(表の簡単な説明)
表1は、例示的なコンフォメーション病および関連するコンフォメーション病タンパク質を示す。
表2は、さらなるコンフォメーション病タンパク質および関連するコンフォメーション病を示す。
表3は、PCSB試薬を生成するのに使用される例示的なペプチド配列を示す。
表4は、PCSB試薬を生成するのに好適な、例示的なペプトイド領域を示す。
表5は、表4で使用した省略形のキーを示す。
表6は、表4に示した各配列の関連構造を与える。
表7は、PSR1のプルダウン効率を定量する。
表8は、実施例10で測定したタウレベルを定量化する。
表9は、実施例11で測定したタウレベルを定量化する。
表10は、アルツハイマー病でない個人のCSFからのAβ40および42のPSR1ビーズへの結合を定量化する。
表11は、濃度漸増血漿の存在下でのPSR1のモノマー性および凝集Aβへの結合を定量化する。
(配列リストの簡単な説明)
配列番号1〜11は、異なる種からのプリオンタンパク質のアミノ酸配列を提供する:ヒト(配列番号1)、マウス(配列番号2)、ヒト(配列番号3)、シリアンハムスター(ハムスター)(配列番号4)、ウシ(配列番号5)、ヒツジ(配列番号6)、マウス(配列番号7)、ヘラジカ(配列番号8)、ダマジカ(ファロウ(fallow))(配列番号9)、ミュールジカ(ラバ)(配列番号10)、およびオジロジカ(ホワイト(white))(配列番号11)。
配列番号12〜228は、PCSB試薬を生成するのに使用される例示的なペプチド配列のアミノ酸配列を提供する。
配列番号229〜241は、PCSB試薬を生成するのに使用される例示的なペプトイド領域の修飾アミノ酸配列を提供する。
配列番号242〜249は、PCSB試薬を生成するのに使用される例示的なプリオンタンパク質断片のアミノ酸配列を提供する。
配列番号250は、PCSB試薬を生成するのに使用される例示的なペプチド配列のアミノ酸配列を提供する。
配列番号251は、配列番号1で示されるようなヒトプリオンタンパク質のアミノ酸配列残基19〜30を提供する。
配列番号252〜255は、βシートブレイカーAL30、AL32、AL33、およびAL34のアミノ酸配列を提供する。
配列番号256〜261は、実施例3で試験を行った修飾プリオンタンパク質断片のアミノ酸配列を提供する。
(発明の詳細な説明)
本発明は、プリオンタンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用するPCSB試薬が、アルツハイマー病、糖尿病、全身性アミロイドーシスなどの他のコンフォメーション病の病原性配座異性体とも優先的に相互作用するという、驚くべきかつ予想外の発見に関するものである。これらのPCSB試薬は通例、プリオンタンパク質断片に由来する。
これらのPCSB試薬が非プリオン病原性配座異性体とも優先的に相互作用するという発見によって、プリオン以外のコンフォメーション病およびコンフォメーション病タンパク質ならびにプリオン関連疾患に対してこれらのPCSB試薬を利用する検出アッセイ、診断アッセイ、および精製または単離方法の開発が可能となる。
いずれの理論にも束縛されたくはないが、これらのPCSB試薬が非プリオン病原性配座異性体を優先的に結合して、それらを検出する能力は、ある病原性配座異性体に共通の構造モチーフの存在によることが考えられる。本明細書に含まれているかのように参照により本明細書に援用される、Lau,A.Lら、Proc Natl Acad Sci USA.104(28):11551−11556(2007)は、プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬とPrPScとの間の相互作用が正電荷に大きく依存することを示唆している。相互作用は、配列をスクランブルすることによって影響されないように思われるが、正電荷以外の個々のアミノ酸の特性も相互作用に何らかの役割を果たしているように思われる。これらの研究は、これらPCSB試薬が疾患に関連するPrPScの直鎖状配列ドメインよりも、構造モチーフを結合すること示唆している。
アミロイドを形成する多くの病原性配座異性体が、同様の物理的特性を共有している。たとえばプリオンタンパク質の病原性配座異性体であるPrPScは、以下の特徴:βシート含有率の増加(PrPCでの約3%からPrPScでの>40%)を示し、PrPSc線維は、線維軸に沿って垂直に配向されたβシートで構成されている。出願人らは、すべてのアミロイド形成タンパク質に共通の構造モチーフの1つへの結合は、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する試薬が非プリオンタンパク質の病原性配座異性体とも優先的に相互作用する機構であると考えている。
これらのPCSB試薬は、病原性配座異性体とのこのような優先的な相互作用を示すために、より大型の構造または他の種類の骨格分子の一部である必要はない。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、これらのPCSB試薬は、病原性配座異性体への結合は許容するが、非病原性配座異性体への結合は許容しないコンフォメーションを自発的に取るように思われる。例示されたPCSB試薬によって本発明の方法で有用なPCSB試薬にとっての出発点(たとえばサイズまたは配列特徴に関して)が与えられるが、より所望の属性(たとえばより高い親和性、より高い安定性、より高い溶解度、より低いプロテアーゼ感受性、より高い特異性、合成がより容易であることなど)を備えたPCSB試薬を生産するために多くの修飾が行えることが、当業者に明らかになる。
一般に、本明細書に記載するPCSB試薬は、病原性配座異性体に優先的に相互作用することができる。それゆえこれらの試薬によって、たとえば、疾患形成タンパク質を整理、凝集またはそうでなければ次に検出可能である状態まで誘導することによる、病原性配座異性体の存在の即時の検出、したがって生存しているかまたは死亡した脳、脊髄、脳脊髄液または他の神経組織系はもちろんのこと、血液および脾臓も含む、本質的にいずれの生物または非生物試料中の病原性配座異性体の診断も可能となる。PCSB試薬は、広範囲の単離、精製、検出、診断および治療用途に有用である。
本発明の方法で使用するPCSB試薬は、参照により本明細書に援用されるWO05/016137およびWO07/030804でさらに詳細に説明されている。
本発明の実施には、別途指摘しない限り、当該分野の範囲内で化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法が使用される。このような技法は、文献で十分に説明されている。たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.);およびHandbook of Experimental Immunology,Vols.I−IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,eds.,1986,Blackwell Scientific Publications);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.ed.,CRC Press,1997);Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.(Ausubelらeds.,1999,John Wiley & Sons);Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course,(Reamらeds.,1998,Academic Press);PCR(Introduction to Biotechniques Series),2nd ed.(Newton & Graham eds.,1997,Springer Verlag);Peters and Dalrymple,Fields Virology(2d ed),Fieldsら(eds.),B.N.Raven Press,New York,NYを参照。
本発明の試薬および方法は、特定の処方またはプロセスパラメーターに限定されず、したがってもちろん変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用する用語が本発明の特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、制限するものではないことも理解されるべきである。
本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
(I.定義)
本発明の理解を容易にするために、この出願で使用する選択された用語を下で議論する。
本明細書で使用するように、「病原性」という用語は、タンパク質もしくは配座異性体が疾患を実際に引き起こすことを意味し得るか、または「病原性」という用語は、タンパク質もしくは配座異性体が疾患と関連しており、したがって疾患が存在するときに存在することを単に意味し得る。それゆえ、本開示と関連して使用されるような病原性タンパク質または配座異性体は、必ずしも疾患の特異的原因因子であるタンパク質ではなく、したがって感染性であってもなくてもよい。「病原性配座異性体」という用語は、より具体的には、疾患に関連するタンパク質のコンフォメーションおよび/またはβシートに富むコンフォメーションを指すために使用される。「病原性配座異性体」は、そのコンフォメーションがミスフォールド配座異性体、凝集形のミスフォールド配座異性体、または2つの混合物であるか否かにかかわらず、疾患に関連するタンパク質の任意のコンフォメーションである。「非病原性」および「細胞の」という用語は、コンフォメーション病タンパク質または配座異性体に関して使用されるときに、その存在が疾病と関連していないタンパク質の正常な配座異性体を指すために互換的に使用される。特定の疾患、たとえばアルツハイマー病に関連する病原性配座異性体は、「病原性アルツハイマー病配座異性体」と呼ばれることがある。
「病原性配座異性体特異的結合試薬」または「PCSB試薬」という用語は、これに限定されるわけではないが、親和性または特異性の上昇により、非病原性配座異性体とは対照的に病原性配座異性体と優先的に相互作用する、ペプチドおよびペプトイドを含む任意の種類の試薬を指す。優先的相互作用は、各ペプチドの特異的アミノ酸残基および/またはモチーフの間の相互作用を必ずしも必要としない。たとえば、ある実施形態において、本明細書に記載する病原性配座異性体特異的結合試薬は、病原性配座異性体と優先的に相互作用するが、それにもかかわらず、非病原性配座異性体を弱いが、検出可能なレベル(たとえば興味のあるポリペプチドで示される結合の10%以下)で結合することも可能であり得る。通例、弱い結合、すなわちバックグラウンド結合は、たとえば適切な対照の使用によって、興味のある病原性配座異性体との優先的相互作用から容易に識別できる。一般に、本発明の方法で使用する病原性配座異性体特異的結合試薬は、過剰な非病原性形態の存在下で病原性配座異性体を結合する。
病原性配座異性体特異的結合試薬は、別のペプチドまたはタンパク質と、特異的に、非特異的に、または特異的および非特異的結合のある組合せで結合する場合に、「相互作用する」といわれる。試薬は、病原性配座異性体と、病原性配座異性体に対して非病原性配座異性体に対してよりも高い親和性および/または高い特異性で結合する場合に、「優先的に相互作用する」と言われる。「優先的に相互作用する(interact preferentially)」、「優先的に相互作用する(preferentially interact)」、「選択的に結合する(bind selectively)」、「選択的に結合する(selectively bind)」、および「選択的に捕捉する」という用語は、本明細書で互換的に使用される。優先的相互作用は、各ペプチドの特異的アミノ酸残基および/またはモチーフの間の相互作用を必ずしも必要としないことが理解されるべきである。たとえば、ある実施形態において、本明細書に記載するPCSB試薬は、病原性配座異性体と優先的に相互作用するが、それにもかかわらず、非病原性配座異性体を弱いが、検出可能なレベル(たとえば興味のあるポリペプチドで示される結合の10%以下)で結合することが可能であり得る。通例、弱い結合、すなわちバックグラウンド結合は、たとえば適切な対照の使用によって、興味のある化合物またはポリペプチドとの優先的相互作用から容易に識別できる。一般に、本明細書に記載する試薬は、100倍過剰を超える非病原性配座異性体の存在下で、病原性配座異性体を結合する。
本明細書に記載する方法で利用されるPCSB試薬は、プリオンタンパク質断片に由来して、プリオンタンパク質の病原性形態と優先的に相互作用する。「プリオンタンパク質断片に由来する」用語は、本明細書で使用するように、プリオンタンパク質断片の化学構造に基づく化学構造を有する試薬を指す。このような試薬は、天然プリオンタンパク質配列を有するペプチド断片、保存的アミノ酸置換を持つ天然プリオンタンパク質配列を有するペプチド断片、またはプリオンタンパク質のペプチド断片のペプトイド類似体であり得る。
「プリオンタンパク質断片に由来して、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する」という用語は、本明細書で使用するように、先に定義した特性を組合せて有する試薬を指す。一例として、このような試薬は、上で定義したようなプリオンタンパク質断片の化学構造に基づく化学構造を有し、また病原性プリオンタンパク質に対して非病原性プリオンタンパク質に対してよりも高い親和性および/または高い特異性で結合する。
「非プリオン病原性配座異性体」という用語は本明細書で使用するように、本明細書で定義するようなプリオン疾患に関連するものではなく、コンフォメーション病タンパク質の病原性配座異性体を指す。
「コンフォメーション病タンパク質」は、β−プリーツシートとの関連で望ましくない原線維またはアミロイド重合などの異常なコンフォメーションを生じるように、タンパク質の構造が変化(たとえばミスフォールド)した、コンフォメーション病に関連するタンパク質の病原性および非病原性配座異性体を指す。コンフォメーション病タンパク質の例は、制限なく、アルツハイマー病タンパク質、たとえばAβおよびタウ;プリオンタンパク質、たとえばPrPScおよびPrPC、ならびに糖尿病タンパク質アミリンを含む。2つ以上の異なるコンフォメーションが想定されるタンパク質に関連する、疾患の非制限的なリストを下、
に示す。
「コンフォメーション病タンパク質」は本明細書で使用するように、本明細書に記載する配列と同じ配列を有するポリペプチドに限定されない。この用語が、同定済みのまたは未同定の種または疾患(たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病など)のいずれによるコンフォメーション病タンパク質も含むことは、容易に明らかとなる。当業者は、本開示および当該分野の教示を考慮して、たとえば配列比較プログラム(たとえばBLASTおよび本明細書に記載する他のもの)または構造特性もしくはモチーフの同定およびアライメントを使用して、任意の他のプリオンタンパク質の図に示した配列に対応する領域を決定することができる。
「コンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬」または「CDPSB試薬」は、他のコンフォメーション病タンパク質および他の種類のタンパク質とは対照的に、特定のコンフォメーション病タンパク質と優先的に相互作用する任意の種類の試薬を指す。好ましくは、コンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬は、コンフォメーション病タンパク質の病原性および非病原性配座異性体の両方に結合する。しかし多くの例で、コンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬は、コンフォメーション病タンパク質の可溶性形態のみに結合でき、したがって凝集体/ミスフォールド病原性配座異性体を結合できない。この場合、不溶性病原性配座異性体を検出されるように変性させることが必要であり得る。通例、このような試薬はモノクローナルまたはポリクローナル抗体である。
「プリオン」、「プリオンタンパク質」、「PrPタンパク質」および「PrP」という用語は、病原性配座異性体(スクラピータンパク質、病原性タンパク質形態、病原性アイソフォーム、病原性プリオンおよびPrPScと様々に呼ばれる)および非病原性配座異性体(細胞タンパク質形態、細胞アイソフォーム、非病原性アイソフォーム、非病原性プリオンタンパク質、およびPrPCと様々に呼ばれる)の両方はもちろんのこと、病原性コンフォメーションまたは正常細胞コンフォメーションのどちらも有し得ないプリオンタンパク質の変性形態および各種の組み換え形態も指すために、本明細書で互換的に使用される。病原性配座異性体は、ヒトおよび動物の疾患状態(海綿状脳症)に関連している。非病原性配座異性体は通常、動物細胞に存在して、適切な条件下で病原性PrPScコンフォメーションに変換され得る。プリオンは、ヒト、ヒツジ、ウシおよびマウスを含む多種多様の哺乳動物種で自然に産生される。ヒトプリオンタンパク質の代表的なアミノ酸配列は、配列番号1として示される。マウスプリオンタンパク質の代表的なアミノ酸配列は、配列番号2として示される。他の代表的な配列は、配列番号3〜11として提供される。プリオンタンパク質の断片は、実際の配列に対応する配列番号によって、または断片の最初および最後のアミノ酸のアミノ酸位置を示すことによって指定される。別途指摘しない限り、断片の最初および最後のアミノ酸を示すことによって呼ばれる断片は、配列番号1によって示されるようなヒトプリオンタンパク質の配列に基づく。たとえば「PrP19−30」という用語は、LGLCKKRPKPGGの配列(配列番号251)を有するペプチドを指す。
「アルツハイマー病(AD)タンパク質」または「ADタンパク質」という用語は、病原性配座異性体(病原性タンパク質形態、病原性アイソフォーム、病原性アルツハイマー病タンパク質、およびアルツハイマー病配座異性体と様々に呼ばれる)および非病原性配座異性体(正常細胞形態、非病原性アイソフォーム、非病原性アルツハイマー病タンパク質と様々に呼ばれる)の両方はもちろんのこと、病原性コンフォメーションまたは正常細胞コンフォメーションのどちらも有し得ないアルツハイマー病タンパク質の変性形態および各種の組み換え形態も指すために、本明細書で互換的に使用される。例示的なアルツハイマー病タンパク質は、Aβおよびタウタンパク質を含む。
「アミロイドベータ」、「アミロイド−β」、「Aベータ」、「Aβ」、「Aβ42」、「Aβ40」、および「Aβ40/42」という用語はすべて、本明細書で使用するように、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断によって形成された39〜43アミノ酸長の断片である、アミロイド−βペプチドを指す。Aβという用語は、任意の形態のアミロイド−βペプチドを一般に指すために使用される。「Aβ42」という用語は、APPのアミノ酸1〜42に対応する断片を指す。「Aβ40」という用語は、APPのアミノ酸1〜40に対応する断片を指す。Aβ40/42という用語は、Aβ40およびAβ42アイソフォームの両方を指すために使用される。
「糖尿病タンパク質」という用語は、病原性配座異性体(病原性タンパク質形態、病原性アイソフォーム、病原性糖尿病タンパク質と様々に呼ばれる)および非病原性配座異性体(正常細胞形態、非病原性アイソフォーム、非病原性糖尿病タンパク質と様々に呼ばれる)の両方はもちろんのこと、病原性コンフォメーションまたは正常細胞コンフォメーションのどちらも有し得ない糖尿病タンパク質の変性形態および各種の組み換え形態も指すために、本明細書で使用される。例示的なII型糖尿病タンパク質はアミリンであり、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)としても公知である。
「断片」は本明細書で使用するように、自然界で見出されるような無傷の全長タンパク質および構造の一部のみから成るペプチドを指す。たとえば断片は、タンパク質のC末端欠失および/またはN末端欠失を含むことができる。通例、断片は、それが由来する全長ポリペプチド配列の機能の1つ、いくつかまたはすべてを保持する。通例、断片は、天然タンパク質の少なくとも5の連続アミノ酸残基を;好ましくは少なくとも約8の連続アミノ酸残基を;さらに好ましくは、天然タンパク質の少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30の連続アミノ酸残基を含む。
「単離された」とは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指すときに、示された分子が、その分子が自然界で見出され、生物全体から分離され別個であること、またはポリヌクレオチドもしくはポリペプチドが自然界に見出されないときには、そのポリヌクレオチドもしくはポリペプチドがその所期の目的に使用できるのに足るほど、他の生物学的高分子を含んでいないことを意味する。
「ペプトイド」は、少なくとも1つの、好ましくは2つ以上のアミノ酸置換、好ましくはN置換グリシンを含有するペプチド模倣体を指すために一般に使用される。ペプトイドは特に、米国特許第5,811,387号に記載されている。本明細書で使用するように、「ペプトイド試薬」は、アミノ末端領域と、カルボキシ末端領域と、アミノ末端領域とカルボキシ末端領域との間の少なくとも1つの「ペプトイド領域」とを有する分子である。アミノ末端領域は、通例いずれのN置換グリシンも含有しない、試薬のアミノ末端側の領域を指す。アミノ末端領域は、H、アルキル、置換アルキル、アシル、アミノ保護基、アミノ酸、ペプチドなどであることが可能である。カルボキシ末端領域は、いずれのN置換グリシンも含有しない、ペプトイドのカルボキシ末端の領域を指す。カルボキシ末端領域は、H、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ保護基、アミノ酸、ペプチドなどを含むことができる。
「ペプトイド領域」は、アミノ末端に最も近いN置換グリシンから開始してそのN置換グリシンを含み、カルボキシ末端に最も近いN置換グリシンで終了してそのN置換グリシンを含む領域である。ペプトイド領域は、その中のアミノ酸の少なくとも3つがN置換グリシンによって置換された試薬の部分を一般に指す。
「生理学的に関連するpH」は、約5.5〜約8.5;または約6.0〜約8.0;または通常は約6.5〜約7.5のpHを指す。
「脂肪族」は、直鎖または分枝炭化水素部分を指す。脂肪族基は、ヘテロ原子およびカルボニル部分を含むことができる。
「アルキル」は、単独で使用されても、または別の基の一部として使用されても、脂肪族炭化水素鎖を指し、これに限定されるわけではないが、別途明示的に規定しない限り、1〜6個の、1〜5個の、1〜4個の、または1〜3個の炭素原子を含有する直鎖および分枝鎖を含む。たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどは、「アルキル」という用語に含まれる。
「アルケニル」は、たとえばこれに限定されるわけではないが、ビニル、アリル、2−メチル−アリル、4−but−3−enyl、4−hex−5−enyl、3−メチル−but−2−enylなどを含む、少なくとも1個の2重結合、たとえば2〜7個の、2〜6個の、2〜5個の、または2〜4個の炭素原子を含有するアルキル基を示すことを意図する。
「アルキニル」は、少なくとも1個の3重炭素間結合、たとえば2〜7個の、2〜6個の、2〜5個の、または2〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示すことを意図する。例示的なアルキニル基は、エチニル、プロピニルなどを含む。
「アルコキシ」は、単独で使用されても、または別の基の一部として使用されても、式−O−アルキル、たとえばメトキシの基の通常の意味を有し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「ハロ」または「ハロゲン」は、単独でまたは別の基の一部として使用されるとき、第VII族元素、たとえばF、Cl、BrおよびIの通常の意味を有する。
「アリール」は、単独でまたは別の基の一部として使用されるとき、たとえば1、2または3環の、たとえば6〜20個の、6〜14個の、または6〜10個の環炭素原子の芳香族炭化水素系たとえばフェニル、ベンジル、ナフチル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレニル、アントラセニル、ピレニルなどを意味する。アリールの定義には、1個以上の縮合非芳香族カルボシクリルまたはヘテロシクリル環を含有する芳香族系、たとえば1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンおよびインダンも含まれる。縮合非芳香環を含有するアリール基は、芳香族部分または非芳香族部分を介して結合できる。
「アリール−アルキル」または「アラルキル」は、式−アルキル−アリールの基を意味し、ここでアリールおよびアルキルは本明細書における定義を有する。
「アリールオキシ」は、式−O−アリールの基、たとえばヒドロキシフェニルのその通常の意味を有し、ここでアリールは、本明細書で定義する通りである。
「アラルコキシ」は、式−O−アルキル−アリールの基、たとえばメトキシフェニルのその通常の意味を有し、ここでアルコキシおよびアリールは本明細書で定義する通りである。
「シクロアルキル」は単独で使用されてもまたは別の基の一部として使用されても、環式アルキル、アルケニル、またはアルキニル基、たとえば3〜10個の炭素原子の単環、2環式、3環式、縮合、架橋またはスピロ飽和炭化水素部分、たとえばシクロプロピルのその通常の意味を有する。「シクロアルキル−アリール」という用語は、式−アリール−シクロアルキルの基を示すことを意図し、ここでアリールおよびシクロアルキルは、本明細書で定義する通りである。「シクロアルキアルキル(cycloalkyalkyl)」は、式−アルキル−シクロアルキルの基、たとえばシクロプロピルメチルまたはシクロヘキシルメチル基を示すことを意図し、ここでアルキルおよびシクロアルキルは、本明細書で定義する通りである。
本明細書で使用するように、「ヘテロアリール」基は、硫黄、酸素、または窒素などの少なくとも1個のヘテロ原子環員を有する芳香族複素環を指す。ヘテロアリール基は、単環式および多環式(たとえば2、3または4個の縮合環を有する)系を含む。ヘテロアリール基の例は、制限なく、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フリル(フラニル)、キノリル、イソキノリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、インドリル、ピリル、オキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、プリニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリニルなどを含む。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は1〜約20個の炭素原子を、さらなる実施形態において、約3〜約20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、3〜約14個の、3〜約7個の、または5〜6個の環形成原子を含有する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、1〜約4個の、1〜約3個の、または1〜2個のヘテロ原子を有する。
