JP2012007550A - 内燃機関の冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】不凍液の濃度が変化したときであっても、内燃機関の燃焼室近傍における不凍液の局所的な沸騰を抑制しつつ、機関始動時における内燃機関の暖機を促進する。
【解決手段】制御装置91は、機関暖機中において、不凍液温度θが上限温度θc未満であるときには、不凍液の吐出量が制限されるようにポンプ23の回転速度を制御する暖機促進処理を実行する。また、制御装置91は、不凍液濃度Wdが高いときほど高い温度となる最適温度θbを不凍液濃度Wdに基づいて算出し、現在設定されている上限温度θcと最適温度θbとの偏差が小さくなるように上限温度θcを更新する。
【選択図】図1
【解決手段】制御装置91は、機関暖機中において、不凍液温度θが上限温度θc未満であるときには、不凍液の吐出量が制限されるようにポンプ23の回転速度を制御する暖機促進処理を実行する。また、制御装置91は、不凍液濃度Wdが高いときほど高い温度となる最適温度θbを不凍液濃度Wdに基づいて算出し、現在設定されている上限温度θcと最適温度θbとの偏差が小さくなるように上限温度θcを更新する。
【選択図】図1
Description
本発明は、機関冷間時に電動回転式のポンプの吐出量を一時的に制限することにより暖機の促進を図るようにした内燃機関の冷却装置に関する。
内燃機関に冷却水、即ち不凍液を循環させるポンプとして、従来から広く用いられている機関駆動式のもの、即ち機関出力軸により駆動され同機関出力軸の回転速度に基づいてその吐出量が一義的に決定されるポンプに代えて、その吐出量を独立して変更することのできる電動回転式のポンプを採用した内燃機関の冷却装置が近年実用化されつつある。このようなポンプを採用した冷却装置では、機関駆動式のポンプを採用するものとは異なり、その吐出量を任意に変更することができる。このため例えば、不凍液の温度が上限温度に達するまでポンプの吐出量を制限することにより、即ち内燃機関における不凍液の循環量を制限して冷却能力を低下させることにより、内燃機関の暖機を促進する処理(以下、「暖機促進処理」という)を実行することができる(例えば、特許文献1参照)。
ところで、このような内燃機関の冷却装置には、凝固点を降下させるとともに沸点を上昇させることを目的として、エチレングリコールを主成分として含有する不凍液が用いられている。このような不凍液は、長期間の使用に伴って劣化したりそれに含まれる水分が徐々に蒸発したりするため、不凍液全てを入れ換える交換を含め、定期的に不凍液を補充する必要がある。そしてこのような補充の際、現在、冷却装置の循環水路に貯留されている不凍液とはエチレングリコールの濃度の異なる不凍液が補充されることがある。そしてこのような場合、上記暖機促進処理の実行に際して以下のような状況が発生し得るとの知見が本発明者らによって得られた。
即ち、暖機促進処理の実行中、内燃機関の燃焼室の周囲に滞留する不凍液は、他の部位に滞留する不凍液よりも大きく温度上昇して局所的に高温となる傾向がある。不凍液の濃度が推奨される標準的な濃度若しくはそれ以上の濃度である場合は、このように局所的に高温となる不凍液の温度がその沸点に達する前に暖機促進処理が終了して不凍液の循環が開始されるため、このような局所的な沸騰を招くことはない。しかしながら、水を含め、上述した標準的な濃度よりも濃度の低い不凍液が補充されると、不凍液の沸点が低下するため、暖機促進処理の実行中に上述したような局所的に高温となった不凍液が沸騰してしまうおそれがある。
そこで、このような状況を回避するために、こうした不凍液の補充によってその濃度が最も低下した場合であっても不凍液の局所的な沸騰が生じることのないように、上限温度、即ち暖機促進処理を終了する際の不凍液の温度を予め低く設定しておくことも考えられる。しかし、この場合、不凍液の濃度の高い場合には、不凍液の温度がその沸点に達しておらず、引き続き暖機促進処理を実行することが可能であるにもかかわらず同処理が終了してしまうようになる。このため、こうした暖機促進処理を実行する従来の冷却装置は、その狙いとする暖機促進効果を十分に発揮することができず、暖機完了前における熱損失の低減、ひいては燃費の向上を図るうえで改善の余地を残すものとなっていた。
本発明は、上述したような発明者らによる知見に基づいてなされたものであり、その目的は、不凍液が補充されてその濃度が変化したときであっても、内燃機関の燃焼室近傍における不凍液の局所的な沸騰を抑制しつつ、機関始動時における内燃機関の暖機を促進することができる内燃機関の冷却装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、機関冷却用の不凍液を吐出する電動回転式のポンプの吐出量をその回転速度に基づいて可変制御するポンプ制御手段と、不凍液の温度を検出する温度検出手段とを有し、機関暖機中に不凍液の温度が上限温度未満であるときには同上限温度以上であるときと比較して不凍液の吐出量が制限されるように前記ポンプの回転速度を制御する暖機促進処理が実行される内燃機関の冷却装置において、不凍液の濃度を同定する同定手段と、不凍液の濃度が高いときには低いときと比較して高い温度となる関係を有した前記上限温度の最適値を前記同定される不凍液の濃度に基づいて求め、現在設定されている上限温度と前記求められる最適値との偏差が小さくなるように同上限温度を更新する更新手段とを有することを要旨とする。
請求項1に記載の発明は、機関冷却用の不凍液を吐出する電動回転式のポンプの吐出量をその回転速度に基づいて可変制御するポンプ制御手段と、不凍液の温度を検出する温度検出手段とを有し、機関暖機中に不凍液の温度が上限温度未満であるときには同上限温度以上であるときと比較して不凍液の吐出量が制限されるように前記ポンプの回転速度を制御する暖機促進処理が実行される内燃機関の冷却装置において、不凍液の濃度を同定する同定手段と、不凍液の濃度が高いときには低いときと比較して高い温度となる関係を有した前記上限温度の最適値を前記同定される不凍液の濃度に基づいて求め、現在設定されている上限温度と前記求められる最適値との偏差が小さくなるように同上限温度を更新する更新手段とを有することを要旨とする。
同構成によれば、例えば、濃度の高い不凍液、即ちエチレングリコールが多く含まれる不凍液が冷却系に補充された場合には、暖機促進処理における上限温度が高くなるようにこれが更新される。その結果、不凍液の温度がより高い温度に達するまで暖機促進処理を継続して実行することができ、同処理を通じて効果的に暖機を促進することができるようになる。一方、濃度の低い不凍液が冷却系に補充された場合には、上限温度が低くなるようにこれが更新されるため、暖機促進処理中に燃焼室近傍等における不凍液の局所的な沸騰を抑制することができる。このように、不凍液の濃度が変化したときであっても、その変化した濃度に応じて暖機促進処理の上限温度を更新するようにしているため、内燃機関の燃焼室近傍等における不凍液の局所的な沸騰を抑制しつつ、機関始動後において暖機を促進することができるようになる。尚、不凍液の濃度に基づいて求められる上限温度の最適値と現在設定されている上限温度との偏差が小さくなるように同上限温度を更新する際の具体的な態様には、その求められた上限値の最適値と現在設定されている上限温度とが等しくなるように、即ちそれらの偏差が「0」となるようにこれを更新するものも含まれる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の冷却装置において、前記同定手段は、前記ポンプの実回転速度を検出する回転速度検出手段を含み、前記ポンプ制御手段が予め設定された所定の駆動信号に基づいて前記ポンプを制御したときの同ポンプの実回転速度の推移傾向について同実回転速度が低いときほど不凍液の濃度が高いとこれを同定することを要旨とする。
エチレングリコールは水よりも粘度が高いため、不凍液が循環水路を流れる際の圧力損失はその濃度が高いときほど大きくなる。このため、所定の駆動信号に基づいてポンプを制御する際、不凍液の濃度が高いときほどポンプに作用する攪拌抵抗が大きくなり、実回転速度は低くなる。一方、不凍液の濃度が低いときには、不凍液が循環水路を流れる際の圧力損失が小さくなる。このため、所定の駆動信号に基づいてポンプを制御する際、不凍液の濃度が低いときほどポンプに作用する攪拌抵抗が小さくなり、実回転速度は高くなる。従って、請求項2に記載の発明によるように、所定の駆動信号に基づいてポンプを制御したとき、実回転速度の推移傾向について同実回転速度が低いときほど不凍液の濃度が高いとこれを同定することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の冷却装置において、前記ポンプを予め設定した所定の駆動信号に基づいて制御したときその駆動信号に対応した指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合と不凍液の濃度及び温度との関係を記憶する記憶手段とを更に備え、前記同定手段は、不凍液の温度が前記上限温度未満である第1の温度となったときに前記駆動信号に基づき前記ポンプを制御して前記第1の温度に対応する前記乖離度合を第1の乖離度合として検出するとともに、前記記憶手段に記憶される関係において不凍液の温度を前記第1の温度としたときの乖離度合と前記第1の乖離度合との比較に基づいて不凍液の濃度を同定することを要旨とする。
不凍液の温度が低下すると、その濃度は同じであっても粘度が上昇するため、所定の駆動信号に基づいてポンプを制御する際に、ポンプに作用する攪拌抵抗は増大する。このため、不凍液の濃度の同定精度を高めるうえでは、こうした不凍液の温度変化に伴う攪拌抵抗の変化についても考慮することが望ましい。
この点、請求項3に記載の構成では、不凍液の温度が上限温度未満である第1の温度となったときに上記駆動信号に基づいてポンプを制御して第1の温度に対応する指示回転速度とこれに対する実回転速度との乖離度合を第1の乖離度合として検出するようにしている。また、ポンプを所定の駆動信号に基づいて制御したときの駆動信号に対応した指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合と不凍液の濃度及び温度との関係を予め求めてこれを記憶するようにしている。そして、この関係において不凍液の温度を第1の温度としたときの乖離度合と第1の乖離度合との比較に基づいて不凍液の濃度を同定するようにしている。このため、上記構成によれば、不凍液の温度によりその粘度が変化した場合であっても、そうした粘度変化に伴って変化するポンプの攪拌抵抗、換言すれば圧力損失についても考慮したかたちで不凍液の濃度を同定することができ、その同定精度を高めることができるようになる。尚、指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合は、例えば指示回転速度と実回転速度との偏差やそれら回転速度の比といったパラメータによってこれを検出することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の冷却装置において、前記同定手段は、機関始動後において前記暖機促進処理の実行に先立って前記駆動信号に基づく前記ポンプの制御を実行し、その制御時における不凍液の温度を前記第1の温度として不凍液の濃度を同定することを要旨とする。
暖機促進処理が実行されると、機関燃焼熱により不凍液の温度が上昇するため、その粘度も徐々に低下するようになる。上述したように不凍液の濃度によってポンプに作用する攪拌抵抗は異なるものとなるが、不凍液の粘度が低下すると、こうした濃度が異なることによる攪拌抵抗の変化量が小さくなる。このため、所定の駆動信号に基づいてポンプを制御したとき、不凍液の濃度が同じであっても不凍液の粘度が低い場合には、指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合が小さくなる。そしてこのような場合には、乖離度合に基づいて不凍液の濃度を同定する際の同定精度が低いものとなる懸念がある。
この点、請求項4に記載の構成によれば、上述したような所定の駆動信号に基づくポンプの制御を機関始動後において暖機促進処理の開始に先立って実行し、その制御時の不凍液の温度を第1の温度として上述した関係から不凍液の濃度を同定するようにしている。このため、機関始動時における不凍液の温度は都度異なるとはいえ、そのときの機関運転時についてみれば不凍液の温度が最も低いとき、即ち指示回転速度に対する実回転速度の第1の乖離度合が最も大きくなるときに、これに基づいて不凍液の濃度を同定することができ、その同定精度を高めることができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の内燃機関の冷却装置において、前記同定手段は、不凍液の温度が前記上限温度未満である前記第1の温度となったときに前記駆動信号に基づく前記ポンプの制御を実行して前記第1の温度に対応する前記第1の乖離度合を検出するとともに、不凍液の温度が前記上限温度未満であって前記第1の温度よりも高い第2の温度となったときに前記駆動信号に基づく前記ポンプの制御を実行して第2の温度に対応する第2の乖離度合を検出し、前記記憶手段に記憶される関係に基づいて不凍液の温度が前記第1の温度と前記第2の温度との間で変化するときの前記乖離度合にかかる変化量を求め、その変化量と前記検出される第1及び第2の乖離度合の差分との比較に基づいて不凍液の濃度を同定することを要旨とする。
