JP2011513315A - 組合せ抗がん剤 - Google Patents

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Abstract

本開示は、哺乳動物の癌を処置する方法であって、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与による方法に関する。ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質を含む医薬組成物およびキットも開示する。
【選択図】 なし

Description

関連出願のクロス・リファレンス
[0001]本出願は、本明細書中にその開示がそのまま援用される、2008年2月29日出願の米国仮特許出願第61/032,831号の恩典を請求する。
[0002]本開示は、哺乳動物の癌を処置する方法であって、ルカントン(ルカントン)および少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与による方法に関する。ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質を含む医薬組成物およびキットも開示する。
[0003]ルカントンは、チオキサンチオン(thioxanthione)である。ルカントンは、1930年代および1940年代に、ヒトの住血吸虫症を処置するために発見され且つ開発された。ルカントンは、1950年代および1960年代に世界的に住血吸虫症患者を処置するのに、優れた安全記録を伴って用いられた。
[0004]ルカントンは、更に、抗腫瘍活性を有する。Hirschberg et al.(J. Natl. Cancer Inst. (1959) 22, 567-579)は、ルカントンの in vitro の抗腫瘍活性を最初に研究した。その後、ルカントンは、60種類の細胞系パネルに対する in vitro 抗腫瘍活性について、National Cancer Institute で調べられた。その研究の結果は、ルカントンが、μM濃度で調べられた細胞系全てに対して in vitro 抗腫瘍活性を有するということを示した。GI50(50%増殖阻害に必要な濃度)、TGI(100%増殖阻害に必要な濃度)およびLC50(細胞性タンパク質の50%減少に必要な濃度)の範囲は、比較的狭かったが、それは、ルカントンへの細胞系の感受性が、広範囲に変化しなかったことを示している。
[0005]ルカントンは、3μg/mLの濃度で、HeLa細胞のX線損傷を、おそらくは、放射線照射後修復過程を阻害することによって増強することも分かった。ルカントンの放射線増感作用は、暴露時間に依存し且つ可逆性であった。DNA修復の阻害をもたらすトポイソメラーゼIIおよびアプリン酸/アピリミジン酸(apurinic/apyrimidinic)(AP)エンドヌクレアーゼを阻害するルカントンの能力は、おそらくは、ルカントンの抗腫瘍活性および放射線増感活性を説明する。
[0006]CHO細胞におけるルカントンの放射線増感作用は、Leeper et al.(Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 1978 Mar-Apr; 4 (3-4): 219-27)によって研究されたが、彼らは、ルカントンが、5μg/mLまたはそれより高い濃度で、その薬物が照射前に存在するにせよ後に存在するにせよ、亜致死放射線損傷を時間依存方式で蓄積し且つ修復するCHO細胞の能力を減少させるということを示した。ルカントンの放射線増感作用は、薬物の除去後に可逆性であることが判明した。同様の知見は、Durand et al.(Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 1980 Nov.; 6(11):1525-30)によって得られたが、彼らは、Chinese ハムスターV−79細胞におけるルカントンの作用を研究した。ルカントンは、4μMの濃度で、MDA−MB231乳癌細胞に対するアルキル化剤テモゾラミド(temozolamide)の細胞傷害活性を2倍増強することが分かった。
[0007]いろいろな腫瘍に対するルカントンの抗腫瘍活性は、多数の研究者によって、マウス、ラットおよびハムスターのモデルを用いて研究された。Hirschberg(Antibiotics. New York: Springer Verlag; (1974) 3, 274-303)によって概説されたこれら研究において、ルカントンは、識別できる応答パターンを全く伴うことなく、調べられた腫瘍の約半分の増殖を阻害することが分かった。ルカントンは、更に、National Cancer Institute(NCI)において、マウスモデルの多数の腫瘍に対して調べられた。これら研究において、ルカントンは、いろいろなスケジュールにしたがって、皮下かまたは腹腔内に600mg/kgまでの用量で投与された。対照のパーセントとして測定される平均腫瘍重量または生存期間の中央値を、終点として用いた。これら研究において、ルカントンは、調べられた腫瘍の約30%に対して抗腫瘍活性を示した。
