JP2012040598A - レーザ加工装置及びレーザ加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザ光が高い走査速度で走査される場合に、高い加工性能を得ることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】レーザ光を集光させるフォーカッシングレンズ15と、レーザ光でワーク50を走査するためにフォーカッシングレンズ15を相対的に移動させるXY移動機構4と、フォーカッシングレンズ15をZ軸方向32で移動させるZ移動機構5と、フォーカッシングレンズ15とワーク50との距離情報38を測定するアナログ変位計6と、Z移動機構5を制御して、レーザ光の焦点位置51の調整を行う制御システム7とを備えたレーザ加工装置1である。制御システム7が、アナログ変位計6で取得した距離情報38に基づいてフォーカッシングレンズ15の目標位置を算出し、Z軸移動指令39をZ移動機構5に出力するフォーカス制御ユニット34を備えるものとした。
【選択図】図6

Description

本発明は、レーザ光を加工対象物に照射することで加工を行うレーザ加工装置と、この装置を用いたレーザ加工方法に関するものである。
従来、様々な分野でレーザ光が用いられており、そのうちの1つとしてレーザ光を加工対象物に照射することで加工を行うレーザ加工装置がある。レーザ加工装置は、フラットパネルディスプレイ分野等の製造プロセスにおける薄膜基板や、その他の多様な構造物に対して加工を施すために用いられており、レーザ光を集光させて加工対象物に当該レーザ光を照射するフォーカス光学系を有する光学ユニットと、フォーカス光学系と加工対象物との相対的な位置関係を変化させる移動機構と、フォーカス光学系と加工対象物との距離を計測する計測器とを備えたものが知られている。
上記構成を有するレーザ加工装置では、レーザ光と加工対象物との距離が一定に保たれるように当該レーザ光の焦点位置の調整が行われ、当該レーザ光で加工対象物が走査されて、加工対象物がダイレクトに加工される。そのため、マスキング等が不要となり、製造プロセスが簡略化されて低コスト化を実現できる。その一方で、加工面の形状変化が大きい加工対象物や、サイズが大きくかつ厚みが薄いことからそりが大きい加工対象物で、加工前における加工面の矯正が困難なものがある。上記のレーザ加工装置を多用途へ展開する中で、このような加工対象物へ微細な加工を施すことが求められているが、加工面の形状変化が大きい場合や、加工対象物のそりが大きい場合、レーザ光の焦点位置が加工面に合い難いために焦点ずれを起こし、このことが加工形状に影響を与える。そのため、長い焦点深度を有するフォーカス光学系や、加工対象物とフォーカス光学系との相対的な位置を微調整できる移動機構を採用すること等で、レーザ光の焦点ずれを抑えている。
また、計測器で計測されたフォーカス光学系と加工対象物との距離に基づき、フォーカス光学系が移動され、当該フォーカス光学系の焦点位置の調整が行われるが、加工対象物の加工面において、レーザ光が照射される加工点と、上記の距離が計測される計測点とでは、互いに位置がずれている。そのため、上記の加工点と上記の計測点との間の位置ずれ分の補正を行ったうえで、当該加工点におけるフォーカス光学系の光軸方向における目標位置を算出する必要がある。この点に関し、例えば特許文献1には、円筒状回転体の表面に微細な加工を施すためのレーザ加工装置として、フォーカス光学系としてのレーザ加工ヘッド、このレーザ加工ヘッドをレーザ光の光軸方向へ移動させる追従テーブル、及びレーザ加工ヘッドから円筒状回転体の表面までの距離を測定する計測器を備えたものが記載されている。この装置では、レーザ加工ヘッドから円筒状回転体の表面までの距離が計測された計測点に加工ヘッドが整合した時点で、当該加工ヘッドの位置の補正が実行されるように、レーザ加工ヘッドを移動させる追従テーブルが制御されている。
特開平6−114578号公報
特許文献1のレーザ加工装置では、計測器による距離の計測からレーザ加工ヘッドの移動の制御までの時間に、同文献に記載の数式で算出された遅れ時間が加えられることで、レーザ加工ヘッドからのレーザ光が照射される加工点と、計測器による計測点との間の位置ずれ分が補正されている。上記の遅れ時間の算出は、上記の加工点と上記の計測点との間のロール表面上の寸法をロール表面の周速で除し、除した数値からPLCによる演算時間とレーザ加工ヘッドの移動時間との和を引くことで求められている。
ここで、レーザ光による加工対象物への走査速度が、例えば1000mm/secというような高速となった場合、レーザ光を光軸方向へ移動させるレーザ加工ヘッドは、非常に短い制御周期で制御されなければならない。しかし、同文献に記載のPLCでは、レーザ光の高い走査速度に対応可能な制御周期は得られず、上記の位置ずれ分の的確な補正をすることができない。従って、レーザ光が加工対象物に高い走査速度で走査される場合では、加工点におけるレーザ光の焦点位置の調整が不十分となり、十分な加工性能を得ることができないという欠点がある。
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、レーザ光が高い走査速度で走査される場合に、高い加工性能を得ることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明のレーザ加工装置は、レーザ光を発振させるレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を集光させて加工対象物に当該レーザ光を照射するフォーカス光学系を有する光学ユニットと、前記フォーカス光学系と前記加工対象物との相対的な位置関係を、前記レーザ光の光軸方向に略垂直な面内方向で変化させるXY移動機構と、前記加工対象物に対する前記フォーカス光学系の前記光軸方向における位置を変化させるZ移動機構と、前記フォーカス光学系と前記加工対象物との前記光軸方向における距離情報を取得する距離情報取得手段と、前記Z移動機構及び前記XY移動機構を制御することで、前記レーザ光の焦点位置の調整を行いつつ、当該レーザ光を前記加工対象物に走査させる制御システムと、を備えたレーザ加工装置であって、前記制御システムは、前記焦点位置の調整を行うために、前記距離情報取得手段によって取得した前記距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における目標位置を算出し、当該フォーカス光学系の移動指令を前記Z移動機構に出力するフォーカス制御ユニットを有していることを特徴とするものである。
