JP2012012348A - ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法 - Google Patents

ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法 Download PDF

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純一 森岡
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Abstract

【課題】製造プロセスにおける触媒の使用量が少なく、不純物の少ないヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法を提供する。
【解決手段】酢酸クロムの存在下で(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させて、(メタ)アクリル酸の残存率が0.5質量%未満である反応溶液を得て、その反応溶液からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収し、クロム化合物を含む液を残渣として得て、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを、残渣及び当該(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00004モル〜0.0003モルの酢酸クロムを触媒として反応させて、その反応溶液からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、触媒の存在下、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合成方法としては、触媒の存在下、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させる方法が知られている。この反応では、副反応として、触媒の置換基がアルキレンオキサイド等と反応した触媒由来不純物や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに(メタ)アクリル酸が反応したジエステル類や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにアルキレンオキサイドが反応したジアルキレングリコールモノエステル類などの不純物が生成する。
近年、コスト面や環境面などから、1回の反応毎に触媒を使い捨てにするのではなく、触媒を再使用するなどして触媒の使用量を低減することが望まれており、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法においても、触媒の使用量を低減する方法について検討されている。例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応液からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを留去した後の反応液に新しい触媒を補充し、その反応液を次の反応に用いる方法が提案されている。また、特許文献2には、(メタ)アクリル酸の残存率を高く調整した反応液から触媒を回収し、次の反応に用いることが提案されている。
しかし、特許文献1の方法では、新しい触媒を多量に補充するので、得られるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに触媒由来の不純物が多く含まれるため、純度が低下することがある。一方、特許文献2の方法では、(メタ)アクリル酸の残存率を高く調整するので、得られるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに(メタ)アクリル酸が多く含まれ、純度が低下することがある。
特開2004−75559号公報 国際公開第2008/133222号パンフレット
本発明は、製造プロセスにおける触媒の使用量が少なく、不純物の少ないヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、次の工程1〜4を含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法である。
工程1:酢酸クロムの存在下で(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、且つ、(メタ)アクリル酸の残存率が0.5質量%未満である反応溶液を得る工程
工程2:工程1で得られた反応溶液からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収し、クロム化合物を含む液を残渣として得る工程
工程3:(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを、工程2で得られた残渣及び当該(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00004モル〜0.0003モルの酢酸クロムを触媒として反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む反応溶液を得る工程
工程4:工程3で得られた反応溶液からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収する工程
本発明によれば、製造プロセスにおける触媒の使用量が少なく、不純物の少ないヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造することができる。
本発明では、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」および/または「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および/または「メクリレート」を意味する。
本発明で製造する「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」とは、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート等が挙げられる。
本発明の製造方法に用いるアルキレンオキサイドは、目的のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに応じて適宜選定される。例えば、目的のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの場合はエチレンオキサイドであり、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの場合はプロピレンオキサイドである。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとしては、例えば、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−プロピレンオキサイド等が挙げられる。本発明においては、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドがより好ましく、エチレンオキサイドが特に好ましい。アルキレンオキサイドは、単独で用いても、2種以上を使用してもよい。