Hirschberg et al.(J. Natl. Cancer Inst. (1959) 22, 567-579) Leeper et al.(Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 1978 Mar-Apr; 4 (3-4): 219-27) Durand et al.(Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 1980 Nov.; 6(11):1525-30) Hirschberg(Antibiotics. New York: Springer Verlag; (1974) 3, 274-303)
[0008]ルカントンは、アプリン酸/アピリミジン酸(AP)エンドヌクレアーゼの経口利用可能な低分子阻害剤である。APエンドヌクレアーゼの阻害は、致死的二本鎖切断へ変換されるDNAの脱塩基部位(abasic site)の蓄積をもたらして、アルキル化剤および放射線への腫瘍細胞の感作をもたらす。ペメトレキセド(Pemetrexed)などの代謝拮抗物質も、DNAの脱塩基部位を生じることが知られているので、ルカントンおよび代謝拮抗物質双方を利用する癌のための組合せ療法への要求が存在する。
[0009]本開示は、哺乳動物の癌を処置する方法であって、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の同時または逐次的投与による方法に関する。ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質を含む医薬組成物およびキットも開示する。
[0010]一つの態様において、本開示は、癌を処置する方法であって、それを必要としている哺乳動物に、治療的有効量のルカントンおよび治療的有効量の少なくとも一つの代謝拮抗物質を投与することを含む方法に関する。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、同時にまたは逐次的に投与することができる。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与は、互いの約3時間以内でありうる。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与は、互いの約2時間以内でもありうる。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与は、互いの約1時間以内でもありうる。或いは、処置される癌は、肺癌でありうる。或いは、肺癌は、非小細胞肺癌(non-small lung carcinoma)でありうる。或いは、治療的有効量のルカントンおよび治療的有効量の少なくとも一つの代謝拮抗物質を、1日1回投与するか、または1日2回以上の投与に分割する。或いは、本開示によるルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与の全てについて、投与は、1日2回でありうる。
[0011]或いは、本処置によるルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、経口投与する。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、非経口投与する。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、カプセル剤または錠剤の形で投与する。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、一つまたはそれを超えるサイクルで投与する。或いは、一つのサイクルは、4日毎に1回で7回含む。
[0012]別の態様において、癌を処置する本方法は、放射線療法、ホルモン療法または免疫療法を施すことを更に含む。
[0013]本開示は、更に、医薬組成物であって、治療的有効量のルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質、および薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物に関する。
[0014]本開示は、更に、医薬キットであって、治療的有効量のルカントンおよび薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物;および治療的有効量の少なくとも一つの代謝拮抗物質および薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物を含む医薬キットに関する。
[0015]図1は、ルカントンおよびペメトレキセドの単一物質としてのおよび組合せでの抗腫瘍活性を示すグラフである。
[0016]ルカントンは、化学療法薬または放射線増感性介在薬(radiosensitizing intercalating agent)である。本開示において、ルカントンという用語は、1−ジエチルアミノエチルアミノ−4−メチル−10−チアキサンテノンとして適切なルカントンを、その生理学的に許容される誘導体、類似体および塩と一緒に包含するものとする。このような生理学的に許容される誘導体、類似体および塩には、ヒカントン、ルカントンのインダゾール類似体、および他の類似体であって、Thomas Corbett et al., N−[[1−[[2−(ジエチルアミノ)エチル]アミノ]−9−オキソ−9H−チアキサンテン−4−イル]メチル]メタンスルホンアミド(WIN33377)および類似体の抗腫瘍活性, Exp. Opin. Invest. Drugs 3:1281-1292 (1994);および Mark P. Wentland et al., N−[[1−[[2−(ジエチルアミノ)エチル]アミノ]−9−オキソ−9H−チアキサンテン−4−イル]メチル]メタンスルホンアミド(WIN33377)および関連誘導体の抗非固形癌効果及び製造, Bioorg. & Med. Chem Lett. 4:609-614 (1994) に開示されたものなどが含まれるが、これに制限されるわけではない。
