JP2012040002A - 電気的処理によるアンジオテンシンi変換酵素阻害活性を高めたアブラナ科野菜及びその製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】処理対象のアブラナ科野菜の組織全体を破壊することなく、組織内の個々の細胞に微小な損傷を与える、板状の電極又はワイヤー電極による電気穿孔処理をした後、これに通電加熱を利用して又は恒温水槽による湯浴加熱を利用して、所定の温度に加熱することにより、アブラナ科野菜の形を残したままACE阻害活性を強化したアブラナ科野菜を得ることからなる、電気的処理による野菜の処理方法、電気穿孔により、電圧が0超〜5000V/cm、パルス時間が10〜120μs、パルス付加間隔が100ms〜10s、パルス回数が1〜99回の条件で、穿孔処理を行う、上記電気的処理による野菜の処理方法、及びACE阻害活性を高めた野菜及びその製品。
【効果】ACE阻害活性が高められた有形の中島菜等のアブラナ科野菜及びその製品を提供することができる。
【選択図】図13
Description
(1)処理対象のアブラナ科野菜の組織全体を破壊することなく、組織内の個々の細胞に微小な損傷を与える、所定形状の電極による電気穿孔処理をした後、これを、通電加熱を利用して又は恒温水槽による湯浴加熱を利用して、所定の温度に加熱することにより、アブラナ科野菜の形を残したままACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜を得ることを特徴とする電気的処理によるアブラナ科野菜の処理方法。
(2)電気穿孔処理を、板状の電極又はワイヤー電極により行う、前記(1)に記載のアブラナ科野菜の処理方法。
(3)アブラナ科野菜として、中島菜(Brassica campestris cultivar Nakajimana)を使用する、前記(1)又は(2)に記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
(4)電気穿孔により、電圧が0超〜5000V/cm、パルス時間が10〜120μs、パルス付加間隔が100ms〜10s、パルス回数が1〜99回の条件で、穿孔処理を行う、前記(1)から(3)のいずれかに記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
(5)通電加熱処理又は恒温水槽による湯浴加熱処理により、少なくとも60℃、5分加熱の条件を満たすように加熱する、前記(1)から(4)のいずれかに記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
(6)上記電気穿孔処理及び通電加熱処理又は恒温水槽による湯浴加熱処理を、中島菜の葉、及び/又は葉柄に施す、前記(1)から(5)のいずれかに記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
(7)前記(1)から(6)のいずれかに記載の方法により、ACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜。
(8)前記(7)に記載のACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜を含有する食品又は飲料。
以下、本明細書では、本発明について、アブラナ科野菜の一種の中島菜(Brassica campestris cultivar Nakajimana)を代表例として説明するが、本発明は、中島菜に限定されるものではなく、中島菜と同様のACE阻害活性を有するアブラナ科(Brassicaceae)に属する野菜についても同様に適用することが可能であり、本発明の適用対象として、中島菜の他に、例えば、シロナ、菜の花、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、ワサビ、水菜、ハクサイ、ケール、カラシナ、チンゲンサイ、ダイコン、カブ等が例示される。本発明は、中島菜をペースト化することなく、中島菜に電気穿孔と通電加熱を施すことにより、ACE阻害活性が高められた有形の中島菜を提供することを可能とした点に特徴を有するものである。
式:ΔΨ=3/2FaEcosΦ{1−exp(−t/τ)}
式:q=κ(gradV)2
ここで、κは材料自身の持つ電気伝導度(抵抗Rの逆数1/R)、Vは印可電圧である。このときの昇温速度は、次の式で表すことができる。
式:dT/dt=(gradV)2κ/ρCp
ここで、ρは密度、Cpは比熱である。発熱量及び昇温速度は、材料自身の持つ電気伝導度に依存するが、一般の食品や食品材料は、充分量の水分と様々な電解質を含んでいるため、電気伝導度は大きいと考えられる。
