JP2012026923A - Spfs(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを用いた測定法用の表面プラズモン励起センサ、それを作製するためのキットならびに表面プラズモン励起センサを備えたspfsまたはそれを用いた測定法用測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アナライトの存在とは無関係に発生するノイズ(特に非特異的に吸着する蛍光標識剤に起因するもの)を抑制し、精度(S/N比)の高い測定が行えるSPFS等用の表面プラズモン励起センサを提供する。
【解決手段】少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層とにより構成された測定領域を有し、上記測定領域では、直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層が形成されている部分と形成されていない部分とがパターニングされていることを特徴とするSPFSまたはそれを用いた測定法用の表面プラズモン励起センサ。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層とにより構成された測定領域を有し、上記測定領域では、直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層が形成されている部分と形成されていない部分とがパターニングされていることを特徴とするSPFSまたはそれを用いた測定法用の表面プラズモン励起センサ。
【選択図】なし
Description
本発明は、医療、バイオテクノロジー等の分野で利用されるSPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用するSPFS−LPFS(Localized surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:局在表面プラズモン励起増強蛍光分光法)などの測定系に関し、より具体的には、それらの測定系に用いられる表面プラズモン励起センサに関する。
SPFSは、誘電体部材上に形成された金属薄膜に全反射減衰(ATR)が生じる角度で励起光を照射したときに、金属薄膜を透過したエバネッセント波が表面プラズモンとの共鳴により数十倍〜数百倍に増強されることを利用して、金属薄膜近傍に捕捉されたアナライト(分析対象物)を標識する蛍光色素を効率的に励起させ、その蛍光シグナルを測定する方法である。このようなSPFSは、一般的な蛍光標識法などに比べて極めて感度が高いため、サンプル中にアナライトがごく微量しか存在しない場合であってもそれを定量することができる。SPFSの基本的な態様は、たとえば特許文献1および2に開示されている。
また、LPFSは、上記SPFSと組み合わせて利用することのできる方法であって、コロイド液を流すなどして金属コロイド粒子を蛍光色素近傍に位置させると、この金属コロイド粒子にもプラズモンが発生して局所的な電場増強効果が得られることを利用し、さらに効率良く蛍光色素を励起させてその蛍光シグナルを測定する方法である。
SPFSおよびSPFS−LPFS(以下「SPFS等」と総称する。)では、通常、アナライトを含有する流体を測定用のセンサ(表面プラズモン励起センサ)に送液し、抗原抗体反応等を利用して金属薄膜近傍にアナライトを捕捉し、その後蛍光標識剤を含有する流体を送液して捕捉されたアナライトを蛍光標識する。センサ表面の構造として、たとえば特許文献1には、アナライトと特異的に結合するリガンドを担持したデキストランが金属薄膜上に積層する態様が記載されている。
一方、特許文献3には疎水性膜の中に親水性膜のパターンが形成された安価で複数の液状サンプルを測定可能な表面プラズモンセンサーが記載されているが、微細構造によりセンサーの性能を向上するものではない。
また、金属薄膜等の表面に、自己組織化単分子膜(SAM)をナノメートルスケールでパターニングする方法は、たとえば非特許文献1などにより公知である。
金長吉ら,機能性自己組織化単分子膜を用いたナノパターニング,生産研究,55巻6号(第25〜30頁),2003年
SPFS等に用いられる表面プラズモン励起センサは、アナライトを効率的に捕捉するとともに、アナライトの存在とは無関係に発生するノイズをなるべく抑制し、精度(S/N比)の高い測定が行えるようなものにすることが重要である。たとえば、蛍光標識剤が捕捉されたアナライトではなくセンサ表面に非特異的に付着すると、ノイズとなる蛍光が発生してしまうため、そのような非特異的な付着が起こりにくい構造にすることが要求される。更に、前記リガンドを担持したデキストラン等の高分子材料を用いるとアナライトの捕捉率は向上するものの、形成された3次元構造による散乱光が増えやすく、また材料的に高誘電率なため電場増強が低下しやすいため、SPR測定と異なりSPFSではデキストランでの感度向上は確立されていない。本発明は、上記のような課題を解決しうるSPFS等用の表面プラズモン励起センサを提供することを目的とする。
本発明者は、リガンドを担持したデキストラン層(直鎖状高分子−リガンド複合体)が金属薄膜上に一様に形成されている、引用文献1に記載されたような従来の表面プラズモン励起センサについて、デキストラン層を一様ではなく所定のパターンで金属薄膜上に形成する(つまり金属薄膜上にデキストラン層が存在する部分と存在しない部分とを混在させる)ことにより、蛍光のS/N比を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るSPFSまたはそれを用いた測定法用の表面プラズモン励起センサは、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層とにより構成された測定領域を有し、上記測定領域では、直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層が形成されている部分と形成されていない部分とがパターニングされていることを特徴とする。
前記直鎖状高分子−リガンド複合体のパターニングは、望ましくは、あらかじめそのパターニングに対応するよう形成されたSAM(自己組織化単分子膜)に直鎖状高分子−リガンド複合体を連結することによってなされている。
前記SAMは、たとえば、ドットの底面が、径が100〜1000nmの略円形または一辺100〜1000nmの略方形であって、ドットの間隔がそれに対応する方向の径または一辺の長さの0.2〜5倍であるパターニングで形成されていることが好ましい。
前記直鎖状高分子は、たとえば、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはヒアルロン酸が好ましい。
また、本発明はあわせて、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された直鎖状高分子を含む層とにより構成された測定領域を有し、上記測定領域では直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層が形成されている部分と形成されていない部分とがパターニングされているチップ基板または当該チップ基板を備えたセンサチップと、直鎖状高分子と複合体を形成させるためのリガンドおよび試薬とを含むことを特徴とする、上記の表面プラズモン励起センサによりSPFSまたはそれを用いた測定法を行うためのキット、ならびに、上記の表面プラズモン励起センサまたは上記のキットから作製された表面プラズモン励起センサを備えたSPFSまたはそれを用いた測定法用測定装置をも提供する。
本発明のようなパターニングでもって直鎖状高分子−リガンド複合体をセンサ表面に形成した場合、センサ表面の所々に直鎖状高分子−リガンド複合体のない空隙が生まれ、流体と直鎖状高分子−リガンド複合体との接触状態が一様に形成した場合に比べて良好になる。そのため、リガンドの絶対的な数は減少するものの十分な数のリガンドがアナライトの捕捉に寄与して高いシグナルが得られる一方、直鎖状高分子−リガンド複合体からなる反応層に非特異的に吸着する蛍光標識剤が減少してノイズが低減され、結果的にS/N比が向上するものと考えられる。また、増強されたシグナルを得るためには、さらに直鎖状高分子−リガンド複合体を連結する土台となるSAMをサブミクロンのオーダーでパターニングすることが好ましいが、これは表面プラズモンと光回折の相互作用が起きるためであると考えられる。
