JP2012021455A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】パージシステムを備えた筒内噴射式内燃機関において、蒸発燃料の供給量を確保しつつノズルへのデポジットの堆積を抑制した内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】
燃焼室内に配置された燃料噴射装置の先端温度(以下、ノズル温度という)を推定するノズル温度推定手段と、燃料噴射装置の先端に付着するデポジットが増大するノズル温度(以下、デポジット増大温度という)を燃圧に応じて設定するデポジット増大温度設定手段とを備え、先端温度推定手段により推定されたノズル温度とデポジット増大温度設定手段により設定されたデポジット増大温度とに基づいて、パージ制御手段により内燃機関の吸気管に供給するパージガスの供給量の上限値を設定する。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料を筒内に直接噴射する内燃機関において、特に蒸発燃料供給システムを備えた内燃機関の制御装置に関するものである。
従来、燃料タンク内で発生する蒸発燃料の大気中への蒸散を防止するためにパージシステムを備えた内燃機関がある。パージシステムとは、燃料タンク内で蒸発した燃料をキャニスタと呼ばれる吸着器に蓄え、吸着した蒸発燃料を内燃機関の吸気系に供給することにより蒸発燃料が大気に放出されることを防止するシステムである。パージシステムによる蒸発燃料供給時は、インジェクタから噴射される燃料(以下、燃料噴射量という)に加えて蒸発燃料が供給されるため、空燃比がリッチとなり燃焼状態が悪化することが懸念される。そのため、パージシステムを備えた内燃機関では、運転状態に応じて設定された燃料噴射量からパージシステムにより供給された蒸発燃料分を減量補正して最終的な燃料噴射量を算出する技術が知られている。(例えば特許文献1)。
ところで、燃料を筒内に直接噴射する内燃機関(以下、直噴式内燃機関という)では、インジェクタの先端(以下、「ノズル」という)が燃焼室内に配置されている。そのため、ノズルは高温下に晒され高温となる。また、ノズルには燃料が通過する複数の噴孔が設けられており、ノズルの温度(以下、「ノズル温度」という)が所定温度よりも高い状態では、噴孔にデポジットが堆積しやすくなる。デポジットによって噴孔が塞がれると、噴射量や噴射範囲が変化し、適正な燃料噴射が困難となる。
ここで、パージシステムを備えた直噴式内燃機関について考えてみる。前述したように、蒸発燃料供給時は燃料噴射量が減量補正されるため、蒸発燃料を供給しない場合と比較して最終的な燃料噴射量が減少する。燃料噴射量が減少するとノズル温度が上昇し、デポジットが堆積しやすくなる。つまり、パージシステムを備えた直噴式内燃機関は、デポジットが堆積しやすい状態に陥りやすいという課題がある。
上記課題に対し、特許文献2には筒内噴射用インジェクタと吸気管噴射用インジェクタの2種類のインジェクタを備えた内燃機関において、蒸発燃料供給時に筒内噴射用インジェクタの燃料噴射量を変化させないようにする技術が開示されている。具体的には、蒸発燃料供給による減量補正を吸気管噴射用インジェクタから噴射される燃料のみで対応している。換言すると、吸気管噴射用インジェクタの燃料噴射量から減量補正を行い、筒内噴射用インジェクタの燃料噴射量を変化させないようにしている。これにより、筒内噴射用インジェクタの先端温度の上昇を防止し、デポジットの堆積を抑制している。
特開平5−59977 特許第4367273
しかしながら、前述した技術は、2種類の異なる噴射方式(筒内噴射と吸気管噴射)のインジェクタを備えた内燃機関にのみ適応できるものであり、筒内噴射用インジェクタのみで構成された内燃機関には適応できない。従って、筒内噴射用インジェクタのみで構成された内燃機関には、蒸発燃料供給時にノズル温度が上昇しデポジットが堆積するという課題が残されている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、パージシステムを備えた筒内噴射式内燃機関において、蒸発燃料の供給量を確保しつつ、ノズルへのデポジットの堆積を抑制した内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために請求項1に記載の発明は、各気筒の燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射装置を