JP2011515611A - ロータリーピストン内燃機関動力ユニット - Google Patents
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Abstract
二葉エピトロコイド形の内周面(14)の内側にある空洞内に、偏心回転するエキセントリックシャフト(63)に取り付けられた3つの外周面をもつロータリーピストン(R)を有するバンケル型の火花点火エンジンユニット(1)を備える動力ユニット(14)であり、上記空洞は、周囲圧力の空気を作動室に吸入する吸気ポート(7)及び作動室から排気ガスを排出する排気ポート(45)を有する。この動力ユニットはまた、一葉エピトロコイド形チャンバ(25)内に、偏心回転するエキセントリックシャフト(12)に取り付けられた2つの外周面をもつロータ(24)を有するロータリー膨張機ユニット(4)も備える。両方のシャフト(62、63)は連結されて共に回転し、エンジンユニット(1)のエピトロコイド形の空洞の排気ポート(45)が、膨張機ユニット(4)の吸気ポート(26)に接続され、それによりエンジンユニット(1)からの排気ガスが膨張機ユニット(4)でさらに膨張される。
Description
本発明は、ロータリーピストン内燃機関動力ユニットに関する。
より詳細には、本発明は、いわゆるバンケルエンジン(Wankel engine)を備える動力ユニットに関する。バンケルエンジンでは、エンドハウジング即ちいわゆる端ケーシングと組み合わせてハウジング即ちいわゆるロータハウジングによって形成される空洞内で、ロータリーピストン即ちいわゆるロータが回転する。ロータの外周及び空洞の内周面は、ロータと内壁との間に、ロータの回転に伴い容積が変化する作動室が形成されるように形づくられている。空洞は、吸気ポートと排気ポートとを備える。参照されるようなエンジンのうち最も良く知られた例では、空洞は、二葉エピトロコイド形状(two lobed epitrochoidal shaped)の内周面を有した動作しないロータハウジングによって与えられ、そこに、実質的に三角形だが、凸状のアーチ形をした外周面もつロータがある。ロータの頂部にあるシール即ちいわゆるアペックスシールが、ハウジングの内周面との密封接触を維持する。ロータの側面にあるシール即ちいわゆるサイドシールが、軸方向に間隔をあけて配置された2つの端ケーシングとの密封接触を維持する。ロータは空洞内で遊星回転する。
限定する訳ではないがより詳細には、本発明が主に意図する用途は、いわゆるプラグイン電気式に由来するシリーズハイブリッドな輸送手段における使用である。こうした輸送手段は、単に1つ又は複数の電気モータによって進む。電気モータには、主電源から再充電される搭載バッテリから電力が供給される。かかるバッテリの単位重量当たりのエネルギー容量は進歩して増加しているものの、バッテリの重量と、再充電同士の間での輸送手段の航続距離との間で妥協点を見出さなければならない。
搭載エンジン/発電機ユニット、即ちいわゆるエンジン動力発電機(genset)を設置するための提案がなされている。このエンジン動力発電機は、必要なときにバッテリを充電するために断続的に動作され、それにより輸送手段の航続距離を延ばすことができる。かかる輸送手段は、シリーズハイブリッドと称される。ここで考えるシリーズハイブリッドな輸送手段とは、航続距離がエンジン燃料タンクの容量によってのみ制限される従来の輸送手段と同様の航続距離をもつ輸送手段である。
エンジン動力発電機の出力は、典型的には、消費されている電気エネルギーをエンジン動力発電機が連続的に供給すべきときに所望の最大巡航速度における電力消費量に釣り合うように選択される。断続的な加速に必要となる追加のエネルギーはいずれも、一般にバッテリから供給される。
シリーズハイブリッドな輸送手段の実用性は、好適なエンジン動力発電機を利用できるかどうかに依存する。
近年の進歩により、低重量で効率の高い高速発電機が利用可能となっている。従って、必要とされているのは、以下の特徴を有する動力ユニットである:
−重量及びかさが低い
−燃料消費率(sfc)が低い
−騒音及び振動が少ない
−炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)の排出物質が少ない