本明細書で使用するように、「ヘテロシクロアルキル」は、環形成炭素原子の1個以上がO、N、またはS原子などのヘテロ原子によって置換された環化アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む、非芳香族複素環を指す。例示的な「ヘテロシクロアルキル」基は、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、2,3−ジヒドロベンゾフリル、1,3−ベンゾジオキソール、ベンゾ−1,4−ジオキサン、ピペリジニル、ピロリジニル、イソキサゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニルなどを含む。ヘテロシクロアルキルの定義には、非芳香族複素環式環に縮合された(すなわち共通の結合を有する)1個以上の芳香環を有する部分、たとえばフタルイミジル、ナフタルイミジル、ならびにインドレンおよびイソインドレン基などの複素環のベンゾ誘導体も含まれる。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、1〜約20個の炭素原子を、さらなる実施形態において、約3〜約20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、3〜約14、3〜約7、または5〜6個の環形成原子を含有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、1〜約4個の、1〜約3個の、または1〜2個のヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は0〜3個の2重結合を含有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、0〜2個の2重または3重結合を含有する。
「ヘテロアリールアルキル」は、式−アルキル−ヘテロアリールの基を指し、ここでアルキルおよびヘテロアリールは、本明細書で定義する通りである。
「アシル」は、式−C(O)−アルキルの基を指す。いくつかの実施形態において、アシル基は、1〜10個、1〜8個、1〜6個、または1〜4個の炭素原子を有する。
「アミノアシル」は、式−C(O)−アルキル−アミノの基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「アルキルアミノ」は、式−NH−アルキルの基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「ジアルキルアミノ」は、式−N(アルキル)2の基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「ハロアルキル」は、1個以上のハロゲンによって置換されたアルキル基を指し、ここでアルキルおよびハロゲンは本明細書で定義する通りである。
「アルコキシアルキル」は、式−アルキル−アルコキシの基を指し、ここでアルキルおよびアルコキシは本明細書で定義する通りである。
「カルボキシアルキル」は、式−アルキル−COOHの基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「カルバミル」は、式−C(O)NH2の基を指す。
「カルバミルアルキル」は、式−アルキル−C(O)NH2の基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「グアニジノアルキル」は、式−アルキル−NHC(=NH)NH2の基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「チオール」は、式−SHの基を指す。
「アルキルチオール」は、式−S−アルキルの基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「アルキルチオアルキル」は、式−アルキル(alkly)−S−アルキルの基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「イミダゾリルアルキル」は、式−アルキル−イミダゾリルの基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「ピペリジルアルキル」は、式−アルキル−ピペリジニルの基を指し、ここでアルキルは本明細書で定義する通りである。
「ナフチルアルキル」は、式−アルキル−ナフチルの基、たとえば(8’−ナフチル)メチルを意味し、ここでナフチルはその通常の意味を有し、アルキルは本明細書で定義する通りである。
「インドリルアルキル」は、式−アルキル−インドールの基、たとえば3’−インドリルエチル、および3’−インドリルメチルを意味し、ここでインドールはその通常の意味を有し、アルキルは本明細書で定義する通りである。
「N含有ヘテロシクリル」は、少なくとも1個の環形成N原子を含有する任意のヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル基を指すことを意図する。例示的なN含有ヘテロシクリル基は、ピリジニル、イミダゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリル、インドリル、などを含む。
「N含有ヘテロシクリルアルキル」は、N含有ヘテロシクリルアルキルによって置換されたアルキルを指すことを意図する。
「アミノ」および「1級アミノ」は、NH2を指す。「2級アミノ」はNHRを指し、「3級アミノ」はNR2を指し、ここでRは任意の好適な置換基である。
「アンモニウム」は基−N(R)3+を指すことを意図し、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アリール、シクロアルキルアルキル、アリールアルキルなどの任意の適切な部分であり得る。
「アミノ酸」は、20個の天然に存在しかつ遺伝的にコードされたα−アミノ酸またはその保護誘導体のいずれも指す。アミノ酸の保護誘導体は、アミノ部分、カルボキシ部分、または側鎖部分に1個以上の保護基を含有することができる。アミノ保護基の例は、ホルミル、トリチル、フタルイミド、トリクロロアセチル、クロロアセチル、ブロモアセチル、ヨードアセチル、およびウレタン型ブロック基、たとえばベンジルオキシカルボニル、4−フェニルベンジルオキシカルボニル、2−メチルベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、4−フルオロベンジルオキシカルボニル、4−クロロベンジルオキシカルボニル、3−クロロベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル、4−ブロモベンジルオキシカルボニル、3−ブロモベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、4−シアノベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、2−(4−キセニル)−イソプロポキシカルボニル、1,1−ジフェニルエチ−1−イルオキシカルボニル、1,1−ジフェニルプロパ−1−イルオキシカルボニル、2−フェニルプロパ−2−イルオキシカルボニル、2−(p−トルイル)−プロパ−2−イルオキシカルボニル、シクロペンタニルオキシ−カルボニル、1−メチルシクロペンタニルオキシカルボニル、シクロヘキサニルオキシカルボニル、1−メチルシクロヘキサニルオキシカルボニル、2−メチルシクロヘキサニルオキシカルボニル、2−(4−トルイルスルホニル)−エトキシカルボニル、2−(メチルスルホニル)エトキシカルボニル、2−(トリフェニルホスフィノ)−エトキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル(「FMOC」)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、1−(トリメチルシリルメチル)プロパ−1−エニルオキシカルボニル、5−ベンズイソキサリルメトキシカルボニル、4−アセトキシベンジルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2−エチニル−2−プロポキシカルボニル、シクロプロピルメトキシカルボニル、4−(デシクロキシ)ベンジルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、1−ピペリジルオキシカルボニルなど;ベンゾイルメチルスルホニル基、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィンオキシドおよび同様のアミノ保護基を含む。カルボキシ保護基の例は、メチル、p−ニトロベンジル、p−メチルベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、2,4−ジメトキシベンジル、2,4,6−トリメトキシベンジル、2,4,6−トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、3,4−メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル、2,2’,4,4’−テトラメトキシベンズヒドリル、t−ブチル、t−アミル、トリチル、4−メトキシトリチル、4,4’−ジメトキシトリチル、4,4’,4”−トリメトキシトリチル、2−フェニルプロパ−2−イル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2−トリクロロエチル、ベータ−(ジ(n−ブチル)メチルシリル)エチル、p−トルエンスルホニルエチル、4−ニトロベンジルスルホニルエチル、アリル、シンナミル、1−(トリメチルシリルメチル)プロパ−1−エン−3−イルおよび同様の部分を含む。使用される保護基の種は、分子の残りを破壊することなく、誘導体化保護基を適切な箇所で選択的に除去できる限り、重要ではない。保護基のさらなる例は、E.Haslam,Protecting Groups in Organic Chemistry,(J.G.W.McOmie,ed.,1973),at Chapter 2;ならびにT.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,(1991),at Chapter 7に見出され、そのそれぞれの開示はその全体が参照により本明細書に援用される。
「N置換グリシン」は、式−(NR−CH2−CO)−の残基を指し、ここで各Rは、(C2−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C6−C10)シクロアルキル−アリール、アミノ(C1−C6)アルキル、アンモニウム(C1−C6)アルキル、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、カルボキシ、カルボキシ(C2−C6)アルキル、カルバミル、カルバミル(C2−C6)アルキル、グアニジノ、グアニジノ(C1−C6)アルキル、アミジノ、アミジノ(C1−C6)アルキル、チオール、(C1−C6)アルキルチオール、炭素原子2〜10個のアルキルチオアルキル、N含有ヘテロシクリル、N含有ヘテロシクリル(C1−C6)アルキル、イミダゾリル、炭素原子4〜10個のイミダゾリルアルキル、ピペリジル、炭素原子5〜10個のピペリジルアルキル、インドリル、炭素原子9〜15のインドリルアルキル、ナフチル、炭素原子11〜16個のナフチルアルキル、およびアリール(C1−C6)アルキルから独立して選択されるものなどの非水素部分であり;ここで各R部分は、ハロゲン、ヒドロキシおよび(C1−C6)アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換される。
−(NR−CH2−CO)−のいくつかの実施形態において、Rは、(C2−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C6−C10)シクロアルキル−アリール、アミノ(C1−C6)アルキル、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、カルボキシ、カルボキシ(C2−C6)アルキル、カルバミル、カルバミル(C2−C6)アルキル、グアニジノ、グアニジノ(C1−C6)アルキル、チオール、(C1−C6)アルキルチオール、炭素原子2〜10個のアルキルチオアルキル、イミダゾリル、炭素原子4〜10個のイミダゾリルアルキル、ピペリジル、炭素原子5〜10個のピペリジルアルキル、インドリル、炭素原子9〜15個のインドリルアルキル、ナフチル、炭素原子11〜16個のナフチルアルキル、ジフェニル(C1−C6)アルキルまたはアリール(C1−C6)アルキルであり;ここで各R部分は、ハロゲン、ヒドロキシ、および(C1−C6)アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換される。
−(NR−CH2−CO)−のいくつかの実施形態において、Rは、ハロゲン、ヒドロキシまたは(C1−C6)アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基によって置換される、(C2−C6)アルキル、アミノ(C1−C6)アルキル、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、グアニジノ(C1−C6)アルキル、炭素原子9〜15個のインドリルアルキル、炭素原子11〜16個のナフチルアルキル、ジフェニル(C1−C6)アルキルまたはアリール(C1−C6)アルキルである。
−(NR−CH2−CO)−のいくつかの実施形態において、Rは、生理学的に関連するpHにて荷電した部分である。生理学的に関連するpHにて正に荷電したRの例はたとえば、アミノ(C1−C6)アルキル、アンモニウム(C1−C6)アルキル、グアニジノ、グアニジノ(C1−C6)アルキル、アミジノ、アミジノ(C1−C6)アルキル、N含有ヘテロシクリル、およびN含有ヘテロシクリル(C1−C6)アルキルを含み、ここで各R部分は、ハロゲン、C1−C3メトキシ、およびC1−C3アルキルから独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換される。
−(NR−CH2−CO)−のいくつかの実施形態において、Rは生理学的に関連するpHにおいて中性の部分である。生理学的に関連するpHにて中性のRの例はたとえば、(C2−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C6−C10)シクロアルキル−アリール、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、炭素原子2〜10個のアルキルチオアルキル、ジフェニル(C1−C6)アルキル、およびアリール(C1−C6)アルキルを含む。さらなる例は、エチル、プロパ−1−イル、プロパ−2−イル、1−メチルプロパ−1−イル、2−メチルプロパ−1−イル、3−フェニルプロピ−1−イル、3−メチルブチル、ベンジル、4−クロロ−ベンジル、4−メトキシ−ベンジル、4−メチル−ベンジル、2−メチルチオエチ−1−イル、および2,2−ジフェニルエチルを含む。
−(NR−CH2−CO)−のいくつかの実施形態において、Rはアミノ(C1−C6)アルキル(たとえばアミノブチル)である。
さらなる例示的なN置換グリシンは、Rがエチル、プロパ−1−イル、プロパ−2−イル、1−メチルプロパ−1−イル、2−メチルプロパ−1−イル、3−フェニルプロピ−1−イル、3−メチルブチル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、4−クロロ−ベンジル、4−メトキシ−ベンジル、4−メチル−ベンジル、2−ヒドロキシエチル、メルカプトエチル、2−アミノエチル、3−プロピオン酸、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、2−メチルチオエチ−1−イル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、カルバミルメチル、2−カルバミルエチル、3−グアニジノプロパ−1−イル、イミダゾリルメチル、2,2−ジフェニルエチルまたはインドール−3−イル−エチルであるものを含む。
N置換グリシンの塩、エステル、および保護形態(たとえばFmocまたはBocなどによりN保護されたもの)も含まれる。
N置換グリシンを含むアミノ酸置換基を生成する方法は、特に、その全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,811,387号に開示されている。
「モノマー」または「サブユニット」は、鎖を形成するために他のモノマーに結合できる分子、たとえばペプチドを指す。アミノ酸およびN置換グリシンは例示的なモノマーである。他のモノマーと結合したとき、モノマーは「残基」と呼ばれ得る。
(II.コンフォメーション病)
本発明は、非プリオンコンフォメーション病タンパク質の病原性配座異性体を検出する方法およびこのようなタンパク質に関連する疾患を診断する方法に関する。コンフォメーション病タンパク質およびその対応する疾患は、下の表
本発明のコンフォメーション病は、プリオンに関連する疾患以外の、2つ以上の異なるコンフォメーションを形成するタンパク質に関連する任意の疾患を含む。本明細書で特に興味のある疾患は、アルツハイマー病、全身性アミロイドーシス、タウオパチー、およびシヌクレイノパチーなどの、すべてクロスベータシート特徴を呈するアミロイド疾患を含む。興味のある他の疾患は、糖尿病およびポリグルタミン病である。
本発明の方法のある実施形態において、コンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬(「CDPSB試薬」)は、非病原性および病原性配座異性体の両方の捕捉または検出のどちらかを行うために使用される。使用される特定のCDPSB試薬は、検出される病原性配座異性体に依存する。たとえば診断されるコンフォメーション病がアルツハイマー病である場合、ここでCDPSB試薬は、アルツハイマー病タンパク質Aβの非病原性および病原性配座異性体の両方を認識する抗体であり得る。
(III.本発明の方法で使用される試薬)
本発明で使用される病原性配座異性体特異的結合試薬(「PCSB試薬」)は、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する試薬である。
通例、PCSB試薬は、プリオンタンパク質断片に由来する。好ましくは、このようなPCSB試薬は、ペプチドまたはペプトイドとして一般に公知であるものを含む修飾ペプチドのどちらかである。
ある実施形態において、このようなPCSB試薬はポリカチオン性である。最も好ましくは、PCSB試薬は、生理学的pHにおいて少なくとも3または4の正味の正電荷を有する。理論に束縛されたくはないが、出願人らは、プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬がPrPScに結合する機構に類似した機構によって、本明細書に記載するPCSB試薬が非プリオン病原性配座異性体に結合して、したがって同様の結合特性を示すと考えている。Lauらは(本明細書の上で引用した)、血漿および緩衝液の両方においてPrPScへの結合に必要なコアペプチド配列が4個の正に荷電したアミノ酸を有することを示している。正に荷電したアミノ酸残基を3個しか含有しないペプチドは、緩衝液中のみでPrPScを結合できる。さらに、血漿および緩衝液の両方においてPrPScを結合するペプチドのアラニンスキャニング(scanning)は、正に荷電したアミノ酸のいずれか1個を除去することによって、バックグラウンドレベルに低下する。
(A.好ましいプリオンタンパク質断片)
PCSB試薬は好ましくは、あるプリオンタンパク質断片のアミノ酸配列に由来する。これらの好ましい領域は、マウスプリオン配列(配列番号2)およびヒトプリオン配列(配列番号1)の両方に関して例示される。本発明の方法で使用されるPCSB試薬は好ましくは、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用することが公知の他のPCSB試薬の基礎として作用するプリオンタンパク質断片に由来するが、生じるPCSB試薬が病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用できる限り、いずれのプリオンタンパク質断片から由来していてもよい。特に好ましい配列を下に記載する。
本発明で使用されるPCSB試薬は、いずれの種または改変体のアミノ酸配列の断片からも由来し得る。ヒト、マウス、ヒツジおよびウシを含む多くの異なる種によって産生されたプリオンタンパク質のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列が公知である。これらの配列の改変体もそれぞれの種に存在する。たとえばある実施形態において、本明細書に記載するペプチドPCSB試薬は、配列番号1−11で示される配列のいずれかに由来する。本明細書で具体的に開示されるPCSB試薬の配列は、マウスまたはヒトプリオン配列のどちらかに基づくが、当業者は、適切な場合には、他の種による対応する配列を容易に代用することができる。
PCSB試薬が由来可能であるプリオンタンパク質断片の好ましい長さは、長さが3〜5の残基、長さが6〜10(またはその間の任意の整数)の残基、長さが11〜20(またはその間の任意の整数)の残基、長さが21〜75(またはその間の任意の整数)の残基、長さが75〜100(またはその間の任意の整数)の残基、または長さが100の残基を超えるポリペプチドを含む。好ましくは、ペプチドは長さが約3〜100の残基である。一般に当業者は、本明細書の教示を考慮して、最大長を容易に選択することができる。さらに、本明細書に記載するような試薬、たとえば合成ペプチドは、標識、リンカー、または他の化学的部分(たとえばビオチン、コントロールレッドまたはチオフラビンなどのアミロイド特異性色素)などのさらなる分子を含み得る。このような部分は、PCSB試薬と病原性配座異性体との相互作用および/または病原性配座異性体のさらなる検出をさらに向上させ得る。
好ましい実施形態において、PCSB試薬は、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用することが公知のプリオンタンパク質断片、たとえば以下のヒトプリオンタンパク質断片:PrP19−30(配列番号242)、PrP23−30(配列番号243)、PrP100−111(配列番号244)、PrP101−110(配列番号245)、PrP154−165(配列番号246)、PrP226−237(配列番号247)、配列番号14、配列番号50および配列番号68に対応する配列を有する断片に由来する。
(B.PCSBペプチド試薬)
プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬は、プリオンタンパク質断片の正確なアミノ酸配列を有し得るか、またはプリオンタンパク質断片の変形または修飾形態であり得る。本発明の方法で使用されるPCSB試薬は好ましくは、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用することが公知の他のPCSB試薬の基礎として作用するプリオンタンパク質断片に由来するが、生じる試薬が病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用できる限り、いずれのプリオンタンパク質断片から由来していてもよい。
PCSB試薬は、1つ以上の非天然型アミノ酸を含む、1つ以上の置換、付加および/または欠失を有する、プリオンタンパク質断片のアミノ酸配列の誘導体を含む。好ましくは、誘導体は、任意の野生型または参照配列に対して少なくとも約50%の同一性を、好ましくは少なくとも約70%の同一性を、さらに好ましくは、本明細書に記載する任意の野生型または参照配列に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を示す。配列(またはパーセント)同一性は、後述する方法などの、当業者に公知の任意の方法を使用して決定できる。このような誘導体は、ポリペプチドの発現後修飾、たとえばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含むことができる。
アミノ酸配列の類似性またはパーセント同一性を決定する技法は、当該分野で周知である。一般に「類似性」とは、適切な場所における2つ以上のポリペプチドのアミノ酸対アミノ酸の比較で、アミノ酸が同一であるか、または電荷もしくは疎水性などの同様の化学的および/もしくは物理的特性を有することを意味する。そしていわゆる「パーセント同一性」と呼ばれるもの(so−termed)は、比較されたポリペプチド配列の間で決定できる。核酸およびアミノ酸配列同一性を決定する技法も、当該分野で周知であり、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を(通常、cDNA中間体を介して)決定することと、それによりコードされたアミノ酸配列を決定することと、これを第2のアミノ酸配列と比較することとを含む。一般に「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列それぞれの、正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の対応を指す。
2つ以上のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、その「パーセント同一性」を決定することによって比較できる。「パーセント同一性」は、配列を整列させて、2つの整列した配列間の正確な一致数をカウントし、参照配列の長さで割り、結果に100を掛けることにより、2つの分子間の配列情報の直接比較(参照配列および参照配列に対する%同一性が不明の配列)によって決定することができる。ペプチド分析のためにAdvances in Appl.Math.2:482−489,1981のSmith and Watermanの局所相同性アルゴリズムを適合させた、ALIGN,Dayhoff,M.O.in Atlas of Protein Sequence and Structure M.O.Dayhoff ed.,5 Suppl.3:353−358,National biomedical Research Foundation,Washington,DCなどの容易に入手可能なコンピュータプログラムを使用して分析に役立てることができる。ヌクレオチド配列同一性を決定するプログラム、たとえばまたSmith and Watermanアルゴリズムに依存した、BESTFIT、FASTAおよびGAPプログラムは、Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手できる)で入手できる。これらのプログラムは、製作者によって推奨され、上で触れたWisconsin Sequence Analysis Packageに記載されているデフォルトパラメーターによって容易に利用される。たとえば、特定のヌクレオチド配列の参照配列に対するパーセント同一性は、Smith and Watermanの相同性アルゴリズムを、デフォルトのスコアリング表および6ヌクレオチド部位のギャップペナルティと共に使用して決定することができる。
本発明の状況においてパーセント同一性を確立する別の方法は、University of Edinburghが著作権を所有し、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokによって開発され、多くの供給源、たとえばインターネットから入手可能である、MPSRCHTMパッケージプログラムを使用することである。この1組のパッケージから、デフォルトパラメーターがスコアリング表に使用されている(たとえばギャップオープンペナルティ12、ギャップ延長ペナルティ1、およびギャップ6)、Smith−Watermanアルゴリズムを使用することができる。生成されたデータから、「Match」値は「配列同一性」を反映する。配列間のパーセント同一性または類似性を計算するための他の好適なプログラムは、一般に当該分野で公知であり、たとえば,別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターと共に使用されるBLASTである。たとえば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを使用して使用できる:遺伝コード=標準;フィルタ=なし;ストランド=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリクス=BLOSUM62;ディスクリプション=50配列;ソート=HIGH SCORE;データベース=非重複、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は容易に入手できる。