以下、本発明についてSPFS測定系における態様に則しながらがら説明するが、本発明はSPFS測定系のみならず、SPFS−LPFS測定系などのSPFSを利用した他の測定系においても適用されるものであり、その場合は必要に応じて、センサ表面の構造等を適用する測定系にあわせて適切に設計変更すればよい。
本発明の表面プラズモン励起センサは、センサ表面に、アナライトを捕捉して固定化するための直鎖状高分子−リガンド複合体、つまり以下に述べるような特定の直鎖状高分子と(通常は複数の)リガンドとが連結した化合物からなる層(反応層)が形成されている部分と形成されていない部分とがパターニングされている。
直鎖状高分子−リガンド複合体をパターニングするための手段は特に限定されるものではないが、SAM(自己組織化単分子膜)を誘電体部材、金属薄膜、チップ基板、スペーサ層などの上に所定のパターンで形成した後、そのSAMに直鎖状高分子−リガンド複合体を連結させるという手法を用いることが好適である。一方、金属薄膜等に吸着しうる官能基を有する直鎖状高分子(たとえばチオセミカルバジドで修飾された多糖類)を用いることにより、SAMを介することなく、金属薄膜等に直接直鎖状高分子−リガンド複合体のパターンを形成することも可能である。
本発明において、直鎖状高分子−リガンド複合体ないしその土台となるSAMのパターニングの形態は、公知の手法に従って形成できる範囲で特に限定されるものではない。SAMのドットは、たとえば円柱状、円錐状、角柱状、角錐状などとすることができ、そのサイズ(底面、高さ)やドットの間隔なども任意である。たとえば、ドットの底面が、径(直径ないし長径および短径)が100〜1000nmの略円形(円形、楕円形を含む)または一辺が100〜1000nmの略方形(正方形、長方形を含む)であって、ドットの間隔(ピッチ)がそれに対応する方向の径または一辺の長さの0.2〜5倍であるようなSAMのパターニングは、比較的容易に形成することができ、また直鎖状高分子−リガンド複合体の密度が適度であることから、好ましいパターニングの一つに挙げられる。SAMの形成されている部分と形成されていない部分の面積の比率が同等であれば、上記とは異なるパターニングもまた好ましい。ドット1つあたりの面積が大きすぎるとノイズによる悪影響が出る場合もあるが、そのような影響が問題とならないようであれば、ドットの底面の径または一辺は、上限を10000nm(10μm)とする範囲で調整することも可能である。その他、たとえば流体中のアナライトまたは標識抗体の濃度、送液の速度などの各種の条件を考慮して、パターニングの形態をさらに調整してもよい。
なお、直鎖状高分子−リガンド複合体についてのパターニングは、その下部(固定化されている部分)についていうものである。デキストラン等の直鎖状高分子は、直鎖状の分子構造を有するものの、剛直ではなくある程度の柔軟性を有しているため、直鎖状高分子−リガンド複合体の上部は比較的自由に漂泊するものと推測される。
また、このようなパターニングが施される領域(アッセイエリア)の面積は、励起光の照射面積を考慮しながら調整することができる。たとえば、励起光のスポット径が1mmφ程度であれば、上記アッセイエリアは通常、少なくとも数mm四方の面積を有するものとなるよう設計される。
・直鎖状高分子
直鎖状高分子−リガンド複合体を構成する直鎖状高分子としては、反応層の下に形成された層(SAM、金属薄膜、スペーサ層等)と連結させるための官能基と、リガンドと連結させるための通常は複数の反応性官能基とを有する、直鎖状の(モノマーの側鎖分岐または糖などの環構造は有していてもよいが、高分子同士の架橋構造を有さない)構造の高分子が用いられる。
直鎖状高分子−リガンド複合体を構成する直鎖状高分子としては、反応層の下に形成された層(SAM、金属薄膜、スペーサ層等)と連結させるための官能基と、リガンドと連結させるための通常は複数の反応性官能基とを有する、直鎖状の(モノマーの側鎖分岐または糖などの環構造は有していてもよいが、高分子同士の架橋構造を有さない)構造の高分子が用いられる。
また、SPFS等で用いられる検体液や標識液等には通常水性溶媒が用いられることから、直鎖状高分子は、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水基を多数有するような、水性溶媒との親和性が高い(水溶性の)ものであることが好ましい。ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水基は、水素結合により水分子を内包するため、非特異的吸着が起こりにくいという利点を有する。一方、全体として疎水的な直鎖状高分子は、センサ表面に局在しやすいため反応効率が低下したり、また疎水性相互作用により非特異的吸着が起こりやすくなったりするおそれがある。
たとえば、デキストラン、グリコーゲン、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、グルカン(β1,3−グルカン)などの多糖類(これらはいずれもグルコースの重合体である)、またはそれらに水溶性を高めるための官能基やリガンドを連結させるための部位などを導入した誘導体(たとえば、デキストランのグルコース単位の水酸基の一部がカルボキシメチル基で置換された化合物であるカルボキシメチルデキストラン)、あるいはカルボキシル基を有する単糖からなるポリマーであるアルギン酸などが、上記のような直鎖状高分子として挙げられる。特に、分岐構造が少なく冷水への溶解度が高いカルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸などが好適である。たとえば、カルボキシメチルデキストランを用いる場合、還元性末端(アルデヒド基)においてSAM等に連結させ、またカルボキシメチル基にリガンドを連結させることができる。さらに、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの高分子も同様に、本発明における直鎖状高分子として好適である。
直鎖状高分子の湿潤状態における高さ(ほぼ反応層(直鎖状高分子−リガンド複合体)の厚さとみなせる)は、リガンドに捕捉されたアナライトの蛍光色素が増強されたエバネッセント波で効率的に励起され、かつ金属薄膜による消光が起きないようにすることなどを考慮すると、20〜200nm程度が好ましい。したがって、直鎖状高分子としてはそのような高さになる分子量を有するもの、たとえばカルボキシメチルデキストランであれば分子量が約10〜100万の範囲にあるもの、を選択することが好ましい。
直鎖状高分子と反応層の下層を形成する物質とは、公知の手法に従って連結することができる。たとえば、アルデヒド基(還元性末端)を有する直鎖状高分子(多糖類)とアミノ基を有するSAMとを反応させてシッフ塩基を形成させることにより、これらを結合させることができる。通常は、このようにして直鎖状高分子をセンサ表面に連結した後に、リガンドをその直鎖状高分子に連結させるという手順で、直鎖状高分子−リガンド複合体からなる反応層をセンサ表面に形成する。反応条件を調整することにより、SAM等に連結する直鎖状高分子の数を増減させることも可能である。
・リガンド
アナライトと特異的に結合し得る分子を「リガンド」と称する。特に、センサ表面に固定化された、アナライトをセンサ表面に捕捉するためのリガンドを「固定化リガンド」(リガンドが抗体であれば「固定化抗体」)と称する。本発明の固定化リガンドは、直鎖状高分子に連結(担持)された状態でセンサ表面に固定化されている。なお、アナライトを標識するために液中に存在する、蛍光色素と結合したリガンドを「標識リガンド」と称するが、これについては別途後述する。
アナライトと特異的に結合し得る分子を「リガンド」と称する。特に、センサ表面に固定化された、アナライトをセンサ表面に捕捉するためのリガンドを「固定化リガンド」(リガンドが抗体であれば「固定化抗体」)と称する。本発明の固定化リガンドは、直鎖状高分子に連結(担持)された状態でセンサ表面に固定化されている。なお、アナライトを標識するために液中に存在する、蛍光色素と結合したリガンドを「標識リガンド」と称するが、これについては別途後述する。