−許容可能な製造コスト
−修理が最小限であり信頼性が高く、寿命が長い
−重量及びかさが低い
−燃料消費率(sfc)が低い
−騒音及び振動が少ない
−炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)の排出物質が少ない
−許容可能な製造コスト
−修理が最小限であり信頼性が高く、寿命が長い
過去の多くの研究において、単一のロータを有する火花点火バンケル型エンジンが、この用途に最も適するエンジンである可能性があることが認められてきた。このことは主に、特に多気筒レシプロエンジンと比較したとき、その既知である、重量の軽さ、サイズの小ささ、振動レベルの低さ、及びコストの低さのためである。しかしながら、その他の特性であるsfc、HC排出物、及び排気音については、かかるエンジンを製品設計に取り入れるように電気自動車の製造業者に働きかけるほど十分な魅力がなかった。
火花点火内燃機関の膨脹比を、ほとんど機械的な摩擦損失を付加することなく実質的に上昇させるための手段を考案することができたなら、かかる機関の熱効率が上昇することは周知である。
米国特許第3,858,557号明細書では、ロータリーエンジンと共に、ロータリー事前圧縮機(rotary pre-compressor)と膨張機ユニットとの両方を使用することが提案されている。ロータリーエンジンは、ディーゼル燃料を用いる圧縮着火機関として運転することができる。事前圧縮機を有する目的は、燃焼室がコンパクトな通常の構造のロータリーエンジンを使用しながらも、全体として十分に高い圧縮比を達成可能とすることである。或いは、ロータリーエンジンは、上死点近くでの直接噴射と火花点火とを伴う層状給気機関として運転することもできる。或いは、ロータリーエンジンは、キャブレターとガソリン燃料の均一混合物とにより運転することもできる。これらの2つの代替例では、事前圧縮機を含める目的は、所与のサイズの主要エンジンユニットに対して出力を増加させることである。膨張機ユニットを含める目的は、事前圧縮機の運転により消費される出力に対して出力を寄与し、それにより熱効率を向上させることである。
英国特許第1068209号明細書では、事前圧縮機と膨張機ユニットとを備えて圧縮着火機関として運転する複合機関が提案され、この構成は点火プラグを備えることができる。こうした点火プラグの目的は、冷間始動を補助し、及び/又はディーゼル燃料より低いセタン価を有する代替燃料の使用を可能にすることである。
本発明の第1の態様によれば、二葉エピトロコイド形の内周面の内側にある空洞内に、偏心回転するエキセントリックシャフトに取り付けられた3つの外周面をもつロータリーピストンを有するバンケル型の火花点火エンジンユニットを備える動力ユニットが提供される。上記空洞は、周囲圧力の空気を作動室に吸入する吸気ポート及び作動室から排気ガスを排出する排気ポートを有する。この動力ユニットはまた、一葉エピトロコイド形(single lobed epitrochoidal)チャンバ内に、偏心回転するエキセントリックシャフトに取り付けられた2つの外周面をもつロータを有するロータリー膨張機ユニットも備える。両方のシャフトは連結されて共に回転し、エンジンユニットのエピトロコイド形の空洞の排気ポートは、膨張機ユニットの吸気ポートに接続され、それによりエンジンユニットからの排気ガスが膨張機ユニットでさらに膨張される。
かかる動力ユニットにより、総膨脹比を大きく増加させることが可能となり、この膨張比は、エンジンの圧縮比の少なくとも2倍であるか、又は約22対1であってよい。
本発明で適用するのに好ましいタイプのロータリーピストンエンジンユニットは、英国特許第1385687号明細書、英国特許第1386811号明細書及び英国特許第2199082号明細書に記載されるようなものであり、かかるエンジンは、適用に理想的な特徴の多くを有する。このタイプのエンジンは、通常8.5対1〜9.5対1の範囲の、同じ値の圧縮比及び膨脹比を採用している。
