JP2011509966A - 抗菌組成物 - Google Patents
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Abstract
(F1LxxLxL(xxZ)YF2) (I)
〔式中:F1およびF2は独立して、1〜30残基の近接アミノ酸配列であり;xは任意のアミノ酸であってよく;LはLeu、Ile、ValまたはPheであってよく;ZはNxLまたはCxxLであってよく;NはAsn、Thr、SerまたはCysであり;CはCysまたはSerであり;そしてY=0または1である〕
のアミノ酸配列を含んでなる。
Description
本発明は、抗菌組成物および病原菌感染を処置または予防する方法に関する。より具体的には、本発明は、細菌感染およびそれに関連した疾患の処置または予防用抗菌医薬組成物に関する。本発明の他の局面、対象および利点は、以下の説明から明らかとなる。
腸膜における腸上皮リング−フェンス(ring-fence)細菌は、宿主自体が合成できない原核生物代謝産物を宿主に回収させ、宿主を感染から保護する。胃腸管の微生物叢にそれらが一定して曝されているため、上皮細胞も多くの病原体が侵入する主要点である。宿主の感染を予防するために、上皮細胞はNod2のような多様なパターン認識受容体(PRR)を発現して、侵入に対する防御の第一線を提供する。PRRは生来の免疫系の必須成分である。それらは細菌、卵菌、線虫、糸状菌、ウイルスおよび昆虫において見出される保存されたモチーフを認識して、宿主において侵襲微生物に対する規則的かつ標的特異的な速やかな応答を惹起する(Ting JPY and Davis BK, 2005)。
本発明は、少なくとも一部において、ロイシンリッチリピート(LRR)モチーフを含むタンパク質が直接的抗菌活性を有するという発見に基づく。
(F1LxxLxLxxZF2) (I)
〔式中、
F1およびF2は独立して、1〜30残基の近接アミノ酸配列であり;
xは任意のアミノ酸であってよく;
LはLeu、Ile、ValまたはPheであってよく;
ZはNxLまたはCxxLであってよく;
NはAsn、Thr、SerまたはCysであり;
CはCysまたはSerである〕
のLRRを含む(または本質的にそれからなるか、あるいはそれからなる)単離されたタンパク質を提供する。
本発明に従って、抗菌剤として使用するための、複数のLRR(ロイシンリッチリピート)ドメインを含む単離されたタンパク質が提供される。例えば以下に記載のとおり、本発明の使用によって、これらのタンパク質が広範な細菌を、既知の抗生物質と同等の効力で殺すのに有効であることが見出された。
(F1LxxLxL(xxZ)YF2) (I)
〔式中:
F1およびF2は独立して、1〜30残基の近接アミノ酸配列であり;xは任意のアミノ酸であってよく;
xは任意のアミノ酸であってよく;
LはLeu、Ile、ValまたはPheであってよく;
ZはNxLまたはCxxLであってよく;
NはAsn、Thr、SerまたはCysであり;
CはCysまたはSerであり;そして
Y=0または1である〕
のアミノ酸配列を含むかあるいは本質的にそれからなる。
(F1LxxLxL(xxZ)YF2) (I)
〔式中:
F1およびF2は独立して、1〜30残基の近接アミノ酸配列であり;xは任意のアミノ酸であってよく;
xは任意のアミノ酸であってよく;
LはLeu、Ile、ValまたはPheであってよく;
ZはNxLまたはCxxLであってよく;
NはAsn、Thr、SerまたはCysであり;
CはCysまたはSerであり;そして
Y=0または1である〕
のアミノ酸配列を含む。
「ヒトNOD2」は配列番号1のタンパク質を意味する。
「ヒトNOD1」は配列番号2のタンパク質を意味する。
「ヒトNOD2−LRR」は配列番号3のタンパク質を意味する。
「ヒトNOD1−LRR」は配列番号4のタンパク質を意味する。
「ヒトCIITA−LRR」は配列番号5のタンパク質を意味する。
「ヒトTLR2−LRR」は」は配列番号6のタンパク質を意味する。
「ヒトNalp3−LRR」は配列番号7のタンパク質を意味する。
「抗菌医薬組成物」は、特に対象に投与する前に、抗菌活性を有する医薬組成物を意味する。
本発明は、少なくとも一部において、(式(I)の)LRRモチーフを含むタンパク質が抗菌(特に殺菌)活性を有するという驚くべき発見に基づく。本発明者らはLRRドメインと他のドメイン(例えばタンパク質のNODファミリーにおいて見られるような)を含む天然に生じるタンパク質が顕著な抗菌活性を有することを示すが、本発明者らはまた、LRRドメインが、それ自体で、抗菌活性を有することも示す。
本発明の別の局面において、本発明のタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド(例えばRNAまたはcDNA)を提供する。かかるポリヌクレオチドは、本発明の単離されたタンパク質の製造方法において、例えば本発明の単離されたタンパク質を含む医薬(例えば医薬組成物)の製造において、使用することができる。他の局面において、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、病原菌のような病原体に対する宿主防御を増強するため、治療的または予防的免疫原性組成物(例えばワクチン、例えばDNAワクチン)の一部として、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ミニ染色体、トランスポゾン等に組み込んでもよい。
本発明のある局面は、単離されたタンパク質および本発明のタンパク質、特にセクション5.1に記載のものを製造する方法に関する。
本発明のタンパク質は、成熟タンパク質のN末端で特異的な切断部位を有する異種シグナル配列との癒合タンパク質として作成してもよい。シグナル配列は宿主細胞によって認識され、処理される。原核生物宿主細胞について、シグナル配列は、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼまたは熱安定エンテロトキシンIlリーダーであってよい。酵母の分泌のために、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダーまたは酸性ホスファターゼリーダーであってよい(例えば、WO90/13646参照)。哺乳類細胞系において、ウイルス性分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルおよび天然免疫グロブリンシグナル配列が利用可能である。典型的には、シグナル配列はリーディングフレームにおいて、本発明の抗体をコードするDNAとライゲートしている。
