JP2012048256A - 電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤 - Google Patents

電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤 Download PDF

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Abstract

【課題】キャリア芯材自体の電気的特性が良好であり、環境依存性が小さい電子写真現像剤用キャリア芯材を提供する。
【解決手段】電子写真現像剤用キャリア芯材は、一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm以上400ppm以下含有する。このようなキャリア芯材については、キャリア芯材自体の環境依存性を小さくしながら、抵抗値の適正化を図ることができる。
【選択図】なし

Description

この発明は、電子写真現像剤用キャリア芯材(以下、単に「キャリア芯材」ということもある)、電子写真現像剤用キャリア(以下、単に「キャリア」ということもある)、および電子写真現像剤(以下、単に「現像剤」ということもある)に関するものであり、特に、複写機やMFP(Multifunctional Printer)等に用いられる電子写真現像剤に備えられる電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤に備えられる電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤に関するものである。
複写機やMFP等においては、電子写真における乾式の現像方式として、トナーのみを現像剤の成分とする一成分系現像剤と、トナーおよびキャリアを現像剤の成分とする二成分系現像剤とがある。いずれの現像方式においても、所定の電荷量に帯電させたトナーを感光体に供給する。そして、感光体上に形成された静電潜像をトナーによって可視化し、これを用紙に転写する。その後、トナーによる可視画像を用紙に定着させ、所望の画像を得る。
ここで、二成分系現像剤における現像について、簡単に説明する。現像器内には、所定量のトナーおよび所定量のキャリアが収容されている。現像器には、S極とN極とが周方向に交互に複数設けられた回転可能なマグネットローラおよびトナーとキャリアとを現像器内で攪拌混合する攪拌ローラが備えられている。磁性粉から構成されるキャリアは、マグネットローラによって担持される。このマグネットローラの磁力により、キャリア粒子による直鎖状の磁気ブラシが形成される。キャリア粒子の表面には、攪拌による摩擦帯電により複数のトナー粒子が付着している。マグネットローラの回転により、この磁気ブラシを感光体に当てるようにして、感光体の表面にトナーを供給する。二成分系現像剤においては、このようにして現像を行なう。
トナーについては、用紙への定着により現像器内のトナーが順次消費されていくため、現像器に取り付けられたトナーホッパーから、消費された量に相当する新しいトナーが、現像器内に随時供給される。一方、キャリアについては、現像による消費がなく、寿命に達するまでそのまま用いられる。二成分系現像剤の構成材料であるキャリアには、攪拌による摩擦帯電により効率的にトナーを帯電させるトナー帯電機能や絶縁性、感光体にトナーを適切に搬送して供給するトナー搬送能力等、種々の機能が求められる。
昨今において、上記したキャリアは、そのコア、すなわち、核となる部分を構成するキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆するようにして設けられるコーティング樹脂とから構成されている。
ここで、キャリア芯材については、磁気的特性が良好であることが望まれる。簡単に説明すると、キャリアは、現像器内において、上記したようにマグネットローラに磁力で担持されている。このような使用状況下において、キャリア芯材自体の磁性、具体的には、キャリア芯材自体の磁化が低いとマグネットローラに対する保持力が弱まり、いわゆるキャリア飛散等の問題が生ずるおそれがある。特に、昨今においては、形成される画像の高画質化の要求に応えるため、トナー粒子の粒径を小さくする傾向にあり、これに対応して、キャリア粒子の粒径も小さくする傾向にある。キャリアの小粒径化を図ると、各キャリア粒子の担持力が小さくなってしまうおそれがある。したがって、上記したキャリア飛散の問題に対して、より効果的な対策が望まれる。
キャリア芯材に関する技術が種々開示されているが、キャリア飛散防止という観点に着目した技術については、特開2008−241742号公報(特許文献1)に開示されている。
特開2008−241742号公報
また、キャリア芯材については、電気的特性が良好であること、例えば、キャリア芯材自体の帯電量の高いことや高い絶縁破壊電圧を有すること、さらに上記したような観点から、キャリア芯材自体についても適切な抵抗値を有することが望まれる。具体的には、例えば、高い絶縁性を有することで、仮に長期間の使用によりキャリアのコーティング樹脂の一部が剥がれても、電荷のリークによる画像欠陥を防ぎ、キャリアの長寿命化を図ることができる。また、キャリア芯材が適切な抵抗値を有することで、キャリアの高抵抗による画像濃度の低下などの画像欠陥を防ぐことができる。具体的には、抵抗値は1×10〜1×1011Ω・cmの範囲内であることが望ましい。
