JP2012011577A - 装飾部材 - Google Patents

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裕由 亀重
Mariko Hosogai
麻里子 細貝
Yumiko Kataoka
由美子 片岡
Aiko Itami
愛子 伊丹
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Abstract

【課題】平滑な表面でありながら、人が立体感を感じると共に、立体感を落とすことなく、色調の鮮やかな濃色の意匠にも対応した装飾部材を提供する。
【解決手段】凹凸に対して斜め方向から光をあてた場合に投影される影をシェード部として描くことで立体を模倣した画像を有する加飾層10と、加飾層10の上に設けられ、光透過性を有する表面層20と、を備え、表面層20は、表面層20に入射した光が加飾層10に到達するまでの間に表面層20に入射した光の光路の方向に不規則性を与えることによって、表面層20を通して眺めた画像の各部分の表面からの距離を人が知覚しにくくなるように、表面層20に入射した光を拡散させて加飾層10に到達させるものであり、表面層20は、着色されている装飾部材。
【選択図】図2

Description

本発明は、装飾部材に関する。
カウンター、浴室壁などの平滑(あるいは平坦)な表面を有する装飾部材であって、立体感のある模様が装飾された装飾部材が知られている。
このような装飾部材として、例えば、凹凸表面を有するエンボスシートに、樹脂ペーストゾルを塗布し、樹脂ペーストゾルを不完全にゲル化し、樹脂ペーストゾルの表面に樹脂シート積層し、樹脂シートを圧着しつつ樹脂ペーストゾルを完全にゲル化させた部材が開示されている(特許文献1参照)。
また、グラデーション、ぼかし、シャドウ等で表現した立体風な画像を作成し、透明シートを重ね、画像に沿った形に切り抜いたイラスト、画像を含む別シートを貼り合わせる方法が開示されている(特許文献2参照)。
特開2008−307734号公報 特開2008−296488号公報
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、凹凸表面を有するエンボスシートによって立体感のある模様を表現するため、深さ方向の大きな凹凸を表現するためにはエンボスシートの厚みも厚くする必要がある。そのため、部材そのものの厚さに制約が出てしまう。また、実際に凹凸を形成するので、複雑な模様を表現することが難しい。さらに、その製造工程が複雑になり、コスト高を招来してしまう。
また、特許文献2に開示された方法では、単に立体風な画像に透明シートを重ねるだけで立体感を装飾するため、人体が感じる立体感には限界が生じてしまう。また、透明シート上に切り抜きシートを貼り合わせるため、その位置合わせに手間がかかり、コスト高を招来する。
本発明者らは、このような状況に対して、部材そのものの厚さに依らず深さ方向の大きな凹凸や複雑な形状の凹凸を表現することができて、かつ、部材自体は平滑な表面でありながらも立体感のあると感じる装飾部材を提供しようと考えた。
本発明者らは、この優れた装飾部材を提供するために、人がモノを見たときに、目に入ってくる像(見ているモノ)が凹凸であると知覚するメカニズムに着目した。人は、目に入ってくる像の明度のコントラスト、ピントのずれ、左右の目のずれ(両眼視差)、見ているモノと目との間の距離の違い(奥行き方向の情報)等によって凹凸を知覚する。従来から知られている凹凸に対して斜め方向から光をあてた場合に投影される影をシェード部として描くことで立体を模倣した画像(立体風の画像)は、人が凹凸を知覚するための要素のうち、明度のコントラストやピントのずれを画像によって疑似的に再現している。この立体風の画像によって、人は平面画を見ているにも関わらず凹凸があるように感じる。しかしながら、この従来の技術においては、両眼視差や奥行き方向の情報を再現することができておらず、特に奥行き方向の情報が再現できていない。これによって、立体風の画像が平面画であると知覚されてしまうことで凹凸があると感じにくくなっている。本発明者らは、このような新たな課題に着目し、立体風の画像を用いて人に凹凸があると感じさせるためには、この奥行き方向の情報を疑似的に再現することが必要であると考えた。
