JP2011509668A - 膵島のための細胞培養システム - Google Patents
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Abstract
本発明によれば、幹細胞(好ましくはヒトの胚性幹細胞)由来の三次元(3D)インスリン生産細胞のクラスター、及び微小重力バイオリアクター細胞培養システムを使用したそれらの生産方法が提供される。
【選択図】 図1
【選択図】 図1
Description
本発明は、幹細胞由来の三次元インスリン生産細胞のクラスター、及び微小重力バイオリアクター細胞培養システムを使用したそれらの生産方法に関する。本発明は、確立されたヒトの幹細胞系を使用して、かつヒトの胚を使用したり破壊したりすることなしに行われることができる。
血中グルコースの制御
血中グルコースは、膵臓からのインスリンの放出を通して制御されている。インスリンは、血流から細胞中へのグルコースの通過を容易にし、そこでグルコースは、生命維持に必要なエネルギー源として利用されることができる。糖尿病の患者では、インスリンが完全に存在しない(I型糖尿病)か又はインスリンの利用に問題がある(II型糖尿病)。
血中グルコースは、膵臓からのインスリンの放出を通して制御されている。インスリンは、血流から細胞中へのグルコースの通過を容易にし、そこでグルコースは、生命維持に必要なエネルギー源として利用されることができる。糖尿病の患者では、インスリンが完全に存在しない(I型糖尿病)か又はインスリンの利用に問題がある(II型糖尿病)。
インスリンは、膵臓のベータ細胞によって生産される。ベータ細胞は、ランゲルハンス島と称される球状構造内に含まれる。ベータ細胞(β細胞)は、血中グルコースの変化に極めて敏感であり、血中グルコースの上昇に反応して活性な(完全に加工された)インスリンを分泌する。ランゲルハンス島は、(アルファ細胞によって生産される)グルカゴンのような他のホルモンを生産する他の細胞型も含む。ベータ細胞は、三次元の球の中にしっかりと保持されており、アルファ細胞(α細胞)によって包囲されており、重要なことに、優れた血液供給から恩恵を得ている。
膵島の三次元構造は、ベータ細胞がそれらの隣接細胞と連通することを可能にする直接的な細胞−細胞接触があることを確実にする。かかる構造及び連通は、健康に機能する生物体を維持するために要求される血中グルコースの繊細な調節にとって必須である。細胞は膵島中に一緒に詰め込まれるだけでなく、膵島自体が膵臓の構造内に保持されている。生理学的機能を維持するために、ベータ細胞は、一緒に保持される必要があり、良好な酸素送達、栄養送達、及び細胞呼吸によって生成された老廃物の除去から恩恵を得る必要がある。これは、膵島の高度に脈管化された性質によって確実にされる。
20世紀初頭のインスリンの発見及び単離は、糖尿病の患者が死亡しないことを確実にしたが、80年以上の臨床経験は、インスリン注射が糖尿病の救済法でないことを示している。これは、外因性インスリンの注射が、膵島が示しうる極めて緻密な血中グルコース制御を模倣することができないためである。血中グルコース濃度を正確に制御することができないため、インスリン注射を使用している糖尿病患者は、深刻な健康問題をなお発展させており、糖尿病は、西洋社会では、心臓病、腎不全、失明、及び下肢切断の主要な原因となっている。
現在の治療法
糖尿病を有する人の数は、世界中で流行病の割合に達している。今後20年以内に3000万人がI型糖尿病にかかり、3億人がII型糖尿病にかかるであろうと推定されている。I型糖尿病は、通常、小児期又は若い成人の時に診断される。インスリンなしでは、I型糖尿病は迅速に致命的になる。II型糖尿病は、通常、初期には食事及び錠剤によって治療されることができるが、大部分の人々は、結局インスリン治療を必要とする。糖尿病は、心臓発作又は卒中によって死亡する危険性を大きく増大させ、失明、腎不全、及び下肢切断の主要な原因である。これらの合併症は、イギリスにおいて年間NHS予算の10%を占めるが、グルコースレベルを可能な限り正常に保持することによって防止することができる。