JP2011514318A - カドヘリン11(cdh11)アンタゴニストの使用方法 - Google Patents

カドヘリン11(cdh11)アンタゴニストの使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、上皮間葉移行(EMT)または内皮間葉移行(EnMT)、例えば線維症および慢性組織拒絶に関連したEMTまたはEnMTを阻害または予防する新規な方法を提供する。本発明はまた、対象がCDH11発現に関連した疾患を発症するリスクを有するかまたはそうであるかを診断または評価するための方法、ならびにCDH11関連状態と診断された対象の予後を決定するための方法を提供する。本発明は、CDH11アンタゴニストを用いてCDH11活性をダウンモジュレートし、それによってEMTまたはEnMTを阻害する。

Description

発明の背景
胚発生において、上皮および間葉表現型転移は、種々の組織の正しい形成に必要である。しかしこれらのプロセスは、発生のみならず、がんおよび線維症のような病的状態にも関与すると考えられている(Kalluri, R. and Neilson, E.G., J. Clin. Invest. 112, 1776-1784 (2003))。上皮間葉移行(以後、EMT)は、イオンおよび液体トランスポーターとして機能する損傷上皮細胞がマトリックスリモデリング間葉細胞となるプログラムである。このプロセスは、上皮表現型および転写活性化を維持する遺伝子の転写抑制か、あるいは機能的筋線維芽細胞に必要な遺伝子の軽減された抑制のいずれかを必要とする。EMTの特筆すべき一例は、腎臓発生および疾患において観察される。発生中に、間葉細胞がEMTによってまず形成され、次いでこれらの細胞のいくつかが間葉から上皮へ移行して(MET)、前腎、中腎および後腎の上皮を形成する(Dressler, G.R., Trends in Cell Biology 12, 390-395 (2002))。成人において、EMTは多くの進行性腎疾患における末期腎不全の発症に関与している(Liu,Y., J. Am. Soc. Nephrol.,15, 1-12 (2004))。したがって、腎臓形成は相互形質転換を含むが、成人におけるこの柔軟性の抑制は、正常な組織構造およびホメオスタシスの維持のために重要である。
発明の要約
本発明は、対象における線維症と関連した上皮間葉移行(EMT)または内皮間葉移行(EnMT)を阻害または予防する方法であって、治療上有効量のCDH11アンタゴニストを投与することによる、新たな方法を提供する。
本発明はまた、血管線維症、肺高血圧、腎線維症、ネフロン癆、肝線維症、皮膚線維症、肺線維症、関節の線維症(例えばリウマチ性関節炎)、中皮の線維症および腸の線維症(例えば炎症性腸疾患)を含むがこれらに限定されない、CDH11活性に関連した特定の疾患または状態を処置する、新たな方法を提供する。特定の態様において、本発明の方法は腎線維症を処置するために使用される。
他の態様において本発明の方法は、対象における慢性組織(すなわち移植組織またはグラフト組織の)拒絶を予防し、その重症度を低減するために使用できる。組織は例えば、全血、血管、骨、角膜ならびに心臓、腎臓、肝臓、眼、肺および膵臓のような腫瘍臓器を含むが、これらに限定されない。
本発明は更に、対象がEMT、EnMT、線維症または慢性組織拒絶のようなCDH11関連状態を有するかまたはそれを発症するリスクを有するかを評価する方法であって、サンプルをCDH11についてアッセイし、異常濃度または高濃度のCDH11を対象がCDH11関連状態を有するかまたはそれを発症するリスクを有する指標として考える方法を提供する。
また、EMT、EnMT、線維症または慢性組織拒絶のようなCDH11関連状態を診断する方法であって、CDH11と反応する薬物(例えば検出可能なように標識された抗体または核酸)と標的サンプルを接触させて、正常コントロールに対して高濃度のCDH11をCDH11関連状態の指標であると考える方法を提供する。
本発明はまた、CDH11関連状態(例えばEMT、EnMT、線維症および慢性組織拒絶)と診断された対象の予後を決定する方法であって、時間とともに採取した対象由来の少なくとも2種のサンプルをアッセイし、各サンプル中のCDH11濃度を比較し、そしてCDH11濃度が時間とともに上昇または低下しているかを決定し、ここでCDH11の上昇が前記状態の重症度上昇の指標であり、CDH11の低下が前記状態の重症度低下の指標である、方法を提供する。特定の態様において、CDH11アンタゴニストで処置している患者の予後を決定する。
多様なCDH11アンタゴニスト、例えば抗体、融合タンパク質、核酸(例えばRNA干渉薬物およびリボザイム)、免疫複合体(例えば細胞傷害性薬物、免疫抑制剤または化学療法剤と結合した抗原)、低分子、融合タンパク質およびCDH11由来ペプチド化合物が本発明の方法において使用できる。
特定の態様において、CDH11アンタゴニストは抗体(またはそのフラグメント)である。本発明による保護に適した抗体は、少なくとも可変領域配列を有するあらゆる既知の形態の抗体を含む。例えば、抗体はマウス、ヒト、ヒト化、キメラまたは多重特異的モノクローナル抗体である。抗体はFab、Fab'2、ScFv、SMIP、アフィボディー、アビマー、ナノ抗体およびドメイン抗体であってよく、抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDまたはIgE抗体であってよい。
本発明の方法に用いるCDH11アンタゴニストは、単独でまたはほかの治療薬物と組み合わせて投与できる。例えば、抗体は細胞傷害性薬物、他の既知の治療薬物(すなわち免疫抑制剤または化学療法剤)および/または他の治療用抗体と組み合わせて(すなわち共にまたは結合させて)投与できる。一つの態様において、アンタゴニストは、第2の結合分子、例えば抗体(すなわち二重特異性分子を形成することによる)またはCDH11上の異なる標的または異なるエピトープと結合する他の結合薬物と結合する。
他の本発明の特徴および利点は、下記詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
慢性同種移植片拒絶反応と関連した遺伝子と、初期および後期慢性拒絶反応の両方で高度にアップレギュレートされるEMTマーカーであるSnail2と関連した遺伝子間のオーバーラップを示す略図である。 Hannoverデータセットからの発症(progressor)患者および未発症(non-progressor)患者の両方、ならびに(B)コントロールおよび慢性同種移植片拒絶反応グレードIII患者サンプルについての、EMTセットの遺伝子セット富化法(GSEA)の図である。 (A)腎移植後3ヶ月の未発症患者および発症患者由来の腎臓のプロトコル生検、ならびに(b)コントロール、ボーダーライン、グレードI、グレードIIおよびグレードIII腎臓移植を受けた患者の診断生検についての、平均mRNA CDH11発現を示す。 健常者および移植患者のパラフィン包埋腎皮質生検におけるCDH11の免疫組織化学の写真である。 腎移植カニクイザル由来の急性および慢性拒絶サンプルにおけるCDH11 mRNA発現レベルを示す。 心臓移植マウス由来の凍結生検におけるCDH11の免疫組織化学の写真である。 片側尿管閉塞(UUO)マウスモデル由来組織におけるCDH11 mRNA発現レベルを示し、CDH11は繊維性障害におけるEMTマーカーであることを示している。
発明の詳細な説明
本発明をより容易に理解できるようにするために、いくつかの用語をまず定義する。さらなる定義は詳細な説明を通じて説明する。
I.定義
本明細書において使用するとき、用語「カドヘリン」はCa2+依存的細胞間接着分子群を意味する。あらゆるカドヘリンは、多様な数の110アミノ酸細胞外カドヘリン(EC)ドメインを有する1回膜貫通タンパク質である。古典的カドヘリンは5個のECドメインと1個の保存された細胞質ドメインを含む。アミノ酸アラインメントに基づいて、古典的カドヘリンはタイプIとタイプIIサブグループに分けられる。カドヘリンE(上皮)、N(神経)、P(胎盤)およびR(網膜)カドヘリンを含むタイプIカドヘリンは、タイプIIカドヘリンとそれらの特定のアミノ酸配列において異なる。タイプIIカドヘリンはヒトカドヘリン-5、-6、-8、-11および-12を含む。
本明細書において使用するとき、用語「カドヘリン11」(相互に交換可能なように、本明細書において、「CDH11」、「カドヘリン11、タイプ2、ON-カドヘリン(骨芽細胞)」、「CAD11」、「CDHOB」、「OB-カドヘリン」および「OSF-4」とも称する)は、間葉の緩やかに結合した遊走性細胞エレメントのマーカーであるカドヘリンファミリーのメンバーを意味する。CDH11の強い発現は、脳、脊髄、骨髄および骨細胞において発見されており、ヒト子宮内膜腺上皮および間質細胞において制御される。発生において、CDH11発現は初期マウス胚の頭部、体節および肢芽における間葉形態形成に関連しており、肺または腎臓分枝形態形成の間の間葉においても強く発現される。上皮カドヘリン、例えばE-カドヘリンは上皮構造の形成および維持に関与するが、CDH11の発現は遊走性細胞表現型と相関しており、細胞運動性、細胞挿入、組織伸長および筋線維芽細胞分化の重要な決定因子である(例えばBorchers, A., et al., Development, 128, 3049-3060 (2001) ; Desmouliere, A., et al., J. Cell Biol., 122, 103-111 (1993) ; Hinz, B., et al., Mol. Biol. Cell, 15, 4310-4320 (2004) ; Kiener, H.P et al., Mol. Biol. Cell, 17, 2366-2376 (2006) ; Kimura,Y. et al., Developmental Biology, 169, 347-358 (1995) ; Locascio, A. et al., Current Opinion in Genetics & Development, 11, 464-469 (2001); Okazaki,M. et al., J. Biol. Chem., 269, 12092-12098 (1994); Pishvaian, M.J. et al., Cancer Res., 59, 947-952 (1999); Shibata, T., et al., Cancer Letters, 99, 147-153 (1996); Tomita,K. et al., Cancer Res., 60, 3650-3654 (2000); および Valencia,X. et al., J. Exp. Med., 200, 1673-1679 (2004)のとおり。それらの内容を参照により本明細書に明示的に組み込む)。
代表的なCDH11配列は下記の配列を含むが、それに限定されない。
ホモサピエンスカドヘリン11、タイプ2、OB-カドヘリン(骨芽細胞)(CDH11)(NM_001797)(配列番号1)
MKENYCLQAALVCLGMLCHSHAFAPERRGHLRPSFHGHHEKGKEGQVLQRSKRGWVWNQFFVIEEYTGPDPVLVGRLHSDIDSGDGNIKYILSGEGAGTIFVIDDKSGNIHATKTLDREERAQYTLMAQAVDRDTNRPLEPPSEFIVKVQDINDNPPEFLHETYHANVPERSNVGTSVIQVTASDADDPTYGNSAKLVYSILEGQPYFSVEAQTGIIRTALPNMDREAKEEYHVVIQAKDMGGHMGGLSGTTKVTITLTDVNDNPPKFPQSVYQMSVSEAAVPGEEVGRVKAKDPDIGENGLVTYNIVDGDGMESFEITTDYETQEGVIKLKKPVDFETKRAYSLKVEAANVHIDPKFISNGPFKDTVTVKISVEDADEPPMFLAPSYIHEVQENAAAGTVVGRVHAKDPDAANSPIRYSIDRHTDLDRFFTINPEDGFIKTTKPLDREETAWLNITVFAAEIHNRHQEAKVPVAIRVLDVNDNAPKFAAPYEGFICESDQTKPLSNQPIVTISADDKDDTANGPRFIFSLPPEIIHNPNFTVRDNRDNTAGVYARRGGFSRQKQDLYLLPIVISDGGIPPMSSTNTLTIKVCGCDVNGALLSCNAEAYILNAGLSTGALIAILACIVILLVIVVLFVTLRRQKKEPLIVFEEEDVRENIITYDDEGGGEEDTEAFDIATLQNPDGINGFIPRKDIKPEYQYMPRPGLRPAPNSVDVDDFINTRIQEADNDPTAPPYDSIQIYGYEGRGSVAGSLSSLESATTDSDLDYDYLQNWGPRFKKLADLYGSKDTFDDDS
本明細書において使用するとき、用語「CDH11アンタゴニスト」はCDH11活性を下方調節するあらゆる薬物を意味し、CDH11発現をダウンレギュレートするか、あるいはCDH11機能(例えば細胞遊走を誘導する能力)を阻害する薬物を含む。かかる阻害剤は、例えばCDH11介在性細胞相互作用を阻害または阻止できる。
本明細書において使用するとき、用語「下方調節」はCDH11の生物学的活性における統計的に有意な低下を意味し、該活性の完全な阻止(すなわち阻害)を含む。例えば、「下方調節」はCDH11発現の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の低下を意味し得る。
本明細書において使用するとき、用語「上皮間葉移行」(EMT)は上皮表現型から間葉表現型への変換を意味し、これは胚発生の正常なプロセスである。EMTはまた、イオンおよび液体トランスポーターとして機能する損傷上皮細胞がマトリックスリモデリング間葉細胞となるプロセスでもある。癌腫において、この形質転換は変化した細胞形態、間葉タンパク質の発現および増加した侵襲性をもたらす。EMTを定義する基準は、インビトロでの上皮細胞極性の減少、個々の細胞への分離およびそれに続く細胞運動性の獲得後の分散を含む(Vincent-Salomon et al., Breast Cancer Res. 2003; 5(2): 101-106参照)。EMTにおける発現、分布および/または機能において変化し、そして必然的に関与する分子クラスは、増殖因子(例えば形質転換増殖因子(TGF)−β、wnts)、転写因子(例えばsnails、SMAD、LEFおよび核β−カテニン)、細胞間接着軸の分子(カドヘリン、カテニン)、細胞骨格調節分子(Rhoファミリー)および細胞外プロテアーゼ(マトリックスメタロプロテイナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーター)を含む(Thompson et al., Cancer Research 65, 5991-5995, July 15, 2005参照)。
本明細書において使用するとき、用語「間葉から上皮への移行」(MET)は、間葉細胞が上皮細胞に移行して前腎、中腎および後腎の上皮を形成する基礎的な発生学的プロセスを意味する。wnt/無翅および骨形態形成タンパク質群を含む多様な増殖因子群が腎臓METの重要なレギュレーターである。特に、線維芽増殖因子(FGF)、FGF受容体(FGFR)およびFGFシグナルを調節するプロテオグリカンが腎臓METの本質的な調節化合物である(Chaffer et al., Cancer Research 66, 11271-11278, December 1, 2006参照)。
本明細書において使用するとき、用語「内皮間葉移行」(EnMT)は、内皮細胞の表現型が間葉−筋線維芽細胞表現型に変化することを意味する。
本明細書において使用するとき、用語「上皮」は、管および小腔の裏打ち部分を含む体の内部および外部表面の被膜を意味する。それは細胞間接合によって外側部が相互に広範囲にわたって接着している構成細胞のため、比較的薄いシートまたは層を形成する上皮細胞の集合から成る。層は二分されており、先端側と底側を有する。上皮細胞の緊密な組織化にも拘わらず、上皮は幾ばくかの柔軟性を有しており、上皮層の細胞は形状を変化することができ、例えば平面状から円柱状に変化し、あるいは一方の末端でつねって他方を拡大する。しかし、これらは個別に生じるよりも、細胞集団において生じる傾向がある(Thompson et al., Cancer Research 65, 5991-5995, July 15, 2005参照)。
本明細書において使用するとき、用語「間葉」は胚子中胚葉の一部を意味し、ゼラチン状基質中にセットされた、緩やかに固められた未分化の細胞から成り、それから結合組織、骨、軟骨ならびに循環系およびリンパ系が発生する。間葉は比較的広範囲の組織ネットワークを形成する細胞の集合である。間葉は完全な細胞層ではなく、該細胞は典型的には、それと隣接するものとの接着に関与する表面上の点のみを有する。これらの接着はカドヘリン会合も含み得る(Thompson et al., Cancer Research 65, 5991-5995, July 15, 2005参照)。
本明細書において使用するとき、用語「線維症」は、臓器または組織の正常な構成要素としての線維組織の形成とは異なり、修復または応答プロセスとして臓器または組織における線維性結合組織の過剰な形成または発生を意味する。線維症の例は、血管線維症、肺高血圧に関連した血管線維症、腎線維症、肝線維症、皮膚線維症、肺線維症、関節の線維症(例えばリウマチ性関節炎)、中皮の線維症、眼線維症および腸の線維症(例えば炎症性腸疾患)を含むが、これらに限定されない。
