JP2011515713A - 光変換用の結晶 - Google Patents

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Abstract

波長変換のための効率的な広帯域結晶。前記結晶は、擬似位相整合非線型結晶であり、周期的分極反転構造を有し、それぞれの周期が同調されている。前記同調は、前記同調が強い負の不整合である第1端から前記同調が強い正の不整合である第2端へ前記結晶の長さに沿って断熱的に変化し、逆もまた同じである。結晶は周波数範囲にわたって効率的な波長変換を与えることができる。
【選択図】図4A−B

Description

本発明は、その一部の実施形態では、光変換に使用するための光周波数変換器に関し、さらに詳しくは効率的な広帯域光変換に関するが、それに限定されない。
同調可能な周波数の光放射の発生は典型的に、結晶における非線形周波数変換に依存する。このプロセスでは、2つの周波数または2色の光が非線形結晶に導入され、その結果、それらの和または差周波数を持つ第3の色が発生する。周波数アップコンバージョンまたは周波数ダウンコンバージョンとしても知られるこれらのプロセスは典型的に入射周波数に非常に敏感であるので、効率的な周波数変換をサポートするために角度、温度、または他の同調メカニズムが必要である。広い周波数範囲の同時位相整合は難しいので、広帯域周波数光信号を効率的に変換しようとするときに、この問題は特に重要である。
現在、最も効率的な周波数変換デバイスは単一非線形結晶に依存し、それは効率を高めるために温度または角度同調される。この結果、典型的に、効率的に変換されるのは狭いスペクトル帯域だけになる。非線形結晶を周期的に変化させる擬似位相整合(QPM)は効率の改善をもたらすが、依然として所定の狭い帯域内である。セグメント化された周期的構造[1]または非周期的擬似位相整合[2]は、帯域幅応答を改善することが示されてきたが、代償として効率はかなり低下した。Fejerおよび共同研究者は、超短パルスによって発生する第2高調波発生(SHG)信号のチャープ同調のために非周期的QPM構造を使用した。彼らは、そのような構造を使用することにより、SHG信号が増強されるだけでなく、プロセスにおける時間チャープ利得を制御することもできることを実証した[3]。Baudrier‐Raybautおよび共同研究者によって使用された最近の構造は全く無秩序な材料(ランダム擬似位相整合)であり、それは極めて緩い周波数選択性を導き、広範囲の周波数の反転を引き起こしたが、これもまた効率が非常に低かった[4]。こうして広帯域周波数変換は達成されたが、効率は非常に低かった。我々の知る限り今日まで、広帯域周波数変換器は非効率的であることが立証されており、効率的な変換器は狭帯域である。広帯域および効率的な変換の組合せは現在のところ知られていない。
追加の背景技術は以下のものが挙げられる。
[1]K.Mizuuchi,K.Yamamoto,M.Kato,and H.Sato Broadening of the Phase−Matching Bandwidth in Quasi−Phased−Matched Second Harmonic Generation, IEEE Journal of Quantum Electronics 30(7),15961604(1994).
[2]M.M.Fejer,G.A.Magel,D.H.Jundt,and R.L.Byer,Quasi−Phase−Matched Second Harmonic Generation:Tuning and Tolerances,IEEE Journal of Quantum Electronics 28(11),2631−2654(1992);M.L.Bortz,M.Fujimura,and M.M.Fejer,Increased acceptance bandwidth for quasi−phasematched second harmonic generation in LiNbO3 waveguides,Electronics Letters 30(1),34−35(1994).
[3]M.A.Arbore,A.Galvanauskas,D.Harter,M.H.Chou,and M.M.Fejer,Engineerable compression of ultrashort pulses by use of second−harmonic generation in chirped−period−poled lithium niobate,Optics Letters 22(17),13411343(1997).
[4]M.Baudrier−Raybaut,R.Haidar,Ph.Kupecek,Ph.Lemasson,and E.Rosencher,Random quasi phase matching in bulk polycrystalline isotropic nonlinear materials,Nature 432(7015),374−376(2004).
[5]R.W.Boyd,Nonlinear Optics(Academic Press,2005)pages 79−83.
[6]A.Messiah,Quantum Mechanics Vol.II(Wiley,1963)pages 739−759.
本発明の実施形態は、効率的な広帯域周波数変換を提供することを意図している。以下で説明するように、強力なポンプレーザ強度を使用し、結晶は断熱構造を有する。
断熱構造を提供する1つの方法は、結晶に沿って同調特性を徐々に変化させることにより、QPM結晶構造を変化させるものである。その結果、後で示す通り、広い周波数範囲にわたる効率的な周波数変換がもたらされる。QPMのみならず、結晶に沿った位相不整合パラメータの断熱変化を達成する任意の他の技術も包含する。
本発明の1態様では、第1端と第2端との間の長手方向寸法を有し、かつ複数の同調周期を含む周期的分極反転構造を有する、波長変換用の結晶であって、それぞれの周期の同調が前記第1端から前記第2端へ前記長手方向寸法に沿って断熱的に変化する結晶を提供する。
結晶は擬似位相整合結晶を含んでもよい。
結晶は、非消耗ポンプ近似の適用を可能にするのに充分な強度のレーザ・ポンプ・ビームに使用するように構成することができる。
1実施形態では、前記同調は、前記第1端における変換用の入射光周波数に対しては強い負の不整合であり、前記第2端における前記周波数に対しては強い正の不整合である。
1実施形態では、前記同調は、前記第1端における入射光周波数に対しては強い正の不整合であり、前記第2端における前記周波数に対しては強い負の不整合である。
1実施形態では、前記断熱変化は前記寸法に沿って連続的に増加する。
1実施形態では、各周期は、関心のある光の波長の大きさ程度の範囲内の周期長を有する。
結晶は、前記波長の実質的に7桁の大きさの前記長手方向寸法に沿った長さを有してもよい。
結晶は、第1同調を持つ周期群に続いて、各々がそれぞれの先行する周期群と比較して前記同調がわずかに変化した後続周期群を入射光に提供するように構成することができる。代替的に、各周期はその先行周期からわずかにずらすことができる。典型的に、代替的な選択肢は製造公差およびそれが製造することのできる最小可能な増分に依存する。
1実施形態では、前記同調はそれぞれの周期の長さとして提供される。
本発明の第2態様では、
非線形結晶であって、前記結晶の長さにわたって断熱的に同調した周期を有する擬似位相整合した非線形結晶と、
周波数範囲内の入力周波数の光源光を受光するためのコヒーレントな光源入力と、
所定のポンプ周波数のレーザ光を受光するためのポンプレーザ入力と、
前記入力周波数と前記ポンプ周波数の関数である出力周波数で光を出力するための出力と、
を備えた、効率的な広帯域波長変換のための装置を提供する。
1実施形態では、前記関数は和関数を含む。
1実施形態では、前記関数は差関数を含む。
1実施形態では、前記ポンプレーザ入力は、非消耗ポンプ近似を正当化するのに充分な実質的高さの強度でレーザ光を提供する。
ポンプレーザは比較的狭い周波数範囲の光を提供することができる。
本発明の第3態様では、波長変換用の結晶を製造する方法であって、
逆向きの分極領域の層の発達により前記結晶を成長させるステップと、
発達中に前記層の厚さを徐々に変化させ、それによって擬似整合非線形結晶を形成させるステップと、
を含む、波長変換用の結晶を製造する方法を提供する。
