JP2012047125A - 車両の冷却装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】既存の冷却手段の制御により燃料タンク近傍の車両下部に熱が滞留するのを抑制してパーコレーション現象を確実に防止できる低コストの車両の冷却装置を提供する。
【解決手段】エンジン10を冷却する冷却ファンユニット50と、その冷却能力を制御するECC60およびクーリングファンコントローラ65とを備えた車両の冷却装置であり、ECC60は、エンジン10の負荷状態が各閾値以下に低下した略アイドル停車時点で、その時点から一定時間内に燃料タンク25内の燃料がその低沸点成分の沸点に到達し得る特定の車両高温状態にあるか否かを判定する高温状態判定手段として機能し、ECC60が特定の車両高温状態であると判定したとき、ECC60およびコントローラ65は、燃料タンク25内の燃料が略アイドル停車時点から一定時間内に冷却されるよう、特定の車両高温状態でない場合に比べて冷却ファンユニット50の冷却能力を増加させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両の冷却装置に関し、特に、エンジンルーム内に冷却ファン等の冷却手段を有する車両において蒸発燃料の発生を抑制するのに好適な車両の冷却装置に関する。
内燃機関をエンジンとして搭載した車両においては、燃料タンク内でガソリン等の揮発性燃料が気化して燃料ベーパ(蒸発燃料)となっても、その燃料ベーパを大気中に漏出させることなく処理する必要があることから、エンジンの停止中に燃料タンク内で発生した燃料ベーパを活性炭を用いたキャニスタにより吸着させておき、エンジンの運転時にキャニスタから吸気通路内に燃料ベーパを放出(パージ)させてエンジンの燃焼室内に取り込まれるようにした蒸発燃料の漏出防止システムが装備されている。
しかし、車両を使用する環境や状態によっては、燃料タンク内やそこからエンジンへの燃料供給通路中に存在する燃料(その低沸点留分)が高温となって燃料ベーパが増加し、エンジンのアイドル運転に要求される燃料量に対して燃料の供給量が大きくばらついてしまったりエンジンの停止中に燃料が吸気通路やパージ用空気導入通路等に滲み出たりしてしまうような現象(以下、燃料ベーパに起因するこれらの現象を総称してパーコレーション現象という)が生じる可能性がある。
そこで、例えば車室内とエンジンルームを連通させることのできる連通路の開閉手段を設けるとともに、エンジンルーム内の燃料の温度に相関する温度を検出する温度センサを設けて、エンジン停止時にエンジンルーム内の燃料温度が所定温度以上になると、開閉手段および送風手段を作動させて、車室内空気をエンジンルームに送給するようにした車両の冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、外気温度と、車両の走行速度と、エンジンの冷却水温度と、エンジンの発熱量を代表する燃料量信号とに基づいて、エンジンの作動中に常に冷却水温度を特定の一定値に保つように冷却ファンの回転数を制御するようにし、運転中に冷却ファンが作動開始することで耳障りな騒音が生じるのを防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、エンジンの冷却水温度と、空調装置用のコンプレッサの吐出口付近における冷媒圧力と、空調装置の出口要求温度とに基づいて、空調装置用ラジエータに送風する冷却ファンの回転を制御して、冷房を効かせたいときに冷房の応答性が悪化するのを防止できるようにしたものが記載されている(例えば、特許文献3参照)。
実開昭(実全昭)62−127号公報 特開昭61−46416号公報 特開平09−195767号公報
しかしながら、従来の車両の冷却装置にあっては、基本的に、エンジンの冷却水温を規定範囲内に制御しながらも、空調装置の冷媒圧力や車速に応じてあるいは更に外気温度に応じて冷却ファンの無駄な作動を抑える制御がなされていたため、温度上昇したエンジンルーム内の熱が排気管や配管類が引き回される車両下部において徐々に車両の後方側に移動し、車両の下部に配置された燃料タンクやその近傍の燃料配管等の温度が上昇する場合があった。そのため、特に、エンジンの冷却水温が高温となる高負荷走行後に車両がアイドル運転状態で長時間放置されるような場合に、燃料タンク内の燃料ベーパが増加することによりキャニスタの燃料吸着量にあまり余裕が無くなってしまう可能性があり、その場合にパーコレーション現象が発生する可能性があった。
具体的には、アイドル運転に要求されるわずかな燃料量以上に燃料ベーパが吸気通路内に放出されてしまって燃費や排気ガス浄化性能の低下を招く可能性や、キャニスタの燃料吸着量に余裕が無くなってしまい、キャニスタにパージ用のエアを導入する大気導入通路側にまで燃料ベーパが漏出してしまう可能性があり、さらに、インジェクタ内の燃料が高温になってエンジンの高温再始動時の安定性が損なわれる可能性があった。
また、エンジン停止時にエンジンルーム内の燃料温度が所定温度以上になると車室内空気をエンジンルームに送給するようにした従来の車両の冷却装置にあっては、ある程度のエンジンルーム内の冷却効果が期待できるものの、車室内空気をエンジンルーム内に送給するために車室内に異音が生じたり車室内温度が上昇したりするという問題があり、コスト高になってしまうという問題もあった。
そこで、本発明は、既存の冷却手段を活用して燃料タンクやその近傍の車両下部に熱が滞留することを有効に抑制して、パーコレーション現象の発生を確実に防止することのできる低コストの車両の冷却装置を提供するものである。
本発明に係る車両の冷却装置は、上記課題を解決するために、(1)エンジンと該エンジンの燃料を貯留する燃料タンクとを搭載した車両に装備され、少なくとも冷却ファンを用いて前記エンジンを冷却する冷却手段と、前記冷却手段の冷却能力を制御する冷却制御手段と、を備えた車両の冷却装置であって、前記エンジンの負荷状態が予め設定された各閾値以下に低下したとき、該低下から一定時間内に前記燃料タンク内の燃料が該燃料中の低沸点成分の沸点に到達し得る特定の車両高温状態にあるか否かを判定する高温状態判定手段を含み、前記冷却制御手段は、前記高温状態判定手段によって前記特定の車両高温状態にあると判定されたとき、前記燃料タンク内の燃料が前記低下から一定時間内に冷却されるよう、前記特定の車両高温状態にないと判定された場合に比べて前記冷却手段の冷却能力を増加させることを特徴とする。
