JP2011519562A - 干ばつ抵抗性のための転写因子の転写制御ならびに転写後制御 - Google Patents

干ばつ抵抗性のための転写因子の転写制御ならびに転写後制御 Download PDF

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Abstract

本発明は、干ばつ抵抗性植物を作出するのに有用なポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドの発現が改変されているたトランスジェニック植物ならびにその子孫を提供する。さらに、植物に干ばつ抵抗性を与えるのに有用な分子も提供する。
【選択図】図1−1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月30日付の米国仮出願第61/048,996号の優先権を主張するものであり、その開示内容を参照によって本明細書に組み入れる。
連邦政府支援研究に関する陳述
本発明は米国国立衛生研究所(グラント番号R01GM059138)からの助成金によって支援されたものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
干ばつストレスは世界中で農作物の生産性を限定している主要な環境要因である。干ばつストレスの悪影響を軽減するため、植物は、形態学的、生理学的および生化学的適応性を含めて、多面的戦略を進化させてきた(Bohnert et al., 2006; Shinozaki et al., 2003; Xiong et al., 2002; Zhu, 2002; Ingram and Bartels, 1996)。こうした戦略のいくつかは、水の取り込みを高めるかまたは水の損失を減らすことによって、脱水ストレスを避けることを目指したものであり、また、他の戦略は、水が枯渇して、組織の脱水が避けられなくなるとき、被害から植物細胞を保護しようとするものである(Verslues et al., 2006)。植物の干ばつストレスに対する応答では、遺伝子発現の変化が重要な役割を果たしており、多くのストレス誘導型遺伝子が干ばつ抵抗性に関与することが知られているか、またはそのように推定されている。こうした遺伝子の多くにおいて、アブシジン酸(ABA)というホルモンはそれらの発現を制御している重要なシグナル伝達中間体である。このことは主に、シロイヌナズナ(Arabidopsis)でのABA欠損およびABA非感受性変異体の解析により証明されている(Koornneef et al., 1998)。
非常に多くの環境要因が植物の成長と結実に影響を及ぼしており、中でも土壌の塩分と干ばつが最も有害な影響を与えている。主要作物の遺伝的生産能力のおよそ70%は非生物的ストレスが原因で失われており、大部分の主要農作物は干ばつストレスの影響を受けやすい。ストレス条件下での生産高を植物育種によって改善する試みは、主に適応応答(adaptive response)の多様な遺伝子起源のため、ほとんど成功を収めていない(Barkla et al. 1999, Adv Exp Med Biol 464:77-89)。
本発明は、NFYA5の過剰発現が干ばつ抵抗性を改善することを実証するものである。本発明は、干ばつ抵抗性におけるNFYA5の役割の一部が、孔辺細胞(guard cell)でのその発現ならびに気孔開口(stomatal aperture)の制御を含むことを提供する。さらに、NFYA5はさまざまな組織で広く発現されている。孔辺細胞以外の細胞では、NFYA5は、酸化的ストレス応答に関与する遺伝子などの標的ストレス応答性遺伝子を活性化するその役割を介して、脱水耐性にとって重要であると考えられる。AtNFYB1の候補標的遺伝子はストレス耐性との明らかな関連性がなく、そのうちの一部は多糖類の代謝に関係しているようである。NFYA5とAtNFYB1の標的遺伝子間に高度のオーバーラップが存在しないことは、これら2つの転写因子が別個の遺伝子レギュロンに関与しうることを示している。
転写誘導は干ばつストレス下でのNFYA5転写産物蓄積の一部を説明するものである。ABAは、それがNFYA5転写産物の蓄積をもたらしかつNFYA5プロモーター活性を活性化するという理由で、転写制御に関わっている。
干ばつストレス下でのNFYA5制御の特徴はmiRNAの関与である。本明細書中に提供したデータは、NFYA5転写産物の蓄積がmiR169によって抑制されることを実証する。干ばつストレスはmiR169発現を下方制御し、それによってmiR169によるNFYA5の抑制を取り払う。miR169は多くの遺伝子座によりコードされる。そのうちの2つの遺伝子座MIR169aおよびMIR169cだけが干ばつストレスによって大幅に下方制御される。本発明は、両miRNAがNFYA mRNAと3個のミスマッチをもつという事実にもかかわらず、miR169cよりもむしろmiR169aがNFYA5転写産物の蓄積を抑制する上で主要な役割を果たしていることを示す。ABAは干ばつストレスによるMIR169aおよびMIR169cの下方制御に必要である。したがって、ABAはNFYA5の転写制御と転写後制御の両方に関わっている。ABAと干ばつストレスによるMIR169aおよびMIR169cの下方制御は、これら2つの遺伝子座での転写抑制に関係しているようである。
NFYA5は干ばつストレスによって転写時だけでなく、miRNAを介して転写後にも制御される。この2段階レベル制御は干ばつ抵抗性に対するNFYA5の重要性と一致する。NFYA5とmiR169はどちらもイネにおいて高度に保存されており(Jones-Rhoades and Bartel, 2004)、したがってNFYA5の2段階制御様式は他の植物にも当てはまる。
本発明は、異種プロモーターに機能的に連結されたNFY5Aポリヌクレオチド、そのホモログまたはオルソログを含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施形態において、NFY5Aは配列番号1、3、5または7からなるポリヌクレオチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、100%の同一性を有する。別の実施形態では、NFY5Aポリヌクレオチドは配列番号2を含むポリペプチドをコードする。さらに別の実施形態では、異種プロモーターが構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含む。一態様において、構成的プロモーターはカリフラワーモザイクウイルス35Sもしくは19Sプロモーター、植物ACT2プロモーター、または植物ユビキチンプロモーターである。別の態様において、構成的プロモーターはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に由来するActin2プロモーターである。さらに別の態様では、誘導性プロモーターが光誘導性プロモーターを含む。
本発明はまた、上に記載したポリヌクレオチドで形質転換した植物細胞を提供する。
本発明はまた、野生型植物よりも高いレベルでNFY5Aポリヌクレオチドを発現するトランスジェニック植物をも提供し、そのトランスジェニック植物は改善された干ばつ耐性を有する。
本発明はさらに、NFY5A遺伝子、そのホモログまたはオルソログの3'UTRを欠失しているトランスジェニック植物を提供する。
本発明は、ゲノム中の機能性miR169ポリヌクレオチドを欠失しているトランスジェニック植物を提供する。例えば、そのトランスジェニック植物はゲノム中の機能性miR169aまたはcポリヌクレオチドを欠失していてよい。
本発明はまた、上に記載したポリヌクレオチドを用いて干ばつ抵抗性の植物を作出する方法を提供し、この方法は、植物細胞または植物組織に前記ポリヌクレオチドまたは構築物を導入し、ポリヌクレオチド分子の存在について選択してトランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物組織を作製し、そしてトランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物組織から植物を再生し、それによって干ばつ抵抗性植物を作出する各ステップを含んでなる。一実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、異種プロモーターに機能的に連結された、NFY5Aポリペプチドをコードする配列を含む。別の実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、mir169aまたはcの発現を低下させる構築物、mir169aまたはcの相補体を供給する構築物、あるいは植物細胞内でmir169aまたはcをノックアウトする構築物を含む。
本発明はまた、植物において干ばつ抵抗性を改変するのに有用な作用物質を同定する方法を提供し、この方法は、NFY5A遺伝子を含む植物に作用物質を接触させ、該遺伝子の発現の変化または細胞に存在するmRNA転写産物の量を測定することを含んでなり、その際、対照と比較して発現または転写産物レベルが変化していることが、干ばつ抵抗性を改変する作用物質の指標となる。
本発明は、植物において干ばつ抵抗性を改変するのに有用な作用物質を同定する方法を提供し、この方法は、レポーター遺伝子に機能的に連結されたTN(C/A)TTNGN(C/A)CANT (配列番号60)の配列を含む植物に作用物質を接触させ、レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを含んでなり、その際、対照と比較してレポーター遺伝子の発現が変化していることが、干ばつ抵抗性を改変する作用物質の指標となる。
本発明は、植物において干ばつ耐性を高める方法を提供し、この方法は、植物に、(1) NFY5A遺伝子、そのホモログもしくはオルソログおよび/または(2)表1に示した遺伝子の発現を増大させる作用物質を接触させることを含んでなる。
本発明の1以上の実施形態は、添付の図面および以下の説明において詳述される。他の特徴、目的および効果は以下の説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
図1A〜Bは脱水およびABAによるNFYA5発現の制御を示す。(a)脱水およびABAに応答してシロイヌナズナ(Arabidopsis)の苗に蓄積するNFYA5遺伝子転写産物のリアルタイムRT-PCRによるアッセイ。発現レベルはTub8のそれに対する標準化を行った。エラーバーは3回の反復実験のSD(標準偏差)である。 図1A〜Bは脱水およびABAによるNFYA5発現の制御を示す。(b) ABA欠損またはシグナル伝達変異体におけるNFYA5 mRNAの検出。野生型(WT)および変異体を十分な水のもとに3週間生育させ、その後水やりを10日間控えた。各サンプルからの全RNA 20μgをローディングし、32P-標識全長NFYA5 cDNAプローブを用いてハイブリダイズさせた。Tub8をローディング対照として使用し、各レーンの下の数字がTub8に対して相対的な発現レベルを示す。 図2A〜Dは、NFYA5の発現パターンおよび転写制御を示す。(a) MS-寒天培地上の2週齢トランスジェニック苗を3時間の脱水または8時間のABA処理のいずれかにさらし、その後GUS活性について染色した。(b)各種組織におけるNFYA5p::GUS発現パターン。染色は葉の維管束組織(I)と孔辺細胞(II)で目立っていた。花序の花組織(III)と根の維管束系(IV)でも染色が見えた。(c) NFYA5転写産物蓄積の組織パターン。長日栽培条件下で育てた4週齢野生型植物の各種組織から全RNAを分離した。リアルタイムRT-PCR定量は18S rRNAの発現に対する標準化を行った。結果は3回の反復実験のSDを表す。(d) NFYA5の細胞内局在。トランスジェニック・シロイヌナズナにおいてNFYA5-YFP融合構築物をCaMV 35Sプロモーターの制御下で発現させ、共焦点顕微鏡で植物の根を観察した。黄色蛍光については暗視野で(I)、細胞の形態については明視野で(II)、さらに組み合わせで(III)、写真を撮った。 図3A〜Dは、干ばつストレスがNFYA5 mRNAに相補的な21ヌクレオチド(nt)スモールRNAを下方制御することを示す。(a) NFYA5とAt1g54150のシス-アンチセンス遺伝子対のスキーム。エクソンはボックスで示され、ボックスとボックスの間のラインはイントロンを表す。矢印はスモールRNAの標的位置を示す。(b) 干ばつストレスとABA処理によるスモールRNAの制御。ローディング対照のためにU6 RNAをプロービングした。各レーンの下の数字は相対的発現比を示す。 図3A〜Dは、干ばつストレスがNFYA5 mRNAに相補的な21ヌクレオチド(nt)スモールRNAを下方制御することを示す。(c)さまざまなRNAサイレンシング変異体におけるスモールRNAの蓄積。各サンプルからの40μgのスモールRNAをレーンごとにローディングし、ASRP1815の配列に対応する32P標識オリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせた。miR172、siR255およびU6はローディング対照として示した。(d) dcl1-7、hen1、hyl1およびそれらの対応する野生型におけるNFYA5 mRNAレベル。発現レベルはTub8の発現に対する標準化を行った。結果は3回の反復実験のSDを表す。 図4A〜Eは、NFYA5が主にmiR169aによって制御されることを示す。(a)干ばつストレスに応答したMIR169ファミリーの転写産物前駆体のリアルタイムRT-PCRによる検出。定量はTub8の発現に対する標準化を行った。結果は3回の反復実験のSDを表す。 図4A〜Eは、NFYA5が主にmiR169aによって制御されることを示す。(b) NFYA5発現構築物の略図。NFYA5の標的部位に導入した変異は小文字で示した(配列番号80および81)。3'UTRに存在する黒のボックスはmiRNA標的部位を示す。(c)ベンサミアナタバコ(N. benthamiana)におけるmiR169およびNFYA5発現構築物のさまざまな組み合わせの共発現。対照として、NFYA5を無関係のYFP構築物とも共発現させた。リアルタイムRT-PCR定量はタバコの18S rRNAの発現に対する標準化を行った。結果は3回の反復実験のSDを表す。 図4A〜Eは、NFYA5が主にmiR169aによって制御されることを示す。(d)トランスジェニック・シロイヌナズナにおけるmiR169aおよびmiR169cの過剰発現。野生型および2つの代表的トランスジェニック系統におけるmiR169aおよびmiR169cレベルのノーザンブロット解析。miR171はローディング対照として示してある。各レーンの下の数字は相対的発現比を示す。(e) 35S:MIR169トランスジェニック植物系統における対応するNFYA5遺伝子転写産物のリアルタイムRT-PCRによる検出。定量はTub 8の発現に対する標準化を行った。結果は3回の反復実験のSDを表す。 図5A〜Dは、35S::MIR169a植物が干ばつストレスに対しより感受性であることを示す。(a) 35S::MIR169aを過剰発現するシロイヌナズナ植物は干ばつストレスへの感受性が高い。野生型(Col)および35S::MIR169a植物を、十分な水を含んだ土壌で3週間栽培し、その後水やりを8日間控えた。代表的な写真を示してある。対照(Col)は水を控えることをしなかった。(b) 野生型および35S::MIR169a植物における気孔開口の測定。データは3回の独立した実験の幅対長さの平均比±SEである(n=40〜50)。 図5A〜Dは、35S::MIR169a植物が干ばつストレスに対しより感受性であることを示す。(c) 野生型および35S::MIR169a植物の切り取った葉からの水分損失。水分損失は最初の生重量(fresh weight)に対するパーセントとして表した。値は4回の独立した実験のそれぞれにつき10枚の葉からの平均値である。(d) 8日間の干ばつ処理をしたまたはしなかったシロイヌナズナの葉のアントシアニン含有量。結果は4回の反復実験のSDを表す。 図6A〜Eは、nfya5変異型植物が干ばつストレスに対しより感受性であることを示す。(a) NFYA5遺伝子座におけるT-DNA挿入部位の略図ならびにNFYA5 mRNAのノーザンブロット解析による検出。