の再開の各処理を繰り返し実行することによって、複数の線状のレーザ加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する。
このレーザスクライブ方法では、ビーム強度の調整されたレーザ光が、脆性材料基板に照射されるとともに、分断予定ラインに沿って走査される。これにより、基板厚み方向に伸びる線状加工痕が形成される。そして、線状加工痕が所定の位置まで進展したとき、レーザ光の基板への照射が停止される。このため、線状加工痕の進展も停止する。なお、走査は継続される。そして、レーザ光の照射が一時的に停止された後、レーザ光の照射位置が所定距離だけ移動されたタイミングで、レーザ光の基板への照射が再開され、再び線状のレーザ加工痕が形成される。以上のレーザ光の基板への照射、停止が繰り返されることによって、複数の線状加工痕が分断予定ラインに沿って周期的に形成される。
ここで、本願発明者は、簡単な装置構成で、適切な広さの改質領域を形成できるレーザスクライブ方法を開発し、既に出願している(特願2010-193220)。このレーザスクライブ方法では、脆性材料基板の裏面から表面に向かって所定長さの線状加工痕が形成され、さらに、この線状加工痕が分断予定ラインに沿って周期的に形成される。そして、裏面又は表面で面状の加工痕が形成されないように、レーザ光の照射条件が設定される。
ここで、例えば発光ダイオードにおいては、サファイア基板の裏面に半導体が積層されて素子が形成されている。したがって、基板裏面に改質領域が形成されるのは好ましくない。一方、基板の表面に素子が形成されていない場合は、線状加工痕は表面近傍にまで形成されている方が、後工程での分断の際に、少ない力で容易に基板を分断することができる。
しかし、先願の方法では、線状加工痕の進展の程度(長さ)をレーザ照射条件によって決めているので、線状加工痕の長さを精度良く管理して線状加工痕を表面近傍にまで到達させることは困難である。
そこで、本発明では、線状加工痕が所定の位置まで進展した時点でレーザ光の基板への照射を一時的に停止させ、線状加工痕の進展を停止させている。このため、線状加工痕を所望の位置まで進展させて停止させることが容易になり、レーザ照射条件を厳しく管理することなく、脆性材料基板の表面近傍にまで線状加工痕を形成することができる。
第2発明に係るレーザスクライブ方法は、第1発明のレーザスクライブ方法において、パルスレーザ光の照射の再開処理は、パルスレーザ光の照射位置が、既に形成されたレーザ加工痕と重ならない位置まで移動されたときに実行される。
レーザ光を停止した後に照射を再開するとき、既に形成されたレーザ加工痕と新たに照射するレーザ光が重なると、既に形成された線状加工痕がさらに進展して基板表面にまで到達し、線状ではなく面状の加工痕が形成される場合がある。このような面状の加工痕は、改質領域が非常に広くなるので好ましくない。
そこでこの第2発明では、既に形成されたレーザ加工痕に重ならない位置にレーザ照射位置が移動されたタイミングでレーザ光の基板への照射を再開するようにしている。これにより、面状の加工痕が形成されるのを防止して、確実に線状のレーザ加工痕を形成することができる。
第3発明に係るレーザスクライブ方法は、第1又は第2発明のレーザスクライブ方法において、パルスレーザ光は、線状のレーザ加工痕の起点が脆性材料基板の裏面となるように照射条件が設定される。
ここでは、脆性材料基板の裏面から表面近傍にまで伸びる線状加工痕を容易に形成することができ、後工程において、基板をより容易に分断することが可能になる。
第4発明に係るレーザスクライブ方法は、第1又は第2発明のレーザスクライブ方法において、パルスレーザ光は、線状のレーザ加工痕の起点が脆性材料基板の裏面及び表面から離れた基板内部となるようにレーザ照射条件が設定される。
例えば発光ダイオードにおいては、サファイア基板上に半導体が積層されて素子が形成されている。そして、このような発光ダイオードに対して先願のレーザスクライブ方法を適用する場合は、素子にダメージを与えないために、素子が形成されていない表面からレーザ光が照射されることになる。すると、先願の方法では、素子が形成された裏面に、線状加工痕の起点となる改質領域が形成されることになる。この場合、基板の裏面に形成された素子が、ダメージを受ける可能性がある。
そこで、本発明では、脆性材料基板の表面及び裏面から離れた内部を起点として線状加工痕を形成するようにしている。
ここでは、線状加工痕は基板裏面から離れた内部から表面側に伸びて形成されるので、基板裏面に素子が形成されている場合に、素子に与えるダメージを抑えることができる。