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は、周波数シフトのための従来の和周波発生(SFG)プロセス用に設計された結晶を示す簡易概略図である。
図2は、本発明の第1の好適な実施形態に係る断熱構造を持つ結晶を示す簡易概略図である。
図3は、結晶内の伝搬方向に沿って零に近い効果的な位相整合を引き起こすように設計された周期的分極反転結晶を図式的に示す簡易図である。
図4Aは、和周波発生プロセスのために使用される非周期的分極反転結晶の概略図である。図4Bは、差周波発生プロセスに使用される非周期的分極反転結晶の概略図である。
図5は、周期的および非周期的分極反転結晶の場合の結晶の長さに沿った位相差を示す簡易グラフである。
図6Aは、ある結晶長の場合の周期的事例および断熱非周期的な事例の入力周波数の範囲全体にわたる周波数変換プロセスの効率を示す簡易グラフである。図6Bは、別の結晶長の場合の周期的事例および断熱非周期的な事例の入力周波数の範囲全体にわたる周波数変換プロセスの効率を示す簡易グラフである。
図7Aは、ある結晶長の場合の周期的事例および断熱非周期的な事例の入力角度の範囲全体にわたる周波数変換プロセスの効率を示す簡易グラフである。図7Bは、別の結晶長の場合の周期的事例および断熱非周期的な事例の入力角度の範囲全体にわたる周波数変換プロセスの効率を示す簡易グラフである。
図8Aは、ある結晶長の場合の周期的事例および断熱非周期的な事例のポンプ強度の範囲全体にわたる周波数変換プロセスの効率を示す簡易グラフである。図8Bは、別の結晶長の場合の周期的事例および断熱非周期的な事例のポンプ強度の範囲全体にわたる周波数変換プロセスの効率を示す簡易グラフである。
図9は、同一の断熱非周期的結晶における2つの異なるポンプ周波数の使用を示す簡易グラフである。
図10Aは、信号からアイドラへの全エネルギー移動―本発明の実施形態に係るSFGまたはアップコンバージョンの事例における結晶を示す簡易概略図である。図10Bは、図10Aの事例においてブロッホ球上にマッピングされた力学を示す簡易概略図である。図10Cは、図10Aの事例において変換効率を出すためにz軸上への力学のマッピングを示す簡易概略図である。
図11Aは、断熱事例のシグナルからアイドラへの全エネルギー移動において、位相不整合パラメータに対する連続的断熱変化を示す簡易概略図である。図11Bは、図11Aの事例におけるブロッホ球上への射影を示す簡易概略図である。図11Cは、図11Aの事例におけるz軸上への射影を示す簡易概略図である。
図12は、シミュレーションおよび実験の両方の結果から得た、入力波長の関数としての変換効率を示すグラフである。
図13Aは、レーザ強度が440MW/cmの場合の信号からアイドラへのすなわちアップコンバージョンの軌道を持つブロッホ球の概略図である。図13Bは、レーザ強度が80MW/cmの場合の信号からアイドラへのすなわちアップコンバージョンの軌道を持つブロッホ球の概略図である。図13Cは、レーザ強度が4MW/cmの場合の信号からアイドラへのすなわちアップコンバージョンの軌道を持つブロッホ球の概略図である。図13Dは、変換効率を出すためにz軸上への3つそれぞれの軌道の射影を示すグラフである。図13Eは、位相不整合パラメータの連続的断熱変換を使用して、この場合伝搬方向に沿ってポーリング周期性をゆっくり変化させて、結果を達成することのできる結晶を示す。
図14Aは、本発明の好適な1実施形態に係る、ゆっくり変化するポーリング周期性を持つ結晶を含む断熱和周波数変換装置の簡易ブロック図である。図14Bは、図14Aの装置を用いてポンプ強度を増大したときの変換後のビームの成長と入射ビームの減少との間の関係を示すグラフである。
図15Aは、図14Aの装置を使用した場合の入力波長および結晶長の関数としての変換効率を示す。図15Bは、結晶長が17mmおよび20mmの場合の結晶長のスペクトル応答の実験結果を示す。
図16Aは、断熱性で周期的に分極反転するKTP結晶設計を60MW/cmのポンプ強度で使用したときの結晶温度の関数としての変換効率を示しており、温度および入力波長を2軸上にプロットし、変換効率を符号化するために色を使用している。図16Bは、図16aの実験セットアップの変換効率であるが、今回は波長が一定であり、実験とシミュレーションとの間の対応を示す。
図17Aは、温度が50℃と110℃との間で切り換えられたときに変換効率のピークが著しく変化する、本発明の実施形態に係る温度同調性の実験結果を示す。図17Bは、ポンプ波長を変化させることによる同調性を示し、この場合1047nm、1064nm、および1159nmの効率曲線が著しくずれることが分かる。
本発明は、その一部の実施形態では、光変換用の結晶に関し、さらに詳しくは効率的な広帯域光変換に関するが、それに限定されない。
効率的な広帯域周波数変換は、強力なポンプ強度および断熱結晶構造の使用によって達成される。
該結晶構造は、周波数を増加または減少させるために、高い負の不整合から高い正の不整合まで一連の位相不整合を範囲内に含むように変更することのできる周期を有するので、擬似位相整合は断熱変化を達成するための効率的な結晶構造である。結晶構造を高い正の不整合から高い負の不整合に変化させることにより、所望のアップコンバージョン/ダウンコンバージョンを達成することができる。
既述の通り、本発明の実施形態は、結晶に沿って同調特性を徐々に変化させることを通して、QPM結晶構造を変化させる。後で示す通り、結果的に広い周波数範囲にわたって効率的な周波数変換がもたらされる。
本発明の実施形態は、結晶に沿って同調特性を徐々に変化させることにより、QPM結晶構造を変化させる。後で示す通り、結果的に広い周波数範囲にわたって効率的な周波数変換がもたらされる。
以下で、効率および広帯域の両方を達成する技術を提供する。記載するデバイスは、下述する位相整合値の断熱変化の方法に基づいて、効率的な超広帯域波長変換を得ることができる。デバイスは、強力な狭帯域ポンプが結晶に導入されると共に、変換されるより弱いパルスのレジームで機能する。上記は、非消耗ポンプ近似として知られる近似を用いて処理することができる。この断熱構造は、下で提供する設計条件に従って、超広域の効率的かつ頑健な周波数変換を導くことができる。該構造は、ポンプに全く影響することなく、プローブ信号からアイドラコンポーネントへの、またはその逆の、エネルギーの完全なまたは効率的なポピュレーション移動を達成することができる。周波数変換を実行するそのような方法は、その周期が結晶の長さに沿って強い負の位相不整合から強い正の位相不整合まで断熱的に同調される、擬似位相整合した非線形結晶によって実現される。位相不整合もまた、強い正から強い負までの範囲を含むことができる。どちらの構造も周波数を増加させるのに、および、または周波数を低下させるのに適している。そのようなデバイスは、その帯域幅全体が断熱性条件を満たしかつポンプが強くかつ狭い限り、アップコンバージョンを介するかあるいはダウンコンバージョンを介して、より弱いパルスを効率的に伝達する能力を有する。このデバイスの1つの可能な実現は、CPPLNとしても知られる断熱チャープ周期的分極反転構造とすることができる。このやり方で、変換プロセスは可視‐NIR領域で1オクターブを超える帯域幅にわたって90%の効率(アイドラ/信号パワー)に達することができる。それゆえに、デバイスは広帯域信号のみならず超短パルスの効率的な周波数変換にも利用することができる。
現在の技術と比較して該デバイスの実施形態の別の利点は、結晶温度、ポンプ強度、および入射ビームの入射角度のようなアラインメントのずれに対して相対的に鈍感なことである。
ポンプ周波数に対する相対的鈍感さのため、以下でより詳細に説明するように、様々な変換を達成するために、ポンプ周波数を意図的に変化させることが可能である。特に、図17aおよび17bに関連する以下の実験データは、ポンプ周波数および温度を同調してどのように使用することができるかを示す。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
非消耗ポンプ近似におけるSFG
ここで図1を参照すると、従来の和周波発生(SFG)プロセス用に設計された結晶10が示されている。2つの周波数の光が非線形結晶10に導入され、その結果、それらの和の周波数を持つ第3の色が発生する。図は非消耗ポンプ近似における和周波発生を示す。非消耗ポンプ近似は、入射場の1つが他方の入射場よりはるかに強い場合である。ωの振幅(太矢印)は振幅ω、ωの振幅よりはるかに大きい。出力ビームはω、ω、およびSFG信号ωである。このプロセスで、ω(破線)の弱い入力ビームも考慮することができる。
