JP2012002820A - 衛星信号の搬送波位相測定値を使用した位置決定 - Google Patents
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Abstract
【課題】初期の位置から複数の連続する位置へと移動する移動ユニットの相対的位置を判定する方法及び装置を提供する。
【解決手段】移動ユニットは、複数のナビゲーション衛星から信号を受信し、移動中にそれらの信号の搬送波位相を追跡する。受信された信号のそれぞれについて、搬送波位相増分が複数のエポックにわたって計算される。異常な搬送波位相増分が、さらなる計算を基に判定され排除される。次いで、排除されない搬送波位相増分を使用して、時間エポックのそれぞれの間の座標増分を計算する。排除後の搬送波位相増分の残りの数が、特定のエポックを対象とする閾値よりも少ない場合は、当該特定のエポックの間の座標増分は、以前のエポックからのデータを使用して外挿することができる。他の実施例では、最小2乗法及びカルマン・フィルタリングを使用して、座標増分を計算する。次いで、移動ユニットの位置を複数の時間エポックにわたる座標増分を順次合計し、その初期の位置と相対的に判定することができる。
【選択図】図1
【解決手段】移動ユニットは、複数のナビゲーション衛星から信号を受信し、移動中にそれらの信号の搬送波位相を追跡する。受信された信号のそれぞれについて、搬送波位相増分が複数のエポックにわたって計算される。異常な搬送波位相増分が、さらなる計算を基に判定され排除される。次いで、排除されない搬送波位相増分を使用して、時間エポックのそれぞれの間の座標増分を計算する。排除後の搬送波位相増分の残りの数が、特定のエポックを対象とする閾値よりも少ない場合は、当該特定のエポックの間の座標増分は、以前のエポックからのデータを使用して外挿することができる。他の実施例では、最小2乗法及びカルマン・フィルタリングを使用して、座標増分を計算する。次いで、移動ユニットの位置を複数の時間エポックにわたる座標増分を順次合計し、その初期の位置と相対的に判定することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は一般に、衛星信号を使用した位置決定に関し、より詳細には、衛星信号の搬送波位相測定値(carrier phase measurement)を使用した相対的位置決定に関する。
GPS(米国)、GLONASS(ロシア)などの衛星測位システムが、当技術分野でよく知られており、特別なナビゲーション受信機を所有するユーザにおける高度に正確な自己測位が企図されている。ナビゲーション受信機は、受信機の見通し距離内に位置する衛星から送信される無線信号を受信し処理する。衛星信号は、疑似ランダム2進コードによって変調される搬送波信号を含む。受信機は、受信信号に関する局部基準クロック(local reference clock)または発振器との相対的な時間遅延を測定する。これらの測定値により、受信機が受信機と衛星の間のいわゆる疑似レンジ(pseudo-range)を判定することが可能になる。疑似レンジは、様々な雑音源ならびに衛星及び受信機の時間尺度の変動の故に、受信機と衛星の間のレンジ(距離)とは異なるものである。衛星の数が十分多い場合は、測定される疑似レンジを処理して、ユーザ位置を判定し、時間尺度を協調させることができる。このタイプのシステムは、単一の衛星受信機を使用し、本明細書では、スタンド・アロン型システムと呼ばれる。これらのスタンド・アロン型システムは、メートル・レベルの正確さを実現する。
高い精度でユーザ位置を正確に判定することへの要請、ならびに測定の安定性及び信頼性を向上させることへの要望が、誤差ナビゲーション(differential navigation:DN)の開発につながっている。誤差ナビゲーションでは、ローバ(Rover)とも呼ばれるユーザ位置を発見するタスクが、基地局(基地)と相対的に実施される。基地局の精密な座標は、既知であり、基地局は測定中、ほぼ定常である。基地局は、衛星の信号を受信し、その信号を処理して測定値を生成する、ナビゲーション受信機を有する。これらの信号測定値は、通信チャネル(例えば、無線)を介してローバへと送信される。ローバは、それ自体のナビゲーション受信機を用いて得られたローバ自体の測定値と共に、基地から受信されるこれらの測定値を使用して、それ自体の位置を精密に判定する。誤差ナビゲーション・モードでは、ローバの測定値において強く相関付けられる誤差の大部分を、基地局の測定値を使用してローバが補償することができるので、位置決定が、改善される。
誤差ナビゲーションを使用する一方で、様々な動作モードが、可能である。後処理(post-processing:PP)モードでは、すベての測定が完了した後に、基地及びローバの測定値をコプロセッシングすることによって、ローバの座標が判定される。これにより、より多くのデータが位置決定のために使用可能になるので、高度に正確な位置決定が可能になる。実時間処理(real-time processing:RTP)モードでは、通信チャネルを介して受信される基地局情報が受信されると、ローバの座標が、実時間で判定される。
誤差ナビゲーションにおける位置決定の正確さは、疑似レンジの測定値を衛星搬送波信号の位相に関する測定値で補完することによって、さらに改善することができる。基地の受信機において衛星から受信される信号の搬送波位相が、測定され、ローバ受信機において測定される同じ衛星の搬送波位相と比較される場合、測定値の正確さは、搬送波の波長の数パーセント内で得ることができる。実時間の搬送波信号ベースの誤差ナビゲーションはしばしば、実時間キネマティック(real-time kinematic:RTK)と呼ばれる。通常なら搬送波位相の測定によって保証され得る上記の利点の実際の実装では、位相測定値のアンビギュイティ(ambiguity:曖昧さ)の解消の問題に直面する。
アンビギュイティは、2つの要因から生じる。第1に、任意の衛星から基地及びローバまでの距離の差は通常、搬送波の波長よりもはるかに大きい。したがって、基地及びローバ受信機によって受信される搬送波信号の位相遅延の差が、実質的に1サイクルを超えることもある。第2に、入力衛星信号を基に整数のサイクルを測定することは不可能であり、測定者は、小数部を測定することしかできない。したがって、整数のサイクルを判定する必要があり、これが「アンビギュイティ」と呼ばれる。より厳密にいえば、追跡中のすベての衛星毎にかかるすベての整数部セットを、すなわち、各衛星毎に1つの整数部を判定する必要がある。測定者は、ローバの座標及び時間尺度の変動を含む他の未知の値と共に、上記のセットを判定する必要がある。
高度に正確なナビゲーション測定値を生成するタスクは、高次には次のように公式化される:nΣの未知成分を含むベクトルを用いて、システムの状態ベクトルを判定する必要がある。これらの未知成分としては、所与の座標系における(通常はデカルト軸X,Y,Zに沿う)3つのローバ座標(座標の時間導関数が追加される場合もある)、受信機内の局部主基準発振器(local main reference oscillator)における位相ドリフトによって引き起こされる時間尺度の変動、及び搬送波周波数の位相測定値のアンビギュイティに関連するnの整数の未知の値が、挙げられる。nの値は、処理中の様々な搬送波信号の数によって決まり、したがって、受信機内でアクティブに機能している衛星チャネルの数と一致する。ブロードキャスト信号の受信及び処理が行われている各衛星毎に、少なくとも1つの衛星チャネルが、受信機によって使用される。L1周波数バンド内の搬送波及びL2周波数バンド内の搬送波をブロードキャストするGPS衛星など一部の衛星は、2つ以上の符号変調搬送波信号をブロードキャストする。受信機が、L1とL2の両方のバンドで搬送波信号を処理する場合、すなわち、いわゆる2周波数受信機(dual-frequency receiver)である場合は、それに対応して衛星チャネルの数(n)が増加する。2周波数受信機を用いると、電離層遅延の補正(correction)が可能となり、アンビギュイティ解消がより容易になる。