この構成により、エンジンの負荷状態(例えば、スロットル開度、吸入空気量、燃料噴射量等)が各閾値以下に低下したとき、例えば車両の走行が停止したかあるいはそれに近い程度(例えば空気流による燃料タンクの冷却熱量が停車時と同等になる程度)に車両の走行速度が低下した略停車時点で、燃料タンクおよびその近傍の燃料配管等の燃料系内の燃料が、その略停車時点から一定時間内に燃料中の低沸点成分の沸点に達する可能性が高い特定の車両高温状態であるか否かが高温状態判定手段によって判定され、特定の車両高温状態であれば、燃料タンク内の燃料が一定時間内に冷却されるよう冷却手段の冷却能力が増加側に制御される。したがって、その略停車後に燃料中の低沸点成分が沸点に達して燃料系内の蒸発燃料濃度が急増する可能性がある場合に、既存の冷却手段を制御して燃料タンクやその近傍の車両下部に熱が滞留することが有効に抑制され、パーコレーション現象の発生が防止される。したがって、パーコレーション現象の発生を確実に防止することのできる低コストの車両の冷却装置となる。なお、ここにいう冷却能力の増加とは、特定の車両高温状態にないと判定された場合に比べて、冷却ファンの回転速度を上昇させる等して単位時間当りの冷却能力を高めること以外に、複数の冷却手段のうち作動する冷却手段の数を増加させることや、冷却能力の異なる複数の冷却手段のうちより冷却能力の高い冷却手段に切り替えることを含み、さらに、走行停止状態への移行後に作動する冷却手段の作動時間を特定の車両高温状態にないと判定された場合に比べて長くすることを含むものである。
上記(1)に記載の構成を有する車両の冷却装置においては、(2)前記高温状態判定手段は、前記エンジンのアイドル運転状態で前記車両が走行を停止したとき、該停止から前記一定時間内に前記燃料タンク内の燃料が前記低沸点成分の沸点に到達し得るか否かを判定することが好ましい。この構成により、高負荷走行後に車両が停車したままアイドル運転状態で放置されるような場合であっても、キャニスタの燃料吸着量に余裕が無くなったりする前に燃料タンク内の蒸発燃料量を抑える冷却が確実に開始可能になる。
上記(1)または(2)に記載の構成を有する車両の冷却装置は、好ましくは、(3)前記車両のうち前記エンジンが搭載されるエンジンルームの内部の空気温度を検知する空気温度検出手段を備え、前記高温状態判定手段が、前記空気温度検出手段によって検出された前記エンジンルームの内部の空気温度に基づいて前記特定の車両高温状態か否かを判定するものである。この構成により、既存の吸気温センサを空気温度検出手段として利用することができ、専用部品を別に設けることなく、燃料の沸騰を招来し得る特定の車両高温状態か否かを判定するプログラムを搭載するだけで済む。
上記(1)または(2)に記載の車両の冷却装置は、また、(4)前記エンジンが、前記燃料タンク内の蒸発燃料を吸着し、前記エンジンの運転時に該エンジンの吸気通路内に蒸発燃料をパージすることができる蒸発燃料処理手段を備え、前記高温状態判定手段が、前記蒸発燃料処理手段によって前記吸気通路内にパージされる蒸発燃料の濃度を推定し、該濃度の推定値に基づいて前記特定の車両高温状態か否かを判定するものであっても好ましい。この構成により、例えば公知の空燃比フィードバック制御用の排気酸素濃度の変化から蒸発燃料の濃度の増加・減少を知ることができるので、専用部品を別に設けることなく、蒸発燃料の濃度を推定し、その推定値に基づいて特定の車両高温状態か否かを判定するプログラムを搭載するだけで、確実な蒸発燃料処理が可能になる。
上記(4)に記載の車両の冷却装置においては、(5)前記エンジンが、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサの出力値から空燃比を把握する手段を備え、前記高温状態判定手段は、前記エンジンの空燃比が理論空燃比よりリッチ側に変化したときの前記酸素センサの出力値に基づいて、前記燃料タンク内の燃料中のエバポレーションガス発生量を推定することが好ましい。この構成により、空燃比フィードバック制御用等の酸素センサの出力値を基に、燃料タンク内の燃料温度が上昇していることを推定できる。
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の構成を有する車両の冷却装置は、好ましくは、(6)前記車両に搭載されて前記エンジンの冷却液を通すラジエータをさらに備え、前記冷却ファンが前記ラジエータに冷却風を通すように回転し、前記高温状態判定手段は、前記冷却液の温度が予め設定された判定開始液温以上である場合であって、前記エンジンのアイドル運転状態での前記車両の走行速度または前記エンジンの負荷状態が予め設定された各閾値以下に低下したときに、前記特定の車両高温状態か否かを判定するものである。この構成により、エンジン冷却水温度が高い状態で略停車状態に移行し、特定の車両高温状態になり易い場合に、特定の車両高温状態か否かが確実に判定され、必要時に燃料タンク内の燃料が確実に冷却される。
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の構成を有する車両の冷却装置においては、(7)前記冷却制御手段は、前記高温状態判定手段によって前記特定の車両高温状態であると判定されない場合には、前記冷却ファンの回転を少なくとも前記エンジンの運転状態に応じた基本回転速度に制御する基本回転制御を実行し、前記高温状態判定手段によって前記特定の車両高温状態であると判定された場合には、前記冷却ファンの回転を前記基本回転速度より高速となる回転速度に上昇させる回転上昇制御を実行することが好ましい。
この構成により、冷却手段を無駄に作動させることなく、必要時に回転上昇制御を実行することで、蒸発燃料の発生を有効に抑制することができるとともに、車両の高温状態に応じた的確な冷却能力制御を行うことができる。
上記(7)に記載の構成を有する車両の冷却装置においては、(8)前記冷却制御手段は、前記特定の車両高温状態で前記エンジンのアイドル運転が予め設定された第1待ち時間以上にわたり継続されたとき、前記回転上昇制御を開始することが好ましい。この構成により、冷却能力の増加時間を極力抑えて、冷却手段の無駄なエネルギ消費を抑えることができる。
上記(8)に記載の構成を有する車両の冷却装置においては、(9)前記冷却制御手段は、前記特定の車両高温状態での前記アイドル運転の継続時間が前記第1待ち時間より長い第2待ち時間を超えたとき、前記基本回転速度に対する前記冷却ファンの回転速度の上昇量を該継続時間に応じて変化させるのが好ましい。この構成により、冷却能力を適度なレベルに調整して、冷却手段の無駄なエネルギ消費を抑えることができる。
本発明によれば、特定の車両高温状態で車両の略停車状態等になった場合に、既存の冷却手段を制御して燃料タンクやその近傍の車両下部に熱が滞留することを有効に抑制し、燃料系内の燃料がその低沸点成分の沸点に達して蒸発燃料の濃度が急増することを防止して、パーコレーション現象の発生を確実に防止することのできる低コストの車両の冷却装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る車両の冷却装置の概略構成を示すその車両の下面図である。 図1の車両に搭載されるエンジンおよび蒸発燃料処理装置の概略構成図である。 本発明の一実施形態に係る車両の冷却装置における制御系のブロック構成図である。 本発明の一実施形態に係る車両の冷却装置の制御系において実行されるファン回転数算出処理の概略手順を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る車両の冷却装置の冷却作用を比較例と対比して示すグラフであって、特定の車両高温状態で停車した時点からの経過時間をそれぞれ横軸として、図5(a)はその停車後のタンク内の燃料温度の変化を、図5(b)はその停車後の蒸発燃料の温度の変化を、図5(c)はキャニスタの吸着容量不足量を、それぞれ示している。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施形態に係る車両の冷却装置とその制御系の概略構成を示しており、本発明を内燃エンジンとその燃料タンク等を搭載した車両の冷却装置に適用したものである。