(1)組織全体を破壊することなく、ACE阻害活性が強化された有形の中島菜等のアブラナ科野菜を提供することができる。
(2)電気穿孔処理及び通電加熱処理という簡便な手段を適用することにより、ACE阻害活性を強化した中島菜等のアブラナ科野菜素材を提供することができる。
(3)ACE阻害活性を強化した中島菜等のアブラナ科野菜に関する従来の素材と比べて、中島菜等のアブラナ科野菜の組織全体を保ち、かつACE阻害活性が強化された中島菜等のアブラナ科野菜を提供することができる。
(4)中島菜等のアブラナ科野菜に電気的処理を施すだけで、そのACE阻害活性を強化することが実現できる。
(5)少量の中島菜等のアブラナ科野菜でも、高いACE阻害活性が期待できる新しい電気化学的処理を利用した野菜の処理技術を提供することができる。
(6)中島菜等のアブラナ科野菜をペースト化することなく、その形を保持した有形の状態で、ACE阻害活性を強化することができる。
1.1 実験材料
中島菜は、石川県農業総合研究センターで栽培された晩抽系・字中島(平成19年採取種子)を使用した。採取後は、P−プラス(住友ベークライト株式会社)に入れ、4℃で冷蔵保存し、可及的速やかに使用した。ここで、P−プラスとは、MA包装ができる袋のことであり、使用されるフィルムは、30〜100ミクロンの小さな微孔を持ち、この微孔から包装内の青果物が呼吸を続けるために必要な酸素を取り入れ、二酸化炭素を逃がす仕組みになっている。ミクロの孔と青果物自身が行う呼吸とのバランスにより、袋内がゆっくりと「低酸素・高二酸化炭素」になり、やがて平衡状態になるとされ、この袋の使用で、中島菜の鮮度維持に努めた。
図8に示す条件で、中島菜に対して、電気穿孔処理を行った。本実施例では、図に示す種々の電圧とパルス条件で実験を行った。電気穿孔に要する印可電圧時間は、nsレベルとされており、選定したパルス幅、パルス付加間隙は、共に十分な値と考えられる。
カミソリで薄くスライスした中島菜の葉と葉柄を、AXIO Imager(ZEISS)を用いて、100〜400倍で撮影し、pixelスケールを測定した。同様にして、血球計算板(ERMA)を用いて、pixelスケールを測定し、単位換算した。複数の細胞を測定して、平均値を算出した。
図1にあるように、中島菜は、他の野菜に比べ、高いACE阻害能を持っていることが知られている。また、石川県農業総合研究センターの研究により、中島菜をペースト化し、60℃で30分加熱することにより、更にACE阻害能が高まることが報告されている。そこで、以下の表に示す温度処理条件、電気穿孔処理条件で、電気穿孔処理及び湯浴加熱を施し、ACE阻害活性を測定した。また、サンプルは、−20℃で凍結保存し、凍結乾燥処理後に測定した。
(1)試薬
・基質溶液:ヒプリル−L−ヒスチジル−L−ロイシン四水和物(和光純薬工業社製)10mgを、リン酸バッファー(pH=8.5)10mlに溶解した。
・酵素溶液:ウサギ肺由来アンジオテンシン変換酵素(シグマ社製)0.25Uを、リン酸バッファー(pH=8.5)10mlにて溶解した。
・抽出液:処理後、凍結乾燥を行った中島菜乾燥粉末0.25gを、リン酸バッファー(pH=8.5)10mlで振とう抽出し、濾過することにより、濾液を得た。この濾液を、リン酸バッファーで適宜希釈して抽出液とし、以下のACE阻害活性試験に供した。今回の試験では、1時間振とう抽出した。また、濾液は、4倍希釈して、活性測定用サンプルとした。
試験管に、基質溶液50μl、抽出液100μlを加え、混合し、37℃で5分間プレインキュベーションした。これに、酵素溶液200μlを添加し、37℃で1時間インキュベーションすることにより、酵素反応を行った。その後、3%メタリン酸を100μl添加し、酵素反応を停止した。本酵素反応溶液を、下記に示す条件のHPLCに供し、得られた馬尿酸のピーク面積より、以下の式を基に、ACE阻害活性(%)を求めた。
A=抽出液の代りにリン酸バッファーを加えたときのピーク面積(コントロール)
B=抽出液を加えたときのピーク面積
C=酵素液の代りにリン酸バッファーを加えたときのピーク面積(サンプルブランク)
HPLC分析の条件を以下に示す。
カラム:MightysilRP−18GP 250×4.6mm(関東化学)
カラム温度:40℃
移動相A:0.01Mリン酸カリウムバッファー(pH2.8)
移動相B:100%アセトニトリル
グラジエント:0分から15分までA液80%、B液20%からA液75%、B液25%のリニアグラジエント、15分から20分までA液80%、B液20%で保持
流量:0.75ml/min
注入量:50μl