エクソンはボックスで示され、ボックスとボックスの間のラインはイントロンを表す。各サンプルからの全RNA 20μgをローディングし、32P標識した全長NFYA5プローブとハイブリダイズさせた。対応するエチジウムブロミド染色rRNAをローディング対照として示してある。(b) nfya5変異型植物は干ばつストレスに対しより感受性である。野生型(Col)およびnfya5植物を、十分な水を含んだ土壌で3週間栽培し、その後水やりを8日間控えた。代表的な写真を示してある。(c)野生型およびnfya5変異型植物における気孔開口の測定。データは3回の独立した実験の幅対長さの平均比±SEである(n=40〜50)。 図6A〜Eは、nfya5変異型植物が干ばつストレスに対しより感受性であることを示す。(d) 野生型およびnfya5変異型植物の切り取った葉からの水分損失。水分損失は最初の生重量に対するパーセントとして表した。値は4回の独立した実験のそれぞれにつき10枚の葉からの平均値である。(e) 8日間の干ばつ処理をしたまたはしなかったシロイヌナズナの葉のアントシアニン含有量。結果は4回の反復実験のSDを表す。 図7A〜Eは、35S::NFYA5植物における改善された干ばつ抵抗性を示す。(a) 35S::NFYA5トランスジェニック・シロイヌナズナにおけるNFYA5 mRNAの検出。リアルタイムRT-PCR定量はTub8の発現に対する標準化を行った。結果は3回の反復実験のSDを表す。(b) 35S::NFYA5植物の干ばつ抵抗性(系統2、3および5)。野生型および35S::NFYA5シロイヌナズナ植物を、十分な水を含んだ土壌で3週間栽培し、その後水やりを14日間控えた。代表的な写真を示してある。 図7A〜Eは、35S::NFYA5植物における改善された干ばつ抵抗性を示す。(c) 野生型および35S::NFYA5-3トランスジェニック植物における気孔開口の測定。データは3回の独立した実験の幅対長さの平均比±SEである(n=40〜50)。(d) 野生型および35S::NFYA5-3植物の切り取った葉からの水分損失。水分損失は最初の生重量に対するパーセントとして表した。値は4回の独立した実験のそれぞれにつき10枚の葉からの平均値である。(e) 14日間の干ばつ処理をしたまたはしなかったシロイヌナズナの葉のアントシアニン含有量。結果は4回の反復実験のSDを表す。 図8は、シロイヌナズナNFYAファミリーのメンバーにおいて保存されたドメインの配列アライメントを示す(下に向かって、それぞれ配列番号63〜71)。 図9は、35S:MIR169bおよび35S:MIR169hトランスジェニック植物系統におけるmiR169およびNFYA5 mRNAレベルの解析を示す。NFYA5転写産物レベルのリアルタイムRT-PCR定量はTub 8の発現に対する標準化を行った。結果は3回の反復実験のSDを表す。 図10は、野生型および35S::NFYA5トランスジェニック植物における転写産物レベルの解析を示す。示した遺伝子座の発現レベルを解析するためにリアルタイムRT-PCRを用いた。エラーバーはSD(n=3)を示す。 図10は、野生型および35S::NFYA5トランスジェニック植物における転写産物レベルの解析を示す。示した遺伝子座の発現レベルを解析するためにリアルタイムRT-PCRを用いた。エラーバーはSD(n=3)を示す。 図11A〜Bは、シロイヌナズナ、コムギおよびイネの2系統からのNFYA5についてのDNAアライメントを示す(Os_J (配列番号72); Os_I (配列番号74); Wheat (配列番号76); Arabidopsis (配列番号78))。 図11A〜Bは、シロイヌナズナ、コムギおよびイネの2系統からのNFYA5についてのDNAアライメントを示す(Os_J (配列番号72); Os_I (配列番号74); Wheat (配列番号76); Arabidopsis (配列番号78))。 図12は、本発明の配列(配列番号1、2、61および62)を示す。
詳細な説明
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が特に明記する場合を除き、複数の指示対象を含むものである。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」という記載は複数のそのようなポリヌクレオチドを含み、また、「ペプチド」という記載は1つまたは複数のペプチドへの言及を含む、などである。
さらに、「または」の使用は特に明記しない限り「および/または」を意味する。同様に、「含む」、「含んでなる」、「含有する」および「包含する」は相互に置き換えることができ、限定することを意図したものではない。
さらに理解すべきこととして、さまざまな実施形態の記載が「含む」という用語を用いる場合、当業者であれば、ある特定の場合において、「本質的に〜からなる」または「からなる」という語を代わりに用いて実施形態を記載できることが理解されよう。
特別に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に普通に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の方法および組成物の実施において、本明細書に記載したものと類似のまたは同等の方法および材料を用いることができるが、代表的な方法、装置および材料が本明細書に記載される。
本文を通して検討された刊行物はどれも、単にそれらが本出願の出願日前に開示されたために提供されるにすぎない。本明細書中の何ものも、本発明者らが事前開示という理由でそうした開示に先行する権利がないことを容認するものと解釈されるべきでない。
干ばつストレス下での遺伝子制御には多数の転写カスケードが介在する(Zhu, 2002; Yamaguchi-Shinozaki and Shinozaki, 2006)。こうしたカスケードのそれぞれにおいて、転写因子遺伝子が誘導され、その結果として、干ばつ抵抗性に重要な下流標的遺伝子が活性化または抑制される。いくつかのストレス制御型遺伝子は、さらに他の下流遺伝子の発現を調節する上で重要な調節タンパク質(例えば、転写因子)をコードしている(Singh et al., 2002)。シロイヌナズナでは、AP2/ERF、bZIP、NAC、HD-ZIPおよびMYB/MYCファミリーのメンバーならびにいくつかのクラスのジンクフィンガードメインタンパク質が干ばつストレスによって誘導される(Shinozaki et al., 2003; Zhang et al., 2004)。いくつかの事例では、転写因子の発現の変更は、下流標的遺伝子を活性化することによって、ストレス耐性を変更し得ることが証明されている。その例としては、CBFs/DREBs、NACsおよびRING-H2ジンクフィンガータンパク質がある(Jaglo-Ottosen et al., 1998; Kasuga et al., 1999; Hu et al., 2006; Ko et al., 2006)。
さらに、ストレス耐性に貢献する遺伝因子の同定、ならびにストレス耐性を高めた作物の遺伝子工学的作製に関する研究が集中的に行われている。いくつかの遺伝子がすでに同定されており、その発現または改変された発現はさまざまな作用機序を介して干ばつ耐性と関係している。例えば、トウモロコシNADP-リンゴ酸酵素を発現する形質転換タバコは向上した水分保持を示し、野生型植物よりも多い質量(消費した水あたり)を獲得した(Laporte et al. 2002, J Exp Bot 53:699-705)。植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)にも相当な研究努力が払われてきているが、アブシジン酸(ABA)はさまざまな環境ストレスへの適応に関与している。ABA生合成の鍵となる酵素9-cis-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ(NCED)を過剰発現するトランスジェニック・タバコおよびトランスジェニック・シロイヌナズナは、改善された干ばつ耐性を示す(Qin et al. 2002, Plant Physiol 128:544-51; Iuchi et al. 2001, Plant J 27:325-33)。干ばつ耐性は多くの場合塩耐性と結びついているが、それは両方とも浸透ポテンシャルおよび膨圧の調節に関係するからである。こうして、液胞膜を挟んでプロトン勾配を形成する液胞型H+ポンプ(H+-ピロホスファターゼ)を過剰発現するトランスジェニック植物は、増大した溶質蓄積および水分保持のため、改善された干ばつおよび塩ストレスを示す(Gaxiola et al. 2001, Proc Natl Acad Sci USA 98:11444-9)。トレハロースもまた、環境ストレスに対する浸透保護(osmoprotection)に貢献している。トレハロース生合成のキー酵素であるトレハロース-6-リン酸合成酵素を誤発現するジャガイモ植物は、向上した干ばつ耐性を示す(Yeo et al. 2000, Mol Cells 10:263-8)。
転写レベルでの遺伝子発現の制御は、植物の成長および生理学的状態において重要な役割を果たす。スモールRNAの発見により、スモールRNAによる転写後遺伝子制御の重要性に大きな関心が集まってきている(Carrington and Ambros, 2003; Bartel, 2004; Tang, 2005)。こうしたスモールRNAには20〜24ヌクレオチド(nt)のmicroRNA、21ntのトランス作用性siRNA、約24ntの反復配列関連(repeat-associated) siRNA、および21または24ntのnat-siRNAが含まれる。miRNAはリボヌクレアーゼIII様酵素Dicerによってヘアピン前駆体からプロセッシングされる。siRNAは、それらが長い二本鎖RNAから生成されるという点で、miRNAと異なる。植物miRNAは、開花、葉と根の成長、胚発生、およびオーキシンシグナル伝達を含めて、いろいろな成長過程に関与している(Allen et al., 2005; Carrington and Ambros, 2003; Bartel, 2004; Jones-Rhoades et al., 2006)。最近の研究から、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)では、共生根粒の成長がmiR169によって制御されていることが判明した(Combier et al., 2006)。microRNAはまた、生物的および非生物的ストレス(例えば、硫酸およびリン酸栄養枯渇)、ならびに酸化的ストレスに対する植物の応答においても重要な役割を果たしている(Jones-Rhoades and Bartel, 2004; Fujii et al., 2005; Sunkar et al., 2006; Sunkar and Zhu, 2007)。nat-siRNAは、シロイヌナズナにおいて塩耐性と病害抵抗性を制御することが実証された(Borsani et al. 2005; Katiyar-Agarwal et al., 2006)。しかしながら、干ばつ抵抗性の重要性にもかかわらず、スモールRNAが干ばつストレス応答を制御することはこれまでまったく報告されたことがない。
シロイヌナズナは干ばつ耐性に貢献する遺伝子を同定するためのモデル系として役立ってきた。例えば、研究者らによって、渇水に応答して誘導される多数の遺伝子が同定されており(例えば、Taji et al. 1999, Plant Cell Physiol 40:119-23; Ascenzi et al., 1997, Plant Mol Biol 34:629-41; Gosti et al. 1995, Mol Gen Genet 246:10-18; Koizumi et al. 1993 Gene 129:175-82)、また、ABAもしくはストレス応答性遺伝子発現を制御するABA応答エレメント(ABRE)と呼ばれるシス作用性DNA配列が同定されている(Giraudat et al. 1994, Plant Mol. Biol 26: 1557)。
シロイヌナズナの干ばつ耐性変異体がいくつか確認されている。これらには劣性突然変異体abh1 (Hugouvieux et al. 2001, Cell 106: 477)、era1-2 (Pei et al. 1998, Science 282: 286)およびabi1-1Ri (Gosti et al. 1999, Plant Cell 11:1897-1909)が含まれる。突然変異体era1-2およびabh1は、ABAに高感受性の苗をスクリーニングすることにより確認され、一方突然変異体abi1-1RiはABA非感受性変異体abi1-1の遺伝子内サプレッサー(intragenic suppressor)として分離された。優性干ばつ耐性変異体はABF3、ABF4 (Kang et al. 2002, Plant Cell 14:343-357)またはDREB1A (Kasuga, 1999 Nature Biotech 17: 287)を過剰発現することによって確認された。ABF3およびABF4は、ABREと特異的に結合する塩基性ロイシンジッパー(bZIP)DNA結合タンパク質をコードする。DREB1Aは、脱水応答性遺伝子の発現に不可欠な脱水応答エレメント(DRE)と結合するEREBP/AP2 DNA結合ドメインをもつタンパク質をコードする(Liu et al. 1998, Plant Cell 10: 1391)。タバコの優性干ばつ耐性表現型はダイズBiP遺伝子を過剰発現させることによって得られた(Alvim et al. 2001, Plant Physiol 126, 1042)。
本願開示は、NFYA5がこれらの干ばつストレス応答性転写カスケードの一部であることを実証する。この転写カスケードは、35S::MIR169aおよびnfya5変異型植物が干ばつストレスに高い感受性を示すことから、干ばつ抵抗性にとって重要である。本発明は、NFYA5が転写後に少なくとも2つのmiRNA分子(mir169aおよびc)によって下方制御されることを証明する。さらに、本発明は、NFY5Aポリペプチドの発現または過剰発現が干ばつ耐性を向上させることを証明する。その発現または過剰発現は以下の方法を用いることにより達成できる:(a)野生型NFY5Aの転写制御(例えば、nfy5aポリヌクレオチドを構成的または誘導性プロモーターに連結することを利用することで)、(b) mir169aまたはcと相互作用するドメインを欠く変異型nfy5aの発現、または(c) mir169aおよびmir169cのいずれか一方または両方の発現を抑制またはノックアウトすることによる。こうして、本発明は、改善された干ばつ耐性を有するトランスジェニック植物を作出するための方法および組成物、ならびに植物において干ばつ耐性を改変するための方法を提供する。
核因子Y (NF-Y)は、CCAATボックス(真核生物遺伝子プロモーターの約25%に存在するシスエレメント)に対して高い親和性および配列特異性を有する普遍的転写因子である。NF-Yは、NF-YA (CBF-BまたはHAP2としても知られる)、NF-YB (CBF-AまたはHAP3)およびNF-YC (CBF-CまたはHAP5)からなるヘテロトリマー複合体である。哺乳類では、NF-YBとNF-YCがヒストンフォールドモチーフ(histone fold motif)によって強固に二量体化し、その後NF-YAがDNA結合に先立って会合する。その場合、この三量体の配列特異的相互作用にはNF-YAが介在する(Mantovani, 1999)。NF-YAおよびNF-YCサブユニットは、転写を活性化するのに重要な、グルタミンと疎水性残基に富む大きなドメインを含む(Mantovani, 1999)。動物および酵母では、NF-Yの各サブユニットが単一の遺伝子によってコードされるが、シロイヌナズナのゲノムは10個のNF-YA、13個のNF-YBおよび13個のNF-YCをコードする(Gusmaroli et al., 2002)。AtNFYB9 (LEC1)は胚発生において極めて重要な役割を担うことが実証されている(Lee et al., 2003)。近年、シロイヌナズナおよびトウモロコシでのAtNFYB1の過剰発現は、干ばつストレス条件下で干ばつ抵抗性と生産高を大幅に向上させることが示された(Nelson et al., 2007)。しかしながら、植物におけるNF-Yファミリーメンバーのほとんどの生物学的役割は理解されていない。