まず、本実施形態の構成について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の前方側に位置するエンジンルーム3の内部に、エンジン10と、このエンジン10の前方側に配置されるとともに図示しない冷却水配管を介してエンジン10の冷却液を循環可能に通すラジエータ40(熱交換器)と、車体2の前方のフロントグリル部4からラジエータ40を通しエンジン10に向けて車両後方側に冷却風を流すように回転する冷却ファンユニット50とを備えている。また、エンジンルーム3の後部から後方に突出するよう、エンジン10の後部には公知の自動変速機30が一体的に締結・固定されており、車体2の後方側の下部には、エンジン10で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する燃料タンク25が搭載されている。
エンジン10は、火花点火式の多気筒、例えばV型8気筒のガソリンエンジンによって構成されている。このエンジン10は、一対のバンク部11a,11bにそれぞれ4つの気筒11c(図2中に1つのみ模式的に図示する)を配したものであり、各気筒11cには、ピストン12で仕切られた燃焼室13が形成され、吸気弁16と排気弁17とが図示しない動弁機構により開閉可能に装備されるとともに、燃焼室13内に露出するよう点火プラグ18が配置されている。また、各気筒11c内のピストン12は、コネクティングロッド14を介してクランク軸15の対応するクランクスルー部分に連結されている。
また、エンジン10の各気筒11cに対応する吸気ポート部分(詳細図示せず)にはインジェクタ21(燃料噴射弁)が装着されており、複数の気筒11cに対応する複数のインジェクタ21は、それぞれデリバリパイプ22に接続されている。このデリバリパイプ22には、車体2の後方側の下部に搭載された燃料タンク25内の燃料ポンプ23から吐出された燃料(例えばガソリン)がプレッシャレギュレータ24を介して供給されるようになっている。
また、エンジン10の吸気管26内にはスロットルバルブ27が設けられており、スロットルバルブ27より燃焼室13側には吸気管26と一体に吸気通路を形成するとともに所定の容積を有するサージタンク28が設けられている。さらに、図1に示すように、エンジン10の左右一対の排気管29には、それぞれ例えば三元触媒からなる排気浄化用の触媒装置29aと公知の消音構造を有する消音器29bとがそれぞれ装着されている。
自動変速機30は、エンジン10から出力される回転動力をエンジン10の回転数(回転速度)および車両1の走行速度(車速)に応じて変速するようになっており、推進軸31を介してディファレンシャル装置33に伝達することで、このディファレンシャル装置33および左右の駆動軸34L,34Rを介して左右の駆動車輪35L,35Rを差動可能に駆動できるようになっている。
ところで、車両1の車体2の下部は、エンジンルーム3の後方側において、排気管29や他の配管類あるいは推進軸31等が配置されるように下向きに開いた凹状部5を有しており、エンジンルーム3と燃料タンク25の間の車体2の下部には、この凹状部5内で車体2のフロア下面と排気管29等との間に位置するように、断熱シート6が貼り付けられている。
ラジエータ40は、内燃機関であるエンジン10の内部冷却通路11w(ウォータージャケット;詳細は図示しない)を通った冷却液、例えば冷却水を冷却風として供給される空気と熱交換してエンジン10を冷却する熱交換器であり、詳細は図示しないが、エンジン10からの冷却水の戻り側となるアッパータンク部およびエンジン10への冷却水の供給側となるロワタンク部を有している。なお、エンジン10には図示しないウォーターポンプが内蔵されており、エンジン10からラジエータ40側に高温の冷却水が排出され、ラジエータ40内での熱交換により冷却された冷却水がエンジン10側に再度吸入される所定の循環経路で、あるいは更にエンジン10から図示しない配管および車室側ヒータ(ヒーター用熱交換器)内を選択的に通す循環経路で、冷却水を循環させるようになっている。また、ウォーターポンプの吸入側には冷却水温度に応じて開閉する公知のサーモスタットが配置されており、ラジエータ40を通る冷却液の流量がサーモスタットによって調節されるようになっている。
冷却ファンユニット50は、ラジエータ40に対向する少なくとも1つの冷却ファン51を電動モータ(油圧モータでもよい)からなるファン駆動モータ52によって回転駆動するものであり、ラジエータ40を通る冷却水と冷却風との間の熱交換によってエンジン10を間接的に冷却することができるようになっている。また、エンジン10に対向するラジエータ40の片面側には、冷却ファン51の周囲でラジエータ40の片面側に空気通路を形成するファンシュラウド53が装着されており、ラジエータ40を通過した空気がラジエータ40からエンジン10に向かって案内されるようになっている。
ファン駆動モータ52は、エンジンコントロールコンピュータ(以下、ECCという)60からのファン回転数指令信号に従って、クーリングファンコントローラ65により駆動制御されるようになっており、これらECC60およびクーリングファンコントローラ65は、少なくともエンジン10の冷却水の温度に応じて冷却ファン51の作動の有無および作動時のファン回転数を制御することで冷却ファンユニット50の冷却動作およびその冷却能力を制御する冷却制御手段を構成している。
ECC60は、詳細なハードウェア構成を図示しないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性のバックアップ用メモリ、入出力インターフェース回路に加えて、定電圧電源や通信IC等を含んで構成されている。
このECC60の入力インターフェース回路には、図3に示すように、エンジン1に装着された各種センサ、例えば吸入空気量を検出するエアフローメータ71、クランク軸の所定回転角度毎の回転を検出するクランクポジションセンサ72、スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサ73、車速を検出する車速センサ74、カムシャフトの回転角度位置を検出するカムポジションセンサ75(気筒判別センサ)、吸入空気温度を検出する吸気温センサ76(空気温度検出手段)、冷却水の温度を検出する水温センサ77、および、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ78が、それぞれ接続され、さらに、図示しないボデー系多重通信ラインを介してエアコン冷媒圧センサ79が接続されている。そして、これらセンサ群からのセンサ情報がECC60に取り込まれるようになっている。