指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合は、上述したように不凍液の濃度変化や温度変化によって変化するが、仮に不凍液の濃度や温度が同じであっても、ポンプの吐出能力にかかる経年変化や個体差によって異なるものとなる。更に、循環流路についても同様に、スラッジの蓄積等に起因する流路抵抗の経年変化により上記乖離度合は異なるものとなる。このため、不凍液の濃度を更に高い精度をもって同定するうえでは、これらによる影響を可能な範囲で排除することが望ましい。
この点、請求項5に記載の発明では、指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合は、不凍液の濃度や温度によって大きく変化するのに対して、上述したような個体差や経年変化は不凍液の濃度や温度が変化してもそれに起因する影響は小さい点に着目するようにしている。具体的には、第1の温度に対応する第1の乖離度合と第2の温度に対応する第2の乖離度合との差分をとることにより、上述したような個体差や経年変化による影響を相殺するようにしている。そして、指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合と不凍液の濃度及び温度との関係から不凍液の温度が第1の温度と第2の温度との間で変化することに伴う乖離度合の変化量を求め、この変化量と上記差分とを比較することにより不凍液の濃度を同定するようにしている。このため、ポンプや循環水路について上述したような個体差や経年変化が存在する場合であっても、その影響を好適に排除することができ、不凍液の濃度を更に高い精度をもって同定することができるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、前記更新手段は、前記第1の温度が高いときには低いときと比較して現在設定されている上限温度を更新する際の更新量を小さい値に設定することを要旨とする。
ところで、不凍液の濃度に基づいて求められる上限温度の最適値と現在設定されている上限温度との偏差が小さくなるようにこれを更新する際には、その最適値と現在設定されている上限温度とが等しくなるように更新するようにしてもよい点については上述した通りである。但しここで、例えば高温再始動時のように機関始動時において既に不凍液の温度が高いときには、上述した第1の温度も高くなるため、不凍液の濃度が同じであっても第1の乖離度合は小さくなり、不凍液の濃度を同定する際の精度が低いものとなることが懸念される。
この点、請求項6に記載の発明によれば、第1の温度が高いときには、現在設定されている上限温度を更新する際の更新量を小さくするようにしているため、不凍液の濃度を同定する際の精度が低いことにより誤ったかたちで上限温度が更新されてしまうことを抑制することができる。因みに、こうした構成を採用すれば、不凍液の濃度が変化した後に同濃度が一定の状況のもとで機関始動が繰り返されると、上限温度の更新頻度が増加するのに伴って上限温度は最終的にその最適値に収束するようになる。この際、第1の温度が高い状態のもとで機関始動が繰り返される場合には、不凍液の濃度を同定する際の精度が低い可能性があるため、上限温度はその最適値に緩やかに収束するようになる。その一方、第1の温度が低い状態のもとで機関始動が繰り返される場合には、不凍液の濃度を同定する際の精度が高いと想定されるため、上限温度はその最適値に速やかに収束するようになる。
このように上記構成によれば、不凍液の濃度を同定する際の精度が低い可能性があるときには緩やかに、精度が高いと想定されるときには速やかに、といったようにその同定精度に応じたかたちで上限温度を機関始動が繰り返される度に適切に更新することができるようになる。
請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、前記第1の温度が所定温度以上であるときに前記同定手段による不凍液の濃度の同定を無効化する無効化手段を更に備えることを要旨とする。
同構成では、第1の温度が所定温度以上であるとき、換言すれば、第1の温度に対応した第1の乖離度合が小さいために不凍液の濃度を同定する際の精度が低く、その同定結果の信頼性が保証できないときには、不凍液の濃度の同定を無効化するようにしている。このため、例えば上限温度がその最適値から乖離するような態様で更新されてしまうなど、信頼性の低い同定結果に基づいて上限温度が誤ったかたちで更新されることを回避することができるようになる。尚、不凍液の濃度の同定を無効化するとは、同定処理そのものを実行しない場合、同定処理を実行するもののその同定結果を上限温度の更新に反映させない場合の双方を含むこととする。
請求項8に記載の発明は、請求項3〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、前記更新手段は、前記上限温度が高くなるようにこれを更新するときは同上限温度が低くなるようにこれを更新するときと比較してその更新量を小さい値に設定することを要旨とする。
同定される不凍液の濃度に基づいて上限温度を更新する際、その同定精度が低い場合には上限温度を誤って更新する可能性がある点については先に述べた通りである。特に、上限温度を過度に高い温度に誤って更新した場合には、不凍液の局所的な沸騰や、内燃機関の過度な温度上昇といった状況を招くおそれがある。
この点、請求項8に記載の発明では、同定される不凍液の濃度に基づいて上限温度が高くなるようにこれを更新する際には、同上限温度が低くなるようにこれを更新する際と比較してその更新量を小さい値に設定するようにしているため、上述したように上限温度を誤って過度に高い温度に更新したことによって不凍液の局所的な沸騰や内燃機関の過度な温度上昇が発生することを好適に抑制することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、前記ポンプ制御手段は、暖機促進処理が完了した後は機関運転状態に基づいて前記ポンプの目標吐出量を設定するとともにこれに対応する駆動信号を生成しその駆動信号に基づいて前記ポンプを制御するものであって、前記同定手段により同定される不凍液の濃度が高いときには前記目標吐出量が増大する態様にて前記生成される駆動信号を補正するものであることを要旨とする。
不凍液の温度が上限温度に達して暖機促進処理が完了した後、即ち吐出量の制限が解除されてポンプが通常運転に移行した後は、機関運転状態に基づいてポンプの目標吐出量が設定され、更にその目標吐出量に対応する駆動信号が生成される。そして、この駆動信号に基づいてポンプを制御することにより機関運転状態に即した量の不凍液が循環水路において循環するようになる。ここで、不凍液の濃度が高いとき、即ちその粘度が高いときには、こうした循環に際しての圧力損失が大きくなり、ポンプに作用する攪拌抵抗が大きくなる。このため、目標吐出量に対応した駆動信号に基づいてポンプを駆動しても、同ポンプの実回転速度がその目標吐出量を得るための回転速度に達せず、実際の吐出量が目標吐出量を下回る状況が発生し得る。その結果、十分な冷却能力をもって内燃機関を冷却することができず、その過度な温度上昇を招くおそれがある。一方、不凍液の濃度が低いとき、即ちその粘度が低いときには、圧力損失が小さくなり、ポンプに作用する攪拌抵抗が小さくなる。このため、目標吐出量に対応した駆動信号に基づいてポンプを駆動すると、同ポンプの実回転速度がその目標吐出量を得るための回転速度を上回るようになり、実際の吐出量が目標吐出量を上回る状況が発生し得る。その結果、必要以上に高い冷却能力をもって内燃機関を冷却することとなり、その過冷却やこれに起因する熱損失の増大、ひいては燃費の悪化を招くおそれがある。
この点、上記構成によれば、不凍液の濃度が変化した場合であっても、その変化した濃度に応じてポンプの駆動信号を適切に補正することができる。従って、こうした不凍液の濃度変化によりポンプの実際の吐出量とその目標吐出量との間に乖離が生じること抑制することができ、内燃機関を機関運転状態に即した適切な冷却能力をもって冷却することができるようになる。
(第1の実施形態)
以下、この発明の第1の実施形態にかかる車両用内燃機関の冷却装置について図1〜9を併せ参照して説明する。
以下、この発明の第1の実施形態にかかる車両用内燃機関の冷却装置について図1〜9を併せ参照して説明する。
図1に示されるように、内燃機関10、具体的にはそのシリンダブロック11及びシリンダヘッド12の内部には燃焼室14が区画形成されている。また、これらシリンダブロック11及びシリンダヘッド12において燃焼室14の周囲には、同燃焼室14近傍を冷却する冷却水(以下、「不凍液」という)が循環するウォータジャケット13が形成されている。
冷却装置の循環水路20は、大きくは、このウォータジャケット13の他、同ウォータジャケット13から流出する不凍液をラジエータ25を介してサーモスタット24に戻すラジエータ通路22と、このラジエータ通路22から分岐してラジエータ25を迂回する態様でサーモスタット24に接続され、同ウォータジャケット13から流出する不凍液をサーモスタット24に直接戻す迂回通路21とにより構成されている。
この循環水路20の途中には同循環水路20に所定量の不凍液を循環させるためのポンプ23が設けられている。このポンプ23は、モータを駆動源とする電動回転式のポンプであり、このモータの回転速度、即ちポンプ23の回転速度NPが高くなるほどその吐出量は多くなる。また、こうしたポンプ23の回転速度NPはモータの駆動信号、具体的にはモータに供給される電圧のデューティ比D(所定時間当たりにおける電圧印加時間の割合)を変更することにより制御される。従って、デューティ比Dが大きいときほど、ポンプ23の供給電力が大きくなり、ポンプ23による不凍液の吐出量も多くなる。尚、このポンプ23には、その実回転速度NPaを検出するポンプ回転速度センサ96が内蔵されている。
迂回通路21には、廃熱回収器及びEGRクーラ等を含む熱機器31が設けられている。廃熱回収器では排気の熱を利用して不凍液を温度上昇させることより暖機を促進させることができる。また、EGRクーラでは排気通路から吸気通路に戻されるEGRガスが不凍液によって冷却され、EGRガスの導入量を増加させることができる。このように、これら熱機器31と迂回通路21を流通する不凍液との間では熱交換が行われる。
一方、サーモスタット24は、その開度に応じてラジエータ通路22を流通する不凍液の流量を調節する。即ち、不凍液の温度(以下、「不凍液温度θ」という)がサーモスタット24の開弁温度よりも低いときには、同サーモスタット24は閉弁状態となるため、ウォータジャケット13から流出した不凍液はラジエータ25に流入することなく全て迂回通路21に流入するようになる。その一方、不凍液温度θがサーモスタット24の開弁温度より高くなると同サーモスタット24は開弁状態となるため、ウォータジャケット13から流出した不凍液は迂回通路21に加え、ラジエータ25にも流入するようになる。
ラジエータ25は、不凍液と外気との間の熱交換を通じて不凍液を冷却する。また、ラジエータ25には、図示しない電動ファンが取り付けられている。この電動ファンは、車両が長期間にわたって停止状態や極低速走行状態であるとき等、車両走行風の減少によりラジエータ25の放熱能力が低下して不凍液の温度が上昇したときに駆動される。このように電動ファンが駆動されると、ラジエータ25における不凍液と外気との間の熱交換はより促進されるようになる。
内燃機関10には、上述したポンプ回転速度センサ96の他、各種センサが設けられている。例えば、クランクシャフト(図示略)の回転速度、即ち機関回転速度NEを検出するための機関回転速度センサ93や、吸入空気量GAを検出するエアフロメータ94、及び車速SPDを検出する車速センサ95が設けられている。また、シリンダヘッド12においてウォータジャケット13の最も上流側には、不凍液の温度(以下、「不凍液温度θ」という)を検出する水温センサ92が取り付けられている。制御装置91は、これらセンサの検出信号を適宜取り込むことにより、ポンプ23の制御や、熱機器31の温度推定制御、燃料噴射制御等の各種制御を実行する。尚、制御装置91はこうした各種制御のプログラムやその制御による結果等を記憶するためのメモリ91aを備えている。
また、制御装置91は、機関始動時から不凍液温度θを監視し、この不凍液温度θが所定温度(以下、「上限温度θc」という)未満であるときには、ポンプ23の運転を停止して循環水路20における不凍液の循環を停止する処理(以下、「暖機促進処理」という)を実行する。この上限温度θcは、内燃機関10の暖機が十分に進行しておらず、不凍液を循環させて内燃機関10を冷却する必要がない状態にあることを不凍液温度θとの比較のもと判断するための値である。即ち、この上限温度θcよりも不凍液温度θが低い場合には、不凍液を循環させる必要が無いため、暖機促進処理が実行される。この暖機促進処理が実行されることにより、冷却装置の冷却能力が低下するため、内燃機関10の暖機が促進されるようになる。尚、この実施形態においては上限温度θcがサーモスタット24の開弁温度よりも低いことを前提としている。このため、不凍液温度θが上限温度θc未満であるときには、サーモスタット24は閉弁状態に維持される。