上記本発明のレーザ加工装置によれば、焦点位置の調整を行うために、距離情報取得手段によって取得した距離情報に基づいてフォーカス光学系の光軸方向における目標位置を算出し、当該フォーカス光学系の移動指令を前記Z移動機構に出力するフォーカス制御ユニットを有する制御システムとしているため、レーザ光の高い走査速度に対応可能な短い制御周期を得ることができる。そのため、レーザ光が、高い走査速度で走査される場合であっても、レーザ光が照射される加工点と、距離情報が取得される計測点との間の位置ずれ分の的確な補正がされ、当該加工点におけるレーザ光の焦点位置の確実な調整を行うことができる。
前記フォーカス制御ユニットは、前記フォーカス光学系と前記加工対象物との前記面内方向における相対的な位置関係の変化に対し、前記距離情報をリアルタイムで取得し、この距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における前記目標位置を算出するリアルタイム制御モードを実行可能に構成されていることが好ましい。
前記フォーカス制御ユニットを上記のリアルタイム制御モードを実行可能に構成することで、フォーカス系から照射されたレーザ光で加工対象物を走査しながら、当該フォーカス光学系の光軸方向への移動を制御し、当該レーザ光の焦点位置の調整を行うことができるため、加工時間を短縮することができる。
前記フォーカス制御ユニットは、前記レーザ光が照射される照射範囲における複数の位置情報の各々に対応した複数の前記距離情報を取得し、これら複数の距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における複数の前記目標位置を算出するバッチ制御モードを実行可能に構成されていることが好ましい。
前記フォーカス制御ユニットを上記のバッチ制御モードを実行可能に構成することで、複数の距離情報から得た複数の目標位置を一旦保存し、これら複数の目標位置に基づいてフォーカス光学系の光軸方向への移動を制御し、レーザ光の焦点位置の調整を行うことができる。これにより、距離情報をリアルタイムで取得し難い場合であっても、加工点におけるレーザ光の焦点位置の確実な調整を行うことができる。
前記フォーカス制御ユニットは、前記フォーカス光学系と前記加工対象物との前記面内方向における相対的な位置関係の変化に対し、前記距離情報をリアルタイムで取得し、この距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における前記目標位置を算出するリアルタイム制御モードと、前記レーザ光が照射される照射範囲における複数の位置情報の各々に対応した複数の前記距離情報を取得し、これら複数の距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における複数の前記目標位置を算出するバッチ制御モードと、を切り替え実行可能に構成されており、前記距離情報の変動量が所定値よりも小さい場合には、前記リアルタイム制御モードを実行し、前記距離情報の変動量が所定値よりも大きい場合には、前記バッチ制御モードを実行することが好ましい。
前記フォーカス制御ユニットを、このようにリアルタイム制御モードとバッチ制御モードとを切り替え実行可能に構成することで、フォーカス光学系と加工対象物との光軸方向における距離情報の変動量が所定値よりも小さく、当該距離情報を取得し易い場合には、リアルタイム制御モードを実行し、当該距離情報の変動量が所定値よりも大きく、当該距離情報を取得し難い場合には、バッチ制御モードを実行できる。従って、加工面の形状変化が大きい加工対象物やそりが大きい加工対象物に対し、加工点におけるレーザ光の焦点位置の確実な調整を行うことができる。
本発明のレーザ加工方法は、レーザ光の光軸方向における焦点位置の調整を行いつつ、当該レーザ光で加工対象物を高速走査することで当該加工対象物に加工を施すレーザ加工方法であって、前記加工対象物の前記光軸方向における表面位置の変動量が所定値よりも小さい場合には、前記レーザ光が走査される前記加工対象物の走査位置の変化に対し、リアルタイムで前記焦点位置の調整を行い、前記加工対象物の前記光軸方向における表面位置の変動量が所定値よりも大きい場合には、前記レーザ光が走査される前記加工対象物の走査位置の変化に対し、予め取得した表面位置情報に基づいて前記焦点位置の調整を行うことを特徴とするものである。
上記本発明のレーザ加工方法によれば、加工対象物の表面位置の変動量にともなって、焦点位置の調整の仕方を変更できるので、加工面の形状変化が大きい加工対象物やそりが大きい加工対象物に高速走査する場合であっても、加工点におけるレーザ光の焦点位置の確実な調整を行うことができる。
上記の通り、本発明によれば、レーザ光が高い走査速度で走査される場合であっても、加工点におけるレーザ光の焦点位置の確実な調整が行われるので、高い加工性能を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の概略斜視図である。 ワークに対する走査方向を説明する説明図である。 光学ユニットの動きを説明するための模式図である。 制御システムと各モータとの関係を示すブロック図である。 オートフォーカス制御基板の機能ブロック図である。 Z軸サーボモータを制御するための構成を示す構成図である。 リアルタイム制御モードにおける距離情報を取得するタイミングを説明する説明図である。 (a)はバッチ制御モードを説明する説明ブロック図であり、(b)は同モードにおけるワーク上の距離情報を取得する計測点の説明図である。 検証を行うための機器構成を示す構成図である。 (a)はアナログ変位計の計測データであり、(b)はフォーカス制御ユニットで検知された計測データである。 (a)はリアルタイム制御モードで加工を行った場合における、フォーカス制御ユニットが算出したフォーカッシングレンズの目標位置と、Z軸サーボアンプの検出位置とを示すグラフであり、(b)はバッチ制御モードで加工を行った場合における、マトリクスデータによるフォーカッシングレンズの目標位置と、Z軸サーボアンプの検出位置とを示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置としての薄膜レーザパターニング装置(以下、パターニング装置という)1の概略斜視図である。以下の説明において、図1に示すパターニング装置1の前後方向に対応する方向をX軸方向30といい、左右方向に対応する方向をY軸方向31といい、上下方向に対応する方向をZ軸方向32という。このパターニング装置1は、レーザ光を加工対象物である基板50(以下、ワークという)上の所定領域で走査することで、所定のパターニングを行うものであり、レーザ光を発振させる図示しないレーザ発振器と、架台2と、レーザ発振器から出射されたレーザ光を伝送し、ワーク50へ照射する加工光学系3と、加工光学系3の一部とワーク50との相対的な位置関係を、X軸方向30及びY軸方向31(レーザ光の光軸に垂直な面内方向)で変化させるXY移動機構4と、加工光学系3の一部の位置をZ軸方向32(レーザ光の光軸方向)で変化させるZ軸移動装置5(Z移動機構)と、加工光学系3の一部とワーク50とのZ軸方向における距離情報を取得するアナログ変位計(距離情報取得手段)6と、XY移動機構4及びZ軸移動装置5等を制御する制御システム7とで主に構成されている。
