JP2012030652A - 車両用車軸軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブレーキング時の発熱の伝熱を抑え、耐久性に優れ、回転センサを備える場合には検出精度の低下の少ない車両用車軸軸受を、ハブボルトの固定強度を低下させることなく提供する。
【解決手段】内輪、外輪及び転動体を備え、フランジ部が前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方と一体化され、前記内輪に車軸が嵌合される車両用車軸軸受において、
転走面を金属製にするとともに、少なくとも前記フランジ部の一部を炭素繊維プリプレグの積層体から成る炭素繊維強化樹脂で形成し、前記フランジ部に直接ハブボルトが固定されるようにしたことを特徴とする車両用車軸軸受。
【選択図】図1
【解決手段】内輪、外輪及び転動体を備え、フランジ部が前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方と一体化され、前記内輪に車軸が嵌合される車両用車軸軸受において、
転走面を金属製にするとともに、少なくとも前記フランジ部の一部を炭素繊維プリプレグの積層体から成る炭素繊維強化樹脂で形成し、前記フランジ部に直接ハブボルトが固定されるようにしたことを特徴とする車両用車軸軸受。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車のハブユニット軸受に代表される車両用車軸軸受に関し、特に熱伝導による影響低減及びハブボルトの固定に関する。
自動車の従来のハブユニット軸受では、内輪,外輪及びフランジを軸受鋼等の金属製で形成していたが、重量が大きく、燃費上不利であるとともに、高価になることから、内輪や外輪の転走面及びフランジ部を金属薄板からなるベース部で形成し、更にベース部を合成樹脂に補強繊維を配合した複合材料で補強したものが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1のようなハブユニット軸受においても、ブレーキロータと締結されるフランジ部を含むベース部が金属製であり、熱伝導率が比較的高いため、ブレーキング時に発生する摩擦熱がフランジ部を通じて伝熱し、内輪や外輪の転走面の温度上昇を抑えることが難しい。そして、このような温度上昇が発生すると、封入グリースの種類によっては劣化が促進され、それにより回転トルクが増大したり、異音や振動が発生するなどして軸受性能が低下することが、過酷な試験を行うことにより分かってきた。
また、ハブユニット軸受の中には、車軸の回転数または車軸にかかる荷重を検知するための回転センサを備えるものがある(図1参照)。回転センサは、内輪に取り付けられた金属製のスリンガの外周面に磁気エンコーダを取り付け、磁気エンコーダと対向するように磁気センサを配置して構成されたものが一般的である(図1参照)。そのため、磁気エンコーダの取り付け位置の精度が要求されるが、上記のようにブレーキング時の摩擦熱が伝熱して内輪や外輪の温度が上昇すると、内輪に取り付けられているスリンガが熱膨張を起こして磁気エンコーダの取り付け位置が微妙に変化して検出精度に影響を与える。
また、ブレーキディスクやホイールの取り付けの際に使用するハブボルトは、フランジに十分な強度で固定される必要がある。従来の金属製フランジにおいては十分な実績があるが、フランジを繊維強化樹脂製とした場合に十分な固定強度が得られるかは分かっていない。
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、ブレーキング時に発生する熱の伝導を抑え耐久性に優れた車両用車軸軸受、また回転センサを備える場合には検出精度の低下を低減した車両用車軸軸受を、十分なハブボルトの固定強度を保ちつつ提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の車両用車軸軸受を提供する。
(1)内輪、外輪及び転動体を備え、フランジ部が前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方と一体化され、前記内輪に車軸が嵌合される車両用車軸軸受において、
転走面を金属製にするとともに、少なくとも前記フランジ部の一部を炭素繊維プリプレグの積層体から成る炭素繊維強化樹脂で形成し、前記フランジ部に直接ハブボルトが固定されるようにしたことを特徴とする車両用車軸軸受。(2)前記フランジ部には予め雌ねじ加工が施され、その加工部に前記ハブボルトがねじ締結されるようにしたことを特徴とする(1)記載の車両用車軸軸受。
