JP2011514897A - 高濃度のミセル水溶液を調製する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、水中の溶解度が臨界ミセル濃度より低い化合物のミセルの過飽和水溶液を調製する方法を提供する。溶液は、薬物送達に好都合な特性を有する固体ミセルを調製するよう処理することができる。
Description
本発明は、低い水不溶性を有する生物学的活性分子の新規配合物を調製するのに有用な、過飽和ミセル溶液を調製する方法に関するものである。
薬物発見の計画は、しばしば、生物学的活性は高いが、物理学的特性が最適ではないために生物学的利用能が低い分子を特定する。物理化学的特性、主として溶解度および溶出速度の変更は、ある化合物の薬力学的および薬物動態学的特性を変えることがある。従来は、溶解度、溶出速度、吸湿性、安定性および晶癖のような特性の変更には、薬学的に許容され得る様々な対イオンとの電離性分子の塩を形成する取組み方がなされた。より最近では、多形体および疑似多形体をスクリーニングして、物理化学的特性が改良された結晶形態を特定している。代表的には、異なる塩および多形体の結晶構造、したがってまた物理学的特性が、相違する。コクリスタル(cocrystal)は、新規な結晶性材料を特定するための更にもう一つの手法を提供する。
従来は、結晶塩が探求されたが、より最近では、薬物学的活性成分の無定形形態が研究されている。規則的な幾何学的パターンまたは格子からなる結晶性固体とは異なり、無定形固体は、無秩序に配向された分子からなる。無定形固体の一般的な例は、ガラスおよびプラスチックである。結晶性固体とは異なり、無定形固体は、明確な融点がなく、結晶形態より高い溶出速度および溶解度を有する。配合物に無定形固体を用いることの一つの難点は、それらがより安定な結晶形態に復帰しようとする傾向を有することである。
溶解度および溶出速度を改良するための別の手法は、結晶の微粉化およびナノサイズ化によって結晶特性を変更することを包含する。
本発明は、水中のその溶解度積(Ksp)が水中の臨海ミセル濃度(CMC)より低い両親媒性化合物からミセルの過飽和水溶液を調製する方法であって、
(a)両親媒性化合物を水混和性有機溶媒に溶解する工程と;
(b)水および場合により化学量論量のアルカリもしくはアルカリ金属水酸化物水溶液または酸水溶液を加えて、塩を形成して、均質な混合水性溶媒系を得る工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法を提供する。
(a)両親媒性化合物を水混和性有機溶媒に溶解する工程と;
(b)水および場合により化学量論量のアルカリもしくはアルカリ金属水酸化物水溶液または酸水溶液を加えて、塩を形成して、均質な混合水性溶媒系を得る工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法を提供する。
得られたミセルの過飽和溶液は、凍結乾燥またはフリーズドライのような慣用の手法によって更に処理して、慣用の剤形に組み込むことができる固体を与えることができる。
本明細書に用いられる限りでの語句「ある」実体とは、一つまたはそれ以上の該実体を意味し、たとえば、ある化合物とは、一つまたはそれ以上の化合物、または少なくとも一つの化合物を意味する。その限りで、用語「ある」、「一つまたはそれ以上の」および「少なくとも一つの」は、本明細書では相互可換的に用いることができる。
本明細書に用いられる限りで、用語「含む」および「含んでいる」は、移行句中であろうと、クレーム本文中であろうと、非限定的な意味を有すると解されるものとする。すなわち、該用語は、語句「少なくとも有する」または「少なくとも包含する」と同義であると解されるものとする。方法の文脈中で用いられるときは、用語「含んでいる」は、該方法が、少なくとも列挙された工程を包含するが、追加の工程も包含し得ることを意味する。化合物または組成物の文脈中で用いられるときは、用語「含んでいる」は、該化合物または組成物が、少なくとも列挙された特徴または構成要素を含有するが、追加の特徴または構成要素も含有し得ることを意味する。
本明細書に用いられる限りでの用語「任意の」または「場合により」は、その後に記載される事象または状況が、生じ得るが、必ずしも生じなくてもよく、該記載が、該事象または状況が生じる場合と生じない場合とを包含することを意味する。たとえば、「場合により置換された」は、該場合により置換された部分が、水素またはある置換基を取り込んでいるかもしれないことを意味する。