ところで、このような冷却装置の循環水路20に不凍液が補充される際、冷却装置の循環水路20に現在貯留されている不凍液とは濃度の異なる、即ちエチレングリコールの濃度が異なる不凍液が補充されることがある。このため、暖機促進処理の実行中に不凍液が沸騰してしまうおそれがある点、及びこうした補充によって不凍液の濃度(以下、「不凍液濃度Wd」という)が最も低下した場合でも局所的な沸騰が生じることのないように上限温度θcを予め低い温度に設定すると、暖機促進処理の効果を十分に発揮することができず、暖機完了前における熱損失の低減や燃費の向上を図ることができなくなる点については上述したとおりである。
そこで、本実施形態においては、機関始動後にこうした暖機促進処理と併せて不凍液濃度Wdを同定する処理(以下、「濃度同定処理」という)を実行し、同処理を通じて同定された不凍液濃度Wdに基づいて上限温度θcを都度更新する処理(以下、「更新処理」という)を実行するようにしている。以下、図2に示されるフローチャートを参照してこうした暖機促進処理、濃度同定処理及び更新処理について説明する。尚、図2に示される一連の処理は制御装置91により所定の制御周期をもって繰り返して実行される。
この一連の処理では、濃度同定処理(ステップS100〜S107)を実行した後、更新処理(ステップS200,S201)を実行する。そしてこれら各処理が終了した後に暖機促進処理(ステップS300)を開始する。
濃度同定処理では、まず現在設定されている上限温度θc、即ち前回の機関停止時に制御装置91のメモリ91aに記憶されていた上限温度θcの読み込みが未完了であるか否かを判断する(ステップS100)。上限温度θcの読み込みが未完了であると判断したとき(ステップS100:YES)、メモリ91aに記憶されている上限温度θcを読み込む(ステップS101)。このように上限温度θcを読み込んだ後、若しくは上限温度θcの読み込みが既に完了していると判断したとき(ステップS100:NO)、不凍液温度θが上限温度θc未満であるか否かを判断する(ステップS102)。
不凍液温度θが上限温度θc以上であると判断したとき(ステップS102:NO)、即ち内燃機関10の暖機がほぼ完了していると判断したときは、暖機促進処理を実行する必要がないため、ポンプ23を通常運転する(ステップS400)。このように通常運転に移行したときは、ポンプ23の吐出量は機関運転状態に基づいて設定されるようになる。尚、この通常運転時におけるポンプ23の詳細な制御手順については後述する。
一方、不凍液温度θが上限温度θc未満であると判断したとき(ステップS102:YES)、次に第1の検出フラグF1が「オフ」であるか否かを判断する(ステップS103)。尚、この第1の検出フラグF1は機関始動開始時にその初期値である「オフ」に設定される。即ち、後述するステップS104以降の各処理が機関始動後に一度も実行されていないときは、第1の検出フラグF1は「オフ」に設定されている。
ここで、第1の検出フラグF1が「オフ」であると判断したとき(ステップS103:YES)、次に同フラグF1を「オン」に設定する(ステップS104)。尚、このように第1の検出フラグF1を「オン」に設定することにより、濃度同定処理(ステップS100〜S107)、更新処理(ステップS200,S201)は機関始動後において1回のみ実行され、その後は暖機促進処理(ステップS300)が実行されるようになる。
このように第1の検出フラグF1を「オン」に設定した後、次にポンプ23の駆動信号、即ちデューティ比Dを「100%」に設定して、予め定められた所定期間、ポンプ23を最大出力で運転する。そして、このようにしてポンプ23を運転したときの指示回転速度NPrに対する実回転速度NPaの低下度合(=NPr−NPa)を第1の回転速度差ΔNP1として検出するとともにこれをメモリ91aに記憶する(ステップS105)。更にこのようにポンプ23を運転したときの不凍液温度θを検出するとともに第1の温度θ1としてメモリ91aに記憶する(ステップS106)。尚、第1の温度θ1は上限温度θcとして設定される得る温度よりも低いため、上述したようなポンプ23の運転はサーモスタット24が閉弁状態にあるときに行われることとなる。尚、上述したように、ポンプ23のデューティ比Dを「100%」に設定して、予め定められた所定期間、ポンプ23を最大出力で運転し、そのときの指示回転速度NPrに対する実回転速度NPaの回転速度差を検出するとともに同回転速度差(例えば「第1の回転速度差ΔNP1」)をそのときの不凍液温度θ(例えば「第1の温度θ1」)とともにこれをメモリ91aに記憶する一連の処理を、以下では「強制駆動処理」という。この処理は濃度同定処理の一部として実行される。
ここで図3のグラフは、こうした強制駆動処理を実行した場合における実回転速度NPaの推移をそのときの不凍液温度θ及び不凍液濃度Wdの推移と併せて示している。
また、同図3において、1点鎖線、実線、2点鎖線は実回転速度NPaの各推移について不凍液濃度Wdが異なる場合の代表例を示している。具体的には、実線は不凍液濃度Wdが不凍液の機能を考慮したときに推奨される標準的な濃度Wd2である場合、1点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも低い濃度Wd3である場合、そして、2点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも高い濃度Wd1である場合をそれぞれ示している。即ちこれら不凍液濃度Wdの各値については、(Wd3<Wd2<Wd1)なる関係が成立している。そして、不凍液温度θが第1の温度θ1である場合、不凍液濃度Wdが高いときほど実回転速度NPaは低下するようになる。これは、不凍液濃度Wdが高いときほど、不凍液が循環水路20を流通する際の圧力損失が大きくなり、ポンプ23に作用する攪拌抵抗が大きくなるためである。また、このような傾向は、不凍液温度θが低いときほど顕著になる。不凍液濃度Wdが同じであっても不凍液温度θが低下するとその粘度は上昇するためである。尚、図3に示される指示回転速度NPr、実回転速度NPa、不凍液温度θ及び不凍液濃度Wdの関係は、上限温度θcがサーモスタット24の開弁温度よりも低く、従って第1の温度θ1もその開弁温度よりも低いため、サーモスタット24が閉弁状態であることを前提にして求められている。
また、同図3において、1点鎖線、実線、2点鎖線は実回転速度NPaの各推移について不凍液濃度Wdが異なる場合の代表例を示している。具体的には、実線は不凍液濃度Wdが不凍液の機能を考慮したときに推奨される標準的な濃度Wd2である場合、1点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも低い濃度Wd3である場合、そして、2点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも高い濃度Wd1である場合をそれぞれ示している。即ちこれら不凍液濃度Wdの各値については、(Wd3<Wd2<Wd1)なる関係が成立している。そして、不凍液温度θが第1の温度θ1である場合、不凍液濃度Wdが高いときほど実回転速度NPaは低下するようになる。これは、不凍液濃度Wdが高いときほど、不凍液が循環水路20を流通する際の圧力損失が大きくなり、ポンプ23に作用する攪拌抵抗が大きくなるためである。また、このような傾向は、不凍液温度θが低いときほど顕著になる。不凍液濃度Wdが同じであっても不凍液温度θが低下するとその粘度は上昇するためである。尚、図3に示される指示回転速度NPr、実回転速度NPa、不凍液温度θ及び不凍液濃度Wdの関係は、上限温度θcがサーモスタット24の開弁温度よりも低く、従って第1の温度θ1もその開弁温度よりも低いため、サーモスタット24が閉弁状態であることを前提にして求められている。
また、同図3ではこうした実回転速度NPaと併せて指示回転速度NPrを示している。この指示回転速度NPrは、ポンプ23を駆動する際のデューティ比Dを「100%」に設定し、空気中で同ポンプ23を運転したとき、即ちポンプ23に作用する攪拌抵抗が通常の使用状態と比較して無視できるほど小さい条件のもと、同ポンプ23を運転したときのその回転速度である。これに対して、実回転速度NPaは、不凍液中でポンプ23を運転したとき、即ち同ポンプ23に不凍液の攪拌抵抗が作用する条件のもと、同ポンプ23を運転したときに検出されるポンプ23の実際の回転速度である。このため、同図3に示されるように、実回転速度NPaは常に指示回転速度NPrよりも低い値となる。また、上述した第1の回転速度差ΔNP1、即ち指示回転速度NPrに対する実回転速度NPaの低下度合は不凍液濃度Wdが低いときほど大きく、不凍液温度θが高くなるほど小さくなる。尚、この図3に示す指示回転速度NPr、実回転速度NPa、不凍液温度θ及び不凍液濃度Wdとの関係は予め実験等を通じて求められ、制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
そして、上述したように第1の回転速度差ΔNP1及び第1の温度θ1をそれぞれ検出してそれらをメモリ91aに記憶した後、図4の演算用マップを参照することにより、これら第1の回転速度差ΔNP1及び第1の温度θ1に対応する現在の不凍液濃度Wdを同定する(ステップS107)。尚、この図4の演算用マップに示される、第1の温度θ1及び第1の回転速度差ΔNP1と不凍液濃度Wdとの関係は、先の図3に示す関係に基づいて生成され、制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
例えば、第1の温度θ1が「所定値θi」、第1の回転速度差ΔNP1が「所定値ΔNPi」である場合、これら各所定値θi,ΔNPiに対応する不凍液濃度Wdは所定値Wdiであると同定する。このように同定される不凍液濃度Wdにかかる所定値Wdiは、同図4に示されるように、(Wd2<Wdi<Wd1)なる関係を満たす値となり、濃度Wd2よりも高く濃度Wd1よりも低い濃度となる。因みに、具体的にこの同定に際しては、例えば、図4に示されるように、圧力損失差ΔΔNPiに対応する不凍液濃度Wd11,Wd12、温度差Δθiに対応する不凍液濃度Wd21,Wd22の各値を用いた四点補間演算を通じて不凍液濃度Wdiを求める、といった方法を採用することができる。
次に、更新処理を実行する。この処理では、まず図5に示される演算用マップを参照して、上限温度θcの最適値(以下、「最適温度θb」という)を不凍液濃度Wdに基づいて算出する(ステップS200)。この最適温度θbは、上述したような不凍液の局所的な沸騰が発生しないことを条件に暖機促進処理を継続することができると判断できる不凍液温度θの最高値である。従って、上限温度θcの更新に際して同上限温度θcがこの最適温度θbと常に等しくなるように更新されるのであれば、上限温度θcと最適温度θbとは同値となる。尚、この演算用マップは制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
図5の演算用マップは、不凍液濃度Wdと最適温度θbとの関係を示している。同図5に示されるように、不凍液濃度Wdが高いときほど最適温度θbは高い温度となるように設定される。これは以下の理由による。即ち、不凍液濃度Wdが高いとその沸点が上昇するため、不凍液温度θがより高い温度に達するまで暖機促進処理を継続して暖機を促進することができる一方、不凍液濃度Wdが低いとその沸点が低下するため、不凍液温度θがより低い時点で不凍液の循環を開始することにより、燃焼室14近傍における不凍液の局所的な沸騰を抑制するためである。
このように最適温度θbを算出した後、上限温度θcが最適温度θbとなるようにこれを更新して(ステップS201)、この処理を一旦終了する。
このように濃度同定処理及び更新処理を通じて上限温度θcを不凍液濃度Wdに適した最適温度と等しくなるようにこれを更新した後は、先のステップS103で第1の検出フラグF1が「オン」である旨判断されるようになるため(ステップS103:NO)、循環水路20における不凍液の循環を停止すべくポンプ23の運転を停止する(ステップS300)。即ち、暖機促進処理を開始する。そして、こうした暖機促進処理の実行に伴って不凍液温度θが上昇し、上限温度θc以上になると、暖機促進処理を終了してポンプ23を通常運転する。
このように濃度同定処理及び更新処理を通じて上限温度θcを不凍液濃度Wdに適した最適温度と等しくなるようにこれを更新した後は、先のステップS103で第1の検出フラグF1が「オン」である旨判断されるようになるため(ステップS103:NO)、循環水路20における不凍液の循環を停止すべくポンプ23の運転を停止する(ステップS300)。即ち、暖機促進処理を開始する。そして、こうした暖機促進処理の実行に伴って不凍液温度θが上昇し、上限温度θc以上になると、暖機促進処理を終了してポンプ23を通常運転する。
次に、通常運転時(ステップS400)におけるポンプ23の詳細な制御手順について、図6に示されるフローチャートを参照して説明する。尚、図6に示される一連の処理は制御装置91により所定の制御周期をもって繰り返して実行される。
この処理が開始されると、制御装置91はその周辺機器を含めた内燃機関10の各種要求に基づいてポンプ23の目標吐出量(最終要求流量Qfin)を算出する。即ち制御装置91はまず、機関要求流量Q1を算出する。この機関要求流量Q1は、内燃機関10、特に燃焼室14近傍を適温に維持することのできる不凍液の循環量であり、機関運転状態に基づいて求められる。具体的には、図7に示される演算用マップを参照して機関回転速度NE及び機関負荷KLに基づいて機関要求流量Q1を算出する(ステップS401)。同図7に示されるように、機関回転速度NEが高いときほど、また機関負荷KLが大きいときほど、機関要求流量Q1が多くなるようにこれを設定する。機関回転速度NEが高く、また機関負荷KLが大きいときほど燃焼室14で時間当たりに発生する熱量が大きく、より高い冷却能力が要求されるためである。ここで、機関負荷KLは、そのときの機関回転速度NEにおいて燃焼室14に流入可能な最大吸入空気量に対する実際の吸入空気量、換言すれば最大燃料噴射量に対する実際の燃料噴射量の割合を意味する。尚、図7に示される演算用マップは制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