本発明の工程1および工程3における原料の(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドの仕込み量は、反応速度の観点から、どちらかがやや過剰であることが好ましく、(メタ)アクリル酸1モルに対しアルキレンオキサイドが1モル以上であることがより好ましく、1.0〜1.2モルがさらに好ましく、1.03〜1.1モルが特に好ましい。
本発明の工程1において、触媒である酢酸クロムの添加量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00035〜0.0035モルが好ましく、0.0007〜0.0025モルがより好ましい。触媒の添加量は多いほど見かけの反応活性が高くなり、より短い時間で反応を終了させることができる。触媒の添加量は少ないほど触媒費用をより低減することができる。
なお、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、触媒として酢酸クロムに加えて、他の化合物を用いることもできる。他の化合物としては、例えば、メタクリル酸クロムなどのクロム化合物、鉄またはその化合物、酢酸モリブデンなどのモリブデン化合物、酢酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物、酢酸イットリウムなどのイットリウム化合物、酢酸ランタンなどのランタン化合物、塩化セリウムなどのセリウム化合物、塩化ジルコニウムなどのジルコニウム化合物、塩化チタンなどのチタン化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させる方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキレンオキサイド、触媒、および必要により重合防止剤を混合し、得られた混合物を加熱する方法などが挙げられる。その際の加熱温度は、通常、好ましくは50〜110℃、より好ましくは60〜90℃である。
なお、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させる際の気相部分の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。また、系内の圧力は、特に限定されないが、通常、圧力(ゲージ圧)が0.2〜0.5MPaであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとの反応の際には、重合防止剤を適宜用いることができる。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、メトキノン(ハイドロキノンモノメチルエーテル)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4-エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸n−オクタデシル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ブチリデン(メチルブチルフェノール)、テトラビス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、3,6−ジオキサオクタメチレン−ビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオナート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどのフェノール系化合物;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシル化合物;塩化第一銅などの銅化合物;フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのアミノ化合物;1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒドロキシルアミンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。重合防止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸量に対して0.01〜1質量%が好ましい。
(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとの反応の終了時期は(メタ)アクリル酸の残存率により判断すればよく、蒸留精製等によってヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収する際の負荷を小さくし、生成したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへの(メタ)アクリル酸の混入量を低減させる観点から、(メタ)アクリル酸の残存率が2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下となるまで反応させる。また、不純物の抑制と生産性の観点から、(メタ)アクリル酸の残存率が0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上となるまで反応させる。また、反応終了後、反応液を冷却することが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとの反応の終了後には、例えば、反応系内を減圧する方法などにより、未反応のアルキレンオキサイドの除去を行うことが好ましい。より具体的には、例えば、反応液を30〜60℃の温度に保ちつつ−100〜−50kPaの圧力(ゲージ圧)で脱気することにより、未反応のアルキレンオキサイドの除去を行うことができる。
(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを所定の(メタ)アクリル酸残存率になるまで反応させた反応終了液を必要に応じて減圧などによる脱気等の後処理を行った液(以下、「反応溶液」という。)に含まれているヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合を防止するために重合防止剤を添加してもよい。具体的な重合防止剤としては、反応の際に使用できる上述したものが挙げられる。