必要とする摩擦特性が低く重量及びかさが低くなっている採用されるべき膨張機ユニットは、いわゆるバンケル系の別のロータリーピストン機関である。このロータリーピストン機関では、膨張機ユニットの2つの外周面をもつロータは、ロータが取り付けられるエキセントリックシャフトの2分の1の速度で回転するように連動され(geared)、それにより膨張機ユニットロータの外周面と一葉エピトロコイド形チャンバの内面との間には2つの作動室が形成される。そして、一葉エピトロコイド形チャンバは排気ポートを有する。エンジンユニットの排気ポートと膨張機ユニットの吸気ポートとの間には接続管がある。上記2本のシャフトは、連動する又は直接接続されて、同じ速度で且つ固定された位相関係で動作し、それによりエンジンユニットからの排気ガスが膨張機ユニットでさらに膨張される。
この装置によって、膨張機ユニットの各作動室は、その容積を、シャフトが360°回転するごとに最大容積から最小容積まで正弦関数的に変化させ、2つの作動室は互いに対して位相が360°ずれている。最大の作動室容積の最小の作動室容積に対する比は、通常約65対1であり、それ故、最小のときの作動室の容積は極めて小さい。
本発明は、この明細書に添付される請求項2〜12に記載の特徴のいずれかもを組み込んでよい。
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による動力ユニットと発電機とを組み合わせたものが提供される。なお、発電機は、エンジンユニット及び膨張機ユニットの上記シャフトのいずれか一方のシャフトによって駆動されるロータを有する。
本発明の第3の態様によれば、少なくとも1つの車輪及び/又は少なくとも1つのプロペラのうちの一方を駆動する駆動システムを備える輸送手段が提供される。なお、駆動システムは、本発明の第2の態様による組み合わせたものと、発電機から充電を受ける蓄電装置とを含む。車輪又はプロペラは、駆動システムのモータによって駆動され、モータは蓄電装置から電力を受け取る。
ここで、本発明の実施形態が添付の図面を参照して説明される。
図1及び図2を参照すると、エンジンユニットは、ロータハウジング1と、端ケーシング2及び3と、吸気管7とを備えている。膨張機ユニットが、エンジンユニットと同軸に取り付けられ、共通の複合端ケーシング3を介してエンジンユニットに片持ち支持されている。膨張機ユニットは、ロータハウジング4と、外側端ケーシング5と、排気管8とを備えている。膨張機ユニットのロータ24(図3参照)は、ステーショナリギヤ32と係合し、エンジンエキセントリックシャフト63の延長部品62に取り付けられており、エンジンシャフト63は、端ケーシング2、3にそれぞれ取り付けられた2つのメインベアリング14及び15でジャーナル支持されている。膨張機ユニット用の小型の末端ベアリング16が、外部のバランスウエイト67に隣接して示されている。このように、エンジンユニットシャフト63と膨張機ユニットシャフト62とは、一緒に回転するように連結されている。
膨張機ユニットのロータ24は、ロータ24が取り付けられるシャフト62の2分1の速度で回転する。
ニードルベアリング64に取り付けられ且つステーショナリギヤ66と係合するエンジンユニットのロータR(図8を参照)のためのガス冷却流が、11で端ケーシング2に入り、ロータR内の軸方向通路18を通り、そして13でエンジンユニットを出る。膨張機ユニットのための並行する冷却ガス流が、12で端ケーシング5に入り、ロータ24内の軸方向通路19を通り、そして同様に端ケーシング3にある13で膨張機ユニットを出る。吸気管7に取り付けられた燃料インジェクタ9が図示されているが、代わりに、ロータハウジングが備える空洞への直接噴射が採用されてもよい。
スタータ−発電機ユニット6の固定子7が、エンジンユニットと同軸に取り付けられ、エンジンの端ケーシング2に片持ち支持されている。発電機ユニット6のロータR2は、エンジンシャフト63の延長部に片持ちで取り付けられている。発電機ユニット6のロータシャフトの任意に選択される小型の末端ベアリング17が図示されている。