[0017]ルカントンは、住血吸虫症(schistomiasis)のための処置として用いられてきた。ルカントンは、成長している細胞への細胞傷害性作用または細胞分裂抑制作用を有することが知られていた。細胞におけるルカントンおよび電離放射線の増強された連合致死作用は、分割可能な複合体中のDNA二本鎖切断(DSB)の生成によって説明することができるが、それは、放射線単独で誘導されるDSBと組み合わされたルカントンのトポイソメラーゼII阻害のためである。R. Bases, DNA Intercalating Agents as Adjuvants in Radiation Therapy, Int J Radiat Oncol Biol Phys 4:345-346 (1978) (editorial);R. E. Bases et al., Topoisomerase Inhibition byルカントン, an Adjuvant in Radiation Therapy, Int J Radiat Oncol Biol Phys 37:1133-1137 (1997)。
[0018]トポイソメラーゼIIも、追加の機構によって放射線誘導DSBの機構に関連していることがありうる。DNA塩基が、電離放射線によって損傷した場合、それらは、最初に、細胞の塩基除去修復酵素によって除去されるが、それは、損傷した塩基を(グリコシラーゼによって)除去し、そして脱塩基部位を残す。脱塩基部位の除去は、エンドヌクレアーゼによって行われる次の工程で達成されるが、それは、鎖開裂を引き起こし、そしてDNA修復合成において必要なアクセプターである3’OH基を残す。引き続きの工程には、除去される塩基の部位における5’リン酸基の除去後、置換ヌクレオチドを挿入するDNAポリメラーゼβによる適当なギャップ充填(gap filling)が含まれる。DNAリガーゼは、置換ヌクレオチドを封じることによって修復を完了する。
[0019]ルカントンの利点は、DNA複製が、トポイソメラーゼII活性を必要とすることによって、癌性細胞などの循環細胞に選択的な毒性を生じるということである。正常細胞は、その大部分が循環しないので、ルカントンをベースとする療法にあまり感受性でないと考えられるし、しかも非選択的に損傷されるであろうとはあまり考えられない。更に、骨髄および消化管へのルカントンの作用は、穏やかであり且つかなり速やかに可逆性である。
[0020]本明細書中で用いられる代謝拮抗物質は、正常な生化学反応に必要な代謝産物などの物質に類似の構造を有するが、細胞分裂を含めた細胞の正常機能を妨害するのに十分に異なった化学物質である。代謝拮抗物質は、DNA生産を妨害することができ、したがって、細胞分裂および腫瘍の成長を妨害することができる。癌細胞は、他の細胞よりも多くの時間を費やして分裂するので、細胞分裂を阻害することは、他の細胞よりも多く腫瘍細胞を傷つける。代謝拮抗物質は、DNAのビルディングブロックになるプリン(アザチオプリン、メルカプトプリン)またはピリミジンに扮することができる。それらは、これら物質が、(細胞周期の)S期中にDNA中に包含された状態になることを妨げて、正常な発生および分裂を止める。それらは、更に、RNA合成に影響を与える。しかしながら、チミジンは、DNA中に用いられるが、RNA中には用いられないので(この場合、ウラシルが代わりに用いられる)、チミジル酸シンターゼによるチミジン合成の阻害は、RNA合成よりもDNA合成を選択的に阻害する。
[0021]代謝拮抗物質の一例は、葉酸代謝拮抗物質である。代謝拮抗物質の別の例は、ペメトレキセドである。ペメトレキセド(Alimta(商標)という商標名で市販)は、適切なペメトレキセドと、その生理学的に許容される誘導体、類似体および塩を意味する。その化学名は、N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]−ベンゾイル]−L−グルタミン酸である。ペメトレキセドは、葉酸、具体的には、葉酸の代謝性誘導体を基質として利用する一つまたはそれを超える酵素への阻害作用を有することがありうる。それら化合物は、デオキシウリジル酸のデオキシチミジル酸へのメチル化を触媒するチミジル酸シンターゼの阻害剤として特に活性であると考えられる。したがって、ペメトレキセドは、そうでなければ阻害される酵素に依存する新生物の成長を阻害するのに単独でまたは組合せで用いることができる。
[0022]本発明者は、予想外にも、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質を、癌の処置において同時にまたは逐次的に、有利に投与することができるということを発見したが、ここにおいて、それらは、宿主の癌の停止または退行を引き起こすのに有効な量で投与することができる。