本願開示は、シロイヌナズナNF-YAファミリーのメンバーであるAtNFYA5の発現が干ばつストレスとABA処理によって強く誘導されることを示すデータを提供する。プロモーター::GUS解析はこの誘導の一部が転写レベルで起こったことを示すが、転写制御のみではストレスまたはABA処理の後に見られる高レベルのNFYA5転写産物の蓄積を説明できなかった。
本願開示はさらに、NFYA5がmiR169の標的部位を含み、かつmiR169発現が干ばつによって下方制御されることを証明する。miR169前駆体の発現を解析したとき、前駆体のうちの2つ、miR169aとmiR169cが干ばつストレスによって下方制御された。miR169およびNFYA5 mRNAの共発現は、NFYA5 mRNAを下方制御する上でmiR169aのほうがmiR169cより有効であることを示唆した。したがって、これらの結果から、干ばつストレスによるmiR169aの下方制御は干ばつおよびABAによるNFYA5の高レベル誘導に寄与していることが示唆される。NFYA5は維管束組織と孔辺細胞において高度に発現されていた。nfya5ノックアウト植物およびmiR169aまたはNFYA5過剰発現系統の解析は、NFYA5が気孔開口および干ばつ抵抗性を制御する上で重要であることを明らかにした。まとめると、これらの結果から、NFYA5は干ばつ抵抗性にとって重要であり、それが転写レベルと転写後レベルの双方で干ばつストレスによって制御されていることがわかる。かくして、本発明は、異種プロモーターに機能的に連結されたNFY5Aポリヌクレオチド、そのホモログまたはオルソログを含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施形態において、NFY5Aポリヌクレオチドは配列番号1、3、5または7からなるポリヌクレオチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、100%の同一性を有する。別の実施形態では、NFY5Aポリヌクレオチドは配列番号2を含むポリペプチドをコードする。さらに別の実施形態では、異種プロモーターが構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含む。一態様において、構成的プロモーターはカリフラワーモザイクウイルス35Sもしくは19Sプロモーター、植物ACT2プロモーター、または植物ユビキチンプロモーターである。別の態様において、構成的プロモーターはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に由来するActin2プロモーターである。さらに別の態様では、誘導性プロモーターが光誘導性プロモーターを含む。
本願開示はまた、上に記載したポリヌクレオチドで形質転換された植物細胞を提供する。
本願開示はまた、野生型植物よりも高いレベルでNFY5Aポリヌクレオチドを発現するトランスジェニック植物をも提供し、そのトランスジェニック植物は改善された干ばつ耐性を有する。
本願開示はさらに、NFY5A遺伝子、そのホモログまたはオルソログの3'UTRを欠失しているトランスジェニック植物を提供する。
本願開示は、ゲノム中の機能性miR169ポリヌクレオチドを欠失しているトランスジェニック植物を提供する。例えば、そのトランスジェニック植物はゲノム中の機能性miR169aまたはcポリヌクレオチドを欠失していてよい。
本発明はまた、上に記載したポリヌクレオチドを用いて、干ばつ抵抗性の植物を作出するための方法を提供し、この方法は、植物細胞または植物組織に前記ポリヌクレオチドまたは構築物を導入し、ポリヌクレオチド分子の存在について選択してトランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物組織を作製し、そしてトランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物組織から植物を再生し、それによって干ばつ抵抗性植物を作出する各ステップを含んでなる。一実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、異種プロモーターに機能的に連結された、NFY5Aポリペプチドをコードする配列を含む。別の実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、mir169aまたはcの発現を低下させる構築物、mir169aまたはcの相補体を供給する構築物、あるいは植物細胞内でmir169aまたはcをノックアウトする構築物を含む。
本発明はまた、植物において干ばつ抵抗性を改変するのに有用な作用物質の同定方法を提供し、この方法は、NFY5A遺伝子を含む植物に作用物質を接触させ、該遺伝子の発現の変化または細胞内に存在するmRNA転写産物の量を測定することを含んでなり、その際、対照と比較して発現または転写産物レベルが変化していることが、干ばつ抵抗性を改変する作用物質の指標となる。
該して、本発明の方法は、植物細胞の形質転換のために、希望する形のNFYA5ポリヌクレオチドを植物発現ベクターに組み込むことを含み、NFYA5ポリペプチドが宿主植物において構成的にまたは誘導可能に発現または過剰発現される。別の実施形態では、本発明は、siRNAまたはmiRNA分子(例えば、miR169分子)と結合しないポリヌクレオチドによってコードされるNFYA5ポリペプチドを提供する。野生型NFYA5はmrR169により阻害されるので、阻害抵抗性NFYA5ポリヌクレオチドは野生型と比較して干ばつ耐性を改変する(すなわち、干ばつ耐性を改善する)方法を提供するだろう。さらに、miRNA(例えばmiR169)をコードするまたは供給する配列を欠失しているノックアウト・トランスジェニック植物もまた干ばつ耐性植物をもたらすだろう。
NFYA5核酸およびポリペプチドは、改変された(例えば、改善された)干ばつ耐性表現型を有する遺伝子組換え植物の作出に用いることができる。こうした植物はさらに、他の非生物学的ストレス、特に塩ストレスおよび凍結に対して増大した耐性を示す可能性があるが、それはこれらのストレスおよび干ばつストレスへの応答がABAによって仲介されるからである(Thomashow, 1999 Annu. Revl Plant Physiol. Plant Mol. Biol 50: 571; Cushman and Bohnert, 2000, Curr. Opin. Plant Biol. 3: 117; Kang et al. 2002, Plant Cell 14:343-357; Quesada et al. 2000, Genetics 154: 421; Kasuga et al. 1999, Nature Biotech. 17: 287-291)。
概して、本明細書に記載した方法は植物全般に応用可能である。干ばつ耐性はほとんどの農作物において重要な形質であり、大部分の主要農作物(トウモロコシ、コムギ、ダイズ、ワタ、アルファルファ、サトウダイコン、タマネギ、トマト、マメ類を含む)は干ばつストレスの影響を受けやすい。以下に提供する具体的な実施例は特定の植物種で行ったものであるが、NFYA5遺伝子(またはそのオルソログ、変異体もしくは断片)はどのような種類の植物においても発現させることができる。本発明は以下の植物に干ばつ耐性を付与するために用いることができる:果実および野菜用の植物、切花産業用の植物、穀物生産用の植物、油生産用の植物、ナッツ生産用の植物、作物、とりわけトウモロコシ(Zea mays)、ダイズ(Glycine max)、ワタ(Gossypium)、トマト(Lycopersicum esculentum)、アルファルファ(Medicago sativa)、アマ(Linum usitatissimum)、タバコ(Nicotiana)、芝草(イネ科(Poaceae))、および他の飼料作物。
当業者は、形質転換のさまざまな技法が当技術分野に存在しており、絶えず新しい技法が利用可能になりつつあることを理解するだろう。標的宿主植物に適するものであれば、どのような技法でも本発明の範囲内で利用することができる。例えば、構築物をさまざまな形態で導入することができ、例えば、限定するものではないが、DNAの鎖として、プラスミドまたは人工染色体の形で導入できる。標的植物細胞への構築物の導入は、異種核酸のアグロバクテリウム(Agrobacterium)介在形質転換、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、微粒子銃、リン酸カルシウム-DNA共沈、またはリポソーム介在形質転換を含むがこれらに限らない、各種技法を用いて実施することができる。好ましくは、植物の形質転換は、導入された構築物が後続の植物世代に受け継がれるように、永続的である(すなわち、導入された発現構築物を宿主植物ゲノムに組み込むことによる)。使用目的に応じて、NFYA5ポリヌクレオチドを含む異種核酸構築物は全タンパク質をコードしても、その生物学的活性部分をコードしてもよい。
一実施形態においては、ポリヌクレオチドを導入するために、Tiに基づくバイナリーベクター系が用いられる。標準的なアグロバクテリウム・バイナリーベクターは当業者に知られており、多くが市販されている(例えばpBI121、Clontech Laboratories社、Palo Alto、カリフォルニア州)。
本明細書中で用いる「ベクター」とは、異なる宿主細胞間の移動のためにデザインされた核酸構築物をさす。「発現ベクター」とは、異種DNA断片を外来細胞に組み込んで発現する能力のあるベクターをさす。多くの原核および真核細胞発現ベクターは市販されている。適切な発現ベクターの選択は当業者の知識の範囲内である。
「異種」核酸構築物または配列は、それを発現する植物細胞に本来存在しない配列の部分を有する。制御配列に関して異種とは、自然界では同遺伝子を調節する機能がないのに、今やその遺伝子の発現を調節している制御配列(すなわち、プロモーターまたはエンハンサー)をさす。一般に、異種核酸配列は、それらが存在する細胞またはゲノムの一部に内因性のものではなく、感染、トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に加えられたものである。「異種」核酸構築物は、野生型植物に存在する制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同じまたは異なる制御配列/DNAコード配列の組み合わせを含んでいてよい。
本明細書中で用いる「遺伝子」とは、ポリペプチド鎖の生産に関わるDNAのセグメントを意味し、これはコード領域の前および後の領域、例えば、5'非翻訳領域(5'UTR)もしくは「リーダー」配列および/または3'UTRもしくは「トレーラー」配列、ならびに各コードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)および非転写型制御配列を含んでも、含まなくてもよい。
本明細書中で用いる「組換え」は、異種核酸配列の導入によって改変された細胞もしくはベクター、またはそのように改変された細胞から誘導された細胞への言及を含む。こうして、例えば、組換え細胞は天然(非組換え)型の細胞内に同じ形では見出せない遺伝子を発現するか、あるいは組換え細胞は天然の遺伝子を発現するが、ヒトが故意に介入した結果として、その遺伝子は他の形で異常に発現されるか、過少発現されるか、またはまったく発現されない。
本明細書中で用いる「遺伝子発現」とは、遺伝子の核酸配列に基づいてポリペプチドが産生されるプロセスをさす。このプロセスには転写と翻訳の両方が含まれ、したがって、「発現」はポリヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列のいずれか一方、または両方について言及しうる。場合によっては、ポリヌクレオチド配列の発現がタンパク質の翻訳につながらないだろう。「過剰発現」とは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド配列の発現が野生型や他の植物におけるその発現と比べて増加していることをさし、天然に存在する配列または天然に存在しない(非天然)配列に関係しうる。「異所性発現」とは、非改変型または野生型植物において天然では起こらない時期、場所および/または増大したレベルでの発現をさす。「過少発現」とは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド配列(一般には、内因性遺伝子)の発現が野生型植物におけるその発現と比べて低下していることをさす。「誤発現」および「変化した発現」という用語は過剰発現、過少発現および異所性発現を包含する。
細胞へのポリヌクレオチドの挿入との関連において「導入された」という用語は、「トランスフェクション」、「形質転換」または「形質導入」を意味し、真核または原核細胞へのポリヌクレオチドの組み込みへの言及を含む。この場合、そのポリヌクレオチドは細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体、またはミトコンドリアDNA)に組み込まれてもよいし、自律的レプリコンに変換されてもよいし、あるいは一過性に発現されてもよい(例えば、トランスフェクトされたmRNA)。
本明細書中で用いる「植物細胞」とは、植物に由来するあらゆる細胞をさし、植物の種子、花粉、珠芽 (progagules)および胚だけでなく、未分化組織(例えば、カルス)に由来する細胞も含まれる。
本発明は改変された植物および植物組成を包含し、例えば、植物全体、シュート栄養器官/構造(例:葉、茎、塊茎)、根、花および花器官/構造(例:苞葉、萼片、花弁、雄しべ、心皮、葯、胚珠)、種子(胚、胚乳、種皮を含む)および果実(成熟子房)、植物組織(例:維管束組織、基本組織など)および細胞(例:孔辺細胞、卵細胞など)、ならびにその子孫が含まれる。本発明の方法で使用できる植物のクラスは一般に、形質転換法に適している高等および下等植物のクラスと同じくらい広範であり、例えば、被子植物(単子葉および双子葉植物)、裸子植物、シダ植物、トクサ類、古生マツバラン(psilophytes)、ヒカゲノカズラ(lycophytes)、コケ植物、および多細胞藻類が挙げられる。「植物組織」には分化型および未分化型の組織または植物が含まれ、例えば、限定するものではないが、根、茎、シュート、葉、花粉、種子、腫瘍組織、ならびにさまざまな形の細胞および培養物、例えば単細胞、プロトプラスト、胚およびカルス組織が含まれる。植物組織は植物として、または器官、組織もしくは細胞培養物として存在しうる。
本発明はどのような植物種にも限定されない。意図される植物種としては、限定するものではないが、以下の植物が挙げられる:アルファルファ、アスター、オオムギ、ベゴニア、ビート、ナタネ、カンタロープ(網メロン)、ニンジン、キク、クローバー、トウモロコシ、ワタ、キュウリ、デルフィニウム、ブドウ、芝生および芝草、レタス、エンドウ、ペパーミント(ハッカ)、イネ、ルタバガ、ソルガム(モロコシ)、サトウダイコン、ヒマワリ、タバコ、トマティロ、トマト、カブ、コムギ、およびジニア(百日草)。
所定の植物形質または表現型に対して本明細書中で用いる「天然」および「野生型」とは、その形質または表現型が自然界において同じ品種の植物に見出される形態をさす。
本明細書中で用いる、植物形質に関する「改変された」という語は、トランスジェニック植物の表現型が同様の非トランスジェニック植物と比べて変化していることをさす。トランスジェニック植物に関連して「興味深い表現型(形質)」とは、対応する非トランスジェニック植物(すなわち、同様の条件下で育てられたまたはアッセイされた、遺伝子型の似ている植物)によっては呈示されないが、T1および/または次世代植物によって証明される観察可能または測定可能な表現型をさす。興味深い表現型はその植物の改良を表すか、または他の植物の改良をもたらす手段を提供することができる。「改良」とは、珍しいおよび/または新しい性質の植物を提供することによって、その植物種または品種の有用性を高めることができる特徴のことである。