反応溶液の(メタ)アクリル酸の残存率は、生成するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへの(メタ)アクリル酸の混入量を低減させる観点から、0.5質量%未満であり、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。また、反応溶液から触媒を回収して再使用する観点から、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上である。反応溶液における(メタ)アクリル酸の残存率は反応時間や反応終了後の脱気等の後処理時間などを調節することで調整できる。
反応溶液を蒸留して、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを留出物として回収し、クロム化合物を含む液を残渣として得る工程で使用する場合、その装置としては、例えば、薄膜蒸発器、蒸留塔等が挙げられるが、重合防止の観点から薄膜蒸発器が好ましい。
薄膜蒸発器としては、流下膜式薄膜蒸発器や遠心式薄膜蒸発器などを用いることができる。薄膜蒸発器による蒸留の条件は、特に限定されず、目的物の種類や物性、薄膜蒸発器の分離能力などに応じて、適宜設定することができる。例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの場合、反応溶液を好ましくは0.05〜0.5kPa、より好ましくは0.07〜0.2kPaの減圧下で、好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜125℃に加熱した薄膜蒸発器に、反応溶液を供給し、留出率(供給量に対する留出量の割合)を好ましくは0.4〜0.8、より好ましくは0.5〜0.7で蒸発させることにより、反応溶液から2−ヒドロキシエチルメタクリレートを留出物として回収し、クロム化合物を含む液を残渣として得ることができる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは反応溶液から完全に回収する必要はなく、残渣に多少残存していても構わない。また、残渣には副生物、残存原料化合物、重合防止剤等が含まれていても構わない。
残渣に含まれるクロム化合物は、反応の触媒として使用する酢酸クロムである必要はなく、例えば、触媒として用いた酢酸クロムと原料の(メタ)アクリル酸とが反応して生成した(メタ)アクリル酸クロムであってもよい。
クロム化合物を含む残渣を触媒として(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させる際には、上記残渣に新品の酢酸クロムを補充する。上記残渣は、その一部のみを用いてもよいが、その全量を用いてもよく、特に限定されないが、廃棄物削減の観点から、その全量を使用することが好ましい。
上記残渣に新品の酢酸クロムを補充する方法としては、例えば、予め次の反応の原料である(メタ)アクリル酸に新品の酢酸クロムを溶解させておき上記残渣と混合してから次の反応に用いてもよいし、予め上記残渣に新品の酢酸クロムを溶解させてから次の反応に用いてもよいし、あるいは、次の反応が開始してから上記残渣に新品の酢酸クロムを溶解させるようにしてもよく、特にこれらに限定されるわけではないが、なかでも、予め次の反応の原料である(メタ)アクリル酸に新品の酢酸クロムを溶解させておき上記残渣と混合してから次の反応に用いることが好ましい。
上記残渣に新品の酢酸クロムを補充する量としては、原料である(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00004〜0.0003モルが好ましく、0.00008〜0.0002モルがより好ましい。補充量が0.00004モル未満となると、触媒活性が十分に発揮されないおそれがある。また、補充量が0.0003モルを超えると、反応液中の触媒由来の不純物量が多くなり、回収されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの純度が低下する。なお、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、工程1と同様に触媒として他の化合物を併用することもできる。
ついで、その反応溶液から工程1と同様にして蒸留等によってヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収する。
以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。これらの実施例および比較例は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの製造方法に関するものである。2−ヒドロキシエチルメタクリレートの純度と触媒由来不純物の濃度は、ガスクロマトグラフィーにより分析した。メタクリル酸の残存率は、以下の方法により測定した。
〔メタクリル酸の残存率の測定方法〕
(1)100mL容の三角フラスコ内にエチルアルコール50mLをとり、これにフェノールレッド溶液を数滴加え、その溶液に0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、紅色が15秒間以上持続するまで中和を行う。
(2)中和終了後、得られた中和溶液に、ただちにメタクリル酸の残存率の測定用試料約10〜30mLを添加し、十分に攪拌する。
(3)得られた混合溶液に、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、混合溶液の紅色が15秒間以上持続するまで中和し、中和に要した滴下量(AmL)を測定し、式:
〔(メタ)アクリル酸の残存率(質量%)〕=(A×F×M)÷(W×102)
〔式中、Aは0.1mol/L水酸化ナトリウムの滴下量(mL)、Fは0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の力価、Mは使用したメタクリル酸の分子量、Wは試料の量(g)を示す〕
に基づいて、メタクリル酸の残存率を算出する。
〔実施例1〕
(工程1)
1Lの攪拌機付オートクレーブに原料であるメタクリル酸380質量部、触媒として酢酸クロム1.4質量部および重合防止剤としてハイドロキノン0.15質量部を仕込み、オートクレーブ容器を窒素置換し、加圧にてエチレンオキサイド20質量部を等速で4分かけて供給した。系内を攪拌しながら温水で徐々に昇温して、63℃とした。その後さらにエチレンオキサイド194質量部を等速で78分かけて供給した。この間、系内は温水による加熱を調節して66℃を維持した。エチレンオキサイドの供給終了後、系内を66℃に維持し、メタクリル酸の残存率が0.55質量%以下になるまで反応を継続した(熟成)。熟成3時間後、メタクリル酸の残存率が0.55質量%以下になったので反応終了とし、攪拌を継続しながら系内を2kPaまで徐々に減圧にし、未反応エチレンオキサイドを除去した。
系内が2kPaに到達してから5分保持した後、系内を冷却水で冷却した。系内が30℃以下に到達後、窒素にて常圧に戻し、メタクリル酸の残存率が0.02質量%の反応溶液を得た。