[0023]本開示は、哺乳動物の癌を処置する方法であって、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の同時または逐次的投与による方法に関する。ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質を含む医薬組成物およびキットも開示する。
[0024]一つの態様において、本開示は、癌を処置する方法であって、それを必要としている哺乳動物に、治療的有効量のルカントンおよび治療的有効量の少なくとも一つの代謝拮抗物質を投与することを含む方法に関する。「治療的有効量」は、特定の疾患、障害または副作用の症状を阻害する、予防するまたは処置する、例えば、癌の停止または退行を引き起こすのに治療的に有効でありうる化合物の量を意味する。
[0025]或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、同時にまたは逐次的に投与することができる。これは、各々の成分を、同時点に(同時に)または逐次的に、いずれかの順序で異なった時点に投与することができるということを意味する。更に、本明細書において用いられる「同時」には、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質を、一つの医薬組成物部材として同時点に一緒に摂取してよいし、または同時点ではあるが別々の医薬組成物で一緒に摂取してよいということを意味する。したがって、各々の成分は、別々にではあるが、所望の治療的作用を与えるように十分に近い時間に投与することができる。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与は、互いの約3時間以内でありうる。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与は、互いの約2時間以内でありうる。或いは、ルカントンおよびペメトレキセドの投与は、互いの約1時間以内でありうる。
[0026]ルカントンおよび抗癌薬の組合せが全て、本発明で達成される抗腫瘍作用を示すわけではないであろう。ルカントンおよび本明細書中の少なくとも一つの代謝拮抗物質は、既知の抗癌薬の他の組合せで不可能な結果を達成するように一緒に働くと考えられる。
[0027]広範囲の癌を、本発明を用いて処置することができる。これら癌は、原発性および転移性双方の癌を含む。例として、処置される癌は、肺癌でありうる。或いは、肺癌は、非小細胞肺癌(non-small lung carcinoma)でありうる。
[0028]治療的または廃止的作用を得るために投与されるルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の具体的な用量は、当然ながら、例えば、投与される化合物、投与経路、処置されている状態、および処置されている個々の宿主または患者を含めた、その症例を取り巻く具体的な状況によって決定されるであろう。或いは、治療的有効量のルカントンおよび治療的有効量の少なくとも一つの代謝拮抗物質は、1日1回投与するか、または1日2回以上の投与に分割する。或いは、本開示によるルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与の全てについて、投与は、1日2回でありうる。
[0029]ルカントンおよびペメトレキセドは、一つまたはそれを超えるサイクルで投与することができる。一つの態様において、一つのサイクルは、4日毎に1回で7回を含む。
[0030]別の態様において、癌を処置する本方法は、放射線療法、ホルモン療法または免疫療法を投与することを更に含む。
[0031]本開示は、更に、医薬組成物であって、治療的有効量のルカントンおよびペメトレキセド、および薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物に関する。
[0032]本開示は、更に、医薬キットであって、治療的有効量のルカントンおよび薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物;および治療的有効量のペメトレキセドおよび薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物を含む医薬キットに関する。
[0033]本開示の医薬組成物には、本明細書中において集合的に担体と称される一つまたはそれを超える無毒性の生理学的に許容しうる担体、アジュバントまたはビヒクルと一緒に組成物へと製剤化されたルカントンおよびペメトレキセドが含まれる。本開示の医薬キットは、ルカントンを含む医薬組成物と、ペメトレキセドを含む別の医薬組成物を含む。
[0034]それら医薬組成物およびキットは、ヒトおよび動物に、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)、槽内、膣内、腹腔内、局所に(散剤、軟膏剤または滴剤)かまたは、口腔または鼻スプレーとして投与することができる。ルカントンおよび代謝拮抗物質のどちらかまたは双方は、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経口腔、鼻腔内、リポソームで、吸入によって、膣内、眼内、カテーテルまたはステントによる局所送達によって、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内を含めたいろいろな経路で、または徐放性剤形で投与することができる。別の態様において、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、経口投与する。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、非経口投与する。或いは、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質は、カプセル剤または錠剤の形で投与する。