用語「約」は、本明細書では、「おおよそ」、「の範囲の」「ざっと」または「前後」を意味するために用いられる。用語「約」が数的な範囲と結び付けて用いられるときは、記述された数値の上限および下限を拡大することによって、該範囲を修飾する。概して、用語「約」は、本明細書では、ある数値を、記述された値の20%の変動幅で上下に修飾するのに用いられる。
結晶および無定形の状態が、固体の状態での分子の秩序における両極端を表すのに対して、これらの極端の中間にある、部分的に整列した液晶状態という連続体が存在する[C.L. Stevenson et al., J. Pharm. Sci. 2005, 94(9):1861-80]。これらは、構成分子のある程度の配向秩序を保持しつつ、位置的秩序の部分的または完全な喪失を特徴とする、分子秩序の中間的状態を有する固体である。
同じ分子内に親水性部分と疎水性部分とを有する化合物は、両親媒性である。セッケンおよび洗剤は、両親媒性分子の一般的な例である。両親媒性分子は、溶液中のその濃度がその臨海ミセル濃度を超えたとき、自己組織化してミセルを形成する。多くの両親媒性分子が、親水性部分と疎水性部分との体積バランスに応じてリオトロピックな液晶の相を示す。液晶材料は、その相が長距離の配向秩序を有するならば、リオトロピックである。これらの構造は、不相容性の二つの構成要素のナノメートルの尺度での微細相隔離によって形成される。セッケンは、リオトロピックな液晶の日常的な例である。
水その他の溶媒の分子の含量が、自己組織化した構造を変化させる。非常に低い両親媒性濃度では、分子は、いかなる整列もなしに無秩序に分散することになる。やや高い(が依然として低い)濃度では、両親媒性分子は、球形のミセルまたは小胞へと自発的に集合することになる。ミセルの凝集体は、両親媒性分子の親水性部分を中核ミセルの内部に配向させて、親水性(水溶性)の表面を水溶液に接触させるよう集合する。しかし、これらの球形の物体は、溶液中で自らを整列させることがない。より高い濃度では、はるかに整列された集合が形成されることになる。代表的な相は、六角柱状の相であって、両親媒性分子は、長い円筒を(やはり親水性表面を有して)形成して、それらが大まかに六角形の格子へと自らを配列する。これは、中間的セッケン相と呼ばれる。更に高い濃度では、両親媒性分子の拡張されたシートが水の薄層によって隔離された、積層相(整ったセッケン相)が形成され得る。いくつかの系については、六角柱状相と積層相との間に、球体が形成されて、それらが濃密な立方体格子を生じる、立方体相(粘稠等方性相とも呼ばれる)が存在することがある。これらの球体は、相互に結合することもあって、二方向連続立方体相を形成する。
ミセルの高濃度溶液からの溶媒の除去は、固体を生成して、それが、用いられる乾燥手法および乾燥条件に応じて、液晶性のミセル状固体または無定形固体を生じる。無定形固体およびリオトロピック液晶は、ともに、充分に無秩序化しているため、粉末X線回折パターンでは明確な回折ピークを生じることがない。これらの形態は、代表的には、ハローパターンを生じる。無定形固体とは対照的に、液晶相は、偏光顕微鏡で見たときに、複屈折を示す。
ミセル状固体は、新規な配合物の開発に利用することができる、いくつかの独特な特性を与える。具体的には、液晶中に与えられる分子秩序は、無定形固体とは異なり、安定性を付加して、はるかに安定な結晶性固体への復帰を遅延させることができる。しかし、凝集の結果として生じる安定性は、液晶状態より有意に低いため、純粋に無定形の材料に代表的な、溶解度および溶出速度の増大を招く。
ミセル状固体は、製薬科学者に利益をもたらすが、薬理学的活性に富む多くの分子の物理的特性は、液晶性固体を回収することができる高濃度ミセル溶液を生成するのを困難にする。この困難の一つの理由は、多くの分子の水溶性が充分に低いため、CMCを達成することができず、そのためミセルが形成されないことである。本発明は、限定された水溶性を有する化合物からミセルの高濃度水溶液を生成するための好都合な方法を提供する。