本発明者らは、このような課題を解決し、明度のコントラストやピントのずれを疑似的に再現した立体風の画像に、さらに奥行き方向の情報を疑似的に再現することが可能な表面層を組み合わせることで、平滑(あるいは平坦)な表面でありながら立体感のある模様が装飾された装飾部材を提供することを目的として、本発明の基本構想に想到した。具体的には、凹凸に対して斜め方向から光をあてた場合に投影される影をシェード部として描くことで立体を模倣した画像を有する加飾層と、前記加飾層の上に設けられ、光透過性を有する表面層と、を備えた装飾部材である。表面層は、表面層に入射した光が加飾層に到達するまでの間に表面層に入射した光の光路の方向に不規則性を与えることによって、表面層を通して眺めた画像の各部分の表面からの距離を人が知覚しにくくなるように、表面層に入射した光を拡散させて加飾層に到達させる。かつ、表面層は、表面層を通して眺めた画像のシェード部を形成する境界線を歪ませることなく、画像のシェード部を形成する境界線における明度の変化が緩和されるように、表面層に入射した光を拡散させて加飾層に到達させる。
このように本発明者らが想到した基本構想の装飾部材は、明度のコントラストやピントのずれを疑似的に再現した立体風の画像に、奥行き方向の情報を疑似的に再現できる表面層を組み合わせることで、平滑な表面でありながら、人が立体感を感じる装飾部材である。しかしながら、このような構成を採用した装飾部材において、凹凸があると感じさせつつ、さらに、色調の鮮やかな濃色(明度が低い)の装飾部材を実現しようとすると、表面層による明度の上昇によって色調の鮮やかさが低下してしまう。本発明者らは、このような従来にはなかった新たな課題を見出した。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、平滑な表面でありながら、人が立体感を感じると共に、立体感を落とすことなく、色調の鮮やかな濃色の意匠にも対応した装飾部材を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明にかかる装飾部材は、凹凸に対して斜め方向から光をあてた場合に投影される影をシェード部として描くことで立体を模倣した画像を有する加飾層と、前記加飾層の上に設けられ、光透過性を有する表面層と、を備え、前記表面層は、前記表面層に入射した光が前記加飾層に到達するまでの間に前記表面層に入射した光の光路の方向に不規則性を与えることによって、前記表面層を通して眺めた前記画像の各部分の表面からの距離を人が知覚しにくくなるように、前記表面層に入射した光を拡散させて加飾層に到達させるものであり、かつ、前記表面層は、前記表面層を通して眺めた前記画像のシェード部を形成する境界線を歪ませることなく、前記画像のシェード部を形成する境界線における明度の変化が緩和されるように、前記表面層に入射した光を拡散させて加飾層に到達させるものであり、さらに、前記表面層は、着色されていることを特徴とする。
本発明における表面層は、加飾層上の画像の絵柄を視認できる程度の光透過性を有するものであり、さらに光拡散性を有することで加飾層上の画像そのものを見た場合と比較してより立体感があるように人が知覚するものである。具体的には、表面層に入射した光が加飾層に到達するまでの間に表面層に入射した光の光路の方向に不規則性が与えられるよう表面層によって光が拡散されると、人は表面層を通して眺めた画像の各部分の表面からの距離(深さ)を知覚しにくくなり、実際の凹凸を見ている時に生じる奥行き方向の情報があるかのように錯覚するため、本来平面に描かれた画像がさも本当の立体であるかのように知覚されるものである。さらにシェード部の輪郭となる境界線が歪まない程度に明度の変化が緩やかに変化するような光の拡散性を有する表面層とすることで、加飾層上の画像に含まれる輪郭がはっきり見えなくなるので、画像としては視認しつつも、表面層を通して眺めた画像の各部分の表面からの距離(深さ)を知覚しにくくなり、加飾層の画像そのものを見た場合と比較してより高い立体感あるように感じるものである。
表面層の表面からの距離(深さ)を知覚しにくくなると、ヒトは、シェード部の両側において高低差があるものと知覚しやすくなり、その結果、ヒトは、加飾層に形成された立体を模倣した画像をより立体的に知覚することができる。
さらに本発明では、表面層が着色されているので、表面層による奥行き方向の情報の疑似的な再現の効果を残しつつ、すなわち、人が感じている立体感を低下させることなく、色調の鮮やかな濃色の意匠をも兼ね備えた装飾部材を実現できるものである。
また、加飾層は、表面層に直接印刷したり、接着したりするだけで足り、低コストで装
飾部材を製造することができる。
また本発明に係る装飾部材では、前記加飾層の画像が、前記着色された表面層と同じ色に着色されていることも好ましい。
この好ましい態様では、加飾層にも着色されているので、表面層だけの着色で濃色の意匠を実現する場合と比較して、より色調の鮮やかな濃色の意匠をも兼ね備えた装飾部材を実現できるものである。