図3は、ロータハウジング4の一葉エピトロコイド形チャンバ25内にある膨張機ユニットの2つの角があるロータ24を図示している。膨張機ユニットへの吸気ポート26と、膨張機ユニットからの排気ポート27とが示されている。膨張機ユニットのロータ24とハウジング4との間のガス封止が、ロータ24の各角にあるアペックスシール29によってもたらされ、サイドシール28がロータ4の各側面に装着されている。アペックスシール29は、ロータ24の回転時にハウジング4の二葉エピトロコイド形の内面25と密封係合を維持し、そして、サイドシール28は、膨張機ユニットの端ケーシング3、5と密封係合を維持する。ステーショナリギヤ32は外側端ケーシング5によって備え付けられている。内部で噛み合うリングギヤ33は、ロータ24によって備え付けられているか、又はロータ24と一体化されている。各端ケーシング3、5の開口部34は、ロータを冷却するためにロータ24の1つの軸方向通路(又は複数の通路)19を通過する冷却ガスのための入口及び出口を与える。かかる開口部34は、ロータ24のあらゆる回転位置においてサイドシール28の内縁の軌跡の内側にある。
ロータ24がエピトロコイド形チャンバ25内で回転するとき、作動室が形成される。35に膨張チャンバが示され、このチャンバは、エンジンユニットから接続管45(図1、図8及び図9を参照)を介してガスを受け取る。そして、36に排出チャンバが示され、ガスは、管8に連通する排気ポート27を介してこの排出チャンバから排気消音器又は排気管に移動し、輸送手段から出る。図3は行程容積対全体量の極めて有利な比を示し、この比はこのユニットが提供しており、そのことが、本発明でこのユニットを選択する主な理由である。膨張機ユニットにおける摩擦損失は低く、往復ピストン装置のようなピストンの側部スラスト荷重及び高い慣性負荷がなく、このことが、本発明でこのユニットを選択する第2の理由である。
図4、図5、図6及び図7は、エピトロコイド形チャンバ25の内部で4つの異なる位置にある膨張機ユニットのロータ24を示している。エンジンユニットからの加圧されたガスは、吸気ポート26からこのユニットに入り、通常、周囲圧力をごく僅かに上回る圧力で排気ポート27を介して出る。
エンジンユニットは、図8〜図10において、同一平面上で表す形でさらに詳細に図示されている。
好ましい配置は、膨張機ユニットがエンジンユニットと同軸であるものであることは理解されるであろう、そして、図8及び図9は、2つのロータの相対的な動きを理解できるようにのみ与えられているに過ぎない。
エンジンユニットのロータハウジング1は、端ケーシング2及び3の間に、二葉エピトロコイド形の内周面又はボア(bore)14をもつ空洞を有している。
エンジンユニットのロータRは、ロータRの3つの頂点の各々に配置され且つシールストリップ(sealing strip)113であるアペックスシールを有し、各シールストリップ113は、ロータRが空洞内で遊星回転するとき、ロータRのそれぞれの頂点と内周面114との間に密封接触を維持する。ロータRは、出力シャフト63の速度の3分の1の速度で回転し、ギヤ66、66aによって制御される。
一方の端ケーシング3は、ステーショナリギヤ32のいずれかの側面に配置された1つ以上の開口部120を有する吸入通路119を備え、開口部120は、以下に記載されるサイドシール126の内側の包絡線の内側又は内側を回転させたものの内側に含まれるような形状である。そして、ロータRの両側面では、サイドシール126が、ロータRの側面と端ケーシング2及び3との間に密封をもたらし維持する。吸入通路119を有する端ケーシングは、冷却ガス流の観点からでは上流のケーシング3となる。
他方の端ケーシング2も同様に、開口部118と排気通路117とを備えている。
ロータ冷却媒体は、上流の端ケーシング3の吸入通路119を通り、そこから端ケーシング3の1つ又は各々の開口部120を経由し、他方の下流の端ケーシング2の1つ以上の開口部118へと、ロータRの内部を通って、例えばロータRのウェブにある空気流を通すことができる通路18を経由して、流れることができる。
導管部123が、下流の端ケーシング2の排気通路117を冷却用熱交換器124に接続している。別の導管部125が、冷却用熱交換器124の出口を冷却媒体循環ポンプ127に接続し、さらに別の導管部128が、ポンプ127の出口を上流の端ケーシング3の通路119に接続している。別の例では、必要に応じてポンプ127が熱交換器124の上流側にあってもよい。