ここで、複写機は、一般的に事務所のオフィス等において設置されて使用されるものであるが、同じオフィス環境といえども、世界各国においては、種々のオフィス環境が存在する。例えば、30℃程度の高い温度の環境下で使用される場合や、相対湿度90%程度の高い湿度の環境下で使用される場合、また、逆に10℃程度の低い温度で使用される場合や、相対湿度35%程度の低い湿度の環境下で使用される場合がある。このような温度や相対湿度が変化する状況においても、複写機に備えられる現像器内の現像剤に対しては、その特性の変化を小さくすることが望ましく、キャリアを構成するキャリア芯材についても、環境が変化した場合における特性の変化の小さいこと、いわゆる環境依存性の小さいことが要求される。
そこで、本願発明者らは、使用する環境によってキャリア物性、具体的には、帯電量や抵抗値が変動する原因について鋭意検討を行なった。その結果、キャリア芯材の物性変動が、コーティングを施したキャリアの物性に大きく影響することがわかった。そのため、特許文献1に代表される従来のキャリア芯材では、上記した環境依存性に対して、不十分であることがわかった。例えば、具体的には、比較的高い相対湿度の環境下において、比較的低い相対湿度の環境下における抵抗値よりも、上記した抵抗値が大きく低下してしまう場合があった。このようなキャリア芯材では、環境変化による影響が大きく、画質に影響を与えるおそれがある。
本願発明者らは、キャリア芯材自体の電気的特性が良好であるための手段として、まず、基本的特性として良好な磁気的特性を確保すべく、鉄をコア組成の主成分とすることを考えた。そして、抵抗値の適正化を図りながら、磁気的特性を損なわない程度の添加物について鋭意検討を行った。その結果、微量のNa(ナトリウム)が抵抗値の上昇を抑制する効果があることがわかった。さらに、Naの添加量を所定の範囲内とすると、高磁化、および高絶縁性を両立できることがわかった。
さらに、本願発明者らが鋭意検討を行なった結果、添加したNaのうち、過剰気味に添加したNaが、環境依存性に悪影響を及ぼしていると考えた。具体的には、添加したNaのうち、キャリア芯材の表層部分に位置するNaが、高い相対湿度の環境下において比較的多く存在する水分と吸着して電荷のリークを促進し、その結果、高い相対湿度の環境下において抵抗値を低下させ、環境差を大きくしていると考えた。そこで、このNaに起因すると考えられる環境依存性に対する影響を低減し、抵抗値を適正な範囲とすべく、キャリア芯材の成分として、Naの含有量の範囲を規定した。このようなメカニズムで、抵抗値の適正化および環境依存性の改善を図ることができると考えられる。
すなわち、この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材は、一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm(parts per million)以上400ppm以下含有する。
キャリア芯材中のNa含有量を30ppm以上にすることで、抵抗値の適正化を図り、高抵抗による画像濃度の低下を抑制することができるので好ましい。また、キャリア芯材中のNa含有量を400ppm以下にすることで、過剰なNaによる環境変動の増大を抑制することができるので好ましい。
このようなキャリア芯材については、キャリア芯材自体の環境依存性を小さくしながら、抵抗値の適正化を図ることができる。なお、キャリア芯材については、Feで表されるコア組成を主成分としているが、微量のFeも含まれるものである。
ここで、キャリア芯材のNa含有量は、以下の方法で分析を行なった。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行なった。ICP分析は、島津製作所製のICPS−7510を用い、ICPの測定は、検量線法を採用した。なお、Naの波長を、589.592nmとした。本願発明に記載したキャリア芯材のNa含有量は、このICPによる定量分析で得られたNa量である。なお、Na含有量の分析において、Naはビーカーや工程上で混入し、分析結果が変動することもある。したがって、混入しない条件で行うこととする。すなわち、例えば、Naを全く含有させない系における分析結果から、ビーカーや工程上で混入してしまうNaの含有量を分析し、このNaの含有量を差し引いた量を、キャリア芯材におけるNa含有量とする。さらにその他、極力Naを混入しない分析手法を用いて、分析を行うようにしてもよい。
なお、さらなる環境依存性の低減を図るためには、Naの含有量を、50ppm以上200ppm以下とすることが好ましい。
この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤用キャリアは、電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm以上400ppm以下含有する電子写真現像剤用キャリア芯材と、電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える。
このような電子写真現像剤用キャリアは、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を備えるため、電気的特性が良好であり、環境依存性が小さい。
この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤は、電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm以上400ppm以下含有する電子写真現像剤用キャリア芯材、および電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂を備える電子写真現像剤用キャリアと、電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える。
このような電子写真現像剤は、上記した構成の電子写真現像剤用キャリアを備えるため、種々の環境においても良好な画質の画像を形成することができる。