本明細書に用いられる限りでの用語「両親媒性」は、親水および疎水両様の特性を有する化合物を意味する。そのような化合物は、両親媒性または両親和性とも呼ばれる。両親媒性分子の親水性部分は、陽イオン性、陰イオン性または中性であることができる。中性の親水性残基は、一般的にはポリエーテル、および水素結合が可能な類似の残基である。両親媒性分子の疎水性部分は、代表的にはアルキルまたはアリール残基を含む。
本明細書に用いられる限りでの用語「ミセル」は、液体中に分散した両親媒性分子の凝集体を意味する。水溶液中の代表的な正常相(水中油)のミセルは、周囲の水相に接触する外部表面上に親水性の「頭部」領域、および環境が相対的に非水性であるミセルの中心に封鎖された疎水性の「尾部」領域を有する凝集体を形成する。希薄な溶液中のミセルは、形状がほぼ球形である。より複雑な液晶相は、ミセル溶液として形成されることができ、より高濃度になり、そのようなミセルの形状および大きさは、その界面活性分子の分子的幾何学、ならびに界面活性剤濃度、温度、pHおよびイオン強度のような溶液条件の関数である。
本明細書に用いられる限りでの用語「液晶」は、無定形固体と固体結晶との間の特性を有する物質の相を意味する。液晶は、代表的には、いくらかの秩序を有するが、結晶格子に典型的な規則的な繰返しサブ単位を欠く分子を含む。液晶を、交差する一対の偏光フィルターの間に置き、光学顕微鏡を通して見たとき、液晶は、複屈折をするように見える、すなわち、サンプルは、暗い(等方性の)背景に対して輝いて見える。
本発明の一実施態様では、水中のその溶解度積(Ksp)が水中のその臨海ミセル濃度(CMC)より低い両親媒性化合物からミセルの過飽和水溶液を調製する方法であって、
(a)両親媒性化合物を水混和性有機溶媒に溶解する工程と;
(b)水、および場合により化学量論量のアルカリもしくはアルカリ金属水酸化物水溶液または酸水溶液を加えて、塩を形成して、均質な混合水性溶媒系を与える工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法を提供する。当業者は、水の量、ならびに非水性溶媒の性質および量を変えて、両親媒性化合物を溶解する混合水性溶媒系を与えることができること、またこれらの量は、不当な実験なしに決定することができることを認識すると思われる。
(a)両親媒性化合物を水混和性有機溶媒に溶解する工程と;
(b)水、および場合により化学量論量のアルカリもしくはアルカリ金属水酸化物水溶液または酸水溶液を加えて、塩を形成して、均質な混合水性溶媒系を与える工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法を提供する。当業者は、水の量、ならびに非水性溶媒の性質および量を変えて、両親媒性化合物を溶解する混合水性溶媒系を与えることができること、またこれらの量は、不当な実験なしに決定することができることを認識すると思われる。
初めに、薬学的活性成分(API)を有機溶媒に溶解し、ある量の水を加えて、均質な有機水溶液を生成する。酸性の置換基を有する薬学的活性成分(API)は、場合により、化学量論量の塩基水溶液で処理して、酸の共役塩基を生成することができ、生じる陰イオンがAPIの親水性を上昇させてもよい。同様に、塩基性残基を有するAPIは、化学量論量の酸水溶液で処理して、APIの親水性を上昇させることができる共役酸を生成することができる。APIの塩への転換は、本発明の任意の構成要素であり、中性のAPIがミセルを形成するのに充分なだけ両親媒性であるならば、不必要である。酸または塩基の無水物を用いて塩を形成し、その後の工程で水を加えることもできる。有機溶媒および水の量は、代表的には、均質な溶液を生じるように調整する。有機溶媒は、水と混和できるように選ぶべきであり、該有機溶媒の沸点は、蒸留の際に加えられる熱がAPIの分解を生じないように充分低くなければならない。
有機溶媒は、減圧下で蒸留して、ミセル状APIの過飽和溶液を生成させる。蒸留は、溶媒が0.5%未満の有機溶媒を含むまで継続する。水中のAPIの濃度は、容易に調整することができる。もう一つの実施態様では、1%未満の有機溶媒を含有する過飽和溶液を生じるように、蒸留を継続する。更に一つの実施態様では、2%未満の有機溶媒を含有する過飽和溶液を生じるように、蒸留を継続する。
本発明の第二の実施態様では、安定な無定形固体のミセルを調製する方法であって、該ミセルの過飽和水溶液を吹付け乾燥して、偏光顕微鏡下で複屈折を示す安定な無定形固体のミセルを生成する工程を含む方法が提供される。