次に、図8に示される演算用マップを参照して、ラジエータ25の要求流量(以下、「ラジエータ要求流量Q2」という)を算出する(ステップS402)。同図8は、ラジエータ要求流量Q2及び不凍液温度θと車速SPDの関係を示す演算用マップである。同図8に示されるように、不凍液温度θが所定温度θr1未満であるとき、即ちラジエータ25による不凍液の冷却が不要であるときには、ラジエータ要求流量Q2は「0」に設定される。そして、不凍液温度θが所定温度θr1以上であるときには、ラジエータ要求流量Q2は不凍液温度θが上昇するにつれて徐々に増大する。そして、不凍液温度θが電動ファンの駆動が開始される温度θonに達すると、同電動ファンが駆動状態にある状況のもと、ラジエータ25により最も効率よく不凍液を冷却することのできる流量、換言すれば電動ファンの消費電力量に対するラジエータ25における不凍液の冷却能力が最大となる流量となるようにラジエータ要求流量Q2が設定される。具体的には、不凍液温度θが上昇するにつれてラジエータ要求流量Q2は徐々に多くなるようにこれが設定される。更に、ラジエータ要求流量Q2は車速SPDが高いときほど多くなるように設定される。車速SPDが高いときほど、ラジエータ25に接触する車両走行風が多くなり、不凍液の循環量を増大させることにより効率よく熱交換を行うことができるためである。そして、不凍液温度θが所定温度θr2に達すると、ラジエータ要求流量Q2はその可変領域における最大流量となるように設定される。尚、図8に示される演算用マップは制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
次に、廃熱回収器やEGRクーラ等、熱機器31の温度状態を機関運転状態に基づいて推定し、その推定結果に基づいて熱機器要求流量Q3を算出する(ステップS403)。この熱機器要求流量Q3は、廃熱回収器において不凍液を排気の熱によって温度上昇させることができるとともに、EGRクーラにおいてEGRガスを不凍液によって適切に冷却することのできる量に設定される。
次に、以下の式(1)に示されるように、機関要求流量Q1、ラジエータ要求流量Q2及び熱機器要求流量Q3のうち、最も大きいものを最終要求流量Qfinとして選択する(ステップS404)。
Qfin←MAX[Q1,Q2,Q3] …(1)
そして、ポンプ23の吐出量が最終要求流量Qfinとなるように、ポンプ23を駆動する際のデューティ比Dを算出する(ステップS405)。
次に、算出されたデューティ比Dを不凍液濃度Wdに基づいて補正する(ステップS406)。即ち、不凍液濃度Wdが高いときには、その粘度が高くなるため、循環水路20を流通する際の圧力損失が大きくなる。その結果、ポンプ23に作用する攪拌抵抗が大きくなり、ポンプ23の指示回転速度NPrに対する実回転速度NPaの低下度合が増大する、即ち実際の不凍液の循環量が最終要求流量Qfinを下回ることとなる。このため、不凍液濃度Wdが高いときほど、より多い最終要求流量Qfinに対応した値となるようにデューティ比Dを補正する。例えば、不凍液濃度Wdをパラメータとするとともに基準値を「1.0」とする補正用の関数を予め記憶しておき、その関数から求められる値を算出されたデューティ比Dに乗じることで、デューティ比Dを補正するようにする。そして、この補正したデューティ比Dに基づいてポンプ23を制御した後(ステップS407)、この一連の処理を一旦終了する。尚、最終要求流量Qfinからデューティ比Dを求める際の演算用マップ、更にその求められたデューティ比Dを不凍液濃度Wdに基づいて補正するための関数はいずれも制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
次に、上述した暖機促進処理、濃度同定処理及び更新処理が実行された場合における(a)機関負荷KL、(b)機関回転速度NE、(c)不凍液温度θ、(d)車速SPD及び(e)ポンプ23を駆動する際のデューティ比Dの各推移についてその一例を図9に示す。尚、1点鎖線、実線、2点鎖線はデューティ比Dの各推移について不凍液濃度Wdが異なる場合の代表例を示している。具体的には、実線は不凍液濃度Wdが不凍液の機能を考慮したうえで推奨される標準的な濃度Wd2である場合、1点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも低い濃度Wd3である場合、2点鎖線は不凍液濃度Wdが上記濃度Wd2よりも高い濃度Wd1である場合をそれぞれ示している。またここでは、機関始動後、車両の走行状態が低速走行状態に所定期間維持された後、機関負荷KLが増大して加速走行状態に移行した場合を例に説明する。
同図9に示されるように、内燃機関10の運転が開始されると、上述した強制駆動処理が暖機促進処理に先立って実行される(タイミングt0〜t1)。その後、暖機促進処理が実行されるため、デューティ比Dは「0%」に設定される(タイミングt1〜t2)。この間、機関負荷KLは低負荷走行状態を維持し得る所定量に設定される。また、機関回転速度NEは所定の回転速度に、車速SPDは所定速度に維持される。一方、不凍液温度θは燃焼室14に発生する機関燃焼熱により徐々に上昇する(タイミングt1〜t2)。そして、不凍液温度θが上限温度θcに達すると(タイミングt2)、ポンプ23は通常運転に移行する(タイミングt2〜)。尚、このようにポンプ23が通常運転に移行すると、実際には、循環水路20に滞留する低温の不凍液がウォータジャケット13に一旦流入するため、不凍液温度θは一旦下降し、その後、再び上昇するようになるが、図9(c)ではそうした不凍液温度θの変化の図示は省略している。
この例では、ポンプ23が通常運転に移行すると、まず最終要求流量Qfinとしてラジエータ要求流量Q2が選択される(タイミングt2〜)。即ち、ポンプ23が通常運転に移行したときは、車速SPDが低速走行状態にある状況のもと、不凍液温度θが上昇しているため、ラジエータ要求流量Q2はある程度大きい値となっている。一方、機関負荷KL及び機関回転速度NEは小さいため、機関要求流量Q1は小さい値となる。この結果、ラジエータ要求流量Q2が機関要求流量Q1を上回るようになり、ラジエータ要求流量Q2が最終要求流量Qfinとして選択される。また、ラジエータ要求流量Q2は不凍液温度θの上昇に伴って増大するため、不凍液温度θの上昇に伴って最終要求流量Qfinも増大し、これにつれてデューティ比Dも大きくなる(タイミングt2〜t3)。そして、不凍液温度θが所定温度に収束すると、デューティ比Dも所定の値に収束する(タイミングt3〜t4)。そして、機関負荷KLが増大して車両が加速状態に移行すると(タイミングt4)、機関要求流量Q1が増大してラジエータ要求流量Q2を上回るようになり、最終要求流量Qfinとして機関要求流量Q1が選択されるようになる。従って、機関負荷KL及び機関回転速度NEの増大に伴って最終要求流量Qfinも増大し、これにつれてデューティ比Dも上昇するようになる(タイミングt4〜)。
また、同図9に1点鎖線にて示されるように、不凍液濃度Wdが上記濃度Wd2よりも低い濃度Wd3であるときには、上限温度θcは濃度同定処理及び更新処理を通じて上述した例における温度よりも低い温度θc2に更新されるため、タイミングt2よりも早いタイミングで暖機促進処理が終了するようになる。そして、暖機促進処理が終了した後、即ちポンプ23が通常運転に移行するとデューティ比Dは不凍液濃度Wdが上記濃度Wd2であるときと比較して小さくなるように補正される。
一方、同図9に2点鎖線にて示されるように、不凍液濃度Wdが上記濃度Wd2よりも高い濃度Wd1であるときには、上限温度θcは濃度同定処理及び更新処理を通じて上述した例における温度よりも高い温度θc1に更新されるため、タイミングt2よりも遅いタイミングで暖機促進処理は終了するようになる。そして、暖機促進処理が終了した後、即ちポンプ23が通常運転に移行すると、デューティ比Dは不凍液濃度Wdが上記濃度Wd2であるときと比較して大きくなるように補正される。
以上説明したように本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態によれば、不凍液濃度Wdが高いときには上限温度θcが高くなるようにこれが更新され、不凍液温度θがより高い温度に達するまで暖機促進処理を継続して実行することができる。このため、同処理を通じて効果的に暖機を促進することができるようになる。一方、不凍液濃度Wdが低いときには上限温度θcが低くなるようにこれが更新されるため、内燃機関10の燃焼室14近傍における不凍液の局所的な沸騰を抑制することができる。このように、不凍液濃度Wdが変化したときであっても、その変化した不凍液濃度Wdに応じて暖機促進処理の上限温度θcを適切な値に更新するようにしているため、内燃機関10の燃焼室14近傍等における不凍液の局所的な沸騰を抑制しつつ、機関始動後において暖機を促進することができるようになる。
(1)本実施形態によれば、不凍液濃度Wdが高いときには上限温度θcが高くなるようにこれが更新され、不凍液温度θがより高い温度に達するまで暖機促進処理を継続して実行することができる。このため、同処理を通じて効果的に暖機を促進することができるようになる。一方、不凍液濃度Wdが低いときには上限温度θcが低くなるようにこれが更新されるため、内燃機関10の燃焼室14近傍における不凍液の局所的な沸騰を抑制することができる。このように、不凍液濃度Wdが変化したときであっても、その変化した不凍液濃度Wdに応じて暖機促進処理の上限温度θcを適切な値に更新するようにしているため、内燃機関10の燃焼室14近傍等における不凍液の局所的な沸騰を抑制しつつ、機関始動後において暖機を促進することができるようになる。
(2)また、第1の回転速度差ΔNP1に基づいて不凍液濃度Wdを同定するに際し、この第1の回転速度差ΔNP1と不凍液濃度Wd及び第1の温度θ1との関係を予め記憶し、この記憶される関係と、実際に検出された第1の温度θ1及び第1の回転速度差ΔNP1とを比較することで、不凍液濃度Wdを同定するようにしている。このため、不凍液温度θにより不凍液の粘度が変化した場合であっても、こうした粘度変化に伴って変化するポンプ23の攪拌抵抗、換言すれば循環水路20における圧力損失についても考慮したかたちで不凍液濃度Wdを同定することができ、その同定精度を高めることができるようになる。
(3)また、機関始動後において暖機促進処理に先立ち、即ち暖機促進処理が実行されて不凍液温度θが上昇する前に第1の回転速度差ΔNP1を検出するようにしている。このため、そのときの機関運転時についてみれば不凍液温度θが最も低く、第1の回転速度差ΔNP1が最も大きいときに、これに基づいて不凍液濃度Wdを同定することができ、その同定精度を更に高めることができるようになる。
(4)第1の回転速度差ΔNP1を検出する際、強制駆動処理、即ちデューティ比Dを「100%」に設定し最大出力にてポンプ23を運転するようにしているため、第1の回転速度差ΔNP1が最も大きくなる状況のもとでこれを検出することができるようになる。このため、不凍液濃度Wdの同定精度を一層高めることができるようになる。
(5)不凍液温度θが上限温度θcに達してポンプ23が通常制御に移行した後は、ポンプ23を駆動する際のデューティ比Dについて、不凍液濃度Wdが高いときには大きくなるようにこれを補正する一方、不凍液濃度Wdが低いときには小さくなるようにこれを補正するようにしている。このため、不凍液濃度Wdが変化することによって、ポンプ23に作用する攪拌抵抗が変化したときであっても、不凍液の循環量が最終要求流量Qfinとなるように上記デューティ比Dを適切に補正することができるようになる。この結果、十分な冷却能力を得ることができないことに起因する内燃機関10の過度な温度上昇や、内燃機関10が必要以上に高い冷却能力で冷却されることに起因する熱損失の増大、ひいては燃費の悪化を抑制することができるようになる。
(第2の実施形態)
この発明にかかる第2の実施形態について先の図1及び図2及び図9の他、更に図10〜12を併せ参照して第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、第1の実施形態と同様の処理については、同一のステップ番号を付すことによりその詳細な説明を適宜割愛する。
この発明にかかる第2の実施形態について先の図1及び図2及び図9の他、更に図10〜12を併せ参照して第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、第1の実施形態と同様の処理については、同一のステップ番号を付すことによりその詳細な説明を適宜割愛する。
本実施形態では、上述した強制駆動処理を機関始動操作完了後に実行する他、不凍液温度θが予め定められた第2の温度θ2に達したときにも実行するようにしている。即ち、本実施形態にかかる冷却装置では機関始動から機関停止までの期間に強制駆動処理が2回実行されることとなる。