また、この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法は、鉄、酸素およびナトリウムをコア組成として含む電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法であって、鉄を含む原料とナトリウムを含む原料を混合して造粒粉中のNa含有量が100〜1000ppmとなるように造粒を行う造粒工程と、造粒工程により造粒した粉状物を焼成する焼成工程とを含む。
このような電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法によると、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を、効率的に製造することができる。
さらに好ましくは、焼成工程は、酸素濃度を0.001%以上とした雰囲気下で冷却する冷却工程を含むようにしてもよい。こうすることにより、より環境依存性を小さくすることができる。
この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材は、キャリア芯材自体の電気的特性が良好であり、環境依存性が小さい。
また、この発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、電気的特性が良好であり、環境依存性が小さい。
また、この発明に係る電子写真現像剤は、種々の環境においても良好な画質の画像を形成することができる。
また、この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法によると、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を、効率的に製造することができる。
この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。 この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。 Na含有量を変化させた場合の抵抗値と印加電圧との関係を示すグラフである。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材について説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。
図1を参照して、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材11については、その外形形状が、略球形状である。この発明の一実施形態に係るキャリア芯材11の粒径は、約35μmであり、適当な粒度分布を有している。上記した粒径は、体積平均粒径を意味する。この粒径および粒度分布については、要求される現像剤の特性や製造工程における歩留まり等により任意に設定される。キャリア芯材11の表面には、主に後述する焼成工程で形成される微小の凹凸が形成されている。
この発明の一実施形態に係るキャリアは、キャリア芯材11と同様に、その外形形状が、略球形状である。キャリアは、キャリア芯材11の表面に薄く樹脂をコーティング、すなわち被覆したものであり、その粒径についても、キャリア芯材11とほとんど変化は無い。キャリアの表面については、キャリア芯材11と異なり、樹脂でほぼ完全に被覆されている。
この発明の一実施形態に係る現像剤は、上記したキャリアと、トナーとから構成されている。トナーの外形形状についても、略球形状である。トナーは、スチレンアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂を主成分とするものであり、所定量の顔料やワックス等が配合されている。このようなトナーは、例えば、粉砕法や重合法によって製造される。トナーの粒径は、例えば、キャリアの粒径の7分の1程度の約5μm程度のものが使用される。また、トナーとキャリアの配合比についても、要求される現像剤の特性等に応じて、任意に設定される。このような現像剤は、所定量のキャリアとトナーとを適当な混合器で混合することにより製造される。
次に、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法について説明する。図2は、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。以下、図2に沿って、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の製造方法について説明する。
まず、ナトリウム(Na)を含む原料と、鉄を含む原料とを準備する。そして、準備した原料を、要求される特性に応じて、適当な配合比で配合し、これを混合する(図2(A))。ここで、適当な配合比とは、最終的に得られるキャリア芯材が、Naを30ppm以上400ppm以下含有するような配合比である。Naについては、仮焼、本焼成、または酸化処理中に蒸発するので、蒸発分を見越した配合比とする。具体的には、例えば、後述する造粒工程において、鉄を含む原料とナトリウムを含む原料を混合して造粒粉中のNa含有量が100〜1000ppmとなるようにする。ここで、Naは、酸化鉄、もしくはその他原料中に含まれるが、原料中に含まれるNa分は、焼成、もしくはその他工程でほぼ蒸発する。そのため、本願発明は、不可避不純物の範囲外である。すなわち、敢えてNaを含む原料を混入しない系で製造したキャリア芯材に含まれるNa含有量は、本願発明において規定したNa含有量よりも必然的に少ないものとなる。