PCSB試薬は、ポリペプチドが所望の活性を保持する限り、天然プリオンタンパク質配列に対する修飾、たとえば欠失、付加および置換(一般に自然界では保存的)を備えたPCSB試薬も含むことができる。ある実施形態において、保存的アミノ酸置換が好ましい。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸のファミリー内で起きるその側鎖に関連する置換である。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般に4つのファミリーに分類される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは場合により、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。たとえばロイシンとイソロイシンもしくはバリンとの、アスパラギン酸のグルタミン塩との、トレオニンとセリンとの孤立置換(isolated replacement)、またはアミノ酸と構造的に関連するアミノ酸との同様の保存的置換は、生物活性に対して大きな効果を有しないと合理的に予測可能である。このような修飾は、部位特異的変異誘発によるなど計画的であり得るか、またはタンパク質を産生する宿主の変異もしくはPCR増幅によるエラーによるなど偶発的であり得る。さらに、以下の効果:毒性の低下;病原性配座異性体に対する親和性および/または特異性の向上;細胞プロセシングの促進(たとえば分泌、抗原提示など);ならびにB細胞および/またはT細胞への提示の促進の1つ以上を有する修飾が行われ得る。
PCSB試薬は、アミノ酸の1つ以上の類似体(たとえば非天然アミノ酸などを含む)、置換された結合を有するペプチドはもちろんのこと、天然型および非天然型(たとえば合成)の両方の、当該分野で公知の他の修飾も含有し得る。それゆえ合成ペプチド、ダイマー、マルチマー(たとえばタンデムリピート、多抗原性ペプチド(MAP)形態、直鎖状結合ペプチド)、環化、分枝分子などは、ペプチドと見なされる。これは、1個以上のN置換グリシン残基(「ペプトイド」)および他の合成アミノ酸またはペプチドを含む分子も含む。(ペプトイドの説明については、たとえば米国特許第5,831,005号;同第5,877,278号;および同第5,977,301号;Nguyenら(2000)Chem Biol.7(7):463−473;ならびにSimonら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(20):9367−9371を参照)。
これらおよび他のアミノ酸類似体ならびにペプチドミメティックの一般的な総説については、Nguyenら(2000)Chem Biol.7(7):463−473;Spatola,A.F.,in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins,B.Weinstein,eds.,Marcel Dekker,New York,p.267(1983)を参照。Spatola,A.F.,Peptide Backbone Modifications(総説),Vega Data,Vol.1,Issue 3,(3月、1983);Morley,Trends Pharm Sci(総説),pp.463−468(1980);Hudson,D.ら、Int J Pept Prot Res,14:177−185(1979)(−−CH2NH−−、CH2CH2−−);Spatolaら、Life Sci,38:1243−1249(1986)(−−CH2−−S);Hann J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,307−314(1982)(−−CH−CH−−、シスおよびトランス);Almquistら、J Med Chem,23:1392−1398(1980)(−−COCH2−−);Jennings−Whiteら、Tetrahedron Lett,23:2533(1982)(−−COCH2−−);Szelkeら、European Appln.EP45665CA:97:39405(1982)(−−CH(OH)CH2−−);Holladayら、Tetrahedron Lett,24:4401−4404(1983)(−−C(OH)CH2−−);およびHruby,Life Sci,31:189−199(1982)(−−CH2−−S−−)も参照;そのそれぞれは参照により本明細書に援用される。
天然アミノ酸および非天然アミノ酸類似体の任意の組合せが本明細書に記載するPCSB試薬を生成するために使用できることも明らかになる。遺伝子コードされていない一般に見られるアミノ酸類似体は、これに限定されるわけではないが、オルニチン(Orn);アミノイソ酪酸(Aib);ベンゾチオフェニルアラニン(BtPhe);アルビッジイン(Abz);t−ブチルグリシン(Tle);フェニルグリシン(PhG);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);2−ナフチルアラニン(2−Nal);1−ナフチルアラニン(1−Nal);2−チエニルアラニン(2−Thi);1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);N−メチルイソロイシン(N−MeIle);ホモアルギニン(Har);Nα−メチルアルギニン(N−MeArg);ホスホチロシン(pTyrまたはpY);ピペコリン酸(Pip);4−クロロフェニルアラニン(4−ClPhe);4−フルオロフェニルアラニン(4−FPhe);1−アミノシクロプロパンカルボン酸(1−NCPC);およびサルコシン(Sar)を含む。PCSB試薬で使用されるアミノ酸のいずれもD−または、より通例にはL−異性体のどちらかであり得る。
本明細書に記載するPCSB試薬を形成するために使用され得るアミノ酸の他の非天然型類似体は、生物機能的同等物であり、本発明の化合物においても有用であり、同配体によって場合により置換された1個以上のアミド結合を有する化合物を含む、アミノ酸のスルホン酸アナログおよびボロン酸アナログなどのペプトイドおよび/またはペプチドミメティック化合物を含む。本発明の状況において、たとえば−−CONH−−は、同配体によって結合されたラジカルが−−CONH−−によって結合されたラジカルと同様の配向で保持されるように、−−CH2NH−−、−−NHCO−−、−−SO2NH−−、−−CH2O−−、−−CH2CH2−−、−−CH2S−−、−−CH2SO−−、−−CH−−CH−−(シスまたはトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−および1,5−2置換(disubstituted)テトラゾールによって置換され得る。本明細書に記載するPCSB試薬の1個以上の残基はペプトイドを含み得る。
それゆえ試薬は、1個以上のN置換グリシン残基も含み得る(1個以上のN置換グリシン残基を有するペプチドは、「ペプトイド」と呼ばれ得る)。たとえばある実施形態において、本明細書に記載するPCSB試薬のいずれの1個以上のプロリン残基もN置換グリシン残基によって置換される。この点で好適である特定のN置換グリシンは、これに限定されるわけではないが、N−(S)−(1−フェニルエチル)グリシン;N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン;N−(シクロプロピルメチル)グリシン;N−(イソプロピル)グリシン;N−(3,5−ジメトキシベンジル)グリシン;およびN−ブチルグリシンを含む。他のN置換グリシンも、本明細書に記載するPCSB試薬配列内の1個以上のアミノ酸残基を置換するのに好適であり得る。
本明細書に記載するPCSB試薬は、モノマー、マルチマー、環化分子、分枝分子、リンカーなどであり得る。本明細書に記載する配列のいずれのマルチマー(すなわちダイマー、トリマーなど)またはその生物機能性同等物も予期される。マルチマーは、ホモマルチマーであること、すなわち同一のモノマーで構成されることが可能であり、たとえば各モノマーは同じペプチド配列である。代わりに、マルチマーはヘテロマルチマーであることが可能であり、ヘテロマルチマーとは、マルチマーを構成するすべてのモノマーが同一とは限らないことを意味する。
マルチマーは、モノマーの相互への、または、たとえば多抗原性ペプチド(MAPS)(たとえば対称的MAPS)、ポリマー骨格、たとえばPEG骨格に結合されたペプチドおよび/またはスペーサー単位を用いてかもしくは用いずに直列に結合されたペプチドを含む基質への、直接結合によって形成することができる。
代わりに、結合基をモノマー性配列に付加して、モノマーを共に結合させて、マルチマーを形成することができる。結合基を使用するマルチマーの非制限的な例は、グリシンリンカーを使用するタンデムリピート;リンカーを介して基質に結合されたMAPSおよび/またはリンカーを介して骨格に結合された直鎖状結合ペプチドを含む。結合基は、当業者に公知であるような2官能性スペーサー単位(ホモ2官能性またはヘテロ2官能性)の使用を含み得る。一例としてであり、制限するものではないが、スクシンイミジル−4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシラート(SMCC)、スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレートなどの試薬を使用して共に結合するペプチドに、このようなスペーサー単位を含める多くの方法は、Pierce Immunotechnology Handbook(Pierce Chemical Co.,Rockville,Ill.)に記載されており、Sigma Chemical Co.(St.Louis,Mo.)およびAldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wis.)からも入手可能であり、“Comprehensive Organic Transformations”,VCK−Verlagsgesellschaft,Weinheim/Germany(1989)に記載されている。モノマー性配列を共に結合するために使用され得る結合基の一例は、−−Y1−−F−−Y2であり、ここでY1およびY2は、同じまたは異なり、炭素原子0〜20個の、好ましくは0〜8個の、さらに好ましくは0〜3個のアルキレン基であり、Fは、−−O−−、−−S−−、−−S−−S−−、−−C(O)−−O−−、−−NR−−、−−C(O)−−NR−−、−−NR−−C(O)−−O−−、−−NR−−C(O)−−NR−−、−−NR−−C(S)−−NR−−、−−NR−−C(S)−−O−−などの1個以上の官能基である。Y1およびY2は、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノ、カルボキシル、カルボキシアルキルなどによって場合により置換され得る。モノマーの任意の適切な原子が結合基に結合可能であることは理解されるべきである。
さらに、本明細書に記載するPCSB試薬は直鎖状、分枝状または環化状であり得る。モノマー単位は、環化され得るか、または共に結合され得て、マルチマーを直鎖または分枝方式で、環の形で(たとえば大員環)、星の形で(デンドリマー)またはボールの形で(たとえばフラーレン)で与える。当業者は、本明細書に開示したモノマー性配列から形成することができる多数のポリマーを容易に認識する。ある実施形態において、マルチマーは環式ダイマーである。上と同じ用語を使用すると、ダイマーはホモダイマーまたはヘテロダイマーであることが可能である。
環式形態は、モノマーまたはマルチマーにかかわらず、これに限定されるわけではないが、たとえば:(1)窒素とC末端カルボニルとの間の直接アミド結合形成、またはたとえばイプシロン−アミノカルボン酸との縮合などによるスペーサー基の仲介のどちらかによる、N末端アミンとC末端カルボン酸による環化;(2)たとえばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸側鎖とリジン側鎖との間にアミド結合を形成することによる、または2個のシステイン側鎖間もしくはペニシラミン側鎖とシステイン側鎖との間もしくは2個のペニシラミン側鎖間でのジスルフィド結合形成による、2個の残基の側鎖間の結合の形成による環化;(3)側鎖(たとえばアスパラギン酸またはリジン)とN末端アミンまたはC末端カルボキシルのどちらかそれぞれとの間のアミド結合の形成による環化;および/または(4)短い炭素スペーサー基の仲介による2個の側鎖の結合;などの上に記載した結合のいずれかによって生成できる。
さらに、本明細書に記載するPCSB試薬は、さらなるペプチド成分または非ペプチド成分も含み得る。さらなるペプチド成分の非制限的な例は、スペーサー残基、たとえば2個以上のグリシン(天然または誘導体化)残基または一端もしくは両端上のアミノヘキサン酸リンカーまたはペプチド試薬の可溶化を補助し得る残基、たとえばアスパラギン酸などの酸性残基(AspまたはD)を含む。ある実施形態において、たとえばペプチド試薬は、多抗原性ペプチド(MAP)として合成される。通例、ペプチド試薬の複数のコピー(たとえば2〜10コピー)は、分枝リジンなどのMAP担体または他のMAP担体コアに直接合成される。たとえばWuら、2001 123(28):6778−84;Spetzlerら(1995)Int J Pept Protein Res.45(1):78−85を参照。
本明細書に記載するPCSB試薬に含まれ得る非ペプチド成分(たとえば化学部分)の非制限的な例は、1つ以上の検出可能な標識、タグ(たとえばビオチン、His−Tag、オリゴヌクレオチド)、色素、結合対のメンバーなどをペプチド試薬の末端または内部のどちらかに含む。非ペプチド成分も、定量的構造活性データおよび/または分子モデリングによって非干渉性であることが予測される化合物上の位置に、直接またはスペーサー(たとえばアミド基)を介して(たとえば1つ以上の標識の共有結合を介して)結合され得る。本明細書に記載するPCSB試薬は、アミロイド特異的色素(たとえばコンゴーレッド、チオフラビンなど)などのプリオン特異的化学部分も含み得る。化合物の誘導体化(たとえば標識化、環化、化学部分の結合など)は、試薬の結合特性、生物機能および/または薬理学的活性を実質的に干渉(および向上させることさえ)すべきでない。
上述のペプチドは、これに限定されるわけではないが、組換え構築物からの発現およびペプチド合成を含む、当業者に公知の標準方法を使用して調製できる。
(C.PCSB試薬の基礎として使用される好ましいペプチドの例)
本発明の病原性配座異性体特異的結合試薬を生成するのに有用なペプチドの非制限的な例は、好ましくは、表3に示す配列に由来する。表のペプチドは、慣習的な1文字のアミノ酸コードによって表され、左側のそのアミノ末端および右側のカルボキシ末端と共に示される。Xは、任意のアミノ酸をその位置に配置できることを示す。
表の配列
のいずれも、アミノおよび/またはカルボキシ末端にGlyリンカー(Gn、ここでn=1、2、3、または4)を場合により含み得る。角カッコ内のアミノ酸は、別のペプチドにおいてその位置で使用できる代わりの残基を示す。丸カッコは残基がペプチド試薬に存在してもよく、または存在しなくてもよいことを示す。「2」が続く二重丸カッコ(たとえば配列番号111)は、配列が二重カッコの間のペプチドのコピーを2個含むことを示す。コピー回数の表示に続く残基(たとえば配列番号111では「K」)は、二重カッコ間のペプチドの各コピーが伸長する残基を示す。それゆえ配列番号111は、そのカルボキシ末端がリジンのa−およびe−アミノ官能基を介してリジン(K)残基にそれぞれ結合された、QWNKPSKPKTNペプチド配列(すなわち配列番号14)のダイマーである。「MAPS」を含む配列は、多抗原性部位を備えたペプチドを示す。「分枝」という用語に先行する数字は、コピー数を示す。それゆえ配列番号112は、各末端にGlyリンカーを備えた配列番号67である、GGGKKRPKPGGWNTGGGを4コピー含有するが、配列番号113は、また各末端にGlyリンカーを備えた配列番号67である、GGGKKRPKPGGWNTGGGを8コピー含有する。
ある実施形態において、ペプチド断片は、それぞれが本明細書にその全体が援用される、すべて“Prion−Specific Peptide Reagents”という名称で、2004年8月13日に出願された共有に係る特許出願の米国特許出願番号第10/917,646号、2005年2月11日に出願された米国特許出願番号第11/056,950号、および2004年8月13日に出願された国際出願PCT/US2004/026363の、配列番号2に示すマウスプリオン配列に従って番号付けした、残基23−43または85−156に対応する領域のいずれからも由来することができる(たとえば23−30、86−111、89−112、97−107、113−135、および136−156)。
いくつかの実施形態において、ペプチド断片は、配列番号14、50、51、52、12、72、68または115から219までのいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態において、ペプチド断片は、配列番号14、50、51、52、または161から219までのいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態において、ペプチド断片は、配列番号12、72、68または115から160までのいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態において、ペプチド断片は、配列番号14、50、または68のいずれか1つから選択される。
(D.ペプトイドPCSB試薬)
特に好ましい実施形態において、PCSB試薬はペプトイドである。通例、PCSB試薬は、プリオンタンパク質断片に由来する。好ましいペプトイドを下に記載する。
(ペプトイドの設計)
開始点として、ペプトイドPCSB試薬は、ペプチド断片の配列内のアミノ酸残基のN置換グリシンによる置換の実施、米国特許第5,811,387号;同第5,831,005号;同第5,877,278号;同第5,977,301号;同第6,075,121号;同第6.251,433号;および同第6,033,631号はもちろんのこと、Simonら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:9367に記載された方法を使用する修飾ペプチドの合成(これらの刊行物はその全体が参照により本明細書に援用される)、および本明細書に記載する方法による病原性配座異性体への結合についての修飾ペプチドの試験によって、上述のプリオンタンパク質断片の配列またはそのような断片の改変体のいずれかに基づいて設計することができる。さらなる置換は、好適な試薬が実現されるまで、下の置換スキームに従って行うことができる。
いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、
a)プリオンタンパク質のペプチド断片を提供して、ペプチド断片の第1のアミノ酸をN置換グリシンによって、以下の:
i)Ala、Gly、Ile、Leu、Pro、およびValは、N−(アルキル)グリシン、N−(アラルキル)グリシン、またはN−(ヘテロアリールアルキル)グリシンによって置換され;
ii)Asp、Asn、Cys、Gln、Glu、Met、SerおよびThrは、N−(ヒドロキシアルキル)グリシン、N−(アルコキシ)グリシン、N−(アミノアルキル)グリシン、またはN−(グアニジノアルキル)グリシンによって置換され;
iii)Phe、Trp、およびTyrは、N−(アラルキル)グリシン、N−(ヘテロアリールアルキル)グリシン、N−(ヒドロキシアラルキル)グリシン、またはN−(アルコキシアラルキル)グリシンによって置換され;
iv)Arg、His、およびLysは、N−(アミノアルキル)グリシン、またはN−(グアニジノアルキル)グリシンによって置換される、置換スキームにより置換するステップと;
b)ペプチド断片の第2のアミノ酸を、ステップa)によるN置換グリシンによって置換するステップと;
c)ペプチド断片の第3のアミノ酸をステップa)によるN置換グリシンによって置換するステップと;
d)場合により、ステップc)を1〜27回反復して、それにより3〜30個のN置換グリシンを含む、設計したペプトイドPCSB試薬を提供し;そして設計したペプトイドPCSB試薬を合成するステップ
とによって設計される。
修飾したペプチドは、本明細書に記載する方法に従って、病原性配座異性体への結合について試験することができる。上のスキームによるアミノ酸モノマーのN置換グリシンによるさらなる置換は、好適な結合が得られるまで、実施および再試験することができる(すなわちプリオンの病原性形態と優先的に相互作用するPCSB試薬)。
ペプトイドを生成する方法は、米国特許第5,811,387号および同第5,831,005号に開示されており、それぞれは、本明細書に開示する方法と同様に、参照によりその全体が本明細書に援用される。
本発明の方法で使用される病原性配座異性体特異的結合試薬は、
Xa−(Q)n−Xb
の式を有し得、式中:
各Qは独立して、アミノ酸またはN置換グリシンであり、−(Q)n−はペプトイド領域を定義し;
Xaは、H、(C1−C6)アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、(C1−C6)アシル、アミノ(C1−6)アシル、アミノ酸、アミノ保護基、または2〜約100アミノ酸のポリペプチドであり、ここでXaは、リンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換され;
Xbは、H、(C1−C6)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、カルボキシ保護基、アミノ酸、2〜約100アミノ酸のポリペプチドであり、ここでXbは、リンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換され;
nは、3〜約30であり(すなわちnは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30、またはそれ以上である);
ここでペプトイド領域−(Q)n−の少なくとも約50%は、これに限定されるわけではないが、N置換グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、各Qは独立して、N置換グリシンである。
いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、Xa−(Q)n−Xbの式を有し、式中、nは、約4〜約30、好ましくは約5〜約30であり、ここでペプトイド領域−(Q)n−の少なくとも約50%は、これに限定されるわけではないが、N置換グリシンを含み、ただしペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが:
(a)−AABA−;
(b)−AABAB−
(c)−ABACC−;
(d)−AAAAA−;
(e)−ABCBA−;
(f)−AABCA−;または
(g)−ABABA−;から独立して選択される少なくとも1つのサブ領域を含むという条件であり、ここでA、B、およびCは、それぞれ異なるN置換グリシンである。
いくつかの実施形態において、Xaは、それぞれリンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換される、(C1−C6)アシルまたはアミノ(C1−C6)アシルである。
いくつかの実施形態において、Xaは、それぞれリンカー部分を介して場合により結合される架橋または結合試薬から選択される結合体化部分によってそれぞれ場合により置換される、(C1−C6)アシルまたはアミノ(C1−C6)アシルである。
いくつかの実施形態において、Xaは、リンカー部分を介して場合により結合されるビオチンまたはメルカプトから選択される結合体化部分によってそれぞれ場合により置換される、(C1−C6)アシルまたはアミノ(C1−C6)アシルである。
いくつかの実施形態において、Xbは、リンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換されるアミノ酸である。
いくつかの実施形態において、Xbは、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノである。
いくつかの実施形態において、Xbはアミノである。
いくつかの実施形態において、nは、約5〜約15;5〜約10;または6である。
いくつかの実施形態において、nは、4〜10、4〜8、5〜7または6である。
いくつかの実施形態において、Xbは、結合体化部分によって場合により置換されるアミノ酸であり、nは6である。
いくつかの実施形態において、リンカー部分は、式−{NH(CH2)mC(O)}p−を有する領域を含有する。
いくつかの実施形態において、mは1〜10である。
いくつかの実施形態において、mは1〜8である。
いくつかの実施形態において、mは5である。
いくつかの実施形態において、pは1〜5である。
いくつかの実施形態において、pは1〜3である。
いくつかの実施形態において、pは1または2である。
いくつかの実施形態において、Xbは、リンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換されるアミノ酸であり、nは6である。
いくつかの実施形態において、Xbは、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり;Xaは、H、(C1−C6)アルキル、(C1−6)アシル、アミノ(C1−C6)アシル、アミノ酸、またはアミノ保護基であり、ここでXaは、リンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換され;nは6である。
いくつかの実施形態において、Xbは、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり;Xaは、H、(C1−C6)アルキル、(C1−6)アシル、アミノ(C1−C6)アシル、アミノ酸またはアミノ保護基であり、ここでXaは、リンカー部分を介して場合により結合される、架橋剤または結合剤から選択される結合体化部分によって置換され;nは6である。
いくつかの実施形態において、Xbは、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり;Xaは、H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アシル、アミノ(C1−6)アシル、アミノ酸またはアミノ保護基であり、ここでXaは、リンカー部分を介して場合により結合される、ビオチンまたはメルカプトを含む結合体化部分によって置換され、リンカー部分の少なくとも一部は式−{NH(CH2)mC(O)}p−を有し;nは6であり;mは1〜10であり;pは1〜5である。
いくつかの実施形態において、各Qは独立して、アミノ酸または式−(NR−CH2−CO)−を有するN置換グリシンであり、式中、各Rは、(C2−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C6−C10)シクロアルキル−アリール、アミノ(C1−C6)アルキル、アンモニウム(C1−C6)アルキル、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、カルボキシ、カルボキシ(C2−C6)アルキル、カルバミル、カルバミル(C2−C6)アルキル、グアニジノ、グアニジノ(C1−C6)アルキル、アミジノ、アミジノ(C1−C6)アルキル、チオール、(C1−C6)アルキルチオール、炭素原子2〜10個のアルキルチオアルキル、N含有ヘテロシクリル、N含有ヘテロシクリル(C1−C6)アルキル、イミダゾリル、炭素原子4〜10個のイミダゾリルアルキル、ピペリジル、炭素原子5〜10個のピペリジルアルキル、インドリル、炭素原子9〜15個のインドリルアルキル、ナフチル、炭素原子11〜16個のナフチルアルキルおよびアリール(C1−C6)アルキルから独立して選択され;ここで各R部分は、ハロゲン、ヒドロキシおよび(C1−C6)アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換される。