以下、本実施形態におけるポンプ23の詳細な制御手順について、図10のフローチャートを参照して説明する。尚、同図10に示される一連の処理は、先の図2のフローチャートに示した処理を一部変更したものである。この一連の処理では、濃度同定処理(図2:ステップS100〜S106、図10:ステップS108〜S113)を実行した後、更新処理(図10:ステップS200,S201)を実行する。そして、1回目の強制駆動処理が完了してから2回目の強制駆動処理に続く更新処理が完了するまでの期間、及び同更新処理が完了してから不凍液温度θが上限温度θcに達するまでの期間に、暖機促進処理(ステップS300,S301)を実行する。
より詳細に説明すると、濃度同定処理において、まず制御装置91は、機関始動操作完了後における第1の回転速度差ΔNP1を検出してこれをメモリ91aに記憶した後(図2:ステップS105)、そのときの不凍液温度θを第1の温度θ1としてメモリ91aに記憶する(図2:ステップS106)。そして次に、第2の検出フラグF2が「オフ」であるか否かを判断する(ステップS108)。尚、この第2の検出フラグF2は機関始動開始時にその初期値「オフ」に設定される。
第2の検出フラグF2が「オフ」であると判断したとき(ステップS108:YES)、次に不凍液温度θが第2の温度θ2であるか否かを判断する(ステップS109)。この第2の温度θ2は、上限温度θcとして設定され得る温度よりも低い温度であるとともに第1の温度θ1よりも高い温度である。この第2の温度θ2は予め定められた固定の温度としてメモリ91aに記憶されている。
ここで、不凍液温度θが第2の温度θ2であると判断したとき(ステップS109:YES)、第2の検出フラグF2を「オン」に設定する(ステップS110)。尚、このように第2の検出フラグF2を「オン」に設定することにより、以下で説明する濃度同定処理(ステップS111〜S113)、更新処理(ステップS200,S201)については機関始動後に1回のみ実行されることとなる。
そして、上述した強制駆動処理を実行することにより第2の回転速度差ΔNP2を検出するとともにこれをメモリ91aに記憶する(ステップS111)。続いて、上述した第1の回転速度差ΔNP1と第2の回転速度差ΔNP2との差分(以下、「圧力損失差ΔΔNP」という)を算出する(ステップS112)。このように圧力損失差ΔΔNPを算出した後、第1の温度θ1と第2の温度θ2との温度差(以下、「温度差Δθ」という)とこの圧力損失差ΔΔNPに基づいて不凍液濃度Wdを同定する(ステップS113)。
以下、図11及び図12を参照して、不凍液濃度Wdを同定する際の詳細な手順について説明する。この同図11は、第1の温度θ1及び第2の温度θ2と、第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2と、不凍液濃度Wdとの関係を示している。また同図11において、1点鎖線、実線、2点鎖線は第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2の各推移について不凍液濃度Wdが異なる場合の代表例を示している。具体的には、実線は不凍液濃度Wdが不凍液の機能を考慮したときに推奨される標準的な濃度Wd2である場合、1点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも低い濃度Wd3である場合、そして、2点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも高い濃度Wd1である場合をそれぞれ示している。即ちこれら不凍液濃度Wdの各値については、(Wd3<Wd2<Wd1)なる関係が成立している。
そして、図11に示されるように、第1の温度θ1及び第2の温度θ2が同じであるときは、不凍液濃度Wdが高いときほど第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2は大きくなる。また、このような傾向は第1の温度θ1及び第2の温度θ2が低いときほど顕著になる。この理由は上述した通りである。
ところで、第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2は、不凍液濃度Wdや不凍液温度θが変化することによっても異なる値となるが、仮に不凍液濃度Wdや不凍液温度θが一定であったとしても、ポンプ23の吐出能力にかかる経年変化や個体差、循環水路20についていえばスラッジの蓄積等に起因する流路抵抗の経年変化によっても異なるものとなる。
この例として、不凍液濃度Wdは濃度Wd2で一定であるときに、循環水路20の流路抵抗が上昇した場合における第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2の推移を図11に破線にて示す。流路抵抗が上昇すると、不凍液が循環水路20を循環する際の圧力損失が増大するため、第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2は増大するようになる。図11では、第1の温度θ1における第1の回転速度差ΔNP1が増大して第1の回転速度差ΔNP1´となり、第2の温度θ2における第2の回転速度差ΔNP2も同様に増大して第2の回転速度差ΔNP2´となったときの例を示している。
ここで同図11に示されるように、第1の回転速度差ΔNP1´と第2の回転速度差ΔNP2´との差分(以下、「圧力損失差ΔΔNP´」という)は、第1の回転速度差ΔNP1と第2の回転速度差ΔNP2との差分、即ち圧力損失差ΔΔNPと略同一の値となる。これは、以下の理由による。即ち、指示回転速度NPrに対する実回転速度NPaの低下度合は、不凍液濃度Wdが高いときほど、また不凍液温度θが低いときほど大きくなる。しかしながら、上記流路抵抗については、このように不凍液濃度Wdや不凍液温度θが変化してもこの影響を受けて大きく変化することはなく、少なくとも不凍液濃度Wdや不凍液温度θの変化に起因する第1の回転速度差ΔNP1や第2の回転速度差ΔNP2の変化と比較すれば極めて小さいものとなる。このため、第1の回転速度差ΔNP1と第2の回転速度差ΔNP2との差分をとることで、上記流路抵抗による影響を相殺することができるようになる。またこれは、ポンプ23の吐出能力にかかる経年変化や個体差が存在する場合にあっても程度の差こそあれ同様である。
そこで、本実施形態では、上述したように温度差Δθ及び圧力損失差ΔΔNPをそれぞれ算出してそれらをメモリ91aに記憶した後、図12に記載の演算用マップを参照することにより、これら温度差Δθ及び圧力損失差ΔΔNPに対応する現在の不凍液濃度Wdを同定する(ステップS113)。尚、この図12に示す演算用マップは、温度差Δθ及び圧力損失差ΔΔNPと、不凍液濃度Wdとの関係を示すものであり、先の図11に示す関係に基づいて生成され、制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
例えば、同図12において温度差Δθが「所定値Δθi」、圧力損失差ΔΔNPが「所定値ΔΔNPi」である場合、これら各所定値Δθi,ΔΔNPiに対応する不凍液濃度Wdは所定値Wdiであると同定される。このように同定される不凍液濃度Wdにかかる所定値Wdiは、同図12に示されるように、(Wd2<Wdi<Wd1)なる関係を満たす値となり、濃度Wd2よりも高く濃度Wd1よりも低い濃度であると同定することができる。
そしてこのようにして不凍液濃度Wdを同定した後、次に、更新処理を実行する。即ち、上述したように不凍液濃度Wdに基づいて最適温度θbを算出し(ステップS200)、上限温度θcが最適温度θbとなるようにこれを更新する(ステップS201)。そして、この処理を一旦終了する。
一方、第2の検出フラグF2が「オン」であると判断したとき(ステップS108:NO)、即ち第2の回転速度差ΔNP2が既に求められているとき、或いは不凍液温度θが第2の温度θ2でないと判断したとき(ステップS109:NO)は、いずれもポンプ23の運転を停止する(ステップS301)。即ち、暖機促進処理を実行してこの処理を一旦終了する。
次に、上述した暖機促進処理、濃度同定処理及び更新処理が実行された場合における(c)不凍液温度θ、(e)ポンプ23を駆動する際のデューティ比Dの各推移についてその一例を図9に実線及び2点鎖線にて示す。同図9に示されるように、内燃機関10の運転が開始されると、上述したように強制駆動処理が暖機促進処理に先立って実行される(タイミングt0〜t1)。その後、暖機促進処理が実行されるため、デューティ比Dは「0%」に設定される(タイミングt1〜t5)。そして、不凍液温度θが燃焼室14に発生する機関燃焼熱により徐々に上昇して第2の温度θ2に達したとき、強制駆動処理が再度実行される(タイミングt5〜t6)。その後、再び暖機促進処理が実行されるようになる(タイミングt6〜t2)。そして、不凍液温度θが上昇して上限温度θcに達すると、それ以降、ポンプ23は通常運転に移行する(タイミングt2〜)。尚、2回目の強制駆動処理が実行された場合にあっても、ポンプ23が通常運転に移行した場合と同様に、循環水路20に滞留する低温の不凍液がウォータジャケット13に一旦流入するため、不凍液温度θは一旦下降し、その後、再び上昇するようになるが、図9(c)ではそうした不凍液温度θの変化の図示は省略している。
以上説明した本実施形態によれば、先の(1)〜(5)に記載した作用効果に加え、更に以下に記載の作用効果を奏することができる。
(6)本実施形態では、不凍液温度θが第1の温度θ1から第2の温度θ2に変化することに伴う第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2の変化量(圧力損失差ΔΔNP)を予め演算用マップとしてメモリ91aに記憶しておき、これと実際に検出された温度差Δθ及び圧力損失差ΔΔNPとを比較することで不凍液濃度Wdを同定するようにしている。これにより、不凍液濃度Wdを同定するにあたって、ポンプ23の吐出能力の個体差や循環水路20の流路抵抗の経年変化が第1及び第2の回転速度差ΔNP1,ΔNP2に与える影響を相殺することができる。このため、これらの影響を極力排除して、更に高い精度をもって不凍液濃度Wdを同定することができるようになる。
(6)本実施形態では、不凍液温度θが第1の温度θ1から第2の温度θ2に変化することに伴う第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2の変化量(圧力損失差ΔΔNP)を予め演算用マップとしてメモリ91aに記憶しておき、これと実際に検出された温度差Δθ及び圧力損失差ΔΔNPとを比較することで不凍液濃度Wdを同定するようにしている。これにより、不凍液濃度Wdを同定するにあたって、ポンプ23の吐出能力の個体差や循環水路20の流路抵抗の経年変化が第1及び第2の回転速度差ΔNP1,ΔNP2に与える影響を相殺することができる。このため、これらの影響を極力排除して、更に高い精度をもって不凍液濃度Wdを同定することができるようになる。
(第3の実施形態)
以下、この発明にかかる第3の実施形態について先の図1及び図2の他、更に図13を併せ参照して第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、本実施形態において、上述した第1の実施形態と同様の処理については、同じステップ番号を付すことにより詳細な説明を適宜割愛する。
以下、この発明にかかる第3の実施形態について先の図1及び図2の他、更に図13を併せ参照して第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、本実施形態において、上述した第1の実施形態と同様の処理については、同じステップ番号を付すことにより詳細な説明を適宜割愛する。
図13は、先の図2のフローチャートに示した処理を一部変更したものである。この処理において、まず制御装置91は、第1の検出フラグF1を「オン」に設定し(図2:ステップS104)、第1の温度θ1が所定温度θx未満であるか否かを判断する(ステップS600)。第1の温度θ1が所定温度θx以上であると判断したとき(ステップS600:NO)、図2に示される以下の処理(ステップS105〜S107,S200,S201)を実行することなく、この処理を一旦終了する。このように処理が終了された場合には、その後の制御周期では第1の検出フラグF1が既に「オン」に設定されていることから先のステップS103では常に否定判定されるようになる。従って、ステップS103の否定判定を経てステップS300の処理、暖機促進処理が常に実行されることとなる。即ち、このときの機関運転時においては不凍液濃度Wdの同定がなされることはない。
このように第1の温度θ1が所定温度θx以上であると判断したときに、濃度同定処理を引き続き実行しないようにしているのは、以下の理由による。即ち、高温再始動時など、第1の温度θ1が高いときには、不凍液の粘度が低く、第1の回転速度差ΔNP1が小さい値となるため、不凍液濃度Wdを同定する際の精度が低いものとなることが懸念される。このため、本実施形態においては、このように不凍液濃度Wdを同定する際の精度が低く、その同定結果の信頼性が保証できなくなる不凍液温度θを所定温度θxとして設定し、第1の温度θ1がこの所定温度θx以上であるときには、濃度同定処理を実行しないようにして、信頼性の低い不凍液濃度Wdに基づいて上限温度θcが更新されないようにしている。
一方、第1の温度θ1が所定温度θx未満であると判断したときは(ステップS600:YES)、第1の実施形態と同様に、ステップS105以降の処理を順次実行する。