また本発明に係る装飾部材では、前記表面層が、前記表面層を着色するための着色剤と前記表面層において光を拡散させるための光拡散材とを含有するものであり、前記加飾層が配置された側で前記光拡散剤の含有率が、加飾層が配置された側とは反対の側よりも高く、かつ、前記加飾層が配置された側とは反対の側で前記着色剤の含有率が加飾層側よりも高くなるように構成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、光拡散材と着色剤との含有率に傾斜をつけて、表面層の表面に近い側に着色剤が多く含有されるように構成しているので、奥行き方向の情報の疑似的な再現の効果を落とすことなく、より色調の鮮やかな濃色の装飾部材を提供することができる。
本発明によれば、平滑な表面でありながら、人が立体感を感じると共に、立体感を落とすことなく、色調の鮮やかな濃色の意匠にも対応した装飾部材を提供することができる。
本実施の形態に係る装飾部材の模式図である。 本発明の具体例にかかる装飾部材の断面模式図である。 人体が立体感を知覚する基本メカニズムを説明するための図である。 加飾層の画像がより立体的であると知覚する理由を説明するための図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る装飾部材の模式図である。図1(a)には、装飾部材1の平面模式図が示され、図1(b)には、図1(a)のX−Y断面が示されている。図1(c)には、図1(a)のA−B部分の明度の変化が示されている。なお、図1(a)の平面画像は、正面から見た場合の平面図であり、その平面図にある方向から光を当てた場合のハイライトとシェードを付与している。
図2は、本発明の他の具体例にかかる装飾部材1の断面模式図が示されている。
装飾部材1は、例えば、加飾層10と、加飾層10上に設けられた表面層20とを有する。
加飾層10は、例えば、平面画像部10pと、平面画像部10pの境界に設けられたハイライト部10hおよびシェード部10sと、を有する。平面画像部10pも、ハイライト部10hおよびシェード部10sも、同一の平面上に設けられている。ハイライト部10hは、平面画像部10pよりも明るく見える部分であり、シェード部10sは、平面画像部10pよりも暗く見える部分である。ハイライト部10hは、シェード部10sよりも明るく見える部分である。このような平面画像部10pと、ハイライト部10hと、シェード部10sとを含む画像により、加飾層10は、立体画像を模倣した平坦な表面を有する。なお、立体画像を模倣するために、ハイライト部10hは設けず、平面画像部10p並びにシェード部10sにより構成された加飾層10も、本実施の形態に含まれる。換言すれば、加飾層10は、凹凸に対して斜め方向から光をあてた場合に投影される影をシェード部10sとして描くことで立体を模倣した画像を有している。
このような加飾層10は、表面層20以外の別の部材、例えば紙面に平面画像部10p、ハイライト部10hおよびシェード部10sを形成させたものとすることができる。加飾層10が紙面の場合は、例えば、接着剤により加飾層10を表面層20に貼り合わせる。また、表面層20に平面画像部10p、ハイライト部10hおよびシェード部10sを直接印刷したものでもよい。また、表面層20以外の別の部材に平面画像部10p、ハイライト部10hおよびシェード部10sを形成させた場合、表面層20と、平面画像部10pの間に隙間があってもよい。
表面層20は、光透過性と光拡散性とを有し、更に着色されている。マトリックス20tは、例えば、半透明の材料などにより形成することができ、視覚的にやや濁って見えるような光学的作用を与える。表面層20を通して加飾層10を見ると、加飾層10がややぼやけて見える。表面層20の表面は、平滑な平面または平滑な曲面である。ここで、「平滑」とは、凹凸が実質的に存在しない平坦な状態と、光を拡散する細かな凹凸が設けられた状態と、を含む。ただし、「平滑」とは、装飾部材1を観察する観察者が虚像として知覚する立体構造の凹凸は、含まない。
図1(b)および図2に表した具体例においては、表面層20は、マトリックス20tと、マトリックス20t内に分散させた光拡散材(粒子)20dと、着色剤20eと、を有する。図1(b)に表した装飾部材1の表面層20の表面20sは、光を拡散する粗面(細かな凹凸構造)になっている。一方、図2に表した装飾部材1aの表面層20の表面20sは、粗面ではなく平坦面となっている。このような粗面や光拡散材20dや着色剤20eを配置しても、表面層20は画像を視認するのに十分な光透過性を有している。これにより、表面層20を通して加飾層10の画像を見ることができる。また、表面層20を通して加飾層10を眺めると、平面画像部10p、ハイライト部10hおよびシェード部10sの境界における明度の変化が緩和され、また明度上昇および彩度低下を抑制するように構成されている。
例えば、図1(c)の横軸の左から右に沿って、明度の変化を説明する。