直鎖状高分子−リガンド複合体を構成するリガンドは(標識リガンドについても同様であるが)、捕捉しようとするアナライトに応じて適切なものを選択すればよく、アナライトの所定の部位と特異的に結合しうる抗体、受容体、その他の特定の分子(たとえばビオチン化したアナライトを捕捉するためのアビジン)などを用いることができる。
直鎖状高分子とリガンドとは、アミンカップリング法、チオールカップリング法、間接的捕捉法(キャプチャー法)等、公知の手法に従って結合させることができる。たとえば、アミンカップリング法では、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)などの水溶性カルボジイミド(WSC)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とを反応させて直鎖状高分子のカルボキシル基を活性化(つまりNHSを導入)した後、アミノ基を有するリガンドを反応させ、NHSを介して直鎖状高分子にリガンドを結合させる。反応条件を調整することにより、直鎖状高分子に結合するリガンドの数を増減させることも可能である。
(SAM)
前述したように、本発明では金属薄膜上にSAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)を所定のパターンで形成した後、直鎖状高分子−リガンド複合体をそこに結合させる手法を用いることが望ましい。なお、金属薄膜上とは、金属薄膜の直上であってもよいし、金属薄膜の直上に形成された後述するようなスペーサ層の直上であってもよい。
前述したように、本発明では金属薄膜上にSAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)を所定のパターンで形成した後、直鎖状高分子−リガンド複合体をそこに結合させる手法を用いることが望ましい。なお、金属薄膜上とは、金属薄膜の直上であってもよいし、金属薄膜の直上に形成された後述するようなスペーサ層の直上であってもよい。
SAMを構成する分子としては、分子の一方の末端に金属薄膜等と結合可能な官能基(シラノール基、チオール基等)を、もう一方の末端に前述した特定の直鎖状高分子と結合可能な反応性官能基(アミノ基、カルボキシル基、グリシジル基等)を有する化合物が用いられる。このような化合物はSAM形成試薬として容易に入手することができる。たとえば、炭素原子数4〜20程度のカルボキシアルカンチオール(10−カルボキシ−1−デカンチオールなど)は、光学的な影響が少ない、つまり透明性が高く、屈折率が低く、膜厚が薄いSAMを形成することができるため好適である。SAM構成分子の溶液を金属薄膜等に接触させ、当該分子の一端を金属薄膜等に吸着させることにより、SAMを形成することができる。また、後記実施例に示すように、金属薄膜等に結合したSAM自体が直鎖状高分子と結合可能な反応性官能基を直接は有さない分子であっても、当該分子にそのような官能基を有する化合物を反応させることで、最終的にSAMに直鎖状高分子−リガンド複合体が結合できるようにしてもよい。
SAMのパターニングの方法は特に限定されるものではなく、公知の各種の方法を用いることができるが、たとえば、ナノスケールでのパターニングに適した前掲の非特許文献1に記載された下記[1]および[2]のような方法が挙げられる。
[1]シリコン基板のエッチングにより、たとえばピラミッド型の微細な凹部が所定のパターンで形成された鋳型を作製し、この鋳型から上記凹部に対応する凸部を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)製のスタンプを作製する。このスタンプの凸部にSAM構成分子を付着させ、あらかじめ全面に金属薄膜が形成された基板に圧着させることにより、金属薄膜上に上記所定のパターンのSAMが形成される。
[2]マイクロ加工されたシャドウマスクを用いて基板上に所定の形状を有する金属薄膜を形成する。シリコン基板のエッチングにより作製した鋳型から、所定の形状を有するPDMS製のスタンプを作製しておき、その凸部にSAM構成分子を付着させ、上記金属薄膜が形成された基板上に圧着し、金属薄膜の一部をSAMでカバーする。SAMでカバーされていない金属薄膜をエッチングで除去し、金属薄膜の形状とスタンプ凸部の形状とが重なった部分のSAMを残存させる(エッチングされた部分は基板が露出した状態になる)ことで、所定のパターンのSAMが形成される。
また、金属薄膜の上にスペーサー層を設け、SAMをこのスペーサー層表面にパターニングする場合は、たとえば、スペーサー層の全面にシランカップリング剤等からなるSAMを形成した後、所定のパターンを有するマスク板を用いてエッチングするか、またはエキシマレーザー集光ビームを照射してアブレーション(蒸発・微粒子化)することにより、不要な部分のSAMをスペーサ層ごと除去する(除去された部分は金属薄膜が露出する)といった手法を用いることもできる。
アナライトの非特異的吸着を防止するため、センサ表面や流路の側壁・天板等は、牛血清アルブミン(BSA)、カゼイン、PEG含有SAM、MPCポリマー等によりブロッキング処理をしておくことが望ましい。上記PEG含有SAMは、一方の末端に金属薄膜またはガラス製等のチップ基板もしくはスペーサー層等に吸着する官能基を有するが、もう一方の末端には直鎖状高分子を連結しうる反応性官能基を有さないPEG誘導体によって形成されるSAMであり、直鎖状高分子を連結させるためのSAMとは区別されるものである。たとえば、所定の形状でパターニングされたSAMに直鎖状高分子−リガンド複合体を連結した後、このSAMがパターニングされなかった金属薄膜等の部分を露出したままにせず、上記PEG誘導体を反応させてPEG含有SAMを形成することにより、アナライトの非特異的吸着を抑制することができる。順序を逆にして、SAMを所定の形状でパターニングし、それ以外の部分にPEG含有SAMを形成した後に、前者のSAMに直鎖状高分子を連結させるようにしてもよい。
− 表面プラズモン励起センサ −
表面プラズモン励起センサは、少なくとも、誘電体部材(プリズムまたは透明平面基板)と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された、アナライトをセンサ表面に固定化するための反応層とにより構成される、SPFS等によるシグナルを測定するための構造をいう。本発明では、上記反応層は、直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層である。便宜上、表面プラズモン励起センサの金属薄膜、反応層等が形成される方向を「上」または「表」、その反対の方向を「下」または「裏」と称することがある。
表面プラズモン励起センサは、少なくとも、誘電体部材(プリズムまたは透明平面基板)と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された、アナライトをセンサ表面に固定化するための反応層とにより構成される、SPFS等によるシグナルを測定するための構造をいう。本発明では、上記反応層は、直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層である。便宜上、表面プラズモン励起センサの金属薄膜、反応層等が形成される方向を「上」または「表」、その反対の方向を「下」または「裏」と称することがある。
金属薄膜等は、プリズムのような誘電体部材の水平面上に直接形成されていてもよいが、多数のサンプルを分析するための利便性などを考慮すると、プリズムの水平面上に着脱可能な誘電体部材からなる透明平面基板の一方の表面に形成されていることも望ましい。そのような金属薄膜等が形成された誘電体部材全体を「センサ基板」と称し、特に本発明の直鎖状高分子−リガンド複合体からなる反応層のパターニングが施されている領域を「測定領域」と称する。金属薄膜が形成されている領域の全面に反応層のパターニングを施して測定領域としてもよいが、金属薄膜が形成されている領域のうちの一部にのみ反応層のパターニングを施して測定領域とし、それ以外の部分には反応層のパターニングを施さないようにすると、よりノイズを低減できるため好ましい。また、反応層は金属薄膜の表面に直接形成されていてもよいが、必要に応じて、金属薄膜上に誘電体からなるスペーサ層および/またはSAMを形成し、その上に形成するようにしてもよい。
