JP2011528923A - 組織をターゲットにしたバイオマーカーを定量的に検出する多重スペクトル光音響トモグラフィ - Google Patents

組織をターゲットにしたバイオマーカーを定量的に検出する多重スペクトル光音響トモグラフィ Download PDF

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Abstract

【課題】バイオマーカーを定量的かつ3次元的に検出し撮像する。
【解決手段】組織をターゲットにしたバイオマーカーを含むターゲット組織を撮像する多重スペクトル光音響トモグラフィ方法が、複数の光照射波長において少なくとも一のパルス光照射のパターンを発する光照射部でターゲット組織に光照射し、組織をターゲットにしたバイオマーカーからの圧力信号を検出器で検出し、前記光照射に応答して、圧力信号がターゲット組織内で生成され、ターゲット組織内における組織をターゲットにしたバイオマーカーの分布に関して定量的なトモグラフィ画像を再構成する工程を含む。光子伝播モデルを用いて圧力信号が解析され、圧力信号はターゲット組織における光照射フルーエンスに依存し、また光照射波長、少なくとも一のスペクトル処理のスキーム、トモグラフィ画像を提供する反転スキームにも依存する。
【選択図】図1

Description

本発明は、多波長光照射を用いた、特に臨床撮像、小動物撮像及び小生物体撮像の用途において、組織をターゲットにしたバイオマーカーを定量的かつ3次元的に検出し撮像するための方法及び装置に関する。
機能性を有する分子バイオマーカーを生体内で非侵襲的に撮像することは、生物学上の発見、医薬品の発見、多くの臨床用途において先端的で重要な能力であって、このような撮像は、解剖により撮影しその後疾患を同定する手法よりも優れたものといえる。組織をターゲットにしたバイオマーカーを視覚化することにおいて、他に重要で有望なものとしては、特定の一次性分子やその下流のターゲットをモニタすることにより生体内で治療応答を検査し定量化する能力である。さらには、治療効果を数時間から数日という時間尺度で動的に確認することも可能となろう。このような能力は、伝統的に遅れている薬効の終了点のままである今日のヘルスケアの大宗、すなわち致命的な結果をもたらしかねない非効果的な治療戦略の迅速な改善を往々にして阻害する慣行とは対照的である。
同様に、顕微鏡観察により類例なき洞察力が生物学に対して与えられたものの、これは数百μmだけ組織内に侵入できるに過ぎない。このように顕微鏡観察法による組織内侵入が限定であるため、この方法で生体内を生物学的に観察することには限度がある。明らかに、組織内に深く進入し、顕微鏡で得たコントラストを視覚化したり、又は新たなコントラスト機構を活用する方法は、生物学的現象を動的に観察し、発達的に研究し、医薬品を発見する過程において非常に重要である。
光学的な機能を備えつつ、分子レベルでメゾスコピック的かつ巨視的に組織を撮像することが可能になれば、多くの病理学的過程を生体内で研究するための新たな道筋が開かれる。実際、光学波長を用いて、血管内の酸素付加に関する内因性の機能的な情報から分子レベルの検出まで、様々な疑問に対して用いることのできる多種多様な探査機構を提供している。例えば外部から投与した光学的に蛍光性を有する薬剤を使用することで、他の方法では視認できない細胞の過程及び細胞内の過程を視覚化し、非侵襲的なフォトニック撮像がさらに発展した。タンパク質や酵素に限定して、例えばコントラスト剤及び蛍光性レポーターを使用すれば、炎症や腫瘍発達等の疾患を対象にした多種多様なバイオマーカーを区別できる可能性が潜在的に高いことが判明している。
米国特許第6641798号明細書 米国特許第6615063号明細書 米国特許第5840023号明細書 米国特許第6208749号明細書 米国特許第6760609号明細書 米国特許第7298869号明細書 米国特許第6498942号明細書 米国特許出願公開第2004−0127783号明細書 国際特許出願公開第WO2007/084771号
J.ラウファー他、『フィジックス・イン・メディスン・アンド・バイオロジー(Phys. Med. Biol.)』、第52巻、141〜168頁、2007年(J. Laufer et al., "Phys. Med. Biol." vol. 52, p. 141-168, 2007)
米国特許第6641798号明細書(特許文献1)では、診断撮像及び治療に有用な、腫瘍をターゲットとする光学的コントラスト剤が開示されている。ここに開示されるバイオコンジュゲート(bioconjugate)は、多様なビス及びテトラキス(カルボン酸)同族体を有するシアニン染料を備えている。この化合物を共役させて生理活性ペプチド、炭水化物、ホルモン、医薬品、その他の生理活性物質とできる。比較的高い分子量のイメージング剤に比べて、これらの化合物は小サイズなので、腫瘍細胞に対して送達しやすくできる。腫瘍やその他の異常検出のためや、局部的な治療のため、腫瘍の光音響的撮像・検出・治療のため、腫瘍の音蛍光的撮像・検出・治療のための内視鏡的用途において、これらのコントラスト剤は診断撮像及び治療にとって有用である。また、蛍光分子トモグラフィ(Fluorescence Molecular Tomography:FMT)も、肉眼で見えるような規模の深部組織内、すなわちmmレベルの分解能を有するまるごとの動物内において、蛍光色素をピコモル量からフェムトモル量まで検出できる。この技術は、トモグラフィの原理を拡散光トモグラフィと共有しており、蛍光色素の濃度に関して3次元のトモグラフィ画像を再構成するために、組織内における光子伝播を説明する数学的モデルと組み合わせて多重放射による光照射を利用している。
また米国特許第6615063号明細書(特許文献2)は、深部組織において近赤外蛍光励起を検出するよう設計された、蛍光を介在させる分子トモグラフィによる撮像システムを記載している。このシステムは、ターゲットとする蛍光分子プローブ又は高感度であってアクチバブルな蛍光分子プローブを利用できる。このようなプローブは、分子の特異性を向上させ、高い蛍光コントラストを達成して、癌等の患部組織を生体内で早期に検出することや、分子ターゲットにより予知することが可能となる。
さらに近年、光音響法(opto-acoustics;photo-acoustics)を用いてトモグラフィで組織を撮像すれば、超音波分解能でもって数mmから数cmまでの侵入深度の達成が可能であることが判明している。光音響による撮像は、パルス光の吸収後に光音響的に誘起された信号を超音波で検出することに依存している。生成された広帯域超音波の振幅は、組織における局部的な吸光特性に反映される。生体組織内における超音波散乱は、光散乱に比べて極端に弱いので、生体医学用として光音響による撮像は、高い吸光コントラストを超音波回折によってのみ限定される良好な空間分解能と組み合わせている。また光音響による撮像は、血管樹、腫瘍の脈管内形成、血液酸素化モニタリングの撮像において効率的であることが判明しており、また組織発色団、吸光性ナノ粒子及び染料、色原体の分析に感度良好であることが判明している。
さらにまた、例えば米国特許第5840023号明細書(特許文献3)はレーザの光音響による撮像システムを教示している。この技術は、レーザ光で誘起された過渡圧力波(音響波)の輪郭を時間分析的に測定することを利用している。圧力波は、診断上の関心領域の組織を吸収することで優先的に生成される音響源によって発せられる。この技術により、生体内でレーザパルスを照射された、よどんだ、階層化され不均質である組織内での吸光分布を視覚化させることが可能となる。このようにレーザの光音響によるトモグラフィは、正常な組織の構造及び特性を特徴付けし、また組織の病理学的変化を検出することに利用できる。レーザの光音響による撮像システムで撮像できる光学的不均質性は、例えば腫瘍、損傷した組織、血管、その他の階層化された組織等の異常な組織を含んでいる。さらに、器官や器官の一部の3次元画像を得ることもできる。
したがって、多重スペクトルによる検出は、多様な関心対象の分光シグネチャをより良く判別するための手段として利用されることが多い。例えば米国特許第6208749号明細書(特許文献4)は、皮膚の関心領域の状況について自動的に特徴付けることができ、皮膚組織を多重スペクトルにより撮像するためのシステムを開示している。このシステムは、適切な濾光により照射したとき、前記関心領域を直接にデジタル撮像するか、又はそのカラー写真のスライドをデジタル化して撮像する。ここで風合い、非対称性、痣、境界の不規則性に関連するパラメータは自動的に類推される。関心領域は、これらのパラメータに基づいて、デジタルプロセッサによって自動的に特徴付けられる。関心領域は皮膚の病変としても良く、この場合、病変を悪性又は良性として特徴付けることが可能となる。
一方、米国特許第6760609号明細書(特許文献5)においては、第1波長の光と第2波長の光が組織を通過するときの光透過率を測定することによって、動脈血中酸素飽和度を測定する方法が開示されている。測定された光透過のうち、安定状態にある成分を用いて、適切な較正曲線を選択する。測定された光透過のうち、拍動性を有する成分を用いて、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの分光シグネチャに関する選択された較正曲線を使って、動脈血中酸素飽和度が測定される。さらに、複数の光透過測定を利用して血中酸素飽和度を測定する酸素測定システムも提供されている。