第5発明に係るレーザスクライブ方法は、第1から第4発明のいずれかのレーザスクライブ方法において、パルスレーザ光は、ビーム強度が、脆性材料基板における線状加工痕形成予定領域で8.8×1012 W/m2を越えるように調節される。
ここでは、線状加工痕の起点となる位置において、レーザ光のビーム強度がしきい値(8.8×1012 W/m2)を越えるので、レーザ光を走査すると、レーザ加工痕は起点から表面に向かって進行する。そして、所定のタイミングでレーザ光の基板への照射が一時的に停止されるので、線状加工痕の進展は所望の位置で止まる。その後、レーザ光の照射が再開されて、再び起点から線状加工痕が形成される。以上の繰り返しにより、複数の線状加工痕が分断予定ラインに沿って周期的に形成される。
発明に係るレーザスクライブ方法は、第1から第発明のレーザスクライブ方法において、脆性材料はサファイアである。
発明に係るレーザ加工装置は、パルスレーザ光を脆性材料基板に照射して、脆性材料基板を分断予定ラインに沿ってスクライブする装置であって、レーザ光線発振ユニットと、伝送光学系と、集光レンズと、テーブルと、移動制御部と、加工制御部と、を備えている。レーザ光線発振ユニットは、レーザ光線発振器と、レーザ光線のビーム強度を調整するレーザ制御部と、を含み、パルスレーザ光を出射する。伝送光学系はレーザ光線発振ユニットから出射されるレーザ光を所定の方向に導く。集光レンズは伝送光学系からのレーザ光を集光させるためのレンズである。テーブルは、集光レンズからのレーザ光線に対して垂直な面内で相対移動が可能であり、集光レンズからのレーザ光が照射される脆性材料基板を載置する。移動制御部は集光レンズからのレーザ光線とテーブルとを相対移動させる。加工制御部は、レーザ制御部及び移動制御部を制御して、テーブルに載置された脆性材料基板の厚み方向に伸びる複数の線状のレーザ加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する。また、加工制御部は、第1機能、第2機能、及び第3機能を備えている。
第1機能は、ビーム強度の調整されたパルスレーザ光を、脆性材料基板に照射するとともに焦点位置の高さを固定して分断予定ラインに沿って走査することにより、先に照射されたパルスレーザ光によって形成された加工痕に重なる位置に次のパルスレーザ光を繰り返し照射して脆性材料基板の厚み方向に進展する線状のレーザ加工痕を形成する。第2機能は、線状のレーザ加工痕が所定の位置まで進展したとき、パルスレーザ光の脆性材料基板への繰り返し照射を停止する。第3機能は、パルスレーザ光の脆性材料基板への照射が停止された状態で、走査によってパルスレーザ光の照射位置が所定距離移動されたとき、パルスレーザ光の脆性材料基板への照射を再開する。そして、加工制御部は、以上の各機能を繰り返し実行することによって、複数の線状のレーザ加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する。
以上のような本発明では、サファイア基板等の脆性材料基板をスクライブする際に、簡単な装置構成で、適切な広さの改質領域を形成することができる。また、線状のレーザ加工痕の進展長さを容易に管理することができる。
本発明の一実施形態による加工方法によって分断される半導体ウェハの外観斜視図。 本発明の一実施形態による加工方法を実施するためのレーザ加工装置の概略構成図。 基板内部に形成された線状加工痕の顕微鏡写真を示す図。 線状加工痕の形成メカニズムを説明するための図。 線状加工痕の形成メカニズムを説明するための図。 線状加工痕が形成されるしきい値を検討するための装置構成図。 厚みが150μmのサファイア基板におけるビーム半径と焦点位置との関係を示す図。 表面のみに加工痕が形成された基板内部の顕微鏡写真を示す図。 図6のシミュレーション結果から予測される結果と実験結果との比較を示す図。 厚みが200μmのサファイア基板におけるビーム半径と焦点位置との関係を示す図。 裏面に加工痕が形成された基板内部の顕微鏡写真を示す図。 図9のシミュレーション結果から予測される結果と実験結果との比較を示す図。 裏面加工と線状加工との境界を説明するための基板内部の顕微鏡写真を示す図。 単位体積当たりに吸収されるエネルギと加工状態との関係を示す図。 レーザ発振のオン、オフ距離と線状加工痕との関係を説明するための図。 レーザ発振のオン、オフ距離と線状加工痕との関係を説明するための図。 レーザ発振のオン、オフ距離と線状加工痕との関係を説明するための図。 レーザ発振を一時的に停止して所望の長さの線状加工痕を形成する具体例1を説明するための図。 図15の例における基板内部のビーム半径を示す図。 レーザ発振を一時的に停止して所望の長さの線状加工痕を形成する具体例2を説明するための図。 図17の例における基板内部のビーム半径を示す図。 レーザ発振のオン、オフ距離の調整と調整によって形成される線状加工痕の関係を説明するための図。 レーザ発振のオン、オフ距離の調整と調整によって形成される線状加工痕の関係を説明するための図。 レーザ発振のオン、オフ距離の調整と調整によって形成される線状加工痕の関係を説明するための図。 基板内部に形成された改質層の具体例1を示す図。 基板内部に形成された改質層の具体例2を示す図。 基板内部の改質層を起点として形成された線状加工痕の模式図。