基地及びローバ受信機によってそれぞれ、2つのナビゲーション・パラメータ・セットが測定され、これらのパラメータは、未知の状態ベクトルを判定するために使用される。各パラメータ・セットは、各衛星に関する受信機までの疑似レンジと、各衛星の搬送波信号の全(完全)位相とを含む。各疑似レンジは、対応する衛星の符号変調信号に関する時間遅延を測定することによって得られる。符号変調信号は、各衛星の追跡チャネルにおける遅延ロック・ループ(delay-lock loop:DLL)回路によって追跡される。衛星の搬送波信号の全位相は、対応する衛星の追跡チャネルにおける位相ロック・ループ(phase-lock loop:PLL)によって追跡される。特定の(一定の)モーメントの時間に測定されたナビゲーション・パラメータを収集したものとして、観測ベクトルが生成される。
状態ベクトルと観測ベクトルの間の関係は、よく知られたシステムのナビゲーション方程式によって定義される。ある観測ベクトルが与えられた場合、当該システムの方程式は、方程式の数が状態ベクトル内の未知の数と等しい場合、またはその数を超えた場合に、状態ベクトルが発見されるように解くことができる。当該システムの方程式を解くために、従来の統計学的方法、すなわち、最小2乗法、動的カルマン・フィルタリング法、及びこれらの方法の様々な修正形態が使用される。
デジタル形式でのこれらの方法の実際の実装は、多種多様であり得る。かかる方法をプロセッサ上で実装または開発する際は、通常、プロセッサに対する一定の負荷量を超えることなく、所与の量のプロセッサ能力に対して、結果の正確さと結果を得るスピードとの間の妥協点を見出さなければならない。
1つの一般的なスキームは、次の諸ステップからなる。特定の(一定の)モーメントの時間に疑似レンジ及び全位相に関して測定された値、ならびにそれらの測定値が属する衛星の指示(indication)及び測定値の時間モーメントが、基地からローバへと送信される。対応する値は、ローバ受信機において測定される。この処理は、各衛星を対象とする基地及びローバの測定値間の、疑似レンジと全位相に関する一重差(single difference)を判定することを含む。強く相関付けられる誤差は、一重差内に補償される(すなわち、実質的に取り消される)。次いで、測定された結果から計算された値を減算することにより、一重差の残余(residual)が、計算される。残余の処理により、初期のシステムのナビゲーション方程式を線形化することが可能になり(その後数回の繰返しが必要な場合もあるが)、それにより、線型方程式の解法システムを対象とする非常に発展した多くの数学的処理を使用することが可能になる。解法の結果、nのアンビギュイティを含む状態ベクトルの成分が、発見される。しかし、計算後のアンビギュイティの値は、必ずしも整数である必要はない。このため、アンビギュイティの値は、解法のこの段階では、フロート・アンビギュイティまたはフローティング・アンビギュイティと呼ばれる。整数のアンビギュイティの真値を発見するために、フロート・アンビギュイティ・ベクトルを最近隣整数セット(nearest set of integers)に四捨五入する手続きが、使用される。この処理は、アンビギュイティ解消と呼ばれる。残余の真値を判定し、次いで、当該システムの方程式を再度解くことにより基地とローバを結ぶ基準線の座標値を発見し、その後、ローバの正確な座標、及びローバのクロック・ドリフトに対する補正を判定することは、アンビギュイティ解消が行われた後にしか可能でない。
上述の一般的な計算スキームは、当技術分野でよく知られており、例えば、Bradford W. Parkinson、及びJames J. Spilker Jr.の「Global Positioning Theory and Application, Volume 163 of Progress In Astronautics and Aeronautics」(米国航空宇宙工学協会、ワシントンDC、1996年発行)に、さらに詳細に記載されている。
大部分の場合、ローバ受信機は、様々な外部影響が測定誤差を引き起こす、複雑な環境で動作する。例えば、外部信号が、衛星信号に干渉することもあり、構造物及び地形が、マルチパス誤差を生じさせることもある。そこで、本明細書では、2つのタイプの誤差、すなわち、通常誤差(normal error)と異常誤差(abnormal error)とを区別する。通常誤差は通常、正規分布型の白色雑音誤差であり、この誤差は、位置の計算中に補償され得る。異常誤差は、大規模なシステム誤差であり、この誤差によって、システムが正確な位置を計算することが妨げられることもある。かかる異常誤差は稀に、固有雑音の不定期スパイクの結果生じることもある。より多くの場合、異常誤差は、受信機の過度の暴露の結果生じる。例えば、直接的な衛星信号に干渉する強い反射信号により、異常誤差が引き起こされるはずである。同様に、極度の無線干渉もまた、異常誤差を生じさせる可能性がある。ローバ受信機の部分的または完全な遮光(shading)もまた、電波の回折によって誤差を生じさせる可能性がある。測定誤差は、遮光が部分的であり軽微である場合に最小となり得る。しかしながら、衛星が完全に遮光(すなわち、ブロック)された場合に残るものは、マルチパス信号だけである。その結果、チャネル内での追跡が妨げられ、測定される位相に損失が生じ、それにより、異常誤差が生じることになる。受信機への動的影響(すなわち、ローバのある種の動作)もまた、異常誤差を引き起こす可能性がある。インパルスの加速は、受信アンテナと、局部基準発振器の水晶のどちらにも影響を及ぼし、そのため、中間搬送波周波数及び測定される移送のドリフトが、生じることになる。
1つの固有のタイプの異常誤差は、PLLサイクル・スリップ(PLL cycle slip)であり、このスリップは、衛星搬送波信号を追跡しているPLL回路内のサイクル・スリップである。PLL回路は、サイクル・スリップが生じた後は、新しい安定平衡点へと遷移し、その遷移の後に、衛星搬送波信号の追跡を続行する。サイクル・スリップの結果として、いくつかの整数のセミ・サイクル(半サイクル)と等しい異常誤差が、全位相測定値に導入される。サイクル・スリップは、2つのパラメータ、すなわち値と継続時間とによって特徴付けられる。スリップの値(サイクル単位)は、PLL弁別器のタイプに応じて0.5KまたはKのいずれかに決まり、この場合、Kはランダムな整数である。サイクル・スリップの継続時間も、ランダムである。最小継続時間は、PLLバンドによって定義され、一方、最大継続時間は、サイクル・スリップを引き起こした原因に依存し、最大数秒間持続し得る。継続時間が十分に長い場合は、追跡が失われる。
サイクル・スリップを検出し補正するための、様々な知られた技術が存在する。例えば、米国特許第5,502,641号は、位相外挿法を使用する衛星信号の短期間ブロッキングによって引き起こされるサイクル・スリップを検出し、補正する方法を開示する。さらに、S. Bisnath、D. Kim、及びR. B. Langleyの「A new Approach to an Old Problem : Carrier-Phase Cycle Slips」(GPS World、Vol.12、No.5(2001年)、第46乃至51頁)は、記録済み符号及び2つの周波数(L1及びL2バンド)における位相測定値の後処理に関する技法、ならびに対応する記録済み測定値の組合せにおける時間導関数のスパイク(spike of time derivatives)に基づいてサイクル・スリップを検出する技法を開示する。
通常誤差は、固有の受信機雑音、及び局所的な物体から反射される相対的に弱い信号によって引き起こされる。さらに、通常誤差は、大気を通じて伝播する電波内の追加的な遅延、衛星軌道の不正確な知識、及び衛星のオンボード・クロックのドリフトから生じることもある。
衛星測位における進歩の大部分は、様々なタイプの誤差を抑圧する方向に向かっている。例えば、誤差ナビゲーションは、大気によって引き起こされる誤差、衛星軌道の不正確な知識、及び衛星のオンボード・クロックのドリフトの影響を緩和する。異常誤差の影響を低減するための他の技法が、開発されている。これらの技法は、正しくなく、不正確な測定値(例えば、受信された信号のパラメータが、重度の干渉によって劣化している場合)を検出し排除する。
上記の各技法の使用を検討した場合、正確さとコストの間には、トレード・オフが存在する。最も正確な技法は、RTKであり、RTKは一般に、センチメートル・レベルの正確さを実現することができる。しかしながら、この動作モードでは、ローバと基地局はいずれも、2周波数受信機と、通信リンクを介して基地からローバへと補正を通信するための無線と、搬送波位相測定値のアンビギュイティを解消するためのアルゴリズムとを有している必要がある。したがって、この動作モードは、正確な測位結果をもたらすが、機器のコスト、処理電力、及び複雑さの点で、最も費用の掛かる動作モードでもある。