センサ基板は、SPFS等の測定に用いられる各種の流体(試料液、標識液、測定液など)を貯留したり各領域を連通して送液が行えるようにしたりするための「流路」を形成する部材(流路の側壁を形成するシート、天板等)と組み合わせて用いられる。これらはしばしば一体化され、チップ状の構造体(「センサチップ」と称する。)の態様をとる。また、表面プラズモン励起センサないしセンサチップには、流体を導入または排出するための開口が設けられ、ポンプや、たとえば柔軟な部材(シリコーンゴム等)で形成された断面が略円形のチューブなどを用いて、外部と流体を行き来させる。送液の条件(流速、時間、温度、検体や標識リガンドの濃度等)は、適宜調整することができる。
表面プラズモン励起センサないしセンサチップは、小規模ロット(実験室レベル)では、たとえば、あらかじめ金属薄膜等が形成された表面プラズモン励起センサないしセンサ基板を作製しておき、その金属薄膜等が形成されている側の表面上に、一定の厚さ(流路の高さ)を有する、中央部に任意の形状および大きさを有する穴が開けられたシリコーンゴム製シートまたはOリングを載せて流路の側面構造を形成し、次いでその上に送液導入口及び送液排出口を設けてある光透過性の天板を載せて流路の天井面を形成した後、これらを圧着してビス等の留め具により固定することによって作製することができる。また、工業的に製造される大ロット(工場レベル)では、たとえば、透明平面基板の所定の領域に金属薄膜、反応層等を形成してセンサ基板とし、一方でプラスチックの成形加工やフォトリソグラフィ等により微細な凹凸を形成して天板・側壁部材とし、これらを組み合わせることによりセンサチップを作製することができる。
(誘電体部材)
センサチップ(センサ基板)に用いられる誘電体部材は、ガラス製や、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などのプラスチック製のもの、好ましくはd線(588nm)における屈折率〔nd〕が1.40〜2.20の範囲にある材質のものを用いることができる。誘電体部材を透明平面基板として作製する場合、その厚さは、たとえば0.01〜10mmの範囲で調整することができる。また、金属薄膜を形成する前に、当面平面基板の表面は酸またはプラズマによる洗浄処理がなされていることが好ましい。
センサチップ(センサ基板)に用いられる誘電体部材は、ガラス製や、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などのプラスチック製のもの、好ましくはd線(588nm)における屈折率〔nd〕が1.40〜2.20の範囲にある材質のものを用いることができる。誘電体部材を透明平面基板として作製する場合、その厚さは、たとえば0.01〜10mmの範囲で調整することができる。また、金属薄膜を形成する前に、当面平面基板の表面は酸またはプラズマによる洗浄処理がなされていることが好ましい。
(金属薄膜)
表面プラズモン励起センサの金属薄膜は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強効果が大きい、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなる(合金の形態であってもよい)ことが好ましく、特に金からなることが好ましい。透明平面基板としてガラス製平面基板を用いる場合には、ガラスと上記金属薄膜とをより強固に接着するため、あらかじめクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を形成することが好ましい。
表面プラズモン励起センサの金属薄膜は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強効果が大きい、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなる(合金の形態であってもよい)ことが好ましく、特に金からなることが好ましい。透明平面基板としてガラス製平面基板を用いる場合には、ガラスと上記金属薄膜とをより強固に接着するため、あらかじめクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を形成することが好ましい。
透明平面基板上に金属薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法等)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。薄膜形成条件の調整が容易なことから、スパッタリング法または蒸着法によりクロムの薄膜および金属薄膜を形成することが好ましい。
表面プラズモンが発生し易いよう、金、銀、アルミニウム、銅、白金、またはそれらの合金からなる金属薄膜の厚さはそれぞれ5〜500nmが好ましく、クロム薄膜の厚さは1〜20nmが好ましい。電場増強効果の観点からは、金:20〜70nm、銀:20〜70nm、アルミニウム:10〜50nm、銅:20〜70nm、白金:20〜70nm、およびそれらの合金:10〜70nmがより好ましく、クロム薄膜の厚さは1〜3nmがより好ましい。
(スペーサ層)
表面プラズモン励起センサには、必要に応じて、金属薄膜による蛍光色素の金属消光を防止するため、金属薄膜とSAMの間に、誘電体からなるスペーサ層を形成してもよい(換言すれば、SAMは当該スペーサー層上に形成されていてもよい)。
表面プラズモン励起センサには、必要に応じて、金属薄膜による蛍光色素の金属消光を防止するため、金属薄膜とSAMの間に、誘電体からなるスペーサ層を形成してもよい(換言すれば、SAMは当該スペーサー層上に形成されていてもよい)。
誘電体としては、光学的に透明な各種無機物や、天然または合成ポリマーを用いることができる。なかでも、化学的安定性、製造安定性および光学的透明性に優れていることから、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)を用いることが好ましい。
スペーサ層の厚さは、通常10nm〜1mmであり、共鳴角安定性の観点からは、好ましくは30nm以下、より好ましくは10〜20nmである。一方、電場増強効果の観点から、好ましくは200nm〜1mmであり、さらに電場増強効果の安定性から、400nm〜1,600nmがより好ましい。また、SPFS−LPFS測定系においては、センサ表面(金属薄膜)と金属コロイド粒子との間に生じる電場をより効果的に増強させるため、スペーサ層の厚さは10〜100nmであることが望ましい。
このようなスペーサ層は、スパッタリング法、電子線蒸着法、熱蒸着法、ポリシラザン等の材料を用いた化学反応を用いた方法、またはスピンコータによる塗布などによって形成することができる。
− 測定装置 −
SPFS等用の測定装置は、SPFS等の測定を行うために用いられる各種の機器(基本的には光源、プリズム、光検出器などが含まれる。)を備える。本発明の表面プラズモン励起センサ(特にセンサチップの態様をとるもの)は、従来の表面プラズモン励起センサと同様、一般的なSPFS等用の測定装置に装着して使用することができる。
SPFS等用の測定装置は、SPFS等の測定を行うために用いられる各種の機器(基本的には光源、プリズム、光検出器などが含まれる。)を備える。本発明の表面プラズモン励起センサ(特にセンサチップの態様をとるもの)は、従来の表面プラズモン励起センサと同様、一般的なSPFS等用の測定装置に装着して使用することができる。
− 測定方法 −
本発明の表面プラズモン励起センサは、従来の表面プラズモン励起センサと同様、たとえば下記工程(a)〜(d)を含むような一般的なSPFS等に準じた測定方法において使用することができる:
(工程a)試料液(検体を含む溶液)を送液してセンサ表面(反応層)に接触させる;
(工程b)標識液(標識抗体を含む溶液)を送液してセンサ表面(反応層)に接触させる;
(工程c)測定液(アナライトも標識抗体も含まない溶液)を送液して流路を満たした状態とし、標識抗体に対応した励起光を金属薄膜裏面に照射し、センサ表面から発せられる蛍光シグナル(アッセイシグナル)を測定する;
(工程d)アナライトの濃度が既知の標準試料から作成された検量線に基づいて、上記蛍光シグナルから検体中のアナライトの濃度を決定する。
本発明の表面プラズモン励起センサは、従来の表面プラズモン励起センサと同様、たとえば下記工程(a)〜(d)を含むような一般的なSPFS等に準じた測定方法において使用することができる:
(工程a)試料液(検体を含む溶液)を送液してセンサ表面(反応層)に接触させる;
(工程b)標識液(標識抗体を含む溶液)を送液してセンサ表面(反応層)に接触させる;
(工程c)測定液(アナライトも標識抗体も含まない溶液)を送液して流路を満たした状態とし、標識抗体に対応した励起光を金属薄膜裏面に照射し、センサ表面から発せられる蛍光シグナル(アッセイシグナル)を測定する;
(工程d)アナライトの濃度が既知の標準試料から作成された検量線に基づいて、上記蛍光シグナルから検体中のアナライトの濃度を決定する。
なお、工程(a)と(b)の間、および工程(b)と(c)の間には、必要に応じて、洗浄液(界面活性剤等を含む溶液)を送液して流路を洗浄する工程を設けてもよい。また、たとえば工程(b)の前の時点で測定した蛍光シグナルを「ブランクシグナル」とし、このブランクシグナルで除するなどして上記アッセイシグナルを補正することにより、アナライトの濃度の定量の精度を向上させることができる。
・検体/試料液
アナライトを含むまたは含んでいる可能性のある、SPFS等に供される物質を「検体」と称す。たとえば、ヒト、ヒト以外のほ乳類(モデル動物、ペット等)、その他の動物から採取される血液(血清・血漿)、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが検体として挙げられる。分析の際、検体は必要に応じて、各種の溶媒(純水、生理食塩水、緩衝液、試薬溶液等)と混合して用いてもよい。このような混合物または検体そのもの、あるいは所定の目的のために調製したアナライトを含有する溶液で、SPFS等によるシグナルを測定するために表面プラズモン励起センサの所定の領域に送液される流体を「試料液」と総称する。
アナライトを含むまたは含んでいる可能性のある、SPFS等に供される物質を「検体」と称す。たとえば、ヒト、ヒト以外のほ乳類(モデル動物、ペット等)、その他の動物から採取される血液(血清・血漿)、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが検体として挙げられる。分析の際、検体は必要に応じて、各種の溶媒(純水、生理食塩水、緩衝液、試薬溶液等)と混合して用いてもよい。このような混合物または検体そのもの、あるいは所定の目的のために調製したアナライトを含有する溶液で、SPFS等によるシグナルを測定するために表面プラズモン励起センサの所定の領域に送液される流体を「試料液」と総称する。
なお、SPFS等の測定時に用いられるアナライトも標識抗体も含まない「測定液」としては、上述したような検体と混合される溶媒(特に純水)を用いることが好適である。また、アナライトを蛍光標識する際に用いられる標識抗体を含む「標識液」も、そのような溶媒中に標識リガンドが含まれているものを用いることが好適である。
・アナライト
SPFS等により定量ないし検出すべき対象となる物質を「アナライト」と称する。センサ表面に捕捉することのできる物体であれば特に限定されることなくアナライトとなり得るが、代表的なアナライトとしては、たとえば腫瘍マーカーとなるような、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等を含む)またはその複合体が挙げられる。また、リガンドに認識される部位(エピトープ等)を表面に有する細胞やウイルス等もアナライトとなり得る。さらに、核酸(一本鎖または二本鎖の、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等を含む)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等を含む)、脂質などのその他の分子も、必要に応じてビオチン化等の処理をした上で、アナライトとすることも可能である。
SPFS等により定量ないし検出すべき対象となる物質を「アナライト」と称する。センサ表面に捕捉することのできる物体であれば特に限定されることなくアナライトとなり得るが、代表的なアナライトとしては、たとえば腫瘍マーカーとなるような、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等を含む)またはその複合体が挙げられる。また、リガンドに認識される部位(エピトープ等)を表面に有する細胞やウイルス等もアナライトとなり得る。さらに、核酸(一本鎖または二本鎖の、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等を含む)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等を含む)、脂質などのその他の分子も、必要に応じてビオチン化等の処理をした上で、アナライトとすることも可能である。
・標識リガンド
アナライトを標識するために液中に存在する、蛍光色素と結合したリガンドを「標識リガンド」(リガンドが抗体であれば「標識抗体」)と称する。標識リガンドと前述した固定化リガンドのリガンド部分は、同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、固定化リガンドがポリクローナル抗体である場合、標識リガンドはモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、固定化リガンドがモノクローナル抗体である場合、標識リガンドはその固定化リガンドが認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
アナライトを標識するために液中に存在する、蛍光色素と結合したリガンドを「標識リガンド」(リガンドが抗体であれば「標識抗体」)と称する。標識リガンドと前述した固定化リガンドのリガンド部分は、同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、固定化リガンドがポリクローナル抗体である場合、標識リガンドはモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、固定化リガンドがモノクローナル抗体である場合、標識リガンドはその固定化リガンドが認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
標識リガンドは、一般的な免疫染色法でも用いられているリガンドと蛍光色素との複合体(コンジュゲート)と同様にして作製することができる。たとえば、リガンドとアビジン(ストレプトアビジン等を含む)との複合体、および蛍光色素とビオチンとの複合体をそれぞれ作製し、これらを反応させることにより、アビジン/ビオチンを介してリガンドに蛍光色素が結合した複合体(1のアビジンに対し最大4のビオチンが結合しうる)が得られる。上述のようなビオチンとアビジンの反応以外にも、蛍光標識法で用いられている一次抗体−二次抗体の反応様式や、カルボキシル基とアミノ基、イソチオシアネートとアミノ基、スルホニルハライドとアミノ基、ヨードアセトアミドおよびチオール基などの反応を用いてもよい。
・蛍光色素
「蛍光色素」は、所定の励起光を照射する、または電界効果を利用して励起することによって蛍光を発光する物質の総称である。本発明では、公知のSPFS等または蛍光標識法等で用いられている、公知の各種の蛍光色素を用いることができる。
「蛍光色素」は、所定の励起光を照射する、または電界効果を利用して励起することによって蛍光を発光する物質の総称である。本発明では、公知のSPFS等または蛍光標識法等で用いられている、公知の各種の蛍光色素を用いることができる。
そのような蛍光色素としては、たとえば、フルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(Integrated DNA Technologies社製)、ポリハロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、クマリン・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ローダミン・ファミリーの蛍光色素(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、シアニン・ファミリーの蛍光色素、インドカルボシアニン・ファミリーの蛍光色素、オキサジン・ファミリーの蛍光色素、チアジン・ファミリーの蛍光色素、スクアライン・ファミリーの蛍光色素、キレート化ランタニド・ファミリーの蛍光色素、BODIPY(登録商標)・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ナフタレンスルホン酸・ファミリーの蛍光色素、ピレン・ファミリーの蛍光色素、トリフェニルメタン・ファミリーの蛍光色素、Alexa Fluor(登録商標)色素シリーズ(インビトロジェン(株)製)などが挙げられる。これらファミリーに含まれる代表的な蛍光色素の吸収波長(nm)および発光波長(nm)を表1に示す。