表面層20を設けない無垢の加飾層10では、明度が平面画像部10pとシェード部10sとの境界からシェード部10sにかけて急峻に立ち下がり、シェード部10sから平面画像部10pとシェード部10sとの境界にかけて急峻に立ち上がっている。
これに対して、加飾層10上に表面層20を設け(すなわち、装飾部材1)、表面層20を通して、加飾層10を眺めると、明度は、平面画像部10pとシェード部10sとの境界からシェード部10sにかけて緩やかに立ち下がり、シェード部10sから平面画像部10pとシェード部10sとの境界にかけて緩やかに立ち上がっている。また、表面層20を通して加飾層10を眺めても、平面画像部10p、ハイライト部10hおよびシェード部10sの境界は、例えば直線状の境界が湾曲するような変化は生じない。
さらに明度上昇および彩度低下の抑制効果について説明する。
光拡散材20dや光を拡散する粗面(細かな凹凸構造)により、表面層20に入射してきた光が拡散される。その光拡散により、表面層20を通して加飾層10を見た際の明度が、加飾層10だけの明度と比較し、上昇してしまう。また、彩度は、加飾層10だけの彩度よりも低下してしまう。これにより、色調の鮮やかさが低下する場合がある。そこで、着色剤20eを表面層20に含有させることによって、明度上昇および彩度低下を抑制することが可能となる。つまり、色調の鮮やかな濃色の意匠をも兼ね備えた装飾部材を実現することができる。
マトリックス20tは、例えば、ガラス、樹脂等で構成されている。その形状は、板状であってもよく、フィルム状であってもよい。光拡散材20dは、表面層20に入射した光が加飾層10に到達するまでの間に光路の方向に不規則性を与えるために、入射した光を反射または拡散する役割を有する。光拡散材20dは、例えば金属、無機材、有機材で構成された粒子とすることが出来る。着色剤20eは、顔料や染料など表面層20を着色できるものであれば特に制限するものではない。
具体的な光拡散材20dは、無機材として、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、水酸化アルミニウムなどがあり、有機材としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポチプロピレン、ポリウレタン、アクリロニトリル共重合体、等の有機物の粒子などが挙げられる。また、蛍光粒子を用いてもよい。これらを単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。なお、図1(b)に表した装飾部材1のように、表面20sが粗面にされた表面層20を用いた場合、光拡散材20dは、設けなくてもよい。逆に光拡散材20dを設けた場合、図2に表した装飾部材1aのように、表面20sが粗面とされず、平坦面としても良い。また、加飾層10と、表面層20とを接着する接着剤に光拡散材20dが含まれてもよい。
このような装飾部材1の表面層20を通して加飾層10を眺めると、表面層20を設けない場合と比べ、ヒトの視覚のうえで加飾層10の画像がより立体的に見え、さらに、色調の鮮やかな濃色の意匠を兼ね備えた装飾部材1を実現できる。
マトリックス20tと屈折率の差が大きい光拡散材20dや着色剤20eは、隠蔽性の高い材料が多く、この2つを組み合わせると、表面層20を通して加飾層10を見た際、見えにくくなることがある。そのため、光拡散材20dは、マトリックス20t中を進む光をあまり反射させずに、透過・拡散させるものが好ましい。
さらに、着色剤20eが光拡散材20dによって隠蔽されることを防止し、着色剤20eによる着色の効果を発現させるために、表面層20の内部での着色剤20eと光拡散材20dとの分散状態を、表面層20の加飾層10が配置された側で光拡散材20dの含有率が、加飾層が配置された側とは反対の側よりも高く、かつ、加飾層10が配置された側とは反対の側で着色剤20eの含有率が加飾層側よりも高くなるように配向させることが好ましい。これによれば、表面層20による奥行き方向の情報の疑似的な再現の効果を残しつつ、色調の鮮やかな濃色の意匠をも兼ね備えた装飾部材1を実現することができる。
また、表面層20だけの着色だけでなく、加飾層10をが着色されていることが好ましい。このとき、加飾層10の画像は、着色剤20eで着色された表面層20と同じ色に着色されていることがより好ましい。なお、本願明細書において、「同じ色」という範囲には、完全に同じ色だけではなく、ヒトが識別できない程度に異なる色も包含される。加飾層10の平面画像部10pを着色することで、奥行き方向の情報の擬似的な再現効果を落とすことなく、より色調の鮮やかな濃色の装飾部材1を実現できる。
次に、ヒトが平面状である加飾層10を立体的に知覚する基本メカニズムについて説明する。
以下まず、ヒトが立体感を知覚する一般的なメカニズムについて説明する。