光音響分光法では、血液の発色団を区別するために以前は多波長の方法が用いられていた(J.ラウファー他『フィジックス・イン・メディスン・アンド・バイオロジー』、第52巻、141〜168頁、2007年(非特許文献1)、及び米国特許第7298869号明細書(特許文献6)を参照)。
また米国特許第6498942号明細書(特許文献7)も、パルス放射線の放射源と、動物体の組織部位に近接して又は接触して配置される前面を有するプローブとを備えた光音響装置を開示している。さらにこのプローブは、プローブの前面の表面において終端する複数の光ファイバであって、これらの他端においてパルスレーザに接続されている複数の光ファイバを備えている。またプローブの前面には、その中又はその上に、トランスデューサ信号を静脈血酸素付加の測度に変換する処理部に接続されたトランスデューサが取り付けられる。このトランスデューサは、組織部位内の血液から放射パルスに対する音響応答を検出する。また他の方法として、米国特許出願公開第2004−0127783号明細書(特許文献8)には、(染料の蛍光の周波数帯の内側及び外側における)2波長を用いてこれらの波長を組み合わせて画像を向上させるために、染料刺激のもとで及び染料刺激無しで画像を生成し染料マーカーを撮像する技術が開示されている。
上述した光照射技術の限界は、組織のように光学的に錯綜した構造を扱うときに得られる画像が、ターゲットにした発色団及び他の天然組織の発色団を組み合わせた効果となることである。このような錯綜は、他に多くの非特定組織吸収物質が存在する条件下で分子マーカーを分解しなくてはならないような分子撮像用途において特に重要となる。さらに、光音響(opto-acoustic;photo-acoustic)による観察は、これまで単一方向の均質な光照射を利用して、光が組織内で伝播するときにも同様に均質な光照射が発生するであろうとの仮説を前提として取り扱われる場合に限定されてきた。
例えば国際特許出願公開第WO2007/084771号(特許文献9)には、「体内における任意の所定平面又はスライス内で、エネルギー・フルーエンスを均質に分布させる」光照射を提供する方法が開示される。しかしながら、このような光照射場を実現することは非常に難しい。それは、組織の不均質性が不明であり、組織内の任意の所定平面に対して光強度の重大な変量を課すことになりかねないからである。マウスの胴体のように円柱状の被検体を想定した場合、単一方向の光照射を極座標に変換すれば、結果的に長手方向の意味で被検体の中央に向かって光が指向されるように配置された多数の光照射点を利用することになる。この場合、光照射及び検出の配置を簡易にするため、被検体の組織を水又は類似の流体で取り囲むことが必要となる。
本発明の目的は、特に臨床撮像及び前臨床撮像又は実験室における研究を目的として、従来技術の欠点を回避しうる、改良された撮像方法を提供することにある。特に本発明の目的は、組織内において3次元の局在化及び分子プローブの定量化の精度を向上させた撮像方法を提供することにある。さらにまた、本発明の目的は、特に本発明の撮像方法を実現するよう設計された改良型の撮像装置を提供することにある。また提供される本発明に係る方法及び装置によれば、生体内において、特に実用的な実装と組織に対するバイオマーカーの非常に正確な判別とを達成できる。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記の目的は、独立請求項の特徴を備える撮像方法及び/又は撮像装置によって解決される。また従属項には、本発明の好適な実施形態が記載される。
本発明は、特に臨床撮像、小動物撮像、微生物撮像の用途において、多波長光照射を用いると共に組織内での光子伝播も考慮して、多重スペクトル光子励起場(次いでこれが音響圧力波を生成する)に関する正確な知識を獲得する、組織に対するバイオマーカーを定量的かつ3次元的に検出し撮像する概略的な技術に基づいている。本方法は、比類なき画質、忠実度、全体的な正確さを有する3次元のバイオマーカー画像を達成するために、圧力波の測定を光子伝播モデル及び多重スペクトル情報と組み合わせている。
したがって、本発明の第1の側面によれば、上記の目的は組織をターゲットにしたバイオマーカーを含むターゲット組織を撮像する多重スペクトル光音響トモグラフィ(multi-spectral opto-acoustic tomography:MSOT)の方法によって達成される。この方法は、
組織をターゲットにしたバイオマーカーによって吸収される複数の光照射波長において少なくとも一のパルス光照射のパターンでターゲット組織に光照射し、
組織をターゲットにしたバイオマーカーからの圧力信号(特に音響信号)を検出し、ここで前記光照射に応答して、ターゲット組織内で組織をターゲットにしたバイオマーカーによって圧力信号が生成され、
ターゲット組織内における組織をターゲットにしたバイオマーカーの分布に関して定量的なトモグラフィ画像を再構成する工程を含む。光子伝播モデルを用いて圧力信号が解析され、光子伝播モデルはターゲット組織に光照射する光のパターンに依存し、また光照射波長、スペクトル処理のスキーム、トモグラフィ画像を提供する反転スキームにも依存する。
また本発明の第2の側面によれば、上記の目的は、組織をターゲットにしたバイオマーカーを含むターゲット組織を多重スペクトル光音響トモグラフィ(MSOT)による撮像に適合する撮像装置によって達成される。この撮像装置は、組織をターゲットにしたバイオマーカーによって吸収されるいくつかの光照射波長を含む少なくとも一のパルス光照射パターンでターゲット組織に光照射するように配置された光照射部と、前記光照射に応答してターゲット組織内で組織をターゲットにしたバイオマーカーから生成された圧力信号を検出するよう配置された検出器と、ターゲット組織内における組織をターゲットにしたバイオマーカーの分布に関する定量的なトモグラフィ画像を再構成する再構成器(reconstruction device)とを備える。この再構成器は、光子伝播モデルを演算するプロセッサと、スペクトル処理のスキームを実行するプロセッサと、トモグラフィ画像を提供する反転スキームを実行するプロセッサとを備える。この反転に従って構築された画像は、ターゲット組織内において少なくとも一のバイオマーカーの空間分布を示す。
好ましくは、再構成器は、脈管、特に冠動脈又は頸動脈のような血管の画像を構築するために反転法及びスペクトル処理を適用するように設計されており、画像は脈管の壁におけるバイオマーカーの空間分布を示す。
好適には、本発明は、組織内における波長同調された光子の数学的モデルを、異なる撮像スケールにわたる機能的及び分子的撮像を改善するための多重スペクトル処理技術と組み合わせる。本発明により、比類なき画質、忠実度、全体的な正確さを有するバイオマーカーの3次元画像が実現される。
さらに本発明は、組織に対するバイオマーカーを検出するために小さな形状係数で構築できる多重スペクトル光照射バイオマーカーレポーター撮像装置を提供する。好適には、この装置は生体試料内及び臨床用途において分子マーカーを撮像するのに利用できる。特に好適な用途は、臨床上の炎症性及び心血管用途並びに他の生きた生体試料において蛍光タンパク質及び/又は外的に投与された発色性染料又は蛍光性染料を分解することを含む。
本発明は、本発明者らによる以下の考察に基づいている。ターゲット組織におけるバイオマーカーを光学的方法により検出するために、光が局部的にバイオマーカー(又はバイオマーカーレポーター)の部位に送達される。ただ、光は組織内で伝播するので、内的組織吸収及び全体的な光伝播の特性が、多数の組織要素において、波長依存的でもある不均質なエネルギー堆積を創り出すことによって、伝播パターンを変化させてしまう。したがって、検出信号に対するバイオマーカーの寄与を単離するのはチャレンジとなる。
既に背景技術の欄で概略を説明したように、光音響法を含む多重スペクトル法は、選択された波長において組織の減衰を分解し、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの濃度、シトクロムオキシダーゼの濃度、おそらくは他の組織発色団及び外的に投与された染料の濃度を引き出すために、機能的測定において利用されてきた。しかしながら、従来型の方法では単純な光子伝播パターンを想定している。従来型の共通する考え方は、平面波状の光照射が組織内において平面的で均一な光子分布となるというものであり、表層的に過ぎない血管画像となってしまう非常に粗っぽい考え方である。
このような従来技術とは対照的に、本発明者らは、組織に対するバイオマーカーレポーターの光音響的な撮像を行うための方法であって、表層だけでなくさらに深部におけるコントラストも高い忠実度の、真に3次元的で定量的な撮像を可能とする方法を開発した。本発明の特に好適な特長は、一般の発色団を分解するのに適用されてきた技術に比べ、組織内における光子伝播を正確に推測できるようにするために、多重スペクトル測定を組織内における光子伝播に関する波長依存的なモデルと統合している。このようなアプローチは、正確な光音響画像を提供するのに必須であり、臨床撮像において特に重要である。これに対して、従来型の光音響撮像(均一の光照射、マッチング流体への浸漬)における一般的な考え方は実用的なものではない。したがって、本発明の一の特長は、ターゲット組織内における光子分布に関して定量的情報を提供していることである。