本明細書において使用するとき、用語「間質線維症」は、組織間または臓器の部分間の小さな狭い空間に関するか、あるいはそれに位置する線維症を意味する。例えば、間質肺線維症(間質肺疾患および肺線維症とも知られる)は、間質、すなわち肺胞間の組織の線維症(すなわち瘢痕)を意味する。さらに、腎間質線維症(腎線維症とも知られる)は、尿細管と間質毛細血管の破壊、ならびに細胞外マトリックスタンパク質の蓄積によって特徴付けられる。
本明細書において使用するとき、用語「血管リモデリング」は血管系における構造的および細胞的変化の能動的プロセスを意味する線維症のタイプである。これらの変化は全て、α平滑筋アクチンを発現する細胞数の増加によって特徴付けられる。このα平滑筋陽性細胞の蓄積は、レジデント血管平滑筋細胞(SMC)の増殖的拡大、血管損傷部位への循環系前駆細胞の採用または内皮細胞の間葉表現型への移行(EnMT)によってもたらされ得る。
本明細書において使用するとき、用語「移植」は、ある対象から「移植片」または「グラフト」と呼ばれる細胞、組織または臓器を採取し、それを(通常)別の対象に配置するプロセスを意味する。移植片を提供する対象は「ドナー」と呼ばれ、移植を受ける対象は「レシピエント」と呼ばれる。同じ種の遺伝的に異なる2体の対象間での臓器またはグラフト移植は、「同種移植」と呼ばれる。異なる種の対象間でのグラフト移植は、「異種移植」と呼ばれる。
本明細書において使用するとき、用語「移植片拒絶」は、移植レシピエントによって発現される活性な免疫応答による、臓器機能不全の非免疫学的原因とは独立した、臓器の機能的および構造的悪化として定義される。
本明細書において使用するとき、用語「急性拒絶」(例えば移植片の)は、移植後最初の5〜60日後に発症する移植臓器の拒絶を意味する。これは一般に、細胞介在性免疫損傷の徴候である。遅延した過敏症および細胞傷害性メカニズムの両方が関与していると考えられている。免疫損傷はHLA、ならびに尿細管上皮および血管内皮によって発現される、可能性のある他の細胞特異的抗原に対する。
本明細書において使用するとき、用語「慢性拒絶」(例えば移植片の)は、移植後数ヶ月または数年で生じ、最終的には臓器機能の進行的減少と関連する同種移植の線維症および硬化症を導く、免疫学的損傷(例えば慢性拒絶)および非免疫学的損傷(例えば高血圧性腎硬化症またはシクロスポリンAのような免疫抑制剤の腎毒性)の結果を意味する。
最も一般的な組織学的徴候は、しばしば「移植血管疾患」または「閉塞性動脈疾患(OA)」と称され、加速性アテローム性動脈硬化症と関連し得る、筋性動脈の進行的狭窄である。閉塞性動脈疾患は、一次的には動脈血流を危うくして慢性虚血性損傷および梗塞に罹患しやすくすることによって、同種移植を損なう。慢性同種移植片拒絶反応の他の一般的な特徴は、斑状間質炎症、線維症および関連する柔組織萎縮、肺同種移植における気管支梢および肝臓における胆管のような上皮裏打ち導管の破壊、ならびに臓器関連リンパ組織の欠損を含む。
本明細書において使用するとき、用語「グレードI拒絶」または「グレードI同種移植片拒絶反応」は、軽度の間質線維症および尿細管萎縮(皮質の<25%)を意味する。
本明細書において使用するとき、用語「グレードII拒絶」または「グレードII同種移植片拒絶反応」は、中度の間質線維症および尿細管萎縮(皮質の25〜50%)を意味する。
本明細書において使用するとき、用語「グレードIII拒絶」または「グレードIII同種移植片拒絶反応」は、中度の間質線維症および尿細管萎縮(皮質の>50%)を意味する。
本明細書において使用するとき、用語「発症(progressor)」または「発症患者」は、次の6〜12ヶ月に慢性拒絶を発症するであろう移植レシピエントを意味する。
本明細書において使用するとき、用語「未発症」、「安定」、「安定患者」または「未発症患者」は、次の6〜12ヶ月に安定な移植片機能を示すであろう移植レシピエントを意味する。
本明細書において使用するとき、用語「内膜過形成」は、損傷に対する血管の普遍的応答を意味する。これは、増殖、移動および細胞外マトリックス成膜を導く細胞活性化のプログラムを誘導する、機械的因子、細胞因子および体液因子による平滑筋細胞の協調的刺激を含む。内膜過形成は、特に静脈および合成血管移植片において、遅発型バイパス移植片不全を引き起こし得る。
II.CDH11アンタゴニスト
本明細書において使用するとき、用語「アンタゴニスト」は、CDH11活性を下方調節するあらゆる物質を意味し、CDH11発現をダウンレギュレートするか、あるいはCHD11機能(例えば細胞遊走を誘導する能力)を阻害する物質を含む。かかる阻害剤は、例えばCHD11介在性細胞相互作用を阻害または阻止できる。代表的なアンタゴニストは、抗体、核酸(例えばアンチセンス分子、例えばリボザイムおよびRNA干渉物質)、免疫複合体(例えば治療薬物、例えば細胞傷害性物質、免疫抑制剤または化学療法剤と結合した抗体)、低分子阻害剤、融合タンパク質およびCDH11由来ペプチド化合物をふくむが、これらに限定されない。
A.抗体
本発明の一つの態様において、本発明は、CDH11と結合してCDH11活性を阻害し、そして/またはCDH11発現を下方調節する抗体を使用する。例えば、抗体はCDH11と結合でき、CDH11介在性細胞相互作用を妨げる。用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、本明細書において相互に交換可能なように使用され、抗体全体およびいずれかの抗原結合フラグメント(すなわち抗原結合部分)またはそれらの一本鎖を含む。「抗体」はジスルフィド結合で相互に結合している少なくとも2個の重鎖(H)と2個の軽鎖(L)を含む。各重鎖は重鎖可変領域(Vと略す)および重鎖定常領域から成る。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3の3つのドメインから成る。各軽鎖は軽鎖可変領域(Vと略す)および軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域は1個のドメインCLから成る。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域で分断された相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分けることができる。VおよびVはそれぞれ3つのCDRと4つのFRから成り、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列している。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む、宿主組織または因子と免疫グロブリンとの結合を仲介し得る。
用語抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)は、本明細書において使用するとき、抗原(例えばCDH11)と特異的に結合する能力を保持している1種以上の抗体のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は全長抗体のフラグメントによって実施され得ることが示されている。用語抗体の「抗原結合部分」に含まれる結合フラグメントの例は、(i) Fabフラグメント、V、V、CLおよびCH1ドメインから成る一価フラグメント;(ii) F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって結合した2個のFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii) VおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iv) 抗体の一本のアームのVおよびVドメインから成るFvフラグメント;(v) VHおよびVLドメインを含むdAb;(vi) Vドメインから成るdAbフラグメント(Ward et al. (1989) Nature 341, 544-546);(vii) VHおよびVLドメインから成るdAb;ならびに(viii) 単離された相補性決定領域(CDR)または(ix) 所望により合成リンカーで結合していてもよい2つ異常の単離されたCDRの組合せを含む。さらに、Fvフラグメントの2個のドメインVおよびVは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは組換え法を用いて、VおよびV領域が対になって一価分子を形成する1本のタンパク質鎖として作成することができる合成リンカーによって、結合させることができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al. (1988) Science 242, 423-426; and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879-5883参照)。かかる一本鎖抗体も用語抗体の「抗原結合部分」に含まれることを意図する。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の常套の方法を用いて得られ、該フラグメントはインタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングする。抗原結合部分は組換えDNA技術またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは科学的切断によって作成できる。
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用するとき、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体、すなわち微量で存在し得る天然に生じ得る突然変異を除き、集団が同一である個々の抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、1種の抗原性部位に対する。さらに、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む常套の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の1個の決定基に対する。モノクローナル抗体はあらゆる既知の技術および本明細書に記載のもの、例えばKohler et al. (1975) Nature, 256:495に記載のハイブリドーマ法、例えばLonberg, et al. (1994) Nature 368(6474): 856-859に記載の例えばトランスジェニック動物、組換えDNA法(例えば米国特許4,816,567参照)または例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991) およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いたファージ抗体ライブラリーを用いて作成することができる。モノクローナル抗体はキメラ抗体、ヒト抗体およびヒト化抗体を含み、天然に生じ得るかあるいは組換え的に作成できる。
用語「組換え抗体」は、組換え方法によって調製され、発現され、作成されあるいは単離される抗体、例えば(a) 免疫グロブリン遺伝子(例えばヒト免疫グロブリン遺伝子)についてトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマル(transchromosomal)である動物(例えばマウス)またはそれから調製したハイブリドーマから単離した抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離した抗体、(c)組換え、コンビナトリアル抗体ライブラリー(例えばヒト抗体配列を含む)からファージディスプレーを用いて単離した抗体、および(d) 免疫グロブリン遺伝子配列(例えばヒト免疫グロブリン遺伝子)の他のDNA配列へのスプライシングを含むいずれかの他の方法によって調製、発現、作成または単離した抗体を意味する。かかる組換え抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有していてよい。しかしある態様において、かかる組換えヒト抗体はインビトロ突然変異誘発に供することができ、したがって組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来するかまたはそれに関するが、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しなくてもよい配列である。
用語「キメラ免疫グロブリン」または抗体は、可変領域が第1の種に由来し、定常領域が第2の種に由来する免疫グロブリンまたは抗体を意味する。キメラ免疫グロブリンまたは抗体は、例えば遺伝子操作によって、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構築できる。
用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用するとき、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図し、例えばKabat et al. (See Kabat, et al. (1991) Sequences of proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)に記載される。さらに、抗体が定常領域を含むとき、該定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体はヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発による、あるいはインビボでの体細胞突然変異による変異)を含んでよい。しかし用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用するとき、マウスのような別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含まない。
ヒト抗体において、少なくとも1個以上のアミノ酸が、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基、例えば活性向上アミノ酸残基で置換されていてよい。典型的にはヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の部分ではないアミノ酸残基で置換された20個までの位置を有し得る。特定の態様において、これらの置換は以下に詳述するように、CDR領域内である。
用語「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」は、少なくとも1個のヒト化免疫グロブリン鎖または抗体鎖(すなわち少なくとも1本の軽鎖または重鎖)を含む免疫グロブリンまたは抗体を意味する。用語「ヒト化免疫グロブリン鎖」または「ヒト化抗体鎖」(すなわち「ヒト化免疫グロブリン軽鎖」または「ヒト化免疫グロブリン重鎖」)は、実質的にヒト免疫グロブリンに由来の可変フレームワーク領域または実質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体に由来の相補性決定領域(CDR)(例えば少なくとも1個のCDR、好ましくは2個のCDR、より好ましくは3個のCDR)を含み、そしてさらに定常領域(例えば軽鎖の場合には少なくとも1個の定常領域またはその部分、重鎖の場合には好ましくは3個の定常領域)を含む、可変領域を有する免疫グロブリン鎖または抗体鎖(すなわちそれぞれ軽鎖または重鎖)を意味する。用語「ヒト化可変領域」(例えば「ヒト化軽鎖可変領域」または「ヒト化重鎖可変領域」)は、実質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体に由来の可変フレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体に由来の相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を意味する。
「二重特異的」または「二重機能的抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異的抗体はハイブリドーマの融合またはFab'フラグメントの結合を含む多様な方法によって作成できる。例えばSongsivilai & Lachmann, (1990) Clin. Exp. Immunol. 79, 315-321; Kostelny et al. (1992) J. Immunol. 148, 1547-1553参照。
本明細書において使用するとき、「異種抗体」は、抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物または植物に関して定義される。
「単離された抗体」は、本明細書において使用するとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えばCDH11と特異的に結合する単離された抗体は、CDH11以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を意味する。さらに、単離された抗体は、典型的には、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない。本発明の一つの態様において、異なるCDH11結合特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、十分に定義された組成物に組み合わせられる。
