JP2011511024A - 尿失禁の処置用のα−1Aアドレナリン作動性部分アゴニストとしてのN−[3−ブロモ−2−クロロ−4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルメチル)−フェニル]−メタンスルホンアミド - Google Patents

尿失禁の処置用のα−1Aアドレナリン作動性部分アゴニストとしてのN−[3−ブロモ−2−クロロ−4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルメチル)−フェニル]−メタンスルホンアミド Download PDF

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Abstract

本発明は、式(I)により表されるα−1A受容体部分アゴニスト、及び薬学的に許容しうるその塩又は溶媒和物に関する。本発明は更に、式(I)を含有する医薬組成物、治療剤としてのこれらの使用方法、及びこれらの製造方法に関する。

Description

本発明は、α−1Aアドレナリン作動性部分アゴニストであるイミダゾリニルメチルアリールスルホンアミド、関連した医薬組成物、及び治療剤としての使用方法に関する。
α−1アドレナリン作動性受容体(互換的にα−1アドレナリン受容体(adrenoceptors)と命名される)は、カテコールアミン類のエピネフリン及びノルエピネフリン(NE)の結合を介して交感神経系の種々の作用に介在する、Gタンパク質共役型膜貫通受容体である。現在、遺伝子がクローン化されている、数種のサブタイプのα−1アドレナリン作動性受容体が存在することが知られている:α−1A(以前にはα−1Cとして知られていた)、α−1B及びα−1D。ヒト前立腺では、α−1Lと命名されるプラゾシンに対する親和性の低いα−1アドレナリン受容体の存在が解明されている。しかしα−1Lアドレナリン作動性受容体サブタイプの遺伝子は、未だクローン化されていない。
α−1アドレナリン受容体は、平滑筋緊張の交感神経維持において役割を果たしており、そしてα−1アドレナリン作動性アゴニストは、尿貯蔵及び排尿に必要な下部尿路における筋緊張を上昇させることが知られているため、アドレナリン作動性受容体は、尿路機能不全における薬物開発の重要な標的となる(Testa, Eur.J.Pharmacol., 1993, 249, 307-315)。α−1アドレナリン作動性受容体の細分をもたらす薬理試験は、サブタイプ選択的化合物の開発が、副作用発生率が低い改善された処置を可能にするという示唆を導いており、そしてTanaguchiら(Eur.J.Pharmacol, 1996, 318, 117-122)は、α−1B及びα−1Dサブタイプよりも、α−1A受容体及び(程度は低いが)α−1L受容体に対して選択性を持つ化合物が、血管組織よりも尿道に対して選択性を有することを報告した。
尿失禁は、患者にとって衛生的又は社会的懸念となる程度の尿の不随意減少と定義される症状である。腹圧性尿失禁(SUI)は、内括約筋が完全に閉鎖されないときに発症する。初発症状は、咳、くしゃみ、笑うこと、走ること、物を持ち上げること、又は単に立つことのような、充満した膀胱に圧力をかける活動による少量の漏れである。漏れは、活動が停止すると停止する。SUIは、25歳〜50歳の間の女性において最も一般的であり、定期的に運動する女性の多くは、ある程度のSUIを有する。
SUIを処置するために現在利用可能な方法は、理学療法及び手術を包含する。医薬での処置は、非選択的アドレナリン作動性アゴニストの使用に限定されている。ごく限定された数の医薬のみが腹圧性尿失禁を処置するために利用されているが、効き目は様々である。
フェニルプロパノールアミン、プソイドエフリン(pseudoephrine)及びミドドリンは、軽度から中等度の腹圧性尿失禁のための一次療法と考えられている(Wein, supra; Lundberg (editor), JAMA 1989, 261(18):2685-2690)。これらの薬剤は、α−1アドレナリン受容体の直接活性化により、及び間接的に神経終末への取り込みに続く交感神経からの内因性ノルエピネフリンの置換によりの両方で作用すると考えられる(Andersson and Sjogren, Progress in Neurobiology, 1982, 71-89)。近位尿道及び膀胱頸部の平滑筋細胞に位置するα−1アドレナリン受容体の活性化(Sourander, Gerontology 1990, 36:19-26; Wein, supra)は、収縮及び尿道閉鎖圧の上昇を引き起こす。
フェニルプロパノールアミン、プソイドエフリン、及びミドドリンの有用性は、α−1アドレナリン受容体サブタイプの間の選択性の欠如により、そしてこれらの薬剤の間接作用(即ち、中枢神経系及び末梢におけるα−1、α−2、及びβ−アドレナリン受容体の活性化)により限定される。結果として、これらの薬剤の任意の所望の治療効果には、血圧の上昇のような不適切な副作用が伴うことがある。血圧の上昇は、用量依存的であり、そのため、これらの薬剤の治療有効血中濃度を達成する可能性は制限されている(Andersson and Sjogren, supra)。更に少数の患者では、これらの薬剤は、中枢神経系刺激作用の結果として、不眠症、不安及び目眩を引き起こす(Andersson and Sjogren, supra; Wein, supra)。
ある種のα−1A/1Lアゴニストは、尿失禁、鼻詰まり、性機能不全(射精障害及び持続勃起症など)、及びCNS障害(鬱病、不安、認知症、老衰、アルツハイマー病、注意及び認知の欠損、並びに肥満症、過食症、及び食欲不振のような摂食障害など)を包含する、種々の病態を処置するのに有用であることが知られている。例えば、α−1A/Lアゴニストとして種々の2−イミダゾリニルメチルアリール及びヘテロアリール誘導体を開示している、米国特許第5,952,362号、6,756,395号、6,852,726号、及び6,979,696号を参照のこと。α−1A/1Lアドレナリン受容体サブタイプの完全アゴニストは、尿失禁の処置に潜在的に有効であるが、不適切な心血管及び中枢神経系副作用により限定されることがある。本来の効力が減少した選択的α−1A/1L受容体モジュレーター(即ち、「部分アゴニスト」)は、失禁を処置するのに必要とされる尿道平滑筋に及ぼす収縮効果を維持しながら、このような副作用を減少させることができる。
現在利用可能な医薬に関連した副作用及び/又は限定効力のため、有用な化合物に対する未だ満たされていない医学的ニーズが存在する。所望のα−1Aアドレナリン作動性部分アゴニストプロフィールを有する化合物が、望まれている。
1つの態様において、本出願は、式(I):