本発明によれば、光分布のための補正はバイオマーカー分布の再構成画像に利用できる。あるいは、光分布のための補正は検出された生の光音響信号に直接利用できる。この場合、最終の定量化された吸光画像は、既に正規化された生の光音響の記録を用いて(例えば逆投影により)再構成されることになる。
また、光音響法を用いて真の組織内における分子マーカー分布を撮像することはさらにチャレンジとなろう。先ず、生体内の吸光コントラストが幾つかの波長において2桁まで達し得る。具体的には、血液含有が高い幾つかの部位は非常に吸収性が高く、マーカーを高吸収性のバックグラウンドと判別し難くしてしまう。普通、真の組織から得られる画像は、関心領域の分子マーカーだけによるのではなく、特に可視光における波長で吸光をも大きく変化させ得るメラニン、赤血球等のように数多くの組織発色団によっても、さらなる吸収分布を呈するものである。これらの発色団の中には、関心領域のバイオマーカーの消光/吸光スペクトルとの重大なクロストークを有するようなものもあり得て、これがさらにバックグラウンド上での検出を複雑なものにしかねない。
したがって、本発明の他の重要な特長は、マーカーと共に非常に重要な内因性組織成分に関してアプリオリに知られている又は測定されているスペクトルを取り込んだ多波長スペクトル・マッチング手順の用途である。これは、非常に不均質な組織において、分子マーカーの蓄積を定量化できる能力に達するには困難を伴うものである。好適には、スペクトル・マッチング手順は画像形成における多様な段階において、例えば光子伝播モデルを演算する間及び/又は逆投影により光音響のデータから画像を再構成する間に利用できる。
分子撮像の用途として、多波長励起が特に好適であると考えられるが、これは「ベースライン」測定、すなわち分子マーカー投与前の測定が必要とされないからである。したがって、長い集積時間又は賦活時間を有する分子マーカー、又は蛍光タンパク質のような内因性組織の分子マーカーの変調は、高感度で正確に検出できる。逆に、多波長で光照射されるので、この方法は、血流動態又は小時間にわたって濃度を変動させる非特定染料の循環(例えばICG)のような、動的現象を撮像するのにも応用可能である。他方、補正工程はキネティクスに関する事前の知識に基づいて応用されるのが好ましい。
本発明は、光音響モードにおける優れた本発明の空間分解能、非電離放射線の使用、検出感度に強い影響を与えることができる分子マーカー(多数のターゲットにされる蛍光色素又は活性化可能な蛍光色素、蛍光タンパク質、発色団物質)がますます入手しやすくなったことによる強力な潜在的用途を有する分子撮像を可能にする。
相対的に広帯域の吸光特性を有するほとんどの純粋な発色団と比べて、多くの蛍光色素、例えばアレクサ系染料(Alexa-based dye)又はサイ系染料(Cy-based dye)、ICG、蛍光タンパク質(GFP、RFP)はこれらのピーク励起スペクトルの近傍において鋭い共鳴を示し、これらは高感度の多波長撮像用の便利な候補に挙げられる。また、特に近赤外線における蛍光色素の中には(光音響信号生成に有利に作用する)低い量子収率と協働して105-1cm-1を超える、相対的に高い分子消滅係数を有しているものもある。したがって、さらに特定の純粋な色原体の分子マーカーが開発されるようなことがあっても、容易に入手可能な蛍光色素の撮像は、高吸収性の組織発色団が存在下であっても生理的に有用な濃度で達成できる。さらに多数の波長で取得することは、より長い取得時間を要して多数の吸収物質、マーカー及び蛍光色素を独立に分解することに繋がり得る。
好ましくは、圧力信号は音響検出器を使って検出される。あるいは、圧力信号はターゲット組織表面の変数を検出する光学的測定で取得できる。本発明による方法は、光学的検出の演算により、完全体の小動物撮像用(G.ザカラキス他、『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』、第102(51)巻、18252〜18257頁、2005年)として、又はメゾスコピックな撮像用(C.ヴィネゴニ、C.ピツーリ、D.ラザンスキー他、『ネイチャーメソッド』、第5(1)巻、2008年(G. Zacharakis et al., PNAS 102 (51) : pp. 18252-18257, 2005) or mesoscopic imaging C. Vinegoni, C. Pitsouli, D. Razansky, et al., NATURE METHODS 5(1), 2008))として、自由空間モード及び完全放射モードにおいて利用できる。
さらに、トモグラフィ反射や徹照法の実行は、例えば心血管疾患又は神経系疾患を検出する際に、例えば徹照モードにおいては胸部組織の数cmを通過して、又は反射モードにおいては4cm〜5cmの深さで検出する際の臨床撮像用としても利用できる。この方法は、音響検出で演算することにより、類似の用途及び幾何形態的な埋め込みにおいて向上した(超音波様の)分解能で、典型的には例えばマッチング流体又はゲル等、音響検出用のマッチング媒質を通じて利用できる。
本発明の好ましい実施形態によれば、光照射パターンは時分割した態様で少なくとも2つのスペクトル的に別個の波長範囲を備えている。好ましくは、光照射工程は、少なくとも2つのパルス波形の光照射パターンを用いてターゲット組織に光照射することを含み、これらの光照射パターンはその後、ターゲット組織に指向される。特に好ましくは、光照射パターンは、撮像される被検体の大きさと、圧力測定が記録される点から被検体の距離に基づいて、1s未満、好ましくは1ms未満、10μsまで低下した時間間隔で提供される。最低限可能な間隔は、撮像される領域内におけるすべての点から発する圧力信号を、次の光照射パルスを発する前に測定しなくてはならない態様で選択する必要がある。このようにして、別個の波長範囲で収集される圧力信号の歪みを回避することができる。
また本発明の他の好ましい実施形態によれば、光照射パターンに関する少なくとも2つのスペクトル的に別個の波長範囲は組織をターゲットにしたバイオマーカーの異なる吸収量を有する少なくとも2つの波長それぞれを含む。これらの別個の波長範囲は、少なくとも2つのスペクトル吸収領域をカバーし、そこでは組織をターゲットにしたバイオマーカーが異なる吸収値を有している。好ましくは、バイオマーカーの分子は100nm未満、特に好ましくは70nm未満、例えば20nm〜50nm範囲内の吸収スペクトル内での変数を有する。
考案された光子伝播モデルは、ターゲット組織内での吸収の不均質さだけでなく、必要であれば散乱の不均質さをも説明できる。本発明の他の好ましい特長によれば、光子伝播モデルは以下のアプローチのうち少なくとも一に基づいて演算されることが好ましい。
第1に、光子伝播モデルは、ターゲット組織内の光照射及び圧力信号の検出に関する幾何形態に適合されて、光子輸送方程式の解を用いて演算できる。第2に、光子伝播モデルは、ターゲット組織内における光子輸送に関する経験的モデルを用いて演算できる。
第1及び第2のアプローチでは、ターゲット組織に関する具体的な幾何形態的状態に従って照射光フルーエンス(illuminating light fluence)の分布を演算することができる。光子伝播モデルは、圧力信号に関する改良型解析を提供する、ターゲット組織内の構造により光照射波面の変化に依存する。例えば、以前に本発明者ら(D.ラザンスキー及びV.ヌツィアクリストス、『メディカル・フィジックス(MEDICAL PHYSICS)、第34(11)巻、4293〜4301頁、2007年』)が紹介したように、試料全体にわたる光フルーエンスは、前の工程において光音響画像により引き出された吸収マップ及び境界条件に基づく拡散方程式の解を求めることにより演算できる。他の実施例として、光子が組織内に数mmから数cmまで侵入する、ほとんどの臨床的な用途にとって、拡散モデルが適切であり得る。したがって、小動物の撮像及び特にメゾスコピックな撮像にとって(ここで「メゾスコピック」とは、0cm〜1cmの大きさの組織を含むものである。)、輸送方程式の数値的又は解析的分解を含む光子伝播に関するさらに正確なモデルの分解が一般的に好ましいとされる。
第3に、光子伝播モデルを演算するには、入射する光子の分布及び/又は光照射パターンを組み入れたモデルを使用できる。このような変形例は、仮に光照射パターンが光子強度に関して所定の幾何形態をなす分布を与えられている場合に好ましいものである。一例として、仮に光照射パターンが光ファイバーの出力側に提供された場合、光子伝播モデルは点形状をなして入射する光子の分布及び光照射の球状伝播に基づいて算出される。矩形の光照射配列をなす他の実施例では、入射する光子の分布及び/又は光子分布モデル内に導入される光照射パターンはしかるべく適合される。
第4のアプローチでは、検出された圧力信号及び/又は任意の再構成段階において生成された光音響画像は光子伝播モデルを算出するのに使用できる。この好適なケースでは、光照射場に関する想定は必要とされないので、この方法は、複数の光照射領域を有する携帯型スキャナから血管内撮像まで、任意の光照射設定において操作できる。このことは、本発明の特に好ましい特長の一となる。ほとんどの従来型システムでは、マッチング流体と組織に対する均質な光照射が可能な特定の光配置との利用に関するガイドラインに従っているが、本発明の実施形態は、光源及び検出器における幾何形態の設定に関する詳細とは独立している。さらに、多重スペクトル撮像のアプローチを用いれば、非特定の吸収バックグラウンド上で機能的及び分子的に撮像するという意味で、重要な組織に対するバイオマーカーを分解することができる。