複製起点は当該技術分野において周知であり、多くのグラム陰性菌にはpBR322が、多くの酵母には2μプラスミドが、そして多くの哺乳類細胞には多様なウイルス起点、例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPVが好適である。一般に、複製起点成分は哺乳類発現ベクターには必要ではないが、SV40は早期プロモーターを含むため、使用することができる。
典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリンに対する抵抗性を与えるか、あるいは(b)栄養要求欠損を補完するか、または複合培地で利用できない栄養素を補給するタンパク質をコードする。選択スキームは、宿主細胞の増殖を停止させることを含んでいてもよい。本発明の治療用抗体をコードする遺伝子でのトランスフェクションに成功した細胞は、例えば選択マーカーによって与えられる薬物耐性のために、生存する。別の例は、形質転換細胞をメトトレキセートの存在下で培養する、いわゆるDHFR選択マーカーである。典型的な態様において、細胞は、目的の外来遺伝子のコピー数を増幅するため、増加量のメトトレキセートの存在下で培養される。CHO細胞は、DHFR選択のために特に有用な細胞系である。さらなる例は、グルタメートシンセターゼ発現系(Lonza Biologies)である。酵母に使用するのに好適な選択遺伝子は、trp1遺伝子である(Stinchcomb et al Nature 282, 38, 1979)参照。
本発明のタンパク質およびポリヌクレオチドを発現するのに好適なプロモーターは、抗体をコードするDNA/ポリヌクレオチドと作動可能に連結している。原核生物宿主のプロモーターは、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファンおよびハイブリッドプロモーター、例えばTacを含む。酵母細胞の発現に好適なプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース六リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼおよびグルコキナーゼを含む。誘導性酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロームC、酸性ホスファターゼ、メタロチオネインおよび窒素代謝またはマルトース/ガラクトース利用に関する酵素を含む。
例えば高等真核生物における発現に適切であるとき、ベクター内でプロモーター要素と作動可能に連結したエンハンサー要素を用いることができる。好適な哺乳類エンハンサー配列は、グロ便、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテインおよびインスリン由来のエンハンサー要素を含む。あるいは、真核細胞ウイルス、例えばSV40エンハンサー(bp100−270で)、サイトメガロウイルス早期プロモーターエンハンサー、ポリオーマ(polyma)エンハンサー、バキュロウイルスエンハンサーまたはマウスlgG2a座(WO04/009823参照)を使用してもよい。エンハンサーは、好ましくはベクター上でプロモーターの上流位置に位置する。
本発明の単離されたタンパク質をコードするベクターをクローニングまたは発現する好適な宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞または高等真核細胞である。好適な原核細胞は、真正細菌、例えば腸内細菌科、例えばエシェリキア属、例えば大腸菌(例えばATCC 31, 446; 31, 537; 27,325)、エンテロバクター属、エルウィニア属、クラブシエラ・プロテウス、サルモネラ属、例えばサルモネラ・チフィリウム、セラチア属、例えばセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans)およびシゲラ属、ならびに桿菌、例えば枯草菌およびバチルス・リケニホルミス(DD 266 710参照)、シュードモナス属、例えば緑膿菌およびストレプトマイセス属を含む。酵母宿主細胞として、サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、クリベロマイセス属(例えばATCC 16,045; 12,424; 24178; 56,500)、ヤロウイア属(EP402, 226)、ピキア・パストリス(EP183, 070、Peng et al J.Biotechnol. 108 (2004) 185-192も参照)、カンジダ属、トリコデルマ・リーゼイ(Thchoderma reesia)(EP244, 234J、ペニシリウム属、トリポクラジウム属およびアスペルギルス属宿主、例えばアスペルギルス・ニデュランスおよびアスペルギルス・ニガーも意図される。
細菌系を用いて、本発明のタンパク質を製造することができる。典型的にはそれらは、不溶性ペリプラズムタンパク質として製造され、当業者に既知の方法に従って抽出し、再フォールドによって活性なタンパク質を形成することができる(Sanchez et al (1999) J.Biotechnol. 72, 13-20 and Cupit PM et al (1999) Lett Appl Microbiol, 29, 273-277参照)。