[0035]「薬学的に許容しうる」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または妥当な受益性/危険性比率に相応した他の問題合併症を伴うことなく、ヒトおよび動物の組織との接触に適する、妥当な医学的判断の範囲内であるそれら化合物、材料、組成物および/または剤形を意味する。
[0036]非経口注射に適する組成物は、生理学的に許容しうる滅菌水性または非水性の液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、および滅菌注射可能液剤または分散剤へ再構成するための滅菌散剤を含んでいてよい。適する水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール等)、適するそれらの混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合は必要な粒度の維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。
[0037]これら組成物は、更に、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散助剤(dispensing agent)などのアジュバントを含有してよい。微生物の作用の防止は、いろいろな抗微生物薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって確実にすることができる。等張性剤、例えば、糖類、塩化ナトリウム等を包含することも望ましいことがありうる。注射可能医薬剤形の長期吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。
[0038]所望ならば、そしてより有効な分布のために、それら化合物は、ポリマーマトリックス、リポソームおよびミクロスフェアなどの徐放性または標的送達システム中に包含することができる。それらは、例えば、細菌保持フィルターを介する濾過によって、または滅菌剤を、使用直前に滅菌水またはいくつか他の滅菌注射可能な基剤中に溶解させることができる滅菌固体組成物の形で包含することによって滅菌されてよい。
[0039]経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が含まれる。このような固体剤形の場合、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも一つの不活性な慣例の賦形剤(または担体)、または(a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸のようなもの、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート(alignates)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴムのようなもの、(c)保湿剤、例えば、グリセロールのようなもの、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の錯ケイ酸塩および炭酸ナトリウムのようなもの、(e)溶液遅延剤、例えば、パラフィンのようなもの、(f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物のようなもの、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアラートのようなもの、(h)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイトのようなもの、および(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはその混合物のようなものと混合することができる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、それら剤形は、緩衝剤を含んでもよい。
[0040]腫瘍または癌を処置するための組成物および方法における活性成分の百分率は、適する投薬量が得られるように変化することができる。特定の患者に投与される投薬量は、判定基準として、投与経路、処置持続期間、患者の体格および状態、活性成分の力価およびそれに対する患者の応答を用いて、臨床医の判断に依存して変化しうる。したがって、活性成分の有効な投薬量は、臨床医が、全ての判定基準を考慮し且つ患者のために最良の判断を利用して容易に決定することができる。
[0041]本処置方法は、更に、放射線療法、ホルモン療法、生物学的療法および免疫療法が含まれるがこれに制限されるわけではない追加の癌処置方法を施すことを含んでよい。放射線療法、ホルモン療法、生物学的療法および免疫療法は、ルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質の投与前、投与後または投与中に施すことができる。
