JP2012008001A - 原子炉内構造物の振動計測装置及びその振動計測方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】振動計測装置10は、原子炉の圧力容器60表面に密着される面に開口部21を有するホルダ20と、ホルダ20に収容され超音波を送信又は受信する振動子30と、ホルダ20内に充填されたカプラント11と、振動子30を開口部21の方向に付勢する付勢部材12とを備え、カプラント11は、常温で固体であり、圧力容器60からの伝熱で融解する金属材料であることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
容器内部に存在する物体の振動を、容器表面から間接的に計測する手段としては、超音波センサを用いる方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1に基づいて超音波による振動計測の原理について説明する。図1(A)は超音波の送信子10A及び受信子10Bが別体で構成される振動計測装置10を示している。
送信子10Aから伝播した超音波Uは、圧力容器60内で振動する炉内構造物61に反射され、受信子10Bの方向に伝播する。
そして、炉内構造物61の振動により超音波Uの伝播距離が変化するために、これに対応する伝播時間Tの変化を検出し、炉内構造物61の振動を計測する。
そして、カプラントは、常温で固体であり、前記圧力容器からの伝熱で融解する金属材料である。また、ホルダ20は、ステンレス製の金属容器であり、その開口部21において圧力容器60の外表面に接着剤13により接着されている。
この接着剤13は、ホルダ20の圧力容器60に対する固定機能の他に、液状のカプラント11が、ホルダ20の外部に漏洩することを防止するシール機能も果たす。
そして、図2(B)に示されるように、原子炉が稼動して圧力容器60の表面温度が上昇すると、カプラント11は溶融して液状を呈する。すると、付勢部材12の付勢力により、振動子30は、圧力容器60の表面に当接し、振動計測が可能な状態になる。
そして、カプラント11は、100℃以下の比較的低温で液状化し、300℃程度の高温かつ中性子照射といった過酷な環境下でも液体状態で安定し、蒸発や熱硬化などの物性変化を起こさない金属が選択される。
そのような低融点合金としては、例えば、スズ、ビズマス、鉛を主成分とするニュートン合金やローズ合金などが考えられる。
ホルダ20は、図3(A)に示すように、開口部21周縁の少なくとも一部に、ホルダ20と圧力容器60を接着する接着剤13(図2)を保持する溝22が設けられ、さらに、図3(B)又は図3(C)に示すように、その側壁に把持片15が設けられている。
このケーブル14は、内部空間Vを介して、ホルダ20の外側に導かれている。
胴体部31は、内部空間Vの側周面24を摺接して振動子30の移動を案内している。
先端部32は、ホルダ20の開口部21から突出して、カプラント11(図2)を挟んで圧力容器60の表面に当接する。
段差面33は、ホルダ20の係止面23に当接して、振動子30がホルダ20から抜け落ちないようにしている。
図4を参照して、振動計測装置10の第2実施形態について説明する。
図4(A)は振動計測装置10の縦断面図を示し、図4(B)はその底面図を示し、図4(C)は図4(A)の直交断面図を示している。なお、図4において図3と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明は省略する。
このように、振動計測装置10が構成されることにより、ホルダ20を圧力容器60の表面に押し付けて、接着剤13を一方の導入口22aから導入すれば、開口部21の接着が容易に達成される。そして、後記する運搬装置70や把持手段80(図10参照)を利用して、振動計測装置10を圧力容器60に取り付ける遠隔操作が可能になる。
組立装置は、加熱炉40と、振動計測装置10の載置台41と、この載置台41に立設する支柱42と、支柱42に沿って上下方向に移動する水平棒43と、この水平棒43の先に設けられ振動子30の先端部32に当接して付勢部材12の反発力に抗ってこの振動子30を押し下げる押え部44と、カプラント11を液状のまま貯蔵するタンク45と、開閉弁46を開放することによりこのカプラント11をホルダ20の内部に注入する注入管47と、雰囲気温度をカプラント11の溶融温度以上に加熱する電気ヒータ48と、から構成されている。