代替として、最も正確さの低い技法は、上述のスタンド・アロン型システムであり、このシステムは、メートル・レベルの正確さしか実現しない。このタイプのシステムは、正確さには劣るが、単一の衛星受信機しか必要とせず、基地局は必要としないことから、費用及び複雑さの最も低い動作モードでもある。
衛星測位システムの正確さを高めるための、様々な技法が存在する。例えば、米国特許第6,397,147号(’147号特許)は、GPS衛星から送信される信号の測定を行う単一のGPS受信機を使用して、2つの点の間の相対的位置を実時間で判定するための技法を開示する。当該特許は、誤差補正項(differential correction term)が、ある瞬間の時間における位置として計算され、次いで、別の時間に加えられ、その結果、元の瞬間の時間における位置と相対的に、GPS受信機の位置が正確に判定される技法を開示する。’147号特許の技法では、単一の受信機が、元セットの誤差補正項を生成する基準基地局としても、次いでローバの位置を正確に判定するために当該セットの誤差補正項を使用するローバ受信機としても働く。
Bradford W. Parkinson、及びJames J. Spilker Jr.、「Global Positioning Theory and Application, Volume 163 of Progress In Astronautics and Aeronautics」(米国航空宇宙工学協会、ワシントンDC、1996年発行)
S. Bisnath、D. Kim、及びR. B. Langley、「A new Approach to an Old Problem : Carrier-Phase Cycle Slips」(GPS World、Vol.12、No.5(2001年)、第46頁乃至第51頁)
R. Hatch、R. Sharpe、及びY. Yang、「An Innovative Algorithm for Carrier-Phase Navigation」(ION GNSS 17th International Technical Meeting of the Satellite Division、第21乃至24頁、2004年9月、カリフォルニア州ロングビーチ)
衛星測位システムの正確さを高めるための別の技法が、R. Hatch、R. Sharpe、及びY. Yang、「An Innovative Algorithm for Carrier-Phase Navigation」(ION GNSS 17th International Technical Meeting of the Satellite Division、第21乃至24頁、2004年9月、カリフォルニア州ロングビーチ)に開示されている。この技法は、搬送波位相測定値の変化を使用して、計算上の負担を最小限に抑えながら、位置及びクロック状態を適時に正方向へ伝播させる。具体的には、位相測定値の変化は、レンジ差の測定値として扱われるのではなく、レンジ誤差の測定値として扱われる。この技法に関して言われている1つの制限は、比較的短い時間間隔(例えば、10〜30秒)にわたってしか、正確な測位測定値を提供することができないことである。
本発明は、RTKシステムにおけるコスト及び複雑さを伴うことなく、改善された相対的位置決定の正確さを提供する新しい技法である。本発明の一実施形態によれば、初期の位置から複数の連続する位置へと移動する移動ユニットの相対的位置を判定することができる。移動ユニットは、複数のナビゲーション衛星から信号を受信し、移動中にそれらの信号の搬送波位相を追跡する。受信された信号のそれぞれについて、搬送波位相の増分が、複数のエポック(epoch)にわたって計算される。異常な(anomalous)搬送波位相増分が、さらなる計算を基に判定され、排除される。次いで、排除されない搬送波位相増分が、時間エポックのそれぞれの間の座標増分を計算するために使用される。排除後の搬送波位相増分の残りの数が、特定のエポックを対象とする閾値よりも少ない場合は、当該特定のエポックの間の座標増分は、以前のエポックからのデータを使用して外挿することができる。様々な実施形態では、最小2乗法及びカルマン・フィルタリングを使用して、座標増分を計算することができる。次いで、移動ユニットの位置を、その初期の位置と相対的に判定するために、複数の時間エポックにわたる座標増分を順次合計することができる。
様々な実施形態は、どの搬送波位相増分が異常であるかを判定するための様々な技法を利用する。一実施形態では、搬送波位相増分の残余が計算され、それらの残余が閾値と比較される。衛星チャネルのうちの少なくとも1つの残余が、閾値よりも大きい場合は、最大残余を有する衛星チャネルに関連する搬送波位相増分が、異常であると見なされる。一代替実施形態では、残余を基に残余の2乗和が計算され、その和が閾値と比較される。上記の和が閾値よりも大きい場合は、最大残余を有する衛星チャネルに関連する搬送波位相増分が、異常であると見なされる。上述の最大残余を判定すれば、さらなる計算から異常信号を取り除くことができるように、最大残余に関連する衛星を対象とするチャネルの重みを、ゼロにセットすることができる。特定の一実施形態では、2つの連続するエポックの間、チャネルの重みをゼロにセットすることができる。
他の実施形態では、隣接するエポックの搬送波位相増分の間で大きな差が検出されたことに基づいて、または衛星チャネル・インジケータの警報信号によって、搬送波位相増分を異常と判定することができる。
移動ユニットが動作間隔中に閉ループを横切った(トラバース(traverse)した)場合は、移動ユニットの開始位置及び終了位置を判定し、終了位置と開始位置の間の差を計算することにより、計算済みの座標増分の誤差を計算することができる。当該差は、計算済みの座標増分の誤差として使用することができる。特定の一実施形態では、座標増分の平均誤差を判定するために、上記の差が、経過したエポックの数で割られ、座標増分の平均誤差は、動作間隔中に測定された座標増分の補正として使用される。
本発明のこれら及びその他の利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照すれば、当業者には明らかとなるであろう。
ある種の測位アプリケーションでは、移動中のローバ受信機の絶対位置を判定することは、不要である。その代わりに必要とされることは、地上のある固定点と相対的に、ローバの位置を正確に判定することである。本発明は、地上のランダムな点に初期の原点を固定した局所座標系を使用して、移動中のローバ受信機の座標が形成されるようにナビゲーション受信機の測定を処理するための、新規な技法である。上記の初期点の絶対座標を知る必要はなく、本発明は、当該初期点と相対的に正確な位置を提供する。
図1は、固定点と相対的に位置を判定するためのローバ衛星受信機の使用を示している。図1は、単一のスタンド・アロン型ローバ衛星受信機104を利用しているユーザ102を示している。図1には、X軸108、Y軸110、及びZ軸112を有する絶対座標系も示されている。例えば、絶対座標系X、Y、Zは、デカルト座標系に基づいていてもよい。図1は、点A 106を原点とするx軸114、y軸116、z軸118を有する、局所座標系も示している。点A 106の絶対座標の知識は、必要とされない。必要なのは、点A 106が、ローバ104の初期の開始点であり、何らかのタイプの識別可能なマーカで、地上にマーク付けされるべきである、ということだけである。
ローバ104は、初期点A 106からスタートし、ランダム軌道120内を移動する。本発明は、点A 106と相対的に(すなわち、相対座標x,y,z)ローバ104の位置を正確に判定するための方法を提供する。(もちろん、点Aの絶対座標が正確に知られている場合は、ローバの絶対座標を判定することもできる。)
次に、本発明のさらなる詳細を以下でさらに説明しながら、本発明による技法を高次に説明する。ローバ104の衛星受信機は、観測対象の立体配座(constellation)内の各衛星について、エポックと呼ばれる複数の離散的な時間間隔のそれぞれの間に、疑似レンジ及び全搬送波位相測定値を生成する。衛星座標に関する情報を有するメッセージ、予測される電離層パラメータ(電離層誘起遅延)、衛星の健康状態及び他のデータも、生成される。