で示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩若しくはプロドラッグを提供する。
式(I)の化合物のN−[3−ブロモ−2−クロロ−4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルメチル)−フェニル]−メタンスルホンアミド(本出願で使用される命名法は、AUTONOM(商標)v.4.0に基づく)は、予期しないことに、α−1Aアドレナリン受容体の部分アゴニストとして、血圧(MAP)を上回る尿道内圧(IUP)の増大に関して、強化された選択性を示すことが見い出された。フェニル環のそれぞれ2位及び3位のクロロ及びブロモ置換基の組合せは、それが、部分アゴニストとして、0.38という有利な固有の活性、即ち効力(理想的には0.35〜0.60の間である)と、6.6という親和性、即ちpEC50値との両方を有するという点において、一般分類のイミダゾリニルメチルアリールスルホンアミドに比べて予想外の利点を提供する。完全アゴニスト活性は、高血圧関連副作用のため不適切であるため、実質的な親和性と部分アゴニスト挙動との組合せは、拡張期血圧関連副作用の最小化と一体となった、α−1Aアドレナリン受容体の有効な調節に関連する尿道活動の効用の最適化のために決定的に重要である。更には、式(I)の化合物は、類似化合物に比較して、失禁の有効な処置に必要な、経時的IUP反応の持続性の改善を示す。
1つの実施態様において、本出願は、式(I)の化合物(ここで、薬学的に許容しうる塩は、塩酸塩である)を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、式(I)の化合物を含み、そして更に薬学的に許容しうる担体を含む組成物を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、組成物が、α−1A受容体部分アゴニストでの処置により軽減する病態を有する対象への投与に適切である、上記組成物を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、これを必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物を投与することを含む該方法を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、障害が、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、溢流性尿失禁、及び機能性尿失禁から選択される、上記方法を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、この障害が、腹圧性尿失禁である方法を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、この障害が、切迫性尿失禁である方法を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、この障害が、溢流性尿失禁である方法を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、この障害が、機能性尿失禁である方法を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、これを必要とする対象に、α−1Aアドレナリン受容体の第2のモジュレーターと組合せた有効量の式(I)の化合物を投与することを含む該方法を提供する。
1つの実施態様において、本出願は、尿失禁を特徴とする病態を処置又は予防する方法であって、これを必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
麻酔ウサギモデルにおけるデータ測定の図式 麻酔ウサギモデルにおける式(I) 麻酔ウサギモデルにおける類似化合物 麻酔ウサギモデルにおける類似化合物 麻酔ウサギモデルにおける類似化合物 麻酔ウサギモデルにおける類似化合物 麻酔ウサギモデルにおける類似化合物 覚醒ブタモデルにおけるIUP、MAP及びHRに及ぼすビヒクルの効果 覚醒ブタモデルにおける式(I) 覚醒ブタモデルにおける類似化合物
特に断りない限り、明細書及び請求の範囲を包含する本出願に使用される以下の用語は、後述の定義を有する。本明細書及び添付の請求の範囲に使用されるとき、単数形の「a」、「an」及び「the」は、特に文脈に明白な断りない限り、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。
本明細書に特定される全ての特許及び刊行物は、引用例としてその全体が本明細書に取り込まれる。
本明細書において使用されるとき、「IUP」は、尿道内圧を意味し、そして尿道反応の第1のピークから2分間の平均として測定する。
本明細書において使用されるとき、「MAP」は、平均動脈血圧を意味し、そしてIUPが測定される2分間区分での平均血圧として測定する。
本明細書において使用されるとき、「経時的IUP反応の持続性」は、IUP反応の傾き(mmHg/分)を意味し、2分間のIUP反応直後に5分間(最初のピークの2〜7分後)最大の3用量について算出する。
「アリール」は、少なくとも1個の環が本質的に芳香族である1個以上の縮合環よりなる一価環状芳香族炭化水素ラジカルであって、特に断りない限り、場合により、ヒドロキシ、シアノ、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、カルボニルアミノ、アミノスルホニル、スルホニルアミノ、ニトロ、及び/又はアルキルスルホニルで置換されていてもよいラジカルを意味する。アリールラジカルの例は、特に限定されないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インダニル、アントラキノリルなどを包含する。
「アリールスルホニル」は、−S(O)Rラジカル(ここで、Rは、本明細書中と同義のアリール基である)を意味する。
互換的に使用することができる、「2−イミダゾリニルメチル」、「イミダゾリン−2−イルメチル」、「イミダゾリニルメチル」、及び「4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルメチル」は、下記式:

で示される構造により指定される残基を意味する。
当然のことながら、2−イミダゾリン及び2−イミダゾリニルメチル中の二重結合は、他の共鳴構造を想定してもよい。2−イミダゾリン及び2−イミダゾリニルメチルという用語は、このような全ての共鳴構造を包含する。
「異性」は、同一の分子式を有するが、その原子の結合の性質若しくは配列、又はその原子の空間配置が異なる化合物を意味する。その原子の空間配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、そして重ね合わせられない鏡像である立体異性体は、「エナンチオマー」、又は時に光学異性体と呼ばれる。4種の同一でない置換基に結合した炭素原子は、「キラル中心」と呼ばれる。
「キラル化合物」は、1個以上のキラル中心を持つ化合物を意味する。これは、反対のキラリティーの2種のエナンチオマー形を有し、そして個々のエナンチオマーとして、又はエナンチオマーの混合物としてのいずれかで存在しうる。等量の反対のキラリティーの個々のエナンチオマー形を含有する混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。1個を超えるキラル中心を有する化合物は、2n−1個(ここで、nは、キラル中心の数である)のエナンチオマー対を有する。1個を超えるキラル中心を持つ化合物は、個々のジアステレオマーとして、又は「ジアステレオマー混合物」と呼ばれるジアステレオマーの混合物としてのいずれかで存在しうる。キラル中心が存在するとき、立体異性体は、キラル中心の絶対立体配置(R又はS)により特徴付けることができる。絶対立体配置とは、キラル中心に結合した置換基の空間配置のことをいう。検討中のキラル中心に結合した置換基は、Cahn, Ingold及びPrelogの配列規則(Cahn et al. Angew. Chem. Inter., 1966, Edit., 5, 385; errata 511; Cahn et al. Angew. Chem., 1966, 78, 413; Cahn and Ingold, J. Chem. Soc. (London), 1951, 612; Cahn et al., Experientia, 1956, 12, 81; Cahn, J., Chem.Educ., 1964, 41, 116)により順位付けされる。
「互変異性体」とは、その構造が原子の配置において著しく異なるが、容易かつ迅速な平衡状態で存在する化合物のことをいう。また当然のことながら、化合物が互変異性形を有するとき、全ての互変異性形が本発明の範囲に含まれることが意図され、化合物の命名は、任意の互変異性形を排除しない。
「薬学的に許容しうる」は、一般に安全で非毒性かつ生物学的にも他の意味でも不適切でない医薬組成物を調製するのに有用であることを意味し、ヒトの薬学的使用だけでなく獣医学的使用にも許容しうることを包含する。
ある化合物の「薬学的に許容しうる塩」は、本明細書中に定義されるように、薬学的に許容しうるものであって、かつその親化合物の望ましい薬理活性を持つ塩を意味する。このような塩は、以下を包含する:
(1) 塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸と形成される酸付加塩;又は酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンフルスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などのような有機酸と形成される酸付加塩;あるいは
(2) 親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンにより置換されるか、又は有機若しくは無機塩基と配位結合するかのいずれかのときに形成される塩。許容しうる有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどを包含する。許容しうる無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを包含する。
当然のことながら、薬学的に許容しうる塩への全ての言及は、同酸付加塩の、本明細書中と同義の溶媒付加形(溶媒和物)又は結晶形(多形)を包含する。
好ましい薬学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムから形成される塩である。
「溶媒和物」は、化学量論又は非化学量論量の溶媒のいずれかを含有する、溶媒付加形を意味する。幾つかの化合物は、結晶性固体状態において一定モル比の溶媒分子を捕捉し、そして溶媒和物を形成する傾向がある。溶媒が水であるならば、形成される溶媒和物は、水和物であり、溶媒がアルコールであるとき、形成される溶媒和物は、アルコラートである。水和物は、水がその分子状態をHOとして保持する、1分子以上の水と物質の1つとの組合せ(このような組合せは、1種以上の水和物を形成することができる)により形成される。
「対象」は、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、特に限定されないが、ヒト;チンパンジーや他の類人猿のような非ヒト霊長類及びサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタのような家畜(農場動物);ウサギ、イヌ、及びネコのような家畜(ペット);ラット、マウス、及びモルモットのような齧歯類を包含する実験室動物などを包含する、哺乳綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳動物の例は、特に限定されないが、鳥類などを包含する。「対象」という用語は、特定の年齢又は性別を意味するものではない。
「治療有効量」は、病態の処置のために対象に投与されるとき、このような病態の処置を達成するのに充分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、処置される病態、処置される疾患の重篤度、対象の年齢及び相対的健康度、投与の経路及び剤形、担当医又は獣医師の判断、並びに他の要因に応じて変化する。
「薬理効果」は、本明細書において使用されるとき、治療の所期の目的を達成する、対象において得られる効果を包含する。例えば、薬理効果は、処置対象において尿失禁の予防、軽減又は減少をもたらすものであろう。
「病態」は、任意の疾患、症状、症候、又は適応症を意味する。
病態の「処置(treating)」又は「処置(treatment)」は、以下を包含する:
(1) 病態を予防すること、即ち、病態に曝露されているか、又は病態の素因があるが、まだ病態に直面していないか、又はその症候を示していない対象において、病態の臨床症候を発症させないこと;
(2) 病態を阻害すること、即ち、病態又はその臨床症候の進展を止めること;あるいは
(3) 病態を緩和すること、即ち、病態又はその臨床症候を一時的又は永久に退縮させること。
それぞれ「α−アドレナリン受容体」、「α1A−アドレナリン受容体」(以前には「α1C−アドレナリン受容体」として知られていた)、「α1L−アドレナリン受容体」、又は「α1A/1L−アドレナリン受容体」と互換的に使用することができる、「α−アドレナリン作動性受容体」、「α1A−アドレナリン作動性受容体」(以前には「α1C−アドレナリン作動性受容体」として知られていた)、「α1L−アドレナリン作動性受容体」、又は「α1A/1L−アドレナリン作動性受容体」とは、7回膜貫通型Gタンパク質受容体に一致する分子のことをいい、そしてこれらは、生理条件下で、カテコールアミン類のエピネフリン及びノルエピネフリンの結合を介して、例えば、中枢及び/又は末梢交感神経系において種々の作用に介在する。
「アゴニスト」又は「完全アゴニスト」は、別の分子又は受容体部位の活性を増強する、化合物、薬物、酵素アクチベーター、又はホルモンのような分子を意味する。
「部分アゴニスト」は、受容体を活性化するが、完全アゴニストに比較して部分的な生理応答しか生じさせない分子を意味する。
「尿失禁」は、客観的に実証できる、尿の不随意減少を特徴とする症状である。これは、社会的及び衛生的の両方の問題である。単純に言えば、尿失禁は、膀胱及び/又は尿道が適正に作動できないことに起因するか、これらの機能の協調に欠陥があるときに生じる。尿失禁の有病率は、女性で2倍高く、閉経後の女性に最も発生率が高いが、男性でも罹患する。
尿失禁は、4つの基本型:切迫性、腹圧性、溢流性及び機能性に分類でき、そして本明細書において使用されるとき「尿失禁」は、4つ全ての型を包含する。
切迫性尿失禁(排尿筋不安定)は、強い尿意を伴う尿の不随意減少である。この型の尿失禁は、過活動排尿筋又は過敏性排尿筋のいずれかの結果である。排尿筋が過活動の患者は、不適切な排尿筋収縮を起こし、膀胱充満中の膀胱内圧が上昇する。過敏性排尿筋に由来する排尿筋不安定(排尿筋過反射)は、ほとんどの場合に神経障害を伴う。
真性腹圧性尿失禁(排尿開口部不全)は、腹腔内圧の上昇が膀胱内圧を上昇させて、それが尿道閉鎖機序により提供される抵抗を超えるときに起こる、尿の不随意減少である。腹圧性尿失禁の発現は、笑うこと、咳、くしゃみ、運動のような通常の活動に起因するか、あるいは重度腹圧性尿失禁患者では、立つこと又は歩くことに起因することもある。生理的には、腹圧性尿失禁は、しばしば、膀胱頸部の下垂及び膀胱出口の収束を特徴とする。この型の尿失禁は、2回以上出産した女性に最もよく見られるが、これは、妊娠及び経膣分娩が、膀胱尿道角の消失を引き起こし、そして外括約筋に損傷を与えることがあるためである。閉経に伴うホルモンの変化は、この症状を増悪しうる。
溢流性尿失禁は、排尿筋減弱、又は膀胱が充満したとき適切なシグナル(感覚)を排尿筋が伝達できないことに起因する尿の不随意減少である。溢流性尿失禁の発現は、頻繁な又は連続的な尿滴下、及び排尿不全又は排尿失敗を特徴とする。
機能性尿失禁は、上述の尿失禁の型とは対照的に、膀胱又は尿道における根本的な生理学的機能不全によって定義されない。この型の尿失禁は、可動性の低下、投薬(例えば、利尿薬、ムスカリン様剤、又はα−1アドレナリン受容体アンタゴニスト)、又は精神病的な問題(鬱病又は認知障害など)のような要因に由来する、尿の不随意減少を包含する。
「尿失禁を処置又は予防する方法」とは、特に限定されないが、括約筋制御を変える病態、認知機能の喪失、膀胱の過度の膨満、過反射及び/又は不随意尿道弛緩、膀胱に関連する筋肉の脆弱性、あるいは神経異常を包含する1つ以上の原因のためであろう、便又は尿の不随意排出、及び便又は尿の滴下又は漏出を包含する、尿失禁の症候の予防又はこれの緩和のことをいう。
一般に、本出願に使用される命名法は、IUPACの体系的命名法の生成のためのBeilstein Instituteのコンピュータ化システムである、AUTONOM(商標)v.4.0に基づく。本明細書に示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.4を用いて作成した。本明細書の構造中の炭素、酸素、硫黄又は窒素原子上に出現する任意のオープン結合価は、水素原子の存在を示している。ある化学構造中にキラル炭素が存在するときにはいつも、このキラル炭素に関連した全ての立体異性体は、この構造に包含されることが意図される。本明細書に示される化学構造が、異なる互変異性形として存在できるときにはいつも、この構造は、このような異なる互変異性形を包含することが意図される。
実施例
以下の調製法及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、かつこれを実施することができるように与えられる。これらは、本発明の範囲を限定するものと考えるべきでなく、単に本発明の説明及び代表例と考えるべきである。
本発明の化合物は、以下に表示及び説明される例示的合成反応スキームに描かれる方法により製造することができる。
式(I)を調製するのに使用される出発物質及び試薬は、一般にAldrich Chemical Co.のような供給業者から入手可能であるか、又は標準参考文献に述べられる手順により当業者には知られている方法によって調製されるかのいずれかである。必要に応じて、Greene et al., Protecting Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., Wiley Interscience, 1999に記載されるような、従来の保護基の手法を使用した。以下の合成反応スキームは、単に本発明の化合物を合成することができる幾つかの方法の例示のためにあり、そしてこれらの合成反応スキームには種々の修飾を加えることができ、本出願に含まれる開示を参照した当業者にそれらの示唆を与えるであろう。
合成反応スキームの出発物質及び中間体は、必要に応じて、特に限定されないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを包含する従来法を用いて、単離及び精製することができる。このような物質は、物理定数及びスペクトルデータを包含する従来手段を用いて特性決定することができる。
特に断りない限り、本明細書に記載される反応は、好ましくは大気圧で、約−78℃〜約150℃、更に好ましくは約0℃〜約125℃の温度範囲にわたり、そして最も好ましくかつ便利には、およそ室温(RT)(又は周囲温度)、例えば、約20℃で行われる。
参考文献:Michelson et al., J. Med. Chem. 1996, 39, 4654-66; WO2004/069832; Meyers and Fleming, J. Org. Chem., 1979, 44(19), 3405-6; Bronstein et al., J. Am. Chem. Soc., 2002, 724, 8870-5による調製。
A. 1−ブロモ−2−クロロ−3−ニトロ−ベンゼン(1)の調製