このように、常温でカプラント11は固体化しているので、ホルダ20を横にしてもこぼれることがなく、圧力容器60(図2)への取り付け作業が容易である。
また、振動子30の先端部32が、固体化したカプラント11に埋没しているので、取り付け時に付勢部材12の反発力が圧力容器60(図2(A))に作用せず、振動計測装置10の取り付け作業が容易になる。
図6を参照して、振動計測装置10の第3実施形態について説明する。
なお、図6において図3と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明は省略する。
第3実施形態の振動計測装置10におけるホルダ20は、カプラント11(図2)を加熱して固体から液状にするヒータ16を有している。
なお、図示されるヒータ16は、ホルダ20に埋設される構成を示しているが、その外周や内部に設けることもできる。
図7を参照して、振動計測装置10の第4実施形態について説明する。
なお、図7において図3と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明は省略する。
第4実施形態の振動計測装置10で使用されるカプラント11は、常温で液体の金属材料であり、ホルダ20を圧力容器60の表面に接着させてから充填される。
図8〜図12を用いて、振動計測装置10を取り付け位置まで移動させ、圧力容器60表面に取り付ける構成に関して説明する。
図8は、沸騰水型原子炉の構成の概要を示す。圧力容器60には炉水Wが注入され、61等に示す種々の炉内構造物が収容されている。また、圧力容器60には主蒸気ノズル51、給水ノズル52、再循環システム62と接続された再循環水出入口ノズル53等の、冷却材が流通する種々のノズルが設けられている。
一般的に圧力容器60は、周囲を保温材64や遮蔽体65で覆われており、作業者が圧力容器60の外表面に直接接近することが困難である。さらに、圧力容器60の外表面と保温材64との隙間はわずか20cm程度となっている。
この圧力容器60と保温材64との間に、振動計測装置10の運搬装置70が設置されている。この運搬装置70は、図9に示す例では給水ノズル52近傍の空間から支持梁72を介して圧力容器60付近に設置されている。繰り出されるワイヤ75の先端には、把持手段80に把持された振動計測装置10が懸垂されている。
図10は、振動計測装置10の圧力容器60への運搬装置70を、図9よりも詳細に示している。
運搬装置70は、給水ノズル52の下側に圧力容器60の周方向に沿って施設されるレール71と、この給水ノズル52に略平行に施設され先端部分においてレール71を支持する支持梁72と、レール71に沿って移動する走行台車73と、この走行台車73と一体に構成されワイヤ75及びケーブル76を繰り出したり巻き戻したりするウインチ74と、このワイヤ75及びケーブル76の先端に設けられる連結子77と、から構成されている。
そして、この連結子77には、振動計測装置10を把持する把持手段80が連結されている。
把持手段80は、図11に示すように、筐体81の外側に設けられた電磁石82(計4つ)と、圧力容器60の表面を回転駆動して把持手段80を周方向に移動させるタイヤ83(計4つ)と、回動自在の球体が先端に埋設されたボールキャスタ84(計4つ)と、アーム85の先端に設けられ振動計測装置10の把持片15を着脱するクランプ86と、基端が支持されるアーム85を圧力容器60から離れる方向に変位させるリニア駆動部87と、振動計測装置10の溝22(図4(B))の導入口22aに接着剤を注入する注入部88と、から構成されている。
図10(A)に示すように圧力容器60の周方向を移動する走行台車73から繰り出されるワイヤ75の先端の連結子77に把持手段80を取り付け、この把持手段80に振動計測装置10を把持させる。
把持手段80を圧力60付近で移動させる際は、電磁石82の磁力により、把持手段80を圧力容器60表面に吸着させる。これにより、把持手段80を圧力容器60上に吸着させた状態で移動可能なため、取り扱いが容易となる。したがって、電磁石82による吸着力は、走行台車73に吊り下げられた把持手段80を圧力容器60に吸着させる程度で十分であり、電磁石82のみで圧力容器60表面に固定するほどの吸着力は不要である。