いくつかの実施形態において、各Qは独立して、アミノ酸または式−(NR−CH2−CO)−を有するN置換グリシンであり、式中、各Rは、(C2−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C6−C10)シクロアルキル−アリール、アミノ(C1−C6)アルキル、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、カルボキシ、カルボキシ(C2−C6)アルキル、カルバミル、カルバミル(C2−C6)アルキル、グアニジノ、グアニジノ(C1−C6)アルキル、チオール、(C1−C6)アルキルチオール、炭素原子2〜10個のアルキルチオアルキル、イミダゾリル、炭素原子4〜10個のイミダゾリルアルキル、ピペリジル、炭素原子5〜10個のピペリジルアルキル、インドリル、炭素原子9〜15個のインドリルアルキル、ナフチル、炭素原子11〜16個のナフチルアルキル、ジフェニル(C1−C6)アルキルまたはアリール(C1−C6)アルキルから独立して選択され;ここで各R部分は、ハロゲン、ヒドロキシおよび(C1−C6)アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換される。
いくつかの実施形態において、各Qは独立して、アミノ酸または式−(NR−CH2−CO)−のN置換グリシンであり、式中、各Rは、ハロゲン、ヒドロキシおよび(C1−C6)アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基によって置換される、(C2−C6)アルキル、アミノ(C1−C6)アルキル、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、グアニジノ(C1−C6)アルキル、炭素原子9〜15個のインドリルアルキル、炭素原子11〜16個のナフチルアルキル、ジフェニル(C1−C6)アルキルまたはアリール(C1−C6)アルキルから独立して選択される。
いくつかの実施形態において、各Qは独立して、アミノ酸であるか、またはN−(4−アミノブチル)グリシン、N−(l−フェニルエチル)グリシン、N−(2−アミノエチル)グリシン、N−(2−[4−メトキシフェニル]エチル)グリシン、N−(2−メトキシエチル)グリシン、N−(2−ヒドロキシエチル)グリシン、N−((1H−インドール−3−イル)メチル)グリシン、もしくはN−ベンジルグリシンから選択されるN置換グリシンである。
いくつかの実施形態において、各Qは独立して、アミノ酸であるか、またはN−(4−アミノブチル)グリシンもしくはN−ベンジルグリシンから選択されるN置換グリシンである。
いくつかの実施形態において、各Qは独立して、N置換グリシンである。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが、生理学的に関連するpHにて荷電された少なくとも3個のまたは少なくとも4個のN置換グリシンを含む。いくつかの実施形態において、電荷は正である。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域の残りのN置換グリシンは、生理学的に関連するpHにて中性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが、生理学的に関連するpHにて荷電された2〜6個の、3〜5個の、または4個のN置換グリシンを含む。いくつかの実施形態において、電荷は正である。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域の残りのN置換グリシンは、生理学的に関連するpHにて中性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−の2個のN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて正に荷電され、ペプトイド領域の残りのN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて中性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−の3個のN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて正に荷電され、ペプトイド領域の残りのN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて中性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−の4個のN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて正に荷電され、ペプトイド領域の残りのN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて中性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−の5個のN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて正に荷電され、ペプトイド領域の残りのN置換グリシン残基は、生理学的に関連するpHにて中性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにてポリイオン性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにてポリカチオン性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにてポリアニオン性である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにて少なくとも3+の正味電荷を有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにて少なくとも4+の正味電荷を有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにて2+〜6+の正味電荷を有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにて3+〜5+の正味電荷を有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、生理学的に関連するpHにて4+の正味電荷を有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが、生理学的に関連するpHにて正に荷電された、少なくとも3個のN置換グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが、生理学的に関連するpHにて正に荷電された、少なくとも4個のN置換グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが、生理学的に関連するpHにて正に荷電された、2〜6個のN置換グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが、生理学的に関連するpHにて正に荷電された、3〜5個のN置換グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが、生理学的に関連するpHにて正に荷電された、4個のN置換グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域−(Q)n−のN置換グリシンは式−(NR−CH2−CO)−を有し、式中、Rは、(C2−C6)アルキル、ハロ(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C6−C10)シクロアルキル−アリール、アミノ(C1−C6)アルキル、アンモニウム(C1−C6)アルキル、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ(C1−C6)アルキル、カルボキシ、カルボキシ(C2−C6)アルキル、カルバミル、カルバミル(C2−C6)アルキル、グアニジノ、グアニジノ(C1−C6)アルキル、アミジノ、アミジノ(C1−C6)アルキル、チオール、(C1−C6)アルキルチオール、炭素原子2〜10個のアルキルチオアルキル、N含有ヘテロシクリル、N含有ヘテロシクリル(C1−C6)アルキル、イミダゾリル、炭素原子4〜10個のイミダゾリルアルキル、ピペリジル、炭素原子5〜10個のピペリジルアルキル、インドリル、炭素原子9〜15個のインドリルアルキル、ナフチル、炭素原子11〜16個のナフチルアルキル、およびアリール(C1−C6)アルキルから独立して選択され;ここで各R部分は、ハロゲン、ヒドロキシおよび(C1−C6)アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換され、ペプトイド領域−(Q)n−は、これに限定されるわけではないが少なくとも3個の、少なくとも4個の、2〜6個の、3〜5個の、または、4個のN置換グリシンを含み、ここでRは、生理学的に関連するpHにて荷電される部分である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域のすべてのN置換グリシンは隣接している。
いくつかの実施形態において、ペプトイドPCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、少なくとも1個の結合体化部分を含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイドPCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、リンカー部分を介して結合された少なくとも1個の結合体化部分を含む。
好ましい実施形態において、ペプトイドPCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、アミノ末端領域、カルボキシ末端領域、およびアミノ末端領域とカルボキシ末端領域との間に少なくとも1個のペプトイド領域を含み、ここでペプトイド領域は、これに限定されるわけではないが約3〜約30個のN置換グリシンおよび場合により1個以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、これに限定されるわけではないが約4〜約30個の、または約5〜約30個のN置換グリシンを含む。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、これに限定されるわけではないが約4〜約30個の、または約5〜約30個のN置換グリシンおよび:
(a)−AABA−;
(b)−AABAB−
(c)−ABACC−;
(d)−AAAAA−;
(e)−ABCBA−;
(f)−AABCA−;または
(g)−ABABA−から選択されるペプトイドサブ領域を含み;
ここでA、B、およびCは、それぞれ異なるN置換グリシンであり、各サブ領域は、アミノ末端からカルボキシ末端方向へ左から右へ読み取られる。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、これに限定されるわけではないが約50〜約100%の、約75〜約100%の、または100%のN置換グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、長さが約5〜約50個の、約5〜約30個の、約5〜約15個の、約5〜約7個の、または6個のサブユニットである。
いくつかの実施形態において、ペプトイド試薬は、サブユニットが約5〜約50個の、約5〜約30個の、約5〜約15個の、または約6〜約9個の全長を有する。
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのペプトイド領域は、ペプトイド試薬の全長の約50%より大きく、約75%より大きく、または約90%より大きい。
いくつかの実施形態において、すべてのN置換グリシンは、ペプトイド領域内で隣接している。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域のN置換グリシンは、式−(NR−CH2−CO)−を有し、式中、Rは本明細書を通じて定義する通りである。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにてポリイオン性であり、荷電したペプトイド領域について本明細書を通じて記載する実施形態のいずれかに従う特徴を有する。
他の実施形態において、PCSB試薬は、3〜15個の隣接N置換グリシンを有するペプトイド領域を含み、ここでペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにて正味電荷を有する。いくつかの実施形態において、正味電荷は、生理学的に関連するpHにて少なくとも3+または少なくとも4+の正味電荷などの正味正電荷である。いくつかの実施形態において、試薬自体は、生理学的に関連するpHにて、2+〜6+、3+〜5+、または4+の正味電荷を有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域の隣接N置換グリシンの少なくとも2個、少なくとも3個、または少なくとも4個は、生理学的に関連するpHにて荷電される。さらなる実施形態において、ペプトイド領域の隣接N置換グリシンの少なくとも2個は、1級アミノ、2級アミノ、3級アミノ、アンモニウム(4級アミノ)、グアニジノ、アミジノ、またはN含有ヘテロシクリルから選択される少なくとも1個の部分を含む。
またさらなる実施形態において、ペプトイド領域の隣接N置換グリシンの少なくとも2個は、これに限定されるわけではないが、1級アミノ、2級アミノ、アンモニウム、グアニジノ、アミジノ、またはN含有ヘテロシクリルから選択される少なくとも1個のN置換基を含む。
またさらなる実施形態において、隣接N置換グリシンの少なくとも2個は、本明細書で与えた定義に従うR基であるN置換基を含む。
またさらなる実施形態において、ペプトイドPCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、6個の隣接N置換グリシンのペプトイド領域を含み、ペプトイドPCSB試薬自体は、生理学的に関連するpHにて3+または4+の正味電荷を有する。
「ペプトイド試薬」は、アミノ末端領域、カルボキシ末端領域、およびアミノ末端領域とカルボキシ末端領域との間の少なくとも1つの「ペプトイド領域」を有する分子である。アミノ末端領域は、通例いずれのN置換グリシンも含有しない、試薬のアミノ末端側の領域を指す。アミノ末端領域は、H、アルキル、置換アルキル、アシル、アミノ保護基、アミノ酸、ペプチドなどであることが可能である。いくつかの実施形態において、アミノ末端領域は、Xaに相当する。カルボキシ末端領域は、いずれのN置換グリシンも含有しない、ペプトイドのカルボキシ末端の領域を指す。カルボキシ末端領域は、H、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ保護基、アミノ酸、ペプチドなどを含むことができる。いくつかの実施形態において、カルボキシ末端領域は、Xbに相当する。いくつかの実施形態において、ペプトイドPCSB試薬は、約5〜約50個のサブユニット;約5〜約30個のサブユニット;約5〜約15個のサブユニット;または約6〜約9個のサブユニットの全長を有する。いくつかの実施形態において、ペプトイドはカルボキシ末端アミドである。ペプトイド領域は、その中のアミノ酸の少なくとも3つがN置換グリシンによって置換されているPCSB試薬の部分を一般に指す。
「ペプトイド領域」(本明細書では「−(Q)n−」とも呼ばれる)は、アミノ末端に最も近いN置換グリシンから開始してそのN置換グリシンを含み、カルボキシ末端に最も近いN置換グリシンで終了してそのN置換グリシンを含む領域として同定され得る。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、これに限定されるわけではないが、少なくとも約50%の、少なくとも約60%の、少なくとも約70%の、少なくとも約80%の、少なくとも約90%の、少なくとも約95%の、少なくとも約99%の、または100%のN置換グリシンを含む。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、これに限定されるわけではないが約25〜約100%の;約50〜約100%の;約75〜約100%のN置換グリシンを含む。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、これに限定されるわけではないが、100%のN置換グリシンを含む。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、ペプトイドPCSB試薬の全長の約50%より大きい(たとえば約50〜100%)。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、ペプトイド試薬の全長の約60%を超える(たとえば約60〜100%)。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、ペプトイド試薬の全長の約75%を超える(たとえば約75〜100%)。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、ペプトイド試薬の全長の約90%を超える(たとえば約90〜100%)。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、試薬の全長の100%である。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、少なくとも3個のN置換グリシンを含有する。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、少なくとも4個のN置換グリシンを含有する。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、少なくとも5個のN置換グリシンを含有する。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、少なくとも6個のN置換グリシンを含有する。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、3〜約30個の;約5〜約30個のN置換グリシン;および場合により1個以上のアミノ酸を含有する。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、サブユニットが約5〜約50個の、5〜約30個の、5〜約15個の、5〜約10個の、5〜約9個の、5〜約8個の、または5〜約7個の長さである。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、サブユニットが約3、4、5、6、7、8、9、または10個の長さである。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域はサブユニットが6個の長さである。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域内のN置換グリシンのすべてが近接している。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域のサブユニットのすべてがN置換グリシンである。
さらなる実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、4〜12個の、4〜10個の、4〜9個の、4〜8個の、5〜7個の、または6個の隣接N置換グリシンのペプトイド領域を含む。
いくつかの実施形態により、ペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにてポリイオン性であることが可能である。「ポリイオン性」という用語は、ペプトイド領域が生理学的に関連するpHにて荷電される2個以上の残基を含有することを意味する。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにてポリカチオン性またはポリアニオン性である。さらなる実施形態において、ペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにて少なくとも3+または少なくとも4+の正味電荷を有する。またさらなる実施形態において、ペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにて2+〜6+、3+〜5+、または4+の正味電荷を有する。
荷電されるN置換グリシン残基の非制限的な例は、N−(5−アミノペンチル)グリシン、N−(4−アミノブチル)グリシン、N−(3−アミノプロピル)グリシン、N−(2−アミノエチル)グリシン、N−(5−グアニジノペンチル)グリシン、N−(4−グアニジノブチル)グリシン、N−(3−グアニジノプロピル)グリシン、およびN−(2−グアニジノエチル)グリシンを含む。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにて正に荷電される少なくとも3個または少なくとも4個のN置換グリシンを含有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、生理学的に関連するpHにて正に荷電される2〜6個の、3〜5個の、または4個のアミノN−置換グリシンを含有する。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、式−(NR−CH2−CO)−を有する残基を含有し、式中、残基の少なくとも3個、少なくとも4個、2〜6個、3〜5個、または4個が生理学的に関連するpHにて荷電される。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域の荷電された残基は、式−(NR−CH2−CO)−を有し、式中、Rは、アミノ(C1−C6)アルキル、アンモニウム(C1−C6)アルキル、グアニジノ、グアニジノ(C1−C6)アルキル、アミジノ、アミジノ(C1−C6)アルキル、N含有ヘテロシクリルおよびN含有ヘテロシクリル(C1−C6)アルキルから独立して選択され、ここで各R部分は、ハロゲン、C1−C3メトキシ、およびC1−C3アルキルから独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換される。いくつかの実施形態において、Rは、アミノブチルなどのアミノ(C1−C6)アルキルである。
いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、生理学的に関連するpHにて少なくとも3+または少なくとも4+の正味電荷を有する。またさらなる実施形態において、試薬は、生理学的に関連するpHにて2+〜6+、3+〜5+、または4+の正味電荷を有する。
本発明の方法で使用されるPCSB試薬のペプトイド領域は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個またはそれ以上の残基の連続N置換グリシンの配列を指す、少なくとも1つのペプトイドサブ領域を含有することができる。いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は:
(a)−AABA−;
(b)−AABAB−
(c)−ABACC−;
(d)−AAAAA−;
(e)−ABCBA−;
(f)−AABCA−;または
(g)−ABABA−;
から独立して選択される少なくとも1つのペプトイドサブ領域を含有し、
A、B、およびCはそれぞれ、異なるN置換グリシンを表す。たとえばサブ領域で生じる各Aは、特定のN置換グリシンを指し、サブ領域で発生する各Bは、別の特定のN置換グリシンを指すが、AおよびBは互いに異なっている。したがって、Cは、AまたはBのどちらとも異なるN置換グリシンである。サブ領域配列は、アミノからカルボキシの方向に左から右へ読み取られることを意味する。いくつかの実施形態において、Aが疎水性残基のときに、Bは親水性残基であり、逆もまた同じである。いくつかの実施形態において、ペプトイドサブ領域は同種であり、すなわち1種類のN置換グリシンのみを含有する。いくつかの実施形態において、Aが脂肪族残基のとき、Bは環式残基である。いくつかの実施形態において、Bが脂肪族残基であるとき、Aは環式残基である。いくつかの実施形態において、AおよびBの両方が脂肪族である。いくつかの実施形態において、AおよびBは脂肪族であり、Cは環式である。いくつかの実施形態において、全てのN置換グリシンは、たとえばサブ領域−AABA−では脂肪族である(たとえば−(N−(2−メトキシエチル)グリシン)2−N−(4−アミノブチル)グリシン−(N−(2−メトキシエチル)グリシン)−、ここでAはN−(2−メトキシエチル)グリシンであり、BはN−(4−アミノブチル)グリシンである)。
いくつかの実施形態において、ペプトイド領域は、トリペプトイド、すなわち3個の隣接したN置換グリシンを含有する。例示的なトリペプトイドペプトイドサブ領域は、−(N−(2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)グリシン)2−N−(4−グアニジノブチル)グリシン−、−N−(4−アミノブチル)グリシン−(V)2−を含み、ここでVは、N−ベンジルグリシンまたはN−(2−メトキシエチル)グリシン、−N−ベンジルグリシン−W−N−ベンジルグリシン−であり、ここでWは、N−(4−アミノブチル)グリシンまたはN−(2−メトキシエチル)グリシン、および−N−(4−アミノエチル)グリシン−(N−(2−(4−メトキシフェニル)エチル)グリシン)2−である。いくつかの実施形態において、トリペプトイドサブ領域は、少なくとも1個の脂肪族残基および少なくとも1個の環式残基を含有する(たとえば(A)2−B、B2−A、またはB−A−B、ここでAは脂肪族残基であり、Bは環式残基である)。
いくつかの実施形態において、ペプトイドサブ領域は、N−(4−アミノブチル)グリシン−(S)−N−(1−フェニルエチル)グリシンジペプトイドなどのジペプトイドである。
本発明の方法で有用なPCSB試薬は、モノマー、マルチマー、環化分子、分枝分子、リンカーなどを含む。本明細書に記載する配列のいずれのマルチマー(すなわちダイマー、トリマーなど)またはその生物機能性同等物も予期される。マルチマーは、ホモマルチマーであること、すなわち同一のモノマーで構成されることが可能である。代わりに、マルチマーはヘテロマルチマーであることが可能であり、すなわちマルチマーを構成するすべてのモノマーが同一とは限らない。
マルチマーは、モノマーの相互への、または、たとえば多抗原性ペプチド(MAPS)(たとえば対称的MAPS)、ポリマー骨格、たとえばPEG骨格に結合されたペプチドおよび/またはスペーサー単位を用いてかもしくは用いずに直列に結合されたペプチドを含む基質への、直接結合によって形成することができる。代わりに、リンカーをモノマーに付加して、それらを結合させてマルチマーを形成することができる。リンカーを使用するマルチマーの非制限的な例は、たとえば、グリシンリンカーを使用するタンデムリピート、リンカーを介して基質に結合されたMAPSおよび/またはリンカーを介して骨格に結合された直鎖状結合ペプチドを含む。リンカー部分は、当業者に公知であるような2官能性スペーサー単位(ホモ2官能性またはヘテロ2官能性のいずれか)の使用を含み得る。
いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、コンフォメーション病タンパク質の非病原性形態の親和性よりも、少なくとも約2倍;5倍;10倍;20倍;50倍;100倍;200倍;500倍;または1000倍大きい親和性で、病原性配座異性体と相互作用する。いくつかの実施形態において、親和性は、コンフォメーション病タンパク質の非病原性形態の親和性よりも少なくとも約10倍大きい。いくつかの実施形態において、親和性は少なくとも100倍大きい。
本発明の検出方法は、本明細書に記載するPCSB試薬のいずれも利用することができる。いくつかの実施形態において、本発明の検出方法は、
Xa−(Q)n−Xb
の式を有するPCSB試薬を利用し、式中:
各Qは独立して、アミノ酸またはN置換グリシンであり、−(Q)n−はペプトイド領域を定義し;
Xaは、H、(C1−C6)アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、(C1−C6)アシル、アミノ(C1−6)アシル、アミノ酸、アミノ保護基、または2〜約100アミノ酸のポリペプチドであり、ここでXaは、リンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換され;
Xbは、H、(C1−C6)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、カルボキシ保護基、アミノ酸、2〜約100アミノ酸のポリペプチドであり、ここでXbは、リンカー部分を介して場合により結合される結合体化部分によって場合により置換され;
nは、3〜約30であり;ここでペプトイド領域−(Q)n−の少なくとも約50%が、これに限定されるわけではないが、N置換グリシンを含む。
いくつかのこのような実施形態において、nは、約4〜約30、好ましくは約5〜約30であり、ペプトイド領域−(Q)n−は:
(a)−AABA−;
(b)−AABAB−
(c)−ABACC−;
(d)−AAAAA−;
(e)−ABCBA−;
(f)−AABCA−;または
(g)−ABABA−;
から独立して選択される少なくとも1つのサブ領域を含み、ここでA、B、およびCは、それぞれ異なるN置換グリシンである。
検出方法のいくつかの実施形態において、PCSB試薬は、アミノ末端領域、カルボキシ末端領域、およびアミノ末端領域とカルボキシ末端領域との間に少なくとも1個のペプトイド領域を含有し、ここでペプトイド領域は、約3〜約30個のN置換グリシンおよび場合により1個以上のアミノ酸を含有する。いくつかのこのような実施形態において、ペプトイド領域は:
(a)−AABA−;
(b)−AABAB−
(c)−ABACC−;
(d)−AAAAA−;
(e)−ABCBA−;
(f)−AABCA−;および
(g)−ABABA−;
から選択されるペプトイドサブ領域を有し、ここでA、B、およびCはそれぞれ、異なるN置換グリシンである。
本発明の方法のいくつかの実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、プリオンタンパク質の3〜30アミノ酸ペプチド断片のペプトイド類似体を含み、ペプチド断片は、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、135、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、または228であり、ここで:
(a)ペプチド断片の少なくとも1個の非プロリン残基は、N置換グリシンによって置換されて、ペプトイド類似体を形成し;または
(b)ペプチド断片の少なくとも5アミノ酸残基は、N置換グリシンによってそれぞれ置換され、ペプトイド類似体を形成する。
上の方法のいくつかの実施形態において、ペプチド断片の任意の1個以上のアミノ酸残基のN置換グリシンによる置換は、以下の置換スキームに相当する:
i)Ala、Gly、Ile、Leu、Pro、およびValは、N−(アルキル)グリシン、N−(アラルキル)グリシン、またはN−(ヘテロアリールアルキル)グリシンによって置換され;
ii)Asp、Asn、Cys、Gln、Glu、Met、Ser、およびThrは、N−(ヒドロキシアルキル)グリシン、N−(アルコキシ)グリシン、N−(アミノアルキル)グリシン、またはN−(グアニジノアルキル)グリシンによって置換され;
iii)Phe、Trp、およびTyrは、N−(アラルキル)グリシン、N−(ヘテロアリールアルキル)グリシン、N−(ヒドロキシアラルキル)グリシン、またはN−(アルコキシアラルキル)グリシンによって置換され;
iv)Arg、His、およびLysは、N−(アミノアルキル)グリシンまたはN−(グアニジノアルキル)グリシンによって置換される。
いくつかのこのような実施形態において、PCSB試薬は、上述のプリオンタンパク質の5〜30アミノ酸ペプチド断片のペプトイド類似体である。
(好ましいペプトイド領域の配列)
表4は、本発明で使用するPCSB試薬を調製するのに好適な、例示的なペプトイド領域(アミノからカルボキシ方向)を示す。表5は、表1で使用した省略形のキーを示す。表6は、各配列の関連構造を与える。
本発明の方法のいくつかの実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、本明細書に記載するような配列、たとえば、配列番号229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、または241の配列を含む。いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、配列番号229、230、232、233、234、235、237、238、239、または240から選択される配列を含む。いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号229、230、235、237、238、239、または240から選択される配列を含む。いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号230、237、238、239、または240から選択される配列を含む。いくつかの実施形態において、本方法で使用するPCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号229、236、231、232、233、234または235から選択される配列を含む。いくつかの実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号230、237、238、239、または240から選択される配列を含む。いくつかのこのような実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号230、237または240を含む。いくつかのこのような実施形態において、PCSB試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号240を含む。
(E.好ましいペプトイドの例)
好ましい実施形態において、本発明の方法で使用される病原性特異的配座異性体結合試薬は、プリオンタンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用する試薬、たとえば実施例4において記載されるI、II、VII、IX、X、XIa、XIb、XIIa、またはXIIbで示される試薬の1つ以上である。
好ましい実施形態において、PCSB試薬は、ヒトプリオンタンパク質断片PrP19−30(配列番号242)、PrP23−30(配列番号243)、PrP100−111(配列番号244)、PrP101−110(配列番号245)、PrP154−165(配列番号246)、PrP226−237(配列番号247)ペプチド、配列番号14、配列番号50、または配列番号68に由来するペプトイドである。
特に好ましい実施形態において、PCSB試薬は、
(F.本発明の方法で使用されるPCSB試薬の同定)
本発明の方法で使用されるPCSB試薬は、プリオンタンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用する。この特性は、任意の公知の結合アッセイ、たとえばELISA、ウェスタンブロットなどの標準イムノアッセイ;標識ペプチド;ELISA様アッセイ;および/または細胞ベースアッセイ、特に「病原性配座異性体のPCSB試薬への結合による病原性配座異性体の検出」に関して以下の節で説明されているアッセイを使用して試験することができる。
本発明の方法で使用されるPCSB試薬の特異性を試験する1つの好都合な方法は、病原性および非病原性配座異性体の両方を含有する試料を選択することである。通例、このような試料は、罹患した動物からの組織を含む。病原性形態に特異的に結合することが公知である、本明細書に記載するようなPCSB試薬は、(当該分野で周知であり、以下でさらに説明される方法によって)固体担体に結合され、他の試料成分から病原性配座異性体を分離(「プルダウン」)して、固体担体における試薬−タンパク質結合相互作用の数に直接関連する定量値を得るために使用される。この結果を結合特異性が不明のPCSB試薬の結果と比較して、このような試薬が病原性配座異性体と優先的に相互できるか否かを判定することができる。
これらのアッセイは、病原性配座異性体が一般に、あるプロテアーゼ、たとえばプロテイナーゼKに対して耐性であるという事実を利用し得る。同じプロテアーゼは、コンフォメーション病タンパク質の非病原性配座異性体を分解することができる。したがってプロテアーゼを使用するときに、試料を2つの等量に分け得る。プロテアーゼを第2の試料に添加して、同じ試験を実施することができる。第2の試料中のプロテアーゼによって任意の非病原性配座異性体が分解されるため、第2の試料の任意の試薬−タンパク質結合相互作用は、病原性配座異性体に起因し得る。
(IV.病原性配座異性体のPCSB試薬への結合による病原性配座異性体の検出)
記載したPCSB試薬は、試料(たとえば、血液、脳、脊髄、CSFまたは器官試料などの生物学的試料)をスクリーニングするために、たとえばこれらの試料でのコンフォメーション病タンパク質の病原性形態の存在または非存在を検出するために、多種多様のアッセイで使用することができる。多くの現在の診断試薬とは異なり、本明細書に記載するPCSB試薬は、血液試料、血液製剤、CSF、または生検試料を含む、実質的にいずれの種類の生物学的または非生物学的試料での検出も可能である。検出方法はたとえば、立体配座タンパク質疾患を診断する方法においておよび病原性配座異性体の存在または非存在を知ることが重要であるその他の任意の状況において使用することができる。
(捕捉試薬または検出試薬のどちらかとしての病原性配座異性体特異的結合試薬の使用)
本発明の方法で使用されるPCSB試薬は通例、プリオンタンパク質断片に由来し、またプリオンタンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用する。これらのPCSB試薬の少なくともいくつかが、優先的に病原性プリオンおよび他の病原性配座異性体の両方と同程度まで優先的に相互作用することが予想される。1より多くのコンフォメーション病タンパク質の病原性配座異性体を含有することが予想される試料では、または存在する病原性配座異性体の種類を判定することが方法の目的ために重要である場合、病原性配座異性体特異的結合試薬は、異なる種類のコンフォメーション病タンパク質に対して異なる結合特異性および/または親和性を有するCDPSB試薬と組合せて、検出に使用すべきである。たとえば、病原性配座異性体特異的結合試薬が捕捉試薬として使用される場合、コンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬を、検出試薬として使用するべきであり、逆もまた同様である。しかしアッセイされる特定の試料が1種類の病原性配座異性体のみを含有することが予想される場合、または病原性配座異性体が存在することを判定することが方法の目的にとって重要でない場合、ここでPCSB試薬は、捕捉および検出試薬の両方として使用できる。
本発明の方法で使用されるいくつかのPCSB試薬は、検出アッセイが非プリオン病原性配座異性体のみの検出を可能にする方式で実施できるように、他の病原性配座異性体と比較して、病原性プリオンと異なる程度で優先的に相互作用する。この場合、PCSB試薬は、捕捉および検出試薬の両方として使用できる。
(病原性配座異性体特異的結合試薬を捕捉剤として使用する方法)
好ましい実施形態において、本発明は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料に病原性配座異性体特異的結合試薬を、存在するならば病原性配座異性体への試薬の結合を可能にする条件下で接触させるステップと;試料中に病原性配座異性体がある場合、試薬へのその結合によって病原性配座異性体の存在を検出するステップとによって;試料中の非プリオン病原性配座異性体の存在を検出する方法を提供し、ここで病原性配座異性体特異的結合試薬はプリオンタンパク質断片に由来して、プリオンタンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用する。
本発明の方法の使用では、試料は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが公知である、または疑われるいずれのものでもよい。試料は、生物学的試料(すなわち生存している生物またはかつて生存していた生物から調製した試料)または非生物学的試料であることが可能である。好適な生物学的試料は、これに限定されるわけではないが器官、全血、血液画分、血液成分、血漿、血小板、血清、脳脊髄液(CSF)、脳組織、神経系組織、筋肉組織、骨髄、尿、涙、非神経系組織、器官、および/または生検もしくは剖検を含む。好ましい生物学的試料は、血漿およびCSFを含む。
試料は、PCSB試薬の病原性配座異性体への結合を、試料中に病原性配座異性体が存在する場合に可能にする条件下で、本明細書に記載する1つ以上のPCSB試薬と接触させる。本明細書の開示に基づく特定の条件を判定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。通例、試料およびPCSB試薬を、ほぼ中性のpHの好適な緩衝液(たとえばpH7.5のTBS緩衝液)中で、好適な温度(たとえば約4℃)にて好適な期間(たとえば約1時間〜一晩)にわたって共にインキュベートして、結合を起こさせる。
本方法のこのような実施形態において、病原性配座異性体特異的結合試薬は捕捉試薬であり、試料中の病原性配座異性体の存在は、病原性配座異性体特異的結合試薬へのその結合によって検出される。捕捉後、病原性配座異性体の存在は、捕捉および検出試薬として同時に作用する、まさに同じ病原性配座異性体特異的結合試薬によって検出され得る。代わりに、異なる病原性配座異性体特異的結合試薬、または好ましくは、1つ以上のコンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬のどちらかであり得る、別個の検出試薬が存在することがある。好ましい実施形態において、捕捉ステップの後に、非結合試料は除去され、病原性配座異性体は、それが捕捉試薬と形成した複合体から解離されて、検出のために変性される。捕捉試薬は、好ましくは固体担体に結合される。
(検出試薬として病原性配座異性体特異的結合試薬を使用する方法)
他の実施形態において、本発明は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料にコンフォメーション病タンパク質の病原性形態および非病原性形態の両方に結合するコンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬を、存在するならばコンフォメーション病タンパク質へのCDPSB試薬の結合を可能する条件下で接触させて、第1の複合体を形成するステップと;第1の複合体にPCSB試薬を、試料中に病原性配座異性体がある場合、結合を可能にする条件下で接触させて、PCSB試薬へのその結合によって、病原性配座異性体の存在を検出するステップとによって、試料中の非プリオン病原性配座異性体の存在を検出する方法を提供し、ここでPCSB試薬はプリオンタンパク質断片に由来して、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する。
(A.病原性配座異性体を捕捉する試薬)
好ましい実施形態において、捕捉試薬は、プリオンタンパク質断片に由来してプリオンタンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用する、病原性配座異性体特異的結合試薬である。他の実施形態において、捕捉試薬は、コンフォメーション病タンパク質の病原性形態および非病原性形態の両方を結合する、コンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬である。
捕捉試薬は、試料中の任意の非プリオン病原性配座異性体を試薬に結合させて、複合体を形成する条件下で試料と接触する。このような結合条件は、当業者によって容易に決定され、本明細書にさらに記載される。通例、方法は、マイクロタイタープレートのウェル内で、または小容量のプラスチック管内で実施されるが、いずれの好都合な容器も好適である。試料は一般に、液体試料または懸濁物であり、捕捉試薬の前または後に反応容器に添加され得る。
捕捉試薬は好ましくは、以下の節でさらに詳細に記載される固体担体に結合される。いくつかの実施形態において、固体担体は試料の適用前に結合される。固体担体(たとえば磁気ビーズ)は最初に、本明細書に記載するような捕捉試薬と、捕捉試薬が担体に十分に固定されるように反応させる。捕捉試薬が結合された固体担体は次に、病原性配座異性体を含有することが疑われる試料と、捕捉試薬の病原性配座異性体への結合を可能にする条件下で接触させる。
代わりに捕捉試薬を、固体担体へ結合させる前に、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料と最初に接触させて、次に固体担体への捕捉試薬の結合を続けてもよい(たとえば、試薬をビオチン化して、固体担体はアビジンまたはストレプトアビジンを含むことが可能である)。
ある実施形態において、捕捉試薬と病原性配座異性体との間に複合体が作られた後に、非結合試料物質(すなわち、任意の非結合病原性配座異性体を含む、捕捉試薬に結合されていない試料の任意の成分)を除去することができる。たとえば捕捉試薬が固体担体に結合されている場合、非結合物質は固体担体を(非結合試料物質を含有する)反応溶液からたとえば遠心分離、沈殿、濾過、磁力などで分離することによって減少させることができる。方法の次のステップを実施する前に、複合体を有する固体担体を1回以上の洗浄ステップに場合により供し、任意の残留試料物質を除去してもよい。
いくつかの実施形態において、非結合試料物質の除去および任意の洗浄の後に、結合した病原性配座異性体を複合体から解離させて、任意の公知の検出方法を使用して検出する。代わりに、複合体中の結合した病原性配座異性体は、捕捉試薬から解離させずに検出される。
(B.病原性配座異性体の解離および変性)
捕捉試薬に結合して複合体を形成した後、病原性配座異性体は、病原性配座異性体の検出を容易にするために処理され得る。
いくつかの実施形態において、非結合物質は除去され、次に病原性配座異性体が複合体から解離される。「解離」は、病原性配座異性体を捕捉試薬とは別に検出できるようにする、病原性配座異性体の捕捉試薬からの物理的分離を指す。病原性配座異性体の複合体からの解離は、たとえば低濃度(たとえば0.4〜1.0M)のグアニジニウムヒドロクロライドまたはグアニジニウムイソチオシアネートを使用して実現できる。
本方法で使用されるCDPSB試薬が変性タンパク質のみを検出できる場合、解離した病原性配座異性体も変性されている。「変性」とは、ポリペプチドの天然コンフォメーションを破壊することを指す。たとえば、試薬が、試薬と病原性配座異性体とを共有結合する活性化可能反応基(たとえば光反応基)を含有する場合、試薬から解離することなく変性を達成することができる。
好ましい実施形態において、病原性配座異性体は同時に解離および変性される。
病原性配座異性体は、高濃度の塩またはカオトロピック剤、たとえば約3M〜約6Mのグアニジニウムチオシアネート(GdnSCN)、またはグアニジニウムHCl(GdnHCl)などのグアニジニウム塩を使用して、同時に解離および変性され得る。カオトロピック剤は検出試薬の結合に干渉し得るため、カオトロピック剤は好ましくは、検出が実施される前に除去または希釈される。
他の実施形態において、pHを変化させることによって、たとえばpHを12もしくはそれより上に上昇させる(「高pH])かまたはpHを2もしくはそれより下に低下させる(「低pH」)ことによって、病原性配座異性体は、同時に、捕捉試薬との複合体から解離および変性される。複合体の高いpHへの曝露が好ましい。一般に、12.0〜13.0のpHが十分である;好ましくは、12.5〜13.0のpHが;さらに好ましくは、12.7〜12.9のpHが;最も好ましくは12.9のpHが使用される。代わりに、複合体の低pHへの曝露を使用して、病原性プリオンタンパク質を試薬から解離および変性させることができる。この代案には、1.0〜2.0のpHが十分である。いくつかの実施形態において、病原性配座異性体は、pH12.5〜13.2で、好適な時間にわたって、たとえば90℃(C)で10分間処理される。
第1の複合体の高pHまたは低pHどちらかへの曝露は一般に、ごく短時間、たとえば60分間にわたって、好ましくは15分間以下で、さらに好ましくは10分間以下で実施される。いくつかの実施形態において、曝露は室温より上で、たとえば約60℃、70℃、80℃、または90℃にて実施される。病原性配座異性体を解離させるのに十分な時間の曝露後、酸性試薬(高pH解離条件が使用される場合)または塩基性試薬(低pH解離条件が使用される場合)のどちらかの添加によって、pHを容易に中性(すなわち約7.0〜7.5のpH)に再調整することができる。当業者は適切なプロトコルを容易に決定することが可能であり、例が本明細書に記載されている。
一般に高pH解離条件を生じさせるためには、約0.05N〜約0.2Nの濃度までのNaOHの添加で十分である。好ましくは、NaOHを約0.05N〜約0.15Nの濃度で添加する;さらに好ましくは、約0.1N NaOHが使用される。解離が完了すると、pHは、好適な量の酸性溶液、たとえばリン酸、リン酸一ナトリウムの添加によって、中性(すなわち約7.0〜7.5)に再調整できる。
一般に低pH解離条件を生じさせるためには、約0.2M〜約0.7Mの濃度までのH3PO4の添加で十分である。好ましくは、H3PO4を0.3M〜0.6Mの濃度で添加する;さらに好ましくは、0.5M H3PO4が使用される。解離が完了すると、pHは、好適な量の塩基性溶液、たとえばNaOHまたはKOHの添加によって、中性(すなわち約7.0〜7.5)に再調整できる。
所望ならば、病原性配座異性体の複合体からの解離は、タンパク質を変性させることなく、たとえば低濃度(たとえば0.4〜1.0M)のグアニジニウムヒドロクロライドまたはグアニジニウムイソチオシアネートを使用して実施することもできる。タンパク質を変性させることなく、病原性配座異性体を複合体から解離させるためのさらなる条件については、WO2006076497(国際出願PCT/US2006/001090)を参照。代わりに、たとえば試薬が試薬と病原性配座異性体とを共有結合するために使用できる活性化可能反応基(たとえば光反応基)を含有するように修飾される場合、捕捉された病原性配座異性体はまた、試薬からの解離無しに変性させられ得る。
解離の後、病原性配座異性体は次に捕捉試薬から分離される。この分離は、非結合物質を含有する部分(現在は解離された病原性配座異性体)が保持され、捕捉試薬を含有する部分が廃棄されることを除いて、上述の非結合試料物質の除去と同様の方式で実施することができる。
(C.捕捉された病原性配座異性体の検出)
病原性配座異性体の検出は、コンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬を使用して実施され得る。好ましい実施形態において、CDPSB試薬は、コンフォメーション病タンパク質上のエピトープを認識する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)である。
試料中の捕捉された病原性配座異性体の検出も、PCSB試薬を使用することによって実施され得る。このような試薬は、捕捉試薬が同じかもしくは異なる病原性配座異性体特異的結合試薬またはコンフォメーション病タンパク質特異的結合剤のどちらかである実施形態で使用され得る。
方法が第1の病原性配座異性体特異的結合試薬および第2の病原性配座異性体特異的結合試薬を利用するとき、第1および第2の試薬は同じでも異なっていてもよい。「同じ」とは、第1および第2の試薬が第2の試薬中の検出可能な標識の包含のみで異なることを意味する。第1および第2の試薬は、たとえばそれらが異なる構造を有するか、またはプリオンタンパク質の異なる領域からの断片に由来する場合に、「異なる」。
(一般的な検出方法)
次に任意の好適な検出手段を使用して、捕捉試薬と病原性配座異性体との間の結合を同定することができる。
結合の検出に使用するのに好適な分析方法は、UV/可視分光法、FTIR、核磁気共鳴分光法、ラマン分光法、質量分析法、HPLC、キャピラリー電気泳動法、表面プラズモン共鳴分光法、微小電気機械システム(MEMS)などの方法、または当該分野で公知の他の任意の方法を含む。
結合は、しばしばELISAの形態で、標識試薬または抗体の使用によっても検出され得る。本発明の使用に好適な検出可能な標識は、これに限定されるわけではないが、放射性同位体、蛍光剤、化学発光剤、発色団、蛍光半導体ナノ結晶、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素インヒビター、発色団、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(たとえばビオチン、ストレプトアビジン(strepavidin)またはハプテン)などを含む、検出可能な任意の分子を含む。さらなる標識は、これに限定されるわけではないが、検出可能な範囲で蛍光を呈することができる物質またはその部分を含む、蛍光を使用する標識を含む。本発明で使用され得る標識の詳細な例は、これに限定されるわけではないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセイン、FITC、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、ジメチルアクリジニウムエステル(DMAE)、テキサスレッド、ルミノール、NADPHおよびβ−ガラクトシダーゼを含む。さらに検出可能な標識は、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写媒介増幅(TMA)、分枝DNA(b−DNA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)などを含む核酸検出方法によって検出することができる、オリゴヌクレオチドタグを含み得る。好ましい検出可能な標識は、酵素、特にアルカリホスファターゼ(AP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、および蛍光化合物を含む。当該分野で周知であるように、酵素は、検出可能な基質、たとえば、発色基質または蛍光発生基質と組合せて利用され、検出可能なシグナルを生成する。