それ故、冷却媒体のための冷却回路は、上流の端ケーシング3及び下流の端ケーシング2のそれぞれの通路119及び117と、ロータRを貫通する1つ又は複数の通路18と、熱交換器124への導管部123、ポンプ127への導管部125及び上流の端ケーシング3の吸入通路119に戻る導管部128を介することとによって、確立される。なお、ロータRを貫通する1つ又は複数の通路18は、ロータRを貫通する1つの通路18又は複数の通路18の1つが上流の端ケーシング3における1つの開口部120又は複数の開口部120の1つ並びに下流の端ケーシング2における1つの開口部118又は1つ以上の開口部118と位置が合うときの通路である。
この例では、冷却回路用の冷却媒体は、エンジンユニットの作動室から冷却回路に入るブローバイガスによって、エンジンユニットの作動室と冷却回路との間のサイドシール126を横切るガス漏洩経路を介した圧力で、供給される。
サイドシール126(ロータRの各側面にある)は、この例では、ロータRの周囲において2つの隣り合うアペックスシール113の各々の間でロータ外周面に平行に延びる。そのため、この例では、3つのロータ外周面の各々がサイドシール126を有し、ロータRの周囲において、サイドシール126がロータRの両側面でロータ回転の内側包絡線を生成する。
冷却用熱交換器124は、冷却回路内の冷却ガスの冷却を生じさせる任意の好適なタイプのものであってよい。典型的には、熱交換器124では、周囲空気がクーラントである。しかしながら、例えばボートに動力を供給するための、海洋環境で使用されるエンジンでは、クーラントは、水であるのがより好ましいかもしれない。
冷却回路ポンプ127は、任意の好適なタイプのものであってよいが、必要に応じて、エンジンユニットの出力シャフト63から機械的に駆動される、又は電気モータにより機械的に駆動される、又はエンジンの排気ガスによって動力が供給されるタービンにより機械的に駆動される遠心ファンのタイプであってもよい。
エンジンユニット1のロータRのための冷却回路は、膨張機ユニット4のロータ24のための冷却回路と並列に接続されるのが好ましい。それにより、エンジンユニットのロータR及び膨張機ユニット4のロータ24が、双方とも共通の冷却回路によってガス冷却される。共通の冷却回路には、ここでは、冷却ガスを供給してロータR及びロータ24の双方を冷却するための共通の冷却用熱交換器124がある。しかしながら、必要であれば、膨張機ユニット4は、エンジンユニット1のための図10に示されるものと同様である別になった冷却回路を有してよい。
別の例において、膨張機ユニット4のロータ24は、上述のロータ冷却回路ではなく、その他の方法で、例えば空気によりガス冷却されてもよい。
図8は、エンジンユニットの排気作動室44を示し、これは、加圧されたガスを通路45を介して膨張機ユニットの受入作動室35に送り込むものである。同時に、膨張機ユニットの排気室36が、排気ポート27を介してガスを排出している。
図9は、ロータ24及びロータRが取り付けられているシャフト62、63が、図8に対して180°回転したときの状況を示す。エンジンユニットの排気作動室48は、その最小容積近くとなっており、それとつながる膨張機ユニットのチャンバ49が、その最大容積となっている。膨張機ユニットの排気作動室51は、排気行程の終わりに近くになっている。
望ましくは、エンジンユニットと膨張機ユニットとを組み合わせたものの膨脹比は約22対1であり、エンジンユニットと膨張機ユニットとを組み合わせたものの膨脹比は、好ましくはどのような場合にも、エンジンユニット単独で達成され得る膨張比の少なくとも2倍の大きさである。
発電機6は、動力ユニット1/4に同軸に取り付けられることが好ましいが、これはその他の方法で取り付けられてもよい、しかしながら、動力ユニット又は膨張機ユニットにより駆動されることが望ましい。
膨張機ユニット4の寸法は、最大作動室容積がエンジンユニットの行程容積の最大作動室容積の約2.8倍となるように選択され得るが、このことは選択する膨脹比に依存する。