本明細書において使用するとき、「アイソタイプ」は重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgGl)を意味する。一つの態様において、抗体またはその抗原結合部位はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDまたはIgE抗体アイソタイプから選択されるアイソタイプのものである。
本明細書において使用するとき、「アイソタイプスイッチング」は抗体のクラスまたはアイソタイプがあるIgクラスから他のIgクラスの一つに変化する現象を意味する。
本明細書において使用するとき、「非スイッチアイソタイプ」は、アイソタイプスイッチングが起こらないときに作成される、重鎖のアイソタイプクラスを意味する;非スイッチアイソタイプをコードするCH遺伝子は典型的には、機能的に再配列されたVDJ遺伝子からすぐ下流の最初のCH遺伝子である。アイソタイプスイッチングは、古典的または非古典的アイソタイプスイッチングに分類される。古典的アイソタイプスイッチングに分類は抗体をコードする遺伝子における少なくとも1個のスイッチ配列領域を含む組換え事象によって生じる。非古典的アイソタイプスイッチングは、例えばヒトσμとヒトΣμ間の相同組換え(δ関連欠失)によって生じ得る。別の非古典的スイッチングメカニズム、例えばトランスジーン間および/または染色体間組換えは、とりわけ、アイソタイプスイッチングを生じ、達成し得る。
本明細書において使用するとき、用語「スイッチ配列」はスイッチ組換えに関与するDNA配列を意味する。「スイッチドナー」配列、典型的にはμスイッチ領域は、スイッチ組換えにおいて欠失される構成領域の5’(すなわち上流)である。「スイッチアクセプター」領域は、欠失される構成領域と置換定常領域(例えばγ、ε等)の間に存在する。組換えが常に生じる特定の部位が存在しないため、最終遺伝子配列は典型的には、構成から予測できない。
用語「エピトープ」または「抗原性決定基」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位を意味する。エピトープは、連続アミノ酸またはタンパク質の立体折り畳みによって並列された非連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒に曝されても保持されるが、立体折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒で処理すると失われる。エピトープは典型的には、固有の空間コンホメーションの少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸を含む。エピトープの空間コンホメーションを決定する方法は、当該分野の技術および本明細書に記載のもの、例えばX線結晶学および二次元核磁気共鳴を含む。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)参照。
ラマ種(アルパカ、ラマおよびビクーナ)のような新世界メンバーを含む、ラクダおよびヒトコブラクダ(フタコブラクダおよびヒトコブラクダ)ファミリーのメンバーから得た抗体タンパク質は、サイズ、構造、複雑度およびヒト対象に対する抗原性について特徴付けられている。この哺乳類のファミリーにおいて天然に見られるあるIgG抗体は軽鎖を欠き、したがって他の動物由来の抗体では典型的な2本の重鎖と2本の軽鎖を有する4鎖四量体構造とは構造的に異なっている。例えばPCT公開公報 WO 94/04678参照。
小さな、VHHと同定される1個の可変ドメインであるラクダ抗体の領域は、標的に高い親和性を有する小さなタンパク質を得るように遺伝子操作して得ることができ、低分子量の、「ラクダナノ抗体」として知られる抗体由来タンパク質となる。米国特許5,759,808参照;Stijlemans et al., 2004 J. Biol. Chem. 279: 1256-1261; Dumoulin et al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger et al., 2003 Bioconjugate Chem. 14: 440-448; Cortez-Retamozo et al., 2002 Int. J. Cancer 89: 456-62; および Lauwereys. et al., 1998 EMBO J. 17: 3512-3520も参照。ラクダ抗体および抗体フラグメントの人工ライブラリーは、例えばAblynx, Ghent, Belgiumから商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体と同様に、ラクダ抗体のアミノ酸配列を組換え的に変化させて、ヒト配列とより似た配列を得ることができ、すなわちナノ抗体を「ヒト化」することができる。したがってラクダ抗体の本来低い抗原性をさらに低下させることができる。
ラクダナノ抗体はヒトIgG分子の約10分の1の分子量を有し、該タンパク質はわずか数ナノメートルの物理的直径を有する。小さなサイズの一つの結果は、より大きな抗体タンパク質には機能的に不可視の抗原部位に結合するラクダ抗体の能力であり、すなわちラクダナノ抗体は古典的免疫学的技術を用いると陰性である抗原を検出する物質として、そして可能性のある治療薬として有用である。したがって、小さなサイズの別の結果は、標的タンパク質の溝または狭い隙間の特定の部位と結合する結果として阻害することができ、したがって古典的抗体のものよりも古典的低分子量薬物の機能により似た能力を有し得る。
低分子量およびコンパクトなサイズは、さらにラクダナノ抗体に高い熱安定性、極端なpHおよびタンパク分解に対する安定性並びに低い抗原性をもたらす。別の結果はラクダナノ抗体が循環系から組織へ、血液脳関門を通過するときでさえ容易に移動することであり、そして神経組織に作用する障害を処置できることである。ナノ抗体はさらに、血液脳関門を通過する薬物移動を促進できる。2004年8月19日に公開された米国特許公開公報20040161738参照。ヒトにおける低い抗原性と組み合わせてこれらの特徴は、優れた治療能力を示す。さらに、これらの分子は大腸菌のような原核細胞において十分に発現され得る。
したがって、本発明の特徴は、CDH11に対する高い親和性を有するラクダ抗体またはラクダナノ抗体である。本明細書のある態様において、ラクダ抗体またはナノ抗体は、ラクダ動物において天然に生産され、すなわち他の抗体について本明細書に記載の技術を用いて、CDH11またはそのペプチドフラグメントで免疫したラクダによって生産される。あるいは、抗CDH11ラクダナノ抗体は操作されており、すなわち例えば標的として本明細書に記載のCDH11またはCDH11エピトープでのパニング法を用いて適切に突然変異誘発されたラクダナノ抗体を示すファージのライブラリーから、選択して作成される。人工ナノ抗体は、受容対象における半減期を45分から2週間に延長するために、さらに遺伝子操作によってカスタマイズされていてもよい。
二重特異性抗体は二価の二重特異的分子であり、VおよびVドメインが同じ鎖の2つのドメイン間を対にするには短すぎるリンカーによって連結された1個のポリペプチド鎖で発現される。VおよびVドメインは別の鎖の相補的ドメインと対になり、それによって2個の抗原結合部位を作成する(例えばHolliger et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak et al., 1994 Structure 2:1121-1123参照)。二重特異的抗体は、同じ細胞内で構造VHA−VLBおよびVHB−VLA(V−V立体配置)またはVLA−VHBおよびVLB−VHA(V−V立体配置)を有する2つのポリペプチド鎖を発現させて作成できる。それらのほとんどは、細菌中で可溶形態で発現され得る。
一本鎖二重特異的抗体(scDb)は、約15アミノ酸残基のリンカーで2個の二重特異的抗体形成ポリペプチドを結合して作成される(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(3-4):128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36参照)。scDbは可溶性、活性モノマー形態で細菌中で発現され得る(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(34): 128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36; Pluckthun and Pack, 1997 Immunotechnology, 3(2): 83-105; Ridgway et al., 1996 Protein Eng., 9(7):617-21参照)。
二重特異的抗体はFcと融合させて「二重−二重抗体」を作成できる(Lu et al., 2004 J. Biol. Chem.、279(4):2856-65参照)。
本発明はさらに、抗体の機能的特性を示すが、それらのフレームワークおよび他のポリペプチド(例えば抗体遺伝子によってコードされるものまたはインビボで抗体遺伝子の組換え物によって作成されるもの以外のポリペプチド)由来の抗原結合部分に由来するCDH11結合分子を提供する。これらの結合分子の抗原結合ドメイン(例えばCDH11結合ドメイン)は定向進化プロセスによって作成する。米国特許7,115,396参照。抗体の可変ドメインと同様の全体的な折り畳み(免疫グロブリン様折り畳み)を有する分子は、適切な足場タンパク質である。抗原結合分子に派生するのに適した足場タンパク質は、以下のものを含む:フィブロネクチンもしくはフィブロネクチンダイマー、テネイシン、N−カドヘリン、E−カドヘリン、ICAM、タイチン、GCSF受容体、サイトカイン受容体、グリコシダーゼ阻害剤、抗生物質色素タンパク質、ミエリンメンバー接着分子P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T細胞抗原受容体、CD1、C2およびVCAM−1のIセットドメイン、ミオシン結合タンパク質CのIセット免疫グロブリンドメイン、ミオシン結合タンパク質HのIセット免疫グロブリンドメイン、テロキンのIセット免疫グロブリンドメイン、NCAM、twitchin、ニューログリアン、成長ホルモン受容体、エリスロポイエチン受容体、プロラクチン受容体、インターフェロンガンマ受容体、βガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、βグルクロニダーゼ、トランスグルタミナーゼ、T細胞抗原受容体、スーパーオキシドジスムターゼ、組織因子ドメイン、チトクロムF、緑色蛍光タンパク質、GroELおよびタウマチン。
非抗体結合分子の抗原結合ドメイン(例えば免疫グロブリン様折り畳み)は、10 kD未満または7.5 kD未満(例えば分子量7.5〜10 kD)の分子量を有し得る。抗原結合ドメインに派生するために使用されるタンパク質は、天然に生じる哺乳類タンパク質(例えばヒトタンパク質)であり、それが由来するタンパク質の免疫グロブリン様折り畳みと比較したとき、抗原結合ドメインは50%まで(例えば34%、25%、20%または15%まで)の成熟アミノ酸を含む。免疫グロブリン様折り畳みを有するドメインは一般に、50〜150 アミノ酸(例えば40〜60 アミノ酸)から成る。
非抗体結合分子を作成するため、クローンのライブラリーは抗原結合表面を形成する足場タンパク質の領域の配列(例えば抗体可変ドメイン免疫グロブリン様折り畳みと位置および構造において類似する領域)をランダム化して作成する。ライブラリークローンは目的の抗原(例えばhCDH11)に対する特異的結合および他の機能(例えばCDH11の生物学的活性の阻害)について試験する。選択したクローンはさらなるランダム化および選択の基礎として用いて、抗原に対するより高い親和性を有する誘導体を作成することができる。
高い親和性の結合分子は、例えば足場としてフィブロネクチンIIIの第10モジュール(10Fn3)を用いて、作成される。ライブラリーは10FN3の3つのCDR様ループのそれぞれについて、23〜29、52〜55および78〜87残基で構築される。各ライブラリーを構築するために、各CDR様領域と重複する配列をコードするDNAセグメントをオリゴヌクレオチド合成によってランダム化する。選択可能な10Fn3ライブラリーを作成する技術は、米国特許6,818,418および7,115,396; Roberts and Szostak, 1997 Proc. Natl. Acad. Sci USA 94:12297;米国特許6,261,804; 米国特許6,258,558; および Szostak et al. WO98/31700に記載されている。
非抗体結合分子は、標的抗原に対する結合活性を増加させるために、二量体または多量体として作成できる。例えば、抗原結合ドメインはFc−Fc二量体を形成する抗体の定常領域(Fc)との融合体として発現される。例えば米国特許7,115,396参照。
本発明の方法に使用できる抗体はまた、本明細書に記載の特定の抗体と同じものまたは重複エピトープと結合する抗体、すなわちCDH11との結合について競合するか、または本明細書に記載の特定の抗体によって認識されるCDH11上のエピトープと結合する抗体を含む。
同じものまたは重複エピトープを認識する抗体は、例えばある抗体が標的抗原との別の抗体の結合を阻止する能力を示すことによるイムノアッセイ、すなわち競合的結合アッセイのような常套の技術を用いて同定できる。競合的結合は、試験下で免疫グロブリンがCDH11のような抗原に対する参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイにおいて決定される。多くのタイプの競合的結合アッセイ、例えば次のものが知られている:固相直接または関節ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または関節酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., (1983) Methods in Enzymology 9:242参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al., (1986) J. Immunol. 137:3614参照);固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press参照);I-125ラベルを用いた固相直接ラベルRIA(Morel et al., (1988) Mol. Immunol. 25(1):7参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., (1990) Virology 176:546);および直接標識化RIA(Moldenhauer et al., (1990) Scand. J. Immunol. 32:77参照)。典型的には、かかるアッセイは固体表面と結合した精製抗原(例えばCDH11)またはそれらのいずれかを有する細胞、未標識化試験免疫グロブリンおよび標識化参照免疫グロブリンの使用を含む。競合的阻害は試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞と結合するラベルの量を決定して測定される。通常は試験免疫グロブリンは過剰で存在する。通常、競合抗体が過剰に存在するとき、それは共通する抗原との参照抗体の特異的結合を、少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%またはそれ以上阻害する。
本明細書において使用するとき、用語「特異的結合」、「特異的に結合する」、「選択的結合」および「選択的に結合する」は、抗体またはその抗原結合部分が特定の抗原またはエピトープについてかなりの親和性を示し、他の抗原またはエピトープとの顕著な交叉反応性を示さないことを意味する。「かなりの」または好ましい結合は、少なくとも106、107、108、109 M-1または1010 M-1の親和性での結合を含む。107 M-1以上、好ましくは108 M-1以上の親和性がより好ましい。本明細書に記載の値の中間値も本発明の範囲に含まれることを意図しており、好ましい結合親和性は例えば106〜1010 M-1、好ましくは107〜1010 M-1、より好ましくは108〜1010 M-1の親和性の範囲として示され得る。「顕著な交叉反応性を示さない」抗体は、望ましくない物質(例えば望ましくないタンパク質状物質)とかなりの結合をしないものである。特異的または選択的結合は、例えばScatchard分析および/または競合的結合アッセイに従って、かかる結合を決定する当該技術分野において知られているいずれかの方法に従って、決定することができる。
用語「KD」は本明細書において使用するとき、特定の抗体抗原相互作用の解離平衡定数または抗原に対する抗体の親和性を意味する。一つの態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴アッセイまたは細胞結合アッセイを用いて測定したとき、50 nMまたはそれよりよい(すなわち、それ以下)(例えば40 nMまたは30 nMまたは20 nMまたは10 nMまたはそれ未満)の親和性(KD)で抗原(例えばCDH11)と結合する。特定の態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴アッセイまたは細胞結合アッセイを用いて測定したとき、8 nMまたはそれよりよい(例えば7 nM、6 nM、5 nM、4 nM、2 nM、1.5 nM、1.4 nM、1.3 nM、1nMまたはそれ未満)親和性(KD)でCDH11と結合する。他の態様において、抗体またはその抗原結合部分は、分析物として組換えCDH11を、リガンドとして本抗体を用いてBIACORE 3000装置で表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定すると、約10-7 M未満、例えば約10 8 M、10-9 Mまたは10-10 M未満あるいはより低い親和性(KD)で抗原(例えばCDH11)と結合し、所定の抗原または密接に関連した抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)との結合親和性よりも少なくとも2倍優れた親和性で所定の抗原と結合する。