レーザ発振器は、一般的なレーザ加工装置に適用されるものであり、本実施形態ではエキシマレーザを発生させるものが採用されている。このようなレーザ発振器は、例えば、高い電圧のかかった電極間でガスを電離させ、その際の放電で励起された原子が元に戻ることで発生する光を取り出すように構成されている。なお、レーザ発振器で生成するレーザは、エキシマレーザに限られるものではなく、ワークの性状に対応したYAGレーザ、CO2レーザ等の他のレーザ光を生成するものであってもよい。
架台2は、設置面上に複数の足部8を介して設置された直方体状の載置台9と、この載置台9の左右側部に固定され、当該載置台9の上方をまたがるように構成された門型部材10からなる。このうち門型部材10は、左右両側の柱部11とこれら柱部11間に渡された上部材12とで構成されている。加工光学系3には、レーザ発振器から出射されたレーザ光を所定の波形に成形する図示しない光学レンズ群や、当該レーザ光を微少スポット径のレーザ光としてワークへ照射するフォーカス光学系13を方形状の筐体内に備えた光学ユニット14が設けられている。フォーカス光学系13は、当該フォーカス光学系13まで伝送されてきたレーザ光を、所定の微少スポット径まで絞ってワーク50に照射し当該ワーク50を加工できるように集光するフォーカッシングレンズ15で構成されている。
図2は、ワーク50に対する走査方向を説明する説明図である。レーザ光とワーク50との相対的な位置関係をX軸方向及びY軸方向で変化させるXY移動機構4は、X軸移動装置16とY軸移動装置17で構成されている。X軸移動装置16は、載置台9上に設けられたレール機構18と、このレール機構18を介して載置台9に移動自在に支持された直方体状のテーブル19で構成されている(図1参照)。レール機構18は、載置台9の上面9aに設けられたX軸方向に伸びるレール20と、このレール20上をX軸方向に移動可能に設けられた板状部材21と、板状部材21のY軸方向へのずれを抑える補助レール22と、板状部材21上に設けられ、上面にテーブル19が固定された柱状部材28と、板状部材21を移動指令どおりに制御可能なX軸リニアモータ23とで構成されている。テーブル19の上面19aには、ワーク50が動かないように載置されている。X軸リニアモータ23が駆動されると、板状部材21がレール20上で動かされ、テーブル19が図2の走査ライン52で示すようにX軸方向30へ動かされる。これにより、ワーク50が、光学ユニット14に備えられたフォーカッシングレンズ15対して、X軸方向30へ最大1000m/secの速度で相対移動されるようになっている。
Y軸移動装置17は、門型部材10の上部材12に取り付けられており、光学ユニット14をワーク50の上方でY軸方向31に移動自在に支持するように構成されている。このY軸移動装置17には、光学ユニット14を移動指令どおりに制御可能なY軸リニアモータ24が備えられている。Y軸リニアモータ24が駆動されると、光学ユニット14が、Y軸方向31へ動かされる。これにより、光学ユニット14に備えられたフォーカッシングレンズ15が、ワーク50に対してY軸方向31へ相対移動されるようになっている。
図3は、光学ユニット14の動きを説明するための模式図である。Z軸移動装置5は、光学ユニット14の近傍に設けられたZ軸方向32に伸びるスライドレール25と、このスライドレール25にスライド自在に設けられると共に、当該光学ユニット14及びこれに収容されたフォーカッシングレンズ15を支持するスライド部材26とを備えている。スライドレール25には、スライド部材26をスライド自在とする図示しないスライド機構と、このスライド機構を動作指令どおりに制御可能なZ軸サーボモータ27が設けられている。Z軸サーボモータ27が駆動されると、スライド部材26がZ軸方向32へスライドし、このスライド部材26で支持された光学ユニット14がフォーカッシングレンズ15と共に、図3に示すようにZ軸方向32で上下移動する。光学ユニット14のZ軸方向32における上下移動によって、フォーカッシングレンズ15に入ったレーザ光が集光されて、ワーク50の加工面50aに当該レーザ光Lの焦点が合うように焦点位置51の調整が行われる。
なお、上記のX軸リニアモータ23、Y軸リニアモータ24は、それぞれ当該各リニアモータ23、24の駆動量を検出する図示しないリニアスケールを有しており、当該リニアスケールで検出された駆動量を出力するようになっている。また、上記のZ軸サーボモータ27は、当該Z軸サーボモータ27の駆動量を検出する図示しないエンコーダを内部に有しており、当該エンコーダで検出された駆動量を出力するようになっている。
アナログ変位計6は、光学ユニット14のフォーカッシングレンズ15とワーク50とのZ軸方向32における距離を計測するものであり、当該アナログ変位計6によってワーク50の加工面50aの変位(そり量等)を読み取ることができる。このアナログ変位計6は、加工面50aに射出された2つの計測用レーザ光が、当該ワーク50aに反射し、反射光として戻ってくる角度の変化を検知することで、距離の計測を行い、それに基づく距離情報を出力するものである。アナログ変位計6は、光学ユニット14のX軸方向における前側面14a及び後側面14bの両方に取り付けられている。なお、光学ユニット14のフォーカッシングレンズ15とワーク50とのZ軸方向32における距離を計測できるものであれば、本実施形態のアナログ変位計6に限定するものではない。
制御システム7は、X軸移動装置16のX軸リニアモータ23、及びY軸移動装置17のY軸リニアモータ24を制御することで、テーブル19をX軸方向へ移動させると共に、光学ユニット14をY軸方向へ移動させる。光学ユニット14のフォーカッシングレンズ15で集光されたレーザ光によるワーク50への走査は、次のようにして行われる(図2参照)。光学ユニット14に対してテーブル19のワーク50がX軸方向30(例えば、図2上向き方向)へ移動されることで、ワーク50がレーザ光によって往方向に走査され、その走査後、光学ユニット14が、Y軸方向31へ所定距離だけ(例えば、図2の走査ライン52間のピッチ分)移動され、再び、テーブル19が逆向き(例えば、図2下向き方向)へ移動されることで、ワーク50がレーザ光によって復方向へ走査される。これらの走査が繰り返されることで、ワーク50に対してレーザ光が往復走査される。