「変化した干ばつ耐性表現型」とは、遺伝子組換え植物の渇水条件に耐える能力が、同様の非組換え植物と比較して、検出可能に変化していることをさす。一般的には、改善された(向上した)干ばつ耐性表現型(すなわち、通常は植物に害を及ぼすと考えられる渇水条件下で生き残る植物の能力)が目的となる。
本明細書中で用いる「変異型」ポリヌクレオチドまたは遺伝子は、配列または発現の点で、対応する野生型ポリヌクレオチドまたは遺伝子と相違しており、この場合その相違が改変された植物表現型または形質に寄与する。植物または植物系統に関連して「変異型」とは、改変された植物表現型または形質を有する植物または植物系統をさし、この場合改変された表現型または形質が野生型ポリヌクレオチドまたは遺伝子の改変された発現に関係する。
本明細書中で用いる「T1」とは、T0植物の種子からの植物の世代をさす。T1世代は、選択薬剤、例えば抗生物質または除草剤(トランスジェニック植物はこれに対応する耐性遺伝子を含む)の適用により選別される形質転換植物の第1のセットである。「T2」は、T1植物(以前にトランスジェニックであるとして選別されたもの)の花の自家受粉による植物の世代をさす。
本明細書中で用いる「植物部分」という語はあらゆる植物器官または組織を含み、限定するものではないが、種子、胚、分裂組織部位、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉、および小胞子が挙げられる。植物細胞はどのような植物器官または組織からでも得ることができ、また、それらから調製された培養物からも得ることができる。本発明の方法で使用できる植物のクラスは、単子葉植物と双子葉植物の両方を含めて、形質転換法に適している高等植物のクラスとほぼ同程度に広範である。
本明細書中で用いる「トランスジェニック植物」はそのゲノムに異種ポリヌクレオチドを含む植物への言及を含む。異種ポリヌクレオチドはゲノムに安定に組み込まれても、染色体外であってもよい。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、それが次世代に受け継がれるように、ゲノムに安定して組み込まれる。異種ポリヌクレオチドが導入された植物細胞、組織、器官または植物は「形質転換された」、「トランスフェクトされた」、または「トランスジェニック」と見なされる。異種ポリヌクレオチドを同様に含む形質転換植物または植物細胞の直接および間接子孫もトランスジェニックと見なされる。
「タンパク質」または「ポリペプチド」(本明細書においてこれらの用語は同じ意味で用いられる)は、ペプチド結合と呼ばれる化学結合によって一緒に連結された、アミノ酸と呼ばれる化学的構成単位の鎖を1本以上含むものである。「天然」または「野生型」タンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子または細胞は、自然界に存在するタンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子または細胞を意味する。
「アミノ酸配列」とは、その場に応じて、アミノ酸のポリマー(タンパク質、ポリペプチドなど)またはアミノ酸のポリマーを表す文字列のことである。本明細書で言及される各種アミノ酸配列中に存在するアミノ酸は、当技術分野で常用される3文字および1文字略号で表記される:A, Ala, アラニン; C, Cys, システイン; D, Asp, アスパラギン酸; E, Glu, グルタミン酸; F, Phe, フェニルアラニン; G, Gly, グリシン; H, His, ヒスチジン; I, Ile, イソロイシン; K, Lys, リシン; L, Leu, ロイシン; M, Met, メチオニン; N, Asn, アスパラギン; P, Pro, プロリン; Q, Gln, グルタミン; R, Arg, アルギニン; S, Ser, セリン; T, Thr, トレオニン; V, Val, バリン; W, Try, トリプトファン; Y, Tyr, チロシン。
特定の配列の「保存的アミノ酸置換」または単に「保存的変異」とは、1個のアミノ酸または一連のアミノ酸を、本質的に同じアミノ酸配列で置き換えることをさす。当業者には理解されるように、コード配列中の1個のアミノ酸またはある割合のアミノ酸を変更、付加または欠失する個々の置換、欠失または付加は、その変更がアミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、またはアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換につながる場合、結果的に「保存的変異」をもたらす。
機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野でよく知られている。例えば、1つの保存的置換グループはアラニン(A)、セリン(S)およびトレオニン(T)を含む。別の保存的置換グループはアスパラギン酸(D)とグルタミン酸(E)を含む。別の保存的置換グループはアスパラギン(N)とグルタミン(Q)を含む。さらに別の保存的置換グループはアルギニン(R)とリシン(K)を含む。別の保存的置換グループはイソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)およびバリン(V)を含む。別の保存的置換グループはフェニルアラニン(F)、チロシン(Y)およびトリプトファン(W)を含む。
こうして、本発明のポリペプチドの「保存的アミノ酸置換」には、そのポリペプチドのある割合(一般的には10%未満)のアミノ酸の、同じ保存的置換グループの保存的に選択されたアミノ酸による置換が含まれる。したがって、本発明のポリペプチドの保存的に置換された変異は、同じ保存的置換グループの保存的に置換される変異による100、75、50、25または10の置換を含むことができる。
「保存的変異体」とは、タンパク質または酵素の全体的な立体構造および機能を変えることなく、例えば、あるアミノ酸を同様の性質(極性または非極性、サイズ、形状および電荷を含む)をもつアミノ酸で置き換えることによって(しかし、これに限らない)、所定のアミノ酸残基を変化させたタンパク質または酵素のことである。保存されたとして示されたもの以外のアミノ酸はタンパク質または酵素において異なっていてよく、それゆえ機能の類似する2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列類似性パーセントはさまざまであり、例えば、アライメントスキームに従って計算して、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%でありうる。本明細書中で述べる「配列類似性」とは、ヌクレオチドまたはタンパク質配列が関連している程度を意味する。2配列間の類似性の程度は、配列同一性および/または保存パーセントをベースにすることができる。本明細書中で「配列同一性」とは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が変化していない程度を意味する。「配列アライメント」は、類似度を評価する目的で同一性(およびアミノ酸配列の場合には保存)の最大レベルを達成するように2つ以上の配列を並べるプロセスを意味する。配列を整列させて類似性/同一性を評価するための多くの方法が当技術分野で知られており、例えば、BLASTN、BLASTPおよびFASTA、ならびにクラスター法(この場合には、類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づく)が知られている(Lipman and Pearson, 1985; Pearson and Lipman, 1988)。どのプログラムを採用する場合にも、好ましい設定は最も高い配列類似性をもたらすものである。
本明細書中で用いる、特定の対象配列またはその特定部分に対する「同一性パーセント」とは、対象配列と候補誘導配列を整列させ、最大の配列同一性パーセント(プログラムWU-BLAST-2.0a19 (Altschul et al., J. Mol. Biol. (1990) 215:403-410; ウェブサイトblast.wust1.edu/blast/README.html)により、検索パラメーターをデフォルト値に設定して得られる)を達成するために、必要ならばギャップを導入した後で、対象配列(またはその特定部分)のヌクレオチドまたはアミノ酸と同一である、候補誘導配列のヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージとして定義される。HSP SおよびHSP S2パラメーターは動的な値であって、特定の配列の組成および特定のデータベース(興味のある配列がこのデータベースに対して検索される)の組成に応じてプログラムそのものによって確立される。「同一性%値」は、マッチする同一のヌクレオチドまたはアミノ酸の数を、同一性パーセントを報告しようとする配列の長さで割ることにより決定される。「アミノ酸類似性パーセント」は、アミノ酸配列同一性パーセントを求める計算と同じ計算を行うが、その計算に同一アミノ酸に加えて保存的アミノ酸置換を含めることによって決定される。
特定のポリペプチドの非保存的改変は、保存的置換と見なされないアミノ酸を代わりに用いるものである。例えば、上に記載した6グループの境界をまたぐ置換である。これらには以下の置換が含まれる:中性アミノ酸に代わる塩基性もしくは酸性アミノ酸による置換(例えば、Val、Ile、LeuまたはMetに代わるAsp、Glu、AsnまたはGln)、塩基性もしくは酸性アミノ酸に代わる芳香族アミノ酸による置換(例えば、Asp、Asn、GluまたはGlnに代わるPhe、TyrまたはTrp)、またはアミノ酸を類似アミノ酸で置き換えない他のいずれかの置換。塩基性側鎖にはリシン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)が含まれる; 酸性側鎖にはアスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)が含まれる; 非荷電極性側鎖にはグリシン(G)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、システイン(C)が含まれる; 非極性側鎖にはアラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、トリプトファン(W)が含まれる; β分岐側鎖にはトレオニン(T)、バリン(V)、イソロイシン(I)が含まれる; 芳香族側鎖にはチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)が含まれる。
特定のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの活性を変えない配列の付加(例えば、非機能性配列または非コード配列の付加)は基本ポリヌクレオチドの保存的変異であることが理解される。
当業者は、開示される核酸構築物の多くの保存的変異が機能的に同一の構築物をもたらすことを認識するだろう。例えば、上で述べたように、遺伝子コードの縮重のため、「サイレント置換」(すなわち、コードされるポリペプチドに変化を生じさせない核酸配列中の置換)はアミノ酸をコードするどの核酸配列にも備わっている特徴である。同様に、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸配列中の1個または数個のアミノ酸が高度に類似した性質をもつ別のアミノ酸で置換されることであるが、こうした置換もまた開示した構築物と非常に類似するものとして容易に認識される。開示した各配列のそのような保存的変異は本明細書で提供したポリペプチドの特徴である。
ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは他の成分は、通常それと結合している成分(他のタンパク質、核酸、細胞、合成試薬など)から部分的にまたは完全に分離される場合に、「単離」または「精製」される。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それが人工的または遺伝子工学的に合成されるか、あるいは人工的または遺伝子工学的に合成されたタンパク質もしくは核酸から誘導される場合に、「組換え型」である。例えば、あるポリヌクレオチドが自然界に存在するとき常にそのポリヌクレオチドに隣接しているヌクレオチド配列と一緒でなくなるように、ベクターまたは他のいずれかの異種位置(例えば、組換え生物のゲノム)に挿入されるポリヌクレオチドは、組換え型ポリヌクレオチドである。組換え型ポリヌクレオチドからin vitroまたはin vivoで発現されたタンパク質は組換え型ポリペプチドの例である。同様に、自然界では見られないポリヌクレオチド(例えば、天然に存在する遺伝子の変異体)も組換え型である。
ベクターは自己伝達性または可動性であってもなくてもよく、また、細胞ゲノムに組み込まれるかまたは染色体外に存在することによって(例えば、複製起点をもつ自律複製プラスミド)、原核または真核細胞を形質転換できるものであり、二本鎖または一本鎖の線状もしくは環状の形をしたプラスミド、コスミド、ファージまたはアグロバクテリウム・バイナリーベクターを含めて、どのようなベクターも本発明の方法および組成物において使用することができる。
特にシャトルベクターが挙げられるが、シャトルベクターとは、放線菌とその関連菌種、細菌ならびに真核細胞(例えば、高等植物、哺乳類、酵母または真菌細胞)から選択される2種類の異なる宿主生物内で、自然にまたはデザインによって、複製する能力があるDNA運搬体を意味する。
ベクター中のポリヌクレオチドは、微生物(例:細菌)または植物細胞のような宿主細胞内での転写に適したプロモーターまたは他の調節エレメントと機能的に連結されて、その制御下にある。ベクターは複数の宿主内で機能する二機能性発現ベクターであってよい。ゲノムDNAの場合、それはそれ自体のプロモーターや他の調節エレメントを含むことができ、またcDNAの場合には、それは宿主細胞内での発現に適したプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下におくことができる。
本明細書中で用いる「構成的プロモーター」とは、機能的に連結されたコード化ポリヌクレオチドまたは興味のあるポリヌクレオチドの、実質的に持続的なレベルまたは基底レベルでの発現を促進するプロモーターをさす。誘導性プロモーターとは、発現レベルが一定期間にわたって変化するように、時間的にまたは接触によって誘導され得るプロモーターのことである。本発明のNFY5Aポリヌクレオチドまたは断片と共に用いるのに適したプロモーターの例は以下のものである:脂肪酸デサチュラーゼ(不飽和化酵素)遺伝子からの調節配列、トウモロコシ由来のアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、リブロース二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット遺伝子のような光誘導性プロモーター、主要なクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の19Sプロモーター、ほとんどの植物組織において低(基底)レベルで発現される-46bpカリフラワーモザイクウイルス(CaMV) 35S最小プロモーター。さらに、根特異的プロモーターや根皮特異的プロモーターといった組織特異的プロモーターも意図される。種子特異的プロモーターの非限定的な例としては、ナピン、ファセオリン、オレオシンおよびクルシフェリンのプロモーターが挙げられる。その他の適当な植物プロモーターには、当業者に知られたものが含まれる。
本明細書は、転写開始および速度に影響を及ぼす配列を含むポリヌクレオチドドメインをさすために次の用語「調節配列」、「制御エレメント」および「発現制御配列」を含む。調節配列として、限定するものではないが、プロモーター、プロモーター制御エレメント、タンパク質結合ドメイン、5'および3'非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、イントロン、およびコード配列内にある他の調節配列が挙げられる。