[0042]放射線は、いろいろな様式で投与することができる。例えば、放射線は、事実上、電磁線または粒子線であってよい。本発明の実施に有用な電磁放射線には、x線およびγ線が含まれるが、これに制限されるわけではない。好ましい態様において、超高圧x線(x線>=4MeV)は、本発明の実施に用いることができる。本発明の実施に有用な粒子放射線には、電子ビーム、陽子ビーム、中性子ビーム、α粒子および負のpi中間子が含まれるが、これに制限されるわけではない。その放射線は、慣用的な放射線学的処置装置および方法を用いて且つ術中法および定位法によって送達することができる。本発明の実施に用いるのに適する放射線処置に関する更なる考察は、Steven A. Leibel et al., Textbook of Radiation Oncology (1998) (publ. W. B. Saunders Company) を通して、特に、13章および14章に見出すことができる。放射線は、標的送達などの他の方法によって、例えば、放射性「種」によってまたは標的放射性コンジュゲートのシステム送達によって送達することもできる。J. Padawer et al., Combined Treatment with Radioestradiolルカントンin Mouse C3HBA Mammary Adenocarcinoma and with Estradiolルカントンin an Estrogen Bioassay, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 7:347-357 (1981)。他の放射線送達方法を、本発明の実施に用いてよい。
[0043]所望の処置体積へ送達される放射線の量は、可変であってよい。好ましい態様において、放射線が、ルカントンおよびペメトレキセドと一緒に投与される場合、放射線は、宿主の中枢神経の癌の停止または退行を引き起こすのに有効な量で投与することができる。別の態様において、放射線は、処置体積へ少なくとも約1 Gray(Gy)分割で少なくとも隔日に1回投与し、そしてより好ましくは、放射線は、処置体積へ少なくとも約2 Gray(Gy)分割で少なくとも1日1回投与し、なお一層好ましくは、放射線は、処置体積へ少なくとも約2 Gray(Gy)分割で少なくとも1日1回、週に5日間連続して投与する。別の態様において、放射線は、処置体積へ3Gy分割で隔日に週3回投与する。別の態様において、最初の23分割は、初期処置体積に投与するが、別の7処置分割は、追加処置体積へ送達する。また別の態様において、全部で少なくとも約20Gy、なお一層好ましくは、少なくとも約30Gy、最も好ましくは、少なくとも約60Gyの放射線を、それを必要としている宿主に投与する。別のより好ましい態様において、放射線は、処置体積よりもむしろ、全脳へ投与する。全脳に照射する場合、30Gyの最大線量が推奨される。最も好ましい態様において、放射線は、宿主の全脳に投与するが、この場合、その宿主は、転移性癌について処置されている。
[0044]好ましい態様において、処置体積は、CTまたはMRI走査での造影強化病変、より好ましくは、造影強化病変および周囲浮腫、なお一層好ましくは、少なくとも約1cmの余地を加えた、CTまたはMRI走査での造影強化病変および周囲浮腫を含む。
[0045]処置計画には、対向横方向フィールド(opposed lateral fields)、くさび形対フィールド(a wedge pair of fields)、回転または多重フィールド技術が含まれてよいが、これに制限されるわけではない。CT誘導処置計画作成は、フィールド配置の選択の正確さを改善すると示唆される。初期処置体積およびコーンダウン(cone-down)処置体積のための等線量分布は、平行対向フィールドでの場合を含めた全ての患者について示唆される。初期処置体積および追加処置体積への線量分布を示す複合計画は望ましい。処置体積への最小および最大線量は、好ましくは、処置体積の中心において約10%の範囲内の線量に保持される。
[0046]ホルモン療法は、特定のホルモン、具体的には、ステロイドホルモン、またはこのようなホルモンの生産または活性を阻害する薬物(ホルモンアンタゴニスト)の外因性投与によって、内分泌系の操作を必要とする。ステロイドホルモンは、特定の癌細胞における遺伝子発現の強力な推進者であるので、特定のホルモンのレベルまたは活性を変更することは、特定の癌の成長を止めさせることまたはそれを細胞死させることさえもできる。精巣摘除術および卵巣摘出術などの内分泌器官の外科的除去も、ホルモン療法の形として用いることができる。
[0047]免疫療法は、天然体物質または天然体物質から作られる薬物を用いる処置である。それらは、身体を刺激して、癌細胞を攻撃し、そして他の癌処置によって引き起こされる副作用を克服する。免疫療法は、免疫系を用いて、癌を拒絶する。主な前提は、患者の免疫系を刺激して、疾患の原因である悪性腫瘍細胞を攻撃することである。これは、患者の免疫感作であって、この場合、患者自身の免疫が、破壊される標的として腫瘍細胞を認識するように向けられること;かまたは、薬物としての治療的抗体の投与であって、この場合、患者の免疫系が、治療的抗体によって腫瘍細胞を破壊するように補充されることによることがありうる。