それと共に、制御システム7は、レーザ光によるワーク50の走査中において、アナログ変位計6で取得した上記の距離情報に基づき、Z軸移動装置5のZ軸サーボモータ27を制御することで、光学ユニット14をZ軸方向32で移動させて、フォーカッシングレンズ15とワーク50とのZ軸方向32における相対的な距離を一定に保つように制御する。つまり、この制御システム7は、ワーク50の加工面50aの変位に応じ、当該ワーク50に照射されるレーザ光の焦点位置51の調整を行いながら、当該ワーク50に対してレーザ光をX軸方向30に走査させる。これにより、ワーク50に対しレーザ光がX軸方向30で往復走査され、当該ワーク50に加工が施される。
以下、制御システム7についてさらに詳細に説明する。図4は、制御システム7と各リニアモータ23、24及びZ軸サーボモータ27との関係を示すブロック図である。制御システム7は、X軸リニアモータ23へ接続されて電力供給すると共に、当該X軸リニアモータ23へ駆動量等の信号を出力するX軸リニアアンプ30と、Y軸リニアモータ24へ接続されて電力供給すると共に、当該Y軸リニアモータ24へ駆動量等の信号を出力するY軸リニアアンプ31と、Z軸サーボモータ27へ接続されて電力供給すると共に、当該Z軸サーボモータ27へ駆動量等の信号を出力するZ軸サーボアンプ32と、さらにX軸リニアアンプ30、Y軸リニアアンプ31、及びZ軸サーボアンプ32へ接続されて、当該Z軸サーボアンプ32へ向けてZ軸移動指令(パルス)を出力するフォーカス制御ユニット34と、X軸リニアアンプ30、Y軸リニアアンプ31に接続されて、それらへX軸移動指令(パルス)、Y軸移動指令(パルス)を出力する位置決めユニット29とを備えている。
各リニアアンプ30、31、Z軸サーボアンプ32は、内蔵された各種の変換器を介して位置決めユニット29やフォーカス制御ユニット34から送られてくる各移動指令を、それぞれ上記の各リニアモータ23、24、Z軸サーボモータ27に駆動量(パルス)として送ると共に、当該各リニアモータ23、24、Z軸サーボモータ27の駆動量をそれぞれ位置決めユニット29、フォーカス制御ユニット34にフィードバックするフィードバック機能を有する。各リニアアンプ30、31には、それぞれ各リニアモータ23、24に備えられた各リニアスケールが接続され、Z軸サーボアンプ32には、Z軸サーボモータ27に備えられたエンコーダが接続されている。そして、各リニアモータ23、24の駆動状態は、それぞれX軸リニアアンプ30、Y軸リニアアンプ31により確認され、Z軸サーボモータ27の駆動状態は、Z軸サーボアンプ32により確認される。各リニアアンプ30、31、Z軸サーボアンプ32は、それぞれ位置決めユニット29、フォーカス制御ユニット34から出力された各移動指令に基づいて、それぞれ各リニアモータ23、24、Z軸サーボモータ27に駆動量(パルス)を送り、当該各移動指令が示す速度で当該各リニアモータ23、24、Z軸サーボモータ27を目標位置まで駆動させる。各リニアアンプ30、31の各リニアスケール、Z軸サーボアンプ32のエンコーダから入力される位置情報が目標位置になると、当該各リニアアンプ30、31、当該Z軸サーボアンプ32は、それぞれ各リニアモータ23、24、Z軸サーボモータ27の停止信号をそれぞれ位置決めユニット29、フォーカス制御ユニット34へ出力する。位置決めユニット29は、X軸リニアアンプ30、Y軸リニアアンプ31へ、それぞれX軸リニアモータ23、Y軸リニアモータ24に対するX軸移動指令、Y軸移動指令を出力しつつ、当該各リニアアンプ30、31から当該各リニアモータ23、24のフィードバック情報を受信することで、当該各リニアモータ23、24の動きを制御する。それと共に、X軸リニアアンプ30、Y軸リニアアンプ31は、X軸リニアモータ23、Y軸リニアモータ24のそれぞれのリニアスケールから入力される位置情報として、ワーク50のX軸方向への移動量であるX軸移動量(パルス)、及び光学ユニット14のY軸方向への移動量であるY軸移動量(パルス)を、フォーカス制御ユニット34へ出力できるようになっている。
フォーカス制御ユニット34は、具体的にはオートフォーカス制御基板35として構成されたものである。図5は、オートフォーカス制御基板35の機能ブロック図である。オートフォーカス制御基板35では、図示のようにCPUコア、メモリ、及びパルスコントローラ間においてバスを介してデータが伝送され、A/D変換部で変換されたデジタル信号がCPUコアへ入り、デジタル入出力部からの信号がCPUコアに伝送されると共にCPUコアからの信号がデジタル入出力部に伝送される。また、パルス入力部からのパルス信号がパルスコントローラに伝送されると共に、パルスコントローラからのパルス信号がパルス入力部に伝送される。
本実施形態で製作したオートフォーカス制御基板35の仕様は次の通りである。CPU:株式会社ルネサンステクノロジ製SHシリーズ、変位計入力:A/Dコンバータ、分解能:12bit、チャンネル数:2、サンプル数:100k/sec、変換誤差:2bit以内、DI:16点、DO:8点。パルス入力・・入力回路:RS422レベル、入力点数:2点(X軸・Y軸)、カウント方式:A/B層4逓倍カウント、分解能:28bit、許容速度:1Mpulse/sec、パルス出力・・出力方式:A/B層4逓倍カウント、出力パルス数:最大1Mpulse/sec。なお、このオートフォーカス制御基板35は、実際には筐体に収納されており、当該オートフォーカス制御基板35を機能させるために必要な動作条件や加工内容等の設定を入力するためのキーボードやマウス、コンソールなどの入力デバイス、入力された入力内容を確認するモニタが設けられている。このように構成された本実施形態のフォーカス制御ユニット34は、X軸移動指令、Y軸移動指令、Z軸移動指令を、それぞれ1msecの制御周期で出力することが可能となっている。なお、オートフォーカス制御基板の仕様は限定されるものではなく、加工条件や制御する機器等に従って適宜変更されるものである。