なお、SPFS−LPFS測定系においては、LPFSに関与する金属コロイドによる吸光の少ない波長領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を、標識リガンドに用いることが望ましい。たとえば金コロイドを用いる場合には、金コロイドによる吸光による影響を最小限に抑えるため、最大蛍光波長が600nm以上である蛍光色素、たとえばCy5、Alexa Fluor(登録商標)647などの近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることが望ましい。このような近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることは、血液中の血球成分由来の鉄による吸光の影響を最小限に抑えることができる点で、検体として血液を用いる場合においても有用である。一方、銀コロイドを用いる場合には、最大蛍光波長が400nm以上である蛍光色素を用いることが望ましい。
<標識抗体:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体の調製>
抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(6D2、2.5mg/mL、ミクリ免疫研究所(株)製)を、市販のAlexa Fluor647ラベリングキット(Molecular Probes社製)により調製し、Alexa Fluor 647標識抗AFPモノクローナル抗体溶液を得た。得られた抗体溶液はタンパク質、蛍光色素濃度を吸光度測定器により定量後、4℃で保存した。以下の実施例および比較例で用いた標識抗体はすべて、このように調製したものである。
抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(6D2、2.5mg/mL、ミクリ免疫研究所(株)製)を、市販のAlexa Fluor647ラベリングキット(Molecular Probes社製)により調製し、Alexa Fluor 647標識抗AFPモノクローナル抗体溶液を得た。得られた抗体溶液はタンパク質、蛍光色素濃度を吸光度測定器により定量後、4℃で保存した。以下の実施例および比較例で用いた標識抗体はすべて、このように調製したものである。
[実施例1]
(工程1:金属薄膜の形成)
厚さ1mmのガラス製の透明平面基板「S-LAL 10」((株)オハラ製。屈折率〔nd〕=1.72)を、プラズマドライクリーナーでプラズマ洗浄した。プラズマ洗浄された基板の片面に、まずクロム薄膜をスパッタリング法により形成し、さらにその表面に金薄膜をスパッタリング法により形成した。クロム薄膜の厚さは1〜3nm、金薄膜の厚さは44〜52nmであった。
(工程1:金属薄膜の形成)
厚さ1mmのガラス製の透明平面基板「S-LAL 10」((株)オハラ製。屈折率〔nd〕=1.72)を、プラズマドライクリーナーでプラズマ洗浄した。プラズマ洗浄された基板の片面に、まずクロム薄膜をスパッタリング法により形成し、さらにその表面に金薄膜をスパッタリング法により形成した。クロム薄膜の厚さは1〜3nm、金薄膜の厚さは44〜52nmであった。
(工程2:SAMのパターニング)
工程1により得られた金属基板を1mMのHydroxy−EG6−undecanethiol((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液に室温で24時間浸漬し、エタノールとミリQ水で洗浄、乾燥を行い金基板全体にEGユニットが固定化された基板を得た。厚さ2mmの石英基板に500nm間隔でCrの直交したパターンをスパッタで形成し、500nm×500nmの四角形が500nm間隔で並んだパターンが5000個×5000個あるフォトマスクを作製した。このフォトマスクを前記金基板の上に載せ、照射波長172nm、照射強度8.5mWで真空紫外光照射を25分間行い、EG含有SAMを四角形パターンで除去した基板を得た。更に、エタノール溶液に室温に金基板を浸漬し超音波洗浄機で2分間洗浄してメルカプト基が破壊された領域の有機物除去を行った。更に1mMの11−Amino−1−undecanethiol((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液に室温で24時間浸漬し、UV照射部にアミノ基末端SAMがパターニングされた基板を得た。
工程1により得られた金属基板を1mMのHydroxy−EG6−undecanethiol((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液に室温で24時間浸漬し、エタノールとミリQ水で洗浄、乾燥を行い金基板全体にEGユニットが固定化された基板を得た。厚さ2mmの石英基板に500nm間隔でCrの直交したパターンをスパッタで形成し、500nm×500nmの四角形が500nm間隔で並んだパターンが5000個×5000個あるフォトマスクを作製した。このフォトマスクを前記金基板の上に載せ、照射波長172nm、照射強度8.5mWで真空紫外光照射を25分間行い、EG含有SAMを四角形パターンで除去した基板を得た。更に、エタノール溶液に室温に金基板を浸漬し超音波洗浄機で2分間洗浄してメルカプト基が破壊された領域の有機物除去を行った。更に1mMの11−Amino−1−undecanethiol((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液に室温で24時間浸漬し、UV照射部にアミノ基末端SAMがパターニングされた基板を得た。
(工程3:直鎖状高分子の固定化)
工程2により得られたSAMがパターニングされた金属基板をカルボキシメチルデキストラン(名糖産業(株)製、分子量50万、置換度1.08)50mg/ml水溶液に浸漬した。更に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)をそれぞれ100mMになるように加え1時間室温で反応させ、アミノ基末端のSAMとデキストランのカルボキシル基のアミドカップリングによりデキストランが固定化された金属基板を得た。
工程2により得られたSAMがパターニングされた金属基板をカルボキシメチルデキストラン(名糖産業(株)製、分子量50万、置換度1.08)50mg/ml水溶液に浸漬した。更に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)をそれぞれ100mMになるように加え1時間室温で反応させ、アミノ基末端のSAMとデキストランのカルボキシル基のアミドカップリングによりデキストランが固定化された金属基板を得た。
(工程4:センサチップの構築)
基板の金属薄膜およびSAMが形成された側の面に、測定領域を形成するための、流路長10mm、幅5mmの穴のあいた厚さ0.5mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートを載せた。さらに、このPDMS製シートの周囲にシリコーンゴム製スペーサを配置した(このシリコーンゴム製スペーサは送液に触れない状態にある。)。このPDMS製シートおよびシリコーンゴム製スペーサの上に、送液導入用の穴(送液導入口)および送液排出用の穴(送液排出口)が上記測定領域内に位置するように形成されたPMMA製天板を載せた。これらセンサ基板、PDMS製シート、およびPMMA製天板の積層物を外周部で圧着してビスで固定し、センサチップとした。