換言すれば、好ましい実施形態において、間接的な光子伝播モデルの代わりに、組織内の光子フルーエンスを光音響のデータから直接引き出すことができる。詳細については後述するように、光音響信号は局部光フルーエンスと局部の吸収係数とを乗算した積を示している。大抵の実用的なケースでは、フルーエンスはより速い吸収係数の変数に比べて遙かに遅い空間的依存性を示していると考えられる。このような事実は、ブラインドにした光源の分離方法を使って、例えば、別個の空間特性を有する2つ以上のベースを含むスパース表現のディクショナリに光音響応答の組み合わせΨ(λ)を代入することによって、これら2つの貢献を効果的に分離するように活用できる。上記方法により得られる具体的な利点は、この方法が特定の実験上の幾何形態及び測定条件から独立している点である。
本発明によれば、光子伝播モデルを演算する上記複数のアプローチは、本発明の画像再構成をさらに改善するために組み合わせることができる。
本発明の方法における反転工程は、測定された圧力信号の集合からバイオマーカーの例えば3次元分布を再構成するために提供される。特定の反転スキームは、使用される検出要素に関する特定の幾何学的特性及び物理的特性並びに空間分布に依存する各ケースにおいて異なるものである。典型的には、反転は、撮像された仮想ボリューム内に各点の検出器によって記録された生の信号又はスペクトル処理した信号を逆投影し、すべての検出器の位置(投影)にわたって集約することによってなされ得る。
また反転は、光子伝播モデル(光分布モデル)によって生の光音響信号又は画像を正規化することも含み得る。したがって、本発明の好ましい実施形態では、反転スキームは、トモグラフィによる再構成において光子伝播モデルと音響伝播モデルとを組み合わせて定量化したトモグラフィの画像を実現する。
本発明の上記複数の実施形態によれば、反転スキームは、光子伝播モデル及び/又は音響伝播モデルを反復の態様で組み合わせるのが好ましい。多くの実際の実施、特に小動物向け及び臨床向けの用途において、光音響により再構成された吸光マップは反復の態様で光子伝播モデルへ入力でき、光子伝播の予測とその結果生じる光音響の再構成をさらに改善する。
本発明の他の利点として、スペクトル処理のスキームは画像再構成における多様な段階の間に実行できる。特に、本発明の好ましい実施形態によれば、スペクトル処理のスキームは反転スキームへの統合、収集された圧力信号データへの処理工程及び/又は再構成された画像データへの処理工程を含む。
圧力信号データに関する改良された処理により、特に光子伝播モデル及びスペクトルモデルに依存して、本発明は、本発明の撮像方法を実行するようになされた撮像装置を設計することに関して新たな選択肢を提供する。本発明の第1の好適な変形例によれば、光照射部及び検出器のいずれも、特にそれらの照射光出力要素及びセンサ要素は一体型の構成要素(いわゆる測定ヘッド部)に統合できる。この測定ヘッド部を使用すれば、撮像工程及び検出工程を実行する点で本質的な利点が提供される。検査対象のターゲット組織の構成要素と接触して測定ヘッド部を簡単に位置決めできるので、光照射部及び検出器の位置決めは実質的に容易となる。特に、測定ヘッド部はターゲット組織の内側表面上、例えば血管のような中空器官又は脈管内に、又はターゲット組織の外側表面、例えば表皮上に位置決めすることができる。したがって、本発明の特に好適な変形例では、撮像装置の少なくとも一の光照射部及び検出器は内視鏡装置、腹腔鏡装置又は挿入装置内に設けられる。
具体的な利点として、測定ヘッド部は非侵襲性又は内視鏡用及び血管内用の携帯機器として提供できる。さらに、本発明に係る測定ヘッド部は、測定ヘッド部とターゲット組織との間にはマッチング流体なしの状態で使用できる。好適には、測定ヘッド部をターゲット組織と接触させれば、光照射パターンを導入し、十分な圧力信号を収集できる。
好適には、測定ヘッド部は各用途における特定の必要事項に応じて設計される。本発明の好ましい実施形態によれば、測定ヘッド部は光照射要素及びセンサ要素の配列を備えている。光照射要素及びセンサ要素の配列は、測定ヘッド部の接触表面において互いに対して相対的な距離を隔てて配置される。この接触表面は、本発明の用途に応じて平坦な接触表面としたり、湾曲した接触表面とする。
光照射要素及びセンサ要素の配列は、光照射パターン(ターゲット組織内に導入されるべき光照射の幾何形態パターン)と、トモグラフィ画像再構成のために圧力信号を収集するセンサ要素の幾何形態パターンとを提供する。本発明の特に好ましい実施形態では、光照射要素及びセンサ要素の配列は、光照射要素の少なくとも一の線状配置とセンサ要素の少なくとも一の線状配置の組み合わせ及び/又は光照射要素及びセンサ要素が交互に分布された格子状配置である。
撮像装置に関する第2の変形例によれば、光照射部及び検出器、特にこれらの光照射要素及びセンサ要素を別個の部材として提供できる。この場合、ターゲット組織に対する光照射部及び検出器の幾何形態及び位置を適合できるという利点が得られる。第1の実施例として、光照射部及び検出器の両方が、前述したようにターゲット組織の外側表面又は内側表面に共通して配置される。好ましくは、光照射部と検出器の一方がターゲット組織内に、特にその内側表面に接触して配置され、また光照射他方がターゲット組織の外側に、特にその外側表面に接触して配置される。仮に、光照射部がターゲット組織内、例えば組織内で直接に脈管内又は皮下条件で配置されるなら、ターゲット組織の光照射を改善できると共に、ターゲット組織の外側表面に配置された検出器によって、圧力信号の収集を促進できる。
これと反対のケースでは、光照射部をターゲット組織の外側表面上に配置することができるので、検査対象の組織に対する光照射要素の相対的な位置決めを改善できる。この場合、検出器を、例えば内視鏡装置の一部のように、ターゲット組織内、例えばターゲット組織の中空器官内又は脈管内、あるいは必要であれば皮下条件において配置することもできる。
仮にターゲット組織に対して相対的に異なる投影方向を有する光照射を提供するように光照射要素をえ配置するとすれば、光照射要素の配列に関して他の利点が得られる。好ましくは、少なくとも2つの異なる拡散投影方向が得られる態様で光照射要素が配置される。ターゲット組織に少なくとも2つの異なる投影方向で光照射することは、収集された圧力信号をターゲット組織の再構成された画像へ反転させることを容易にするような複雑な光照射場を提供するという格別の利点が得られる。
本発明によれば、内因性の組織発色団及び蛍光色素を分解するか、又はバイオマーカーレポーター、すなわち蛍光タンパク質又は組織に対する特定のバイオマーカーに限定して外的に投与されたプローブ等、少なくとも一の内因性レポーターを活用することによって、組織に対するバイオマーカーの検出を達成できる。蛍光色素及び蛍光性染料又は蛍光性共役、発色剤及びサブストレート又は貴金属(金、銀等)若しくは他の金属系のナノ粒子のような、光を吸収するレポーターが好ましい。好適には、既存の分子マーカーは、蛍光性プローブを含みターゲットとされた又はカプセル化されたナノ粒子及び蛍光タンパク質を吸収する本発明によって分解できる。したがって、本発明の他の好ましい実施形態では、ターゲット組織は、バイオマーカーをターゲットにするための吸光性レポーターを含んでいる。これにより、基礎的な生物学的撮像のみならず前臨床撮像における用途及び臨床用途が可能となる。
好ましい実施例として、吸光性レポーターは、蛍光分子又は蛍光色素分子(例えばアレクサフルオール(AlexaFluor)、蛍光タンパク質(例えばGFP)、貴金属含有粒子(例えば金のナノ粒子)、超常磁性粒子(例えば酸化鉄ナノ粒子(SPIO))、炭素粒子、活性化可能な物質(例えばX−ガル(X-gal))のうち少なくとも一を含む。
このように、本発明に係る方法は光を吸収する複数の物質を扱っている。好ましくは、吸収スペクトルにおいて特色のあるパターン、例えば急峻な吸収変化を示す所定のバイオマーカーレポーターを選択することで撮像性能を向上できる。「吸収スペクトルの急峻な変化」とは、レポーターのピーク消滅(又は吸収)の少なくとも80%が100nm未満、特に好ましくは750nm〜770nmのウィンドウ内で(蛍光分子であるアレクサフルオール750(AlexaFluor750)の場合のように)例えば20nmのように、50nm未満のスペクトルウィンドウ内で失われる吸収特性のことである。
特に強い関心を持たれるのは、近赤外蛍光性マーカーの撮像である。というのも、630nm超のスペクトルウィンドウにおいてマーカーの消滅/吸収スペクトルが急峻な低下を示すのに比べて、この領域では通常の組織発色団のスペクトルの吸収変化はスムーズであるからである。このようにして、多波長によるアプローチによって内因性の組織コントラストを容易に抑制することができる。また、隣接する幾つかの異なる波長において得られた光音響画像をスペクトルマッチさせることで得られた、組織内における蛍光色素の分布を高感度の撮像を達成できる。さらに、多重スペクトル撮像を用いて、組織内で多数の吸収物質/蛍光色素を分解することができ、また前述したように、使用する波長のそれぞれにおいて組織の相対的バックグラウンド吸収の減衰についてもっと正確に検討することで、この方法全体をさらに改善できる。