ローバ104は、対流圏オフセットの補正と、情報メッセージから得られた電離層誘起遅延とを適用して、全位相及び疑似レンジ測定値を処理する。この全位相測定値により、ローバとの相対的な衛星の速度に依存するあるエポックにわたる衛星までのレンジの増分を、ローバが評価することが可能になる。本明細書では、これらの増分は、衛星までの放射範囲(radial ranges)の増分と呼ばれることもある。これらの増分を最小2乗法(LSM)(または、カルマン・フィルタリング)で処理すると、デカルト座標系内のエポック毎のローバの座標に関して、対応する増分の3つの成分が得られる。異常値のインジケータが、全位相測定値内の異常誤差がその間に発生したエポックを検出し、LSM計算からの異常な測定値を排除しながら、LSM処理が、繰り返される。ローバの局所座標を判定するために、複数のエポックにわたるローバの座標増分が合計される。座標増分のかかる合計は、それらの座標増分が連続するエポックの間で強く相関付けられることから、局所座標内の誤差の分散における単調増分は引き起こさない。
再び図1を参照すると、本発明による処理を用いると、初期の開始点A 106と相対的なローバの局所座標の判定が、可能になる。さらに、ローバによって横切られる経路Liの長さ、ローバによって横切られる2つの点DAB間またはDBC間の距離、及び軌道で囲まれた領域ARも、判定することができる。
図2には、ローバ・ナビゲーション・ユニット202のコンポーネントに関する高次のブロック図が示されている。ローバ・ナビゲーション・ユニット202は、可視ナビゲーション衛星の立体配座からの衛星信号を受信するための、アンテナ204を含む。この信号は、信号受信機206によって処理され、信号受信機206の出力は、さらなる処理のためにプロセッサ208に供給することができる。ローバ・ナビゲーション・ユニット202は、通信チャネルを介して他のデバイスと通信するための、通信インターフェース214も含む。ローバ・ナビゲーション・ユニット202は、ローバ・ナビゲーション・ユニット202のユーザとの対話を可能にする、ユーザ・インターフェース212要素(例えば、キーパッド、ディスプレイなど)も含む。プロセッサ208は、メモリ/ストレージ210内に格納されたコンピュータ・プログラム命令の制御下で、ローバ・ナビゲーション・ユニット202の全体の機能を制御する。図2は、本発明の諸原理を図示するために、ローバ・ナビゲーション・ユニットの高次の機能ブロック図を示すものであることが、理解されるべきである。もちろん、図示されてはいないが、ローバ・ナビゲーション・ユニット内に所在するはずの他の要素も存在する。本明細書の記載が与えられれば、本発明の諸原理を実装するために、よく知られたローバ・ナビゲーション・ユニットをどのように修正するかが、当業者には容易に理解されるはずである。
本発明の諸原理によるローバ受信機の機能を説明する前に、本明細書で使用される表記法に関する説明を行う。かかる表記法は、次の通りである。
jは、N個の衛星の立体配座内の衛星番号である。
iは、観測の開始からのエポック番号である。
Xi[j]、Yi[j]、Zi[j]は、地心座標系内の衛星のデカルト座標である。
dXi[j]、dYi[j]、dZi[j]は、(i−1)番目からi番目のエポックの、デカルト座標の増分である。
xic、yic、zicは、地心座標系(ローバの符号座標)内の(符号測定による)疑似レンジの処理から得られるローバのデカルト座標である。
Ri[j]、Ri−1[j]は、i番目及び(i−1)番目のエポックの間の衛星レンジである。
φi[j]は、搬送波周波数上で送信される衛星の全位相である。
dFi[j]は、(i−1)番目からi番目のエポックの、位相単位で測定された搬送波位相増分(すなわち、メートル単位で表される衛星までの放射範囲の増分)である。
dxi、dyi、dziは、(i−1)番目からi番目のエポックの、ローバのデカルト座標の増分であり、これは位相測定値から得られる。
xi、yi、ziは、位相測定値から得られたローバの局所座標である。
jは、N個の衛星の立体配座内の衛星番号である。
iは、観測の開始からのエポック番号である。
Xi[j]、Yi[j]、Zi[j]は、地心座標系内の衛星のデカルト座標である。
dXi[j]、dYi[j]、dZi[j]は、(i−1)番目からi番目のエポックの、デカルト座標の増分である。
xic、yic、zicは、地心座標系(ローバの符号座標)内の(符号測定による)疑似レンジの処理から得られるローバのデカルト座標である。
Ri[j]、Ri−1[j]は、i番目及び(i−1)番目のエポックの間の衛星レンジである。
φi[j]は、搬送波周波数上で送信される衛星の全位相である。
dFi[j]は、(i−1)番目からi番目のエポックの、位相単位で測定された搬送波位相増分(すなわち、メートル単位で表される衛星までの放射範囲の増分)である。
dxi、dyi、dziは、(i−1)番目からi番目のエポックの、ローバのデカルト座標の増分であり、これは位相測定値から得られる。
xi、yi、ziは、位相測定値から得られたローバの局所座標である。
図3は、本発明の一実施形態による処理の概要を示す高次の機能ブロック図である。本発明の一実施形態によるこの処理のさらなる詳細は、図4〜7に関して以下で説明する。図3を参照すると、ブロック302は、衛星の符号遅れによって得られた、衛星の疑似レンジを表している。ブロック304は、すベての可視衛星を対象とする、衛星の搬送波位相を表している。ブロック306は、衛星の座標に関する情報、重み係数(weight coefficient)、及び電波の伝播遅延を含む、衛星の情報メッセージを表している。短い時間間隔(エポック)にわたる搬送波位相増分が、搬送波位相304から導出され、処理ブロック308で、それらの値が、搬送波信号の波長に基づいて長さの単位で再計算される。処理ブロック314で、信号品質、観測対象の衛星数の冗長性、及びローバの動作パターンを特徴付ける1組の異なる指示を使用するさらなる処理を基に、環境的に誘起された異常誤差(受信機に対する外部影響によって引き起こされた誤差)を伴う測定値が、検出され排除される。処理ブロック310では、処理ブロック314で得られた情報を使用して、ローバの座標増分が(長さの単位でも)判定される。処理ブロック310の処理は、様々な技法を使用して実施することができる。有利な技法としては、LSM及びカルマン・フィルタリングが挙げられる。処理ブロック314及び310は、より精密な形でローバの座標増分が行われている間に、すベての異常測定値が漸次排除される逐次近似によって協働する。処理ブロック312は、局所ローバ座標を判定し、この座標は、様々な測地目的で使用することができる。図3に関して説明した処理のさらなる詳細は、LSMを利用する本発明の一実施形態に関連して以下で説明する。
図4は、本発明の一実施形態によるローバの局所座標を判定するためのアルゴリズムを示す、機能ブロック図である。本明細書では、機能ブロック図(例えば、図4及び5)は、高次の機能を説明するためのものであることに留意されたい。ブロックの中には、入力パラメータを表すものもあれば、出力パラメータを表すものもあり、何らかの機能または処理を表すブロックもあることが、当業者には容易に理解されるはずである。機能及び処理は、ハードウェア回路、プロセッサ上で実行されるソフトウェア命令、あるいはハードウェアとソフトウェアの何らかの組合せによって実施されてもよい。本明細書の記載が与えられれば、当業者ならハードウェアとソフトウェアの様々な組合せを使用して、本明細書に記載の機能を実装することができるはずである。したがって、本明細書に記載の機能に関する実装の詳細は、当業者には容易に知られるはずなので、詳細には説明しない。
当技術分野ではよく知られているように、信号受信機206(図2)は、各エポック中に、それ自体の受信した衛星信号のそれぞれについて、衛星座標Xi[j]、Yi[j]、Zi[j]402と、測定済みの疑似レンジ412と、全位相414とを出力する。ブロック404で、重み補正ブロック406によって生成された衛星チャネルの重み(以下でさらに詳細に説明する)と、衛星座標Xi[j]、Yi[j]、Zi[j]402と、以前のローバ座標とを使用して、マトリクスGが、計算される。マトリクスGの計算は、当技術分野ではよく知られており、次の諸ステップからなる。まず、ローバ/衛星間ベクトルの方向余弦マトリクスが、計算される。この計算には、報告された衛星座標及び先験的なローバ座標(これらは漸次精密になる)が、使用される。その結果得られるマトリクスには、単位マトリクスの列が補完され、当該マトリクスはさらに、マトリクスHi[j]として指定される。次に、すベての衛星チャネルWi[j]を対象とする重みのマトリクスが、計算される。衛星の重みは、それ自体の仰角によって決まり、衛星の健康状態に関して報告されたメッセージが考慮に入れられる。次に、i番目のエポック及びj番目の衛星について、以下の式を使用してマトリクスGi[j]が、計算される。