検出:UV226nm
実験機器の通電加熱ユニットは、図11の通りである。周波数発生器であるFG−143にて、周波数を変更し、増幅器である4510 PRECISION POWER AMPLIFIER(NE)にて、電圧を変化させた。電流、電圧、電力の実測値は、パワーメーターである3332 POWER HITESTER(HIOKI)で計測した。また、温度は、マルチレコーダーである8421−50に接続したシール型熱電対にて測定した。電極槽は、電気穿孔ユニットと同様に、アクリル槽であり、食品衛生法に従って、板状チタン電極を用いた。液媒は、25mM NaClを用いた。
石川県農業総合研究センターで開発されたペースト化技術では、ペースト化した中島菜を、60℃で30分加熱することで、更に、ACE阻害能が上昇すると報告されている。本実施例では、電気穿孔処理時の電極を通電加熱用とすれば、設備の縮小等の利点が多い。先に述べたように、通電加熱は、材料に直接電流を流し、その際に生じるジュール熱を利用する加熱法であるため、従来の外部加熱法に比べて、均一迅速な昇温と精密な温度制御が可能である。そこで、中島菜における通電加熱による昇温特性を、葉と葉柄について調べた。
ダイコンにおける通電加熱処理では、周波数によって、昇温速度に違いがみられるが、ある温度からの昇温速度は、周波数に依存しないという報告がされている(文献:Imai,T.,Uemura,K.,Ishida,N.,Yoshizaki,S.,Noguchi,A(1995),Ohmic heating of Japanese white radish Rhaphanus sativus L.International Journal of Food Sceience and Technology,30,461−472)。
2.1 透過型顕微鏡による中島菜の細胞観察
中島菜の葉の細胞、葉柄の細胞を、透過型顕微鏡により細胞観察した結果、それぞれ細胞の平均半径は、葉で12μm、葉柄で41μmであった。この値を用いて、電気穿孔発生に要する電位Eを概算してみると、以下の式、
式:ΔΨ=3/2FaEcosΦ{1−exp(−t/τ)}6)
より、膜電位(ΔΨ)を1と想定して、他の値をそれぞれF(形状係数)=0〜1、cosΦ{1−exp(−t/τ)}=0〜1と置くと、膜電位(ΔΨ)が1Vを超えるために必要な電位(電圧)Eは、葉で、約513V/cm、葉柄で、約162V/cmと計算できる。しかし、細胞は、かなりの巾で大小が観察され、葉では、500〜5000V/cm、葉柄では、160〜1600V/cmが電気穿孔に必要な印加電圧と考えられた。
表6に、サンプル作成条件、図13に、電気穿孔処理後の中島菜のACE阻害活性(%)を示した。中島菜は、葉、葉柄共に、ACE阻害活性を示し、電気穿孔処理後の60℃、30分加熱で、ACE阻害活性が更に増加し、電気穿孔処理の有用性が確認できた。葉と葉柄のいずれもが、加熱処理又は電気穿孔のみで、ACE阻害活性が大幅に増加している。
図14に、通電加熱時の印可電圧を、12.99V/cm、18.18V/cm、23.38V/cmに変えた場合の温度上昇を示した。印可電圧の増加につれ、昇温速度は大きくなった。現在、中島菜の加熱処理方法(外部加熱)では、多くの時間とエネルギーを必要とすることから、通電加熱は、その特徴から、均一で迅速な昇温が可能であると同時に、時間及びエネルギーを大幅に節約できると思われる。更に、精密な温度制御が可能であり、素材品質の変動を少なくなることから、高品質化にも寄与することになる。図15は、中島菜の葉と葉柄を同時に、12.99V/cm、18.18V/cm、23.38V/cmで通電加熱したものである。このグラフから、葉と葉柄の昇温速度は、ほぼ一定であり、実用に際して好都合な結果を得た。
図16、17に、未処理及び電気穿孔処理後の中島菜について、周波数を変動した場合の昇温変化を示した。未処理の、60Hz control、600Hz control、6KHz controlの中島菜では、周波数が高くなるにつれて、昇温速度が低下し、60Hz E.P.、600Hz E.P.、6KHz E.P.の電気穿孔処理では周波数依存性が消失している。これらの結果は、ダイコンを対象とした通電加熱研究を進めたImai,Tら(1995)の報告と、非常に良く一致しており、Imai,Tらは、通電加熱時に、電気穿孔の現象が発生している報告している。
供試材料として、石川県農業総合研究センター内ほ場で栽培した中島菜を用いた。板状の電極、ワイヤー電極による電気穿孔処理を行った。板状の電極の場合は、5、1、0.2cm幅に切断した中島菜を、葉と葉柄に分けて、図18の装置で電気穿孔処理した。処理条件は、電極間距離1cm、印加電圧3,000V/cmにおいて、パルス回数30と99回とで比較検討した。