図3は、ヒトが立体感を知覚する基本メカニズムを説明するための図である。
図3(a)には、第1のメカニズムが示されている。ここで、ヒト30の手前には照明40があり、照明40により光が照らされた加飾層10をヒト30が眺めているとする。
ヒト30は、凹凸のある表面50にハイライト部(すなわち、明るい部分)50hおよびシェード部(すなわち、暗い部分)50sが混在していると、表面50が立体的であると知覚する。すなわち、凹凸に光があたったときに形成される明るい部分と影の部分とを視覚することにより、立体感を知覚する。
例えば、ヒト30は、ハイライト部50hに接続する平面部50pがシェード部50sに接続する平面部50pよりも高いと知覚する。
図3(b)には、第2の理由が示されている。
ヒト30の視覚は、特定の平面部50pに、視覚の焦点を合わせてしまうと、これ以外の部分に対する焦点がぼやけてしまうという性質を有する。
例えば、ヒト30は、ある特定の平面部50pが高いと認識し、一旦これに焦点を合わせてしまうと、これ以外の平面部50pに対する焦点がぼやけてしまう。このような理由によっても、ヒト30は、表面50が立体的であると知覚する。
図3(c)には、第3の理由が示されている。
ヒト30は、両眼で表面50を眺めるため、左目30lで見る画像と右目30rで見る画像とがずれている。すなわち、両眼視による視差により、ヒト30は、表面50の画像が立体的であると知覚する。このような理由によっても、ヒト30は、表面50の画像が立体的であると知覚する。
以上説明した理由が総合的に絡み合って、ヒト30は、表面50が立体的であると知覚する。そして、本実施形態によれば、平坦な加飾層10上に表面層20を設けることにより、上述したような視覚的なメカニズムを誘発し、立体感を与えることができる。その理由を次に説明する。
図4は、加飾層の画像がより立体的であると知覚する理由を説明するための図である。
ここで、比較のため、図4(a)には、装飾部材1とは構造が異なる装飾部材100が例示されている。この装飾部材100においても、加飾層10上にマトリックス20tが設けられている。但し、マトリックス20tには、上述した光拡散材20dと着色剤20eとが設けられていない。一方、図4(b)には、本実施の形態の装飾部材1が示されている。
先ず、図4(a)に示す装飾部材100においては、マトリックス20tの表面20sが平坦であり、なおかつマトリックス20t内に光拡散材20dが存在しない。そのため、光が、表面層20から加飾層10を通り再度表面層20を抜ける際の光路長は場所により変らない。つまり加飾層の厚み方向(矢印d)における画像位置情報が場所によって変らないため、ハイライト部10hもシェード部10sも同じ深さである。つまり、ヒト30は、平面であると視認してしまう。また、ハイライト部10hおよびシェード部10sの画像情報は、ぼやけることがなく、そのままヒト30に届く。つまり、ヒト30が視覚するハイライト部10h及びシェード部10sは、加飾層10に形成されたとおりである。
これは、マトリックス20tを通さずに加飾層10表面を直接眺めた場合と同様であり、立体感を増す効果は得られない。
これに対して、本実施形態の装飾部材1では、この限界を超える構造を有する。図4(b)に示す装飾部材1は、マトリックス20t内に光を透過・拡散させる光拡散材20dと着色剤20eとが設けられている。また、マトリックス20tの表面20sに光を拡散する粗面を設けてもよい。このような光拡散機能を備えた表面層20では、光の進行が表面層20内で不規則になる。そのため、光が、表面層20から加飾層10を通り再度表面層20を抜ける際の光路の方向性は場所によりばらばらになる。その結果、表面層20の厚み方向(矢印d)における画像位置の情報は、ヒト30に伝わり難くなる。また、上述したように、加飾層10上に表面層20を設けると、ハイライト部10hやシェード部10sにおける明度の変化はより緩和される。つまり、ハイライト部10hやシェード部10sが視覚的にぼやけて見えるようになる。さらに、着色剤20eで着色された表面層20により、光拡散による明度上昇および彩度低下を抑制することが出来る。
その結果として、表面層20を通して加飾層10を眺めると、表面20sから、加飾層10の平面画像部10p、ハイライト部10h、シェード部10sまでの実際の距離(深さ)を視認しにくく明度上昇や彩度低下を抑制することとなる。また、上述したように、加飾層10上に表面層20を設けると、ハイライト部10hやシェード部10sにおける明度の変化はより緩和される。つまり、ハイライト部10hやシェード部10sが視覚的にぼやけて見えるようになる。これにより、ハイライト部10hやシェード部10sが、実際の凹凸構造があるときのハイライト部やシェード部に近くなり、立体感を感じやすくなる。これにより、ハイライト部10hやシェード部10sが、実際の凹凸構造があるときのハイライト部やシェード部に近くなり、立体感を感じやすくなる。その結果、ヒト30は、図3(b)、(c)の情報はごまかされて、図3(a)に関して前述したメカニズムにより、立体感を感じやすくなる。