Gi[j] = (Hi[j]T Wi[j]−1 Hi[j])−1 Hi[j]T Wi[j]−1
ブロック408で、最小2乗法(LSM)を使用して、ローバの符号座標xic、yic、zicが、計算される。
Gi[j] = (Hi[j]T Wi[j]−1 Hi[j])−1 Hi[j]T Wi[j]−1
ブロック408で、最小2乗法(LSM)を使用して、ローバの符号座標xic、yic、zicが、計算される。
ブロック410で、全位相φi[j]414を使用して、衛星の搬送波位相増分dFi[j]が、計算される。位相がサイクル及びメートル単位の波長(λ)で判定されることを条件とすれば、ブロック410で、i番目のエポックにおける搬送波位相増分を、次のように計算することができる。
dFi[j]=(φi[j]−φi−1[j])*λ
対流圏、電離層、及び地球の自転を対象とする補正416が、i搬送波位相増分dFi[j]に加えられる。ブロック418は、入力として衛星座標Xi[j]、Yi[j]、Zi[j]402を受け取り、ブロック404からマトリクスGiを受け取り、ブロック408からローバの符号座標xic、yic、zicを受け取り、ブロック410から衛星の搬送波位相増分dFi[j]を受け取る。ブロック410で、(i−1)番目からi番目のエポックのローバのデカルト座標の増分であるdxi、dyi、dziを生成するために、上記の各入力が処理される。
dFi[j]=(φi[j]−φi−1[j])*λ
対流圏、電離層、及び地球の自転を対象とする補正416が、i搬送波位相増分dFi[j]に加えられる。ブロック418は、入力として衛星座標Xi[j]、Yi[j]、Zi[j]402を受け取り、ブロック404からマトリクスGiを受け取り、ブロック408からローバの符号座標xic、yic、zicを受け取り、ブロック410から衛星の搬送波位相増分dFi[j]を受け取る。ブロック410で、(i−1)番目からi番目のエポックのローバのデカルト座標の増分であるdxi、dyi、dziを生成するために、上記の各入力が処理される。
ここで、ブロック418及びローバのデカルト座標の増分の生成に関するさらなる詳細を、数回の繰返しにわたるLSMを使用してローバの座標増分を判定するためのアルゴリズムを示す図5に関して、さらに詳細に説明する。衛星座標Xi[j]、Yi[j]、Zi[j]506、及びローバの符号座標xic、yic、zic 504が、i番目及び(i−1)番目のエポック、すなわちRi[j]、Ri−1[j]を対象とする衛星レンジの計算の際に使用される処理ブロック502に供給される。これらのレンジは、次のように計算される。
Ri[j] = ((Xi[j]−xic)2+(Yi[j]−yic)2+(Zi[j]−zic)2)0.5
Ri−1 k[j] = ((Xi−1[j]−xic−dxi k)2+(Yi−1[j]−yic−dyi k)2+(Zi−1[j]−zic−dzi k)2)0.5
上式で、dxi k、dyi k、dzi kは、k番目の繰返しにおけるローバの座標の増分である(ローバの座標における元増分は、0に等しく、かつk=1と見なされ得ることに留意されたい)。k番目の繰返し(qi k)におけるローバのクロックのドリフトを対象とする補正、及び地球の自転Ei[j]を対象とする補正は、508で表され、次のように計算される。
Ei[j] = Ce *(Xi[j]*dyi k+dXi[j]*yic−Yi[j]*dxi k−dYi[j]*xic)
上式で、Ce=2.432387791e−13
次いで、ブロック509で、測定済みの放射擬似レンジと、計算済みの放射擬似レンジの増分間の差として、増分の残余Nevi k[j]が、次のように計算される。
Nevi k[j] = dFi[j]−(Ri[j]−Ri−1[j])+Ei[j]−qi k
マトリクスG 510及び増分の残余509を使用すると、ローバの座標及びクロック・ドリフトの増分を対象とする補正は、LSMを使用して次のように計算される(511)。
Δi k=Gi *Nevi k
上式で、Nevi kは、k番目の繰返しにおける残余の増分のN次元ベクトルであり、
Δi kは、k番目の繰返しにおける次の成分、すなわちΔxi k、Δyi k、Δzi k、Δqi kを伴うローバの座標及びクロック・ドリフトに関する、3つの増分を対象とする補正の4次元ベクトルであり、
Giは、LSM用の変換マトリクスである。
ブロック512で、ローバの予期される座標増分が、次のように補正される。
dxi k=dxi k−1+Δxi k
dyi k=dyi k−1+Δyi k
dzi k=dzi k−1+Δzi k
dqi k=dqi k−1+Δqi k
座標増分を対象とする補正の絶対値が、閾値と比較される。補正が閾値を超えている場合は、次の繰返しが実行され、kが1増分され、アルゴリズムはブロック502に戻る。すベての補正が閾値を下回る場合は、繰返しが停止し、そこで得られる値dxi k、dyi k、dzi kが、第1の近似化として測定されたローバの座標dxi、dyi、dziの増分である。
Ri[j] = ((Xi[j]−xic)2+(Yi[j]−yic)2+(Zi[j]−zic)2)0.5
Ri−1 k[j] = ((Xi−1[j]−xic−dxi k)2+(Yi−1[j]−yic−dyi k)2+(Zi−1[j]−zic−dzi k)2)0.5
上式で、dxi k、dyi k、dzi kは、k番目の繰返しにおけるローバの座標の増分である(ローバの座標における元増分は、0に等しく、かつk=1と見なされ得ることに留意されたい)。k番目の繰返し(qi k)におけるローバのクロックのドリフトを対象とする補正、及び地球の自転Ei[j]を対象とする補正は、508で表され、次のように計算される。
Ei[j] = Ce *(Xi[j]*dyi k+dXi[j]*yic−Yi[j]*dxi k−dYi[j]*xic)
上式で、Ce=2.432387791e−13
次いで、ブロック509で、測定済みの放射擬似レンジと、計算済みの放射擬似レンジの増分間の差として、増分の残余Nevi k[j]が、次のように計算される。
Nevi k[j] = dFi[j]−(Ri[j]−Ri−1[j])+Ei[j]−qi k
マトリクスG 510及び増分の残余509を使用すると、ローバの座標及びクロック・ドリフトの増分を対象とする補正は、LSMを使用して次のように計算される(511)。
Δi k=Gi *Nevi k
上式で、Nevi kは、k番目の繰返しにおける残余の増分のN次元ベクトルであり、
Δi kは、k番目の繰返しにおける次の成分、すなわちΔxi k、Δyi k、Δzi k、Δqi kを伴うローバの座標及びクロック・ドリフトに関する、3つの増分を対象とする補正の4次元ベクトルであり、
Giは、LSM用の変換マトリクスである。
ブロック512で、ローバの予期される座標増分が、次のように補正される。
dxi k=dxi k−1+Δxi k
dyi k=dyi k−1+Δyi k
dzi k=dzi k−1+Δzi k
dqi k=dqi k−1+Δqi k
座標増分を対象とする補正の絶対値が、閾値と比較される。補正が閾値を超えている場合は、次の繰返しが実行され、kが1増分され、アルゴリズムはブロック502に戻る。すベての補正が閾値を下回る場合は、繰返しが停止し、そこで得られる値dxi k、dyi k、dzi kが、第1の近似化として測定されたローバの座標dxi、dyi、dziの増分である。
十分に長い時間間隔の間(例えば、マーカ・ポイントにおいて)ローバが定常であるときは、外挿の補正が定義され、これがさらに適用される。停止中は、局所座標は変化せず、スイッチ514が閉じられ、測定済みの平均座標増分が補正516と見なされる。ローバが移動しているときは、スイッチ514が開放され、補正516が測定値に加えられる。