図6は、Z軸サーボモータ27を制御するための機器構成を示す構成図である。フォーカス制御ユニット34は、同図に示すようにX軸リニアアンプ30からのX軸移動量36(ワーク50のX軸方句への移動量)と、Y軸リニアアンプ31からのY軸移動量37(光学ユニット14のY軸方向への移動量)を取得する。そして、フォーカス制御ユニット34は、これら各移動量36、37及びアナログ変位計6によって取得した距離情報38(ワーク50のそり量)に基づいて、フォーカッシングレンズ15が設けられた光学ユニット14のZ軸方向における目標位置を算出し、当該光学ユニット14を移動させるためのZ軸移動指令39をZ軸サーボアンプ32に出力する。
Z軸サーボアンプ32は、Z軸移動指令39をZ軸サーボモータ27に向けて出力し、当該Z軸サーボモータ27を当該Z軸移動指令39に基づいて駆動させる。フォーカッシングレンズ15が設けられた光学ユニット14のZ軸方向32への制御に関し、1msecの制御周期での出力を可能とされたフォーカス制御ユニット34により、レーザ光の高い走査速度に対応可能な短い制御周期を得ることができる。また、上記のフォーカス制御ユニット34により、フォーカス制御ユニット34の出力時からフォーカッシングレンズ15の実際の移動開始まで時間が最大でも5msecとなっている。そのため、フォーカス制御ユニット34の出力時と、フォーカッシングレンズ15の実際の移動開始時との間の時間差が、非常に小さくなっており、フォーカッシングレンズ15を高精度で制御することができる。
フォーカス制御ユニット34には、ワーク50の加工面50aのZ軸方向32における変位に応じたフォーカッシングレンズ15の目標位置の算出方法として、リアルタイム制御モード40、バッチ制御モード41、及びこれらを組み合わせたデュアル制御モード42のプログラムが組み込まれている。これらの制御モード40、41、42により、フォーカッシングレンズ15で集光されるレーザ光による走査中、当該レーザ光の焦点が常に加工面50aに合うように、当該フォーカッシングレンズ15の焦点位置の調整が行われる。
リアルタイム制御モード40は、フォーカッシングレンズ15で集光されるレーザ光によるワーク50への走査(フォーカッシングレンズ15とワーク50とのXY軸方向における相対的な位置関係の変化)に対し、フォーカッシングレンズ15とワーク50とのZ軸方向32の距離情報38をリアルタイムで取得して、この距離情報38に基づいて、当該フォーカッシングレンズ15のZ軸方向32における目標位置を算出するものである。
リアルタイム制御モード40では、光学ユニット14に取り付けられたアナログ変位計6が、フォーカッシングレンズ15とワーク50との距離(加工面50aの変位)を先読みし、この距離情報38に基づいて、当該フォーカッシングレンズ15の目標位置が算出され、当該フォーカッシングレンズ15がZ軸方向32に移動される。光学ユニット14がワーク50に対して図2の紙面上方向に相対移動する場合には、光学ユニット14の前後に取り付けられた2つのアナログ変位計6、6のうち、後側のアナログ変位計6(図2紙面上側のアナログ変位計6)でフォーカッシングレンズ15とワーク50との距離を計測し、光学ユニット14がワーク50に対して図2の紙面下方向に相対移動する場合には、光学ユニット14の前後に取り付けられた2つのアナログ変位計6、6のうち、前側のアナログ変位計6(図2紙面下側のアナログ変位計6)でフォーカッシングレンズ15とワーク50との距離を計測する。
即ち、光学ユニット14がワーク50に対してX軸方向30で往復するのと共に、前側のアナログ変位計6と後側のアナログ変位計6とが、互いに切り替えられながら計測を行う。本実施形態では、アナログ変位計6による距離の計測は1msecの周期で行われ、フォーカス制御ユニット34からZ軸サーボアンプ32を介したZ軸サーボモータ27へのZ軸移動指令39の制御周期は、50msecの制御周期で行われる。従って、Z軸サーボアンプ32で駆動される光学ユニット14のフォーカッシングレンズ15は、50msecの制御周期で制御されてZ軸方向32に移動する。以上のような構成により、X軸方向に最大で1000m/secで移動するワーク50へ、フォーカッシングレンズ15を100μmの精度で制御することが可能となっている。
リアルタイム制御モード40におけるフォーカッシングレンズ15の目標位置の算出は次のようにして行う。図3からわかるように、レーザ光が照射される加工面50aの加工点50kの位置と、アナログ変位計6で計測する加工面50aの計測点50fの位置とは、X軸方向30において互いにずれている。そのため、その位置ずれ分55だけ、フォーカッシングレンズ15とワーク50とが互いに相対移動する時間を補正する必要がある。
図7は、リアルタイム制御モード40における距離情報38を取得するタイミングを説明する説明図である。上述のように、アナログ変位計6による距離の計測は1msecの計測周期43で行われる。フォーカス制御ユニット34から50msecで出力されるZ軸移動指令39は、当該Z軸移動指令39の指令時点44からディレイタイマ時間45だけ遡った時点46でのフォーカッシングレンズ15とワーク50との距離情報38から算出される。指令時点44から遡るディレイタイマ時間45は、上記の加工点50kの位置が上記の計測点50fの位置からずれている位置ずれ分55を(図3参照)、フォーカッシングレンズ15とワーク50とが互いに相対移動する相対移動時間である。
ここで、Z軸移動指令39のもととなる上記の距離情報38は、Z軸移動指令39の指令時点44からディレイタイマ時間45だけ遡った一時点における距離情報38aではなく、当該ディレイタイマ時間45だけ遡った時点46の前後合わせて30回の距離情報38aを平均した平均値とされる。本実施形態では、Z軸移動指令39の指令時点44からディレイタイマ時間45だけ遡った一時点から前に15回分(15msecの計測周期分)、後に15回分(15msecの計測周期分)の合計30回分の平均値が、Z軸移動指令39のもととなる距離情報38とされる。
なお、フォーカス制御ユニット34には、ディレイタイマ時間45の数倍分の距離情報38aが記憶されている。また、上述のように平均する距離情報38aの数は、前に15回と後に15回に限られるものではなく、前後の回数を互いに変えることや、平均する全体の回数を変えることができる。リアルタイム制御モード40は、アナログ変位計6での計測が容易な平面状のワークでの利用が特に好ましい。以上のような制御が可能とされた本実施形態のアルタイム制御モード40を実行することによって、レーザ光でワーク50を走査しながら、フォーカッシングレンズ15のZ軸方向32への移動を制御し、レーザ光の焦点位置51の調整を高精度で行うことができるため、加工時間を短縮することができる。