エンジンユニットのロータと膨張機ユニットのロータとの間の角度の関係は、エンジンユニットの膨張作動室の容積が最大値に近付き、エンジンユニットの排気ポートが開放され始めるときに、管45を介してエンジンの排気ポートが接続されている膨張機ユニットの作動室が、その最小容積に近くなるような関係である。エンジンユニットがその排気段階を実行するとき、膨張機ユニットは排気ガスを受け取って、周囲圧力を僅かに上回るだけの最終圧力にまで排気ガスをさらに膨張させ、それによりガスから余分なエネルギーを抜き取る。この時点で、膨張機ユニットの排気ポート27が開放され、そして、排気ガスが、シャフト62が次の360°回転する間に大気中又は排気消音器に吐き出される。同時に、膨張機ユニットの次の作動室が、エンジンユニットの次の室から排出されたガスを受け取っており、サイクルが繰り返される。
膨張機ユニットのジオメトリ(geometry)及び設計は、ロータ24の半径方向寸法の比(ロータの中央対ロータの角)が、ロータ24が取り付けられるシャフト62の偏心度の約4.3倍となる状態で、コンパクトで低摩擦な種類のものになるように選択される。かかる設計では、膨張機ユニットは、ほとんど3倍の行程容積を有するにもかかわらず、エンジンユニットと同様の直径とすることができ、そのとき、軸方向長さもまた同様となり、このことは、膨張機ユニットの空間効率となる。これにより、コンパクトなパッケージがもたらされる。
好ましい配置は、エンジンユニットと膨張機ユニットとが軸方向に一列に並び、且つ膨張機ユニットのエキセントリックシャフト62がエンジンユニットのシャフトの片持ち支持された延長部品であることであり、それにより重量及び摩擦損失が低減される。
エンジンユニットのシャフト63の軸と膨張機ユニットのシャフト62の軸とについての相対的な角度位置は、エンジンユニットの排気ポートと膨張機ユニットの吸気ポート26とが近接するようなものであってよい。
膨張機ユニットに入る最大ガス圧は、わずか約4バールに過ぎず、そのため膨張機ユニット内のガス圧負荷は小さい。あらゆるバンケル型ユニットに共通して、膨張機ユニットは、ロータの軸の側方スラスト(axial side thrust)がなく、そして関与するガス圧が低いため、低摩擦カーボンタイプ又は同等のアペックスシール29、及び半径方向に薄い低摩擦サイドシール28を用いることができる。アペックスシール29は、外向きの加速力を一切受けず、そのため、アペックスガスシールに極軽荷重のばねを使用することができる。総合的な結果として、寄生摩擦損失(parasitic friction loss)が極めて低いユニットとなる。
膨張機ユニットについて、摩擦損失がゼロであり、且つエンジンユニットから膨張機ユニットへのガスの移動時のガスの移動エネルギー損失がゼロであるとすれば、全体的な膨脹比を約22対1に上昇させることによって、複合p−v図に基づく計算から、組み合わせたユニットの出力がエンジンユニット単独の出力と比べて約33%上昇するということが示される。sfc及び排出物質は、同様の割合減少する。実際には、膨張機ユニットは確かにいくらかの摩擦損失を有し、いくらかの小さい移動エネルギー損失があるだろう。それ故、かかる利得は達成されないであろう。実際には、エンジンに膨張機ユニットを追加することによって得られる正味の利得は、約20%に達し得る。
標準的なタイプのバンケルエンジン、特にシングルロータ式のものは、レシプロエンジンと比べて大幅に高い排気音量を生じる。その理由は、バンケルエンジンでは、単一の排気ポートが急激に完全開放され、高温且つ約3〜4バールの圧力のガスが突然放出されるためである。それに対し、レシプロエンジンでは、排気バルブがはるかに緩徐に開放され、それ故、排気マニホルードへの排気ガスがエンジンから出る前に他のシリンダからの排気流と合流するように流れる。
sfcを低減するために、上記のとおり22対1の膨脹比をもたらす膨張機ユニットとロータリーエンジンとを組み合わせると、排気音の低減に大きく寄与することにもなる。膨張機ユニットの排気ポートがちょうど開放されるとき、排気ガス温度は、エンジンユニットを出るガスの温度と比べて約400℃低下しており、圧力は周囲圧力に近い。この結果、追加の排気消音器を一切取り付けなくとも、排気音量は極めて低くなる。それ故、既知のロータリー燃焼機関と共にある排気音の問題が解消された。