本発明は、好ましくは小動物の組織、メゾスコピックな大きさの組織、すなわち典型的なサイズとして100μm〜5cm、特に0.5mm〜1cmの組織、又は人体(若しくは人体に匹敵する大きさの動物体)の組織若しくは組織の構成要素を撮像するのに利用される。このような撮像により何らかの情報が得られ、該情報に基づいて後の診断に寄与できることが好ましい。本発明に係る、特に組織をターゲットにしたバイオマーカーの撮像によって、癌疾患、特に動脈硬化性プラークを含む心血管疾患、炎症疾患を診察するための情報が得られる。あるいは、この撮像により病状及び/又は病気治療の進展具合に関する情報を得ることができる。
特に好ましい実施例として、昆虫、虫、魚及びマウス、ウサギ、ブタ等の生体試料において、蛍光タンパク質を非侵襲的に撮像できることが挙げられる。他の実施形態としては、心血管疾患における動脈硬化のバイオマーカーを検出するための具体的な実施例が挙げられる。なお、癌疾患、免疫学的疾患、神経組織疾患等においては、他のアプローチも利用し得る。
また定量的なトモグラフィ画像を、本発明に係る方法によって得ることができる。この画像は、ディスプレイ装置で表示されるもの、コンピュータの記憶装置に記憶されるもの、例えばプリンタや他の画像出力装置等の記録装置で記録されるもの、画像処理用の入力データとして提供されるものの内、少なくとも一として利用できる。
本発明に関する更なる詳細及び利点について、添付図面を参照しながら後述する。
本発明の実施形態に係る組織をターゲットにしたバイオマーカーの撮像に関する概略図である。 撮像法に関する好ましい実施形態の特長を概略的に示すフローチャートである。 本発明に係る撮像装置における測定ヘッド部を示す概略図である。 本発明に係る撮像装置における測定ヘッド部を示す概略図である。 本発明に係る撮像装置における測定ヘッド部を示す概略図である。 本発明に係る撮像装置における光照射要素及びセンサ要素の配列を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る撮像方法及び撮像装置を示す概略図である。 本発明の他の実施形態に係る撮像方法及び撮像装置を示す概略図である。 本発明の他の実施形態に係る撮像方法及び撮像装置を示す概略図である。 室内実験において小動物を撮像する実験の設定を示す図である。
以下の図面を参照しながらの詳細説明について、以下のことを強調しておく。すなわち図示した詳細は、例示のためであって、本発明の好ましい実施形態に関して例示的に説明するためだけのものであり、本発明の原理及び概念的側面に関して最も有益かつ容易に理解される説明であると信じる内容を提供するために示す。この点において、本発明を基本的に理解するのに必要とされる以上に詳しく本発明の構造的な詳細を示すようなことはなされておらず、本発明の幾つかの形態が実施に際して具体化され得る状況については、図面を参照して行う説明から、当業者において自明のことである。本明細書において使用されているように、単数形で記載し、不定冠詞「a」又は「an」を付した要素又は工程は、特に明記しない限り、複数の要素又は工程を排除しないものとして理解されるべきである。図中の説明において、類似の符号は類似の部品を示している。なお図面は概ね実寸ではない。説明を明確にするために、本質的でない要素については幾つかの図面で図示を省略している。また任意選択される要素は、破線で表示されていることもある。
1.好ましい実施形態の特長
本発明に係る撮像方法及び撮像装置に関する必須の構成要素を、図1に示す。撮像装置100は、光照射部10と、検出器20と、再構成器30とを備えている。光照射部10は、撮像対象のバイオマーカー2の分布を含むターゲット組織1内に、所定の光照射パターンで光照射を導入するように配置されている。
光照射部10は、以下に概説するように多様な光源によって具体的に構成できる。使用される光源の種類は、本発明における用途の要件に応じて選択される。典型的には、光照射部10は、レーザ光源又は発光ダイオード(LED)のような光源と、照射光を光源から光照射部10の出力側又は接触表面まで送達する光ファイバのような導光器とを備えている。さらに光照射部10は、遠赤光又は近赤外線の波長範囲内の幾つかの光照射波長で、すなわち、好ましくは630nm超の波長で、少なくとも一のパルス光照射パターンを発するように設計されるのが好ましい。
検出器20は、照射光に応答してターゲット組織1内のバイオマーカー2によって生成され、ターゲット組織1からの圧力信号を受信するように設計されている。典型的には、検出器20は少なくとも一の可動検出要素及び/又は複数(配列)の検出要素を含む音響検出器である。後者は、例えば超音波撮像技術で公知である。あるいは、圧力信号はマッチング液体に浸漬された光検出器で収集、又は光学的手段でターゲット組織の表面変数を受信することにより、例えば光干渉設定により非接触的に収集できる。
再構成器30は概ね、ターゲット組織1内におけるバイオマーカー2の定量的なトモグラフィ画像を再構成するように設計されている。この再構成器30は、光子伝播モデルを演算し、スペクトル処理のスキームを実行し、反転スキームを実行して、トモグラフィ画像を提供するように設計された少なくとも一のプロセッサ31を含む。さらに、生のデータ処理用として設計されたプロセッサ32を設けることもできる。プロセッサ31及び32は共通の回路内に実装できる。あるいは、プロセッサ31における上記の機能は、再構成器30内に含まれる複数の別個のプロセッサ要素によって果たすこともできる。各プロセッサは、その特定機能を奏するためにプログラムされたマイクロプロセッサを装備できる。
再構成器30は、再構成されたトモグラフィ画像を他の処理や用途のために出力するよう構成された出力器33に接続されている。特にこの出力器33は、例えばコンピュータのディスプレイのような少なくとも一の表示装置、例えばコンピュータ内の記憶メディアのような記憶装置、例えばプリンタのような記録装置を備えている。
本発明による撮像方法は、図1の撮像装置100を用いて、以下に説明するように実施される。まず光照射部10を用いて、組織1内の撮像される関心領域に対して光照射が照射される。好ましい実施形態では、多波長でのパルス光照射が一又は複数の位置あるいは角度で、可視光及び/又は近赤外線スペクトル範囲内で組織1内に照射される。このように多数の投影(位置又は角度)を実現する照射光を活用する機能によって、例えば携帯型スキャナや血管内スキャナ(後述する内容を参照)のような形態での撮像装置の利用が促進される。各々のパルスの持続時間は、少なくとも10〜100μsの間隔で、ナノ秒の範囲内(すなわち100ns未満、特に好ましくは10ns未満)にあることが好ましい。
組織1において上記のパルスを吸収することにより引き起こされる瞬間的な温度上昇に続いて、組織1内で広帯域の音響放射が誘起される。この誘起された音響波の振幅は、被検体の局部的な光フルーエンス、吸光係数、熱弾性特性に比例する。
続いて光照射に応答して生成された圧力信号(音響波、特に音)は、検出器20によって検出される。誘導された応答は、組織1の周辺における音響検出要素を直線移動するか、又は組織1の近傍における静置型検出要素のアレイを配置することで収集される。
次に吸光は、検出された圧力信号を撮像された仮想ボリューム内に逆投影することによって、又は多様なラドン変換によって再構成できる。熱弾性特性が一定と仮定えすれば、選択された組織に対するバイオマーカー2は、組織1内の光子伝播に関する合成問題を解くことによって、明確な吸収スペクトルに基づいて定量的に再構成できる。ここで光子伝播は、波長依存性があるか、又は同一又は類似した光学的特性を有する媒質内で、検討されるすべての波長が伝播すると単純化した条件下で行われる。
プロセッサ32による生データの前処理には、基本的なフィルタ処理やノイズ除去を含めることができる。また画像形成プロセッサ31は、特定の光照射及び検出条件設定に適した反転スキームを適用する。また、組織1内でバイオマーカーをバックグラウンド吸収から区別するためのスペクトル処理工程と、バイオマーカー画像定量化のために設計された光子伝播モデル化の工程も適用する。また画像形成の段階では、特定の実装や応用の条件に基づき、反転、光子伝播モデル化、スペクトル処理の順序を変更することもできる。このようにして、関心領域の組織におけるバイオマーカー2の画像3が構築される。
場合によっては、用いる検出要素の、特に幾何学的特性及び物理的特性並びに空間分布に依存して、特定の反転スキームが異なる。例えば音響検出要素のフェイズドアレーが用いられる場合、簡単な超音波ビームを形成するアルゴリズムを反転処理に組み込むことにより、画像をリアルタイムに構築できる。
反転処理の基本的な結果は、組織1の局部的な吸光係数を表わす(単数又は複数の)画像3として提示される。
2.理論的考察
現実には、検出された光音響応答は局部的な吸収係数μ(λ)を直接提供するのではなく、寧ろ、吸収されたエネルギー濃度Ψk(λ)の再構成された画像が、試料内の吸収係数μ(λ)及び光フルーエンスUk(λ)を表わしており、すなわちΨk(λ)=Uk(λ)μk(λ)となる。通常は、強い光減衰と生体組織の非均質性によって、フルーエンスが関心領域全体にわたって一定であるとみなすことができない。それでも、吸収係数それ自体のみはバイオマーカー分布に関する適切な定量化情報を提供できる。したがって、試料内におけるマーカーに関する実際的な分布を定量化することができる能力は、光フルーエンス分布からデコンボリューションされることになる各波長における吸光マップを再構成する当初の正確さに大いに依存している。