備えた内燃機関に適用される制御装置において、燃料タンクに接続されタンク内の蒸発燃料を蓄積するキャニスタから蒸発燃料をパージガスとして内燃機関の吸気管に供給するパージ制御を実行するパージ制御手段と、パージ制御実行時に、前記燃料噴射装置から噴射される燃料量(以下、燃料噴射量という)からパージガスに含まれる燃料分を減量補正する噴射量補正手段と、燃焼室内に配置された燃料噴射装置の先端温度(以下、ノズル温度という)を推定するノズル温度推定手段と、燃料噴射装置の先端に堆積するデポジットが増大するノズル温度(以下、デポジット増大温度という)を燃圧に応じて設定するデポジット増大温度設定手段と、ノズル温度推定手段により推定されたノズル温度とデポジット増大温度設定手段により設定されたデポジット増大温度とに基づいて、パージ制御手段により内燃機関の吸気管に供給するパージガス供給量の上限値を設定する上限値設定手段とを備えることを特徴とする。
ノズル温度は燃料噴射量によって大きく変化し、また、燃料噴射装置に堆積するデポジットはノズル温度に応じて変化する。つまり、噴射量補正手段により減量補正されると、ノズル温度がデポジット増大温度を超えデポジットが堆積しやすくなる。これに対し、上記構成によれば、ノズル温度推定手段によって推定されたノズル温度と、デポジット増大温度設定手段によって設定されたデポジット増大温度とに基づき、内燃機関に供給するパージガスの上限値を設定する。これにより、パージガス供給時において燃料噴射量が減量補正された場合でも、上限値によってパージガスの供給量が制限されるため、燃料噴射量を確保できノズル温度の過渡な上昇を防止することができる。その結果、デポジットの堆積を抑制しつつパージガスの供給を行うことができる。
また、請求項2に記載の発明は、パージガスの濃度が所定値以上の場合に、ノズル温度を低下させるノズル温度低下手段及び/又はデポジット増大温度を上昇させるデポジット増大温度上昇手段を実施する上限値増加手段を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、パージガス濃度が所定値以上、例えば蒸発燃料がキャニスタの許容量の限界まで蓄積されている場合に、ノズル温度低下手段やデポジット増大温度温度上昇手段によって、ノズル温度を低下又はデポジット増大温度を上昇させる。これにより上限値を増加し、パージガスの供給量を増加させることができるため、キャニスタに空きを確保することができる。
また、前述したノズル温度低下手段としては、請求項3に記載のように点火タイミングを遅角する、又は空燃比をリッチにすることによりノズル温度を低下させる態様にするとよい。
また、前述したデポジット増大温度上昇手段としては、請求項4に記載のように燃料噴射装置から噴射される燃料の圧力を上昇することによりデポジット増大温度を上昇させるとよい。
また、請求項5に記載のように、ノズル温度推定手段は、内燃機関の回転数、負荷、燃料温度、冷却水温、空燃比、点火タイミング、アルコール濃度のうち少なくとも1つのパラメータに基づいてノズル温度を推定する構成にするとよい。このようにすれば、ノズル温度を的確に推定することができる。
請求項6に記載の発明は、上限値設定手段は、内燃機関に供給されるパージガスに含まれる燃料量で上限値を設定することを特徴とする。上記構成によれば、パージガスの流量ではなく、パージガスに含まれる燃料量で上限値を設定する。これにより、パージガスに含まれる空気を除いた燃料量で上限値を設定することができる。
ところで、ノズル温度は燃料噴射量によって大きく変化すると述べたが、その理由はノズルが噴射される燃料によって冷却されているからである。特許文献2に記載の技術は、燃料噴射量によってどの程度ノズル温度が冷却されているかを考慮したものではなく、単に筒内噴射用インジェクタの噴射量を変化させない(減少させない)ことでノズル温度の上昇を防止している。これに対し、本願発明者は、種々の実験により燃料噴射量とノズル温度の関係について次の見解を得たものである。それは、ノズル温度は内燃機関の回転数や負荷によらず燃料噴射量に依存して一定の傾向で上昇・低下することである。さらに、このことから噴射量補正手段により減量補正される燃料量、つまりパージガスに含まれる燃料量に対するノズル温度の上昇傾向(感度係数)を得たものである。