以上説明したように本実施形態によれば、上記実施形態において(1)〜(5)に記載したものに加え、更に以下の作用効果を奏することができる。
以上説明したように本実施形態によれば、上記実施形態において(1)〜(5)に記載したものに加え、更に以下の作用効果を奏することができる。
(7)本実施形態では、第1の温度θ1が所定温度θx以上であるとき、換言すれば第1の回転速度差ΔNP1が小さいために不凍液濃度Wdを同定する際の精度が低く、その同定結果の信頼性が保証できないときには、濃度同定処理を実行せず、その同定結果に基づく上限温度θcの更新も行わないようにしている。このため、例えば、上限温度θcがその最適値から乖離するような態様で更新されてしまうなど、上限温度θcが誤ったかたちで更新されてしまうことを抑制することができるようになる。
(第4の実施形態)
以下、この発明にかかる第4の実施形態について先の図1及び図2の他、更に図14〜16を併せ参照して第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、本実施形態において、上述した第1の実施形態と同様の処理については、同じステップ番号を付すことにより詳細な説明を適宜割愛する。
以下、この発明にかかる第4の実施形態について先の図1及び図2の他、更に図14〜16を併せ参照して第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、本実施形態において、上述した第1の実施形態と同様の処理については、同じステップ番号を付すことにより詳細な説明を適宜割愛する。
本実施形態では、更新処理を実行するにあたって、現在設定されている上限温度θcの更新量を第1の温度θ1に基づき変更するようにし、上限温度θcがその不凍液濃度Wdに対応した最適温度θbに漸近させる処理、即ち徐変処理を併せて実行するようにしている。図14は、先の図2のフローチャートに示した処理を一部変更したものである。同図14に示されるように、この処理では、不凍液濃度Wdに基づいて最適温度θbを算出した後(図2:ステップS200)、徐変処理における徐変係数nを第1の温度θ1に基づいて図15の演算用マップを参照することにより算出する(ステップS202)。尚、同図15に示される演算用マップは、第1の温度θ1と徐変係数nとの関係を示すものであり、制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
同図15に記載されるように、第1の温度θ1が高いときほど、徐変係数nは大きくなるように設定される。尚、現在設定されている上限温度θcよりも不凍液の補充による濃度変化に対応して新たに求められた最適温度θbの方が高いときに選択される徐変係数nの推移を実線で、最適温度θbが低いときに選択される徐変係数nの推移を1点鎖線で示す。
そして、以下の式(2)に基づいて上限温度θcを更新する(ステップS203)。
θc(i)←{(n−1)・θc(i−1)+最適温度θb}/n …(2)
θc(i):今回更新される上限温度
θc(i−1):前回までに設定されていた上限温度
上式(2)に示されるように、ここでは、徐変処理として最適温度θbに対して加重平均処理、いわゆる、なまし処理を行うことにより上限温度θc(i)を算出するようにしている。具体的には、前回までに設定されていた上限温度θc(i−1)に対して「(n−1)/n」、最適温度θbに対して「1/n」をそれぞれ乗じて重み付けを行い、それらを加算して上限温度θc(i−1)を新たな上限温度θc(i)に更新するようにしている。従って、この徐変係数nが大きいときほど、上限温度θcは不凍液濃度Wdに対応した最適温度θbを収束値として緩やかに変化するようになる。
θc(i)←{(n−1)・θc(i−1)+最適温度θb}/n …(2)
θc(i):今回更新される上限温度
θc(i−1):前回までに設定されていた上限温度
上式(2)に示されるように、ここでは、徐変処理として最適温度θbに対して加重平均処理、いわゆる、なまし処理を行うことにより上限温度θc(i)を算出するようにしている。具体的には、前回までに設定されていた上限温度θc(i−1)に対して「(n−1)/n」、最適温度θbに対して「1/n」をそれぞれ乗じて重み付けを行い、それらを加算して上限温度θc(i−1)を新たな上限温度θc(i)に更新するようにしている。従って、この徐変係数nが大きいときほど、上限温度θcは不凍液濃度Wdに対応した最適温度θbを収束値として緩やかに変化するようになる。
第1の温度θ1が高いときは、不凍液濃度Wdの同定精度が低いため、徐変係数nは大きい値となるように設定される。このように設定される徐変係数nに基づいて徐変処理を行うことで、上述したように上限温度θc(i)に対する最適温度θbの影響は小さくなるため、不凍液濃度Wdの変化に対する上限温度θc(i)の追従性は低下するようになる。一方、第1の温度θ1が低いときは、不凍液濃度Wdの同定精度が高いため、徐変係数nは小さい値となるように設定される。このように設定される徐変係数nに基づいて徐変処理を行うことで、上限温度θc(i)に対する最適温度θbの影響は大きくなるため、不凍液濃度Wdの変化に対する上限温度θc(i)の追従性は上昇するようになる。
ところで、上述したように同定される不凍液濃度Wdに基づいて上限温度θcを更新する際、その同定精度が低い場合は、上限温度θcを誤って更新してしまう可能性がある。特に、上限温度θcを誤って過度に高い温度に更新した場合には、不凍液の局所的な沸騰や、内燃機関10の過度な温度上昇といった状況を招くおそれがある。これに対して、上限温度θcを誤って過度に低い温度に更新した場合には、確かに熱損失の向上や燃費の改善については期待できないとはいえ、上述した場合のように内燃機関10に対して熱的な悪影響を及ぼすことがない。
このため、本実施形態では、同図15に示されるように、第1の温度θ1が同じであっても、現在設定されている上限温度θc(i−1)よりも最適温度θbの方が高いときは、上限温度θc(i−1)よりも最適温度θbの方が低いときと比較して、徐変係数nが大きくなるようにこれを設定するようにしている。これにより、上限温度θc(i−1)が高くなるようにこれを更新する場合は、上限温度θc(i−1)が低くなるようにこれを更新する場合と比較して、その更新量が小さくなる。制御装置91は、このように上限温度θcを更新し、この処理を一旦終了する。
図16に、不凍液濃度Wdが変化した後、徐変処理が繰り返し実行された場合、即ち機関始動が繰り返し実行されたことに伴って上限温度θcが逐次更新された場合における(a)不凍液濃度Wd、(b)上限温度θc及び(c)第1の温度θ1の各推移についてその一例を示す。1点鎖線、2点鎖線、実線は上限温度θcの各推移について第1の温度θ1が異なる場合の代表例を示している。具体的には、1点鎖線は第1の温度θ1が相対的に低い温度θγである場合、2点鎖線は第1の温度θ1が相対的に高い温度θαである場合、実線は第1の温度θ1が上記温度θγである状況で機関始動が所定回数(nα)繰り返され、それ以降、第1の温度θ1が上記温度θαである状況のもと、機関始動が行われた場合の上限温度θc及び第1の温度θ1の各推移をそれぞれ示している。また、このような徐変処理を実行しない場合における上限温度θcの推移を破線にて示している。
同図16に示されるように、不凍液濃度Wdが上昇した後に同濃度Wdが一定の状況のもとで機関始動が繰り返されると、上限温度θcはその変化速度は異なるものの最終的にその最適温度θbに収束するようになる。この際、第1の温度θ1が相対的に高い状態のもとで機関始動が繰り返されると、上限温度θcは2点鎖線で示されるようにその最適温度θbに対して緩やかに収束するようになる。その一方、第1の温度θ1が相対的に低い状態のもとで機関始動が繰り返されると、上限温度θcはその最適温度θbに対して速やかに収束するようになる。また、実線にて示されるように、第1の温度θ1が高い状態のもとで機関始動が繰り返されていても、第1の温度θ1が低い状態のもとで機関始動が行われるようになると(機関始動回数が「nα」以上のとき)、上限温度θcはその最適温度θbに速やかに収束するようになる。尚、破線にて示されるように、このような徐変処理を実行しない場合は、上限温度θcは、第1の温度θ1の高低、換言すれば不凍液濃度Wdの同定精度にかかわらず、不凍液濃度Wdが変化した後の最初の機関始動後に最適温度θbとなるように更新される。
以上説明したように本実施形態によれば、第1の実施の形態において(1)〜(5)に記載したものに加え、更に以下の作用効果を奏することができる。
(8)本実施形態によれば、第1の温度θ1が高いとき、即ち不凍液濃度Wdの同定精度が低いときは、現在設定されている上限温度θc(i−1)を更新する際の更新量を小さくしているため、上限温度θcは緩やかに最適温度θbに収束するようになる。一方、第1の温度θ1が低いとき、即ち第1の温度θ1が高い時と比較して不凍液濃度Wdの同定精度が高いときは、現在設定されている上限温度θc(i−1)を更新する際の更新量を大きくしているため、上限温度θcは最適温度θbに速やかに収束するようになる。このように、不凍液濃度Wdを同定する際の精度が低い可能性があるときには緩やかに、精度が高いと想定されるときには速やかに、といったようにその同定精度に応じたかたちで現在設定されている上限温度θc(i−1)を機関始動が繰り返される度に適切に更新することができるようになる。
(8)本実施形態によれば、第1の温度θ1が高いとき、即ち不凍液濃度Wdの同定精度が低いときは、現在設定されている上限温度θc(i−1)を更新する際の更新量を小さくしているため、上限温度θcは緩やかに最適温度θbに収束するようになる。一方、第1の温度θ1が低いとき、即ち第1の温度θ1が高い時と比較して不凍液濃度Wdの同定精度が高いときは、現在設定されている上限温度θc(i−1)を更新する際の更新量を大きくしているため、上限温度θcは最適温度θbに速やかに収束するようになる。このように、不凍液濃度Wdを同定する際の精度が低い可能性があるときには緩やかに、精度が高いと想定されるときには速やかに、といったようにその同定精度に応じたかたちで現在設定されている上限温度θc(i−1)を機関始動が繰り返される度に適切に更新することができるようになる。
(9)同定される不凍液濃度Wdに基づいて現在設定されている上限温度θc(i−1)を更新する際、その同定精度が低い場合には現在設定されている上限温度θc(i−1)を誤って更新する可能性がある。特に、現在設定されている上限温度θc(i−1)を過度に高い温度に誤って更新した場合には、不凍液の局所的な沸騰や、内燃機関10の過度な温度上昇といった状況を招くおそれがある。本実施形態では、現在設定されている上限温度θc(i−1)が高くなるようにこれを更新する場合、上限温度θc(i−1)が低くなるようにこれを更新する場合と比較してその更新量を小さい値に設定するようにしているため、上限温度θc(i−1)を誤って過度に高い温度に更新したことによって不凍液の局所的な沸騰や内燃機関10の過度な温度上昇が発生することを好適に抑制することができる。
尚、本発明の実施態様は、上記実施形態にて例示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示されるように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例を適宜組み合わせた態様にて実施することもできる。
(a)第4の実施形態において、新たに求められた最適温度θbが現在設定されている上限温度θcよりも高いときには、これが低いときよりも徐変係数nが大きくなるように設定したが、本発明はこれに限られるものではない。即ち、徐変係数nは同一の値となるようにして、この発明を実施するようにしてもよい。
(b)第1の実施形態又は第2の実施形態において上限温度θcを更新する際の態様を以下のように変更するようにしてもよい。即ち、現在設定されている上限温度θcが最適温度θbよりも低いときにはこの上限温度θcに予め定められた所定値を加算する一方、現在設定されている上限温度θcが最適温度θbよりも高いときにはこの上限温度θcから予め定められた所定値を減算することで、上限温度θcを徐々に最適温度θbに収束させるようにしてもよい。そして、上限温度θcに所定値を加算する場合には、加算後の上限温度が最適温度θbを上回ったときに、同上限温度と最適温度θbとが等しい値となるようにしてもよい。一方、上限温度θcから所定値を減算する場合には、加算後の上限温度が最適温度θbを下回ったときに、同上限温度と最適温度θbとが等しい値となるようにしてもよい。
またこの場合は、上限温度θcが最適温度θbに達した時点で更新を終了するようにする。この変形例においても、不凍液濃度Wdの同定精度が低い場合に、上限温度θcがその最適温度θbと大きく異なる値に誤って更新されてしまうことを抑制することができるようになる。
(c)上記変形例(b)において、これを第1の実施形態に適用する場合は、第1の温度θ1が高いときほど、上記所定値が小さくなるようにしてもよい。また、同変形例を第2の実施形態に適用する場合は、第1の温度θ1と第2の温度θ2との温度差Δθが小さいときほど、上記所定値が小さくなるようにしてもよい。本変形例によれば、第1の温度θ1が高いとき及び温度差Δθが小さいとき、即ち不凍液濃度Wdの同定精度が低い可能性があるときは、現在設定されている上限温度θcを更新する際の更新量が小さくなる。このため、不凍液濃度Wdを同定する際の精度が保証できない状況のもと、誤ったかたちで上限温度θcが更新されてしまうことを抑制することができるようになる。