この強い周波数はポンプ周波数と呼ばれ、以下ではポンプをωとして選択する。振幅は、結晶内で伝搬方向に沿って一定に維持される。すなわち、
次の数量を定義することによって[5]、
式中、ωおよびωはそれぞれ信号およびアイドラの周波数であり、kおよびkはそれらの関連波数であり、cは真空中の光の速度であり、Aはポンプの振幅であり、χ(2)は結晶の2次感受性である。
式中、Δkは位相不整合値であり、zは光軸に沿った結晶内の位置である。完全な位相整合の場合、κ・z=πによって決定される長さで全エネルギー移動を達成することができる一方、結晶に沿ってずっと一定の位相不整合の場合、プロセスは常に非効率的である。
断熱反転
2つの入射周波数のアップコンバージョンにおける全エネルギー移動の達成は通常頑健ではない。むしろそのようなアップコンバージョンは、幾つかの重要な要素、すなわち完全な位相整合、特定のポンプ強度、および特定の結晶長を同時に満たす必要がある。これら所定のパラメータからのずれは効率の急速な低下を導く。効率の低下は主に入射周波数およびポンプ強度におけるパラメータの依存性による。
以下では、A(z)からA(z)への、すなわち伝搬方向に沿った信号およびアイドラの振幅からの全エネルギー移動を達成するために、メカニズムをNMRおよび原子‐光子相互作用の研究分野から借用する。
ここで図2を参照すると、本発明の第1実施形態に係る、非消耗ポンプ近似によるSFGプロセスにおける断熱反転スキームが示されている。結晶に沿って完全な位相整合を必要とした従来とは対照的に、ここでは位相不整合の連続的断熱変化がもたらされる。結晶20は長さ寸法Zを有し、結晶のZ寸法に沿った同調条件は、極めて高い負から極めて高い正に変化する。換言すると、結晶20は、長手方向寸法を有しかつ複数の同調周期を含む周期的分極反転構造を有する、擬似位相整合した非線形結晶である。それぞれの周期の同調は、結晶の長手方向寸法に沿って断熱的に、すなわち徐々に変化する。断熱を構成するものは、下の方程式7によって決定することができる。加えて、強い、すなわち高い強度のポンプの使用が要求される。要求される強度レベルは方程式1〜7によって定義され、非消耗ポンプ近似が適用されるレベルである。
本明細書において、用語「断熱」または「断熱的に」とは、その意味を量子物理学から受け継いでおり、結晶構造が徐々に変化する条件を光ビームに呈し、システムがその機能的形態を変化することを可能にする量子力学システムを光ビームによりセットアップする結晶の能力を指す。換言すると、断熱変化は充分に緩徐な変化であるので、光学システムの固有状態は維持される。これは先行技術とは対照的であり、先行技術の結晶は急速に変化する条件を提供するので、システムがその元の状態を維持するように(量子力学システムの)状態の機能的形態が適応するだけの時間が無かった。換言すると、本発明の発明者らが発見したものは、条件の緩徐な変化が、量子動力学的状態を安定に維持し、かつ変化する条件に応答することを可能にすることである。対照的に急速な変化は無視される。
位相不整合Δk(z)は、赤方離調場が2準位システムと相互作用する方法と類似する仕方で大きい負の値から、またはその逆に、青方離調場と類似するように大きい正の値に、断熱的に変化することがある。
断熱プロセスの概念をここでさらに詳細に検討する。波動プロセスを断熱的とみなすために、次の条件が満たされ得る。
最初の2つの条件は、位相不整合パラメータのマグニチュード値を取り扱い、それは結合係数の値と比較して非常に大きくすることができ、位相不整合の大きい負(または正)の値により相互作用を開始し、かつ大きい正(または負)の値により終了しなければならない。第3の条件は最も急激であり、それは伝搬中の位相不整合変化速度を取り扱う。この条件を満たすために、非線形プロセスの内部伝搬長と比較して、構造は断熱的に(非常にゆっくり)変化することができる。別の観察は、同じデバイスをアップコンバージョンおよびダウンコンバージョン(DFG)プロセスの両方に使用することができ、ダウンコンバージョンの場合、A(z)からA(z)への全エネルギー移動が生じ得る。この構想については、下述する図4(b)で視覚的に実証する。
QPMを使用する断熱構造の実現
擬似位相整合は、ポンプ周波数から信号およびアイドラ周波数へのエネルギーの移動を可能にする非線形光学の技術である。それは、関係する全ての光周波数が相互に共線的であり、全ての光周波数が同一偏光を有することができ、それが結晶の最大非線形係数d33へのアクセスを可能にするなど、他の位相整合技術に勝る幾つかの利点をもたらす。
擬似位相整合結晶を形成するために最も一般的に使用される技術は、周期的分極反転である。多くの位相感応非線形プロセス、特に周波数2倍化、和および差周波発生、パラメトリック増幅、ならびに4波混合のようなパラメトリックプロセスは、位相整合が効率的であることを要する。位相整合とは、(最適な非線形周波数変換のために)相互作用する波間の適切な位相関係が伝搬方向に沿って維持されることを意味する。この技術は伝搬軸に沿って零に近い位相不整合を達成するだけでなく、位相不整合パラメータのほとんどどんな所望の機能でも達成する。要求されることは、第一に、プロセスの位相整合を計算することであり、SFGの場合、それは次の通りであり、
次いで、第二に、効果的な位相不整合機能が達成されるように適切なΔkΛ(z)を設計することだけである。
擬似位相整合技術によって達成された位相不整合の値は次の通りである。
ここで図3を参照すると、結晶内の伝搬方向に沿って零に近い効果的位相整合を生じるように設計された周期的分極反転結晶が概略的に示されている。すなわちΔkeff=Δkeff−2π/Λ(z)=0となる。Λの値は、特定のωおよびωに対して位相整合するための条件を満たすように選択される。差周波数は効率の低下を導くことがある。
ここで図5を参照すると、周期的分極反転機能の2つの例が実証されている。周期的分極反転構造を導く定数関数50は、伝搬長全体に沿って完全位相整合を達成するように設計される。対照的に、線形関数52は伝搬長に沿って位相不整合の変分を生じる。換言すると、図5には、伝搬軸に沿った効果的な位相不整合値が実証されている。周期的分極反転構造を導く定数関数50は伝搬長全体に沿って完全位相整合を達成するように設計される一方、線形関数52は伝搬長に沿って位相不整合の変分を生じる。位相不整合の逆変分でも同じ効果が生じることが注目される。
図4Aおよび4Bは、減少するΛを持つ非周期的分極反転結晶(LiNbOまたはKTP)を示す。該結晶はその同調が徐々に変化し、それに対し用語「チャープ」を使用することができる。このチャープ結晶は(a)に示す効率的な広帯域SFG、すなわち和法、または(b)に示す効率的な広帯域DFG、すなわち差を生じ、より低い周波数で終了する方法のいずれかを実行するために使用することができる。
シミュレーション
断熱構造の利点を実証するために、数組のシミュレーションを実施した。従来の周期的分極反転(完全位相整合)構造をここで本実施形態の断熱設計と比較する。以下は、λ=1.064μmの狭く強いポンプ、およびλ=1.5μmないしλ=1.6μmの広い全信号範囲によるプロセスのシミュレーションである。周期的分極反転構造は、θ=0度でλ=1.55μmの信号波長に対し完全位相整合を達成するように設計される。断熱構造は方程式5の全ての制約条件を満たすように設計され、図5はΔKの傾きを示す。結晶が一定周期で周期的に分極反転する場合、ΔKは平坦になる(グラフ52)。ΔKが非周期的である場合には、傾きが存在する。変化が断熱的である場合(断熱的線形変化)には、グラフ50が得られる。構造が変動するが、それが断熱的ではない場合には、ΔKはグラフ54のようになる。比較は次のパラメータに集中する。
・信号波長の比較
・入射角度の比較
・ポンプ強度の比較
・ポンプ周波数の比較
結晶の長さはL=20mmとなるように選択した。各比較において、結晶の長さが5%の変化量であるL=19mmに短縮される場合、最終結果も点検される。またポンプ強度は、I=110MW/cmとなるように選択した。全てのシミュレーションは、χ(2)=16pm/VのKTP非線形結晶で実施した。
信号波長パラメータ
図6(a)は、下部のグラフの周期的分極反転構造と上部のグラフの断熱構造との間の比較を示す。周期的分極反転構造は2nmの狭いレジームのみで効率的である(90%を超す効率は波長λ=1.549μmとλ=1.551μmとの間で発生する)一方、断熱構造の効率は100nm超にわたって90%超であることが分かる。さらに詳しくは、効率が約140nmの範囲にわたって、λ=1.48μmからλ=1.62μmの間であることが示される。