標識された検出試薬の使用(上述)に加えて、病原性配座異性体に結合された試薬を分離させるために免疫沈降が使用され得る。好ましくは、免疫沈降は、沈降促進剤の添加によって促進される。沈降促進剤は、タンパク質に結合されている試薬の沈降を促進または増加することができる部分を含む。このような沈降促進剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、タンパク質G、タンパク質Aなどを含む。タンパク質Gまたはタンパク質Aが沈降促進剤として使用される場合、タンパク質は場合によりビーズ、好ましくは磁気ビーズに結合され得る。沈降は、遠心分離の使用または磁力の使用によってさらに促進することができる。このような沈降促進剤の使用は、当該分野で公知である。
たとえばウェスタンブロットは、通例、ニトロセルロースまたはPVDFに電気的にブロットされた、「プルダウン」アッセイ(本明細書に記載するような)から得た試料において、SDS−PAGEゲルから変性タンパク質を検出するタグ化1次抗体を利用する。次に1次抗体は、タグに対するプローブ(たとえばストレプトアビジン結合体化アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ECL試薬、および/または増幅可能なオリゴヌクレオチド)によって検出(および/または増幅)される。結合は、親和性タグに対するプローブ(たとえばストレプトアビジン結合体化アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ECL試薬、または増幅可能なオリゴヌクレオチド)によって標識および増幅される親和性タグ(たとえばビオチン)を有するペプチドなどの検出試薬を使用しても評価することができる。
たとえば病原性配座異性体が個々の細胞で直接検出される場合(たとえば特異的に標識された細胞の蛍光ベースの細胞選別、カウント、または検出を可能にする蛍光標識試薬を使用して)、細胞ベースアッセイも使用することができる。
検出試薬からのシグナルを増幅するアッセイも公知である。その例は、ビオチンおよびアビジンを利用するアッセイ、ならびに酵素標識および媒介イムノアッセイ、たとえばELISAアッセイである。さらなる例は、シグナル増幅のための分枝DNAの使用(たとえば米国特許第5,681,697号;同第5,424,413号;同第5,451,503号;同第5,4547,025号;および同第6,235,483号を参照);PCR、ローリングサークル増幅、Third Waveのインベーダーなどの標的増幅技法の利用(Arrudaら、2002 Expert.Rev.Mol.Diagn.2:487;米国特許第6090606号,同第5843669号,同第5985557号,同第6090543号,同第5846717号)、NASBA、TMAなど(米国特許第6,511,809号;EP 0544212A1);および/または免疫−PCR技法(たとえば米国特許第5,665,539号;国際公開WO98/23962;WO00/75663;およびWO01/31056を参照)を含む。
さらに、サンドイッチELISAに類似したマイクロタイタープレート手順が使用され得、たとえば本明細書に記載するような病原性配座異性体特異的結合試薬またはコンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬は、タンパク質を固体担体(たとえばマイクロタイタープレートのウェル、ビーズなど)に固定化するのに使用され、さらなる検出試薬(これに限定されるわけではないが、別の病原性配座異性体特異的結合試薬またはコンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬(結合体化アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ECL試薬、または増幅可能なオリゴヌクレオチドなどの親和性および/または検出標識を有する)を含み得る)は、病原性配座異性体を検出するために使用される。
(解離した捕捉病原性配座異性体を検出するための好ましい方法)
捕捉試薬と結合された病原性配座異性体とが検出前に解離された場合、解離された病原性配座異性体は、下でさらに十分に説明する、直接ELISAまたは抗体サンドイッチELISA型アッセイのどちらかとしての、ELISA型アッセイで検出することができる。「ELISA」という用語は、抗体による検出を説明するために使用されるが、アッセイは抗体が「酵素結合」されているアッセイに限定されない。検出抗体は、本明細書に記載され、イムノアッセイの分野で周知である検出可能な標識のいずれによっても標識できる。Lauら、PNAS USA 104(28):11551−11556(2007)に記載されているようなELISAは、捕捉試薬から解離した病原性配座異性体の量を定量するために実施できる。
解離した病原性配座異性体は、固体担体表面にそれを受動的コーティングすることによって、標準ELISA用に調製することができる。このような受動的コーティングの方法は周知であり、通例、pH8の100mM NaHCO3中で、約37℃にて数時間、または4℃にて一晩実施される。他のコーティング緩衝液(たとえば50mMカーボネートpH9.6、10mM Tris pH8、または10mM PBS pH7.2)が周知である。固体担体は、本明細書に記載されているか、または当該分野で周知である固体担体のいずれでもよいが、好ましい固体担体はマイクロタイタープレート、たとえば96ウェルポリスチレンプレートである。高濃度のカオトロピック剤を使用して解離が実施された場合、カオトロピック剤の濃度は、固体担体へのコーティングの前に、少なくとも約2倍に希釈することによって低下される。高または低pHを使用して解離が実施されその後中和された場合、解離された病原性配座異性体は、さらなる希釈を一切行わずにコーティングに使用できる。プレート(単数または複数)を洗浄して、非結合物質を除去できる。
標準ELISAが実施される場合、次に検出可能に標識された結合分子、たとえばコンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬または病原性配座異性体特異的結合試薬(捕捉に使用したのと同じ試薬または異なる試薬のどちらか)が添加される。この検出可能に標識された結合分子を任意の捕捉された病原性配座異性体と反応させて、当該分野で周知の方法を使用して、プレートを洗浄し、標識分子の存在を検出する。捕捉試薬が病原性形態に対して特異的である限り、検出分子は、病原性形態に対して特異的である必要はないが、両方の形態に結合してよい。好ましい実施形態において、検出可能に標識された結合分子は抗体である。このような抗体は、周知である抗体はもちろんのこと、病原性配座異性体またはコンフォメーション病タンパク質の病原性形態および非病原性形態の両方に対して特異的である周知の方法によって産生される抗体も含む。
代わりの実施形態において、解離した病原性配座異性体は、抗体サンドイッチ型ELISAを使用して検出される。この実施形態において、解離した病原性配座異性体は、病原性配座異性体またはコンフォメーション病タンパク質に特異的な第1の抗体を有する固体担体に「再捕捉」される。病原性配座異性体が再捕捉された固体担体は、場合により洗浄して任意の非結合物質を除去し、次にコンフォメーション病タンパク質または病原性配座異性体に特異的な第2の抗体と、第2の抗体を再捕捉された病原性配座異性体への結合を可能にする条件下で接触させる。
第1および第2の抗体は通例、異なる抗体であり、好ましくはコンフォメーション病タンパク質の異なるエピトープを認識する。たとえば第1の抗体は、コンフォメーション病タンパク質のN末端のエピトープを認識し、第2の抗体はN末端以外のエピトープを認識し、または逆も同様である。第1および第2の抗体の他の組合せは容易に選択できる。本実施形態において、第1の抗体ではなく、第2の抗体が検出可能に標識される。
試薬からの病原性配座異性体の解離がカオトロピック剤を使用して実施されるとき、検出アッセイを実施する前にカオトロピック剤を除去するか、または少なくとも15倍に希釈すべきである。高または低pHおよび中和を使用して解離を生じさせるとき、解離された病原性配座異性体は、さらなる希釈を行わずに使用できる。検出を実施する前に解離した病原性配座異性体が変性されているとき、第1および第2の抗体はどちらも変性配座異性体に結合する。
(非解離の捕捉された病原性配座異性体を検出する好ましい方法)
他の例示的なアッセイにおいて、捕捉試薬と結合された病原性配座異性体とは検出前に解離していない。たとえば固体担体(たとえばマイクロタイタープレートのウェル)は、病原性配座異性体特異的結合試薬に結合される。次に非プリオン病原性配座異性体を含有する、またその含有が疑われる試料を固体担体に添加する。任意の病原性配座異性体が試薬に結合するのに十分なインキュベーション期間の後、固体担体を洗浄して非結合部分を除去することが可能であり、検出可能に標識された、上述のような第2の結合分子、たとえばコンフォメーション病タンパク質特異的結合試薬または第2の同じかもしくは異なる病原性配座異性体特異的結合試薬が添加される。代わりに、コンフォメーション病タンパク質特異的結合を固体担体に結合させて(たとえばマイクロタイタープレートのウェルをコーティング)、病原性配座異性体特異的検出試薬を使用して検出を実施することができる。
(病原性アルツハイマー病配座異性体の好ましい検出方法)
本発明の方法の好ましい実施形態において、病原性アルツハイマー病配座異性体が検出されるとき、サンドイッチELISAが使用される。PCSB試薬を使用した試料からの病原性アルツハイマー病配座異性体の捕捉および非結合試料の除去の後、捕捉された病原性アルツハイマー病配座異性体は通例、たとえばチオシアン酸グアニジンによるインキュベーションまたは高pH解離条件によって、解離および変性される。好ましい実施形態において、病原性アルツハイマー病配座異性体がAβである場合、Aβは、約0.05N NaOHまたは約0.1N NaOHによって、約90℃または約80℃にて、PCSB試薬との複合体から解離し変性される。特に好ましい実施形態において、Aβは、約0.1N NaOHで約80℃にて約30分間で解離および変性される。
病原性アルツハイマー病配座異性体を再捕捉するために、アルツハイマー病タンパク質に特異的な抗体によって、固体担体をコーティングすることができる。この捕捉された病原性アルツハイマー病配座異性体は次に、検出可能に標識されているアルツハイマー病タンパク質に特異的な別の抗体を使用して検出することができる。特に好ましい抗体は、Aβ40のC末端に特異的な抗体である11A50−B10(Covance);Aβ42のC末端に特異的な抗体である12F4(Covance);Aβアミノ酸17〜24に特異的な4G8;Aβアミノ酸1〜10に特異的な20.1;およびAβアミノ酸3〜8に特異的な6E10を含む。好ましい実施形態において、20.1は捕捉抗体であり、12F4または11A50−B10は検出抗体として使用される。
(D.アッセイで使用される固体担体)
ある実施形態において、PCSB試薬またはCDPSB試薬は、固体担体上で提供される。PCSB試薬またはCDPSB試薬は、試料との接触前に固体担体上に提供することができるか、または試薬は、試料との接触およびその中の任意の病原性配座異性体への結合の後に、固体担体への結合に適応させることができる(たとえばビオチン化試薬およびアビジンまたはストレプトアビジンを含む固体担体を使用することによる)。
本発明の目的では、固体担体は、不溶性マトリクスである任意の物質であり得、興味のある分子(たとえば本発明の試薬、コンフォメーション病タンパク質、抗体など)を連結または結合させることができる剛性または半剛性表面を有することができる。例示的な固体担体は、これに限定されるわけではないが、基質、たとえばニトロセルロース、ポリ塩化ビニル;ポリプロピレン、ポリスチレン、ラテックス、ポリカーボネート、ナイロン、デキストラン、キチン、砂、シリカ、軽石、アガロース、セルロース、ガラス、金属、ポリアクリルアミド、ケイ素、ゴム、ポリサッカライド、ポリフッ化ビニル、ジアゾ化紙、活性化ビーズ、磁気応答性ビーズ、ならびに固相合成、親和性分離、精製、ハイブリダイゼーション反応、イムノアッセイおよび他のこのような用途に一般に使用される任意の材料を含む。担体は、微粒子であり得、または連続表面の形態にあり得、膜、メッシュ、プレート、ペレット、スライド、ディスク、キャピラリー、中空繊維、針、ピン、チップ、中空ではない繊維、ゲル(たとえばシリカゲル)およびビーズ(たとえばポアガラスビーズ、シリカゲル、ジビニルベンゼンによって場合により架橋されたポリスチレンビーズ、グラフト化コポリビーズ、ポリアクリルアミドビーズ、ラテックスビーズ、N−N’−ビス−アクリロイルエチレンジアミンによって場合により架橋されたジメチルアクリルアミドビーズ、酸化鉄磁気ビーズ、および疎水性ポリマーでコーティングされたガラス粒子)を含む。
本明細書に記載するようなPCSB試薬またはCDPSB試薬は、吸着(absorption)、カップリングにより、または結合対の使用によって、たとえば共有的に、PCSB試薬またはCDPSB試薬を結合する標準技法を使用して、固体担体に容易に結合することができる。
担体への固定化は、(たとえばタンパク質がより良好な固相結合特性を有するとき)PCSB試薬またはCDPSB試薬をタンパク質へ最初にカップリングすることによって強化され得る。好適なカップリングタンパク質は、これに限定されるわけではないが、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、チログロブリン、オボアルブミン、および当業者に周知の他のタンパク質などの高分子を含む。分子を担体に結合するために使用できる他の試薬は、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマーなどを含む。このような分子およびこれらの分子をタンパク質にカップリングする方法は、当業者に周知である。たとえばBrinkley,M.A.,(1992)Bioconjugate Chem.,3:2−13;Hashidaら(1984)J.Appl.Biochem.,6:56−63;ならびにAnjaneyuluおよびStaros(1987)International J.of Peptide and Protein Res.30:117−124を参照。
所望ならば、固体担体に添加されるPCSB試薬またはCDPSB試薬は、容易に官能化されてスチレンまたはアクリレート部分を生成することが可能であり、それゆえポリスチレン、ポリアクリレートまたは他のポリマー、たとえばポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリビニル、ポリジアセチレン、ポリフェニレン−ビニレン、ポリペプチド、ポリサッカライド、ポリスルホン、ポリピロール、ポリイミダゾール、ポリチオフェン、ポリエーテル、エポキシ、シリカガラス、シリカゲル、シロキサン、ポリホスフェート、ヒドロゲル、アガロース、セルロースなどへの分子の包含を可能とする。好ましい実施形態において、固体担体は、磁気ビーズ、さらに好ましくはポリスチレン/酸化鉄ビーズである。
PCSB試薬またはCDPSB試薬は、分子の結合対の相互作用によって固体担体に結合させることができる。このような結合対は周知であり、本明細書の別の箇所で例が記載されている。結合対の一方のメンバーは、上述の技法によって固体担体にカップリングされ、結合対の他方のメンバーは試薬に(合成の前、間、または後に)結合される。このように修飾されたPCSB試薬またはCDPSB試薬は、試料と接触させることが可能であり、病原性配座異性体との相互作用は、存在する場合、溶液中で発生することが可能であり、その後、固体担体を試薬(または試薬−タンパク質複合体)と接触させることができる。本実施形態の好ましい結合対は、ビオチンおよびアビジン、ならびにビオチンおよびストレプトアビジンを含む。ビオチン−アビジンおよびビオチン−ストレプトアビジンに加えて、本実施形態の他の好適な結合対は、たとえば抗原−抗体、ハプテン−抗体、ミメトープ−抗体、受容体−ホルモン、受容体−リガンド、アゴニスト−アンタゴニスト、レクチン−炭水化物、タンパク質A−抗体Fcを含む。このような結合対は、周知であり(たとえば米国特許第6,551,843号および同第6,586,193号を参照)、当業者は、好適な結合対を選択して、それらを本発明での使用のために適応させる能力を有する。捕捉試薬が上述のような担体への結合に適しているとき、捕捉試薬が担体に結合される前かまたはされた後に、試料を捕捉試薬に接触させることができる。
代わりに、PCSB試薬またはCDPSB試薬を、当該分野で周知の結合化学を使用して、固体担体に共有結合させることができる。たとえばPCSBまたはCDPSB試薬を含有するチオールを、当該分野で公知の標準方法を使用して、固体担体、たとえばカルボキシル化磁気ビーズに直接結合させることができる(たとえばChrisey,L.A.,Lee,G.U.およびO’Ferrall,C.E.(1996).Covalent attachment of synthetic DNA to self−assembled monolayer films.Nucleic Acids Research 24(15),3031−3039;Kitagawa,T.,Shimozono,T.,Aikawa,T.,Yoshida,T.およびNishimura,H.(1980).Preparation and characterization of hetero−bifunctional cross−linking reagents for protein modifications.Chem.Pharm.Bull.29(4),1130−1135を参照)。カルボキシル化磁気ビーズは、カルボジイミド化学を使用して、マレイミド官能基を含有するヘテロ2官能性架橋剤(Pierce Biotechnology Inc.によるBMPH)に、最初にカップリングされる。チオール化PCSBまたはCDPSB試薬は次に、BMPHコートビーズのマレイミド官能基に共有的にカップリングされる。本発明の検出方法の実施形態で使用されるときに、固体担体は、非結合試料からの試薬および病原性配座異性体を含む複合体の分離を補助する。チオールカップリングに特に好都合な磁気ビーズは、DynalによるDynabeadsTM M−270カルボン酸である。PCSBまたはCDPSB試薬は、リンカー、たとえば1つ以上のアミノヘキサン酸部分も含み得る。
(E.好ましい検出方法)
好ましい実施形態を下に記載する。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する、本明細書に記載するようなペプトイド試薬を含む、プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬を使用して非プリオン病原性配座異性体を捕捉および検出し、前記方法は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料にPSCB試薬を、非プリオン病原性配座異性体が存在するならば非プリオン病原性配座異性体へのPCSB試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、複合体を形成するステップと;試料中に非プリオン病原性配座異性体がある場合、PCSB試薬へのその結合によって、非プリオン病原性配座異性体を検出するステップと;を含む。非プリオン病原性配座異性体の結合は、たとえば複合体を解離させて、非プリオン病原性配座異性体をCDPSB試薬によって検出することにより検出できる。
一実施形態において、捕捉される非プリオン病原性配座異性体は、アルツハイマー病に関連する病原性配座異性体、たとえばAβ40、Aβ42、またはタウである。このような場合、試料は好ましくは、血漿または脳脊髄液である。PCSB試薬は、好ましくはPrP19−30(配列番号242)、PrP23−30(配列番号243)、PrP100−111(配列番号244)、PrP101−110(配列番号245)、PrP154−165(配列番号246)、PrP226−237(配列番号247)、配列番号14、配列番号50、配列番号68に由来して、
他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する、本明細書に記載するようなペプトイド試薬を含む、プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬を使用して非プリオン配座異性体を捕捉して、CDPSB試薬を使用して非プリオン配座異性体を検出する。方法は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料にPCSB試薬を、存在するならば非プリオン病原性配座異性体への試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、第1の複合体を形成するステップと;第1の複合体をCDPSB試薬と、結合を可能にする条件下で接触させるステップと;試料中に非プリオン病原性配座異性体がある場合、CDPSB結合試薬へのその結合によって、非プリオン病原性配座異性体の存在を検出するステップとを含む。通例、非結合試料は、第1の複合体を形成した後、第1の複合体をCDPSB試薬と接触させる前に除去される。CDPSB結合試薬は、標識化抗コンフォメーション病タンパク質抗体であることが可能である。
他のなおまた別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、病原性プリオンタンパク質およびCDPSB試薬と優先的に相互作用する、本明細書に記載するようなペプトイドを含む、プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬を使用して、非プリオン病原性配座異性体を捕捉して、その存在を検出する。方法は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料をPCSB試薬と、存在するならば非プリオン病原性配座異性体へのPCSB試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、第1の複合体を形成するステップと;非結合試料物質を除去するステップと;非プリオン病原性配座異性体を第1の複合体から解離させて、これにより解離された非プリオン病原性配座異性体を提供するステップと;解離された非プリオン病原性配座異性体をCDPSB試薬と、結合を可能にする条件下で接触させて、第2の複合体を形成するステップと;試料中に非プリオン病原性配座異性体がある場合、第2の複合体の形成を検出することによって、非プリオン病原性配座異性体の存在を検出するステップとを含む。第2の複合体の形成は、検出可能に標識された第2のCDPSB試薬を使用して好ましくは検出され、PCSB試薬は、磁気ビーズに好ましくはカップリングされる。
代案において、本発明は、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する、本明細書に記載するペプトイド試薬を含む、プリオンタンパク質断片に由来する第1のPCSB試薬を使用して非プリオン病原性配座異性体を捕捉して、本明細書に記載するような第2のPCSB試薬を使用して非プリオン病原性配座異性体を検出する方法を提供する。方法は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料を第1のPCSB試薬と、存在するならば非プリオン病原性配座異性体への第1の試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、第1の複合体を形成するステップと;非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料を、検出可能な標識を有する第2のPCSB試薬と、第1の複合体中の非プリオン病原性配座異性体への第2の試薬の結合を可能にする条件下で接触させるステップと;試料中に非プリオン病原性配座異性体がある場合、第2の試薬へのその結合によって、非プリオン病原性配座異性体を検出するステップと;を含む。
また別の代案において、本発明は、CDPSB試薬を使用して非プリオン病原性配座異性体を捕捉して、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する、本明細書に記載するようなペプトイド試薬を含む、プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬を使用して非プリオン病原性配座異性体を検出する方法を提供する。方法は、(a)非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料をCDPSB試薬と、存在するならば非プリオン病原性配座異性体への試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、複合体を形成するステップと;(b)非結合試料物質を除去するステップと;(c)複合体を検出可能な標識を含むPCSB試薬と、非プリオン病原性配座異性体へのPCSB試薬の結合を可能にする条件下で接触させるステップと;試料中に非プリオン病原性配座異性体がある場合、PCSB試薬へのその結合によって、非プリオン病原性配座異性体を検出するステップと;を含み、PCSB試薬は、プリオンタンパク質断片に由来して、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する。
上の方法すべてにおいて、「非結合試料」は、接触ステップで捕捉されていない試料中の成分を指す。非結合試料は、当該分野で周知の方法によって、たとえば洗浄、遠心分離、濾過、磁気分離およびこれらの技法の組合せによって除去され得る。好ましくは、本発明の方法において、非結合試料は、複合体の緩衝液による洗浄および/または磁気分離によって除去される。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、全身性アミロイドーシス、タウオパチー、およびシヌクレイノパチーを含む、アミロイド疾患の検出に使用される。
(F.アルツハイマー病の検出方法)
Aβ40、Aβ42、またはタウなどの病原性アルツハイマー病配座異性体の検出方法が提供される。
特に好ましい実施形態において、これらの方法は、病原性アルツハイマー病配座異性体を、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する、本明細書に記載するペプトイド試薬を含む、プリオンタンパク質断片に由来するPCSB試薬によって捕捉し、捕捉された配座異性体をCDPSB試薬によって検出する。
特に、方法は、病原性アルツハイマー病配座異性体を含有することが疑われる試料をPCSB試薬と、存在するならば病原性アルツハイマー病配座異性体へのPCSB試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、第1の複合体を形成するステップと;非結合試料物質を除去するステップと;病原性アルツハイマー病配座異性体を第1の複合体から解離させて、それにより解離された病原性アルツハイマー病配座異性体を提供するステップと;解離された病原性アルツハイマー病配座異性体をCDPSB試薬と、結合を可能にする条件下で接触させて、第2の複合体を形成するステップと;試料中に病原性アルツハイマー病配座異性体がある場合、第2の複合体の形成を検出することによって、病原性アルツハイマー病配座異性体の存在を検出するステップと;を含む。第1の複合体中の病原性アルツハイマー病配座異性体は好ましくは、約0.05N NaOHまたは約0.1N NaOHによって約90℃または約80℃にて、CDPSB試薬に接触する前に解離および変性される。病原性アルツハイマー病配座異性体がAβ40またはAβ42であるとき、病原性アルツハイマー病配座異性体は好ましくは、約0.1N NaOHで約80℃にて約30分間にわたって解離および変性される。
解離および/または変性は、IV(B)節に記載した方法を使用して実施することができる。通例、病原性アルツハイマー病配座異性体は、pHを低いpHから高いpHへ、または高いpHから低いpHへ変化させることによって、同時に解離および変性される。
好ましい実施形態において、PCSB試薬は、磁気ビーズなどの固体担体にカップリングされた、PrP19−30(配列番号242)、PrP23−30(配列番号243)、PrP100−111(配列番号244)、PrP101−110(配列番号245)、PrP154−165(配列番号246)、PrP226−237(配列番号247)、配列番号14、配列番号50、配列番号68、または