また、ECC60の出力インターフェース回路には、各インジェクタ21と、各点火プラグ18を駆動する図示しないイグナイタ81と、スロットルバルブ27の開度を操作するスロットルモータ82と、後述するパージ用のバキュームソレノイドバルブ(以下、パージ用VSVという)94と、クーリングファンコントローラ65と、このクーリングファンコントローラ65へのバッテリ電源や燃料ポンプ23その他のアクチュエータ類へのバッテリ電源を切替え制御する図示しないリレースイッチ回路等が接続されている。
ECC60は、主としてROMに格納された制御プログラムに従って、入力インターフェース回路から取り込んだセンサ情報や予め設定された設定値情報、マップデータ等に基づいて演算処理を実行し、その結果に応じて出力インターフェース回路からの制御信号出力を行うことで、エンジン10および補機類の制御を実行するようになっている。
具体的には、ECC60は、例えばエアフローメータ71およびクランクポジションセンサ72のセンサ情報から得られるエンジン10の1回転当りの吸入空気量に基づいて、所定の目標空燃比となる燃料噴射量に相当するインジェクタ21の基本燃料噴射時間を演算し、この基本燃料噴射時間に最適空燃比となるよう各センサ信号に基づく補正処理を加え、適正な燃料噴射量で特定のクランク角に達する時点でインジェクタ21からの燃料噴射を実行するために、複数の制御値を算出する。また、ECC60は、エンジン10の運転状態に応じて、適正な点火時期やスロットル開度の制御等を実行するための複数の制御値をそれぞれ算出する。そして、ECC60の出力インターフェース回路からインジェクタ21を駆動し、エンジン10内での燃料噴射量を目標噴射量に制御するための燃料噴射信号や、イグナイタ81を介して点火プラグ18の点火時期を制御する点火時期制御信号、あるいは燃料ポンプ23等のアクチュエータ類をon/offさせるリレー切替信号等をそれぞれ出力するようになっている。
一方、図2に示すように、燃料タンク25とエンジン10の吸気管26の間、例えば燃料タンク25とサージタンク28の間には、燃料タンク25内で発生する蒸発燃料をエンジン10の吸気時に吸気管26内に放出させて燃焼させることができる蒸発燃料処理装置90(蒸発燃料処理手段)が介装されている。
この蒸発燃料処理装置90は、活性炭を内蔵し、燃料タンク25で発生する蒸発燃料を吸着するよう燃料タンク25に配管92により接続されたキャニスタ91と、このキャニスタ91とサージタンク28の間に配設されたパージ用配管93と、パージ用配管93の途中に設けられたパージ用VSV94と、燃料タンク25のキャップ付きの給油口部25aの近傍の大気圧をキャニスタ91に導入する大気導入管95と、各種センサ情報に基づいてパージ用VSV94を開閉制御するパージ制御手段としてのECC60と、によって構成されている。この蒸発燃料処理装置90は、パージ用VSV94が閉弁しているときまたはエンジン10が停止しているとき、燃料タンク25内で気化した燃料ベーパをキャニスタ91に吸着させておくことができる一方、スロットルバルブ27の開度が予め設定された設定開度より小さい状態でのエンジン10の運転中にパージ用VSV94を開弁させてパージ用配管93内にエンジン10の吸気負圧を導入し、キャニスタ91に吸着していた燃料を吸気管26内の吸気通路にパージさせることができるようになっている。
また、ECC60は、水温センサ77、クランクポジションセンサ72の検出情報を基に冷却ファンユニット50の作動の有無を制御する手段の機能と、吸気温センサ76の検出情報を基にエンジンルーム3内の空気の温度を推定し検知する空気温度検出手段の機能と、公知の空燃比フィードバック制御状態下における酸素センサ78の出力値(排気中の残留酸素濃度に対応する検出値)を基にパージ用配管93内の蒸発燃料の濃度(蒸発燃料処理装置90によって吸気通路側にパージされる蒸発燃料の濃度;以下、パージガス濃度という)を推定するパージガス濃度推定手段の機能と、スロットルポジションセンサ73および車速センサ74の検出情報を基にエンジン10のアイドリング状態で車両1が略停車している状態(予め設定された閾値車速以下となる状態;エンジン10の負荷状態が予め設定された各閾値以下となる状態)か否かを判定するアイドル停車判定手段と、水温センサ77、クランクポジションセンサ72、車速センサ74およびエアコン冷媒圧センサ79からのセンサ情報に基づいて、冷却ファンユニット50の回転速度[rpm]を少なくともエンジン10の運転状態であるエンジン冷却水温およびエンジン回転数に応じ、さらにエアコン冷媒ガス圧力および車速に応じた基本回転数(基本回転速度)に制御する基本回転制御手段の機能と、を具備している。
さらに、ECC60は、エンジン10の負荷状態であるスロットル開度や吸入空気量、燃料噴射量等が予め設定された各閾値以下に低下したとき、例えばエンジン10のアイドル運転状態で車両が略停車状態に移行したとき、エンジンルーム3内の空気温度およびパージガス濃度のうち少なくとも一方の推定値に基づいて、その停車時点(速度低下時点)から一定時間内に燃料タンク25内の燃料がその燃料中の低沸点成分の沸点に到達し得る程度の特定の車両高温状態にあるか否かを判定する高温状態判定手段としても機能するようになっており、本実施形態においては、高温状態判定手段としてのECC60が、冷却液の温度が予め設定された判定開始液温以上である場合であって、エンジン10のアイドル運転状態で車両1が停車したときに、パージガス濃度推定手段および空気温度検出手段のうち少なくとも一方としてのECC60と協働して、特定の車両高温状態か否かを判定するようになっている。
ここで、エンジンルーム3内の空気温度は、吸気温センサ76によって検出される吸気温度と、各種運転条件および車両走行条件における吸気温度とエンジンルーム3内の空気温度との関係を予めの実験により把握し、マップや計算式により算出可能にしておくことで、推定可能となる。あるいは、エンジンルーム3内で高温となる部分や燃料タンク25側に熱が伝わり易い部分の温度との相関性が強い部分で、吸気管26内の吸気温度を検出するようにしてもよい。
また、パージガス濃度の推定について説明すると、蒸発燃料処理装置90によりサージタンク28内に放出される蒸発燃料がパージされる状態にあっては、そのパージガス濃度が増すと、エンジン10に吸入される空気と燃料の質量比である空燃比はリッチ側に変化する傾向となり、パージガス濃度が減ると空燃比はリーン側に変化する傾向となるのに対して、ECC60は、エンジン10の通常運転時において、三元触媒からなる触媒装置29aの排気浄化能力を最大に引き出せるように、空燃比が理論空燃比となるように酸素センサ78の出力値に基づいて燃料噴射量を制御する公知の空燃比フィードバック制御を実行するようになっている。したがって、パージガス濃度が変化すると、インジェクタ21から噴射される燃料噴射量が変化することとなり、酸素センサ78の出力値を基にパージガスの濃度を推定することが可能である。また、エンジン10について予め試験を行い、パージガス濃度の変化と酸素センサ78の出力値に対応する空燃比の変化との対応関係をマップ化する等しておくことで、パージガス濃度を精度良く推定することができる。