[加工対象]
図1は、本発明の一実施形態によるレーザスクライブ方法が適用される半導体装置の一例である。この図1に示す半導体装置1は、サファイア基板2上に窒化物半導体が積層され、複数の発光ダイオード等の発光素子3が分割予定ライン4によって区画されて形成されたものである。
[レーザ加工装置]
図2は、本発明の一実施形態による加工方法を実施するためのレーザ加工装置5の概略構成を示したものである。レーザ加工装置5は、レーザ光線発振器6aやレーザ制御部6bを含むレーザ光線発振ユニット6と、レーザ光を所定の方向に導くための複数のミラーを含む伝送光学系7と、伝送光学系7からのレーザ光を集光させるための集光レンズ8と、を有している。レーザ光線発振ユニット6からは、ビーム強度等の照射条件が制御されたパルスレーザ光(以下、単にレーザ光と記す)が出射される。なお、半導体装置1はテーブル9に載置されている。テーブル9は、駆動制御部20によって駆動制御され、水平面内で移動が可能である。すなわち、テーブル9に載置された半導体装置1と集光レンズ8から照射されるレーザ光線とは水平面内で相対移動が可能である。また、レーザ光と半導体装置1が載置されるテーブル9とは、相対的に上下方向に移動が可能である。レーザ制御部6b及び駆動制御部20は、加工制御部21によって制御されるようになっている。
加工制御部21は、マイクロコンピュータで構成されており、レーザ制御部6b及び駆動制御部20を制御して、以下のような処理を実行する。
(1)ビーム強度の調整されたレーザ光を基板2に照射するとともに、レーザ光の焦点位置を固定して分断予定ライン4に沿って走査し、基板2の厚み方向に進展する改質領域としての線状のレーザ加工痕を形成する。
(2)線状のレーザ加工痕が所定の位置まで進展したとき、レーザ光の基板2への照射を停止する。なお、走査(テーブル9の移動)は継続する。
(3)テーブル9が移動されて、レーザ光の照射位置が、既に形成された線状加工痕と重ならない位置まで移動されたタイミングで、レーザ光の基板2への照射を再開する。
(4)以上の各処理を繰り返し実行することによって、複数の線状のレーザ加工痕を分断予定ライン4に沿って周期的に形成する。
なお、レーザ光の基板2への照射及び照射の停止は、レーザ発振のオン、オフによって行われる。
I.第1実施形態
[レーザスクライブ方法]
以上のようなレーザ加工装置5を用いたレーザスクライブ方法は以下の通りである。
まず、レーザ光線発振ユニット6において、レーザ光の出力パワー等の加工条件を制御する。そして、このレーザ光を基板2に照射して、基板2の裏面に改質領域を形成する。なお、レーザ光は、素子3が形成されていない基板2の表面から照射される。また、レーザ光は基板2を透過する透過型のレーザである。
その後、レーザ光の焦点(ここでは「集光点」と同様)の位置を固定したまま、レーザ光を分断予定ラインに沿って相対的に移動させて走査する。これにより、基板内部の顕微鏡写真である図3に示すように、改質領域としての線状のレーザ加工痕10が基板裏面を起点として表面側に進展する。
次に、線状レーザ加工痕10が所望の位置まで進展したとき、レーザ発振を停止し、レーザ光の基板2への照射を停止する。これにより、線状加工痕10の上昇も停止する。
レーザ光の照射位置が、既に形成された線状加工痕10と重ならない位置まで移動されたとき、レーザ発振を開始し、レーザ光の基板2への照射を再開する。これにより、再び基板裏面を起点として別の線状加工痕10が形成される。
以上の処理を繰り返し実行することによって、図3に示すような複数の線状加工痕10が分断予定ラインに沿って周期的に形成される。
以上のようにして、基板内部に複数の線状加工痕10が形成された後は、この線状加工痕10が形成された部分に曲げ応力を加えることによって、スクライブラインに沿って容易に半導体装置1を分断することができる。
[線状加工痕の形成メカニズム]
線状加工痕の形成メカニズムを、図4A及び図4Bを用いて説明する。図4A(a)で示すように、焦点位置が基板裏面付近になるようにレーザ照射条件を設定し、レーザ光を照射する。なお、レーザ光の条件については、後述する。レーザ光が照射されると、同図(b)で示すように、あるレーザパルスによって基板の裏面に加工痕10aが形成される。