本発明のタンパク質またはその抗原結合フラグメントをコードするベクターでトランスフェクトした宿主細胞は、当業者に既知のいずれかの方法で培養することができる。宿主細胞は、スピナーフラスコ、ローラーボトルまたはホローファイバー系で培養することができるが、大規模生産のためには、特に懸濁培養のために、撹拌タンクリアクターを用いるものが好ましい。好ましくは、撹拌タンカーは、例えばスパージャ、バッフルまたは低剪断羽根車を用いたエアレーションに適合する。バブルカラムおよびエアーリフトリアクターについて、空気または酸素バブルによる直接エアレーションを用いてもよい。宿主細胞を無血清培養培地で培養するとき、エアレーションプロセスの結果としての細胞損傷を防止するのを補助するため、プルロニックF−68のような細胞保護剤を培地に補うことが好ましい。宿主細胞の特性に依存して、アンカレッジ依存細胞系のための増殖基質としてマイクロキャリアを用いるか、あるいは細胞を懸濁培養に適合させてもよい(これが典型的である)。宿主細胞、特に無脊椎動物宿主細胞の培養は、流加培養法、反復回分培養(Drapeau et al (1994) cytotechnology 15: 103-109参照)、拡張型回分培養または灌流培養のような多様な操作モデルを利用することができる。組換え形質転換哺乳類宿主細胞は、胎児ウシ血清(FCS)のような血清含有培地で培養でき、かかる宿主細胞は、例えばKeen et al (1995) Cytotechnology 17:153-163に記載されているような合成無血清培地、またはProCHO-CDM または UltraCHO(TM) (Cambrex NJ, USA)のような商業的に入手可能な培地で、必要であればグルコースのようなエネルギー源および組換えインスリンのような合成増殖因子を補って、培養することが好ましい。宿主細胞の無血清培養には、これらの細胞が無血清条件での増殖に適合する必要があり得る。適合アプローチの一つは、かかる宿主細胞を血清含有培地で培養し、80%の培養培地を無血清培地に繰り返し交換して、宿主細胞に無血清条件への適合を学習させることである(例えば、Scharfenberg K et al (1995) in Animal Cell technology: Developments towards the 21st century (Beuvery E.G. et al eds), pp619-623, Kluwer Academic publishers参照)。
ある態様において、本発明の単離されたタンパク質またはポリヌクレオチドは、病原菌感染の処置および/または予防のための医薬組成物中に含める。ある態様において、医薬組成物は、ヒトに対する病原菌による感染の処置および/または予防用である。他の態様において、医薬組成物は非ヒト動物に対する病原菌感染の処置および/または予防用、例えば獣医的使用のためである。特定の病原菌による感染を処置および/または予防する態様は、以下により詳細に記載している。読者はセクション3、セクション5.1およびセクション5.2に記載の局面または態様のそれぞれおよび全てのタンパク質またはポリヌクレオチドが、特異的に、そして個々に、医薬組成物に含まれることを意図していると想定することができる。
ある態様において、それを必要とする表面または製品を消毒するための消毒組成物、例えば水性消毒組成物に含めた有効量の本発明の単離されたタンパク質(例えば上記セクション3および5.1に詳述)を提供する。読者は本明細書のセクション3および5.1に記載の全ての局面および態様が個々に、そして具体的に、このセクションにおける使用を意図すると想定することができる。かかる表面の例は、病室、外科手術表面等のような臨床設備および病原菌への曝露を低減することが望まれる他の表面において通常見出されるものを含む。本発明の消毒組成物は、医療器具、例えばカテーテルまたは手術器具のような消毒製品に、所望により良好な臨床業務に知られており、必要とされる他の滅菌技術と組み合わせて、使用してもよい。本発明のタンパク質はまた、病原菌で汚染された水を消毒するために使用してもよく、そして本発明は、細菌、特にヒトおよび/または他の哺乳類に対する病原菌で汚染された水を消毒する方法であって、当該汚染水と本発明のタンパク質とを混合することを含む方法を含む。
本発明のある態様において、医薬組成物のような組成物を用いて、病原菌による感染を処置および/または予防することができる。記載のとおり、細菌は、ヒトおよび/または他の哺乳類に病原性であり得る。ある態様において、病原菌はグラム陽性であり、他の態様においてグラム陰性である。別の意図される態様において、病原菌は宿主(例えばヒト)に病原性の嫌気性細菌である。病原菌の例は、以下のものを含む:
アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumanii)、アクチノバチルス菌種(Actinobacillis spp)、放線菌類、アクチノマイセス属(例えばアクチノマイセス・イスラエリイ、アクチノマイセス・ナエスランディイ、アクチノマイセス菌種)、アエロモナス菌種(例えばアエロモナス・ヒドロフィラ、アエロモナス・ソブリア、アエロモナス・キャビエ)、嫌気性球菌、例えばペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococus)、ベイロネラ属、グラム陽性嫌気性桿菌、例えばモビルンカス菌種、プロピオニバクテリウム・アクネス、ラクトバチルス属、ユウバクテリウム属、ビフィズス菌種、グラム陰性嫌気性桿菌、例えばバクテロイデス属、プレボテラ菌種、ポルフィノモラス菌種、フソバクテリウム菌種、バチルス菌種(例えばバチルス・アントラシス、バチルス・セレウス、バチルス・スブチリス、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearthermophilus))、バクテロイデス菌種(例えばバクテロイデス・フラジリス)、ボルデテラ菌種(例えばボルデテラ・パータシス、ボルデテラ・パラパータシス、ボルデテラ・ブロンキセプチカ)、ボレリア菌種(例えばボレリア・レカレンティス、ボレリア・ブルグドルフェリ)、ブルセラ菌種(例えばブルセラ・アボルタス、ブルセラ・カニス、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melintensis)、ブルセラ・スイス) バークホルデリア菌種(例えばバークホルデリア・シュードマレイ、バークホルデリア・セパシア)、カンピロバクター菌種(例えばカンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ラリ、カンピロバクター・フィタス)、シトロバクター菌種(例えばシトロバクター・フロインデイ、シトロバクター・コセリ(Citrobacter