低いrpm及び部分的なスロットル開放では、ロータリーエンジンは、レシプロエンジンと比べてHC排出量が大幅に高い。それに対し、CO排出量は同程度で、NOx排出量はより低い。本発明の動力ユニットは、好ましくは、高いrpmで且つスロットル調整なしで運転されるだけであり、この条件下では、エンジンユニット単独でのHC排出問題がそれほど不利でなく、既存のタイプのものはレシプロエンジンと同様であるか又はより優れてさえもあり得る。しかしながら、ロータリーエンジンを膨張機ユニットと付加的に組み合わせたものは、HC排出量が大幅に減少するというさらなる重要で有益な効果を有している。
エンジンユニットからの非常に高温の排気ガスは、大きい乱流を伴って膨張機ユニットに排出される。一時期である冷間始動中を除き、エンジンは、化学量論の値と比べて多量の過剰な空気を伴って運転され、それ故さらなる燃焼に利用可能な酸素が過剰にある。そのとき、膨張機ユニットは、サーマルリアクター(thermal reactor)として作用し、HCの排出を極めて低レベルまで減少させる。
全体として、いわゆる2−3型バンケルエンジンユニット(二葉型ハウジング内に3つの角のあるロータ)を、いわゆる1−2型バンケル膨張機ユニット(一葉型ハウジング内に2つの角のあるロータ)と組み合わせたものは、sfc、排気音、及びHC排出物という3つのこれまで不十分である特性の各々に関して、大幅な改善をもたらす。
ここで図11を参照すると、輸送手段Vが示されており、輸送手段Vは、(例えば、地上走行車両V−装軌車両[tracked vehicle]を含む−のための)1つ以上の車輪Wか、或いは、(海上船舶[例えば、ボート]、又は無人航空機(UAV)を含む航空機の場合のような)1つ以上のプロペラPを駆動するための駆動システムDを備えている。
駆動システムDは、バッテリBなどの蓄電装置を備え、蓄電装置は、1つ以上の車輪W及び/又は1つ以上プロペラPを回転させるための1つ以上のモータMを駆動する。
バッテリBは、輸送手段が使用されていないときには、ソケットなどの固定電源にプラグコネクタCを介して接続することにより充電されるか、或いは使用中は、発電機6の運転によって充電される。
バッテリBを充電するための電気エネルギーはまた、輸送手段が制動/下り坂の状態にあるときにも発電機により生成されてよい。
かかる適用では、動力ユニット1/4は、熱効率の観点から最適な速度である単一速度のみで運転されてよい。それ故、動力ユニットはスロットル調整なしであってよいが、発電機が高負荷のときには、エンジン回転数が公称最適回転数未満に低下し得ることは理解されるであろう。
バッテリBを消耗させる傾向があり得る発電機の負荷が高いときでは、必要ならば動力ユニット1/4は、バッテリBを再充電するために、一時的に短時間だけ、最適回転数より高い回転数で運転するように構成されてよい。
この例では、発電機6は、電力を発生してバッテリBを充填することができるのみならず、動力ユニット1/4の始動するために動力ユニット1/4を駆動するのに使用されてもよい。
この動力ユニットは、上述されるようにシリーズハイブリッドな輸送手段に動力を供給するために使用されるとき、特に有効であるが、動力ユニットは、他の用途において、例に過ぎないが、例えばエグゼクティブ専用航空機用の補助動力ユニットとして、又は好適な用途において熱及び動力を生成するための補助動力ユニットとして使用されてもよい。いずれの場合にも、動力ユニットは、最も効率的に、且つ静かに動力を供給するよう、望ましくは最適な単一回転数で長時間の運転が可能である。
上述の記載若しくは以下の特許請求の範囲若しくは添付の図面に開示されて特定の形態で若しくは開示される機能を動作させる為の手段の観点で表現される特徴、又は、開示される結果を実現させるための方法若しくはプロセスは、必要に応じて、個別に又はかかる特徴を任意に組み合わせて、本発明をその様々な形態で実現するために利用されてよい。
Claims (14)
- 二葉エピトロコイド形の内周面の内側にある空洞内に、偏心回転するエキセントリックシャフトに取り付けられた3つの外周面をもつロータリーピストンを有するバンケル型の火花点火エンジンユニットを備える動力ユニットであって、前記空洞が、周囲圧力の空気を作動室に吸入する吸気ポート及び前記作動室から排気ガスを排出する排気ポートを有し、該動力ユニットが、一葉エピトロコイド形チャンバ内に、偏心回転するエキセントリックシャフトに取り付けられた2つの外周面をもつロータを有するロータリー膨張機ユニットも備え、両シャフトは連結されて共に回転し、前記エンジンユニットのエピトロコイド形の空洞の前記排気ポートが、前記膨張機ユニットの吸気ポートに接続され、それにより前記エンジンユニットからの排気ガスが前記膨張機ユニットでさらに膨張される、動力ユニット。