焦点位置も含めてレーザ照射条件を同じ条件に維持したまま、レーザ光を走査する(同図(c))。すると、レーザパルスがオーバラップし、先の加工痕10a上に次のレーザパルスが照射され、これにより、同図(d)で示すように、先の加工痕10aに接して新しい加工痕10bが形成される。以上の加工が繰り返されることによって、同図(e)〜(g)で示すように、線状の加工痕10が形成される。
そして、図4Bに示すように、線状加工痕10が所望の高さまで進展したタイミングでレーザ発振を停止する。レーザ発振が停止されることにより、線状加工痕10の上昇も停止する。
次に、レーザ光の照射位置が一定距離進んだ後に、レーザ発振を再開する。これにより、再び基板の裏面を起点として加工痕が形成されるとともに、線状加工痕10が上昇する。
以上の繰り返しによって、図4Bに示すように、複数の線状加工痕10が分断予定ラインに沿って周期的に形成される。
[線状加工痕が形成されるしきい値]
次に、前述のような線状加工痕が形成されるビーム強度のしきい値について説明する。ここで、以下のような計算条件で、サファイア基板の内部におけるビーム径を計算した結果を、図6以降に示している。なお、基板内部におけるビーム径は、図5に示すdであり、図6以降では、基板内部におけるビーム半径を示している。
<計算条件>
レーザ波長:355nm
入射ビーム径(図5のD0):5mm
エムスクエア:1.2
集光レンズ8の焦点:20mm
サファイア屈折率:1.76
<計算結果1:基板厚み150μm>
図6に、厚みが150μmの試料(サファイア基板)において、焦点位置を、基板表面位置を「0」として+50μmから−250μmまで7段階で変化させた場合のビーム半径と高さ(基板表面を「0」として基板内部を負とした)との計算結果を示している。なお、図6はビームの片側のみを示しており、実際のレーザ光のビーム形状は、ビーム半径「0」を挟んで対称となる。また、例えば焦点位置「−50μm」では、−100μmの位置でビームが集光しているが、これは、レーザ光がサファイア基板内部では屈折するからであり、各焦点位置はレーザ光が空気中を進行した場合の値を示すものである。
この図6の条件において、以下のことを仮定する。
仮定1:ビーム半径8μm以下でのビーム強度で加工痕の形成が可能である。
仮定2:基板内部や表面の加工痕未形成領域では、しきい値以上の強度でも加工痕は形成されない。ビーム半径8μm以下でのビーム強度であっても基板内部からは線状加工痕が形成されないが、基板の裏面からは線状加工痕が形成される。
以上のような仮定の下では、図6の基板内部のビーム半径から、焦点位置と加工痕の関係は以下のようになると推測される(計算結果から予測される状態)。
+50μm : ×(加工不可)
0 : ×(加工不可)
−50μm : ○(表面加工)
−100μm : ◎(線状加工)
−150μm : ×(加工不可)
−200μm : ×(加工不可)
−250μm −
ここで、「表面加工」とは、図4A及び図4Bに示した加工痕の形成メカニズムにおいて、レーザのビーム強度が基板内部の全域(全厚み)において強く、加工痕が基板表面にまで到達する加工である。具体的には、図6の焦点位置「−50μm」のビーム形状を見ると、試料(基板)内部の全厚みにおいてビーム半径8μm以下である。このため、基板内部の全域においてビーム強度は高く、加工痕は表面まで到達する。
このように、加工痕が基板表面まで達する表面加工では、基板表面の浅い範囲ですべてのエネルギが吸収される。そして、単位体積当たりに吸収されるエネルギが、あるしきい値を超えると、図7に示されるように、基板表面において均一な深さの改質領域の層12が形成される。このような表面加工では、目的とする線状加工痕は形成されない。
また、「加工不可」とは、レーザのビーム強度が試料内部の全域(全厚み)において低く、線状加工痕は形成されず、表面や裏面等に不均一に加工痕が形成されるような加工である。
そして、図6の焦点位置「−100μm」では、基板裏面からほぼ基板厚みの中間位置(約−75μm)までビーム半径が8μm以下である。したがって、基板裏面からほぼ半分の深さまで線状加工痕が形成されると推測される。
図8に、以上のようなシミュレーションから推測される結果と実験結果(レーザ出力3.2W)を示す。この図8から明らかなように、焦点位置「−100μm」においては、走査速度を変えても線状加工痕(表において、「◎」は線状加工痕が形成されたことを示している)が形成されている。したがって、前述のようなレーザ照射条件で「ビーム半径8μm」をしきい値とした仮定が正しかったことがわかる。
<計算結果2:基板厚み200μm>