用語「Koff」は本明細書において使用するとき、抗体/抗原複合体から抗体の解離についてのオフレート(off rate)を意味する。
用語「EC50」は本明細書において使用するとき、インビトロまたはインビボアッセイにおいて応答を誘導する抗体またはその抗原結合部分の、最大応答の50%である濃度、すなわち最大応答とベースラインの中間を意味する。
本明細書において使用するとき、「グリコシル化パターン」は、タンパク質、よりとりわけ免疫グロブリンタンパク質と共有結合する炭水化物単位のパターンと定義される。
用語「天然に生じる」は、本明細書において対象に適用して使用するとき、ある対象が天然で見出され得ることを意味する。例えば生物(ウイルスを含む)に存在し、天然の源から単離でき、そして研究室で人によって意図的に修飾されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に生じている。
用語「再配列」は、本明細書において使用するとき、完全なVまたはVドメインを本質的にコードするホンホメーションにおいてVセグメントがそれぞれD−JまたはJセグメントと隣接した位置にある、重鎖または軽鎖免疫グロブリン座の立体配置を意味する。再配列された免疫グロブリン遺伝子座は生殖系列DNAとの比較によって同定できる;再配列座は少なくとも1個の組換えヘプタマー/ノナマーホモロジー要素を有する。
用語「再配列されていない」または「生殖系列立体配置」は、本明細書において使用するとき、Vセグメントについて、VセグメントがDまたはJセグメントと隣接するように組み換えられていない立体配置を意味する。
用語「修飾された」または「修飾」は本明細書において使用するとき、抗体中の1個以上のアミノ酸の変化を意味する。変化は1個以上の位置でのアミノ酸の付加、置換または欠失によって作成され得る。変化はPCR突然変異誘発のような既知の技術を用いて作成できる。例えばある態様において、本発明の方法に使用される抗体を修飾して、CDH11に対する抗体の結合親和性を修飾することができる。
本発明はまた、本発明の方法に使用する抗体の配列において「保存的アミノ酸置換」、すなわちヌクレオチド配列によってコードされるかまたはアミノ酸配列を含む抗体の抗原、すなわちCDH11との結合を抑制しないヌクレオチドおよびアミノ酸配列を含む。保存的アミノ酸置換は、あるクラスのアミノ酸を同じクラスのアミノ酸で置換することを含み、ここでクラスは共通の物理化学的アミノ酸側鎖特性および例えばDayoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスによって決定すると天然で見られる相同タンパク質における高い置換頻度によって定義される。アミノ酸側鎖の6個の一般クラスが分類され、含まれる:クラスI(Cys); クラス II (Ser、Thr、Pro、Ala、Gly); クラス III (Asn、Asp、Gln、Glu); クラス IV (His、Arg、Lys); クラス V (Ile、Leu、Val、Met); および クラス VI (Phe、Tyr、Trp)。例えば、Asn、GlnまたはGluのような別のクラスIII残基によるAspの置換は保存的置換である。したがって、本発明の抗CDH11抗体において予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じクラスの別のアミノ酸残基で置換される。抗原結合性を削除しないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当該技術分野において周知である(例えばBrummell et al., Biochem. 32:1180-1187 (1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999); および Burks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:.412-417 (1997)参照)。
用語「非保存的アミノ酸置換」は、あるクラスのアミノ酸を別のクラスのアミノ酸で置換すること、例えばクラスII残基のAlaをクラスIII残基、例えばAsp、Asn、GluまたはGlnで置換することを意味する。
あるいは他の態様において、突然変異(保存的または非保存的)を抗CDH11抗体コード配列の全てまたは一部に沿って、例えば飽和突然変異誘発によって、ランダムに導入して、得られた修飾抗CDH11抗体を結合活性についてスクリーニングすることができる。
「コンセンサス配列」は関連する配列のファミリー内で最も頻繁に生じるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列である(例えばWinnaker, From Genes to Clones (Verlagsgesellschaft, Weinheim, Germany 1987参照)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列の各位置は該ファミリーのその位置で最も頻繁に生じるアミノ酸によって占められる。2種のアミノ酸が等しく頻繁に生じるとき、いずれかがコンセンサス配列に含まれ得る。免疫グロブリンの「コンセンサスフレームワーク」はコンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク領域を意味する。
同様に、CDRのコンセンサス配列は本発明のCDH11抗体のCDRアミノ酸配列の最適なアラインメントによって派生され得る。
操作抗体または修飾抗体
本発明の抗体は、出発物質として修飾抗体を作成するための1個以上のVおよび/またはV配列を有する抗体を用いて調製することができ、かかる修飾抗体は出発抗体と異なる特性を有し得る。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわちVおよび/またはV)内、例えば1個以上のCDR領域および/または1個以上のフレームワーク領域内の1個以上の残基を修飾して操作することができる。さらにまたは別に、抗体は、定常領域内の残基を修飾して、例えば抗体のエフェクター機能を変化させるために、操作することができる。
実施できる一つのタイプの可変領域操作は、CDR移植である。抗体は、主として6個の重鎖および軽鎖CDR中に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由により、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体間でより多様である。CDR配列は最も抗体抗原相互作用に関与しているため、別の特性を有する別の抗体のフレームワーク配列に移植した特定の天然に生じる抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築して、特定の天然に生じる抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現することができる(例えばRiechmann et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones et al., 1986 Nature 321:522-525; Queen et al., 1989 Proc. Natl. Acad参照。U.S.A. 86:10029-10033; 米国特許5,225,539、ならびに米国特許5,530,101; 5,585,089; 5,693,762 および 6,180,370参照)。
フレームワーク配列は公のDNAデータベースまたは生殖系列抗体遺伝子配列を含む公開された文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子についての生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベースにおいて見られ(www.mrc- cpe.cam.ac.uk/vbaseでインターネット上で利用可能)Kabat et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson et al., 1992 J. Mol. Biol. 227:776-798; および Cox et al., 1994 Eur. J. Immunol. 24:827-836においても見られる(それらの内容を各々参照により、本明細書の一部とする)。
CDR1、2および3配列ならびにV CDR1、2および3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子において見られるものと同じ配列を有するフレームワーク領域に移植でき、またはCDR配列は生殖系列配列と比較して1個以上の変異を含むフレームワーク領域に移植できる。例えば、ある例において、抗体の抗原結合能を維持または促進するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有利であることが知られている(例えば米国特許5,530,101; 5,585,089; 5,693,762 および 6,180,370参照)。
CDRはまた、免疫グロブリンドメイン以外のポリペプチドのフレームワーク領域に移植してもよい。適切な足場は、局在型表面を形成し、目的の標的(例えばCDH11)に結合するような移植した残基を示す立体構造的に安定なフレームワークを形成する。例えば、CDRは、フレームワーク領域がフィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン、シトクロームb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI−D1、Zドメインまたはテンドラミサット(tendramisat)に基づく足場に移植できる(例えばNygren and Uhlen, 1997 Current Opinion in Structural Biology, 7, 463-469参照)。
別の型の可変領域修飾は、それにより目的の抗体の1つまたはそれより多い結合特性(例えば親和性)を改善するためのVならびに/またはV CDR1、CDR2および/もしくはCDR3領域内のアミノ酸残基の変異であり、「親和性成熟」として公知である。部位特異的変異誘発またはPCR媒介変異誘発を実施して(複数の)変異を導入し、そして抗体結合またはその他の目的の機能特性に及ぼす影響を、本明細書に記載されるようなインビトロまたはインビボアッセイにおいて評価することができる。保存修飾を導入することができる。変異はアミノ酸置換、付加または欠失でよい。さらに典型的にはCDR領域内の1、2、3、4または5個だけの残基を改変する。
本発明の操作された抗体には、例えば抗体の特性を改善するためにVおよび/またはV内のフレームワーク残基に修飾が為されているものが含まれる。典型的には抗体の免疫原性を低下させるためにかかるフレームワーク修飾が為される。例えば1つのアプローチは、1個またはそれより多いフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に「復帰変異する」ことである。さらに具体的には体細胞変異を被っている抗体は、抗体が誘導される生殖系列とは異なるフレームワーク残基を含有し得る。抗体フレームワーク配列を、抗体が誘導される生殖系列と比較することにより、かかる残基を同定することができる。フレームワーク領域配列をその生殖系列立体配置に戻すために、例えば部位特異的変異誘発またはPCR媒介変異誘発により体細胞変異を生殖系列配列に「復帰変異」することができる。かかる「復帰変異」された抗体もまた本発明に包含されると意図される。
別のタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内またはさらには1個またはそれより多いCDR領域内の1個またはそれより多い残基を変異して、T細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的免疫原性を低減させることを伴う。このアプローチは「脱免疫化」とも称され、そしてCarrらによる米国特許公開第20030153043号にさらに詳細に記載される。
フレームワークまたはCDR領域内でなされた修飾に加えて、あるいは、本発明の抗体を操作してFc領域内に修飾を含み、典型的には血清半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存性細胞毒性のような抗体の1つまたはそれより多い機能的特性を改変することができる。さらに本発明の抗体を化学的に修飾する(例えば1つまたはそれより多い化学的部分を抗体に結合させることができる)か、またはそのグリコシル化を改変し、再度抗体の1つまたはそれより多い機能的特性を改変するように修飾することができる。
一つの態様ではCH1のヒンジ領域を、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が改変される、例えば増加または減少するように修飾する。このアプローチはBodmerらにより米国特許5677425にさらに記載される。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数を改変して、例えば軽鎖と重鎖の会合を促進するか、または抗体の安定性を増大もしくは低下させる。
他の態様において、抗体のFcヒンジ領域を変異させて抗体の生物学的半減期を低下させる。さらに具体的には、抗体が未変性のFcヒンジドメインSpA結合と相対してブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合を損なっているように、1個以上のアミノ酸変異をFcヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメイン界面領域に導入する。このアプローチはWardらによる米国特許6165745にさらに詳細に記載される。
他の態様において、抗体はその生物学的半減期が増大するように修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば米国特許6277375ではインビボでその半減期を増大させるIgGにおける以下の変異:T252L、T254S、T256Fが記載される。あるいは、Prestaらによる米国特許5869046および6121022に記載されるように、生物学的半減期を増大させるために、抗体をCH1またはCL領域内で改変してIgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取られたサルベージ受容体結合エピトープを含有させることができる。
さらなる別の態様において、抗体のエフェクター機能を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによりFc領域を改変する。例えば抗体がエフェクターリガンドに関して改変された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、1個以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、例えばFc受容体または補体のC1構成要素でよい。このアプローチは双方共にWinterらによる米国特許5624821および5648260にさらに詳細に記載される。
他の態様において、抗体のC1q結合が改変され、そして/または補体依存性細胞毒性(CDC)が低減されるか、もしくは無効になるように、アミノ酸残基から選択される1個以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。このアプローチはIdusogieらの米国特許6194551にさらに詳細に記載される。
他の態様において、1個以上のアミノ酸残基が改変され、それにより抗体が補体を固定する能力を改変する。このアプローチはBodmerらのWO94/29351にさらに詳細に記載される。
さらなる別の態様において、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大させる、および/またはFcγ受容体に関する抗体の親和性を増大させるために、1個以上のアミノ酸を修飾することによりFc領域を修飾する。このアプローチはPrestaによるWO00/42072にさらに記載される。さらにヒトIgG1におけるFcγRl、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに関する結合部位がマッピングされており、そして結合が改善されたバリアントが記載されている(Shields, R.L. et al., 2001 J. Biol. Chem. 276:6591-6604参照)。