以上の方法により、反応溶液560質量部を得た。この反応溶液を分析すると、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの濃度は95.6質量%、触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)の濃度は0.29質量%であった。
(工程2)
上記で得られた反応溶液560質量部を薄膜蒸発器を用いて蒸留することで、留出液として2−ヒドロキシエチルメタクリレート543質量部を回収し、メタクリル酸クロムを含有する蒸留残渣17質量部を得た。得られた蒸留残渣中には2−ヒドロキシエチルメタクリレートが40質量%含まれていた。この時の薄膜蒸発器の蒸発面は外部に100℃前後に加熱したシリコンオイルを供給することで加熱し、薄膜蒸発器内の圧力(絶対圧)は0.13kPaに設定した。
(工程3)
1Lの攪拌機付オートクレーブに原料であるメタクリル酸380質量部、前記メタクリル酸クロム含有残渣17質量部、触媒として新品の酢酸クロム0.13質量部(メタクリル酸1モルに対して0.00012モル)および重合防止剤としてハイドロキノン0.15質量部を仕込み、オートクレーブ容器を窒素置換し、加圧にてエチレンオキサイド20質量部を等速で4分かけて供給した。系内を攪拌しながら温水で徐々に昇温して、63℃とした。その後さらにエチレンオキサイド194質量部を等速で78分かけて供給した。この間、系内は温水による加熱を調節して66℃を維持した。エチレンオキサイドの供給終了後、系内を66℃に維持し、メタクリル酸の残存率が0.55質量%以下になるまで反応を継続した(熟成)。熟成3時間後、メタクリル酸の残存率が0.55質量%以下になったので反応終了とし、攪拌を継続しながら系内を2kPaまで徐々に減圧にし、未反応エチレンオキサイドを除去した。系内が2kPaに到達してから5分保持した後、系内を冷却水で冷却した。系内が30℃以下に到達後、窒素にて常圧に戻した。
以上の方法により、反応溶液577質量部を得た。この反応溶液を分析すると、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの濃度は94.5質量%、触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)の濃度は0.02質量%であり、メタクリル酸の残存率は0.02質量%であった。
(工程4)
得られた反応溶液577質量部を薄膜蒸発器を用いて蒸留することで、留出液として2−ヒドロキシエチルメタクリレート543質量部を回収し、蒸留残渣として触媒含有残渣34質量部を得た。この時の薄膜蒸発器の蒸発面は外部に100℃前後に加熱したシリコンオイルを供給することで加熱し、薄膜蒸発器内の圧力(絶対圧)は0.13kPaに設定した。
得られた留出液中の2−ヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.1質量%、触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)の濃度は0.02質量%であり、メタクリル酸の残存率は0.01質量%であった。
〔比較例1〕
実施例1の工程3において、触媒として新品の酢酸クロム0.5質量部(メタクリル酸1モルに対して0.00046モル)を仕込み、熟成1.5時間にしたこと以外は実施例1と同様に行った。
工程3で得られた反応溶液は577質量部であり、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの濃度は94.2質量%、触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)の濃度は0.11質量%であり、メタクリル酸の残存率は0.02質量%であった。
また、工程4で得られた2−ヒドロキシエチルメタクリレートの純度は96.7質量%、触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)の濃度は0.11質量%であり、メタクリル酸の残存率は0.007質量%であった。
実施例1と比較すると、回収した留出液中の触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)量が多く、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの純度も低かった。
〔比較例2〕
実施例1の工程1において、未反応エチレンオキサイド除去後のメタクリル酸の残存率が1.0質量%の反応溶液を調整し、工程3において、触媒として新品の酢酸クロム0.13質量部(メタクリル酸1モルに対して0.00012モル)を仕込み、熟成2.5時間にしたこと以外は実施例1と同様に行った。
工程3で得られた反応溶液の2−ヒドロキシエチルメタクリレート濃度は94.0質量%、触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)の濃度は0.02質量%であり、メタクリル酸の残存率は0.1質量%であった。
また工程4で得られた反応溶液を薄膜蒸発器で蒸留した留出液中の2−ヒドロキシエチルメタクリレートの純度は96.4質量%、触媒由来不純物(酢酸2−ヒドロキシエチル)の濃度は0.02質量%であり、メタクリル酸の残存率は0.09質量%であった。
実施例1と比較すると、メタクリル酸の残存率が高く、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの純度も低かった。

Claims (1)

  1. 次の工程1〜4を含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
    工程1:酢酸クロムの存在下で(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、且つ、(メタ)アクリル酸の残存率が0.5質量%未満である反応溶液を得る工程
    工程2:工程1で得られた反応溶液からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収し、クロム化合物を含む液を残渣として得る工程
    工程3:(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを、工程2で得られた残渣及び当該(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00004モル〜0.0003モルの酢酸クロムを触媒として反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む反応溶液を得る工程
    工程4:工程3で得られた反応溶液からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを回収する工程
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