Hg(II)O 24.2g(0.111mol)を、CCl 350mL中の2−クロロ−3−ニトロ−安息香酸15.0g(0.0744mol)の懸濁液に加え、N下で撹拌して還流温度まで加熱し、そして120W太陽灯により15分間照射した。次に臭素5.75mLを滴下により30分にわたって加え、4時間還流させておいた。次にこの反応混合物をRTまで冷却し、飽和NaHCO 100mLをゆっくり加え、次いでこの溶液をブフナー漏斗を用いて濾過し、濾液をDCMで洗浄した。合わせた有機層を分離して、飽和NaHCO 100mLで洗浄し、次にHO 200mLで洗浄した。次いで有機層をMgSOで乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去することにより、生成物14.78g(83%)を得た。
B. (2−ブロモ−3−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−アセトニトリル(2)の調製

無水DMSO 30mLに両方とも溶解した1−ブロモ−2−クロロ−3−ニトロ−ベンゼン15.0g(0.0634mol)及び(フェニルチオ)−アセトニトリル8.28mL(0.0634mol)を、1分間で無水DMSO 150mL中のNaOH 25.38g(0.634mol)にN下で急速に加え、氷浴で18.5℃まで冷却した。この反応物を更に1分間22℃で撹拌させ、次いで氷500g中の濃HCl 80mLの混合物中に注ぎ入れた。次にEtOAc 200mLを加え、有機相を分離して、水相をEtOAc 2×200mLで抽出し、有機層を合わせて食塩水の一部3×200mLで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去した。次に生じた粗生成物22.978gをEtOAc 20mLに溶解し、2時間冷蔵し、生じた結晶を濾過し、1:1 EtOAc/ヘキサン 20mLで洗浄して、固体を乾燥することにより、生成物3.423g(19%)を得た。
C. (4−アミノ−2−ブロモ−3−クロロ−フェニル)−アセトニトリル(3)の調製

EtOAc 45mLを(2−ブロモ−3−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−アセトニトリル3.33g(0.0121mol)及びSnCl・2HO 10.93g(0.0484mol)に加えて、この混合物をN下で2時間70℃まで加熱し、次に室温まで冷却した。次いでEtOAc 200mLを加え、次にこの溶液に飽和NaHCO 200mLをゆっくり加え、溶液を振盪して、層を分離した。水層を、EtOAc 2×200mLで更に抽出して、有機層を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去することにより、生成物2.964gを得た。
D. (4−アミノ−2−ブロモ−3−クロロ−フェニル)−アセトニトリル(3)の代替調製法
E. (2−ブロモ−4−ニトロ−フェニル)−アセトニトリル(4)の調製

(4−ニトロ−フェニル)−アセトニトリル(32.4g)をジクロロメタン(400mL)に溶解して、トリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)(36.0g)を加えた。この溶液に、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチル−ヒダントイン(34.4g)を窒素雰囲気下で撹拌しながらゆっくり加えた。反応物は、反応の間アルミニウム箔で包むことにより周辺光から保護した。5時間撹拌後、飽和重亜硫酸ナトリウム溶液の添加により反応をクエンチした。10分間激しく撹拌後、層を分離して、有機層を真空蒸発させた。これにより、低融点固体48.3gを得たが、これを更に精製することなく使用した。
F. (4−アミノ−2−ブロモ−フェニル)−アセトニトリル(5)の調製

(2−ブロモ−4−ニトロ−フェニル)−アセトニトリル(48g)を酢酸エチル(1L)に溶解した。塩化スズ(II)二水和物(180g)を撹拌しながら加えて、この反応混合物を70℃で8時間加熱した。反応混合物をRTまで冷却して、一晩撹拌させて置いた。重炭酸ナトリウム(215g)を、2インチ撹拌棒を取り付けた6L三角フラスコ中の水(1750mL)に溶解した。30分間かけて、この重炭酸の撹拌溶液に反応混合物1Lを注意深く加えた。更にバブリングが起こらなくなったら、有機層をデカンテーションにより分離した。水層を酢酸エチルで更に2回抽出して、合わせた有機層を乾燥して、真空蒸発させて、帯褐色の結晶性固体43gを得た。NMR分析により、この物質が、更なる精製なしに処理を続行するのに充分に純粋であることが分かった。
G. (4−アミノ−2−ブロモ−3−クロロ−フェニル)−アセトニトリル(6)の調製

(4−アミノ−2−ブロモ−フェニル)−アセトニトリル(1.1g)をアセトニトリル(50mL)に溶解した。1,3−ジクロロ−5,5−ジメチル−ヒダントイン(1.05g)を何回かに分けて加え、この反応混合物を窒素雰囲気下で5時間撹拌した。次に反応を飽和重亜硫酸ナトリウム溶液でクエンチし、次いで酢酸エチルで抽出した。こうして真空での溶媒の留去後に得られた粗生成物は、酢酸エチル及びヘキサンの混合物で溶出するカラムクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製した。0.41gの重量の極性の低い方の異性体は、nmr分析により(4−アミノ−2−ブロモ−5−クロロ−フェニル)−アセトニトリルと同定した。極性の高い方の主生成物(0.60g)は、nmrにより、及び本明細書に記載される代替経路によって調製される試料との比較により、目的の(4−アミノ−2−ブロモ−3−クロロ−フェニル)−アセトニトリルと同定した。
H. N−(3−ブロモ−2−クロロ−4−シアノメチル−フェニル)−メタンスルホンアミド(7)の調製

塩化メタンスルホニル0.896mL(11.57mmol)を、無水ピリジン15mL中の(4−アミノ−2−ブロモ−3−クロロ−フェニル)−アセトニトリル2.03g(8.27mmol)にN下で加え、氷浴で冷却した。次にこの反応混合物を5℃で2時間及びRTで16時間撹拌した。次いでこの混合物をEtOAc 200mLで希釈し、1M HCl 100mLを加えることによりpHを1にして、層を分離し、水層をEtOAc 2×250mLで更に抽出し、有機層を合わせて、食塩水50mLで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過して、真空で溶媒を除去することにより、25%のビススルホンアミド副産物を含有する生成物(純度75%)2.919gを得た。
I. N−[3−ブロモ−2−クロロ−4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルメチル)−フェニル]−メタンスルホンアミド(式(I))の調製