基板の金属薄膜およびSAMが形成された側の面に、測定領域を形成するための、流路長10mm、幅5mmの穴のあいた厚さ0.5mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートを載せた。さらに、このPDMS製シートの周囲にシリコーンゴム製スペーサを配置した(このシリコーンゴム製スペーサは送液に触れない状態にある。)。このPDMS製シートおよびシリコーンゴム製スペーサの上に、送液導入用の穴(送液導入口)および送液排出用の穴(送液排出口)が上記測定領域内に位置するように形成されたPMMA製天板を載せた。これらセンサ基板、PDMS製シート、およびPMMA製天板の積層物を外周部で圧着してビスで固定し、センサチップとした。
(工程5:抗体の結合)
センサチップの送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した(以下、特に記載しなくとも、各種流体の送液および循環はすべてこのようなチューブおよびペリスタポンプを用いて行った)。
センサチップの送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した(以下、特に記載しなくとも、各種流体の送液および循環はすべてこのようなチューブおよびペリスタポンプを用いて行った)。
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)400mMと、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)100mMとの混合液を、500μL/minにて10分間フローして、カルボキシメチルデキストランを活性エステル化した。
続いて、抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、ミクリ免疫研究所(株)製)を、当該抗体が20μg/mLとなるよう10mM酢酸バッファー(pH5.0)にて希釈して得られた溶液を、500μL/minにて30分間フローして、当該抗体をカルボキシメチルデキストランに連結した。
最後に、1Mエタノールアミン塩酸塩(SIGMA社製;pH8.5)水溶液を500μL/minにて10分間フローすることによってブロッキング処理をし、表面プラズモン励起センサを完成させた。
(工程6:シグナルの測定)
前記工程1〜5により作製された表面プラズモン励起センサに、まず、AFP(2.0mg/mL溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mLとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、500μL/minにて20分間フローさせた。
前記工程1〜5により作製された表面プラズモン励起センサに、まず、AFP(2.0mg/mL溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mLとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、500μL/minにて20分間フローさせた。
つづいて、前述のようにして調製した標識抗体:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体が2.5μg/mLとなるよう1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、500μL/minにて20分間フローさせた。洗浄工程として、0.005%Tween20を含んだTBS溶液(pH7.4)を500μL/minにて10分間フローさせた。
その後、PBSバッファー(pH7.4)で流路を満たした状態にして、表面プラズモン励起センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(640nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値を「アッセイシグナル」とした。
一方、前記工程1〜5により作製された別の表面プラズモン励起センサについて、上記最初のステップでAFPを全く含まない(0ng/mL)PBSバッファー(pH7.4)をフローさせた以外は上記と同じ手順で蛍光量を測定し、その測定値を「ブランクシグナル」とした。
以上の実施例および比較例それぞれについて、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルから下記式によりS/N比を算出した。
S/N比=|(アッセイシグナル)|/|(ブランクシグナル)|
[実施例2]
工程2(SAMのパターニング)を、横1000nm×縦500nmの長方形が横1000nm間隔、縦500nm間隔で並んだパターンが5000個×10000個あるフォトマスクを用いて行った以外は実施例1と同様にして、表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
S/N比=|(アッセイシグナル)|/|(ブランクシグナル)|
[実施例2]
工程2(SAMのパターニング)を、横1000nm×縦500nmの長方形が横1000nm間隔、縦500nm間隔で並んだパターンが5000個×10000個あるフォトマスクを用いて行った以外は実施例1と同様にして、表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
[実施例3]
工程3(直鎖状高分子の固定化)を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
工程3(直鎖状高分子の固定化)を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
工程2により得られたSAMがパターニングされた金属基板をカルボキシメチルセルロースナトリウム(ACROS製、分子量70万、置換度0.90)50mg/ml水溶液に浸漬した。更に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)をそれぞれ100mMになるように加え24時間室温で反応させ、アミノ基末端のSAMとデキストランのカルボキシル基のアミドカップリングによりデキストランが固定化された金属基板を得た。
[比較例1]
工程2を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして(つまりセンサ表面の全面にデキストラン−抗体複合体が固定化された)表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
工程2を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして(つまりセンサ表面の全面にデキストラン−抗体複合体が固定化された)表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
(工程2:パターニングされていないSAMの形成)
工程1により得られた基板を、1mMの11−Amino−1−undecanethiol((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液に室温で24時間浸漬し、金薄膜の表面にSAMを形成した。
工程1により得られた基板を、1mMの11−Amino−1−undecanethiol((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液に室温で24時間浸漬し、金薄膜の表面にSAMを形成した。
[比較例2]
工程3(直鎖状高分子の固定化)を行わず、工程2および工程5を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして(つまりセンサ表面の全面に抗体のみが結合した)表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
工程3(直鎖状高分子の固定化)を行わず、工程2および工程5を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして(つまりセンサ表面の全面に抗体のみが結合した)表面プラズモン励起センサを作製し、ブランクシグナルおよびアッセイシグナルを測定した。
(工程2:パターニングされていないSAMの形成)