diversus))、クロストリジウム菌種(例えばクロストリジウム・ハーフリンゲンス、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・ボツリヌム)、コリネバクテリウム菌種(例えばコリネバクテリウム・ジフテリエ、コリネバクテリウム・ジェイケウム(Corynebacterium jeikeum)、コリネバクテリウム・ウレアリティカム)、エドワージエラ・タルダ、エンテロバクター菌種(例えばエンテロバクター・アエロゲネス、エンテロバクター・アグロメランス、エンテロバクター・クロアカエ)、大腸菌(例えば毒素原性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、尿路病原性大腸菌)、クレブシエラ菌種(例えばクレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ)、モルガネラ・モルガニー、プロテウス菌種(例えばプロテウス・ミラビリス、プロテウス・ブルガリス)、プロビデンシア菌種(例えばプロビデンシア・アルカリファシエンス、プロビデンシア・レットゲリ、プロビデンシア・スチュアーティイ)、サルモネラ・エンテリカ(例えばチフス菌、パラチフス菌、腸炎菌、ブタコレラ菌、ネズミチフス菌)、セラチア菌種(セラチア・マルセセンス、セラチア・リクファシエンス)、シゲラ菌種(例えば志賀赤痢菌、シゲラ・フレックスネリ、シゲラ・ボイディ、シゲラ・ソネイ)、エルシニア菌種(例えばエルシニア・エンテロコリチカ、エルシニア・ペスチス、エルシニア・シュードツベルクロシス)、エンテロコッカス菌種(例えばエンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム)、エリジペロトリックス・ルジオパシアエ、フランシセラ・ツラレンシス、ヘモフィルス菌種(ヘモフィルス・インフルエンザエ、ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus dureyi)、ヘモフィルス・エジプチウス、ヘモフィルス・パラインフルエンザ、ヘモフィラス・パラヘモリティカス)、ヘリコバクター菌種(例えばヘリコバクター・ピロリ、ヘリコバクター・シネディ、ヘリコバクター・フェネリアエ)、レジオネラ・ニューモフィラ、レプトスピラ・インターロガンス、リステリア・モノサイトゲネス、ミクロコッカス菌種、モラクセラ・カタラーリス、らい菌、結核菌、ノカルジア菌種(例えばノカルジア・アステロイデス、ノカルジア・ブラジリエンシス)、ナイセリア菌種(例えば淋菌、髄膜炎菌)、パスツレラ・マルトシダ、プレジオモナス・シゲロイデス、緑膿菌、ロドコッカス菌種、ブドウ球菌種(例えば黄色ブドウ球菌、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌)、ステノトロホモナス・マルトフィリア、レンサ球菌種(例えば化膿レンサ球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、ストレプトコッカス・アンギノサス、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equismilis)、ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス・アンギノサス、ミュータンス菌、ストレプトコッカス・サリバリウス、サンギス菌、ストレプトコッカス・ミティス、ストレプトコッカス・ミレリ)、ストレプトマイセス菌種、トレポネーマ菌種(例えば梅毒トレポネーマ、トレポネーマ・エンデミキュム(Treponema endemicum)、フランベシア・ヨー(Treponema pertenue)、トレポネーマ・カラテウム)、ビブリオ菌種(例えばコレラ菌、例えば01および0139のようなその病原性セロタイプ、ビブリオ・パラヘモリチカス、ビブリオ・バルニフィカス、ビブリオ・アルギノリチカス、ビブリオ・ミミカス(Vibrio minicus)、ビブリオ・フルビアリス、ビブリオ・メチニコフィイ、ビブリオ・ダムセル、ビブリオ・フルニッシー)。
本明細書の開示に基づいて、組成物、特に医薬組成物を使用して、多数の疾患、特にヒト疾患を処置および/または予防することができると、当業者に理解される。従って、上記セクション3および/またはセクション5.1のいずれかのタンパク質を含むおよび/または本質的にそれからなる医薬組成物を使用して、特にヒトにおける、次の感染症のいずれか一つを処置および/または予防することができる:
炭疽病、細菌性髄膜炎、ボツリヌス症、ブルセラ症、カンピロバクター症、ネコひっかき病、コレラ、ジフテリア、発疹チフス、食品媒介性疾患、例えば食中毒、淋病、膿痂疹、レジオネラ症、ハンセン病(ハンセン氏病)、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、類鼻疽、MRSA感染、髄膜炎、ノカルジア症、百日咳(Whooping Cough)、ペスト、肺炎球菌性肺炎、オウム病、Q熱、ロッキー山紅斑熱(RMSF)、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、結核、野兎病、腸チフス熱、チフス、尿路感染症。
本発明は、次の非限定的例示によって説明される。
6.2.1 細菌
次の菌株をATCCから購入した:リステリア・モノサイトゲネス(ATCC 7644)、枯草菌(ATCC 6633)、エンテロコッカス・フェカリス(ATCC 29212)、黄色ブドウ球菌(ATCC 29213)、肺炎レンサ球菌(ATCC 49619)、大腸菌(ATCC 8739)、大腸菌(ATCC 25922)、クレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)、緑膿菌(ATCC 27853)、ブタコレラ菌(ATCC 13076)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(ATCC 17666)、バクテロイデス・フラジリス(ATCC 25285)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(ATCC 29148)、プレボテラ・インターメディア(臨床分離株)、ユウバクテリウム・レンタム(ATCC 43055)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(ATCC 13124)、クロストリジウム・ディフィシル(臨床分離株)、クロストリジウム・ラモーザム(ATCC 25582)、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス(ATCC 49031)、プロピオニバクテリウム・アクネス(ATCC 25746)。