なお、酸素センサ78は、少なくとも片側のバンクの4つの気筒11cに対応する4つの排気ポートから片側の排気管29の触媒装置29aまでの間に配置されており、インジェクタ21から噴射される燃料噴射量は酸素センサ78の出力値に応じて制御される。また、パージガス濃度を推定する際には、インジェクタ21の燃料噴射量の平均値を求め、酸素センサ78の検知値から理論空燃比に対する実空燃比のリッチ側への偏り(リッチ度合い)を把握して、パージガス濃度を推定することができる。ただし、本実施形態においては、エンジン10が、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ78の出力値を基に空燃比を理論空燃比にフィードバック制御する空燃比フィードバック制御手段としてのECC60を備えているので、高温状態判定手段としてのECC60は、エンジン10の空燃比が理論空燃比よりリッチ側に変化したときの酸素センサ78の出力値の変化度合いに基づいて、燃料タンク25内の燃料中におけるエバポレーションガス(蒸発燃料)の発生量が予め設定された閾値を超える程度に燃料タンク25内の燃料の温度が上昇していることを推定することで、パージガス濃度が特定の車両高温状態に対応する一定濃度値を超えると推定するようになっている。
さらに、高温状態判定手段について説明すると、例えばエンジン10が高負荷で運転されることによりエンジンルーム3内の温度が或る温度以上となる状態が持続した後、あるいは、そのような状態が持続されるのに十分な程度にエンジンルーム3内の温度が高温になった後に、車両1の走行が停止され、そのままエンジン10のアイドル運転が継続されるような場合、温度上昇したエンジンルーム3内の熱は、車両1の下部、特に排気管29や推進軸31等が配置される車両1の下部側の凹状部5の付近において、徐々に車両1の後方側に移動し易い。このような場合、エンジンルーム3内の温度が或る温度以上になるとともにパージガス濃度が或る濃度値以上に達することになり、燃料タンク25内の燃料は高温であるか、または一定時間内に高温になる可能性が高い状態になる。したがって、エンジンルーム3内の空気温度およびパージガス濃度のうち少なくとも一方の値に基づいて、アイドル停車時点(略停車状態への速度低下時点)から一定時間内に燃料タンク25内の燃料がその燃料中の低沸点成分の沸点に到達し得る程度に温度上昇し得るか否かを判定することができる。なお、ここにいう低沸点成分とは、燃料中の成分であって沸点が例えば摂氏50度程度かそれ以下であるもの(燃料留分)である。
そして、ECC60は、高温状態判定手段の機能により特定の車両高温状態にあると判定されたときには、クーリングファンコントローラ65と共に構成する冷却制御手段としての機能により、燃料タンク25内の燃料が前記アイドル停車時点から一定時間内に冷却されるように、冷却ファンユニット50の冷却能力、例えば冷却ファンユニット50のファン回転数[rpm]を前記基本回転数(特定の車両高温状態にないと判定された場合のファン回転速度の制御値)に比べて増加させるようになっている。
この増加後の冷却ファンユニット50の回転数は、特定の車両高温状態でエンジン10のアイドル運転が継続される状態であっても、その回転数の増加後の一定時間内に燃料タンク25やその近傍の車両下部が冷却され始め、それらに熱が滞留することが有効に抑制される程度に基本回転制御時より高められた回転数である。
なお、ここにいう冷却能力の増加とは、冷却ファンユニット50のファン回転速度を上昇させることによって、エンジン10に対するラジエータ40および冷却ファンユニット50の単位時間当りの冷却能力を高めることが当然に含まれるが、それ以外に、複数の冷却手段の作動数を増加させることや、冷却能力の異なる複数の冷却手段を選択的に使用することを含む。具体的には、例えば冷却ファンユニット50の他に図3中に仮想線で示すような冷却ファンユニット50Fを併設するような場合に、それらの作動数を1台から2台にしたり、冷却ファンユニット50Fが冷却ファンユニット50より冷却能力の低いものである場合に、冷却ファンユニット50Fによる冷却状態から冷却ファンユニット50による冷却状態に切り替えたりするものであってもよい。さらに、ここにいう冷却能力の増加とは、エンジン10の停車時点からの冷却ファンユニット50の作動時間(車両1の走行停止状態への移行後に作動する冷却手段の作動時間)を長くすることを含むものである。
このように、本実施形態においては、クーリングファンコントローラ65と共に冷却制御手段を構成するECC60は、高温状態判定手段としての機能により特定の車両高温状態であると判定しない場合には、冷却ファンユニット50の冷却ファン51の回転をエンジン10の運転状態等に応じた基本回転数に制御する基本回転制御を実行し、一方、高温状態判定手段としての機能により特定の車両高温状態であると判定した場合には、冷却ファン51の回転を基本回転数より高速となる回転速度に上昇させる回転上昇制御を実行するようになっている。
より具体的には、ECC60は、内蔵するROMまたはバックアップメモリ内に、エンジン冷却水温に応じてファン回転数を設定するためのマップM1、エアコンの作動状態に応じてファン回転数を設定するためのマップM2、エンジン回転数の高低に応じてファン回転数を切替え設定するためのマップM3、および、車速の大小に応じてファン回転数を切替え設定するためのマップM4を有している。そして、ECC60は、エンジン10の運転中に冷却水温度がある水温を超えたときにはその冷却水温に応じて冷却ファンユニット50のファン回転数が上昇するようにファン回転数を設定し、エンジン回転数が予め設定された閾値回転数を超えたとき、あるいは、車両1に搭載されたエアコン(空調装置)の作動によってエアコンの冷媒圧力が予め設定された閾値圧力域を超えたときには、それぞれ冷却ファンユニット50のファン回転数を高速側のファン回転数に設定するようになっており、それら複数のファン回転数の設定値となるべき算出値のうち最も高速となるファン回転数を選択して、冷却ファンユニット50のファン回転数をその選択した回転数に制御するようになっている。また、ECC60は、車速が予め設定された閾値車速を超えて車両1の走行中の冷却風が十分に得られるとき、ファン回転数を低速側のファン回転数に設定するようになっている。
加えて、ECC60は、内蔵するROMまたはバックアップメモリ内に予め格納されたファン回転数上昇制御用のマップM5,M6のうち少なくとも一方、例えば双方を有しており、そのマップM5によりエンジンルーム3内の空気温度に応じてファン回転数の基本回転数からの回転上昇の有無(要否)を判定するとともに、そのマップM6によりパージガス濃度に応じてファン回転数の基本回転数からの回転上昇の有無を判定し、それらのうち回転上昇有りとなった判定結果を優先してファン回転数の基本回転数からの上昇制御を実行するか否かを決定するようになっている。
なお、ECC60は、エンジンルーム3内の空気温度およびパージガス濃度のそれぞれに基づいて、ファン回転数の基本回転数からの上昇量を無段階にあるいは複数段階に設定し、それらのうち上昇量(上昇回転数)が大きい方の判定結果を優先してファン回転数の基本回転数からの上昇制御量を決定する。
次に、作用について説明する。
上述のように構成された本実施形態においては、ECC60によって冷却ファンユニット50の基本回転制御が実行される。