図9に、厚みが200μmのサファイア基板において、焦点位置を、基板表面位置を「0」として+50μmから−250μmまで7段階で変化させた場合のビーム半径と高さ(基板表面を「0」とした)との計算結果を示している。なお、この図9の条件においても、前述と同様に、仮定1及び2を仮定する。
この場合は、図9の基板内部のビーム半径から、焦点位置と加工痕の関係は以下のようになると推測される(計算結果から予測される状態)。
+50μm : ×(加工不可)
0 : ×(加工不可)
−50μm : ○(表面加工)
−100μm : ◎(線状加工)
−150μm : △(裏面加工)
−200μm : ×(加工不可)
−250μm −
ここで、「裏面加工」とは、図4に示した加工痕の形成メカニズムにおいて、加工痕の上昇する高さが低く、裏面の狭い範囲ですべてのエネルギが吸収されて、基板裏面近傍に均一な深さの改質領域の層が形成される加工である。具体的には、図9の焦点位置「−150μm」のビーム形状を見ると、試料(基板)内部の裏面近傍においてのみビーム半径8μm以下である。このため、加工痕は線状加工のように上昇せず、図10に示すように、基板裏面において均一な深さの改質領域の層13が形成される。この場合も、目的とする線状加工痕は形成されない。
そして、図9の焦点位置「−100μm」では、基板裏面から約−75μmの高さまでビーム半径が8μm以下であり、この範囲にわたって線状加工痕が形成されると推測される。
図11に、以上のようなシミュレーションから推測される結果と実験結果(レーザ出力3.2W)を示す。この図11から明らかなように、焦点位置「−100μm」においては、走査速度を変えても線状加工痕が形成されている。したがって、前述のようなレーザビーム条件で「ビーム半径8μm」をしきい値とした仮定が正しかったことがわかる。
<まとめ>
以上から、加工痕にレーザパルスがオーバラップして照射されたとき、先の加工痕に接して新しい加工痕が形成されるレーザ光のビーム強度は、出力3.2W、周波数120MHz、パルス幅15ps、ビーム半径8μmであることから、8.8×1012 W/m2であることがわかる。
すなわち、ビーム強度が、基板裏面でしきい値を超えると、加工痕が上昇する。そして、線状加工痕が所定位置まで上昇したときに、レーザ発振をオフにしてレーザ光の基板への照射を止め、ビーム強度が8.8×1012 W/m2を下回るようにすれば、線状加工痕の上昇は停止する。そしてさらに、レーザ光の照射位置が所定距離移動した後にレーザ発振をオンにして基板へのレーザ光の照射を再開すれば、再び基板裏面を起点として線状加工痕が形成される。以上の処理を繰り返すことにより、分断予定ラインに沿って複数の線状加工痕が周期的に形成されることになる。
[線状加工と裏面加工との間のしきい値]
ここで、前述のように、「裏面加工」では、線状加工痕が周期的に形成されるのではなく、走査方向に隣接する線状加工痕がつながったような面状の加工痕が形成される。このような裏面加工と線状加工との境界について以下に検討する。
図12は、厚み200μmのサファイア基板に対して、集光点の位置を−150μmに設定してレーザ照射し、走査速度を200mm/sで走査した場合の基板内部の顕微鏡写真である。なお、他のレーザ照射条件は前述の条件と同様である。
この図12では、裏面加工痕の中に部分的に線状加工痕が形成されているのが観察される。すなわち、この図12に示された加工における条件が、裏面加工と線状加工の境界の条件であると推測される。図12における加工の、単位体積当たりに吸収されるエネルギは、以下の式により、単位時間当たりに照射されるエネルギを単位時間当たりに形成される改質層体積で除算することで求めることができる。
出力[J/s]×(lon[m]÷(lon[m]+loff[m]))÷(走査速度[m/s]×改質層サイズ[m]×ビーム直径[m])
図13に、様々な加工結果について、単位体積当たりに吸収されるエネルギを計算した結果を示す。この図13から、表面加工または裏面加工になる場合は、単位体積当たりに吸収されるエネルギが2.0×1010(J/m3)以上であることがわかる。以上より、単位体積当たりに吸収されるエネルギ2.0×1010(J/m3)をしきい値として加工状態が変化し、しきい値以下では線状加工痕が形成され、しきい値を越えると隣接する線状加工痕がつながったような面状の加工痕が形成されると考えられる。
[レーザ発振を停止する距離]
次に、図14A、図14B及び図14Cを用いて、レーザ発振を停止する距離、すなわち図4Bにおける「レーザ発振off」の時間について検討する。なお、図14Aはレーザ発振を停止する距離が十分長い場合を示し、図14B及び図14Cはレーザ発振を停止する距離が比較的短い場合を示している。
図14Aに示すように、レーザ発振を再開したとき、既に形成されている線状加工痕10とレーザ光Lbとが重ならない場合は、裏面を起点として加工痕が形成され、再び線状加工痕を形成することができる。