CDPSB試薬は好ましくは、マイクロタイタープレートなどの固体担体にカップリングされた抗アルツハイマー病タンパク質抗体であり、第2の複合体の形成は好ましくは、第2の検出可能に標識されたCDPSB試薬を使用して検出される。病原性アルツハイマー病配座異性体がAβ40またはAβ42であるとき、好ましい抗アルツハイマー病タンパク質抗体は、Aβ40のC末端に特異的な抗体である11A50−B10(Covance);Aβ42のC末端に特異的な抗体である12F4(Covance);Aβアミノ酸18〜22に特異的な4G8;Aβアミノ酸1〜10に特異的な20.1;およびAβアミノ酸3〜8に特異的な6E10を含む。特に好ましい実施形態において、20.1がELISAプレート上の捕捉抗体であり、12F4または11A50−B10は、第2の検出可能に標識されたCDPSB試薬として使用される。試料は好ましくは、血漿または脳脊髄液(CSF)である。
それゆえ、特に好ましい実施形態において、病原性アルツハイマー病配座異性体の存在を検出する方法は、これに限定されるわけではないが:病原性アルツハイマー病配座異性体を含有することが疑われる血漿またはCSFの試料を、磁気ビーズにカップリングされたペプトイドXIIbと、存在するならば病原性アルツハイマー病配座異性体へのペプトイドXIIbの結合を可能にする条件下で接触させて、第1の複合体を形成するステップと;非結合試料物質を除去するステップと;pHを変化させることによって病原性アルツハイマー病配座異性体を第1の複合体から解離させて、解離した病原性アルツハイマー病配座異性体を提供するステップと;解離した病原性アルツハイマー病配座異性体を固体担体に結合した抗アルツハイマー病タンパク質抗体と、結合を可能にする条件下で接触させて、第2の複合体を形成するステップと;第2の標識された抗アルツハイマー病タンパク質抗体とインキュベートすることによって、第2の複合体の形成を検出するステップと;を含む。
(G.競合アッセイ)
いくつかの態様において、本発明の方法は、競合的結合によって病原性配座異性体を検出する。検出手段は、PCSB結合試薬に弱く結合するリガンドが病原性配座異性体によって置換されるときを判定するために使用され得る。たとえばPCSB試薬は、固体担体に吸着され得る。続いて、固体担体を、病原性配座異性体がPCSB試薬に結合するよりも弱い結合親和性でPCSB試薬に結合する、検出可能に標識されたリガンドに結合させる。リガンド−PCSB試薬複合体が検出される。次に試料を添加する。検出可能に標識されたリガンドの結合親和性は、PCSB試薬に対する病原性配座異性体の結合親和性よりも弱いため、病原性配座異性体は標識リガンドを置換し、PCSB試薬に結合した標識リガンドの検出量の減少によって、PCSB試薬と試料中の病原性配座異性体との間に複合体が形成したことが示される。
それゆえ、ある実施形態において、非プリオン病原性配座異性体の存在は、PCSB試薬を含む固体担体を提供するステップと;固体担体を検出可能に標識されたリガンドと結合させるステップであって、PCSB試薬の検出可能に標識されたリガンドに対する結合親和性が、PCSB試薬の非プリオン病原性配座異性体に対する結合親和性よりも低い、ステップと;非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料を固体担体に、試料中に非プリオン病原性配座異性体が存在するときに非プリオン病原性配座異性体をPCSB試薬に結合させてリガンドを置換させる条件下で、結合させるステップと;PCSB試薬と試料からの非プリオン病原性配座異性体との間に形成された複合体を検出するステップと;によって検出し、PCSB試薬はプリオンタンパク質断片から由来して、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する。
(V.他の方法)
一般に、本明細書に記載するPCSB試薬は、コンフォメーション病タンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用することが可能である。それゆえ、これらの試薬によって、生存している脳または死亡脳、脊髄、および他の神経系組織はもちろんのこと、血液も含む、実質的に任意の生物学的または非生物学的試料における病原性配座異性体の存在の即時の検出が可能となる。試薬は、それゆえ広範囲の単離、精製、検出、診断および治療用途に有用である。
たとえば、本明細書に記載する試薬は、親和性担体を使用して病原性配座異性体を単離するために使用され得る。試薬がその病原性配座異性体選択的結合活性を保持するように、試薬はたとえば吸着、共有結合などによって固体担体に結合させることができる。たとえば試薬の結合部位が引き続きアクセス可能であるように、場合によりスペーサー基が含まれることがある。固定化された分子は次に、生物学的試料、たとえば血液、血漿、脳、脊髄、および他の組織からの病原性配座異性体を結合するために使用することができる。結合された試薬または複合体は、たとえばpHの変化によって担体から回収され、すなわち病原性配座異性体は複合体から解離され得る。
それゆえ、ある実施形態において、本発明は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料をPCSB試薬と、存在するならば非プリオン病原性配座異性体への試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、複合体を形成するステップと;病原性配座異性体の試薬への結合によって、非プリオン病原性配座異性体と非プリオン非病原性配座異性体とを区別するステップと;によって、非プリオン病原性配座異性体と非プリオン非病原性配座異性体とを区別する方法を提供し;PCSB試薬は、プリオンタンパク質断片に由来して、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する。
他の実施形態において、本発明は、非プリオン病原性配座異性体を含有することが疑われる試料をPCSB試薬と、存在するならば非プリオン病原性配座異性体への試薬の結合を可能にする条件下で接触させて、複合体を形成するステップと;試料中に非プリオン病原性配座異性体がある場合、試薬へのその結合によって非プリオン病原性配座異性体を検出するステップと;非プリオン病原性配座異性体が検出された場合に、コンフォメーション病を診断するステップと;によって、非プリオンコンフォメーション病を診断する方法を提供し、PCSB試薬はプリオンタンパク質断片に由来して、病原性プリオンタンパク質と優先的に相互作用する。
本明細書に記載する試薬を使用する複数の変形および組合せが、本発明の方法で利用され得る。以下の非制限的な実施例は、例証のために記載されている。
(実施例)
(実施例1:PSR1はPrPScに優先的に結合する)
本実施例は、PSR1(磁気ビーズ(ストレプトアビジンM−280Dynabeads)に結合されたペプトイド試薬XIIb)が、PrPScを選択的にプルダウンすることを示す。
vCJDまたは正常脳ホモジネート(BH)を、1%Tween20および1%Triton−X 100を含むTBS(Tris緩衝生理食塩水)中の50%プール正常ヒト血漿中にスパイクした。対照試料にはBHを添加しなかった。各試料100μL(10%BH 10nLを含有または含有しない)をXIIbビーズ3μL(30mg/mL)と混合して、得られた混合物を750rpmにて常時振とうしながら、37℃で1時間インキュベートした。非結合試料物質は、0.05%Tween20を含有するTBSTでビーズを4回洗浄することによって除去した。各洗浄ごとに、TBSTを添加して、磁力を使用してビーズを収集し、洗浄緩衝液を除去した。ビーズに結合したPrPScを、0.1N NaOHの添加によって解離した。変性したプリオンタンパク質をその後0.3M NaH2PO4によって中和し、ELISAプレートに移した。
プルダウン効率は、プルダウン試料からのシグナルを、プルダウンを一切伴わずにグアニジニウムチオシアネート(GdnSCN)によって変性させた同じ試料からのシグナルと比較することによって計算した。vCJDまたは正常脳からのプリオンタンパク質は、同量の5%BHおよび6M GdnSCNと混合することによって変性させて、室温にて10分間インキュベートした。次に試料をTBSTによってプルダウン試料と同じ濃度まで希釈し、TBSTのみを対照とした。各直接変性試料100μLをその後プルダウン試料と同じELISAプレートに移した。
ELISAプレートは、0.1M NaHCO3中2.5ug/mLの抗プリオン抗体3F4によってコーティングした。コーティング手順は4℃にて一晩実施し、次にTBSTで3回洗浄した。プレートを次に、TBS中の1%カゼインで37℃にて1時間ブロックした。プルダウン試料および直接変性試料の両方からのプリオンタンパク質を、3F4を含むELISAプレート内で300rpmで常時振とうしながら37℃にて1時間インキュベートして、プレートをTBSTで6回洗浄した。アルカリホスファターゼ(AP)結合体化検出抗体をTBST中0.1%のカゼインで0.1μg/mLまで希釈して、次にELISAプレートに添加した。プレートをその後37℃にて1時間インキュベートして、TBSTで6回洗浄した。強化Lumi−Phos Plus化学発光基質を使用してシグナルを発生させて、ルミノメーターで相対光単位(RLU)として読み取った。
結果を下に示す。
脳組織からのプリオンタンパク質は、3M GdnSCNによって完全に変性され得、抗プリオン抗体によって検出することができる。この実験では、発明者らは、XIIbビーズを使用したプリオンタンパク質プルダウンによって生成されたシグナルをGdnSCNによる直接変性タンパク質から得たシグナルと比較した。データは、プルダウン試料および直接変性試料のバックグラウンド(BHなし)はそれぞれ9.0および7.7RLUであることを示した。10%正常BHの直接変性10nLは、14.6RLUのシグナルを有し、これは、正常脳でのPrP
cレベルを反映していた。一方で、プルダウン法によって検出された10%正常BHの10nLは、9.9RLUの読取値を示し、これはそのバックグラウンドと同様であった。このことは、ペプトイドXIIbの特異性を示した。10nLの10%vCJD試料をプルダウン法および直接変性法によって試験したときに、データは53.0および56.3RLUを示し、このことはXIIbビーズのプルダウン効率がほぼ100%に達したことを意味する。
(実施例2 PSR1はまた、凝集アミロイドベータタンパク質(Aβ)と優先的に相互作用する)
本実施例は、
PSR1はまた、凝集Aβと優先的に相互作用することを示す。
本実施例は、複数のアルツハイマー病脳での不溶性凝集Aβ40/42の存在と、これらの凝集体の検出が、凝集体中でマスクされていた抗体エピトープが変性により露出した後でのみ達成できることとを示す。これらの脳からの凝集AβのPSR1捕捉は特異的であり、プルダウンビーズではなく、ペプトイドXIIbが媒介する。本実施例によって、PSR1は、PSR1によって認識されない可溶性Aβ40/42を含有する試料マトリクスである、血漿中にスパイクされた凝集Aβ40/42を選択的に捕捉することを示す。最終的に、本実施例は、プルダウン前の化学変性剤による試料の変性によって捕捉が妨害されたことを示すことによって、PSR1が凝集Aβ40/42を捕捉することを示している。
(アルツハイマー病脳および正常脳における全Aβ40/42の定量)
脳中の全Aβ40/42は、Covanceから市販されている抗体を用いたサンドイッチELISAを使用して定量した。96ウェル捕捉プレートの個々のウェルをmAb 11A50−B10(可溶性Aβ40のみを検出)またはmAb 12F4(可溶性Aβ42のみを検出)のどちらかの抗体でコーティングした。ELISAプレートに捕捉されたAβ40またはAβ42を、アルカリホスファターゼ(AP)に結合体化されたmAb4G8(配列VFFAEを含有するAβのすべての形態を認識する)によって検出した。Lumiphos Plus(Lumigen)を化学発光基質として使用した。化学発光は、Luminoskanルミノメーター(Thermo)で読み取った。
AD(患者識別番号325−1、334、325、264、230、218、221、201、184、177、291)および対照(患者320、326、327、328)脳ホモジネートのAβ40およびAβ42レベルは、このサンドイッチELISA検出系を使用して決定した。脳ホモジネートの5.4M GdnSCNによる変性は、Aβペプチドの大半を検出するために必要であった(図1、5B、および5E)。抗体が凝集物質中でコンフォメーション的に改変またはマスキングされているエピトープに結合しないであろうことは、十分に認められている。この特性は、プリオンおよび他のアミロイドタンパク質を認識するいくつかの抗体で以前に観察されている。ELISAデータは、AD脳において病原性凝集Aβが蓄積しているが、年齢適合非AD対照脳においては蓄積していないことを示す。対照脳は、いずれのAβ形態(可溶性または凝集)もそれほど高レベルで含有していなかったが、Aβ40およびAβ42のいずれもをAD患者試料から容易に検出した(図1)。
標準曲線(変性合成Aβペプチド)と並行した、ELISAによって検出された1つのAD脳ホモジネート(患者番号291)の用量設定によって、この脳ホモジネート中のAβ40およびAβ42の濃度の決定が可能となり(図5A、Bおよび5D、E)、それぞれ10および240μg/mLと計算した。
(AD脳中のAβ40/42が凝集される)
ELISA前の変性剤による処理によってサンドイッチELISAによる検出が向上したために、AD BHからのAβが凝集されていると見なした(図1)。このAβが不溶性(凝集体の別の特徴)を示すか否かを試験するために、AD BHを遠心分離にかけ、上清およびペレット画分をELISAに利用した(図2)。未変性AD BHでは、Aβシグナルの大半がペレット画分中にあった。しかし、BHのGdnSCNによる前処理によって、Aβシグナルは上清画分に移動した。この実験によって、AD BHで見出されるAβ凝集体が発明者らの遠心分離条件では不溶性であることと、化学変性剤による前処理によってAβが可溶性になることとを示す。したがって、AD BH中のAβの物理的特性を直接調べることによって、発明者らはAD BHからのAβペプチドの大半が凝集されていることを確認している。このことは、アミロイド疾患として説明される、あるクラスの疾病で観察されている周知の現象である。2、3例を挙げるとすれば、プリオン病(たとえばCJD)、AD、パーキンソン病、II型糖尿病、および全身性アミロイドーシスが挙げられるこれらの疾患は、規則的凝集タンパク質の存在およびいくつかのタンパク質の正常なコンフォメーションからβシートコンフォメーションへの変換に関連している。
(AβへのPSR1結合は、ペプトイド試薬XIIbが媒介する)
PSR1は、TBSTT緩衝液中の80%血漿にスパイクしたAD脳ホモジネートからAβを捕捉した(図3)。AD脳および対照脳からの脳ホモジネートをPSR1ビーズまたは対照グルタチオンビーズ(ペプトイドXIIbなし)と共にインキュベートした。ビーズを洗浄して、捕捉物質を6M GdnSCNでビーズから解離および変性させた。磁石を使用してビーズを除去して、変性試料を希釈し、抗Aβ42抗体12F4によって事前にコーティングしたELISAプレートに加えた。検出は、AP標識4G8抗体を用いて実施した。PSR1はAD試料からAβを捕捉したが、対照ビーズ(マレイミドおよびグルタチオンと反応したM270−カルボン酸ビーズ(所内で産生したM270−グルタチオン))は、いずれの脳試料からも検出可能な量のAβを捕捉することができなかった。本実験により、Aβを捕捉する能力はビーズ自体によるのではなく、ビーズに共有結合したペプトイドXIIbによることを確証する。
(PSR1は、可溶性Aβの存在下で凝集Aβに選択的に結合する)
血漿は、著しいレベルの可溶性Aβ40およびAβ42を含有している。したがって、PSR1が、可溶性Aβの存在下で凝集Aβに選択的に結合できるか否かを査定するために、AD患者番号291からの脳ホモジネートを血漿中にスパイクして、PSR1プルダウンに供した。
図4Aおよび4Bは、TBSTで希釈した濃度漸増血漿(市販の供給源による正常ヒト血漿)における、発明者らのサンドイッチELISAを使用した、内因性Aβレベルの定量を示す。可溶性Aβ40およびAβ42レベルは、10〜100ng/mlの範囲にあることを見出した。
最初に、ELISAを天然および変性AD BH患者番号291試料に実施して、試料中に存在する凝集Aβ40/42の量を査定した(図5B−Aβ42;図5D−Aβ40)。
次に、血漿(TBSTT緩衝液中80%血漿)中にスパイクされた量漸増AD脳ホモジネートを有する試料を、PSR1プルダウンに供した。PSR1は、スパイクされたAD脳ホモジネート(10、20、50nLスパイク)からAβ42およびAβ40を選択的に捕捉することができたが、血漿単独(0nLスパイク)からはいずれの可溶性Aβ42もAβ40も捕捉しなかった(図5CおよびF、白三角形:PSR1−天然Aβを参照)。このことは、PSR1がアルツハイマー病脳に見出される凝集Aβペプチドのみを捕捉し、血漿に見出される可溶性Aβは捕捉しないことを示唆している。この結果はまた、血漿成分(これは、高濃度の各種のタンパク質、脂質、およびイオンを含む)は、PSR1結合に干渉しないことも示している。
(PSR1捕捉は、プルダウン前の試料の可溶化によって妨害される)
同じAD脳ホモジネートを、血漿およびPSR1とのインキュベーション前に、凝集体を可溶化するために5.4 GdnSCNによって変性したとき、Aβを検出しなかった。(図5CおよびF−灰色三角形:PSR1−変性Aβを参照)。このことは、PSR1が、変性によって可溶化することができる、AD試料で見出されたAβのミスフォールド凝集特性を認識するが、AD由来Aβペプチドに特異的な別の決定因子を認識しないという考えを支持する。
(実施例3 プリオンタンパク質断片に由来するペプチドが、緩衝液または血漿中にスパイクされた罹患脳ホモジネートからの病原性プリオンタンパク質および凝集Aβについて同様の捕捉プロフィールを有する)
WO05/016137、WO07/030804は、プリオンタンパク質の病原性配座異性体と優先的に相互作用するプリオンタンパク質断片に由来する各種のペプチドおよびペプトイドについて記載している。本実験は、これらの試薬が病原性プリオンを捕捉するのと同様の機構によって、これらの試薬がAβを捕捉することを示唆している。
3つの異なる捕捉プロフィールを有するプリオン断片に由来する、6つの異なるペプチドを試験した。各ペプチドのアミノ酸配列は、ヒトプリオンタンパク質配列の断片に相当し、以下に記載する。下付文字は、断片の最初および最後のアミノ酸のアミノ酸位置を示す。
1)グループ1:PrP
19−30およびPrP
100−111、これらは、血漿中および緩衝液中の両方でPrP
Scを捕捉する。
2)グループ2:PrP
154−165およびPrP
226−237、これらは、緩衝液中でのみPrP
Scを捕捉できる。
3)グループ3:PrP
37−48およびPrP
181−192、これらは、PrP
Scを捕捉できないペプチドである。PrP
37−48およびPrP
181−192はPrP
154−165およびPrP
226−237と同様の物理化学特性を有するが、異なるアミノ酸配列を有するペプチドであるため、これらを負の対照として選択した。
結果は非常に驚くべきものであった。ペプチドによって捕捉された凝集Aβ42の活性プロフィールは、プリオンベース疾患であるクロイツフェルト‐ヤーコプ病に罹患した患者からの捕捉PrPScのプロフィールとほぼ同じであった(図6):グループ1のペプチドは、血漿または緩衝液のどちらにスパイクした凝集Aβ42も捕捉した;グループ2のペプチドは、緩衝液にスパイクした凝集Aβ42は捕捉したが、血漿中にスパイクした凝集Aβ42は捕捉しなかった;グループ3のペプチドは、どちらのAβ42も捕捉しなかった。この結果は、試験を行ったPCSB試薬およびPrPScの結合と、PCSB試薬およびAβ凝集体の結合との間の結合機構が同様であるということの非常に強力な証拠である。最も有望な相互作用ドメインは、タンパク質アミノ酸配列にかかわらず、共通であり、一般的アミロイド構造の一部であるモチーフである。
(概要)
本実施例および実施例2は共に、病原性プリオンと優先的に相互作用することができる試薬は、凝集Aβとも優先的に相互作用できることを示している。これらの試薬が病原性プリオンおよび凝集Aβの両方にこのような同様の結合特徴で結合する能力は、全く予想されていなかった。
これらの試薬の凝集タンパク質を捕捉する能力によって、アルツハイマー病関連Aβタンパク質凝集体の直接検出が可能となる。このことは、AD疾患のより間接的なマーカーの試験と比較して好都合である。このことはまた、非凝集Aβに特異的に結合する抗Aβ抗体などの試薬と比較しても好都合である。このような抗体は、正常者およびAD患者に存在し、ある生物学的流体中でのその濃度がAD疾患の唯一の間接的マーカーである、可溶性Aβとのみ会合することができる。凝集Aβを検出するためにこのような試薬を使用するには、天然試料を、凝集体を可溶化するために処理された試料と比較することが必要である。都合の悪いことに、この分析は、ごく低レベルの凝集体を含有する試料では役に立たず、Aβレベルを検出可能な限界を超えて希釈しがちである試料操作を必要とする。
(実施例4 凝集Aβ42のプルダウンに対する試料マトリクスの効果)
凝集Aβ42のプルダウンに対する試料マトリクスの効果は、PSR1および上述のペプチドを、3つの異なるアルツハイマー病脳試料:1)緩衝液中にスパイクした脳ホモジネート;2)血漿中にスパイクした脳ホモジネート;および3)CSF中にスパイクした脳ホモジネートを用いて試験することによって評価した(図7を参照)。
試料を調製して、図6に記載するように処理した。CSF中にスパイクした脳ホモジネートは、BH 50nLをTBSTT緩衝液中50%血漿100マイクロリットル中にスパイクすることによって調製した。
本実験は、PSR1が血漿の存在下で凝集Aβ42と優先的に相互作用することを示す他の研究を確認し、PSR1はまたCSFの存在下でも凝集Aβ42と優先的に相互作用することを示している。
試験を行ったペプチドは、種々の捕捉プロフィールを示した。緩衝液、血漿、およびCSF中での捕捉挙動の相違は、結合機構を妨害する干渉成分が血漿およびCSF中にあることを示唆する。より広範囲の試薬が、血漿中と比較して、CSF中で凝集Aβ42を捕捉することができる。血漿の存在下でAβ42を捕捉することができるPrP19−30およびPrP100−111は、CSFの存在下でもAβ42を捕捉することができる。しかし、血漿の存在下でAβを捕捉できないPrP154−165およびPrP226−237はCSFの存在下ではAβを捕捉できる。この知見は、CSFが血漿よりも低いタンパク質濃度を有し、より複雑でない試料マトリクスであるという事実と一致する。したがって、試薬と凝集Aβとの間の相互作用に干渉し得る成分をあまり含有しそうにない。
要約すると、これらの実験は、正に荷電した試薬PSR1、PrP19−30、およびPrP100−111は、単純緩衝液(TBSTT)はもちろんのこと、アルツハイマー病の死前診断により適用可能な体液、たとえばCSFおよび血漿においても、凝集Aβと相互作用可能であったことを示す。
(実施例5 ELISAのためのAβの解離および変性−NaOH濃度およびインキュベーション温度の最適化)
正常者またはアルツハイマー病(AD)患者からの脳ホモジネート(BH)を正常ヒト血漿(NHP)中にスパイクして、PSR1ビーズによって捕捉した。洗浄後、ビーズをPCR薄壁管にてNaOH(0.01N−0.3N)によって再懸濁して、Perkin Elmer MasterCyclerで60℃、70℃、80℃、または90℃にて10分間インキュベートした。変性したAβ試料を約pH7.5まで中和して、次にサンドイッチELISA検出に進んだ。
結果は、Aβを0.05N NaOHで90℃にて変性させたときに最大のシグナルを示したが、ダイナミックレンジは小さかった(図8を参照)。80℃にて変性させたときに、AβシグナルはNaOHの0.05Nから0.15Nまででプラトーに達し、0.1N NaOHは2番目に大きいシグナルを示した。したがって、さらなる試験は、80℃にて0.1N NaOHによってAβを変性させることに集中した。
Aβは、プリオンタンパク質よりも高温、長期間インキュベーションでのNaOH変性が必要である。Aβには80℃での30分間の0.1N NaOHによるAβの変性が良好に機能するのに対して、プリオンには室温での10分間の0.1N NaOHが良好に機能する。
(実施例6 アミロイドベータ検出のためのPSR1捕捉/サンドイッチELISA)
本実施例は、PSR1を病原性配座異性体特異的結合(PCSB)試薬として使用するAβの検出プロトコルについて説明する。アッセイは、3つの基本ステップ:1)PCSB試薬を使用する、試料からのAβ凝集体の捕捉、2)カオトロピック剤を使用する、PCSB試薬からの結合物質の変性および解離、ならびに3)市販の抗体を使用するサンドイッチELISAを有する。ELISAで検出試薬として4G8−APを使用すると、4G8−HRPより優れた線形応答が得られる。
(試料の調製)
10%脳ホモジネート(BH)100nLを以下の100μL/アッセイ中にスパイクする:a)50%正常ヒト血漿(NHP)および1×TBSTT(50mM Tris、pH7.5;150mM NaCl;1%Tween−20;1%Triton X−100);b)50%正常ヒト脳脊髄液(CSF)および1×TBSTT;またはc)0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)および1×TBSTT。
(ビーズ捕捉)
これらの試料を、30mg/mLで、Dynal M270−カルボン酸ビーズに共有カップリングされたPSR1ペプトイド3μL/アッセイに添加して、振とうしながら37℃にて1時間インキュベートする。代わりに、試料をビオチン化PSR1ペプトイドでコーティングされたM280−ストレプトアビジンビーズ(10mg/mL)10μL/アッセイに添加する。
ビーズをTBST(50mM Tris、pH7.5、150mM NaCl、0.05%Tween−20)275μLで4回洗浄する。各洗浄ごとに、洗浄したビーズを磁石で収集して、洗浄緩衝液を除去する。
次に2μL/アッセイの6Mチオシアン酸グアニジンを添加し、試料を室温にて30分間インキュベートして、捕捉した物質を溶離および変性させる。次にTBST 98μL/アッセイを添加してチオシアン酸グアニジンを希釈する。
正確な量の6Mチオシアン酸グアニジンを添加するために、試料調製およびビーズ捕捉はバルクで行う(1個のチューブまたはウェルでの複数反応(multiple reaction))。GdnSCNを希釈した後に、プロトコルの残りのために試料を96ウェルマイクロタイタープレートに移す。
ビーズを磁気分離によって除去して、上清を捕捉プレートに移す。
(検出)
捕捉プレート(Thermo ScientificによるMicrolite 2+)を、マウスモノクローナル抗体(mAb)11A50−B10(C末端抗体;Aβl−40を特異的に結合)またはmAb 12F4(C末端抗体;Aβ1−42を特異的に結合)のどちらか2.5μg/mLでコーティングする。どちらの抗体もCovanceより市販されている。
上清を捕捉プレート上で37℃にて1時間インキュベートする。捕捉プレートをTBST 275μL/ウェルで4回洗浄する。
0.1% BSAおよびTBST中でアルカリホスファターゼに結合体化した0.2μg/mL mAb4G8を検出のために捕捉プレートに添加する。精製抗体はCovanceより入手できる。AP結合体は、Covanceによる開始物質(抗体)を使用して所内で作製する。
次に捕捉プレートを検出抗体と共に37℃にて1時間インキュベートして、TBST 275μL/ウェルで4回洗浄する。