例えば、エンジン10の運転中に冷却水の温度がある水温を超えたときにはその冷却水温に応じて冷却ファンユニット50のファン回転数が上昇するように制御され、エンジン回転数が予め設定された閾値回転数を超えたとき、あるいは、車両1に搭載されたエアコン(空調装置)の作動時によってエアコンの冷媒圧力が予め設定された閾値圧力域を超えたときには、それぞれ冷却ファンユニット50のファン回転数が高速側のファン回転数に制御される。一方、車速が予め設定された閾値車速を超えることによって車両1の走行中の冷却風が十分に得られるとき、冷却ファンユニット50のファン回転数は、低速側のファン回転数に設定される。
したがって、通常の運転状態であれば、車両1の走行風によりあるいは冷却ファンユニット50によってエンジンルーム3内は有効に冷却されており、その状態から車両1が停止し、エンジン10のアイドル運転が継続されるとき、ECC60によって特定の車両高温状態であると判定されないことになる。この場合、上述のような基本回転制御の範囲内で冷却ファンユニット50の作動が制御される。
一方、例えば、エンジン10が高負荷で運転されてエンジンルーム3内の温度が或る温度以上となる状態が持続した後、あるいは、そのような状態が持続されるのに十分な程度にエンジンルーム3内の温度が高温になった後に、車両1の走行が停止され、そのままアイドル運転が継続されるような場合、温度上昇したエンジンルーム3内の熱が、排気管29や推進軸31等が配置される車両1の下部側の凹状部5付近において徐々に車両1の後方側に移動し得る。そのため、特に車両1の停車時の環境が高温であるとき、その停車状態(停車またはそれに近い状態)への移行時点から一定時間以上にわたってアイドル運転が継続されると、停車状態の車両1の下部に配置された燃料タンク25およびその近傍の燃料配管等の燃料系内における燃料が、エンジンルーム3側から車両1の後方側に移動する熱によって加熱され、その燃料中の低沸点成分の沸点(例えば、摂氏54度)に達する可能性が高い特定の車両高温状態が生じ得る。
そして、このような状態でエンジン10のアイドル運転が継続されるときには、ECC60によって特定の車両高温状態であると判定され、冷却ファンユニット50が基本回転制御よりも高速度となるように回転上昇側に制御されることになる。
したがって、特定の車両高温状態でエンジン10のアイドル運転が継続される状態ではあるものの、冷却ファンユニット50の回転上昇により、その回転上昇から一定時間内に燃料タンク25やその近傍の車両下部が冷却され始め、それらに熱が滞留することが有効に抑制されるので、パーコレーション現象の発生が防止される。
具体的には、ECC60では、エンジン10の運転制御のために冷却水温が一定温度毎に検出され、エンジン10の運転中であって冷却水温が一定温度を超えている期間中において、図4にフローチャートで示すような冷却ファン回転数算出ルーチンが所定時間毎に実行される。
この冷却ファン回転数算出ルーチンが開始されると、まず、ECC60に取り込まれているエンジン10の冷却水温およびエンジン回転数、エアコン冷媒圧力、車速等のセンサ情報が取得され(ステップS11)、マップM1〜M4によりそのセンサ情報に応じた冷却ファンユニット50のファン回転数が算出され、それら複数のファン回転数の算出値のうち最も高速となるファン回転数が選択されて、冷却ファンユニット50の基本回転数の算出値に設定される(ステップS12)。
次いで、ECC60のアイドル停車判定手段としての機能により、スロットルポジションセンサ73および車速センサ74からECC60に取り込まれているスロットル開度および車速の検出情報を基に、アイドル停車中であるか否か、すなわち、エンジン10のアイドル運転状態で車両1が略停車している状態であるか否かが判別される(ステップS13)。
このとき、アイドル停車中でなければ(ステップS13でNOの場合)、車速に応じて必要時にファン回転数を低下させる算出処理がなされる(ステップS16)。すなわち、車速が予め設定された閾値車速を超えて車両1の走行中の冷却風(以下、車速風という)が十分に得られるときには、ファン回転のための動力を軽減させるよう低速側のファン回転数が算出されるか予め設定された低速側のファン回転数が算出値として採用され、閾値車速を超えていなければ、算出済みの基本回転数がその車速に応じた回転数の算出値として採用される。
一方、アイドル停車中か否かの判定時にアイドル停車中であれば(ステップS13でYESの場合)、次いで、ECC60の高温状態判定手段としての機能により、ECC60により検出・推定されるエンジンルーム3内の空気温度およびパージガス濃度のうち少なくとも一方の検出・推定値に応じて、マップM5,M6により特定の車両高温状態であるか否か、すなわち、アイドル停車状態への移行時点から一定時間内に燃料タンク25内の燃料がその燃料中の低沸点成分の沸点に到達する可能性があるか否かが判定される(ステップS14)。
特定の車両高温状態であると判定された場合、次いで、燃料タンク25内の燃料がアイドル停車時点から一定時間内に冷却されるように冷却ファンユニット50のファン回転数を前記基本回転数に比べて増加させるときの回転数上昇量がエンジンルーム3内の空気温度およびパージガス濃度のうち少なくとも一方に応じて算出されるか、予め設定された回転数上昇量が今回の上昇量の算出値として採用される(ステップS15)。
そして、この回転数上昇量の算出がなされるか、あるいは、上述の車速に応じたファン回転数が算出されると、その基本回転数に回転数上昇量を加算したファン回転数が、あるいは車速に応じたファン回転数が、今回の冷却ファン回転数算出ルーチンの算出結果であるファン回転数として確定し(ステップS17)、今回の算出処理が終了する。
このように、本実施形態においては、車両1の走行が停止した時点(あるいはそれに近い程度、例えば空気流による燃料タンク25の冷却熱量が停車時と同等になる程度に車両1の走行速度が低下した時点)で、その下部に配置された燃料タンク25およびその近傍の燃料配管等の燃料系内の燃料が、その停車(速度低下)時点から一定時間内にその燃料中の低沸点成分の沸点に達する可能性が高い特定の車両高温状態であるか否かが高温状態判定手段としてのECC60によって判定され、特定の車両高温状態であれば、燃料タンク25内の燃料が一定時間内に冷却されるよう冷却手段である冷却ファンユニット50の冷却能力が増加側に制御される。したがって、車両1の略停車後に燃料中の低沸点成分が沸点に達して燃料系内の蒸発燃料濃度が急増する可能性がある場合に、エンジン10の冷却のための既存の冷却手段である冷却ファンユニット50の冷却能力を制御して燃料タンク25やその近傍の車両下部に熱が滞留することが有効に抑制され、パーコレーション現象の発生が未然に確実に防止される。したがって、パーコレーション専用のセンサ類が必要でなく、パーコレーション現象の発生を確実に防止できる。また、インジェクタ21も十分に冷却され、エンジンの高温再始動性にも優れた低コストの車両の冷却装置となる。