(3)前記フランジ部には予め穴あけ加工が施され、その加工部に前記ハブボルトのセレーションが圧入されるようにしたことを特徴とする(1)記載の車両用車軸軸受。
(4)前記炭素繊維プリプレグが、炭素繊維を平面状に、一方向に配向させて樹脂で結束されたものであり、かつ、前記炭素繊維の配向が、前記フランジ部に固定される前記ハブボルトの軸線に対して略垂直で、隣接する前記炭素繊維プリプレグ間は、前記炭素繊維の繊維配向が異なる角度になるように積層されていることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。(5)前記炭素繊維プリプレグが、炭素繊維を平面状に編組して樹脂で結束されたものであり、かつ、前記炭素繊維の配向が、前記フランジ部に固定される前記ハブボルトの軸線に対して略垂直になるように積層されていることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(6)前記炭素繊維強化樹脂における樹脂の含有量が23〜50質量%であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(7)前記炭素繊維強化樹脂における炭素繊維の引張強度が3〜8.5GPa、引張弾性率が220〜700GPa、伸度が0.5〜2.2%であることを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(8)前記炭素繊維強化樹脂における樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂またはポリプロピレン樹脂の何れかを含むことを特徴とする(1)〜(7)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(9)前記車軸の回転数または前記車軸にかかる荷重を検出するためのセンサを備えることを特徴とする(1)〜(8)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(1)内輪、外輪及び転動体を備え、フランジ部が前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方と一体化され、前記内輪に車軸が嵌合される車両用車軸軸受において、
転走面を金属製にするとともに、少なくとも前記フランジ部の一部を炭素繊維プリプレグの積層体から成る炭素繊維強化樹脂で形成し、前記フランジ部に直接ハブボルトが固定されるようにしたことを特徴とする車両用車軸軸受。(2)前記フランジ部には予め雌ねじ加工が施され、その加工部に前記ハブボルトがねじ締結されるようにしたことを特徴とする(1)記載の車両用車軸軸受。
(3)前記フランジ部には予め穴あけ加工が施され、その加工部に前記ハブボルトのセレーションが圧入されるようにしたことを特徴とする(1)記載の車両用車軸軸受。
(4)前記炭素繊維プリプレグが、炭素繊維を平面状に、一方向に配向させて樹脂で結束されたものであり、かつ、前記炭素繊維の配向が、前記フランジ部に固定される前記ハブボルトの軸線に対して略垂直で、隣接する前記炭素繊維プリプレグ間は、前記炭素繊維の繊維配向が異なる角度になるように積層されていることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。(5)前記炭素繊維プリプレグが、炭素繊維を平面状に編組して樹脂で結束されたものであり、かつ、前記炭素繊維の配向が、前記フランジ部に固定される前記ハブボルトの軸線に対して略垂直になるように積層されていることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(6)前記炭素繊維強化樹脂における樹脂の含有量が23〜50質量%であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(7)前記炭素繊維強化樹脂における炭素繊維の引張強度が3〜8.5GPa、引張弾性率が220〜700GPa、伸度が0.5〜2.2%であることを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(8)前記炭素繊維強化樹脂における樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂またはポリプロピレン樹脂の何れかを含むことを特徴とする(1)〜(7)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