さらに別の態様において、抗体のグリコシル化が修飾される。例えばグリコシル化抗体を作製することができる(すなわち抗体はグリコシル化を欠如する)。グリコシル化を改変して、例えば抗体の抗原に関する親和性を増大させることができる。例えば抗体配列内の1個以上のグリコシル化の部位を改変することにより、かかる炭水化物修飾を達成することができる。例えば結果的に1個以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位が排除され、それによりその部位でのグリコシル化が排除される、1個以上のアミノ酸置換を行うことができる。かかるグリコシル化は抗体の抗原に関する親和性を増大させることができる。かかるアプローチはCoらの米国特許5714350および6350861にさらに詳細に記載される。
これに加えてまたは代えて、フコシル残基の量が低減されている低フコシル化抗体またはバイセクティングGlcNac構造が増大した抗体のような、グリコシル化の型が改変された抗体を作製することができる。かかる改変されたグリコシル化パターンは抗体のADCC能力を増大させることが実証されている。例えばグリコシル化機構が改変された宿主細胞において抗体を発現することにより、かかる炭水化物修飾を達成することができる。グリコシル化機構が改変された細胞は当分野において記載されており、そして宿主細胞として用いることができ、そこで本発明の組換え抗体を発現し、それによりグリコシル化が改変された抗体を生成する。例えばHangらによる欧州特許1176195には機能的に破壊された、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を伴う細胞系が記載され、かかる細胞系において発現された抗体は低フコシル化を呈するようになる。PrestaによるPCT公開公報WO03/035835にはフコースがAsn(297)連結炭水化物に結合する能力が低減され、これもまた結果的に宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化に至るバリアントCHO細胞系、Lecl3細胞が記載される(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。UmanaらによるWO99/54342には、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えばベータ(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作され、操作された細胞系において発現される抗体が、抗体のADCC活性の増大に至るバイセクティングGlcNac構造の増大を呈するようになる細胞系が記載される(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。
本発明により企図される本抗体の別の修飾はペグ化である。抗体をペグ化して、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期を増大させることができる。抗体をペグ化するために、1つまたはそれより多いポリエチレングリコール(PEG)部分が抗体または抗体フラグメントに結合するようになる条件下で、抗体またはそのフラグメントを典型的にはPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体のようなPEGと反応させる。反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)でのアシル化反応またはアルキル化反応によりペグ化を実施することができる。本明細書で使用される用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1−C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールマレイミドのようなその他のタンパク質を誘導体化するために用いられているPEGのいずれかの形態を包含すると意図される。ある態様において、ペグ化される抗体はアグリコシル化(aglycosylated)抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当分野において公知であり、そして本発明の抗体に適用することができる。例えばNishimuraらによる欧州特許0154316およびIshikawaらによる欧州特許0401384を参照されたい。
加えて本発明のPCSK9結合ポリペプチドの任意の部分における非天然アミノ酸の導入によりペグ化を達成することができる。Deiters et al., J Am Chem Soc 125:11782-11783, 2003; Wang and Schultz, Science 301:964-967, 2003; Wang et al., Science 292:498-500, 2001; Zhang et al., Science 303:371-373, 2004または米国特許7083970に記載される技術により、特定の非天然アミノ酸を導入することができる。簡単には、これらの発現系のいくつかは、アンバーTAGのようなナンセンスコドンを本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディグフレームに導入するための部位特異的変異誘発を伴う。次いで導入されたナンセンスコドンに特異的なtRNAを利用できる宿主にかかる発現ベクターを導入し、そして最適な非天然アミノ酸を負荷する。本発明のポリペプチドに部分を複合化する目的のために有益である特定の非天然アミノ酸には、アセチレンおよびアジド側鎖を有するものが含まれる。次いでこれらの新規アミノ酸を含有するポリペプチドをタンパク質のこれらの選択された部位でペグ化することができる。
B.免疫複合体
別の局面において、本発明はCDH11を標的とし、CDH11を阻害または下方調節する免疫複合体物質を用いる。CDH11を標的とし得る物質は、化学療法剤、細胞傷害性物質、抗炎症剤、例えばステロイド系もしくは非ステロイド系炎症剤または細胞傷害性代謝拮抗剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンCならびにcis-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン類(例えばダウノルビシン(正式にはダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(正式にはアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))ならびに有糸分列阻害剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含むが、これらに限定されない。
用語「細胞毒性剤」または「細胞傷害性物質」は、細胞に有害な(例えば殺す)あらゆる物質を含む。例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびプロマイシン、ならびにそれらのアナログまたはホモログを含む。
免疫複合体は、好適な治療薬物と抗体を複合化(例えば化学的結合または組換え発現)して形成できる。好適な薬物は、例えば細胞傷害性物質、毒素(例えば酵素的に活性な細菌、真菌、植物もしくは動物起源の毒素またはそのフラグメント)および/または放射性同位元素(すなわち放射性コンジュゲート)を含む。使用できる酵素的に活性な毒素またはそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(緑膿菌由来の)、リシンA鎖、アルビンA鎖、モデクチンA鎖、アルファ−サルシナ、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンを含む。多様な放射性核種が放射性複合化抗CDH11抗体の作製に利用可能である。例えば212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reを含む。
N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二元機能的誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えばグルタルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)のような、多様な二元機能性タンパク質カップリング剤を用いて免疫複合体を作成してもよい。例えば、リシン免疫毒素はVitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載のとおりに作成できる。炭素-14-標識化1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、ラジオヌクレオチドと抗体を複合化するキレート剤の例である(例えばWO94/11026参照)。
C.低分子阻害剤
他の態様において、本発明において使用されるCDH11アンタゴニストは低分子阻害剤である。本明細書において使用するとき、用語「低分子阻害剤」は当該技術分野の用語であり、分子量約7500未満、約5000未満、約1000未満、または約500未満であり、CDH11活性を阻害する分子を含む。低分子阻害剤の例は、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸、炭水化物、低分子有機化合物(例えばCane et al. 1998. Science 282:63)および天然生成物抽出物ライブラリーを含むが、これらに限定されない。他の態様において、化合物は低分子非ペプチド有機化合物である。抗体のように、これらの低分子阻害剤はCDH11と結合し、そして/またはCDH11介在性細胞相互作用を阻害する。
D.核酸/アンチセンス分子
他の態様において、本発明において使用されるCDH11アンタゴニストは、CDH11をコードする遺伝子もしくは該遺伝子の一部と相補的なアンチセンス核酸分子または該アンチセンス核酸分子をコードする組換え発現ベクターである。本明細書において使用するとき、「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコードする「センス」核酸と相補的な、例えば二本鎖cDNA分子のコード鎖と相補的な、mRNA配列と相補的な、あるいは遺伝子のコード鎖と相補的な、ヌクレオチド配列を含む。したがって、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合できる。
細胞中の特定のタンパク質の発現を下方調節するためのアンチセンス核酸の使用は、当該技術分野において周知である(例えばWeintraub, H. et al., Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis, Reviews - Trends in Genetics, Vol. 1(1) 1986; Askari, F.K. and McDonnell, W.M. (1996) N. Eng. J. Med. 334:316-318; Bennett, M.R. and Schwartz, S.M. (1995) Circulation 92:1981-1993; Mercola, D. and Cohen, J.S. (1995) Cancer Gene Ther. 2:47-59; Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51:217-225; Wagner, R.W. (1994) Nature 372:333-335参照)。アンチセンス核酸分子は別の核酸分子のコード鎖と相補的な核酸配列(例えばmRNA配列)を含み、したがって当該別の核酸分子のコード鎖と水素結合できる。mRNAの配列と相補的なアンチセンス配列は、mRNAのコード領域、mRNAの5’もしくは3’非翻訳領域またはコード領域と非翻訳領域を橋渡しする領域(例えば5’非翻訳領域とコード領域の結合部分)において見られる配列と相補的であり得る。さらに、アンチセンス核酸は、mRNAをコードする遺伝子の制御領域、例えば転写開始配列または制御因子と相補的であってもよい。好ましくは、アンチセンス核酸は、コード鎖上の開始コドンまたはmRNAの3’非翻訳領域に先行するかもしくは橋渡しをする領域と相補的であるように設計する。
アンチセンス核酸は、Watson and Crickの塩基対形成則に従って設計できる。アンチセンス核酸分子は、CDH11 mRNAの全コード領域と相補的であり得るが、より好ましくは、CDH11 mRNAのコードまたは非コード領域の一部にのみアンチセンスなオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドはCDH11 mRNAの翻訳開始部位の周辺の領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長であってよい。アンチセンス核酸は当該技術分野において既知の方法を用いて、化学合成および酵素的ライゲーションを用いて構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は天然に生じるヌクレオチドまたは分子の生物学的安定性を増大するかもしくはアンチセンスとセンス核酸間で形成された二本鎖の物理的安定性を上昇させるために設計された多様な修飾ヌクレオチドを用いて化学的に合成でき、例えばホスホロチオエート誘導体とアクリジン置換ヌクレオチドを用いることができる。アンチセンス核酸を作成するために使用できる修飾ヌクレオチドの例は、次のものを含む:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキュエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキュエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、偽ウラシル、キュエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリン。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸をアンチセンス配向にサブクローン化する発現ベクターを用いて、生物学的に作成できる(すなわち、挿入した核酸から転写したRNAは目的の標的核酸とアンチセンス配向のものである。さらに詳しくは次のセクションに記載する)。
本発明の方法に利用可能なアンチセンス核酸分子は、典型的には、それらがCDH11をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズまたは結合して、転写および/または翻訳を阻害することによってCDH11の発現を阻害するように、対象に投与されるか、あるいはインサイチュで作成される。ハイブリダイゼーションは安定な二本鎖を形成するための常套のヌクレオチド相補性によるか、あるいは例えばDNA二本鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二本鎖ヘリックスの主溝における特異的相互作用により得る。アンチセンス核酸分子の投与経路の例は、組織部位での直接注射を含む。あるいは、選択した細胞を標的とするようにアンチセンス核酸分子を修飾して全身的に投与できる。例えば全身投与のために、アンチセンス分子は、それらが選択した細胞表面で発現される受容体または抗原と、例えば細胞表面受容体または抗原と結合するペプチドまたは抗体とアンチセンス核酸分子との結合によって、選択した細胞表面において発現される受容体または抗原と特異的に結合するように修飾できる。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書に記載のベクターを用いて細胞に送達してもよい。十分なアンチセンス分子の細胞内濃度を得るために、アンチセンス核酸分子が強いpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれるベクター構築物が好ましい。
さらに別の態様において、本発明の方法に使用されるアンチセンス核酸分子は、αアノマー核酸分子を含んでいてもよい。αアノマー核酸分子は通常のβユニットと相補的な相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、該ストランドは互いに平行に走る(Gaultier et al. (1987) Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al. (1987) Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)またはキメラRNA−DNAアナログ(Inoue et al. (1987) FEBS Lett. 215:327-330)を含んでいてもよい。
他の態様において、本発明の方法に使用されるアンチセンス核酸は、RNAiを仲介する化合物である。RNA緩衝物質は、CDH11と相同のRNA分子もしくはそのフラグメントを含む核酸分子、「低分子干渉RNA(siRNA)」、「低分子ヘアピン」もしくは「低分子ヘアピンRNA(shRNA)」およびRNA干渉(RNAi)によって標的遺伝子の発現に干渉するかあるいは阻害する低分子を含むが、これらに限定されない。RNA干渉は翻訳後標的遺伝子サイレンシング技術であり、二本鎖RNA(dsRNA)を用いてdsRNAと同じ配列と接触してメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する技術である(Sharp, P.A. and Zamore, P.D. 287, 2431-2432 (2000); Zamore, P.D., et al. Cell 101, 25-33 (2000). Tuschl, T. et al. Genes Dev. 13, 3191-3197 (1999))。このプロセスは、内因性リボヌクレアーゼが長いdsRNAを短い、21または22ヌクレオチド長のRNA(低分子干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれる)に切断すると、生じる。次いで低分子RNAセグメントは標的mRNAの分解を仲介する。RNAiの合成のためのキットは、例えばNew England Biolabs および Ambionから商業的に入手可能である。一つの態様において、アンチセンスRNAに使用するための上記化学のいつ以上を用いてよい。