図8(a)は、バッチ制御モード41を説明する説明ブロック図であり、同図(b)は、同モード41におけるワーク50上の距離情報61を取得する計測点の説明図である。バッチ制御モード41では、ワーク50の加工面50a内でレーザ光が照射される照射範囲60における複数の位置情報62の各々に対応した複数の距離情報62を取得し、これら複数の距離情報62に基づいて、フォーカッシングレンズ15のZ軸方向32における複数の目標位置を算出するものである。
複数の目標位置は、マトリクスデータ63として、次のようにして取得された複数の距離情報61から算出される。なお、照射範囲60における複数の位置情報62は、X軸移動量36及びY軸移動量37から取得される。本実施形態におけるワーク50に照射するレーザ光の照射範囲60は、1800mm×1800mmの四方形とされており、この照射範囲60が複数の60mm×60mmのマトリクス区画M(1列目の第1区画M1、第2区画M2・・・・第29区画M29、第30区画M30、2列目の第31区画M31、第32区画M32・・・第30列目の第899区画M899、第900区画M900)に区分されている。各マトリクス区画Mでのフォーカッシングレンズ15とワーク50との距離の計測点64は、当該各マトリクス区画Mの中心点となる位置である。
複数の距離情報61は、アナログ変位計6の位置が各マトリクス区画Mの計測点64に対応するように、光学ユニット14及びワーク50を順次移動させていき、移動させる毎に、当該アナログ変位計6でとフォーカッシングレンズ15とワーク50との距離を計測して取得する。その際、アナログ変位計6の計測点50fの位置と、実際に加工を行う加工点50kの位置との間にはずれが存在する。そのため、取得した複数の距離情報61は、そのずれに応じて補正される。ここでの、フォーカッシングレンズ15とワーク50との距離の計測は、計測点64に応じて光学ユニット14の前後に取り付けられた両方のアナログ変位計6、6を用いて取得してもよく、いずれか片方のアナログ変位計6を用いてもよい。
ワーク50への加工が開始されると、フォーカス制御ユニット34は、まずフォーカッシングレンズ15(光学ユニット14)をワーク50の第1区画M1へ位置決めし、マトリクスデータ63からこの第1区画M1に対応したフォーカッシングレンズ15の目標位置を引き出し、この目標位置に基づいたZ軸移動指令39を出力する。このZ軸移動指令39は、Z軸サーボアンプ32へ入力され、Z軸サーボモータ27により、フォーカッシングレンズ15が適切な量だけZ軸方向32へ移動される。続いて、フォーカッシングレンズ15はワーク50の第2区画M2へ位置決めされるが、当該第2区画M2へ位置決めされる前に、フォーカス制御ユニット34は、マトリクスデータ63からこの第2区画M2に対応したフォーカッシングレンズ15の目標位置を引き出し、この目標位置に基づいたZ軸移動指令39を出力する。
従って、フォーカッシングレンズ15は、ワーク50の各区画Mで位置決めされた時点で、すでに目標位置まで移動される。フォーカス制御ユニット34は、このような制御を第1区画〜第900区画で繰り返し行う。これにより、照射範囲60の全ての区画Mにおいて、レーザ光の焦点位置51の調整が行われる。上述のリアルタイム制御モード40における計測は早いサイクルで行われ、ワークの曲面部分に当たった計測用レーザ光がナログ変位計6に戻ってこないため、計測を行うことができない場合がある。このように距離情報をリアルタイムで取得し難い場合であっても、予め得られたマトリクスデータ63に基づいて制御する上記のバッチ制御モード41を実行することによって、加工点50kにおけるレーザ光の焦点位置51の確実な調整を行うことができる。なお、本実施形態のバッチ制御モード41において、ワーク50はマトリクス状に区画されているが、ワークの区画はこのような形態に限定されるものではなく、当該区画のサイズを変更することや、当該区画の形状を変更することもできる。
デュアル制御モード42は、上記のリアルタイム制御モード40と上記のバッチ制御モード41とを切り替え実行可能に構成されたものである。このデュアル制御モード42では、フォーカッシングレンズ15とワーク50との距離情報の変動量が所定値よりも小さい場合には、リアルタイム制御モード40が実行され、当該距離情報の変動量が所定値よりも大きい場合には、当該リアルタイム制御モード40から切り替えられたバッチ制御モード41が実行される。例えば、リアルタイム制御モード40で加工が開始され、取得する距離情報38の変動量が所定値よりも小さい間は、当該リアルタイム制御モード40が実行され続け、当該距離情報38の変動量が所定値よりも大きくなった際には、制御モードがバッチ制御モード41に切り替えられて実行され、再び距離情報38の変動量が所定値よりも小さくなったら、制御モードが当該リアルタイム制御モード40に切り替えられて実行される。
本実施形態における距離情報38の変動量とは、例えば、任意の位置と位置の間でのフォーカッシングレンズ15とワーク50との距離の差のことであり、リアルタイム制御モード40とバッチ制御モード41の切り替えの基準となる上記の所定値は、例えば500 μmである。なお、切り替えの基準となる距離情報38の変動量は、アナログ変位計6の性能や加工仕様によって適宜変更される。フォーカス制御ユニット34を、このようにリアルタイム制御モード40とバッチ制御モード41とを切り替え実行可能に構成することで、加工面の形状変化が大きい加工対象物やそりが大きい加工対象物に対し、加工点50kにおけるレーザ光の焦点位置51の確実な調整を行うことができる。
上記本実施形態のパターニング装置1によれば、レーザ光の高い走査速度に対応可能な短い制御周期を得ることができる。そのため、レーザ光が、高い走査速度で走査される場合においても、レーザ光が照射される加工点50kと、距離情報が取得される計測点50fとの間の位置ずれ分55の的確な補正がされ、当該加工点50kにおけるレーザ光の焦点位置51の確実な調整を行うことができる。これにより、レーザ光が高い走査速度で走査される場合であっても、高い加工性能を得ることができる。
また、上記のデュアル制御モード42によって、次の加工方法が実現できる。即ち、レーザ光のZ軸方向における焦点位置51の調整を行いつつ、当該レーザ光でワーク50を走査することで当該ワーク50に加工を施すレーザ加工方法であって、ワーク50のZ軸方句32における表面位置の変動量が所定値よりも小さい場合には、レーザ光が走査されるワーク50の走査位置の変化に対し、リアルタイムでレーザ光の焦点位置51の調整を行い、ワーク50のZ軸方向32における表面位置の変動量が所定値よりも大きい場合には、レーザ光が走査されるワーク50の走査位置の変化に対し、予め取得した表面位置情報に基づいてレーザ光の焦点位置51の調整を行うレーザ加工方法である。ワーク50のZ軸方向32における表面位置とはフォーカッシングレンズ15とワーク50との距離の計測で得られた上記の距離情報38のことであり、表面位置情報とは、上記のマトリクスデータ63のことである。レーザ光が走査されるワークの走査位置とは、リアルタイム制御モード40でX軸移動量36及びY軸移動量37から取得される、フォーカッシングレンズ15とワーク50との相対的な位置情報のことである。