次に図5を参照すると、ローバは動作中に、ある種の異常誤差の故に、不正確な衛星信号の測定値を生成することもある。かかる誤差は、異常値のインジケータ・ブロック420によって検出される。本発明の一態様によれば、異常な測定値は、特定のエポックの間いくつかの衛星の重み係数をリセットすることによって、計算値から取り除かれる。したがって、異常値のインジケータの出力は、重み係数ブロック406に対する入力である。より詳細には、異常な測定値がその間に存在するエポックならびに後続のエポックにおける重みが、0にセットされる。さらに、LSMにおいて用いられるマトリクスGi、Gi+1が、i番目及び(i+1)番目のエポックの間に再計算される。異常値のインジケータ・ブロックに関するさらなる詳細を、図6及び7に関して以下でさらに詳細に説明する。
異常な測定値が排除された後は、ブロック422で、移動中のローバの局所座標(xi,yi,zi)が、計算される。局所座標は、座標増分の逐次合計によって次のように計算される。
xi=xi−1+dxi,yi=yi−1+dyi,zi=zi−1+dzi
局所座標系の原点は、ローバの原点位置(i=1において、x1=0,y1=0,z1=0において)と一致する。
xi=xi−1+dxi,yi=yi−1+dyi,zi=zi−1+dzi
局所座標系の原点は、ローバの原点位置(i=1において、x1=0,y1=0,z1=0において)と一致する。
必要があれば、地心座標系内の原点の座標(x0 y0 z0)を判定することができる。そのような判定を行ういくつかの手法が、存在する。例えば、ローバが開始点で停止している間に、符号測定を使用することができる。別法として、RTK(または他の測地技法)を使用して、原点の座標を発見することもできる。そこで得られた局所座標を原点の座標に追加することにより、移動中のローバの絶対座標を得ることもできる。かかるデータの正確さは実質的に、元座標の正確な判定に依存する。
場合によっては、移動中のローバの局所座標を判定する手続きにおいて、上記の座標を使用して、ブロック402で、xic、yic、zicをそれぞれ(x0+xi)、(y0+yi)、(z0+zi)で置き換えることにより、予期されるレンジを計算することができる。
再び図1を参照すると、本発明の諸原理は、局所座標を生成することに加えて、ローバによって横切られる経路Liの経路長、ローバによって横切られる2つの点DAB間またはDBC間の距離、及び軌道で囲まれた領域ARを判定することにも使用することができる。
地上の2つの点A及びBの間の距離を測定するために、ローバは、局所座標系の原点である点Aから点Bへと、ランダム軌道に沿って移動する。受信機は移動中に衛星を追跡し、疑似レンジ及び全位相を測定する。点Bに到着すると、点Bの局所座標(xB,yB,zB)におけるベクトルのモジュロとして、点DAB間の距離が、次のように計算される(図4の424)。
DAB=(xB 2+yB 2+zB 2)0.5
ランダム軌道の長さを測定するために(オドメータの動作と同様)、各i番目のエポックの間の3つの座標の増分、及び現在のエポックの間の座標増分におけるモジュロViが、計算される。iエポックの間の軌道(Li)の長さが、値の逐次合計により、次のように判定される(図4の423)。
Vi=(dxi 2+dyi 2+dzi 2)0.5
Li=Li−1+Vi,(i=2)
L1=0
ローバの軌道及び速度に依存する標本化誤差を考慮に入れることが、重要である。隣接するエポック間の時間間隔が十分小さい場合は、ローバの動作は、直線的であると見なされ、標本化誤差は、最小となる。ローバがその時々に停止した場合は、誤差を蓄積しないために、座標増分の絶対値は、停止中に加算されるべきでない。
DAB=(xB 2+yB 2+zB 2)0.5
ランダム軌道の長さを測定するために(オドメータの動作と同様)、各i番目のエポックの間の3つの座標の増分、及び現在のエポックの間の座標増分におけるモジュロViが、計算される。iエポックの間の軌道(Li)の長さが、値の逐次合計により、次のように判定される(図4の423)。
Vi=(dxi 2+dyi 2+dzi 2)0.5
Li=Li−1+Vi,(i=2)
L1=0
ローバの軌道及び速度に依存する標本化誤差を考慮に入れることが、重要である。隣接するエポック間の時間間隔が十分小さい場合は、ローバの動作は、直線的であると見なされ、標本化誤差は、最小となる。ローバがその時々に停止した場合は、誤差を蓄積しないために、座標増分の絶対値は、停止中に加算されるべきでない。
地上に基準点でマーク付けされた敷地の領域428(図4)を測定するために、ローバは、局所座標を判定しながら、1つの基準点から別の基準点へと次々に移動する。開始時の基準点に戻ると、内挿の補正が、測定値に加えられる。上記の敷地領域は、互いに重複せず、それぞれの角が基準点となる複数の三角形に分割される。三角形の各辺の長さは、それぞれの角の固定された局所座標によって計算される。さらに、各三角形の領域が、辺の長さを利用して判定され、そこで得られた領域が、加算される。
上述のように、異常値のインジケータ420は、全位相測定値内の異常誤差がその間に発生したエポックを検出し、それらのエポックからの測定値を排除する。異常値のインジケータ420は、この機能を実施する際は、観測対象の衛星信号の冗長性を使用する。異常値のインジケータ420は、それ自体の測定値が異常誤差を含むような衛星を隔離するために、各エポックの間の増分の残余を処理する。N個の衛星(N>>1)を有する立体配座におけるすベての衛星のうちの(j番目の)衛星の1つが、異常な測定値を有している場合は、その残余Nevi k[j]は、繰返しの完了後に閾値を超えることになる。したがって、残余の絶対値を閾値と比較すれば、異常値を有するチャネルの重みの乗数をリセットする(すなわち、当該チャネルの重みの乗数をゼロに等しくする)ことにより、当該チャネルを隔離し排除することができる。チャネル内の異常誤差は実際、隣接するチャネルに影響を及ぼし、それらのチャネルの残余も閾値を超えることになるほど、非常に大きい誤差であることもある。その場合は、隣接する2つのチャネルを排除する必要がある。疑わしいチャネルを隔離するには、すベてのチャネルのスイッチを次々に切ることも妥当であろう。しかしながら、そうした場合、特に測定が実時間で行われる場合は、プロセッサの過負荷を招くはずである。1つの妥協案は、最も大きな残余を有する1つのチャネルだけのスイッチを切ることである。大部分の場合、残りのすベてのチャネルを対象とする閾値よりも再計算された残余が少なくなることを保証することが、十分な解決策となるであろう。別のチャネルを排除するために、第2の近似化としてこの手続きを繰り返す必要が生じる可能性は低い。
異常値のインジケータは、隣接する2つのエポックによって形成されたレンジ増分の残余を処理することから、測定者は、i番目のエポックにおける異常な残余が、それと同じi番目のエポックにおける異常な全位相測定値によって引き起こされていることを考慮する必要がある。しかしその一方で、エポック(i+1)における位相が通常であったとしても、i番目から(i+1)番目のエポックの位相増分は、異常である。したがって、所与のチャネルにおいて異常値が検出された場合、後続の(i+1)エポックの間は、放射範囲の増分もまた排除されるべきである。
次に、異常値のインジケータ420の2つの実施形態を、図6及び7に関して説明する。
第1の実施形態は、図6の流れ図に関して説明する。図6のアルゴリズムは、ステップ601で、処理ブロック509(図5)に関して上述したように、残余NEVi[j]を計算する。ステップ602で、(繰返しの完了後の)各衛星チャネルにおける残余の絶対値が、閾値と比較される。どのチャネルの残余モジュロも、閾値を超えていない場合は(ステップ604で判定される)、アルゴリズムは終了する。少なくとも1つのチャネル上の残余モジュロが、閾値を超えた場合は、ステップ606で、最大残余を有する衛星チャネルの探索が、実施される。ステップ608では、ステップ606で特定された衛星チャネルについて、現在及び後続のエポックを対象とするチャネルの重みが、ゼロにセットされる。(一つの代替実施形態では、ステップ606で特定された衛星チャネルの残余が、定義された別の閾値を下回る場合は、現在のエポックだけを対象とするチャネルの重みが、セロにセットされる。)次いで、ステップ610では、ステップ606で特定された衛星チャネルを排除している間に、マトリクスGが、再計算される。ローバの座標増分及び残余がそれぞれ、ステップ612及びステップ601で計算され、次いで、すベてのチャネルの残余が閾値よりも小さくなるまで、あるいは残りのチャネルの数が何らかの所定の許容数(例えば、5)よりも少なくなるまで、図6の諸ステップが繰り返される。残りのチャネルの数が許容数よりも少なくなるまで図6の諸ステップが繰り返された場合、当該エポックは、不正確であると見なされる。この場合では、座標増分の測定値は、当該エポックについては使用されず、以前のエポックからの増分に関する外挿によって得られたデータで置き換えられる(最も単純な場合では、座標増分の測定値は、以前のエポックの増分で置き換えられる)。