この感度係数を用いることで、請求項7に記載のように、デポジット増大温度とノズル温度の差分に、パージガスに含まれる燃料量に対する前記ノズル温度の上昇度合いを示す係数(感度係数)を乗算することで上限値を算出することができる。このとき、上限値はパージガスに含まれる燃料量で設定されるため、請求項6に記載の発明と同様の効果を得ることができるほか、簡便に上限値を算出することができる。また、ノズル温度の上昇傾向を示す感度係数を用いているため、供給できるパージガスの上限値をデポジット増大温度に対して正確に設定することができる。
エンジンの制御システム全体の概略構成図 パージガス供給時のモード設定を示すフローチャート 性能優先モードの上限値設定方法を示すフローチャート 上限値設定制御の演算を示すブロック図 ベース温度を算出する制御マップ 噴射燃圧に対するデポジット増大温度を示す制御マップ (A)は燃料噴射量に対するノズル温度の変化を示す制御マップ、(B)はパージガス量に対するノズル温度の変化を示す制御マップ パージ優先モードの上限値設定方法を示すフローチャート 他の実施形態におけるデポジット増大温度を示す制御マップ
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面に基づいて説明する。図1はエンジン制御システム全体の概略構成を示す図である。図1に示すように筒内噴射式の内燃機関であるエンジン1の吸気管2の最上流部にはエアクリーナ3が設けられている。このエアクリーナ3の下流側にはDCモータ4によって開度調節されるスロットル弁5が設けられている。DCモータ4がエンジン制御装置6(以下、「ECU」という)からの出力信号に基づいて駆動されることで、スロットル弁5の開度(スロットル開度)が制御され、そのスロットル開度に応じて各気筒ヘの吸入空気量が調節される。スロットル弁5の近傍には、スロットル開度を検出するスロットルセンサ7が設けられている。
このスロットル弁5の下流側には、サージタンク8が設けられ、このサージタンク8に、エンジン1の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド9が接続されている。各気筒の吸気マニホールド9内には吸気ポートが形成され、この吸気ポートがエンジン1の各気筒に形成された吸気弁10に連結されている。
エンジン1の各気筒には、各気筒の燃焼室内に燃料を直接噴射するインジェクタ11(燃料噴射装置)が取り付けられている。燃焼室へ燃料を直接噴射するには、燃料の圧力が燃焼室内の圧力よりも高圧である必要がある。そのため、燃料タンク12内に配置された燃料ポンプ13によって吸上げられた燃料は、燃料配管14に設けられた高圧ポンプ15によって加圧され、デリバリパイプ16に圧送される。そして加圧された高圧(例えば、3〜20MPaの範囲内の所定圧)の燃料はデリバリパイプ16によって各気筒のインジェクタ11に分配される。高圧の燃料はインジェクタ11から燃焼室内に噴射され、吸気ポートから供給される吸入空気と混合して混合気が形成される。また、デリバリパイプ16には、デリバリパイプ16に供給された燃料の圧力を検出する燃圧センサ17が設けられている。
燃焼室内の混合気は、エンジン1のシリンダヘッドに取り付けられた点火プラグ(図示せず)によって点火される。点火プラグは各気筒にそれぞれ取り付けられており、各点火プラグの火花放電によって気筒内の混合気に点火される。
エンジンの排気弁18から排出される排出ガスは、排気マニホールド19を介して一本の排気管20に合流する。この排気管20には、理論空燃比付近で排出ガスを浄化する三元触媒21が接続されている。また、三元触媒21の前後には空燃比センサ22,23が設けられており、排出ガスの空燃比を検出しECU6に出力している。ECU6では、この空燃比に基づき最適な空燃比で燃焼が行われるように、インジェクタ11の燃料噴射量を調整している。
また、燃料タンク12にはタンク内で発生した蒸発燃料を蓄積するキャニスタ24が接続されている。蒸発燃料とは、燃料タンク12内の温度変化や走行時の振動により燃料が攪拌されることによって、燃料タンク12内の燃料が気化したものである。特に、長時間エンジンが停止しているとパージガスが導入されないため、キャニスタ24の蓄積可能容量が限界に到達する。キャニスタ24に吸着された蒸発燃料は、パージガスとして空気と共にエンジン1の吸気管2に供給される。具体的には、キャニスタ24と吸気管2とを繋ぐパージ配管25によって、エンジン1の吸気管2に導かれる。また、エンジン1の吸気管2とキャニスタ24との間にはパージバルブ26が配設されている。このパージバルブ26がECU6からの出力信号により開度調節されることにより吸気管2に供給するパージガスの供給量が調節される。