従来のインスリン治療でこれを達成するためには、連続的な厳しい作業、多数回の日常的なインスリン注射、及び頻繁な指先を刺す痛いグルコース試験を必要とする。たとえこれらの努力を全て行ったとしても、危険なほどに低い血中グルコースレベルは一般的である。インスリン注射は、毎回、低血中グルコース(低血糖症)の危険性を伴っており、これは警告なしに倒れることをもたらしうる。重度の低血糖症の危険性は、糖尿病を有する人にとって最大の心配の一つであり、全てのインスリン治療にとっての進行中の重荷である。それは、就職を制限するかもしれず、生活の質の損失を招くかもしれない。
糖尿病を有する人の数は、世界中で流行病の割合に達している。今後20年以内に3000万人がI型糖尿病にかかり、3億人がII型糖尿病にかかるであろうと推定されている。I型糖尿病は、通常、小児期又は若い成人の時に診断される。インスリンなしでは、I型糖尿病は迅速に致命的になる。II型糖尿病は、通常、初期には食事及び錠剤によって治療されることができるが、大部分の人々は、結局インスリン治療を必要とする。糖尿病は、心臓発作又は卒中によって死亡する危険性を大きく増大させ、失明、腎不全、及び下肢切断の主要な原因である。これらの合併症は、イギリスにおいて年間NHS予算の10%を占めるが、グルコースレベルを可能な限り正常に保持することによって防止することができる。従来のインスリン治療でこれを達成するためには、連続的な厳しい作業、多数回の日常的なインスリン注射、及び頻繁な指先を刺す痛いグルコース試験を必要とする。たとえこれらの努力を全て行ったとしても、危険なほどに低い血中グルコースレベルは一般的である。インスリン注射は、毎回、低血中グルコース(低血糖症)の危険性を伴っており、これは警告なしに倒れることをもたらしうる。重度の低血糖症の危険性は、糖尿病を有する人にとって最大の心配の一つであり、全てのインスリン治療にとっての進行中の重荷である。それは、就職を制限するかもしれず、生活の質の損失を招くかもしれない。
2000年に、カナダのエドモントンのJames Shapiro及び彼の同僚は、事実上正常なグルコースレベルでのインスリン注射からの解放及び低血糖症からの解放が、I型糖尿病患者において、死亡後のドナーの膵臓からインスリン分泌島細胞を単離精製した後に達成されることができることを確認した。膵臓全体の1〜2%しか構成しないインスリン生産細胞のこれらのクラスターは、肝臓中へと排液する門脈中に直接移殖される。これは、局部麻酔のみを使用してX線案内下で単純なシリンジ注射機構を使用して皮膚を通して行われる。この手順は、糖尿病を有する全ての人にとってインスリン注射なしの未来を提供する。しかし、これは、インスリン生産細胞の新規な供給源が発見されない限り不可能であるだろう。単一のドナーから成功するのに十分な膵島を精製することは困難である。膵島調製物の50%のみが臨床移殖のために好適であり、それぞれ別個のドナーを必要とする4回までの移殖が、一人のI型糖尿病患者のインスリン注射を止めるために必要であった。臓器提供の現在の割合は、I型糖尿病の人々の1%未満に移殖するのに十分であるにすぎないだろうと推定されている。従って、それは将来有望な技術であるが、利用可能性は制限要因のままである。
科学的な試みは、(例えば、幹細胞からの)インスリン生産細胞の供給源を開発すること及びそれらを受容者に送達する方法を探求することに集中している。たとえインスリン生産細胞を幹細胞から製造することが可能であったとしても、その細胞を受容者にどのようにして導入するのかという問題が依然として存在する。送達のための多くの異なる方法が世界中で探求されている。大部分は、アルギン酸やポリマーのような人工支持体中へのある種の被包化に焦点を合わせている。現在まで、実際に成功的な被包化方法は存在しない。被包化は、細胞への酸素及び栄養の拡散を確実にする必要性、並びにインスリンが細胞を離れることを可能にする必要性によって制限されている。