次に、図12(D)に示すように、把持手段80は、振動計測装置10の把持を解除して、周方向又は上下方向に移動して退避する。
これに対して、ワイヤ75に対する把持手段80の取り付け及び取り外しを、圧力容器60の炉底部にあるドライウェルD(図9)で行なうことで、ノズル近傍での作業量を削減することが可能である。具体的には、ノズル近傍では運搬装置70の設置作業を行ない、把持手段80をドライウェルDまで下降させる。そして、ドライウェルDで振動計測装置10を取り付け、把持手段80を上昇させて設置位置への取り付けを行う。
これにより、圧力容器60に接続される配管(例えば、主蒸気ノズル51等)の近傍での作業時間を極力軽減することが可能となり、ノズル溶接部の健全性検査(ISI検査)などの定期検査作業との干渉がなくなる。
例えば、カプラントが液状を呈している状態で、超音波の送受信を行うことを前提として説明を行ったが、カプラントが液状を呈した状態で振動子と圧力容器と間に隙間が無いように充填し、カプラントが凝固した際に隙間が生じなければ、そのまま超音波の送受信が可能である。したがって、原子炉運転中にカプラントが固体になった状態でも超音波の送受信をすることができる。
また、カプラントが常温で固体であり、原子炉運転中の圧力容器からの伝熱で液体になるものとして説明したが、例えば常温で液体である材料であっても、あらかじめ振動計測装置を冷却しておいて固体としておき、融解する前に取り付け作業を行なうこととすれば、カプラントとして適用することが可能である。
Claims (7)
- 原子炉の圧力容器表面に密着される面に開口部を有するホルダと、
前記ホルダに収容され超音波を送信又は受信する振動子と、
前記ホルダ内に充填されたカプラントと、
前記振動子を前記開口部の方向に付勢する付勢部材と
を備え、
前記カプラントは、常温で固体であり、前記圧力容器からの伝熱で融解する金属材料であることを特徴とする原子炉内構造物の振動計測装置。 - 前記開口部周縁の少なくとも一部に、前記ホルダと前記圧力容器を接着する接着剤を保持する溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の原子炉内構造物の振動計測装置。
- 前記溝は前記開口部の存在する面と異なる面に前記接着剤の導入口を有することを特徴とする請求項2記載の原子炉内構造物の振動計測装置。
- 前記ホルダは、前記カプラントを加熱するヒータを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の原子炉内構造物の振動計測装置。
- 原子炉の圧力容器表面に密着される面に開口部を有するホルダと、
前記ホルダに収容され超音波を送信又は受信する振動子と、
前記ホルダ内に充填されたカプラントと、
前記振動子を前記開口部の方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記カプラントは常温で液体の金属材料であり、前記ホルダは前記振動子の周囲に前記カプラントを注入する供給口を有することを特徴とする原子炉内構造物の振動計測装置。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の炉内構造物の振動計測装置を前記圧力容器の所定位置に取り付ける振動計測装置の取り付け方法であって、
前記圧力容器を周方向に移動可能な走行台車から繰り出されるワイヤに前記把持手段を取り付けるステップと、
前記炉内構造物の振動計測装置を前記把持手段に把持させるステップと、
前記走行台車を前記周方向に沿って移動させるか又は前記ワイヤの繰出量を調整するかして前記振動計測装置を所定の設置位置に到達させるステップと、
前記ホルダの前記開口部を前記圧力容器の表面に接着するステップと、
前記把持手段による前記振動計測装置の把持を解除するステップと、を含むことを特徴とする原子炉内構造物の振動計測方法。 - 請求項6に記載の原子炉内構造物の振動計測方法において、
前記原子炉内構造物の振動計測装置を前記把持手段に把持させるステップは、
前記把持手段を前記設置位置の上方から前記原子炉圧力容器炉底部のドライウェルまで吊り下すステップと、
前記ドライウェルで前記振動計測装置を前記把持手段に把持させるステップと、を有することを特徴とする原子炉内構造物の振動計測方法。
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