ここで、前述したスロットルセンサ7、空燃比センサ22,23以外の各種センサについて説明する。気筒判別センサ27は、特定の気筒が上死点に達したときに出力パルスを発生し、ECU6において気筒判別が行われる。クランク角センサ28はエンジン1の図示しないクランクシャフトが一定クランク角(例えば30°CA)回転する毎に出力パルスが発生する。この出力パルスによって、クランク角やエンジン回転数が検出される。また、水温センサ29と外気温センサ30は、それぞれエンジン1の冷却水温と外気温を検出する。
前述した各種センサの出力信号はECU6に入力される。ECU6は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された制御プログラムや制御マップに従い、各種センサ出力に基づき、前述したDCモータ4、インジェクタ11、点火プラグ、パージバルブ26を制御する。
また、ECU6は、パージ制御実行時に、パージガスに含まれる燃料量を燃料噴射量から減量補正し、最終的な燃料噴射量を設定する噴射量補正手段を備えている。
以下、パージガス供給時にECU6にて実施される制御について図2〜図8を用いて説明する。
最初に、図2を用いてパージガス供給時のモード設定について説明する。図2に示すように、まずステップ100にて、パージガス濃度を学習する。具体的には、一度パージガスを燃焼室内に供給し、供給したパージガスに対する空燃比の変化から、現在のパージガスの濃度を学習しECU6に記憶する。次にステップ200に移行し、学習したパージガス濃度が所定値以下であるかを判定する。パージガス濃度が所定値以下である場合は、キャニスタに蓄積された蒸発燃料がキャニスタ24の許容量に対して余裕がある(空きがある)と推定されるため、性能優先モード(ステップ300)にてパージガスの供給を行う。一方、学習したパージガス濃度が所定値よりも多い場合は、蓄積された蒸発燃料がキャニスタ24の許容量に切迫していると推定される。そのため、パージ優先モード(ステップ400)にて、後述する上限値を増加させるための制御(上限値増加手段)を実施したのちパージガスの供給を行う。
以上の処理手順によってパージガス供給時のモード設定が行われる。
次に、性能優先モードにおけるパージガスの供給方法について、図3を用いて説明する。
まず、ステップ301にてインジェクタ11の先端温度(以下、「ノズル温度」という)を推定する。そして、ステップ302に移行しデポジット増大温度を算出する。デポジット増大温度とはノズルに堆積するデポジットが増大するノズル温度、換言するとデポジットが堆積しやすくなるノズル温度である。デポジット増大温度を算出後、ステップ303にて感度係数を読み込む。感度係数については後述するが、端的に述べるとパージガス供給量に対するノズル温度の上昇度合いを示す係数であり、予めECU6に記憶されている。
次にステップ304に移行し、ステップ301にて推定されたノズル温度(以下、「推定ノズル温度」)、ステップ302にて算出されたデポジット増大温度、及びステップ303にて読み込んだ感度係数に基づきパージガス導入量の上限値を算出する。パージガスが供給されるとインジェクタ11から噴射される燃料が減少し、ノズル温度が上昇してしまうことは前述したとおりである。上限値とはデポジット増大温度を超えない範囲で供給できるパージガスの上限を示す値であり、前述したように空気を含むパージガスの総流量ではなく、パージガスに含まれる燃料量(以下、「パージガス量」という)で算出される。そして、ステップ305にて上限値のパージガスを導入するために、パージバルブ26の開度を設定する。
以上の処理手順で上限値が設定され、性能優先モードのパージガスの供給が行われる。
次に、図4〜7を用いて、前述したノズル温度の推定(ステップ301)、デポジット増大温度の算出(ステップ302)、感度係数の読み込み(ステップ303)、上限値算出(ステップ304)について詳細に説明する。
図4は、ECU6にて行われる各ステップの演算を示すブロック図である。まず、ステップ301にて行われるノズル温度の推定方法について説明する。図4に示すように、本実施形態では、ノズル温度の推定に、エンジン回転数、負荷、燃料温度、冷却水温、空燃比、及び点火タイミングを用いている。具体的には、エンジン回転数と負荷とから算出したノズルのベース温度を、燃料温度、冷却水温、空燃比、及び点火タイミングとから算出した補正項により補正することによりノズル温度を推定している。ノズルのベース温度は、図5に示すベース温度マップより算出する。図5に示すように、ノズルの温度はエンジン回転数と負荷とによって一定の温度領域に分類されるため、現在の回転数及び負荷からベース温度を算出することができる。なお、ベース温度マップに示された回転数と負荷に対するノズル温度は、エンジン1やインジェクタ11の特性によって異なる。従って、予め実験等により得られた温度領域をECU6に格納しておく必要がある。なお、燃料温度は、高圧ポンプによって加圧され燃料タンク12内の温度よりも上昇するため、デリバリパイプ16に供給された燃料温度を推定、又はセンサにより検出するとよい。