CS 5μL(0.08mmol)を、マイクロ波管中のエチレンジアミン15mLに溶解したN−(3−ブロモ−2−クロロ−4−シアノメチル−フェニル)−メタンスルホンアミド2.9g(8mmol)に加えて、この混合物をマイクロ波中で135℃で10時間加熱した。次に溶媒を真空で除去して、溶媒をMeOHで置換して、真空で除去(4×)し、65℃で真空で乾燥した。粗生成物をMeOH 150mLから結晶化して、溶媒を110mLに減少させ、この懸濁液を氷上で冷却し、濾過して、溶媒を真空で除去することにより、1.229g(41%)を得た。エチルアルコール中の10%水での結晶化により更に精製してもよい。
J. 式(I)の代替調製法

ニトリル(9.39g、29.02mmol)をEtOH/CHCl(430mL/550mL)中に懸濁して、氷浴中でAr下で冷却した。この混合物をHClガスで2.5時間バブリングした。氷浴を取り外した。反応物をRTで6時間撹拌して、反応物が熱くなったら氷浴で断続的に冷却した。固体が全て溶解したら反応液を濃縮した。この混合物をCHClで2回蒸発させた。残渣は、EtOH/CHCl(430mL/550mL)に溶解して、Ar下で0℃まで冷却した。EDA(3.0mL、44.88mmol)を加えた。この混合物を0℃からRTまで12時間撹拌した。反応液を濃縮して、固体をMeOHで洗浄することにより、オフホワイト色の固体を得た。この過程を別のバッチのニトリル(15.98g、49.38mmol)で、比例して増減させた溶媒及び試薬により反復した。この2バッチの生成物を合わせることにより、生成物総量23.7g(64.64mmol、82%)を得た。
K. N−[3−ブロモ−2−クロロ−4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルメチル)−フェニル]−メタンスルホンアミド塩酸塩(式(I)の塩酸塩)の調製