一方、図14Bに示すように、レーザ発振を再開したとき、既に形成されているレーザ加工痕10とレーザ光Lbとが重なると、既に形成されている線状加工痕10がさらに上昇する可能性がある。線状加工痕10が上昇して基板表面に達すると、表面近傍に面状の加工痕が形成される表面加工となり、複数の線状加工痕を周期的に形成することはできない。
なお、図14Cに示す例は、図14Bの例と比較してレーザ発振を停止する距離が長い、又は図14Bの例と比較してレーザの出力が低いため、既に形成された線状加工痕10とレーザ光Lbの一部が重なっているが、既に形成されている加工痕で吸収されるレーザのエネルギが、線状加工痕を形成できる大きさに満たない場合の例である。この場合は、既に形成されている線状加工痕10がさらに上昇することはない。このため、複数の線状加工痕を周期的に形成するための条件として、既に形成された加工痕と発振を再開したレーザ光とが重ならないことが必須の条件ではない。そして、レーザ発振を再開した後に、既に形成された加工痕によって遮蔽されずに基板裏面に達するレーザ光が所定の値を超えると、既に形成された線状加工痕とレーザ光の一部が重なっていても、裏面を基点として加工痕が形成され再び線状加工痕が形成される。
[進展長さを管理して線状加工痕を形成する具体例]
<例1>
図15に示すような、基板裏面から150μm、幅25μmの線状加工痕を形成する場合の加工条件を以下に示す。
レーザ発振する距離lon :25μm
レーザ発振を停止する距離loff
off ≧ L/2+rtop であれば、レーザ発振を再開したときにレーザ光と加工痕が重ならない。
L:加工痕サイズ
rtop:加工痕上昇停止位置でのビーム半径
図16から、裏面からの高さ150μmの位置でのビーム半径は4μmであるから、L = 10μmの場合、loff ≧ 9μmとすることにより、複数の線状加工痕が形成可能である。
<例2>
図17に示すような、基板裏面から100μm、幅20μmの線状加工痕を形成する場合の加工条件を以下に示す。
レーザ発振する距離lon :20μm
レーザ発振を停止する距離loff
off ≧ L/2+rtop であれば、レーザ発振を再開したときにレーザ光と加工痕が重ならない。
図18から、基板裏面からの高さ100μmの位置でのビーム半径は2μmであるから、L = 10μmの場合、loff ≧ 7μmとすることにより、複数の線状加工痕が形成可能である。
なお、loff < L/2+rtop であっても、加工痕とレーザ光の重なりが十分小さければ、図14Cで示したように、線状加工痕を形成することが可能である。
また、レーザ光の繰り返し周波数と走査速度の比によって線状加工痕の傾きθが変化するので、これらの条件も適切に設定する必要がある。さらに、レーザ発振を停止するloffが小さいほど単位体積当たりに吸収されるエネルギが大きくなるので、面状の加工痕が形成されないようにするために、前述のエネルギしきい値を超えないように設定する必要がある。
[レーザ発振オン、オフの調整による加工痕の変化]
図19A、図19B及び図19Cに、レーザ発振オンの距離(lon )と、レーザ発振オフの距離(loff )を種々変化させた場合の線状加工痕の変化を模式的に示している。
図19Aはレーザ発振オンの距離とレーザ発振オフの距離をともに25μmにした場合に形成される線状加工痕の模式図である。
図19Bは、レーザ発振オンの距離を25μmとし、レーザ発振オフの距離を50μmにした場合に形成される線状加工痕の模式図である。この例では、線状加工痕の長さは図19Aの場合と同様であるが、隣り合う線状加工痕の間隔が広くなっている。このため、図19Aの場合に比較して基板全体としての改質領域は狭く、分断工程において、図19Aの場合に比較して大きな力が必要になる。
図19Cは、レーザ発振オンの距離を12.5μmとし、レーザ発振オフの距離を25μmにした場合に形成される線状加工痕の模式図である。この例では、線状加工痕の長さが図19Aの場合に比較して短くなっている。また、隣り合う線状加工痕の間隔は図19Aの場合と同様である。この例においては、図19Bと同様に、図19Aの場合に比較して基板全体としての改質領域は狭く、分断工程において、図19Aの場合に比較して大きな力が必要になる。
[まとめ]
以上をまとめると、サファイア基板の内部に、周期的な線状加工痕を形成するためには、以下の条件で加工することが必要である。
(1) 透過性のパルスレーザを基板に照射すること。
(2) レーザパルスをオーバラップさせること。
(3) 線状加工痕の起点で、単位時間当たりのビーム強度が8.8×1012 W/m2以上であること。