次にステップ302にて行われるデポジット増大温度の算出方法について説明する。デポジット増大温度は図4のブロック図に示すように燃料圧力に基づき算出される。具体的には図6に示す制御マップから、燃料圧力に対応したデポジット増大温度が算出される。燃料圧力、すなわちインジェクタ11から噴射される燃料の圧力(以下、「噴射燃圧」という)が低い場合(例えば5MPa)と高い場合(例えば20MPa)とを比べると、高い場合の方がデポジット増大温度は高く設定されている。これは、噴射燃圧が高い場合には、インジェクタ11の噴孔を通過する燃料の勢いが強ためノズル近傍や噴孔に残留する燃料が減少するからである。つまり、噴射燃圧が高いとデポジットが形成されにくいため、噴射燃圧が高くなるにつれてデポジット増大温度も高く設定している。また、図6中のデポジット増大温度(150℃、160℃、170℃)は、抑制すべきノズル温度に対して所定の余裕を持って設定している。
次にステップ303にて読み込みが行われる感度係数について説明する。パージガスが供給されると、インジェクタ11から噴射される燃料が減少しノズル温度が上昇するのは、噴射される燃料によってノズルが冷却されていることに起因する。発明者は種々の実験により、燃料噴射量とノズル温度の冷却効果について、図7(A)に示す関係を得た。図7(A)は、燃料噴射量に対するノズル温度の変化を示すマップであり、(a)〜(d)は、それぞれ回転数と負荷が異なる場合のノズル温度の変化を示している。図7(A)に示すように、燃料噴射量が多くなるとノズル温度は低下し、逆に、燃料噴射量が少なくなるとノズル温度が上昇している。つまり、燃料噴射量の多少によってノズル温度が変化していることがわかる。さらに、ノズル温度は、エンジンの回転数や負荷に寄らず燃料噴射量が減少すると略一定で上昇していることも分かる。
ECU6ではパージガス供給時は、燃料噴射料からパージガス量を減量補正し最終的な燃料噴射量を算出している。つまり、パージガス量は燃料噴射量の減量分であることがわかる。従って、パージガス量が増加するほどノズル温度が上昇する。前述した燃料噴射量に対するノズル温度の変化が一定であることを鑑みると、パージガス量に対するノズル温度は、図7(B)に示すように一定の傾きで上昇することがわかる。図7(B)に示した線分の傾きが感度係数であり、ノズル温度が1℃上昇するパージガス量である。この感度係数は、エンジン1やインジェクタ11の特性によって定まるものである。従って、実験等によって得られた感度係数を予めECU6に記憶しておき、ステップ303では、記憶された感度係数を読み込むだけである。
ここで図4に戻り、ステップ304にて行われる上限値の算出方法について説明する。まず、ステップ301にて推定された推定ノズル温度とステップ302にて算出されたデポジット増大温度との差分から余裕温度を算出する(余裕温度=デポジット増大温度―推定ノズル温度)。余裕温度とは、推定された現在のノズル温度からデポジット増大温度まで上昇することが可能な値である。そして、この余裕温度に、ステップ303にて読み込んだ感度係数を乗算することにより上限値を算出する(上限値=余裕温度×感度係数)。これにより、ノズル温度がデポジット増大温度に到達するまでに供給できるパージガス量の上限値が算出される。
以上の推定又は算出方法によってステップ301〜304の処理が行われる。
次に、パージガス濃度が所定値以上の場合に実施されるパージ優先モード(ステップ400)のパージガスの供給方法について、図8を用いて説明する。前述した性能優先モード(ステップ301〜305)と異なる点は、ノズル温度を推定する前に、上限値を増加させるためにノズル温度低下制御(ノズル温度低下手段)や、デポジット増大温度上昇制御(基準温度上昇手段)を実施する点である。以下、この点を中心に説明する。