異なる長さ(20mmの代わりに19mm)の同じ構造の頑健さを検査したときに、周期的分極反転構造の効率がほぼ零に降下する一方、断熱構造では効率が前と変わらないことが、図6(b)で分かる。
換言すると、周期的分極反転構造では、90%超の効率が2nmの帯域幅に対してだけ達成されるが、断熱構造では140nmを超える範囲にわたって効率的な広帯域変換器が達成される。この広帯域の効率は、たとえ結晶の長さが(b)に示すように変動しても降下しない。
角度パラメータ
ここで図7(a)を参照すると、周期的分極反転構造70と断熱構造72との間の比較が示されている。周期的分極反転構造は±5°の狭い入射角度のみで効率的(90%超の効率)であるが、断熱構造の効率は±25°超にわたって90%を超えることが分かる。
ここで図7bを参照すると、異なる長さ(20mmの代わりに19mm)の同じ構造の頑健さを検査したときに、周期的分極反転構造の効率がほぼ零に降下する一方、断熱構造では前と変わらないことが分かる。
換言すると、図7aおよび7bは、(a)20mm、(b)19mmの結晶長の場合の入射角度に対する周期的分極反転構造70と断熱構造72との間の比較を示す。90%超の効率は周期的分極反転構造では±5゜の帯域幅だけで達成される一方、断熱構造では±25°に対して効率的な広帯域変換器が達成される。この広帯域の効率は、たとえ結晶の長さが(b)に示すように変化しても、降下しない。
ポンプ強度パラメータ
ここで図8(a)を参照すると、様々なポンプ強度に対する(a)20mm、(b)19mmの結晶長の場合の周期的分極反転構造80と断熱構造82との間の比較が示されている。周期的分極反転構造では、90%超の効率は(I=110MW/cmのような)特定の値のポンプ強度のみに対して達成される一方、断熱構造では、特定の閾値を超えるいかなるポンプ周波数に対しても効率的な広帯域変換が達成される。
異なる長さ(20mmの代わりに19mm)の同じ構造の頑健さを検査したときに、周期的分極反転構造の効率がほぼ零に降下する一方、断熱構造では前と変わらないことが、図8(b)により分かる。
すなわち、図8は、様々なポンプ強度に対する(a)20mm、(b)19mmの結晶長の場合の周期的分極反転構造82と断熱構造80との間の比較を示す。90%超の効率は、周期的分極反転構造では(I=110MW/cmのような)特定の値のポンプ強度に対してのみ達成される一方、断熱構造では、特定の閾値を超えるいかなるポンプ周波数に対しても効率的な広帯域変換器が達成される。この広帯域の効率は、たとえ結晶の長さが(b)に示すように変化しても、降下しない。
ポンプ周波数パラメータ
以下で、ポンプの周波数を変化させることによって、その広帯域特性を維持しながら、広帯域応答がシフトすることを実証する。ここで図9を参照すると、アイドラ効率応答が、2つの異なるポンプ周波数で信号周波数と比較されている。λ=1.064μmの第1ポンプ周波数の場合の特性が90で示され、λ=1.047μmの第2特性が92で示される。応答効率は維持されるが、より高い信号およびアイドラ波長の方に25nmシフトすることがはっきりと分かる。
換言すると、図9は、90で示す元の周波数λ=1.064μmおよび92で示す第2周波数λ=1.047μmの2つの異なるポンプ周波数におけるアイドラ効率応答対信号周波数を示す。応答効率は維持されるが、より高い信号およびアイドラ波長の方に25nmシフトすることがはっきりと分かる。
KTPデバイスを使用する理論および実験
以下は、本発明のさらなる実施形態の背後にある理論および実践を示す。このさらなる実施形態は、公知の光学ブロッホ方程式と類似して、非消耗ポンプ近似における和周波発生のプロセスの幾何学的表現を提供する。我々はこの類似性を利用して、断熱反転スキームを使用する和周波変換で、高効率および広帯域幅の両方を達成するための技術を提案する。プロセスはNMRにおける高速断熱通過に類似しており、断熱制約条件はこの文脈で導出される。この断熱周波数変換スキームは、非周期的分極反転チタンリン酸カリウム_KTP_デバイスを使用して実験的に実現され、そこで我々は140nmの帯域幅にわたって高効率信号対アイドラ変換を達成した。
以下の節で、方程式は再び1から番号付けが行なわれる。
同調可能な光放射の発生は典型的には、結晶における非線形周波数変換に依存する。上述の通り、2つの周波数の光は非線形結晶内で混合され、その結果和または差周波数の第3の色が発生する。周波数アップコンバージョンまたはダウンコンバージョンとしても知られるこれらの3波混合プロセスは典型的には、位相整合の要件のため、入射周波数に非常に敏感である。したがって、効率的な周波数変換をサポートするために角度、温度、または他の同調メカニズムが必要である。広い周波数範囲の同時位相整合を達成することは難しいので、これは特に広帯域光信号の効率的な変換に影響を及ぼす。
非線形プロセスで3波混合プロセスを支配する一般的形式の波動方程式を解くことは簡単な作業ではない。ポンプと呼ばれる1つの入射波が他の2つよりはるかに強いと想定して、3つの非線形結合方程式を簡素化することができる。この「非消耗ポンプ」近似は、3つの非線形方程式ではなく、2つの線形結合方程式をもたらす。上述した和周波発生(SFG)プロセスの場合、この簡易システムはSU(2)対称性を有し、その動力学的挙動を他の2つの状態系と共有する。すなわち核磁気共鳴(NMR)およびコヒーレント光の2準位原子との相互作用である。本実施形態の文脈で、我々はこの類似性を、特にBlochおよびFeynmanらによって提示された手法を使用して幾何学的視覚化を探求する。単純なベクトル形式の結合方程式は周波数変換の問題に物理的洞察力をもたらすことができ、空間的に変動する結合および位相不整合の効果をより洞察的に理解することを可能にする。この手法の有用性は、本明細書で上述した考慮事項に基づく断熱結晶を使用して、高速断熱通過RAPとして知られるメカニズムに基づく広帯域波長変換のための頑健で高効率の方法を導入することによって実証される。
実証は、擬似位相整合(QPM)設計の断熱変動非周期的分極反転チタンリン酸カリウム(APPKTP)結晶を使用して実験的に実現される。非周期的分極反転構造は上述の通りであり、周波数変換の帯域幅応答を改善し得るが、これは先行技術においては著しく低下する効率を代償としていた。広い帯域幅応答は、超短パルスの周波数変換に有用である。チャープQPM格子は、第2高調波発生(SHG)、差周波発生(DFG)、およびパラメトリック増幅の両方で短パルスを操作するのに利用されてきた。最近、ランダムQPMの結晶が極めて広い帯域幅を呈することが示されるようになったが、変換効率の激しい低下を代償とする。標準的周波数変換プロセスでは、高い変換効率に達するために結晶パラメータおよびポンプ強度は正確に制御されるが、我々は本実施形態により、断熱周波数変換を利用することによって、広い波長および温度範囲にわたって依然としてほぼ100%の変換効率に達することができることを示す。本実施形態について以下に提示する実験結果で、140nmを超える極めて広い帯域幅を維持しながら、ほぼ完全な変換を実証する。
最初に、SFGの幾何学的表現について考慮しよう。非消耗ポンプ近似では、ポンプ振幅は非線形結晶に沿って一定であると想定され、以下の正規化結合方程式を構成することができる。
これらの結合波動方程式は、量子力学2準位システムの動力学を記述する方程式と同じ形式を有する。それらの動力学はΔK(z)およびκによって決定され、限られた場合にのみ解析的に解くことができる。1つのそのような可解例は、位相不整合が一定の場合である。この場合、信号からアイドラへの全エネルギー移動(SFGまたはアップコンバージョンプロセスと呼ばれるA1からA3への変換)は、伝搬全体に沿って完全位相整合の場合、すなわちΔK(z)=0の場合にのみ、かつκ・z=nπが奇数nで満たされる場合にのみ、達成可能である。他の定位相不整合は非効率的な周波数変換を生じる。
摂動論のような近似解のための方法も利用可能である。弱い結合極限では、動力学はフーリエドメインで完全に解くことができるが、その摂動性のため、低い変換値に制限される。一般的に、SU(2)動力学的対称性を有するこの複素数値動力学では、特に位相不整合パラメータが伝搬に沿って変化する場合、解析的解は知られておらず、それは類似のNMRおよび光‐物質相互作用の2準位問題にも当てはまる。最近の論評で、コヒーレント光の2水準システムとの相互作用の文脈における公知の解析的解が要約されている。解析的に解くことができない場合、幾何学的表現を使用すると便利であり、それにより、プロセスを解くかあるいはシミュレートすることなく、伝搬方向に沿った変換について物理的洞察力が得られる。