(9)前記車軸の回転数または前記車軸にかかる荷重を検出するためのセンサを備えることを特徴とする(1)〜(8)の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
本発明の車両用車軸軸受は、転走面を金属製にするとともに、少なくともフランジ部の一部を炭素繊維プリプレグの積層体からなる炭素繊維強化樹脂で形成したため、回転特性に影響することなく、フランジ部を通じての伝熱が抑えられて長寿命となる。また、回転センサを備える構成とした場合には、熱変形による検出精度の低下も少ない。また、フランジ部に直接ハブボルトが固定されるようにしたので、ハブボルトを十分な強度で固定することができる。
以下、本発明に関して回転センサ付きハブユニット軸受を例示して詳細に説明する。
図1に示す本実施形態のハブユニット軸受Oは、駆動輪用とされており、固定輪である外輪1及び回転輪であるハブ3と、外輪1とハブ3間の環状空間13に転動自在に配置される複数の転動体10と、環状空間13を密封する密封装置12a,12bと、ハブ3と共に回転する磁気エンコーダ20とを備えている。また、磁気エンコーダ20と対向して、図示しない磁気センサが配設されており、車輪の回転と共に磁気エンコーダ20を回転させ、車輪の回転に同期した磁場変化を検出する。そして、検出された磁場変化をもとに車軸の回転数または車軸にかかる荷重を得ることができる
ハブ3は、中空状のハブ輪4を備えており、ハブ輪4は、その外周面のアウトボード側端部(自動車への組み付け状態で車幅方向外側の端部:図1の左端部)に径方向外方に延びる車輪取り付けフランジ7を有している。車輪取り付けフランジ7には、そのアウトボード側の側面に車輪を構成する図示しないホイール及びブレーキロータ等を取り付けるためのハブボルト7aが周方向に略等間隔で複数植設されている。
ハブ輪4のインボード側端部(自動車への組み付け状態で車幅方向内側の端部:図1の右端部)には小径段部4aが形成されており、該小径段部4aには内輪5が嵌め込まれている。内輪5の外周面には内輪軌道面9が形成され、また、ハブ輪4の軸方向の中間部外周面にも内輪軌道面9が形成されている。
外輪1の内周面にはハブ輪4の内輪軌道面9に対応する外輪軌道面8及び内輪5の内輪軌道面9に対応する外輪軌道面8が形成されている。また、車輪取り付けフランジ7から離間する側の外輪1の端部には径方向外方に延びる懸架装置取り付けフランジ2が設けられている。図示は省略するが、この懸架装置取り付けフランジ2には、取り付けボルトによりナックルが取り付けられる。
そして、複列の内輪軌道面9と複列の外輪軌道面8との間には、それぞれ複数の転動体10が保持器11を介して周方向に転動可能に配設されている。尚、図示の例では、転動体10として玉を使用しているが、重量の嵩む車輪支持用ハブユニット軸受の場合には、転動体10としてテーパころを使用する場合もある。
また、外輪1のアウトボード側の端部とハブ輪4との間、及び外輪1のインボード側の端部と内輪5との間には、密封装置12a,12bがそれぞれ設けられている。密封装置12aは、外輪1のアウトボード側の端部内周面に嵌合されたスリンガ14と、スリンガ14に接着固定されてハブ輪4に摺接するシール部15とを備えている。
一方、密封装置12bは、内輪5の外周面に嵌合される第1のスリンガ16と、外輪1のインボード側の端部内周面に嵌合される第2のスリンガ17と、第1のスリンガ16に接着固定されて第2のスリンガ17と摺接するシール部18とを有する。シール部18は、ゴム材料によって形成されており、封入グリースの漏洩を防止するとともに、外部からの塵埃、水、泥水等の環状空間13への侵入を防止する。
本発明では、転走面、すなわち外輪軌道面8及び内輪軌道面9をSUJ2等の通常軸受に使用される鋼材製にするとともに、少なくともフランジ部の一部、即ちハブ輪4の車輪取り付けフランジ7及び外輪1の懸架装置取り付けフランジ2(図中、クロスハッチで示す部分)の一部を炭素繊維プリプレグの積層体から成る炭素繊維強化樹脂で形成する。
炭素繊維プリプレグは、炭素繊維を平面状に、一方向に配向させて樹脂で結束したシート状のもの(一方向プリプレグ)である。これを積層する際、図2に模式的に示すように、隣接する(図の例では上下の)炭素繊維プリプレグ間で、炭素繊維100の配向が、(a)→(b)→(c)→(d)のように所定の角度(例えば45°)で交差するように積層される。すなわち、繊維配向が異なるように積層される。尚、積層後、熱プレスあるいはオートクレーブにより一体となった炭素繊維強化樹脂を得ることができる。