本発明の第三の実施態様では、安定な無定形固体を調製する方法であって、該ミセルの過飽和溶液を凍結乾燥して、安定な無定形固体を生成する工程を含む方法が提供される。
本明細書に用いられる限りでの用語「安定な」は、少なくとも約4週間は安定である物理学的形態を意味する。
本発明の第四の実施態様では、式Iで示される化合物[S.ヒロノら、国際公開第2003 042150号公報(WO2003 042150)、2003年5月22日付]の安定な無定形固体のミセルを調製する方法であって、
(a)式Iの化合物をTHFに溶解する工程と;
(b)2当量の1MNaOHを加える工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法が提供される。
(a)式Iの化合物をTHFに溶解する工程と;
(b)2当量の1MNaOHを加える工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法が提供される。
本発明の第五の実施態様では、式Iの化合物を含有する安定な無定形固体のミセルへの方法であって、第四の実施態様(上記)で生成されたミセルの過飽和水溶液を吹付け乾燥する工程を含む方法が提供される。
本発明の第六の実施態様では、式IIで示される化合物の安定な無定形固体を調製する方法であって、
(a)式IIの化合物をイソプロパノールに溶解する工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法が提供される。
(a)式IIの化合物をイソプロパノールに溶解する工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法が提供される。
本発明の第七の実施態様では、式IIの化合物を含有する安定な無定形固体への方法であって、第六の実施態様(上記)で生成されたミセルの過飽和水溶液を吹付け乾燥する工程を含む方法が提供される。
以下の実施例は、本発明の範囲内での化合物の製造および生物学的評価を例示する。以下に述べるこれらの実施例および製造は、当業者が本発明をより明瞭に理解かつ実施するのを可能にするために与えられる。それらは、本発明の範囲を限定すると解釈してはならず、単にそれを例示かつ図示するものと解釈しなければならない。
実施例1
化合物Iの二ナトリウム塩の35〜45%ミセル水溶液の調製
機械的撹拌器を取り付け、N2雰囲気下に保たれた12リットル入り丸底フラスコに、I(601.5g、1.163mol)およびTHF(約4.8L)を仕込んだ。この懸濁液を、程々の速度で撹拌し、約60℃に加熱して、均質な溶液を生成した。この溶液を室温(RT)に冷却し、1MNaOH溶液(NaOH120gの溶液2,320ml、イリゲーションのための滅菌水で3Lまで希釈、これを滴定分析によって0.985Mとして検定)を撹拌しつつ加えた。溶液の温度は、22℃から30.8℃まで上昇した。この溶液を、ブキ・ロトバップ(Buchi Rotovap:12リットル入りフラスコ)に真空移送した。THFを、減圧下(25〜27Torr)で除去した。水浴の温度を50〜55℃に維持し、蒸気温度は約21℃であり、フラスコを毎分67〜72回回転した。体積が減少するにつれ、蒸気温度は、35〜36℃に上昇した。水浴の温度を60℃に上げて、蒸留速度を維持した。蒸気温度が約35℃に達すると、溶液は混濁し、このロータリーエバポレーターにN2を徐々に吹き込んで、起泡および「突沸」を防ぎつつ、溶液を約60℃で1時間熟成して、再清澄化した。蒸気温度が36℃で一定になったら、サンプルを取り出し、pHを8.5と決定した。溶液を滅菌水(約500ml)で希釈し、最終体積が約1.5Lに達するまで、溶液の濃縮を続けた。蒸留を停止し、残留THF濃度を、0.015%と決定し、Iの二ナトリウム塩の濃度を44%(w/v)と決定し、pHは約8.5であった。得られたミセル溶液(1.726kg)を滅菌した容器に貯蔵した。
化合物Iの二ナトリウム塩の35〜45%ミセル水溶液の調製