このベクトルは、結晶に沿って信号場とアイドラ場との間の関係を表わす。特に、z成分(WSFG)は変換効率に関する情報を与える。
すると2準位システムと周波数変換との間に明らかな類似性が存在する。基底および励起状態のポピュレーションはそれぞれ、信号(A)場およびアイドラ(A)場の大きさに類似する。時間発展はz軸に沿った伝搬に置換され、離調Δは位相不整合Δk値に置換される。この類似性をさらに以下の表1に詳述する。この文脈で、全変換のための完全位相整合解は、原子物理学における共鳴相互作用の場合と同じ動的軌道をブロッホ球面上に有する。この結果、2つのモード間に振動動力学、「ラビ振動」として知られる現象が生じる。光学共鳴における奇数πパルスは、アップコンバージョンプロセスとして知られる、ωからωへのエネルギーの全移動に類似する。
ここで図10を参照すると、非消耗ポンプ近似におけるSFGのブロッホ球の幾何学的表現が示されている。図10(a)は、伝搬に沿って定位相整合値を持つ周期的分極反転擬似位相結晶を示す。図10(b)は、SFGブロッホ球上のSFG動力学の幾何学的視覚化を示す。効率的な変換を生じることのできる完全位相整合(青のトルクベクトルは赤道を指し示す)、および常に非効率的な変換プロセスを生じる非零定位相不整合(赤のトルクベクトルは南半球の点を指し示す)の2つの軌道がプロットされている。図10(c)は、変換効率を生じるz軸上への軌道の射影を示す。これは、ブロッホ球表現で南極から北極へのSFG状態ベクトルの回転として視覚化することができる。位相不整合は離調共鳴相互作用と同様の動力学を導き、それは、図10(c)に示す通り、より高速の振動およびより低い変換効率を呈する。結合方程式の対称性のため、ωを入力周波数として、すなわちω>ωと想定して、プロセスを開始することができることに注目されたい。この場合、A(z=0)=0であり、ωの弱い入力と強いポンプωとの間で差周波発生(DFG)プロセスが発生し、その結果より低い周波数ω=ω−ωの発生が起きる。同等のブロッホ球表現は北極から南極に向けての状態ベクトルの回転である。

表1.非消耗ポンプ近似におけるSFGプロセスとコヒーレント光によって誘発される2準位原子系の動力学との間の類似性。真ん中の欄は2準位システムの光学ブロッホ球実現を記載する(参考文献[2])。右側の欄はSFG球実現の類似パラメータを示す。
この類似性は、元のブロッホ方程式に現れる半現象論的崩壊定数TおよびTを含むように拡張することができる。核共鳴では、これらは縦および横寿命と呼ばれる。スピンの場合、それらは磁界の平行または直交静的成分である磁気スピン成分の崩壊を支配する。本発明の文脈では、これらのパラメータは時間というより特性長スケールである。1/T緩和係数は伝搬に沿った特性吸収長または特性損失長に関係する[α(ω)]。損失は、伝搬方向に沿ったプロセスの全強度の低下を生じ、すなわち|A(z)|+|A(z)|<|A(0)|+|A(0)|となり、ブロッホ球表現では原点方向の状態ベクトルの収縮として視覚化される。脱位相および損失による分極の崩壊に関係する1/T緩和パラメータは、伝搬軸から少しずれた方向を向き、位相不整合パラメータおよびしたがって変換効率に劇的な効果をもたらす、波数ベクトルのランダム分布を記述するために含めることができる。
類似性の主な特徴を曖昧にしないために、かつ標準的結晶におけるそのようなプロセス中の近IRおよび可視レジームの損失の典型値は、1%/cm未満であるという事実のため、我々はこれらのパラメータを現在のモデルに含めないことにする。重要な近結晶共鳴であり得る損失および脱位相の存在下で、したがって損失が無視できなくなるKTPの近UVで、このSFGプロセスの動力学に新しい洞察力を加えることができることが注目される。
上記理由のため、アップコンバージョンプロセスにおける全エネルギー移動の達成は通常頑健ではなく、幾つかの要素を同時に満たすことが要求される。しかし、上記の類似性から我々は、強いチャープ励起パルスが共鳴を介してゆっくりスキャンして頑健な全反転を達成するRAPメカニズムを、周波数変換の分野に採用することができる。したがって、A(z)からA(z)に移動するために、位相不整合パラメータΔk(z)はκと比較して非常に大きくすることができ、結晶に沿って大きい負(正)値から大きい正(負)値に断熱的に変化することができる。断熱性条件は次式を満たさなければならない。
変動速度が充分に遅くない場合、あるいは結合係数が充分に大きくない場合、この不等式は満たされない可能性があり、変換効率は低下する。
この計算で使用すべきGVDパラメータは、より短い方の波長のそれであり、それは典型的にはより大きいパラメータである。我々の設計では、LGVD(λ=620nm)≒2.5cmである。この値はLeff<<LGVDを満たし、したがって無視することができる。我々は、より高次の分散効果も無視することができることを確認した。非周期的分極反転構造を介する波長変換に存在する別の固有の現象は、結晶に沿って伝搬するときに正または負の線形チャープが加わることである。このチャープもまた出力で除去することができる。
断熱APPKTPは、方程式(4)によって課せられる制約条件を満たすように設計した。周期性は、断熱全変換に要求される線形断熱を誘発するために、L=17mmの結晶長に沿って14.6μmから16.2μmまで変動した。keff(z)が変化し得る。全断熱変換には、約500MW/cmであるKTP結晶の損傷閾値よりはるかに低い値の90MW/cmの強度が要求される。設計は、有限差分法を用いて方程式(1)のプロセス伝搬の数値シミュレーションを使用して実行した。我々は、1064nmで強いポンプ(6ns、130μJ)、および1400nmから1700nmまで変動することのできる同調可能な信号(5ns、1μJ)を同時に発生するために、光パラメトリック発振器システム(Ekspla NT342)を使用した。どちらも異常軸で分極反転するポンプおよび信号を空間的に重ね合わせ、それぞれ150μmおよび120μmのウエストで結晶に共線的に集束させた。これらの値は、レイリー範囲が結晶長より大きくなることを保証する。それぞれInGaAs検出器および冷却電荷結合素子(CCD)スペクトロメータによって、入力信号および出力SFG信号を記録した。
我々は最初に、1530nmの固定信号波長でポンプ強度に対する変換効率の依存性を調べた。ポンプの存在する場合と存在しない場合で信号強度を比較することによって変換効率を測定した。これは観察されたSFG強度と完全に相関し、熱的効果が無いことを確認した。結果を図12の挿入図に提示する。図12は、室温で15MW/cmのポンプ強度で断熱APPKTP設計を使用して、変換効率を入力波長の関数として示すグラフである。挿入図は、1530nmの入力波長の変換効率をポンプ強度の関数として示す。最大変換効率は74%±3%であった。
一般的に、数値シミュレーションと良好な対応性が得られる。我々はまた、室温で15MW/cmの定ポンプ強度で信号波長の関数としての変換効率も測定する。140nm幅にわたる波長範囲(1470〜1610nm)の効率的な広帯域変換を図12に示す。これは、製造欠陥に関連付けられ、したがって断熱性条件の違反を生じる1485nm付近の低効率の小領域を除いて、設計の数値シミュレーションとよく一致する(図の青色の点鎖線を参照されたい)。完全位相整合を達成するように設計された標準周期的分極反転構造は、2nmの帯域幅のみにわたって効率的な広帯域変換を導くことに注目されたい。
断熱変換スキームは、結晶のパラメータの変動のみならず光のパラメータの変動にも頑健である。特に、変換効率は入力波長、結晶温度、ポンプ強度、結晶長、および入射角度に鈍感である。
結論として、実施形態は、幾何学的ブロッホ球視覚化を使用して、SFGプロセスにおける複素モード振幅の発展を記述することができることを示す。我々はこの図を使用して、2準位システムの断熱高速通過に類似する高効率波長変換器を設計する。擬似位相整合結晶は1つの可能な実現にすぎず、例えば完全位相整合結晶に温度勾配を誘発することによって、または断熱制約条件を満たす任意の他のメカニズムによって、同じメカニズムを適用することができることが注目される。本スキームは、広帯域信号のみならず超短パルスの効率的な周波数変換にも利用することができる。超短パルスを最初に伸張し、次いでアップコンバートし、最後に出力で再圧縮すると、有効であり得る。この分析は、広帯域蛍光信号のみならず、UVから遠IRまでの広範囲の周波数の超短パルスの効率的なアップコンバージョンにも有望であり得る。特に、大気観測で使用される弱い赤外信号から近赤外または可視範囲への効率的なアップコンバージョンに有用であり得る。より高次の非線形プロセス相互作用とのこの類似性の一般化を行なうこともでき、誘導ラマン断熱通過(STIRAP)のような原子‐光子相互作用またはNMRからの他の公知のスキームも使用することができる。