この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を構成する鉄原料については、金属鉄またはその酸化物であればよい。具体的には、常温常圧下で安定に存在するFeやFe、Feなどが好適に用いられる。また、ナトリウム原料については、常温常圧下で安定に存在するNaOHやNaClが好適に使用される。なお、上記原料をそれぞれ、若しくは目的の組成になるように混合した原料を仮焼して粉砕し原料として用いても良い。ここで、キャリア芯材の機械的強度の向上の観点から、SiO等、Siをキャリア芯材に微量添加することとしてもよい。添加するSiO原料は、非晶質シリカ、結晶シリカ、コロイダルシリカ等が好適に用いられる。
次に、混合した原料のスラリー化を行なう(図2(B))。すなわち、これらの原料を、キャリア芯材の狙いとする組成に合わせて秤量し、混合してスラリー原料とする。
この発明に係るキャリア芯材を製造する際の製造工程においては、後述する焼成工程の一部において、還元反応を進めるため、上述したスラリー原料へ、さらに還元剤を添加してもよい。還元剤としては、カーボン粉末やポリカルボン酸系有機物、ポリアクリル酸系有機物、マレイン酸、酢酸、ポリビニルアルコール(PVA(polyvinyl alcohol))系有機物、及びそれらの混合物が好適に用いられる。
上述したスラリー原料に水を加え混合攪拌して、固形分濃度を40重量%以上、好ましくは50重量%以上とする。スラリー原料の固形分濃度が50重量%以上であれば、造粒ペレットの強度を保つことができるので好ましい。
次に、スラリー化した原料について、造粒を行なう(図2(C))。上記混合攪拌して得られたスラリーの造粒は、噴霧乾燥機を用いて行なう。なお、スラリーに対し、造粒前に、さらに湿式粉砕を施すことも好ましい。
噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃程度とすればよい。これにより、概ね、粒子径が10〜200μmの造粒粉を得ることができる。得られた造粒粉は製品の最終粒径を考慮し、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し、この時点で粒度調整することが望ましい。
その後、造粒した造粒物について、焼成を行う(図2(D))。具体的には、昇温工程として、得られた造粒粉を、900〜1500℃程度に加熱した炉に投入して昇温し、焼結反応工程として、1〜24時間維持して焼結反応させ、目的とする焼成物を生成させる。その後、冷却工程として、室温程度までの焼成物の冷却を行う。このように大別して3つの工程を含む焼成を行う。すなわち、焼成工程は、造粒工程により造粒した粉状物を焼結可能な所定の温度まで昇温する昇温工程、昇温工程の後に、焼結可能な所定の温度で粉状物を所定の時間維持して粉状物を焼結反応させる焼結反応工程、および焼結反応後に冷却する冷却工程の3つの工程を含む。このとき、焼成炉内の酸素濃度は、フェライト化の反応が進む条件であればよく、具体的には、1200℃の場合、10−7%以上3%以下となるよう導入ガスの酸素濃度を調整し、フロー状態下で焼成を行う。ここで、酸素濃度の調整に際しては、第一熱研株式会社製の酸素計(ジルコニア式OセンサTB−IIF+コントロールユニット)を用いた。
また、先の還元剤の調整により、フェライト化に必要な還元雰囲気を制御してもよい。もっとも、工業化時に十分な生産性を確保できる反応速度を得る観点からは、900℃以上の温度が好ましい。一方、焼成温度が1500℃以下であれば、粒子同士の過剰焼結が起こらず、粉体の形態で焼成物を得ることができる。
なお、環境依存性低減の観点からは、コア組成中の酸素量を過剰気味にするのが有利である。ここで、コア組成中の酸素量を過剰気味にする一つの手段として、焼成工程における冷却時の酸素濃度を所定の量以上とすることが考えられる。すなわち、焼成工程において、室温程度まで冷却を行なう際に、酸素濃度を所定の濃度、具体的には、0.001%以上とした雰囲気下で冷却を行なうようにしてもよい。さらに具体的には、電気炉内に導入する導入ガスの酸素濃度を0.001%以上とし、好ましくは0.001%以上1%以下とし、フロー状態下で行なう。このように構成することにより、キャリア芯材の内部層において、フェライト中の酸素量を過剰に存在させることができる。そうすると、内部層における酸素の含有量を相対的に多くして、電荷のリーク等の影響による高温高湿時の抵抗値の低下を抑制することができる。したがって、ここでは、上記酸素濃度の環境下で、冷却を行なう。
得られた焼成物は、さらにこの段階で粒度調整をすることが望ましい。例えば、焼成物をハンマーミル等で粗解粒する。すなわち、焼成を行った粒状物について、解粒を行なう(図2(E))。その後、振動ふるいなどで分級を行なう。すなわち、解粒した粒状物について、分級を行なう(図2(F))。こうすることにより、所望の粒径を持ったキャリア芯材の粒子を得ることができる。
次に、分級した粒状物について、酸化を行なう(図2(G))。すなわち、この段階で得られたキャリア芯材の粒子表面を熱処理(酸化処理)する。
具体的には、酸素濃度10〜100%の雰囲気下において、200〜700℃で0.1〜24時間保持して、目的とするキャリア芯材を得る。より好ましくは、250〜600℃で0.5〜20時間、さらに好ましくは、300〜550℃で1時間〜12時間である。このようにして、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する。なお、このような酸化処理工程については、必要に応じて任意に行なわれるものである。
すなわち、この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法は、鉄、酸素およびナトリウムをコア組成として含む電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法であって、鉄を含む原料とナトリウムを含む原料を混合して造粒粉中のNa含有量が100〜1000ppmとなるように造粒を行う造粒工程と、造粒工程により造粒した粉状物を焼成する焼成工程とを含む。