また、炭素繊維プリプレグは、炭素繊維を織物のように平面状に縦横等に編組して樹脂で結束したシート状物(編組プリプレグ)を積層したものでもよい。
また、一方向プリプレグを積層したものの表面のみを編組プリプレグとしてもよい。この場合、得られた炭素繊維強化樹脂に穴あけ加工をしても表面の繊維が散けることが少ない。
また、一方向プリプレグを積層したものの表面のみを編組プリプレグとしてもよい。この場合、得られた炭素繊維強化樹脂に穴あけ加工をしても表面の繊維が散けることが少ない。
炭素繊維の種類や直径には制限はないが、得られた炭素繊維強化樹脂の実用的な強度を考慮すると、引張強度が3〜8.5GPaで、引張弾性率が220〜700GPaで、伸度が0.5〜2.2%であるものが好ましい。
また、炭素繊維強化樹脂における樹脂の含有量は、23〜50質量%が好ましい。樹脂の含有量が23質量%未満では、相対的に樹脂量が少なくなりすぎてプリプレグ同士の接着性が低下する。一方、樹脂の含有量が50質量%を超えると、炭素繊維強化樹脂が必要な強度とならない。より好ましい樹脂の含有量は、25〜40質量%である。
また、炭素繊維強化樹脂における樹脂の含有量は、23〜50質量%が好ましい。樹脂の含有量が23質量%未満では、相対的に樹脂量が少なくなりすぎてプリプレグ同士の接着性が低下する。一方、樹脂の含有量が50質量%を超えると、炭素繊維強化樹脂が必要な強度とならない。より好ましい樹脂の含有量は、25〜40質量%である。
尚、炭素繊維を結束するための樹脂の種類には制限はなく、エポキシ樹脂,フェノール樹脂及びポリイミド樹脂のような熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂やポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。少なくともこれらのうち何れかを含むことが好ましい。
また、炭素繊維プリプレグは、図3に模式的に示すように、炭素繊維100の配向がハブボルト7aの軸線Cに対して略垂直になるように積層される。
そして、炭素繊維強化樹脂は、ハブボルト7aを挿通させるためのボルト孔が開けられて車輪取り付けフランジ7に相当するフランジ部材とされる。すなわち、少なくともフランジ部の一部は炭素繊維強化樹脂で形成され、そのフランジ部には予め雌ねじ加工が施され、その加工部にハブボルト7aが直接ねじ締結される。また、直接ハブボルトを固定する別の方法として、フランジ部に予め穴あけ加工が施され、その加工部にハブボルトが直接セレーション圧入される方法がある。
フランジ部材はハブ輪4の外周面に固定され、同様に、炭素繊維強化樹脂で懸架装置取り付けフランジ2に相当するフランジ部材を形成することもできる。フランジ部材とハブ輪4または外輪1との固着方法は、炭素繊維プリプレグに用いた樹脂に合わせて金属と接着が可能な接着剤を用いて接着することができる。また、図示しないセンターナットを用いてハブ輪4に固定することもできる。更には、接着剤とセンターナットとを併用してもよい。また、より固着強度を高めるためには、ハブ輪4の固着面に、ローレット加工やセレーション加工を施してもよい。
上記ハブユニット軸受Oは、転走面が金属製であるため軸受回転特性は従来と同等に維持される。また、懸架装置取り付けフランジ2や車輪取り付けフランジ7が炭素繊維強化樹脂で形成されるため、強度を保ちつつ軽量化を図ることができる。また、炭素繊維強化樹脂は熱伝導率が金属に比べて大幅に低いため、ブレーキング時の発熱が車輪取り付けフランジ7を通じてハブ輪4に伝熱しにくくなり、軸受温度の上昇を抑えることができる。そのため、封入グリースの熱劣化も抑えられ、更にはスリンガ16の熱膨張も抑えられ、磁気エンコーダ20の位置ズレも抑えられ、回転精度の低下を防ぐこともできる。
以下、実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例1)
炭素繊維(引張強度5GPa、引張弾性率235GPa、伸度1.9%)を平面状に並べ、エポキシ樹脂で結束して一方向プリプレグを作製した。この一方向プリプレグにおける炭素繊維の含有量は75質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は25質量%である。そして、この炭素繊維プリプレグを、図2に示すように、炭素繊維の配向が45°の角度をもって重なるように積層して熱プレスを行い、炭素繊維強化樹脂を作製した。