光音響的反転
物質内において短パルスの光エネルギーを吸収することによって引き起こされる瞬間的な温度上昇に続き、組織内で広域帯の音響放射が誘起される。誘起された音響波の振幅は、被検体の局部的なエネルギー濃度、吸光係数、熱弾性の特性に比例している。また、これらのスペクトルは主にエネルギー付与変数の空間周波数と照射されたパルスの持続時間に依存している。nsの範囲でのパルス持続時間に関し、生物学的に関連する音響スペクトルは、撮像される被検体内での吸光変数の大きさ及び空間分布に応じて、数十kHz〜数十MHzに含まれる有用な情報を含む超広帯域の性質を有するものとなる。
検出された応答の正しい形状を保存することは、生成される画像の正しい定量化のために重要である。このような広帯域検出を効果的に実行することは困難となるため、初期の組織応答を修復させるための好ましい方法は、記録された信号を検出器の周波数応答からデコンボリューションすることである。あるいは、光学的に共鳴する要素(例えばファブリ・ペロー・フィルム、リング共振器又はエタロン)において表面上の移動又は機械的な振動の検出に基づいた光干渉法のような、超広帯域検出法を利用しても良い。
ここで反転は、生の信号又はスペクトル処理された信号を逆投影することにより、収集された超音波圧力
Figure 2011528923
からバイオマーカーの、例えば3次元分布を再構成するために行われる。特定の反転スキームは、使用される検出要素に関して、特に幾何学的及び物理的特性並びに空間分布に依存する各場合毎に異なるものである。例えば、検出器のフェイズドアレーが用いられる場合は、超音波を形成する簡単なアルゴリズムを用いて画像をリアルタイムに形成できる。
一般に、熱閉じ込めの条件下では、いいかえると光エネルギーのパルスが十分に短いものであって、その結果パルスの際に熱拡散が微小である場合、光音響的に励起された圧力
Figure 2011528923
すなわち吸収されたエネルギー濃度(単位:J/m
Figure 2011528923
と局部的な温度上昇
Figure 2011528923
との間の時空間的依存性は、数1
Figure 2011528923
として表すことができる。
ただし、νs、ρm、β、Cは音の対応速度、質量密度、等圧体積膨張、媒質の比熱であり、すべては概ね空間依存性及び周波数依存性を示す。
実際には、熱閉じ込めの条件は、1μs未満の励起パルスの持続時に具備される。例えば先端が尖った小径(例えば1mm未満)の検出要素が位置
Figure 2011528923
に置かれると、初めての近似において、この検出要素は数1の解、すなわち、
Figure 2011528923
である集積化圧力波を検出することとなる。
反転工程における基本的な結果は、組織に対するバイオマーカーの局部的堆積を表す(単数又は複数の)画像として示すことができる。
光子伝播のモデル化
組織に対するバイオマーカーの撮像は局部的な吸光の再構成に基づいている。しかしながら、上述の通り生の光音響データが直ちに吸収係数を表しているのではなく、試料中の吸収係数と光フルーエンスとの組み合わせを表しているのである。本発明の好ましい一実施形態において、組織内における光伝播に関する公知のモデルに基づく、組織内の光子伝播の定量的記述(フルーエンス率)は、吸光をフルーエンスから分解するために活用される。
関心領域全般にわたるフルーエンスは、拡散媒質内において光輸送方程式を使って演算できる。好ましい近似の一として、拡散方程式は数3
Figure 2011528923
の形を取る。ただし、D=1/[3(μs’+μa)]は媒質(μa及びμs’はそれぞれ吸収係数及び減少した散乱係数である)であり、
Figure 2011528923
は光源分布である。この微分方程式の解を求めるには、媒質μa及びμs’に関する空間的に変化する光学的特性と共に右辺の光源要素に関する空間分布及び強度を知る必要がある。複雑な幾何形態では、光の拡散は有限要素法の手法を使って数3で演算できる。
なお、光の拡散近似は、組織内の平均自由径路(MFP)の数倍も大きな巨視的被検体だけに有効であり、通常、10mmを超える被検体に対応している。それよりも小さな被検体では、光の輸送方程式に対するメゾスコピックな近似法が適用される。この場合における最も正確であるものの演算的に拡大した解法としては、光輸送のモンテカルロ・シミュレーションの適用が挙げられる。ただ、本発明者らがC.ヴィネゴニ、C.ピツーリ、D.ラザンスキー他の『ネイチャーメソッド』、第5(1)巻、2008年において発表したとおり、フェルミ関数のように簡単な解析近似法の中には効果的に応用できるものもある。
スペクトル処理
本発明は、多波長手法で内因性の組織コントラストを抑制することにより、関心領域の分子マーカーを撮像するための効率的な方法を提供している。これにより、幾つかの異なる波長において得られる画像をスペクトルマッチさせることで得られる、組織内における分子マーカーの分布を高感度で撮像できるようになる。この演算の最も簡単な定性版は、2波長における画像減算によって得ることができる。また、さらに3波長撮像及び全体にわたる多波長撮像では、バックグラウンド信号を抑制できるようになる。このような処理は幾つかの段階で発生するが、効率的に処理するには、すべての情報を正確に考慮するよう、スペクトルデータを同時に反転させる手法が挙げられる。
ただ、演算を簡素化する好ましい一実施形態では、1ピクセル単位で関心領域の分子マーカーCkの再構成量(濃度)を求めるために、数4のような一般的な量化論理式を用いる。
Figure 2011528923
ただし、それぞれCkは1ピクセル/ボクセルを単位とした関心領域の分子マーカーの再構成量(濃度)であり、Nは光照射波長の全数であり、Ψk(λ)はピクセル/ボクセルkにおける再構成された吸収であり、ck及びε(λ)はマーカーの濃度及び波長に依存するモル吸光率である。本発明者らは、ピクセル/ボクセルにおける波長依存性の吸収係数μ(λ)が従来の形式で数5のように表現できることを認識している。
Figure 2011528923
ただし、Mは再構成手順において考慮される波長依存性マーカー及び組織発色団の全数である。さらに、数4における手順には濃度の集合ck m(m=1, ..., M)に亘る極小化も含める。
あるいは、光音響画像内のあらゆるピクセルkが分子発色団と他のバックグラウンド組織発色団とを組み合わせた分布を表し得ることも想定できる。あらゆる撮像された波長λについては、これは線形方程式、
Figure 2011528923
の形で表わすことができる。ただし、μk a(λ)はピクセルkにおける再構成された波長依存性の吸収であり、αMM(λ)及びα1(λ)、α2(λ)、・・・は分子マーカー発色団及びバックグラウンド発色団の分子吸光スペクトルであり、ck MM及びck 1、ck 2、・・・は対応する濃度である。測定された吸収値と、7つの波長に関する公知のスペクトルを用いて、(単数又は複数の)分子マーカーとバックグラウンド発色団の濃度ck MMは、線形回帰・直線回帰を用いて1ピクセル単位で上記の線形方程式から後で再構成できる。
分子マーカーを分離する好ましい方法は、単一工程法又は二工程法を用いてスペクトル情報を反転モードに含めることである。
単一工程法では、用いる異なる波長について同時にトモグラフィ方程式を反転させ、同時に1)深さ(光源からの距離)の関数としての光子減衰、2)検出の手順、3)測定の波長依存性について考慮することを含むものである。
一方の二工程法は、スペクトルマッチング又は分解アルゴリズムを使って生のデータを前処理し、次いで、1)深さ(光源からの距離)の関数としての光子減衰、2)検出の手順、のみを考慮した反転コードへの入力として一工程による測定を利用する。また別の他の二工程法として、異なる波長で画像を再構成し、次いで得られた画像をピクセル毎に処理することもできる。
画像形成
次に画像形成手順の実施例を図2に示す。光音響の生データ(工程S1)は最初にフィルタ処理され(工程S2)、反転スキームに送られる(工程S3)。得られた初期の再構成済み画像は、次に、撮像されたターゲット組織の幾何形態(境界、内側表面又は外側表面)を抽出するために処理される(工程S4)。これは、次の、組織内において光分布のモデル化(工程S5)のためであり、このモデル化は組織に入射する光に関してアプリオリに知られているパターンを用いて演算される(工程S6)。この手順を繰り返し、各工程において、演算された光分布によって反転スキームが再構成済み画像を正規化し、これも繰り返すことで改善される。バイオマーカーを可視化する(工程S8)には、バックグラウンド吸収を排除するため、画像がスペクトル処理される(工程S7)。
3.他の用途
本発明の方法は様々に応用できる。生体医学分野のみに限定されることなく、本技術をバイオメディカル分野のイメージングに応用でき、このことは重要な方向性を示すものである。
3.1生体撮像
図3は、ヒトの発端者4(例えば患者)の一部、例えば器官5を含むターゲット組織1を撮像するために、本発明を用いる実施形態を概略的に図示している。撮像装置100は、光照射部10、検出器20、再構成器30を備えており、これらの機器は共通の筐体34内に統合され、測定ヘッド部40が光ファイバ及び電気ケーブルを介して光照射部10及び検出器20に接続されている。