(d)上記各変形例(b),(c)において、最適温度θbが現在設定されている上限温度θcよりも高いときには、最適温度θbが現在設定されている上限温度θcよりも低いときと比較して、上記所定値が小さくなるようにしてもよい。本変形例によれば、現在設定されている上限温度θcが過度に高い温度に誤って更新されることが抑制されるため、不凍液の局所的な沸騰や、内燃機関10の過度な温度上昇が発生することを回避することができるようになる。
(e)内燃機関10の運転が停止された後、不凍液温度θを監視し、同不凍液温度θが低下して予め定められた温度、具体的には第1の温度θ1に基づく不凍液濃度Wdの同定精度が十分に高いと想定される温度にまで低下したときに、濃度同定処理を実行するようにしてもよい。本変形例によれば、不凍液濃度Wdの同定精度を高めることができるようになる。また、内燃機関10の運転が停止されてからの経過時間を計時し、この時間が予め定められた所定の時間、具体的には第1の温度θ1に基づく不凍液濃度Wdの同定精度が十分に高いと想定される温度にまで不凍液温度θが低下するのに必要な時間が経過した後、濃度同定処理を実行するようにしてもよい。本変形例においても、不凍液濃度Wdの同定精度が高いと想定される状況のもと、濃度同定処理を実行することができるため、その同定精度を高めることができるようになる。また、このように内燃機関10の運転の停止中に濃度同定処理を実行する場合は、同定された不凍液濃度Wdに基づいて算出される上限温度θcを次回の機関運転時に実行される暖機促進処理に反映することができる。
(f)上記変形例(d)において、次回の機関始動後に濃度同定処理を実行して、機関停止中に同定した不凍液濃度Wdと、この機関始動後に同定した不凍液濃度Wdとを比較し、これらの差が所定値以上であるときには、機関停止中に同定した不凍液濃度Wdを無効化するようにしてもよい。本変形例によれば、機関停止中に不凍液濃度Wdを同定した後、現在冷却装置の循環水路20に貯留されている不凍液とはエチレングリコールの濃度が異なる不凍液が補充されるような場合であっても、誤ったかたちで上限温度θcが更新されてしまうことを回避することができるようになる。
(g)上述した変形例を含め各実施形態では、機関始動後、暖機促進処理の実行に先立って第1の温度θ1及び第1の回転速度差ΔNP1を検出するようにしているが、機関始動後、暖機促進処理が開始されて所定期間が経過した後に強制駆動処理を実行して、第1の温度θ1及び第1の回転速度差ΔNP1を検出するようにしてもよい。本変形例においても、上記(1)、(2)、(4)及び(5)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
(h)また、不凍液濃度Wdがその可変領域における最大濃度(以下、「基準濃度Wdbase」という)である条件のもと、ポンプ23を運転したときのその回転速度を指示回転速度NPrとし、この指示回転速度NPrに対する実回転速度NPaの上昇度合(=NPa−NPr)を第1の回転速度差ΔNP1として検出するようにしてもよい。以下、本変形例における濃度同定処理を第1の実施形態に適用した例について図17及び図18を参照して説明する。ここで図17のグラフは、本変形例において、上述したような強制駆動処理を実行した場合における実回転速度NPaの推移をそのときの不凍液温度θ及び不凍液濃度Wdの推移と併せて示している。また、同図17において、実線、1点鎖線、2点鎖線は実回転速度NPaの各推移について不凍液濃度Wdが異なる場合の代表例を示している。実線は不凍液濃度Wdが不凍液の機能を考慮したときに推奨される標準的な濃度Wd2である場合、1点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも低い濃度Wd3である場合、そして、2点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも高い濃度Wd1である場合をそれぞれ示している。即ちこれら不凍液濃度Wdの各値については、(Wd3<Wd2<Wd1)なる関係が成立している。尚、破線は不凍液濃度Wdが基準濃度Wdbaseである場合の実回転速度NPaの推移、即ち指示回転速度NPrの推移を示している。そして、不凍液温度θが第1の温度θ1であるとした場合、不凍液濃度Wdが低いときほど実回転速度NPaは上昇するようになる。また、このような傾向は、不凍液温度θが低いときほど顕著になる。即ち、第1の回転速度差ΔNP1は、不凍液濃度Wdが低いときほど大きく、不凍液温度θが高くなるほど小さくなる。
そして、上述したように第1の回転速度差ΔNP1及び第1の温度θ1をそれぞれ検出した後、図18の演算用マップを参照することにより、これら第1の回転速度差ΔNP1及び第1の温度θ1に対応する現在の不凍液濃度Wdを同定する。尚、この図18に示す演算用マップは、第1の温度θ1、第1の回転速度差ΔNP1と、不凍液濃度Wdとの関係を示すものであり、先の図17に示す関係に基づいて生成され、制御装置91のメモリ91aに記憶されている。
例えば、第1の温度θ1が「所定値θi」、第1の回転速度差ΔNP1が「所定値ΔNPi」である場合、これら各所定値θi,ΔNPiに対応する不凍液濃度Wdは所定値Wdiであると同定する。このように同定される不凍液濃度Wdにかかる所定値Wdiは、同図18に示されるように、(Wd3<Wdi<Wd2)なる関係を満たす値となり、濃度Wd3よりも高くWd2よりも低い濃度となる。また、第2の実施形態において第2の温度θ2及び第2の回転速度差ΔNP2から不凍液濃度Wdを同定する場合も含め、上述した各変形例を含めた各実施形態においても同様に、図17,18に記載のグラフ及び演算用マップを用いて本変形例にて説明した濃度同定処理を適用することができる。
(i)また、不凍液濃度Wdがその可変領域における最も標準的な濃度(以下、「標準濃度Wdstd」という)である条件のもと、ポンプ23を運転したときのその回転速度を指示回転速度NPrとし、この指示回転速度NPrに対する実回転速度NPaの乖離度合を第1の回転速度差ΔNP1として検出するようにしてもよい。以下、本変形例における濃度同定処理を第1の実施形態に適用した例について図19及び図20を参照して説明する。図19のグラフは、本変形例において、上述した強制駆動処理を実行した場合における実回転速度NPaの推移をそのときの不凍液温度θ及び不凍液濃度Wdの推移と併せて示している。また、同図19において、実線、1点鎖線、2点鎖線は実回転速度NPaの各推移について不凍液濃度Wdが異なる場合の代表例を示している。具体的には、実線は不凍液濃度Wdが標準濃度Wdstdである場合、1点鎖線は不凍液濃度Wdが標準濃度Wdstdよりも低い濃度(Wd1,Wd2)である場合、2点鎖線は不凍液濃度Wdが標準濃度Wdstdよりも高い濃度(Wd3,Wd4)である場合をそれぞれ示している。即ちこれら不凍液濃度Wdの各値については、(Wd1<Wd2<Wdstd<Wd3<Wd4)なる関係が成立している。
そして、不凍液温度θが第1の温度θ1であるとしたとき、不凍液濃度Wdが標準濃度Wdstdよりも低い値(Wd1,Wd2)である場合、実回転速度NPaは、指示回転速度NPrより高くなる。また、この実回転速度NPaの指示回転速度NPrに対する上昇度合(=NPa−NPr)を第1の回転速度差ΔNP1とすると、その値は、同濃度Wdが低いときほど大きくなる。一方、不凍液濃度Wdが標準濃度Wdstdよりも高い値(Wd3,Wd4)である場合、実回転速度NPaは、指示回転速度NPrより低くなる。また、この実回転速度NPaの指示回転速度NPrに対する低下度合(=NPr−NPa)を第1の回転速度差ΔNP1とすると、その値は、同濃度Wdが高いときほど大きくなる。そして、上述したように第1の回転速度差ΔNP1及び第1の温度θ1を検出した後、図20の演算用マップを参照することにより、これら第1の回転速度差ΔNP1及び第1の温度θ1に対応する現在の不凍液濃度Wdを同定する。
例えば、実回転速度NPaが指示回転速度NPrよりも高いときに、第1の温度θ1が「所定値θi」、第1の回転速度差ΔNP1が「所定値ΔNPi1」である場合、これら各所定値θi,ΔNPi1に対応する不凍液濃度Wdは所定値Wdi1であると同定する。このように同定される不凍液濃度Wdにかかる所定値Wdi1は、同図20に示されるように、(Wd1<Wdi1<Wd2)なる関係を満たす値となり、濃度Wd2よりも高く濃度Wd1よりも低い濃度となる。また例えば、実回転速度NPaが指示回転速度NPrよりも低いときに、第1の温度θ1が「所定値θi」、第1の回転速度差ΔNP1が「所定値ΔNPi2」である場合、これら各所定値θi,ΔNPi2に対応する不凍液濃度Wdは所定値Wdi2であると同定する。このように同定される不凍液濃度Wdにかかる所定値Wdi2は、同図20に示されるように、(Wd3<Wdi2<Wd4)なる関係を満たす値となり、濃度Wd3よりも高くWd4よりも低い濃度となる。尚、この図20に示す演算用マップは、第1の温度θ1及び第1の回転速度差ΔNP1と、不凍液濃度Wdとの関係を示すものであり、先の図19に示す関係に基づいて生成され、制御装置91のメモリ91aに記憶されている。また、第2の実施形態において第2の温度θ2及び第2の回転速度差ΔNP2から不凍液濃度Wdを同定する場合も含め、上述した各変形例においても同様に、図19,20に記載のグラフ及び演算用マップを用いて本変形例にて説明した濃度同定処理を適用することができる。
(j)不凍液の補充に伴って不凍液濃度Wdの変化が変化した場合、その変化量(=補充後の不凍液濃度Wd−補充前の不凍液濃度Wd 以下、「不凍液濃度変化量ΔWd」という)に基づいて、ポンプ23が通常運転に移行した後におけるポンプ23のデューティ比Dを補正するようにしてもよい。図21に示される演算用マップは、この変形例におけるポンプ23を駆動する際のデューティ比Dの補正量Kと不凍液濃度変化量ΔWdの関係を示している。図21において、破線で示される縦線「0」より右側の領域は不凍液の補充に伴って不凍液濃度Wdが上昇した場合、左側の領域は不凍液の補充に伴って不凍液濃度Wdが低下した場合を示す。本変形例では、同図21を参照して求められた補正量Kをポンプ23を駆動する際のデューティ比Dに乗じることで、ポンプ23を駆動する最終的なデューティ比Dを求めるようにする。
図21に示されるように、不凍液の補充に伴って不凍液濃度Wdが上昇した場合は、その上昇量が大きいときほど、即ちポンプ23に作用する攪拌抵抗の上昇量が大きいときほど、補正量Kは大きくなるように設定される。一方、不凍液の補充に伴って不凍液濃度Wdが低下した場合は、その低下量が大きいときほど、即ちポンプ23に作用する攪拌抵抗の低下量が大きいときほど、補正量Kは小さくなるように設定される。本変形例によれば、不凍液の補充に伴う不凍液濃度Wdの変化量に応じたかたちでポンプ23を駆動するデューティ比Dを補正することができるため、十分な冷却能力を得ることができないことに起因する内燃機関10の過度な温度上昇や、内燃機関10が必要以上に高い冷却能力で冷却されることに起因する熱損失の増大、ひいては燃費の悪化を抑制することができるようになる。
(k)第2の実施形態及びこれに対応する上述した変形例において、第2の温度θ2を更新後の上限温度θcに応じて上述した条件を満たしつつその近傍の温度となるようにこれを設定するようにしてもよい。本変形例によれば、第2の温度θ2と第1の温度θ1との温度差Δθがその機関運転時において最も大きくなるようにこれらを設定することができる。このため、第1の回転速度差ΔNP1と第2の回転速度差ΔNP2との差、即ち圧力損失差ΔΔNPが大きくなり、濃度同定処理の同定精度を高めることができるようになる。
但し、こうした変形例においては以下の懸念がある。図22は、第1の温度θ1及び第2の温度θ2と、第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2と、不凍液濃度Wdとの関係を示している。図22において、1点鎖線、実線、2点鎖線は第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2の各推移について不凍液濃度Wdが異なる場合の代表例を示している。具体的には、実線は不凍液濃度Wdが不凍液の機能を考慮したときに推奨される標準的な濃度Wd2である場合、1点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも低い濃度Wd3である場合、そして、2点鎖線は不凍液濃度Wdが標準的な濃度Wd2よりも高い濃度Wd1である場合をそれぞれ示している。即ちこれら不凍液濃度Wdの各値については、(Wd3<Wd2<Wd1)なる関係が成立している。
そして、例えば、図22に示されるように、(A)第1の温度θ1が「所定値θi」、温度差Δθが「所定値Δθi」、第1の回転速度差が「ΔNPi」である場合にあって、そのときの不凍液濃度Wdが濃度Wd2である場合と、(B)第1の温度θ1が所定値θiよりも高い「所定値θi+1」、温度差Δθが「所定値Δθi」、第1の回転速度差が「ΔNPi」である場合にあって、不凍液濃度Wdが濃度Wd1である場合とについてみると、不凍液濃度Wdが異なるのにもかかわらず、温度差Δθ(所定値Δθi)及び圧力損失差ΔΔNP(ΔΔNPi)は同じ値となる。即ち、温度差Δθ及び圧力損失差ΔΔNPに基づいて不凍液濃度Wdが一義的に決まらないこととなり、第2の実施形態で説明した方法によっては不凍液濃度Wdを同定することができないこととなる。