上記のレーザ加工方法によれば、ワーク50のZ軸方向32における表面位置の変動量にともなって、焦点位置51の調整の仕方を変更できるので、加工面の形状変化が大きいワークや、そりが大きいワークに高速走査する場合であっても、加工点50kにおけるレーザ光の焦点位置51の確実な調整を行うことができる。これにより、レーザ光が高い走査速度で走査される場合であっても、高い加工性能を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。ワークの加工に先立ち、フォーカス制御ユニットのパルス入出力、フォーカス制御ユニットによるフォーカシングレンズの移動の追従性、及びフォーカシングレンズとワークとの距離の検出の検証を実施した。
(フォーカス制御ユニットのパルス入出力)
図9は、検証を行うための機器構成を示す構成図である。機器構成は、フォーカス制御ユニット34及びその予備ユニット70、アナログ変位計6、アナログデータロガー71、オシロスコープ72、位置決めユニット29、X軸リニアアンプ30、Y軸リニアアンプ31、X軸リニアモータ23、Y軸リニアモータ24、Z軸サーボアンプ32、Z軸サーボモータ27からなる。アナログ変位計6からの計測データのロギングは、アナログデータロガー71で行い、ワークのX軸移動量、光学ユニット(フォーカッシングレンズ)のY軸移動量、及びフォーカッシングレンズへのZ軸移動指令のロギングは、フォーカス制御ユニット34で行い、フォーカッシングレンズのZ軸移動量のロギングは、オシロスコープ72と予備ユニット70で行った。
(パルス入力)位置決めユニット29からの出力により、テーブルをX軸方向へ、光学ユニットをY軸方向へそれぞれ1000パルス分移動させ、フォーカス制御ユニット34にて、テーブルのX軸移動量と光学ユニットのY軸移動量をカウントした。その結果は、両移動量とも1000パルスで、当該両移動量を正確にカウントできることを確認した。
(パルス出力)フォーカス制御ユニット34からマニュアル操作で数十パルスの出力を行い、オシロスコープ72を用いて実際に出力されたパルス数を確認した。結果は、マニュアル操作で出力したパルス数と同じパルス数をオシロスコープ72で確認できた。次に、フォーカス制御ユニット34からのパルス出力速度を50kppsに設定し、マニュアル操作で1000パルスの出力を行った。フォーカス制御ユニット34からの出力パルスをオシロスコープ72に入力し、パルスの出力時間(出力開始から終了までの時間)を確認した。オシロスコープ72に表れた波形から、1000パルスの出力に要した時間は、20msecであり、フォーカス制御ユニット34は、設定どおりの50kppsの速度でパルス出力していることが確認された。
(フォーカシングレンズの移動の追従性)
フォーカス制御ユニット34からの出力信号に対するフォーカシングレンズの移動の追従性を確認した。フォーカス制御ユニット34からのZ軸移動指令としての出力パルスと、フォーカッシングレンズを移動させるZ軸サーボアンプ32のZ軸移動量としての位置検出パルスを、それぞれオシロスコープ72に入力し、それらの波形を確認した。フォーカス制御ユニット34からの出力パルス数が、1000パルスのときのそれぞれの波形から、フォーカス制御ユニット34のパルス出力開始から約5msec後に、Z軸サーボアンプ32に接続されたZ軸サーボモータの駆動が開始された。
(フォーカシングレンズとワークとの距離の検出)
テスト基板のマトリクスデータ(そり量のデータ)を作成することで、フォーカス制御ユニット34での距離の検知精度の確認を行った。マトリクスデータは、テスト基板を上記の実施形態の図8(b)に示したようにマトリクス区画に区分けし、その第1区画〜第21区画で作成した。フォーカス制御ユニット34での距離(そり量)の検知と同時に、アナログ変位計6での距離(そり量)の計測時の計測データのロギングを行った。テスト基板の第13区画〜第15区画にビニールテープを貼り、意図的に大きなそりを形成した。図10(a)はアナログ変位計6の計測データであり、(b)はフォーカス制御ユニット34で検知された計測データによって作成されたマトリクスデータである。
図10(a)及び同図(b)から、テスト基板の第13区画〜第15区画に最大580μmのそりが確認でき、フォーカス制御ユニット34によってテスト基板のそりの検知が可能であることを確認した。フォーカス制御ユニット34で検知したそり量の変動が、アナログ変位計で計測したそり量の変動よりも大きいことが認められる。その理由は、フォーカス制御ユニット34の方が、アナログデータロガー71よりもサンプリング周期が短いため、サンプル数が多くなり、実際のそり量に近い計測ができたからであると考えられる。
(リアルタイム制御モードでのワークの加工)
上記の実施形態におけるレーザ加工装置のフォーカス制御ユニット34の制御モードをリアルタイム制御モードに設定し、1500mm角の基板にレーザ加工を行った。加工方向は図2におけるX軸方向の復向き(図2下向き)とし、加工位置はX軸の1300mmの位置から0mmの位置とした。フォーカス制御ユニット34が算出したフォーカッシングレンズの目標位置と、Z軸サーボアンプ32が検出したフォーカッシングレンズの実際に移動した検出位置とを比較した。上記の目標位置と検出位置を図11(a)に示す。
図11(a)から、50msec(X軸50mm)毎に目標位置が変わっており、フォーカス制御ユニット34の目標位置の算出が50msec毎に行われていることが認められる。フォーカス制御ユニット34が算出した目標位置の変化に合わせて、Z軸サーボアンプ32の検出位置が同図に示すように変化していることから、フォーカス制御ユニット34からのZ軸移動指令が50msec毎に出力され、それに追従してZ軸の位置の移動が行われていることが認められる。さらに、移動の精度が100μm以下であることが確認できる。
(バッチ制御モードでのワークの加工)