理論と実験‐同調性の実証
ここで本発明のさらなる実施形態について言及する。理論的デバイスについて再度記述し、次いで記述した断熱和周波数変換方法の頑健さを実験により実証する。本実施形態の技術は、前の実施形態の場合と同様に、原子物理学および核磁気共鳴における頑健なポピュレーション移動の類似スキームから借用し、従来の変換スキームより最大2桁広い帯域幅に対して、和周波発生プロセスでほぼ完全な周波数変換の達成を可能にする。我々は、このスキームが非線形結晶および入射光両方のパラメータの変動に対して頑健であることを示す。これらは結晶温度、入射場の周波数、ポンプ強度、結晶長、および入射角度を含む。また、ポンプ周波数または結晶温度のいずれかを変化させることによって、この極めて広い帯域幅をより高いまたはより低い中心波長に同調させることができることを示す。この変換器の特性の詳細な研究は、2準位システムにおける断熱遷移を取り扱うランダウ‐ツェナー理論を使用する。
1.序論
3波混合プロセスによる非線形周波数変換は、非線形光学の分野における基本概念である。このプロセスで、2色の光が非線形結晶内で混合され、結果的にそれらの和または差周波数を持つ第3の色が発生する。これらのプロセス(それぞれ周波数アップコンバージョンおよびダウンコンバージョンとも呼ばれる)は通常、変換帯域幅と変換効率との間のトレードオフを呈する。
上記において我々は、非消耗ポンプ近似における和周波発生(SFG)プロセスを数学的に定式化し、かつNMRでBlochによって、かつ原子物理学でFeynmanおよび共同研究者によって導入されたように、2準位システムの枠組と全く同様に、幾何学的に視覚化することができることを示した。このレジームにおいて、変換プロセスは2つ1組の線形結合波動方程式によって支配され、その性質は次の2つのパラメータに依存する。
伝搬方向に沿った位相不整合
ポンプ波の特性および非線形結晶の性質の両方の関数である結合係数
幾何学的視覚化は、SFGのプロセスに対する物理的洞察力をもたらす。
本節では、方程式の番号を再び1から始める。
和周波発生の通常のスキームでは、これら2つのパラメータを一定と想定し、したがって伝搬軸に沿ったこれらの波の発展を解析的に解くことができる。SU(2)動力学的対称性を示すこの形式の線形結合波動方程式の解析解は他に少数知られているだけである。しかし、これらの大部分は周波数変換の分野で実現されていない。この組の方程式の2つの近似解は、この文脈で触れる価値がある。最初は摂動近似であり、それは周波数変換の分野では、信号波とアイドラ波との間の弱い結合の場合である。
この近似は「非増幅信号近似」と呼ばれ、低い信号対アイドラ変換効率に対応する。摂動近似により、実空間で、またはフーリエドメインを用いて、プロセスの動力学を完全に解くことができる。
第2の近似は断熱近似である。位相不整合パラメータを伝搬に沿って断熱的に変動させ、頑健に1つの波長から別の波長へのエネルギーのほぼ完全な移動を可能にすることによって、周波数変換の分野で高速断熱通過(RAP)スキームの適用を探求することにより、高効率および広帯域の要求を調整することができることを示した。この変換器の性質の詳細な研究は、2準位システムにおける断熱遷移を取り扱うランダウ‐ツェナー理論を用いて行なわれる。
この変換器の実現は、擬似位相整合結晶における非周期的分極反転によって行なわれる。そのような構造は、主にそれが所望の位相不整合機能を単純な仕方で調整することを可能にするという事実のため、この10年間に幅広く研究された。線形チャープ格子は、第2高調波発生(SHG)、差周波発生(DFG)、および光パラメトリック増幅器(OPA)、ならびに他の非線形プロセスでも広範囲の応答を持つことが示された。ランダム構造およびセグメント化構造も、非線形プロセスにおける帯域幅応答を改善することが示唆されたが、やはり低効率であった。様々な非線形プロセスの動力学がこれらの非周期的構造によって様々に影響されることに注目されたい。SFGプロセスのみにおいて、ブロッホ球上の幾何学的視覚化、およびランダウ‐ツェナー理論に関係して示唆された断熱解が有効である。
本実施形態で、プロセスの効率を制御するパラメータの大部分に対する断熱SFGスキームの頑健さを実証する。これらは結晶温度、入射場の周波数、ポンプ強度、結晶長、および入射角度を含む。これらの制御パラメータの同時整合を必要とする従来の完全な位相整合結晶とは対照的に、このスキームでは、変換効率がこれらのパラメータの1つ以上の変化に対して鈍感である。また、我々は、ポンプ周波数または結晶温度のいずれかを変化させることによって、この超広大域幅変換器をより高いまたはより低い中心波長に同調させることができることを実証する。
2.理論的解析
2.1.和周波発生プロセスの動力学および幾何学的表現
非消耗ポンプ近似では、ポンプ振幅が非線形結晶に沿って一定と想定され、信号およびアイドラに対し次の正規化結合方程式を構築することができる。
ここでωおよびωはそれぞれ信号およびアイドラの周波数であり、kおよびkはそれらの波数であり、νg1およびνg3はそれらの群速度であり、cは真空中の光の速度であり、A、A、Aはそれぞれ信号、ポンプ、およびアイドラの振幅であり、X(2)は結晶の2次感受性である(周波数に依存しないと想定される)。波の時間包絡が結晶の長さよりはるかに長い場合(すなわち単色、準単色レーザビーム、または伸張超短パルスを考慮する場合)、波の群速度の影響を省くことができる。
本実施形態では、準単色レーザビームを取り扱う。超短パルスアップコンバージョンの場合、群速度不整合および群速度分散の悪影響を最小化するために、最初にパルスを伸張させなければならない。典型的には、可視および近赤外における相互作用には1ps超のパルス長で充分である。変換されたパルスは、非線形結晶から出射後に変換限界パルスに再圧縮される。
2.2.ランダウ‐ツェナー理論の断熱性基準および適用
動力学的問題に対する1つの重要な近似は、断熱解である。この場合、伝搬に沿った位相不整合パラメータの掃引速度は、結合項の2乗に対してゆっくり変化する。すなわち、
また、効率的な広帯域プロセスが発生するために、位相不整合パラメータΔk(z)をκと比較して非常に大きくする必要があり、かつ大きい負値から大きい正値まで断熱的に変化する必要がある。すなわち、|Δk|>>κ;Δk(z=0)<0;Δk(z=L)>0。これらの断熱制約条件は、RAPメカニズムにおけるそれらの類似の動力学的相対物に従うことによって導出され、強いチャープ励起パルスは共鳴を介してゆっくりスキャンして、頑健な完全反転を達成する。変動速度が充分に遅くない場合、または結合係数が充分に大きくない場合、この不等式は満たされないことになり、変換効率は低下する。明らかに、結晶長が有限であるいかなる実践的な実現では、100%の変換効率に対応する断熱条件は、漸近的にしか到達できない。再び、この頑健なメカニズムを達成するために、断熱制約条件を全部を満たさなければならないことに注目されたい。掃引速度が零であるが方程式3の要件が満たされる定位相不整合の場合に(周期的分極反転結晶の場合など)、断熱変換が生じないのはこれが理由である。
位相不整合Δk(z)が結晶に沿って線形的に変化する場合、断熱度の単純なパラメータが現れる。量子文献では、それはランダウ‐ツェナー基準として知られ、それは周波数変換分野では次のように記述される。
数学的にこれは、Δk=0となる位置での方程式3の左辺と右辺との間の比を表わす。断熱伝搬はa<<1のときに得られ、それは変換効率が1に達する場合である。これは、所与のポンプ強度で掃引速度をゆっくり変化させることによって、または所与の掃引速度の場合に強いポンプを適用することによって、達成することができる。
ここで図13を参照すると、3つの異なる強度(a)440MW/cm、(b)80MW/cm、(c)4MW/cmのSFGのブロッホ球軌道が示されている。南極は入力周波数の振幅を表わし、北極は変換された周波数の振幅を表わす。(d)W軸上への軌道の射影は、伝搬に沿った変換効率を生じる。
これらの軌道で、位相整合条件はz=1cmで満たされる。また、周波数変換の分野におけるランダウ‐ツェナー公式である方程式4を使用することによって、各軌道の算出された出力変換効率を追加した。(e)位相不整合パラメータの連続断熱変化が要求される。これは、後で見出し3の下で論じる通り、伝搬方向に沿って分極反転周期性をゆっくり変化させることによって達成することができる。