このような電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法によると、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を、効率的に製造することができる。
この場合、焼成工程は、酸素濃度を0.001%以上とした雰囲気下で冷却する冷却工程を含んでいるため、より環境依存性を小さくすることができる。
次に、このようにして得られたキャリア芯材に対して、樹脂により被覆を行なう(図2(H))。具体的には、得られたこの発明に係るキャリア芯材をシリコーン系樹脂やアクリル樹脂等で被覆する。このようにして、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤用キャリアを得る。シリコーン系樹脂やアクリル樹脂等の被覆方法は、公知の手法により行うことができる。すなわち、この発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm以上400ppm以下含有する電子写真現像剤用キャリア芯材と、電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える。
このような電子写真現像剤用キャリアは、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を備えるため、電気的特性が良好であり、環境依存性が小さい。
次に、このようにして得られたキャリアとトナーとを所定量ずつ混合する(図2(I))。具体的には、上記した製造方法で得られたこの発明の一実施形態に係る電子写真現像剤用キャリアと、適宜な公知のトナーとを混合する。このようにして、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤を得ることができる。混合は、例えば、V型混合器等、任意の混合器を用いる。すなわち、この発明に係る電子写真現像剤は、電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm以上400ppm以下含有する電子写真現像剤用キャリア芯材、および電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂を備える電子写真現像剤用キャリアと、電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える。
このような電子写真現像剤は、上記した構成の電子写真現像剤用キャリアを備えるため、種々の環境においても良好な画質の画像を形成することができる。
(実施例1)
Fe(平均粒径:0.6μm)15kgを水3.8kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を150g、還元剤としてカーボンブラックを170g、SiO原料としてコロイダルシリカ(固形分濃度50%)を398g、NaOHを3g添加して混合物とした。このときの固形分濃度を測定した結果、75重量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径φ2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は、ふるいにより除去した。この造粒粉を、電気炉に投入し、1075℃で3時間焼成した。このとき、電気炉内は、酸素濃度が0.03%となるよう雰囲気を調整した電気炉にフローし、冷却時の酸素濃度も0.03%となるようにした。得られた焼成物を解粒後にふるいを用いて分級し、体積平均粒径35μmとした。さらに、得られたキャリア芯材に対して、550℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例1に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。実施例2以降についても同様である。
(実施例2)
添加するNaOHを8gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
(実施例3)
添加するNaOHを18gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
(実施例4)
添加するNaOHを30gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
(比較例1)
添加するNaOHを0.5gとした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
(比較例2)
添加するNaOHを35gとした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
表1中、酸化処理条件における酸化温度とは、上記した酸化工程における温度(℃)であり、いずれも550℃である。また、酸化時間は、いずれも2時間である。Na含有量の測定については、上述の通りである。なお、表1中のB.D.とは、絶縁破壊(Break Down)した状態を示す。