(4) 線状加工痕が基板表面に到達するまでに、レーザ発振を停止させ、ビーム強度が8.8×1012 W/m2を下回るようにすること。
(5) 単位時間において単位体積当たりに吸収されるエネルギが、2.0×1010(J/m3)以下であること。
以上のような条件でサファイア基板を加工することによって、分断予定ラインに沿って周期的な線状加工痕を形成することができる。特に、線状加工痕が所望の位置まで進展したときにレーザ発振を停止して線状加工痕の進展を停止させるので、面状の加工痕が形成されるのを防止して、確実に複数の線状加工痕を形成することができる。また、線状加工痕の進展位置を任意に制御することができる。
そして、以上のような線状加工痕を形成することによって、基板の強度を著しく劣化させることなく、後工程での分断を容易に行うことができる。また、加工痕面積を小さく抑えることができるため、サファイア基板の品質の劣化を抑えることができ、最終製品として例えば発光ダイオードを形成した場合には、発光効率の良い素子を形成することができる。
II.第2実施形態
例えば発光ダイオードにおいては、サファイア基板上に半導体が積層されて素子が形成されている。このような発光ダイオードに対して、第1実施形態のレーザスクライブ方法を適用する場合、素子にダメージを与えないために、素子が形成されていない表面からレーザ光が照射されることになる。すると、第1実施形態の方法では、素子が形成された裏面に、線状加工痕の起点となる改質領域が形成されることになる。この場合、基板の裏面に形成された素子が、ダメージを受ける可能性がある。
そこで、第2実施形態では、基板の表面及び裏面から離れた内部に改質層を形成し、この基板内部の改質層を起点として線状加工痕を形成するようにしている。
第2実施形態におけるレーザスクライブ方法は以下の通りである。なお、レーザ加工装置の構成は第1実施形態と同様である。
まず、レーザ光線発振ユニット6において、パルスレーザ光の出力パワー等の加工条件を制御する。そして、このパルスレーザ光を基板2に照射して、基板2の表面及び裏面から離れた内部に、改質領域を形成する。なお、パルスレーザ光は基板を透過する透過型のレーザである。さらに、このパルスレーザ光を分断予定ラインに沿って走査する。これにより、基板内部に、分断予定ラインに沿った改質層が形成される。
図20A及び図20Bに、基板内部に形成された改質層の具体例を示している。いずれの例も、試料として、厚みが330μm のサファイア基板を用いている。
−例1−
図20Aのレーザ照射条件は、以下の通りである。
波長:1064 nm
パルス幅:20 ps
パルスエネルギ:1.4μJ
レーザ照射方向:表面から
焦点位置:z=−100 μm
この例1では、基板の厚み方向のほぼ中間部に改質層M1が形成されている。
−例2−
図20Bのレーザ照射条件は、以下の通りである。
波長:1064 nm
パルス幅:20 ps
パルスエネルギ:1.0μJ
レーザ照射方向:表面から
焦点位置:z=−140 μm
この例2では、基板内部で裏面に近い領域に改質層M2が形成されている。
なお、例1〜2では、焦点位置以外に、繰り返し周波数、出力、及び走査速度を変更しているが、焦点位置のみを変更することによって改質層が形成される位置(深さ)を変更することが可能である。
以上のようにして基板内部に改質層が形成された以降の処理は、第1実施形態と同様である。すなわち、基板内部に形成された改質層を起点として、複数の線状加工痕が分断予定ラインに沿って周期的に形成される。図21にこの第2実施形態によって形成された改質層Mと、複数の線状加工痕10を模式的に示している。なお、図21において、「on」はレーザ発振オンの距離(時間)を、「off」はレーザ発振オフの距離(時間)を示している。
以上のようにして、基板内部に複数の線状加工痕10が形成された後は、この線状加工痕10が形成された部分に曲げ応力を加えることによって、スクライブラインに沿って容易にウェハ1を分断することができる。
この第2実施形態では、少ない改質領域でスクライブラインを形成できるので、最終的な製品の品質及び強度劣化を抑えることができる。また、後工程での分断において比較的容易に分断することができる。また、改質層は基板内部に形成され、線状加工痕はこの改質層を基点として進展するので、基板の裏面に素子が形成されている場合に、素子に与えるダメージを抑えることができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)前記各実施形態では、レーザ発振をオフにすることによって基板へのレーザ光の照射を停止するようにしたが、レーザ発振はオンのまま継続し、レーザ光路中にシャッタ等を設けてレーザ光の基板への照射を停止するようにしてもよい。