本発明者らは、幹細胞からの新規なインスリン生産細胞の形成を駆りたてる彼らの幹細胞生物学の知識を応用することによって、及びこれを特異的な微小重力細胞培養環境と組合せることによってこれらの問題への解決策を提供することを探求した。これは、正常な膵島と同様に機能する3Dインスリン生産細胞クラスターであって、ドナーから提供された膵島を送達するために現在使用されているのと同じ移殖技術を使用して患者に移殖されることができる細胞クラスターの生成を可能にするであろう。
伝統的な細胞培養方法
世界中の研究室における伝統的な細胞培養方法は、被覆されたプラスチックフラスコで細胞を増殖させることを含み、これは、二次元シート状構造を有する細胞のコンフルエントで平坦な単層を生成する。この方法で増殖された細胞は、身体内の細胞と異なり、三次元細胞接触を経験しない。そのため、これらの細胞は、非生理学的な態様でしばしば挙動する。これは、重要な刺激に対する感受性の欠失、又は一般的に、連続的な増殖を生じる増殖の制御の欠失を含みうる。臨床移殖の観点から、制御されない増殖は許容できない。なぜなら、これは、移植後の腫瘍形成の危険性を招くからである。
世界中の研究室における伝統的な細胞培養方法は、被覆されたプラスチックフラスコで細胞を増殖させることを含み、これは、二次元シート状構造を有する細胞のコンフルエントで平坦な単層を生成する。この方法で増殖された細胞は、身体内の細胞と異なり、三次元細胞接触を経験しない。そのため、これらの細胞は、非生理学的な態様でしばしば挙動する。これは、重要な刺激に対する感受性の欠失、又は一般的に、連続的な増殖を生じる増殖の制御の欠失を含みうる。臨床移殖の観点から、制御されない増殖は許容できない。なぜなら、これは、移植後の腫瘍形成の危険性を招くからである。
伝統的な2D細胞培養フラスコにおける細胞の増殖に関連する制限及び危険性に鑑み、本発明者らは、バイオリアクターとして知られる3D微小重力細胞培養環境を利用する新規なアプローチを開発した。
バイオリアクター
定義により、バイオリアクターは、細胞又は微生物(細菌)が増殖されることができる生物学的に活性な環境を支持する装置である。通常、これらの細胞は、抗体やタンパク質のようなこれらの細胞によって生産された(又は分泌された)生産物を回収するために極めて大きなバイオリアクター中で増殖される。細胞及びそれらの生産物は、工業的規模でかつ最適条件下で増殖されて回収されることができる。気体(酸素、窒素及び二酸化炭素)、温度及びpHのようなバイオリアクター内の環境は、極めて厳密に制御されることができる。バイオリアクターの撹拌は必須であるが、従来の方法は、内容物の物理的撹拌を含む。これは、細胞に極めて大きな損害を与えうる。なぜなら、細胞は、強い剪断力及び発泡を経験しうるからである。バイオリアクターは、接着性細胞又は組織培養のためには通常好適でない。
定義により、バイオリアクターは、細胞又は微生物(細菌)が増殖されることができる生物学的に活性な環境を支持する装置である。通常、これらの細胞は、抗体やタンパク質のようなこれらの細胞によって生産された(又は分泌された)生産物を回収するために極めて大きなバイオリアクター中で増殖される。細胞及びそれらの生産物は、工業的規模でかつ最適条件下で増殖されて回収されることができる。気体(酸素、窒素及び二酸化炭素)、温度及びpHのようなバイオリアクター内の環境は、極めて厳密に制御されることができる。バイオリアクターの撹拌は必須であるが、従来の方法は、内容物の物理的撹拌を含む。これは、細胞に極めて大きな損害を与えうる。なぜなら、細胞は、強い剪断力及び発泡を経験しうるからである。バイオリアクターは、接着性細胞又は組織培養のためには通常好適でない。