機械的撹拌器を取り付け、N2雰囲気下に保たれた12リットル入り丸底フラスコに、I(601.5g、1.163mol)およびTHF(約4.8L)を仕込んだ。この懸濁液を、程々の速度で撹拌し、約60℃に加熱して、均質な溶液を生成した。この溶液を室温(RT)に冷却し、1MNaOH溶液(NaOH120gの溶液2,320ml、イリゲーションのための滅菌水で3Lまで希釈、これを滴定分析によって0.985Mとして検定)を撹拌しつつ加えた。溶液の温度は、22℃から30.8℃まで上昇した。この溶液を、ブキ・ロトバップ(Buchi Rotovap:12リットル入りフラスコ)に真空移送した。THFを、減圧下(25〜27Torr)で除去した。水浴の温度を50〜55℃に維持し、蒸気温度は約21℃であり、フラスコを毎分67〜72回回転した。体積が減少するにつれ、蒸気温度は、35〜36℃に上昇した。水浴の温度を60℃に上げて、蒸留速度を維持した。蒸気温度が約35℃に達すると、溶液は混濁し、このロータリーエバポレーターにN2を徐々に吹き込んで、起泡および「突沸」を防ぎつつ、溶液を約60℃で1時間熟成して、再清澄化した。蒸気温度が36℃で一定になったら、サンプルを取り出し、pHを8.5と決定した。溶液を滅菌水(約500ml)で希釈し、最終体積が約1.5Lに達するまで、溶液の濃縮を続けた。蒸留を停止し、残留THF濃度を、0.015%と決定し、Iの二ナトリウム塩の濃度を44%(w/v)と決定し、pHは約8.5であった。得られたミセル溶液(1.726kg)を滅菌した容器に貯蔵した。
実施例2
実施例1のミセル溶液の吹付け乾燥
実施例1の溶液のpHを、1NNaOHでpH9に調整し、ブキ(Buchi)B−290なる吹付け乾燥機に移し、操作パラメーターを下記のように調整した:
入口温度:175℃(生じた出口温度:約106℃);
吹付けノズルの空気圧:約30psi;
吹付けポンプ速度:18〜20%;
吸引装置:約80%。
実施例1のミセル溶液の吹付け乾燥
実施例1の溶液のpHを、1NNaOHでpH9に調整し、ブキ(Buchi)B−290なる吹付け乾燥機に移し、操作パラメーターを下記のように調整した:
入口温度:175℃(生じた出口温度:約106℃);
吹付けノズルの空気圧:約30psi;
吹付けポンプ速度:18〜20%;
吸引装置:約80%。
入口温度が175℃に達したとき、吹付け乾燥を開始した。代表的には、排気圧は、80%の吸引装置速度で約15psiであった。溶液を吹付け乾燥機を通過させた後、入口のヒーターポンプおよび吸気口の電源を切り、吸引装置を約50%に低下させた。排気温度が60〜70℃に降下したとき、吸引装置の電源を切り、回収室から粉末を捕集した。得られた粉末は、オーブン内で乾燥して、望みの含水量にすることができる。
実施例3
実施例1のミセル溶液の凍結乾燥
丸底フラスコに、実施例1の溶液を仕込み、ドライアイス/イソプロパノールスラリーに浸漬かつ回転して、該溶液を凍結した。この凍結溶液を含むフラスコを凍結乾燥機に取り付けて、水を除去した。完全な乾燥には、8〜20時間を要した。真空を終結させ、フラスコを取り出し、得られた粉末を捕集した。へらを用いるか、または乳鉢乳棒内で、いかなる塊体も、軽い圧力で破砕することができた。
実施例1のミセル溶液の凍結乾燥
丸底フラスコに、実施例1の溶液を仕込み、ドライアイス/イソプロパノールスラリーに浸漬かつ回転して、該溶液を凍結した。この凍結溶液を含むフラスコを凍結乾燥機に取り付けて、水を除去した。完全な乾燥には、8〜20時間を要した。真空を終結させ、フラスコを取り出し、得られた粉末を捕集した。へらを用いるか、または乳鉢乳棒内で、いかなる塊体も、軽い圧力で破砕することができた。
実施例4
化合物IIのミセル水溶液の調製
化合物II(2g)を70%IPA(20ml)に徐々に分散させ、水(14ml)を加えた(IIの溶解度は、70%IPA/H2O中で約47mg/ml、水中で4mg/ml、IPA中で0.08mg/mlであった)。この分散液を超音波処理して、分散した固体をすべて溶解して、淡黄色の溶液を生成した。ロータリーエバポレーターを用いて、IPAを蒸留して、約400mg/mlのIIを含有する水溶液とした。この高濃度水溶液を、ブキB−290吹付け乾燥機を用いて吹付け乾燥し、操作パラメーターを下記のとおり調整した:
入口温度:180℃(生じた出口温度:約100℃);
吹付けノズルの空気圧:約30psi;
吹付けポンプ速度:12%;
吸引装置:約90%。
化合物IIのミセル水溶液の調製
化合物II(2g)を70%IPA(20ml)に徐々に分散させ、水(14ml)を加えた(IIの溶解度は、70%IPA/H2O中で約47mg/ml、水中で4mg/ml、IPA中で0.08mg/mlであった)。この分散液を超音波処理して、分散した固体をすべて溶解して、淡黄色の溶液を生成した。ロータリーエバポレーターを用いて、IPAを蒸留して、約400mg/mlのIIを含有する水溶液とした。この高濃度水溶液を、ブキB−290吹付け乾燥機を用いて吹付け乾燥し、操作パラメーターを下記のとおり調整した:
入口温度:180℃(生じた出口温度:約100℃);
吹付けノズルの空気圧:約30psi;
吹付けポンプ速度:12%;
吸引装置:約90%。
実施例5
Iの吹付け乾燥から得たミセル状固体の安定性の研究
少量の固体(実施例1からの約10mg)を、秤量ビン内で秤量し、相対湿度が制御された室内に4週間置き、吸収された水の百分率を重量増加分から算出した。また、ウォーターズ(Waters)2690なるHPLCにて、276nmでの外部標準対比HPLCによって、サンプルをアッセイした。データは、ウォーターズ・ミレニアム(Waters Millennium)なるソフトウェアのバージョン3.2を用いて処理した。また、60℃および40℃/相対湿度75%での熱安定性も決定した。サンプルの純度は、秤量したアリコートを、外部標準対比HPLCによってアッセイすることによって決定した。実験から、ミセルは吸湿性ではなく、40℃および60℃でアッセイの継続期間にわたって熱的に安定であることが示唆される。
Iの吹付け乾燥から得たミセル状固体の安定性の研究
少量の固体(実施例1からの約10mg)を、秤量ビン内で秤量し、相対湿度が制御された室内に4週間置き、吸収された水の百分率を重量増加分から算出した。また、ウォーターズ(Waters)2690なるHPLCにて、276nmでの外部標準対比HPLCによって、サンプルをアッセイした。データは、ウォーターズ・ミレニアム(Waters Millennium)なるソフトウェアのバージョン3.2を用いて処理した。また、60℃および40℃/相対湿度75%での熱安定性も決定した。サンプルの純度は、秤量したアリコートを、外部標準対比HPLCによってアッセイすることによって決定した。実験から、ミセルは吸湿性ではなく、40℃および60℃でアッセイの継続期間にわたって熱的に安定であることが示唆される。
明確性および理解を目的として、上記の発明を例示および実施例によって多少とも詳しく説明した。当業者には、付記されたクレームの範囲内で変更および変更を実施し得ることが明らかであると思われる。したがって、上記の説明は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではないことを理解しなければならない。
上記により、本発明の範囲は、上記の説明を参照してではなく、下記に付記されるクレームを参照して、そのようなクレームが権利を与えられるのと等価なもののすべての範囲とともに決定されなければならない。
本願中に引用されたすべての特許、特許願および刊行物は、引用によって、あたかも個々の特許、特許願または刊行物のそれぞれが、そのように個別に意味するかのように、すべての意味で同じ程度に、本明細書に組み込まれる。
Claims (7)
- 水中のその溶解度積(Ksp)が水中の臨海ミセル濃度(CMC)より低い両親媒性化合物からミセルの過飽和水溶液を調製する方法であって、
(a)両親媒性化合物を水混和性有機溶媒に溶解する工程と;
(b)水、および場合により化学量論量のアルカリもしくはアルカリ金属水酸化物水溶液または酸水溶液を加えて、塩を形成して、均質な混合水性溶媒系を与える工程と;
(c)減圧下、該有機溶媒の蒸留を生じる温度で該溶液を加熱して、ミセルおよび0.5%未満の該有機溶媒の過飽和水溶液を生成する工程と
を含む方法。 - 得られた溶液を吹付け乾燥して、安定な無定形固体のミセルを与える工程を更に含む、請求項1記載の方法。
- 得られた溶液を凍結乾燥して、安定な無定形固体を与える工程を更に含む、請求項1記載の方法。
- 該化合物が式I:
で示される化合物であり;該有機溶媒がテトラヒドロフラン(THF)であり;2当量の1MNaOHを加える、請求項1記載の方法。 - ミセル水溶液を吹付け乾燥して、安定な無定形ミセル状固体を与える工程を更に含む、請求項4記載の方法。
- 該化合物が式II:
で示される化合物であり;該溶媒がイソプロパノール(IPA)である、請求項1記載の方法。 - ミセル水溶液を吹付け乾燥して、安定な無定形ミセル状固体を与える工程を更に含む、請求項6記載の方法。
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