強化Lumiphos Plus(検出のための化学発光基質Lumiphos Plus 1mL当り91μLの比で0.55% SDSを添加)100μLを捕捉プレートに添加する。次に、捕捉プレートを37℃にて30分間インキュベートし、プレートをLuminoSkanで読み取る。
(実施例7 本発明の方法で使用されるPCSB試薬の合成)
プリオンタンパク質のペプチド断片は、本質的にMerrifield(1969)Advan.Enzymol.32:221ならびにHolmおよびMedal(1989),Multiple column peptide synthesis,p.208E,BayerおよびG.Jung(ed.),Peptides 1988,Walter de Gruyter & Co.Berlin−N.Y.に記載されているような標準ペプチド合成技法を使用して化学合成した。ペプチドをHPLCで精製して、配列を質量分析法によって検証した。
ある場合では、合成したペプチドは、NまたはC末端にさらなる残基、たとえばGGG残基を含んでいたか、および/または野生型配列と比較して1個以上のアミノ酸置換を含んでいた。
(A.ペプトイド置換)
ペプトイド置換を、配列番号14(QWNKPSKPKTN、配列番号2の残基97〜107に相当)、配列番号67(KKRPKPGGWNTGG、配列番号2の残基23〜36に相当)および配列番号68(KKRPKPGG、配列番号2の残基23〜30に相当)で表されるペプチド内でも行った。特に、これらのペプチドの1個以上のプロリン残基を、各種のN置換ペプトイドによって置換した。図9または任意のプロリンを置換できるペプトイドを参照。ペプトイドは、どちらも参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,877,278号および同第6,033,631号;Simonら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367に記載されているように調製および合成した。
(B.マルチマー化)
あるペプチド試薬は、たとえばタンデムリピート(GGGなどのリンカーによるペプチドの複数のコピーの結合)、多抗原性ペプチド(MAPS)および/または直鎖状結合ペプチドを調製することによって、マルチマーとしても調製した。
特に、MAPSは、本質的にWuら(2001)J Am Chem Soc.2001 123(28):6778−84;Spetzlerら(1995)Int J Pept Protein Res.45(1):78−85に記載されているような標準技法を使用して調製した。
直鎖および分枝ペプチド(たとえばPEGリンカーマルチマー化)もポリエチレングリコール(PEG)リンカーを使用して、標準技法を使用して調製した。特に、分枝マルチペプチドPEG骨格は、以下の構造を用いて生成した:ビオチン−PEG−Lys−PEG−Lys−PEG−Lys−PEG−Lys−PEG−Lys(ペプチド対照なし)およびビオチン−PEG−Lys(ペプチド)−PEG−Lys(ペプチド)−PEG−Lys(ペプチド)−PEG−Lys(ペプチド)−PEG−Lys(ペプチド)。さらに、ペプチドからLysへの結合を調製した:Lys−イプシロン−NH−CO−(CH2)3−Mal−S−Cys−ペプチド。図10Cを参照。
(C.ビオチン化)
ペプチドを、合成および精製後に、標準技法を使用してビオチン化した。ビオチンをペプチドのNまたはC末端に添加した。
(実施例8 PCSBペプトイド試薬)
以下のPCSBペプトイド試薬を、N置換グリシン残基を含有するペプトイド分子の調製のための合成方法、たとえば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,811,387号;同第5,831,005号;同第5,877,278号;同第5,977,301号;同第6,075,121号;同第6,251,433号;および同第6,033,631号はもちろんのこと、Simonら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367にも開示されている手順などを使用して調製した。
(ペプトイド試薬I)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが配列番号229を含む。
計算質量:1054.42;実測質量(Observed Mass):1054.2。実測質量の測定は全て、Waters(Milford,MA)Micromass ZQ LC/MSシステムで測定した。
(ペプトイド試薬II)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが配列番号230を含む。
計算質量:1290.70;実測質量:1290.8。
(ペプトイド試薬III)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが配列番号231を含む。
計算質量:1861.30;実測質量:1861.6。
(ペプトイド試薬IV)
下のペプトイド試薬
は、これに限定されるわけではないが配列番号232を含む。
(ペプトイド試薬V)
下のペプトイド試薬
は、これに限定されるわけではないが配列番号233を含む。
(ペプトイド試薬VI)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが配列番号234を含む。
計算質量:1956.49;実測質量:1956.2。
(ペプトイド試薬VII)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号235を含む。
計算質量:1896.39;実測質量:1896.4。
(ペプトイド試薬VIII)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが配列番号236を含む。
計算質量:1732.18;実測質量:1732.4。
(ペプトイド試薬IX)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが配列番号237を含む。
計算質量:1248.65;実測質量:1248.4。
(ペプトイド試薬X)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが配列番号238を含む。
計算質量:1248.65;実測質量:1248.4。
(ペプトイド試薬XIaおよびXIb)
下のペプトイド試薬XIaおよびXIbは、配列番号239を含む。
XIa:計算質量:1304.76;実測質量:1304.6。
XIb:計算質量:1166.59;実測質量:1166.2。
(ペプトイド試薬XIIaおよびXIIb)
下のペプトイド試薬の式XIIaおよびXIIbは、配列番号240を含む。
XIIa:計算質量:1276.71;実測質量:1276.6。
(ペプトイド試薬XIII)
下のペプトイド試薬は、これに限定されるわけではないが、配列番号241を含む。
計算質量:1256.58;実測質量:1256.6。
(実施例9 PSR1およびPrP23−30は、βシートブロッカーより優れたAβの捕捉を示す)
βシートブレイカーは、凝集を媒介するAβの領域に結合することによってAβ線維化プロセスを妨害すると考えられている小型分子である。本実施例は、AβのPSR1捕捉がβシートブレイカーによる捕捉よりも優れていることを示す(図11を参照)。
PSR1、PrP23−30、M280SAビーズのみ、ならびにβシートブレイカーAL30、AL32、AL33、およびAL34(その構造は下の表で詳説されている)
を使用するAβの捕捉、および、4G8−HRP試薬を用いたELISAによる検出は、実施例2に記載した方法を使用して実施した。
(実施例10 PSR1は凝集全タウを捕捉する)
凝集タウの全レベル(リン酸化、非リン酸化、または過剰リン酸化)は、アルツハイマー病と関連している。過剰リン酸化凝集タウは、アルツハイマー病に特に強い関連があるようだ。
Aβ凝集および酸化ストレスよって引き起こされるタウ過剰リン酸化は、AD発症に関与すると考えられている(Formichi,P.ら、J.of Cellular Physiology.208−1:39−46,2006)。過剰リン酸化タウタンパク質は、高い自己凝集活性を有し、神経変性疾患の脳で見出される対らせん状細線維および神経細線維もつれを形成する(Goedert,M.ら、Trends Neurosci 16:460−465,1993;Iqbalら、J Neural Transm 53:169−180,1998)。Thr181および231におけるタウのリン酸化は、CSF中のADバイオマーカーとして試験されている。Aβ42に対するp−タウの比は、ADを有する患者を健常な対照および他の認知症と区別するため、高い診断上の価値を有する(Buergerら、Arch Neurol 59:1267−1272,2002;Maddalenaら、Arch Neurol 60:1202−1206,2003)。
本実施例は、PSR1がAD関連凝集タウを捕捉することを示す。
(正常脳およびアルツハイマー病脳の全タウレベルの測定)
正常ヒトおよびアルツハイマー病脳ホモジネートを、室温にて1時間、3M GnSCNで処置した(変性)かまたは処置しなかった(天然)。10%脳ホモジネート100nLを各ELISAウェルに分注した(BioSource TauイムノアッセイキットKHB0042/KHB0041)。全タウ標準物を、0.006M GnSCNを含む希釈溶液によって希釈した。
各ELISAプレートを被覆して、室温にて一晩インキュベートした。2日目に、ELISAプレートをウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄し、ウサギ抗タウ抗体100uLを各ウェルに添加した。プレートを室温にて1時間インキュベートして、ウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。機能する抗ウサギHRP 100uLを各ウェルに添加した。次にプレートを室温にて30分間インキュベートして、ウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。次に、100uLのStabilized Chromagenを添加した。次にプレートを暗所で室温にて30分間インキュベートした。反応を、停止液100uLをすべてのウェルに添加して停止させて、450nmで読み取った。
有意なレベルのタウを正常およびアルツハイマー病脳の両方で検出した(図12)。プリオンおよびAβ凝集体とは異なり、タウの変性は、検出可能なタウレベルに対して有意な効果を有さず、このことは、タウ抗体結合エピトープはタウの病原性アイソフォームにおいてコンフォメーション的に変更されていないことを示唆した。
(PSR1によるプルダウン)
10%正常またはアルツハイマー病脳ホモジネート400nLを各プルダウン反応のためにTBSTT 100uLで希釈した。反応当り3uLのM270−グルタチオンまたはPSR1ビーズを500uL丸底コーニングプレートに入れた(plate)。反応物を750rpmで振とうしながら、37℃にて1時間インキュベートした。次にビーズをBioTek BLx405においてTBSTによって洗浄した。残留溶液を除去した後、6M GnSCN 5uLを添加して、ビーズと共に750rpmで振とうしながら室温にて1時間インキュベートして、タンパク質を解離させた。H2O 120uLを各ウェルに添加した。
次に、各プルダウン試薬によって捕捉されたタウの量を定量した。ウェル当り50uLの標準希釈緩衝液をタウELISAプレートに添加した。プルダウンプレートを磁気スタンドに2分間置き、溶液50uL/ウェルをタウELISAプレートに移した(160nL 10%BH/ウェルに相当)。タウ標準物を0.12M GnSCNを含む希釈溶液によって希釈した。ELISAプレートを被覆して、室温で一晩インキュベートした。2日目に、ELISAプレートをウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。ウサギ抗タウ抗体100uLを各ウェルに添加した。プレートを室温にて1時間インキュベートして、ウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。機能する抗ウサギHRP 100uLを各ウェルに添加した。プレートを室温にて30分間インキュベートして、ウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。100uLのStabilized Chromagenを添加した。プレートを暗所で室温にて30分間インキュベートした。反応を、停止液100uLをすべてのウェルに添加して停止させて、450nmで読み取った。
大半のアルツハイマー病脳試料において、PSR1は、正常脳試料においてよりも有意に多いタウを結合し、このことは、PSR1が凝集タウに選択的に結合することを示唆した(図13)。対照グルタチオンビーズのプルダウン試料においては、ごくわずかのタウしか検出しなかった。
検出されたタウレベルを下の表8、
(実施例11 解離した凝集タウは、PSR1ビーズによって、もはやプルダウンされない(図14))
正常またはアルツハイマー脳ホモジネートを、5M GnSCNを用いて、または用いずに室温にて1時間インキュベートした。10%正常またはアルツハイマー病脳ホモジネート400nLを各プルダウン反応のために25%ヒト血漿−TBSTT 200uLで希釈した。
反応当りM270−グルタチオンまたはPSR1ビーズ3uLを500uL丸底コーニングプレートに入れた。反応物は750rpmで振とうしながら、37℃にて1時間インキュベートした。次にビーズをBioTek BLx405においてTBSTによって洗浄した。残留溶液を除去した後、6M GnSCN 10uLを添加して、ビーズと共に750rpmで振とうしながら室温にて1時間インキュベートして、タンパク質を解離させた。H2O 120uLを各ウェルに添加した。
プルダウンプレートを磁気スタンドに2分間置き、溶液50uL/ウェルをタウELISAプレートに移した(160nL 10%BH/ウェルに相当)。ELISAプレートを被覆して、室温で一晩インキュベートした。2日目に、ELISAプレートをウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。ウサギ抗タウ抗体100uLを各ウェルに添加した。プレートを室温にて1時間インキュベートして、ウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。機能する抗ウサギHRP 100uLを各ウェルに添加した。プレートを室温にて30分間インキュベートして、ウェル当り400uLの希釈洗浄緩衝液で4回洗浄した。100uLのStabilized Chromagenを添加した。プレートを暗所で室温にて30分間インキュベートした。反応を、停止液100uLをすべてのウェルに添加して停止させて、450nmで読み取った。
解離した凝集タウを、PSR1はもはや結合しなかった(図14を参照)。
現在までに発明者らは、3種類の異なるタンパク質;プリオン、Aβ、およびタウの不溶性規則的タンパク質凝集体がPSR1および他のPCSB試薬を結合することを示している。これらの凝集体の変性によって、溶解性が生じ、PSR1および他のPCSB試薬へのその結合を除去する。この観察結果は、タンパク質アミノ酸配列とは無関係の規則的アミロイド構造を特徴とする相互作用ドメインの存在をさらに支持する。
(実施例12 ヒトCSF中のAD Aβ凝集体に対するPSR1ビーズプルダウンアッセイの検出限界(LOD)(図15))
PSR1ビーズプルダウンアッセイの検出限界(LOD)を、バックグラウンドを超えて検出可能な凝集Aβの最小量を決定することにより評価した。
モノマー可溶性Aβを検出するためのサンドイッチELISAの感度を、メソスケールディスカバリー(MesoScale Discovery(MSD))技術を使用して評価した(図15A)。標準合成Aβ40または42は、AβのC末端に特異的なmAbによって捕捉して、mAb 4G8によって検出した。シグナル/雑音比が2の検出限界(LOD)は、Aβ40では1.6pg/mLであり、Aβ42では12pg/mLであった。
アルツハイマー病(AD)脳ホモジネート(BH)中でAβ40および42凝集体を検出するPSR1感度を測定した(図15B)。10%AD BHをプール正常ヒトCSF 200uL中にスパイクして、PSR1ビーズ 3uLによって捕捉した。捕捉されたAβを80℃にて0.1N NaOHによってモノマーAβに解離して、上述のようなサンドイッチMSD ELISAによって検出した。シグナル/雑音比が2の検出限界(LOD)は、Aβ40では1pg/mLであり(10%AD BH 11.4nLをCSF 1mL中にスパイク)、Aβ42では1pg/mLであった(10%AD BH 0.3nLをCSF 1mL中にスパイク)。
(実施例13 ヒト血清中にスパイクされたAβ42凝集体のPSR1回収(結合効率)(図16))
PSR1によるAβ凝集体の回収効率を、AD BH中の全凝集Aβ42の量をPSR1プルダウンによって捕捉された量と比較することによって評価した。
10%AD BHを希釈正常ヒト血清(TBSで200倍希釈)200uL中にスパイクして、PSR1ビーズ 3uLによって捕捉した(図16、四角形)。捕捉されたAβ42凝集体を80℃にて0.1N NaOHによって解離して、実施例12に記載したようなサンドイッチMSD ELISAによって検出した。
PSR1捕捉に供されなかった同量のAD BHを80℃にて0.1NaOHによって変性させて、実施例12に記載したように全Aβ42をサンドイッチELISAによって測定した(図16、三角形)。
Aβの濃度は、実施例12に記載するように合成Aβを使用して標準曲線から計算した。
PSR1によって捕捉されたAβ42凝集体の量は、AD BH中の全Aβ42凝集体と等しく、このことは、PSR1回収が約100%であり、PSR1が非常に効率的な捕捉試薬であることを示した。
(実施例14 PSR1ビーズプルダウンアッセイによる正常CSFからのAβ40および42の検出)
アルツハイマー病に罹っていない個人からのCSF中のAβモノマーを結合するPSR1の能力をモニターするために、濃度漸増PSR1(30mg/mLストックからの3、9、15uL)を2×TBSTT(1%Tween 20および1%Triton−X 100を含有するTris緩衝生理食塩水)50uLと混合した、CSFロット410またはロット411 50uLに添加した。得られた混合物を600rpmにて常時振とうしながら、37℃で1時間インキュベートした。非結合試料は、TBST(0.05%Tween 20を含有するTris緩衝生理食塩水)でビーズを6回洗浄することによって除去した。各洗浄ごとに、TBSTの添加後に、磁力を使用してビーズを収集し、TBSTを除去した。ビーズ結合タンパク質は、750rpmにて常時振とうしながら、80℃にて0.1N NaOHによって30分間にわたって解離させた。0.12M NaH2PO4/0.4%Tween 20を使用して溶液を中和した。上清をELISAプレートに移して、Aβ40および42を測定した。読取値をAβ40および42標準曲線のELISAと比較して定量した。ELISAは、MSD96ウェルMULTI_SPOTヒト/げっ歯類4G8 Aβ Triplex Ultra−Sensitiveアッセイ(Meso Scale Discovery)に従って実施した。表10の結果は、漸増ビーズ量と共に、Aβ40および42のPSR1ビーズへの結合をpg/mlおよび全体のパーセントで示す。すべてのビーズ濃度でAβ40のごくわずかな結合が明らかである。検出された量は、正常CSFに存在する全Aβ40の1%未満に相当する。Aβ42の結合は明らかであり、正常CSF中に存在する全てのAβ42の1〜5%に相当する。
観察された結合は、正常CSF中でのオリゴマー性Aβの存在を示し得る。
または、これらの知見は、PSR1がモノマー性Aβを低い親和性で結合できることを示唆し得る。
(実施例15 Aβ42モノマーのPSR1への結合は、低濃度の血漿によってブロックすることができる(図17))
モノマー性Aβおよび凝集Aβに対するPSR1結合の親和性を、血漿の濃度漸増の効果を調べることによって評価した。
PSR1に対するモノマー性Aβ結合のブロックを試験するために、ビーズを濃度漸増血漿の存在下で、大過剰のモノマー性Aβ42(25ng/ml)と共にインキュベートした(図17、三角形)。血漿濃度の上昇につれて、モノマー結合の量が減少した。20パーセントの血漿は、モノマーに対するPSR1結合の90%超を阻害した。
PSR1に対する凝集Aβ結合のブロックを試験するために、ビーズを濃度漸増血漿の存在下で、200mL/mL 5%AD脳ホモジネートと共にインキュベートした(図17、丸)。モノマー性Aβとは対照的に、凝集Aβの結合に、最大85%の血漿は影響しなかった。
これらの知見
は、モノマー性Aβは、低い親和性でPSR1を結合するが(これは、他のタンパク質によってブロックされる可能性がある)、凝集AβはPSR1をより高い親和性で結合することを示唆している。
(実施例16 HClは凝集タウタンパク質とPSR1−ビーズとの結合を解離させる(図18))
PSR1結合凝集体の効率的な免疫検出を実施するためには、凝集体を溶離させて、ELISAに適合するタンパク質モノマーに解離すべきである。解離のカオトロピック強度は、凝集体の物理化学特性に依存する。凝集タウのPSR1からの解離を最適化するために、以下の酸性条件
正常またはアルツハイマー病(AD)からの脳ホモジネート(BH)をTBSTT(1%Tween 20および1%Triton−X 100を含有するTris緩衝生理食塩水)中にスパイクした。各試料100uLをPSR1−ビーズ(30mg/mL)3uLと混合した。得られた混合物を750rpmにて常時振とうしながら、37℃で1時間インキュベートした。非結合試料物質は、TBST(0.05%Tween 20を含有するTris緩衝生理食塩水)でビーズを6回洗浄することによって除去した。各洗浄ごとに、TBSTの添加後に、磁力を使用してビーズを収集し、TBSTを除去した。凝集タウとビーズとの結合は、750rpmにて常時振とうしながら、種々の条件(表に表示)で解離させた。解離反応物は3つの異なる温度の、3つの別個のプレートに置いた。6M GdnSCNをH2Oで希釈し、HClはNaOHによってpH7.5まで中和した。上清を磁力上の同じELISAプレートに移した。タウはヒトタウ(全)ELISA(Biosource)によって定量した。
結果を図18に示す。結果は、室温(RT)および50℃の0.25N HClによってAD BHからの凝集タウとPSR1−ビーズとの結合が解離されることを示す。これらの解離条件は、RTでの6M GdnSCNと同じ効率を有する(RTでの6M GdnSCNは、タンパク質への損傷を伴わずに凝集タンパク質を解離させるため、標準である)。80℃の0.25N HClによる解離によって、ELISAのタウシグナルが除去され、この除去はおそらくタウタンパク質の損傷によるものである。pH2.3における150mM NaClを含む0.1N HCl−グリシンでは、6M GdnSCNと同じ解離効率を達成できなかった。正常BHでは、シグナルはすべての解離条件で同じレベルであった。条件3(750rpmで振とうしながら室温にて0.25N HClで30分間)は、PSR1ビーズからの凝集タウの好ましい解離条件である。
(実施例17 AD BHによってスパイクした正常ヒトCSF中の全タウ、P−タウ231、およびP−タウ181に対するPSR1ビーズプルダウンアッセイの検出限界(図19A〜F))
(全タウの検出限界)
アルツハイマー病脳ホモジネート(AD BH)を正常ヒトCSF中にスパイクした。各試料200uLを5×TBSTT(1%Tween 20および1%Triton−X 100を含有するTris緩衝生理食塩水)50uLおよびPSR1−ビーズ(30mg/mL)12uLと混合した。得られた混合物を550rpmにて常時振とうしながら、37℃で1時間インキュベートした。非結合試料物質は、TBST(0.05%Tween 20を含有するTris緩衝生理食塩水)でビーズを6回洗浄することによって除去した。各洗浄ごとに、TBSTの添加後に、磁力を使用してビーズを収集し、TBSTを除去した。ビーズ結合凝集タウは、750rpmにて常時振とうしながら、室温にて0.25N HClによって30分間にわたって解離させた。0.25N NaOHを使用して溶液を中和した。上清を磁力上のINNOTEST hTAU Ag ELISAプレートに移した。INNOTEST hTAU Ag ELISAを、PSR1−ビーズプルダウンアッセイから最終試料量を合成するために、反応当り175uLに変更した。
アッセイ検出限界は、2以上のS/N(シグナル対アッセイバックグラウンド)比を使用して決定した。ELISAアッセイバックグラウンドを、緩衝液のみでのシグナルと見なした。プルダウンアッセイのバックグラウンドを、AD BHをスパイクしなかったCSFのシグナルと見なした。175uL INNOTEST hTAU Ag ELISAの検出限界は、アッセイ当り0.032fmol、すなわち0.32pMであった。タウPSR1ビーズプルダウンアッセイの検出限界は、アッセイ当り0.038fmol、すなわち0.19pMであった。
(P−タウ231の検出限界)
アルツハイマー病脳ホモジネート(AD BH)を正常ヒトCSF中にスパイクした。70uLの各試料を3.3×TBSTT(1%Tween 20および1%Triton−X 100を含有するTris緩衝生理食塩水)30uLおよびPSR1−ビーズ(30mg/mL)3uLと混合した。得られた混合物を750rpmにて常時振とうしながら、37℃で1時間インキュベートした。非結合試料物質は、TBST(0.05%Tween 20を含有するTris緩衝生理食塩水)でビーズを6回洗浄することによって除去した。各洗浄ごとに、TBSTの添加後に、磁力を使用してビーズを収集し、TBSTを除去した。ビーズ結合凝集タウは、750rpmにて常時振とうしながら、室温にて0.25N HClによって30分間にわたって解離させた。0.25N NaOHを使用して溶液を中和した。上清を磁力上のヒトタウ[pT231]ELISAプレート(Biosource)に移した。
アッセイ検出限界は、2以上のS/N(シグナル対アッセイバックグラウンド)比を使用して決定した。ELISAアッセイバックグラウンドを、緩衝液のみでのシグナルと見なした。プルダウンアッセイのバックグラウンドを、AD BHをスパイクしなかったCSFのシグナルと見なした。ヒトタウ[pT231]ELISAの検出限界は、アッセイ当り0.09fmol、すなわち1.72pMであった。タウ[pT231]プルダウンアッセイの検出限界は、アッセイ当り0.20fmol、すなわち2.71pMであった。
(P−タウ181の検出限界)
アルツハイマー病脳ホモジネート(AD BH)を正常ヒトCSF中にスパイクした。70uLの各試料を3.3×TBSTT(1%Tween 20および1%Triton−X 100を含有するTris緩衝生理食塩水)30uLおよびPSR1−ビーズ(30mg/mL)3uLと混合した。得られた混合物を750rpmにて常時振とうしながら、37℃で1時間インキュベートした。非結合試料物質は、TBST(0.05%Tween 20を含有するTris緩衝生理食塩水)でビーズを6回洗浄することによって除去した。各洗浄ごとに、TBSTの添加後に、磁力を使用してビーズを収集し、TBSTを除去した。ビーズ結合凝集タウは、750rpmにて常時振とうしながら、室温にて0.25N HClによって30分間にわたって解離させた。0.25N NaOHを使用して溶液を中和した。上清を磁力上のINNOTEST PHOSPHO−TAU(181P)ELISAプレートに移した。
アッセイ検出限界は、2以上のS/N(シグナル対アッセイバックグラウンド)比を使用して決定した。ELISAアッセイバックグラウンドを、緩衝液のみでのシグナルと見なした。プルダウンアッセイのバックグラウンドを、AD BHをスパイクしなかったCSFのシグナルと見なした。INNOTEST PHOSPHO−TAU(181P)ELISAの検出限界は、アッセイ当り0.04fmol、すなわち0.54pMであった。タウ[pT231]プルダウンアッセイの検出限界は、アッセイ当り0.03fmol、すなわち0.44pMであった。