図13には、線形掃引速度が適用される場合のSFG動力学の3つの事例が示される。a<<1の場合、図13aに示す通り、全周波数変換が達成される。ポンプ強度が充分に高くない場合、または所与の結晶長およびポンプ強度における掃引速度が充分に遅くない場合には、a>>1となり、図13bに示す通り、変換効率は降下する。a>>1の場合、ポンプ強度は小さく、または掃引速度は極めて高い。これは弱い結合レジーム(「非増幅信号近似」)に対応し、図13cに示す通り、それは結果的に低い変換効率を生じる。これらの動力学的軌道は、球のW軸上に射影することができ、図1dに示すように、伝搬に沿った変換効率に関する情報をもたらす。また、それらの算出されたランダウ‐ツェナー変換効率は、各射影軌道の右に提示される。方程式2.2の重要性のため、我々はそれをより実践的なパラメータで提示することに決めた。
ここで、c=3.1010cm/秒であり、λおよびλはcm単位で測定され、IはMW/cm単位で測定され、X(2)はpm/V単位で測定され、|dΔk/dz|はcm−2単位で測定される。
3.実験セットアップおよび結果
ここで図14について言及する。図14(a)には断熱和周波数変換装置が示されている。検出ステージは、InGaAs検出器により入射ωビーム、および冷却CCD検出により変換後のωビームの両方を検出するように設計される。図14(b)には、ポンプ強度が増大するときの変換後のビームの成長(冷却CCDスペクトロメータによって測定される)と入射ビームの減少(InGaAs検出器によって測定される)との間の線形関係が示される。
他の実現が可能であるが、位相不整合パラメータの操作における擬似位相整合技術の単純さおよび頑健さは、実験的実現に関してそれを最も魅力的にしている。位相不整合パラメータの所望の値は、近似関係を使用してドメインの空間構造を同調させることによって得られる。
ここでA(z)は局所的分極反転周期である。
方程式3によって課せられる断熱制約条件を満たす分極反転の周期性の適切な設計により、効果的な位相不整合関数が得られた。
一般的に、非周期的設計の場合、ΔkΛ(z)をべき級数で拡張することが妥当である:
実験で使用した特定の設計は、有限差分法を用いて伝搬プロセスの数値シミュレーションによって試験した。そこで周期性は、L=20mmの結晶長に沿って14.6μmから16.2μmまで変動した。平面波近似および非線形感受性X(2)=32pm/Vを想定した。実験装置は、上述した図14aに示す通りである。光パラメトリック発振器(Ekspla NT342)1400を、1064nm(6ns、130μJ)の強いポンプ‐下部出力、および1400nmから1700nm(5ns、≒1μJ)まで変動するチューナブル信号‐上部出力の両方のレーザ源として使用した。どちらも異常軸で分極反転するポンプおよび信号は、ビーム混合器1402を用いて空間的に重ね合わされ、レンズ1404を用いて断熱結晶1406内に共線的に集束される。結晶はそれぞれ150μmおよび120μmのウエストを有する。これらの値は、レイリー範囲が結晶長より大きくなり、したがって我々のシミュレーションの平面波近似が有効であることを保証する。入力波長(信号)および出力SFG波長(アイドラ)の両方を結晶中のそれらの伝搬後に捕集し、それぞれInGaAsフォトダイオード1408および冷却CCDスペクトロメータ1410を用いて記録する。
我々の実証は幾つかの組の実験から構成される。各組で、プロセスの異なるパラメータを変動させる。全ての実験において、ポンプビームの存在する場合と存在しない場合で信号強度を比較することによって変換効率を測定した。これは、変換後のビームAの増大が図14bに示す通り入射ビームAのパワー損失と相関することを検証した後で、行なった。
最初に、固定信号波長1530nmに対しポンプピーク強度の関数として変換効率を測定する。結果を図14bに提示する。最大ポンプ強度で達成した最大効率が74%±3%であった数値シミュレーションとの非常に良好な対応性が得られた。ポンプ強度が増加すると変換効率が1から0の間で振動する位相整合結晶の場合とは異なり、360MW/cmを超えるポンプ強度に対しても、変換効率は1付近に維持されることが注目される。
第2組の実験では、60MW/cmの中程度のポンプ強度で入力波長の関数として変換効率を測定する。1485nm付近の波長における断熱性条件の違反を導く局所的製造欠陥に関連付けられる前の実験の場合と同じこの波長付近の低効率の小さい領域を除いて、室温で幅140nmを超える(1470nmから1610nmの)効率的な超広帯域変換を得ることができることが示される。
ここで図15を参照すると、変換効率が入力波長および結晶長の関数として示される。図15(a)には、入力波長(y軸)および伝搬距離の関数としての変換効率の2次元数値シミュレーションが示される。分かる通り、短い波長は結晶に沿って早く変換され、結晶長が増大するにつれて長い波長が変換される。図15(b)には、2つの異なる結晶長、17mmおよび20mmの場合のスペクトル応答の実験結果が示される。同じ結晶の2つの異なる長さ、17mmおよび20mmに対し、これらの測定を実行することによって、結晶長の変動に対する本実施形態の設計の頑健さも実証する。
標準的周波数変換器では、最大帯域幅を達成するために薄い結晶の使用が要求される。しかし、本実施形態の断熱設計では、同じ変換効率を維持しながら、達成される帯域幅は結晶長が増加するにつれて成長すると予想される。図15に数値的かつ実験的にこれを示す。見て分かる通り、効率的な変換帯域幅は結晶の長さと共にほぼ線形的に増大する。これは、結晶長が3mm増大すると帯域幅応答が30nm幅広くなることを示す図15bの実験結果とよく一致する。2つの因子が達成可能な効率的変換帯域幅を事実上制限する。第一は、非線形結晶自体の吸収である。別の制限因子は、結晶長が装置のレイリー範囲より短い場合にだけ有効である平面波近似に起因する。後者は事実上、利用可能なポンプエネルギーによって制限される。
この幅広い応答は、非線形結晶の温度を変化させることによっても維持することができる。これは、結晶の屈折率の温度依存性のためだけでなく、非周期的分極反転構造の温度膨張を通しても、変換プロセスに影響を及ぼす。この2次的であるが重大な影響は、温度が上昇するときにドメインの膨張を生じ、位相不整合パラメータを伝搬に沿って事実上低下させる。これは、断熱設計によって決定されるより弱い温度応答を導く。標準的周波数変換では、温度は変換効率に対し劇的な影響を有し、実際に、温度同調は狭い変換帯域幅をスペクトル同調するために一般的に使用される。
対照的に、断熱設計の場合、変換効率は、結晶温度の大きい変動に対しても高く維持される。ここで図16を参照すると、60MW/cmのポンプ強度で断熱非周期的分極反転KTP設計を使用して、結晶温度の関数としての変換効率が示されている。図16(a)は、結晶温度(y軸)および入力波長の関数としての変換効率の2次元数値シミュレーションを示す。図16(b)は、変換効率をω=1550nmの定入力波長で結晶温度の関数として示す。実験結果と設計のシミュレーション(2次元シミュレーションの縦断面)との間の良好な対応性(赤の実線で示す)が示される。図16(a)に、入力波長および結晶の温度の関数としての変換効率の数値シミュレーションを提示する。図16(a)のプロットにおいて、全ての縦断面は、定波長に対する結晶温度の関数としての変換効率を表わす。実験結果を図16(b)に示すが、ω=1550nmの定波長での結晶温度の関数としての変換効率がプロットされている。非常に効率的な変換は、80℃を超える温度範囲にわたって実験的に観察される。熱膨張の影響を含むシミュレーションは、この範囲が実際には実験の限界を超えることを予測している。これは、周期的分極反転によって得られる位相整合結晶におけるSFGの場合の2℃の効率的範囲と対比される。
通常位相不整合に影響する別のパラメータとして、非線形結晶に対する入射周波数の入射角度がある。シミュレーションのみで断熱設計の頑健さを検査し、本設計の受入れ角度または入力角度が、周期的分極反転構造の5度未満から、ω=1550nmの入力波長およびL=20mmの結晶長の場合の25度超に増大したことが見出される。
最後に、断熱設計は広域かつ頑健であるだけでなく、所与の結晶設計の場合、広範囲で同調させることもできることを示す。これは、2つの別個のメカニズム、すなわち温度同調およびポンプ周波数同調によって行なわれ、効率的な変換帯域をより低いまたはより高い入力周波数にシフトすることを可能にする。ここで図17を参照すると、広い帯域幅応答の同調性が示されている。図17(a)は、変換効率を含め、60MW/cmのポンプ強度での温度同調性の実験結果を示す。図17(b)はポンプ波長同調性の数値シミュレーションを示す。