そこで、本変形例においては、図23に示されるように、第1の温度θ1と第2の温度θ2との温度差Δθ、及び圧力損失差ΔΔNPと不凍液濃度Wdとの関係を示す演算用マップを第1の温度θ1がとり得る複数の温度域(θi〜θi+n)に対応してそれぞれ予め記憶しておき、濃度同定処理を実行する際に検出される第1の温度θ1をパラメータとして、参照する演算用マップを切り換えるようにしている。尚、この図23の演算用マップに示される温度差Δθ及び圧力損失差ΔΔNPと不凍液濃度Wdとの関係は、制御装置91のメモリ91aに記憶されている。本変形例において、第1の温度θ1が高い温度域にあるときに選択されるマップでは、これが低い温度域にあるときに選択されるマップと比較して、温度差Δθの変化量に対する圧力損失差ΔΔNPの変化量は小さくなるように設定されている。温度差Δθの変化量が同じである場合、第1の温度θ1が高いときは、これが低いときと比較して、圧力損失差ΔΔNPは大きく変化するためである。これにより、不凍液濃度Wdを的確に同定することができるようになる。尚、この変形例では、参照する演算マップを複数用意する際のパラメータとして第1の温度θ1を採用する場合について例示したが、第1の温度θ1に代えて第2の温度θ2を採用することもできる。
(l)上記変形例(k)に記載のように第2の温度θ2を上限温度θcの更新に併せてその近傍の温度となるようにこれを可変設定する場合、第1の温度θ1と第2の温度θ2との温度差Δθに基づいて、徐変処理を実行する際の徐変係数nを設定することもできる。図24に示される演算用マップは、この変形例における温度差Δθ及び第1の温度θ1と徐変係数nとの関係を示すものであり、この関係は予め制御装置91のメモリ91aに記憶されている。同図24に示されるように、温度差Δθが小さく、また第1の温度θ1が高いときほど徐変係数nは大きくなるように設定されている。尚、現在設定されている上限温度θcよりも最適温度θbの方が高いときに選択される徐変係数nの推移を実線で、上限温度θcよりも最適温度θbの方が低いときに選択される徐変係数nを1点鎖線で示す。
徐変係数nが算出されると、制御装置91は、先に示した式(2)に基づいて上限温度θc(i)を更新する。
上式(2)に示されるように、本変形例では、徐変処理として最適温度θbに対してなまし処理を行うことにより、上限温度θc(i)を算出するようにしている。上述のように、徐変係数nが大きいときほど、上限温度θc(i)は不凍液濃度Wdに対応した最適温度θbを収束値として緩やかに変化するようになる。
上式(2)に示されるように、本変形例では、徐変処理として最適温度θbに対してなまし処理を行うことにより、上限温度θc(i)を算出するようにしている。上述のように、徐変係数nが大きいときほど、上限温度θc(i)は不凍液濃度Wdに対応した最適温度θbを収束値として緩やかに変化するようになる。
ここで、第1の温度θ1が同じである場合には、温度差Δθが小さいときほど、即ち第2の温度θ2が低い値に設定されているときほど、圧力損失差ΔΔNPが小さく、不凍液濃度Wdの同定精度が低いものとなる可能性があるため、徐変係数nは大きい値に設定される。また第2の温度θ2が同じである場合には、温度差Δθが小さいときほど、即ち第1の温度θ1が高いときほど、圧力損失差ΔΔNPが小さく、不凍液濃度Wdの同定精度が低いものとなる可能性があるため、徐変係数nは同様に大きい値に設定される。このように相対的に大きな値に設定される徐変係数nに基づいて徐変処理を行うことで、上限温度θcを更新する際の最適温度θbの影響は小さくなるため、不凍液濃度Wdの変化に対する上限温度θcの追従性は低下するようになる。
これに対して、第1の温度θ1が同じである場合には、温度差Δθが大きいときほど、即ち第2の温度θ2が高い値に設定されているときほど、圧力損失差ΔΔNPが大きく、不凍液濃度Wdの同定精度が高いと想定することができるため、徐変係数nは小さい値に設定される。また第2の温度θ2が同じである場合には、温度差Δθが大きいときほど、即ち第1の温度θ1が低いときほど、圧力損失差ΔΔNPが大きく、不凍液濃度Wdの同定精度が高いと想定することができるため、徐変係数nは同様に小さい値に設定される。このように相対的に小さい値に設定される徐変係数nに基づいて徐変処理を行うことで、上限温度θcを更新する際の最適温度θbの影響は大きくなるため、不凍液濃度Wdの変化に対する上限温度θcの追従性は上昇するようになる。このように、本変形例によれば、不凍液濃度Wdを同定する際の精度に応じたかたちで上限温度θcを適切に更新することができるようになる。
また更に、現在設定されている上限温度θcが高くなるようにこれを更新する場合、現在設定されている上限温度θcが低くなるようにこれを更新する場合と比較して徐変係数nを大きい値に設定してその更新量を小さくするようにしている。このため、現在設定されている上限温度θcを誤って過度に高い温度に更新したことによって不凍液の局所的な沸騰や内燃機関10の過度な温度上昇が発生することを好適に抑制することができる。
(m)第2の実施形態、又は上記変形例(k)及び(l)において、温度差Δθが所定値よりも小さいときには、上限温度θcの更新を禁止するようにしてもよい。温度差Δθが小さいときは、不凍液濃度Wdを同定する際の精度が低く、誤ったかたちで上限温度θcが更新されてしまう可能性が否定できない。本変形例によれば、このように不凍液濃度Wdを同定する際の精度が低下するおそれのあるときには、上限温度θcが更新されないため、上限温度θcがその最適値から乖離するような態様で更新されてしまうこと好適に抑制することができるようになる。
(n)上述した変形例を含め各実施形態では、上限温度θcがサーモスタット24の開弁温度よりも低いことを前提としたが、上限温度θcがサーモスタット24の開弁温度より高くなるようにこれを設定してもよい。上限温度θcがサーモスタットの開弁温度よりも高くなるように設定されると、不凍液温度θがより高い温度に達するまで暖機促進処理を継続して実行することができる。このため、同処理を通じて一層効果的に暖機を促進することができるようになる。但し、この場合、サーモスタット24の開弁前と開弁後では循環水路20の流路抵抗が大きく異なるようになり、ポンプ23の攪拌抵抗も異なるものとなるため、サーモスタット24が開弁した後に強制駆動処理を実行して不凍液濃度Wdを同定すると、不凍液濃度Wdを正確に同定することができなくなり、上限温度θcが誤ったかたちで更新されることが懸念される。このため、本変形例においては、第1の温度θ1がサーモスタット24の開弁温度近傍にあるときには、濃度同定処理、ひいては上限温度θcの更新を禁止するのが望ましい。また、上述した変形例(k)〜(m)を含め、第2の温度θ2を適宜変更する場合にあっても、第2の温度θ2がサーモスタット24の開弁温度近傍にある場合、濃度同定処理及びその同定結果に基づく上限温度θcの更新を禁止するのが望ましい。或いは、上限温度θcの更新に伴って第2の温度θ2を適宜変更する際、同第2の温度θ2が同サーモスタット24の開弁温度より低い温度であることを条件とするようにしてもよい。
(o)上述した変形例を含め各実施形態において、ポンプ23を駆動する際のデューティ比Dは「100%」に限られるものではなく、これを「100%」未満の値としてもよい。
(p)上述した変形例を含め各実施形態において、例えば、第1の温度θ1及び第1の回転速度差ΔNP1と不凍液濃度Wdとの関係や、第1の温度θ1及び第2の温度θ2、第1の回転速度差ΔNP1及び第2の回転速度差ΔNP2、不凍液濃度Wdの関係を求め、これらを演算用マップとしてメモリ91aに記憶するようにしたが、例えばそれらの関係を関数式にて定義若しくは近似できるような場合には、そうした関数式をメモリ91aに記憶しておくとともに、同関数式に必要な引数(例えば第1の温度θ1、第1の回転速度差ΔNP1、第2の温度θ2、第2の回転速度差ΔNP2等)を入力し、その戻り値から不凍液濃度Wdを同定することもできる。
(q)上述した変形例を含め各実施形態では、暖機促進処理としてポンプ23の運転を停止して循環水路20における不凍液の循環を停止する処理を例示したが、本発明における暖機促進処理には、ポンプ23を運転するものの、例えば、燃焼室14近傍において不凍液の局所的な沸騰が発生しない最小量の不凍液を循環水路20に循環させる等、その吐出量を所定量以下に制限するものも含まれる。
(r)上述した変形例を含め各実施形態では、ポンプ23の運転を通じて不凍液濃度Wdを同定するようにしたが、センサ等を用いて不凍液濃度Wdを直接検出するようにしてもよい。
10…内燃機関、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…ウォータジャケット、14…燃焼室、20…循環水路、21…迂回通路、22…ラジエータ通路、23…ポンプ、24…サーモスタット、25…ラジエータ、31…熱機器、91…制御装置(ポンプ制御手段、同定手段、更新手段、記憶手段、無効化手段)、91a…メモリ、92…水温センサ(温度検出手段)、93…機関回転速度センサ、94…エアフロメータ、95…車速センサ、96…ポンプ回転速度センサ(回転速度検出手段)。
Claims (9)
- 機関冷却用の不凍液を吐出する電動回転式のポンプの吐出量をその回転速度に基づいて可変制御するポンプ制御手段と、不凍液の温度を検出する温度検出手段とを有し、機関暖機中に不凍液の温度が上限温度未満であるときには同上限温度以上であるときと比較して不凍液の吐出量が制限されるように前記ポンプの回転速度を制御する暖機促進処理が実行される内燃機関の冷却装置において、
不凍液の濃度を同定する同定手段と、
不凍液の濃度が高いときには低いときと比較して高い温度となる関係を有した前記上限温度の最適値を前記同定される不凍液の濃度に基づいて求め、現在設定されている上限温度と前記求められる最適値との偏差が小さくなるように同上限温度を更新する更新手段とを有する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記同定手段は、前記ポンプの実回転速度を検出する回転速度検出手段を含み、前記ポンプ制御手段が予め設定された所定の駆動信号に基づいて前記ポンプを制御したときの同ポンプの実回転速度の推移傾向について同実回転速度が低いときほど不凍液の濃度が高いとこれを同定する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 前記ポンプを予め設定した所定の駆動信号に基づいて制御したときその駆動信号に対応した指示回転速度に対する実回転速度の乖離度合と不凍液の濃度及び温度との関係を記憶する記憶手段とを更に備え、
前記同定手段は、不凍液の温度が前記上限温度未満である第1の温度となったときに前記駆動信号に基づき前記ポンプを制御して前記第1の温度に対応する前記乖離度合を第1の乖離度合として検出するとともに、前記記憶手段に記憶される関係において不凍液の温度を前記第1の温度としたときの乖離度合と前記第1の乖離度合との比較に基づいて不凍液の濃度を同定する
請求項2に記載の内燃機関の冷却装置。 - 前記同定手段は、機関始動後において前記暖機促進処理の実行に先立って前記駆動信号に基づく前記ポンプの制御を実行し、その制御時における不凍液の温度を前記第1の温度として不凍液の濃度を同定する
請求項3に記載の内燃機関の冷却装置。 - 前記同定手段は、不凍液の温度が前記上限温度未満である前記第1の温度となったときに前記駆動信号に基づく前記ポンプの制御を実行して前記第1の温度に対応する前記第1の乖離度合を検出するとともに、不凍液の温度が前記上限温度未満であって前記第1の温度よりも高い第2の温度となったときに前記駆動信号に基づく前記ポンプの制御を実行して第2の温度に対応する第2の乖離度合を検出し、前記記憶手段に記憶される関係に基づいて不凍液の温度が前記第1の温度と前記第2の温度との間で変化するときの前記乖離度合にかかる変化量を求め、その変化量と前記検出される第1及び第2の乖離度合の差分との比較に基づいて不凍液の濃度を同定する
請求項3または4に記載の内燃機関の冷却装置。 - 前記更新手段は、前記第1の温度が高いときには低いときと比較して現在設定されている上限温度を更新する際の更新量を小さい値に設定する
請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置。 - 前記第1の温度が所定温度以上であるときに前記同定手段による不凍液の濃度の同定を無効化する無効化手段を更に備える
請求項3〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置。 - 前記更新手段は、前記上限温度が高くなるようにこれを更新するときは同上限温度が低くなるようにこれを更新するときと比較してその更新量を小さい値に設定する
請求項3〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置。 - 前記ポンプ制御手段は、暖機促進処理が完了した後は機関運転状態に基づいて前記ポンプの目標吐出量を設定するとともにこれに対応する駆動信号を生成しその駆動信号に基づいて前記ポンプを制御するものであって、前記同定手段により同定される不凍液の濃度が高いときには前記目標吐出量が増大する態様にて前記生成される駆動信号を補正するものである
請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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