工程1により得られた基板を、1mMに調製した10−Carboxy−1−decanethiolのエタノール溶液10mLに24時間浸漬し、金薄膜の表面にSAMを形成した。この基板をエタノール溶液から取り出し、エタノールおよびイソプロパノールで順次洗浄した後、エアガンを用いて乾燥させた。
工程1により得られた基板を、1mMに調製した10−Carboxy−1−decanethiolのエタノール溶液10mLに24時間浸漬し、金薄膜の表面にSAMを形成した。この基板をエタノール溶液から取り出し、エタノールおよびイソプロパノールで順次洗浄した後、エアガンを用いて乾燥させた。
(工程5:抗体の結合)
センサチップの送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した。50mMのN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)および100mMの水溶性カルボジイミド(WSC)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)5mLを送液して20分間循環させた後、抗AFPモノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、ミクリ免疫研究所(株)製)溶液800uLを導入して30分間循環送液して、当該抗体をSAMに固定化した。最後に、1重量%の牛血清アルブミン(BSA)および1Mのアミノエタノールを含むPBSを30分間循環送液させ、非特異的吸着防止処理(ブロッキング)を行った。
センサチップの送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した。50mMのN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)および100mMの水溶性カルボジイミド(WSC)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)5mLを送液して20分間循環させた後、抗AFPモノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、ミクリ免疫研究所(株)製)溶液800uLを導入して30分間循環送液して、当該抗体をSAMに固定化した。最後に、1重量%の牛血清アルブミン(BSA)および1Mのアミノエタノールを含むPBSを30分間循環送液させ、非特異的吸着防止処理(ブロッキング)を行った。
<S/N比および規格値>
以上の実施例および比較例それぞれのアッセイシグナル、ブランクシグナル、S/N比および規格値(比較例1のS/N比に対する比の値)は表2に示す通りである。本発明による実施例1〜3の表面プラズモン励起センサの規格値はいずれも1.0より大きいことから、比較例1のような従来のものよりもノイズが相対的に低く、SPFS測定の感度が改善されていることが分かる。
以上の実施例および比較例それぞれのアッセイシグナル、ブランクシグナル、S/N比および規格値(比較例1のS/N比に対する比の値)は表2に示す通りである。本発明による実施例1〜3の表面プラズモン励起センサの規格値はいずれも1.0より大きいことから、比較例1のような従来のものよりもノイズが相対的に低く、SPFS測定の感度が改善されていることが分かる。
1:表面プラズモン励起センサ
10:金属薄膜
20:SAM(ドット)
30:直鎖状高分子−リガンド複合体(反応層)
31:直鎖状高分子
32:リガンド
d1:一辺の長さ
d2:ドットの間隔
10:金属薄膜
20:SAM(ドット)
30:直鎖状高分子−リガンド複合体(反応層)
31:直鎖状高分子
32:リガンド
d1:一辺の長さ
d2:ドットの間隔
Claims (6)
- 少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層とにより構成された測定領域を有し、
上記測定領域では、直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層が形成されている部分と形成されていない部分とがパターニングされていることを特徴とする、SPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを用いた測定法用の表面プラズモン励起センサ。 - 前記直鎖状高分子−リガンド複合体のパターニングが、あらかじめそのパターニングに対応するよう形成されたSAM(自己組織化単分子膜)に直鎖状高分子−リガンド複合体を連結することによってなされていることを特徴とする、請求項1に記載の表面プラズモン励起センサ。
- 前記SAMが、ドットの底面が、径が100〜1000nmの略円形または一辺100〜1000nmの略方形であって、ドットの間隔がそれに対応する方向の径または一辺の長さの0.2〜5倍であるパターニングで形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の表面プラズモン励起センサ。
- 前記直鎖状高分子がカルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはヒアルロン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の表面プラズモン励起センサ。
- 少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された直鎖状高分子を含む層とにより構成された測定領域を有し、上記測定領域では直鎖状高分子−リガンド複合体を含む層が形成されている部分と形成されていない部分とがパターニングされているチップ基板または当該チップ基板を備えたセンサチップと、直鎖状高分子と複合体を形成させるためのリガンドおよび試薬とを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の表面プラズモン励起センサを作製するためのキット。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の表面プラズモン励起センサまたは請求項5に記載のキットから作製された表面プラズモン励起センサを備えたことを特徴とするSPFSまたはそれを用いた測定法用測定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010167252A JP2012026923A (ja) | 2010-07-26 | 2010-07-26 | Spfs(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを用いた測定法用の表面プラズモン励起センサ、それを作製するためのキットならびに表面プラズモン励起センサを備えたspfsまたはそれを用いた測定法用測定装置 |
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Family
ID=45780013
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JP2010167252A Pending JP2012026923A (ja) | 2010-07-26 | 2010-07-26 | Spfs(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを用いた測定法用の表面プラズモン励起センサ、それを作製するためのキットならびに表面プラズモン励起センサを備えたspfsまたはそれを用いた測定法用測定装置 |
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JP (1) | JP2012026923A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022181196A1 (ja) * | 2021-02-26 | 2022-09-01 | 学校法人関西学院 | センシング用チップ、センシング用チップの製造方法、センシング用キット、測定方法及び測定装置 |
-
2010
- 2010-07-26 JP JP2010167252A patent/JP2012026923A/ja active Pending
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