「機能的に連結された」および「機能的に結合された」という用語は、ある分子の明確に異なる2つのドメイン(各ドメインは独立した生物学的機能を有する)の化学的または物理的カップリング(直接または間接的)を広くさすために、本明細書では区別なく用いられる。例えば、「機能的に連結された」は、調節配列とその調節配列により制御されるポリヌクレオチドとの機能的連結をさす。例えば、本発明の機能的に連結された5NFYA5ポリヌクレオチドまたは断片は、プロモーターに機能的に連結された5NFYA5ポリヌクレオチドまたは断片を含むことができ、これは次に、発現されるポリペプチドまたは阻害性核酸分子をコードするポリヌクレオチドと機能的に連結される。
プロモーターは、通常は転写が開始する部位(通常はRNAポリメラーゼIIの開始部位の近く)の上流100ヌクレオチド以内の、DNA分子の領域からなる発現制御配列である。プロモーターは、転写を開始させかつ調節するためにRNAポリメラーゼや他のタンパク質の認識および結合に関与する。コード配列をプロモーターの制御下におくために、一般的には、そのポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位をプロモーターの1〜約50ヌクレオチド下流に位置づけることが必要である。
最小プロモーター(minimal promoter)は、転写開始に必要とされる転写複合体を組み立てるのに必要な量の配列のみを含む。最小プロモーターは一般に転写開始部位から約15〜約35ヌクレオチド上流に存在する「TATAボックス」エレメントを含む。最小プロモーターはさらに「CCAATボックス」エレメントを含むことができ、このエレメントは転写開始部位から約40〜約200ヌクレオチド上流、一般には約60〜約120ヌクレオチド上流に存在しうる。
シロイヌナズナNFYA5核酸(cDNA)配列は配列番号1、3、5または7で提供される。対応するタンパク質配列はそれぞれ配列番号2、4、6または8で提供される。
本明細書中で用いる「NFYA5ポリペプチド」という語は、全長NFYA5タンパク質または「機能的に活性」なその断片、誘導体(変異体)もしくはオルソログをさす。「機能的に活性」とは、そのタンパク質の断片、誘導体もしくはオルソログが配列番号2、4、6または8のポリペプチドに関係した機能的活性を1つ以上示すことを意味する。一実施形態において、機能的に活性なNFYA5ポリペプチドは、植物で過剰発現または誤発現されるとき、変化した干ばつ耐性表現型をもたらす。さらなる実施形態では、機能的に活性なNFYA5ポリペプチドの誤発現または過剰発現が改善された干ばつ耐性をもたらす。別の実施形態では、機能的に活性なNFYA5ポリペプチドが、植物または植物細胞で発現されるとき、欠損した(欠失を含む)内因性NFYA5活性をレスキューすることができ、そのレスキューポリペプチドは活性欠損植物種と同じ種に由来するものでも、異なる種に由来するものでもよい。別の実施形態では、全長NFYA5ポリペプチド(すなわち、配列番号2、4、6または8の配列を有する天然のポリペプチドまたはその天然に存在するオルソログ)の機能的に活性な断片は、シグナル伝達活性、結合活性、触媒活性、または細胞局在化もしくは細胞外局在化活性のような、全長NFYA5ポリペプチドと関連した生物学的特性を1つ以上保持する。好ましくは、NFYA5断片は特にC-もしくはN-末端ドメインまたは触媒ドメインのようなNFYA5ドメインを含み、かつNFYA5タンパク質の少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個、さらに好ましくは少なくとも25個、最も好ましくは少なくとも50個連続したアミノ酸を含む。機能性ドメインはPFAMプログラム(Bateman A et al., Nucleic Acids Res (1999) 27:260-262; ウェブサイトpfam.wust1.edu)を用いて確認することができる。全長NFYA5ポリペプチドまたはその断片の機能的に活性な変異体には、アミノ酸の挿入、欠失または置換を含むポリペプチドであって、全長NFYA5ポリペプチドと関連した生物学的特性を1つ以上保持するものが含まれる。ある場合には、NFYA5ポリペプチドの翻訳後プロセッシングを変える変異体が作製される。例えば、天然ポリペプチドと比較して、変異体は変化したタンパク質輸送もしくはタンパク質局在特性、または変化したタンパク質半減期をもつことができる。
本明細書中で用いる「NFYA5ポリヌクレオチド」は、配列番号1に提供した配列に示される配列または配列番号1に提供した配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、ならびにその機能的に活性な断片、誘導体またはオルソログを包含する。本発明のNFYA5ポリヌクレオチドはゲノムDNAもしくはcDNAから誘導されるDNA、またはRNA、またはこれらの組み合わせであってよい。
一実施形態において、NFYA5ポリヌクレオチドは機能的に活性なNFYA5ポリペプチド(例えば、配列番号2、4、6または8を含むポリペプチド、またはその機能性断片)をコードする核酸をコードするか、あるいはその核酸に相補的である。この定義に含まれるものとしては、機能的に活性なNFYA5ポリペプチドをコードする前にスプライシングのようなプロセッシングを必要とする、一次RNA転写産物(すなわち、mRNA前駆体)のテンプレートとして機能するゲノムDNAがある。NFYA5ポリヌクレオチドは他の非コード配列を含むことができ、その非コード配列は転写されてもされなくてもよい。そうした配列としては、当技術分野で知られているような、とりわけ、5'および3'UTR、ポリアデニル化シグナルおよび遺伝子発現を制御する調節配列が挙げられる。ポリペプチドの中には、十分な活性を示すようになるために、タンパク質加水分解による切断、共有結合による修飾などのプロセッシング事象を必要とするものがある。したがって、機能的に活性な核酸は成熟NFYA5ポリペプチド、プロセッシング前のNFYA5ポリペプチド、または中間型をコードすることができる。NFYA5ポリヌクレオチドはまた異種コード配列、例えば、融合ポリペプチドの精製を容易にするために含められるマーカーをコードする配列、または形質転換マーカーを含んでいてよい。
別の実施形態において、機能的に活性なNFYA5ポリヌクレオチドは、例えばアンチセンス抑制、コサプレッション(co-suppression)などを介して、機能喪失NFYA5表現型の生成に用いることが可能である。
一実施形態では、本発明の方法で用いるNFYA5ポリヌクレオチドは、配列番号2、4、6または8に提供されるポリペプチド配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を有するNFYA5ポリペプチドをコードする配列をコードする核酸配列、またはそのコード配列に相補的な核酸配列を含む。
別の実施形態では、本発明のNFYA5ポリペプチドは、配列番号2、4、6または8のNFYA5ポリペプチド配列と少なくとも50%または60%同一であるポリペプチド配列を含み、また、配列番号2、4、6または8のNFYA5ポリペプチド配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を有するものを含む。別の実施形態では、NFYA5ポリペプチドは、配列番号2、4、6または8に提供されるポリペプチドの機能的に活性な断片に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
別の態様において、NFYA5ポリヌクレオチドは、配列番号1、3、5または7として提供されるNFYA5ポリヌクレオチド配列またはそのようなNFYA5配列に相補的な核酸配列とその全長にわたって少なくとも50%〜60%同一である配列を含み、また、配列番号1として提供されるNFYA5配列もしくはその機能的に活性な断片または相補配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を有するものを含む。
本発明はまた、配列番号1、3、5または7の配列からなるポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができ、かつ植物に干ばつ耐性を与えるポリペプチドをコードする核酸分子を包含する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは温度、イオン強度、pH、ならびにハイブリダイゼーションおよび洗浄中のホルムアミドのような変性剤の存在によって制御することができる。日常的に用いられる条件はよく知られている(例えば、Current Protocol in Molecular Biology, Vol. 1, Chap. 2.10, John Wiley & Sons, Publishers (1994); Sambrook et al., 前掲を参照されたい)。ある実施形態では、本発明の核酸分子は配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする能力がある。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下を含む:核酸を含むフィルターを、6×SSC (単一強度シトレート(single strength citrate)) (1×SSCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸Na; pH7.0)、5×デンハルト液、0.05%ピロリン酸ナトリウムおよび100μg/mlニシン精子DNAを含む溶液中65℃で8時間から一晩プレハイブリダイズさせる;6×SSC、1×デンハルト液、100μg/ml酵母tRNAおよび0.05%ピロリン酸ナトリウムを含む溶液中65℃で8〜20時間ハイブリダイズさせる;およびフィルターを、0.2×SSCおよび0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む溶液中65℃で1時間洗浄する。他の実施形態では、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が用いられ、次のステップを含む:核酸を含むフィルターを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris-HCl (pH7.5)、5mM EDTA、0.1%PVP、0.1%フィコール、1%BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中40℃で6時間かけて前処理する;35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris-HCl (pH7.5)、5mM EDTA、0.02%PVP、0.02%フィコール、0.2%BSA、100μg/mlサケ精子DNA、および10%(wt/vol)デキストラン硫酸を含む溶液中40℃で18〜20時間ハイブリダイズさせる;その後2×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中55℃で1時間、2回洗浄する。あるいはまた、低ストリンジェンシー条件を用いることも可能であり、その条件は次のステップを含む:20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%デキストラン硫酸、および20μg/ml変性せん断サケ精子DNAを含む溶液中37℃で8時間から一晩インキュベートする;同じ緩衝液中で18〜20時間ハイブリダイズさせる;およびフィルターを1×SSC中37℃で1時間洗浄する。
本発明の方法ではシロイヌナズナNFYA5のオルソログを用いてもよい。そのオルソログを他の植物種において同定する方法は当技術分野で知られている。通常、異なる種に存在するオルソログは、1つ以上のタンパク質モチーフおよび/または三次元構造の存在のため、同じ機能を保持する。進化の過程で、遺伝子重複事象が種分化に続いて起こる場合、シロイヌナズナのような種に存在する1個の遺伝子が別の種では複数の遺伝子(パラログ)に対応することがある。本明細書中で用いる「オルソログ」という語はパラログを包含する。配列データが特定の植物種で利用可能な場合、オルソログは一般にBLAST解析(通常はタンパク質ベイト(bait)配列を用いる)のような配列ホモロジー解析によって同定される。フォワードBLAST結果からのベストヒット配列がリバースBLASTにおいてオリジナルのクエリー配列を取り出す場合、配列は潜在的なオルソログであるとされる(Huynen M A and Bork P, Proc Natl Acad Sci (1998) 95:5849-5856; Huynen M A et al., Genome Research (2000) 10:1204-1210)。多重配列アライメントのプログラム、例えばCLUSTAL (Thompson J D et al, Nucleic Acids Res (1994) 22:4673-4680)は、オルソロガスなタンパク質の保存領域および/または保存残基を強調するために、また、系統樹を作製するために使用することができる。さまざまな種からの多数の相同配列(例えば、BLAST解析により検索される)を表す系統樹において、一般に、2つの種からのオルソロガス配列は、これら2つの種からの他のすべての配列に対してその系統樹上に最も接近して現われる。また、構造スレッディング(threading)またはタンパク質折りたたみの他の解析(例えば、オーストリア国ザルツブルグ、ProCeryon Biosciences社によるソフトウェアを使用)も潜在的なオルソログを同定することができる。さらに、核酸ハイブリダイゼーション法も、配列データが入手できないときに、オルソロガス遺伝子を見つけ出すために使用することができる。縮重PCRとcDNAまたはゲノムDNAライブラリーのスクリーニングは、関連遺伝子配列を見つけるための一般的な方法であり、当技術分野でよく知られている(例えば、Sambrook, 前掲; Dieffenbach C and Dveksler G (Eds.) PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, 1989を参照されたい)。例えば、興味のある植物種からcDNAライブラリーを作製して、そのライブラリーを部分的に相同な遺伝子プローブにより精査するための方法はSambrook et alに記載される。シロイヌナズナNFYA5コード配列の高度に保存された部分をプローブとして用いることができる。NFYA5オルソログ核酸は高い、中位、または低いストリンジェンシー条件下で配列番号1の核酸とハイブリダイズしうる。推定上のオルソログのセグメントを増幅または単離した後、そのセグメントを標準方法によりクローニングして配列決定し、プローブとして利用することで完全なcDNAまたはゲノムクローンを分離することができる。あるいはまた、ESTプロジェクトを開始して、興味のある植物種に関する配列情報のデータベースを作成することも可能である。別のアプローチでは、オルソログ分離のために、既知のNFYA5ポリペプチドと特異的に結合する抗体が用いられる。ウェスタンブロット解析では、NFYA5オルソログ(すなわち、オルソロガスなタンパク質)が特定の植物種の粗抽出物中に存在することを確認し得る。反応性が観察される場合には、特定の植物種を代表する発現ライブラリーをスクリーニングすることで、候補オルソログをコードする配列を単離できる。発現ライブラリーは、Sambrook, et al., 前掲に記載されるように、ラムダgt11を含め、さまざまな市販のベクター中に構築することが可能である。ひとたび候補オルソログがこれらの手段のいずれかによって同定されたら、候補オルソロガス配列は、NFYA5核酸および/またはポリペプチド配列がすでに同定されているシロイヌナズナや他の植物種からの配列に対するリバースBLASTのためのベイト(「クエリー」)として使用される。