NASAの科学者は、ヒトの身体内の環境を模倣する細胞用の環境を作り出す革命的な回転する微小重力バイオリアクターを最近開発した。それは、科学者が宇宙空間で細胞培養を行うことを可能にするために作り出された。なぜなら、回転する容器は、重力の影響を中和し、細胞が自然な態様で増殖することを促進するからである。バイオリアクターの地上での試験は、自然の増殖に近い三次元組織標本を生じた。これは、従来の接着性細胞培養のパンケーキ状の形状からの著しい変化である。ヒト及び他の動物では、細胞が複製するにつれて細胞は「自己会合」して、コラーゲン、タンパク質、繊維及び他の化学物質からなる複雑なマトリックスによって一緒に保持されたクラスターを形成する。この高度に発展した微小環境は、どのように増殖すべきか、どんな形状に増殖すべきか、及びどのようにして刺激に応答すべきかを隣接する細胞に知らせる。従って、それらは、組織の複雑な配向を研究する機会、並びに医薬、ホルモン及び厳格に制御された栄養条件によって操作されることができる培養システムにおいて生理学的に正確な組織を生成させる機会を提供する。
地球上で身体の外側でこれらのメカニズムを研究することは、重力の影響によって制限される。なぜなら、細胞は、容易に自己会合して自然に増殖しないからである。バイオリアクターは、スープ缶ほどの大きさの容器中での自己会合を促進する。それは、透明なシェルからなり、その中心は、酸素及び栄養を内部に透過させて二酸化炭素及び老廃物を外部へと透過させる円筒形フィルターを保持する。このことは、流体が、細胞を破壊するかもしれない剪断力なしに回転することを確実にする。厳密に述べると、回転する容器は実際には重力を打ち消さず、宇宙空間の微小重力において宇宙飛行士によって経験されるのと同様の継続的な自由落下状態で細胞を理想的に維持する。
本発明者らは、インスリン分泌細胞(これらは通常、単層で増殖する)を増殖させて膵島様クラスターへと凝集させて、インスリン分泌細胞が天然に生ずる環境を再生成する目的でインスリン分泌細胞を培養するためにバイオリアクターを利用した。
上述の通り、提供された全ての膵島を門脈(肝臓)中に送達することは、糖尿病を逆転することができる成功的な移殖方法である。この手順は、ドナーの利用可能性によって制限を受け、それに加えて、多数のドナーが必要とされるため、強度の免疫抑制を必要とする。従って、主要な膵島移殖と同様の方法で送達されることができる多量の生理学的に同一の膵島であって、単一の供給源から由来し、免疫抑制を最小化することを可能にする膵島を「製造」する必要性がある。本発明は、この必要性に答えるものである。
WO 2007/075807は、胚性幹細胞の指向された分化方法に関する。実施例7〜18は、胚様体を生成させるためのヒトの胚性幹細胞の使用を記述する。生じた一群の細胞は、pdx−1を発現し、商業的に製造されたゲルに懸濁される。これらの細胞は、微小重力環境中で増殖されない。
WO 2004/007683は、先祖細胞又は幹細胞の分化を誘導するための技術を開示する。実施例8は、肝臓の先祖細胞(幹細胞でない)のインスリン分泌ベータ様細胞への分化を記述する。肝細胞は、微小重力環境中で増殖されない。これらの細胞は、ヒドロゲル中で増殖される。
In Vitro Cell.Dev.Biol.−Animal;VoI 37,pp 490−498(2001),Cameron et al.,“Formation of insulin−secreting,sertoli−enriched tissue constructs by microgravity co−culture of isolated pig islets and rat sertoli cells”は、微小環境においてかつ商業的に入手可能なゲルを使用してブタ及びラットの細胞を培養することに関する研究を記述する。ヒトの細胞の使用は、教示も示唆もされておらず、特に、ヒトの胚性幹細胞についての言及やそれらを微小重力環境中で増殖させるために必要な特異的で高度に特化された分化プロトコールについての言及はされていない。
Ann.NY Acad.Sci,VoI 944,pp 420−428(2001),Cameron et al.,“Formation of sertoli cell−enriched tissue constructs utilizing simulated microgravity technology”は商業的に入手可能なゲルの使用に基づくラット及びブタの細胞の共培養に関する。ヒトの細胞の使用は、教示も示唆もされていない。