測定ヘッド部40は、図4に基づいて後述するように、光照射要素とセンサ要素を別個の部材として備えている。あるいは、後述するようにこの測定ヘッド部は共通の筐体内に光照射要素及びセンサ要素を有する統合型の測定ヘッド部としてもよい(図5、図6)。
好ましい実施形態においては、薬剤が発端者4に静脈注射されるか、局部的にターゲット部位又は関心領域に注射される。測定ヘッド部40を組織に接触させることにより、光照射が組織内へ繋がり、圧力信号を検出できる。収集された圧力データは処理され、モニタ上に2次元画像又は3次元画像の形で表示される。
応用例としては、マクロファージによって優先的に捕捉される蛍光発光剤の投与が挙げられる。この薬剤吸収の画像が、頸動脈又は他の脈管における動脈硬化性プラークを撮像する場合のように、増加した炎症の部位を明らかにする。同様に、ターゲットとされた吸収粒子は、ペプチド、レセプタ等のようにターゲットとされた分子に関する情報を示すことができる。
図4は、検査対象のターゲット組織1に対する撮像装置100の相対的な調整を概略的に示している。光照射部は、互いに対して例えば15mmの距離で配置された少なくとも2つの光照射要素11、12を備えている。ターゲット組織1の外側表面6(例えば皮膚)から光照射要素11、12の距離は例えば20mmである。あるいは、光照射要素11、12は外側表面6と接触して配置できる。光照射要素11、12は、ターゲット組織1に向かう放射方向を規定する所定の発光特性を有する、例えばLEDを備える。あるいは、光照射要素11、12は、例えば筐体34内で撮像装置100のレーザ光源に接続された光ファイバの出力端部を備える。
検出器20は、検出器20の表面(接触表面)に組み込まれた検出要素21の配列を備えている。この接触表面はターゲット組織1の外側表面6に接触するように設計されている。検出器20は従来の超音波撮像装置で公知であるような、例えば音響センサを備えている。
光照射要素11、12及びセンサ要素21が共通の測定ヘッド部40内に統合された他の実施形態を、図5及び図6に示す。測定ヘッド部40は、光照射要素11、12及びセンサ要素21、22が組み込まれている筐体本体41を備えている。光照射え要素11、12及びセンサ要素21、22は測定ヘッド部40の接触表面42に統合されている。要素11、12、21、22はそれぞれ、光ファイバ13、14及び電気ケーブル23、24を介して、筐体34内に統合されている光照射部10及び検出器20の該当する部分に接続されている(例えば図3を参照)。
図6A、図6B、図6Cは、測定ヘッド部40の接触表面42における光照射素子11、12及び受信素子21、22の異なる分布を特長とする本発明の実施形態を示している。図6Aによれば、外側2列の光照射要素11、12(例えばLED又は光ファイバの出力端部)と中央1列のセンサ要素21(音響センサ)を有する線状配置となっている。図6Bは、中央1列の光照射要素11と外側2列のセンサ要素21、22を有する逆の幾何形態を示している。図6Cは要素11、12、21、22のマトリックス配列を示している。
光照射要素11、12は幾つかの光照射え波長において少なくとも一のパルス光照射パターンでターゲット組織に光照射するように配列されている。一例として、2つの異なる波長範囲とするために、光照射要素11の第1グループ(例えばaで示されている)が610nm〜650nmの範囲内の波長で光照射を発するように設計され、他方、第2グループ(bで示されている)が670nm〜730nmの範囲内の波長を発するように設計されている。多数の波長範囲を発するためには、3つ以上のグループが提供される。
図6に示す光照射要素及び検出要素の数は例示であって、実際には、これらの要素の数は光照射及び音響検出に関する要件に従って選択できる。
図7〜図9は本発明の他の実施形態を示しており、互いに分離されている光照射要素及び検出要素が使用されている。一例として、血管7を含むターゲット組織1を撮像する様子が示されている。
図7によれば、光照射部10は光源15及び光ファイバ16を備えている。光ファイバ16は、血管7の中を撮像対象のターゲット組織1の位置まで挿入される。検出器20は検出要素の配列を備えている。検出要素の配列は、ターゲット組織1、例えば人体の皮膚に接触するように設計されている。操作に際して、明確な波長範囲を有する光照射パターンは、光ファイバ16を介して血管の内側表面に発光される。組織1内にバイオマーカーを吸収することにより生成される圧力信号が検出器20で検出される。
例えば、仮に670nmでのピーク吸収でターゲットのバイオマーカーにCy5.5染料が使用される場合、多重スペクトルの光照射部は、7つの個別の波長、すなわち610、630、650、670、690、710、730nmで発光するダイオード・レーザ系光照射部とする。このダイオード・レーザ系光照射部は、染料の高吸収と低吸収の両方の領域をカバーするものであり、後続の多重スペクトル処理及びバックグラウンド吸収信号の抑制を容易にする。
図8の構成では、光照射部10の光ファイバ16と検出器20のセンサ要素25の両方がターゲット組織1内の血管内に配置される。両方の部品は内視鏡装置(図示せず)に統合できる。
また図9の構成では、光照射部10の光照射要素11、12はターゲット組織の外側に配置され、検出器20の検出要素25はターゲット組織1内の脈管内に設けられている。
図10は、マウス又は他の齧歯動物、蝿、魚、虫、動物の胎仔のようなメゾスコピックな大きさの被検体及び小動物を生体医学的に撮像する際の、本発明による技術の好ましい用途を示している。タンク51と、撮像装置100の構成部品を配置するように設計された保持要素52、54とを備えた容器50が提供されている。タンク51はマッチング流体53、例えば水又は油を収容している。被検体(活きたマウス8)は棒状又は板状の保持要素の下方部54上に位置決めされている。
光照射部10及び検出器20は部分的に筐体34内に統合されており(上記図3を参照)、すなわち容器50の外部に配置されている。光照射部10は、例えば光学ミラー又は光ファイバを用いることによって2つの対向する方向17、18からマウス8に光が照射されるように構成されたパルスレーザ源を備えている。一方検出器20は、音響検出要素の配列26を備えている。検出器20はマウス8を取り付けた保持要素52の近傍に配置される。好適には、検出器20の位置に関しては特に制限はない。ただ、高いS/N比で測定するためには、被検体に極力近接した位置とすることが望ましい。上記の画像再構成を実行するためには、被検体(マウス8)に対する検出要素の配列の相対的配置場所に関する情報を有しておれば足りる。
図10に概略的に図示した実施形態は、小動物の検査に限定されない。それに代わって、他の生物学的被検体、例えばヒト又は大型動物又はその一部を撮像できる。一例として、タンク51を、マウス8の代わりにヒトの患者の一部を収納するように設計できる。
3.2臨床撮像
好ましい臨床応用の分野を二、三例挙げるとすれば、心血管疾患、癌、炎症、神経組織疾患の撮像が挙げられる。成長や老化等自然な状態を撮像することも挙げられる。特に利点として、本発明による近傍撮像は、近傍光源器と被検体との間にマッチング流体を使用せずに実現できるので、臨床応用が本質的に促進される。
他の用途例は、医薬品、放射線又は化学療法を通じて、体内に吸収粒子を同様に投与し、その相対的な直近情報をモニタし又は経時的にターゲットとすることで、治療効果を撮像することが挙げられる。
さらに他の実施形態では、携帯機器、又は手術により組織内に機器を挿入する侵襲法を通じて体腔内に挿入される内視鏡機器によって、同様の検出ができる。
本発明を明確にするために別個の実施形態に記載した特定の特長は、単一の実施形態内において組み合わせた状態でも提供され得ることは理解されよう。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に記載した本発明の多様な特長も個別に又は任意適切なサブコンビネーション状態で提供され得る。本発明は、その特定の実施形態と併せて記載しているが、多くの変更例、修正例、変形例が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付された特許請求の範囲における技術的思想及び広い範囲に属するそのような一切の変更例、修正例、変形例を包含するものとして意図される。
本明細書において挙げたあらゆる刊行物、特許、特許出願は、個々の刊行物、特許、特許出願が参考文献として具体的かつ個別に本明細書に組み込まれていることを示されているかのような程度まで、内容全体が参考文献として本明細書に援用される。さらに、本願においていかなる文献を引用し又はその文献の確認がなされても、そのような文献が本発明に先行する技術として入手可能であることを自認するものとして解釈されてはならない。
100…撮像装置
1…ターゲット組織
2…バイオマーカー
3…組織に対するバイオマーカーの画像
4…ヒトの発端者
5…器官
6…ターゲット組織の外側表面
7…血管
8…マウス
10…光照射部
11…光照射要素
12…光照射要素
13…光ファイバ
14…光ファイバ
15…光源
16…光ファイバ
17…対向する方向
18…対向する方向
20…検出器
21…センサ要素
22…センサ要素
23…電気ケーブル
24…電気ケーブル
25…センサ要素
26…音響検出要素の配列
30…再構成器
31…画像形成プロセッサ
32…生データ処理用のプロセッサ
33…出力器
34…筐体
40…測定ヘッド部
41…筐体本体
42…接触表面