第2の実施形態は、図7の流れ図に関して説明する。図7のアルゴリズムは、ステップ701で、処理ブロック509(図5)に関して上述したように、残余NEVi[j]を計算する。ステップ700で、すベての衛星チャネルにわたる残余の2乗和(S NEVi)が、計算される。ステップ702で、残余の2乗和が、閾値と比較される。閾値を超えていない場合は(ステップ704で判定される)、アルゴリズムは終了する。閾値を超えた場合は、ステップ706で、最大残余を有する衛星チャネルについての探索が、実施される。ステップ708では、ステップ706で特定された衛星チャネルについて、現在及び後続のエポックを対象とするチャネルの重みが、ゼロにセットされる。(一つの代替実施形態では、ステップ706で特定された衛星チャネルの残余が、定義された別の閾値を下回る場合は、現在のエポックだけを対象とするチャネルの重みが、セロにセットされる。)次いで、ステップ710では、ステップ706で特定された衛星チャネルを排除している間に、マトリクスGが、再計算される。ローバの座標増分及び残余がそれぞれ、ステップ712及びステップ701で計算され、次いで、すベての残余の2乗和が閾値よりも小さくなるまで、図7の諸ステップが繰り返される。ここでも、残りのチャネルの数が許容数よりも少なくなるまで図7の諸ステップが繰り返された場合、当該エポックは、不正確であると見なされる。この場合では、座標増分の測定値は、当該エポックについては使用されず、以前のエポックからの増分に関する外挿によって得られたデータで置き換えられる(最も単純な場合では、座標増分の測定値は、以前のエポックの増分で置き換えられる)。
残余の増分を解析する異常値のインジケータ420の示度は、衛星チャネル内で発生し得る異常な測定値も指示する、チャネル・インジケータ426の警報と組み合わせることもできる。チャネル・インジケータ426のかかる警報は、例えば、PLL位相弁別機の出力における信号振幅の急落または大きな信号スパイクを原因とする、異常な測定値を示すことができる。警報チャネル・インジケータ426として使用され得る不正確な測定値を検出するための様々な技法が、参照により本明細書に組み込まれる「Method And Apparatus For Detecting Anomalous Measurements In A Satellite Navigation Receiver」と題する米国特許第6,861,979号に記載されている。チャネル・インジケータ426の警報を、異常値のインジケータ420と組み合わせる他の手法も存在する。例えば、異常値のインジケータ420の信号を、警報426と直列に組み合わせることができ、すなわち、異常値のインジケータ420が残りのチャネルに作用している一方で、チャネル・インジケータ426の警報信号によって特定された疑わしいチャネルを、排除することができる。並列動作では、異常値のインジケータ420が、すベてのチャネルに作用し、異常値のインジケータ420と、チャネル・インジケータ426の警報のどちらからも異常として特定されたチャネルが、排除される。他の組合せも可能であることが、当業者には理解されるであろう。例えば、チャネル・インジケータ426の警報、及び異常値のインジケータ420はそれぞれ、最も信頼性の低いチャネルを特定するが、特定されたチャネルを排除することに関する最終的な意思決定は、何らかの重み付けアルゴリズムに基づいていてもよく、したがって、チャネル・インジケータ426の警報と、異常値のインジケータ420のいずれかに、より大きな重みが与えられる可能性がある。
図4に示されるように、チャネル・インジケータ426の警報信号、及び異常値のインジケータ420は、衛星チャネル内で異常な測定値が現れたときに、警報信号を生成する。これらの警報信号は、計算の正確さを高めるために、ローバの座標増分の計算418及び/または重みの補正406に供給することができる。これらの警報信号は、計算の正確さを高めるために、様々な手法で使用することができる。
警報信号を使用するための1つの手法は、衛星チャネル内で測定された搬送波位相増分、及び警報信号が生成されたエポックを排除することである。この技法を使用する場合の目標は、LSM処理から、ローバ座標の計算に支障を来す恐れのある位相増分を排除することである。この技法は、対応するエポックにわたる立体配座内の衛星の冗長性に基づいている。しかしながら、衛星の数が減少すると、精密度の幾何学的希釈(geometric dilution of precision:GDOP)が低下し、残りの衛星の誤差が及ぼすローバ座標の増分誤差への影響が増大する。
警報信号を使用するための別の手法は、特定されたエポックにわたって測定されたローバの座標増分を排除し、以前のエポックの測定値に関する外挿によって得られた増分を、局所座標の判定の際に置き換えることである。この技法は、動作中のローバのパラメータが緩やかに変化するという想定に基づいている。この技法の目標は、局所座標を定義する増分の和から、異常誤差を有する増分を取り除くことである。この技法は、外挿によって行われるが、当該技法の効率は、隣接するエポックの間の座標増分の相関に、すなわち、ローバの動作の実際のモデルに依存する。かかる置換えは、誤差を増大させることになり得ることに留意されたい。
有利な異常値のインジケータの一実施形態を、上述のパラメータを利用して以下で説明する。衛星の測定を再考すると、ローバの動作中、衛星の測定に割込みが発生することが示される。これらの割込みは、衛星の上昇及び設定に伴い頻繁に発生するが、高い標高にある衛星が、局所的な物体によって遮光状態になることもある。これらの境界エポックの間の搬送波位相増分が、測定されなければならない。しかしながら、最初に計算された増分が非常に大きく、インジケータの値を歪ませる可能性がある。したがって、異常値のインジケータは、まず、チャネル・インジケータに従って欠落した測定値に関する情報を検討し、次いで、マーク付けされた後続のエポックにわたって衛星の重みをリセットすべきである。各エポック毎に次の条件が、すなわち、1)重み付けされた平均残余(average weighed residual)が波長の1/4(約5cm)よりも大きく、2)衛星の数(その重みは非ゼロ)が5よりも多い、という2つの条件が満たされるべきである。これら2つの条件が満たされた場合は、残余のモジュロが最大である衛星が(動作中の衛星のうちから)選出され、当該モジュロが波長(約20cm)よりも大きいかどうかが判定される。次いで、対応するチャネルの重みがリセットされ、マトリクスGが再計算され、2つの条件の少なくとも1つが満たされなくなるまで、上記の手続きが繰り返される。当該衛星の重み係数で逓倍された各衛星チャネルの残余における2乗和の平方根として、重み付けされた平均残余が、すベての動作中の衛星にわたり再計算される。重み係数は、衛星の重みから形成され、正規化の対象である。
一般に、衛星とローバ・ユニットはどちらも滑らかに移動するので、ある衛星を対象とする隣接するエポックの間の搬送波位相増分間の大きな差は、異常な測定値を示す可能性もある。この特徴(ならびにその他の特徴)を使用して、異常な位相増分を検出し、排除することができる。
すベての繰返しが完了した後は、以下の諸ステップが、実施される。当該エポックの間の重み付けされた平均残余が、波長の1/4(約5cm)よりも大きい場合は、それ以前の2つのエポックを使用して外挿が実施された外挿値の代わりに、当該エポックにわたるローバの座標増分が、用いられる。座標増分のベクトルは、(i番目のエポックで計算された)dXiで表される場合は、外挿値(2dXi−1+dXi−2)で置き換えられる。
局所座標の正確さを高めることを可能にする、さらなる追加の技法も存在する。様々な成分が、それぞれ異なる起源及び異なる統計パラメータを有することから、局所座標の誤差に関する総経費の一因となっている。例えば、ある種の誤差は、衛星信号の追加的な遅延の緩やかな変化によって引き起こされるが、これらの誤差は、相当の時間間隔にわたる多項式近似によって処理することができる。かかる遅延の原因は、大気の緩やかな変化、受信機チャネルの不安定性などと関係付けることができる。追加的な遅延は、観測間隔中は変化せず、局所座標の正確さに影響を与えることはない。それにもかかわらず、誤差の1次導関数、すなわち追加的な遅延の変化率が、局所座標の誤差を増大させることになる。