板状の電極の装置では、切断幅を変えた中島菜に、パルス回数99回又は30回で電気穿孔処理を行ったところ、いずれも、同程度のACE阻害能が得られた。これにより、形状が違っても、印可電圧3000V/cm、パルス回数30回でACE阻害能向上効果が得られると考えられた。なお、1回の処理量は、最大3gであった。
中島菜を、おおむね5cm角に切断した。1回あたり1枚を電気穿孔処理した。パルス回数は、10回(5往復)、30回(15往復)、50回(25往復)とした。1区あたりの処理量は、5cm幅分1枚とした。NMRにより水の拡散係数を分析した。NMRの測定は、ESX400(1Hの共鳴周波数400MHz)を用いた。各サンプルの中心部を、おおむね3cm角で切り出し、筒状に丸めてNMR測定管に入れ、PGSTE法により拡散時間を0.1〜1.0secまで変化させて、それぞれの拡散係数を測定した。その結果を図22に示す。
1.ワイヤー電極
電極は、長さ6cm×φ1mmのチタン製針金をアクリル板に固定したものを2個1対で用いた。電極部分は、6cm×φ1mmとし、この部分が向かい合わせになるように、2枚1対で使用した。
電極の移動装置は、次のようなものを試作した。
電極の移動距離:10cm(電極の長さと移動距離から、6cm×1cm=60cm2の面積に通電処理が可能)
電極の設置間隔:約5〜10cmで調整可能
電極の移動速度:往路は約8〜33秒/10cmで9段階に可変、復路は約13秒/10cmで固定。
処理サンプルの設置方法:中島菜を、5cm幅に切り、台所用の水切りネット中に縦5cm前後、横10cm前後、幅は電極間隔より5mm程度狭い幅に収まるように中島菜を詰め、中島菜が電極に直接接しないように、ネットを電極間にぶら下げた(電極と中島菜が接すると火花が発生するため)。中島菜入りネットが浮き上がってくる場合は、ガラス製のビー玉をおもりとして使用した。
最大出力15kVの直流電源に、簡易なパルス電流発生装置を組み合わせて使用した。簡易パルス電流発生装置は、一定間隔に複数の電極を取り付けたアクリル製円筒状容器の中心に、アクリル棒に電極を1本取り付けたものを設置し、アクリル棒を回転させ、内側と外側の電極が近接したときにのみ電流が流れるようにしたものである。パルス間隔は、外周部の電極の設置間隔と、回転部の回転速度で調整した。
電極が移動しながら部分的に通電していくことになるため、往復操作回数×2をパルス回数とみなした。試作装置で調整可能な部分については、電極間隔は5cm、電極の往路動作は13秒/10cm(復路動作とほぼ同スピード)、パルス間隔は1秒当たり5回とした。この場合、電極を1往復させる間のパルス回数は130回となる。すなわち、5×10cm2の面積をワイヤー電極が移動しながら65回のパルス通電を往復で2回行うことになるので、任意の1ヶ所に対しては、2回パルス通電することになる。
電気穿孔処理サンプル及び無処理サンプルは、−80℃で凍結した後、真空凍結乾燥機で乾燥した。その後、各サンプルを粉砕して粉末にした。各乾燥粉末200μgに抽出用バッファ(pH8.5)8mlを加え、2時間振とうした。その後、ろ過して得られた上澄液を抽出用バッファで4倍に希釈し、測定用サンプルとした。
実験方法として、サンプリング及び1回あたりの処理量は、5cm長に切断した中島菜の葉柄部を、6本を1列に並べた状態、ないしは18本を9本ずつ2列に並べた状態でネットに入れ、試料調製に際しては、1枚の葉から5cmの葉柄部切片を3本取り、1本から必ず3つの処理(6本処理・18本処理・無処理)を行うようにし、パルス回数は30回(15往復)とし、1回あたりの処理量は、葉柄部切片36本分(約80〜90g)を1区とした。実験は2回行い、平均値を求めた。
1.中島菜以外のアブラナ科野菜を電気穿孔処理した場合のACE活性阻害能への影響について
1.1実験方法
供試材料として、津幡町内のスーパーで購入した白菜(長野県産)とチンゲンサイ(石川県産)を用いた。処理方法は、電気穿孔処理のみとし、電気穿孔処理後に、60℃、30分加熱し、無処理を対照とした。パルス回数は。50回(25往復)とした。
上記実験の結果を表7及び図27に示す。白菜では、電気穿孔処理のみでもACE活性阻害能がわずかではあるが向上し、加熱と組み合わせることにより、更に向上した。チンゲンサイは、電気穿孔処理のみではACE活性阻害能がわずかに下がったが、加熱と組み合わせることにより大幅に上昇した。中島菜以外のアブラナ科野菜でも、電気穿孔処理と加熱処理を組み合わせることによりACE活性阻害能を向上させることが可能であり、最適な条件で処理すれば、電気穿孔処理のみでもACE活性阻害能を向上させることは可能であると考えられた。