プロテオグリカン、リポテイコ酸および熱殺菌黄色ブドウ球菌は、全てInvivogenから購入した。ローダミン結合ファロイジンはSigmaからであった。
末梢血リンパ球ライブラリーからの複数のPCR産物を統合して全長NOD2 cDNAを得て、pENTR/SD/D-Topoベクター(Invitrogen)にクローン化した。NOD1をコードするcDNAはInvitrogenから購入した(pENTR221-Nod1)。NOD1およびNOD2のLRRドメインは、LRR領域に隣接するプライマー:NOD1について、Nod1LRR Fwd: 5’-caccatgaacaaggatcacttccagttcacc-3’ (配列番号8)およびNod1LRR rev: 5’-tcagaaacagataatccgcttctcatc-3’(配列番号9)、NOD2について、Nod2LRR Fwd: 5’-caccatgaccatgccagctgcaccgggtgagg-3’(配列番号10)および Nod2LRR rev: 5’-tcaaagcaagagtctggtgtccctgcagc-3’(配列番号11)を用いたPCRによって作成した。NOD2のクローン病関連3020insC変異を作成するために、デオキシシトシンをヌクレオチド位置3020で挿入した(NM_022162)。使用した全てのcDNAの完全性をDNA配列決定で確認した。全長タンパク質またはそれぞれのLRRドメインをコードするcDNAを示した適用のために次のプラスミド(Invitrogen)に移行した:293細胞での発現(pEF5/FRT/V5-Dest)、細菌性発現(pDEST17)、バキュロウイルスアセンブリ(pDEST10)。
使用した市販の一次抗体は次のとおりであった:Alexa−488、−568または−647と結合したヒツジ、ウサギおよびマウス二次抗体はMolecular Probes(Leiden、The Netherlands)からであった。ウサギまたはマウスに対するIR−標識化二次抗体は、Rockland Laboratories(West Grove、PA)からであった。ウサギ抗NOD2抗体は、免疫原として大腸菌から精製した組換えNod2 LRRドメインを用いてEurogenetecによって作成された。血清は組換えLRRカラムを用いてアフィニティー精製した。抗体の特異性は、ウェスタンブロットおよび組換えNod2またはNod1を発現する細胞系を用いた免疫蛍光顕微鏡観察によって試験した。
リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、製造業者の推奨に従って、Nod2、Nod2 3020insC、Nod1、Nod2 LRR、Nod2 3020insC LRR、Nod1 LRRをコードするcDNAを含む発現プラスミド(pEF5/FRT/V5-DEST)を293 Flp-In細胞(Invitrogen)にトランスフェクトした。安定な細胞系を200μg/mlのハイグロマイシン中で選択した。それぞれのタンパク質の発現は、定量的PCRおよびウェスタンブロットによって確認した。
免疫染色のために、腸管上皮細胞をカバーガラス上で増殖し、3%パラホルムアルデヒド(PFA)で20分間固定した。PFA固定した細胞をPBS中0.1%のTriton X-100で5分間透過処理した。抗体のインキュベーションは、全て0.2%のBSAを含むPBS中で実施した。0.5mg/mlのHoechst(Sigma)で核を染色し、カバーガラスをpro-gold試薬(Invitrogen)にマウントした。標準の対物レンズおよびフィルターセットを有するNikon eclipse顕微鏡で画像を得た。Adobe Photoshop 6で画像を処理した。
LR組換えによるゲートウェイ技術を用いて、NOD1、NOD2およびNOD2−3020をコードする相補DNA配列(セクション6.2.3に記載のとおり)をpDEST17(Invitrogen)に移した。LRRドメインを大腸菌Rossetta(DE3)細胞(Novagen)中で過剰発現し、グアニジンHCl(6M)で可溶化し、15000xgで回転して、Ni-NTAおよびHiLoad 16/60 Superdex 200サイズ排除カラムでの逐次的クロマトグラフィーによって精製した。精製したタンパク質は、クーマシーブルー染色で可視化した。全長NOD2およびNOD2−3020 cDNAをpENTR/SD/D-Topo(Invitrogen)からpDEST10に、LR組換えによって移し、次いでDH5αBacに形質転換して、バクミドを製作した。Bac-to-Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen)からのプロトコルに従って、組換えウイルスを得た。全長NOD2およびNOD2−3020insCの精製のため、Hi5細胞を有する20個のT-162 Nunc組織培養フラスコを72時間感染させた。細胞を掻爬し、冷PBSで洗浄した。細胞ペレットを0.5MのKCl、50mMのTris、10%のグリセロール、5mMのメルカプトエタノール、1mMのMgCl2、0,1%のTriton X100、10mMのイミダゾールおよびプロテアーゼ阻害剤(完全無EDTA(Roche))(pH 7.0)25mlに再懸濁し、氷上で15分間インキュベーションした。懸濁液を40秒間2回超音波処理し、40℃で30分間、15000xgで遠心分離した。混合物をNi-NTAカラムおよびHiLoad 16/60 Superdex 200サイズ排除カラムに逐次的にロードした。精製したタンパク質をクーマシーブルー染色で可視化した。