NFYA5ポリヌクレオチドおよびポリペプチドはどのような利用可能な方法を用いて取得してもよい。例えば、DNAライブラリーをスクリーニングすることによって、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いることによって、興味のあるcDNAまたはゲノムDNA配列を単離する技法は、以前に記載されているように、当技術分野で周知である。あるいはまた、ポリヌクレオチドやオリゴヌクレオチドは合成することもできる。部位特異的変異誘発法(Kunkel T A et al., Methods Enzymol. (1991) 204:125-39)などの公知の方法を用いて、クローン化した核酸に希望の変化を導入することもできる。
当業者には理解されるように、特定の宿主内でのコード配列の発現を高めるためにその配列を改変することが有利なことがある。遺伝子コードは64の可能なコドンがあって重複しているが、大方の生物はこうしたコドンのサブセットを優先的に使用する。ある生物種において最も頻繁に利用されるコドンは最適コドンと呼ばれており、また、めったに利用されないものはレアコドンまたは低使用頻度コドンとして分類されている(例えば、Zhang et al. (1991) Gene 105:61-72を参照されたい)。宿主の好適なコドン使用頻度を反映するようにコドンを置き換えることができ、このプロセスを「コドン最適化」または「種コドンバイアスの調整」(controlling for species codon bias)と呼ぶことがある。
特定の原核または真核細胞宿主により好まれるコドンを含む最適化コード配列(Murray et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:477-508も参照されたい)を作製して、例えば、翻訳率を高めることや、非最適化配列から生じる転写産物と比較して、より長い半減期といった望ましい性質を有する組換えRNA転写産物を得ることが可能である。翻訳停止コドンも宿主の優先性を反映するように変えることができる。例えば、酵母S. cerevisiaeおよび哺乳類に好適な停止コドンはそれぞれUAAおよびUGAである。単子葉植物に好適な停止コドンはUGAであるが、昆虫および大腸菌は停止コドンとしてUAAを用いることを優先する(Dalphin et al. (1996) Nucl. Acids Res. 24: 216-218)。植物での発現のためにヌクレオチド配列を最適化する方法は、例えば米国特許第6,015,891号およびそこに引用された文献に記載されている。
植物をアグロバクテリウムベクターで形質転換するための最適な方法は、形質転換しようとする植物の種類によって異なるだろう。アグロバクテリウム介在形質転換の典型的な方法は、無菌の苗および/または小植物(plantlet)に由来する胚軸、茎頂、茎または葉組織の外植片の形質転換を含む。そのような形質転換植物は有性的に繁殖させたり、細胞または組織培養で増やしたりすることができる。アグロバクテリウム形質転換は多くの異なる種類の植物についてすでに記載されており、そうした形質転換法を科学文献に見い出すことができる。
NFYA5の発現(転写と翻訳を含む)は、発現レベル、発現が起こる組織の種類、および/または発現の発生時期に関して制御することができる。NFYA5核酸の発現を制御するために、いくつかの異種調節配列(例えば、プロモーターおよびエンハンサー)が利用可能である。これらには構成的、誘導性および調節性プロモーター、ならびに組織特異的または時間特異的に発現を制御するプロモーターおよびエンハンサーが含まれる。典型的な構成的プロモーターとしては、ラズベリーE4プロモーター(米国特許第5,783,393号および第5,783,394号)、35S CaMV (Jones J D et al, (1992) Transgenic Res 1:285-297)、CsVMVプロモーター(Verdaguer B et al., Plant Mol Biol (1998) 37:1055-1067)およびメロンアクチンプロモーター(公開されたPCT出願WO0056863)が挙げられる。典型的な組織特異的プロモーターとしては、トマトE4およびE8プロモーター(米国特許第5,859,330号)ならびにトマト2AII遺伝子プロモーター(Van Haaren M J J et al., Plant Mol Bio (1993) 21:625-640)が挙げられる。
一実施形態では、NFYA5発現が、干ばつストレスによって発現される遺伝子からの調節配列の制御下にある。他の種に存在する干ばつストレス誘導性遺伝子からのプロモーターも使用できる。例を挙げると以下のものがある:トウモロコシ由来のrab17、ZmFer1およびZmFer2遺伝子(Bush et al, 1997 Plant J 11:1285; Fobis-Loisy, 1995 Eur J Biochem 231:609)、トマト由来のtdi-65遺伝子(Harrak, 2001 Genome 44:368)、タバコのHis1遺伝子(Wei and O'Connell, 1996 Plant Mol Biol 30:255)、ササゲ由来のVupat1遺伝子(Matos, 2001 FEBS Lett 491:188)、ならびにジャガイモ(Solanum tuberosum)由来のCDSP34 (Gillet et al, 1998 Plant J 16:257)。
さらに別の態様では、宿主細胞における内因性NFYA5の発現を抑制することが望ましい場合がある。本発明のこの態様を実施するための代表的な方法として、限定するものではないが、アンチセンス抑制(Smith, et al., Nature (1988) 334:724-726; van der Krol et al., Biotechniques (1988) 6:958-976); コサプレッション(Napoli, et al, Plant Cell (1990) 2:279-289); リボザイム(PCT公開WO 97/1032S); およびセンスとアンチセンスの組み合わせ(Waterhouse, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1998) 95:13959-13964)が挙げられる。宿主細胞における内因性配列の抑制方法は一般的に、抑制される配列の少なくとも一部の転写または転写と翻訳を利用する。そのような配列は内因性配列の非コード領域に相同なものだけでなく、コード領域に相同なものでもよい。アンチセンス抑制は全cDNA配列(Sheehy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85:8805-8809)、5'コード配列の断片を含めた部分cDNA配列(Cannon et al., Plant Molec. Biol. (1990) 15:39-47)、または3'非コード配列(Ch'ng et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1989) 86:10006-10010)を用いることができる。コサプレッション法は全cDNA配列(Napoli et al., 前掲; van der Krol et al., The Plant Cell (1990) 2:291-299)、または部分cDNA配列(Smith et al., Mol. Gen. Genetics (1990) 224:477-481)を用いることができる。
遺伝子と観察された表現型との関連性をさらに解析するために標準的な分子・遺伝子試験法を行うことができる。代表的な方法を以下に記載する。
変異型対野生型系統における時期特異的および組織特異的な遺伝子発現パターンは、例えばin situハイブリダイゼーションにより確認することができる。遺伝子(特に、隣接する調節領域)のメチル化状態の分析を行ってもよい。その他の適当な方法としては、過剰発現、異所性発現、他の植物種における発現、および遺伝子ノックアウト(逆遺伝学、標的ノックアウト、ウイルス誘発性遺伝子サイレンシング[VIGS, Baulcombe D, Arch Virol Suppl (1999) 15:189-201参照])が含まれる。
多くの異なる遺伝子の発現の相違または誘導された発現の変化を同時に測定するために、一般的にはマイクロアレイ解析による、発現プロファイリングを用いることができる。マイクロアレイ解析の方法は当技術分野でよく知られている(Schena M et al., Science (1995) 270:467-470; Baldwin D et al., (1999) Cur Opin Plant Biol. 2(2):96-103; Dangond F, Physiol Genomics (2000) 2:53-58; van Hal N L et al., J Biotechnol (2000) 78:271-280; Richmond T and Somerville S, Curr Opin Plant Biol (2000) 3:108-116)。個別の標識した系統の発現プロファイリングを行ってもよい。こうした解析は興味のある遺伝子の過剰発現の結果として協調的に調節される他の遺伝子を同定することができ、これは未知の遺伝子を特定のパスウェイに位置づけるのに役立つ可能性がある。例えば、以下で行った解析は、非ストレス条件下で干渉性RNA分子がNFY5A活性を抑制することを立証する。かかる分子による抑制を減らすことは、干ばつ耐性を与えること、またはNFY5Aの発現もしくは活性化を最適化することに役立つ可能性がある。
遺伝子産物の解析には、組換えタンパク質の発現、免疫学的局在決定、触媒活性や他の活性の生化学的アッセイ、リン酸化状態の解析、および酵母ツーハイブリッドアッセイによる他のタンパク質との相互作用の解析が含まれる。
パスウェイ解析は、ある遺伝子または遺伝子産物を、希望の表現型に基づいてまたは関連遺伝子との配列相同性により、特定の生化学パスウェイ、代謝パスウェイまたはシグナル伝達パスウェイに配置することを含む。あるいはまた、解析は野生型系統と他の変異型系統との遺伝的交雑(二重変異体の作製)を含み、あるパスウェイ中で遺伝子を順序付けたり、ある変異がパスウェイ中の下流「レポーター」遺伝子の発現に及ぼす影響を調べたりすることができる。
本発明はさらに、向上した干ばつ耐性を与える内因性NFYA5の突然変異を有する植物を同定し、遺伝的に改変されてないこれらの植物の干ばつ耐性子孫を作出する方法を提供する。ゲノムに局所欠損を誘発させて、それをターゲッティングするための「TILLING」(targeting induced local lesions in genomes)と呼ばれる方法では、興味のある植物の種子に、例えばEMS処理を用いて、突然変異を誘発させる。その結果得られた植物を育てて自家受粉させ、その子孫からDNAサンプルを調製する。NFYA5特異的PCRを用いて、変異を起こした植物にNFYA5変異があるか否かを確認する。その後、NFYA5変異のある植物を干ばつ耐性について試験することができる。あるいはまた、植物を干ばつ耐性について試験し、次にNFYA5特異的PCRを用いて、干ばつ耐性の向上した植物が変異型NFYA5遺伝子をもつかどうかを調べる。TILLING法は、特定遺伝子の発現またはこれらの遺伝子によりコードされたタンパク質の活性を変えられる変異を同定することが可能である(Colbert et al (2001) Plant Physiol 126:480-484; McCallum et al (2000) Nature Biotechnology 18:455-457を参照されたい)。
別の方法として、候補遺伝子/量的形質遺伝子座(Quantitative Trait Locus: QTL)アプローチをマーカー支援育種プログラムで用いて、干ばつ耐性を向上させうるNFYA5遺伝子の対立遺伝子もしくは突然変異またはNFYA5のオルソログを同定することができる(Foolad et al., Theor Appl Genet. (2002) 104(6-7):945-958; Rothan et al., Theor Appl Genet (2002) 105(1):145-159); Dekkers and Hospital, Nat Rev Genet. (2002) January; 3(1):22-32を参照されたい)。したがって、本発明のさらなる態様では、NFYA5核酸は、干ばつ耐性植物が内因性NFYA5に突然変異をもつか否かを確かめるために用いられる。
実施例
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)変異体であるrdr2-1、dcl2-1、dcl3-1、およびdcl4-1はオレゴン州立大学の遺伝子研究・バイオテクノロジーセンター(Center for Gene Research and Biotechnology)から入手した。dcl1-7とhen1-1はXuemei Chenによって提供された。rdr6とsde4/nrpd1aはイギリスSainsbury LaboratoryのJohn Innes植物科学研究センターから快く提供された。sgs3はフランス国べルサイユ、国立農業研究所(Institut National de la Recherche Agronomique)、細胞生物学研究所(Laboratoire de Biologie Cellulaire)から親切にも提供された。hyl1はペンシルバニア州立大学のHuckライフサイエンス研究所(Huck Institute of Life Science)から提供された。これらの変異体は、本文および図面に示したColumbia (Col-0)、Landsberg erecta (Ler)、Nosssen-0 (No)、またはC24の遺伝的背景にあった。NFYA5のT-DNA挿入変異体(SALK_042760)はABRCから入手した。シロイヌナズナ植物は連続光(70μmol m-2 s-1)をあてて23±1℃で栽培した。ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物は16h/8h明暗光周期において23±1℃で栽培した。脱水処理のため、2週齢の苗を寒天培地から抜き取り、実験台上のWhatman 3MM濾紙の上において表示した期間にわたり乾燥させた。干ばつ処理については、十分な水を含んだ土壌で植物を3週間育て、その後一定期間にわたり水を与えなかった。
部位特異的変異誘発をQuickChange II Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene社)により行って、スモールRNAに相補的な領域で変異したNFYA5を作製した。この断片の配列を決定して、希望する変異のみが導入されたことを確認した。3'-UTRを含むおよび含まないNFYA5を、示したプライマーにより増幅した(3'-UTRあり/なしフォワード5'-CAC CAT GCA AGT CTT TCA AAG GAA AG-3' (配列番号9)、3'-UTRありリバース5'-GTA ATG CAA TTG TAC TCT CGA G-3' (配列番号10)および3'-UTRなしリバース5'-TCA AGT CCC TGA CAT GAG AGC TGA GG-3' (配列番号11))。At1g54150の全長cDNAは次のプライマーを用いて増幅した:フォワード5'-CAC CAT GTC CTC GCC GGA GCG TGC TCT C-3' (配列番号12)、リバース5'-TAG TTC GAT CTC ACC GAG CTC CA-3' (配列番号13)。これらの構築物を植物発現GATEWAYデスティネーションベクターpMDC32にクローニングした。
pMDC32:miR169構築物を作製するため、フォールドバック(fold-back)構造を含むmiRNA配列を取り囲む200bp断片をゲノムDNAから次のプライマーにより増幅した:miR169aフォワード5'-CAC CTG GGT ATA GCT AGT GAA ACG CG-3' (配列番号14)およびリバース5'-CCT TAG CTT GAG TTC TTG CGA-3' (配列番号15)、miR169bフォワード5'-CAC CCC CAA CGG AGT AGA ATT G-3' (配列番号16)およびリバース5'-CTC ATA CGG TCG ATG TAA TCC GT-3' (配列番号17)、miR169cフォワード5'-CAC CTC GTC CAT TAT GAG TAT T-3' (配列番号18)およびリバース5'-CTA ATA TGA TAT GAA TAT GGA TGA-3' (配列番号19)、miR169hフォワード5'-CAC CTC ATA TAA GAG AAA ATG GTG-3' (配列番号20)およびリバース5'-CCA AAA AAG AGA AAT GTG AAT GAG-3' (配列番号21)。増幅した断片をpENTRTM/D-TOPOベクター(Invitrogen社)に導入して、LR反応(Invitrogen社)によりpMDC32にクローニングした。