さらに別の態様において、アンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それに相補性な領域を有するmRNAのような一本鎖核酸を切断できるリボヌクレアーゼ活性を有する、触媒的RNA分子である。したがって、リボザイム(例えばハンマーヘッドリボザイム(Haselhoff and Gerlach, 1988, Nature 334:585-591に記載されている))を用いてCDH11 mRNA転写産物を触媒的に切断して、CDH11 mRNAの翻訳を阻害することができる。
あるいは、CDH11の制御領域(例えばCDH11プロモーターおよび/またはエンハンサー)と相補的な核酸配列を標的として標的細胞におけるCDH11遺伝子の転写を防止するトリプルヘリックス構造を形成することによって、遺伝子発現を阻害してもよい。一般に、Helene, C., 1991, Anticancer Drug Des. 6(6):569-84; Helene, C. et al., 1992, Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27-36; および Maher, L.J., 1992, Bioassays 14(12):807-15を参照されたい。
E.融合タンパク質およびCDH11由来ペプチド化合物
他の態様において、本発明の方法に使用されるCDH11アンタゴニストは、CDH11アミノ酸配列に由来する融合タンパク質またはペプチド化合物である。特に本阻害化合物はCDH11と標的分子の相互作用を仲介する融合タンパク質またはCDH11の一部(またはその模倣物)を含み、CDH11とこの融合タンパク質またはペプチド化合物の接触はCDH11と標的分子の相互作用を競合的に阻害する。かかる融合タンパク質およびペプチド化合物は、当該技術分野において既知の標準的な方法を用いて作成できる。例えば、ペプチド化合物は標準的なペプチド合成技術を用いた化学合成によって作成でき、次いで細胞にペプチドを導入するための当該技術分野において既知の多様な方法によって細胞に導入される(例えばリポソーム等)。
本発明のCDH11融合タンパク質またはペプチド化合物のインビボ半減期は、CDH11へのN結合グリコシル化部位の付加または例えばリシン−モノペグ化によって、CDH11をポリ(エチレングリコール)(PEG;ペグ化)と複合化するようなペプチド修飾物を作成して、改善できる。かかる技術は、治療用タンパク質薬物の半減期を延長するために有用であると証明されている。本発明のCDH11ポリペプチドのペグ化は同様の医薬的利点をもたらし得ると予期される。
さらに、本発明のポリペプチドのいずれかの部分における非天然アミノ酸の導入によって、ペグ化が達成できる。特定の非天然アミノ酸は、Deiters et al., J Am Chem Soc 125:11782-11783, 2003; Wang and Schultz, Science 301:964-967, 2003; Wang et al., Science 292:498-500, 2001; Zhang et al., Science 303:371-373, 2004 または米国特許7,083,970に記載の技術によって導入できる。簡潔には、これらの発現系のいくつかは、本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームへの、アンバーTAGのような非センスコドンを導入する部位特異的突然変異誘発を含む。次いでかかる発現ベクターは、導入された非センスコドンに特異的なtRNAを利用できる宿主に導入され、選択した非天然アミノ酸を加える。本発明のポリペプチドと物質との複合化の目的に利点を有する特定の非天然アミノ酸は、アセチレンおよびアジド側鎖を有するものを含む。これらの新規アミノ酸を含むCDH11ポリペプチドは、次いで、該タンパク質中のこれらの選択した部位でペグ化できる。
III.処置方法
本発明は特に、CDH11アンタゴニストを用いた新規治療および診断方法を提供する。
用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、本明細書において使用するとき、本明細書に記載の治療的または予防的手段を意味する。「処置」方法は、疾患、状態または感染を予防、治癒、遅延、その重症度の低減またはその1つ以上の症状緩解のために、かかる処置なしで予期される対象の生存を延長するために、CDH11アンタゴニストを対象に投与することを含む。
用語「患者」は、予防的または治療的処置を受けるヒトおよび他の哺乳類対象を含む。
本明細書において使用するとき、用語「対象」はいずれかのヒトまたは非ヒト動物を含む。例えば本発明の方法および組成物は、がんを有する対象を処置するために使用できる。特定の態様において、対象はヒトである。用語「非ヒト動物」はあらゆる脊椎動物、例えば哺乳類および非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類等を含む。
用語「サンプル」は、患者または対象由来の組織、体液または細胞を意味する。通常は、組織または細胞は患者から採取されるが、インビボでの診断も意図される。他の患者サンプルは、尿、涙液、血清、脳脊髄液、糞便、痰、細胞抽出物等を含む。
A.適応症
一つの局面において、本発明の方法を用いて、上皮間葉移行(EMT)または内皮間葉移行(EnMT)を阻害または防止することができる。特定の態様において、EMTまたはEnMTは線維症と関連している。
さらに、本発明の方法を用いて、広範な他の状態および疾患を処置、予防またはその重症度を低減することができる。本明細書に記載のCDH11アンタゴニストを用いて処置および/または診断することができる好適な疾患は、血管線維症、肺高血圧に関連した血管線維症、腎線維症、肝線維症、皮膚線維症、肺線維症、眼の線維症(全身性硬化症 (強皮症)を含む)、関節の線維症、中皮の線維症および腸の線維症(例えば炎症性腸疾患)を含む。処置できるより特定のタイプの線維症は次のものを含むが、それらに限定されない:膵臓および肺の嚢胞性線維症、心内膜心筋線維症、特発性心筋症、肺の特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、縦隔線維症(すなわち腫瘍血管および気道を閉塞する、リンパ節を中心とした侵襲性石灰化線維症によって特徴付けられる)、骨髄線維症(すなわち骨髄が線維(創傷)組織によって置換される骨髄の障害)、後腹膜線維症(すなわち後腹膜、腎臓、大動脈、尿路および多様な他の構造を含む体の区画における線維組織の増殖を特徴とする疾患)、進行性塊状線維症(すなわち肺内での炭塵の堆積によって生じ、該塵への体の免疫応答を介して進行する疾患;複雑塵肺症とも知られる)、増殖性線維症、新生物性線維症、結核(TB)によって引き起こされる肺の線維症、鎌状赤血球貧血によって引き起こされる脾臓の線維症およびリウマチ性関節炎。
本発明の方法は、慢性組織拒絶、すなわち例えば移植またはグラフト組織を予防またはその重症度の低減に使用してもよい。例示的な移植組織は、骨、角膜ならびに心臓、腎臓、肝臓、肺および膵臓のような主要組織を含むが、これらに限定されない。
さらに別の態様において、本発明の方法に使用されるCDH11アンタゴニストは、次のものを含むが、それらに限定されない免疫障害を処置するために使用できる:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アレルギー性鼻炎;自己免疫性溶血性貧血;黒色表皮症;アレルギー性接触性皮膚炎;アジソン病;アトピー性皮膚炎;円形脱毛症;全身性脱毛症;アミロイド症;アナフィラキシー性紫斑病;アナフィラキシー様反応;再生不良性貧血;遺伝性血管浮腫;特発性血管浮腫;強直性脊椎炎;頭部動脈炎;巨細胞性動脈炎;ツカヤマ動脈炎;側頭動脈炎;喘息;毛細血管拡張性運動失調症;自己免疫性卵巣炎;自己免疫性精巣炎;自己免疫性多内分泌系不全;ベーチェット病;ベルジェ病;バージャー病;気管支炎;水疱性天疱瘡;慢性皮膚粘膜カンジダ症;カプラン症候群;心筋梗塞後症候群;心膜切開後症候群;心炎;セリアックスプルー;シャーガス病;チェディアック・東症候群;チャーグ・ストラウス病;硬変症;コーガン症候群;寒冷凝集素症;CREST症候群;クローン病;クリオグロブリン血症;原因不明の線維化性胞隔炎;ヘルペス状皮膚炎;皮膚筋炎;糖尿病;ダイアモンド・ブラックファン症候群;ディジョージ症候群;円板状エリテマトーデス;好酸球性筋膜炎;上強膜炎;持久性隆起性紅斑(Drythema elevatum diutinum);有縁性紅斑;多形性紅斑;結節性紅斑;家族性地中海熱;フェルティ症候群;肺線維症;アナフィラキシー症様糸球体腎炎;自己免疫性糸球体腎炎;連鎖球菌感染後糸球体腎炎;移植後糸球体腎炎;膜質糸球体症;グッドパスチャー症候群;免疫媒介性顆粒球減少症;環状肉芽腫;アレルギー性肉芽腫症;肉芽腫様筋炎;グレーブス病;橋本甲状腺炎;新生児溶血性疾患;特発性血色素沈着症;ヘノッホ・シェーンライン紫斑病;肝炎(慢性かつ活性、慢性かつ進行性);ヒスチオサイトーシスX;好酸球増多症候群;特発性血小板減少性紫斑病;ジョブ症候群;若年性皮膚筋炎;若年性関節リウマチ(若年性慢性関節炎);川崎病;角膜炎;角結膜炎;ランドリー・ギラン・バール・シュトロール症候群;ハンセン病、癩腫;レフラー症候群;狼瘡;狼瘡腎炎;ライエル症候群;ライム病;リンパ腫様肉芽腫症;全身性肥満細胞症;混合結合組織疾病;多発性単神経炎;マックル・ウェルズ症候群;粘膜皮膚リンパ節症候群;粘膜皮膚リンパ節症候群;多中心性細網組織球症;多発性硬化症;重症筋無力症;菌状息肉腫;全身性壊死性脈管炎;ネフローゼ症候群;オーバーラップ症候群;脂肪組織炎;発作性寒冷血色素尿症;発作性夜間血色素尿症;類天疱瘡;天疱瘡;紅斑性天疱瘡;落葉状天疱瘡;尋常性天疱瘡;鳩飼病;過敏性間質性肺炎;結節性多発性動脈炎;リウマチ性多発性筋痛;多発性筋炎;多発性特発性神経炎;ポルトガル家族性多発ネフロパチー;前子癇/子癇;原発性胆汁性肝硬変;全身性進行性硬化症(強皮症);乾癬;乾癬性関節炎;肺胞タンパク症;肺線維症(レイノー症/症候群);ライデル甲状腺炎;ライター症候群、再発性多発性軟骨炎;リウマチ熱;リウマチ関節炎;サルコイドーシス;強膜炎;硬化性胆管炎;強皮症、血清病;セザリー症候群;ショーグレン症候群;スティーヴンズ・ジョンソン症候群;スティル病;亜急性硬化性汎脳炎;交感神経性眼炎;全身エリテマトーデ;移植拒絶;潰瘍性大腸炎;未分化結合組織疾患;慢性じんましん;寒冷じんましん;葡萄膜炎;白斑;ヴェーバー・クリスチャン疾病;ウェゲナー肉芽腫症およびウィスコット・オールドリッチ症候群
B.組合せ治療
本発明の方法に利用するCDH11アンタゴニストは、単独または他の治療薬物と組み合わせて投与できる。例えば、アンタゴニストは細胞傷害性物質、他の既知の治療薬物(すなわち免疫抑制剤、化学療法剤、放射毒性物質および/または他の治療抗体)と組み合わせて投与できる。アンタゴニストはまた、該薬物と別個に投与してもよい。個別に投与する場合、該アンタゴニストは薬物の前、後または同時に投与してよく、あるいは他の既知の治療法、例えば抗がん療法、例えば放射線と同時投与してもよい。
一つの態様において、アンタゴニストは二次抗体(すなわちそれによって二重特異的分子を形成する)または別の標的もしくはCDH11の別のエピトープと結合する他の結合物質のような第2の結合分子と結合している。本明細書に記載のアンタゴニストとの組合せ療法に使用できるさらなる治療薬物の例は、免疫複合体に関する上記セクションに詳述する。
C.投与量/量
用語「有効量」および「治療上有効量」は、本明細書において使用するとき、対象に投与したとき、本明細書に記載のCDH11の上昇した発現に関連した感染または疾患の処置、予後または診断に作用するのに十分である、アンタゴニストの量を意味する。治療上有効量は対象および処置する感染もしくは疾患状態、対象の体重および年齢、感染もしくは疾患状態の重症度、投与方法等に依存して変化し、これは当業者によって容易に決定可能である。本発明の抗体の投与量は、例えば約1 ng〜約10,000 mg、約5 ng〜約9,500 mg、約10 ng〜約9,000 mg、約20 ng〜約8,500 mg、約30 ng〜約7,500 mg、約40 ng〜約7,000 mg、約50 ng〜約6,500 mg、約100 ng〜約6,000 mg、約200 ng〜約5,500 mg、約300 ng〜約5,000 mg、約400 ng〜約4,500 mg、約500 ng〜約4,000 mg、約1 μg〜約3,500 mg、約5 μg〜約3,000 mg、約10 μg〜約2,600 mg、約20 μg〜約2,575 mg、約30 μg〜約2,550 mg、約40 μg〜約2,500 mg、約50 μg〜約2,475 mg、約100 μg〜約2,450 mg、約200 μg〜約2,425 mg、約300 μg〜約2,000、約400 μg〜約1,175 mg、約500 μg〜約1,150 mg、約0.5 mg〜約1,125 mg、約1 mg〜約1,100 mg、約1.25 mg〜約1,075 mg、約1.5 mg〜約1,050 mg、約2.0 mg〜約1,025 mg、約2.5 mg〜約1,000 mg、約3.0 mg〜約975 mg、約3.5 mg〜約950 mg、約4.0 mg〜約925 mg、約4.5 mg〜約900 mg、約5 mg〜約875 mg、約10 mg〜約850 mg、約20 mg〜約825 mg、約30 mg〜約800 mg、約40 mg〜約775 mg、約50 mg〜約750 mg、約100 mg〜約725 mg、約200 mg〜約700 mg、約300 mg〜約675 mg、約400 mg〜約650 mg、約500 mgまたは約525 mg〜約625 mgである。投与レジメンは最適な治療応答が得られるように調節できる。有効量はまた、アンタゴニストの何らかの毒性または有害な効果(すなわち副作用)が最小限となり、そして/または有益な効果が上回るものである。
本発明の方法に使用するアンタゴニストの実際の投与レベルは、具体的な患者、組成物および投与形態について、患者に毒性なく、所望の治療的応答を得るために有効な有効成分の量が得られるように変化してよい。選択される投与レベルは、多様な薬物動態因子、例えば使用する具体的なアンタゴニストまたはそのエステル、塩もしくはアミド、投与経路、投与時間、使用する具体的なアンタゴニストの排出速度、処置期間、使用する具体的なアンタゴニストと組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および薬歴等の医学分野で周知の要因に基づく。通常の技術を有する医師または獣医は、必要なアゴニストの有効量を容易に決定および予測することができる。例えば医師または獣医は、所望の治療効果を得るために必要とされるものよりも低いレベルでアンタゴニストの投与を開始して、所望の効果が得られるまで用量を漸増することができる。一般に、アンタゴニストの好適な1日用量は、治療効果を奏するのに有効な最低用量である。かかる有効用量は一般に、上記の要因に基づく。好ましくは、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下投与され、好ましくは標的部位の近くに投与される。所望により、アンタゴニストの有効1日用量は2、3、4、5、6またはそれ以上の分割用量で、1日の適切な間隔で別個に、所望により単位投与形態で投与してもよい。本発明のアンタゴニストを単独で投与することも可能であるが、好ましくは医薬製剤(組成物)としてアンタゴニストを投与する。
投与レジメンは最適な所望の応答(例えば治療応答)が得られるように調節される。例えば1回ボーラスを投与し、複数分割用量を時間とともに投与し、あるいは治療状況の緊急度によって示されるとおりに用量を比例的に増加または減少することができる。例えば、本発明の方法に使用されるアンタゴニストは週に1回もしくは2回皮下注射で、または月に1回もしくは2回皮下注射で投与できる。
投与の簡便さおよび投与量の均一性のために、非経腸的投与単位にアゴニストを製剤することが特に有利である。単位投与形態は、本明細書において使用するとき、処置する対象について単位投与量として好適な物理的に分離した単位を意味し;各単位は所望の治療効果を奏するように計算された所定の量の活性アンタゴニストと必要な薬理的担体を含む。単位投与形態についての規格は、活性アンタゴニストの特徴および達成されるべき具体的な治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためのかかる活性アンタゴニストを配合する分野に固有の制限によって指示され、そしてそれに直接基づく。
D.投与および製剤方法
本発明の方法に使用するアンタゴニストをある投与経路で投与するためには、その不活性化から防止する物質と共にアンタゴニストを共投与する必要があり得る。例えば、アンタゴニストは適切な担体、例えばリポソームまたは希釈剤中で対象に投与できる。薬学的に許容される希釈剤は生理食塩水および水性バッファー溶液を含む。リポソームは水中油中水型CGFエマルジョンならびに常套のリポソームを含む(Strejan et al. (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散剤および滅菌注射液または分散剤の即時調製用滅菌粉末を含む。薬学的活性物質のためのかかる媒体および物質の使用は、当該技術分野において既知である。いずれかの常套の媒体または物質が活性アンタゴニストと非適合性である場合を除き、医薬組成物におけるその使用が意図される。補助的活性化合物もアンタゴニストと共に導入されてよい。