50…容器
51…タンク
52…保持要素
53…マッチング流体
54…保持要素

Claims (22)

  1. 組織をターゲットにしたバイオマーカーを含むターゲット組織を撮像する多重スペクトル光音響トモグラフィ(MSOT)方法であって、
    複数の光照射波長において少なくとも一のパルス光照射パターンを発する光照射部でターゲット組織に光照射する工程と、
    組織をターゲットにしたバイオマーカーからの圧力信号を検出器で検出する工程であって、該圧力信号は前記光照射に応答してターゲット組織内で生成されてなる工程と、
    ターゲット組織内における組織をターゲットにしたバイオマーカーの分布に関する定量的なトモグラフィ画像を再構成する工程と、
    を含み、前記圧力信号は光子伝播モデルを用いて解析され、圧力信号はターゲット組織内の光照射フルーエンスに依存し、また、光照射波長と、少なくとも一のスペクトル処理のスキームと、トモグラフィ画像を提供する反転スキームとに依存してなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  2. 請求項1に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    光照射パターンは、時分割した態様で少なくとも2つのスペクトル的に別個の波長範囲を有する多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  3. 請求項1又は2のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    ターゲット組織の光照射に関する幾何形態に適合させた光輸送方程式の解、
    ターゲット組織内における光子輸送に関する経験的モデル、
    入射する光子の分布及び/又は光照射パターンを組み入れたモデル、及び/又は
    検出された圧力信号及び/又は任意の再構成段階において生成される光音響の画像のうち、少なくとも一を用いて、光子伝播モデルが演算されてなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    トモグラフィの再構成において、反転スキームが光子伝播モデル及び音響伝播モデルを組み合わせて、定量的トモグラフィ画像を生成してなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    反転スキームが繰り返しの態様で光子伝播モデル及び/又は音響伝播モデルを組み合わせてなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、スペクトル処理のスキームが、
    反転スキームに統合する工程、
    収集されたデータを処理する工程、
    再構成されたデータを処理する工程のうち、
    少なくとも一を含んでなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    光照射部及び検出器が共通の測定ヘッド部に統合され、光照射工程及び検出工程が測定ヘッド部をターゲット組織の要素又はマッチング流体に接触させて位置決めする工程を含むこと、
    光照射部がターゲット組織内に配置され、検出器がターゲット組織の外側表面又はマッチング流体に接触して配置されること、
    検出器がターゲット組織内に配置され、光照射部がターゲット組織の外部に配置されるか、ターゲット組織の外側表面に接触して配置されること、
    光照射部及び検出器がターゲット組織の外側表面に近接して又は接触して配置されること、又は
    検出器が、例えば表面の運動を光学的に検出することにより非接触の態様で、光音響的に励起された圧力信号を測定すること
    のうち、一又は複数が適用されてなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    光照射部及び音響検出器が、血管内カテーテルを用いて、血管内に配置されてなる、又は
    光照射部及び検出器の測定ヘッド部が携帯機器である多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    ターゲット組織が、バイオマーカーをターゲットにするために、吸光性レポーターを含んでなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  10. 請求項9に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、吸光性レポーターが、
    蛍光分子又は発色団分子、
    蛍光タンパク質、
    貴金属含有粒子、
    超常磁性粒子、
    炭素粒子、
    活性化可能な物質
    のうち、
    少なくとも一を含んでなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  11. 請求項9又は10に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    吸光性レポーターがその吸収スペクトルにおいて急峻な変化を含んでなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  12. 請求項11に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、
    光照射波長が、ターゲットバイオマーカーによって区別して吸収される少なくとも2つの波長を含んでなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  13. 請求項1乃至12のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、組織をターゲットにしたバイオマーカーが、
    癌疾患、
    特に動脈硬化性プラークを含む心血管疾患、
    炎症疾患
    診察を目的とした疾患の側面、
    病状の側面、
    疾患治療の側面のうち、
    少なくとも一をターゲットとしてなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  14. 請求項1乃至13のいずれか一に記載の多重スペクトル光音響トモグラフィ方法であって、ターゲット組織が、
    小動物の組織、
    メゾスコピックな大きさ、すなわちmm未満からcmまでの範囲の組織、
    少なくとも一のヒトの器官の組織
    のうち、少なくとも一を含んでなる多重スペクトル光音響トモグラフィ方法。
  15. 組織をターゲットにしたバイオマーカーを含むターゲット組織を撮像する多重スペクトル光音響トモグラフィ(MSOT)用の撮像装置であって、
    組織をターゲットにしたバイオマーカーによって吸収される、複数の光照射波長において少なくとも一のパルス光照射パターンでターゲット組織に光照射するよう構成された光照射部と、
    前記光照射に応答してターゲット組織内において組織をターゲットにしたバイオマーカーから生成される圧力信号を検出するよう構成された検出器と、
    ターゲット組織における組織をターゲットにしたバイオマーカーの分布に関する定量的なトモグラフィ画像を再構成するよう構成された再構成器と、
    を含み、
    再構成器は、ターゲット組織に光照射する光パターンに依存し、光照射波長にも依存する光子伝播モデルを演算するよう構成されたプロセッサと、スペクトル処理のスキームを実行するよう構成されたプロセッサと、トモグラフィ画像を提供する反転スキームを実行するよう構成されたプロセッサとを備えてなる撮像装置。
  16. 請求項15に記載の撮像装置であって、
    光照射部及び検出器が共通の測定ヘッド部に統合されてなる撮像装置。
  17. 請求項16に記載の撮像装置であって、
    測定ヘッド部が光照射要素及び検出要素の配列を備えてなる撮像装置。
  18. 請求項17に記載の撮像装置であって、前記配列が、
    光照射要素及び検出要素の線状配置と、
    光照射要素及びセンサ要素が交互に分布された格子状配置
    のうち、少なくとも一を含んでなる撮像装置。
  19. 請求項15乃至18のいずれか一に記載の撮像装置であって、
    光照射部が少なくとも2つの異なる拡散投影方向に沿ってターゲット組織に光照射するよう構成されてなる撮像装置。
  20. 請求項15乃至19のいずれか一に記載の撮像装置であって、光照射部及び音響検出器が、
    血管内に配置され、光照射部が特に光ファイバ又は光波ガイドを備えている、又は
    ターゲット組織の外側表面との接触を可能にしてなる、
    の少なくとも一の構成としてなる撮像装置。
  21. 請求項15乃至20のいずれか一に記載の撮像装置であって、
    光照射部及び検出器のうち少なくとも一が内視鏡装置、腹腔鏡装置又は挿入装置内に設けられてなる撮像装置。
  22. 請求項15乃至21のいずれか一に記載の撮像装置であって、
    血管、特に冠動脈又は頸動脈の画像を構築するために、再構成器が反転法及びスペクトル処理を適用するよう構成されており、画像がターゲット組織内におけるバイオマーカーの空間分布を示してなる撮像装置。
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