炭素繊維(引張強度5GPa、引張弾性率235GPa、伸度1.9%)を平面状に並べ、エポキシ樹脂で結束して一方向プリプレグを作製した。この一方向プリプレグにおける炭素繊維の含有量は75質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は25質量%である。そして、この炭素繊維プリプレグを、図2に示すように、炭素繊維の配向が45°の角度をもって重なるように積層して熱プレスを行い、炭素繊維強化樹脂を作製した。
日本精工(株)製車輪支持用転がり軸受「呼び番号28BWK19」を改良し、車輪取り付けフランジとして上記の炭素繊維強化樹脂からなるフランジ部材を接着剤及びセンターナットを用いてハブ輪に固着した。尚、内輪及び玉はSUJ2製であり、外輪はS53CG(炭素鋼)製である。
そして、フランジ部材に、ブレーキシステムのブレーキロータをボルト締めして実施例1とした。尚、ボルト締めに際し、エポキシ系接着剤にて接着して固定力を高めた。
(比較例1)
日本精工(株)製車輪支持用転がり軸受「呼び番号28BWK19」をそのまま用い、車輪取り付けフランジにブレーキロータを締結して比較例1とした。
日本精工(株)製車輪支持用転がり軸受「呼び番号28BWK19」をそのまま用い、車輪取り付けフランジにブレーキロータを締結して比較例1とした。
(寿命試験)
実施例1及び比較例1に車軸を嵌入し、更にブレーキディスクを130℃に調温し、アキシアル荷重8820Nを付与した状態で車軸を100min−1にて回転させ、回転時の振動を振動計で常時計測し、測定値が一定値を超えるまでの回転時間を回転寿命とみなし、ワイブル分布関数に基づくL10寿命を求めた。結果を表1に示す。
実施例1及び比較例1に車軸を嵌入し、更にブレーキディスクを130℃に調温し、アキシアル荷重8820Nを付与した状態で車軸を100min−1にて回転させ、回転時の振動を振動計で常時計測し、測定値が一定値を超えるまでの回転時間を回転寿命とみなし、ワイブル分布関数に基づくL10寿命を求めた。結果を表1に示す。
また、回転中、内輪表面温度を測定した。結果を表1に併記する。
表1に示すように、フランジ部を炭素繊維強化樹脂で形成することにより、ブレーキロータを通じての伝熱が抑えられ、長寿命になる。
(実施例2)
車両用車軸軸受のフランジ部分を、炭素繊維及びエポキシ樹脂から成るプリプレグを積層することによって積層体を形成した。また、この積層体を130℃で2時間保持することによって樹脂を硬化させ炭素繊維強化樹脂とし、機械加工を行うことによって仕上げを行った。また、心金となる鍛造軸受鋼製内輪にローレット加工及びねじ穴加工を行い、エポキシ系接着剤を塗布の後、センターナットでねじ締結を行った。
車両用車軸軸受のフランジ部分を、炭素繊維及びエポキシ樹脂から成るプリプレグを積層することによって積層体を形成した。また、この積層体を130℃で2時間保持することによって樹脂を硬化させ炭素繊維強化樹脂とし、機械加工を行うことによって仕上げを行った。また、心金となる鍛造軸受鋼製内輪にローレット加工及びねじ穴加工を行い、エポキシ系接着剤を塗布の後、センターナットでねじ締結を行った。
この炭素繊維強化樹脂はエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を23〜50質量%、より好ましくは25〜40質量%含有している。熱硬化性樹脂の量が23質量%を下回ると、繊維間に樹脂が十分にないため、プリプレグ同士の接着性が低下する。また、熱硬化性樹脂の量が50質量%を超えると、繊維数が減少するため強度面で鋼を上回ることが困難となる。
上記含有率は、樹脂と強化剤の含有率を測定するのに一般的に行われている燃焼法にて測定したものである。これはまず、試験片の初期質量を測定しておき、窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気中で樹脂を燃焼させる。炭素は、酸素がないと燃焼せず残るので、残った炭素の質量を測定する。そして、得られた炭素の質量と初期質量との比で含有率を算出する。
また、炭素繊維強化樹脂を構成する炭素繊維は直径7〜13μmの範囲にあり、引張り強度が3〜8.5GPa、引張り弾性率が220〜700GPa、伸度が0.5〜2.2%の範囲に入るものが望ましい。