WO 97/16536は、新生児及び/又は成人のヒト又は非ヒト膵島のex vivoでの増殖及び分化方法に関する。細胞は、微小重力環境中で培養され、凝集培地が使用される。この文献の意図は、糖尿病の治療のために有用な生成物を生成させることである。WO 97/16536は、成人のヒトの組織を使用した研究を記述しており、胚性幹細胞を使用した研究は記述していないということに気付くことが重要である。使用されている組織は、死体から提供された膵細胞である。この研究は、膵島を解離させて、次に培養システムを使用してそれらを再会合させることを含み、他の成体細胞型との共培養が提案されている。
上述の従来のアプローチとは対照的に、本発明は、幹細胞を単一の供給源から採取し、それらから機能的なインスリン生産細胞を生成させ、次にこれらの新たに形成された細胞の移植可能なクラスターの形成を促進する。それは、純粋な未分化のヒトの幹細胞系を出発材料として使用する。本発明者らは、特異的な出発材料を使用し、(幹細胞をインスリン生産細胞に変換させるための)特異的な分化プロトコールを開発し、その結果、これらをそれらの最適化された微小重力バイオリアクター培養システムと組合せて新規の方法を開発した。ヒトの胚性幹細胞に由来するインスリン生産細胞のクラスター化は従来達成されていなかったことであるということを理解することが重要である。
本発明によれば、幹細胞由来の三次元インスリン生産細胞のクラスターが提供される。本発明はさらに、微小重力環境中で幹細胞由来の三次元インスリン生産細胞のクラスターを生産する方法を提供する。さらに具体的には、この方法は、微小重力バイオリアクター培養システムの使用を含む。
具体的な実施態様において、本発明の方法では、まず、静置プレート又は皿上で、胚様体の形成を促進する培地中で幹細胞を培養し、次に、細胞を微小重力バイオリアクターに移動させ、そこで細胞がまず胚様体の三次元クラスターを形成し、次にインスリン生産β細胞へとさらに分化するように一連の培地中で細胞が培養される。
特に好ましい実施態様において、本発明の方法は、以下の工程を含む:
a)まず、静置プレート又は皿上で、ウシ胎仔血清を補充されたグルコースDMEM中で幹細胞を4日間培養し;
b)細胞を微小重力バイオリアクターに移動させ、回転下で3日間培養し;
c)インスリン−トランスフェリン−セレン補充物を有する血清不含有DMEM/F12によって培養培地を置換し、さらに4日間培養し;
d)重力沈降によってネスチン(nestin)陽性細胞を選択し、それらを微小重力バイオリアクター中で、インスリン、トランスフェリン、プロゲステロン、亜セレン酸ナトリウム、ヒト角化細胞増殖因子、上皮増殖因子、B27補充物及びニコチンアミドを補充されたDMEM/F12培地を使用して7日間培養し;そして
e)三次元インスリン生産細胞のクラスターを回収する。
a)まず、静置プレート又は皿上で、ウシ胎仔血清を補充されたグルコースDMEM中で幹細胞を4日間培養し;
b)細胞を微小重力バイオリアクターに移動させ、回転下で3日間培養し;
c)インスリン−トランスフェリン−セレン補充物を有する血清不含有DMEM/F12によって培養培地を置換し、さらに4日間培養し;
d)重力沈降によってネスチン(nestin)陽性細胞を選択し、それらを微小重力バイオリアクター中で、インスリン、トランスフェリン、プロゲステロン、亜セレン酸ナトリウム、ヒト角化細胞増殖因子、上皮増殖因子、B27補充物及びニコチンアミドを補充されたDMEM/F12培地を使用して7日間培養し;そして
e)三次元インスリン生産細胞のクラスターを回収する。
本発明者らは、個々のベータ細胞を微小重力リアクター中で培養することによって個々のベータ細胞がそれら自身の生理学的に正確な3D膵島構造を形成することを可能にする技術を開発した。ベータ細胞をこの方法で構成することは、グルコースによって刺激されるインスリン放出を増大させ、(細胞の球の中心においても)細胞の生存性を維持し、膵島が多数「増殖」して延長された時間期間にわたって維持されることを可能にする。