2.1試験内容
最大出力15kVの直流電源に簡易なパルス電流発生装置を組み合わせた電気穿孔処理を用い、チタン製電極の形状の違いによる通電処理時の電圧の違いについて検討した。
(1)使用した電極
1)6cm×φ1mmワイヤー電極1対(電極間隔5cm)を使用し、縦12cm×横48cm×深さ12cm処理水槽に対して超純水5リットルを用いた。
2)縦6cm×横5cm板状電極1対(電極間隔5cm)を使用し、縦5cm×横5cm×深さ6.5cm処理水槽に対して超純水180ミリリットルを用いた。
3)縦30cm×横30cm板状電極1対(電極間隔10cm)を使用し、縦14cm×横31cm×深さ30cm処理水槽に対して、超純水10リットルを用いた(水槽の形状の都合で電極の上部が水面から2cmほど出た状態で使用)。
1)電極を設置した処理水槽に超純水のみを入れて通電した場合の最高電圧と、2)電極を設置した処理水槽に超純水と中島菜を入れて通電した場合の最高電圧と(この際の中島菜は、おおむね5cm幅に切断したものを使用し、使用量は、水槽と電極間隔に応じて適宜量とした。)、3)上記iiの状態で通電を続けて、電圧が不安定化し始めた時の処理槽中の水の電気伝導度(通電時の電圧が単発的に10kVを下回るようになった時点を不安定化開始とした)を観察した。
上記実験の結果を表8及び図31に示す。中島菜を電場処理した場合の、拡散係数と拡散時間の関係を図32〜33に示す。超純水のみで通電した場合は、電極の形状の違いにより最高電圧に差が見られたが、中島菜に通電した場合の最高電圧は、電極の形状の違いによる差は僅かであった。一方、中島菜を通電処理する際に電圧が不安定になる電気伝導度は、電極の面積が大きくなるほど低くなる傾向であった。
Claims (8)
- 処理対象のアブラナ科野菜の組織全体を破壊することなく、組織内の個々の細胞に微小な損傷を与える、所定形状の電極による電気穿孔処理をした後、これを、通電加熱を利用して又は恒温水槽による湯浴加熱を利用して、所定の温度に加熱することにより、アブラナ科野菜の形を残したままACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜を得ることを特徴とする電気的処理によるアブラナ科野菜の処理方法。
- 電気穿孔処理を、板状の電極又はワイヤー電極により行う、請求項1に記載のアブラナ科野菜の処理方法。
- アブラナ科野菜として、中島菜(Brassica campestris cultivar Nakajimana)を使用する、請求項1又は2に記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
- 電気穿孔により、電圧が0超〜5000V/cm、パルス時間が10〜120μs、パルス付加間隔が100ms〜10s、パルス回数が1〜99回の条件で、穿孔処理を行う、請求項1から3のいずれかに記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
- 通電加熱処理又は恒温水槽による湯浴加熱処理により、少なくとも60℃、5分加熱の条件を満たすように加熱する、請求項1から4のいずれかに記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
- 上記電気穿孔処理及び通電加熱処理又は恒温水槽による湯浴加熱処理を、中島菜の葉、及び/又は葉柄に施す、請求項1から5のいずれかに記載の電気的処理によるACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜の処理方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の方法により、ACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜。
- 請求項7に記載のACE阻害活性を高めたアブラナ科野菜を含有する食品又は飲料。
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JPN6015023904; 松本悦夫 他: 'エレクトロポレーションによるアブラナ科野菜へのTuMV外被タンパク質遺伝子の導入' 育種学雑誌 第45巻 別冊1号, 第62頁 * |
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JP5957674B2 (ja) | 2016-07-27 |
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