本実施形態では、また、高温状態判定手段としてのECC60が、車両1のアイドル停車状態への以降時点から一定時間内に燃料タンク25内の燃料がその低沸点成分の沸点に到達し得る程度に温度上昇し得るか否かを判定するので、高負荷走行後に車両1が停車したままアイドル運転状態で長時間放置されるような場合であっても、キャニスタ91の燃料吸着量に余裕が無くなる前に燃料タンク25内の蒸発燃料量を抑える冷却が確実に開始されるようにすることができる。
さらに、吸気温センサ76の検出情報を基に推定・検出されたエンジンルーム3の内部の空気温度に基づいて特定の車両高温状態か否かを判定するので、既存の吸気温センサ76を空気温度検出手段として利用することができ、専用部品を別に設けることなく、ECC60に燃料の沸騰を招来し得る特定の車両高温状態か否かを判定するプログラムを搭載するだけで済む。しかも、エンジン10の空燃比が理論空燃比よりリッチ側(理論空燃比より燃料成分が多いことを示す空燃比)に変化したとき、酸素センサ78の出力値から算出できるそのリッチ度合いを基に燃料から発生するエバポレーションガス濃度を推定し、その状態での運転が続くとエバポレーションガスの発生量が蒸発燃料処理装置90の処理能力を超えると推定することで、蒸発燃料処理装置90によって吸気管26内にパージされるパージガス濃度の増加を的確に推定し、特定の車両高温状態か否かを判定することができるようになっているので、公知の空燃比フィードバック制御用等の排気酸素濃度検出値に基づいて、専用部品を別に設けることなくパージガス濃度の変化を推定し、その推定結果に基づいて特定の車両高温状態か否かを判定するプログラムを搭載するだけで、確実な蒸発燃料処理が可能になる。
加えて、本実施形態においては、ECC60が、ラジエータ40の冷却水の温度が予め設定された判定開始液温以上である場合であって、エンジン10のアイドル運転状態で車速もしくはエンジン10の負荷状態が各閾値以下に低下したときに、特定の車両高温状態か否かを判定するようになっているので、エンジン冷却水温度が高い状態で略停車状態に移行し、特定の車両高温状態になり易い場合に、特定の車両高温状態であるか否かを確実に判定でき、必要時に燃料タンク25内の燃料を確実に冷却することができる。
また、本実施形態では、特定の車両高温状態であると判定されない場合には、冷却ファンユニット50のファン回転を少なくともエンジン10の運転状態に応じた基本回転数に制御する基本回転制御を実行し、特定の車両高温状態であると判定された場合には、冷却ファンユニット50のファン回転を基本回転数より高速となる回転速度に上昇させる回転上昇制御を実行するので、冷却手段である冷却ファンユニット50を無駄に作動させることなく、必要時に回転上昇制御を実行することができ、燃料タンク25付近の燃料系内における蒸発燃料の発生を有効に抑制することができるとともに、車両の高温状態に応じた的確な冷却能力制御を行うことができる。
ちなみに、図5(a)は、特定の車両高温状態となる走行から停車しアイドル停車する場合の経過時間を横軸として、本実施形態の構成を有する一実施例の車両1の燃料タンク内の燃料の温度変化を実線で示しており、同図中の破線は、冷却ファンユニット50を従来と同様に基本回転制御のみで制御し、特定の車両高温状態でアイドル停車してもファン回転数の上昇制御を実行しない比較例を示している。同図中の走行Aは、市街地走行の期間であり、走行Bは、登り坂の多い山頂までのドライブウェイを走行する期間である。
図5(b)は、図5(a)と同様の経過時間を横軸として、一実施例および比較例における燃料系の蒸発燃料の温度変化を示し、図5(c)は、図5(a)と同様の経過時間を横軸として、両者のキャニスタの吸着容量の余裕不足量の変化を比較して示している。
図5(a)に示すように、一実施例の場合、登坂路を比較的長時間走行する走行Bの期間の経過後に車両1が炎天下の駐車場にアイドル停車されるとき、車両1は特定の車両高温状態となっており、その停車時点でECC60により特定の車両高温状態であると判定され、燃料タンク25内の燃料が一定時間内に冷却されるように、ECC60およびクーリングファンコントローラ65により冷却ファンユニット50の冷却能力が増加するようファン回転数の上昇制御がなされる。したがって、図5(a)および図5(b)に示すように、その上昇制御が実行されない比較例に対して、一実施例では、燃料タンク25内の燃料の温度速度が遅くなり、走行Bの影響による熱がエンジンルーム3から後方側に徐々に移動する時間帯のほとんどの間にわたってアイドル停車状態が継続されても、燃料の低沸点成分がその沸点Tfbに達することが回避されることになり、燃料ベーパ温度の上昇も抑えられる。したがって、図5(c)に示すように、比較例の場合、長時間のアイドル停車が継続されると、キャニスタ91の蒸発燃料吸着容量に不足が生じ、パーコレーション現象が生じる可能性があるが、一実施例では、長時間のアイドル停車が継続されても、パーコレーション現象の発生が未然に確実に防止されるものとなることがわかる。
なお、上述の一実施形態においては、車両1の略アイドル停車状態への移行時に特定の車両高温状態か否かを判定し、特定の車両高温状態であれば即座に冷却ファンユニット50のファン回転数を高速側に上昇制御するものとしたが、冷却制御手段としてのECC60は、特定の車両高温状態でエンジン10のアイドル運転が図5(a)中の第1待ち時間TP1以上にわたり継続されたとき、前記回転上昇制御を開始するとともに、その特定の車両高温状態でのアイドル運転の継続時間が第1待ち時間TP1より長い同図中の第2待ち時間TP2を超えたときに、基本回転数に対する冷却ファンの回転速度の上昇量をその継続時間に応じて変化させるようになっていてもよい。
すなわち、冷却制御手段は、特定の車両高温状態でエンジン10のアイドル運転が予め設定された第1待ち時間TP1(例えば、15分)以上にわたり継続されたときに、回転上昇制御を開始するものであってもよい。そのようにすれば、冷却能力の増加時間を極力抑えるとともに、アイドル停車が比較的短時間に終了する場合に冷却ファンユニット50の電力エネルギ消費を抑えることができる。また、冷却制御手段は、特定の車両高温状態でのアイドル運転の継続時間が第1待ち時間TP1より長い第2待ち時間TP2(例えば、1時間または3時間)を超えたとき、基本回転数に対する冷却ファン51の回転速度の上昇量をそのアイドル停車状態の継続時間に応じて段階的に増加させたり漸増させたりするものであってもよい。そのようにすれば、冷却能力を適度なレベルに調整して、冷却手段の無駄なエネルギ消費を抑えることができる。
また、上述の一実施形態においては、冷却手段を、ラジエータ40に冷却風を通してエンジン10を冷却する冷却ファンユニット50としたが、エンジンを冷却する他の手段であってもよい。また、エンジンは、ガソリンエンジンとしたが、ガソリン以外の燃料を用いるエンジンであってもよいし、動力源であるとともに熱発生源となる他のエンジン、例えば内燃機関と共に電動機を用いるハイブリッドタイプのエンジンであってもよい。勿論、縦置きタイプであるか横置きタイプであるかを問わず、変速機等の動力伝達装置の配置等も限定されるものではない。