パージ優先モードが実施される状況としては、前述したように、長時間エンジンが停止されキャニスタ24からパージガスが放出されない場合が想定される。このとき、キャニスタ24には許容量の限界近くまで蒸発燃料が蓄積されているため、できるだけ多くの蒸発燃料を放出し、キャニスタ24に空きを確保する必要がある。パージガス量の上限値は、前述した性能優先モードと同様に推定ノズル温度とデポジット増大温度との差分(余裕温度)に感度係数を乗算することにより算出される。従って、上限値を増加させるには、デポジット増大温度を上昇させるか推定ノズル温度を低下させる、又は、これらを組み合わせることにより余裕温度を大きくする必要がある。そのため、パージ優先モードでは、まず、ステップ401にてノズル温度低下制御、デポジット増大温度上昇制御を実施する。ノズル温度低下制御としては、点火タイミングを遅らせる(以下、「点火遅角」という)方法や、空燃比をリッチ(以下、「空燃比リッチ化」という)にする方法が挙げられる。これにより燃焼温度が低下するため、ノズル温度を低下させることができる。ここでいう空燃比リッチ化とは、燃料噴射量を増加させることではなく、吸入する空気量を減少し空燃比をリッチにすることを指す。また、デポジット増大温度は、図6に示したように噴射燃圧に応じて設定される。そのため、高圧ポンプ15によって燃圧を上昇させればデポジット増大温度を高い値に設定することができる。
次に、ステップ402にてノズル温度を推定する。ノズル温度は、前述したようにエンジン回転数と負荷とから算出されるベース温度と、燃料温度、冷却水温、空燃比、及び点火タイミングとから算出される補正項とによって推定される。従って、ステップ401にて実施されたノズル温度低下制御(点火遅角や空燃比リッチ化)による点火タイミングの遅れや空燃比の変化は、補正項としてノズル温度に反映される。これにより、性能優先モードよりもノズル温度を低下させることができる。
そして、ステップ403にて、デポジット増大温度が算出される。ここでは、ステップ401にて昇圧された燃圧に基づき、デポジット増大温度が算出される。つまり、性能優先モードを実施する場合よりも高いデポジット増大温度が算出される。
その後、ステップ404にて感度係数を読み込み、ステップ405にて上限値を算出する。この上限値の算出において、デポジット増大温度と推定ノズル温度との差分である余裕温度は、ステップ401にて実施されたノズル温度低下制御やデポジット基準温度上昇制御によって、性能優先モードよりも大きな値となる。従って、性能優先モードよりも大きな上限値が算出される。そして、算出された上限値のパージガス量を供給するために、パージバルブ26の開度を設定する(ステップ406)。
以上の処理手順で上限値が設定され、パージ優先モードのパージガスの供給が行われる。
次に、本発明の作用効果について説明する。
前述したようにデポジットは、ノズル温度が所定値(デポジット増大温度)を超えると堆積しやすくなる。これに対し、本発明によれば、推定ノズル温度がデポジット増大温度を超えない範囲で供給できるパージガス量の上限値を設定している。その結果、パージガス供給時に噴射燃料が減量補正されたとしても、上限値によってパージガスの供給量が制限され燃料噴射量が確保されるため、ノズル温度がデポジット増大温度を超えることを抑制できる。つまり、デポジットの堆積を抑制しつつパージガスの供給を行うことができる。さらに、噴射燃圧に応じてデポジット増大温度を設定している。具体的には、デポジットが堆積する可能性が低い場合(噴射燃圧が高い場合)は、パージガスの供給量を多く、デポジットが堆積する可能性が高い場合(噴射燃圧が低い場合)は、パージガスの供給量を少なく設定している。これにより、デポジットが堆積する可能性に応じて最大限のパージガスを供給することができる。
また、パージガス濃度に応じて、性能優先モード(ステップ300)とパージ優先モード(ステップ400)とで、それぞれ上限値を設定している。具体的には、パージガス濃度が所定値よりも大きい場合(キャニスタ24の許容量の限界に近い場合)は、ノズル温度低下制御や基準温度上昇制御を実施し、性能優先モード(ステップ300)よりも大きな上限値を設定している。これにより、性能優先モードで供給できるパージガス量よりもパージ優先モードで供給するパージガス量を多くすることができる。従って、キャニスタ24の蒸発燃料の蓄積状態に応じたパージガス量の供給が可能となる。
また、上限値をパージガスの流量ではなく、パージガスに含まれる燃料量で上限値を設定しているため、パージガスに含まれる空気を除いた燃料量で上限値を設定することができる。さらに、上限値を設定する際に、パージガス量に対するノズル温度の上昇傾向を表す感度係数を用いているため、上限値をデポジット増大温度に対して正確に設定することができる。