NFYA5プロモーター::GUS構築物のため、開始コドンから上流の1.7kb断片をフォワードプライマー5'-CAC CTG TAT GAC ATA TTC TGT GTG GAG-3' (配列番号22)およびリバースプライマー5'-TGC AAA TTG GGT ATT GGC TAT G-3' (配列番号23)により増幅し、Gateway組み換えに従ってpMDC164ベクターにクローニングした。
NFYA5のC末端へのYFPの融合体を作製し、Gateway組み換えによりpEarleyGate 101ベクターに導入した。YFP像をLeica SP2共焦点顕微鏡で収集した。
野生型、変異型およびトランスジェニック植物からTrizol試薬(Invitrogen社)により全RNAを抽出した。スモールRNAの富化のため、高分子量RNAを1容の20%PEG-1M NaClの添加により選択的に沈降させた(Llave et al., 2002)。高分子量RNAを1.2%ホルムアルデヒド-MOPSアガロースで分離し、低分子量RNAを17%変性ポリアクリルアミドゲルで分画した。記載されたように(Borsani et al., 2005)、ブロットをプロービングして洗浄した。
リアルタイムRT-PCRのため、第一鎖cDNAをSuperScriptTM III First-Strand Synthesis Supermix (Invitrogen社)を用いて合成した。miR169の前駆体に特異的なプライマーを用いてmiR169の発現レベルを検出した(表1参照)。さらに、NFYA5の転写レベルを検出するためにプライマーをデザインした。リアルタイムRT-PCRはiQTM SYBR Green Supermix (Bio-Rad社)を用いてiQ5リアルタイムPCR検出システムで実施した。各実験を3回繰り返した。比較Ct法を適用した。
Figure 2011519562
3'-UTRを含むおよび含まない部位特異的変異導入構築物でアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)3301株を形質転換した。一晩培養物を採取し、1:1の比でさまざまに組み合わせて混合した。10mM MgCl2、10mM MES (pH5.6)および150μMアセトシリンゴン(acetosyringone)中室温で1時間インキュベートした後、アグロバクテリウム懸濁液を3週齢ベンサミアナタバコ葉に共浸透させた。浸透2日後に葉を採取し、スモールRNA抽出とブロッティングを上記のように行った。
同様の発生段階にある3週齢の土壌栽培植物からロゼット葉を採取した。葉を直ちに液体窒素に入れて凍結させ、環境制御型走査電子顕微鏡(HITACHI, TM 1000)で孔辺細胞を観察した。統計的解析のために気孔開口部の幅と長さを測定した。
水分損失の測定のため、通常の条件下で3週間栽培した変異型および野生型植物のそれぞれから6枚の葉を切り取り、指定した時間間隔で生重量を測定した。各系統につき4回の反復実験を行った。水分損失は各時点での最初の生重量に対するパーセントとして表した。
アントシアニン含有量はRabino and Mancinelli (1986)およびSukar et al. (2006)に記載されるように測定した。メタノール:HClの99:1(v/v)混合物を用いて4℃で色素を抽出し、各サンプルのOD530およびOD657を測定した。530での吸収へのChlとその産物の寄与分を補正するため、OD530−0.25×OD657を使用した。
GUS染色の組織化学的局在決定は、トランスジェニック植物を1mg/mL 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロン酸、0.1M Na2HPO4緩衝液(pH7.0)、0.5mM K3(Fe[CN]6)、および10mM EDTA中37℃で一晩インキュベートし、続いて70%エタノールで洗浄することにより行った。
GUS活性はJefferson (1987)の手順に従ってアッセイした。100mgの凍結組織を100μlの抽出緩衝液(50mM NaPO4, pH7.0、1mM Na2EDTA、0.1%(v/v) Triton X-100、0.1%(w/v)ラウリルサルコシンナトリウムおよび10mMジチオトレイトール)中でホモジナイズし、13,000rpm、4℃で10分遠心した。蛍光アッセイは、1mM 4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド(Sigma社)を追加した0.5-mL体積の抽出緩衝液中で2時間インキュベートし、その後0.2M Na2CO3により停止させた。タンパク質アッセイキットを備えたBio-Radプロトコールに従ってタンパク質濃度を測定した。GUS活性をピコモル(MU)/分/ミリグラム(タンパク質)として算出した。
Affymetrix GeneChipアレイ解析のため、野生型苗と35S::NFYA5苗をMSプレート上で16h/8hの明暗サイクルにて22℃で15日間生育させた。RNeasy Plant Mini Kit (Qiagen社)を用いて全RNAを抽出し、ビオチン標識した相補RNA標的の調製のために用いた。マイクロアレイ解析はBreitling et al (2004)に記載されるとおりに行った。バイオコンダクター(Bioconductor)パッケージのRankProd (Gentleman et al., 2004, Hong et al., 2006)を用いて、上方および下方制御された遺伝子のリストを作成した。共通の新規シス調節エレメントを予測するため、AlignACEプログラム(Hughes et al., 2000)を利用した。このプログラムを上方または下方制御された遺伝子の1kb上流プロモーター配列に適用した。いくつかの候補共通エレメントの中から、上方制御された遺伝子のプロモーター内に見い出された弱いCCAAT共通モチーフを含む1つのエレメントが選択された。
NFYA5が最初に検討された。なぜならば、NFYA5は3'-UTR領域においてアンチセンス鎖上の別の遺伝子(At1g54150)と重なり合って、天然シス-アンチセンス転写産物(natural cis-antisense transcript: NAT)遺伝子対を形成すると注釈されるからである。NFYA5の転写産物は脱水処理に応答して急速に蓄積し、脱水処理開始後3時間で約30倍のピーク誘導を示した(図1A)。脱水処理をさらに長時間続けた場合には、NFYA5のmRNAレベルが低下したものの、対照のmRNAレベルよりもまだ高かった(図1A)。NFYA5の転写産物は干ばつストレスにさらされた土壌栽培植物においても高度に誘導された(図1B)。
ABA蓄積は、干ばつストレスにより誘発される、いくつかの遺伝子発現の上方制御にとって必要である(Shinozaki and Yamaguchi-Shinozaki, 1996; Zhu, 2002)。それゆえ、ABA処理に対するNFYA5の応答を検討した。NFYA5発現は、100μM ABAの適用後24時間までに約13倍上昇した。ABAが干ばつにより誘導されるNFYA5発現の増加と関連することを証明するため、ABA欠損(aba2-1)変異体およびABA非感受性(abi1-1)変異体を作製した。Col-0およびLerの両野生型では、NFYA5の発現が水やりを10日間控えたことによって強く誘導された。しかし、aba2-1およびabi1-1では、干ばつにより誘導されるNFYA5 mRNAの蓄積が実質的に減少した(図1B)。この結果は、AtNFYA5発現がABAシグナル伝達に少なくとも部分的に依存することを示唆する。
リアルタイムPCRとRNAブロットアッセイはいずれも、脱水および干ばつストレスまたはABAに応答したNFYA5 RNA蓄積の明らかな誘導を示したが、こうしたアッセイは、その増加が増大したプロモーター活性によるのか、または変化したRNA安定性によるのか、の問題に対処できない。この問題に取り組むため、NFYA5の開始コドンから上流の1.7kb断片を用いてプロモーター::GUS融合体を構築した。いくつかのトランスジェニック系統におけるGUS染色パターンの解析は、GUS染色が脱水ストレスまたはABA処理に応答して増加したことを示した(図2A)。したがって、これらの処理はNFYA5プロモーターの転写活性を高めたのである。しかし、定量分析からは、脱水処理に応答してGUS活性が5倍ほどしか増加しなかったことが示された。これは、定量PCR解析で見られたNFYA5 mRNAレベルの30倍上方制御よりもはるかに少なかった(図1A)。かくして、転写誘導に加えて、NFYA5の転写後制御もまた関与している。
プロモーター::GUSトランスジェニック系統を用いてNFYA5の発現パターンも調べた。NFYA5発現は葉組織において高く、葉の維管束系での顕著な発現と、重要なことには、孔辺細胞での高レベル発現が見られた(図2B、パネルIおよびII)。GUS染色は花の組織と根の維管束系でも観察された(図2B、パネルIIIおよびIV)。さまざまな組織におけるNFYA5 mRNAレベルの定量PCR解析は、GUS染色の組織パターンと一致し、また、葉と根の組織で発現が最も高く、花と茎の組織でもかなりの発現が起こっていることを示した(図2C)。
シロイヌナズナでは、NF-Y複合体のAサブユニットは10のメンバーからなる遺伝子ファミリーによってコードされる。このタンパク質の他の領域は変化するが、NF-YAは2つの機能性サブドメイン、すなわち小さなリンカーによって連結されたNF-YB/NF-YC結合サブドメインとDNA結合サブドメイン、からなる高度に保存されたコア領域を含む(Romier et al., 2003; Wenkel et al., 2006)。Psort IIプログラムは、70%の確実性でNFYA5タンパク質の核局在を予測した。NFYA5タンパク質の細胞内局在を確かめるため、黄色蛍光タンパク質(YFP)とNFYA5のC末端との翻訳融合体を用いてシロイヌナズナを形質転換した。NFYA5-YFP融合タンパク質を発現する細胞は、YFPシグナルが核にのみ出現したことを示した(図2D)。
脱水下での高レベルのNFYA5 mRNA蓄積は、単にAtNFYA5のプロモーター活性のみによっては説明することができず、転写後レベルで作動する別の制御機構の存在を強く示唆した。1つの可能性はスモールRNAによる制御である。この可能性の検討を開始するために、Arabidopsis MPSS Plus Database (world wide web at mpss.udel.edu/at/)を検索して、At1g54150の3'末端と一致しかつAtNFYA5の3'UTRに相補的な2つのスモールRNAシグネチャー(17nt)を同定した。Arabidopsis MPSS Plus Database中のスモールRNAシグネチャーは、ASRP small RNA database (world wide web at asrp.cgrb.oregonstate.edu)中のASRP1815 (19nt)の一部と同一であった。かくして、ASRP1815に相補的なオリゴヌクレオチドプローブをデザインした(図3A)。
このオリゴヌクレオチドプローブを用いて、通常の栽培条件下で育てた植物において21ntスモールRNAを検出した。水を10日間与えなかった植物では、ASRP1815スモールRNAのレベルが、ストレスをかけなかった植物におけるレベルの約28%に低下した(図3B)。この同じ処理において、NFYA5の発現は干ばつストレスに応答して14倍上昇した。このことは、干ばつ下でのASRP1815の発現低下がNFYA5 mRNAのスモールRNAによる分解を低下させるという可能性と一致する。さらに、ABA誘導性NFYA5 mRNA蓄積とも一致して、ABA処理はASRP1815のレベルを対照レベルの約16%に抑制した(図3B)。Col-0およびLerの両野生型では、ASRP 1815の発現が干ばつストレスによって強く抑制されたが、aba2-1およびabi1-1変異型でのASRP 1815発現は干ばつによって実質的に影響を受けなかった(図3B)。したがって、ASRP 1815の干ばつストレス抑制はABAシグナル伝達に依存していた。
NFYA5とAt1g54150がNAT遺伝子対を形成するという事実は、それらがNFYA5を制御するnat-siRNAを生成しうるという可能性を提起した。nat-siRNAの生合成(biogenesis)にはDCL2またはDCL1、RDR6、SGS3およびNRPD1aが必要である(Borsani et al., 2005; Katiyar-Agarwal et al., 2006)。ASRP1815がnat-siRNAであるかどうか確かめるため、その生合成を、特定のタイプのスモールRNAの生合成に必要なことが知られた各種タンパク質を欠損する変異体において検討した。ASRP1815はdcl3、rdr2、dcl4、dcl2、rdr6、sgs3またはnrpd1aにおいてまだ産生された(図3C)。このことから、それが以前に記載されたタイプの異質染色質siRNA、tasiRNAまたはnat-siRNAでないことが示唆された。それどころか、hen1、dcl1-7およびhyl1にはASRP1815が存在しなかった(図3C)。これらの成分の要求性はASRP1815がおそらくmicroRNAであることを示唆する。NFYA5発現の破壊はASRP1815蓄積にほとんど影響を及ぼさなかったが、これはASRP1815がnat-siRNAでないという概念と一致する。
次に、ASRP1815スモールRNAが存在しない変異体においてNFYA5 mRNAのレベルを調べた。NFYA5 mRNAのレベルは野生型よりもhen1、dcl1-7およびhyl1において高かった(図3D)。この結果から、ASRP1815は実際にNFYA5発現を下方制御することが示唆された。
HEN1、DCL1およびHYL1の要求性は、miRNAがASRP1815プローブにより検出されることを示唆した。こうして、スモールRNAデータベース中でASRP1815に相同な配列について検索を行ったところ、ASRP1815がmiR169 (21nt)ファミリーの配列に相同であることが判明した。シロイヌナズナにおけるmiR169ファミリーは14のメンバーを含んでおり、また、このmiRNAファミリーはイネ(Oryza sativa)およびブラックコットンウッド(Populus trichocarpa)において保存されている(Bonnet et al., 2004; Jones-Rhoades and Bartel, 2004; Sunkar and Zhu, 2004; Sunkar et al., 2005)。産生されたmiRNAの配列に基づいて、MIR169a/b/c//h/i/j/k/l/m/nファミリーは3つのサブグループに分けることができる。MIR169aは第1のサブグループを表し、MIR169bとMIR169cは第2のグループを形成し、そして第3のグループはMIR169h/i/j/k/l/m/nから構成される。これらのサブグループ間の主な相違は3'末端の配列であり、すなわち、MIR169aの最後の2個のヌクレオチドはGとAであるのに対して、MIR169b/cおよびMIR169h/i/j/k/l/m/nのそれらは、それぞれGGおよびUGである。また、MIR169h/i/j/k/l/m/nの5'末端はUAであり、他の2つのサブグループのCAと異なる。
それらの配列類似性のため、MIR169ファミリーのメンバーはクロスハイブリダイゼーションのせいでスモールRNAブロットでは識別することができない。どのMIR169遺伝子座がNFYA5を制御しうるのかを決定するため、miR169遺伝子座特異的プライマーを用いてリアルタイムRT-PCRを行い、どのmiR169遺伝子座の発現が干ばつストレスによって制御されるのかを調べた。水やりを10日間控えておいた土壌栽培シロイヌナズナ植物からRNAを抽出した。MIR169aとMIR169cだけが干ばつストレスに応答して転写産物量の大きな変化を示した(図4A)。MIR169aとMIR169cの両方は、干ばつによる成熟miRNAの下方制御と一致して、干ばつストレスによって下方制御された。MIR169aとMIR169cがはたしてAtNFYA5 mRNAを下方制御できるのかを調べるために、さらなる実験を行った。