次に、抵抗値の測定について説明する。キャリア芯材を、10℃、相対湿度35%の環境下(LL環境下)および30℃、相対湿度90%の環境下(HH環境下)において1昼夜調湿した後、その環境下で測定を行なった。まず、水平に置かれた絶縁板、例えば、テフロン(登録商標)でコートされたアクリル板の上に、電極として表面を電解研摩した板厚2mmのSUS(JIS)304板2枚を、電極間距離1mmとなるように配置する。この時、2枚の電極板は、その法線方向が水平方向となるようにする。2枚の電極板の間の空隙に被測定粉体200±1mgを装入した後、それぞれの電極板の背後に断面積240mmの磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させる。この状態で、電極間に各電圧を小さいものから順に直流電圧で印加し、被測定粉体を流れる電流値を2端子法により測定し、電気抵抗値を算出する。なお、ここでは、日置電機株式会社製の超絶縁計SM−8215を用いている。また、電気抵抗値の算出式は、電気抵抗値(Ω・cm)=実測抵抗値(Ω)×断面積(2.4cm)÷電極間距離(0.1cm)となる。そして、表中の各電圧を印加した場合の印加時の抵抗値(Ω・cm)を測定した。なお、使用する磁石は、粉体がブリッジを形成できる限り、種々のものが使用できるが、この実施形態では、表面の磁束密度が1000ガウス以上の永久磁石、例えば、フェライト磁石を使用している。
なお、表1中に記載の抵抗値は、LL環境下における抵抗値を対数値で示している。すなわち、例えば、1×10Ω・cmをLog R=6.0として示している。また、抵抗値の環境差とは、100V印加した時の低温低湿環境における抵抗値から高温高湿環境における抵抗値を差し引いたものである。また、表1中、「σ1000」とは、外部磁場1000Oeである場合における磁化である。
図3は、上記した実施例1〜4、比較例1、および比較例2について、Na含有量を変化させた場合の抵抗値と印加電圧との関係を示すグラフである。図3中、縦軸は、抵抗値(Ω・cm)を示し、横軸は、印加電圧(V)を示す。図3において、縦軸の抵抗値の表示については、1.0E×10=1×1010を意味する。
表1および図3を参照して、比較例1においては、抵抗値が、750V以下の印加電圧において、1.0E×11Ω・cmよりも高くなっている。これに対し、実施例1〜実施例4においては、いずれの印加電圧においても、抵抗値が、1.0E×11Ω・cmよりも低くなっている。すなわち、1×1011Ω・cm以下である。このように、実施例1〜4におけるキャリア芯材は、比較例1に示すキャリア芯材と比較して、抵抗値の適正化を実現している。これは、キャリア芯材の主成分としての結晶のFe内に微量含まれる内部層のNaの含有量が割合的に多くなると、電荷のリークが微小に発生し、その結果、抵抗値が微小に低下するものであると考えられる。
また、抵抗値の環境差については、比較例1が1.3、比較例2が1.5であるのに対し、実施例1〜実施例4においては、全て1.2以下となっている。すなわち、実施例1〜4においては、抵抗値の環境差は小さくなっており、環境依存性が小さくなっている。
磁化については、実施例1〜4においていずれも50emu/g以上であり、実使用状況下において、問題のないレベルである。
以上より、この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材は、上記構成を有するため、キャリア芯材自体の電気的特性が良好であり、環境依存性が小さいものとなる。
ここで、実施例2および実施例3については、それぞれ環境差が、0.8であり、少なくとも1以下となっている。したがって、さらなる環境依存性の低減を図るためには、Naの含有量を、50ppm以上200ppm以下とすることが好ましい。このようなキャリア芯材は、磁化(σ1000)がいずれも60emu/g以上であるため、より高い磁化が要求される場合にも適用することができる。
なお、上記の実施の形態においては、NaをNaOHやNaClとして添加することとしたが、これに限らず、他の形態、例えば、NaHCOとして添加するようにしてもよい。
また、冷却する前の工程である焼結反応を進める工程において、冷却工程と同じ雰囲気下で行なうこととしてもよい。
なお、焼成工程は、酸素濃度を0.001%以上とした雰囲気下で冷却する冷却工程を含むこととしたが、要求される環境依存性が十分である場合は、この工程を省略してもよい。すなわち、酸素濃度が0.001%未満の状態で冷却を行ってもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤は、種々の環境下で使用される複写機等に適用される場合に、有効に利用される。
11 キャリア芯材。

Claims (4)

  1. 一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、
    Naを30ppm以上400ppm以下含有する、電子写真現像剤用キャリア芯材。
  2. Naの含有量が、50ppm以上200ppm以下である、請求項1に記載の電子写真現像剤用キャリア芯材。
  3. 電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、
    一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm以上400ppm以下含有する電子写真現像剤用キャリア芯材と、
    前記電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える、電子写真現像剤用キャリア。
  4. 電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、
    一般式:Feで表されるコア組成を主成分として有し、Naを30ppm以上400ppm以下含有する電子写真現像剤用キャリア芯材、および前記電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂を備える電子写真現像剤用キャリアと、
    前記電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える、電子写真現像剤。
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