治療用アンタゴニストは典型的に、滅菌されており、製造および貯蔵条件下で安定であるべきである。該アンタゴニストは溶液、ミクロエマルジョン、リポソームまたは高薬物濃度に適した他の整序構造として製剤できる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液性ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物を含む、溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持すること、そして界面活性剤の使用によって維持できる。多くの場合、組成物中に張性調節剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延する物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって達成できる。
滅菌注射液は、上記成分の1つまたは組合せを有する適切な溶媒中に、必要量の活性アンタゴニストを組み込み、所望により、次いで滅菌精密濾過することで調製できる。一般に分散剤は、分散基剤と上記のものからの必要な他の成分を含む滅菌ビークルに活性化合物を組み込んで調製する。滅菌注射液の調製用滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分と何れかのさらなる所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過したその溶液から、真空乾燥および凍結乾燥(凍結乾燥法)することである。
本発明の方法に使用できる治療用アンタゴニストは、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経腸投与に適したものを含む。製剤は、簡便には単位投与形態に調製でき、薬学の分野で既知の何れかの方法によって調整できる。単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、処置する対象および具体的な投与形態に依存して変化する。単剤形態を製造するために担体と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果を奏するアンタゴニストの量である。一般に、百分率として、この量は約0.001%〜約90%の有効成分、好ましくは約0.005%〜約70%、最も好ましくは約0.01%〜約30%の範囲である。
用語「非経腸投与」および「非経腸的に投与する」は、本明細書において使用するとき、経腸および局所投与以外の、通常は注射による投与形態を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および輸液を含むが、これらに限定されない。
本発明の方法に使用するアンタゴニストと共に使用できる好適な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油ならびに注射用有機エステル類、例えばオレイン酸エチルを含む。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持すること、そして界面活性剤の使用によって維持できる。
アンタゴニストは保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントと共に投与してもよい。微生物の存在の防止は、上記滅菌手段ならびに多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含めることの両方によって確保され得る。組成物中に当、塩化ナトリウム等の張性調節剤を含めることも望まれ得る。さらに、注射用医薬形態の持続吸収は、アルミニウムモノステアリン酸およびゼラチンのような吸収を遅延する物質を含めることによって達成され得る。
本発明の方法に使用するアンタゴニストがヒトおよび動物に投与されるとき、それらは単独でまたは例えば0.001〜90%(より好ましくは、0.005〜70%、例えば0.01〜30%)の有効成分と薬学的に許容される担体の組合せを含む医薬アンタゴニストとして投与できる。
アンタゴニストは当該技術分野において既知の医学的デバイスによって投与してもよい。例えば好ましい態様において、アンタゴニストは無針皮下注射デバイス、例えば米国特許5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824または4,596,556に記載のデバイスで投与してもよい。本発明に有用な周知のインプラントおよびモジュールの例は以下のものを含む:制御された速度で薬物を分配するための、移植可能なマイクロ輸液ポンプを開示している米国特許4,487,603;皮膚を通して薬物を投与するための治療デバイスを開示している米国特許4,486,194;正確な注入速度で薬物を放出するための、薬物注入ポンプを開示している米国特許4,447,233;連続的薬物放出のための、可変流量の、移植可能な注入装置を開示している米国特許4,447,224;多重チャンバー区画をもつ、浸透圧薬物放出装置を開示する米国特許4,439,196;および浸透圧薬物放出装置を開示する米国特許4,475,196に記載されている。多くの他のこのようなインプラント、送達系およびモジュールが当業者には周知である。
ある態様において、アンタゴニストはインビボでの適切な分散性を確保するために製剤できる。例えば血液脳関門(BBB)は多くの親水性の高い化合物を排除する。アンタゴニストがBBBを(所望により)通過することを確保するため、それらは例えばリポソーム中に製剤できる。リポソームを製造する方法については、例えば米国特許4,522,811、5,374,548および5,399,331を参照されたい。リポソームは特定の細胞または臓器に選択的に輸送される1個以上の部分を含んでいてよく、したがって標的薬物送達を向上する(例えばV.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。標的部分の例は、葉酸またはビオチン(例えばLowらの米国特許5,416,016);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性タンパク質A受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134)を含み、本発明の製剤ならびに本発明の分子の成分を含み得る異なる種は、p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)を含む;K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照されたい。
IV.診断方法
本発明は特に、対象が特定のCDH11関連状態を有するか、あるいはそれを発症するリスクがあるかを決定し、予測するための新規な診断方法を提供する。CDH11関連状態と診断された対象の予後を決定する方法も提供する。本明細書において使用するとき、用語「CDH11関連状態」は、CDH11の異常なまたは上昇した発現と関連した何れかの状態または疾患を意味し、EMT、EnMT、線維症(すなわち腎線維症)または慢性同種移植片拒絶反応のような上記処置方法のセクションに記載の何れかの疾患を含む。
一つの態様において、本発明は対象由来のサンプルを特定のバイオマーカー、すなわちCDH11についてアッセイする方法であって、ここでCDH11の異常なまたは上昇したレベルがEMT、EnMT、線維症(すなわち腎線維症)または慢性同種移植片拒絶反応のようなCDH11関連状態の指標である方法を提供する。
他の態様において、本発明はCDH11関連状態の診断方法であって、(i) CDH11と反応する試薬を標的サンプルと接触させ;CDH11を検出することを含み、ここで正常コントロールと比較して上昇した濃度のCDH11がCDH11関連状態の指標である方法を提供する。
CDH11関連状態を有すると疑われる個体は、疾患進行を遅延または停止すらできるように、可能な限り早期にCDH11の上昇したまたは異常な発現の検出を目的とした診断試験によって利益を受けるであろう。
本明細書において使用するとき、用語「バイオマーカー」は、ある状態の生物学的マーカーの何れかを意味する。例えばバイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病的プロセスまたは治療的介入に対する薬理的応答を客観的に測定および評価するために使用できる生化学的特徴または特徴であり得る。本方法において、CDH11は対象が特定の状態または疾患を発症するリスクがあるかを評価するために使用できるバイオマーカーである。例えば本発明において、好適なコントロール(例えば正常または健常サンプル中のCDH11の存在またはレベル)と比較して、CDH11の上昇したまたは異常な発現は、疾患状態(例えばEMT、EnMT、線維症(すなわち腎線維症)または慢性組織拒絶)と関連し得る。好適な生物学的サンプルはまた、血液サンプル、例えば血漿および/または血清、尿、糞便、脳脊髄液(すなわちCSF)、脊髄液、滑液、結膜液、唾液、リンパ液、胆汁、涙液および汗、組織ならびに細胞を含む。
バイオマーカー(すなわちCDH11)の「正常な」レベルは、CDH11発現に関連した疾患または状態(すなわちEMT、EnMT、線維症(すなわち腎線維症)または慢性組織拒絶)を発症するリスクがないか、または発症していない対象または対象由来のサンプル(例えば血液、例えば対象の血漿または血清、尿、糞便、胆汁、組織または細胞)、例えばCDH11関連疾患を有さない対象由来のサンプルにおけるバイオマーカーのレベルである。「コントロール」対象は典型的には、正常なレベルのバイオマーカー、すなわちCDH11を有する。
バイオマーカーの「異常なレベル」は、バイオマーカーの正常なレベルとは異なるバイオマーカーのあらゆるレベル、例えば有意に高いまたは上昇したレベル、あるいは有意に低いまたは抑制されたレベルである。
バイオマーカーの「高いレベル」、「上昇したレベル」または「増加したレベル」は、好適なコントロールと比較して上昇したレベルを意味する。好ましくは、好適なコントロールとの差は、存在すれば、レベルを評価するために使用するアッセイの標準誤差よりも大きい。さらに、上昇したレベルは好ましくは、好適なコントロール(例えばバイオマーカー関連疾患を有さない対象由来のサンプルまたは複数のコントロールサンプルもしくは他の好適なベンチマークにおけるバイオマーカーの平均レベル)におけるバイオマーカーのレベルの、少なくとも2倍、より好ましくは3、4、5または10倍である。
バイオマーカーの「抑制されたレベル」、「低いレベル」または「低下したレベル」は、好適なコントロールと比較して抑制されたレベルを意味する。好ましくは、好適なコントロールとの差は、存在すれば、レベルを評価するために使用するアッセイの標準誤差よりも大きい。抑制されたレベルは好ましくは、好適なコントロール(例えばバイオマーカー関連疾患を有さない健常対象におけるレベルまたは複数のコントロールサンプルもしくは他の好適なベンチマークにおけるバイオマーカーの平均レベル)におけるバイオマーカーのレベルの、少なくとも2倍、より好ましくは3、4、5または10倍低い。
A.診断アッセイ
CDH11の存在、非存在および/またはレベルは、分子またはタンパク質を検出するための広範な周知の方法のいずれかによって評価できる。かかる方法の非限定的な例は、タンパク質を検出するための免疫学的方法、タンパク質精製方法、タンパク質機能または活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション方法、核酸逆転写方法および核酸増幅方法、ELISA、イムノブロッティング、ウェスタンブロッティング、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング等を含む。
一つの態様において、CDH11の存在、非存在および/またはレベルは、バイオマーカー、すなわちCDH11、例えばバイオマーカーに対応するオープンリーディングフレームによってコードされるタンパク質またはその正常な翻訳後修飾の全てまたは一部を受けたタンパク質と特異的に結合する抗体(例えば放射線標識化、発色標識化、経口標識化または酵素標識化抗体)、抗体誘導体(例えば基質またはタンパク質もしくはタンパク質−リガンド対(例えばビオチン−ストレプトアビジン)のリガンドと結合した抗体)または抗体フラグメント(一本鎖抗体、単離した抗体超可変ドメイン等)を用いて評価する。抗体に関する用語「標識化」は、検出可能な物質と交代のカップリング(すなわち物理的結合)による抗体の直接ラベリング、ならびに直接標識化されている別の試薬との反応性による抗体の間接ラベリングを含む。間接ラベリングの例は、蛍光標識化ストレプトアビジンで検出可能なような蛍光標識化二次抗体を用いた一次抗体の検出を含む。他の態様において、CDH11の存在、非存在および/またはレベルは、核酸を用いて評価する。
本発明の検出方法は、例えばインビトロおよびインビボでの生物学的サンプルにおける、CDH11を検出するために使用できる。例えばmRNAの検出のためのインビトロ技術は、ノーザンハイブリダイゼーション、インサイチュハイブリダイゼーションおよびQPCRを含む。CDH11の検出のためのインビトロ技術は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。CDH11 DNAの検出のためのインビトロ技術は、例えばサザンハイブリダイゼーションを含む。さらにまた、CDH11の検出のためのインビボ技術は、対象にCDH11に対する標識化抗体を導入することを含む。上記のとおり、抗体は、標準的なイメージング技術によって対象内での存在および位置が検出可能な放射活性バイオマーカーで標識化されていてよい。
本発明を下記実施例によってさらに説明するが、これはさらなる限定を構成すべきでない。本願を通じて引用した配列表、図面ならびにあらゆる文献、特許および公開特許出願の内容は、参照により明示的に本明細書に組み込む。
材料および方法
I.データ収集
A.ヒトサンプル
この試験に使用した生検サンプルは、外部2箇所から得た。第1のデータセット(「Hannoverデータセット」と称する)は、Medical School of HannoverのTransplant Centerとの協力で得られた腎臓プロトコル生検から成る。この試験は、機能する移植片および正常な術後臨床および組織学的パラメーターを有する20人の腎同種移植レシピエント由来の3ヶ月生検に着目した。3ヶ月後、6ヶ月生検時点で、これらの患者の8人が慢性同種移植片拒絶反応(CR)(発症者)と診断されたが、12人の患者は安定したグラフトを維持した(未発症者)。
第2にHospital Tenon Parisと協力して、19人のコントロール、7人のグレードI、7人のグレードII、8人のグレードIII生検を含む合計48人の診断生検を採取した。さらに、線維症の兆候を有さないが重度の同種移植免疫応答と関連する7人の急性拒絶(AR)生検を含めた。このデータセットは「Parisデータセット」と称する。
さらにこの試験を利用するため、Gene Expression Omnibus (GEO)(#GSE6004)から関連マイクロアレイ実験をダウンロードし、7つの広範な侵襲性乳頭状甲状腺腺腫(PTC)の中心および侵襲性領域から顕微鏡下で切除した腫瘍内サンプルおよび正常甲状腺組織の遺伝子発現プロファイルを、HG_U133_Plus2 Affy chip 10で分析した。7つの中心および侵襲性領域から、ならびに7つの正常組織のうち4つから、全RNAを得た。さらに、中心対正常組織の比較を、同じ方法を用いて同時に分析したThe Ohio State University腫瘍バンク由来の9つの対の中心および正常サンプルと比較した。
B.非ヒト霊長類(NHP)サンプル
生命維持急性拒絶モデルおよび近年公開された拒絶の病理組織学的評価を有する慢性同種移植脈管障害試験11由来の剖検で、カニクイザル(Macaca fascicularis)腎臓同種移植およびコントロールを採取した。腎皮質由来の全RNAを抽出し、Affymetrix標準プロトコルおよびHG-U133A遺伝子チップを用いて増幅せずに処理した。
II.マイクロアレイ
各ヒト生検について、50 ngの全RNAをバリデートされたAffymetrix 2サイクル cDNA増幅、蛍光ラベリングおよびHuman Genome U133 Plus 2.0 ArrayHG-U133 Plus2 ヒトゲノムアレイハイブリダイゼーション(Affymetrix, Santa Clara, CA)とのハイブリダイゼーションに供した。全RNAの1 μgのサンプルを処理し、標識化し、該サンプルをHuman Genome U133 Plus 2.0 ArrayAffymetrix HG-U133_plus2 Genechip 遺伝子チップ(>47,000 の異なるヒト転写物について〜54,625 プローブセットを含む)(Affymetrix, SantaClara, CA)とハイブリダイズした。
NHPサンプルの腎皮質由来全RNAを抽出し、Affymetrix 標準プロトコルおよびHG-U133A遺伝子チップを用いて増幅せずに処理した。
III.統計分析