(b)前記各実施形態では、ウェハを構成する基板として、サファイア基板を例にとって説明したが、他の脆性材料基板においても本発明を同様に適用することができる。ただし、しきい値は基板材質によって異なる。
2 サファイア基板
4 分断予定ライン
5 レーザ加工装置
6 レーザ光線発振ユニット
6b レーザ制御部
7 伝送光学系
8 集光レンズ
9 テーブル
10 レーザ加工痕
20 駆動制御部
21 加工制御部

Claims (7)

  1. パルスレーザ光を脆性材料基板に照射してスクライブするレーザスクライブ方法であって、
    ビーム強度の調整されたパルスレーザ光を、脆性材料基板に照射するとともに焦点位置の高さを固定して分断予定ラインに沿って走査することにより、先に照射されたパルスレーザ光によって形成された加工痕に重なる位置に次のパルスレーザ光を繰り返し照射して脆性材料基板の厚み方向に進展する線状のレーザ加工痕を形成し、
    前記線状のレーザ加工痕が所定の位置まで進展したとき、前記パルスレーザ光の脆性材料基板への繰り返し照射を停止し、
    前記パルスレーザ光の脆性材料基板への照射が停止された状態で、前記走査によって前記パルスレーザ光の照射位置が所定距離移動されたとき、前記パルスレーザ光の脆性材料基板への照射を再開し、
    前記パルスレーザ光の脆性材料基板への照射及び走査、照射の停止、照射の再開の各処理を繰り返し実行することによって、複数の線状のレーザ加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する、
    レーザスクライブ方法。
  2. 前記パルスレーザ光の照射の再開処理は、前記パルスレーザ光の照射位置が、既に形成されたレーザ加工痕と重ならない位置まで移動されたときに実行される、請求項1に記載のレーザスクライブ方法。
  3. 前記パルスレーザ光は、線状のレーザ加工痕の起点が脆性材料基板の裏面となるように照射条件が設定される、請求項1又は2に記載のレーザスクライブ方法。
  4. 前パルスレーザ光は、線状のレーザ加工痕の起点が脆性材料基板の裏面及び表面から離れた基板内部となるように照射条件が設定される、請求項1又は2に記載のレーザスクライブ方法。
  5. 前記パルスレーザ光は、ビーム強度が、脆性材料基板における線状加工痕形成予定領域で8.8×1012 W/m2を越えるように調節される、請求項1から4のいずれかに記載のレーザスクライブ方法。
  6. 前記脆性材料はサファイアである、請求項1からのいずれかに記載のレーザスクライブ方法。
  7. パルスレーザ光を脆性材料基板に照射して、脆性材料基板を分断予定ラインに沿ってスクライブするレーザ加工装置であって、
    レーザ光線発振器と、レーザ光線のビーム強度を調整するレーザ制御部と、を含み、パルスレーザ光を出射するレーザ光線発振ユニットと、
    前記レーザ光線発振ユニットから出射されるレーザ光を所定の方向に導くための伝送光学系と、
    前記伝送光学系からのレーザ光を集光させるための集光レンズと、
    前記集光レンズからのレーザ光線に対して垂直な面内で相対移動が可能であり、前記集光レンズからのレーザ光が照射される脆性材料基板を載置するためのテーブルと、
    前記集光レンズからのレーザ光線と前記テーブルとを相対移動させる移動制御部と、
    前記レーザ制御部及び前記移動制御部を制御して、前記テーブルに載置された脆性材料基板の厚み方向に伸びる複数の線状のレーザ加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する加工制御部と、
    を備え、
    前記加工制御部は、
    ビーム強度の調整されたパルスレーザ光を、脆性材料基板に照射するとともに焦点位置の高さを固定して分断予定ラインに沿って走査することにより、先に照射されたパルスレーザ光によって形成された加工痕に重なる位置に次のパルスレーザ光を繰り返し照射して脆性材料基板の厚み方向に進展する線状のレーザ加工痕を形成する第1機能と、
    前記線状のレーザ加工痕が所定の位置まで進展したとき、前記パルスレーザ光の脆性材料基板への繰り返し照射を停止する第2機能と、
    前記パルスレーザ光の脆性材料基板への照射が停止された状態で、前記走査によって前記パルスレーザ光の照射位置が所定距離移動されたとき、前記パルスレーザ光の脆性材料基板への照射を再開する第3機能と、
    を備え、
    前記各機能を繰り返し実行することによって、複数の線状のレーザ加工痕を分断予定ラインに沿って周期的に形成する、
    レーザ加工装置。
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