本発明で使用されるプリプレグは、炭素繊維が一方向に配向した一方向プリプレグが主体である。そして、孔を設けても表面の炭素繊維が散けないように表面の1枚には炭素繊維を編み組みして織り込んだ編組プリプレグを用いている。
図2に示すように一方向プリプレグを繊維配向角度を45°ずつずらしながら積層することによって作成した熱硬化性樹脂量25質量%の炭素繊維強化樹脂(CFRP)を、少なくともフランジの一部に持つ車両用軸受(日本精工(株)製車輪支持用転がり軸受「呼び番号28BWK19」の改良)は、車輪支持用転がり軸受用のSUJ2製内輪及びSUJ2製玉を用いて、組み立てられ、図1に示すようにフランジ部に直接ハブボルトが固定されている。
少なくとも一部が炭素繊維強化樹脂であるフランジ部には予め雌ねじ加工が施され、その加工部にハブボルトが直接ねじ締結されており、これを実施例2aとする。
また、少なくとも一部が炭素繊維強化樹脂であるフランジ部には予め穴あけ加工が施され、その加工部にハブボルトのセレーションが圧入されており、これを実施例2bとする。
また、少なくとも一部が炭素繊維強化樹脂であるフランジ部には予め穴あけ加工が施され、その加工部にハブボルトのセレーションが圧入されており、これを実施例2bとする。
(比較例2)
一方、少なくとも一部が炭素繊維強化樹脂であるフランジ部には予め穴あけ加工が施され、その加工孔に、内周に雌ねじを有するアルミインサートを接着剤を介して嵌合し、これを比較例2とした。その他の部分は実施例2a,2bと同様である。
一方、少なくとも一部が炭素繊維強化樹脂であるフランジ部には予め穴あけ加工が施され、その加工孔に、内周に雌ねじを有するアルミインサートを接着剤を介して嵌合し、これを比較例2とした。その他の部分は実施例2a,2bと同様である。
(引抜試験)
実施例2aは図4に示すように、実施例2bは図5に示すように、また比較例2は図6に示すように、フランジのハブボルト装着部にハブボルトを装着し、ハブボルトの引抜試験を行った。
図4は、実施例2aにおけるハブボルト7aの引抜試験を模式的に示している。車輪取り付けフランジ7にねじ部7bを介してハブボルト7aが直接締結されている。引張試験機にて、車輪取り付けフランジ7を固定し、ハブボルト7aを引き抜くことによって試験を行った。
図5は、実施例2bにおけるハブボルト7asの引抜試験を模式的に示している。車輪取り付けフランジ7にセレーション部7sを介してハブボルト7asが直接圧入されている。引張試験機にて、車輪取り付けフランジ7を固定し、ハブボルト7asを引き抜くことによって試験を行った。この場合、実施例2aのねじ結合の場合と異なり、引抜方向はボルトの軸方向向きを逆にしている。これは、セレーション圧入結合の場合に、要求される結合力を満足することを確認されればよいためである。
実施例2aは図4に示すように、実施例2bは図5に示すように、また比較例2は図6に示すように、フランジのハブボルト装着部にハブボルトを装着し、ハブボルトの引抜試験を行った。
図4は、実施例2aにおけるハブボルト7aの引抜試験を模式的に示している。車輪取り付けフランジ7にねじ部7bを介してハブボルト7aが直接締結されている。引張試験機にて、車輪取り付けフランジ7を固定し、ハブボルト7aを引き抜くことによって試験を行った。
図5は、実施例2bにおけるハブボルト7asの引抜試験を模式的に示している。車輪取り付けフランジ7にセレーション部7sを介してハブボルト7asが直接圧入されている。引張試験機にて、車輪取り付けフランジ7を固定し、ハブボルト7asを引き抜くことによって試験を行った。この場合、実施例2aのねじ結合の場合と異なり、引抜方向はボルトの軸方向向きを逆にしている。これは、セレーション圧入結合の場合に、要求される結合力を満足することを確認されればよいためである。
図6は、比較例2におけるハブボルト7aの引抜試験を模式的に示している。車輪取り付けフランジ7にインサートねじ7cを介してハブボルト7aが締結されている。インサートねじ7cは、円筒状のもので外周に凹凸等はなく、車輪取り付けフランジ7のストレート孔部7eに接着固定されている。インサートねじ7cの内周は、雌ねじ加工されたねじ部7dを介してハブボルト7aと締結されている。引張試験機にて、車輪取り付けフランジ7を固定し、ハブボルト7aを引き抜くことによって試験を行った。
引抜試験は、室温にて島津製作所製引張試験機を用いて、クロスヘッド送り速度:5mm/minにて行った。
引抜試験の結果を表2に示す。
引抜試験は、室温にて島津製作所製引張試験機を用いて、クロスヘッド送り速度:5mm/minにて行った。
引抜試験の結果を表2に示す。