ローバがその動作を開始する前に、座標増分の測定を開始する場合は、上述の誤差成分を部分的に減少させることが可能である。ローバが定常であるときは、真の座標増分は、ゼロと等しい。したがって、座標増分の測定値の誤差は、後続の移動間隔に外挿し、座標増分を対象とする外挿の補正として使用することができる。ローバがその時々に停止した場合、外挿の補正は、1つの停止から別の停止へと変化でき、より高い階数の導関数を考慮して、以前に測定された点によって判定することができる。かかる技法を使用して、実時間で測定される局所座標の正確さを高めることができる。外挿の補正の効率は、他の誤差成分のうちでもとりわけ、緩やかに変化する遅延の重み、停止の回数及び継続時間、ならびに外挿の補正が加えられた動作間隔の継続時間に依存する。
いくつかの適用形態では、局所座標は、実時間ではなく後処理モードで使用される。ローバが、既知の座標を有する点を通過した場合は、その情報を使用して、内挿の補正を判定することができる。(局所座標系の原点は、ローバの移動中は固定されたままでなければならないことに留意されたい。)特に、ローバは、ループに沿って移動し、ある時点で局所座標系の原点に戻る。原点において測定される復帰時と開始時の局所座標間の差が、座標測定値の最終的な誤差である。最終的な誤差を経過したエポックの数で割ると、座標増分の平均誤差が得られ、この平均誤差を、動作間隔の間に測定された座標増分を対象とする補正として使用することができる。次いで、この補正を用いて、局所座標を再計算することができる。同様に、内挿の補正は、ローバが既知の点を数回通過したときに判定される。この場合では、隣接点間の線形内挿を使用することも、LSMを用いて処理されたいくつかの点に基づいて、多項式の形で補正を加えることもできる。
差動モードの2つの受信機を使用して、局所座標を測定することも可能である。定常の基地受信機及び移動中のローバ受信機を使用すると、実時間と後処理モードの両方で、ローバの局所座標をより正確に測定することができる。基地とローバの間の通信リンクが実時間で測定を行うようにすることが、必要である。後処理モードを用いると、基地及びローバに関して記録された測定値のコプロセッシングが可能になる。基地の精密な座標を知ることは、必要でない。
測定済みの搬送波位相増分の一重差を形成するために、ローバの搬送波位相増分からそれぞれ、基準搬送波位相増分が減算される。同様に、ローバの局部クロックに従って測定された衛星の座標を使用して、一重差が生成される。異常値のインジケータは、基地またはローバにおいてあるいはそれらの間の通信リンクにおいて大きな誤差が検出された、衛星及びエポックの測定値を排除する。
一重差の残余の増分は、測定された一重差から予期される一重差を減算し、クロック・ドリフトを考慮することによって得ることができる。上述した手続きと同様のLSMの手続きを利用すると、基地及びローバの誤差に関する相関性の高い成分が排除される差動モードにおいて、ローバの座標増分及び局所座標を位相測定値に基づいて判定することが可能になる。
上記の詳細な説明は、あらゆる側面において限定的なものではなく、説明的かつ例示的なものとして理解されるべきであり、また、本明細書に開示の本発明の範囲は、上記の詳細な説明を基に決定されるべきでなく、特許法によって認められるすベての範囲に従って解釈される、添付の特許請求の範囲を基に決定されるべきである。図示及び本明細書に記載の諸実施形態は、単に本発明の諸原理を例示するものにすぎず、当業者なら、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく様々な修正を実装することができることが、理解されるべきである。当業者なら、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、他の様々な特徴の組合せを実装することができるはずである。
Claims (11)
- 初期の位置から複数の連続する位置へと移動する移動ユニットの相対的位置を判定する方法であって、
対応する複数のナビゲーション衛星から複数の信号を受信するステップと、
移動中に該信号の搬送波位相を追跡するステップと、
複数の時間エポックのそれぞれの間に、該信号のそれぞれの搬送波位相の増分を計算するステップと、
該搬送波位相増分のいずれが異常であるかを判定するステップと、さらなる計算を基にそれらの搬送波位相増分を排除するステップと、
排除されない搬送波位相増分を使用して、該複数の時間エポックのそれぞれを対象とする座標増分を計算するステップと、
該移動ユニットの位置を、該初期の位置と相対的に判定するために、複数の時間エポックにわたる該座標増分を合計するステップとを含むことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、
該座標増分を計算するステップは、
搬送波位相増分が異常であると判定されなかったナビゲーション衛星の衛星座標を使用して、変換マトリクスGを生成するステップと、
該変換マトリクスG及び最小2乗法を使用して、該座標増分を計算するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、
該搬送波位相増分のいずれが異常であるかを判定するステップは、
搬送波位相増分の残余を計算するステップと、
該残余を閾値と比較するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、
該搬送波位相増分のいずれが異常であるかを判定するステップは、
搬送波位相増分の残余を計算するステップと、
残余の2乗和を計算するステップと、
該残余の2乗和を閾値と比較するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、
該搬送波位相増分のいずれが異常であるかを判定するステップは、
重み付けされた平均残余を計算するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、
該排除するステップの後、搬送波位相増分の残りの数が、特定のエポックを対象とする閾値よりも少ないかどうかを判定するステップと、
該搬送波位相増分の残りの数が、特定のエポックを対象とする閾値よりも少ない場合は、以前のエポックからのデータを使用して、該特定のエポックの間の座標増分を外挿するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、
該搬送波位相増分のいずれが異常であるかを判定するステップは、少なくとも部分的には衛星チャネル・インジケータの警報信号に基づくことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法において、
該移動ユニットが移動しているその後の期間中に、該移動ユニットが定常である期間中に計算された座標増分を、補正の外挿として使用するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
- 対応する複数のナビゲーション衛星から複数の信号を受信し、移動中に該信号の搬送波位相を追跡する手段と、
複数の時間エポックのそれぞれについて、該信号のそれぞれの搬送波位相増分を計算する手段と、
該搬送波位相増分のいずれが異常であるかを判定し、さらなる計算を基にそれらの搬送波位相増分を排除する手段と、
排除されない搬送波位相増分を使用して、該複数の時間エポックのそれぞれを対象とする座標増分を計算する手段と、
該初期の位置と相対的に判定するために、該移動ユニットの位置を複数の時間エポックにわたる該座標増分を合計する手段とを含むことを特徴とする移動ユニット。
- 請求項9に記載の移動ユニットにおいて、
座標増分を計算する該手段は、
搬送波位相増分が異常であると判定されなかったナビゲーション衛星の衛星座標を使用して、変換マトリクスGを生成する手段と、
該変換マトリクスG及び最小2乗法を使用して、該座標増分を計算する手段とをさらに含むことを特徴とする移動ユニット。
- 請求項9に記載の移動ユニットにおいて、
該移動ユニットが定常である期間中に計算された座標増分を、該移動ユニットが移動しているその後の期間中に、補正の外挿として使用する手段をさらに含むことを特徴とする移動ユニット。
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