[0048]本開示の方法においておよび医薬組成物およびキットに、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、いろいろな修飾および変更を行うことができるということは、当業者に理解されるであろう。したがって、本開示は、本発明の修飾および変更を、それらが、請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内であるという条件付きで包含するものである。更に、次の実施例は、請求範囲に記載の発明を詳しく説明するために付け加えられており、請求範囲に記載の発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
実施例1
[0049]方法:CD−1ヌードマウスの群の皮下に、ヒトH460非小細胞肺癌細胞を異種移植した。処置は、腫瘍成長が約130mmに達した時に開始した。処置は、4日毎に1回の頻度で7回投与し、そしてビヒクル;200mg/kgで腹腔内投与されるペメトレキセド;80mg/kgで経口投与されるルカントン;および同用量でのペメトレキセドおよびルカントンの組合せを包含した。腫瘍成長および体重変化を、28日間追跡した。
[0050]結果:ペメトレキセドおよびルカントンは双方とも、28日間の処置中に、ビヒクルに相対して腫瘍成長を阻害した。各々の処置について、腫瘍体積の増加倍数は、ビヒクル、ペメトレキセド、ルカントン、およびペメトレキセドおよびルカントンの組合せについて、それぞれ、42、28、34および19であった。ビヒクル被処置群と比較すると、これらは、ルカントン、ペメトレキセド、およびペメトレキセドおよびルカントンの組合せで処置された群について、それぞれ、19%、33%および55%の成長阻害である(図1)。28日の期間中、腫瘍重量を除いた体重変化は、ビヒクル、ペメトレキセド、ルカントン、およびペメトレキセドおよびルカントンの組合せについて、それぞれ、−2.9%、−0.9%、−6.1%および−1.7%であった。これら体重データは、それら処置が、全身毒性を最小限にしかまたは全く伴うことなく、十分に許容されたことを示している。
実施例2
[0051]上の実施例1による方法は、1日2回投与、すなわち、朝に1回および晩に1回に用いることができる。その手順を、下の表1に要約する。
[0052]処置は、平均腫瘍サイズが約100mmである時の腫瘍細胞植込み後約10日に開始し、その後、4日毎に1回でありうる。投薬容量は、4日毎に1回調整することができる。
[0053]特に断らない限り、本明細書中および請求の範囲に用いられる分子量、反応条件等のような成分、性状の量を表している数は全て、いずれの場合にも、「約」という用語で修飾されると理解されるはずである。したがって、それと反対に示されない限り、本明細書中および請求の範囲に示されている数値パラメーターは、本発明によって得られるように求められる所望の性状に依存して変化してよい近似値である。極めて少なくとも、そして請求の範囲の範囲への均等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして且つ通常の丸め法を適用することによって解釈されるはずである。本発明の広範な範囲を示している数値範囲およびパラメーターが近似値であるということにもかかわらず、具体的な実施例に示されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、本質的には、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差によって必然的に生じる一定の誤差を含有する。
[0054]本発明を記載している文脈中(特に、請求の範囲の文脈中)に用いられる「ある一つの(a,an)」、「その」および同様の言及は、本明細書中に特に断らない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、単数および複数双方を包含すると解釈されるはずである。本明細書中の値の範囲の引用は、単に、その範囲内にある別個の値各々に個々に言及する便法として役立てるものである。本明細書中に特に断らない限り、個々の値は各々、本明細書中にそれが個々に引用されたかのように、本明細書中に包含される。本明細書中に記載の方法は全て、本明細書中に特に断らない限り、またはそれ以外には、文脈によって明確に否定されない限り、いずれか適する順序で行うことができる。本明細書中に与えられるいずれかおよび全ての実施例または例示的な言葉(例えば、「など」「のような」)は、単に、本発明をより良く明らかにするためのものであり、それ以外に請求の範囲に記載の発明の範囲に制限を与えることはない。本明細書中の言葉で、本発明の実施に不可欠ないずれかの請求の範囲に記載されていない要素を示すと解釈されるべきものはない。
[0055]本明細書中に開示されている本発明の別の要素または態様のグループ分けは、制限として解釈されるべきではない。各々のグループメンバーは、個々に、または本明細書中に見出される他のグループメンバーまたは他の要素とのいずれかの組合せで言及されてよいし且つ請求範囲に記載されてよい。一つまたはそれを超えるグループメンバーは、便宜および/または特許可能性の理由で、あるグループに包含されてよいまたはそれから削除されてよいと考えられる。いずれかこのような包含または削除を行う場合、本明細書は、このように修飾されて、請求の範囲に用いられる全ての Markush グループについて記述された説明を満たしているグループを含有すると考えられる。