- 前記膨張機ユニットにおける前記2つの外周面をもつロータは、前記2つの外周面をもつロータが取り付けられる前記エキセントリックシャフトの2分の1の速度で回転するように連動され、それにより前記膨張機ユニットロータの外周面と前記一葉エピトロコイド形チャンバの内面との間に作動室が形成され、前記一葉エピトロコイド形チャンバが排気ポートを有し、前記エンジンユニットの前記排気ポートと前記膨張機ユニットの前記吸気ポートとの間に接続管があり、前記2本のシャフトが、連動する又は直接接続されて、同じ速度で且つ固定された位相関係で動作し、それにより前記エンジンユニットからの排気ガスが前記膨張機ユニットでさらに膨張される請求項1に記載の動力ユニット。
- 前記エンジンユニット及び前記膨張機ユニットを組み合わせた膨脹比が、前記エンジンユニット単独で達成される圧縮比の2倍より大きい請求項1または2に記載の動力ユニット。
- 前記エンジンユニット及び前記膨張機ユニットを組み合わせた膨脹比が、約22対1である請求項1〜3のいずれか一項に記載の動力ユニット。
- 前記膨張機ユニットの前記ロータがガス冷却され、冷却ガスが前記ロータ内部の軸方向通路を通り、これらの軸方向通路は、前記一葉エピトロコイド形チャンバを閉じる前記膨張機ユニットの端ケーシングにおける開口部と連通し、かかる開口部は、前記ロータの各側面では、前記膨張機ユニットロータの側面に設けられるサイドシールの内側軌跡の内側にあり、前記サイドシールは、前記膨張機ユニットの端ケーシングとの密封接触を維持する請求項1〜4のいずれか一項に記載の動力ユニット。
- 前記冷却ガスは、前記膨張機ユニットから、前記冷却ガスが冷却される熱交換器を通り、前記膨張機ユニットロータをさらに冷却するために前記膨張機ユニットに戻る、再循環をする請求項5に記載の動力ユニット。
- 前記エンジンユニットの前記ロータもまたガス冷却され、共通の循環ファン及び共通の冷却用熱交換器が、双方のロータを冷却するための冷却ガスを供給するために使用される請求項5または6に記載の動力ユニット。
- 前記膨張機ユニットが前記エンジンユニットと同軸に取り付けられ、前記膨張機ユニットの前記吸気ポートが、前記エンジンユニットの前記排気ポートと一列に並ぶ請求項1〜7のいずれか一項に記載の動力ユニット。
- 前記膨張機ユニットの前記シャフトが、前記エンジンユニットの前記シャフトの延長部に取り付けられる請求項8に記載の動力ユニット。
- 発電機ユニットが、前記発電機ユニットと駆動接続される前記動力ユニットに同軸に取り付けられる請求項1〜9のいずれか一項に記載の動力ユニット。
- 前記発電機ユニットのロータが、前記膨張機ユニットと反対側にある前記エンジンユニットのシャフトの端部における、前記エンジンユニットのシャフトの延長部に、取り付けられる請求項10に記載の動力ユニット。
- 使用時に、前記エンジンユニットが、少なくとも負荷がない場合に、公称であり単一の予め規定された一定回転数でのみ運転するように、前記エンジンユニットがスロットル調整されない請求項1〜11のいずれか一項に記載の動力ユニット。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の動力ユニットと、前記エンジンユニット及び前記膨張機ユニットの前記シャフトのいずれか一方によって駆動されるロータを有する発電機とを組み合わせたもの。
- 少なくとも1つの車輪及び/又は少なくとも1つのプロペラのうちの一方を駆動する駆動システムを備えるハイブリッド輸送手段であって、前記駆動システムは、請求項13に記載の組み合わせたものと前記発電機から充電を受ける蓄電装置とを含み、前記車輪又は前記プロペラが前記駆動システムのモータによって駆動され、前記モータが前記蓄電装置から電力を受け取るハイブリッド輸送手段。
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