個々の培養物中のATPの定量に基づいて培養物中の生存細菌細胞数を測定するために、BacTiter-Glo(TM)微生物細胞生存度アッセイ(Promega)を用いた。細菌を5×105細胞/mlで、記載の濃度のタンパク質と共に播種した。培養物を37℃で4時間インキュベーションし、BacTiter-Glo試薬を培地中の微生物細胞に直接加え、Pherastar(BMG scientific)を用いて発光を定量した。報告した値は、2連で実施した少なくとも3回の個別の実験の結果である。IC50の標準偏差は、Excel(Microsoft)を用いて計算した。最小阻害濃度の値は、標準的な手法を用いて好気性または嫌気性培養で決定した。簡潔には、記載した濃度のLRRドメインまたは抗生物質コントロールを含む0.1mlのMHBブロスに5×105個の細菌を播種した。培養物を20〜24時間インキュベーションして、視覚鏡を用いた目視観察によって、細菌増殖を評価した。MICは、視覚的に細菌増殖が完全に抑制される最低薬物濃度として決定した。
クロラムフェニコールトランスフェラーゼ(対照)、Nod2またはNod2 3020insCを発現する安定な293 FlpIn(Invitrogen)細胞系を、24ウェルトランスウェル培養プレート(1×105/ウェル)(Corning Incorporated, Corning, NY)で培養した。コンフルエンスに達した後、肺炎レンサ球菌を10:1のMOIで加えた。37℃で1時間インキュベーションした後、細胞をHanks液で洗浄し、0.5mg/mLのゲンタマイシン/Hanks液の存在下で90分間培養して、細胞外細菌を殺菌した。次いで、機械的破壊によって細胞溶解物を得て、溶解物を0.5mlのMHBブロスで希釈し、チョコレート寒天プレートにのせた。プレートを37℃で一夜静置し、翌日にコロニーを計測した。
大腸菌(ATCC 3556、ATCC 1655)をMHBブロスに播種し、細菌を飽和まで増殖させた。細菌を遠心分離(2800xg)により回収した。emulsiflex C5を用いて細胞を溶解し、細菌溶解物を15000xg、4℃で30分間遠心分離して分離した。細菌ペレットを回収し、Triton X100(PBS中1%)に再懸濁し、30000xgで再度回転した。残留ペレットをグアニジンHCL(6M)で可溶化し、ゲル濾過で脱塩した。速やかな希釈によりタンパク質をリフォールディングさせ、記載のとおりNOD2−LRRまたはNOD2−LRR−3020insCドメインと共有結合した活性化NHSカラムにロードした。アフィニティー精製タンパク質を塩勾配によってカラムから溶出させ、SDS−PAGE電気泳動で分離し、クーマシーブルー染色によって分析した。同定されたタンパク質バンドをゲルから切り抜き、DTTで還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化して、修飾トリプシンで37℃で一夜消化した。ペプチドを1μlの100%ギ酸で酸性化した後、LC−ESI−MS/MSで分析した。LTQ-FTマススペクトロメーター(Thermo Electron, Bremen, Germany)と接続したEksigent/PAL HPLC システム(Axel Semrau GmbH, Sprockhoevel, Germany)を用いて、ナノ−LC−MS実験を実施した。ペプチド混合物を分析PicoFritカラム(New Objective, Woburn, MA)に直接ロードし、50分、200nl/分で98%フェーズA(0.1%のギ酸水溶液)から75%フェーズB(0.1%のギ酸、80%のアセトニトリル)のグラジエントを用いて、カラムから溶出した。MSとMS2で自動的に切り替わるデータ依存取得モードで装置を操作した。その後、社内のMascotサーバー(Matrix science Ltd., London, UK)を用いて、大腸菌配列ライブラリーに対して生ファイルをサーチした。酵素としてトリプシンを選択し、2個のミス切断を許容して、サーチを実施した。カルボキシメチル(C)を固定された修飾として選択し、酸化(O)を変化し得る修飾として選択した。±5ppmのペプチド質量許容度および±0.8Daのフラグメント質量許容度でデータをサーチした。同定したタンパク質は、少なくとも2個のペプチドが20以上のスコアで同定されたとき、受け入れられた。
多くの独立した試験により、Nod2のLRRドメインにおける特定のSNPがクローン病の発症の易罹患性因子であることが決定されている。胃腸管における共生細菌に対する頑強な免疫応答は、該疾患の病因の主要な要因であると認識されている。次の実験を実施して、細菌に対する宿主応答におけるNod2およびクローン病関連SNPの機能的役割を評価した。
胃腸管は、一層の上皮細胞によって宿主から分離されている約1013個の細菌の巣である。Nod2のLRRドメインに対するポリクローナル抗体を用いて、インビボでNod2タンパク質の発現を評価した(図1)。免疫組織科学的分析によって、Nod2が結腸上皮において主に発現されていることを決定した。第1に、管腔の共生細菌叢と直接接触する上皮の頂端膜側において、強い染色が発見された。さらに、マクロファージおよび単球様細胞の粘膜下染色が、上皮の基部で観察できる。
培養SW480腸管上皮細胞中のNod2
上皮におけるNod2の機能を調べるため、SW480腸管上皮細胞を大腸菌と共にインキュベーションし、細胞におけるNod2の位置を免疫蛍光法で決定した(図2)。細菌の非存在下では(SW480対照)、Nod2は一次的に、培養細胞の細胞質ゾル中に見られた。大腸菌とのインキュベーションの後、Nod2は、細胞内の長さ約1マイクロメートルの点状構造、しばしば長方形の構造中に観察できた。これらの異なるドメイン中でのNod2の観察は、大腸菌それ自体の形を暗示しており、したがってさらなる実験を行って、これらの構造中のNod2の同定を明らかにした。実験をCaco2腸管上皮細胞で反復した。この細胞系は、密着結合を有し、経上皮耐性を生じる正常上皮層の表現型をより密接に発現する。こららの細胞と大腸菌とをインキュベーションして、細菌との共培養後のSW480細胞において見られるものと同様の点状構造中に、Nod2が同定された(図3)。これらの細胞は、グラム陰性菌の外膜の成分である大腸菌LPSに特異的な抗体で共染色した。LPSとNod2間で明確な共局在化が見られ、これは同定したNod2ポジティブ構造が細菌であることを示している。