実施例2a及び実施例2bでは、引き抜き試験の際にハブボルト7a,7asが引張破壊を起こした。すなわち、ハブボルト7a,7asの固定強度及び結合部の炭素繊維強化樹脂が十分に強く、ハブボルト7a,7asの強度を上回っていることが分かった。
比較例2では、ハブボルト7aが車輪取り付けフランジ7から引き抜ける結果となった。試験後の観察によると、車輪取り付けフランジ7とインサートねじ7cとの間で抜けが生じており、十分な固定強度が得られていないことが分かった。
1 外輪
2 懸架装置取り付けフランジ
3 ハブ
4 ハブ輪
5 内輪
7 車輪取り付けフランジ
7a,7as ハブボルト
7b ねじ部
7c インサートねじ
7d ねじ部
7e ストレート孔部
7s セレーション部
10 転動体
12a,12b 密封装置
16 第1のスリンガ
17 第2のスリンガ
18 シール部
20 磁気エンコーダ
100 炭素繊維
2 懸架装置取り付けフランジ
3 ハブ
4 ハブ輪
5 内輪
7 車輪取り付けフランジ
7a,7as ハブボルト
7b ねじ部
7c インサートねじ
7d ねじ部
7e ストレート孔部
7s セレーション部
10 転動体
12a,12b 密封装置
16 第1のスリンガ
17 第2のスリンガ
18 シール部
20 磁気エンコーダ
100 炭素繊維
Claims (9)
- 内輪、外輪及び転動体を備え、フランジ部が前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方と一体化され、前記内輪に車軸が嵌合される車両用車軸軸受において、
転走面を金属製にするとともに、少なくとも前記フランジ部の一部を炭素繊維プリプレグの積層体から成る炭素繊維強化樹脂で形成し、前記フランジ部に直接ハブボルトが固定されるようにしたことを特徴とする車両用車軸軸受。 - 前記フランジ部には予め雌ねじ加工が施され、その加工部に前記ハブボルトがねじ締結されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両用車軸軸受。
- 前記フランジ部には予め穴あけ加工が施され、その加工部に前記ハブボルトのセレーションが圧入されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両用車軸軸受。
- 前記炭素繊維プリプレグが、炭素繊維を平面状に、一方向に配向させて樹脂で結束されたものであり、かつ、前記炭素繊維の配向が、前記フランジ部に固定される前記ハブボルトの軸線に対して略垂直で、隣接する前記炭素繊維プリプレグ間は、前記炭素繊維の繊維配向が異なる角度になるように積層されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
- 前記炭素繊維プリプレグが、炭素繊維を平面状に編組して樹脂で結束されたものであり、かつ、前記炭素繊維の配向が、前記フランジ部に固定される前記ハブボルトの軸線に対して略垂直になるように積層されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
- 前記炭素繊維強化樹脂における樹脂の含有量が23〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
- 前記炭素繊維強化樹脂における炭素繊維の引張強度が3〜8.5GPa、引張弾性率が220〜700GPa、伸度が0.5〜2.2%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
- 前記炭素繊維強化樹脂における樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂またはポリプロピレン樹脂の何れかを含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
- 前記車軸の回転数または前記車軸にかかる荷重を検出するためのセンサを備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の車両用車軸軸受。
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-
2010
- 2010-07-29 JP JP2010170691A patent/JP2012030652A/ja active Pending
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