[0056]本発明の特定の態様は、本発明を実施することについて発明者に知られている最良のモードを含めて、本明細書中に記載されている。当然ながら、これら記載の態様への変更は、前述の説明を読むことで、当業者に明らかになるであろう。本発明者は、熟練者が、このような変更を適宜用いることを期待しているし、しかも本発明者は、本発明が、本明細書中に具体的に記載されている以外にも実施されると考えている。したがって、本発明は、適用可能な法則によって許されるような、請求の範囲に挙げられている内容の修飾および均等物を全て包含する。更に、その可能な変更全てにおける上記の要素のいずれかの組合せは、本明細書中に特に断らない限り、またはそれ以外には、文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
[0057]更に、本明細書を通して、特許および印刷刊行物を多数参照してきた。上に挙げられた参考文献および印刷刊行物は各々、本明細書中にそのまま個々に援用される。
[0058]最後に、本明細書中に開示の本発明の態様は、本発明の原理を詳しく説明するものであるということは理解されるはずである。用いることができる他の修飾は、本発明の範囲内である。したがって、例としてであるが、制限としてではなく、本発明の別の配置は、本明細書中の内容にしたがって利用することができる。したがって、本発明は、正確に示され且つ記載されているものに制限されない。

Claims (20)

  1. 哺乳動物の癌を処置する方法であって、
    ルカントンを当該哺乳動物に投与し;そして
    少なくとも一つの代謝拮抗物質を当該哺乳動物に投与すること
    を含み、ここにおいて、当該ルカントンおよび当該少なくとも一つの代謝拮抗物質を、治療的有効量で投与する方法。
  2. 前記少なくとも一つの代謝拮抗物質が、葉酸代謝拮抗物質である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記少なくとも一つの代謝拮抗物質が、ペメトレキセドである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、同時に投与する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、逐次的に投与する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、互いの約3時間以内に投与する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、互いの約2時間以内に投与する、請求項5に記載の方法。
  8. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、互いの約1時間以内に投与する、請求項5に記載の方法。
  9. 前記癌が、肺癌である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記肺癌が、非小細胞肺癌である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記治療的有効量のルカントンおよび前記治療的有効量の少なくとも一つの代謝拮抗物質を、1日1回投与するか、または1日2回以上の投与に分割する、請求項1に記載の方法。
  12. 前記1日2回以上の投与が、1日2回の投与である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、経口投与する、請求項1に記載の方法。
  14. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、非経口投与する、請求項1に記載の方法。
  15. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、カプセル剤または錠剤の形で投与する、請求項1に記載の方法。
  16. 前記ルカントンおよび前記少なくとも一つの代謝拮抗物質を、一つまたはそれを超えるサイクルで投与する、請求項1に記載の方法。
  17. 前記の一つのサイクルが、4日毎での7回を含む、請求項16に記載の方法。
  18. 放射線療法、ホルモン療法または免疫療法を施すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
  19. 治療的有効量のルカントンおよび少なくとも一つの代謝拮抗物質、および薬学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。
  20. 治療的有効量のルカントンおよび薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物、および
    治療的有効量の少なくとも一つの代謝拮抗物質および薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物
    を含む医薬キット。
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