[他の実施形態]
・本実施形態では、ノズル温度を推定するパラメータとしてアルコール濃度を用いていないが、アルコール燃料を使用するエンジンに適用する場合にはアルコール濃度をパラメータとして加え、補正項を算出するとよい。また、アルコール濃度が増加するとデポジット増大温度が低下するため、噴射燃圧に加え、アルコール濃度を考慮してデポジット増大温度を設定するとよい。
・デポジット増大温度は噴射燃圧に応じて設定されることは前述したとおりだが、デポジット増大温度は、使用する燃料性状によっても異なる。燃料性状が悪い場合(例えば所定量以上の硫黄、有機酸を含んだ燃料)、標準の燃料と比較してデポジットが堆積しやすくなる。そのため、図9に示すように燃料性状が悪い場合は、標準の燃料を使用する場合よりもデポジット増大温度を低く設定すると、好適にデポジットの堆積を抑制することができる。
・本実施形態では、デポジット増大温度を、真の限界値に対して所定の余裕を持って設定しているが、余裕を持たせずにデポジット増大温度を設定してもよい。この場合、デポジット増大温度が上昇するため、パージガスの供給量を増加することができる。
1 エンジン(内燃機関)
6 ECU
11 インジェクタ(燃料噴射装置)
12 燃料タンク
24 キャニスタ

Claims (7)

  1. 各気筒の燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射装置を備えた内燃機関に適用される制御装置において、
    燃料タンクに接続されタンク内の蒸発燃料を蓄積するキャニスタから前記蒸発燃料をパージガスとして前記内燃機関の吸気管に供給するパージ制御を実行するパージ制御手段と、
    前記パージ制御実行時に、前記燃料噴射装置から噴射される燃料量から前記パージガスに含まれる燃料分を減量補正する噴射量補正手段と、
    前記燃焼室内に配置された前記燃料噴射装置の先端温度(以下、ノズル温度という)を推定するノズル温度推定手段と、
    前記燃料噴射装置の先端に堆積するデポジットが増大する前記ノズル温度(以下、デポジット増大基準温度という)を燃圧に応じて設定するデポジット増大温度設定手段と、
    前記ノズル温度推定手段により推定された前記ノズル温度と前記デポジット増大温度設定手段により設定された前記デポジット増大温度とに基づいて、前記パージ制御手段により前記内燃機関の吸気管に供給するパージガス供給量の上限値を設定する上限値設定手段と
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. パージガスの濃度が所定値よりも大きい場合に、前記ノズル温度を低下させるノズル温度低下手段及び/又は前記デポジット増大温度を上昇させるデポジット増大温度上昇手段を実施する上限値増加手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記ノズル温度低下手段は、点火タイミングを遅角する、又は空燃比をリッチにすることにより前記ノズル温度を低下させることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記基準温度上昇手段は、前記燃料噴射装置から噴射される燃料の圧力を上昇することにより前記デポジット増大温度を上昇させることを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記ノズル温度推定手段は、前記内燃機関の回転数、負荷、燃料温度、冷却水温、空燃比、点火タイミング、アルコール濃度のうち少なくとも1つのパラメータに基づいて前記ノズル温度を推定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記上限値設定手段は、前記内燃機関に供給されるパージガスに含まれる燃料量で上限値を設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置。
  7. 前記上限値設定手段は、前記デポジット増大温度と前記ノズル温度の差分に、パージガスに含まれる燃料量に対する前記ノズル温度の上昇度合いを示す係数(感度係数)を乗算することにより前記上限値を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置。
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