1M HCl/エーテル 3.97mLを、MeOH 20mLに溶解したN−[3−ブロモ−2−クロロ−4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルメチル)−フェニル]−メタンスルホンアミド1.215g(3.31mmol)に加え、真空で溶媒を除去(2×)することにより、粗生成物を得て、これをMeOH/エーテルから結晶化して、80℃で真空で溶媒を除去することにより、生成物(MP=199.2〜199.4℃;MS [M+H]=366;CHN 計算値:C(32.79%)、H(3.50%)、N(10.43%);実測値:C(32.38)、H(3.57)、N(10.27))1.323gを得た。
本発明の化合物は、選択的α−1Aアドレナリン作動性選択活性を有しており、そのため、尿失禁;鼻詰まり;性機能不全(射精障害及び持続勃起症など);CNS障害(鬱病、不安、認知症、老衰、アルツハイマー病、注意及び認知の欠損、並びに肥満症、過食症、及び食欲不振のような摂食障害など)のような、種々の病態の処置に有用であることが期待される。
尿失禁(UI)は、患者にとって衛生的又は社会的懸念となる程度の尿の不随意減少と定義される症状である。尿の不随意減少は、膀胱内圧が尿道括約筋の保持圧(尿道内圧)を超えるときに起こる。尿失禁の4つの主要な型は、症候、兆候及び症状に基づいて定義されている:腹圧性、切迫性、溢流性及び機能性尿失禁。
腹圧性尿失禁(SUI)は、咳、くしゃみ、笑うこと、又は他の生理的活動中の尿の不随意減少である。SUIを処置するための現在の方法は、理学療法及び手術を包含する。薬剤での処置は、フェニルプロパノールアミン及びミドドリンのような非選択的アドレナリン作動性アゴニストの使用に限定されている。SUIの処置にアドレナリン作動性アゴニストを使用するための論拠は、尿道の平滑筋への豊富なノルアドレナリンの流入を示す生理学的データに基づく。
切迫性尿失禁(排尿筋不安定)は、強い尿意を伴う尿の不随意減少である。この型の尿失禁は、過活動排尿筋又は過敏性排尿筋のいずれかの結果である。排尿筋が過活動の患者は、不適切な排尿筋収縮を起こし、膀胱充満中の膀胱内圧が上昇する。過敏性排尿筋に起因する排尿筋不安定(排尿筋過反射)は、ほとんどの場合に神経障害を伴う。
溢流性尿失禁は、排尿筋減弱、又は膀胱が充満したとき適切なシグナル(感覚)を排尿筋が伝達できないことに起因する尿の不随意減少である。溢流性尿失禁の発現は、頻繁な又は連続的な尿滴下、及び排尿不全又は排尿失敗を特徴とする。
機能性尿失禁は、上述の尿失禁の型とは対照的に、膀胱又は尿道における根本的な生理学的機能不全によって定義されない。この型の尿失禁は、可動性の低下、投薬(例えば、利尿薬、ムスカリン様剤、又はα−1アドレナリン受容体アンタゴニスト)、又は精神病的な問題(鬱病又は認知障害など)のような要因に由来する、尿の不随意減少を包含する。
本発明の化合物はまた、アレルギー、感冒、及び他の鼻障害に関連した鼻詰まりの処置、並びに粘膜の鬱血(例えば、副鼻腔炎及び中耳炎)の後遺症に特に有用であり、不適切な副作用は少ないか全然ない。
これら及び他の治療的使用は、例えば、Goodman & Gilman’s, The Pharmacological Basis of Therapeutics, ninth edition, McGraw-Hill, New York, 1996, Chapter 26:601-616及びColeman, Pharmacological Reviews, 1994, 46:205-229.1に記載されている。
α−1Aアドレナリン受容体部分アゴニストを試験するための一般的方策
一般に、IUPは、尿道内圧であり、これは尿道反応の第1のピークから2分間の平均として測定する(図1)。MAPは、平均動脈血圧であり、そしてIUPが測定される2分間区分での平均血圧として測定する。持続性は、IUP反応の傾き(mmHg/分)であり、2分間のIUP反応直後に5分間(最初のピークの2〜7分後)最大の3用量について算出する。
麻酔ウサギモデル
手術: メスのDutch Beltedウサギ(1.20〜2.0kg、Myrtle's Rabbitry、テネシー州)は、イソフルラン(3.0%、2〜4L/分で)及びウレタン(1.5g/kg、皮下)で麻酔した。手術の準備として、ラットを剃毛し、擦り洗い(即ち、会陰部、頸部腹側、及び腹部の腹、尾側面)して、Ringers Lactate Solutionを投与(皮下)することにより体液を維持した。大腿静脈及び頚動脈を分離して、薬物の投与(静脈)及び血圧の測定(動脈)のために、それぞれPE−50及びPE−90管系(Becton-Dickinson)で挿管した。腹部切開を行って、尿管及び膀胱を露出させた。尿管を分離して、PE−50管系で膀胱の近位に挿管することにより、腎臓から尿を排出した。尿道を、分離して、8-French固体シングルセンサー変換器カテーテル(Unisensor USA Inc.)(センサーがカテーテルの先端に位置する)で膀胱穹窿部を介してカテーテル挿入した。センサーを、膀胱穹窿部から遠位のちょうど恥骨を超えたレベルに取り付け、絹の縫合材料で膀胱穹窿部に固定した。ウサギを加温パッド(37℃)に置いて、投薬前の15〜30分間手術から回復させた。
実験: 動脈カニューレは、P23XL圧力変換器(Grass Technologies、West Warwick、ロードアイランド州)及び動脈圧変換器に接続して、Unisensor尿道変換器カテーテルは、Gould 13-6615-50増幅器(Data Sciences International、St. Paul、ミネソタ州)及びGould TA6000記録器(Data Sciences International、St. Paul、ミネソタ州)に並列に接続した。全てのデータは、Power Lab Chartバージョン5.0.2(ADInstruments、Colorado Springs、コロラド州)データ収集システムを用いて解析した。基線IUPを安定させて、次に式(I)のゆっくりの単回ボーラス注射(0.0003、0.001、0.0032、0.01、0.032、0.100、0.316、及び1.0mg/kg、静脈内、n=6)又はビヒクルを投与し、続いて1.0ml生理食塩水洗浄を行った。投薬は、15分間隔で、又はIUP変化が起こる場合にはIUPが基線測定値に達するのに必要な時間の倍の時間後に行った。実験の最後に、ウサギは、ペントバルビタールナトリウムの過量投与により安楽死させた。
測定: 基線からのIUP及びMAPの変化は、IUP反応の傾きと共に測定した。MAPは、以下の式から最初に算出した(ここで、Pは、拡張期圧であり、そしてPは、収縮期圧である):MAP=P+1/3(P−P)。IUP及びMAPの投薬前基線値は、ビヒクル又は試験化合物投与の直前2分間に評価した。IUP又はMAPの投薬後値は、ビヒクル又は試験化合物投与後のIUP追跡における最初のピークで2分間測定した。次にビヒクル又は試験化合物により誘導されるIUP及びMAPの変化は、投薬後値から投薬前値を引くことにより算出した。IUP反応の低下の速度(mmHg/分)は、最大の3用量について2分間の効力測定の直後の5分間の平均傾きを取ることにより測定した。
統計的方法: 本解析の主な目的は以下である:(1)IUP及びMAPの投薬前からの変化に関して、それぞれの用量を対応するビヒクルと別々に比較すること、(2)IUP及びMAPの別々の投薬前からの変化を用いて、ED10mmHg及びED20mmHgを別々に推定すること、並びに3)10mmHg及び20mmHgでの尿道選択性(Urethral Selectivity)(MAP/IUP)を算出すること。低下の速度の統計的解析は実行しなかった。
群比較:
解析は、血圧及び尿道内圧について別々に実行する。
処置(ビヒクル及び薬物)、時間、時間処置相互作用、及び動物内変動の条件を包含する反復測定ANOVAは、投薬前からの変化について実行する。次に、各用量を、投薬前からの変化に関して等分散又は不等分散を仮定した2標本t検定を用いて、それぞれのビヒクルと比較する。
曲線の当てはめ手順:
解析は、血圧及び尿道内圧について別々に実行する。曲線は、IUP及びMAPにおける投薬前からの変化に当てはめる。複合対称性分散−共分散構造を持つ非線形混合効果モデルを用いる。投薬前からの変化=min+(maxmin)/(1+((max10)/(10min))(ED10/用量)**Slope)という形でロジスティック用量作用方程式を持つ非線形混合効果モデルは、個々のデータ点に当てはめる。ED10mmHgは、投薬前からの変化で10mmHgを達成するための用量である。ED20mmHgは、このモデルを投薬前からの変化=min+(max−min)/(1+((max−20)/(20−min))(ED20/用量)**Slope)に当てはめることにより概算する。ED20mmHgは、投薬前からの変化で20mmHgを達成するための用量である。
尿道選択性(MAP/IUP)
10mmHgでの尿道選択性(MAP/IUP)=MAPのED10/IUPのED10
20mmHgでの尿道選択性(MAP/IUP)=MAPのED20/IUPのED20
覚醒ブタモデル
スリング訓練: メスYucatan Micro-Swineは、最大4時間スリング内に留まるように訓練した。ブタは、IACUCのスリング訓練ガイドラインにより、徐々に長い時間スリングに曝した。ブタは、スリング曝露に対して許容しうる耐性を示した場合に限り、外科的器具使用のために選択した。
外科的器具使用: メスのYucatan Micro-swineに、圧力及びECGの両方のモニター性能を持つ遠隔測定装置(Data Sciences International、St. Paul、ミネソタ州)を備え付けた。更に、採血のためにBardport薄型チタンVAPを皮下に取り付けた。全ての装置は、外科の獣医によりRoche Palo Altoで移植した。簡単に述べると、遠隔測定プローブ本体は、頸部で皮下に取り付けた。動脈内圧カテーテルは、血圧測定のために浅頸動脈を介して鎖骨下動脈へと進めた。ECG誘導は、筋肉内に取り付けた:1つは左側のT8〜T10部位の間の肋間筋に、そしてもう一方は、右側のT1〜T3部位の間の肋間筋に。VAPは、頸部で皮下に取り付け、カテーテルは頸静脈に進めた。ブタは手術から完全に回復させた(典型的には10日間)。
実験前: 試験の日に、ブタは、ブタコロニー内で奏効するようにイソフルラン/O2で麻酔した。カテーテルを耳静脈に挿入し、ブタは、イソフルラン/O2を止めたらプロポフォール約2mg/kg(経口、ボーラス)で鎮静状態にした。次にこのブタを、試験室に移送して、静脈内プロポフォール点滴(≒12mg/kg/時、静脈内)を行った。外陰及び周辺部を、無菌的に調製して、無菌8−Fr4−センサー固体圧力変換器(Unisensor、米国)を外尿道口から膀胱に挿入した。カテーテルの設置は、尿道形状計測(3番目に遠い変換器は、尿道の高圧帯に取り付けた)を介して確認した。カテーテルは、縫合により外陰周辺皮膚内の位置に繋ぎ留め、カテーテルに固定したテープに繋いだ。VAP部位の無菌的調製後、連続採血のために管組立体を持つフーバー(huber)針をVAPに取り付けた。プロポフォール点滴を停止して、ブタを目覚めさせた。