さらに、上述の一実施形態においては、特定の車両高温状態にあるか否かを判定する際にアイドル停車時点(速度低下時点)から一定時間内に燃料タンク25内の燃料がその燃料中の低沸点成分の沸点に到達し得る程度に温度上昇し得るか否かをエンジンルーム3内の空気温度およびパージガス濃度のうち少なくとも一方の推定値に基づいて判定することに代え、より直接的に燃料タンク内の燃料温度と関連するセンサ情報、例えば他の目的で燃料タンク内の燃料の温度を直接に検出する既存の燃料温度センサが存在する場合には、そのセンサ情報を基に特定の車両高温状態にあるか否かを判定できることはいうまでもない。また、燃料タンク25が車両1の後方側の下部に、図1中では車両左右方向の中央付近に配置されるものとしていたが、エンジンルーム3側からの熱が移動するエンジンルーム3の後方側であれば、燃料タンクの配置が左右、上下方向で特に限定されるものではない。
以上説明したように、本発明に係る車両の冷却装置は、特定の車両高温状態で車両の略停車状態等となった場合に既存の冷却手段を制御して燃料タンクやその近傍の車両下部に熱が滞留するのを有効に抑制し、パーコレーション現象の発生を未然に確実に防止することのできる低コストの車両の冷却装置を提供することができるという効果を奏するものであり、エンジンルーム内に冷却ファン等の冷却手段を有する車両において蒸発燃料の発生を抑制するのに好適な車両の冷却装置全般に有用である。
1 車両
2 車体
3 エンジンルーム
5 凹状部
6 断熱シート
10 エンジン
11c 気筒
21 インジェクタ
23 燃料ポンプ
25 燃料タンク
26 吸気管(吸気通路)
27 スロットルバルブ
28 サージタンク
29 排気管
29a 触媒装置
30 自動変速機(動力伝達装置)
40 ラジエータ(冷却手段)
50、50F 冷却ファンユニット(冷却手段)
51 冷却ファン
52 ファン駆動モータ
60 ECC(エンジンコントロールコンピュータ;冷却制御手段、パージ制御手段、空気温度検出手段、パージガス濃度推定手段、アイドル停車判定手段、基本回転制御手段、高温状態判定手段)
65 クーリングファンコントローラ(冷却制御手段)
73 スロットルポジションセンサ
74 車速センサ
76 吸気温センサ(空気温度検出手段)
77 水温センサ
78 酸素センサ
79 エアコン冷媒圧センサ
90 蒸発燃料処理装置(蒸発燃料処理手段)
91 キャニスタ
94 パージ用VSV(パージ用バキュームソレノイドバルブ)

Claims (9)

  1. エンジンと該エンジンの燃料を貯留する燃料タンクとを搭載した車両に装備され、少なくとも冷却ファンを用いて前記エンジンを冷却する冷却手段と、前記冷却手段の冷却能力を制御する冷却制御手段と、を備えた車両の冷却装置であって、
    前記エンジンの負荷状態が予め設定された各閾値以下に低下したとき、該低下から一定時間内に前記燃料タンク内の燃料が該燃料中の低沸点成分の沸点に到達し得る特定の車両高温状態にあるか否かを判定する高温状態判定手段を含み、
    前記冷却制御手段は、前記高温状態判定手段によって前記特定の車両高温状態にあると判定されたとき、前記燃料タンク内の燃料が前記低下から一定時間内に冷却されるよう、前記特定の車両高温状態にないと判定された場合に比べて前記冷却手段の冷却能力を増加させることを特徴とする車両の冷却装置。
  2. 前記高温状態判定手段は、前記エンジンのアイドル運転状態で前記車両が走行を停止したとき、該停止から前記一定時間内に前記燃料タンク内の燃料が前記低沸点成分の沸点に到達し得るか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の車両の冷却装置。
  3. 前記車両のうち前記エンジンが搭載されるエンジンルームの内部の空気温度を検知する空気温度検出手段を備え、
    前記高温状態判定手段が、前記空気温度検出手段によって検出された前記エンジンルームの内部の空気温度に基づいて前記特定の車両高温状態か否かを判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の冷却装置。
  4. 前記エンジンが、前記燃料タンク内の蒸発燃料を吸着し、前記エンジンの運転時に該エンジンの吸気通路内に蒸発燃料をパージすることができる蒸発燃料処理手段を備え、
    前記高温状態判定手段が、前記蒸発燃料処理手段によって前記吸気通路内にパージされる蒸発燃料の濃度を推定し、該濃度の推定値に基づいて前記特定の車両高温状態か否かを判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の冷却装置。
  5. 前記エンジンが、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサの出力値から空燃比を把握する手段を備え、
    前記高温状態判定手段は、前記エンジンの空燃比が理論空燃比よりリッチ側に変化したときの前記酸素センサの出力値に基づいて、前記燃料タンク内の燃料中のエバポレーションガス発生量を推定することを特徴とする請求項4に記載の車両の冷却装置。
  6. 前記車両に搭載されて前記エンジンの冷却液を通すラジエータをさらに備え、
    前記冷却ファンが前記ラジエータに冷却風を通すように回転し、
    前記高温状態判定手段は、前記冷却液の温度が予め設定された判定開始液温以上である場合であって、前記エンジンのアイドル運転状態での前記車両の走行速度または前記エンジンの負荷状態が予め設定された各閾値以下に低下したときに、前記特定の車両高温状態か否かを判定することを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の車両の冷却装置。
  7. 前記冷却制御手段は、前記高温状態判定手段によって前記特定の車両高温状態であると判定されない場合には、前記冷却ファンの回転を少なくとも前記エンジンの運転状態に応じた基本回転速度に制御する基本回転制御を実行し、前記高温状態判定手段によって前記特定の車両高温状態であると判定された場合には、前記冷却ファンの回転を前記基本回転速度より高速となる回転速度に上昇させる回転上昇制御を実行することを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちいずれか1の請求項に記載の車両の冷却装置。
  8. 前記冷却制御手段は、前記特定の車両高温状態で前記エンジンのアイドル運転が予め設定された第1待ち時間以上にわたり継続されたとき、前記回転上昇制御を開始することを特徴とする請求項7に記載の車両の冷却装置。
  9. 前記冷却制御手段は、前記特定の車両高温状態での前記アイドル運転の継続時間が前記第1待ち時間より長い第2待ち時間を超えたとき、前記基本回転速度に対する前記冷却ファンの回転速度の上昇量を該継続時間に応じて変化させることを特徴とする請求項8に記載の車両の冷却装置。
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CN114645767A (zh) * 2021-05-25 2022-06-21 长城汽车股份有限公司 一种风扇控制方法、装置及车辆

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