信頼できる転写検出を示すp値と共に各遺伝子についての単純重量(single weighted)平均発現レベルは、Microarray Suite 5.0ソフトウェア(MAS5, Affymetrix)を用いて得た。データは各アレイから秤量した(150の標的強度)。さらなる分析のために、細胞強度(CEL)ファイルをRobust Multichip Analysis (RMA)正規化に供した。各アレイについて複数のクオリティーコントロール測定を評価し、これは他のチップ、存在コールおよび非存在コールの平均から有意に異なる顕著なアーティファクト、バックグラウンドおよびノイズ測定についてスキャンしたイメージのリビューを含んでいた。次の3つの基準のうち2つを満たさないアレイは試験から除外した:(1) グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼについての強度の3’対5’比(比≦4)、(2) コールの平均(存在コールの≧40%)および (3) 倍率(≧2または≦0.5)。
生データの分析はGeneSpring GX7.3(Agilent Technologies)を用いて実施した。偽発見率≦5%およびグループ間で2倍の変化に基づくさらなるカットオフありまたはなしでの片側ANOVA(p≦0.05)を用いて、異なるサンプルクラスにわたって異なって発現された遺伝子を同定した。
一般に利用可能な遺伝子セット(KEGG, Celera publicおよびMootha 12)を用いて、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)を実行した。GSEAから対応するp値と関連した遺伝子セットのリストを得た。低いp値は該遺伝子セットが発現割当量のリストの上または下のいずれかで有意に富化されていることを示している。
実施例1:EMT遺伝子セットの同定
この実施例において、早期および後期慢性拒絶において有意に過剰発現される遺伝子を同定し、選択した。これらの2つの比較の重複によって、正常な、安定した患者と比較して、移植後3ヶ月での発症患者(Hannoverデータセット)およびグレードIII慢性同種移植片拒絶反応を有する患者(Parisデータセット)において有意な変化が見出された287のプローブセットのリストを作成した。
次に、両方のデータベースにおいてEMTマーカーと高度に関連した発現プロファイルを有する遺伝子を選択した。次の理由のため、相関分析のためのバイトとしてSnail2を選択した。第一に、Snail2はEMTを惹起し、それによって上皮細胞を遊走特性を有する間葉細胞に変換する能力について知られており、トランスジェニックマウスおよび病理モデルにおいて腎線維症を誘導することが示されている。Snail2発現はヒト線維症腎臓においても検出される(Boutet A et al, EMBO Journal, 2006)。さらに、Snail2は早期および後期慢性拒絶サンプルの両方において高度にアップレギュレートされるEMTマーカーである。
次いで、各データセット全体にPearson相関(r>0.8)を適用した。2つの相関遺伝子リストの重複によって、ParisおよびHannoverデータセットの両方においてSnail2と一貫して関連している184のプローブセットのリストを作成した。
最後に、慢性同種移植片拒絶反応において有意にアップレギュレートされる遺伝子の最初のリスト(287プローブセット)はSnail2と関連した遺伝子の第2のリスト(184プローブセット)と重複した。図1はEMT遺伝子セットを作成するために使用した重複のスキームである。この重複に基づいて、表1に示すとおり、カドヘリン11を含む99プローブセットの最終遺伝子リストを同定した。
Figure 2011514318
実施例2:EMT遺伝子セットのバリデーション
A.乳頭状甲状腺腺腫(PTC)侵襲遺伝子発現のGSEA分析
EMTについての病因分子サインとして同定した遺伝子セットの関連性をバリデートするために、関連性マイクロアレイデータセットにおけるこのEMT遺伝子セットに遺伝子セット富化法(GSEA)を適用した。GEOデータベースの発掘の後、インビボでのEMTに関連した乳頭状甲状腺腺腫のトランスクリプトーム分析を記述するVaskoらによる特定のデータセットを同定した(Vasko,V. et al. Proceedings of the National Academy of Sciences 104, 2803-2808 (2007)参照)。Vaskoらは同じ腫瘍の中心部分と侵襲部分とを比較して、最も顕著な遺伝子の変化は、上皮から間葉への移行(EMT)と一致した細胞間接着およびコミュニケーションに関与したと述べている。
侵襲性乳頭状甲状腺腺腫がEMTによって特徴付けられることを確認するため、EMTの特徴であるビメンチンの発現について、34のさらなる乳頭状甲状腺腺腫を試験した。この分析によってビメンチンの過剰発現が乳頭状甲状腺腺腫侵襲および結節転移と関連していることが示された。さらに、機能的インビトロ試験によって、甲状腺癌細胞における間葉形態および侵襲性の発生および維持の両方に、ビメンチンが必要であることが示された。これらの試験に基づき、甲状腺腺腫侵襲においてEMTが共通していること、そしてビメンチンがインビボで甲状腺癌EMTを制御していることが明らかである。
このデータセットを用いて、EMT特徴に関連した乳頭状甲状腺腺腫の中心部分と侵襲部分間のGSEA比較を実施した。公開されている結果と一致して、表2に示すとおり、ごくわずかな経路が、同じ腫瘍の異なる部分(すなわち中心および侵襲)間で異なって発現されていることが見出された。
Figure 2011514318
しかし、炎症および免疫応答に関連した複数の経路が腫瘍の侵襲部分において有意にダウンレギュレートされることが見出され、2つの経路が有意にアップレギュレートされることが見出された。著しいことに、腫瘍の侵襲部分において同定された最も顕著な経路は、前の実施例において定義したEMT遺伝子セットである。この結果は、EMT遺伝子セットの発現プロファイルがヒトにおいてインビボで生じる病的EMTプロセスをモニターするために関連し得ることを示唆している。
B.早期および後期慢性同種移植片拒絶反応GSEA分析
EMT遺伝子サインが慢性同種移植片拒絶反応および間質線維症進行の異なる段階を通じて制御されているかを評価するために、Hannoverデータセットの発症患者および未発症患者の両方、ならびにコントロールおよび慢性同種移植片拒絶反応グレードIII患者サンプルにGSEA法を適用した(図2)。図2Bに示すとおり、EMTセットはコントロール患者と比較したとき、グレードIII患者において1000以上の経路にわたって有意にアップレギュレートされる。驚くべきことに、同遺伝子セットは、移植後12週間での発症患者群において最も顕著に制御された経路の一つである(図2B)。
実施例3:EMTおよび間質線維症進行を阻止する重要な標的としてのCDH11の同定
EMT試験において同定した遺伝子の内、ビメンチンおよびS100A4のようないくつかは周知のEMTマーカーである。しかしCDH11を含む他のものは、新たに同定されたEMT関連遺伝子であり、これは線維症の推定治療標的と考えることができる。したがって、CDH11が実際に腎線維症進行において病的EMTに関与しているかを確認するために、mRNAおよびタンパク質レベルの両方で、CDH11の発現プロファイルを分析した。
図3Aに示すとおり、CDH11発現は腎線維症の初期および該疾患の後期状態において一貫してアップレギュレートされている(図3B)。さらにCDH11は、この試験において使用したEMT陽性マーカーであるSnail2と一貫して共発現されることが見出された。重要な観察の一つは、CDH11がHannoverデータセットの80以上の生検(表3)およびParisデータセットの80以上の生検(表4)にわたって、Snail2と同様に共発現されていることである。
Figure 2011514318
Figure 2011514318
共発現分析は同様の転写制御に背くことがあることを考慮すると、この結果はCDH11がSnail2と同じ方法で制御されており、EMTプロセスに関与することを示唆している。
この結果は腎皮質全体の総合的な遺伝子発現からもたらされているので、どの細胞タイプでCDH11タンパク質が発現されているのか(例えば尿細管、糸球体、メサンギウム細胞、血管および内皮細胞等)を理解することが重要である。EMTは伝統的に、ビメンチンまたはFSP1(S100A4)のような間葉マーカーの免疫組織学的(IHC)染色によってインビボで検出される(Kalluri, R. & Neilson, E.G., J. Clin. Invest. 112, 1776-1784 (2003)参照)。正常な腎臓では、皮質の上皮尿細管細胞がビメンチンについてネガティブな染色を示す。しかし、一過性EMTプロセスが開始すると、複数の正常および早期萎縮性尿細管がビメンチンを発現し初めて、E−カドヘリン染色を失う。この独特な染色は、腎臓の40%において観察される(Hertig,A. et al, American Journal of Transplantation 6, 2937-2946 (2006)参照)。
したがって、CDH11がEMTマーカーと共に発現されるかを試験するために、ヒトCDH11に対するポリウサギ抗体を用いて、健常、非拒絶腎臓生検および慢性同種移植片拒絶反応腎臓生検についてIHCを実施した。予想のとおり、抗CDH11は正常または非拒絶腎臓において全くまたはほとんど染色を示さないが、慢性同種移植片拒絶反応腎臓では強い尿細管染色を示す(図4)。この染色はビメンチンのような古典的EMT染色の典型であり、ヒトにおけるEMTおよび腎線維症の潜在的役割をさらに確認する。
実施例4:EnMTおよび血管リモデリングを阻止するための重要な標的としてのCDH11の同定
急性および慢性腎臓移植片拒絶の非ヒト霊長類(NHP)モデルは、慢性同種移植片拒絶反応を有する患者において観察される動脈リモデリングを試験し、理解するための有用なツールを提供する(Wieczorek,G. et al. American Journal of Transplantation 6, 1285-1296 (2006)参照)。このモデルにおいて、動物は慢性同種移植片拒絶反応を発症し、65日以内(中央値)にグラフトを失った。急性拒絶と比較して、動脈内膜の変化はマクロファージおよびTリンパ球の減少を示したが、増加した数の筋線維芽細胞、豊富なフィブロネクチン/コラーゲンIVおよび瘢痕コラーゲンI/IIIを示した。間質線維症および尿細管萎縮症は、おそらく動脈狭窄に二次的な比較的短い期間の血流不全および虚血誘導性萎縮症/線維症のため、この実験モデルの極めて顕著な特徴ではない。
このプロセスへのより良い洞察を得るために、正常または急性および慢性拒絶の臨床的兆候を示していると診断されたサル由来の腎臓生検について、全トランスクリプトーム実験を実施した。古典的統計的フィルタリングの後、CDH11は血管リモデリングを有する生検において特異的に過剰発現される遺伝子の一つと同定され、コントロールおよび急性拒絶を有するサンプルと比較して増加した数の筋線維芽細胞が観察された(図5)。このデータは間質線維症に加えて、CDH11は血管リモデリングおよび内膜過形成にも関与し得ることを示唆している。
血管リモデリングにおけるCDH11の潜在的な役割をさらに評価するため、さらなる動物モデルを用いて免疫組織化学的分析を実施した。カニクイザルについて満足のいく交叉反応性特異的抗体がないため、血管リモデリングおよび内膜過形成に関連する心臓慢性拒絶のマウスモデルにおいて、CDH11発現を試験した。図6はCDH11シグナルの存在が内膜肥厚と共に、いくつかの壁内冠状動脈において検出されたことを示している。罹患血管において、中膜(media)は強くポジティブであると思われ、内膜はわずかにのみポジティブを示した。さらに、シグナルは平滑筋細胞および筋線維芽細胞に特異的なマーカーであるアルファSMA染色と共発現される(図6)。重要なことに、CDH−11染色は健常血管において検出できない。
実施例5:腎線維症のマウスモデル(UUO)におけるEMTマーカーとしてのカドヘリン−11の証明
片側尿管閉塞(UUO)マウスモデルは十分に確立されており、文献に記載されており、線維症、例えば侵襲性間質線維症および腎線維症を研究し、潜在的な治療アプローチを評価するために広く使用されている。これらのモデルにおいて尿管閉塞手術は尿細管間質線維症の速やかな発症を誘導し(1〜2週間)、これは高度に再現性がある。UUOはコラーゲン、TGFβ、α−SMAおよびE−カドヘリンの顕著な減少の強いアップレギュレーションを誘導することが知られている。少なくとも図7に示すとおり、UUOは時間依存的にCDH11の強いアップレギュレーションを誘導する。
均等
当業者は日常的未満の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の態様の多くの均等を理解し、または確認することができる。かかる均等は、特許請求の範囲に包含されると意図される。独立した請求項に記載した態様の何れかの組合せは、本発明の範囲に含まれると意図する。
文献の組み込み
本明細書に記載した全ての出版物、特許および係属中の特許出願は、それらの全体において、参照により本明細書に組み込む。

Claims (27)

  1. 対象における上皮間葉移行(EMT)または内皮間葉移行(EnMT)を阻害または予防する方法であって、当該対象に治療上有効量のCDH11アンタゴニストを投与して上皮間葉移行(EMT)または内皮間葉移行(EnMT)を阻害または予防することを含む、方法。
  2. EMTまたはEnMTが線維症と関連している、請求項1の方法。
  3. 対象における線維症を処置する方法であって、当該対象に治療上有効量のCDH11アンタゴニストを投与することを含む、方法。
  4. 線維症が血管リモデリング、腎線維症、肝線維症、皮膚線維症、肺線維症、関節の線維症、中皮の線維症および腸の線維症から成る群から選択される、請求項3の方法。
  5. 血管線維症が肺高血圧と関連している、請求項4の方法。
  6. 対象における慢性組織拒絶を予防しまたはその重症度を低減する方法であって、当該対象に治療上有効量のCDH11アンタゴニストを投与することを含む、方法。
  7. 組織が移植された組織またはグラフト組織である、請求項6の方法。
  8. 対象における腎線維症を処置する方法であって、当該対象に治療上有効量のCDH11アンタゴニストを投与することを含み、ここで該CDH11アンタゴニストが抗体、低分子、核酸、融合タンパク質およびCDH11由来ペプチド化合物から成る群から選択される、方法。
  9. 対象がヒトである、請求項1〜8のいずれかの方法。
  10. アンタゴニストが対象に静脈内、筋肉内または皮下投与される、請求項1〜9のいずれかの方法。
  11. アンタゴニストが抗体、低分子、核酸、融合タンパク質およびCDH11由来ペプチド化合物から成る群から選択される、請求項1〜10のいずれかの方法。
  12. 抗体がマウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびキメラ抗体から成る群から選択される、請求項11の方法。
  13. 抗体がFab、Fab'2、ScFv、SMIP、アフィボディー、アビマー、ナノ抗体およびドメイン抗体から成る群から選択される、請求項11または12の方法。
  14. 抗体が第2の治療薬物との組合せで投与される、請求項11〜13のいずれかの方法。
  15. 第2の治療薬物が第2の抗体、免疫抑制剤および化学療法剤から成る群から選択される、請求項14の方法。
  16. 核酸がRNA干渉物およびリボザイムから成る群から選択されるアンチセンス分子である、請求項11の方法。
  17. アンタゴニストが治療薬物と結合した抗体を含む免疫複合体である、請求項1〜10のいずれかの方法。
  18. 治療薬物が細胞傷害性薬物、免疫抑制剤および化学療法剤から成る群から選択される、請求項17の方法。
  19. 対象がCDH11関連状態を有するかまたは発症するリスクを有するかを評価する方法であって、対象由来のサンプルをCDH11についてアッセイすることを含み、ここで異常濃度または高濃度のCDH11が、当該対象がCDH11関連状態を有するかまたは発症するリスクを有することの指標である、方法。
  20. CDH11関連状態を診断する方法であって、(i)CDH11と反応する薬物を標的サンプルと接触させ:そしてCDH11を検出することを含み、ここで正常コントロールに対して高濃度のCDH11がCDH11関連状態の指標である、方法。
  21. CDH11関連状態を有すると診断された対象の予後を決定する方法であって、時間とともに採取した対象由来の少なくとも2種のサンプルをアッセイし、各サンプル中のCDH11濃度を比較し、そしてCDH11濃度が時間とともに上昇または低下しているかを決定することを含み、ここでCDH11の上昇が前記状態の重症度上昇の指標であり、CDH11の低下が前記状態の重症度低下の指標である、方法。
  22. CDH11関連状態がEMT、EnMT、線維症および慢性組織拒絶から成る群から選択される、請求項19、20または21の方法。
  23. 薬物が抗体または核酸である、請求項20の方法。
  24. 薬物が検出可能なように標識されている、請求項23の方法。
  25. 標識がラジオアイソトープ、生物発光化合物、金属キレートまたは酵素から成る群から選択される、請求項24の方法。
  26. 対象がCDH11アンタゴニストで処置されている、請求項21の方法。
  27. CDH11アンタゴニストが抗体、低分子、核酸、融合タンパク質およびCDH11由来ペプチド化合物から成る群から選択される、請求項26の方法。
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