すなわち、表面層20の表面20sからの距離(深さ)を視認しにくくなると、ヒト30は、ハイライト部10hやシェード部10sの両側において高低差があるものと知覚しやすくなる。その結果、ヒト30は、加飾層10の画像をより立体的に知覚する。
このように、本実施の形態では、表面層20による光拡散効果と、明度上昇や彩度低下の抑制効果と、加飾層10の画像明度分布と、が相乗することにより、ヒト30が知覚する立体感がより向上し、さらに色調の鮮やかな濃色の意匠を兼ね備えた装飾部材を実現することができる。
以上のように、本実施形態にかかる装飾部材1は、凹凸に対して斜め方向から光をあてた場合に投影される影をシェード部として描くことで立体を模倣した画像を有する加飾層10と、加飾層10の上に設けられ、光透過性を有する表面層20と、を備える。表面層20は、表面層20に入射した光が加飾層10に到達するまでの間に表面層20に入射した光の光路の方向に不規則性を与えることによって、表面層20を通して眺めた画像の各部分の表面からの距離を人が知覚しにくくなるように、表面層20に入射した光を拡散させて加飾層10に到達させる。かつ、表面層20は、表面層20を通して眺めた画像のシェード部10sを形成する境界線を歪ませることなく、画像のシェード部10sを形成する境界線における明度の変化が緩和されるように、表面層20に入射した光を拡散させて加飾層10に到達させる。さらに、表面層20は、着色剤20eにより着色されている。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定さ
れるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、
本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、装飾部材1が備え
る各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜
変更することができる。また、装飾部材1の表面は、平面でもよく曲面でもよい。具体的
には、装飾部材1は、浴室、浴槽、トイレ室、洗面カウンター、キッチン壁等の平面部の
みならず、曲面部、コーナー部にも用いることができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わ
せたり、複合したりすることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限
り本発明の範囲に包含される。
1、1a、100 装飾部材
10h ハイライト部
10s シェード部
10p、10pa、10pb 平面画像部
20 表面層
20d 光拡散材(粒子)
20e 着色剤
20f 樹脂フィルム
20s 表面
20t マトリックス
30 ヒト
30l 左目
30r 右目
40 照明
A、B、d 矢印

Claims (3)

  1. 凹凸に対して斜め方向から光をあてた場合に投影される影をシェード部として描くことで立体を模倣した画像を有する加飾層と、
    前記加飾層の上に設けられ、光透過性を有する表面層と、
    を備え、
    前記表面層は、前記表面層に入射した光が前記加飾層に到達するまでの間に前記表面層に入射した光の光路の方向に不規則性を与えることによって、前記表面層を通して眺めた前記画像の各部分の表面からの距離を人が知覚しにくくなるように、前記表面層に入射した光を拡散させて加飾層に到達させるものであり、
    かつ、前記表面層は、前記表面層を通して眺めた前記画像のシェード部を形成する境界線を歪ませることなく、前記画像のシェード部を形成する境界線における明度の変化が緩和されるように、前記表面層に入射した光を拡散させて加飾層に到達させるものであり、
    さらに、前記表面層は、着色されていることを特徴とする装飾部材。
  2. 前記加飾層の画像は、前記着色された表面層と同じ色に着色されていることを特徴とする請求項1記載の装飾部材。
  3. 前記表面層は、光拡散材および着色剤を含有するものであって、
    前記光拡散材の含有率は前記加飾層が配置された側において前記加飾層が配置された側とは反対の側よりも高く、かつ、前記着色剤の含有率は前記加飾層が配置された側とは反対の側において前記加飾層が配置された側よりも高いことを特徴とする請求項1記載の装飾部材。
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