本発明者らは、これらのプロトコールを最適化して胚性幹細胞からインスリン生産細胞を生成させた。本発明者らは、微小重力バイオリアクターに基づくシステムを使用して幹細胞から細胞の3Dクラスターを初めて生成させた。本発明者らは、膵島の移植物から細胞の3Dクラスターが糖尿病患者の肝臓門脈中に安全に送達されることができるという原理の証拠を有する。幹細胞からのインスリン生産細胞のクラスターの生成は、全ての糖尿病患者にとって移植可能な細胞の潜在的に制限のない供給源の生成を可能にすることができる。従って、本発明者らの最適化されたバイオリアクターシステムから生産されるグルコース応答性のインスリン生産細胞のクラスターについての市場は、莫大である。
本発明の方法を使用した幹細胞からのインスリン生産細胞の形成は、今まで全く試みられていない。この方法は、正常な発生の間にベータ細胞の形成を誘導することが知られている刺激物質の最適化された混合物での幹細胞の最初の処理を含むプロトコールを使用する。プロトコールの5日目に、細胞は微小重力バイオリアクターに移動される。この段階で、細胞は、胚様体(EB)と称される3Dクラスターを形成し、ベータ細胞になる方向への経路をたどり始める。最初の結果は、本発明のバイオリアクターシステムにおいて形成されて維持されたEBは、従来の細胞培養方法によって形成されたEBより構造及び安定性に優れるということを示唆した。バイオリアクター容器内での栄養及びホルモン環境中でのさらに規定された変化の後、EBは、インスリン生産細胞を形成するように誘導された。最初の3D細胞クラスターは、最適化されたバイオリアクターシステム中で生成された。
本発明は今や、以下の実施例及び添付の図面を参照して説明されるであろう。
図1のa)は、初期マウス膵島であり;b)は、MIN6インスリン分泌細胞から生成されたバイオリアクターで培養された膵島の走査電子顕微鏡画像であり;c)は、MIN6インスリン分泌細胞から生成されたバイオリアクターで培養された膵島の表面構造の走査電子顕微鏡画像であり;d)は、本明細書に記載のバイオリアクター培養方法を使用して幹細胞から生成された優れた胚様体(EB)であり;e)は、本明細書に記載のバイオリアクター培養方法を使用して幹細胞から生成されたインスリン分泌細胞の3Dクラスターからのインスリン生産である。
分化されたインスリン分泌クラスター(DISC)の生成のためのプロトコール
出発幹細胞集団からの胚様体(EB)の形成は、10%ウシ胎仔血清を補充された25mMグルコースDMEM中のペトリ皿中で最初に培養することによって指向された。4日間の皿培養後、EBは、10ml HARV(高アスペクト回転容器)微小重力バイオリアクター容器(Syntheconによって供給されたもの)に移動され、約12rpmの回転速度で3日間培養された。この時間の後、培地は、インスリン−トランスフェリン−セレン補充物を有する血清非含有DMEM/F12によって置換された。EBは、微小重力HARV中で4日間培養された。ネスチン陽性細胞は、重力沈降によって選択され、HARV中に再配置され、そこでそれらは、25μg/mlのインスリン、100μg/mlのトランスフェリン、20nMのプロゲステロン、30nMの亜セレン酸ナトリウム、10ng/mlのヒト角化細胞増殖因子、20ng/mlの上皮増殖因子、B27補充物及び10ng/mlのニコチンアミドを補充されたDMEM/F12培地を使用して7日間約12rpmの回転速度で培養された。サンプルは7日目に採取された。細胞は、組織培養に移動され、4ウェルチャンバースライドで処理され、24時間付着させられ、次に、3.7%のホルマリン中で固定されてICC染色された。