多くの場合、miRNAファミリーのメンバーはほとんどが重複した機能をもつと推測されてきた。しかし、Sieber et al. (2007)は近年、同じ遺伝子を標的とすると予想された密接に関連するmiRNAsが実際には発生段階に異なる機能をもつ、という証拠を提示した。MIR169aまたはMIR169cがNFYA5発現を制御する上で特定の役割を担っているのかを試験するため、一過性共発現アッセイをベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)で行った。miR169の標的部位はNFYA5の3'UTRにあるので、3つのNFYA5構築物を試験した:3'UTRを含む全長NFYA5、3'UTRを含まない構築物、および3'UTRとmiR169の間に4つのミスマッチを導入するように3'UTRで変異させたもう1つの構築物(図4B)。NFYA5/miR169aまたはNFYA5/miR169c構築物の両方を35Sプロモーターの制御下で発現させた。ベンサミアナタバコでの2日間の共発現の後で、RNAを抽出してNFYA5発現を定量RT-PCRにより解析した。機能性miR169標的部位を欠く構築物、NFYA5cdsおよびNFYA5mut、からのmRNAレベルは、miR169との共発現によって影響されなかった(図4C)。しかし、NFYA5 mRNAのレベルは、MIR169aと共発現させたとき著しく(対照レベルの37%)低下した(図4C)。興味深いことに、miR169cとの共発現はNFYA5転写産物のレベルの13%低下をもたらしたにすぎなかった。これらの結果は、NFYA5 mRNAの分解が主にMIR169aによって指令されることを示唆した。同じサンプルから調製されたスモールRNAブロットを、MIR169に相補的なオリゴヌクレオチドでプロービングしたところ、21ntスモールRNAは共発現サンプルのすべてにおいて高度に発現されることがはっきりと示された。したがって、強力なmiR169cによるAtNFYA5切断が起こらなかったことはmiR169c発現の欠如によるものではなかった。
これらの結果を確かめるため、MIR169aおよびMIR169cの前駆体をシロイヌナズナにおいて過剰発現させ、同様のmiR169発現レベルを示す系統を選択して、miR169aおよびcの過剰発現がNFYA5に及ぼす影響を定量化した(図4D)。一過性共発現アッセイの結果に一致して、miR169aの過剰発現はmiR169cの過剰発現よりもNFYA5 mRNAレベルの大幅な低下を引き起こした(図4E)。miR169ファミリーの他の2つのメンバー、miR169bおよびh、も選択して、それらをシロイヌナズナで過剰発現させた。NFYA5の相対的mRNAレベルは、miRNAの過剰発現にもかかわらず、実質的に変化しなかった(図9)。これらの結果は、この場合も、AtNFYA5発現の制御にとって重要な主要miRNA遺伝子座としてのMIR169aを示唆する。
干ばつ応答性遺伝子制御およびABAシグナル伝達は干ばつ抵抗性に不可欠である(Pei et al., 1998; Zhu, 2002)。干ばつとABAにより誘導されるNFYA5の発現ならびに孔辺細胞でのその強い発現は、干ばつ抵抗性におけるその潜在的役割の解明へと我々を駆り立てた。まず初めに、miR169aを過剰発現する植物(35S::MIR169a、系統#15)(NFYA5 mRNAのレベルが野生型の33%ほどであった)を試験した(図4D)。野生型植物と35S::MIR169a-15植物を土壌で3週間栽培し、その後8日間水やりを控えた。35S::MIR169a-15植物は葉がまるまって紫色になってきたが、野生型植物はまだしっかりしていて、その葉は緑色のままだった(図5A)。この結果は、35S::MIR169a-15植物が野生型よりも速く土壌の水分を使い果たしてしまい、それゆえに急速にしおれてしまったことを示唆した。この可能性を検証するために、土壌で栽培した35S::MIR169a-15およびWT植物から採取した葉を分析してそれらの気孔開口を測定した。35S::MIR169a-15葉の気孔開口指数は0.25であり、これはWTの指数より20%ほど高かった(図5B)。これらの結果に一致して、35S::MIR169a-15植物の切り取った葉は、野生型のそれよりも急速に水分を絶えず失っており(図5C)、35S::MIR169a-15植物が水やりを控えた後に急速にしおれだしたのは、少なくとも一部には、これらの植物が気孔を効率よく閉じて蒸散を減らすことができなかったことに原因があると考えられる。ABAは気孔開口および蒸散の調節物質であるので、この表現型はNFYA5のABA誘導発現と一致し、NFYA5が孔辺細胞でのABAシグナル伝達に重要であることを示唆する。ストレス感受性の別の指標はフラボノイド系の紫色色素であるアントシアニンの葉への蓄積である。水やりを8日間控えた後の35S::MIR169a-15植物におけるアントシアニンレベルは19.41μg/gFWであって、野生型のそれの約3倍であった。この場合にも、35S::MIR169a-15が干ばつストレスにより感受性であることが示唆される。これらの結果は、干ばつ抵抗性のためにNFYA5の十分な発現が必要であることを示している。
NFYA5の機能をさらに検証するために、公表されているT-DNAコレクションを検索して、シロイヌナズナ生物資源センター(Arabidopsis Biological Resource Center)からT-DNA挿入変異体(ColumbiaバックグラウンドでのSALK_042760)を得た。T-DNA挿入についてホモ接合性の植物をPCRで同定し、T-DNA隣接領域の配列決定によりその挿入部位がNFYA5のプロモーター領域にあることを確認した(図6A)。RNAブロット解析から、NFYA5転写産物はnfya5と呼ばれるT-DNA系統には存在しないことが示された(図6A)。35S::MIR169a-15植物の表現型に一致して、nfya5ノックアウト変異型植物もまた干ばつストレスに高感受性であった(図6B)。nfya5葉の気孔開口指数は0.27であり、これは野生型葉のそれより42%高かった(図6C)。これらの結果に一致して、nfya5の切り取った葉は野生型の切り取った葉よりも急速に水分を失った(図6D)。水やりを8日間控えた後のnfya5葉のアントシアニンレベルは野生型のそれの4倍であり、nfya5植物が干ばつストレスに対しより感受性であることが再度示唆される。これらの結果はNFYA5が干ばつ抵抗性の要因であることを示している。
干ばつ抵抗性におけるNFYA-5の機能をさらに解析するため、前記遺伝子を構成的CaMV 35Sプロモーターの制御下で過剰発現するトランスジェニック・シロイヌナズナ植物を作製した。高レベルのNFYA5発現に基づいて、3つのトランスジェニック系統(#2、3および5)をさらなる解析のために選別した(図7A)。NFYA5過剰発現の影響を評価するため、3週齢の土壌栽培野生型および35S::NFYA5植物の水やりを14日間控えた。水を控えてから14日目に、野生型植物のほとんどが脱水状態に見えたのに、35S::NFYA5植物は野生型より脱水が少ないように見えた(図7B)。nfya5と対照的に、35S::NFYA5-3の気孔開口は野生型のそれより小さかった(図7C)。35S::AtNFYA5-3の切り取った葉は野生型よりゆっくりと水を失い(図7D)、水やりを14日間控えた後での35S::NFYA5-3のアントシアニンレベルはかなり低かった(図7E)。これらの結果は、NFYA5の過剰発現が植物の干ばつ抵抗性を改善することを示している。
NFYA5の核局在およびDNA結合ドメインは、このタンパク質が干ばつ抵抗性にとって重要な他の遺伝子の発現を制御するときに作用することを示唆する。この可能性を検討するため、Affymemetrix Arabidopsis ATH1 Genechipsを用いることによってマイクロアレイ実験を行った。合計28個の遺伝子が非ストレス条件下で野生型苗と比較して35S::NFYA5において2倍以上の発現変化を示したが、そのうち17個の遺伝子と11個の遺伝子の発現がトランスジェニック植物においてそれぞれ増加または減少した(表2)。これらの遺伝子の大部分は非生物的ストレス応答と関連した機能が知られているかまたは推定されており、それらのいくつかは酸化的ストレスに関与しているようである(例えば、シトクロムb6-f複合体のサブユニット、GST、ペルオキシダーゼおよびオキシドレダクターゼファミリータンパク質)。NFYA5異所性発現により影響されたこれらの遺伝子のうち、大部分がそれらのプロモーター領域にCCAATモチーフを含む(表2)が、このことは、この短い配列モチーフが一般的な遺伝子プロモーターにかなりの割合で見い出されるので予期されたことである。AlignACEプログラム(Hughes et al., 2000)を用いて、NFYA5過剰発現植物において発現の増加を示した遺伝子(表2)の一部のプロモーター中に「CCAATモチーフ」を含む共通シス調節エレメントTX(C/A)TTXGX(C/A)CAXT (配列番号60)が同定された。これらの遺伝子はNFYA5の直接的な標的であると考えられる。
Figure 2011519562
Figure 2011519562
マイクロアレイの結果はリアルタイムRT-PCRにより確認された。マイクロアレイのデータに一致して、リアルタイムRT-PCRアッセイは、At4g15210 (細胞質β-アミラーゼ)、At2g37870 (プロテアーゼ阻害剤)、At1g17170 (グルタチオントランスフェラーゼ)、At2g42530 (低温応答性タンパク質)およびAt2g42540 (COR15A)が通常の条件下で35S:NFYA5植物においてより高いレベルで発現されたことを示し(図10)、これは35S:NFYA5におけるストレス応答性遺伝子の構成的発現を示唆する。脱水条件下で、これらの遺伝子は野生型と35S:NFYA5で強く誘導されたが、これらの遺伝子の大部分についての脱水誘導蓄積はnfya5では大幅に減少した。このことは、これらの遺伝子の多くの最適な脱水ストレス誘導がNFYA5を必要とすることを示唆する。
上記実施例は単に説明に役立つものであって、本発明を限定するものではない。

Claims (23)

  1. 異種プロモーターに機能的に連結されたNFY5Aポリヌクレオチド、そのホモログまたはオルソログを含んでなる、単離されたポリヌクレオチド。
  2. 前記NFY5Aが配列番号1、3、5または7からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の同一性を有する、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  3. 前記NFY5Aが配列番号1、3、5または7を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  4. 前記NFY5Aポリヌクレオチドが配列番号2、4、6または8を含むポリペプチドをコードする、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  5. 前記NFY5Aポリヌクレオチドが、配列番号2、4、6または8に対して少なくとも80%の同一性を有しかつ植物細胞において気孔開口を改変するポリペプチドをコードする、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  6. 異種プロモーターが構成的プロモーターを含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  7. 異種プロモーターが誘導性プロモーターを含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  8. 発現ベクター中に含まれる、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  9. 構成的プロモーターがカリフラワーモザイクウイルス35Sまたは19Sプロモーター、植物ACT2プロモーターおよび植物ユビキチンプロモーターからなる群より選択される、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
  10. 構成的プロモーターがシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のActin2プロモーターである、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
  11. 誘導性プロモーターが光誘導性プロモーターを含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
  12. 光誘導性プロモーターがダイズ(Glycine max)のSRS1プロモーターである、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドで形質転換された植物細胞。
  14. 請求項1に記載のポリヌクレオチドを野生型植物よりも高いレベルで発現し、改善された干ばつ耐性を有するトランスジェニック植物。
  15. NFY5A遺伝子、そのホモログまたはオルソログの3'UTRを欠失しており、野生型植物と比較して改善された干ばつ耐性を有するトランスジェニック植物。
  16. miR169aまたはcポリヌクレオチドの発現低下を有し、野生型植物と比較して改善された干ばつ耐性を有するトランスジェニック植物。
  17. 前記miR169が配列番号61と少なくとも98%または99%同一である、請求項16に記載のトランスジェニック植物。
  18. miR169aまたはcポリヌクレオチドのノックアウトを含み、野生型植物と比較して改善された干ばつ耐性を有するトランスジェニック植物。
  19. 請求項14〜18のいずれか1項に記載のトランスジェニック植物から得られる植物部分または細胞。
  20. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを用いて、干ばつ抵抗性の植物を作出する方法であって、該ポリヌクレオチドを植物細胞または植物組織に導入し、該ポリヌクレオチド分子の存在について選択してトランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物組織を作製し、そのトランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物組織から植物を再生し、それにより干ばつ抵抗性の植物を作出することを含んでなる、上記方法。
  21. 植物において干ばつ抵抗性を改変するのに有用な作用物質を同定する方法であって、
    NFY5A遺伝子を含む植物を作用物質と接触させること、
    該遺伝子の発現の変化または細胞に存在するmRNA転写産物の量を測定すること、
    を含んでなり、ここで、対照と比較して発現または転写産物レベルが変化していることが干ばつ抵抗性を改善する作用物質の指標となる、上記方法。
  22. 植物において干ばつ耐性を改変するのに有用な作用物質を同定する方法であって、
    レポーター遺伝子に機能的に連結されたTX(C/A)TTXGX(C/A)CAXT (配列番号60)の配列を含む植物に作用物質を接触させること、
    レポーター遺伝子の発現の変化を測定すること、
    を含んでなり、ここで、対照と比較してレポーター遺伝子の発現が変化していることが干ばつ耐性を改変する作用物質の指標となる、上記方法。
  23. 植物において干ばつ耐性を高める方法であって、植物に、(1) NFY5A遺伝子、そのホモログまたはオルソログ、および/または(2)表2に示した遺伝子、の発現を増大させる作用物質を接触させることを含んでなる、上記方法。
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