これまでの研究により、細菌による感染に対するNod2の保護効果が示されている(Hisamatsu T, 2003)。上記のデータは、この保護効果がNod2 LRRドメインと細菌の直接相互作用によるものであり得ることを示唆している。この仮説を検証するため、Nod2またはNod2 3020insC LRRドメインを発現する安定なコンジェニック細胞系を構築し、タンパク質発現レベルおよび他の因子を調節した。培養細胞を肺炎レンサ球菌(培養物中で293細胞に活性に感染することが知られている病原体(Opitz B, 2004))と共に播種した。次いで、ゲンタマイシン保護された細胞内細菌を評価した(図5)。細菌叢が感染対照細胞から観察された。Nod2 LRRドメインを発現する細胞において、この数は劇的に減少した。クローン病関連Nod2 3020insC LRRドメインを発現する細胞において、肺炎レンサ球菌からの明らかな保護は観察されなかった。これは、CardおよびNachtドメインはこれらの細胞において発現されなかったため、Nod2のシグナル伝達機能が感染から細胞を保護するために不必要であることを示している。さらに、Nod2 LRRドメインは細菌感染から細胞を保護するために十分である。
提示したデータは、Nod2 LRRドメインが細菌と直接結合して、感染から細胞を保護することを示している。LRRドメインがシグナル伝達能を有さないことが報告されているため、我々はNod2 LRRドメインが抗菌ポリペプチドであるという仮説を検討した。増加濃度の、Nod2、クローン病関連Nod2 3020insCまたはNod1由来の精製した組換えLRRドメインを、好気性グラム陽性菌およびグラム陰性菌のパネルとインキュベーションして、ATP濃度をモニターすることで細菌増殖を評価した(表1)。LRRドメインについて抗菌活性が示され得た。多様な観察により、特定の細菌に対するNod2およびNod1 LRRドメインの特異性が示された。Nod2 LRRドメインは、エンテロコッカス・フェカリスおよび黄色ブドウ球菌に対して、Nod1 LRRよりも少なくとも1オーダー分以上強力であった。Nod1 LRRドメインは、大腸菌(ATCC8739)および肺炎レンサ球菌のようないくつかのグラム陰性菌に対して、Nod2よりも有効であることが示された。さらに、Nod2 LRRドメインは一般に、リステリア・モノサイトゲネスを除き、全ての感受性細菌に対して、Nod2 3020insC LRRドメインよりも顕著に強力であった。これはクローン病関連SNPがその抗菌活性において欠損していることを示しており、現在の技術知識の流れを考慮して、これはこのアレルを有する患者におけるクローン病の基礎的原因であることを示唆している。
胃腸管における細菌の大多数は嫌気性である。したがって、Nod2 LRRドメインの抗菌活性を、グラム陽性およびグラム陰性嫌気性細菌のパネルに対して評価した(表2)。シプロフロキサシンは試験した全ての株に対して活性である、広範囲な抗生物質である。試験した全ての株に対して、組換えNod2 LRRドメインの活性は重量基準(μg/ml)でシプロフロキサシンと同等であった。重要なことに、2つの化合物の分子量を考慮すると、試験した全ての株に対して、Nod2 LRRドメインはモル基準(mmole/ml)でシプロフロキサシンよりも約25〜200倍強力である。
Nod2の抗菌メカニズム
Nod2について示唆される推定のみのリガンドは、グラム陽性およびグラム陰性菌にのプロテオグリカンコートにおいて見出されるMDPモチーフである。この相互作用がNod2 LRR抗菌効果の開始因子であるならば、このモチーフを含む細菌成分と該ドメインをプレインキュベーションすることによって、抗菌活性が阻害されると予期される。黄色ブドウ球菌に対するNod2 LRR活性を用いて、競合アッセイを組み立てた。組換えLRRドメインまたはBSA(対照)を黄色ブドウ球菌膜の多様な成分と共にプレインキュベーションした後、これを生存黄色ブドウ球菌に加えて、細菌生存率を上記表1におけるとおりに評価した(図6)。MDPモチーフを含む黄色ブドウ球菌プロテオグリカンもリポテイコ酸も、Nod2 LRRドメインの抗菌効果を阻害しなかった。熱殺菌黄色ブドウ球菌のみがNod2 lRR活性を阻害し得た。これは、Nod2の抗菌効果の標的が、細菌性プロテオグリカンとのそれらの相互作用とは独立しており、Nod2のシグナル伝達機能と抗菌活性は異なる細菌性標的を有することを示唆している。
Nod2 LRRドメインの抗菌活性の標的を調査した。該活性は、細菌の外膜との結合に依存しないと考えられる(図6)。したがって、大腸菌、緑膿菌またはヘモフィルス・インフルエンザエの排出ポンプ変異体を用いて、Nod2、Nod1およびNod2 3020insC LRRドメインの作用メカニズムを調査した(表3)。排出ポンプ変異体は、細胞内分子を細胞膜周辺腔から外膜の向こうへポンピングすることによって、それらの濃度を低下させる。試験した2種の排出変異体(大腸菌およびヘモフィルス・インフルエンザエ)は、Nod2およびNod1のLRRドメインに対する感受性の顕著な上昇を示した。これら2種の細菌は、野生型よりもNod2のクローン病関連LRR変異体により耐性でもあった。これは、LRRドメインの標的が細胞内に存在し、クローン病関連Nod2よりも野生型により感受性であることを示唆している。