出発幹細胞集団からの胚様体(EB)の形成は、10%ウシ胎仔血清を補充された25mMグルコースDMEM中のペトリ皿中で最初に培養することによって指向された。4日間の皿培養後、EBは、10ml HARV(高アスペクト回転容器)微小重力バイオリアクター容器(Syntheconによって供給されたもの)に移動され、約12rpmの回転速度で3日間培養された。この時間の後、培地は、インスリン−トランスフェリン−セレン補充物を有する血清非含有DMEM/F12によって置換された。EBは、微小重力HARV中で4日間培養された。ネスチン陽性細胞は、重力沈降によって選択され、HARV中に再配置され、そこでそれらは、25μg/mlのインスリン、100μg/mlのトランスフェリン、20nMのプロゲステロン、30nMの亜セレン酸ナトリウム、10ng/mlのヒト角化細胞増殖因子、20ng/mlの上皮増殖因子、B27補充物及び10ng/mlのニコチンアミドを補充されたDMEM/F12培地を使用して7日間約12rpmの回転速度で培養された。サンプルは7日目に採取された。細胞は、組織培養に移動され、4ウェルチャンバースライドで処理され、24時間付着させられ、次に、3.7%のホルマリン中で固定されてICC染色された。
図1のa)は、マウスから単離された初期膵島であり、b)は、バイオリアクター培養を使用してインスリン生産細胞から生成された膵島の走査電子顕微鏡画像であり、c)は、同じ膵島の表面の走査電子顕微鏡画像であり、d)は、この実施例で記載されたプロトコールに従って生成された胚様体(EB)の走査電子顕微鏡画像であり、e)は、この実施例で記載されたプロトコールを使用して幹細胞から生成された3Dインスリン生産細胞クラスターから生産されたインスリンである。これらの画像から、バイオリアクター中でのインスリン生産細胞のクラスターの培養は、これらの細胞を自己会合させることを可能にし、初期膵島とは区別できない複雑なマトリックスを実際に形成したことが明らかである。
Claims (9)
- 幹細胞由来の三次元インスリン生産細胞のクラスター。
- 由来する幹細胞がヒトの胚性幹細胞であることを特徴とする請求項1に記載の三次元インスリン生産細胞のクラスター。
- 細胞のクラスターが微小重力環境中で生産されることを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元インスリン生産細胞のクラスター。
- 微小重力環境が微小重力バイオリアクター細胞培養システムであることを特徴とする請求項3に記載の三次元インスリン生産細胞のクラスター。
- 微小重力環境の使用を含むことを特徴とする、幹細胞由来の三次元インスリン生産細胞のクラスターを生産する方法。
- 微小重力環境が微小重力バイオリアクター細胞培養システムを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
- まず、静置プレート又は皿上で、胚様体の形成を促進する培地中で幹細胞を培養し、次に、細胞を微小重力バイオリアクターに移動させ、そこで細胞がまず胚様体の三次元クラスターを形成し、次にインスリン生産β細胞へとさらに分化するように、細胞が一連の培地中で培養されることを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
- 以下の工程を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法:
a)まず、静置プレート又は皿上で、ウシ胎仔血清を補充されたグルコースDMEM中で幹細胞を4日間培養し;
b)細胞を微小重力バイオリアクターに移動させ、回転下で3日間培養し;
c)インスリン−トランスフェリン−セレン補充物を有する血清不含有DMEM/F12によって培養培地を置換し、さらに4日間培養し;
d)重力沈降によってネスチン陽性細胞を選択し、それらを微小重力バイオリアクター中で、インスリン、トランスフェリン、プロゲステロン、亜セレン酸ナトリウム、ヒト角化細胞増殖因子、上皮増殖因子、B27補充物及びニコチンアミドを補充されたDMEM/F12培地を使用して7日間培養し;そして
e)三次元インスリン生産細胞のクラスターを回収する。 - 幹細胞がヒトの胚性幹細胞であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
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