上記の実施形態におけるレーザ加工装置のフォーカス制御ユニット34の制御モードをバッチ制御モードに設定し、1500mm角の基板にレーザ加工を行った。加工方向は図2におけるX軸方向の往向き(図2上向き)とし、加工位置はX軸の0mmの位置から1300mmの位置とした。マトリクスデータの各マトリクス区画(X軸:60mm、Y軸60mm)でのフォーカッシングレンズの目標位置と、Z軸サーボアンプ32が検出したフォーカッシングレンズの実際に移動した検出位置とを比較した。上記の目標位置と検出位置を図11(b)に示す。
図11(b)から、マトリクス区画毎に目標位置が変化しており、フォーカス制御ユニット34により各マトリクス区画への移動毎に目標位置が変えられていることが確認できる。その目標位置の変化に合わせてZ軸サーボアンプ32の検出位置が同図にように変化していることから、フォーカス制御ユニット34からのZ軸移動指令がマトリクス区画の移動毎に出力され、それに追従してZ軸の位置の移動が行われていることが認められる。さらに、移動の精度が100μm以下であることが確認できる。
上記で開示した本実施形態及び実施例は、本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の例を示したものであり、XY軸移動機構、Z軸移動機構の構成、その他の各部の形状、寸法、構成する機器等は適宜変更されるものである。例えば、本実施形態では、レーザ光をワークへ走査するために、フォーカッシングレンズを備える光学ユニットに対してワークを移動させるXY移動機構を開示しているが、それとは逆に、ワークに対して光学ユニットを移動させて、レーザ光をワークへ走査するようなXY移動機構としてもよい。なお、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内の全ての変更が含まれる。
1 パターニング装置
3 加工光学系
6 アナログ変位計
13 フォーカス光学系
14 光学ユニット
15 フォーカッシングレンズ
16 X軸移動装置
17 Y軸移動装置
19 テーブル
23 X軸リニアモータ
24 Y軸リニアモータ
27 Z軸サーボモータ
29 位置決めユニット
30 X軸リニアアンプ
31 Y軸リニアアンプ
32 Z軸サーボアンプ
34 フォーカス制御ユニット
35 オートフォーカス制御基板
36 X軸移動量
37 Y軸移動量
38、62 距離情報
39 Z軸移動指令
40 リアルタイム制御モード
41 バッチ制御モード
42 デュアル制御モード
45 ディレイタイマ時間
50 ワーク
50k 加工点
50a 計測点
51 焦点位置
55 位置ずれ分
63 マトリクスデータ
M マトリクス区画

Claims (5)

  1. レーザ光を発振させるレーザ発振器と、
    前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を集光させて加工対象物に当該レーザ光を照射するフォーカス光学系を有する光学ユニットと、
    前記フォーカス光学系と前記加工対象物との相対的な位置関係を、前記レーザ光の光軸方向に略垂直な面内方向で変化させるXY移動機構と、
    前記加工対象物に対する前記フォーカス光学系の前記光軸方向における位置を変化させるZ移動機構と、
    前記フォーカス光学系と前記加工対象物との前記光軸方向における距離情報を取得する距離情報取得手段と、
    前記Z移動機構及び前記XY移動機構を制御することで、前記レーザ光の焦点位置の調整を行いつつ、当該レーザ光を前記加工対象物に走査させる制御システムと、を備えたレーザ加工装置であって、
    前記制御システムは、前記焦点位置の調整を行うために、前記距離情報取得手段によって取得した前記距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における目標位置を算出し、当該フォーカス光学系の移動指令を前記Z移動機構に出力するフォーカス制御ユニットを有していることを特徴とするレーザ加工装置。
  2. 前記フォーカス制御ユニットは、前記フォーカス光学系と前記加工対象物との前記面内方向における相対的な位置関係の変化に対し、前記距離情報をリアルタイムで取得し、この距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における前記目標位置を算出するリアルタイム制御モードを実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
  3. 前記フォーカス制御ユニットは、前記レーザ光が照射される照射範囲における複数の位置情報の各々に対応した複数の前記距離情報を取得し、これら複数の距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における複数の前記目標位置を算出するバッチ制御モードを実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
  4. 前記フォーカス制御ユニットは、
    前記フォーカス光学系と前記加工対象物との前記面内方向における相対的な位置関係の変化に対し、前記距離情報をリアルタイムで取得し、この距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における前記目標位置を算出するリアルタイム制御モードと、
    前記レーザ光が照射される照射範囲における複数の位置情報の各々に対応した複数の前記距離情報を取得し、これら複数の距離情報に基づいて前記フォーカス光学系の前記光軸方向における複数の前記目標位置を算出するバッチ制御モードと、
    を切り替え実行可能に構成されており、
    前記距離情報の変動量が所定値よりも小さい場合には、前記リアルタイム制御モードを実行し、前記距離情報の変動量が所定値よりも大きい場合には、前記バッチ制御モードを実行することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
  5. レーザ光の光軸方向における焦点位置の調整を行いつつ、当該レーザ光で加工対象物を高速走査することで当該加工対象物に加工を施すレーザ加工方法であって、
    前記加工対象物の前記光軸方向における表面位置の変動量が所定値よりも小さい場合には、前記レーザ光が走査される前記加工対象物の走査位置の変化に対し、リアルタイムで前記焦点位置の調整を行い、
    前記加工対象物の前記光軸方向における表面位置の変動量が所定値よりも大きい場合には、前記レーザ光が走査される前記加工対象物の走査位置の変化に対し、予め取得した表面位置情報に基づいて前記焦点位置の調整を行うことを特徴とするレーザ加工方法。
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