提示した証拠は、Nod2はそのLRRドメインを介して細胞内細菌標的と結合して直接的抗菌活性を有することを示唆している。さらに、クローン病関連Nod2変異体3020insCはその抗菌活性が欠損している。一連の実験を実施して、LRRドメインの抗菌活性を仲介するNod2細菌標的を同定した。大腸菌をフレンチプレス、界面活性剤およびグアニジニウムHClによって順次分画し、競合アッセイによって評価して、Nod2 LRRによる黄色ブドウ球菌殺菌を粗がした分画を見出した(図7)。阻害分画は当初は、界面活性剤不溶性分画において見出され、これをグアニジニウムHCl中で可溶化してゲル濾過によって分画した。ゲル濾過分画5は、該分画をプロテイナーゼKで処理した後に検出された活性によって示されるとおり、黄色ブドウ球菌に対するNod2 LRR抗菌活性を阻害するタンパク質を含んでいた。この分画をNod2 LRRアフィニティーカラムにロードし、会合したタンパク質をNaCl勾配で溶出した(図8)。溶出したタンパク質をSDS−PAGEで分離し、バンドを抽出し、タンパク質を質量分析により同定した。主な溶出バンド(図8、パネルB、バンドH1)は、2種類の外膜タンパク質(ポリン)OmpFおよびOmpCを含んでいた。これらのタンパク質はグラム陰性菌の外膜において見られ、タンパク質を細菌の細胞膜周辺腔に侵入させる(参考文献)。ポリンはNod2 LRRドメインの最初の接触点である可能性があり、それをグラム陰性菌の細胞膜周辺腔に浸透させる。大腸菌の排出ポンプ変異体に対するLRRドメインの向上した効果(表3)を考慮すると、ポリンは標的それ自体ではないが、細菌への侵入点として働くことにより抗菌メカニズムに関与している可能性がある。さらに、グラム陽性菌は一般にポリンを発現しないが、Nod LRRドメインに感受性であり、このことはNod2抗菌活性の最終的な標的ではないことを示唆している。
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Claims (35)
- 抗菌剤として使用するための、複数のLRR(ロイシンリッチリピート)ドメインを含んでなる単離されたタンパク質。
- タンパク質のC末端がLRRドメインである、請求項1のタンパク質。
- LRRドメインがそれぞれ独立して、本質的に式(I):
(F1LxxLxL(xxZ)YF2) (I)
〔式中:
F1およびF2は独立して、1〜30残基の近接アミノ酸配列であり;xは任意のアミノ酸であってよく;
xは任意のアミノ酸であってよく;
LはLeu、Ile、ValまたはPheであってよく;
ZはNxLまたはCxxLであってよく;
NはAsn、Thr、SerまたはCysであり;
CはCysまたはSerであり;そして
Y=0または1である〕
のアミノ酸配列からなる、請求項1または2のタンパク質。 - それぞれのLRR中の少なくとも2個のL残基がLeuである、請求項3のタンパク質。
- それぞれのLRR中の少なくとも3個のL残基がLeuである、請求項4のタンパク質。
- 少なくとも3個のLRRドメインを含む、請求項1〜5のいずれかのタンパク質。
- 少なくとも4個のLRRドメインを含む、請求項1〜6のいずれかのタンパク質。
- 少なくとも5個のLRRドメインを含む、請求項1〜7のいずれかのタンパク質。
- 少なくとも6個のLRRドメインを含む、請求項1〜8のいずれかのタンパク質。
- 抗菌剤である、請求項1〜9のいずれかのタンパク質。
- グラム陽性菌に対して使用するための、請求項10のタンパク質。
- グラム陰性菌に対して使用するための、請求項10のタンパク質。
- ヒトにおける細菌感染の処置のための、請求項10〜12のいずれかのタンパク質。
- NOD、TLR、CIITAから成る群から選択される、請求項1〜13のいずれかのタンパク質。
- NODがNOD1またはNOD2である、請求項14のタンパク質。
- TLRがTLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、TLR13から成る群から選択される、請求項14のタンパク質。
- TLRがTLR2、TLR4またはTLR5である、請求項16のタンパク質。
- タンパク質それ自体が直接的抗菌活性を有する、請求項1〜17のいずれかのタンパク質。
- 直接的抗菌活性がインビトロ条件下で有効である、請求項18のタンパク質。
- 抗菌剤として使用するための、5個以上のLRR(ロイシンリッチリピート)ドメインを含む請求項1〜19のいずれかのタンパク質であって、該タンパク質のC末端がLRRドメインであり、LRRドメインがそれぞれ独立して、式(I):
(F1LxxLxL(xxZ)YF2) (I)
〔式中:
F1およびF2は独立して、1〜30残基の近接アミノ酸配列であり;xは任意のアミノ酸であってよく;
xは任意のアミノ酸であってよく;
LはLeu、Ile、ValまたはPheであってよく;
ZはNxLまたはCxxLであってよく;
NはAsn、Thr、SerまたはCysであり;
CはCysまたはSerであり;そして
Y=0または1である〕
のアミノ酸配列を含む、タンパク質。 - それぞれのLRR中の少なくとも2個のL残基がLeuである、請求項20のタンパク質。
- 請求項1〜21のいずれかの単離されたタンパク質を含む医薬組成物。
- 抗菌剤として使用するための、請求項20の医薬組成物。
- 感染に易罹患性の宿主における細菌感染の処置および/または予防に使用するための、請求項22または23の医薬組成物。
- 宿主がヒトのような哺乳類である、請求項24の組成物。
- ヒトがクローン病、IBDまたはIBSのような消化器疾患に罹患している、請求項24の組成物。
- ヒトにおける微生物感染を処置する方法であって、当該ヒトに有効量の、複数のLRR(ロイシンリッチリピート)ドメインを含む単離されたタンパク質を投与することを含んでなる、方法。
- タンパク質のC末端がLRRドメインである、請求項27の方法。
- LRRドメインがそれぞれ独立して、本質的に式(I):
(F1LxxLxL(xxZ)YF2) (I)
〔式中:
F1およびF2は独立して、1〜30残基の近接アミノ酸配列であり;xは任意のアミノ酸であってよく;
xは任意のアミノ酸であってよく;
LはLeu、Ile、ValまたはPheであってよく;
ZはNxLまたはCxxLであってよく;
NはAsn、Thr、SerまたはCysであり;
CはCysまたはSerであり;そして
Y=0または1である〕
のアミノ酸配列からなる、請求項27または28の方法。 - それぞれのLRR中の少なくとも2個のL残基がLeuである、請求項29の方法。
- それぞれのLRR中の少なくとも3個のL残基がLeuである、請求項29の方法。
- タンパク質が少なくとも3個のLRRドメインを含む、請求項27〜31のいずれかの方法。
- タンパク質が少なくとも4個のLRRドメインを含む、請求項27〜31のいずれかの方法。
- タンパク質が少なくとも5個のLRRドメインを含む、請求項27〜31のいずれかの方法。
- タンパク質が少なくとも6個のLRRドメインを含む、請求項27〜31のいずれかの方法。
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