したがって図17(a)には、2つの結晶温度、すなわち50℃および110℃に対して、入力波長の関数として測定変換効率をプロットする。見て分かる通り、効率的な変換帯域は≒50nmだけ赤方偏移し、それは図16に水平断面として示す数値シミュレーションとよく一致する。
ポンプ波長を変える影響をシミュレートする図17(b)に、さらにいっそう劇的な効果を提示する。図で、(実験の場合と同様に)1064nmでポンピングされる本断熱設計の応答を、(Nd:YLFレーザによりポンピングする)1047nmのポンプ波長、および1064nmの励起ビームをラマンシフタでラマンシフトすることによって容易に得ることのできる1159nmのポンプ波長に対する応答と比較する。
両方の同調メカニズムで、効率的な変換帯域がより低い波長に同調されると、変換効率がわずかに高くなり、応答がわずかに狭くなることが分かる。
より高い波長に同調されると、反対の挙動が導かれる。変換効率の変化は、結合係数が主にポンプの特性に対するその依存性を通して変化(それぞれ低下または増加)したことの直接的な結果である。これは事実上、断熱パラメータ、およびしたがって変換効率を変化させる。スペクトル応答の狭域化または広域化は周波数の一定帯域を反映するだけである。
4.結論
この後者の実施形態で、断熱和周波発生スキームの頑健さを分析する。広範囲の周波数および温度に対して、標準的位相整合非線形結晶より最大で2桁大きい効率的な変換を呈することを示す。結果として、広い帯域幅応答と変換効率との間のトレードオフは必ずしも必要無いことを示し、弱いポンプ強度または位相不整合パラメータの高速変化のいずれかの場合に制限することができる。断熱設計では、伝搬全体に沿った完全位相整合の必要無く、ほぼ完全な周波数変換を達成することができる。
我々は、SFGプロセスに沿った断熱伝搬度を推算することのできる解析ツール、ランダウ‐ツェナー変換効率式を導入する。他のパラメータに対するこの設計の頑健さを論じる。それらのうち、ポンプ強度、結晶長、および受入れ角度の変動に対するその頑健さを探求する。また、結晶温度およびポンプ波長の変化によって広いスペクトル応答の同調性をも実証する。この同調性メカニズムは、そのようなデバイスの適用可能性に大きい影響を及ぼし得る。
断熱スキームは、効率的にアップコンバートされる広帯域蛍光信号のみならず、超短パルスに対しても、多少配慮しながら利用することができる。本スキームはまた、天文学、材料科学、および分子分光学で一般的に利用されるような非コヒーレントな信号の分光法にも大いに関連性がある。中間IRおよび遠IR光学レジームにおける量子効率的検出器の欠如のため、近IRおよび可視レジームへの光学的にアップコンバートされる弱い信号はしばしば、量子限界検出を促進するために使用される。
2準位物理学と他の物理的分野に偏在するその幾何学的視覚化との完全な類似性は、周波数変換のプロセスに新しい物理的見識をもたらすことができ、かつ他の非線形光学プロセスの理解を深め得る。
本実施形態に係る結晶は、信号処理または実際いかなる光学的レジームにでも応用することができ、そこで鋭いスペクトルをもたないようにメッセージ搬送信号を変調することができ、あるいは実際周波数変調することができる。さらに、多重化チャネルはある範囲の周波数にわたって複数のメッセージを含むことができる。
周波数変換の効率は、2乗検波によって結晶のχ(2)品質に関連付けられ得るので、χ(2)品質を倍化すると4倍の効率がもたらされ、ポンプレーザ強度を4分の1に低減することが可能になる。このことは、上記の第1節の方程式4および5におけるカッパの定義およびポンプ強度に対するその関係から得られる。
追加の用途は、検知デバイスの向上を含み得る。光センサは、特定の環境で最も多くの情報を提供するスペクトル範囲と同じではない特定のスペクトル範囲に敏感であり得る。ある範囲の周波数にわたって動作することのできる周波数シフトデバイスは、利用可能なセンサにより適した範囲に環境を変換することができる。明らかに、入力が非コヒーレント源であり、したがって強度が欠如する場合、効率は適度な出力を得るのに問題になる。
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、添付の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものであることを意図される。
本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許または特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。見出しが使用される場合、それらに必ずしも限定されるものと解釈されるべきではない。

Claims (22)

  1. 第1端と第2端との間の長手方向寸法を有し、かつ複数の同調周期を含む周期的分極反転構造を有する、波長変換用の結晶であって、それぞれの周期の同調が前記第1端から前記第2端へ前記長手方向寸法に沿って断熱的に変化する結晶。
  2. 擬似位相整合結晶である、請求項1に記載の結晶。
  3. 非消耗ポンプ近似の適用を可能にするのに充分な強度のレーザ・ポンプ・ビームに使用するように構成される、請求項1に記載の結晶。
  4. 前記同調は、前記第1端における変換用の入射光周波数に対して強い負の不整合、および前記第2端における前記周波数に対して強い正の不整合を含む、請求項1に記載の結晶。
  5. 前記同調は、前記第1端における入射光周波数に対して強い正の不整合、および前記第2端における前記周波数に対して強い負の不整合を含む、請求項1に記載の結晶。
  6. 前記断熱的変化は前記寸法に沿って連続的に増加する、請求項2に記載の結晶。
  7. 各周期は、関心のある光の波長の大きさ程度の範囲内の周期長を有する、請求項1に記載の結晶。
  8. 前記波長の実質的に7桁の大きさの前記長手方向寸法に沿った長さを有する、請求項1に記載の結晶。
  9. 第1同調を持つ少なくとも1つの周期の群に続いて、各々がそれぞれの先行する周期群と比較して前記同調がわずかに変化した後続の少なくとも1つの周期の群を入射光に提供するように構成される、請求項5に記載の結晶。
  10. 前記同調はそれぞれの周期の長さとして提供される、請求項1に記載の結晶。
  11. 結晶の長さにわたって断熱的に変化する位相不整合を有する物理的パラメータを持つ結晶と、
    周波数範囲内の入力周波数の光源光を受光するためのコヒーレントな光源入力と、
    所定のポンプ周波数のレーザ光を受光するためのポンプレーザ入力と、
    前記入力周波数と前記ポンプ周波数の関数である出力周波数で光を出力するための出力と、
    を備えた、効率的な広帯域波長変換のための装置。
  12. 前記結晶は非線形結晶であるように構成される、請求項11に記載の装置。
  13. 前記非線形結晶は擬似位相整合されるように構成される、請求項12に記載の装置。
  14. 前記位相不整合は結晶の長さに沿った周期の段階的な変化を含む、請求項13に記載の装置。
  15. 前記位相不整合は結晶の第1端から結晶の第2端までの温度勾配内で前記結晶を位置させることを含む、請求項11に記載の装置。
  16. 前記結晶は第1端と第2端を有し、前記断熱的変化は前記第1端と第2端の間の高い正の不整合から高い負の不整合への変化を含む、請求項11に記載の装置。
  17. 前記関数は和関数を含む、請求項11に記載の装置。
  18. 前記関数は差関数を含む、請求項11に記載の装置。
  19. 前記ポンプレーザ入力は、非消耗ポンプ近似を正当化するのに充分に高い強度でレーザ光を提供する、請求項11に記載の装置。
  20. ポンプレーザは比較的狭い周波数範囲の光を提供する、請求項19に記載の装置。
  21. 波長変換用の結晶を製造する方法であって、
    第1端と第2端の間の逆向きの分極領域の層の発達により第1端から第2端へ前記結晶を成長させるステップと、
    発達中に前記層の特性を徐々に変化させ、それによって断熱的に変化する擬似整合非線形結晶を形成させるステップと、
    を含む、方法。
  22. 前記特性は層厚さである、請求項21に記載の方法。
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