実験: ブタが完全に目覚め、安定(通常は目覚めの約1時間後)した後、基線血圧、IUP、及び心拍数パラメーターを測定した。式(I)又はビヒクル(0.9%生理食塩水)を耳静脈を介して1ml/分で点滴ポンプにより2時間点滴した。血液試料は、点滴開始の5、15、30、45、60、75、90、105、及び120分後に採血した(図8a)。実験中、ブタには飼料及び水を提供した。
データ生成及び解析システム: 心臓血管の測定値は、TL11M3-D70-PCP(Data Sciences International、St. Paul、ミネソタ州)遠隔測定装置及び関連ハードウェアにより生成させた。活性化されると装置は、そのシグナルを受信機に送り、そして受信機がこのシグナルをデータ交換マトリックスに転送する。データ交換マトリックスは次に、そのシグナルの流れをData-Quest ART Goldバージョン4.0に送り、そしてこれが心臓血管データを処理及び生成する。IUPは、TA6000 Polygraph(Data Sciences International、St. Paul、ミネソタ州)に接続した固体カテーテルによりモニターした。TA6000からのアナログシグナルは、Gould Acquisition Interface又はPower Labデータ収集システムのいずれかに送り、そしてこのデータは、Ponemaソフトウェアバージョン3.2(Data Sciences International、St. Paul、ミネソタ州)又はPower Lab Chartバージョン5.0.2(ADInstruments, Colorado Springs、コロラド州)のいずれかにより処理した。
測定: 基線は、IUP、MAP、及びHRについて、点滴の直前2分間の採血時間を含めた。投薬後の時点は、IUP、MAP、及びHRについて、点滴開始の約5、15、30、45、60、75、90、105、及び120分後の2分間の採血時間を含めた。典型的には、投薬後の時点は、その血液試料に至るまでの2分間採血した(例えば、投薬の58〜60分後)。ブタの活動によって異常なデータ点(典型的にはHRの著しい上昇)になるならば、2分間の採血時間は、活動期の数分前又は後のいずれかに移動させた。以下が観察されたならば、データは採血時間に関し無効と考えられ、報告しなかった:1)HRの持続上昇に至る一定時点の持続活動、及び/又は2)IUPの実質的な変化を起こしたブタの排便。基線からの変化は、投薬後値−投薬前値として算出した。
式(I)の化合物は、予期しないことに、α−1Aアドレナリン受容体の部分アゴニストとして、血圧(MAP)を上回る尿道内圧(IUP)の増大に関して、強化された選択性を示すことが見い出された。フェニル環のそれぞれ2位及び3位のクロロ及びブロモ置換基の組合せは、それが、部分アゴニストとして、0.38という有利な固有の活性、即ち効力(理想的には0.35〜0.60の間である)と、6.6という実質的な親和性、即ち、pEC50との両方を有するという点において、一般分類のイミダゾリニルメチルアリールスルホンアミドに比べて予想外の利点を提供する。完全アゴニスト活性は、高血圧関連副作用により不適切であるため、実質的な親和性と部分アゴニスト挙動との組合せは、拡張期血圧関連副作用の最小化と一体となった、α−1Aアドレナリン受容体の有効な調節に関連する尿道活動の効用の最適化のために決定的に重要である。更には、式(I)の化合物は、類似化合物に比較して、失禁の有効な処置に必要な、経時的IUP反応の持続性の改善を示す。
麻酔ウサギモデルで試験された式(I)の化合物は、IUPレベルの10mmHg変化で、血圧(MAP)を上回る尿道内圧(IUP)の増大に関して38倍の選択性を示したばかりではなかった。式(I)の化合物はまた、対応して9.75mmHgという低い最大動脈血圧上昇を有する。更には、式(I)の化合物はまた、経時的IUP反応の持続性の上昇を示す(図2)。これらの性状は共同して、血圧(MAP)を上回る尿道内圧(IUP)の増大について選択的に、及び尿失禁の処置用のα−1A部分アゴニストとして経時的に有効にという両方の面で、式(I)の化合物を構造的に同様の類似体よりも著しく優れた薬剤候補にするのに貢献している。
例えば、同じ麻酔ウサギモデルにおいて、単にフェニル環上に3−ブロモ置換基が存在しない、式(I)の化合物とは異なる類似体は、IUPレベルの10mmHg変化で、MAPを上回るIUPの増大に関して3.67という低い選択性を示す。更に、この類似体のMAPの最大上昇は、19.4mmHgとはるかに高く、IUP反応の持続性は維持されない(図3)。
例えば、同じ麻酔ウサギモデルにおいて、フェニル環上の3−ブロモ置換基が存在せず、かつフェニル環上の2−クロロ置換基の代わりに2−ブロモの置換がある、式(I)の化合物とは異なる類似体は、IUPレベルの10mmHg変化で、MAPを上回るIUPの増大に関して2.36という低い選択性を示す。更に、この類似体のMAPの最大上昇は、36.6mmHgとはるかに高く、IUP反応の持続性は維持されない(図4)。
例えば、同じ麻酔ウサギモデルにおいて、フェニル環上の3−ブロモ置換基の代わりに3−メチルの置換があり、かつメチルスルホンアミド基の代わりにエチルスルホンアミド基を有する、式(I)の化合物とは異なる類似体は、IUPレベルの10mmHg変化で、MAPを上回るIUPの増大に関して0.92という選択性の無さを示す。更に、この類似体のMAPの最大上昇は、30.3mmHgとはるかに高い(図5)。
例えば、同じ麻酔ウサギモデルにおいて、フェニル環上の3−ブロモ置換基の代わりに3−メチルの置換があり、かつ2−クロロの代わりに2−ブロモの置換があり、かつメチルスルホンアミド基の代わりにエチルスルホンアミド基を有する、式(I)の化合物とは異なる類似体は、IUPレベルの10mmHg変化で、MAPを上回るIUPの増大に関して僅か4.59という低い選択性を示す。更に、この類似体のMAPの最大上昇は、40.47mmHgと非常に高く、IUP反応の持続性は維持されない(図6)。
例えば、同じ麻酔ウサギモデルにおいて、単にフェニル環上の3−ブロモ置換基の代わりに3−メチルの置換がある、式(I)の化合物とは異なる類似体は、IUPレベルの10mmHg変化で、MAPを上回るIUPの増大に関して3.64という低い選択性を示す。更に、この類似体のMAPの最大上昇は、37.3mmHgとはるかに高い。
式(I)の化合物は、更に覚醒ブタモデルで試験を行うことによって、単にフェニル環上に3−ブロモ置換基が存在しない、式(I)の化合物とは異なる類似化合物(図8c)と比較した、第2のモデルにおける式(I)の化合物(図8b)の並はずれたIUP持続性を確認した。
本発明は、本発明の化合物、又は個々の異性体、異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、又は薬学的に許容しうるその塩若しくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体、並びに場合により他の治療及び/又は予防成分と一緒に含む、医薬組成物を包含する。
一般に、本発明の化合物は、同様の有用性を与える薬剤の許容投与様式のいずれかにより治療有効量で投与されよう。適切な用量範囲は、処置すべき疾患の重篤度、対象の年齢及び相対的健康度、化合物の有効性、投与の経路及び剤形、投与が指示される適応症、並びに担当医の優先傾向及び経験のような多数の因子に応じて、典型的には1日に1〜500mg、好ましくは1日に1〜100mg、そして最も好ましくは1〜30mgである。このような疾患を処置する当業者であれば、過度の実験を行うことなく、かつ個人的知識及び本出願の開示に依存して、所定の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を突きとめることができよう。
一般に、本発明の化合物は、経口(バッカル及び舌下を包含する)、直腸内、鼻内、局所、肺内、膣内、又は非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下及び静脈内を包含する)投与に適切なものを包含する製剤処方として、あるいは吸入又は吹送による投与に適切な剤形で投与される。好ましい投与のやり方は、一般には、病気の程度により調整することができる便利な毎日の投薬計画を用いる経口投与である。
本発明の化合物は、1種以上の従来の補助剤、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及び単位投与剤形の形にしてもよい。この医薬組成物及び単位投与剤形は、追加の活性化合物又は主成分を含むか又は含まない、従来の割合の従来成分を含むことができ、そして単位剤形は、利用すべき意図された1日用量範囲に相応した任意の適切な有効量の活性成分を含有することができる。医薬組成物は、経口使用のために固体(錠剤又は充填カプセル剤、半固体、粉剤、徐放製剤など)、又は液体(液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、又は充填カプセル剤など)として;あるいは直腸内又は膣内投与のために坐剤の形で;あるいは非経口使用のために無菌注射液の形で利用することができる。よって1錠当たり約1ミリグラムの活性成分、又はもっと広く約0.01〜約100ミリグラムを含有する処方が、適切な代表的単位投与剤形である。
本発明の化合物は、多種多様な経口投与用の剤形に処方することができる。本医薬組成物及び剤形は、本発明の化合物又は薬学的に許容しうるその塩を活性成分として含むことができる。薬学的に許容しうる担体は、固体又は液体のいずれかであってよい。固体製剤は、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤を包含する。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤、又は封入材料としても作用しうる、1種以上の物質であってもよい。粉剤では、担体は一般に、微粉化活性成分との混合物である微粉化固体である。錠剤では、活性成分は一般に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合し、所望の形状及びサイズに圧縮する。粉剤及び錠剤は、好ましくは約1〜約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、特に限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、カカオ脂などを包含する。「製剤」という用語は、担体としての封入材料との活性化合物の処方(担体を伴うか又は伴わない活性化合物が、それに結合している担体に囲まれているカプセル剤を与える)を包含するものである。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が包含される。錠剤、粉剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤は、固体剤形として経口投与に適切であろう。
経口投与に適切な他の剤形は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤を包含する液体製剤、又は使用の直前に液体製剤に戻すことが意図されている固体製剤を包含する。乳剤は、溶液として、例えば、水性プロピレングリコール溶液として調製することができるか、又は例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、若しくはアラビアゴムのような、乳化剤を含有してもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な着色料、香味料、安定化剤、及び増粘剤を加えることにより調製できる。水性懸濁剤は、微粉化活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤のような粘性物質と共に水に分散させることにより調製できる。固体製剤は、液剤、懸濁剤、及び乳剤を包含し、そして活性成分の他に、着色料、香味料、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による)用に処方することができ、そしてアンプル、プレフィルドシリンジ、少量点滴中に単位投与剤形として、又は保存料を加えた多回投与容器中に提示することができる。本組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、又は乳剤、例えば、水性ポリエチレングリコール中の液剤のような剤形をとることができる。油性又は非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射用有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)を包含し、そして保存剤、湿潤剤、乳化剤若しくは懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような処方剤を含有してもよい。あるいは、この活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構成するための、滅菌固体の無菌単離により得られるか又は溶液からの凍結乾燥により得られる粉末状であってもよい。
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤若しくはローション剤として、又は経皮パッチとして、表皮への局所投与用に処方することができる。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えた水性又は油性基剤により処方することができる。ローション剤は、水性又は油性基剤により処方することができ、そして一般にはまた1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤も含有する。口内の局所投与に適切な処方は、着香基剤、通常はショ糖及びアラビアゴム又はトラガント中に活性剤を含むトローチ剤;ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアラビアゴムのような不活性基剤中に活性成分を含む香錠;並びに活性成分を適切な液体担体中に含む洗口液を包含する。
本発明の化合物は、坐剤としての投与用に処方することができる。脂肪酸グリセリドの混合物又はカカオ脂のような低融点ロウを最初に融解して、例えば、撹拌により活性成分を均質に分散させる。この融解均質混合物を次に便利なサイズの鋳型に注ぎ入れ、冷却させて、凝固させる。
本発明の化合物は、膣内投与用に処方することができる。活性成分に加えて、当該分野において適切であることが知られている担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム又はスプレー。
本発明の化合物は、鼻内投与用に処方することができる。液剤又は懸濁剤は、従来手段により、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーにより、鼻腔に直接適用される。この処方は、単回又は多回投与剤形にして提供することができる。スポイト又はピペットの後者の場合には、これは、患者が適切な所定の容量の液剤又は懸濁剤を投与することにより達成できる。スプレーの場合には、これは、例えば、計量霧化スプレーポンプを用いて達成することができる。
本発明の化合物は、特に気道への、及び鼻内投与を包含する、エーロゾル投与用に処方することができる。本化合物は一般に、例えば、5ミクロン以下程度の小粒径を有する。このような粒径は、当該分野において既知の手段により、例えば、微粉化により得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン)、又は二酸化炭素若しくは他の適切なガスのような、適切な噴射剤で加圧パックにして提供される。エーロゾルは便利にはまた、レシチンのような界面活性剤を含有してもよい。薬物の用量は、計量バルブにより制御することができる。あるいは活性成分は、ドライパウダーの形、例えば、乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなデンプン誘導体及びポリビニルピロリドン(PVP)のような適切な粉末基剤中の本化合物の粉末混合物の形で提供することができる。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、吸入器を用いてそこから粉末を投与することができる、単位投与剤形にして、例えば、カプセル剤若しくはカートリッジ(例えば、ゼラチンの)又はブリスターパックにして提示することができる。
必要に応じて、処方は、活性成分の徐放性又は制御放出性投与に適合させた腸溶性コーティングをして調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬物送達装置内に処方することができる。これらの送達システムは、化合物の徐放が必要であるとき、及び治療計画の患者コンプライアンスが決定的に重要であるときに有利である。経皮送達システム中の化合物は、しばしば皮膚接着性固体支持体に取り付けられる。関心の化合物はまた、浸透促進剤、例えば、Azone(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組合せることができる。徐放送達システムは、手術又は注入により皮下層へと皮下挿入される。皮下インプラントは、脂溶性膜、例えば、シリコーンゴム、又は生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸中に本化合物を封入する。
本製剤は、好ましくは単位投与剤形にする。このような剤形で、本製剤は、適量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位投与剤形は、包装された製剤であってよく、この包装は、パック入り錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル入りの粉剤のように、離散量の製剤を含有する。また、単位投与剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤自体であってもよく、あるいは包装形態になった適切な数のこれらのいずれかであってもよい。
他の適切な製剤担体及びその処方は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by Martin, Mack Publishing Company, l9th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な製剤は、実施例に記載される。
以下の調製法及び実施例は、当業者が更に明確に本発明を理解及び実施することができるように与えられる。これらは、本発明の範囲を限定するものと考えるべきでなく、単に本発明を例証及び代表するものと考えるべきである。
使用した数(例えば、量、温度など)に関しては正確さを確保するための努力を注いだが、当然ある程度の実験誤差及び偏差は、例えば、較正、数字の丸めなどにおけるような差に起因するようなもの同様に斟酌すべきである。
本発明は、その具体的な実施態様を参照して説明されているが、当業者であれば当然のことながら、本発明の本質及び範囲を逸することなく、ここに種々の変更を加え、そして均等物に置換することができよう。更に、特定の状況、物質、組成物、製造法、製造工程が、本発明の目的とする本質及び範囲に適合するように多くの修飾を加えることができる。このような全ての修飾は、添付の請求の範囲に含まれるものである。

Claims (10)

  1. 式(I):

    で示される化合物又は薬学的に許容しうるその塩若しくはプロドラッグ。
  2. 薬学的に許容しうる塩が、塩酸塩である、請求項1記載の化合物。
  3. 請求項1記載の化合物を含み、そして更に薬学的に許容しうる担体を含む、組成物。
  4. 組成物が、α−1A受容体部分アゴニストでの処置により軽減する病態を有する対象への投与に適している、請求項3記載の組成物。
  5. α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、これを必要とする対象に、有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む該方法。
  6. α−1Aアドレナリン受容体により調節される障害を予防、軽減、又は処置する方法であって、これを必要とする対象に、α−1Aアドレナリン受容体の第2のモジュレーターと組合せた有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む該方法。
  7. 障害が、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、溢流性尿失禁、及び機能性尿失禁から選択される、請求項5記載の方法。
  8. 尿失禁を特徴とする病態を処置又は予防する方法であって、これを必要とする対象に有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む方法。
  9. 切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、溢流性尿失禁、及び機能性尿失禁から選択される障害を予防、軽減、又は処置するための医薬の製造における、請求項1記載の化合物の使用。
  10. 本明細書に前記の発明。
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